(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】ジオポリマー硬化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20220218BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20220218BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20220218BHJP
C04B 22/16 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C04B22/16 A
(21)【出願番号】P 2018150197
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小林 可奈
(72)【発明者】
【氏名】小川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】野田 泰史
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕司
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-168640(JP,A)
【文献】特開2013-035884(JP,A)
【文献】特開2013-001580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)成分および水を含むジオポリマー組成物を調製し、前記ジオポリマー組成物を硬化させる、ジオポリマー硬化体の製造方法。
(A)成分:フライアッシュ、
(B)成分:高炉スラグ微粉末、
(C)成分:水ガラスを含有するアルカリ溶液、
(D)成分:骨材、
(E)成分:
リン酸二水素ナトリウム又はリン酸二水素ナトリウム水和物である、正リン酸塩。
【請求項2】
前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(D)成分の混合物に、前記(C)成分、及び前記(E)成分の水溶液を添加して前記ジオポリマー組成物を調製する、請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項3】
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(D)成分、及び前記(E)成分の混合物に、前記(C)成分、及び水を添加して前記ジオポリマー組成物を調製する、請求項1に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項4】
前記(E)成分の配合量が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して、無水物換算で0.3~1.8質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【請求項5】
施工現場で前記ジオポリマー組成物を調製し、施工部位に前記ジオポリマー組成物を流し込み硬化させる、請求項1~4のいずれか一項に記載のジオポリマー硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の問題から、各種材料として、できるだけ二酸化炭素の排出量が少ないものが選択されるようになってきている。現在、コンクリートの材料として、石灰石を主原料とするポルトランドセメントが大量に製造されているが、製造時の焼成工程において酸化カルシウムに分解され二酸化炭素を排出する。このため、ポルトランドセメントを使用せずにコンクリートを製造する技術として、ジオポリマー法が注目されている。
【0003】
ジオポリマー法は、ケイ酸の縮重合体をバインダとして利用し、粉末同士を接合して人工の岩石を製造する技術である。このジオポリマー法により形成されるジオポリマー硬化体は、アルミノシリケート源であるフィラーとアルカリ溶液を用いて製造され、これらは、従来のセメントと水に相当する。フィラーとしては、カオリンや粘土等の天然物のほか、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ、もみ殻灰等も利用することが可能である。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと水ガラス(ケイ酸ナトリウム、Na2SiO3)またはケイ酸カリウム(K2SiO3)の化合物の水溶液が用いられる。
【0004】
しかし、アルカリ溶液がナトリウム化合物を含む場合には、急速に硬化が進むため流動性保持時間が短いという問題がある。流動性保持時間が短いと、作業工程の制約が大きく、工場内での製造は可能であっても、施工現場での打設(現場打設)は困難である。
特許文献1には、ジオポリマー硬化体を作製する際に、硬化を遅延させる遅延剤として、カルボン酸塩、グルコン酸塩等のキレート剤、酸、又は糖類を添加する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フライアッシュは、石炭火力発電所などで石炭燃焼の際に副生する石炭灰のうち、集塵器で排ガス中から回収される微細な灰である。高炉スラグは銑鉄製造工程で発生する副生物である。ジオポリマー法においてこれらを使用すると、二酸化炭素消費量の削減に加え産業廃棄物を再利用できるという利点がある。
しかし、本発明者らの知見によれば、フライアッシュと、高炉スラグと、骨材と、水酸化ナトリウム及び水ガラスを含むアルカリ溶液とを含むジオポリマー組成物に、特許文献1に記載されている遅延剤を含有させても流動性保持時間の延長効果は不充分であり、現場打設に適用することは難しい。
本発明は、ジオポリマー組成物の流動性保持時間を充分に延長できる、ジオポリマー硬化体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 下記(A)~(E)成分および水を含むジオポリマー組成物を調製し、前記ジオポリマー組成物を硬化させる、ジオポリマー硬化体の製造方法。
(A)成分:フライアッシュ、
(B)成分:高炉スラグ微粉末、
(C)成分:水ガラスを含有するアルカリ溶液、
(D)成分:骨材、
(E)成分:正リン酸塩。
[2] 前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(D)成分の混合物に、前記(C)成分、及び前記(E)成分の水溶液を添加して前記ジオポリマー組成物を調製する、[1]のジオポリマー硬化体の製造方法。
[3] 前記(A)成分、前記(B)成分、前記(D)成分、及び前記(E)成分の混合物に、前記(C)成分、及び水を添加して前記ジオポリマー組成物を調製する、[1]のジオポリマー硬化体の製造方法。
[4] 前記(E)成分がリン酸二水素ナトリウムを含む、[1]~[3]のいずれかのジオポリマー硬化体の製造方法。
[5] 施工現場で前記ジオポリマー組成物を調製し、施工部位に前記ジオポリマー組成物を流し込み硬化させる、[1]~[4]のいずれかのジオポリマー硬化体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のジオポリマー硬化体の製造方法によれば、フライアッシュと、高炉スラグ微粉末と、骨材と、水酸化ナトリウム及び水ガラスを含むアルカリ溶液とを含むジオポリマー組成物の流動性保持時間を充分に延長できる。例えば現場打設が可能となる程度に、流動性保持時間を延長できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態は、(A)~(E)成分および水を含むジオポリマー組成物を硬化させてジオポリマー硬化体(以下、単に「硬化体」ともいう。)を製造する方法である。
ジオポリマー硬化体はジオポリマー組成物の硬化物である。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分はフライアッシュである。(A)成分は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
JIS A6201(2015年)に規定する「フライアッシュI種(以下、「JIS(I)種」ともいう。)」、「フライアッシュII種(以下、「JIS(II)種」ともいう。)」が好ましい。
(A)成分の密度は1.90g/cm3以上が好ましく、1.95g/cm3以上がより好ましい。
本明細書において、粉体の密度の測定方法は、JIS R5201(2015年)の7.(密度試験)である。
【0011】
<(B)成分>
(B)成分は高炉スラグ微粉末である。(B)成分はケイ酸の縮重合に必要な多価金属イオンを溶出し硬化を促進し、硬化体の強度向上に寄与する。(B)成分は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
JIS A6206(2013年)に規定する「高炉スラグ微粉末3000」、「高炉スラグ微粉末4000」、「高炉スラグ微粉末6000」、「高炉スラグ微粉末8000」が好ましい。
(B)成分の密度は2.75g/cm3以上が好ましく、2.80g/cm3以上がより好ましい。
【0012】
(A)成分及び(B)成分はアルミノシリケート源である。ジオポリマー組成物の1m3に対して(A)成分と(B)成分の合計の配合量は、600kg/m3以下が好ましく、550kg/m3以下がより好ましい。上記上限値以下であると充分な強度が得られる。
ジオポリマー組成物の1m3に対して(A)成分と(B)成分の合計の配合量の下限値は、硬化が充分に進行しやすい点で、450kg/m3以上が好ましい。
(A)成分と(B)成分の配合割合は得ようとする硬化体の圧縮強度に応じて適宜設定できる。例えば(A)成分と(B)成分の合計100質量部のうち、(B)成分が10~50質量部が好ましく、20~50質量部がより好ましい。
(B)成分割合が上記範囲の下限値以上であると硬化体の良好な強度が得られやすく、上限値以下であると充分な流動性保持時間が得られやすい。
【0013】
<(C)成分>
(C)成分は水ガラスを含有するアルカリ溶液である。
(C)成分は水酸化ナトリウムと水ガラスを含有してもよい。水酸化ナトリウム:水ガラスの体積比は0:100~20:80が好ましく、5:95~10:90がより好ましい。水ガラスの比率が上記範囲の下限値以上であると充分な硬化強度が得られやすい。水酸化ナトリウムの比率が上記範囲の下限値以上であると充分な流動性保持時間が得られやすい。
(C)成分は、JIS K1408(1966年)に規定する3号ケイ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合物、またはJIS K1408(1966年)に規定する2号ケイ酸ナトリウムを含むことが好ましい。
(C)成分の密度は1.1~1.5g/cm3が好ましく、1.3~1.5g/cm3がより好ましい。
(C)成分の密度は15℃における値である。
【0014】
(C)成分は水酸化ナトリウム及び水ガラス以外のその他のアルカリ成分を含有してもよい。その他のアルカリ成分としては、例えば水酸化カリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。
(C)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して55~75質量部が好ましい。
【0015】
<(D)成分>
(D)成分は骨材である。(D)成分は硬化体の強度向上に寄与する。(D)成分は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
骨材として、モルタルやコンクリートを製造する際に一般に用いられる砂、砂利、砕石等を使用できる。ジオポリマー組成物中の金属イオンは硬化を促進すると考えられるため、骨材は金属イオンの溶出量が多くないものが好ましい。
(D)成分の密度は2.0g/cm3以上が好ましく、2.5g/cm3以上がより好ましい。
(D)成分の配合量は、ジオポリマー組成物の1m3に対して、1600kg/m3以下が好ましく、1500kg/m3以下がより好ましい。上記上限値以下であると、充分に混合できる。
(D)成分の配合量の下限値は、硬化体の良好な強度が得られやすい点で、ジオポリマー組成物の1m3に対して、800kg/m3以上が好ましい。
【0016】
<(E)成分>
(E)成分は正リン酸塩である。(E)成分は、ジオポリマー組成物の硬化遅延に寄与する。(E)成分は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
正リン酸塩は、H3PO4で表されるリン酸の水素原子の1個~3個が金属イオンに置き換わった塩である。具体的には、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウムおよびこれらの水和物が挙げられる。これらのうち、水への溶解性及び流動性保持時間の延長効果の点から、リン酸二水素ナトリウムの水和物が特に好ましい。
リン酸二水素ナトリウム二水和物は、リン酸に等量の水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムの水溶液を加え、pH4.4~4.6に調整した溶液を蒸発濃縮すると、41℃以下で二水塩が析出する。
リン酸三ナトリウム十二水和物は、リン酸に過剰の水酸化ナトリウムを加えたものを蒸発濃縮すると、常温で十二水塩が晶出する。
【0017】
(E)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、無水物換算で0.3~1.8質量部が好ましく、0.5~1.5質量部がより好ましい。
(E)成分の配合量が上記範囲の下限値以上であると充分な硬化遅延効果が得られやすい、上限値以下であると硬化体の強度低下が生じ難い。
なお、本明細書における(E)成分の配合量は、「無水物換算で」という記載が無い場合は水和水を含む配合量である。
【0018】
(E)成分を水溶液として添加するとより高い硬化遅延効果が得られる。水溶液の総質量に対して、水が60~95質量%であることが好ましく、60~85質量%がより好ましい。
水の量が上記範囲の下限値以上であると、ジオポリマー組成物を調製する工程で正リン酸塩が析出し難く、充分な硬化遅延効果が得られやすい。上限値以下であると、硬化体の強度低下が生じ難い。
【0019】
<水>
(E)成分を粉体として添加する場合、(A)~(E)成分のほかに水を配合する。この場合の水の配合量は、(E)成分と水の合計質量に対して、60~95質量%が好ましく、60~85質量%がより好ましい。
水の配合量が上記範囲の下限値以上であると、ジオポリマー組成物を調製する工程で正リン酸塩が析出し難く、充分な硬化遅延効果が得られやすい。上限値以下であると、硬化体の強度低下が生じ難い。
【0020】
<任意成分>
ジオポリマー組成物は、(A)~(E)成分及び水以外の任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。任意成分はコンクリートの分野で公知の原料を適宜用いることができる。
任意成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1.8質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。ゼロでもよい。
【0021】
本実施形態のジオポリマー組成物は、(A)~(E)成分及び水を含み、ジオポリマー組成物の1m3に対して(A)成分と(B)成分の合計の配合量が600kg/m3以下であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(B)成分が10~50質量部、(C)成分が55~75質量部、(D)成分が1600kg/m3以下、かつ(E)成分が無水物換算で0.3~1.8質量部であり、(E)成分と水の合計質量に対して、水が60~95質量%であることが好ましい。
ジオポリマー組成物の1m3に対する(A)~(E)成分及び水の配合量の体積の合計は1m3を超えない。
【0022】
<ジオポリマー硬化体の製造方法>
(A)~(E)成分および水を含む全原料を撹拌混合してジオポリマー組成物を調製し、前記ジオポリマー組成物を硬化させてジオポリマー硬化体を得る。
原料の撹拌混合はバッチ式又は連続式の各種ミキサーを用いて実施できる。混練後、得られたジオポリマー組成物を所望の形状に成形し、養生して硬化させる。
例えば現場打設を行う場合は、全原料を混錬してジオポリマー組成物を調製した後、速やかにジオポリマー組成物を施工部位に流し込み、養生して硬化させる。予め、施工部位に型枠を設け、硬化後に脱型してもよい。
また、工場内で所定形状の硬化体製品を製造する場合には、ジオポリマー組成物を型枠に流し込み、養生して硬化させた後に脱型する。
養生は、常温養生あるいは蒸気養生により行うことができる。蒸気養生には、一定の温度かつ一定の湿度に保持するための恒温恒湿装置が用いられる。現場打設を行う場合は常温養生が好ましい。
【0023】
全原料を撹拌混合してジオポリマー組成物を調製する工程は、下記の第1の態様又は第2の態様の方法で行うことが好ましい。
[第1の態様]
本態様は(E)成分を水溶液として添加する態様である。
予め、(E)成分と水を含む水溶液を調製する。これとは別に(A)成分と(B)成分と(D)成分を含む粉体原料を撹拌混合し、粉体混合物を得る。この粉体混合物に前記水溶液および(C)成分を添加し混練してジオポリマー組成物を得る。
【0024】
[第2の態様]
本態様は(E)成分を粉体として添加する態様である。
(A)成分と(B)成分と(D)成分と(E)成分を含む粉体原料を撹拌混合し、粉体混合物を得る。この粉体混合物に(C)成分と水を添加し混練してジオポリマー組成物を得る。
【0025】
本実施形態のジオポリマー硬化体の製造方法によれば、ジオポリマー組成物の流動性保持時間を延長できるため、土木・建築分野における現場打設や二次製品工場において十分な流動性保持時間を確保することができ、施工性及び作業性を改善することができる。
例えばコンクリートの施工現場でジオポリマー硬化体を打設するためには、ジオポリマーの全原料を混合したジオポリマー組成物が、30分以上、好ましくは45分以上、流動性を保持していることが必要とされる。
本実施形態によれば、後述の実施例に示されるように、30分以上の流動性保持時間を得ることができ、ジオポリマー硬化体の現場打設が可能となる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0027】
(使用原料)
<(A)成分>
A-1:フライアッシュ、九州電力社品、JIS(II)種、密度2.32g/cm3。
A-2:フライアッシュ、九州電力社品、JIS(II)種、密度2.34g/cm3。
<(B)成分>
B-1:高炉スラグ微粉末、日鉄住金高炉セメント社品、エスメント(商品名)、密度2.91g/cm3。
B-2:高炉スラグ微粉末、日鉄住金高炉セメント社品、エスメント(商品名)、密度2.90g/cm3。
<(C)成分>
C-1:2号ケイ酸ナトリウム(JIS K1408(1966年))、密度1.40g/cm3。
<(D)成分>
D-1:標準砂、一般社団法人セメント協会品、密度2.64g/cm3。
D-2:ケイ砂(絶乾状態)、中国産、密度2.60g/cm3。
<(E)成分>
E-1:リン酸二水素ナトリウム二水和物、純正化学社品、試薬、密度1.915g/cm3。
E-2:リン酸三ナトリウム十二水和物、純正化学社品、試薬、密度1.62g/cm3。
<水>
水道水。
<比較成分(遅延剤)>
GNa:グルコン酸ナトリウム:昭和化学社品、試薬。
Glu:(+)-グルコース:関東化学社品、試薬。
CiA:クエン酸:和光純薬工業社品、試薬。
【0028】
<練り混ぜ方法(1)>
本方法では(E)成分(又は比較成分)を水溶液として添加した。
予め、(E)成分(又は比較成分)と水を混合して混和剤水溶液を調製した。(A)成分、(B)成分及び(D)成分を30秒間撹拌した後、前記混和剤水溶液及び(C)成分を添加して120秒間撹拌することにより、全原料を混錬したジオポリマー組成物を得た。
なお、表中、空欄はその成分が配合されていないことを意味する。表に示す(E)成分の配合量は水和水を含む。
【0029】
<練り混ぜ方法(2)>
本方法では、(E)成分(又は比較成分)を水溶液とせずに、粉体の状態で添加した。
(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分(又は比較成分)を30秒間撹拌した後、(C)成分及び水を添加して120秒間撹拌することにより、全原料を混錬したジオポリマー組成物を得た。
【0030】
(実施例1、2、4)
実施例1は参考例である。
表1に示す配合で、前記練り混ぜ方法(1)によりジオポリマー組成物を調製し、下記の方法で、流動性保持時間を評価した。評価結果を表1に示す(以下、同様)。
(実施例3)
表1に示す配合で、前記練り混ぜ方法(2)によりジオポリマー組成物を調製した。
(比較例1)
本例は、実施例1、2において(E)成分を配合せず、その代わりに水を増量した例である。すなわち、表1に示す配合で、前記練り混ぜ方法(1)によりジオポリマー組成物を調製した。
(比較例2~4)
本例は、実施例1、2において(E)成分を配合せず、その代わりに公知の遅延剤(比較成分)を配合した例である。すなわち、表1に示す配合で、前記練り混ぜ方法(1)によりジオポリマー組成物を調製した。
(比較例5)
本例は、実施例4において(E)成分を配合せず、その代わりに水を増量した例である。すなわち、表1に示す配合で、前記練り混ぜ方法(1)によりジオポリマー組成物を調製した。
【0031】
<流動性保持時間の評価方法(テーブルフロー試験)>
JIS R5201(2015年)に規定されるフロー試験を混練直後から15分おきに行って測定したテーブルフロー値に基づいて流動性保持時間を評価した。ただし、前記フロー試験において、後述するように、フローコーンを取り去ってから落下運動を加えるまでに30秒の静置時間を設けた。
試験は概略下記の手順で行った。測定対象のジオポリマー組成物を、フローテーブル上の中央に置いたフローコーンに詰めて表面を均した。直ちにフローコーンを垂直方向に取り去り、30秒間静置した後、15秒間に15回の落下運動を与え、広がったジオポリマー組成物の径を、最大と認める方向とこれに直角な方向とで1mmの単位まで測定し、それらの平均値をミリメートル単位で表したものをテーブルフロー値とした。
混練直後、混練終了からの経過時間が15分、30分、45分、及び60分のジオポリマー組成物について、それぞれ上記の方法でテーブルフロー値を測定した。テーブルフロー値が100mm以下の値(表には「100」と記載する)となった測定時の、1回前の測定時の経過時間を流動性保持時間(単位:分)とした。結果を表1に示す。
【0032】
【0033】
表1の結果より、比較例1に比べて、(E)成分を添加した実施例1、2はジオポリマー組成物の流動性保持時間が延長された。
比較例5に比べて、(E)成分を添加した実施例3、4はジオポリマー組成物の流動性保持時間が延長された。
(E)成分の代わりに比較成分を添加した比較例2~4は、ジオポリマー組成物の流動性保持時間が比較例1と同等であり、延長されなかった。