(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220218BHJP
B65D 43/04 20060101ALI20220218BHJP
B65D 43/08 20060101ALI20220218BHJP
B65D 51/18 20060101ALI20220218BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D43/04
B65D43/08 210
B65D51/18
B65D81/34 T
A47J27/00 107
(21)【出願番号】P 2018044555
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210236(JP,A)
【文献】特開2009-82325(JP,A)
【文献】特開2010-76779(JP,A)
【文献】特開平2-154715(JP,A)
【文献】特開2006-103733(JP,A)
【文献】特開2008-245586(JP,A)
【文献】特開2007-282987(JP,A)
【文献】特開平8-228740(JP,A)
【文献】特開2008-271891(JP,A)
【文献】特開2017-165422(JP,A)
【文献】特開2011-73735(JP,A)
【文献】特開平10-316177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 43/04-43/10
B65D 51/18
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口部を有する容器本体と、前記容器本体に嵌合させて前記開口部を塞ぐ中皿と、前記中皿に嵌合させる蓋とから構成される合成樹脂製の包装容器であって、
前記中皿の側壁の一部を内側へ膨出させて形成した蒸気誘導部と、前記蓋の側壁の一部を内側へ膨出させて形成した蒸気遮断部とを有する蒸気誘導機構を備え、前記蒸気誘導部に設けられた蒸気誘導孔を前記蒸気遮断部に設けられた閉塞面で閉塞でき、前記蓋が移動して、前記蒸気誘導孔を開放する包装容器。
【請求項2】
前記蒸気誘導孔は、貫通孔及び切込みから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記中皿の側壁上端部には全周に亘って内側へ膨出した中皿側壁突条が設けられ、前記蓋のフランジ側壁下端部には全周に亘って外側へ膨出した蓋フランジ突条が設けられ、前記蓋が移動した際、前記蓋フランジ突条が前記中皿側壁突条に当接する請求項1または2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記包装容器全体をスリーブまたはシュリンクフィルムで覆った請求項1~3のいずれか一項に記載の包装容器。
【請求項5】
前記容器本体内に発熱ユニットを有する請求項1~4のいずれか一項に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器に関する。より詳しくは、容器に収容された食品を加熱する際に、発生した蒸気を容器外に排出可能な構造を有する包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器本体と中皿と蓋で構成される合成樹脂製の包装容器で、容器本体底部に発熱ユニットを収容し、食品等の内容物を収容した中皿を容器本体内に装着した後、蓋を嵌合して密封する構造の加熱容器が使用されている。この容器に使用される発熱ユニットは通常石灰と水の水和反応で蒸気を発生させるもので、発生した蒸気によって中皿に収容された内容物を加熱するものである。また、発熱ユニットを使用せず、電子レンジで内容物を加熱する包装容器も使用されている。
【0003】
これら容器は、蒸気を容器外に排出させる必要があり、種々の通気手段が検討されている。例えば、蓋のフランジ面に蒸気抜き溝を形成する容器が提案されている。しかし、内容物が汁気のある食品の場合、輸送中に汁が通気路を伝わり外部に漏れだす恐れがあるため容器と蓋を密封状態にする必要があった。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、輸送時は容器本体が密封状態にあるが加熱時は内容物から発生した蒸気が蓋を押し上げ、蒸気抜き溝を開放させることによって、蒸気を容器外に排出させる蒸気排出機構を設けた電子レンジ用加熱用食品包装容器が開示されている。しかし、このような容器は、加熱した際に発生する蒸気が蒸気抜き溝で凝結して容器の周囲を汚してしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-080682号公報
【文献】特開2010-215259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされた発明である。すなわち、本発明の課題は、汁気のある食品などを店頭で販売する時や持ち帰る際に汁漏れを防止でき、かつ、加熱時に蒸気を容器外にスムーズに排出することによって容器本体から蓋、中皿が外れることを防止でき、さらに、容器外に排出された蒸気によって容器の周囲が汚れることを防止できる容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の包装容器は、以下の構成を有するものである。
(1)上方に開口部を有する容器本体と、前記容器本体に嵌合させて前記開口部を塞ぐ中皿と、前記中皿に嵌合させる蓋とから構成される合成樹脂製の包装容器であって、
前記中皿の側壁の一部を内側へ膨出させて形成した蒸気誘導部と、前記蓋の側壁の一部を内側へ膨出させて形成した蒸気遮断部とを有する蒸気誘導機構を備え、前記蒸気誘導部に設けられた蒸気誘導孔を前記蒸気遮断部に設けられた閉塞面で閉塞でき、前記蓋が移動して、前記蒸気誘導孔を開放する包装容器。
(2)前記蒸気誘導孔は、貫通孔及び切込みから選択される少なくとも1種である(1)に記載の包装容器。
(3)前記中皿の側壁上端部には全周に亘って内側へ膨出した中皿側壁突条が設けられ、前記蓋のフランジ側壁下端部には全周に亘って外側へ膨出した蓋フランジ突条が設けられ、前記蓋が移動した際、前記蓋フランジ突条が前記中皿側壁突条に当接する(1)または(2)に記載の包装容器。
(4)前記包装容器全体をスリーブまたはシュリンクフィルムで覆った(1)~(3)のいずれかに記載の包装容器。
(5)前記容器本体内に発熱ユニットを有する(1)~(4)のいずれかに記載の包装容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明における包装容器は、密封性を有する蓋を使用することにより、輸送時に中皿内に収容した食品に含まれる汁が容器外へ漏れるのを防止できると共に、蓋に設けられた閉塞面が中皿の通気面に設けられた蒸気誘導孔を塞ぐ構造なので、容器の未使用時に中皿内に収容した食品に含まれる汁が容器本体内に流入するのを防止できるものである。
【0009】
また、本発明における包装容器は、加熱した時に、容器本体内で発生した蒸気が、蒸気誘導孔を介して閉塞面を押し上げ蒸気誘導孔を開放し、中皿の内側に流れるので、中皿が容器本体から外れることを防止できる。
【0010】
さらに、本発明における包装容器は、中皿内に流入した水蒸気が蓋の天面に設けられた蒸気排出部から放出されるので、容器の周囲に蒸気が排出せず、容器の周囲が水滴で汚れることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る包装容器について図面を参酌しつつ説明する。
【0012】
〔包装容器全体の構成〕
図1は、本発明の包装容器全体の構成を示す斜視図である。本発明における包装容器Aは、
図1に示すように、上方に開口部を有する容器本体1Aと、該容器本体1A内に収容させると共に該容器本体1Aに嵌合させて容器本体の開口部を塞ぐ中皿2と、該中皿2に密着嵌合させて中皿の開口部を塞ぐ蓋3とから構成される。
【0013】
〔容器本体、中皿及び蓋の素材等〕
容器本体、中皿及び蓋は、何れも合成樹脂シート製であって、いわゆるシート成型により得られたものであり、加熱容器用とするため、耐熱性を有する合成樹脂シートを用いると良い。シート成型としては例えば真空成型、圧空成型、真空圧空成型、両面真空成型、熱板成型等があり、何れにしても合成樹脂シートを熱成型することにより得られる。ここで、合成樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン等からなるシート、これらのシート素材に無機物を配合したシート、これらのシート素材を発泡させた発泡シート、更には、これらのシートを延伸させた延伸シートなどを使用できる。容器本体及び中皿に用いる合成樹脂シートとしては、耐熱性のあるポリプロピレンシート、またはポリプロピレンに無機物など各種添加剤を配合したシート、またはポリプロピレンの発泡シート、さらには異なる素材を積層させたシートを用いることが好ましい。また、蓋に用いる合成樹脂シートとしては、透明性の面から、二軸延伸ポリスチレンシートや、非結晶ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。また、成型済みの市販品を使用することもでき、たとえば、容器本体にフクビ化学工業株式会社製ナルホット(登録商標)NWP350F(ポリプロピレン製、直径 φ163、高さ79mm)が使用される。
【0014】
〔容器本体の構成〕
図1に示すとおり、包装容器Aの容器本体1Aは、本体底壁11と、本体底壁11の外周部から立設された本体側壁12と、本体側壁12の上端部から外周方向へ延設された本体フランジ13とから構成されている。
本体フランジ13は、本体側壁12から連続する本体フランジ上壁13aと、本体フランジ上壁13aの外周端から降下する本体フランジ側壁13bと、本体フランジ側壁13bの下端から外周方向へ延設された本体フランジ端部13cとから構成される。容器本体は、厚さは、0.2~0.5mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.2~0.3mmである。この範囲であれば、成型性・経済性、強度等の点から適している。
【0015】
〔中皿の構成〕
中皿は、中皿底壁21と、中皿底壁21の外周部から立設された中皿側壁22と、中皿側壁22の上端部から外周方向へ延設された中皿フランジ23とから構成されている。
中皿側壁22は、上端寄りの位置に全周に亘って段24が形成され、段24より上方の中皿上部側壁22a、段24より下方の中皿下部側壁22bとからなる。中皿上部側壁22aの上端部には全周に亘って内方へ膨出した中皿側壁突条22cが形成されている。中皿下部側壁22bの一部には、内方へ膨出した蒸気誘導部25が形成され、蒸気誘導部25の上部には蒸気誘導孔27を設けた通気面26が形成されている。蒸気誘導部25は、1つでも良く、複数あってもよい。蒸気誘導孔27は、U字状切込みでも他の形状でもよい。
中皿フランジ23は、中皿上部側壁22aから連続する中皿フランジ上壁23aと、中皿フランジ上壁23aの外周端から降下する中皿フランジ側壁23bと、中皿フランジ側壁23bの下端から外周方向へ延設された中皿フランジ端部23cとから構成されている。中皿フランジ側壁23bの下端部には内方へ膨出した中皿フランジ突条23dが形成されている。また、中皿の厚みは、0.1~1.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.2~0.5mmである。この範囲であれば、成型性・経済性、強度等の点から適している。
【0016】
〔蓋の構成〕
蓋は、天面壁31と、天面壁31の外周部から降設された蓋側壁32と、蓋側壁32の下端部から外周方向へ延設された蓋フランジ33とから構成される。天面壁31にはU字状の切欠きからなる蒸気排出部31aが設けられている。蓋側壁32の一部には、下方へ膨出した蒸気遮断部34が形成され、蒸気遮断部34の下端部には閉塞面35が形成されている。
蓋フランジ33は、蓋側壁32から連続する蓋フランジ下壁33aと、蓋フランジ下壁33aの外周端から上昇する蓋フランジ側壁33bと、蓋フランジ側壁33bの上端から外周方向へ延設された蓋フランジ端部33cとから構成されている。蓋フランジ側壁33bの下端部には全周に亘って外方へ膨出した蓋フランジ突条33dが形成されている。また、蓋の厚みは、0.1~1.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.2~0.5mmである。この範囲であれば、成型性・経済性、強度等の点から適している。
【0017】
〔容器嵌合時の状態〕
容器嵌合時の状態を、
図1~3を用いて説明する。
図2に示すように、包装容器Aは、容器本体1Aに発熱ユニット4が収容され、中皿2に食品が収容される。
容器本体1Aの中に中皿2を収容して押し込むと、中皿フランジ突条23dが本体フランジ端部13cを乗り越えて本体フランジ端部13cの下に係止して容器本体1Aと中皿2が嵌合状態となる。
【0018】
また、中皿2の開口部を塞ぐように蓋3を被せて押し込むと、蓋フランジ突条33dが中皿側壁突条22cを乗り越え中皿側壁突条22cの下方位置まで嵌入して、蓋フランジ突条33dの外周面が中皿上部側壁22aの内周面に接した状態で中皿2と蓋3が嵌合状態となる。中皿側壁突条22cと蓋フランジ突条33dの間に隙間があるため、閉塞面35は通気面26に対して上下方向に移動可能である。
【0019】
輸送、保管時において、閉塞面35が上方向に摺動すると、中皿に収容された具材等が、通気面26を通過して、容器本体1Aに漏れ込むおそれがあるため、容器本体1A、中皿2、蓋体3を嵌合させた状態で包装容器A全体をスリーブ5またはシュリンクフィルムで覆うことにより、蒸気誘導孔27が塞がれている状態を維持できる。
【0020】
〔容器加熱時の状態〕
図2に示す容器本体1Aに収容された発熱ユニット4は、石灰と水の水和反応で蒸気を発生させて中皿に収容された内容物を加熱するものである。発熱ユニット4には発熱を開始させるための作動紐41が取り付けてあり、該作動紐41は容器本体1Aの側壁に設けた孔から容器外へ延びている。作動紐41を引くと発熱ユニット4が作動し蒸気が発生する。容器本体1A内に発生した蒸気によって、中皿2の蒸気誘導孔27を介して蓋3の閉塞面35に対して押圧力が働き、閉塞面35が通気面26から離れる方向(上方)に移動する。閉塞面35が通気面26から離れると蒸気誘導孔27が開放され蒸気が容器本体1A内から中皿2内に誘導される。容器本体1A内から中皿2内に蒸気が流れることによって容器本体1A内の圧力上昇が制限され、容器本体1Aから中皿2が外れるのを防止できる。包装容器Aには、閉塞面35と通気面26とによって蒸気誘導孔27を開閉する蒸気誘導機構が形成されている。
【0021】
通気面26に設けた蒸気誘導孔27はU字状の切込みでも貫通孔であってもよい。貫通孔の形状は、円形に限定されるものではなく、楕円形や多角形、その他の形状であってもよい。また、切込みの形状は、一般的にU字状の切込みを使用することが多いが、U字状に限定されるものではない。蒸気誘導孔27は、その大きさや数を適宜選択することによって、閉塞面35を押し上げる蒸気押圧力を調整することができる。
【0022】
図3は、容器の加熱時の状態を示す断面図である。蒸気誘導孔27が開放され蒸気が中皿2内に流入すると中皿内の圧力が高くなり、
図3に示すように、蓋3は、押し上げられて中皿2から離れる方向(上方向)に移動する。蓋3は中皿2から上方向に、中皿側壁突条22cと蓋フランジ突条33d間の隙間H分だけ移動可能であり、蓋フランジ突条33dと中皿側壁突条22cに当接されるので蓋3が外れないようになっている。
【0023】
蓋3の天面壁31にはU字状の切欠きからなる蒸気排出部31aが形成されていて、中皿内の圧力が高くなると蒸気排出部31aから蒸気が放出される。蒸気排出部31aは切込みに限定されるものではなく貫通孔であってもよい。蒸気排出部31aは、その大きさや数を適宜選択することによって、蓋3を押し上げる蒸気押圧力を調整することができる。蒸気排出部31aから蒸気が排出されることによって中皿2内の圧力上昇が制限され中皿2から蓋3が外れるのを防止できる。
【0024】
図4は、電子レンジ加熱用包装容器に内容物を収容したものであり、
図2、3の発熱部分に換え、米飯を収容したものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】同容器に内容物を収容し、容器本体・中皿・蓋を嵌合させた状態を示す断面図。
【
図4】同容器に内容物を収容し、容器本体・中皿・蓋を嵌合させた加熱前の容器の状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0026】
1A、1B容器本体
11 本体底壁
12 本体側壁
13 本体フランジ
13a 本体フランジ上壁
13b 本体フランジ側壁
13c 本体フランジ端部
2 中皿
21 中皿底壁
22 中皿側壁
22a 中皿上部側壁
22b 中皿下部側壁
22c 中皿側壁突条
23 中皿フランジ
23a 中皿フランジ上壁
23b 中皿フランジ側壁
23c 中皿フランジ端部
23d 中皿フランジ突条
24 段
25 蒸気誘導部
26 通気面
27 蒸気誘導孔
28 蒸気誘導部側面
3 蓋
31 天面壁
31a 蒸気排出部
32 蓋側壁
33 蓋フランジ
33a 蓋フランジ下壁
33b 蓋フランジ側壁
33c 蓋フランジ端部
33d 蓋フランジ突条
34 蒸気遮断部
35 閉塞面
36 蒸気遮断部側面
4 発熱ユニット
41 作動紐
42 生石灰
43 水袋
5 スリーブ(紙の帯)
6 米飯
A、B 包装用容器