(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】輸送容器
(51)【国際特許分類】
F17C 13/08 20060101AFI20220218BHJP
F17C 3/04 20060101ALI20220218BHJP
F16L 59/12 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
F17C13/08 302A
F17C3/04 A
F17C13/08 302Z
F16L59/12
(21)【出願番号】P 2018557933
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2017025100
(87)【国際公開番号】W WO2017190846
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-03-11
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519288685
【氏名又は名称】リンデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Linde GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Carl-von-Linde-Str. 6-14, 82049 Pullach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ポッセルト
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ヴェアナー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ パルコネン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーシュ グレーンルンド
(72)【発明者】
【氏名】ステファン セー. アグレン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン スメドスタッド
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-119058(JP,A)
【文献】米国特許第03782128(US,A)
【文献】特表2010-505067(JP,A)
【文献】特開昭62-088379(JP,A)
【文献】実公平06-029635(JP,Y2)
【文献】特開昭48-089411(JP,A)
【文献】米国特許第04300354(US,A)
【文献】米国特許第05140823(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/08
F17C 3/04
F16L 59/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリウム(He)用の輸送容器(1)であって、
前記ヘリウム(He)を収容する内側容器(6)と、
極低温液体(N
2)を用いて能動的に冷却可能でかつ前記内側容器(6)を収容する熱シールド(23)と、
前記熱シールド(23)および前記内側容器(6)を収容する外側容器(2)と、
前記熱シールド(23)に設けられた支持リング(29)とを含み、
前記支持リング(29)は、前記熱シールド(23)のベース区間(24)に接続されていて、該ベース区間(24)の周方向に延在しており、
前記内側容器(6)は、第1の懸架ロッド(30~33)を用いて前記支持リング(29)に懸架されており、
前記支持リング(29)は、第2の懸架ロッド(34~37)を用いて前記外側容器(2)に懸架されており、
前記内側容器(6)および前記熱シールド(23)の異なる熱膨張に対して前記第1の懸架ロッド(30~33)および前記第2の懸架ロッド(34~37)のばね予荷重を保証するために、前記第1の懸架ロッド(30~33)のうちの少なくとも1つは第1のばね装置(38)を有し、前記第2の懸架ロッド(34~37)のうちの少なくとも1つは第2のばね装置(43)を有する、輸送容器(1)。
【請求項2】
前記第1の懸架ロッド(30~33)および前記第2の懸架ロッド(34~37)は、それぞれ放射状に配置されている、請求項1記載の輸送容器。
【請求項3】
前記第1のばね装置(38)および前記第2のばね装置(43)は、それぞれ複数の皿ばね要素(44)を有する、請求項1または2記載の輸送容器。
【請求項4】
それぞれ、4つの前記第1の懸架ロッド(30~33)および4つの前記第2の懸架ロッド(34~37)が設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項5】
前記第1のばね装置(38)を有する少なくとも1つの前記第1の懸架ロッド(30~33)は、重力方向(g)に関して前記外側容器(2)の中心軸線(M
1)の下方に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項6】
それぞれ1つの前記第1のばね装置(38)を有する2つの前記第1の懸架ロッド(32,33)は、重力方向(g)に関して前記外側容器(2)の中心軸線(M
1)の下方に配置されている、請求項5記載の輸送容器。
【請求項7】
前記第2のばね装置(43)を有する少なくとも1つの前記第2の懸架ロッド(34~37)は、重力方向(g)に関して前記外側容器(2)の中心軸線(M
1)の下方に配置されている、請求項5または6記載の輸送容器。
【請求項8】
それぞれ1つの前記第2のばね装置(43)を有する2つの前記第2の懸架ロッド(36,37)は、重力方向(g)に関して前記外側容器(2)の中心軸線(M
1)の下方に配置されている、請求項7記載の輸送容器。
【請求項9】
前記支持リング(29)は、前記第2の懸架ロッド(34~37)が配置されたポケット(39~42)を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項10】
前記内側容器(6)は、前記第1の懸架ロッド(30~33)が固定された固定フランジ(12)を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項11】
前記支持リング(29)、前記第1の懸架ロッド(30~33)および前記第2の懸架ロッド(34~37)は、前記内側容器(6)の第1のカバー区間(10)に対応付けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載の輸送容器。
【請求項12】
前記内側容器(6)は、第2のカバー区間(11)において、第3の懸架ロッド(45,46)を用いて前記熱シールド(23)に懸架されており、前記熱シールド(23)は、第4の懸架ロッド(47,48)を用いて前記外側容器(2)に懸架されている、請求項11記載の輸送容器。
【請求項13】
前記第3の懸架ロッド(45,46)および前記第4の懸架ロッド(47,48)は、極低温液体(N
2)が収容された冷媒容器(16)を通って導かれている、請求項12記載の輸送容器。
【請求項14】
前記内側容器(6)は、前記第2のカバー区間(11)において、前記熱シールド(23)に対して変位不能である、請求項13記載の輸送容器。
【請求項15】
前記熱シールド(23)は、前記内側容器(6)を完全に取り囲んでいる、請求項1から14までのいずれか1項記載の輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリウム用の輸送容器に関する。
【0002】
ヘリウムは、天然ガスと一緒に採掘される。大量のヘリウムの輸送は、経済的な理由から、液体もしくは超臨界的な形態で、すなわち、約4.2~6Kの温度および1~6barの圧力下で行われる場合に限って合理的である。液体ヘリウムもしくは超臨界ヘリウムの輸送には、ヘリウムの圧力が急速に上昇し過ぎることを回避するために精巧に断熱される輸送容器が用いられる。この種の輸送容器は、例えば液体窒素によって冷却させることができる。この場合、液体窒素で冷却された熱シールドが設けられる。熱シールドは、輸送容器の内側容器を遮蔽する。内側容器には、液体ヘリウムもしくは極低温ヘリウムが収容されている。液体ヘリウムもしく極低温ヘリウムに対する保持期間は、この種の輸送容器の場合、35~40日間であり、すなわち、この期間の経過後は、内側容器内の圧力は6barの最大値まで上昇する。液体窒素の備蓄は、ほぼ35日分で足りる。
【0003】
欧州特許第1673745号明細書(EP1673745B1)には、この種の液体ヘリウム用の輸送容器が記載されている。この輸送容器は、液体ヘリウムが収容された内側容器と、内側容器を部分的に覆う熱シールドと、熱シールドを冷却するための極低温液体が収容された冷媒容器と、これらの内側容器、熱シールドおよび冷媒容器が配置された外側容器とを含む。
【0004】
米国特許第3,782,128号明細書(US3,782,128A)には、ヘリウムを収容するための内側容器と、極低温液体を用いて能動的に冷却可能でかつ内側容器が収容された熱シールドと、熱シールドおよび内側容器とが収容された外側容器と、熱シールドに設けられた遮蔽補強リングとを有する、ヘリウム用の輸送容器が示されている。
【0005】
米国特許出願公開第2010/0011782号明細書(US2010/0011782A1)には、ヘリウムを収容するための内側容器と、内側容器が収容されている熱シールドと、内側容器および熱シールドが収容された外側容器とを有する、ヘリウム用の輸送容器が記載されている。内側容器は、支柱を用いて外側容器から直接懸架される。
【0006】
この背景を踏まえて、本発明の課題は、改善された輸送容器を提供することにある。
【0007】
したがって、ヘリウム用の輸送容器が提案される。この輸送容器は、ヘリウムを収容する内側容器と、極低温液体を用いて能動的に冷却可能でかつ内側容器が収容された熱シールドと、熱シールドおよび内側容器が収容された外側容器と、熱シールドに設けられた支持リングとを含み、内側容器は、第1の懸架ロッドを用いて支持リングに懸架されており、支持リングは、第2の懸架ロッドを用いて外側容器に懸架されており、内側容器および熱シールドの異なる熱膨張のもとで第1の懸架ロッドおよび第2の懸架ロッドのばね予荷重を保証するために、第1の懸架ロッドのうちの少なくとも1つは第1のばね装置を有し、第2の懸架ロッドのうちの少なくとも1つは第2のばね装置を有する。
【0008】
内側容器は、ヘリウム容器または内側タンクと称することもできる。輸送容器は、ヘリウム輸送容器と称することもできる。ヘリウムは、液体ヘリウムまたは極低温ヘリウムと称することができる。ヘリウムは同様に、特に極低温液体である。輸送容器は、特に、ヘリウムを極低温または液体もしくは超臨界的な形態で輸送するように構成されている。熱力学において、臨界点は、液相および気相の密度の等化によって特徴付けられる物質の熱力学状態である。2つの凝集状態の差異は、この時点で存在しなくなる。相図において、点は蒸気圧曲線の上端を表す。ヘリウムは、液体もしくは極低温の形態で内側容器に充填される。次いで、内側容器内では、液体ヘリウムを有する液体ゾーンと、気体ヘリウムを有する気体ゾーンとが生じる。つまり、このヘリウムは、内側容器に充填された後、異なる凝集状態の2つの相、詳細には液体および気体形態の2つの相を有する。すなわち、内側容器には、液体ヘリウムと気体ヘリウムとの間で相境界が存在する。所定時間の経過後、すなわち、内側容器内の圧力が上昇すると、内側容器内に存在するヘリウムは単相になる。次いで、相境界はもはや存在せず、ヘリウムは超臨界状態である。
【0009】
極低温液体または寒剤は、好ましくは液体窒素である。極低温液体は、代替的に、例えば液体水素または液体酸素であってもよい。熱シールドが能動的に冷却可能であるか、または能動的に冷却されるということは、極低温液体が当該熱シールドを少なくとも部分的に貫流するかまたはその周りを流れることで、当該熱シールドが冷却されることを意味するものと理解されたい。特に、熱シールドは作動状態にあるだけであり、すなわち、内側容器にヘリウムが充填されているときに、能動的に冷却されている。極低温液体が消費されているときには、熱シールドは冷却されなくてもよい。熱シールドの能動的な冷却の際には、極低温液体は沸騰して蒸発し得る。これにより、熱シールドは、極低温液体の沸点にほぼもしくは正確に一致する温度を有する。極低温液体の沸点は、好ましくは、液体ヘリウムの沸点よりも高い。
【0010】
好ましくは、内側容器の外側は、ヘリウムの温度にほぼもしくは正確に一致する温度を有する。外側容器、内側容器、および熱シールドは、共通の対称軸線または中心軸線に対して回転対称に構成されていてもよい。内側容器および外側容器は、好ましくはステンレス鋼から製造されている。内側容器は、好ましくは、湾曲したカバー区間によって両側が閉鎖された管状のベース区間を有する。内側容器は流体密である。外側容器も好ましくは同様に、両側の端面がカバー区間によって閉鎖された管状のベース区間を有する。内側容器のベース区間および/または外側容器のベース区間は、円形またはほぼ円形の断面を有し得る。熱シールドは、好ましくは高純度のアルミニウム材料から製造されている。
【0011】
熱シールドが設けられていることによって、内側容器は、極低温液体の沸点(1.3baraにおける窒素の沸点:79.5K)に相応する温度を有する表面のみによって取り囲まれることが保証される。これにより、熱シールド(79.5K)と内側容器(ヘリウムの温度:4.2~6K)との間では、外側容器の周囲に比べて、わずかな温度差のみが生じる。これにより、液体ヘリウムの保持期間も、公知の輸送容器に比べて大幅に延長され得る。この場合、内側容器の表面と熱シールドとの間の熱交換は、放射と残留ガス伝導とによってのみ行われる。すなわち、熱シールドは、内側容器に接触しない。
【0012】
輸送容器が運転開始されるときにはまず熱シールドが温度を下げるべく冷却される。この場合、内側容器は、最初はまだヘリウムを充填されない。これにより、真空の残留ガスは、熱シールド上で凍結され、したがって、内側容器に設けられた断熱要素のメタリックな光沢の最外殻層が汚染されることはない。第1および第2の懸架ロッドに対向する内側容器の端部において、当該内側容器は、軸方向で熱シールドおよび/または外側容器に固定されている。すなわち、ここでは固定ベアリングが設けられている。熱シールドの冷却により、熱に起因する応力を懸架ロッドにもたらすことができる。熱シールドと内側容器との間の相対運動によって引き起こされるこれらの熱応力は、輸送容器の運転温度で生じる熱応力よりも著しく大きい。これらの応力は、内側容器の材料と熱シールドとの間の熱膨張係数の差によって支配される。
【0013】
輸送容器の運転開始の際のこれらの応力は、もはや懸架ロッドの弾性変形によって吸収することができない。むしろ、塑性変形、すなわち懸架ロッドの永続的な伸長が生じる。伸長された懸架ロッドの場合、内側容器は運転温度で部分的に垂れ下がる可能性がある。この場合、重力方向に関して外側容器の中心軸線の下方に配置された懸架ロッドは緩くなる。したがって、内側容器に作用する横方向の力は、内側容器が移動した後でしか吸収することができず、その結果、付加的加速力が引き起こされる可能性がある。このことは、第1の懸架ロッドおよび第2の懸架ロッドにばね装置を設けることによって、確実に防止することができる。ばね装置を用いることにより、輸送容器の運転開始の際に懸架ロッドの必要な長さ変化を弾性的に吸収することが可能である。したがって、ばね装置を用いることにより、懸架ロッドの弾性が人工的に増加する。この場合、これらのばね装置は、それらによって、懸架ロッドが、輸送容器の運転開始の際にほんのわずかだけ塑性変形するような寸法になっている。一方、輸送容器の運転状態においては、これらのばね装置は、横方向の力を弾性的に吸収可能にするために十分な張力を供給する。
【0014】
一実施形態によれば、第1の懸架ロッドおよび第2の懸架ロッドは、それぞれ放射状に配置されている。
【0015】
好ましくは、これらの懸架ロッドは、それぞれテンションロッドである。第1の懸架ロッドおよび第2の懸架ロッドは、それぞれ支持リングの周りに均一もしくは不均一に分散配置されてもよい。
【0016】
さらなる実施形態によれば、第1のばね装置および第2のばね装置は、それぞれ複数の皿ばね要素を有する。
【0017】
特に、ばね装置は、それぞれ皿ばね要素アセンブリとして形成されている。ここではばね装置毎の皿ばね要素の数は任意である。代替的に、ばね装置は、円筒形ばね、特に引張りばねとして構成されてもよい。
【0018】
さらなる実施形態によれば、4つの第1の懸架ロッドおよび4つの第2の懸架ロッドがそれぞれ設けられている。
【0019】
懸架ロッドの数は任意である。しかしながら、好ましくは、少なくとも3つの第1の懸架ロッドおよび3つの第2の懸架ロッドが設けられている。代替的に、4つ以上の第1の懸架ロッドおよび4つ以上の第2の懸架ロッドが設けられていてもよい。第1の懸架ロッドの数は、第2の懸架ロッドの数と異なることも可能である。
【0020】
さらなる実施形態によれば、第1のばね装置を有する少なくとも1つの第1の懸架ロッドは、重力方向に関して外側容器の中心軸線の下方に配置されている。
【0021】
重力方向に関して中心軸線の上方に配置されている第1の懸架ロッドは、内側容器の重力による応力に基づいて保持される。それゆえこれらの懸架ロッドは、ばね装置を有していない。
【0022】
さらなる実施形態によれば、それぞれ1つの第1のばね装置を有する2つの第1の懸架ロッドは、重力方向に関して外側容器の中心軸線の下方に配置されている。
【0023】
好ましくは、この種の第1のばね装置なしの2つの第1の懸架ロッドも、重力方向に関して外側容器の中心軸線の上方に配置されている。
【0024】
さらなる実施形態によれば、第2のばね装置を有する少なくとも1つの第2の懸架ロッドは、重力方向に関して外側容器の中心軸線の下方に配置されている。
【0025】
重力方向に関して中心軸線の上方に配置されている第2の懸架ロッドは、内側容器の重力による応力に基づいて保持される。それゆえこれらの懸架ロッドは、ばね装置を有していない。
【0026】
さらなる実施形態によれば、それぞれ1つの第2のばね装置を有する2つの第2の懸架ロッドは、重力方向に関して外側容器の中心軸線の下方に配置されている。
【0027】
さらに好ましくは、この種の第2のばね装置なしの2つの第2の懸架ロッドは、外側容器の重力方向に関して中心軸線の上方に配置されている。
【0028】
さらなる実施形態によれば、支持リングは、第2の懸架ロッドが配置されたポケットを有する。
【0029】
ポケットは、好ましくは、支持リングから出発して中心軸線の方向で径方向内向きに配向されている。ポケットを設けることにより、第2の懸架ロッドを可及的に長く形成することができる。これにより、支持リングから外側容器に向かう熱輸送経路が長くなる。これにより、外側容器から支持リングへの熱入力を大幅に低減することができる。
【0030】
さらなる実施形態によれば、内側容器は、第1の懸架ロッドが固定された固定フランジを有する。
【0031】
固定フランジは好ましくは円筒状である。固定フランジは、特に、内側容器の中心軸線に対して回転対称に配置されている。外側容器の中心軸線は、内側容器の中心軸線と同一であってもよい。第1の懸架ロッドは、固定フランジに設けられたアイレットを用いて当該固定フランジに懸架されてもよい。
【0032】
さらなる実施形態によれば、支持リング、第1の懸架ロッドおよび第2の懸架ロッドは、内側容器の第1のカバー区間に対応付けられている、若しくは内側容器の第1のカバー区間の付近に配置されている。
【0033】
第1のカバー区間は、好ましくは同様に、外側容器内に配置された、輸送容器の冷媒容器とは反対側に配置されている。
【0034】
さらなる実施形態によれば、内側容器は、第2のカバー区間において、第3の懸架ロッドを用いて熱シールドに懸架されており、この場合、熱シールドは、第4の懸架ロッドを用いて外側容器に懸架されている。
【0035】
この目的のために、内側容器が第3の懸架ロッドを用いて懸架されている冷媒容器の一部として、さらなる支持リングが設けられてもよい。支持リングは、第4の懸架ロッドを用いて外側容器に懸架されてもよい。好ましくは、放射状に配置されたこの種の4つの第3の懸架ロッドおよび放射状に配置されたこの種の4つの第4の懸架ロッドが設けられている。好ましくは、第3および第4の懸架ロッドは、それぞれ、ばね装置を有していない。第3および第4の懸架ロッドは、内側容器の固定ベアリングを形成する。
【0036】
さらなる実施形態によれば、第3の懸架ロッドおよび第4の懸架ロッドは、極低温液体が収容された冷媒容器を通って導かれる。
【0037】
好ましくは、第3の懸架ロッドおよび第4の懸架ロッドは、重力方向に対して平行に冷媒容器を通って導かれる。
【0038】
さらなる実施形態によれば、内側容器は、第2のカバー区間において熱シールドに対して変位不能である。
【0039】
好ましくは、第2のカバー区間において、内側容器の固定ベアリングが設けられている。第1のカバー区間には浮動ベアリングが設けられている。
【0040】
さらなる実施形態によれば、熱シールドは、内側容器を完全に取り囲む。
【0041】
特に、熱シールドは、内側容器と冷媒容器との間に配置されている。これにより、内側容器が、極低温液体、特に窒素の沸点温度に相応する温度を有する表面によって完全に取り囲まれていることが保証されている。これにより、ヘリウム保持期間は著しく増加する。
【0042】
輸送容器のさらなる可能な実施形態は、上記のもしくは以下に実施例に関連して記載する特徴または実施形態の明示されていない組合せも含む。この場合、当業者であれば、輸送容器のそれぞれの基本形態に、改良または補足として個々の態様も追加し得る。
【0043】
輸送容器のさらなる好ましい構成は、従属請求項の主題ならびに以下に記載する輸送容器の実施例である。さらに、輸送容器を、好ましい実施形態に基づいて添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【0045】
図面中、同じ要素または機能の同じ要素には、特段の記載がない限り同じ参照符号が付されている。
【0046】
【0047】
輸送容器1は、ヘリウム輸送容器と称することもできる。輸送容器1は、他の極低温液体にも用いることができる。極低温液体、または単に寒剤に対する例には、前述の液体ヘリウムHe(1baraにおける沸点:4.222K=-268.928℃)、液体水素H2(1baraにおける沸点:20.268K=-252.882℃)、液体窒素N2(1baraにおける沸点:77.35K=-195.80℃)または液体酸素O2(1baraにおける沸点:90.18K=-182.97℃)が挙げられる。
【0048】
輸送容器1は、外側容器2を含む。外側容器2は、例えばステンレス鋼から製造されている。外側容器2は、例えば10メートルの長さl2を有することができる。外側容器2は、管状または円筒状のベース区間3を含み、このベース区間3は、両側の端面のそれぞれがカバー区間4,5を用いて、特に第1のカバー区間4と第2のカバー区間5とを用いて閉鎖されている。ベース区間3の断面は、円形またはほぼ円形の幾何形状を有し得る。カバー区間4,5は湾曲している。カバー区間4,5は、逆向きに湾曲しており、そのため、両カバー区間4,5は、ベース区間3に関して外側に湾曲している。外側容器2は流体密、特に気密である。外側容器2は、対称軸線または中心軸線M1を有し、この対称軸線または中心軸線M1に対して外側容器2は回転対称に構成されている。
【0049】
輸送容器1は、さらに、液体ヘリウムHeを収容するための内側容器6を含む。内側容器6も同様に、例えばステンレス鋼から製造されている。内側容器6内には、ヘリウムHeが二相領域で存在する限り、蒸発したヘリウムHeを有する気体ゾーン7と、液体ヘリウムHeを有する液体ゾーン8とが設けられていてもよい。内側容器6は流体密、特に気密であり、かつ制御された減圧のための吹出し弁を含むことができる。内側容器6も、外側容器2のように、管状または円筒状のベース区間9を含み、このベース区間9も両側の端面がカバー区間10,11、特に第1のカバー区間10と第2のカバー区間11とによって閉鎖されている。ベース区間9の断面は、円形またはほぼ円形の幾何形状を有し得る。
【0050】
第1のカバー区間10には、円筒状の固定フランジ12が設けられてもよい。第2のカバー区間11には、管状に形成されてもよい軸方向の固定点13が設けられてもよい。カバー区間10,11は、逆向きに湾曲しており、そのため、両カバー区間10,11は、ベース区間9に関して外側に湾曲している。
【0051】
内側容器6は、外側容器2のように、中心軸線M
1に対して回転対称に形成されている。内側容器6と外側容器2との間に設けられた中間室14は排気されている。内側容器6は、さらに、
図1~
図4には示されていない、断熱要素を有し得る。この断熱要素は、外側に高反射性銅層、例えば銅箔もしくは銅蒸着アルミニウム箔と、内側容器6と銅層との間に配置された多層断熱層とを有する。断熱層は、反射体として穿孔されエンボス加工されたアルミニウム箔と、アルミニウム箔の間のスペーサとしてのガラスペーパーとからなる、交互に配置された複数の層を含む。断熱層は10層であってもよい。アルミニウム箔とガラスペーパーとからなる層は、隙間なく内側容器6に被着されており、すなわち圧入されている。断熱層は、いわゆるMLI(英記:multilayer insulation)であってもよい。内側容器6および断熱要素も、外側は、ほぼヘリウムHeの温度に相応する温度を有する。
【0052】
輸送容器1は、さらに、冷媒容器16を有する冷却システム15を含む。この冷媒容器16も好ましくは同様に中心軸線M
1に対して回転対称に構成されている。冷媒容器16は、中央に開口17を有し、この開口17は中心軸線M
1の方向に延びている。さらに冷媒容器16は、4つの開口18,19を有しており、それらのうち、
図1では、重力方向gに延在する2つの開口18,19のみが示されている。冷媒容器16内には、極低温液体、特に窒素N
2が収容されている。冷媒容器16には、蒸発窒素N
2を有する気体ゾーン20と、液体窒素N
2を有する液体ゾーン21とが設けられていてもよい。
【0053】
内側容器6の軸線方向Aで見て、冷媒容器16は、当該内側容器6に隣接して配置されている。冷媒容器16は、内側容器6のように、外側容器2の内部に配置されている。内側容器6、特に内側容器6のカバー区間11と、冷媒容器16との間には、中間室22が設けられており、この中間室22は、中間室14の一部であってよい。すなわち、この中間室22も同様に排気されている。
【0054】
輸送容器1は、さらに冷却システム15に対応付けられた熱シールド23を含む。熱シールド23は、内側容器6と外側容器2との間に設けられ排気された中間室14に配置されている。熱シールド23は、冷媒容器16に収容された液体窒素N2を用いて能動的に冷却可能であるか、または能動的に冷却される。本願では、能動的な冷却とは、液体窒素N2が熱シールド23を冷却するために、液体窒素N2がこれを通って導かれる、またはこれに沿って導かれることを意味するものと理解されたい。熱シールド23は、ここでは窒素N2の沸点にほぼ相応する温度に冷却される。
【0055】
熱シールド23は、円筒状または管状のベース区間24を含み、このベース区間24の両側は、ベース区間24を端面で閉鎖するカバー区間25,26によって閉鎖されている。ベース区間24も、カバー区間25,26も、窒素N2を用いて能動的に冷却される。代替的に、カバー区間25,26は、ベース区間24と素材結合的に接続されており、そのため、カバー区間25,26の冷却を、熱伝導によって行うことができる。ベース区間24の断面は、円形またはほぼ円形の幾何形状を有し得る。熱シールド23も好ましくは同様に、中心軸線M1に対して回転対称に構成されている。熱シールド23の第1のカバー区間25は、内側容器6、特に内側容器6のカバー区間11と、冷媒容器16との間に配置されている。熱シールド23の第2のカバー区間26は、冷媒容器16とは反対側にある。熱シールド23は、ここでは自己支持型である。すなわち、熱シールド23は、内側容器6にも外側容器2にも支持されていない。
【0056】
熱シールド23は流体透過性である。すなわち、内側容器6と熱シールド23との間の中間室27は、中間室14と流体連通している。これにより、中間室14,27は、同時に排気することができる。熱シールド23には、中間室14,27の排気を可能にするために、孔部、開口などを設けてもよい。熱シールド23は、好ましくは高純度アルミニウム材料から製造されている。
【0057】
熱シールド23の第1のカバー区間25は、冷媒容器16を内側容器6から完全に遮蔽する。すなわち、内側容器6から冷媒容器16への方向で見て、冷媒容器16は、熱シールド23の第1のカバー区間25によって完全に覆われている。特に、熱シールド23は、内側容器6を完全に取り囲む。すなわち、内側容器6は、完全に熱シールド23の内部に配置されており、この場合、熱シールド23は、既に上述したように、流体密ではない。
【0058】
熱シールド23は、自身の能動的な冷却のために、少なくとも1つの、しかしながら好ましくは複数の冷却ラインを含む。例えば、熱シールド23は、6つの冷却ラインを有し得る。1つ以上の冷却ラインは、冷媒容器16と流体連通しており、それにより液体窒素N2が冷媒容器16から1つ以上の冷却ラインに流れ得る。冷却システム15は、さらに図示されていない相分離器を含むことができ、この相分離器は、液体窒素N2から気体窒素N2を分離するように構成されている。相分離器を用いることにより、液体窒素N2の沸騰の際に生じる気体窒素N2を冷却システム15から吹出させることが可能である。
【0059】
1つ以上の冷却ラインは、熱シールド23のベース区間24にも、カバー区間25,26にも設けられている。代替的に、カバー区間25,26は、ベース区間24に素材結合的に接続されてもよく、それによってその冷却は、熱伝導によって行われる。1つ以上の冷却ラインは、重力方向gに対して垂直に配置された水平線Hに対して勾配を有する。特に、1つ以上の冷却ラインは、水平線Hと、3°よりも大きい角度を形成する。
【0060】
熱シールド23と外側容器2との間には、さらなる多層の断熱層、特にMLIが配置されてもよく、この断熱層は、中間室14を完全に充填し、それによって熱シールド23の外側および外側容器2の内側に接触する。断熱層の反射体としてのアルミニウム箔およびガラス絹、ガラスペーパーもしくはガラス繊維メッシュからなる層は、ここでは、上述した内側容器6の断熱要素とは異なって、中間室14内に緩やかに挿入されている。この緩やかにとは、ここでは、アルミニウム箔およびガラス絹、ガラスペーパーもしくはガラス繊維メッシュからなる層が圧入されていないことを意味している。そのため、アルミニウム箔のエンボス加工および穿孔によって、断熱層、ひいては中間室14が問題なく排気され得る。また、アルミニウム箔層間の不所望な機械的-熱的接触も低減される。この接触は、アルミニウム箔層の放射交換によって生じる温度勾配を損なわせる可能性がある。
【0061】
熱シールド23は、内側容器6の断熱要素の銅層から離間して周辺に配置され、銅層とは接触しない。これによって、放射による熱導入は、物理的に可能な最小値まで低減される。銅層と熱シールド23との間に設けられる間隙の間隙幅は、10mmであり得る。これにより、内側容器6の表面から熱シールド23への熱の伝達は、放射および残留ガス伝導のみによって行われ得る。
【0062】
内側容器6は、第2のカバー区間11に対応付けられた端部区間が外側容器2に固定的に接続されている。すなわち、内側容器6の第2のカバー区間11は、熱シールド23と外側容器2とに対して変位不能である。外側容器2には、特に管状の固定点28が設けられており、この固定点28は、固定点13と接続されている。これらの固定点13,28は、冷媒容器16内に設けられた開口17を通って導かれている。冷媒容器16も外側容器2内で軸方向に固定されている。
【0063】
熱シールド23は、内側容器6の第1のカバー区間10に対応付けられた支持リング29を含む。支持リング29は、例えば、熱シールド23のベース区間24に素材結合的に接続されてもよい。内側容器6は、固定フランジ12を介して懸架ロッド30~33を用いて支持リング29に懸架されている。第1の懸架ロッド30~33は、特に引っ張りロッドである。第1の懸架ロッド30~33の数は任意である。例えば、放射状に配置された4つのこの種の第1の懸架ロッド30~33を設けてもよい。第1の懸架ロッド30~33は、支持リング29の周面にわたって不均一に分散配置されていてもよい。重力方向gに関して、2つの第1の懸架ロッド32,33が中心軸線M1の下方に配置されている。2つのさらなる第1の懸架ロッド30,31が、重力方向gに関して中心軸線M1の上方に配置されている。第1の懸架ロッド30~33は、それぞれ、固定フランジ12から支持リング29に向かって導かれ、支持リング29を固定フランジ12に接続している。
【0064】
さらに、支持リング29は第2の懸架ロッド34~37を用いて外側容器2に懸架されている。これらの第2の懸架ロッド34~37は、好ましくは同様に放射状に配置されており、支持リング29の周面にわたって不均一に分散配置されていてもよい。第2の懸架ロッド34~37の数は任意である。例えば4つのこの種の第2の懸架ロッド34~37が設けられている。これらの第2の懸架ロッドのうちの2つ36,37は、重力方向gに関して中心軸線M1の下方に配置されている。これらの第2の懸架ロッドのうちのさらなる2つ34,35は、重力方向gに関して中心軸線M1の上方に配置されている。
【0065】
第1の懸架ロッド32,33のうちの少なくとも1つは、第1のばね装置38を有する。好ましくは、重力方向gに関して中心軸線M1の下方に配置されている2つの第1の懸架ロッド32,33は、それぞれ、この種のばね装置38を有する。重力方向gに関して中心軸線M1の上方に配置されている第1の懸架ロッド30,31は、この種の第1のばね装置38は有していない。
【0066】
支持リング29は複数のポケット39~42を含み、この場合、各ポケット39~42には第2の懸架ロッド34~37が収容されている。これらのポケット39~42は、支持リング29から出発して径方向内向きに固定フランジ12に向かって延びている。第2の懸架ロッド34~37は、それぞれ、自身に対応付けられたポケット39~42に支持されている。したがって、支持リング29は、ポケット39~42および第2の懸架ロッド34~37を介して、外側容器2に懸架されている。
図2および
図3では、第2の懸架ロッド34,35は、それらが自身に対応付けられたポケット39,40にまだ支持されていない取り付け位置において示されている。輸送容器1が取り付けられた後では、第2の懸架ロッド34,35に設けられたナットがポケット39,40に接触している。
【0067】
重力方向gに関して中心軸線M
1の下方に設けられている2つの第2の懸架ロッド36,37には、それぞれ第2のばね装置43が設けられている。第1のばね装置38および第2のばね装置43は、原則的に同一に構成されている。第2のばね装置43は、ポケット41,42に支持される。重力方向gに関して中心軸線M
1の上方に配置されている第2の懸架ロッド34,35は、この種のばね装置43を有していない。
図3では、第2の懸架ロッド37は、第2のばね装置43がポケット42に接触していない取り付け位置において示されている。輸送容器1が取り付けられた後では、第2のばね装置43はポケット42と接触している。
【0068】
ポケット39~42を用いることにより、第2の懸架ロッド34~37の可及的に長い機械的長さを達成することができる。これにより、外側容器2から支持リング29に向かう熱伝導経路が可及的に長くなり、それによって熱シールド23への熱入力を低減することができる。ばね装置38,43を用いることにより、内側容器6および熱シールド23の異なる熱膨張に対して第1の懸架ロッド32,33および第2の懸架ロッド36,37のばね予荷重を保証する若しくは維持することができる。
【0069】
図4は、第2のばね装置43の拡大詳細図を示す。ばね装置38,43の各々は、複数の皿ばねパケットもしくは皿ばね要素44を有しており、それらのうちから
図4では1つのみに参照符号が付されている。各皿ばね要素44は、2つ以上の上下に重なり合って湾曲した皿ばねを含む。隣接する皿ばね要素44は、それらが相反して湾曲するように配置されている。これにより、所望のばね作用を達成することができる。
【0070】
ここでは
図1に戻って、内側容器6の第2のカバー区間11には、放射状に配置された4つの第3の懸架ロッド45,46が設けられており、それらのうちから
図1では2つだけが示されている。第3の懸架ロッド45,46を用いて、内側容器6は、熱シールド23もしくは冷媒容器16に懸架されている。熱シールド23も、第4の懸架ロッド47,48を介して(それらのうちから
図1では2つだけが示されている)外側容器2に懸架されている。懸架ロッド45~48の固定のために、さらなる支持リングが設けられてもよい。懸架ロッド45~48は、冷媒容器16内に設けられた開口18,19を通って導かれている。
【0071】
輸送容器1は、支持リング29に対する内側容器6の回転を防止する複数の回転防止手段49,50も含む。これらの回転防止手段49,50は、例えば鋼帯として形成されている。特に、回転防止手段49,50は、それぞれ一方の端部が内側容器6のカバー区間10に固定的に接続され、他方の端部は支持リング29に固定的に接続されている。
【0072】
以下では輸送容器1の機能モードを要約して説明する。内側容器6に液体ヘリウムHeが充填される前に、まず熱シールド23が、初めは気体でその後に液体の極低温窒素N2を用いて、液体窒素N2の少なくともほぼもしくはちょうど沸点まで(1.3bara:79.5K)冷却される。ここでは、内側容器6は、まだ能動的に冷却されない。熱シールド23の冷却の際に、中間室14に依然として存在する真空の残留ガスが熱シールド23上で凍結される。これにより、内側容器6に液体ヘリウムHeが充填される際に、真空の残留ガスが内側容器6の外側で凍結され、それによって内側容器6の断熱要素の銅層のメタリックな光沢表面が汚染されることが防止され得る。熱シールド23および冷媒容器16が完全に冷却され、かつ冷媒容器16が再び窒素N2で完全に満たされると直ちに、内側容器6に液体ヘリウムHeが充填される。
【0073】
最初は熱シールド23が冷却され、内側容器6はまだヘリウムHeを充填されないので、冷却された熱シールド23と内側容器6との間では、一方では異なる温度に基づき、他方では熱シールド23の材料、詳細にはアルミニウムと、内側容器6の材料、詳細にはステンレス鋼との異なる熱膨張係数に基づき、長さの差が生じる。このことは、熱シールド23と内側容器6との間の相対運動につながる可能性がある。熱シールド23と内側容器6との間の相対運動によって引き起こされるこれらの熱応力は、輸送容器1の運転温度で生じる熱応力よりも著しく大きい。これらの熱応力は、アルミニウムとステンレス鋼との間の熱膨張係数の差によって生じる。
【0074】
運転開始の際のこれらの応力は、もはや第1および第2の懸架ロッド30~37の弾性変形によって吸収することができず、むしろ、塑性変形、すなわち懸架ロッド30~37の永続的な伸長が生じる。この場合、内側容器6はわずかに垂れ下がる可能性があり、それに伴い中心軸線M1に対してわずかに傾斜する可能性がある。しかしながら、ばね装置38,43を用いることにより、懸架ロッド30~37が顕著な塑性変形を被ることなく、常に引張応力下にあることが保証される。したがって、ばね装置38,43により、それぞれ2つの下方の懸架ロッド32,33,36,37が緩むことが防止される。これにより、内側容器6が外側容器2の内部で緩むことも防止され、それによって、例えば輸送容器1の輸送の際に付加的な加速度による力の発生が確実に防止される。したがって、このような加速度による力に基づく懸架ロッド30~37のさらなる塑性変形は、ばね装置38,43を用いたばね予荷重によって防止することができる。これにより、外側容器2内での内側容器6の過度な垂れ下がりまたは懸架ロッド30~37の破損、ひいては輸送容器1の損傷が防止され得る。
【0075】
本発明は、実施例に基づいて説明されたにもかかわらず、多岐にわたる変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 輸送容器
2 外側容器
3 ベース区間
4 カバー区間
5 カバー区間
6 内側容器
7 気体ゾーン
8 液体ゾーン
9 ベース区間
10 カバー区間
11 カバー区間
12 固定フランジ
13 固定点
14 中間室
15 冷却システム
16 冷媒容器
17 開口
18 開口
19 開口
20 気体ゾーン
21 液体ゾーン
22 中間室
23 シールド
24 ベース区間
25 カバー区間
26 カバー区間
27 中間室
28 固定点
29 支持リング
30 懸架ロッド
31 懸架ロッド
32 懸架ロッド
33 懸架ロッド
34 懸架ロッド
35 懸架ロッド
36 懸架ロッド
37 懸架ロッド
38 ばね装置
39 ポケット
40 ポケット
41 ポケット
42 ポケット
43 ばね装置
44 皿ばね要素
45 懸架ロッド
46 懸架ロッド
47 懸架ロッド
48 懸架ロッド
49 回転防止手段
50 回転防止手段
A 軸線方向
g 重力方向
H 水平線
He ヘリウム
H2 水素
l2 長さ
M1 中心軸線
N2 窒素
O2 酸素