IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】織物クッション部材
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018546627
(86)(22)【出願日】2017-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 IB2017051344
(87)【国際公開番号】W WO2017158471
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-01-15
(31)【優先権主張番号】62/307,624
(32)【優先日】2016-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ロックハート ハロルド アレン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュース デリック ブレイク
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524801(JP,A)
【文献】特表2015-516241(JP,A)
【文献】特表2015-536788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者インタフェース装置のクッション部材において、前記クッション部材は、
第1の層、及び前記第1の層に機械的に結合される第2の層を含むフラップ部を有するシール部であり、前記第1の層は、患者の顔と係合するように構成される及び織物材料から作られる、前記第2の層は、モノマー、ポリマー及びモノマーとポリマーとの混合物からなる集合から選択される材料から作られる、前記シール部、並びに
前記第2の層に結合されるベース部であり、ガス送出導管に結合されるように構成される、前記ベース部
を有し、
前記フラップ部は、外縁及び内縁を持つ、前記ベース部は、重ね継ぎを形成するために前記第2の層に化学的に結合される結合層を有する、並びに前記結合層は、前記外縁と前記内縁との間に置かれる、
前記フラップ部はさらに、鼻梁部、各々が前記鼻梁部から延在している一対の対向する鼻遷移部、前記鼻遷移部を互いに接続する本体部を持つ、前記結合層は、前記鼻梁部の外縁から、前記鼻梁部の外縁より内側に、第1の距離まで延在している、及び前記結合層は、前記本体部の外縁から、前記本体部の外縁より内側に、前記第1の距離よりも大きい第2の距離まで延在している
クッション部材。
【請求項2】
前記結合層は、前記鼻遷移部の外縁から前記第1の距離及び前記第2の距離よりも大きい第3の距離だけ内側に延在している、請求項1に記載のクッション部材。
【請求項3】
前記第2の層は、第1の部分及び前記第1の部分から延在している第2の部分を有する、前記第1の部分は前記結合層に化学的に結合されている、前記第2の部分は、前記結合層に化学的に結合されていない、及び前記第2の部分は平坦である、請求項1に記載のクッション部材。
【請求項4】
前記シール部はさらに、前記ベース部及び前記第2の層に化学的に結合されるビード部を有する、請求項1に記載のクッション部材。
【請求項5】
前記フラップ部は外縁を有する、及び前記ビード部は前記外縁に重畳している、請求項4に記載のクッション部材。
【請求項6】
前記フラップ部は、第1の結合部、及び前記第1の結合部の反対側に置かれる第2の結合部を有する、前記シール部はさらに、モノマー、ポリマー及びモノマーとポリマーとの混合物からなる集合から選択される材料から作られる、前記第2のフラップ部は、前記第1の結合部の第1の層に機械的に結合され、前記第1の結合部の第2の層に化学的に結合される、並びに前記第2のフラップ部は、前記第2の結合部の第1の層に機械的に結合され、前記第2の結合部の第2の層に化学的に結合される、請求項1に記載のクッション部材。
【請求項7】
前記フラップ部は、前記クッション部材が患者により着用されないとき、張力がかかった状態ではない、請求項1に記載のクッション部材。
【請求項8】
前記第1の層は、100g/mから350g/mまでの間の密度を持つ、請求項1に記載のクッション部材。
【請求項9】
前記第2の層は、0.0508mmから0.508mmまでの間の厚さを持つ、請求項1に記載のクッション部材。
【請求項10】
前記第2の層は、一部が前記第1の層内に延在している、請求項1に記載のクッション部材。
【請求項11】
患者インタフェース装置のクッション部材を製造する方法において、前記クッション部材は、フラップ部を有するシール部、及びガス送出導管に結合されるように構成されるベース部を有し、前記方法は、
前記フラップ部の第1の層を前記フラップ部の第2の層に機械的に結合するステップであり、前記第1の層は、患者の顔と係合するように構成される及び織物材料から作られる、前記第2の層は、モノマー、ポリマー及びモノマーとポリマーとの混合物からなる集合から選択される材料から作られる、前記機械的に結合するステップ、並びに
前記ベース部を前記第2の層に結合するステップ
を有し、
前記フラップ部は、外縁及び内縁を持つ、前記ベース部は、重ね継ぎを形成するために前記第2の層に化学的に結合される結合層を有する、並びに前記結合層は、前記外縁と前記内縁との間に置かれる、
前記フラップ部はさらに、鼻梁部、各々が前記鼻梁部から延在している一対の対向する鼻遷移部、前記鼻遷移部を互いに接続する本体部を持つ、前記結合層は、前記鼻梁部の外縁から、前記鼻梁部の外縁より内側に、第1の距離まで延在している、及び前記結合層は、前記本体部の外縁から、前記本体部の外縁より内側に、前記第1の距離よりも大きい第2の距離まで延在している
方法。
【請求項12】
ビード部を前記ベース部及び前記第2の層に結合するステップをさらに有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フラップ部は、第1の結合部、及び前記第1の結合部の反対側に置かれる第2の結合部を有する、前記シール部はさらに、モノマー、ポリマー及びモノマーとポリマーとの混合物からなる集合から選択される材料から作られる第2のフラップ部を有する、並びに前記方法はさらに、
前記第2のフラップ部を、前記第1の結合部の第1の層及び前記第2の結合部の第1の層に機械的に結合するステップ、並びに
前記第2のフラップ部を、前記第1の結合部の第2の層及び前記第2の結合部の第2の層に化学的に結合するステップ
を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
(a)フレーム部材、
(b)前記フレーム部材に結合されるストラップ部材、及び
(c)前記フレーム部材に結合されるクッション部材
を有する、患者インタフェース装置において、
前記クッション部材は、
(1)第1の層、及び前記第1の層に機械的に結合される第2の層を含むフラップ部を有するシール部であり、前記第1の層は、患者の顔と係合するように構成される及び織物材料から作られる、前記第2の層は、モノマー、ポリマー、及びモノマーとポリマーとの混合物からなる集合から選択される材料から作られる、
(2)前記第2の層に結合されるベース部であり、前記ベース部は、ガス送出導管に結合されるように構成される、前記フラップ部は、外縁及び内縁を持つ、前記ベース部は、重ね継ぎを形成するために前記第2の層に化学的に結合される結合層を有する、並びに前記結合層は、前記外縁と前記内縁との間に置かれる、
前記フラップ部はさらに、鼻梁部、各々が前記鼻梁部から延在している一対の対向する鼻遷移部、前記鼻遷移部を互いに接続する本体部を持つ、前記結合層は、前記鼻梁部の外縁から、前記鼻梁部の外縁より内側に、第1の距離まで延在している、及び前記結合層は、前記本体部の外縁から、前記本体部の外縁より内側に、前記第1の距離よりも大きい第2の距離まで延在している
患者インタフェース装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国特許法第119条の下、2016年3月14日に出願された米国仮特許出願第62/307,624号の優先権を主張し、その内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、患者に呼吸ガス流を送出するのに患者インタフェース装置が使用される非侵襲性の換気及び圧支持システムに関する、及び特にそのような患者インタフェース装置のクッション部材に関する。本発明は、クッション部材を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
患者の気道に呼吸ガス流を非侵襲的、すなわち患者に挿管することなく又は患者の食道に気管チューブを外科的に挿入することなく、送出する必要がある又はそれが望ましい状況が多数存在している。例えば、非侵襲性の換気として知られる技術を用いて患者を換気することが知られている。その最も有名な疾患は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である医療疾患を治療するために、気道陽圧(PAP)療法を送ることも知られている。既知のPAP療法は、患者の気道を開くために、患者の気道に持続的な陽圧が供給される持続的気道陽圧(CPAP)と、患者の気道に供給される圧力が患者の呼吸サイクルと共に変化する可変気道圧力とを含む。そのような治療は通例、患者が眠っている夜間に患者に施される。
【0004】
このように非侵襲性の換気及び圧支持療法は、呼吸ガス流を生成するガス流発生器、及びマスク構成要素を含む患者インタフェース装置の患者の顔への配置を含む。ガス流発生器は、患者に送出されるべき空気を周囲から取り込み、ファンを回転させ、その空気を機械から送出導管を通り、患者インタフェース装置に押し込むことにより、空気陽圧を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患者インタフェースの従来のクッション部材は、シールを提供するために、患者の顔と係合するように構成されるシール部を含む。既知のシール部は、多数の欠点、例えば顔のある領域に過度な圧力を加えること、レッドマークを生じさせること、及び患者インタフェース装置とエモーショナルな接続を行う患者の能力を低下させること、に苦しんでいる。その上、現在の射出成形技術は、シール部に薄いフィルムを実装するためにその能力を制限している。加えて、織物材料から作られる既知のシール部において、織物とクッション部材の本体との間の縫い付けの結果として、ガス流の漏れがしばしば生じる。その上、現在の線維材料はガス不透過性を可能にしないので、全てが織物材料から構成されるシール部を用いることは一般的に実用的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その結果、本発明の目的は、患者インタフェース装置のクッション部材を提供することである。クッション部材は、第1の層及びこの第1の層に機械的に結合される第2の層を含むフラップ部を持つシール部、並びに前記第2の層に結合されるベース部を有し、前記第1の層は、患者の顔と係合するように構成される及び織物材料から作られる、前記第2の層は、モノマー(monomer)、ポリマー(polymer)及びモノマーとポリマーとの混合物からなる集合から選択される材料から作られる、並びに前記ベース部は、ガス送出導管に結合されるように構成される。
【0007】
本発明の他のもう1つの目的は、患者インタフェース装置のクッション部材を製造する方法を提供することである。クッション部材は、シール部及びベース部を含む。ベース部は、ガス送出導管に結合されるように構成される。シール部は、フラップ部を持つ。前記方法は、フラップ部の第1の層を前記フラップ部の第2の層に機械的に結合するステップであり、前記第1の層は、患者の顔と係合するように構成される及び織物材料から作られる、前記第2の層は、モノマー、ポリマー及びモノマーとポリマーとの混合物からなる集合から選択される材料から作られる、前記機械的に結合するステップ、並びに前記ベース部を前記第2の層に結合するステップ、を有する。
【0008】
構成物の関連する要素の動作方法及び機能、並びに製造部品と製造の経済性との組み合わせと同じく、本開示のこれら及び他の目的、特徴並びに特性は、付随する図面を参照して、以下の説明及び添付の請求項を考慮するとより明白となり、これらの全てが本明細書を形成している。様々な図面において、同様の参照番号は対応する部品を示している。しかしながら、これら図面は単に例証及び説明を目的とするものであり、本発明の境界を規定するものとは意図されないことは明白に理解されるべきである。明細書及び請求項に用いられるように、文脈上明白に他の意味で述べている場合を除き、複数あることを述べなくとも、それらが複数あることも含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】開示される概念の限定ではない実施例に従う、圧支持システムに用いられ、患者の上にあるように示されるクッション部材の側面図。
図2図1のクッション部材の等角図。
図3図1のクッション部材の分解組立図。
図4図1のクッション部材のフラップ部の底面図。
図5図4のA-A線に沿って切り取られた図4のフラップ部の断面図。
図6図5のフラップ部の一部の拡大図。
図7A図1のクッション部材のもう1つの図。
図7B図1のクッション部材のもう1つの図。
図8A図7AのB-B線に沿って切り取られた図7Aのクッション部材の断面図。
図8B図7BのB2-B2線に沿って切り取られた図7Bのクッション部材の断面図。
図9A図8Aのクッション部材の一部の拡大図。
図9B図8Bのクッション部材の一部の拡大図。
図10】開示される概念の他の実施例に従う、もう1つのクッション部材の等角図。
図11】開示される概念の他の実施例に従う、もう1つのクッション部材の正面図。
図12】開示される概念の他の実施例に従う、もう1つのクッション部材の分解組立図。
図13図11のC-C線に沿って切り取られた図1のクッション部材の断面図。
図14図13のクッション部材の一部の拡大図。
図15図11のD-D線に沿って切り取られた図11のクッション部材のもう1つの断面図。
図16図15のクッション部材の一部の拡大図。
図17図11のクッション部材のフラップ部の等角図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
明細書において、特に文脈上はっきりと述べていない限り、複数あると述べていなくても、それらが複数あることを含む。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が"結合される"と述べることは、連動している限り、これらの部品が直接的に又は間接的、すなわち1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介しての何れかにより接合される又は共に動作することを意味している。明細書において、"直接結合される"は、2つの要素が互いに直に接していることを意味している。明細書において、"固定して結合される"又は"固定される"は、2つの構成要素が互いに対し一定の方向を維持している間、1つとして移動するように結合されることを意味している。
【0011】
明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が互いに"係合する"と述べることは、これらの部品が直接的に又は1つ以上の中間部品若しくは構成要素を介しての何れかにより互いに力を及ぼし合っていることを意味している。明細書において、"数字"は、1若しくは1以上の整数(すなわち複数)を意味する。明細書における方向の表現、例えば例であり限定ではないが、左側、右側、上方、下方、前方、後方、頂部及びそれらの派生語は、図面に示される要素の方位に関連し、特に明瞭に言わない限り、請求項を制限しない。
【0012】
明細書において、"織物(fabric)"の用語は、例であり限定ではないが、網状の織物を形成するために、繊維を織る(weaving)、編む(knitting)、広げる(spreading)、かぎ針で編む(crocheting)又は(例えば化学的、機械的、熱又は溶剤処理により)結合する(bonding)ことにより作られる織り合された又は他の方法で絡み合わされた天然繊維又は化学繊維の網状の織物から構成される材料を意味し、例であり限定ではないが、織布材料及び不織布材料を含んでよい。
【0013】
明細書において、"機械的な結合(mechanical bond)"の表現は、モノマー、ポリマー、及びモノマーとポリマーとの混合物(例えば限定ではないが、シリコーン)から構成される集合から選択される材料を硬化(すなわち凝固)させる結果として形成される、織物材料への結合を意味する。例えば限定ではないが、粘着性シリコーン材料が織物材料に流れ込み、その後硬化するときに形成される結合は機械的な結合である。織物材料がシリコーン材料に縫い付けられるときに形成される接続は機械的な結合ではない。
【0014】
明細書において、"化学的な結合"の表現は、第1の材料から第2の材料への硬化(すなわち凝固)の結果として形成される結合を意味し、ここで第1の材料及び第2の材料の各々は、モノマー、ポリマー又はモノマーとポリマーとの混合物から作られる。
【0015】
図1は、開示される概念からなる限定ではない例示的な実施例に従う圧支持システム2を示す。圧支持システム2は、患者インタフェース装置4、ガス流発生器6及びこのガス流発生器6を患者インタフェース装置4に流体結合するように構成されるガス送出導管(例えばホース8)を持つ。患者インタフェース装置4は、フレーム部材10、このフレーム部材10に結合される多数のストラップ部材12、及びフレーム部材10に結合されるクッション部材100を含む。示されるように、ガス流発生器6からの呼吸ガス流を患者14に伝えるために、フレーム部材10及びストラップ部材12は共に、クッション部材100が患者14の顔に固定されることを可能にする。
【0016】
図2及び図3に示されるように、クッション部材100は、シール部110及びベース部170を含む。ベース部170は、ホース8(図1参照)に結合されるように構成される。示される実施例において、シール部110は、柔軟なフラップ部111である。図4を参照すると、フラップ部111は、鼻梁部112、各々が鼻梁部112から延在している一対の対向する鼻遷移部125、鼻遷移部125を互いに接続させる本体部14、外縁113及び内縁115を持つ。
【0017】
図5は、フラップ部111の断面図を示し、図6は、図5の一部の拡大図を示す。図6に示されるように、フラップ部111は、第1の層116及び第2の層118を含む。第1の層116は、1つ又は複数のストレッチ方向を持つ織物材料(例えば限定ではないが、スパンデックス(spandex)及び/又はライクラ(lycra)を含む織物材料)から作られる。第2の層118は、モノマー、ポリマー又はモノマーとポリマーとの混合物(例えば限定ではないがシリコーン)から作られる。第2の層118は、第1の層116に機械的に結合され、重畳する(すなわち第1の層116の上に置かれる)。例えば限定ではないが、製造中、ベース部170の成形が起きる前に、第2の層118は粘性の半液体として第1の層116に塗布されてよい(例えば第1の層116の織物の色設定温度よりも十分に下であるが、適切な硬化を可能にするのに十分な高さの温度まで加熱される)。加えて、機械的な結合は、第2の層118が部分的に第1の層116内に延在するように構成される。すなわち、製造中、適切な硬化を確立する前に、室温で粘性のある半液体の第2の層118は、極めて軽い圧力により第1の層116の織物の線維に流れ込む。しかしながら、第2の層118は有利に、第1の層116を完全に延在しない。このように、フラップ部111は有利に、第1の層116の材料から作られる外部係合面117を持つ。
【0018】
別の言い方をすると、第1の層116は、係合面117を介して患者14(図1参照)の顔と係合するように構成され、第2の層118は、患者14の顔と係合するように構成されない。発明者は、患者の比較的大きなプロポーションは、従来のシリコーンのシール材料とは対照的に、顔に対する織物材料、例えばスパンデックス及び/又はライクラの構造を含む繊維材料の感覚を好むことを発見した。結果として、第1の層116を患者14の顔と係合させることは有利に、これらの患者と患者インタフェース装置4との間における快適及びエモーショナルな接続を改善する。その上、第1の層116と第2の層118との間における機械的な結合は有利に、比較的強いシールを提供する。すなわち、織物とシリコーン部との間の縫い付けが原因による漏れに悩まされていた織物材料を含む従来のシール部(図示せず)とは異なり、第1の層116と第2の層118との間における機械的な結合は、漏れの可能性を大きく減らす。その様なものとして、第1の層116は、患者14との快適及びエモーショナルな接続を提供するように動作する一方、第2の層118は、ガス不透過性構造を提供するように動作し、それによりフラップ部111がシール要素として適切に機能することを可能にする。
【0019】
従来のシリコーンのシール部と比べると、第1の層116は、100g/mから350g/mまでの間の密度を持ち、皮膚に対する湿気の蓄積を取り除く能力を大幅に向上させるウィッキング特性(wicking property)も持つ。図6を引き続き参照すると、第2の層118は、0.002インチから0.02インチまでの間の厚さ119を持ち、この厚さは、これまでの従来技術の射出成形されたシリコーンのシール部よりも大幅に小さい。第1の層116の密度及び湿気のウィッキング特性は、第2の層118の比較的小さな厚さと組み合わされて一緒に、患者インタフェース装置4が患者14により着用されている間に生じる顔のせん断荷重(shear load)を減らすことにより、レッドマークの減少に有利に役立つ。
【0020】
その上、第1の層116は、単又は多方向のストレッチ材料でもよい。すなわち、第1の層116の主なストレッチの方向(すなわち、第1の層116がそれに沿って最も張力に抵抗しないように構成される方向)は、単方向又は多方向でもよい。図4を参照すると、第1の層116は、鼻梁部112を横断する軸124上に単一のストレッチ方向を持ち(すなわち、患者14の主な鼻骨の長軸に対し垂直である)、それにより、フラップ部11はさらに近接する鼻梁部112における患者14のせん断荷重及びレッドマークを減らすことを可能にする。しかしながら、同様に適切な代替のフラップ部(図示せず)が開示される概念の範囲から外れることなく、異なるストレッチ特性を持ってよいことも分かっている。例えば限定ではないが、軸124に対し垂直である第1の層の前記主なストレッチ方向(すなわち、患者14の主な鼻骨の長軸に対し平行な方向)に対し、シール、快適なレベル及び安定性を作る能力に関して有 利な改善を提供する構造は、開示される概念の範囲内である。
【0021】
図7Aは、クッション部材100のもう1つの図を示し、図8Aは、図7Aの断面図を示す。図8Aに示されるように、ベース部170は、結合層172を含む。図9Aの拡大図を参照すると、結合層172は、重ね継ぎ(lap-joint)を形成するために、第2の層118に化学的に結合される。ベース部170と第2の層118との間に比較的強い結合として機能することに加え、前記重ね継ぎは有利に、バックリング(buckling)(すなわちフラッター(flutter))を防ぐために、フラップ部111に十分な量の剛性を提供する。示されるように、結合層172は、外縁113と内縁115との間に置かれ、鼻梁部112の外縁113から第1の距離120だけ内側に延在している。図8Aを再び参照すると、結合層172は、本体部114の外縁113から第1の距離120よりも大きい第2の距離122だけ内側に延在している。このように、クッション部材100は、近接する鼻梁部112をさらに柔軟することを可能にするように有利に構成される。加えて、図7Bの断面図である図8B及び9Bを参照すると、結合層172は、鼻遷移部125の外縁113から第1の距離120及び第2の距離122よりも大きい第3の距離126だけ内側に延在している。結果として、フラップ部111は有利に、患者14の鼻の両側に適切に置かれることを可能にして、この領域においてシールを維持し、フラッターを削除する。
【0022】
特に、フラップ部111が結合層172に結合される場所は、フラップ部111が結合層172に結合されていない場所よりも張力に抵抗する(すなわちより堅い)ように構成される。結合層172を外縁113から、本体部114よりも近接する鼻梁部112においてより少ない距離だけ内側に延在させることにより(すなわち、本体部114と比べ、フラップ部111のより大きなプロポーションが近接する鼻梁部112において結合層172に結合されないことにより)、フラップ部111は有利に本体部114よりも近接する鼻梁部における張力(すなわち、患者14の鼻により加えられる力)の抵抗が小さいように構成される。結果として、フラップ部111は、本体部114と比べると、近接する鼻梁部112をより多くの量だけ伸ばす(すなわち歪む)ことを可能にする。これは、患者14の鼻骨と関連付けられる剛性により望まれる。すなわち、近接する鼻梁部112の柔軟性を増大させることは、患者14に対する快適さを増大させ、レッドマークが形成する可能性を減らす。
【0023】
図9Aを再び参照すると、第2の層118は、第1の部分121及びこの第1の部分121から延在している第2の部分123を含む。第1の部分121は、結合層172に化学的に結合され、第2の部分123は、結合層172に化学的に結合されていない。示されるように、第2の部分123は概ね平坦である。これは、平坦ではなく、寧ろ窪んだ内部部分を持つ一般的な従来技術のシール部とは異なる。ベース部170が重ね継ぎで結合層172を介してフラップ部111に射出成形されるとき、フラップ部111の即時の再規定される外形は、フラップ部111にしわができる及び/又はフラップ部111が過度に伸びることを有利に防ぐことが分かる。すなわち、フラップ部111と同様の材料から作られるフラップ部と共に用いられる場合、従来技術のシール部の外形は、望まないしわができる又は伸びることになる。加えて、患者インタフェース装置4の適切な機能を維持するために、従来技術のシール部に比べ、開示される再規定される外形は、クッション部材100と患者14の顔との間により大きな接触領域を提供する。従って、クッション部材が患者14により着用されないとき、フラップ部111は一般に、張力状態(state of tension)ではない。従って、クッション部材100が患者14により着用され、フラップ部111が患者14の顔と係合するとき、フラップ部111は、従来技術のシール部に比べ、フラップ部111は、かなり大きな付勢(basing)力を及ぼすことを必要とせずに患者13の顔の特徴に合うことが可能である。
【0024】
図10、11及び12は、開示される概念からなる代替の限定ではない実施例に従う、クッション部材100の代わりに患者インタフェース装置4に実装されるフルフェイスのクッション部材200の前方等角図、上面図及び分解組立図を夫々示す。クッション部材200は、シール部210及びベース部270を含む。シール部210は、第1のフラップ部211及び第2のフラップ部231を持つ。第1のフラップ部211は、第1の結合部225及びこの第1の結合部255の反対側に置かれる第2の結合部226を持つ。
【0025】
図13は、クッション部材200の断面図を示し、図14は、図13の一部の拡大図を示す。図14を参照すると、第1のフラップ部211は、第1の層216及びこの第1の層216に化学的に結合される第2の層218を持つ。第1の層216及び第2の層218は、上述したクッション100の第1の層116及び第2の層118と夫々同じ材料から構成される、並びに同じ方法で化学的に結合される。ベース部270から延在している第2のフラップ部231は、モノマー、ポリマー又はモノマーとポリマーとの混合物(例えば限定ではないが、シリコーン)から作られる。第2のフラップ部231を第1の結合部225に接続するために、この第2のフラップ部231は、第1の結合部225の第1の層216に機械的に結合され、第1の結合部225の第2の層218に化学的に結合される。この特定な製造処理は、第1のフラップ部211の鼻梁部212に近接する追加の部分227を作り出す。追加の部分227は、圧支持療法で使用する前に抜き取る必要がある。
【0026】
シール部210の複合性(すなわち、第1のフラップ部211と第2のフラップ部231とを用いること)は、上述したシール部110と略同様の利点を有利に提供し、加えて患者14の顔とクッション部材200との特定の場所の間で摩擦が増大するのを可能にする。特に、クッション部材200は、第1のフラップ部211の材料特性の結果として、近接する鼻梁部212(図10図12参照)の柔軟性を増大させるように構成される。加えて、夜間にしばしば患者は自分の口を動かすので、シール部が患者の口の中に入るのを防ぐために、フルフェイスのクッション部材、例えばクッション部材200が口領域に近接する、患者とクッション部材との間の摩擦を増大させることが望ましい。結果として、クッション部材200は、第2のフラップ部231を第1のフラップ部211とは別にすることによりこの問題に有利に対処している。特に、第2のフラップ部231は、モノマー、ポリマー又はモノマーとポリマーとの混合物から作られ、かなり大きい(すなわち第1の層216のよりも大きい)摩擦係数を持ち、それにより患者14の口領域とクッション部材200との間の摩擦を増大させることができる。
【0027】
クッション部材100及びクッション部材200の両方において、ベース部170、270は射出成形されると理解される。クッション部材100において、ベース部170は、重ね継ぎにより第2の層118に化学的に結合される。クッション部材200は、ベース部270及び第2のフラップ部231が第2の層218に化学的に結合されることを可能にする突き合せ継ぎ手(butt-joint)を含む。
【0028】
図15は、クッション部材200のもう1つの断面図を示し、図16は、図15の一部の拡大図を示す。図16に示されるように、シール部210はさらに、ベース部270及び第2の層218に化学的に結合されるビード(bead)224を含む。図17を参照すると、第1のフラップ部211は、外縁213を持ち、ビード224は外縁213に重畳する(すなわち、外縁213の上に直に置かれる)。ビード224及びベース270は共に突き合せ継ぎ手を形成する。クッション部材200の製造中、ベース部270が成形されるとき、ベース部の遮断として働くために、ビード224が最初に外縁213に成形される。特に、ビード224が一度第2の層218に成形されると、成形する機械(図示せず)にある合わせ溝(matching groove)がビード224を収容し、ビード224上で遮断する。開示される処理は、織物にしわができることなく又は成形材料が裏抜け(bleed through)することなく、ベース部270及び第2のフラップ部231を成形するのに必要なかなり高い射出圧力の使用を有利に可能にすると理解される。
【0029】
クッション部材200は本明細書において、第1のフラップ部211と、第2のフラップ部231及びベース部270との間で突き合せ継ぎ手を形成するために、ビード224を含むシール部210に関連して開示されたとしても、同様に適切な代替のクッション部材(図示せず)が、上述した、結合層172及びフラップ部111により形成される重ね継ぎに類似する突き合せ継ぎ手を用いることができる。同様に、クッション部材100に類似するクッション部材が代わりに、開示される概念の範囲から外れることなく、夫々のベース部を夫々のフラップ部に結合するために、ビード及び関連する突き合せ継ぎ手を用いることができると理解される。その上、類似する適切な代替のクッション部材(例えば限定ではないが、クレドールスタイル又は枕スタイルのクッション部材)が開示される概念の範囲から外れることなく、患者に対する患者インタフェース装置とのエモーショナルな接続に関する所望する改善を提供するために、シール部110、210に類似するシール部を含んでよい。
【0030】
加えて、クッション部材100、200を製造する方法は、第1の層116、216を第2の層118、218に機械的に結合するステップであり、第1の層116、216は、患者14の顔と係合するように構成される及び織物材料から作られる、第2の層118、218は、モノマー、ポリマー及びとモノマーとポリマーとの混合物からなる集合から選択される材料から作られる、前記機械的に結合するステップと、ベース部170、270を第2の層118、218に化学的に結合するステップとを有する。前記方法はさらに、ビード224をベース部270及び第2の層218に化学的に結合するステップを有する。同様に、前記方法は、ビード224に類似するビードをベース部170及び第2の層118に化学的に結合するステップも含む。クッション部材200を製造する方法はさらに、第2のフラップ部231を第1の結合部225の第1の層及び第2の結合部226の第1の層に機械的に結合するステップ、並びに前記第2のフラップ部231を第1の結合部225の第2の層218及び第2の結合部226の第2の層218に化学的に結合するステップを有する。
【0031】
請求項において、括弧の間に置かれる如何なる参照符号もその請求項を限定するとは考えない。"有する"又は"含む"という言葉は、請求項に挙げられる以外の要素又はステップの存在を排除しない。幾つかの手段を列挙している装置の請求項において、これら手段の幾つかがハードウェアの同一のアイテムにより具現化されてよい。要素が複数あることを述べなくても、その要素が複数あることを排除しない。幾つかの手段を列挙している如何なる装置の請求項において、これらの手段の幾つかがハードウェアの同一のアイテムにより具現化されてよい。ある要素が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの要素が組み合わせて使用され得ないことを示していない。
【0032】
本発明は、最も実用的及び好ましい実施例であると現在考えられているものに基づいて、説明を目的に詳細に開示されていたとしても、そのような詳細は単に説明を目的とするだけであること、並びに本発明は開示した実施例に限定されるのではなく、それどころか付随する請求項の真意及び範囲内にある変更例及び同等な配置にも及んでいると意図されることが理解されるべきである。例えば、本発明は、可能な限り、何れかの実施例の1つ以上の特徴が、他の何れかの実施例の1つ以上の特徴と組み合わされ得ることを考慮していることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17