(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】ベチバー
(51)【国際特許分類】
C12N 15/60 20060101AFI20220218BHJP
C12P 5/00 20060101ALI20220218BHJP
C12N 9/88 20060101ALI20220218BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20220218BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20220218BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220218BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220218BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220218BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220218BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C12N15/60 ZNA
C12P5/00
C12N9/88
C12N9/02
C12N15/53
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2019502610
(86)(22)【出願日】2017-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2017068268
(87)【国際公開番号】W WO2018015453
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-07-15
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル シャルク
(72)【発明者】
【氏名】レティツィア ロッチ
【審査官】原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/029153(WO,A1)
【文献】特表2008-546384(JP,A)
【文献】特表2004-532014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C12N
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のセスキテルペン化合物の製造方法であって、
a.非環式ファルネシル二リン酸(FPP)と、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及び/又はバレンセンシンターゼ活性の1つ以上を含むテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドとを接触させて、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される少なくとも1つのテルペン、又はイソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むセスキテルペンの混合物を製造すること、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、並びに
b.任意に、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される少なくとも1つのテルペン、又はイソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むセスキテルペンの混合物を単離すること
を含む、1つ以上のセスキテルペン化合物の製造方法。
【請求項2】
さらに、FPPを生産でき、かつ形質転換されてポリペプチドを発現する非ヒト宿主生物又は細胞を培養することを含む方法であって、前記ポリペプチドが、配列番号1に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択されるセスキテルペンと少なくとも1つの酵素とを接触させて、セスキテルペン誘導体を製造することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの酵素が、
a)シトクロムP450酵素、
b)ベチベリア・ジザノイデス(Vetiveria zizanoides)から単離したシトクロムP450酵素、
c)CYP71DファミリーからのシトクロムP450酵素、又は
d)配列番号7、配列番号10、配列番号12又は配列番号14に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの酵素が、
a)シトクロムP450レダクターゼ(CPR)酵素、又は
b)メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)から単離したCPR酵素、又は
c)配列番号15に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCPR酵素
を含む酵素を伴う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及び/又はバレンセンシンターゼ活性の1つ以上を含むテルペンシンターゼ活性を有する、単離されたポリペプチドであって、
イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及び/又はバレンセンシンターゼ活性を含むシンターゼ活性を有するセスキテルペンシンターゼを含むベチベリア・ジザノイデス(Vetiveria zizanoides)からのアミノ酸配列であって、配列番号1に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項7】
単離された核酸分子であって、
a)請求項6に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は
b)配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有し、かつセスキテルペンシンターゼをコードするヌクレオチド配列
を含む、単離された核酸分子。
【請求項8】
発現ベクターであって、
a)請求項7に記載の核酸分子、又は
b)a)の核酸分子並びに第二の核酸分子であって、(1)配列番号7、配列番号10、配列番号12もしくは配列番号14に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むシトクロムP450ポリペプチド分子をコードする核酸分子及び(2)シトクロムP450ポリペプチドをコードする、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号11もしくは配列番号13に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列から選択される核酸分子
を含む、発現ベクター。
【請求項9】
非ヒト宿主生物又は細胞であって、(1)請求項6に記載の少なくとも1つのポリペプチドを異種発現又は過剰発現する請求項7に記載の少なくとも1つの核酸、又は(2)請求項8に記載の1つ以上の発現ベクターを含む、非ヒト宿主生物又は細胞。
【請求項10】
セスキテルペン化合物の混合物であって、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含む混合物を製造するための、請求項6に記載のポリペプチドの使用。
【請求項11】
酸素化セスキテルペン化合物又は酸素化セスキテルペン化合物の混合物を製造するための、請求項6に記載のポリペプチド及び配列番号7、配列番号10、配列番号12又は配列番号14に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むシトクロムP450ポリペプチド分子の使用であって、任意にP450レダクターゼ(CPR)酵素又は配列番号15に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCPR酵素の使用を伴い、酸素化セスキテルペンが、イソバレンセン誘導体、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン誘導体及びバレンセン誘導体からなる群から選択されるか、又はイソバレンセン誘導体、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン誘導体及び/又はバレンセン誘導体の1つ以上を含むセスキテルペンの混合物である、前記使用。
【請求項12】
酸素化セスキテルペン化合物又は酸素化セスキテルペン化合物の混合物を製造するための、配列番号7、配列番号10、配列番号12又は配列番号14に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むシトクロムP450ポリペプチド分子及び請求項6に記載のポリペプチドの使用であって、任意に、異種発現させたP450レダクターゼ(CPR)酵素の使用を伴う、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、セスキテルペン、ベチバー、並びに関連する化合物及び誘導体を製造するための生化学的方法が提供される。
【0002】
背景技術
テルペンは、ほとんどの生物(微生物、動物及び植物)において見出される。これらの化合物は、5個の炭素単位、いわゆるイソプレン単位からなり、それらの構造において存在するこれらの単位の数により分類される。したがって、モノテルペン、セスキテルペン及びジテルペンは、それぞれ炭素原子10個、15個及び20個を含むテルペンである。例えば、セスキテルペンは、植物界において広く見いだせる。多くのセスキテルペン分子は、それらのフレーバー及びフレグランス特性、並びにそれらの化粧品効果、医薬品効果及び抗菌効果について公知である。多数のセスキテルペン炭化水素及びセスキテルペノイドが、同定されている。
【0003】
要約
本明細書において、非環式ファルネシル二リン酸(FPP)前駆体と、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドとを接触させて、1つ以上のテルペン又はテルペンの混合物を製造することを含む1つ以上のセスキテルペン化合物の製造方法であって、ポリペプチドが、配列番号1に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、1つ以上のセスキテルペン化合物の製造方法が提供される。1つ以上のテルペンは、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択されるか、又は、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むテルペンの混合物であってよい。セスキテルペンシンターゼ活性は、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性、及び/又はバレンセンシンターゼ活性の1つ以上を含みうる。前記方法は、さらに、任意に、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むテルペンの混合物を単離することを含んでよい。
【0004】
さらに、以下、
a.非環式ファルネシル二リン酸(FPP)前駆体と、テルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドとを接触させて、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される1つ以上のテルペン、又はイソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むテルペンの混合物を製造すること、ここで、ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸の配列を含む、並びに
b.任意に、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される1つ以上のテルペン、又はイソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むテルペンの混合物を単離すること
を含む、セスキテルペン化合物又はテルペンの混合物の製造方法が提供される。
【0005】
さらに、本明細書において、イソバレンセンシンターゼ、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ、及び/又はバレンセンシンターゼを含むシンターゼ活性を有するポリペプチドを含む、ベチベリア・ジザノイデス(Vetiveria zizanoides)(ベチバー)(異名クリソポゴン・ジザノイデス(Chrysopogon zizanioides))からの単離されたポリペプチドが提供される。
【0006】
本明細書において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性、及び/又はバレンセンシンターゼ活性を含むシンターゼ活性を有するセスキテルペンシンターゼをコードするベチベリア・ジザノイデスからの単離された核酸分子も提供される。
【0007】
本明細書において、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするベチベリア・ジザノイデスから単離された核酸又は該ベチベリア・ジザノイデスに由来する核酸も提供される。
【0008】
イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される1つ以上のセスキテルペン;又は、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むセスキテルペンの混合物を製造するために使用されてよい、セスキテルペンシンターゼ活性を有するベチベリア・ジザノイデスから単離された又はベチベリア・ジザノイデスに由来するポリペプチドも提供される。
【0009】
本明細書において、配列番号1に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含むポリペプチドも提供される。
【0010】
さらに、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される1つ以上のセスキテルペン;又は、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むテルペンの混合物を製造するための、本明細書において記載されるポリペプチドの使用が提供される。イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの少なくとも2つを含むテルペンの混合物;又は、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンを含む混合物も提供される。
【0011】
さらに、前記ポリペプチドをコードする核酸が本明細書において提供される。
【0012】
なおさらに、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸が本明細書において提供される。
【0013】
配列番号7、配列番号10、配列番号12又は配列番号14に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたシトクロムP450ポリペプチド配列が本明細書において提供される。
【0014】
以下、
a)P450ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又は
b)配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号11もしくは配列番号13のヌクレオチド配列を含む核酸分子
を含む単離された核酸分子も提供される。
【0015】
前記核酸の1つ以上、又はセスキテルペンシンターゼ及びシトクロムP450酵素をコードする核酸を含み、任意にシトクロムP450レダクターゼ(CPR)酵素をコードする核酸を伴う発現ベクターがさらに提供される。
【0016】
セスキテルペン誘導体、例えば酸素化セスキテルペンを製造するために前記方法において使用したP450ポリペプチドを伴ってよい配列番号15に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCPR酵素も提供される。
【0017】
(1)前記核酸分子の1つ以上、又は(2)前記核酸分子を含む発現ベクター、を含有する非ヒト宿主生物又は細胞も提供される。
【0018】
さらに、任意にCPR酵素の使用を伴う、酸素化セスキテルペンを製造するための前記したセスキテルペンシンターゼ及びシトクロムP450酵素の使用が提供される。
【0019】
任意に異種発現させたCPR酵素を伴う、酸素化セスキテルペン又は酸素化セスキテルペン化合物の混合物を製造するための前記したシトクロムP450酵素及びセスキテルペンシンターゼの使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】VzTps1718の主な生成物及び誘導体の構造及び名称を示す。
【
図2】組換えVzTps1718によってインビトロアッセイで製造されたセスキテルペンのGCMS分析を示す。A.FPPでの組換えVzTps1718タンパク質のインキュベートのセスキテルペンプロフィールの合計イオンクロマトグラム。B.空のプラスミドで形質転換した大腸菌(E.coli)細胞で同一の条件で実施した陰性対照。同定された生成物に対応するピークは、イソバレンセン(化合物1)、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン(化合物2)及びバレンセン(化合物3)を示す。MW204及びMW222としてラベル付けされたピークは、それぞれセスキテルペン炭化水素及びセスキテルペンアルコールに対応し、その構造は決定されていない。FOH:大腸菌の内在性酵素活性によるFPPの加水分解によって製造されたファルネソール。
【
図3】VzTps1718生成物混合物における化合物1(
図2)の質量スペクトル及びイソバレンセン標品の質量スペクトルを示す。
【
図4】VzTps1718生成物混合物における化合物2(
図2)の質量スペクトル及びスピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン標品の質量スペクトルを示す。
【
図5】VzTps1718生成物混合物における化合物3(
図2)の質量スペクトル及び(+)-バレンセン標品の質量スペクトルを示す。
【
図6】操作した細菌細胞における組換えVzTps1718酵素によりインビボで製造されたセスキテルペンのGCMS分析を示す。同定された生成物に対応するピークは、イソバレンセン(化合物1)、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン(化合物2)及びバレンセン(化合物3)を示す。MW204及びMW222としてラベル付けされたピークは、それぞれセスキテルペン炭化水素及びセスキテルペンアルコールに対応し、その構造は決定されていない。FOH:大腸菌の内在性酵素活性によるFPPの加水分解によって製造されたファルネソール。
【
図7】ベチベリア・ジザノイデスVzCP8201シトクロムP450モノオキシゲナーゼを使用したVzTps1718のセスキテルペン生成物の生物変換のGCMS分析を示す。A.VzCP8201Bovでの生物変換。B.VzCP8201-12での生物変換。C.組換えP450酵素を使用せずに大腸菌細胞を使用した陰性対照。
【
図8】
図7A及び7Bにおける14.95分でのピークの質量スペクトル(A)及び標品イソバレンセニルアセテートの質量スペクトル(B)を示す。
【
図9】CYP71D4シトクロムP450モノオキシゲナーゼを使用したVzTps1718のセスキテルペン生成物の生物変換のGCMS分析を示す。A.CYP71D4optでの生物変換。B.組換えP450酵素を使用せずに大腸菌細胞を使用した陰性対照。
【
図10】組換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼのみ(A)、又は組換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼと共に機能的VzCP8201シトクロムP450酵素(B)もしくは機能的CYP71D4シトクロムP450酵素(C)を製造するために操作した大腸菌細胞によって製造されたセスキテルペン化合物のGCMS分析を示す。アスタリスクで印付けしたピークは、シトクロムP450酵素によって製造された酸素化化合物に対応する。全ての他のピークは、VzTps1718セスキテルペンシンターゼによって製造されたセスキテルペン化合物である。
【0021】
使用した省略形
bp 塩基対
kb キロベース
DNA デオキシリボ核酸
cDNA 相補的DNA
DTT ジチオトレイトール
FPP ファルネシル二リン酸
GC ガスクロマトグラフ
IPTG イソプロピル-D-チオガラクト-ピラノシド
LB 溶原性培地
MS 質量分析計
MVA メバロン酸
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RNA リボ核酸
mRNA メッセンジャーRNA
miRNA マイクロRNA
siRNA 低分子干渉RNA
rRNA リボソームRNA
tRNA トランスファーRNA。
【0022】
定義
「ポリペプチド」という用語は、連続して重合させたアミノ酸残基、例えば、少なくとも15残基、少なくとも30残基、少なくとも50残基のアミノ酸配列を意味する。本明細書において提供されるいくつかの実施形態において、ポリペプチドは、酵素、又はそれらの断片、又はそれらの多様体であるアミノ酸配列を含む。
【0023】
「単離された」ポリペプチドという用語は、その自然環境から、組換え法、生化学的方法及び合成法を含む当業者に公知の任意の方法又は方法の組み合わせによって取り出されたアミノ酸配列をいう。
【0024】
「タンパク質」という用語は、天然に生じようと合成であろうと、アミノ酸が、共有ペプチド結合によって連結されており、かつオリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド及び全長タンパク質を含む、任意の長さのアミノ酸配列をいう。
【0025】
「生物学的機能」、「機能」、「生物学的活性」又は「活性」という用語は、1つ以上のセスキテルペン化合物又は1つ以上のセスキテルペンを含む混合物を触媒により形成するセスキテルペンシンターゼの能力をいう。
【0026】
「テルペンの混合物」又は「セスキテルペンの混合物」という用語は、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含む、テルペン又はセスキテルペンの混合物をいい、ここで、該混合物は、さらにテルペン又はセスキテルペンも含んでもよい。
【0027】
「核酸配列」、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、ヌクレオチドの配列を意味する。核酸配列は、一本鎖又は二本鎖のデオキシリボヌクレオチド、又は任意の長さのリボヌクレオチドであってよく、遺伝子のコード配列及び非コード配列、エキソン、イントロン、センス及びアンチセンスの相補的配列、ゲノムDNA、cDNA、miRNA、siRNA、mRNA、rRNA、tRNA、組換え核酸配列、単離された及び精製された天然に生じるDNA及び/又はRNA配列、合成DNA及びRNA配列、断片、プライマー及び核酸プローブを含む。当業者は、RNAの核酸配列が、種々のチミン(T)をウラシル(U)によって置き換えたDNA配列と同一であることに気付いている。
【0028】
「単離された核酸」又は「単離された核酸配列」は、天然に生じる核酸又は核酸配列とは異なる環境にある核酸又は核酸配列として定義される。本明細書において使用される核酸に適用される「天然に生じる」という用語は、天然に細胞中で見られる核酸をいう。例えば、生物において、例えば生物の細胞において存在し、天然に源から単離されてよく、研究室において人間によって意図的に改質されていない核酸配列が、天然に生じるものである。
【0029】
「組換え核酸配列」は、天然に生じない、そうでなければ生物学的生物において見られない核酸配列を生じる、1種以上の源からの遺伝物質と一緒にもたらすための実験的方法(分子クローニング)の使用から生じる核酸配列である。
【0030】
「組換えDNA技術」は、例えば、Weigel及びGlazebrookによって編集されたLaboratory Manuals(2002 Cold Spring Harbor Lab Press)、並びにSambrookら(1989 Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press)において記載されているような組換え核酸配列を製造するための分子生物学的手法をいう。
【0031】
「遺伝子」という用語は、適した調節領域、例えばプロモーターに操作可能に連結された、RNA分子、例えば細胞中のmRNAに転写された領域を含むDNA配列を意味する。したがって、遺伝子は、いくつかの操作可能に連結された配列、例えばプロモーター、例えば翻訳開始で含まれる配列を含む5’リーダー配列、cDNA又はゲノムDNAのコード領域、イントロン、エキソン、及び/又は例えば転写終結点を含む3’非翻訳配列を含む。
【0032】
「キメラ遺伝子」は、通常、種において天然に見られないあらゆる遺伝子、特に、天然に互いに関連しない核酸配列の1つ以上の部位が存在する遺伝子をいう。例えば、プロモーターは、転写領域の一部もしくは全てと又は他の調節領域と天然に関連しない。「キメラ遺伝子」という用語は、プロモーター又は転写制御配列が、1つ以上のコード配列に、もしくは1つのアンチセンス、すなわちセンス鎖の逆相補鎖に操作可能に連結され、又は繰り返し配列を逆転させる(センス及びアンチセンス、それによりRNA転写が転写に対して二本鎖RNAを形成する)、発現構築物を含むと解される。「キメラ遺伝子」という用語は、新たな遺伝子を製造するために1つ以上のコード配列の一部の組合せによって得られる遺伝子も含む。
【0033】
「3’UTR」又は「3’非翻訳配列」(「3’非翻訳領域」又は「3’末端」ともいわれる)は、例えば転写終結点及び(ほとんど、しかし全てではないが真核mRNAの)ポリアデニル化シグナル、例えばAAUAAA又はそれらの多様体を含む、遺伝子のコード配列の下流に見られる核酸配列をいう。転写の終結後に、mRNA転写物は、ポリアデニル化シグナルの下流で開裂してよく、かつ翻訳の場所、例えば細胞質へのmRNAの輸送中に含まれるポリ(A)末端が付加されてよい。
【0034】
「遺伝子の発現」は、遺伝子の転写及びタンパク質へのmRNAの翻訳を含む。過剰発現は、類似の遺伝的背景の形質転換されていない細胞又は生物における製造のレベルを超える、トランスジェニック細胞又はトランスジェニック生物におけるmRNA、ポリペプチド及び/又は酵素活性のレベルによって測定される遺伝子産物の製造をいう。
【0035】
本明細書において使用される「発現ベクター」は、宿主細胞中へ異物又は外因性のDNAを導入するための分子生物学的方法及び組換えDNA技術を使用して設計された核酸分子を意味する。発現ベクターは、典型的に、ヌクレオチド配列の固有の転写に要求される配列を含む。コード領域は、通常、目的のタンパク質についてコードするが、しかしRNA、例えばアンチセンスRNA、siRNA等についてもコードしてよい。
【0036】
本明細書において使用される「発現ベクター」は、ウイルスベクター、バクテリオファージ及びプラスミドを含むがこれらに制限されない、任意の線状又は環状の組換えベクターを含む。当業者は、発現系に従って適したベクターを選択することが可能である。一実施形態において、発現ベクターは、転写、翻訳、開始及び終結を制御する少なくとも1つの調節配列、例えば転写のプロモーター、オペレーターもしくはエンハンサー、又はmRNAリボソーム結合部位に操作可能に連結され、任意に少なくとも1つの選択マーカーを含む、本明細書における実施形態の核酸を含む。ヌクレオチド配列は、調節配列が本明細書における実施形態の核酸に機能的に関連する場合に「操作可能に連結」される。「調節配列」は、本明細書における実施形態の核酸配列の発現レベルを決定し、かつ調節配列に操作可能に連結された核酸配列の転写の割合を調節することができる核酸配列をいう。調節配列は、プロモーター、エンハンサー、転写因子、プロモーターエレメント等を含む。
【0037】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼのための結合部位、並びに転写因子結合部位、リプレッサー及び活性化タンパク質結合部位を含むがこれらに制限されない固有の転写に要求される他の因子のための結合部位を提供することによってコード配列の発現を制御する核酸配列をいう。プロモーターという用語の意味は、「プロモーター調節配列」という用語も含む。プロモーター調節配列は、転写、RNAプロセシング又は関連するコード核酸配列の安定性に影響しうる上流及び下流のエレメントも含んでもよい。プロモーターは、天然由来の配列及び合成配列を含む。コード核酸配列は、通常、転写開始点で出発する転写の方向に関してプロモーターの上流に位置する。「構成的プロモーター」という用語は、操作可能に連結させた核酸配列の連続転写を可能にする未調節プロモーターをいう。
【0038】
本明細書において使用されるように、「操作可能に連結」という用語は、機能的関係でのポリヌクレオチドエレメントの連結をいう。核酸は、機能的関係に置かれた場合に、他の核酸配列と「操作可能に連結」される。例えば、プロモーター、というよりむしろ転写調節配列は、コード配列の転写に影響を及ぼす場合に、コード配列に操作可能に連結される。操作可能に連結は、DNA配列が連結されて典型的に隣接していることを意味する。プロモーター配列に関連するヌクレオチド配列は、形質転換されるべき植物に対して相同性の又は異種性の起源のものであってよい。前記配列は、全体的に又は部分的に合成であってもよい。起源に関わらず、プロモーター配列に関連する核酸配列は、本明細書における実施形態のポリペプチドへの結合後に連結されるプロモーター特性に従って発現されるか又は発現抑制される。関連する核酸は、全ての時間で又は代わりに特定の時間で生物を通じて、又は特異的な組織、細胞もしくは細胞コンパートメント中で、発現又は抑制されるべきであることが所望されるタンパク質についてコードしてよい。かかるヌクレオチド配列は、特に、それらで改変された又は形質転換された宿主細胞又は生物に対して所望の表現型の特徴を付与するタンパク質をコードする。より詳述すれば、関連するヌクレオチド配列は、生物中でセスキテルペンシンターゼの製造を導く。
【0039】
「標的ペプチド」は、タンパク質、又は細胞内オルガネラ、すなわちミトコンドリア、もしくは色素体に対するポリペプチド、又は細胞外空間に対するポリペプチド(分泌シグナルペプチド)を標的とするアミノ酸配列をいう。標的ペプチドをコードする核酸配列は、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端、例えばN-末端をコードする核酸配列に融合してよく、又は天然の標的ポリペプチドを置き換えるために使用されてよい。
【0040】
「プライマー」という用語は、鋳型の核酸配列にハイブリダイズされ、かつ鋳型に対して相補的な核酸配列の重合のために使用される、短い核酸配列をいう。
【0041】
本明細書において使用されるように、「宿主細胞」又は「形質転換細胞」という用語は、少なくとも1つの核酸分子を宿すように変えられた細胞(又は生物)をいう。宿主細胞は、特に細菌細胞、真菌細胞又は植物細胞である。宿主細胞は、宿主細胞の核ゲノム又はオルガネラゲノムに組込まれている組換え遺伝子を含んでよい。代わりに、宿主は、組換え遺伝子を染色体外で含んでよい。相同配列は、オルソガス配列又はパラロガス配列を含む。系統学的方法、配列類似性、及びハイブリダイゼーション法を含む、オルソガス又はパラロガスを同定する方法は、当業者に公知であり、本明細書において記載されている。
【0042】
パラログは、類似した配列及び類似した機能を有する2以上の遺伝子を生じる遺伝子重複から生じる。パラログは、典型的に、一緒にクラスター形成し、関連する植物種内で遺伝子の重複によって形成される。パラログは、ペアワイズBlast解析を使用して類似の遺伝子の群で見出されるか、又はプログラム、例えばCLUSTALを使用した遺伝子ファミリーの系統発生解析中に見出される。パラログにおいて、コンセンサス配列は、関連する遺伝子内の配列及び遺伝子の類似の機能を有する配列に対して特徴的に同定されうる。
【0043】
オルソログ、又はオルソガス配列は、それらが共通祖先の子孫である種において見出されることから、互いに類似する配列である。例えば、共通祖先を有する植物種は、類似した配列及び機能を有する多くの酵素を含むことが公知である。当業者は、オルソガス配列を同定することができ、かつオルソログの機能を、例えばCLUSTAL又はBLASTプログラムを使用して1つの種の遺伝子ファミリーについてのポリジーン系図(polygenic tree)を構築することによって予測することができる。
【0044】
「選択可能なマーカー」という用語は、発現に対して、選択可能なマーカーを含む1つの細胞又は複数の細胞を選択するために使用されてよい任意の遺伝子をいう。選択可能なマーカーの例を以下に記載する。当業者は、種々の抗生物質、殺菌剤、栄養要求性又は除草剤の選択可能なマーカーが種々の標的種に適用可能であることを周知している。
【0045】
「生物」という用語は、任意の非ヒト多細胞生物又は単細胞生物、例えば植物、又は微生物をいう。特に、微生物は、細菌、酵母、藻類又は真菌である。
【0046】
「植物」という用語は、植物プロトプラスト、植物組織、再生植物を生じる植物細胞組織培養物、又は植物の一部、又は植物器官、例えば根、茎、葉、花、花粉、胚珠、胚、果実等を含む植物細胞を含むために区別なく使用される。任意の植物は、本明細書における実施形態の方法を実施するために使用されてよい。
【0047】
明細書及び付属の特許請求の範囲について、「又は」の使用は、特に明記されない限り「及び/又は」を意味する。同様に、「含有する(comprise)」、「含有する(comprises)」、「含有している(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含んでいる(including)」は、置き換えることができ、かつ制限することを意図しない。
【0048】
さらに、種々の実施形態の記載が「含有している(comprising)」の用語を使用する場合に、当業者は、ある特定の例において、実施形態が「実質的にからなる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」の言語を使用して代わりに記載されてよいことを理解していることを、さらに理解すべきである。
【0049】
詳細な説明
一実施形態において、本明細書において、
a.非環式ファルネシル二リン酸(FPP)前駆体と、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群から選択されるテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドとを接触させて、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択されるテルペンを製造すること、
ここで、ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である配列を少なくとも有するアミノ酸の配列を含む、並びに
b.任意に、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択されるテルペンを単離すること
を含む、セスキテルペン化合物の製造方法が提供される。
【0050】
一実施形態において、本明細書において、非環式ファルネシル二リン酸(FPP)前駆体と、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド(ここで、ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む)とを接触させて、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される1つ以上のテルペン、又はイソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むセスキテルペンの混合物を製造すること;並びに任意に、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される1つ以上のセスキテルペン、又はイソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むセスキテルペンの混合物を単離することを含む、1つ以上のセスキテルペン化合物の製造方法が提供される。
【0051】
一実施形態において、本明細書において提供される方法は、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸で、宿主細胞又は非ヒト宿主生物を形質転換するステップを含み、ここでポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0052】
一実施形態において、本明細書において提供される方法は、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸で、宿主細胞又は非ヒト生物を形質転換するステップを含み、ここでポリペプチドは、配列番号1からなる群から選択されるポリペプチドに対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0053】
一実施形態において、本明細書において提供される方法は、FPPを生産でき、形質転換されてポリペプチドを発現する非ヒト宿主生物又は細胞を培養することを含み、ここでポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0054】
さらなる実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は、原核細胞、及びより特に細菌細胞、及びさらにより特に大腸菌(E.coli)を含む。
【0055】
一実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は真核細胞である。他の実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は酵母細胞である。さらなる実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0056】
さらなる実施形態において、非ヒト生物又は細胞は、植物細胞である。
【0057】
他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群からのセスキテルペンと少なくとも1つの酵素とを接触させて、セスキテルペン誘導体を製造することを含む。
【0058】
一実施形態において、化学合成又は生化学合成又は双方の組み合わせを使用してセスキテルペンを誘導体に酸化させることを含む方法が提供される。特定の方法において、酸化は、シトクロムP450酵素で実施される。一実施形態において、P450酵素は、ベチベリア・ジザノイデスから単離されるか又はベチベリア・ジザノイデスに由来するP450から選択される。さらなる実施形態において、P450酵素は、酵素のCYP71Dファミリーから選択される。さらにさらなる実施形態において、本明細書において提供されるシンターゼの使用から生じる化合物は、原核細胞又は真核細胞から選択される野生型酵素を使用して酸化される。
【0059】
一実施形態において、セスキテルペンの酸化のために使用されるP450酵素をコードする核酸は、セスキテルペンシンターゼをコードする核酸を含む同一細胞中の同一プラスミド中で又は別々のプラスミドもしくは発現ベクター中で見出されてよい。
【0060】
他の実施形態において、P450は1つの細胞内にあってよく、セスキテルペンシンターゼは他の細胞内にあってよいが、1つ以上のテルペン又はテルペンの混合物の酸化のために一緒に培養又は共培養される。さらにさらなる実施形態において、セスキテルペンは最初に製造されてよく、次いでセスキテルペンの酸化のためにP450を含む細胞又は細胞によって製造されたP450を提供してよい。
【0061】
P450酵素の活性を再構築するために、シトクロムP450レダクターゼ(CPR)は、P450酵素活性部位へのコファクターNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート)からの電子の輸送中に含まれる。したがって、さらなる実施形態において、前記方法は、CPR酵素と組み合わせてシトクロムP450酵素を使用して実施される。さらなる実施形態において、CPRは、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)(ペパーミント)から単離されるか、又はメンタ・ピペリタに由来する。
【0062】
さらなる実施形態において、本明細書において提供される酵素は、細胞中で異種発現される。
【0063】
一実施形態において、本明細書において提供されるP450酵素及びテルペンシンターゼは、同一細胞中で発現又は過剰発現される。さらなる実施形態において、本明細書において提供されるP450酵素及びテルペンシンターゼ及びCPR酵素は、同一細胞中で発現又は過剰発現される。
【0064】
一実施形態において、任意にCPR酵素の使用を伴う、酸素化セスキテルペンを製造するための前記セスキテルペンシンターゼ及びシトクロムP450酵素の使用が提供される。
【0065】
さらなる実施形態において、任意に異種発現させたCPR酵素を伴う、酸素化セスキテルペン又は酸素化セスキテルペン化合物の混合物を製造するためのセスキテルペンシンターゼ及び前記シトクロムP450酵素の使用が本明細書において提供される。
【0066】
一態様において、化学合成又は生化学合成又は双方の組合せを使用して、本明細書において記載したシトクロムP450ポリペプチドで、CPR酵素を伴って、セスキテルペンを酸素化セスキテルペンに酸化すること含む、酸素化セスキテルペンの製造方法が本明細書において提供される。
【0067】
一実施形態において、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンを含むテルペンの混合物が本明細書において提供される。
【0068】
一実施形態において、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンを含むテルペンの混合物であって、それぞれに関する割合は、イソバレンセン約66~68質量%、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン約25~26質量%及びバレンセン約6~9質量%である混合物が本明細書において提供される。本明細書において、イソバレンセン誘導体、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン誘導体及びバレンセン誘導体を含むテルペンの混合物であって、それぞれに関する割合は、相対質量で、イソバレンセン誘導体約66~68質量%、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン誘導体約25~26質量%及びバレンセン誘導体約6~9質量%である混合物も提供される。
【0069】
一実施形態において、本明細書に記載されたポリペプチド(シンターゼ)をコードする核酸を含む発現ベクターが本明細書において提供される。
【0070】
一実施形態において、本明細書に記載された少なくとも1つの核酸を宿すために形質転換させて、本明細書において提供された少なくとも1つのポリペプチド(シンターゼ)を異種発現又は過剰発現する非ヒト宿主生物又は細胞が本明細書において提供される。
【0071】
一実施形態において、(1)本明細書に記載したセスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子、又は(2)前記核酸分子を含む発現ベクター、を含有する非ヒト宿主生物又は宿主細胞が本明細書において提供される。
【0072】
一実施形態において、非ヒト宿主生物又は宿主細胞は真核細胞である。他の実施形態において、非ヒト生物又は細胞は真菌である。さらなる実施形態において、非ヒト生物又は細胞は、植物細胞である。さらに他の実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は微生物である。他の実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は細菌である。さらなる実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は大腸菌である。
【0073】
一実施形態において、非ヒト生物又は細胞は酵母である。さらなる実施形態において、非ヒト宿主生物又は細胞は、サッカロミセス・セレビジエである。
【0074】
一実施形態において、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードするベチベリア・ジザノイデスから単離された核酸又は該ベチベリア・ジザノイデスに由来する核酸が本明細書において提供される。
【0075】
他の実施形態は、セスキテルペンシンターゼ活性を有するベチベリア・ジザノイデスから単離されるか又は該ベチベリア・ジザノイデスに由来するポリペプチドである。
【0076】
さらなる実施形態において、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及びバレンセンからなる群から選択される1つ以上のセスキテルペン;又は、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むセスキテルペンの混合物を製造するための、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドの使用が本明細書において提供される。
【0077】
さらに他の実施形態において、イソバレンセン、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン及び/又はバレンセンの1つ以上を含むセスキテルペン化合物の混合物を製造するための、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドの使用が本明細書において提供される。
【0078】
一実施形態において、セスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0080】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及び/又はバレンセンシンターゼ活性を含むテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0081】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0082】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0083】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0084】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0085】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0086】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約90%、95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0087】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約95%、98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0088】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約98%、99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0089】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも約99%又は100%同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0090】
一実施形態において、イソバレンセンシンターゼ活性、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ活性及びバレンセンシンターゼ活性からなる群からのテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に対して同一である少なくとも1つの配列を有するアミノ酸の配列を含む。
【0091】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0092】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0093】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0094】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0095】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0096】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0097】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0098】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0099】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0100】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0101】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して少なくとも99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0102】
一実施形態において、核酸は、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列に対して同一である配列を有するヌクレオチド配列を含む。
【0103】
一実施形態において、核酸は配列番号3を含む。さらなる実施形態において、核酸は配列番号4を含む。
【0104】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0105】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0106】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0107】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0108】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、90%、95%、98%、99%又は100%同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0109】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、95%、98%、99%又は100%同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0110】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、98%、99%又は100%同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0111】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、99%又は100%同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0112】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7、配列番号10、配列番号12及び配列番号14からなる群から選択されるP450酵素(例えば、P450活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して同一である配列を有するP450酵素で酸化される。
【0113】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号7を含むP450酵素で酸化される。
【0114】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号10を含むP450酵素で酸化される。
【0115】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号12を含むP450酵素で酸化される。
【0116】
一実施形態において、本明細書において提供されるテルペンシンターゼから生成される化合物は、配列番号14を含むP450酵素で酸化される。
【0117】
一実施形態において、P450酵素は、シトクロムP450レダクターゼ(CPR)酵素を伴う。CPR酵素は、P450酵素と同一の植物源に由来してよく、又はP450酵素と異なる植物源に由来してよい。一実施形態において、異なる植物源に由来するCPRは、Jensen及びMoller (2010) Phytochemsitry 71, 132-141において記載されているように、P450酵素の活性を補うために使用される。一実施形態において、CPRは、メンタ・ピペリタから単離されるか、又はメンタ・ピペリタに由来する。
【0118】
さらなる実施形態において、CPR酵素は、配列番号15からなる群から選択されるCPR酵素(例えば、CPR活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%同一である配列を有する。さらなる実施形態において、CPR酵素は、配列番号15からなる群から選択されるCPR酵素(例えば、CPR活性を有する酵素であるがこれらに制限されない)に対して同一である配列を有する。さらなる実施形態において、CPR酵素は配列番号15を含む。
【0119】
セスキテルペン類の又は特定のセスキテルペンを触媒により合成するポリペプチドの能力は、本明細書において提供される実施例において詳述するように、酵素アッセイを実行することによって確認できる。
【0120】
ポリペプチドは、それらのセスキテルペンシンターゼ活性を維持することが提供された短縮ポリペプチドを含むことも意味する。本明細書において記載される配列を改質することによって得られるヌクレオチド配列は、当業者に公知の任意の方法を使用して、例えば任意のタイプの変異、例えば欠失、挿入又は置換の変異を導入することによって実施されてよい。かかる方法の例は、多様体ポリペプチド及びそれらの製造方法に関する記載の一部に挙げられている。
【0121】
2つのペプチド配列又はヌクレオチド配列の同一性のパーセンテージは、それら2つの配列のアライメントが生じる場合に2つの配列において同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチド残基の数の関数である。同一残基は、アライメントの所与の位置で2つの配列において同一である残基と定義される。配列同一性のパーセンテージは、本明細書において使用されるように、2つの配列間の同一の残基の数を最も短い配列における残基の総数で割り、100をかけることによって最適なアライメントから算出される。最適なアライメントは、同一性のパーセンテージが最も高い可能性があるアライメントである。ギャップは、1つ又は双方の配列中に、最適なアライメントを得るためにアライメントの1つ以上の位置で導入される。これらのギャップは、同一でない残基として、配列同一性のパーセンテージの計算のために考慮に入れられる。アミノ酸又は核酸の配列同一性のパーセンテージを決定する目的のためのアライメントは、コンピュータプログラム及び例えばウェブ上で入手できる公的に入手可能なコンピュータプログラムを使用する種々の方法で達せられてよい。好ましくは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCBI))ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgiから入手できるデフォルトパラメータに対するBLASTプログラム(Tatianaら、FEMS Microbiol Lett., 1999, 174:247-250, 1999)セットを、タンパク質又は核酸配列の最適なアライメントを得るため、及び配列同一性のパーセンテージを算出するために使用できる。
【0122】
インビトロでFPPと接触されるべきポリペプチドは、標準のタンパク質又は酵素抽出技術を使用して、それを発現する任意の生物に由来してもよく、又は任意の生物から抽出することによって得られてよい。宿主生物が単細胞生物又は培地中に本明細書における実施形態のポリペプチドを放出する細胞である場合に、ポリペプチドは、単に直接培地から得られてよく、又は遠心分離によって、任意に続いて洗浄工程及び適した緩衝溶液中での再懸濁によって採取されてよい。前記生物又は細胞がその細胞内でポリペプチドを蓄積する場合に、ポリペプチドは、細胞の破壊又は溶解によって、及び任意に細胞溶解物からポリペプチドのさらなる抽出によって得られてよい。
【0123】
他の特定の実施形態に従って、任意の前記実施形態の方法は、インビボで実施される。本明細書において提供されるこれらの実施形態は、予めポリペプチドを単離することなくインビボで前記方法を実施することができるため、特に有利である。前記反応は、形質転換した生物又は細胞内で直接生じて、前記ポリペプチドを発現する。
【0124】
前記生物又は細胞は、ポリペプチドを「発現」することを意味するが、但し該生物又は細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸を宿すために形質転換され、この核酸は、mRNAに転写され、そしてポリペプチドが、宿主生物又は宿主細胞中で見出される。「発現」という用語は、「異種発現」及び「過剰発現」を含み、後者は、形質転換していない生物又は細胞中で測定されるものを超える、及びそれより多いmRNA、ポリペプチド及び/又は酵素の活性のレベルをいう。非ヒト宿主生物又は細胞を形質転換するための適した方法のより詳細な記載は、かかる形質転換した非ヒト宿主生物又は細胞について記載された明細書の一部で以下に記載されている。
【0125】
特定の生物又は細胞は、本明細書において記載された核酸で形質転換する前に、又は前記核酸と一緒に、天然にFPPを製造する場合に、又は天然にFPPを製造しないがFPPを製造するように形質転換される場合に、「FPPを製造できる」ことを意味する。生物又は細胞を天然に生じるよりも高い量のFPPを製造するように形質転換させた生物又は細胞は、「FPPを製造することができる生物又は細胞」にも包含される。生物、例えば微生物を形質転換して、それらがFPPを製造する方法は、当業者に既に公知である。
【0126】
インビボで本明細書における実施形態の方法を実施するために適した非ヒト宿主生物は、任意の非ヒト多細胞又は単細胞生物であってよい。特定の実施形態において、インビボで本明細書における実施形態を実施するために使用される非ヒト宿主生物は、植物、原核生物又は真菌である。あらゆる植物、原核生物又は真菌を使用できる。特に有用な植物は、多量のテルペンを自然に製造するものである。より特定の実施形態において、インビボで本明細書における実施形態の方法を実施するために使用される非ヒト宿主生物は、微生物である。あらゆる微生物を使用できるが、さらにより特定の実施形態に従って、該微生物は細菌又は酵母である。さらなる実施形態において、前記細菌は大腸菌であり、かつ前記酵母はサッカロミセス・セレビシエである。
【0127】
これらの生物のいくつかは、天然にFPPを製造しないか、少量のみ製造する。本明細書における実施形態の方法を実施するために適切であるために、これらの生物は、前記前駆体を製造するために、又は前記前駆体を大量に製造するために形質転換される。それらは、前記実施形態のいずれかに従って記載された核酸での改質前に形質転換されてよい。それらは、前記したように同時に形質転換されてもよい。
【0128】
単離された高次真核細胞を、完全な生物の代わりに、インビボで本明細書における実施形態の方法を実施するための宿主としても使用できる。適した真核細胞は、あらゆる非ヒト細胞、植物又は真菌細胞を含みうる。
【0129】
他の特定の実施形態に従って、本明細書に記載された任意の実施形態において使用されるセスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド又は本明細書に記載された核酸によりコードされるポリペプチドは、遺伝子操作によって得られた多様体であってよいが、但し該多様体は、そのセスキテルペンシンターゼ活性を維持している。
【0130】
本明細書において使用されるように、ポリペプチドは、本明細書において同定されるアミノ酸配列を含むポリペプチド又はペプチド断片、並びに短縮されたポリペプチド又は多様体ポリペプチドとして意図され、但し、それらは、それらのセスキテルペンシンターゼ活性を維持している。
【0131】
多様体ポリペプチドの例は、選択的mRNAスプライシング事象から又は本明細書において記載されたポリペプチドのタンパク質切断からもたらされる天然に生じるタンパク質である。タンパク質分解による多様性は、例えば、本明細書における実施形態のポリペプチドからの1つ以上の末端アミノ酸のタンパク質分解性除去による、種々のタイプの宿主細胞における発現に対するN末端又はC末端での差異を含む。以下に記載されているように、本明細書における実施形態の核酸の天然又は人工の変異によって得られた核酸によってコードされたポリペプチドも、本明細書における実施形態によって含まれる。
【0132】
アミノ末端及びカルボキシル末端で追加のペプチド配列の融合から得られるポリペプチド多様体も、本明細書における実施形態の方法で使用されうる。特に、かかる融合は、ポリペプチドの発現を高めることができ、タンパク質の精製において有用であり、又は所望の環境又は発現システムでポリペプチドの酵素活性を改良できる。かかる追加のペプチド配列は、例えばシグナルペプチドであってよい。したがって、多様体ポリペプチド、例えば他のオリゴペプチド又はポリペプチドとの融合によって得られたもの、及び/又はシグナルペプチドに連結させたものを使用する方法が本明細書において含まれる。他の機能性タンパク質、例えばテルペン生合成経路からの他のタンパク質との融合から得られるポリペプチドは、有利には、本明細書における実施形態の方法においても使用されうる。
【0133】
前記のように、本明細書における実施形態のポリペプチドをコードする核酸配列は、前記方法がインビボで実施される場合に使用されるべきであると意図される非ヒト宿主生物又は細胞を改質するために有用な手段である。
【0134】
したがって、前記実施形態のいずれかに従ってポリペプチドをコードする核酸が、本明細書においても提供される。
【0135】
本明細書における一実施形態の核酸は、一本鎖形又は二本鎖形(DNA及び/又はRNA)でのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを含むと定義されうる。「ヌクレオチド配列」という用語は、別々の断片の形で、又はより大きい核酸の成分としてポリヌクレオチド分子又はオリゴヌクレオチド分子を含むとも解されるべきである。本明細書における実施形態の核酸は、実質的に内因性材料を汚染しないものを含むある単離されたヌクレオチド配列も含む。本明細書における実施形態の核酸は短縮されてよいが、但し、前記のように本明細書において含まれるポリペプチドをコードする。
【0136】
一実施形態において、シンターゼをコードする本明細書における実施形態の核酸は、植物、例えばベチベリア・ジザノイデスもしくは他の種において天然に存在してよく、ベチベリア・ジザノイデスもしくは他の種に由来してよく、又は配列番号3もしくは配列番号4を改質することによって得られてよい。
【0137】
変異は、これらの核酸のあらゆる種類の変異、例えば点変異、欠失変異、挿入変異及び/又はフレームシフト変異であってよい。多様体核酸は、そのヌクレオチド配列を特定の発現系に適応するために製造されてもよい。例えば、細菌発現系は、アミノ酸が特定のコドンによってコードされる場合に、ポリペプチドをより効率的に発現することが公知である。
【0138】
遺伝子コードの縮重によって、1つより多いコドンが、同一のアミノ酸配列をコードしてよく、多重核酸配列は、同一のタンパク質又はポリペプチドについてコードでき、その際、全てのこれらのDNA配列は、本明細書における実施形態に含まれる。適宜、テルペンシンターゼをコードする核酸配列は、宿主細胞中で増加させた発現について最適化されうる。例えば、本明細書における実施形態のヌクレオチドを、改良された発現のために特に宿主にコドンを使用して合成してよい。
【0139】
多様体は、ポリペプチド骨格に共有結合又は非共有結合する改質基の付着により、本明細書における実施形態のポリペプチドと異なってもよい。
【0140】
多様体は、導入されたN結合した又はO結合したグリコシル化部位、及び/又はシステイン残基の付加によって本明細書に記載のポリペプチドとは異なるポリペプチドも含む。当業者は、どのようにアミノ酸配列を改質するか、及び生物学的活性を保持するかを認識している。
【0141】
本明細書に開示された配列において知られている遺伝子配列に加えて、DNA配列多型が所与の集団内に存在してよく、本明細書に開示されるポリペプチドのアミノ酸配列における変化を導きうることは、当業者に明白であろう。かかる遺伝的多型は、異なる集団からの細胞中に又は自然対立遺伝子変異による集団内に存在しうる。対立遺伝子多様体は機能的等価物を含んでもよい。
【0142】
さらなる実施形態は、具体的に開示された核酸からかかる配列多型によって誘導された分子にも関する。これらの自然変異は、通常、本明細書に開示された遺伝子のヌクレオチド配列又はポリペプチドのアミノ酸配列において約1~5%の変動をもたらす。前記のように、本明細書における実施形態のポリペプチドをコードする核酸は、非ヒト宿主生物又は細胞を改質するため、及び本明細書に記載された方法において使用されるべきであると意図される非ヒト宿主生物又は細胞を改質するために有用な手段である。
【0143】
本明細書において提供される実施形態は、cDNA、ゲノムDNA及びRNA配列を含むが、これらに制限されない。
【0144】
本明細書における実施形態のポリヌクレオチドを含む遺伝子は、利用できるヌクレオチド配列情報、例えば付属の配列表において見出される情報に基づいて、及び当業者に公知の方法により、クローン作製されてよい。これらは、例えば、センス方向で生じ、かつセンス鎖の合成を開始し、かつ他は逆相補的な方法で作製され、かつアンチセンス鎖を生じる、かかる遺伝子のフランキング配列を示すDNAプライマーの設計を含む。熱安定性のDNAポリメラーゼ、例えばポリメラーゼ連鎖反応において使用されるものは、かかる実験を実施するために一般に使用される。代わりに、遺伝子を表すDNA配列は、化学的に合成され、続いて、例えば適合性の細菌、例えば大腸菌によって増殖されてよいDNAベクター分子に導入されてよい。
【0145】
本明細書において、配列番号3及び配列番号4の変異によって得られる核酸配列が提供され、かかる変異は日常的に生じてよい。1つ以上のヌクレオチドの変異、欠失、挿入、及び/又は置換を、それらDNA配列に導入することができることは、当業者に明らかである。
【0146】
イソバレンセンシンターゼ、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ及びバレンセンシンターゼのタンパク質をコードする本明細書における実施形態の核酸配列は、宿主細胞又は宿主生物中でイソバレンセンシンターゼ、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンシンターゼ及びバレンセンシンターゼを製造するために、発現ベクター中に挿入されてよく、及び/又は発現ベクター中で挿入されたキメラ遺伝子に含まれていてよい。宿主細胞のゲノム中へ導入遺伝子を挿入するためのベクターは、当業者に周知であり、かつプラスミド、ウイルス、コスミド及び人工染色体を含む。キメラ遺伝子が挿入される二元の又は同時組み込み型のベクターも、宿主細胞を形質転換するために使用される。
【0147】
本明細書における実施形態の方法をインビボで実施するために適した宿主生物又は細胞を形質転換するための他の重要な手段は、本明細書における実施形態のあらゆる実施形態に従った核酸を含む発現ベクターである。したがって、かかるベクターも、本明細書において提供される。
【0148】
本明細書における実施形態の少なくとも1つの核酸を宿すために形質転換させて、本明細書における実施形態の少なくとも1つのポリペプチドを異種発現又は過剰発現する組換え非ヒト宿主生物及び細胞も、本明細書における実施形態の方法を実施するための非常に有用な手段でもある。したがって、かかる非ヒト宿主生物及び細胞も本明細書において提供される。
【0149】
前記実施形態のいずれかに従った核酸は、非ヒト宿主生物及び細胞を形質転換するために使用されてよく、かつ発現させたポリペプチドは、前記ポリペプチドのいずれかであってよい。
【0150】
本明細書における実施形態の非ヒト宿主生物は、任意の非ヒト多細胞又は単細胞生物であってよい。特定の実施形態において、非ヒト宿主生物は、植物、原核生物又は真菌である。あらゆる植物、原核生物又は真菌が、本明細書において提供される方法に従って形質転換されるために適している。特に有用な植物は、多量のテルペンを自然に製造するものである。
【0151】
より特定の実施形態において、非ヒト宿主生物は、微生物である。あらゆる微生物が本明細書における使用に適しているが、さらにより特定の実施形態に従って、該微生物は細菌又は酵母である。最も特に、細菌は大腸菌であり、かつ前記酵母は、サッカロミセス・セレビジエである。
【0152】
単離された高次真核細胞を、完全な生物の代わりに、形質転換させることもできる。高次真核細胞とは、ここで酵母細胞を除いたあらゆる非ヒト真核細胞を意味する。特定の高次真核細胞は、植物細胞又は真菌細胞である。
【0153】
前記実施形態のいずれも、任意の実行可能な組み合わせで本発明の任意の適切な記述と組み合わせられうる。実施形態は、明記されている場合を除き、あらゆる特定の発明の記載に限定されることを意図しない。
【0154】
本発明を、次の実施例及び附属の図面に関連してさらに記載する。
【0155】
実施例
実施例1:植物材料及び全RNA抽出
ベチバー(ベチベリア・ジザノイデス)植物を、種苗店(The Austral Plants Company, Les Avirons, The Reunion Island, France)から得た。植物を、温室(Lullier Agronomy research Station, Geneva, Switzerland)においてポットで栽培し、そして6ヶ月から1年の集団を分けることによって栄養繁殖した。根の収穫のために、植物を、ポットから取り出し、そして水道水で洗った。
【0156】
RNAの抽出のために、若い植物(繁殖後4~6ヶ月)、よく発達した密な根系を有する年数を経た植物(繁殖後1~2年)、及びポットから取り出して24~36時間後の室温で乾燥させた若い植物を含むいくつかの植物から根を刈り取った。その根を、植物の気部から切断し、液体窒素で凍結した。その根を、最初に、ワーリングブレンダー(Waring Blendor(Waring Laboratory, Torrington, USA))を使用して液体窒素中で大まかに切り刻み、そして乳鉢及び乳棒を使用して研磨して微粉末にした。全RNAを、Kolosovaら(Kolosova N、Miller B、Ralph S、Ellis BE、Douglas C、Ritland K、及びBohlmann J、Isolation of high-quality RNA from gymnosperm and angiosperm trees. J. Biotechniques, 36(5), 821-4, 2004)に記載された方法に従って抽出し、続いて改質した。抽出緩衝液の20ml容量を、研磨した組織の2グラムについて使用し、そして抽出緩衝液を、2%(w/v)のPVP(ポリビニルピロリドン、Sigma-Aldrich)で補充した。CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、Sigma-Aldrich)抽出ステップのために、核酸ペレットを、TE緩衝液(10mM Tris-HCl、pH8、1mM EDTA)2ml中で再懸濁し、そして抽出を5M NaCl 2ml及び10% CTAB 1mlで実施した。イソプロパノール沈澱のために、核酸ペレットをTE 500μl中で溶解した。最終RNAペレットを水50μlで再懸濁した。
【0157】
実施例2:トランスクリプトームシーケンシング
ベチバーの根のトランスクリプトームを、Illumina技術を使用して配列決定した。全てのシーケンシングステップを、Fasteris SA(Plan-les-Ouates, CH-1228, Switzerland)により実施した。mRNAライブラリーを、TruSeq Stranded mRNA Library Preparation Kit(Illumina Inc.)を使用して製造した。断片化及びサイズ選択を適用して、長さ500~550bpのDNA断片を選択及び精製した。DNAシーケンシングを、MiSeq Reagent Kit V3 (Illumina Inc.)を使用して、MiSeqシーケンサーで実施した。1つのフルフローセルをライブラリーのシーケンシングのために使用し、そして2×300シーケンシングサイクルを実施した。このシーケンシングは、17,453,393の2×300オーバーラップペアードリード(合計10.5メガ塩基)を提供した。
【0158】
ペアードリードを、FastqJoinを使用して最初に前処理をして、オーバーラップ末端にペアードエンドリードを連結させた。このステップにおいて、58.3%のペアードエンドリードを連結でき、平均サイズ430塩基を有する850万の連結リードを得た。そして、これらの新規のリード及び連結されていないペアードエンドリードを、CLC Genombic Workbench 7(CLC bio)のCLC bio de novoアセンブリツールを使用して組み立てた。最終的に、組み立てられたベチバーの根のトランスクリプトームは、平均長さ577塩基、最大長15,800塩基、及び546塩基のN50を有する333,633の特有のコンティグ配列を含んでいた。
【0159】
実施例3:新たなセスキテルペンをコードする配列の同定
トランスクリプトームのデータを、tBlastnアルゴリズム(Altschulら、J. Mol. Biol. 215、403~410、1990年)を使用して、及び同一植物から単離され前記した(国際公開第2010134004号(WO2010134004)及び国際公開第2006134523号(WO2006134523))公知のセスキテルペンシンターゼのアミノ酸配列をクエリーとして使用して調べた。このアプローチを使用して、新たなセスキテルペンをコードする配列を得た。このcDNA(VzTps1718)(配列番号3)は、1835塩基対の長さであり、567アミノ酸の長さのタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(配列番号1)を含んでいた。
【0160】
VzTp1718の推定アミノ酸配列を公的に入手可能な配列と比較した。公的データベースにおいて最も近いアミノ酸配列は、NCBI受入番号XP_004979711.1を有する配列であった。この配列を、(S)-ベータ-ビザボレンシンターゼ類としてアノテートし、植物セタリア・イタリカ(Setaria italica)(アワ)から単離した。しかしながら、XP_004979711.1の機能アノテーションは自動化アノテーションによりなされており、実験データはこの酵素の酵素活性を確認するために開示されていない。このアミノ酸配列XP_004979711.1は、VzTps1718アミノ酸配列と54%だけの同一性を有する。
【0161】
ベチバーの根からの以前に特徴付けられたセスキテルペンシンターゼ(国際公開第2010134004号及び国際公開第2006134523号)との比較は、アミノ酸配列の35%未満の配列同一性を示す。
【0162】
実施例4:VzTps1718の異種発現及び機能性の特徴付け
VzTps1718のDNA配列を、コドン最適化(配列番号4)し、インビトロで合成し、そしてpJ401発現プラスミド(DNA2.0、Menlo Park、CA、USA)でクローニングした。VzTps1718シンターゼ(配列番号1)の異種発現を、KRX大腸菌細胞(Promega)中で実施した。pJ401-VzTps1718発現プラスミドで形質転換した細胞の単コロニーを使用して、LB培地5mlに植え付けた。37℃で5~6時間のインキュベート後に、培養物を25℃のインキュベーターに移し、そして平衡のために1時間置いた。そしてタンパク質の発現を、1mM IPTG及び0.2%ラムノースを添加することにより誘発し、そしてその培養物を25℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を遠心分離により採取し、50mM MOPSO(pH7、10%グリセロール)の0.1容量中で再懸濁し、そして超音波破砕により分解した。抽出物を遠心分離(20000gで30分)により清浄し、そして可溶性タンパク質を含む上清を、さらなる実験のために使用した。
【0163】
組換えタンパク質を含むこの粗大腸菌タンパク質抽出物を、酵素活性の特徴付けのために使用した。アッセイを、80μΜのファルネシル二リン酸(FPP、Sigma)及び0.1~0.5mgの粗タンパク質の存在下で、2mLの50mM MOPSO(pH7)、10%グリセロール、1mM DTT、15mM MgCl2中で実施した。その管を12~24時間25℃でインキュベートし、そしてペンタン1容量で2回抽出した。窒素流下での濃縮後に、抽出物を、GC-MSにより分析し、そして対照タンパク質でのアッセイからの抽出物と比較した。GC-MS分析を、Agilent 5975質量検出器に連結したAgilent 6890 Series GCシステムを使用して実施した。GCは、内部直径0.25mm、30m DB-1MSキャピラリーカラム(Agilent)を備えていた。キャリヤーガスは、1mL/分の一定流でHeであった。入口温度を250℃に設定した。開始炉温度は80℃であり、続いて10℃/分の勾配で220℃まで、30℃/分の第二の勾配で280℃までであった。生成物の同定は、質量スペクトル及び保持指数と、標準及び内部質量スペクトルのデータベースとの比較に基づいた。
【0164】
このインビトロ条件において、VzTps1718酵素(配列番号1)は、セスキテルペンシンターゼ活性を示し、FPPをセスキテルペン炭水化物及び酸素化セスキテルペンを含むいくつかのテルペン生成物に変換した。主な生成物は、エレモフィラン、ベチスピラン及びオイデスマン骨格を有するセスキテルペンであった。生成物の中からいくつかの化合物を、イソバレンセン(化合物1)、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン(化合物2)及びバレンセン(化合物3)(
図1)の保持指標及び質量スペクトルの一致に基づいて同定できた。VzTps1718を有するインビトロで得られた生成物混合物ととの相対組成を表1において詳述する。同定されたセスキテルペン生成物について、生成物混合物における相対組成は、スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエンについて15.6%、イソバレンセンについて41.6%、及びバレンセンについて3.7%であった。
【0165】
【0166】
この生成物の混合物を製造するセスキテルペンシンターゼ又は化合物1もしくは化合物2を製造するシンターゼは以前に知られていなかった。VzTps1718の生成物の酸素化誘導体、特にアルコール、ケトン、アルデヒド及びカルボン酸は、ベチバー油の公知の成分であり、これらの誘導体のいくつかは典型的な複雑なベチバーの匂いに寄与する。
【0167】
実施例5:VzTps1718を使用したセスキテルペンのインビボでの製造
VzTps1718セスキテルペン生成物のインビボでの製造のために、大腸菌細胞を、pJ401-VzTps1718発現プラスミドで形質転換し、そして内因性FPPプールからのセスキテルペンの製造を評価した。細胞の生産性を高めるために、異種FPPシンターゼ及び完全な異種メバロン酸(MVA)経路からの酵素を、同一の細胞中で発現させた。FPPシンターゼ遺伝子を含む発現プラスミド、及び完全MVA経路のための遺伝子の構築は、国際公開第2013064411号(WO2013064411)において、又はSchalkら(2013) J. Am. Chem. Soc. 134、18900-18903において記載されている。簡潔に、発現プラスミドを、完全なメバロン酸経路のための酵素をコードする遺伝子から構成される2つのオペロンを含んで製造した。大腸菌アセトアセチル-CoAチオラーゼ(atoB)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(黄色ブドウ球菌)HMG-CoAシンターゼ(mvaS)、スタフィロコッカス・アウレウスHMG-CoAレダクターゼ(mvaA)及びサッカロミセス・セレビジエFPPシンターゼ(ERG20)遺伝子からなる第一の合成オペロンを、インビトロで合成し(DNA2.0、Menlo Park、CA、USA)、そしてNcoI-BamHIで消化したpACYCDuet-1ベクター(Invitrogen)を連結して、pACYC-29258を得た。メバロン酸キナーゼ(MvaK1)、ホスホメバロン酸キナーゼ(MvaK2)、メバロン酸ジホスフェートデカルボキシラーゼ(MvaD)、及びイソペンテニルジホスフェートイソメラーゼ(idi)を含む第二のオペロンを、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)(肺炎連鎖球菌)のゲノムDNA(ATCC BAA-334)から増幅し、そしてプラスミドpACYC-29258-4506を提供するpACYC-29258の第二のマルチクローニング部位にライゲーションした。したがって、このプラスミドは、アセチル補酵素AからFPPを導く生合成経路の全ての酵素をコードする遺伝子を含む。
【0168】
KRX大腸菌細胞(Promega)を、プラスミドpACYC-29258-4506及びプラスミドpJ401-VzTps1718で同時形質転換した。形質転換させた細胞を、カナマイシン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(34μg/ml)LBアガロースプレート上で選択した。単コロニーを使用して、同一の抗生物質で補った5mLの液体LB培地に植え付けた。その培養物を37℃で一晩インキュベートした。翌日、同一の抗生物質で補った2mLのTB培地を一晩培養物の0.2mLに植えた。37℃で6時間インキュベートした後に、その培養物を20℃まで冷却させ、そして0.1mM IPTG及び0.02%ラムノースをそれぞれの管に添加した。その培養物を20℃で48時間インキュベートした。そして、その培養物を、MTBEの2容量で2回抽出し、その有機相を500μLに濃縮し、そして実施例4において前記したようにGC-MSにより分析した。
【0169】
これらのインビボ条件において、VzTps1817組換え酵素は、インビトロアッセイと非常に類似した組成を有するセスキテルペンの混合物を製造した(
図3-表2)。生成物混合物中のスピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン、イソバレンセン及びバレンセンの相対組成は、それぞれ14.7%、39.0%及び5.1%であった。
【0170】
【0171】
実施例6:ベチバーのシトクロムP450酵素を使用してVzTps1718により製造したセスキテルペンの酵素酸化
生物変換アッセイにおける基質として使用した異なるセスキテルペン炭化水素を、実施例5に記載した大腸菌細胞を使用して製造し、異種MVA経路及びVzTP1718を発現した。シリカカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーを使用して、培養液1Lの抽出物からセスキテルペン炭化水素を精製した。スピロベチバー-1(10),7(11)-ジエン、イソバレンセン及びバレンセンを含む得られたセスキテルペン炭化水素の混合物を、生化学的酸化の実験のために使用した。
【0172】
ベチバーの根のトランスクリプトームデータを、tBlastnアルゴリズム(Altschulら、J. Mol. Biol. 215, 403-410, 1990)を使用して、及びテルペンヒドロキシラーゼ活性を有する公知のシトクロムP450、例えば国際公開第2013064411号の配列番号1及び2のアミノ酸配列をクエリーとして使用して、シトクロムP450をコードする配列について調査した。いくつかのシトクロムP450をコードする転写物を単離した。転写物VzTrspt-9_Locus_8201-12(配列番号5)は、506アミノ酸タンパク質VzCP8201-12(配列番号7)をコードし、シトクロムP450アミノ酸配列との相同性を示した。公的に入手可能な最も近い配列は、VzCP8201-12と比較して84%未満の配列同一性を有する、ソルガム・ビコロ(Sorghum bicolor)(モロコシ)又はゼア・マイズ(Zea mays)(トウモロコシ)からの推定シトクロムP450タンパク質(例えば、NCBI受入番号XP_002466860.1又はDAA50205.1を有する配列)である。
【0173】
全長VzCP8201-12(配列番号7)タンパク質をコードするcDNA(配列番号8)配列を、細菌中での最適な発現のためのコドン利用で設計した。VzCP8201-12(配列番号10)のN末端改質多様体をコードする第二のcDNA(配列番号9)も設計し、この改質は、20個の第一アミノ酸の欠失、及びMALLLAVFLGLSCLLLLSLWペプチド(配列番号17)による置換を含んでいた。2つのcDNAを合成し、pCWori発現プラスミド(Barnes, H.J. Method Enzymol. 272, 3-14; (1996))中でサブクローニングして、それぞれpCWori-VzCP8201-12及びpCWori-VzCP8201Bovプラスミドを提供した。
【0174】
VzCP8201-12酵素(配列番号7)の機能的特徴付けのために、タンパク質を大腸菌細胞中で異種発現させた。植物P450の活性を再構築するために、第二の膜タンパク質の存在が有用である。このタンパク質、P450レダクターゼ(CPR)は、コファクターNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート)からの電子のP450活性部位への輸送中に含まれる。ある植物からのCPRは、他の植物からのP450酵素の活性を補うことができることが示されている(Jensen及びMoller (2010) Phytochemsitry 71, 132-141)。いくつかのCPRをコードするDNA配列が、種々の植物源から報告されている。全長cDNA(配列番号6)のコドン使用に最適化したメンタ・ピペリタから事前に単離したCPR(CPRm、未公開データ、配列番号15)を選択し、pACYCDuet-1発現プラスミド(Novagen)のNcoI及びHindIII制限酵素部位にクローニングして、プラスミドpACYC-CPRmを得た。
【0175】
大腸菌細胞(BL21 StarTM(DE3)、Invitrogen)を、プラスミドpCWori-VzCP8201-12又はpCWori-VzCP8201Bovで、及びpACYC-CPRmプラスミドで同時形質転換した。形質転換させた細胞を、カルベニシリン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(34μg/ml)LBアガロースプレート上で選択した。単コロニーを使用して、同一の抗生物質で補足した5mLの液体LB培地に植え付けた。その培養物を37℃で一晩インキュベートした。翌日、同一の抗生物質で補った20mLのTB培地を一晩培養物にOD0.15で開始して植えた。37℃で2時間インキュベートした後に、その培養物を25℃まで冷却させ、そして1mM IPTG及び75mg/L δ-アミノレブリン酸を添加した。24時間後に、細胞を採取し、遠心分離し、そして5%グリセロールで補ったリン酸カリウム緩衝液(50mM pH7.0)4mlで再懸濁した。前記のように製造したセスキテルペン混合物を、エタノール中で10mg/mlに希釈し、最終濃度0.1mg/mlまで細胞懸濁液に添加した。変換を、穏やかに撹拌しながら25℃で24時間行った。その培養液を、2容量のMTBE(メチルtert-ブチルエーテル、Sigma)で抽出し、そしてその抽出物を、実施例4に記載したようにGCMSにより分析した。
【0176】
いくつかの酸素化セスキテルペン化合物はこの生物変換中に形成された(
図7及び8)。主な生成物は、イソバレンセノール(
図1)を製造するVzCP8201によるイソバレンセンの酸化、続いてバックグラウンドでの大腸菌酵素活性によるイソバレンセノールのアセチル化によって形成されるイソバレンセニルアセテート(
図1)であった。
【0177】
実施例7:CYP71D4を使用してVzTps1718により製造したセスキテルペンの酵素酸化
ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum)(ジャガイモ)(NCBI受入番号CAC24711.1)からのCYP71D4(配列番号12)も、VzTps1718によって製造されたセスキテルペン炭化水素の酸化のために評価した。CYP71D4のN末端多様体をコードするコドン最適化cDNA(配列番号13)を設計し、そして合成した(DNA2.0)。このN末端多様体CYP71D4opt(配列番号14)において、19の第一アミノ酸を、MALLLAVFWSALIILVLSペプチド(配列番号18)により置き換える。最適化cDNA(配列番号13)を、pCWori発現プラスミド(Barnes, H.J. Method Enzymol. 272, 3-14; (1996))のNdeI及びHindIII制限酵素部位にライゲートし、pCWori-CYP71D4optプラスミドを得た。生物変換を、BL21StarTM(DE3)大腸菌細胞を使用して実施例6に記載したように実施し、CPRmでCYP71D4optを同時発現した。
【0178】
このようにして、CYP71D4を使用して、VzTps1718により製造されたいくつかのセスキテルペン炭化水素を、セスキテルペンアルコールに変換することができた。3つの生成物、ノートカトール、β-ベチボール及びイソノートカトールを同定した(
図9及び1)。これらの酸素化セスキテルペンは、例えば生化学的又は化学的に対応するケトンに容易に酸化でき(Oxidation of Alcohols to Aldehydes and Ketones, G. Tojo及びM. Fernadez, in Basic Reactions in Organic Synthesis (2007))、主なベチバー油成分、ノートカトン、α-ベチボン及びβ-ベチボンを製造することができる。
【0179】
実施例8:VzTps1718及びシトクロムP450酵素を使用した酸素化セスキテルペン化合物のインビボでの製造
実施例6及び7に記載の方法を使用して製造した酸素化セスキテルペン化合物を、インビボで細菌細胞を操作してセスキテルペンシンターゼ(VzTps1718)及びシトクロムP450 VzCP8201を同時発現することにより得ることもできる。
【0180】
P450、CPR及びテルペンシンターゼをコードするcDNAから構成される合成オペロンを含むpCWori+プラスミド((Barnes H.J (1996) Method Enzymol. 272, 3-14)を含有する新たなプラスミドを構築した。構築物をそれぞれcDNAのリボソーム結合部位(RBS)の上流に挿入するように設計した。実施例6に記載されるpCWori-VzCP8201Bovプラスミドは、VzCP8201BovをコードするcDNAの上流にNdel認識配列及びVzCP8201BovをコードするcDNAの下流にポリリンカーDNA配列(GTCGACAATTAACCATGGTTAATTAAGCTTATATATG GTACCATATATGAATTCATTAATCTCGAG(配列番号19))を含み、SalI、NcoI、HindIII、KpnI、EcoRI及びXhoI認識配列を含むように設計したVzCP8201BovをコードするcDNA(配列番号9)を含む。最適化CPRm cDNAを改質して、5’末端に、出発コドンの前に、スペーサー配列、SalI認識配列及びRBS配列を含む26bp伸長部(GTCGACAATTAGGTAAAAAATAAACC(配列番号20))を付加し、そしてHindIII認識配列を3’末端に付加した。最適化CPRm cDNAを、pCWori-VzCP8201BovプラスミドのSalI部位及びHindIII部位の間でサブクローニングしてpCWori-VzCP8201Bov-CPRmプラスミドを得た。pJ401プラスミド(DNA2.0、Menlo Park、CA、USA)中でクローニングしたVzTps1718の最適化cDNA配列は、HindIII認識配列及びRBS配列から構成される5’非コード配列(AAGCTTAAGGAGGTAAAAA(配列番号21))、並びにKpnI、EcoRI及びXhoI認識部位から構成される3’非コード配列(GGTACCATATATGAATTCATTAATCTCGAG(配列番号22))を含む。インサートを形成し、VzTps1718-pJ401プラスミドを、HindIII制限酵素及びXhoI制限酵素を使用して消化し、そしてpCWori-VzCP8201Bov-CPRmプラスミドの同一の制限酵素認識部位間にサブクローニングした。したがって、得られたプラスミドpCWori:VzCP8201Bov:CPRm:VzTps1718は、VzCP8201BovをコードするcDNA、CPRmをコードするcDNA及びVzTps1718をコードするcDNAを含むオペロンを含んでいた。
【0181】
N末端改質CYP71D4タンパク質(配列番号14)をコードする最適化cDNA(配列番号13)を、NdeI制限酵素及びHindIII制限酵素を使用した消化/ライゲーションによりpCWori-CYP71D4optプラスミド(実施例7)からpCWori:VzCP8201Bov:CPRm:VzTps1718に導入した。したがって、新たなプラスミドpCWori:CYP71D4opt:CPRm:VzTps1718は、CYP71D4optをコードするcDNA、CPRmをコードするcDNA及びVzTps1718をコードするcDNAを含むオペロンを含んでいた。
【0182】
KRX大腸菌細胞(Promega)を、前記した2つのpCWoriプラスミドの1つと、及び完全なメバロン酸経路を有するプラスミドpACYC-29258-4506(実施例5)と同時形質転換した。形質転換させた細胞を、カルベニシリン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(34μg/ml)LBアガロースプレート上で選択した。単コロニーを使用して、適した抗生物質で補った5mLのLB培地に植え付けた。培養物を37℃及び250rpmで一晩インキュベートした。翌日、100μg/Lカルベニシリン及び17μg/Lクロラムフェニコールを含むガラス培養管中で2mLのTB培地を200μlのLB前培養液に植え付けて、37℃で250rpmでインキュベートした。培養の6時間後に(又は培養液の600nmでの光学密度が3の値に達した場合に)、その培養液を20℃まで冷却させ、そしてタンパク質の発現を、0.1mM IPTG(イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド)及び0.02%ラムノースで誘発させ、そして75μg/L δ-アミノレブリン酸(Sigma)及び2%(v/v)のデカンを添加した。250rpmで撹拌しながら48時間インキュベートした後に、全ての培養ブロスを、1容量のMTBEで抽出し、そして実施例4に記載されるようにGCMSにより分析した。
【0183】
図10は、組換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼのみ、又は組換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼとVzCP8201もしくはCYP71D4シトクロムP450酵素とを製造するように設計した大腸菌細胞を使用して形成された生成物のGCMSを示す。これらのデータは、このアプローチの使用で、実施例6及び7に記載した酸素化セスキテルペン化合物を、インビボで操作した細胞中で製造できたことを示す。
【0184】
配列表:
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【配列表】