(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】光ファイバ歪みセンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20220218BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20220218BHJP
G02B 6/46 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
G02B6/44 341
G02B6/00 B
G02B6/46 321
G02B6/44 301B
(21)【出願番号】P 2018049063
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】302040135
【氏名又は名称】日鉄溶接工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】川 村 研 二
(72)【発明者】
【氏名】大 宮 豊
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176426(JP,A)
【文献】特開平07-191233(JP,A)
【文献】特開2001-281077(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212559(WO,A1)
【文献】特開2017-110910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0056553(US,A1)
【文献】特開昭51-057454(JP,A)
【文献】特開2011-085487(JP,A)
【文献】特開2005-274200(JP,A)
【文献】河 智仁,水野 洋輔,中村 健太郎,プラスチック光ファイバ中のモード間干渉を用いた歪センサ: 広域スペクトルの相関処理による安定性向上,第78回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集,応用物理学会,2017年09月,7a-C14-6,https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsap2017a/7a-C14-6/public/pdf?type=in
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
G02B 6/02-6/036
G02B 6/10
G02B 6/245-6/25
G02B 6/43-6/46
G01B 11/00-11/30
G01M 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外皮管と、該外皮管に全長にわたり所定の間隔をおいて該外皮
管の
管壁に該外皮
管の軸心に直交する方向に開けられた注入口と、該外皮管の内部にあって該注入口の近辺で全周絞りカシメにより該外皮管の内面に所定張力を保持して固定され該外皮管に局所的に結合した光ファイバと、前記注入口を通して該外皮管に局所注入されて該光ファイバを該外皮管に固定した接着剤と、を備える光ファイバ歪みセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ歪みセンサを螺旋形状にした螺旋形光ファイバ歪みセンサ。
【請求項3】
光ファイバ歪みセンサの外皮管となる金属管に、全長にわたり所定の間隔をおいて管外から管内に通ずる注入口を開ける工程、
前記注入口を開けた金属管内に光ファイバを挿入する工程、
光ファイバを挿入した金属管の内部に前記注入口を通して光ファイバを金属管に固定するための接着剤を局所注入する工程、および、
接着剤を注入した前記金属管の、注入した接着剤の近辺で全周絞りカシメにより光ファイバに金属管の内面を固定する工程、
を含む、光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【請求項4】
光ファイバ歪みセンサの外皮管となる金属管に、全長にわたり所定の間隔をおいて管外から管内に通ずる注入口を開ける工程、
前記注入口を開けた金属管内に光ファイバを挿入する工程、
光ファイバを挿入した前記金属管の注入口の近辺を全周絞りカシメをして管内の光ファイバを所定張力を保持して金属管の内面に固定する工程、および、
前記金属管の内部に前記注入口を通して光ファイバを金属管に固定するための接着剤を局所注入する工程、
を含む、光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【請求項5】
前記注入口を開ける工程では、前記注入口は、前記金属管の中心軸が延びる方向で全周絞りカシメを施す位置の両側、のそれぞれに開ける、請求項3又は4に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【請求項6】
前記注入口を開ける工程では、前記金属管の中心軸が延びる方向で全周絞りカシメの近辺の、前記中心軸を間において相対向する金属管璧に各注入口を開ける、請求項3又は4に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【請求項7】
前記注入口を開ける工程では、前記金属管の中心軸が延びる方向の所定間隔の穴開け各個所において金属管の中心軸に指向する複数の注入口を開け、前記接着剤を局所注入する工程では、前記複数の注入口を通して金属管内に同時に接着剤を注入する、請求項3又は4に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【請求項8】
前記注入口を開ける工程では、前記注入口は、前記金属管の中心軸が延びる方向で全周絞りカシメを施す位置の両側のそれぞれで前記中心軸を間において相対向する金属管璧に各注入口を開け、前記接着剤を局所注入する工程では、全周絞りカシメの両側の前記金属管の中心軸を間において相対向する金属管璧に開けられた各注入口を通して同時に金属管内に接着剤を注入する、請求項3又は4に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【請求項9】
請求項3又は4に記載の各工程で製造された光ファイバ歪みセンサを、螺旋形状に固定する工程、を含む、請求項3又は4に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いた歪みセンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ歪みセンサは、光ファイバに入射したパルス光の後方散乱光(ブリルアン散乱光)の歪み依存性を有する周波数シフト量を時分割的に測定することができる。この測定結果を用いて、歪みの大きさと生じている場所を分布として知ることができる。この方式をBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)方式と呼ぶ。この測定システムの適用により比較的安価に歪みを分布として測定できるようになった。その測定能力は、距離分解能1m、歪み分解能0.1mm/1mであり、許容ダイナミックレンジ(光ファイバによる全伝送損失)は測定条件によるが最低値で約2dBである。
【0003】
歪みセンサとして光ファイバを被測定物に全線に固定した場合は、特開2001-228380号公報(特許文献1)、特開2002-5759号公報(特許文献2)、特開2002-107269号公報(特許文献3)など、歪みセンサ全線において光ファイバが外皮管と固定された光ファイバ歪みセンサは、被測定物に亀裂などの微少な区間に歪みが発生した場合、センサが局所的に伸ばされるため光ファイバの伸び限界に簡単に達してしまうため、断線することがある。
【0004】
特開2001-281077号公報(特許文献4)に示される光ファイバ歪センサは、外皮管の平カシメで外皮管を光ファイバ心線に固定しているが、平カシメにより外皮管断面が楕円形になって光ファイバとは部分的な接触しかないため,歪みが大きくなると外皮管と光ファイバ心線の間に滑りの生じるおそれがある。外皮管と光ファイバ心線の間の滑りを止めるためにカシメを強くすると光ファイバが破断するおそれがある。また、カシメに空隙が存在するため、光ファイバ心線の位置の調整が難しく、安定した低い伝送損失の光ファイバ歪みセンサの製造歩留まりを下げる要因の一つになる。
【0005】
さらに平カシメ構造の光ファイバ歪みセンサは、カシメが金属管の外径より外に張り出すこともあるので、光ファイバ歪みセンサ敷設時にカシメが押されて開き、付与張力が抜けてしまうことがある。
【0006】
また、光ファイバが外皮管と間欠固定された歪みセンサでは固定された区間の長さで平均して変状を受けるため、全線固定された歪みセンサに比べ亀裂で歪みセンサが断線するという事態にはなり難いが、微少範囲の変状に対しての感度が低くなる傾向がある。
【0007】
本出願人は、特開2005-274200号公報(特開文献5)にて、外皮管の全長にわたり所定の間隔をおいた全周絞りカシメにより外皮管の内面に光ファイバ心線を固定した光ファイバ歪センサを提示した。この歪センサによれば、全周カシメにより外皮管内面が光ファイバ外表面全周に密着し、光ファイバ心線の位置調整は不要で、安定した低い伝送損失の光ファイバ歪みセンサの製造歩留まりを向上できる。さらに全周カシメ構造の光ファイバ歪みセンサは、カシメが金属管の外径より外に張り出すことはなく、センサ敷設を容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-228380号公報
【文献】特開2002-5759号公報
【文献】特開2002-107269号公報
【文献】特開2001-281077号公報
【文献】特開2005-274200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特開2005-274200号公報(特開文献5)に記載の光ファイバ歪みセンサでも、光ファイバの光軸方向の2%を超える伸縮率の歪み計測には、金属管による光ファイバの拘束力が足りず適用が難しい。すなわち2%を超える伸縮率の歪みを生じると、カシメ箇所で金属管と光ファイバ心線の間に滑りが発生して計測が難しくなる。
【0010】
本発明は、光ファイバ歪みセンサにおいて外皮管と光ファイバ心線との間の滑りを防止することにより歪みセンサの精度の向上、光ファイバ心線と被覆外皮管との一体化の安定と強化による品質の向上および安定化を目的とするとともに、光ファイバ歪みセンサによる歪み量の測定可能範囲を更に拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の光ファイバ歪みセンサは、外皮管と、該外皮管に全長にわたり所定の間隔をおいて該外皮管の管壁に該外皮管の軸心に直交する方向に開けられた注入口と、該外皮管の内部にあって該注入口の近辺で全周絞りカシメにより該外皮管の内面に所定張力を保持して固定され該外皮管に局所的に結合した光ファイバと、前記注入口を通して該外皮管に局所注入されて該光ファイバを該外皮管に固定した接着剤と、を備える。
【0012】
(2)さらに、歪みの測定限界を広げる態様の本発明の光ファイバ歪みセンサは、上記(1)の光ファイバ歪みセンサを螺旋形状にした螺旋形光ファイバ歪みセンサである。
【0013】
(3)光ファイバ歪みセンサの外皮管となる金属管に、全長にわたり所定の間隔をおいて管外から管内に通ずる注入口を開ける工程、
前記注入口を開けた金属管内に光ファイバを挿入する工程、
光ファイバを挿入した金属管の内部に前記注入口を通して光ファイバを金属管に固定するための接着剤を局所注入する工程、および、
接着剤を注入した前記金属管の、注入した接着剤の近辺で全周絞りカシメにより光ファイバに金属管の内面を固定する工程、
を含む、光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【0014】
(4)光ファイバ歪みセンサの外皮管となる金属管に、全長にわたり所定の間隔をおいて管外から管内に通ずる注入口を開ける工程、
前記注入口を開けた金属管内に光ファイバを挿入する工程、
光ファイバを挿入した前記金属管の注入口の近辺を全周絞りカシメをして管内の光ファイバを所定張力を保持して金属管の内面に固定する工程、および、
前記金属管の内部に前記注入口を通して光ファイバを金属管に固定するための接着剤を局所注入する工程、
を含む、光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【0015】
(5)前記注入口を開ける工程では、前記注入口は、前記金属管の中心軸が延びる方向で全周絞りカシメを施す位置の両側、のそれぞれに開ける、上記(3)又は(4)に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【0016】
(6)前記注入口を開ける工程では、前記金属管の中心軸が延びる方向で全周絞りカシメの近辺の、前記中心軸を間において相対向する金属管璧に各注入口を開ける、上記(3)又は(4)に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【0017】
(7)前記注入口を開ける工程では、前記金属管の中心軸が延びる方向の所定間隔の穴開け各個所において金属管の中心軸に指向する複数の注入口を開け、前記接着剤を局所注入する工程では、前記複数の注入口を通して金属管内に同時に接着剤を注入する、上記(3)又は(4)に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【0018】
(8)前記注入口を開ける工程では、前記注入口は、前記金属管の中心軸が延びる方向で全周絞りカシメを施す位置の両側のそれぞれで前記中心軸を間において相対向する金属管璧に各注入口を開け、前記接着剤を局所注入する工程では、全周絞りカシメの両側の前記金属管の中心軸を間において相対向する金属管璧に開けられた各注入口を通して同時に金属管内に接着剤を注入する、上記(3)又は(4)に記載の光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【0019】
(9)上記(3)又は(4)に記載の各工程で製造された光ファイバ歪みセンサを、螺旋形状に固定する工程、を含む光ファイバ歪みセンサの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
光ファイバが全周絞りカシメによって強く拘束されるのに加えてさらに接着剤で外皮管に固定されるので、光ファイバ歪みセンサとして直線状に布設した場合でも長手方向の測定限界近辺の歪みを精度良く測定することができる。
【0021】
さらに、光ファイバ歪みセンサを螺旋形にすることにより歪みの測定範囲を大幅に拡大することができる。
【0022】
本発明は、歪み検出の限界値が引き上がることにより、また精度が高いことからワイヤなどの張力付与物の伸び検知、地滑り、岩盤崩落などの地表調査、建造物の崩壊の予知等に使用できる。地滑りでは滑動の直前、張力付与物に関しては切れる寸前まで測定可能である。本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例の光ファイバ歪みセンサの縦断面図である。
【
図2】機械変位に対する光学歪みの結果を本発明一実施例と比較例とを比較して示すグラフである。
【
図3】本発明の螺旋形に成形加工した光ファイバ歪みセンサを示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【
図4】本発明の光ファイバ歪みセンサを製造する製造設備の全体概要を示すブロック図である。
【
図5】本発明の光ファイバ歪みセンサを製造するもう一つの製造設備の全体概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に、本発明の1実施例である直線形の光ファイバ歪みセンサの拡大縦断面図を示す。外皮管として、耐環境性、温度特性を考慮して金属管2が用いられる。外皮管として用いられた金属管2の材料としては、ステンレス鋼、ニッケル基合金、銅、チタン、アルミニウム等が用いられる。その使い分けとしては、通常の大気中での使用にはステンレス鋼外皮管を用い、例えば火山付近の土中に埋め込む場合などの耐塩素、耐硫化水素又は耐電蝕性が必要とされる雰囲気中ではニッケル基合金管を用いる。海水に曝される環境、例えば海底ケーブルや護岸ブロックのような環境における長期間の使用にはチタン管、その他、被測定物の材質に合わせる必要がある場合にはアルミニウム管や銅管を外皮管に用いることもある。
【0025】
金属管2の内部には、コア5、クラッド4からなる裸光ファイバを樹脂被覆3により覆った光ファイバ心線Fがある。該光ファイバ心線Fは所定の張力を持たせて金属管2に全周絞りカシメ1により固定されている。全周絞りカシメ1は任意の間隔Aを設けて製作され、全周絞りカシメ1以外では金属管2内に空隙6が存在する。
【0026】
図1に示す如く、カシメ1を丸形の全周絞りカシメにすることにより、光ファイバ心線Fに付与張力が逃げる滑り現象を与えないように固定することができ、カシメ1が金属管2の外径よりも外側に張り出すことが無くなったので敷設時などにカシメ1が開く可能性をなくすることができる。全周絞りカシメによって光ファイバ心線Fの樹脂被覆3に全周絞りカシメ部の金属管2がくい込む深さは、両者の滑りの発生を止め、かつカシメ力による光ファイバへの影響がないことを考慮して0.15mm~0.25mmが好ましい。このくい込みの深さは、樹脂被覆3の材質、物性値によって異なるが通常の樹脂被覆の場合は0.2mm(半径方向)であれば、金属管2と光ファイバ心線Fとの滑りを止めることができる。
【0027】
本発明の直線形光ファイバ歪みセンサの原理は、入射したパルス光の後方散乱光の内、ブリルアン散乱光の距離毎におけるピークの位置からひずみ量を検出する。ひずみは493[MHz/%]としてひずみ量は算出される。また測定器から出力される光学ひずみの値は(被測定物の動き)=(センサの動き)となるので機械的な歪みと1対1で出力される。
【0028】
金属管2の軸心が延びる方向で全周絞りカシメ1の両側には、カシメ1を中間点とする短距離φの間隔で、2組の接着剤注入口2hが開けられている。各組2hは、金属管2を横断方向に貫通し金属管2軸心に直交する貫通軸上にある1対の穴、すなわち、全周絞りカシメ1の両側の金属管の中心軸を間において相対向する金属管璧に開けられた注入口であり、レーザ加工又はドリルで一気に開けられたものである。
図1に示す例では接着剤7は、熱硬化性樹脂であってカシメ1を中間点とする短距離φの間隔で分布する2組、合計4個の注入口2hから同時に金属管2内に注入されて後、硬化したものであって光ファイバ心線Fを周方向に取り囲み、しかもカシメ1の両側近辺に分布する。
【0029】
表1には、本発明の実施例1である直線形光ファイバ歪みセンサと比較例の、引張り試験の結果を示す。表1上において、「接着剤+全周絞りカシメ(%)」と表記したデータが、実施例1に引張り試験機で機械変位(%)を与えたときの光学変位(%)を示し、「全周絞りカシメ(%)」と表記したデータが比較例の、実施例1と同様に機械変位(%)を与えたときの光学変位(%)を示す。
図2には表1のデータ分布をグラフで示す。
【0030】
【0031】
なお、実施例1および比較例の光ファイバ心線Fおよび金属管2の仕様は同一で、光ファイバ心線Fは、コア5の外径0.125mm、樹脂被覆3は外径(直径)0.9mmのナイロン樹脂であるSM心線であり、金属管2は、外径(直径)2.0mm、内径(直径)1.6mmのステンレスSUS304であり、全周絞りカシメ1のカシメ間隔A:1m、カシメ内径:0.7mm、付与張力:210N、初期歪み:0.1%である。
【0032】
実施例1の接着材注入口2hは直径0.4~0.7mmで、カシメ1の両側となる位置にドリルで開けたものである。もちろんレーザ加工で開けてもよい。接着剤7は、二液混合した熱硬化性接着剤353NDをシリンジで注入したものである。熱硬化性接着剤353NDは株式会社 理経が販売する、光ファイバとフエルールとの固定に用いられる公知の2液性熱硬化型接着剤である。接着剤7としてはこの他に、エポキシ樹脂系接着剤(主剤:エポキシ樹脂,硬化剤:変性ポリアミン、変性ポリアミド,その他:硬化促進剤、充填剤)、エポキシ変性シリコーン樹脂系接着剤(主成分:変性シリコーン樹脂・アミン系,硬化剤:エポキシ樹脂,その他:充填剤)、シリル化ウレタン樹脂系接着剤(主成分:シリル化ウレタン樹脂,その他:充填剤、可塑剤、シランカップリング剤)、も用いることができる。
【0033】
つぎに、本発明の実施例2である螺旋形光ファイバ歪みセンサについて、
図3を用いて説明する。
図3に示す螺旋形光ファイバ歪みセンサは、光ファイバ心線Fが所定の張力を持たせた全周絞りカシメ1と接着剤7により
図1の如く金属管2に固定されている直線形光ファイバ歪みセンサを、径D、ピッチdに螺旋状に成形加工したものである。実施例2の螺旋形光ファイバ歪みセンサの螺旋径D=50mm、金属管2の螺旋ピッチd=40mm、螺旋巻数30である。
【0034】
螺旋の径Dを大きく、ピッチdを小さくしていくと測定限界は大きくすることはできるが、その分精度が低くなる。反対に螺旋の径Dを小さく、ピッチdを大きくしていくと測定限界は小さくなるが測定結果の精度は上げることができる。また、螺旋の径Dはあまり小さくすると今度は光ファイバ自身に曲げに依る損失が出てしまうので大きく取る方が望ましい。使い勝手を考えると螺旋の径Dは約30mm~80mmが好ましい。
【0035】
実施例2を用いて機械変位が0.1~40%の鉛直方向(螺旋進行方向)に対する伸びの歪み測定試験を実施した。その結果、機械変位が25%程度まで、ほぼ理論値に整合する値を示した。実施例2の螺旋形光ファイバ歪みセンサにおいて、長手方向の測定限界は、歪みセンサを螺旋形にすることで光ファイバ心線Fにかかる長手方向の変位を小さくすることができるため、実歪みの測定限界を直線形光ファイバ歪みセンサ(
図1)に対して最大で4桁ほど拡大することができる。すなわち、外皮管である金属管2中の光ファイバ心線Fが螺旋の径Dの内側に逃げることによる付与張力の低下を考慮に入れ、直線状の歪みセンサより高い付与張力を印加した直線形光ファイバ歪みセンサを螺旋形に成形加工したものである。螺旋の径Dやピッチdを変えることにより実際の歪みで5~1000%の変形を、光学歪みが約2.7%伸びるまでの変形で受けることができる。
【0036】
実歪み%と光学歪み%との換算は、次に示す補正式(1)、(2)を用いた計算により行う。歪みセンサの全長:L、螺旋の巻き数:n、螺旋のピッチ:d、螺旋の半径:D/2とすると、各変数の関係は、
L=n・{(Dπ)2+d2}1/2 …(1)
で表される。螺旋歪みセンサの全長はd×nで表され、Dを定数と仮定すれば、nは定数なので
dn={L2-(Dπn)2}1/2 …(2)
となり、螺旋センサの全長Lの関数になる。
【0037】
実歪みが印加されたときの螺旋歪みセンサの全長d’nは、基準の歪みセンサの全長Lを1とした値に光学歪み%の差分値εを足し、L’=(1+ε)Lとして(2)式に代入して求める。
【0038】
次に本発明の光ファイバ歪みセンサの製造工程を
図4を用いて説明する。造管設備60で管体に成型された金属管2は直線状で穴開け装置8に送込まれる。穴開け装置8には金属管搬送ラインに沿って複数台のドリルが配置されており、1台又は数台のドリルが実際の穴開けに用いられる。各ドリルは3次元移動台で支持されており、穴開けに指定されたドリルが搬送ライン上の金属管2に位置合わされて、金属管2の軸心に直交する横断方向(上下方向)に貫通する穴すなわち相対向する金属管璧にそれぞれが開けられた2個の接着剤注入口2hを開け、それから金属管2が搬送ライン上をφだけ進んだ位置に同様に1対の接着剤注入口2hを開け、それから金属管2が搬送ライン上をA-φだけ進んだ位置に同様に1対の接着剤注入口2hを開け、このような穴開けを繰返す。
【0039】
穴開け装置8が繰り出す接着剤注入口2hを開けた金属管2は、ダンサーロール(キャプスタン9およびプリテンション付加ロール10で弛み除去および張力調整され、巻き取り装置11によって巻取りドラム12に巻き取られる。接着剤注入口2hが開けられた金属管2を巻き取ったドラム12は、振動充填装置15に搬送されて、振動充填台に装着される。
【0040】
振動充填装置15は、特開昭62-44010号公報によって開示した振動挿通方法によって、振動充填台に装着された巻取りドラムの穴開き金属管2に、繰り出しドラム14に巻回された光ファイバ心線Fを繰り出して挿入する。すなわち、光ファイバ心線Fを金属管2に振動を与えながら金属管2に振動挿通する。振動充填装置15が光ファイバ心線Fを挿入した金属管2すなわち金属管入り光ファイバGを巻き取ったドラムは、接着剤注入設備に搬送されそこで金属管入り光ファイバGがドラムから繰り出されて矯正ロール22で直線状に矯正されて接着剤注入装置16に送り込まれ、そこからダンサーロール(キャプスタン)17およびプリテンション付加ロール18で引き取られて恒温装置19を通って全周カシメ装置29に送り込まれる。
【0041】
接着剤注入装置16には、金属管搬送ラインに沿って複数組の接着剤注入シリンジが配置されており、1対又は数対のシリンジが実際の接着剤注入に用いられる。1対のシリンジは、搬送ライン上の金属管入り光ファイバGの上方および下方から下向きおよび上向きの接着剤注入姿勢で3次元移動台で支持されており、接着剤注入に指定された1対が搬送ライン上の金属管2の接着剤注入口2hに位置合わされて、接着剤7を注入口2hを通して金属管2内に注入し、それから金属管2が搬送ライン上をφだけ進んだ位置の注入口2hを通して金属管2内に接着剤7を注入し、それから金属管2が搬送ライン上をA-φだけ進んだ位置の注入口2hを通して金属管2内に接着剤7を注入し、このような接着剤注入を繰返す。接着剤が注入された光ファイバGは、ダンサーロール(キャプスタン)17およびプリテンション付加ロール18で引き取られて恒温装置19に入り、接着剤注入から約1時間遅れで恒温装置19から全周カシメ装置29に至る。この間光ファイバGは一定速度で移動しているが、恒温装置19内を移動している時間が長い。約1時間の時間遅れは、金属管2内に注入した接着剤7の硬化を待つ時間であるが、完全に硬化するまでの時間よりは短く、管内の接着剤7に、下流の全周絞りカシメ工程での所定の張力付与と全周カシメによる光ファイバFと金属管2の軸心合せを阻害しない程度の可撓性(流動性)がある時間である。
【0042】
全周カシメ装置29は、光ファイバFの余長を特開昭63-187209号公報に開示されている方法によってマイナス0.1%に調整して付与した後、所定間隔Aで金属管2を全周絞りカシメ1により、光ファイバFを金属管2の内壁に固定して光ファイバFには所定の歪みを生じる張力を付与する。その後、ダンサーロール27およびプリテンション付加用ロール26を経由して張力を解放して
図1に示す直線形光ファイバ歪みセンサを得る。ここまでの工程が、
図1に示す実施例1の直線形光ファイバセンサの製造工程である。直線形光ファイバセンサ(
図1)を製品として出荷する態様では、全周カシメを終えプリテンション付加用ロール26およびダンサーロール27を経由した光ファイバGを巻き取りドラムに巻き取る。
【0043】
実施例2の螺旋形光ファイバ歪みセンサは、
図4に示すように、ダンサーロール27およびプリテンション付加用ロール26を経ると、樹脂塗布装置23を経て、順次螺旋成形装置49、加熱装置38、冷却装置43を経て巻取りドラム45にて巻き取られる。この行程において、直線光ファイバ歪みセンサを製造する場合は、螺旋成形装置49を外し、被覆も不必要であれば樹脂塗布装置23、加熱装置38、冷却装置43も外す。この製造工程は、各行程の駆動装置に結線された制御ケーブル48によって主制御装置47に接続されている。なお、
図4中の参照符号21は金属管光ファイバ繰出し装置であり、46は光ファイバ歪みセンサ巻取り装置である。
【0044】
次に、製造工程の作動状況とともに製造例を説明する。 金属管の中に通常の樹脂被覆を有する石英系シングルモード光ファイバを挿通した金属管入り光ファイバGをドラム20から巻き戻し、矯正ロール22で金属管入り光ファイバGの曲がり癖を直して直線状にして接着剤注入装置16に送り込みそこで光ファイバGの搬送を間歇的に止めて光ファイバG内に注入口2hを通して接着剤を注入し、その一時的な移動の停止がその後の工程の停止等による影響をさせないための制御をダンサーロール17にて制御する。そしてダンサーロール17およびプリテンション付加ロール18を経由し恒温装置19を経てカシメ付与装置29でカシメる。全周絞りカシメを付与する際にも、金属管光ファイバGの動きが間歇的に止まる。その一時的な移動の停止がその後の工程の停止等による影響をさせないための制御をダンサーロール27にて制御する。
【0045】
全周絞りカシメを付与する時点では、光ファイバに各絞りカシメ間における張力を予め付与するためにプリテンション付加用ロール26を調整して適正な設定値まで金属管に張力を与えて金属管入り光ファイバGの金属管を伸ばす。次いで、それに樹脂塗布装置23で樹脂被覆を付け、成形ロール24で形を整える。その後、螺旋成形装置49で螺旋構造に成形加工し、加熱装置38でアニールすることにより被覆の樹脂の内部応力を取り除き、冷却装置43で冷却して螺旋形光ファイバ歪みセンサが製造され、巻取りドラム45に巻き取られる。ドラム45に巻き取らず、所定の長さに切断する、あるいは回転するドラム缶に落下させて積層することもできる。
図4に示す製造設備のそれぞれの装置はその機能に応じてブロックに分かれており、ブロック毎に自由かつ容易に組み替えが可能なモジュール方式を採用している。
【0046】
図5には、本発明の光ファイバ歪みセンサを製造するもう一つの製造設備の全体概要を示す。この製造設備は、金属管2に全周絞りカシメで光ファイバ心線Fを固定してから、金属管2の注入口2h内に接着剤を注入するものである。注入口2hが開けられ振動充填装置15で光ファイバFが挿入された光ファイバGを巻き取ったドラム20から、光ファイバGが繰り出されて矯正ロール22で直線状に矯正されて全周カシメ装置29に送り込まれる。全周カシメ装置29は、光ファイバFの余長を特開昭63-187209号公報に開示されている方法によってマイナス0.1%に調整して付与した後、所定間隔Aで金属管2を全周絞りカシメ1により、光ファイバFを金属管2の内壁に固定して光ファイバFには所定の歪みを生じる張力を付与する。全周絞りカシメ1の後にはダンサーロール27およびプリテンション付加用ロール26を経由して張力を解放する。その後、接着剤注入装置16で金属管2内に接着剤を注入し、ダンサーロール17およびプリテンション付加用ロール18を経由して恒温装置19を通過し、
図1に示す直線形光ファイバ歪みセンサを得る。ここまでの工程が、
図1に示す実施例1の直線形光ファイバセンサの製造工程である。直線形光ファイバセンサ(
図1)を製品として出荷する態様では、恒温装置19を通過した光ファイバGを巻き取りドラムに巻き取る。
【0047】
実施例2の螺旋形光ファイバ歪みセンサは、
図5に示すように、ダンサーロール17およびプリテンション付加用ロール18を経ると、樹脂塗布装置23を経て、順次螺旋成形装置49、加熱装置38、冷却装置43を経て巻取りドラム45にて巻き取られる。この行程において、直線光ファイバ歪みセンサを製造する場合は、螺旋成形装置49を外し、被覆も不必要であれば樹脂塗布装置23、加熱装置38、冷却装置43も外す。この製造工程は、各行程の駆動装置に結線された制御ケーブル48によって主制御装置47に接続されている。
【符号の説明】
【0048】
L:カシメ間隔
δ:カシメ長さ。
F:光ファイバ心線
G:金属管入り光ファイバ
H:光ファイバ歪みセンサ
d:螺旋ピッチ
D:螺旋径
1:全周絞りカシメ
2:外皮管である金属管
2h:接着剤注入口
3:樹脂被覆
4:クラッド
5:コア
6:空隙
7:接着剤
9:ダンサーロール(キャプスタン)
10:プリテンション付加用ロール
11:金属管巻き取り装置
12:巻き取りドラム
13:光ファイバ繰出し装置
14:光ファイバ繰出しドラム
17:ダンサーロール(キャプスタン)
18:プリテンション付加用ロール
20:金属管光ファイバ繰出しドラム
21:金属管光ファイバ繰出し装置
22:矯正ロール
23:樹脂塗布装置
24:成形ロール
26:プリテンション付加用ロール
27:ダンサーロール(キャプスタン)
28:ガイドロール
45:光ファイバ歪みセンサ巻取りドラム
46:光ファイバ歪みセンサ巻取り装置
47:主制御装置
48:制御ケーブル