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特許7026663ディスプレイ用粘着シートおよびこれを含むディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】ディスプレイ用粘着シートおよびこれを含むディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220218BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20220218BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20220218BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220218BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220218BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220218BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20220218BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220218BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220218BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220218BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/25
C09J7/40
C09J9/02
C09J11/06
C09J201/00
C09J133/00
B32B27/00 M
B32B27/18 D
B32B27/30 A
C09K3/16 104E
C09K3/16 108D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019196741
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2020070441
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0129962
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519204054
【氏名又は名称】イノックス・アドバンスト・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOX Advanced Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】171,Asanvalley-ro,Dunpo-myeon,Asan-si,Chungcheongnam-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イ サン ウー
(72)【発明者】
【氏名】キム ジン ヒュク
(72)【発明者】
【氏名】バエク ヨン ビン
(72)【発明者】
【氏名】イ スル-キ
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129785(JP,A)
【文献】特開2014-148598(JP,A)
【文献】特開2009-051983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B 27/00
B32B 27/18
B32B 27/30
C09K 3/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および、前記基材の上面に形成され、主剤樹脂(官能基として水酸基及び/又はカルボキシル基を有し、更に側鎖に二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状化合物を開環付加してなるガラス転移温度が-60~0℃の共重合体を除く)および25℃で固状であり、下記化学式3で表される帯電防止剤を具備する組成物を通じて形成された粘着層を含むベースフィルム;を含み、
【化1】
前記組成物は、主剤樹脂100重量部に対して前記帯電防止剤を0.01~5重量部で含み、
前記粘着層は、下記数式1による表面抵抗の変化率が30%以内であり:
【数1】
この際、前記aは、電圧10Vの条件で測定した粘着層の初期表面抵抗(Ω)であり、前記bは、温度220℃および電圧10Vの条件で15分間5分間隔で表面抵抗(Ω)を測定し、これを4回繰り返して行ったとき、前記初期表面抵抗との差異が最大となる表面抵抗の経時変化値を示し、
前記粘着層は、表面抵抗が2.1×1010~2.3×1013Ωであるディスプレイ用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着層は、前記数式1による表面抵抗の変化率が26%以内である、請求項1に記載のディスプレイ用粘着シート。
【請求項3】
前記粘着層は、下記測定方法により測定した表面抵抗の経時変化値が1.5×1010~2.96×1013Ωである、請求項1に記載のディスプレイ用粘着シート:
[測定方法]
温度220℃および電圧10Vの条件で15分間5分間隔で表面抵抗を測定し、これを4回繰り返して行って表面抵抗の経時変化値を測定する。
【請求項4】
前記主剤樹脂は、アクリル系共重合体である、請求項1に記載のディスプレイ用粘着シート。
【請求項5】
前記基材は、少なくとも一面が帯電防止処理された、請求項1に記載のディスプレイ用粘着シート。
【請求項6】
前記粘着層の上面に設けられて前記粘着層により粘着され、一面が帯電防止処理された離型フィルム;を含む、請求項1に記載のディスプレイ用粘着シート。
【請求項7】
前記離型フィルムは、下面がシリコン離型処理された、請求項6に記載のディスプレイ用粘着シート。
【請求項8】
前記ベースフィルムと離型フィルム間の離型力が1~7gf/inである、請求項6に記載のディスプレイ用粘着シート。
【請求項9】
前記ベースフィルムは、透過率が88%以上であり、ヘイズ(Haze)が0.5~2%である、請求項1に記載のディスプレイ用粘着シート。
【請求項10】
前記ベースフィルムは、下記測定方法で測定した粘着力が1,300gf/in以上である、請求項1に記載のディスプレイ用粘着シート:
[測定方法]
ベースフィルムをガラス(glass)に付着して24時間経過後に秒当たり5mmの速度で180°剥離させるときの粘着力を測定した。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のベースフィルムを含むディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用粘着シートに関し、より詳細には、帯電防止処理を通じて静電気の発生を防止することができ、表面抵抗が低いことによって、不良率が顕著に低下し、耐熱性に優れ、変色が発生しないと同時に、ディスプレイ装置との粘着力に優れ、高温および高湿条件への放置後にも粘着力の減少率が低い効果があるディスプレイ用粘着シートおよびこれを含むディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報通信技術の飛躍的な発展と市場の膨張に伴って、ディスプレイ素子として平板表示素子(Flat Panel Display)が脚光を浴びている。このような平板表示素子としては、液晶表示素子(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ素子(Plasma Display Panel)、有機発光素子(Organic Light Emitting Diodes)などが代表的である。
【0003】
有機発光素子は、速い応答速度と軽薄短小、低消費電力、自発光素子、柔軟性などの長所を有していて、最近、次世代ディスプレイ素子、ディスプレイだけでなく、照明などにその需要が増加している。
【0004】
有機発光素子は、ガラス基板上に透明電極、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層、金属電極の順に蒸着されて形成され、両側の電極から供給された電子と正孔が有機発光層で再結合して放出されるエネルギーを利用して発光する原理である。
【0005】
有機発光素子は、外部の水分と酸素または紫外線などの外的要因により劣化し得るので、有機発光素子を密封させるパッケージング(packaging)技術が重要であり、多様なアプリケーションに適用するために、有機発光表示装置は、薄く製造されることが要求される。
【0006】
一方、ディスプレイ装置の下部には、外力からディスプレイ装置を保護し、静電気の発生を防止するための粘着シートを含むが、従来のディスプレイ用粘着シートは、静電気の発生を防止せず、ディスプレイ装置との粘着力が良くないという問題があった。
【0007】
これより、帯電防止処理を通じて静電気の発生を防止することができ、表面抵抗が低いことによって、不良率が顕著に低下し、耐熱性に優れ、変色が発生しないと同時に、ディスプレイ装置との粘着力に優れ、高温および高湿条件への放置後にも粘着力の減少率が低いディスプレイ用粘着シートに関する研究が急を要するのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】KR10-0252953B1(登録日:2000.01.21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであって、帯電防止処理を通じて静電気の発生を防止することができ、表面抵抗が低いことによって、不良率が顕著に低下し、耐熱性に優れ、変色が発生しないと同時に、ディスプレイ装置との粘着力に優れ、高温および高湿条件への放置後にも粘着力の減少率が低いディスプレイ用粘着シートおよびこれを含むディスプレイを提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、基材および、前記基材の上面に形成され、主剤樹脂および25℃で固状であり、置換または非置換のアリール基を有する窒素オニウム塩を含むカチオン性塩を含む帯電防止剤を具備する組成物を通じて形成された粘着層を含むベースフィルム;を含み、前記粘着層は、下記数式1による表面抵抗の変化率が30%以内であるディスプレイ用粘着シートを提供する。
【0011】
【数1】
【0012】
この際、前記aは、電圧10Vの条件で測定した粘着層の初期表面抵抗(Ω)であり、前記bは、温度220℃および電圧10Vの条件で15分間5分間隔で表面抵抗を測定し、これを4回繰り返して行ったとき、前記初期表面抵抗との差異が最大となる表面抵抗の経時変化値を示す。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記帯電防止剤は、下記化学式1で表されるカチオン性塩を含むことができる。
【0014】
【化1】
【0015】
前記化学式1で、R、R、Rは、それぞれ独立して、C~Cの直鎖状またはC~Cの分岐鎖状アルキル基である。
【0016】
また、前記帯電防止剤は、下記化学式2で表されるカチオン性塩を含むことができる。
【0017】
【化2】
【0018】
また、前記帯電防止剤は、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(FSO、(CFSO)(CFCO)NおよびN(SOF) よりなる群から選ばれた1種以上を含むアニオン性塩をさらに含むことができる。
【0019】
また、前記帯電防止剤は、下記化学式3で表される化合物であり得る。
【0020】
【化3】
【0021】
また、前記組成物は、主剤樹脂100重量部に対して前記帯電防止剤を0.01~5重量部で含むことができる。
【0022】
また、前記粘着層は、前記数式1による表面抵抗の変化率が26%以内であり得る。
【0023】
また、前記粘着層は、表面抵抗が2.1×1010~2.3×1013Ωであり得る。
【0024】
また、前記粘着層は、下記測定方法により測定した表面抵抗の経時変化値が1.5×1010~2.96×1013Ωであり得る。
【0025】
[測定方法]
温度220℃および電圧10Vの条件で15分間5分間隔で表面抵抗を測定し、これを4回繰り返して行って表面抵抗の経時変化値を測定する。
【0026】
また、前記主剤樹脂は、アクリル系共重合体であり得る。
【0027】
また、前記基材は、少なくとも一面が帯電防止処理され得る。
【0028】
また、前記粘着層の上面に設けられて、前記粘着層により粘着され、一面が帯電防止処理された離型フィルム;を含むことができる。
【0029】
また、前記離型フィルムは、下面がシリコン離型処理され得る。
【0030】
また、前記ベースフィルムと離型フィルム間の離型力が1~7gf/inであり得る。
【0031】
また、前記ベースフィルムは、透過率が88%以上であり得、ヘイズ(Haze)が0.5~2.0%であり得る。
【0032】
また、前記ベースフィルムは、下記測定方法で測定した粘着力が1,300gf/in以上であり得る。
【0033】
[測定方法]
ベースフィルムをガラス(glass)に付着して24時間経過後、秒当たり5mmの速度で180°剥離させるときの粘着力を測定した。
【0034】
一方、本発明は、上述したベースフィルムを含むディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によるディスプレイ用粘着シートおよびこれを含むディスプレイは、帯電防止処理を通じて静電気の発生を防止することができ、表面抵抗が低いことによって、不良率が顕著に低下し、耐熱性に優れ、変色が発生しないと同時に、ディスプレイ装置との粘着力に優れ、高温および高湿条件への放置後にも粘着力の減少率が低い効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の一実施例によるディスプレイ用粘着シートの断面図である。
図2図2は、本発明の一実施例によるディスプレイ用粘着シートの分離断面図である。
図3図3は、本発明の一実施例によるディスプレイの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書の全般において同一または類似の構成要素については、同じ参照符号を付加する。
【0038】
本発明の一実施例によるディスプレイ用粘着シートは、図1に示されたように、基材122および、前記基材122の表面に形成される粘着層121を含むベースフィルム120;を含む。
【0039】
以下、ディスプレイ用粘着シートに設けられる各構成について具体的に説明する。
【0040】
まず、前記ベースフィルム120について説明する。
【0041】
前記ベースフィルム120は、ディスプレイに直接的に付着されて、ディスプレイの下部を保護し、装置を支持する機能を担当する。
【0042】
前記ベースフィルム120は、上述したように、基材122および、前記基材122の上面に形成される粘着層121を含んで具現される。
【0043】
この際、前記粘着層121は、下記数式1による表面抵抗の変化率が30%以内であり、好ましくは表面抵抗の変化率が26%以内であり得る。
【0044】
【数2】
【0045】
この際、前記aは、電圧10Vの条件で測定した粘着層の初期表面抵抗(Ω)であり、前記bは、温度220℃および電圧10Vの条件で15分間5分間隔で表面抵抗を測定し、これを4回繰り返して行ったとき、前記初期表面抵抗との差異が最大となる表面抵抗の経時変化値を示す。
【0046】
仮に前記表面抵抗の変化率が30%を超過すると、表面抵抗が不均一であることによって、ベースフィルム120の耐熱性が良くないことがある。
【0047】
一方、前記粘着層121は、主剤樹脂および帯電防止剤を含む組成物を通じて形成される。
【0048】
前記主剤樹脂は、当業界において通常的に十分な粘着力を有する粘着層の形成に使用できる樹脂であれば、制限なしに使用することができ、好ましくはアクリル系共重合体であり得る。前記主剤樹脂は、アクリル系共重合体からなるとよく、アクリル系共重合体を主として有していても良い。
【0049】
また、前記帯電防止剤は、25℃で固状である帯電防止剤であって、前記帯電防止剤は、カチオン性塩を含み、アニオン性塩をさらに含むことができる。前記帯電防止剤が25℃で固状である帯電防止剤であることによって、ベースフィルム120の粘着力に優れ、適切な表面抵抗を維持することができ、高温および高湿条件への放置後にも粘着力の減少率が低い効果を発現することができる。
【0050】
前記帯電防止剤のカチオン性塩は、置換または非置換のアリール基を有する窒素オニウム塩を含み、好ましくは下記化学式1で表されるカチオン性塩であり得、より好ましくは下記化学式2で表されるカチオン性塩であり得る。
【0051】
【化4】
【0052】
前記化学式1で、R、R、Rは、それぞれ独立して、C~Cの直鎖状またはC~Cの分岐鎖状アルキル基である。
【0053】
【化5】
【0054】
また、前記帯電防止剤のアニオン性塩は、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(FSO、(CFSO)(CFCO)NおよびN(SOF) よりなる群から選ばれた1種以上を含むことができ、好ましくはPF 、BF 、Iおよび(CFSOよりなる群から選ばれた1種以上を含むことができる。
【0055】
また、最も好ましくは前記帯電防止剤は、下記化学式3で表される化合物であり得る。
【0056】
【化6】
【0057】
前記組成物は、前記主剤樹脂100重量部に対して前記帯電防止剤を0.01~5重量部で、好ましくは0.1~4.5重量部で含むことができる。仮に前記主剤樹脂100重量部に対して前記帯電防止剤が0.01重量部未満であれば、電気的短絡が発生し得、表面抵抗および剥離帯電圧が高まる問題が発生し得、5重量部を超過すると、ベースフィルム120の粘着力が低下し得、高温および高湿条件への放置後に粘着力が顕著に低下する問題が発生し得る。
【0058】
一方、前記粘着層121は、表面抵抗が2.1×1010~2.3×1013Ωであり得、好ましくは表面抵抗が4.1×1010~1.3×1013Ωであり得る。仮に前記表面抵抗が2.1×1010Ω未満であれば、帯電防止剤を過度に含むことによって、ベースフィルム120の粘着力が低下する問題が発生し得、2.3×1013Ωを超過すると、不良率が増加し得る。
【0059】
また、前記粘着層121は、下記測定方法により測定した表面抵抗の経時変化値が1.5×1010~2.96×1013Ω、好ましくは表面抵抗の経時変化値が3.1×1010~1.62×1013Ωであり得る。仮に前記表面抵抗の経時変化値が1.5×1010Ω未満であるか、2.96×1013Ωを超過すると、表面抵抗が不均一であることによって、ベースフィルム120の耐熱性が良くないことがある。
【0060】
また、前記粘着層121の厚さは、通常的に粘着シートに含まれる粘着層の厚さであれば、制限されず、好ましくは10~30μmであり得、より好ましくは11~27μmであり得る。
【0061】
また、前記基材122は、当業界において通常的に粘着シートに使用できる素材であれば、制限なしに使用することができ、好ましくはPET基材であり得る。また、前記基材122の厚さは、通常的に粘着シートに使用できる基材の厚さであれば、制限されず、好ましくは50~150μm、より好ましくは70~130μmであり得る。
【0062】
一方、本発明によるベースフィルム120に含まれる基材122は、静電気の発生を防止するために、少なくとも一面が、好ましくは下面が帯電防止処理され得る。帯電防止処理を通じて静電気の発生を防止することができる。
【0063】
前記ベースフィルム120は、透過率が88%以上、好ましくは透過率が90%以上、より好ましくは透過率が91%以上であり得る。また、前記ベースフィルム120は、ヘイズが0.5~2%、好ましくは0.7~1.5%であり得る。仮に前記ベースフィルム120が前記透過率範囲およびヘイズ範囲を満たさない場合、付着時に認識率が低下し、不良率が増加し得る。
【0064】
また、ベースフィルム120の粘着力は、ディスプレイの下部に形成された粘着シートが剥離しないように十分に高いことが求められ、好ましくは前記ベースフィルムは、下記測定方法で測定した粘着力が1,300gf/in以上、より好ましくは粘着力が1,400gf/in以上であり得る。
【0065】
[測定方法]
ベースフィルムをガラス(glass)に付着して24時間経過後に秒当たり5mmの速度で180°剥離させるときの粘着力を測定した。
【0066】
仮に前記測定方法で測定したベースフィルム120の粘着力が1,300gf/in未満であれば、ディスプレイにおいて前記ベースフィルム120が剥離される問題が発生し得る。
【0067】
一方、本発明の一実施例によるディスプレイ用粘着シートは、前記粘着層121の上面に設けられて、前記粘着層121により粘着され、一面が帯電防止処理された離型フィルム110;を含んで具現される。
【0068】
前記離型フィルム110は、ベースフィルム120を保護する機能を担当する。ディスプレイに本発明によるディスプレイ用粘着シートを適用して付着することができるが、この場合、離型フィルム110をもっとも先に剥離した後、ディスプレイにベースフィルム120を付着することができる。この際、離型フィルム110の離型力は、1~7gf/in、より好ましくは2~6gf/inであり得る。仮に離型フィルム110の離型力が1gf/in未満であれば、離型フィルムがベースフィルム120から小さい物理的刺激にも過度に剥離されることによって、ベースフィルム120を容易に保護することができず、7gf/inを超過すると、ディスプレイへの適用時に剥離が容易でないので、不良率が増加し得るので、適切でない。
【0069】
図2に示されたように、離型フィルム110が上述したような離型力を示すために前記離型フィルム110の下面を離型処理(A)することができる。前記離型処理は、当業界において通常的に離型処理に使用できる物質であれば、制限なしに使用することができ、好ましくはシリコンで離型処理することが適正水準の離型力を示すことができる。
【0070】
一方、本発明による離型フィルム110は、静電気の発生を防止するために、少なくとも一面が、好ましくは上面と下面が帯電防止処理され得る。帯電防止処理を通じて静電気の発生を防止することができる。
【0071】
前記離型フィルム110は、当業界において通常的に離型フィルムに使用する素材であれば、制限なしに使用することができ、好ましくはPET基材であり得る。また、前記離型フィルム110の厚さは、通常的に粘着シートに使用できる離型フィルムの厚さであれば、制限されず、好ましくは30~90μm、より好ましくは35~85μmであり得るがが、これに制限されない。
【0072】
上述したディスプレイ用粘着シートは、後述する製造方法を通じて製造され得るが、これに制限されるものではなく、上述したディスプレイ用粘着シートに関する説明と同じ部分は省略して説明することとする。
【0073】
本発明によるディスプレイ用粘着シートは、基材122の上部面に主剤樹脂および帯電防止剤を含む組成物を塗布して仮粘着層を形成させる段階;仮粘着層を形成させた基材122の上部面に離型フィルム110をラミし、仮粘着層を硬化させて、ラミされた離型フィルム110およびベースフィルム120を製造する段階;を含んで製造され得る。
【0074】
まず、基材122の上部面に主剤樹脂および帯電防止剤を含む組成物を塗布して仮粘着層を形成させる段階について説明する。
【0075】
前記組成物は、主剤樹脂および帯電防止剤を含み、硬化剤および溶媒をさらに含むことができる。
【0076】
前記主剤樹脂は、重量平均分子量が200,000~1,000,000であり得、好ましくは重量平均分子量が400,000~800,000であり得る。
【0077】
また、前記硬化剤は、通常的に十分な粘着力を示す粘着層の形成に使用できる硬化剤であれば、制限なしに使用することができ、好ましくはエポキシ系硬化剤を使用することができ、より好ましくはエポキシアミン系硬化剤を使用することができ、より好ましくはN,N,N,N′-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンであり得る。前記硬化剤は、主剤樹脂100重量部に対して0.02~0.35重量部で、好ましくは0.05~0.3重量部で含まれ得る。仮に前記硬化剤の含量が主剤樹脂100重量部に対して0.02重量部未満であれば、粘着層が目的とする水準に硬化しないことがあり、0.35重量部を超過すると、粘着層が過硬化して粘着力が低下する問題が発生し得る。
【0078】
また、前記溶媒は、通常的に粘着層を形成する粘着組成物に使用できる溶媒であれば、制限なしに使用することができ、好ましくは水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミン系溶媒、エステル系溶媒、アセテート系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒およびフラン系溶媒よりなる群から選ばれた1種以上を含むことができ、より好ましくはアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミン系溶媒、エステル系溶媒、アセテート系溶媒およびエーテル系溶媒よりなる群から選ばれた1種以上を含むことができ、最も好ましくはメチルエチルケトンであり得る。前記溶媒は、主剤樹脂100重量部に対して20~60重量部、好ましくは25~55重量部で含まれ得るが、これに制限されない。
【0079】
次に、仮粘着層を形成させた基材122の上部面に離型フィルム110をラミし、仮粘着層を硬化させて、ラミされた離型フィルム110およびベースフィルム120を製造する段階について説明する。
【0080】
前記仮粘着層を形成させた基材122の上部面に離型フィルム110をラミする方法は、当業界において通常的に使用できる方法および/または条件であれば、制限なしに使用することができ、好ましくは常温でロールラミネーターを利用してラミさせることができるが、これに制限されない。
【0081】
また、前記硬化は、当業界において通常的に使用できる粘着層の形成のための硬化条件であれば、制限なしに使用することができ、好ましくは30~80℃で30~60時間の間、より好ましくは40~70℃で40~55時間の間硬化させることができるが、これに制限されるものではない。
【0082】
一方、本発明は、上述したベースフィルムを含んで具現されたディスプレイを含む。
【0083】
図3のように、前記ベースフィルム120″は、ディスプレイ300の下部に付着され得る。具体的に、十分な粘着力を有する粘着層121″およびディスプレイを保護する機能をする基材122″を含むベースフィルム120″を含むことによって、ディスプレイの下部を保護し、ディスプレイ装置の静電気の発生を防止することができる。
【0084】
本発明によるディスプレイ用粘着シートおよびこれを含むディスプレイは、帯電防止処理を通じて静電気の発生を防止することができ、表面抵抗が低いことによって、不良率が顕著に低下して、耐熱性に優れ、変色が発生しないと同時に、ディスプレイ装置との粘着力に優れ、高温および高湿条件への放置後にも粘着力の減少率が低い効果がある。
【0085】
下記の実施例を通じて本発明をより具体的に説明することとするが、下記実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるものと解すべきである。
【0086】
<実施例1>
主剤樹脂として重量平均分子量が600,000であり、アクリル酸、ブチルアクリレート、エチルアクリレートおよびビニルアセテートがランダム共重合された共重合体を、前記主剤樹脂100重量部に対して硬化剤としてN,N,N,N′-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン0.22重量部、帯電防止剤として25℃で固状である下記化学式3で表される化合物4.25重量部および溶媒としてメチルエチルケトン39重量部を混合して組成物を製造した。
【0087】
そして、厚さ75μmのPET基材の下部面にPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート)を下部面に薄膜塗布して帯電防止処理した基材の上部面に、前記組成物を塗布して仮粘着層を形成し、厚さ75μmのPET基材の上部面および下部面にPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート)を薄膜塗布して帯電防止処理し、下部面にシリコン離型剤を薄膜塗布してシリコン離型処理した離型フィルムの下部面と仮粘着層が当接するように配置させた後、常温でロールラミネーターを利用してラミした後、50℃で48時間の間硬化させて、厚さ14μmの粘着層が形成されたベースフィルムおよび前記ベースフィルムの上部面に積層された離型フィルムを製造した。
【0088】
【化7】
【0089】
<実施例2~5>
実施例1と同一に実施して製造するものの、帯電防止剤の含量などを変更して、表1のようなディスプレイ用粘着シートを製造した。
【0090】
<比較例1>
実施例1と同一に実施して製造するものの、帯電防止剤として下記化学式4で表され、25℃で液状であるN-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(N-hexyl-4-methylpyridinium hexafluorophosphate,CAS no.929897-32-5)を使用したことを除いて、実施例1と同一に実施して、ディスプレイ用粘着シートを製造した。
【0091】
【化8】
【0092】
<比較例2~5>
前記比較例1と同一に実施して製造するものの、前記化学式4で表され、25℃で液状である帯電防止剤の含量などを変更して、表2のようなディスプレイ用粘着シートを製造した。
【0093】
<実験例1>
1.初期表面抵抗の測定
実施例および比較例によって製造されたディスプレイ用粘着シートにおいて200mm×350mmに切断し、切断された粘着シートの離型フィルムを剥離した後、表面抵抗測定機(TREK 152-1,TREK,INC.)に連結された2 point probe(152P-2P、TREK,INC.)を粘着層に接触させて、初期表面抵抗を測定した。これを下記表1および表2に示した。
【0094】
2.表面抵抗の変化率の評価
実施例および比較例によって製造されたディスプレイ用粘着シートにおいて200mm×350mmに切断し、切断された粘着シートの離型フィルムを剥離した後、温度220℃および電圧10Vの条件で表面抵抗測定機(TREK 152-1,TREK,INC.)に連結された2 point probe(152P-2P、TREK,INC.)を粘着層に接触させて、15分間5分間隔で表面抵抗を測定し、これを4回繰り返して行ったとき、表面抵抗の経時変化値を測定して、前記表面抵抗との差異が最大となる表面抵抗の経時変化値を測定した後、下記数式1によって表面抵抗の変化率を計算した。これを下記表1および表2に示した。
【0095】
【数3】
【0096】
この際、前記aは、前記測定した初期表面抵抗であり、前記bは、前記表面抵抗との差異が最大となる表面抵抗の経時変化値を示す。
【0097】
3.粘着層の変色評価
実施例および比較例によって製造されたディスプレイ用粘着シートのベースフィルムを無アルカリガラス(Non-alkali glass)にロールラミネーターで付着させた後、温度220℃で5分間放置後、肉眼を通じて粘着層の変色を評価した。これを下記表1および表2に示した。
【0098】
<実験例2>
1.離型フィルムの離型力、ベースフィルムの粘着力の測定および剥離帯電圧の評価
実施例および比較例によって製造されたディスプレイ用粘着シートに対してディスプレイ用粘着シートを1インチの幅にカットした後、秒当たり40mmの速度で180°で剥離させて、離型フィルムの離型力を測定し、ディスプレイ用粘着シートを1インチの幅にカットして離型フィルムを除去した後、表面を洗浄したガラス(Glass)に付着して24時間経過後に秒当たり5mmの速度で180°で剥離させて、粘着層の粘着力を測定した。そして、ディスプレイ用粘着シートを100×100mmにカットした後、秒当たり80mmの速度で180°で離型フィルムを剥離させて、粘着層の剥離帯電圧(V)を測定した。これを5回繰り返して行って、平均値が0.05kV以下である場合に○、0.05kVを超過する場合に×で表記して、剥離帯電圧を評価した。これを下記表1および表2に示した。
【0099】
2.ディスプレイ用粘着シートの粘着性能の評価
実施例および比較例によって製造されたディスプレイ用粘着シートのベースフィルムをディスプレイの下部に常温でロールラミネーターで付着した後、24時間経過させた後、温度60℃および湿度90%の条件下に500時間の間放置して、付着した下部粘着シートに剥離現象が起こるか否かを確認する方法で、剥離現象が発生しない場合に○、剥離現象が発生する場合に×で表記してベースフィルムの粘着性能を評価した。これを下記表1および表2に示した。
【0100】
3.高温、高湿条件への放置後に粘着力の変化率の測定
実施例および比較例によって製造されたディスプレイ用粘着シートのベースフィルムを無アルカリガラス(Non-alkali glass)に付着し、温度60℃および相対湿度95%の条件で500時間の間放置した後、常温で十分に放置させた後、ベースフィルムを秒当たり5mmの速度および180°で剥離させて、粘着層の粘着力を測定し、それぞれの初期粘着力を100%を基準として、これに対する粘着力の変化率を測定した。粘着力の変化率が±20%の範囲を満たす場合に○、満たさない場合に×で表記した。これを下記表1および表2に示した。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
前記表1および表2から分かるように、本発明による帯電防止剤の種類および含量などを全部満たす実施例1、3および4が、これらのうち1つでも漏れがあった実施例2、5および比較例1~5に比べて表面抵抗および剥離帯電圧が低く、表面抵抗の変化率が低いので、耐熱性に優れ、粘着層の変色が発生せず、離型フィルムの離型力が適切であると同時に、ベースフィルムの粘着力およびディスプレイ用粘着シートの粘着性能の評価結果に優れ、高温および高湿条件への放置後にも粘着力の変化率が低い効果を全部同時に達成できることが分かる。
【0104】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などにより他の実施例を容易に提案することができるものであるが、これもまた本発明の思想範囲内に入ると言える。
【符号の説明】
【0105】
110、111 離型フィルム
120、120′、120″ ベースフィルム
121、121′、121″ 粘着層
122、122′、122″ 基材
300 ディスプレイ
図1
図2
図3