(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】薬剤注射デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20220218BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
A61M5/32 500
A61M5/28 530
(21)【出願番号】P 2018527128
(86)(22)【出願日】2016-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2016078265
(87)【国際公開番号】W WO2017089276
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-06
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・シャーダー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヴァルガ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0144633(US,A1)
【文献】特表2011-509755(JP,A)
【文献】特表2013-506462(JP,A)
【文献】特表2013-518642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤注射デバイスであって:
貫通可能バリアによって封止された薬剤カートリッジを受けるように構成された本体と、
針を保持するニードルホルダと、
該ニードルホルダの少なくとも一部分と針とのまわりに配置され、かつ該本体に対して軸方向に可動になるように配置されたニードルスリーブと;
ニードルホルダおよびニードルスリーブに連結され、本体に対し該デバイスの主軸に沿って軸方向に可動であるリテーナとを含み;
ここで、リテーナは、ニードルスリーブおよびリテーナが所定の距離だけ本体の近位端に向かって変位したときに、ニードルホルダおよび針が軸方向に本体の近位端に向かって変位しリテーナからデカップリングするようにニードルホルダに連結され;
ニードルスリーブは、該ニードルスリーブが近位方向に所定の距離を超えて軸方向に変位したときにニードルホルダから係合解除するように構成される、前記薬剤注射デバイス。
【請求項2】
ニードルホルダは、本体が受ける薬剤カートリッジとドッキングするように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第1の位置でニードルスリーブは、該ニードルスリーブの近位方向の軸方向運動によりリテーナ、ニードルホルダおよび針が近位方向に軸方向変位するようにリテーナに連結される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
ニードルホルダは、該ニードルホルダが所定の距離だけ変位した後に互いに摩擦嵌めを形成するように雄部材を有する薬剤カートリッジとドッキングするように配置された雌部材を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
ニードルホルダは、該ニードルホルダが薬剤カートリッジとドッキングした後にニードルホルダおよび針が薬剤カートリッジに対して軸方向に変位することを防止するように構成されたリップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
本体はスロット付き傾斜部を含み、リテーナは1つまたはそれ以上の径方向部材を含み、1つまたはそれ以上の径方向部材がスロット付き傾斜部の上を軸方向に動くことにより径方向部材の外向き径方向運動が生じ、それによってリテーナがニードルホルダから係合解除することになる、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
ニードルホルダは、リテーナが軸方向に所定の距離だけ近位方向に動くことに応答して屈曲しリテーナから係合解除するように構成された可撓性レバーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
リテーナは、所定の距離だけ軸方向に変位した後に2つの部材に分離するようにそれぞれ構成された1つまたはそれ以上の径方向部材を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
薬剤カートリッジを含み、ここで、針は、ニードルホルダ変位部材が所定の距離だけ近位方向に変位したときに薬剤カートリッジのバリアを貫通する、請求項1~8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
薬剤が含まれる薬剤カートリッジを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
自動注射デバイスである、請求項1~10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の薬剤注射デバイスの作動方法であって:
リテーナ
が近位軸方向に
変位し、それによってニードルホルダおよび針が、軸方向に本体の近位端に向かって変位しリテーナからデカップリングすることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤注射デバイスはさまざまな形態をとることができる。1つの形態ではシリンジを使用し、通常ではガラスで形成される中空シリンダに薬剤が収納される。薬剤は、シリンダの中で可動のプランジャと、シリンジの遠位端に流体連結された針とによって環境から封止される。針は、薬剤を滅菌状態のもとで保持するために、キャップを被せたままにしておかなければならない。
【0003】
注射デバイスの別の形態では、シリンジの代わりにカートリッジを使用し、このカートリッジには、シリンジの針の代わりの遠位封止がある。通常は、注射の前に患者が両頭針をカートリッジに連結し、それによって、カートリッジの封止が両頭針の近位先端部で穿孔される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カートリッジは、シリンジと比べて取り扱いおよび収納を有利にすることができるが、欠点がないわけではない。たとえば、針をカートリッジに取り付けるには追加の段階が必要である。この段階は、器用さが限られていたり、協調が不十分であったり、または手の感覚をある程度失っている患者にとって問題になり得る。このような短所があっても、特定の状況においては、患者が注射の開始を望むような時間まで針を薬剤から分離したままにしておく注射デバイスが得られることが望ましい。本明細書に記載の注射デバイスは、従来のデバイスに付随する1つまたはそれ以上の問題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の実施形態は注射デバイスを提供し、この注射デバイスは、貫通可能バリアによって封止された薬剤カートリッジを受けるように構成された本体と、針を保持するニードルホルダと、ニードルホルダの少なくとも一部分と針とのまわりに配置され、かつ本体に対して軸方向に可動になるように配置されたニードルスリーブと;ニードルホルダおよびニードルスリーブに連結され、本体に対しデバイスの主軸に沿って軸方向に可動であるリテーナとを含み;リテーナは、ニードルスリーブおよびリテーナが所定の距離だけ本体の近位端に向かって変位したときに、ニードルホルダおよび針が軸方向に本体の近位端に向かって変位しリテーナからデカップリングするようにニードルホルダに連結され;ニードルスリーブは、ニードルスリーブが近位方向に所定の距離を超えて軸方向に変位したときにニードルホルダから係合解除するように構成される。
【0006】
ニードルホルダは、本体が受ける薬剤カートリッジとドッキングする(dock)ように構成される。
【0007】
第1の位置で、ニードルスリーブは、ニードルスリーブの近位方向の軸方向運動によりリテーナ、ニードルホルダおよび針が近位方向に軸方向変位するようにリテーナに連結される。
【0008】
ニードルホルダは、ニードルホルダが所定の距離だけ変位した後に互いに摩擦嵌めを形成するように雄部材を有する薬剤カートリッジとドッキングするように配置された雌部材を含み得る。
【0009】
ニードルホルダは、ニードルホルダが薬剤カートリッジとドッキングした後にニードルホルダおよび針が薬剤カートリッジに対して軸方向に変位することを防止するように構成されたリップをさらに含み得る。
【0010】
本体はスロット付き傾斜部を含むことができ、リテーナは1つまたはそれ以上の径方向部材を含むことができ、1つまたはそれ以上の径方向部材がスロット付き傾斜部の上を軸方向に動くことにより径方向部材の外向き径方向運動が生じ、それによってリテーナがニードルホルダから係合解除することになる。
【0011】
ニードルホルダは、リテーナが軸方向に所定の距離だけ近位方向に動くことに応答して屈曲しリテーナから係合解除するように構成された可撓性レバーを含み得る。
【0012】
リテーナは、所定の距離だけ軸方向に変位した後に2つの部材に分離するようにそれぞれ構成された1つまたはそれ以上の径方向部材を含み得る。
【0013】
デバイスは薬剤カートリッジを含むことができ、針は、ニードルホルダ変位部材が所定の距離だけ近位方向に変位したときに薬剤カートリッジのバリアを貫通する。
【0014】
デバイスは、薬剤が含まれる薬剤カートリッジを含み得る。
【0015】
デバイスは自動注射デバイスとすることができる。
【0016】
第2の実施形態は、薬剤注射デバイスを操作する方法を提供し、この方法は:リテーナを近位軸方向に押し、それによってニードルホルダおよび針が、軸方向に本体の近位端に向かって変位しリテーナからデカップリングすることを含む。
【0017】
本発明の例示的な実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による自動注射デバイスの側面図である。
【
図2A】
図1に示されたデバイスの側面断面図である。
【
図3A】使用段階中のデバイスの側面断面図である。
【
図4】
図3に示された段階の後の使用段階中のデバイスの側面断面図である。
【
図5】一代替実施形態によるデバイスの側面断面図である。
【
図6】
図5に示されたデバイスの、ニードルホルダが薬剤カートリッジに取り付けられているときの側面断面図である。
【
図7】
図5および
図6に示されたデバイスの、後に続くニードルスリーブの動きを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の実施形態は、患者または介護者が注射デバイスの針を、注射用の薬剤を含むカートリッジに挿入するための機構を提供する。この機構は、使用者が注射の開始を望むような時間まで薬剤カートリッジが封止されたままであることを可能にする。針を薬剤カートリッジに挿入するための機構を自動化することによりまた、使用者が注射の前に針を手で扱うことが減る。実際、以下に記載のいくつかの実施形態では、使用者は、針が薬剤カートリッジに挿入されるときに針に触れない。
【0020】
本明細書に記載の薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成される。たとえば送達は、皮下、筋肉内、または静脈内送達とすることができる。このようなデバイスは、患者、または看護師もしくは医師などの介護者によって操作され、さまざまなタイプの安全シリンジ、ペン注射器または自動注射器を含み得る。このデバイスは、使用前に封止アンプルを穿孔する必要がある、カートリッジベースのシステムを含み得る。これらのさまざまなデバイスを用いて送達される薬剤の量は、約0.5mLから約2mLになり得る。さらに別のデバイスは、「大」量の薬剤(通常約2mLから約10mLまで)を送達するためにある期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)患者の皮膚に粘着するように構成された、大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含み得る。
【0021】
特定の薬剤と組み合わせることで、本記載のデバイスはまた、必要な仕様内で動作するようにカスタマイズされる。たとえば、デバイスは、ある一定の期間内(たとえば、自動注射器では約3秒から約20秒、LVDでは約10分から約60分)に薬剤を注射するようにカスタマイズされる。他の仕様には、低レベルまたは最小レベルの不快感、またはヒューマンファクタに関連するいくつかの条件に対し、保存寿命、使用期限、生体適合性、環境的考慮事項などが含まれ得る。このような違いは、たとえば、粘性が約3cPから約50cPまでの薬物など、さまざまな要因により生じ得る。その結果、薬物送達デバイスは、サイズが約25から約31ゲージまでの中空針を含むことが多い。一般的なサイズは27および29ゲージである。
【0022】
本明細書に記載の送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能を含み得る。たとえば、1回またはそれ以上の針挿入、薬剤注射、および針引き込みが自動化される。1つまたはそれ以上の自動化段階のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給される。エネルギー源は、たとえば、機械エネルギー、空気エネルギー、化学エネルギーまたは電気エネルギーを含み得る。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを保存または解放するためのばね、レバー、エラストマー、または他の機械機構を含み得る。1つまたはそれ以上のエネルギー源は、単一のデバイスの中に集約することができる。デバイスはさらに、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、弁、または他の機構を含み得る。自動注射器の1つまたはそれ以上の自動化機能はそれぞれ、起動機構を介して起動される。このような起動機構は、1つまたはそれ以上のボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素を含み得る。自動化機能の起動は、一段階または多段階手順になり得る。すなわち、使用者が、自動化機能を行わせるために1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要があり得る。たとえば、一段階手順では、使用者が、薬剤の注射をするためにニードルスリーブを使用者の体に当てて押し下げることができる。他のデバイスでは、自動化機能の多段階起動が必要となり得る。たとえば、使用者が、注射をするためにボタンを押し下げ、ニードルシールドを引き込む必要がある。
【0023】
加えて、1つの自動化機能の起動が1つまたはそれ以上の後続の自動化機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することもできる。たとえば、第1の自動化機能の起動が、少なくとも2回の針挿入、薬剤注射、および針引き込みを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能を行わせるための特定の一連の段階を必要とし得る。他のデバイスは、一連の独立した段階によって動作し得る。
【0024】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器の1つまたはそれ以上の機能を含み得る。たとえば、送達デバイスが、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(自動注射器で通常見られる)と、用量設定機構(ペン注射器で通常見られる)とを含み得る。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態による、例示的な薬物送達デバイス10が
図1に示されている。上述のように、デバイス10は、薬剤を患者の体に注射するように構成される。デバイス10は、注射予定の薬剤を含むリザーバを通常は含む本体11(たとえば、シリンジ)と、送達手順の1つまたはそれ以上の段階を容易にするために必要な構成要素とを含む。デバイス10はまた、本体11に取り外し可能に取り付けられるキャップアセンブリ12を含み得る。通常は使用者が、デバイス10が動作する前に、キャップ12を本体11から取り外さなければならない。
【0026】
図示のように、本体11は実質的に円筒形であり、長手方向軸Xに沿って実質的に一定の直径を有する。本体11は、遠位領域120および近位領域121を有する。用語「遠位」は、注射の部位に相対的に近い場所を指し、用語「近位」は、注射部位から相対的に遠い場所を指す。
【0027】
デバイス10はまた、本体11に対してスリーブ24が動くことを可能にするように本体11に連結されたニードルスリーブ24(
図2~7参照)を含み得る。たとえば、スリーブ24は長手方向軸Xと平行な長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ24が近位方向に動くことにより、針17が本体11の遠位領域から延びることが可能になり得る。
【0028】
針17を挿入することは、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、本体11に対して固定して配置され、最初に、延びたニードルスリーブ24の中に配置される。スリーブ24の遠位端を患者の体に当て、本体11を遠位方向に動かすことによってスリーブ24が近位に動くと、針17の遠位端のカバーが取り外される。このような相対的な動きが、針17の遠位端が患者の体の中へ延びることを可能にする。このような挿入は、スリーブ24に対して本体11が患者の手操作で動くことにより針17が手動で挿入されるので、「手動」挿入と呼ばれる。
【0029】
挿入の別の形態は「自動化された」ものであり、それによって針17が本体11に対して動く。このような挿入は、スリーブ24が動くことによって、または、たとえばボタン122などの別の形態の起動によってトリガされる。
図1に示されるように、ボタン122は本体11の近位端にある。しかし、他の実施形態では、ボタン122は本体11の側面にある。
【0030】
他の手動または自動化機能には、薬物注射もしくは針引き込み、または両方が含まれ得る。注射とは、薬剤をシリンジから針17に強制的に通すために、栓またはピストン123をシリンジ(図示せず)内の近位位置からシリンジ内のより遠くの位置まで動かす過程のことである。いくつかの実施形態では、駆動ばね(図示せず)が、デバイス10が起動される前に圧縮の状態にある。駆動ばねの近位端は本体11の近位領域121内に固定され、駆動ばねの遠位端は、ピストン123の近位面に圧縮力をかけるように構成される。起動に続いて、駆動ばねに保存されたエネルギーの少なくとも一部がピストン123の近位面に加えられる。この圧縮力はピストン123に、ピストンを遠位方向に動かすように作用する。このような遠位の動きは、シリンジ内の液体薬剤を圧縮するように作用して、液体薬剤を針17から外に強制的に出す。
【0031】
注射に続いて、針17はスリーブ24または本体11の中に引き込まれる。引き込みは、使用者がデバイス10を患者の体から離すにつれてスリーブ24が遠位に動くときに行うことができる。これは、針17が本体11に対して固定位置にとどまったままであるので行うことができる。スリーブ24の遠位端が針17の遠位端を通り過ぎ、針17が覆われると、スリーブ24がロックされる。このようなロッキングは、本体11に対するスリーブ24の近位の動きをロックすることを含み得る。
【0032】
別の形態の針引き込みは、針17が本体11に対して動く場合に行うことができる。このような動きは、本体11内のシリンジが本体11に対して近位方向に動く場合に行うことができる。この近位動きは、遠位領域にある引き込みばね(図示せず)を使用して実現される。圧縮された引き込みばねが、起動したときに十分な力をシリンジに供給して、シリンジを近位方向に動かすことができる。十分な引き込みの後では、針17と本体11の間の相対的な動きがロッキング機構によってロックされる。加えて、デバイス10のボタン122または他の構成要素が必要に応じてロックされる。
【0033】
図2Aは、本発明の第1の実施形態による自動注射器デバイス10の側面断面を示す。
【0034】
自動注射デバイス10は、カートリッジホルダ20によって適所に保持されるカートリッジ19を含む。カートリッジホルダ20およびカートリッジ19は連結され、デバイス10の本体11に対して固定される。カートリッジ19は、カートリッジ本体21、ネック22、およびヘッド23を有する。ヘッド23はネック22よりも幅が広く、それによってフランジ付き端部が形成される。ネック22およびヘッド23は、薬剤を通過させる、ならびに針17が挿入されるとこれを受ける、通路を含む。ヘッド23は、通路を封鎖し薬剤カートリッジ19の内容物を封止するための、セプタム23aなどの貫通可能バリアを備える。カートリッジ本体21、ネック22およびヘッド23は、形状が概ね円筒形である。しかし、代替形状を使用することもできる。
【0035】
針17を保持するニードルホルダ18は、本体11およびカートリッジ19に対して軸方向に可動である。ニードルホルダは、概ねカップ形の部分18a、および針17が通過する通路を有する。カップ形部分18aは、カートリッジ19のヘッド23と係合するように形づくられる。カップ形部分18aは、カートリッジ19にニードルホルダ18を取り付けた後にニードルホルダ18がカートリッジ19から外れることを防止するための、ヘッド23の上に留まる機能を果たすリップ18bを含む。
【0036】
デバイス10は管状のニードルスリーブ24を含む。ニードルスリーブ24は、針17の望ましくない露出を防止する保護スリーブである。ニードルスリーブは、本体と概ね同様の形状を有し、中空であり、概ね円筒形である。ニードルスリーブ24は、本体11の内側に嵌まる。ニードルスリーブ24は、本体11に対して軸方向に摺動できるように配置される。ニードルスリーブ24は、針が患者の皮膚に接触できるように、その遠位端にアパーチャ25を有する。
【0037】
デバイス10は、形状が円環形または管状であるリテーナ26を含む。
図2Bに示されるように、リテーナ26は概ね円形の断面を有する。リテーナ26は第1および第2の径方向部材27を有し、これらはリテーナ26の湾曲壁から内向きに延びてニードルホルダ18と係合する。径方向部材27のそれぞれは孔28を備え、これは、以下で説明するように、リテーナ26が軸方向にカートリッジ19に向かって動くときにニードルスリーブ24を受けるように配置されている。リテーナ26の湾曲壁は、1つまたはそれ以上の伸長要素29を備える。伸長要素29は、リテーナ26が本体11の傾斜した部分の上を動くときにリテーナ26の断面外周を大きくするように構成される。
【0038】
図2Aに示されるように、径方向部材27のそれぞれは、ニードルスリーブ24の壁にあるアパーチャを通り抜けて、また本体11の壁の細長いスリット30を通り抜けて延びる。スリット30を通り抜けて延びる径方向部材27の端部にはフランジが付けられ、それによりフランジは本体11の外面に位置する。
【0039】
本体11は、スリット30のそれぞれのまわりにスロット付き傾斜部11aを含む。傾斜部11aは、薬剤カートリッジ19のヘッド23に近いスリット30の端部における本体11の壁の外径(
図2Bおよび
図3Bに示された一方のスリット30から第2のスリット30まで)が、薬剤カートリッジ19のヘッド23からデバイス10の遠位端に向かった位置にあるスリット30の端部における外形よりも大きくなるように配置される。以下でさらに詳細に説明するように、この傾斜部構成により、リテーナ26が薬剤カートリッジ19に向けて軸方向に動くにつれて広がって、最終的に、リテーナ26が薬剤カートリッジ19に向けて所定の距離を超えて動くとすぐに、径方向部材27がニードルホルダ18からデカップリングすることになる。
【0040】
図2Aおよび
図2Bは、デバイス10の構成要素を、患者に薬剤を注射するための用意として針を薬剤カートリッジに挿入する前の、その初期位置において示す。
【0041】
図3Aは、使用者がニードルスリーブ24を太い矢印の方向に、リテーナ26がニードルホルダ18からデカップリングする所定の距離dの点まで押すときの自動注射デバイス10の側面断面を示す。
【0042】
ニードルスリーブ24は本体11と同軸であり、デバイス10の本体11の内面に沿って摺動する。径方向部材27がニードルスリーブに当接し、ニードルスリーブ24に対して固定されているので、スリーブ24の軸方向運動によりリテーナ26が軸方向に薬剤カートリッジ19に向かって動く。径方向部材27のそれぞれが、その一端においてニードルホルダ18に当接する。それによって、径方向部材27の軸方向運動により、ニードルホルダ18および針17が薬剤カートリッジ19に向かって軸方向に動くことになる。
【0043】
所定の距離だけ軸方向に動いた後、ニードルホルダ18のカップ形部材18aは、薬剤カートリッジ19のヘッド23に嵌まる。ニードルホルダのカップ形部材18aのまわりに延びるリップ18bは、ニードルホルダ18を薬剤カートリッジ19に固定する役割を果たす。リップ18bは、カップ形部材がヘッド23に嵌まるようにするためのテーパ付き案内縁部を有する。しかし、ニードルホルダ18が薬剤カートリッジ19に一旦嵌まると、薬剤カートリッジ19から分離するニードルホルダの軸方向運動がリップによって防止される。
【0044】
あるいは、カップ形部材18aの直径と、薬剤カートリッジ19のヘッド23の直径とは、ニードルホルダ18と薬剤カートリッジ19の間の緊密摩擦嵌めが確実になるように配置される。緊密摩擦嵌めを有する実施形態では、リップが設けられない。
【0045】
図3に示されるように、針17は薬剤カートリッジ19のセプタム23aを穿孔し、それによって、薬剤が薬剤カートリッジ19から針17の遠位端まで流れるための通路が確立される。針17の両端はとがっている。近位端は、針17が薬剤カートリッジ19のセプタム23aを貫通することを可能にするのに十分なだけ鋭い。針17の遠位端は、針が患者の皮膚を貫通できるようにするのに十分なだけ鋭い。
【0046】
薬剤カートリッジ19へ向かう軸方向運動中、径方向部材27は、本体11の壁にあるそれぞれのスリット30に沿って案内される。スリットを含む本体11の壁の部分が傾斜しているので、スリット30から延びる径方向部材27のフランジ付き端部により、径方向部材27のそれぞれが径方向変位する。そのためリテーナ26は、
図3に示された点においてニードルホルダ18からデカップリングする。径方向部材27の孔28は、径方向にニードルスリーブ24と位置合わせする。ニードルスリーブ24は、
図4に示されるように、薬剤カートリッジ19にニードルホルダ18を取り付けた後にニードルスリーブ24が軸方向に変位するときに、ニードルスリーブ24が、径方向部材27を通して摺動できるようにする長手方向スリット(図示せず)を備える。
【0047】
リテーナ26がニードルホルダ18からデカップリングすること、およびニードルホルダ18が薬剤カートリッジ19とドッキングすることにより、針が薬剤カートリッジ19に挿入されたことを使用者に知らせるクリック音などの可聴フィードバックを提供することができる。
【0048】
針17が薬剤カートリッジ19に挿入され、ニードルホルダ18が薬剤カートリッジに取り付けられると、デバイスは薬剤の注射を開始する用意ができる。次に、デバイス10の遠位端は、患者の皮膚にある注射部位に当てられる。
【0049】
図4は、ニードルスリーブ24が本体11に対して太い矢印の方向に、ニードルスリーブ24がニードルホルダ18からデカップリングする所定の距離の点を超えて動くときの、自動注射デバイス10の側面断面を示す。
【0050】
この相対運動は、使用者が本体11を把持し、ニードルスリーブ24をデバイス10の近位端に向けて押すことによって生じる。あるいは、ニードルスリーブ24の遠位端は、注射部位の患者の皮膚に当てて保持される。使用者が注射デバイス10を注射部位に当てて押すと、本体11の外壁がニードルスリーブ24の上で摺動し、それによってニードルスリーブ24が本体11に対して後退する。
【0051】
径方向部材27がそれぞれニードルホルダ18から分離した後、デバイス10の近位端に向かうニードルスリーブ24の軸方向運動はもはや、ニードルホルダ18の対応する動きと連結しない。言い換えると、ニードルスリーブ24が所定の距離を超えて押されると、ニードルスリーブ24は、薬剤カートリッジ19に固定されたままのニードルホルダ18から係合解除する。
【0052】
針17およびニードルホルダ18がもはやニードルスリーブ24に連結されていなく、その代わりに薬剤カートリッジ19および本体11に対して固定されているので、このニードルスリーブ24のさらなる軸方向運動により、針17がニードルスリーブ24の遠位端のアパーチャ25から現れる。デバイス10が注射部位に当てられていたならば、針17は患者の皮膚を穿孔する。
【0053】
ニードルホルダ18の軸方向運動は、
図2および
図3に示されるように、使用者がニードルスリーブ24を押し、それによってリテーナ26が押されることによって生じるが、使用者が直接リテーナ26を押し、それによってニードルスリーブ24およびニードルホルダ18が軸方向にデバイス10の近位端に向かって動くこともまた可能である。スリット30を通り抜けて延びる径方向部材27の端部は、使用者が径方向部材27を直接押すことができるようにするための拡大面を有し得る。
【0054】
図1~4に示された実施形態では、リテーナ26は2つの径方向部材27を備える。しかし、代替実施形態では、もっと多くの部材が設けられる。
【0055】
図2~4に関して上述した実施形態のうちの一変形形態である本発明の一代替実施形態が、
図5~7に示されている。
【0056】
デバイス50は、上述のデバイス10と同様の全体構造を備える。デバイス10に関して上で説明した態様と実質的に同じであるデバイス50の態様については繰り返して説明しない。
【0057】
デバイス50はニードルホルダ51を有し、ニードルホルダ51は、リテーナ53と係合するように配置されている1つまたはそれ以上の曲げ要素またはレバー52を有することを除いて、ニードルホルダ18と類似している。本体54およびニードルスリーブ55は両方ともアパーチャを備え、これを通り抜けてリテーナ53が延びる。
【0058】
リテーナ53またはニードルスリーブ55が上記と同様に軸方向に押されると、ニードルホルダ51は、近位方向に薬剤カートリッジ19に向けて押される。上記のように、ニードルホルダ51は、緊密摩擦嵌めおよび/または薬剤カートリッジ19のヘッドまわりのクリップによって薬剤カートリッジ19に固定されることになる。それによって、針17はカートリッジ19に挿入される。
【0059】
リテーナ53またはニードルスリーブ55のいずれかがさらに押されると、
図6と
図7の間で示されるように、レバー52は曲がり、リテーナ53からデカップリングする。
【0060】
レバー52を曲げるのに必要な力は、リテーナ53からのレバー52のデカップリングがニードルホルダ51をカートリッジ19に取り付けた後に起きるように、ニードルホルダ51をカートリッジ19に取り付けるのに必要な力よりも大きくなくてはならない。
【0061】
図5~7に示された実施形態では、デカップリングが、
図1~4に示されたようにリテーナの径方向部材の外向き径方向運動を生じさせることによってではなくレバー52を曲げることによって実現されるので、傾斜部を必要としない。
【0062】
別の代替実施形態では、リテーナが所定の点を越えて押されるとすぐにレバーを破壊することによって、リテーナからニードルホルダをデカップリングすることを提供する。このデカップリングは、レバー上の所定の破壊点を使用して、またはニードルホルダが薬剤カートリッジに取り付けられた後でレバーを(カートリッジホルダに固定されている)鋭い縁部に押し当てることによって、行われる。
【0063】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0064】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、さまざまなタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組み合わせを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0065】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み型デバイス(たとえば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここで説明される薬物は、たとえば24以上のゲージ数を有する、たとえば皮下針である針を含む注射デバイスでは特に有用であり得る。
【0066】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0067】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0068】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0069】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0070】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0071】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0072】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0073】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0074】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0075】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0076】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0077】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0078】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0079】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0080】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0081】
API、製剤、装置、方法、システムのさまざまな構成要素および本明細書に記載の実施形態の修正(追加および/または除去)を、このような修正、およびありとあらゆるその均等物を包含する本発明の全範囲および趣旨から逸脱せずに加えることができることは当業者に理解されよう。