IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エコラブ ユーエスエイ インクの特許一覧

特許7026672腐食軽減のためのベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾール誘導体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】腐食軽減のためのベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/14 20060101AFI20220218BHJP
   C23F 11/18 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C23F11/14
C23F11/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019504890
(86)(22)【出願日】2017-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 US2017044469
(87)【国際公開番号】W WO2018023048
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】62/368,546
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギル ジャスビア エス
(72)【発明者】
【氏名】モガダム シャヤン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー トーマス エム
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511790(JP,A)
【文献】特開昭59-222589(JP,A)
【文献】特開平07-286287(JP,A)
【文献】国際公開第2016/033259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/14
C23F 11/18
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属腐食を防止する方法であって、
前記方法は金属と接触する水性系と有効量の防食組成物を接触させることを含み、
前記防食組成物は、アルキルベンゾトリアゾール、アルキルトリルトリアゾール、アルコキシベンゾトリアゾール、アルコキシトリルトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ニトロトリルトリアゾール、ハロベンゾトリアゾール、ハロトリルトリアゾール、水素化ベンゾトリアゾール、水素化トリルトリアゾール、これらの酸もしくは塩、またはこれらの組み合わせを含み、
前記水性系はブラインを含み、3未満のpHを有する、方法。
【請求項2】
ブラインを含み、3未満のpHを有し、金属と接触している水性系における金属腐食を防止するための防食組成物の使用であって、
前記防食組成物は、アルキルベンゾトリアゾール、アルキルトリルトリアゾール、アルコキシベンゾトリアゾール、アルコキシトリルトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ニトロトリルトリアゾール、ハロベンゾトリアゾール、ハロトリルトリアゾール、水素化ベンゾトリアゾール、水素化トリルトリアゾール、これらの酸もしくは塩、またはこれらの組み合わせを含む、使用。
【請求項3】
前記アルキルベンゾトリアゾールが、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ヘプチルベンゾトリアゾール、オクチルベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の方法または使用。
【請求項4】
前記アルキルトリルトリアゾールは、ブチルトリルトリアゾール、ペンチルトリルトリアゾール、ヘキシルトリルトリアゾール、ヘプチルトリルトリアゾール、オクチルトリルトリアゾール、またはそれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の方法または使用。
【請求項5】
前記アルコキシベンゾトリアゾールは、ブトキシベンゾトリアゾール、ペントキシベンゾトリアゾール、ヘキソキシベンゾトリアゾール、ヘプトキシベンゾトリアゾール、オクトキシベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせであり、ニトロベンゾトリアゾールは、3-ニトロベンゾトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、6-ニトロベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の方法または使用。
【請求項6】
前記ハロベンゾトリアゾールは、3ハロベンゾトリアゾール、4ハロベンゾトリアゾール、5ハロベンゾトリアゾール、6ハロベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の方法または使用。
【請求項7】
前記水素化ベンゾトリアゾールは、ベンゾトリアゾールの1つ以上の二重結合を横切って付加された1個以上の追加の水素原子を有する、請求項1または2に記載の方法または使用。
【請求項8】
前記水素化トリルトリアゾールは、トリルトリアゾールの1つ以上の二重結合を横切って付加された1個以上の追加の水素原子を有する、請求項1または2に記載の方法または使用。
【請求項9】
前記水性系は、約2,000~約100,000マイクロモー/cmの導電率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項10】
前記水性系は、2未満のpHを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項11】
前記水性系は、約120℃~約300℃の温度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項12】
前記水性系を、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩とさらに接触させ、前記フルオロ無機アニオンはホウ酸アニオンであり、前記窒素塩基は尿素を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項13】
前記フルオロ無機アニオンはテトラフルオロホウ酸塩を含み、前記窒素塩基は尿素を含み、前記塩を調製するために使用される尿素対テトラフルオロホウ酸塩のモル比は1:3~3:1である、請求項12に記載の方法または使用。
【請求項14】
前記金属は、炭素鋼を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項15】
前記金属が機器内に収容されており、前記機器が、蒸発器、砂糖製造系、エタノール製造系、蒸気発生器、熱回収系、または軟水化装置である、請求項1~14に記載の方法または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば金属腐食を防止するための方法において、化合物および組成物が提供され、そして使用され得る。方法は、有効量の防食組成物を金属と接触している水性系と接触させることを含む。防食組成物は、置換および/または水素化ベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールを含む。
【背景技術】
【0002】
水性媒体中の金属表面の腐食は、石油およびガス、食品および飲料、洗濯および消毒、パルプおよび紙、発電、製造、ならびに公益事業などの産業にとって長い間問題となってきた。例えば、石油およびガスの生産中に、ブライン、有機酸、二酸化炭素、硫化水素、および微生物などのいくつかの腐食性成分が様々な容量で存在することはよく知られている。これらの過酷な条件は、表面の孔食、脆化、および一般的な金属の損失によって証明されるように、激しい腐食を引き起こす可能性がある。金属表面は、クロム鋼、フェライト合金鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、析出硬化型ステンレス鋼、高ニッケル含有鋼、銅、および炭素鋼を含む高合金鋼から構成することができる。
【0003】
一般に、腐食抑制剤は金属表面上に不動態化層を形成することにより金属を保護する。この不動態化層は金属表面を濡らし、それが今度は流体の腐食性からの金属の接触を防ぐ。典型的には、腐食抑制剤配合物は、アミン、四級アミン、イミダゾリン、リン酸エステル、アミド、カルボン酸、またはこれらの組み合わせを含む様々な脂肪族有機界面活性剤分子を含有する。しかしながら、過酷な環境(例えば、高塩濃度および酸性pH)では、金属表面上の不動態化層の形成が減少し、金属表面が腐食しやすくなる。
【0004】
腐食および汚れの軽減は、すべての水系または水性系で有利である。従来技術では、腐食および汚染軽減のために一般に使用されている添加剤のほとんどは、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、または一般にホスホネートとして知られている有機リン酸塩などのリンを含んでいる。リン含有腐食および汚染抑制剤組成物によるいくつかの成功があるが、最近、リンは環境に優しくないことが発見された。その結果、環境保護機関は使用量の削減を義務付けるか、またはその使用を完全に禁止するかのいずれかを行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8236205号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、過酷な環境にさらされている金属表面の腐食を抑制するための方法および化学物質を開発する必要がある。さらに、リンまたは亜鉛を必要とせずに金属表面の腐食を抑制するための方法および化学物質を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
金属腐食を防止するための方法において使用することができる化合物が提供される。この方法は、有効量の防食組成物を金属と接触している水性系と接触させることを含む。防食組成物は、アルキルベンゾトリアゾール、アルキルトリルトリアゾール、アルコキシベンゾトリアゾール、アルコキシトリルトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ニトロトリルトリアゾール、ハロベンゾトリアゾール、ハロトリルトリアゾール、水素化ベンゾトリアゾール、水素化トリトリアゾール、これらの酸もしくは塩またはこれらの組み合わせを含み得る。水性系はブラインを含むことができ、酸性pHを有する。
他の対象および特徴は、一部は明らかであり、一部は以下に示される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
過酷な環境において金属の腐食を防ぐ必要があるため、金属表面に不動態化層を形成することができる新しい防食組成物が必要とされている。本明細書に記載の置換および/または水素化ベンゾトリアゾールおよびトリルトリアゾールの防食組成物は、高塩濃度(すなわち、ブライン)を含みかつ酸性pHを有する水性環境と接触する金属表面に腐食防止を提供することができる。
【0009】
化合物および組成物は、金属腐食を防止するための方法において使用され得る。この方法は、有効量の防食組成物を金属と接触している水性系と接触させることを含む。防食組成物は、アルキルベンゾトリアゾール、アルキルトリルトリアゾール、アルコキシベンゾトリアゾール、アルコキシトリルトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ニトロトリトリアゾール、ハロベンゾトリアゾール、ハロトリルトリアゾール、水素化ベンゾトリアゾール、水素化トリトリアゾール これらの酸もしくは塩、またはこれらの組み合わせを含む。水性系はブラインを含むことができ、酸性pHを有する。
【0010】
防食組成物はリンを含まない。
【0011】
アルキルベンゾトリアゾールは、アゾールの窒素原子または芳香環の炭素原子に結合した1~6個のアルキル置換基を有することができ、このアルキル置換基はC1~C12アルキル基であり得る。
【0012】
好ましくは、アルキルベンゾトリアゾールは、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ヘプチルベンゾトリアゾール、オクチルベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0013】
アルキルトリルトリアゾールはアゾールの窒素原子または芳香環の炭素原子に結合した1~5個のアルキル置換基を有することができ、このアルキル置換基はC1~C12のアルキル基であり得る
【0014】
好ましくは、アルキルトリルトリアゾールは、ブチルトリルトリアゾール、ペンチルトリルトリアゾール、ヘキシルトリルトリアゾール、ヘプチルトリルトリアゾール、オクチルトリルトリアゾール、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0015】
ブチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、およびヘプチルベンゾトリアゾールを含む様々なアルキルベンゾトリアゾールが、オハイオ州ブルーアッシュのWincom Inc.から市販されている。
【0016】
アルコキシベンゾトリアゾールは、アゾールの窒素原子または芳香環の炭素原子に結合した1~6個のアルキル置換基を有することができ、アルキル置換基はC1~C12アルキル基であり得る。
【0017】
好ましくは、アルコキシベンゾトリアゾールは、ブトキシベンゾトリアゾール、ペントキシベンゾトリアゾール、ヘキソキシベンゾトリアゾール、ヘプトキシベンゾトリアゾール、オクトキシベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0018】
ニトロベンゾトリアゾールは、芳香環の1個以上の炭素原子に結合したニトロ基を有することができ、アゾールの窒素原子または芳香環の炭素原子に結合したアルキル置換基、アルコキシ置換基またはハロ置換基を有することができる。
【0019】
好ましくは、ニトロベンゾトリアゾールは、3-ニトロベンゾトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、6-ニトロベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0020】
種々のニトロベンゾトリアゾールは、例えば、硫酸の存在下を含む種々の条件下でベンゾトリアゾールを硝酸と反応させることにより調製することができる。
【0021】
ハロベンゾトリアゾールは、芳香環の1個以上の炭素原子に結合したハロ基を有することができ、アゾールの窒素原子に結合したアルキルもしくはアルコキシ置換基または芳香環の炭素原子に結合するアルキル置換基、アルコキシ置換基、もしくはニトロ置換基を有することができる。
【0022】
好ましくは、ハロベンゾトリアゾールは、3-ハロベンゾトリアゾール、4-ハロベンゾトリアゾール、5-ハロベンゾトリアゾール、6-ハロベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0023】
より好ましくは、ハロベンゾトリアゾールは、フルオロベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ブロモベンゾトリアゾール、ヨードベンゾトリアゾール、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0024】
種々のハロトリアゾールは、ベンゾトリアゾールまたはトリルトリアゾールを次亜ハロゲン酸と反応させ、ハロゲン化生成物を鉱酸で沈殿させることにより調製することができる。
【0025】
水素化ベンゾトリアゾールは、ベンゾトリアゾールの1つ以上の二重結合を横切って付加される1つ以上の追加の水素原子を有することができる。
【0026】
水素化トリルトリアゾールは、トリルトリアゾールの1つ以上の二重結合を横切って付加される1つ以上の追加の水素原子を有することができる。
【0027】
水素化トリルトリアゾールを含む様々な水素化トリアゾールが、オハイオ州ブルーアッシュのWincom Inc.からWintrol(登録商標)の商標で入手可能である。
【0028】
水性系は、約1,000~約100,000マイクロモー/cm、約1,000~約80,000マイクロモー/cm、約1,000~約60,000マイクロモー/cm、約1,000~約50,000マイクロモー/cm、1,000~約30,000マイクロモー/cm、約2,000~約100,000マイクロモー/cm、約2,000~約80,000マイクロモー/cm、約2,000~約60,000マイクロモー/cm、約2,000~約50,000マイクロモー/cm、2,000~約30,000マイクロモー/cm、約5,000~約100,000マイクロモー/cm、約5,000~約80,000マイクロモー/cm、約5,000~約60,000マイクロモー/cm、または約5,000~約50,000マイクロモー/cm、または約5,000~約30,000マイクロモー/cmの導電率を有することができる。
【0029】
水性系は、5未満、4.5未満、4未満、3.5未満、3未満、2.5未満、または2未満のpHを有することができる。
【0030】
好ましくは、水性系は3未満のpHを有することができる。
【0031】
より好ましくは、水性系は2未満のpHを有することができる。
【0032】
水性系は、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩とさらに接触させることができる。
【0033】
フルオロ無機アニオンは、ホウ酸アニオンを含み得る。
【0034】
好ましくは、フルオロ無機アニオンは、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0035】
窒素塩基は、尿素、ビウレット、アルキル尿素、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ポリアミン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0036】
好ましくは、窒素塩基は尿素を含み得る。
【0037】
フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩は、米国特許第8,389,453号および同第8,796,195号に開示されており、Nalco-Championから製品番号EC6697Aとして市販されている。
【0038】
組成物は、フルオロ無機アニオンがテトラフルオロホウ酸塩を含み、窒素塩基が尿素を含み、塩を調製するために使用される尿素対テトラフルオロホウ酸塩のモル比は1:3~5:1、1:3~4:1、1:3~3:1、1:2~5:1、1:2~4:1、または1:2~3:1である。窒素塩基(例えば、尿素)はフルオロ無機酸(例えば、フルオロホウ酸)と反応して、フルオロ無機アニオンを有する窒素塩基の塩(例えば、尿素テトラフルオロホウ酸塩)を形成することができる。しかしながら、組成物中のフルオロ無機酸成分および塩基成分の相対的な量および/または濃度は、組成物の所望の機能および/または必要な洗浄活性に応じて広く変わり得る。したがって、利用される重量比および/または濃度は、所望の洗浄および健康および安全特性を有する組成物および/または系を達成するために選択され得る。
【0039】
金属は炭素鋼を含むことができる。
【0040】
金属は機器内に収容することができる。
【0041】
機器は、ボイラー、蒸気発生器、蒸発器、熱交換器、冷却コイル、チラー、管束、タンク、サンプ、格納容器、ポンプ、分配プレート、地熱系、生産井、注入井、蒸気分離器、バイナリー地熱ユニット、移送管、油井、または深部注入井を含み得る。
【0042】
好ましくは、本明細書に記載の方法を使用する機器は、蒸発器、砂糖製造系、エタノール製造系、蒸気発生器、熱回収系、または軟水化装置である。
【0043】
より好ましくは、機器は、蒸気補助重力排水系または周期的蒸気刺激系を含む熱回収系の一部である。
【0044】
水性系は、約80℃~約500℃、約80℃~約450℃、約80℃~約400℃、約80℃~約350℃、約80℃~約300℃、約80℃~約250℃、約80℃~約200℃、約80℃~約150℃、約100℃~約500℃、約100℃~約450℃、約100℃~約400℃、約100℃~約350℃、約100℃~約300℃、約100℃~約250℃、約100℃~約200℃、約100℃~約150℃、約120℃~約500℃、約120℃~約450℃、約120℃~約400℃、約120℃~約350℃、約120℃~約300℃、約120℃~約250℃、約120℃~約200℃、約120℃~約150℃の温度であり得る。
【0045】
水性系は、約120℃~約300℃の温度および2未満のpHを有することができる。
【0046】
防食組成物は、さらに任意に、追加の腐食抑制剤、アスファルテン抑制剤、パラフィン抑制剤、スケール抑制剤、浄水剤、分散剤、ガスハイドレート抑制剤、殺生物剤、pH調整剤、界面活性剤、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0047】
防食抑制剤の成分は追加の腐食抑制剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約0.1~20重量%、0.1~10重量%、または0.1~5重量%の追加の腐食抑制剤を含むことができる。防食組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.1~10重量パーセントの追加の腐食抑制剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量%、5.0重量%、5.5重量%、6.0重量%、6.5重量%、7.0重量%、7.5重量%、8.0重量%、8.5重量%、9.0重量%、9.5重量%、10.0重量%、10.5重量%、11.0重量%、11.5重量%、12.0重量%、12.5重量%、13.0重量%、13.5重量%、14.0重量%、14.5重量%、または15.0重量%の追加の腐食抑制剤を含むことができる。各系はそれ自体の要件を有することができ、そして組成物中の1種以上の追加の腐食抑制剤の重量パーセントはそれが使用される系によって変更することができる。
【0048】
追加の腐食抑制剤は、イミダゾリン化合物、四級アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0049】
追加の腐食抑制剤成分はイミダゾリンを含むことができる。イミダゾリンは、例えば、エチレンジアミン(EDA)などのジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)およびトール油脂肪酸(TOFA)などの長鎖脂肪酸から誘導されるイミダゾリンであり得る。イミダゾリンは、式(I)のイミダゾリンまたはイミダゾリン誘導体であり得る。代表的なイミダゾリン誘導体としては、式(II)のイミダゾリニウム化合物または式(III)のビス四級化化合物が挙げられる。
【0050】
追加の腐食抑制剤成分は式(I)のイミダゾリンを含むことができ、
【化1】
式中、R10は、C1~C20アルキル基またはC1~C20アルコキシアルキル基であり、R11は水素、C1~C6アルキル、C1~C6ヒドロキシアルキル、またはC1~C6アリールアルキルであり、およびR12およびR13は独立して、水素またはC1~C6アルキル基である。好ましくは、イミダゾリンは、トール油脂肪酸(TOFA)に典型的なアルキル混合物であるR10を含み、そしてR11、R12およびR13はそれぞれ水素である。
【0051】
追加の腐食抑制剤成分は、式(II)のイミダゾリニウム化合物を含むことができ、
【化2】
式中、R10は、C1~C20アルキルまたはC1~C20アルコキシアルキル基であり、R11およびR14は、独立して、水素、C1~C6アルキル、C1~C6ヒドロキシアルキル、またはC1~C6アリールアルキルであり、R12およびR13は、独立して、水素またはC1~C6アルキル基であり、X-は、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、炭酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、または有機カルボン酸(酢酸塩など)のアニオンである。好ましくは、イミダゾリニウム化合物は、1-ベンジル-1-(2-ヒドロキシエチル)-2トール油-2塩化イミダゾリニウムを含む。
【0052】
追加の腐食抑制剤は、式(III)を有するビス四級化化合物を含むことができ、
【化3】
式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、1~約29個の炭素原子を有する、非置換の分枝鎖状、鎖状、もしくは環式のアルキルもしくはアルケニル;1~約29個の炭素原子を有する、部分的もしくは完全に酸素化、硫化、および/もしくはリン酸化された分岐鎖状、鎖状、もしくは環式のアルキルもしくはアルケニル;またはこれらの組み合わせであり、R3およびR4は、それぞれ独立して、1~約29個の炭素原子を有する、非置換の分枝鎖状、鎖状、もしくは環式のアルキレンもしくはアルケニレン;1~約29個の炭素原子を有する、部分的もしくは完全に酸素化、硫化、および/もしくはリン酸化された分岐鎖状、鎖状、もしくは環式のアルキレンもしくはアルケニレン;またはこれらの組み合わせであり、L1およびL2はそれぞれ独立して存在しないか、H、-COOH、-SO3H、-PO32、-COOR5、-CONH2、-CONHR5、または-CON(R52であり、R5は、それぞれ独立して、1~約10個の炭素原子を有する分岐鎖状または非分岐鎖状アルキル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロアリール基であり、nは0または1であり、nが0のとき、L2は存在しないかHであり、xは1~約10であり、およびyは1~約5である。好ましくは、R1およびR2はそれぞれ独立して、C6~C22アルキル、C8~C20アルキル、C1218アルキル、C16~C18アルキル、またはこれらの組み合わせであり、R3およびR4は、C1~C10アルキレン、C28アルキレン、C26アルキレン、またはC23アルキレンであり、nは0または1であり、xは2であり、yは1であり、R3およびR4は-C22であり、L1は-COOH、-SO3H、または-PO32であり、L2は存在しないか、H、-COOH、-SO3H、または-PO32である。例えば、R1およびR2は、トール油脂肪酸の混合物に由来し、主としてC1733およびC1731の混合物であるか、またはC16~C18アルキルであってもよく、R3およびR4は、-C22などのC23アルキレンであってもよく、nは1でありかつL2は-COOHであるかまたはnは0でありかつL2は存在しないかもしくはHであり、xは2であり、yは1であり、R3およびR4は-C22であり、およびL1は-COOHである。
【0053】
式(III)の各基について特定される炭素原子の数は、炭素原子の主鎖を指し、そして置換基によって寄与され得る炭素原子を含まないことを理解されたい。
【0054】
追加の腐食抑制剤は、式(III)を有するビス四級化イミダゾリン化合物を含むことができ、式中、R1およびR2はそれぞれ独立してC6~C22アルキル、C8~C20アルキル、C1218アルキルまたはC16~C18アルキルまたはこれらの組み合わせであり、R4は、C1~C10アルキレン、C28アルキレン、C26アルキレン、またはC23アルキレンであり、xは2であり、yは1であり、nは0であり、L1は-COOH、-SO3H、または-PO32であり、L2は存在しないかまたはHである。好ましくは、ビス-四級化化合物は、式(III)を有し、式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、C16~C18アルキルであり、R4は-C22であり、xは2であり、yは1であり、nは0であり、L1は-COOH、-SO3H、または-PO32であり、L2は存在しないかまたはHである。
【0055】
追加の腐食抑制剤は、式(IV)の四級アンモニウム化合物であってもよく、
【化4】
式中、R1、R2、およびR3は、独立して、C1~C20アルキルであり、R4は、メチルまたはベンジルであり、およびX-はハロゲン化物またはメトサルフェートである。
【0056】
適切なアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリールアミンの四級塩は、式[N+5a6a7a8a][X-]のアルキルアリール、アリールアルキルおよびアリールアミンの四級塩を含み、式中、R5a、R6a、R7aおよびR8aは1~18個の炭素原子を含有し、およびXはCl、BrまたはIである。四級塩の場合、R5a、R6a、R7aおよびR8aはそれぞれ独立してアルキル(例えば、C1~C18アルキル)、ヒドロキシアルキル(例えば、C1~C18ヒドロキシアルキル)、およびアリールアルキル(例えば、ベンジル)であってもよい。アルキルまたはアルキルアリールハライドとの単環式または多環式芳香族アミン塩は、式[N+5a6a7a8a][X-]の塩を含み、式中、R5a、R6a、R7aおよびR8aは、1~18個の炭素原子および少なくとも1つのアリール基を含有し、およびXはCl、BrまたはIである。
【0057】
適切な四級アンモニウム塩には、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、フェニルトリメチルアンモニウム塩、フェニルトリエチルアンモニウム塩、セチルベンジルジメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、ジメチルアルキルベンジル第四級アンモニウム塩、モノメチルジアルキルベンジル第四級アンモニウム塩、またはトリアルキルベンジル第四級アンモニウム塩(上記のアルキル基は、約6~約24個の炭素原子、約10~約18個の炭素原子、または約12~約16個の炭素原子を有する)が含まれるが、これらに限定されるものではない。四級アンモニウム塩は、ベンジルトリアルキル四級アンモニウム塩、ベンジルトリエタノールアミン四級アンモニウム塩、またはベンジルジメチルアミノエタノールアミン四級アンモニウム塩であり得る。
【化5】
追加式において、式中、R9は、アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基であり、当該アルキル基は、1~約18個の炭素原子を有し、そしてX-は、塩化物などのハロゲン化物である、追加のピリジニウムベンジル四級アンモニウム塩(pyridinium benzyl quat)。例示的な化合物には、メチルピリジニウムクロリド、エチルピリジニウムクロリド、プロピルピリジニウムクロリド、ブチルピリジニウムクロリド、オクチルピリジニウムクロリド、デシルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ベンジルピリジニウムクロリドおよびアルキルベンジルピリジニウムクロリド(ここで、アルキルはC1~C6ヒドロカルビル基である)が含まれる。好ましくは、ピリジニウム化合物はベンジルピリジニウムクロリドを含む。
【0058】
追加の腐食抑制剤成分は、リン酸エステル、モノマーまたはオリゴマー脂肪酸、またはアルコキシル化アミンなどの追加の腐食抑制剤を含むことができる。
【0059】
追加の腐食抑制剤成分はリン酸エステルを含むことができる。適切なモノ-、ジ-、およびトリ-アルキル、ならびにモノ-、ジ-および、トリエタノールアミンのアルキルアリールリン酸エステルおよびリン酸エステルは、典型的には1~約18個の炭素原子を含有する。好ましいモノ-、ジ-、およびトリアルキルリン酸エステル、アルキルアリールまたはアリールアルキルリン酸エステルは、C3~C18の脂肪族アルコールと五酸化リンとを反応させることによって調製されるものである。リン酸エステル中間体はそのエステル基をトリエチルホスフェートと交換して、より広い分布のアルキルリン酸エステルを生成する。
【0060】
あるいは、リン酸エステルは、アルキルジエステルを、低分子量アルキルアルコールまたはジオールの混合物と混合することによって作製され得る。低分子量アルキルアルコールまたはジオールは、好ましくはC6~C10アルコールまたはジオールが含まれる。さらに、1個以上の2-ヒドロキシエチル基を含有するポリオールのリン酸エステルおよびこれらの塩、ならびにポリリン酸または五酸化リンとジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンなどのヒドロキシルアミンとの反応により得られるヒドロキシルアミンリン酸エステルが好ましい。
【0061】
追加の腐食抑制剤成分はモノマーまたはオリゴマー脂肪酸を含むことができる。好ましいモノマーまたはオリゴマー脂肪酸は、C14~C22飽和および不飽和脂肪酸、ならびにそのような脂肪酸のうちの1つ以上を重合することによって得られるダイマー、トリマーおよびオリゴマー生成物である。
【0062】
追加の腐食抑制剤成分はアルコキシル化アミンを含むことができる。アルコキシル化アミンはエトキシル化アルキルアミンであり得る。アルコキシル化アミンはエトキシル化獣脂アミンであり得る。
【0063】
防食組成物の成分はアスファルテン抑制剤を含むことができる。防食組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、約0.1~5重量%、または約0.5~4重量%のアスファルテン抑制剤を含むことができる。適切なアスファルテン抑制剤としては、脂肪族スルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、アリールスルホネート、リグノスルホネート、アルキルフェノール/アルデヒド樹脂および類似のスルホン化樹脂、ポリオレフィンエステル、ポリオレフィンイミド、アルキル、アルキレンフェニルまたはアルキレンピリジル官能基を有するポリオレフィンエステル、ポリオレフィンアミド、アルキル、アルキレンフェニルまたはアルキレンピリジル官能基を有するポリオレフィンアミド、アルキル、アルキレンフェニルまたはアルキレンピリジル官能基を有するポリオレフィンイミド、アルケニル/ビニルピロリドンコポリマー、ポリオレフィンと無水マレイン酸またはビニルイミダゾールとのグラフトポリマー、超分岐ポリエステルアミド、ポリアルコキシル化アスファルテン、両性脂肪酸、コハク酸アルキルの塩、モノオレイン酸ソルビタン、およびポリイソブチレン無水コハク酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
防食組成物の成分は、追加のパラフィン抑制剤を含み得る。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、約0.1~5重量%、または約0.5~4重量%の追加のパラフィン抑制剤を含むことができる。適切な追加のパラフィン抑制剤としては、パラフィン結晶改質剤、および分散剤/結晶改質剤の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。適切なパラフィン結晶改質剤としては、アルキルアクリレートコポリマー、アルキルアクリレートビニルピリジンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、無水マレイン酸エステルコポリマー、分岐ポリエチレン、ナフタレン、アントラセン、マイクロクリスタリンワックスおよび/またはアスファルテンが挙げられるが、これらに限定されない。適切なパラフィン分散剤としては、ドデシルベンゼンスルホネート、オキシアルキル化アルキルフェノール、およびオキシアルキル化アルキルフェノール樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
防食組成物の成分はスケール抑制剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約0.1~20重量%、約0.5~10重量%、または約1~10重量%のスケール抑制剤を含むことができる。適切なスケール抑制剤としては、リン酸塩、リン酸エステル、リン酸、ホスホン酸エステル、ホスホン酸、ポリアクリルアミド、アクリルアミドメチルプロパンスルホネート/アクリル酸コポリマー(AMP/AA)の塩、リン酸化マレイン酸コポリマー(PHOS/MA)、およびポリマレイン酸/アクリル酸/アクリルアミドメチルプロパンスルホネートターポリマー(PMA/AA/AMPS)の塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
防食組成物の成分は水浄化剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、約0.5~5重量%、または約0.5~4重量%の水浄化剤を含むことができる。適切な水浄化剤としては、ミョウバン、塩化アルミニウム、およびアルミニウムクロロハイドレートなどの無機金属塩、またはアクリル酸系ポリマー、アクリルアミド系ポリマー、重合アミン、アルカノールアミン、チオカルバメート、およびジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)などのようなカチオン性ポリマーなどの有機ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
防食組成物の成分は分散剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、約0.5~5重量%、または約0.5~4重量%の分散剤を含むことができる。適切な分散剤としては、ヒドロキシエチルジホスホン酸などのような2~50個の炭素を有する脂肪族ホスホン酸、および少なくとも1つのメチレンホスホン酸基を有する2~10個のN原子を有するポリアミノメチレンホスホネートなどのアミノアルキルホスホン酸が挙げられ、後者の例は、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホネート)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホネート)、および各N原子間に2~4個のメチレン基を有し、各ホスホネートにおける少なくとも2個のメチレン基が違なるトリアミン-およびテトラアミン-ポリメチレンホスホネートであるが、これらに限定されない。他の適切な分散剤には、リグニン、またはリグノスルホネートなどのリグニンの誘導体ならびにナフタレンスルホン酸および誘導体が含まれる。
【0068】
防食組成物の成分は硫化水素捕捉剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約1~50重量%、約1~40重量%、または約1~30重量%の硫化水素捕捉剤を含むことができる。適切な追加の硫化水素捕捉剤としては、酸化剤(例えば、過酸化ナトリウムまたは二酸化塩素などの無機過酸化物)、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、アクロレイン、またはメタクロレインなどの炭素数1~10のもの)、トリアジン(例えば、モノエタノールアミントリアジン、モノメチルアミントリアジン、および複数のアミンからのトリアジンまたはこれらの混合物)、二級または三級アミンとアルデヒドとの縮合生成物、およびアルキルアルコールとアルデヒドとの縮合生成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
防食組成物の成分はガスハイドレート抑制剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約0.1~25重量%、約0.1~20重量%、または約0.3~20重量%のガスハイドレート抑制剤を含むことができる。適切なガスハイドレート抑制剤としては、熱力学的ハイドレート抑制剤(THI)、動的ハイドレート抑制剤(KHI)、および凝集防止剤(AA)が挙げられるが、これらに限定されない。適切な熱力学的ハイドレート抑制剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウム、ギ酸塩ブライン(例えばギ酸カリウム)、ポリオール(グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、ラクトース、グルコン酸塩、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、モノブチレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、および糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール)など)、メタノール、プロパノール、エタノール、グリコールエーテル(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなど)、およびアルコールのアルキルエステルまたは環状エステル(乳酸エチル、乳酸ブチル、安息香酸メチルエチルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
防食組成物の成分は動的ハイドレート抑制剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約5~30重量%、約5~25重量%、または約10~25重量%の動的ハイドレート抑制剤を含むことができる。適切な動的ハイドレート抑制剤および凝集防止剤としては、ポリマーおよびコポリマー、多糖類(ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、デンプン誘導体、およびキサンタンなど)、ラクタム(ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルラクタムなど)、ピロリドン(種々の分子量のポリビニルピロリドンなど)、界面活性剤(脂肪酸塩、エトキシル化アルコール、プロポキシル化アルコール、ソルビタンエステル、エトキシル化ソルビタンエステル、脂肪酸のポリグリセリンエステル、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエステルスルホネート、アルキル芳香族スルホネート、アルキルベタイン、アルキルアミドベタインなど)、炭化水素系分散剤(リグノスルホネート、イミノジサクシネート、ポリアスパルテートなど)、アミノ酸、ならびにタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
防食組成物の成分は殺生物剤を含むことができる。防食組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、約0.5~5重量%、または約0.5~4重量%の殺生物剤を含むことができる。適切な殺生物剤としては、酸化性および非酸化性殺生物剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な非酸化性殺生物剤としては、例えば、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、およびアクロレイン)、アミン型化合物(例えば、四級アミン化合物およびココジアミン)、ハロゲン化化合物(例えば、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-3-ジオール)(Bronopol)および2 2ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、硫黄化合物(例えば、イソチアゾロン、カルバメート、およびメトロニダゾール)、および四級ホスホニウム塩(例えば、テトラキス(ヒドロキシメチル)-ホスホニウムサルフェート(THPS))が挙げられる。適切な酸化殺生物剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸リチウム、塩素化ヒダントイン、安定化次亜臭素酸ナトリウム、活性臭化ナトリウム、臭素化ヒダントイン、二酸化塩素、オゾン、および過酸化物が挙げられる。
【0072】
防食組成物の成分はpH調整剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約0.1~20重量%、約0.5~10重量%、または約0.5~5重量%のpH調整剤を含むことができる。適切なpH調整剤は、アルカリ水酸化物、アルカリ炭酸塩、アルカリ重炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、およびこれらの混合物または組み合わせを含むが、これらに限定されない。例示的なpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酸化マグネシウム、および水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0073】
防食組成物の成分は界面活性剤を含むことができる。防食組成物は、防食組成物の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、約0.5~5重量%、または約0.5~4重量%の界面活性剤を含むことができる。適切な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤としては、アルキルアリールスルホネート、オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルコールサルフェート、アルコールエーテルサルフェート、アルキルカルボキシレートおよびアルキルエーテルカルボキシレート、ならびにアルキルおよびエトキシル化アルキルリン酸エステル、ならびにモノおよびジアルキルスルホサクシネートおよびスルホサクシネートが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、アルコールアルコキシレート、アルキルフェノールアルコキシレート、エチレン、プロピレンおよびブチレンオキシドのブロックコポリマー、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド、アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、ポリアルコキシル化グリセリド、ソルビタンエステルおよびポリアルコキシル化ソルビタンエステル、ならびにアルコイルポリエチレングリコールエステルおよびジエステルが挙げられる。ベタインおよびスルタン(sultane)、両性界面活性剤、例えばアルキルアンホアセテートおよびアンホジアセテート、アルキルアンホプロピオネートおよびアンホジプロピオネート、ならびにアルキルイミノジプロピオネートなども含まれる。
【0074】
パラフィン抑制剤組成物は、有益な特性を提供する追加の機能剤または添加剤をさらに含み得る。例えば、追加の薬剤または添加剤は、金属イオン封鎖剤、可溶化剤、潤滑剤、緩衝剤、洗浄剤、リンス助剤、保存剤、結合剤、増粘剤もしくは他の粘度調整剤、加工助剤、担体、水質調整剤、発泡防止剤もしくは発泡剤、スレッショルド剤(threshold agent)もしくは系、審美的増強剤(すなわち、染料、着臭剤、香料)、または腐食抑制剤組成物を用いた配合に適した他の添加剤、およびこれらの混合物であり得る。追加の薬剤または添加剤は、製造されている特定の腐食抑制剤組成物および当業者としてのその意図された用途に従って変化するであろう。
【0075】
あるいは、防食組成物は、追加の薬剤または添加剤のいずれも含まなくてもよい。
【0076】
防食組成物は、有益な特性を提供する追加の機能剤または添加剤をさらに含み得る。存在する場合、追加の薬剤または添加剤の量は、製造されている特定の組成物および当業者としてのその意図された用途によって変化するであろう。
【0077】
組成物は、上記のように成分を組み合わせることによって調製することができる。
【0078】
これらの組成物は、元素硫黄またはポリスルフィドを含有する炭化水素流体の回収、輸送、精製または貯蔵に使用される金属表面の腐食を低減、抑制または防止するために使用することができる。この方法は、本明細書に記載の組成物のいずれかを金属表面と接触させて金属表面の腐食を低減、抑制または防止することを含む。
【0079】
組成物は、塩水またはブラインと接触する金属表面からの腐食を抑制することが望ましいあらゆる産業において使用することができる。
【0080】
組成物は、水系、復水、油、およびガス系、またはこれらの組み合わせで使用することができる。組成物は、製造されたガスまたは液体に適用する、または原油または天然ガスの製造、輸送、貯蔵、精製または分離に使用することができる。組成物は、石炭火力発電所のような石炭火力プロセスで使用されるかまたは製造されるガス流に適用することができる。
【0081】
さらに、組成物は、廃水プロセス、農場、食肉処理場、埋め立て地、地方自治体廃水プラント、コークス用炭プロセス、またはバイオ燃料プロセスで製造または使用されるガスまたは液体に適用することができる。
【0082】
組成物は、容器、加工施設、または食品サービスまたは食品加工産業で使用される機器における腐食防止に有用である。この組成物は、食品包装材料および機器と共に使用するのに、そして特に低温または高温無菌包装に使用するのに特に価値がある。組成物を使用することができる加工設備の例には、ミルクライン乳加工場、連続醸造系、食品加工ライン(例えば、汲み上げ可能な食品系、汲み上げ可能な飲料ライン、食器洗い機、低温食器洗い機、食器類、ボトル洗い機、ボトルチラー、ウォーマー、サードシンクウォッシャー(third sink washer))、加工機器(例えば、タンク、バット、ライン、ポンプ、ホース、または乳製品加工機器)が含まれるこの組成物は運搬用車両にも使用できる。
【0083】
さらに、本組成物は、清涼飲料材料の製造および貯蔵に使用されるタンク、ライン、ポンプ、または他の機器、ならびに飲料用の瓶詰めまたは容器における腐食を抑制するために使用することができる。
【0084】
組成物はまた、他の工業機器上または他の工業プロセスの流れ、例えばヒーター、冷却塔、ボイラー、レトルト水、すすぎ水、無菌包装洗浄水などに使用することもできる。
【0085】
また、組成物は、プール、スパ、レクリエーション水路、ウォータースライド、噴水などのレクリエーション水中の表面を処理するために使用することができる。
【0086】
これらの組成物は、清掃またはハウスキーピング用途、食品加工機器、プラント用途、または洗濯用途に見られる表面用のクリーナーと接触する金属表面の腐食を抑制するために使用することができる。例えば、布地を洗浄するためのトンネル式洗浄機などの洗浄機の腐食は、本明細書に開示されている方法に従って抑制することができる。
【0087】
組成物は、低温皿または食器用消毒用最終リンス、便器用洗剤、または洗濯用漂白剤と組み合わせて使用または適用することができる。
【0088】
定義
別途指示がない限り、本明細書に記載のアルキル基は、単独でまたは別の基の一部として、1~30個の炭素原子、好ましくは、主鎖中に1~30個の炭素原子、もしくは主鎖中に1~20個の炭素原子を含む任意に置換された直鎖飽和一価炭化水素置換基であるか、または、主鎖中に3~30個の炭素原子、好ましくは、主鎖中に3~20個の炭素原子を含む任意に置換された分岐鎖飽和一価炭化水素置換基である。非置換アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチルなどが挙げられる。
【0089】
「置換アルキル」などでの「置換された」という用語とは、当該基(すなわち、この用語に続くアルキル、アルケニル、または他の基)において、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシ(-OH)、アルキルチオ、ホスフィノ、アミド(-CON(RA)(RB)(式中、RAおよびRBは独立して、水素、アルキル、またはアリールである))、アミノ(-N(RA)(RB)(式中、RAおよびRBは独立して、水素、アルキル、アリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロである))、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)、シリル、ニトロ(-NO2)、エーテル(-ORA(式中、RAは、アルキル、または、アリールである))、エステル(-OC(O)RA(式中、RAは、アルキル、またはアリールである))、ケト(-C(O)RA(式中、RAは、アルキル、またはアリールである))、ヘテロシクロなどの1つ以上の置換基で置換されていることを意味する。「置換された」という用語が可能性のある置換基のリストを導入する場合、当該用語は、その基の各メンバーに適用されることが意図される。すなわち、「任意に置換されたアルキルまたはアリール」という語句は、「任意に置換されたアルキルまたは任意に置換されたアリール」と解釈されるべきである。
【0090】
本明細書において、単独でまたは他の基の一部として使用される「アリール」という用語は、任意に置換された1価の芳香族炭化水素基、好ましくは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニル、または、置換ナフチルなどの環部分に6~12個の炭素を含む1価の単環式または二環式基を示す。フェニルおよび置換フェニルが、さらに好ましいアリール基である。「アリール」という用語は、ヘテロアリールも含む。
【0091】
本明細書で使用される「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードラジカルを指す。
【0092】
本明細書で使用される「水素化」という用語は、1つ以上の二重結合を横切る1つ以上の水素原子の付加を指す。
【0093】
「リン」という用語は、リンだけでなく、リン含有添加剤、リン誘導体なども含むことを意図している。他の態様では、組成物はリンを全く含まない。
【0094】
本発明を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。
【実施例
【0095】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【0096】
実施例1:重量損失試験
15重量%のフルオロ無機アニオン(製品番号EC6697AとしてNalco Championから市販されている)のアリコート(400mL)を600mLのガラス内張りのParr反応器に入れた。腐食抑制剤、ブチルベンゾトリアゾール、塩素化トリルトリアゾール、またはブチルベンゾトリアゾール、水素化トリルトリアゾールおよびベンゾトリアゾールの混合物を様々な量でParr反応器に添加した(表1参照)。地下条件をシミュレートするために、カルシウムイオンとして120mg/Lのカルシウム(および塩化物対イオン)および塩化物イオンとして2000mg/Lの塩化物(ナトリウム対イオンを含む)を添加した。約75×13×1.5mmの2つの予め秤量した軟鋼クーポンを流体中に吊り下げた。反応器を閉じ、ヘッドスペースを窒素で5分間穏やかにパージした。反応器を130℃に47時間加熱し、次いで室温に冷却した。反応器が室温に戻ったら、軟鋼クーポンを取り出し、脱イオン水ですすぎ、そして秤量した。重量損失は、予めの秤量から最終秤量を差し引くことによって計算した。
【0097】
腐食速度は以下の式を用いて決定した。
腐食速度=(K・W)/(A・T・D)
ここで、Kは定数(3.45×106ミル・hr・cm-1・yr-1)であり、Wはグラム単位の質量損失であり、Aはcm2での面積であり、Tは時間単位の暴露時間であり、Dはg/cm3での密度である。
【0098】
重量損失試験の結果を表1に列挙する。
【表1】
【0099】
実施例2:腐食試験
腐食試験は、長さ1.27cm(0.5インチ)および外径1.27cm(0.5インチ)(5cm2)の炭素鋼(C1010)電極を備えたポテンショスタット(Gamry Instruments、ペンシルバニア州ウォーミンスター)を用いて実施した。電極をPINE回転子上に組み立て、水中に浸漬した。回転子を600rpmで回転させて毎秒3~5フィートの流速をシミュレートした。回転子に接続されたポテンショスタットは、制御された設定で金属の電位を変えることができ、加えられた電位の関数として電流を測定する。試験は48時間行った。
【0100】
これらの試験中、電極は±10mVで分極した。分極は、開路電位(OCP)と呼ばれる、試料を通って流れる電流がないときに測定された電位に対して相対的であった。
【0101】
炭素鋼電極の電位が変化するにつれて、作用電極(炭素鋼)と対電極との間に電流が流れるように誘導された。分極に対する炭素鋼の抵抗は、電位対電流曲線の勾配をとることによって見出された。次に、この抵抗を用いてStern-Gearyの式を使って材料の腐食速度を求めた。
【0102】
ハロゲン化トリルトリアゾール、ハロゲン化ベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、水素化トリアゾール、およびこれらのブレンドを含む薬剤は、同様の腐食試験を受けることができる。ある場合には、ポリマレイン酸およびアクリル酸とアクリルアミドt-ブチルスルホン酸(ATBS)のコポリマーを含む分散剤のブレンドを11ppmまたは22ppmのいずれかで表2の組成の合成水中に投入した。標準13水は、250ガロンの水中で208.5gのCaCl2.2H2O、174.8gのMgSO4.7H2O、174.9gのNaHCO3および400ppmのNaClからの塩化物イオンを組み合わせることによって調製した。
【表2】
【0103】
腐食試験は標準13水中、50℃で実施した。さらに、NaClとして400ppmのClを添加して、水を標準13水よりも腐食性にした。
【表3】
【0104】
本発明またはその好適な実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および、「said」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することが意図される。「~を含む/備える(comprising)」、「~を含む(including)」、および「~を有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、そこに列挙されている要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0105】
上記した事項に鑑みれば、本発明のいくつかの目的が達成され、かつ他の有益な結果が獲得されることが分かるであろう。
【0106】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の化合物および方法に様々な変更が加えられ得るため、上記の説明に含まれるすべての事項は、例示的なものであって、限定的な意味ではないと解釈されるべきとすることが意図される。