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特許7026678C9ORF72座位中にヘキサヌクレオチドリピート伸長を有する非ヒト動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】C9ORF72座位中にヘキサヌクレオチドリピート伸長を有する非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/027 20060101AFI20220218BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220218BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220218BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220218BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20220218BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20220218BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220218BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20220218BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N5/10
C12N15/09 Z
C12Q1/02
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2019517273
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017054551
(87)【国際公開番号】W WO2018064600
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】62/402,613
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/452,795
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘスリン, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】アリー, ロクサーヌ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, チア-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ライ, カ-マン ビーナス
(72)【発明者】
【氏名】バレンズエラ, デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】グオ, チュングァン
(72)【発明者】
【氏名】ラクロワ-フラリッシュ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド, リン
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ, アールティ
(72)【発明者】
【氏名】梶村 大介
(72)【発明者】
【氏名】ドロゲット, グスターボ
(72)【発明者】
【氏名】フレンドウェイ, デイビッド
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-105730(JP,A)
【文献】国際公開第2016/089692(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/200334(WO,A1)
【文献】Neuron,2011年,72(2),p.245-256
【文献】Neuron,2015年,88(5),p.892-901
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/027
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 1/70
G01N 33/15
G01N 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性C9orf72座位にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む齧歯類であって、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、
(i)配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有し、
(ii)前記内因性C9orf72座位の(a)エクソン1aたはエクソン1bと(b)ATG開始コドンの間にまたがる配列を含む非コード領域を置き換えており、
(iii)内因性C9orf72制御配列に動作可能に連結されており、
(iv)内因性C9orf72プロモーターから発現される、
齧歯類。
【請求項2】
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも90個含有する、請求項1に記載の齧歯類。
【請求項3】
前記齧歯類が、(i)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類と比較してC9orf72転写物発現の増加、(ii)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類と比較してRNA凝集体数の増加、(iii)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類と比較してジペプチドリピートタンパク質レベルの増加、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ、を示す、請求項1に記載の齧歯類。
【請求項4】
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が5’から3’方向に、第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチドの連続リピートおよび第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列を含み、
前記内因性C9orf72座位のエクソン1とATG開始コドンを包含する前記非コード領域が、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列で置換されている、
請求項1に記載の齧歯類。
【請求項5】
前記第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列が、配列番号36として明記される配列を含み、
前記第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列が、配列番号37として明記される配列を含む、
請求項に記載の齧歯類。
【請求項6】
前記齧歯類がラットまたはマウスである、請求項1に記載の齧歯類。
【請求項7】
前記齧歯類がマウスであり、前記内因性C9orf72座位が5’から3’方向に、
(A)5’から3’方向に、
(i)配列番号20または配列番号23として明記される配列を含むマウス配列、
(ii)配列番号3として明記される異種リピート伸長配列、および
(iii)配列番号22または配列番号25として明記される配列を含むマウス配列、
を含む、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、ならびに
(B)マウスC9orf72コードエクソン
を含み、前記マウスは、以下の三つの特徴、
(i)野生型C9orf72座位を含有する対照マウスと比較してC9orf72転写物発現の増加、(ii)野生型C9orf72座位を含有する対照マウスと比較してRNA凝集体数の増加、および(iii)野生型C9orf72座位を含有する対照マウスと比較してジペプチドリピートタンパク質レベルの増加、のすべてを示す、請求項に記載の齧歯類。
【請求項8】
前記齧歯類が、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列に対してホモ接合性である、請求項1に記載の齧歯類。
【請求項9】
前記齧歯類が、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列に対してヘテロ接合性である、請求項1に記載の齧歯類。
【請求項10】
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、第一のヘキサヌクレオチド伸長配列であり、前記齧歯類が、第二のヘキサヌクレオチドリピート伸長配列に対してもヘテロ接合性であり、前記第一のヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、前記第二のヘキサヌクレオチドリピート伸長配列とは異なるリピート数を有する、請求項に記載の齧歯類。
【請求項11】
前記第一のヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを個含有し、前記第二のヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30~100個含有する、請求項1に記載の齧歯類。
【請求項12】
内因性C9orf72座位にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む齧歯類細胞であって、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、
(i)配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有し、
(ii)前記内因性C9orf72座位の(a)エクソン1aたはエクソン1bと(b)ATG開始コドンの間にまたがる配列を含む非コード領域を置き換えており、
(iii)内因性C9orf72制御配列に動作可能に連結されており、
(iv)内因性C9orf72プロモーターから発現される、
齧歯類細胞。
【請求項13】
そのゲノムが内因性C9orf72座位にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む齧歯類胚性幹細胞であって、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、
(i)配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有し、
(ii)前記内因性C9orf72座位の(a)エクソン1aたはエクソン1bと(b)ATG開始コドンの間にまたがる配列を含む非コード領域を置き換えており、
(iii)内因性C9orf72制御配列に動作可能に連結されており、
(iv)内因性C9orf72プロモーターから発現される、
胚性幹細胞。
【請求項14】
請求項1に記載の胚性幹細胞から誘導された不死化細胞株または運動ニューロンであって、前記不死化細胞株または運動ニューロンは、内因性C9orf72座位にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、
(i)配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有し、
(ii)前記内因性C9orf72座位の(a)エクソン1aたはエクソン1bと(b)ATG開始コドンの間にまたがる配列を含む非コード領域を置き換えており、
(iii)内因性C9orf72制御配列に動作可能に連結されており、
(iv)内因性C9orf72プロモーターから発現される、
不死化細胞株または運動ニューロン。
【請求項15】
請求項1に記載の胚性幹細胞から作製される齧歯類胚であって、前記胚は、内因性C9orf72座位にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、
(i)配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有し、
(ii)前記内因性C9orf72座位の(a)エクソン1aたはエクソン1bと(b)ATG開始コドンの間にまたがる配列を含む非コード領域を置き換えており、
(iii)内因性C9orf72制御配列に動作可能に連結されており、
(iv)内因性C9orf72プロモーターから発現される、
齧歯類胚。
【請求項16】
そのゲノムがヘキサヌクレオチド配列を含む齧歯類の作製方法であって、前記方法が、
そのゲノムが、内因性C9orf72座位中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含むように前記齧歯類の前記ゲノムを改変することであって前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が前記内因性C9orf72座位の(a)エクソン1aたはエクソン1bと(b)ATG開始コドンの間にまたがる配列を含む非コード領域を置き換え、かつ、内因性制御配列に動作可能に連結され、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有する、改変することを含み、
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が内因性C9orf72プロモーターから発現される、方法。
【請求項17】
前記改変することが、
(a)挿入核酸を含む核酸構築物を齧歯類胚性幹細胞内に導入することであって、前記挿入核酸は、5’から3’方向に、(i)前記内因性C9orf72座位の5’標的配列に対して相同な5’相同アーム、(ii)配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の少なくとも30個のリピート、および(iii)前記C9orf72座位の5’標的配列に対して相同な3’相同アーム、を含有する、導入すること、
(b)(a)から遺伝子改変された齧歯類胚性幹細胞を取得すること、および、
(c)(b)の前記遺伝子改変された齧歯類胚性幹細胞を使用して齧歯類を作製すること、
を含むプロセスにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記挿入核酸が、5’相同アームと3’相同アームの間に、一つ以上の選択マーカーをコードする一つ以上の遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記挿入核酸が、5’相同アームと3’相同アームの間に、一つ以上の部位特異的組み換え部位をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記挿入核酸が、5’相同アームと3’相同アームの間に、リコンビナーゼ認識部位に隣接したリコンビナーゼ遺伝子と選択マーカーをさらに含み、前記リコンビナーゼ認識部位は、除去を誘導するよう方向づけられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記5’相同アームが、前記内因性C9orf72座位のエクソン1またはその一部に対して同一であるか、または実質的に同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記5’相同アームが、配列番号20または配列番号23として明記されるヌクレオチド配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記3’相同アームが、前記内因性C9orf72座位のイントロン1の少なくとも一部に対して同一であるか、または実質的に同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記3’相同アームが、配列番号22または配列番号25として明記されるヌクレオチド配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記挿入核酸が、配列番号3または配列番号6として明記される核酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記挿入に対しホモ接合性の齧歯類が作製されるように、(c)で作製された前記齧歯類を交配させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記齧歯類がマウスまたはラットである、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法により取得される齧歯類。
【請求項29】
ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の存在と関連した疾患または状態の治療のための治療剤候補物質を特定する方法であって、
(a)候補物質を、C9orf72座位にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む齧歯類または齧歯類細胞に投与することであって、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、
(i)配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有し、
(ii)前記内因性C9orf72座位の(a)エクソン1aたはエクソン1bと(b)ATG開始コドンの間にまたがる配列を含む非コード領域を置き換えており、
(iii)内因性C9orf72制御配列に動作可能に連結されており、
(iv)内因性C9orf72プロモーターから発現され、
前記齧歯類または齧歯類細胞は、(i)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類もしくは齧歯類細胞と比較してC9orf72転写物発現の増加、(ii)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類もしくは齧歯類細胞と比較してRNA凝集体数の増加、および(iii)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類もしくは齧歯類細胞と比較してジペプチドリピートタンパク質レベルの増加、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせを示す、こと、
(b)前記齧歯類またはそれに由来する齧歯類細胞により発現されるC9orf72遺伝子産物のレベルを測定するためのアッセイを1種以上実施することであって、前記C9orf72遺伝子産物は、センスC9orf72RNA、アンチセンスC9orf72RNA、RNA凝集体であって、C9orf72センスまたはアンチセンスRNAを含むRNA凝集体およびジペプチドリピートタンパク質からなる群から選択される、こと、ならびに
(c)前記齧歯類または齧歯類細胞により発現されるセンスC9orf72RNA、アンチセンスC9orf72RNA、RNA凝集体であって、C9orf72センスまたはアンチセンスRNAを含むRNA凝集体およびジペプチドリピートタンパク質からなる群から選択されるC9orf72遺伝子産物のレベルに効果を有する前記候補物質を、前記治療剤候補物質として特定すること、を含む、方法。
【請求項30】
前記候補物質が、齧歯類または齧歯類細胞にin vivoで投与され、および任意で、前記アッセイが、前記候補物質の投与後に前記齧歯類または齧歯類細胞から単離された組織に対してin vitroで行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記候補物質が、齧歯類胚性幹細胞から誘導された運動ニューロンに対してin vitroで投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記アッセイが、C9orf72遺伝子産物を検出する定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
qPCRは、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、またはそれらの任意の組み合わせに明記されるヌクレオチド配列を有するプライマーおよび/またはプローブを用いて実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項34】
前記アッセイは、C9orf72のセンスRNA転写物またはアンチセンスRNA転写物を含むRNA凝集体を測定する、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記アッセイは、配列番号81、配列番号82、配列番号83、および/または配列番号84のいずれか一つに明記されるヌクレオチド配列を有するプローブを一つ以上使用した蛍光in situハイブリダイゼーションである、請求項3に記載の方法。
【請求項36】
前記アッセイは、ポリGAジペプチドリピートタンパク質を測定する、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、配列番号3に明記される配列を含む、請求項に記載の齧歯類。
【請求項38】
前記齧歯類細胞が、胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、皮質細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞、または生殖細胞である、請求項1に記載の齧歯類細胞。
【請求項39】
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも90個含有する、請求項1に記載の齧歯類細胞。
【請求項40】
前記齧歯類細胞が、(i)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類細胞と比較してC9orf72転写物発現の増加、(ii)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類細胞と比較してRNA凝集体数の増加、(iii)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類細胞と比較してジペプチドリピートタンパク質レベルの増加、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ、を示す、請求項1に記載の齧歯類細胞。
【請求項41】
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が5’から3’方向に、第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチドの連続リピートおよび第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列を含み、
(a)前記内因性C9orf72座位のエクソン1とATG開始コドンの間の非コード配列の少なくとも一部が、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列で置換されている、または
(b)前記内因性C9orf72座位のエクソン1とATG開始コドンの間の非コード配列の少なくとも一部と、前記内因性C9orf72座位のエクソン1の一部が、前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列で置換されている、
請求項1に記載の齧歯類細胞。
【請求項42】
前記第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列が、配列番号36として明記される配列を含み、
前記第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列が、配列番号37として明記される配列を含む、
請求項4に記載の齧歯類細胞。
【請求項43】
前記齧歯類細胞がラット細胞またはマウス細胞である、請求項1に記載の齧歯類細胞。
【請求項44】
前記齧歯類細胞がマウス細胞であり、前記内因性C9orf72座位が5’から3’方向に、
(i)配列番号20または配列番号23として明記される配列を含むマウス配列、
(ii)配列番号3として明記される配列を含む異種リピート伸長配列、
(iii)配列番号22または配列番号25として明記される配列を含むマウス配列、および
(iv)マウスC9orf72コードエクソン
を含み、前記マウス細胞は、以下の三つの特徴、
(i)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類と比較してC9orf72転写物発現の増加、(ii)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類と比較してRNA凝集体数の増加、および(iii)野生型C9orf72座位を含有する対照齧歯類と比較してジペプチドリピートタンパク質レベルの増加、のすべてを示す、請求項4に記載の齧歯類細胞。
【請求項45】
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号3として明記される配列を含む、請求項4に記載の齧歯類細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/402,613号、および2017年1月31日に出願された米国仮特許出願第62/452,795号の利益を主張するものであり、各仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
配列表の参照による組み込み
【0002】
配列表の公的な写しは、ASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して米国特許商標局を受理官庁として電子的に本明細書と同時に提出された。当該写しのファイル名は「2017-09-29-10267WO01-SEQ-LIST_ST25」、2017年9月29日が作成日であり、サイズはおよそ94KBである。このASCIIフォーマット書面に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
神経変性疾患は身体障害および疾患の主要な原因である。特に筋委縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis、ルー・ゲーリック病とも呼称される)と前頭側頭型認知症(FTD:frontotemporal dementia)は、稀な神経系の障害であり、進行性のニューロンの脱落および/または死亡が特徴である。
【0004】
加齢が神経変性疾患の最も大きなリスク因子とみなされているが、いくつかの遺伝的要素も発見されている。たとえば銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)遺伝子の突然変異は長くALSと関連付けられていた。さらにC9ORF72遺伝子の非コード領域内のGGGGCCのヘキサヌクレオチドリピート伸長は、ALSとFTDの両方との関連性がある。現在のところいずれの疾患にも治療法は存在しないが、いくつかの治療法により、約3~5カ月まで寿命を延ばすことができる。
【0005】
ほとんどの治療剤の開発には様々な実験動物モデルが精力的に使用されているが、特定された遺伝的要素が疾患を発生させる正確な分子メカニズムが解明され、その解明された内容により今度は、ALSのみならず類似した臨床像を有する他の神経変性疾患に対する治療法の可能性となり得ることを明らかとするような、神経変性疾患および炎症性疾患に対処するモデルは存在していても非常に少ない。ゆえに遺伝子突然変異が神経変性疾患を生じさせる機序は大部分が未だ解明されていない。理想的な動物モデルはヒト疾患と同じ遺伝的要素を含み、類似した特徴を表すものである。種の間に遺伝的な違いはあったとしても、ヒトの神経変性疾患および/または炎症性疾患を厳密に再現するような改善された動物モデルの開発に対する大きなアンメットニーズが存在する。もちろんそのような改善された動物モデルは有効な治療剤および/または予防剤の開発に多大な価値をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非ヒト動物または非ヒト等動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)を操作して、神経変性性の疾患、障害および状態の治療に使用することができる新たな治療剤、一部の実施形態では治療レジメンを特定および開発するためにin vivoまたはin vitroのシステムを改善させることが望ましいという認識を包含する。一部の実施形態において、本明細書に記載されるin vivoまたはin vitroのシステムは、C9ORF72座位と関連性した、特に当該座位中の異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列と関連した例えば神経変性疾患などの疾患、障害および/または状態を治療するための新たな治療剤の特定および開発に使用することができる。さらに本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は C9ORF72座位中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を含み、例えばGGGGCCヘキサヌクレオチドリピート(配列番号1)、それらから誘導された産物、たとえばそれらから転写されたセンスRNAもしくはアンチセンスRNA、当該ヘキサヌクレオチドリピートにコードされたRAN翻訳産物および/またはジペプチドリピートタンパク質を標的とする治療剤の特定および開発における使用に望ましい。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)はそれぞれ、神経変性性の疾患、障害および状態(例えば、ALSおよび/またはFTD)のための改善されたin vivoおよびin vitroのシステム(またはモデル)を提供する。
【0007】
本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、そのゲノム中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は内因性C9orf72座位内に挿入されており、この場合において当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1に明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも一個含有する。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その生殖細胞系列のゲノム中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は内因性C9orf72座位内に挿入されており、この場合において当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも一個含有する。一部の実施形態において、異種ヘキサヌクレオチド伸長配列は、非齧歯類(例えば非ラットまたは非マウス、例えばヒトの)ヘキサヌクレオチド伸長配列であり、当該配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の事例、例えばリピートを少なくとも一個含有する。一部の実施形態において、(ヒト)異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、二個以上の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、(ヒト)異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約三個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約5個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約10個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約15個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約20個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約30個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約40個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約50個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約60個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約70個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約80個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約90個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、少なくとも約100個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有する。一部の実施形態において、非ヒト動物は、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を、自身の生殖細胞系列のゲノム中に含有する。
【0008】
一部の実施形態において、異種(例えば、非齧歯類、非ラット、非マウス、および/またはヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、異種(例えば、非齧歯類、非ラット、非マウス、および/またはヒト)配列を含有し、当該配列は、少なくとも1個、例えば少なくとも約3個、少なくとも約5個、少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、少なくとも約90個、または少なくとも約100個の、好ましくは連続的な、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートに隣接する。したがって、異種(例えば、非齧歯類、非ラット、非マウス、および/またはヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、5’から3’方向に、第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列、一個以上の(好ましくは連続的な)配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド事例、および第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列を含有してもよい。一部の実施形態において、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列、一個以上の配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列事例、および第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列を含有する天然型ゲノム配列と同一であるか、または実質的に同一である。天然型の第一および/または第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列はそれぞれ独立して、例えば少なくとも4塩基対の長さ、例えば少なくとも10塩基対の長さ、例えば少なくとも20塩基対の長さなどであってもよい。
【0009】
一部の実施形態において、異種ヒトヘキサヌクレオチド伸長配列は、ヒトC9orf72遺伝子のエクソン1aおよび/もしくはエクソン1bのすべて、または一部にわたる(および任意で包含する)。一部の実施形態において、第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列は、ヒトC9orf72遺伝子のエクソン1a配列(配列番号34として明記)のすべて、もしくは一部を含有し、および/または第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列は、ヒトC9orf72遺伝子のエクソン1b配列(配列番号35として明記)のすべて、もしくは一部を含有する。一部の実施形態において、第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列は、配列番号36として明記される配列またはその一部を含有し、および/または第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列は、配列番号37として明記される配列またはその一部を含有する。
【0010】
ヒトヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の例は、配列番号2(5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列を含有する第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列リピートを3個、および配列番号37として明記される配列を含有する第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列を含有する)として明記される。ヒトヘキサヌクレオチドリピート伸長配列のもう一つの例は、配列番号3(5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列を含有する第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列リピートを100個、および配列番号37として明記される配列を含有する第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列を含有する)に明記される。したがって本明細書において、そのゲノムが、配列番号2として明記される配列、配列番号2のバリアント、配列番号3として明記される配列、または配列番号3のバリアントを、内因性C9orf72座位中に含有する非ヒト動物、例えばラットまたはマウスなどの齧歯類が開示される。
【0011】
一部の実施形態において、非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、そのゲノム中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は、配列番号2のバリアントである配列を含有し、当該バリアントは5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号34として明記される配列など)を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の一個または二個の連続的リピート、および配列番号37として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号35として明記される配列など)を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、を含有する。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、そのゲノム中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は、配列番号3のバリアントである配列を含有し、当該バリアントは5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号34として明記される配列など)を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の二個以上、100個未満の連続的リピート、および配列番号37として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号35として明記される配列など)を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、を含有する。一部の実施形態において、非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は、配列番号3のバリアントである配列を含有し、当該バリアントは5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号34として明記される配列など)を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の36個の連続的リピート、および配列番号37として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号35として明記される配列など)を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、を含有する。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、そのゲノム中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は、配列番号3のバリアントである配列を含有し、当該バリアントは5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号34として明記される配列など)を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の92個の連続的リピート、および配列番号37として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号35として明記される配列など)を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、を含有する。
【0012】
一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列に関し、ヘテロ接合性またはホモ接合性であり、当該配列は、配列番号2のバリアントである配列を含有し、当該バリアントは5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号34として明記される配列など)を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の一個または二個の連続的リピート、および配列番号37として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号35として明記される配列など)を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、を含有する。一部の実施形態において、非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は、配列番号3のバリアントである配列を含有し、当該バリアントは5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号34として明記される配列など)を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の二個以上、100個未満の連続的リピート、および配列番号37として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号35として明記される配列など)を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、を含有する。一部の実施形態において、非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は、配列番号3のバリアントである配列を含有し、当該バリアントは5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号34として明記される配列など)を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の36個の連続的リピート、および配列番号37として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号35として明記される配列など)を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、を含有する。一部の実施形態において、非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中にヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含み、当該配列は、配列番号3のバリアントである配列を含有し、当該バリアントは5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号34として明記される配列など)を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の92個の連続的リピート、および配列番号37として明記される配列(またはその一部、例えば配列番号35として明記される配列など)を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、を含有する。
【0013】
一部の実施形態において、非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中に、内因性C9orf72座位の5’非翻訳および/または非コード内因性非ヒト配列と、異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の置換を含む。一部の実施形態において、当該非翻訳および/または非コード配列は、内因性非ヒトC9orf72座位またはその一部の内因性エクソン1(例えばエクソン1aおよび/またはエクソン1b)とATG開始コドンの間にわたり、(および任意でそれらの少なくとも一部を包含し)、そして異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列と置換される。当該異種(ヒト)ヘキサヌクレオチド伸長配列に連結された追加的配列(たとえばリコンビナーゼ認識配列、薬剤抵抗性カセット、レポーター遺伝子など)が、内因性非ヒトC9orf72座位もしくはその一部の内因性エクソン1(例えば、エクソン1aおよび/またはエクソン1b)とATG開始コドンの間にわたる(および任意で包含する)非翻訳および/または非コード配列を置き換えてもよい。
【0014】
したがって、一部の実施形態において、本明細書に開示される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、(1)内因性エクソン1の5’末端から始まり、内因性エクソン1内から始まり、または内因性エクソン1の3’末端から始まり、そして(2)内因性ATG開始コドンの5’末端に終わる内因性配列、またはその一部と、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、例えば配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列リピートを少なくとも一個含有するヘキサヌクレオチドリピート伸長配列とのヘテロ接合性の置換またはホモ接合性の置換を含んでもよい。一部の実施形態において、本明細書に開示される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、(i)内因性エクソン1の5’末端から始まり、内因性エクソン1内から始まり、または内因性エクソン1の3’末端から始まり、そして(ii)内因性ATG開始コドンの5’末端に終わる内因性配列、またはその一部と、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長とのヘテロ接合性の置換またはホモ接合性の置換を含んでもよく、当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長は5’から3’方向に、配列番号34として明記される配列を含む第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列を少なくとも1事例、および配列番号35として明記される配列を含む第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列を含有する。一部の実施形態において、本明細書に開示される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、(ii)内因性エクソン1の5’末端から始まり、内因性エクソン1内から始まり、または内因性エクソン1の3’末端から始まり、そして(ii)内因性ATG開始コドンの5’末端に終わる内因性配列、またはその一部と、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列とのヘテロ接合性の置換またはホモ接合性の置換を含んでもよく、当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列を含む第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列を少なくとも1事例、および配列番号37として明記される配列を含む第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列を含有する。一部の実施形態において、本明細書に開示される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、(ii)内因性エクソン1の5’末端から始まり、内因性エクソン1内から始まり、または内因性エクソン1の3’末端から始まり、そして(ii)内因性ATG開始コドンの5’末端に終わる内因性配列、またはその一部と、配列番号2、そのバリアント、配列番号3、またはそのバリアントとして明記される配列を含入する異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列とのヘテロ接合性の置換またはホモ接合性の置換を含んでもよい。
【0015】
一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを一個以上含有し、およびここで当該非ヒト動物または非ヒト動物細胞は、以下の特徴のうちの一個以上を示す:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の発現が増加していること、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数が増加していること、(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、ジペプチドリピートタンパク質のレベルが増加していること、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを三個以上含有し、およびここで当該非ヒト動物または非ヒト動物細胞は、以下の特徴のうちの一個以上を示す:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の発現が増加していること、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数が増加していること、(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、ジペプチドリピートタンパク質のレベルが増加していること、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有し、およびここで当該非ヒト動物または非ヒト動物細胞は、以下の特徴のうちの一個以上を示す:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の発現が増加していること、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数が増加していること、(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、ジペプチドリピートタンパク質のレベルが増加していること、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを90個以上含有し、およびここで当該非ヒト動物または非ヒト動物細胞は、以下の特徴のうちの一個以上を示す:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の発現が増加していること、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数が増加していること、(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、ジペプチドリピートタンパク質のレベルが増加していること、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを92個含有し、およびここで当該非ヒト動物または非ヒト動物細胞は、以下の三個の特徴のすべてを示す:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の発現が増加していること、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数が増加していること、および(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、ジペプチドリピートタンパク質のレベルが増加していること。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、その(生殖細胞系列の)ゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを90個よりも多く含有し、およびここで当該非ヒト動物または非ヒト動物細胞は、以下の三個の特徴のすべてを示す:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の発現が増加していること、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数が増加していること、および(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、ジペプチドリピートタンパク質のレベルが増加していること。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、そのゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも92個含有し、およびここで当該非ヒト動物または非ヒト動物細胞は、以下の三個の特徴のすべてを示す:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の発現が増加していること、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、C9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数が増加していること、および(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときに、野生型のC9orf72座位を含有する対照動物または対照細胞と比較して、ジペプチドリピートタンパク質のレベルが増加していること。
【0016】
一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、そのゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含有し、および当該非ヒト動物または非ヒト細胞の以下の特徴のうちの一個以上は、野生型のC9orf72座位を含有する対照非ヒト動物または対照非ヒト細胞と比較して有意な差はない:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに比較されるC9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の量、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときのC9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数、(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときのジペプチドリピートタンパク質のレベル、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、そのゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを三個含有し、および当該非ヒト動物または非ヒト細胞の以下の特徴のうちの一個以上は、野生型のC9orf72座位を含有する対照非ヒト動物または対照非ヒト細胞と比較して有意な差はない:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに比較されるC9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の量、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときのC9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数、(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときのジペプチドリピートタンパク質のレベル、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)は、そのゲノム中に、内因性C9orf72座位で挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有し、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを30個含有し、および当該非ヒト動物または非ヒト細胞の以下の特徴のうちの一個以上は、野生型のC9orf72座位を含有する対照非ヒト動物または対照非ヒト細胞と比較して有意な差はない:(i)例えば定量PCRにより評価されたときに比較されるC9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物の量、(ii)例えば蛍光活性化in situハイブリダイゼーションにより評価されたときのC9orf72のRNAのセンスおよび/またはアンチセンスの転写物を含有するRNA凝集体の数、(iii)例えば免疫蛍光法により評価されたときのジペプチドリピートタンパク質のレベル、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に記載される核酸構築物(または標的化構築物、または標的化ベクター)が提供される。
【0018】
一部の実施形態において、本明細書に記載される核酸構築物は、5’から3’方向に、非ヒト(例えば、マウスまたはラットなどの齧歯類)のC9ORF72座位の5’部分に対して相同なポリヌクレオチドを含有する5’非ヒト標的化アーム、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列を少なくとも一個含有する異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、第一のリコンビナーゼ認識部位、選択マーカーに操作可能に連結された第一のプロモーター、第二のリコンビナーゼ認識部位、そして非ヒト(例えば、マウスまたはラットなどの齧歯類)のC9ORF72座位の3’部分に対して相同なポリヌクレオチドを含有する3’非ヒト標的化アーム、を含有する。一部の実施形態において、非ヒト(例えば、マウスまたはラットなどの齧歯類)のC9ORF72座位の5’部分は、非ヒト(例えば、マウスまたはラットなどの齧歯類)のC9ORF72遺伝子のエクソン1の上流のゲノム配列を含む。
【0019】
一部の実施形態において、リコンビナーゼ認識部位としては、loxP、lox511、lox2272、lox2372、lox66、lox71、loxM2、lox5171、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、FRT、rox、またはそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、リコンビナーゼ遺伝子は、例えば誘導型プロモーターの制御下で、構築物中に含まれる。リコンビナーゼ遺伝子は、Cre、Flp(例えば、Flpe、Flpo)およびDreからなる群から選択されてもよい。一部の特定の実施形態において、第一および第二のリコンビナーゼ認識部位は、lox(例えば、loxP)部位であり、リコンビナーゼ遺伝子は、Creリコンビナーゼをコードする。
【0020】
一部の実施形態において、第一のプロモーターは、プロタミン(Prot:例えばProt1またはProt5)、Blimp1、Blimp1(1kbの断片)、Blimp1(2kbの断片)、Gata6、Gata4、Igf2、Lhx2、Lhx5、hUB1、Em7およびPax3からなる群から選択される。一部の特定の実施形態において、第一のプロモーターは、Em7プロモーターと組み合わされたhUB1プロモーターである。
【0021】
一部の実施形態において、選択マーカーは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hyg)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(puro)、ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsr)、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、および単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)からなる群から選択される。一部の特定の実施形態において、選択マーカーは、neo である。
【0022】
一部の実施形態において、核酸構築物は配列番号8として明記される配列を含み、当該配列は、5’から3’方向に、5’非ヒト(マウス)標的化アーム、配列番号36として明記される配列を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列リピートを三個、配列番号37として明記される配列を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、loxPに挟まれた薬剤抵抗性(neo)カセット、そして非ヒト(マウス)標的化アームを含有する。一部の実施形態において、核酸構築物は配列番号9として明記される配列を含み、当該配列は、5’から3’方向に、5’非ヒト(マウス)標的化アーム、配列番号36として明記される配列を含有する第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列リピートを100個、配列番号37として明記される配列を含有する第二のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、loxPに挟まれた薬剤耐性(neo)カセット、そして非ヒト(マウス)標的化アームを含有する。
【0023】
一部の実施形態において、そのゲノムが、内因性C9orf72座位内への異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を含む、非ヒト動物または非ヒト動物細胞の作製方法が提供され、ここで当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも一個、たとえば少なくとも約3個、例えば少なくとも約30個、例えば少なくとも約90個含み、当該方法は、(a)例えば本明細書に記載される核酸構築物(例えば配列番号8として明記される配列を含む核酸構築物または配列番号9として明記される配列を含む核酸構築物)などの核酸配列を非ヒト胚性幹細胞内に導入し、それにより当該異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、内因性C9ORF72座位内に挿入され、当該核酸は、C9ORF72座位に対し相同なポリヌクレオチドを含むこと、(b)遺伝子改変された非ヒト胚性幹細胞を(a)から取得すること、および任意で(c)(b)の遺伝子改変非ヒト胚性幹細胞を使用して非ヒト動物を作製すること、を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物を作製する方法は、(c)において作製された非ヒト動物を交配させ、当該挿入に対しホモ接合性の非ヒト動物を作製する工程をさらに含む。
【0024】
一部の実施形態において、そのゲノムが、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を含む、非ヒト動物の作製方法が提供され、当該配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを、内因性C9ORF72座位中に少なくとも一個含み、当該方法は、非ヒト動物のゲノムを改変し、内因性C9ORF72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を含ませ、それにより前記非ヒト動物を作製することを含む。
【0025】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法から取得可能な、作製される、または産生される非ヒト動物が提供される。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は、配列番号8として明記される配列を含む核酸構築物を使用して作製される。そのような非ヒト動物は、内因性エクソン1内から開始される内因性C9orf72座位の約853bpと、異種ヌクレオチド配列とのヘテロ接合性またはホモ接合性の置換を含み、当該異種ヌクレオチド配列は、5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列を含む第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを1~3個、配列番号37として明記される配列を含むヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、およびloxPに挟まれた薬剤抵抗性(neo)カセットまたはneo遺伝子の切除でのlox組み換え認識配列、を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は、配列番号9として明記される配列を含む核酸構築物を使用して作製される。そのような非ヒト動物は、内因性エクソン1から開始される内因性C9orf72座位の約853bpと、異種ヌクレオチド配列とのヘテロ接合性またはホモ接合性の置換を含み、当該異種ヌクレオチド配列は、5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列を含む第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを1~100個(例えば36個または92個)、配列番号37として明記される配列を含むヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、およびloxPに挟まれた薬剤耐性(neo)カセットまたはneo遺伝子の切除でのlox組み換え認識配列、を含む。一部の実施形態において、非ヒト動物は、配列番号4として明記される異種ヌクレオチド配列(8026)、配列番号5として明記される異種ヌクレオチド配列(8027)、配列番号6として明記される異種ヌクレオチド配列(8028)、または配列番号7として明記される異種ヌクレオチド配列(8029)を含み、ここで当該異種ヌクレオチド配列は、内因性エクソン1内で開始される、内因性C9orf72座位の非翻訳配列および/または非コード配列の約853bpを任意で置換する。一部の実施形態において、本明細書に開示される非ヒト動物は、たとえば配列番号8として明記される配列を含む核酸構築物を使用して生成された動物を、配列番号9として明記される配列を含む核酸構築物を使用して生成された動物と交配させることにより、作製される。そのような動物は、(1)内因性エクソン1内から開始される内因性C9orf72座位の約853bpと、異種ヌクレオチド配列とのヘテロ接合性置換であって、当該異種ヌクレオチド配列は、5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列を含む第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを1~3個、配列番号37として明記される配列を含むヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、およびloxPに挟まれた薬剤抵抗性(neo)カセットまたはneo遺伝子の切除でのlox組み換え認識配列を含むこと、および(2)内因性エクソン1内から開始される内因性C9orf72座位の約853bpと、異種ヌクレオチド配列とのヘテロ接合性置換であって、当該異種ヌクレオチド配列は、5’から3’方向に、配列番号36として明記される配列を含む第一のヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを1~100個(例えば36個または92個)、配列番号37として明記される配列を含むヒトヘキサヌクレオチド隣接配列、およびloxPに挟まれた薬剤抵抗性(neo)カセットまたはneo遺伝子の切除でのloxリコンビナーゼ認識配列を含むこと、の(1)と(2)の両方を含んでもよい。
【0026】
一部の実施形態において、本明細書に記載される、または本明細書に記載される方法により作製された非ヒト動物の単離非ヒト細胞または組織が提供される。一部の実施形態において、単離された細胞または組織は、本明細書に記載されるようにC9ORF72座位を含む。一部の実施形態において、細胞は、神経細胞または神経系統由来の細胞である。一部の実施形態において、不死化細胞株が提供され、当該細胞株は本明細書に記載される非ヒト動物の単離細胞から作製される。
【0027】
一部の実施形態において、非ヒト胚性幹細胞が提供され、そのゲノムは、本明細書に記載されるようにC9ORF72座位を含む。一部の実施形態において、非ヒト胚性幹細胞は、齧歯類の胚性幹細胞である。一部のある実施形態では、齧歯類の胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、129系、C57BL系またはこれらの混合物からのものである。一部のある実施形態では、齧歯類の胚性幹細胞はマウス胚性幹細胞であり、129系およびC57BL系の混合物である。
【0028】
また本明細書において、Clustered Regularly Interspersed Short Palindromic Repeats(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システム、またはCRISPR/Casシステムの一個以上の構成要素が記載され、それらを使用して、例えば胚性幹細胞などの細胞から、本明細書に記載される異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列(またはその一部)が挿入された内因性C9ORF72座位を除去してもよい。そのような構成要素としては、例えば、Casタンパク質および/またはガイドRNA(gRNA)が挙げられる。gRNAは、2種の別個のRNA分子、例えばターゲッターRNA(たとえばCRISPR RNA(crRNA))とアクチベーターRNA(例えばtracrRNA)、または単一ガイドRNA(たとえば単一分子gRNA(sgRNA))を含み得る。
【0029】
CRISPR/Casシステムは、転写物と、Cas遺伝子の発現に関与する、または活性を誘導する他の構成要素を含む。CRISPR/Casシステムは、例えばI型、II型またはIII型のシステムであってもよい。あるいはCRISPR/Casシステムは、V型システム(例えば、V-A亜型またはV-B亜型)であってもよい。本明細書に記載される異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列(またはその一部)が挿入された内因性C9ORF72座位は、核酸の部位特異的切断用のCRISPR複合体(Casタンパク質と複合体化されたガイドRNA(gRNA)を含む)を利用して切除されてもよい。
【0030】
本明細書に記載されるCRISPR/Casシステムは、Casタンパク質(例えば、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1またはCsx12)、Cas10、Casl0d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cu1966、およびそれらのホモログまたは改変型)と、一個以上のガイドRNA(gRNA)を含んでもよく、これらはgRNA認識配列を標的とする。本明細書に記載されるCRISPR/Casシステムは、少なくとも一個の発現構築物をさらに含んでもよく、当該構築物は、Casタンパク質をコードする核酸(例えば、プロモーターに操作可能に連結されていてもよい)および/または本明細書に記載されるgRNAをコードするDNAを含む。
【0031】
一部の実施形態において、結合が存続するのに十分な条件下でgRNAのDNA標的化セグメントが結合するであろう標的核酸配列などのgRNA認識配列は、配列番号45またはその一部に見出される。Casタンパク質による配列番号45の部位特異的な結合と切断は、(i)gRNAと標的DNAの間の塩基対形成の相補性、および(ii)標的DNA中のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM:protospacer adjacent motif)と呼ばれる短いモチーフの両方により決定される位置で発生し得る。PAMは、ガイドRNA認識配列に隣接してもよい。任意で、ガイドRNA認識配列は、3’末端上でPAMに隣接されてもよい。あるいはガイドRNA認識配列は、5’末端上でPAMに隣接されてもよい。たとえばCasタンパク質の切断部位は、PAM配列の約1~約10塩基対、または約2~約5塩基対(例えば、3塩基対)上流または下流であってもよい。一部の例では(例えばS.pyogenes由来のCas9または非常に近縁のCas9が使用された場合)、非相補鎖のPAM配列は5’-NGG-3’であってもよく、式中、Nは、任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの非相補鎖のガイドRNA認識配列のすぐ3’側である。その場合、相補鎖のPAM配列は、5’-CCN-3’であり、式中、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの相補鎖のガイドRNA認識配列のすぐ5’側である。いくつかのそのような例において、NとNは、相補的であり、N-Nの塩基対は任意の塩基対であってもよい(例えば、N=CおよびN=G;N=GおよびN=C;N=AおよびN=T;またはN=TおよびN=A)。S.aureus由来のCas9の場合、PAMは、NNGRRTまたはNNGRRであってもよく、式中、Nは、A、G、CまたはTであってもよく、RはGまたはAであってもよい。一部の例において(例えば、FnCpf1に関して)、PAM配列は、5’末端の上流であってもよく、そして5’-TTN-3’配列を有してもよい。一部の実施形態において、gRNA認識配列は、配列番号45の190位、196位、274位、899位、905位、1006位、または1068位で開始される。
【0032】
本明細書に開示されるように、ガイドRNAは、任意の形態で提供され得る。一部の実施形態において、gRNAは、RNAの形態で、2分子として(別個のcrRNAとtracrRNA)、または1分子として(sgRNA)のいずれかで提供されてもよく、および任意で、Casタンパク質との複合体の形態で提供されてもよい。gRNAは、gRNAをコードするDNAの形態で提供されてもよい。一部の実施形態において、gRNAをコードするDNAは、単一RNA分子(sgRNA)をコードすることができ、または別個のRNA分子(例えば別個のcrRNAとtracrRNA)をコードすることもできる(この場合、別個のRNA分子は、一つのDNA分子として提供されてもよく、またはcrRNAとtracrRNAをそれぞれコードする別個のDNA分子として提供されてもよい)。
【0033】
一つの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR/Casシステムは、Cas9タンパク質もしくはII型CRISPR/Casシステム由来のCas9から誘導されたタンパク質、および/または少なくとも一個のgRNAを含み、この場合において当該少なくとも一個のgRNAは、crRNAおよび/またはtracrRNAをコードするDNAによりコードされる。一部の実施形態において、crRNAをコードするDNAは、AGTACTGTGAGAGCAAGTAG(R)(配列番号38)、GCTCTCACAGTACTCGCTGA(配列番号39)、CCGCAGCCTGTAGCAAGCTC(配列番号40)、CGGCCGCTAGCGCGATCGCG(配列番号41)、ACGCCCCGCGATCGCGCTAG(R)(配列番号42)、TGGCGAGTGGGTGAGTGAGG(配列番号43)、GGAAGAGGCGCGGGTAGAAG(配列番号44)、GAGTACTGTGAGAGCAAGTAG(R)(配列番号46)、GCCGCAGCCTGTAGCAAGCTC(配列番号47)、GCGGCCGCTAGCGCGATCGCG(配列番号48)、GACGCCCCGCGATCGCGCTAG(R)(配列番号49)、およびGTGGCGAGTGGGTGAGTGAGG(配列番号50)からなる群から選択される配列を含有する。一つの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR/Casシステムは、少なくとも7個のcrRNAコード配列の組み合わせを含有し、この場合において当該7個の各crRNAコード配列は、配列番号38、39、40、41、42、43または44として明記される配列を含有する。一つの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9システムは、少なくとも7個の別個のcrRNAコード配列の組み合わせを含有し、この場合において当該7個の各crRNAコード配列は、配列番号46、39、47、48、49、50または44として明記される配列を含有する。一つの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9システムは、少なくとも三個の別個のcrRNAコード配列の組み合わせを含有し、各々が、配列番号40、43または44として明記される配列を含有する。一つの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9システムは、少なくとも三個の別個のcrRNAコード配列の組み合わせを含有し、各々が、配列番号47、50または44として明記される配列を含有する。一つの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9システムは、少なくとも4個の別個のcrRNAコード配列の組み合わせを含有し、各々が、配列番号38、39、41または42として明記される配列を含有する。一つの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR/Cas9システムは、少なくとも4個の別個のcrRNAコード配列の組み合わせを含有し、各々が、配列番号46、39、48または49として明記される配列を含有する。
【0034】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるgRNAは、tracrRNAをコードするDNAによりコードされる。一部の実施形態において、tracrRNAコード配列は、配列番号63、64または65として明記される配列を含有する。一部の実施形態において、本明細書に記載されるgRNAは、crRNAとtracrRNAを含有する。一部の実施形態において、本明細書に開示されるgRNAは、一個以上のcrRNA(例えば、配列番号38、39、40、41、42、43、44、46、47、48、49または50として明記される配列を含有するDNAによりコードされる)と、tracrRNA、例えば配列番号63、64または65として明記される配列を含有するDNAなどを含有する。一部の実施形態において、gRNAをコードするDNAは、単一RNA分子(sgRNA)をコードすることができ、または別個のRNA分子(例えば別個のcrRNAとtracrRNA)をコードすることもできる(この場合、別個のRNA分子は、一つのDNA分子として提供されてもよく、またはcrRNAとtracrRNAをそれぞれコードする別個のDNA分子として提供されてもよい)。
【0035】
標的の遺伝子改変は、Casタンパク質と、標的ゲノム座位内の1か所以上のガイドRNA認識配列とハイブリダイズする一個以上のガイドRNAを、細胞と接触させることにより作製されることができる。当該一個以上のガイドRNAの内の少なくとも一個は、Casタンパク質と複合体を形成することができ、そして当該Casタンパク質を当該1か所以上のガイドRNA認識配列のうちの少なくとも1か所へと誘導することができ、当該Casタンパク質は、当該1か所以上のガイドRNA認識配列のうちの少なくとも1か所内の標的ゲノム座位を切断することができる。Casタンパク質による切断は、二本鎖切断または一本鎖切断(例えば、Casタンパク質がニッカーゼである場合)を生じさせ得る。二本鎖切断または一本鎖切断により生じた末端配列は、その後、組み換えを受け得る。
【0036】
一部の実施形態において、非ヒト生殖細胞が提供され、そのゲノムは、本明細書に記載されるようにC9ORF72座位を含む。一部の実施形態では、非ヒト生殖細胞は、齧歯類の生殖細胞である。一部の特定の実施形態では、齧歯類生殖細胞はマウス生殖細胞であり、129系、C57BL系またはこれらの混合系由来である。一部の特定の実施形態では、齧歯類生殖細胞はマウス生殖細胞であり、129系とC57BL系の混合系である。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト胚性幹細胞または生殖細胞が使用され、遺伝子改変された非ヒト動物が作製される。一部のある実施形態では、非ヒト胚性幹細胞または生殖細胞は、マウスの胚性幹細胞または生殖細胞であり、これを使用して、本明細書に記載されるC9ORF72座位を含むマウスが作製される。一部のある実施形態では、非ヒト胚性幹細胞または生殖細胞は、ラットの胚性幹細胞または生殖細胞であり、これを使用して、本明細書に記載されるC9ORF72座位を含むラットが作製される。
【0038】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるC9ORF72座位を含む非ヒト動物胚性幹細胞を含む、それから作製された、それから取得された、またはそれから生じた非ヒト胚が提供される。一部のある実施形態では、非ヒト胚は齧歯類胚であり、一部の実施形態ではマウス胚、一部の実施形態ではラット胎芽である。
【0039】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非ヒト動物胚が使用され、遺伝子改変された非ヒト動物が作製される。一部のある実施形態では、非ヒト胚はマウスの胚であり、これを使用して本明細書に記載されるC9ORF72座位を含むマウスが作製される。一部のある実施形態では、非ヒト胚はラットの胚であり、これを使用して本明細書に記載されるC9ORF72座位を含むラットが作製される。
【0040】
一部の実施形態において、筋委縮性側索硬化症(ALS)または前頭側頭型認知症(FTD)の非ヒト動物モデルが提供され、当該非ヒト動物モデルは、本明細書に記載される異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む内因性C9ORF72座位を有する。
【0041】
一部の実施形態において、筋委縮性側索硬化症(ALS)または前頭側頭型認知症(FTD)の非ヒト動物モデルが提供され、当該非ヒト動物モデルは内因性C9ORF72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を挿入することにより取得される。
【0042】
一部の実施形態において、神経変性性の疾患、障害、または状態の治療のための治療剤候補物質を特定する方法が提供され、当該方法は、(a)候補物質を、そのゲノムが本明細書に記載されるように改変された内因性C9ORF72座位を含む非ヒト動物または非ヒト動物細胞(例えば、胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、皮質細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)に投与すること、(b)当該候補物質が当該疾患、障害または状態に関連した兆候、症状および/または状態の一個以上に対する調節効果を有するかどうか(例えば、C9orf72座位からのセンスもしくはアンチセンスC9orf72RNAの転写増加、センスもしくはアンチセンスC9orf72 RNAを含む核および/または細胞質RNA凝集体の増加、RAN翻訳産物(例えばジペプチドリピートタンパク質)の増加など、を決定するためのアッセイを1種以上実施しすること、および(c)疾患、障害または状態と関連した兆候、症状および/または状態に対する調節効果を有する候補物質を治療剤候補物質として特定すること、を含む。一部の実施形態において、疾患または状態は、神経変性性の疾患または状態からなる群から選択される。一部の実施形態において、候補物質は、本明細書に記載される非ヒト動物にin vivoで投与され、脳細胞、皮質細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞、または投与後に当該非ヒト動物から単離された生殖細胞系列の細胞を含む組織に対して1種以上のアッセイが実行される。一部の実施形態において、候補物質は、本明細書に記載されるC9orf72座位でヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有する細胞(例えば、胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、皮質細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞)に投与され、アッセイはin vitroで実施される。一部の実施形態において、アッセイは、C9orf72遺伝子産物、例えばセンスおよびアンチセンスのC9orf72RNAを検出するための定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)である。一部の実施形態において、qPCRは、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、またはそれらの任意の組み合わせに明記されるヌクレオチド配列を有するプライマーおよび/またはプローブを用いて実施されてもよい。一部の実施形態において、アッセイは、C9orf72のセンスまたはアンチセンスのRNA転写産物、例えばヘキサヌクレオチドリピート伸長配列のRNA転写産物を含むRNA凝集体を測定する。一部の実施形態において、アッセイは、C9orf72のセンスまたはアンチセンスのRNA転写産物、例えばヘキサヌクレオチドリピート伸長配列のRNA転写産物を含むRNA凝集体を、配列番号81、配列番号82、配列番号83、および/または配列番号84のうちのいずれか一つに明記されるヌクレオチド配列を有する一個以上のプローブを使用して測定する。一部の実施形態において、アッセイは、RAN翻訳産物を測定する。たとえばアッセイは、免疫蛍光法であり、RAN翻訳産物(例えばジペプチドリピートタンパク質、例えばポリGAジペプチドリピートタンパク質など)は、抗ポリGA抗体を用いて測定される。一部の実施形態において、アッセイは、C9orf72タンパク質のレベルを測定する。
【0043】
一部の実施形態では、神経変性性の疾患、障害、または状態の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載される非ヒト動物の使用が提供される。
【0044】
一部の実施形態において、神経変性性の疾患、障害、または状態は、筋委縮性側索硬化症(ALS)である。一部の実施形態において、神経変性性の疾患、障害、または状態は、前頭側頭型認知症(FTD)である。
【0045】
様々な実施形態において、本明細書に記載される一つ以上の表現型は、参照または対照と比較される。一部の実施形態において、参照または対照としては、本明細書に記載される改変を有する非ヒト動物、本明細書に記載される改変とは異なる改変を有する非ヒト動物、または改変を有さない非ヒト動物(例えば、野生型非ヒト動物)が挙げられる。配列番号2、そのバリアント、配列番号4、そのバリアント、または配列番号5もしくはそのバリアントとして明記される配列を含む異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む非ヒト動物は、本明細書に記載される方法において、参照、または対照の非ヒト動物として使用され得る。
【0046】
様々な実施形態において、非ヒト動物は、本明細書に記載されるC9orf72座位に対しホモ接合性である。様々な実施形態において、非ヒト動物は、本明細書に記載されるC9orf72座位に対しヘテロ接合性である。
【0047】
様々な実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は齧歯類である。一部の実施形態ではマウスであり、一部の実施形態ではラットである。
【0048】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は同意義語として使用される。約/およその有無に関わらず、本明細書で使用される任意の数字は、当業者によって理解される任意の正常変動を網羅することが意図される。
【0049】
本明細書に提供される非ヒト動物、細胞、および方法のその他の特徴、目的、および利点は、以下に示す特定の実施形態の詳細説明で明らかである。しかしながら、以下の詳細説明は特定の実施形態を示すが、単に例示のためになされるものであり、限定するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内のさまざまな変更および修正は、詳細説明から当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1A図1Aは、上のボックス内において、報告されている3種のマウスC9orf72転写物アイソフォーム(V1、V2、およびV3)の正確な縮尺ではない略図を示し、そしてヒトC9orf72遺伝子のエクソン1aおよびエクソン1bにわたり、3個または100個のリピートを含む二個のヒト異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の内の一つを、内因性マウスC9orf72座位へと挿入するための標的化戦略の正確な縮尺ではない略図を示す。図1Aにおいて、白色のボックスはマウスのエクソンを表し、白色の対角線上に縞模様のあるボックスは、マウスC9orf72座位の非コードマウスエクソンを表す。水平に縞模様のあるボックスは、ヒトC9orf72座位の非コードエクソンであり、菱形は、ヘキサヌクレオチドリピートを表す。配列番号2として明記される配列を含む第一の標的化ベクターと、配列番号4として明記される配列を含む第二の標的化ベクターを作製した。第一の標的化ベクターは、5’から3’方向に、マウス3110043021Rik遺伝子のRP23-434N2から上流の、配列番号6を含むマウス相同アーム89Kb、ヒトC9orf72の非コードエクソン1aおよびエクソン1bにわたり、ヘキサヌクレオチド配列GGGGCCのリピート三個を含有する介在イントロンを含む配列番号8として明記されるヒト配列、ヒトユビキチン1遺伝子(hUb1)由来のプロモーターとネオマイシンホスホトランスフェラーゼ抵抗性遺伝子(neo-r)に動作可能に連結された細菌Em7遺伝子を含み、loxP部位に隣接される薬剤選択カセット、そしてマウス3110043021Rik 遺伝子のRP23-434N2の下流の、配列番号7を含むマウス相同アーム86Kb、を含む。第二の標的化ベクターは、5’から3’方向に、マウス3110043021Rik遺伝子のRP23-434N2から上流の、配列番号6を含むマウス相同アーム89Kb、ヒトC9orf72の非コードエクソン1aおよびエクソン1bにわたり、ヘキサヌクレオチド配列GGGGCCのリピート100個を含有する介在イントロンを含む配列番号9として明記されるヒト配列、ヒトユビキチン1遺伝子(hUb1)由来のプロモーターとネオマイシンホスホトランスフェラーゼ抵抗性遺伝子(neo-r)に動作可能に連結された細菌Em7遺伝子を含み、loxP部位に隣接される薬剤選択カセット、そしてマウス3110043021Rik遺伝子のRP23-434N2の下流の、配列番号7を含むマウス相同アーム86Kb、を含む。この第一および第二の標的化ベクターを用いた相同組換えを行うことで、マウスの3110043021Rikのエクソン1の一部とイントロン1部分を含む約853bpのマウスゲノム領域は、ヒトC9orf72非コード配列のエクソン1a~1bにおよぶゲノム配列を含む配列で置換される。得られた改変マウスC9orf72-HRE座位を、薬剤耐性カセットの切除前と切除後で、図1Bに示す。得られた改変マウスC9orf72-HRE100座位を、薬剤耐性カセットの切除前と切除後で、図1Cに示す。図1Bおよび図1Cにおいて、マウスの非コード領域は、対角線に縞模様が引かれたボックスにより表され、ヒト非コードエクソンは水平の縞模様が引かれたボックスにより表され、マウスコードエクソンは白色のボックスで表されている。図1B図1Cの上のパネルにおいて、サザンブロット解析に使用されたプローブ(白色の縦の長方形)(配列番号29)のおよその位置も示されている。
図1B】同上。
図1C】同上。
【0051】
図2A図2Aにおいて、対照ES細胞クローン、ヘキサヌクレオチド配列のリピートを三個含む異種リピート伸長配列を含む標的化ベクターで標的化されたES細胞クローン(8026)、およびその薬剤カセットの切除後(8027 A-C4)、またはヘキサヌクレオチド配列のリピートを100個含む異種リピート伸長配列を含む標的化ベクターで標的化されたES細胞クローン(8028)、およびその薬剤カセットの切除後(8029 A-A3、8029 A-A6、8029 B-A4、8029 B-A10 A-C4)から単離されたゲノムDNAのサザンブロット解析の結果である。
図2B図2Bは、対照ES細胞クローン、8027 A-C4クローン、8029 A-A3クローン、8029 A-A6クローン、8029 B-A4クローン、8029 B-A10クローンを含む遺伝子型決定サンプル(n=6)、および三個のヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有するヒトサンプルから取得された対照サンプル(n=7)の遺伝子型決定の遺伝子型の結果を示す。
【0052】
図3図3は、ヒト化C9orf72-HREx(式中、x≧1)、ヒト化領域、および野生型(WT)C9orf72マウス座位の正確な縮尺ではない略図を示す。図3において、改変C9orf72-HRE座位(A、B、G、H)からの遺伝子発現生成物、または改変および野生型C9orf72座位(D)の両方からの遺伝子発現生成物を定量するために行われた、表1に記載される、TAQMAN(登録商標)定量的PCR解析のA、B、G、HおよびDにおいて使用された5’プライマーと3’プライマー(白色の矢印)およびプローブ(黒色の長方形)のおよその位置も示されている。図3において、マウスの非コード領域は、対角線に縞模様が引かれたボックスにより表され、ヒト非コードエクソンは水平の縞模様が引かれたボックスにより表され、マウスコードエクソンは白色のボックスで表されている。図3に示されるプライマーとプローブの配列は、表1に記載され、および表5に提供される。表1
【表1】
【0053】
図4図4は、野生型C9orf72座位(対照)、または配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個(3x)、30個(30x)、もしくは92個(92x)含む改変C9orf72座位に対しヘテロ接合性(Het)もしくはホモ接合性(Homo)である胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)、全脳組織、または親胚性幹(ES)細胞による、C9orf72座位の発現レベル(y軸)(図3に示されるTAQMAN(登録商標)定量的PCRのA、B、GおよびHにより決定された)を、それぞれ、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個(3x)含む改変C9orf72座位に対しヘテロ接合性のESMN、脳、または親ESCと比較して示す棒グラフを提示する。すべてのESMNと親ES細胞は、改変C9orf72座位に対してヘテロ接合性であり、すべての対照は、野生型C9orf72座位に対してホモ接合性であった。
【0054】
図5A図5A~5Cは、野生型C9orf72座位(対照)、または配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個(3x)、30個(30x)もしくは92個(92x)含む改変C9orf72座位に対しヘテロ接合性(het)またはホモ接合性(homo)である、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)、マウス全能、または親胚性幹(ES)細胞によるC9orf72遺伝子産物(図3に図示されるように、TAQMAN(登録商標)定量的PCRのアッセイA(図5A)、アッセイB(図5B)、またはアッセイD(図5C)により検出された)のカウント値(Δct;y軸)と、GAPDH遺伝子産物のカウント値における差異を示す棒グラフを提示する。すべてのESMNと親ES細胞は、改変C9orf72座位に対してヘテロ接合性であり、すべての対照は、野生型C9orf72座位に対してホモ接合性であった。
図5B】同上。
図5C】同上。
【0055】
図6図6は、野生型C9orf72座位(WT)、または配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個(3x)、もしくは92個(92x)含む改変C9orf72座位に対しヘテロ接合性(het)またはホモ接合性(homo)であるマウスの皮質、脳幹、残りの(rem)脳部分、脊髄、筋肉、肝臓、心臓または腎臓から単離された組織中のC9orf72遺伝子産物(図3に図示されるように、TAQMAN(登録商標)定量的PCRのアッセイBにより検出された)のカウント値(Δct;y軸)と、β2マイクログロブリン(B2M)遺伝位産物のカウント値における差異を示す棒グラフを提示する。
【0056】
図7図7は、野生型C9orf72座位(対照)に対しホモ接合性であるか、または配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個(G3x)、30個(G30x)または92個(G92x)含む改変C9orf72座位に対してヘテロ接合性である、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)由来の溶解物の還元型SDS-PAGE解析からのウェスタンブロッティング画像(上)を示す。抗C9orf72抗体(上)または抗GAPDH抗体(下)でブロッティングされた。配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを三個含む改変C9orf72座位に対しヘテロ接合性のESMNのC9orf72のタンパク質レベルに対し標準化された、これらサンプルのC9orf72のタンパク質レベルの棒グラフ(下のパネル)を分子量マーカーとともに提示する。
【0057】
図8図8は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個(G3x)、または92個(G92x)含む改変C9orf72座位に対してヘテロ接合性である、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)由来の溶解物の還元型SDS-PAGE解析からのウェスタンブロッティング画像(上)を示す。溶解物は0μg、1.25μg、2.5μg、5μg、または10μg、の総タンパク質を含有し、抗C9orf72抗体(図示)または抗GAPDH抗体(示さず)でブロッティングされる。これらサンプルによるGAPDHのタンパク質レベルに対し標準化されたこれらサンプルのC9orf72のタンパク質レベルの棒グラフ(下)も、分子量マーカーとともに提示する。
【0058】
図9A図9Aおよび9Bは、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチドのリピートを3個(C9orf72 G 3x)、30個(C9orf72 G 30x)、または92個(C9orf72 G 92x)含むよう改変された、C9orf72座位に対しヘテロ接合性の胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)から得られた画像である。DNA(図9A)またはLNA(図9B)プローブで染色された。これら画像は、ESMNにおける、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチドリピート配列のセンス転写物(図9A)またはアンチセンス転写物(図9B)の核内局在および細胞質内局在を示す。矢印は、染色されたRNA凝集体の例を指す。
図9B】同上。
【0059】
図10図10は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個(C9orf72 G 3x)、または92個(C9orf72 G 92x)含むよう改変された、C9orf72座位に対してヘテロ接合性である、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)の免疫蛍光染色から得られた画像を提示する。これら画像は、ESMNにおける、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチドリピート配列の転写物から(RAN翻訳、非AUG機序を介して)翻訳されたジペプチドリピートタンパク質(ポリGA)の核内局在を示す。矢印は、染色されたポリGAジペプチドリピートタンパク質の例を指す。
【0060】
図11図11は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを約92個含む異種(ヒト)ヘキサヌクレオチドリピート伸長を含む約1300bpのマウスC9ORF72座位の正確な縮尺ではない略図を示す。これを参照配列として使用して、伸長配列を削除するためのCRISPR/Casシステムを生成してもよい。図11において、(1)下向きに指す矢印により図示される、ヘキサヌクレオチド配列の92個のリピートのおよその位置、(2)配列番号38、配列番号39、および配列番号40として明記される配列をそれぞれ含むgRNAにより標的化され得るヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の上流の三つの部位の開始位置(190、196および274)のおよその位置、(3)配列番号41、配列番号42、配列番号43、および配列番号44として明記される配列をそれぞれ含むgRNAにより標的化され得るヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の下流の四つの部位の開始位置(899、905、1006および1068)のおよその位置、および(4)選択された細胞クローン中の欠失を確認するために使用され得るフォワード(F-)およびリバース(R-)プライマーのおよその位置も図示される。図11に図示される参照配列の核酸配列は、配列番号45として明記される。
【0061】
図12図12は、CRISPR/Casシステムで使用され得る10,718bpの発現構築物の例を示す。発現構築物は、N末端核内局在化シグナル(NLS)およびC末端核内局在化シグナルと融合されたマウスCas9タンパク質「マウスopt Cas9」をコードする核酸を含み、当該融合タンパク質の発現は、CAGGプロモーターの制御下にある。核酸の上流はコザック配列であり、核酸の下流はウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)テールである。また、SV40ポリアデニル化(SV40ポリA)テールに操作可能に連結されたピューロマイシン抵抗性遺伝子、複製起源部位(pMB1)、およびアンピシリン(Amp)抵抗性を供与するβラクタマーゼ遺伝子と融合した緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするヌクレオチド配列の発現を誘導するEF1プロモーターを発現構築物の一部として示す。発現構築物によって、U6プロモーターと末端シグナルの間にgRNA、たとえばcrRNAをコードするDNAを挿入することが可能となる。発現構築物は図4に図示され、U6プロモーターの下流および末端シグナルの上流にtracrRNAコード配列をさらに含んでもよい。そのようなtracrRNAコード配列は、挿入時に例えばcrRNAなどに操作可能に連結され得るように配置される。一部の実施形態において、tracrRNAコード配列は、GTTGGAACCATTCAAAACAGCATAGCAAGTTAAAATAAGGCTAGTCCGTTATCAACTTGAAAAAGTGGCACCGAGTCGGTGC(配列番号63)、GTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAAAATAAGGCTAGTCCGTTATCAACTTGAAAAAGTGGCACCGAGTCGGTGC(配列番号64)、GTTTAAGAGCTATGCTGGAAACAGCATAGCAAGTTTAAATAAGGCTAGTCCGTTATCAACTTGAAAAAGTGGCACCGAGTCGGTGC(配列番号65)、またはそれらの一部を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0062】
定義
本発明は本明細書に記載された特定の方法および実験条件に限定されないが、それはこのような方法および条件は変化する場合があるからである。本発明の範囲は請求項によって定義されるので、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的で使用されており、限定を意図しないことも理解される。
【0063】
別段の定めがない限り、本明細書に使用されるすべての用語および語句は、そうでないことが明確に示されている、あるいは用語または語句が使用されている文脈から明らかに明白な場合を除き、その用語および語句が当技術分野で獲得された意味を含む。本明細書で記載したものと類似または同等な任意の方法および材料も、本発明の実施または試験に使用できるが、特定の方法および材料をこれから記載する。本明細書で言及されたすべての出版物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
「投与」対象またはシステム(たとえば、細胞、臓器、組織、生物、または関連構成要素もしくはその構成要素のセット)に対する組成物の投与を含む。当業者であれば、投与経路は、例えば、その組成物が投与される対象またはシステム、組成物の性質、投与目的などに応じて異なり得ることを認識するであろう。例えば、特定の実施形態では、動物対象(例えば、ヒトまたは齧歯類)への投与は、気管支投与(気管支注入を含む)、口腔投与、腸内投与、皮間投与、動脈内投与、皮内投与、胃内投与、髄内投与、筋肉内投与、鼻内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、静脈内投与、心室内投与、粘膜投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、皮下投与、舌下投与、局所投与、気管投与(気管内注入を含む)、経皮投与、膣投与、および/または硝子体投与であってもよい。一部の実施形態では、投与は、間欠投薬を含み得る。一部の実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたる連続投薬(例えば、灌流)を含み得る。
【0065】
「改善」状態の防止、減少、もしくは緩和、または対象の状態の改善を含む。改善は、疾患、障害、または症状(たとえば放射線傷害)の完全な回復または完全な防止を含むが、必須ではない。
【0066】
「およそ」一つ以上の対象の値に適用される場合、指定された参照値に類似した値を含む。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段の定めがない限り、または文脈からそうでないことが明らかな場合(このような数字が可能な値の100%を超える場合を除く)を除いて、指定された参照値のいずれかの方向に25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満以内の範囲の値を指す。
【0067】
「生物学的に活性」は、生物系、インビトロまたは(例えば、生物中の)インビボで活性を持つ任意の薬剤の特徴を含む。例えば、薬剤が生物内に存在する場合、その生物内で生物学的効果を持つ薬剤は、生物学的に活性であるとみなされる。特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性な場合、タンパク質またはポリペプチドの少なくとも一つの生物学的活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの一部は、「生物学的に活性」な部分と一般的に呼ばれる。
【0068】
「同等」は、互いに同一ではない場合があるが、観察された差異または類似性に基づき合理的に結論を下すことができるような比較を可能にするのに十分類似性がある、二つ以上の薬剤、実体、状況、条件群などを含む。当業者であれば、文脈内において、同等とみなされるために二つ以上のこのような薬剤、実体、状況、条件群などに対して、ある所定の状況でどの程度の同一性が必要かを理解するであろう。
【0069】
「保存的」は、保存的アミノ酸置換を記載する場合には、類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を伴う側鎖のR基を有する別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を含む。一般的に、保存的アミノ酸置換は、対象のタンパク質の機能特性、例えば、リガンドに結合する受容体の能力などを実質的に変化させない。類似の化学特性を備えた側鎖を持つアミノ酸群の例には次のものが含まれる:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンなどの脂肪族側鎖、セリンおよびスレオニンなどの脂肪族-ヒドロキシル側鎖、アスパラギンおよびグルタミンなどのアミド含有側鎖、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンなどの芳香族側鎖、リジン、アルギニン、およびヒスチジンなどの塩基性側鎖、アスパラギン酸およびグルタミン酸などの酸性側鎖、ならびにシステインおよびメチオニンなどの硫黄含有側鎖。保存的アミノ酸置換基には、例えば、バリン/ロイシン/イソロイシン、フェニルアラニン/チロシン、リジン/アルギニン、アラニン/バリン、グルタミン酸/アスパラギン酸、およびアスパラギン/グルタミンが含まれる。一部の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、例えばアラニンスキャニング変異誘導などで使用される、アラニンを含むタンパク質の任意の未変性残基の置換である可能性がある。一部の実施形態では、Gonnet,G.H.et al.,1992,Science 256:1443-1445に開示されるPAM250対数尤度マトリクスにおいて正の値を有する保存的置換が行われる。一部の実施形態では、置換は中等度に保存的な置換であり、この場合において該置換はPAM250対数尤度マトリックスで負ではない値を有する。
【0070】
「対照」という用語は、結果がそれに対して比較される基準である「対照」という当技術分野で理解される意味を含む。一般的に、対照は、変数についての結論を出すために、このような変数を分離することによって実験の完全性を増加させるのに使用される。一部の実施形態では、対照は、コンパレーターを提供するために、試験反応またはアッセイと同時に実施される反応またはアッセイである。「対照」とは、「対照動物」も含む。「対照動物」は本明細書に記述された改変、本明細書に記述されたものとは異なる改変を持つか、または未改変(すなわち、野生型動物)である場合がある。ある実験では、「試験」(すなわち、試験されている変数)が適用される。その「対照」である別の実験では、その試験されている変数が適用されない。一部の実施形態では、対照は歴史的対照(すなわち、以前に実施された試験またはアッセイの、または以前に知られた量または結果)である。一部の実施形態では、対照は印刷されたかまたはそれ以外の方法で保存された記録であるか、またはそれを含む。対照は、陽性対照または陰性対照である場合がある。
【0071】
「破壊」は、DNA分子(例えば、遺伝子または遺伝子座位などの内因性相同配列)との相同組み換え事象の結果を含む。一部の実施形態では、破壊は、DNA配列の挿入、欠失、置換、交換、ミスセンス変異、もしくはフレームシフト、またはこれらの任意の組み合わせを達成または示す場合がある。挿入は、遺伝子全体または遺伝子の断片(例えば、エクソン)の挿入を含む場合があり、これは内因性配列以外の起源のもの(例えば、異種配列)であってもよい。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の(例えば、遺伝子によってコードされたタンパク質の)発現および/または活性を増加する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の発現および/または活性を減少する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物(例えば、コードされたタンパク質)の配列を変える場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物(例えば、コードされたタンパク質)を切断または断片化する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子またはコードされた遺伝子産物を伸長させる場合がある。一部のかかる実施形態では、破壊は融合タンパク質のアセンブリを実現する場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルに影響するが、その活性には影響しない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の活性に影響するが、そのレベルには影響しない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルに対して顕著な効果を持たない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物の活性に対して顕著な効果を持たない場合がある。一部の実施形態では、破壊は遺伝子または遺伝子産物のレベルまたは活性のいずれに対しても顕著な効果を持たない場合がある。
【0072】
「決定する」、「測定する」、「査定する」、「評価する」、「検査する」および「分析する」は、任意の形態の測定法を含み、要素が存在するかどうかを決定することを含む。これらの用語は、定量的および/または定性的決定の両方を含む。アッセイは相対的または絶対的である場合がある。「存在をアッセイすること」は、存在する何かの量を決定すること、および/またはそれが存在するか不在かを決定することであり得る。
【0073】
「内因性座位」または「内因性遺伝子」は、本明細書に記述される破壊、欠失、置換、変化、または改変の導入前に、親または参照生物において存在する遺伝子座位を含む。一部の実施形態では、内因性座位は自然界で見られる配列を有する。一部の実施形態では、内因性遺伝子座は野生型遺伝子座である。一部の実施形態では、指標生物は野生型生物である。一部の実施形態では、指標生物は操作された生物である。一部の実施形態では、指標生物は実験室で繁殖された生物(野生型または遺伝子操作された)である。
【0074】
「内因性プロモーター」は、例えば、野生型の生物において、内因性遺伝子と自然に関連するプロモーターを含む。
【0075】
「遺伝子」は、産物(例えば、RNA産物および/またはポリペプチド産物)をコードする、染色体中のDNA配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子は、コード配列(すなわち、特定の産物をコードする配列)を含む。一部の実施形態では、遺伝子は、非コード配列を含む。一部の特定の実施形態では、遺伝子は、コード配列(例えばエクソン配列)と非コード配列(例えばイントロン配列)の両方を含む。一部の実施形態では、遺伝子は、一つ以上の制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)を含んでもよく、および/または例えば遺伝子発現(例えば、細胞型特異的発現、誘導発現、など)の一つ以上の態様を制御することができる、もしくは影響を与えることができるイントロン配列を含んでもよい。明確化を目的として、本明細書において使用される場合、用語「遺伝子」は、概してポリペプチドをコードする核酸の一部を意味し;当該用語は任意選択的に制御配列を包含する場合があり、これは当技術分野の当業者には文脈から明らかであるはずである。この定義は、「遺伝子」という用語を非タンパク質をコードする発現単位に適用することを除外する意図はなく、本明細書に使用される当該用語は、多くの場合においてはポリペプチドをコードする核酸を指すことを明らかにすることを意図している。
【0076】
「異種」は、異なる起源からの物質または実体を含む。例えば、特定の細胞もしくは生物に存在するポリペプチド、核酸配列、遺伝子、または遺伝子産物に関連して使用される場合、当該用語は、関連するポリペプチド、核酸配列、遺伝子または遺伝子産物が、1)ヒトの手により操作されていること、2)ヒトの手を介して細胞または生物(またはその前駆体)に導入されていること、および/または3)当該関連細胞もしくは生物(例えば関連細胞型または生物型)中に自然状態では産生されない、または存在しないこと、を明らかにする。「異種」は、たとえば天然では関連していない、および一部の実施形態では非内因性の制御因子(たとえばプロモーター)の制御下にある、特定の天然の細胞または生物中に通常存在するが、突然変異または置換により改変されるポリペプチド、核酸配列、遺伝子、または遺伝子産物も含む。
【0077】
「宿主細胞」は、その中に核酸またはタンパク質が導入された細胞を含む。当業者が本開示を読めば、このような用語が特定の主題細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫を指すためにも使用されることを理解するであろう。突然変異または環境の影響によって特定の改変は後続世代にも起こる可能性があるため、このような子孫は、実際は、親細胞と同一でない場合があるが、それでも「宿主細胞」という文言の範囲内に含まれる。一部の実施形態では、宿主細胞は原核細胞または真核細胞であるかそれを含む。一般的に、宿主細胞は、細胞が指定される種に関わらず、異種核酸またはタンパク質の受け入れおよび/または生産に適した任意の細胞である。細胞の例としては、原核生物および真核生物(単細胞または多細胞)の細胞、細菌細胞(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス属(Bacillus spp.)、ストレプトマイセス属(Streptomyces spp.)などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)など)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)など)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合体が挙げられる。一部の実施形態では、細胞はヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。一部の実施形態では、細胞は真核細胞であり、以下の細胞から選択される:CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、および前述細胞から派生する細胞株。一部の実施形態では、細胞は一つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(登録商標)細胞)を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は単離細胞であるかそれを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は組織の一部である。一部の実施形態では、宿主細胞は生物の一部である。
【0078】
「同一性」、配列比較との関連において、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列同一性を測定するために使用できる当技術分野で公知の多種アルゴリズムによって決定される同一性を意味する。一部の実施形態では、本明細書に記述された同一性は、10.0のギャップ開始ペナルティ、0.1のギャップ延長ペナルティを用い、Gonnet類似性マトリックス(MACVECTOR(商標)10.0.2、MacVector Inc.、2008年)を使用したClustalW v.1.83(slow)アラインメントを使用して決定される。
【0079】
「改善する」、「増加する」、「排除する」、または「減少する」は、例えば同一の個体(または動物)における本明細書に記載される処置を開始する前の測定値、または対照個体(または動物)もしくは複数の対照個体(または動物)における本明細書に記載される処置を行わない場合の測定値など、基準測定値に対して相対的な指示値を含む。
【0080】
「単離された」は、(1)(天然および/または実験環境のいずれかで)最初に生成された時にそれが関連していた成分の少なくとも一部から分離された、および/または(2)人の手によって設計、生産、調製、および/または製造された物質および/または実在物を含む。単離された物質および/または実体は、それらが最初に関連していたその他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離される場合がある。一部の実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%を超えて純粋である。一部の実施形態では、物質は、その他の成分が実質的に含まれない場合、「純粋」である。一部の実施形態では、当業者であれば理解するように、例えば、一つ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝剤、溶媒、水など)などの特定のその他の成分と組み合わされた後でも、物質はまだ「単離された」または「純粋」とさえもみなされる場合があり、このような実施形態では、物質の単離または純度のパーセントはこのような担体または賦形剤を含めることなく計算される。一例を挙げると、一部の実施形態では、自然界に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生体高分子は、a)導出の起源またはソースが、自然界の天然状態でそれに付随する成分の一部またはすべてと関連していない時、b)それが、自然界でそれを生産する種と同じ種のその他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない時、またはc)自然界でそれを生産する種ではない細胞またはその他の発現系によって発現されるか、またはそうでなければそれからの成分と関連している時、「単離された」とみなされる。従って、例えば、一部の実施形態では、化学的に合成された、または自然界でそれを生産するものとは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドとみなされる。あるいはまたは追加的に、一部の実施形態では、一つ以上の精製技術を受けたポリペプチドは、それが、a)それが自然界で関連している、および/またはb)最初に生産された時にそれが関連していたその他の成分から分離されている限りは「単離された」ポリペプチドとみなされることができる。
【0081】
「座位」は、遺伝子(または重要な配列)、DNA配列、ポリペプチドをコードする配列、または生物ゲノムの染色体上の位置の特定の場所を含む。例えば、「C9ORF72座位」は、C9ORF72遺伝子、C9ORF72 DNA配列、C9ORF72をコードする配列の特定の位置、またはかかる配列が存在する位置について特定された生物のゲノムの染色体上のC9ORF72の位置を指す場合がある。C9ORF72座位は、限定されないが、エンハンサー、プロモーター、5’および/もしくは3’のUTR、またはそれらの組み合わせなどをはじめとするC9ORF72遺伝子の制御性因子を含有してもよい。当技術分野の当業者には、一部の実施形態において、染色体が、数百、さらには数千の遺伝子を含有し得ること、及び異なる種の間で比較した場合に、類似した座位の物理的な共局在を示し得ることが理解されるであろう。かかる遺伝子座位は、シンテニー(synteny)を共有したと記載され得る。
【0082】
「非ヒト動物」は、ヒトではない任意の脊椎生物を含む。一部の実施形態では、非ヒト動物は、円口類、硬骨魚、軟骨魚(例えば、サメまたはエイ)、両生類、は虫類、哺乳類、および鳥である。一部の実施形態では、非ヒト哺乳類は、霊長類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ウシ、または齧歯類である。一部の実施形態では、非ヒト動物はラットまたはマウスなどの齧歯類である。
【0083】
「核酸」は、オリゴヌクレオチドに組み込まれるか、またはオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれることができる任意の化合物および/または物質を含む。一部の実施形態では、「核酸」は、ホスホジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれるか、組み込まれることができる化合物および/または物質である。文脈から明らかであるように一部の実施形態では、「核酸」とは個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)を指し、一部の実施形態では、「核酸」とは個別の核酸残基を備えるオリゴヌクレオチド鎖を指す。一部の実施形態では、「核酸」はRNAであるかまたはそれを含み、一部の実施形態では、「核酸」はDNAであるかまたはそれを含む。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上の天然核酸残基を含むかまたはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上の核酸類似体を含むかまたはそれらから成る。一部の実施形態では、核酸類似体は、ホスホジエステル骨格を利用しないという点で「核酸」とは異なる。例えば、一部の実施形態では、「核酸」は、当技術分野では知られており、骨格にホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有する、一つ以上の「ペプチド核酸」であるか、それらを含むか、またはそれらから成り、それらは本発明の範囲内であるとみなされる。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、「核酸」は、ホスホジエステル結合ではなく、一つ以上のホスホロチオエート及び/または5’-N-ホスホラミダイト結合を有する。一部の実施形態では、「核酸」は一つ以上の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)であるか、または一つ以上の天然ヌクレオシドから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、インターカレート塩基、およびそれらの組み合わせ)であるか、またはそれらから成る。一部の実施形態では、「核酸」は、天然核酸のものと比べて、一つ以上の改変された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)を含む。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAまたはタンパク質などの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を持つ。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のイントロンを含む。一部の実施形態では、「核酸」は、一つ以上のエクソンを含む。一部の実施形態では、「核酸」は、天然起源物からの単離、相補的鋳型に基づく重合による酵素合成(インビボまたはインビトロ)、組み換え細胞または系での複製、および化学合成の一つ以上によって調製される。一部の実施形態では、「核酸」は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000またはそれを超える残基の長さである。一部の実施形態では、「核酸」は一本鎖であり、一部の実施形態では、「核酸」は二本鎖である。一部の実施形態では、「核酸」は、ポリペプチドをコードする要素を少なくとも一つ、またはポリペプチドをコードする配列の構成要素である要素を少なくとも一つ、含有するヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、「核酸」は酵素活性を持つ。
【0084】
「動作可能に連結した」は、記述された構成要素が、それらが意図された方法で機能できるような関係にある並置を含む。コード配列に「動作可能に連結した」対照配列は、対照配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるように結合されている。「動作可能に連結した」配列には、関心の遺伝子と隣接する発現制御配列および、トランスにまたは距離を置いて作用して対象の遺伝子を制御する発現制御配列の両方を含む。「発現制御配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列を含み、それらが結合されるコード配列の発現およびプロセッシングに作用するために必要である。「発現制御配列」には、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的RNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を強化する配列(すなわち、コザック配列)、タンパク質安定性を強化する配列、および望ましい場合、タンパク質分泌を強化する配列を含む。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。例えば、原核生物では、かかる制御配列としては、概して、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が挙げられる一方、真核生物では、かかる制御配列としては、概して、プロモーターおよび転写終結配列が挙げられる。「制御配列」という用語は、その存在が発現およびプロセシングのために必須である要素を含むことを意図しており、その存在が有利である追加的要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含むことができる。
【0085】
「表現型」は、細胞または生物により呈される形質、または形質の種類もしくは形質のセットを含む。一部の実施形態において、特定の表現型は、特定のアレルまたは遺伝子型と関連する場合がある。一部の実施形態において、表現型は、不連続的であり得る。一部の実施形態において、表現型は連続的であり得る。
【0086】
「生理学的条件」は、細胞または生物体が生存および/または繁殖する条件に言及する当技術分野で公知の意味を含む。一部の実施形態では、当該用語には、生物または細胞系に対し自然界で発生し得る外的環境または内的環境の条件が含まれる。一部の実施形態では、生理学的条件は、ヒトまたは非ヒト動物の身体内にある条件であり、特に手術部位の、および/または手術部位内の条件である。生理学的条件は、典型的には、例えば20~40℃の範囲の温度、1気圧、pH6~8、1~20mMのグルコース濃度、大気レベルの酸素濃度、および地球上で生じる重力などを含む。一部の実施形態では、実験室での条件は、生理学的条件に操作され、および/または維持される。一部の実施形態では、生理学的条件は、生物内で遭う条件である。
【0087】
「ポリペプチド」は、アミノ酸の任意の重合鎖を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に存在するアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、ポリペプチドは、自然界に存在しないアミノ酸配列を持つ。一部の実施形態では、ポリペプチドは、お互いに別々に自然界に存在する部分を含むアミノ酸配列を持つ(すなわち、例えば、ヒトおよび非ヒト部分など、二つ以上の異なる生物からのもの)。一部の実施形態では、ポリペプチドは、それが人の手の作用を通して、設計および/または生産されるという点で、遺伝子操作されたアミノ酸配列を持つ。
【0088】
「阻害する」または「阻害」は、疾患、障害および/または状態の発現との関連において、当該疾患、障害および/もしくは状態の発生リスクを減少させること、ならびに/または当該疾患、障害もしくは状態の1種以上の特徴または症状の開始を遅延させることを含む。阻害は、疾患、障害または状態の開始が所定の期間遅延されたときに完了とみなされ得る。
【0089】
「参照」は、対象の剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値が比較される、標準もしくは対照の剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値を含む。一部の実施形態では、参照の作用剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、対象の作用剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値の試験または算出と実質的に同時に試験および/または算出される。一部の実施形態では、参照の作用剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、任意選択的に有形媒体で具現化された公知の参照である。一部の実施形態では、参照は対照を指す場合がある。「参照」は、「参照動物」も含む。「参照動物」は、本明細書に記述された改変を有するか、本明細書に記述されたものとは異なる改変を有するか、または改変を有さない(すなわち、野生型の動物)場合がある。一般的には、当業者には理解されるであろうように、参照薬剤、動物、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値は、対象の薬剤、動物(例えば、哺乳類)、コホート、個人、集団、サンプル、配列または値を決定または特徴付けるために利用されるものと同等の条件下で決定または特徴付けられる。
【0090】
「反応」は、処置の結果として、または処置と関連して発生する対象の状態における任意の有益な変化を含む。そのような変化としては、当該状態の安定化(例えば当該処置が無い場合に発生し得る悪化の阻害)、当該状態の症状の改善、および/または当該状態の治療に対する予測における向上が挙げられる。対象の反応または神経の反応を指す場合もある。神経または対象の反応は、臨床的基準または客観的基準を含む広範な基準に従い測定され得る。対象の運動系の検査は、強度、腱反射、表皮反射、筋肉量、協調、筋緊張、異常運動、静止および歩き方のうちの一つ以上の検査を含み得る。反応を評価するための技術としては、限定されないが、臨床検査、伸身屈曲(伸張反射)、ホフマン反射、および/または圧迫試験が挙げられる。処置に対する反応評価の方法およびガイドラインは、Brodal,A.:Neurological Anatomy in Relation to Clinical Medicine,ed.2,New York,Oxford University Press,1969;Medical Council of the U.K.:Aids to the Examination of the Peripheral Nervous System,Palo Alto,Calif.,Pendragon House,1978;Monrad-Krohn,G.H.,Refsum,S.:The Clinical Examination of the Nervous System,ed.12,London,H.K.Lewis&Co.,1964;およびWolf,J.K.:Segmental Neurology,A Guide to the Examination and Interpretation of Sensory and Motor Function,Baltimore,University Park Press,1981に検討されている。正確な反応基準は、任意の適切な方法において選択することができ、ニューロン群および/または患者群を比較する場合、比較される群は、反応率を決定するための同一または比較可能な基準に基づいて評価される。当分野の通常の技能を有する者であれば、適切な基準を選択することができるであろう。
【0091】
疾患、障害、および/または状態の「リスク」は、文脈から理解されるように、特定の個体が疾患、障害、および/または状態(例えば放射線傷害)を発現させるであろう可能性を含む。一部の実施形態において、リスクはパーセンテージとして表される。一部の実施形態において、リスクは、0%から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90および最大で100%である。一部の実施形態において、リスクは、参照サンプルまたは参照サンプル群と関連したリスクと比較したリスクとして表される。一部の実施形態において、参照サンプルまたは参照サンプル群は、疾患、障害、状態および/または事象(例えば、放射線傷害)の公知のリスクを有する。一部の実施形態において、参照サンプルまたは参照サンプル群は、特定の個体と比較可能な個体由来である。一部の実施形態において、相対リスクは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上である。
【0092】
「実質的に」は、対象の特徴または特性の完全な、もしくはほぼ完全な範囲または程度を示す定性的条件を含む。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象はあったとしても、完了まで進む、および/または完全な状態まで進行する、または絶対的な結果を達成または避けることは稀であることを理解するであろう。従って「実質的に」という用語は、本明細書において多くの生物学的現象および化学的現象に固有の完全性の欠如の可能性をとらえるために使用される。
【0093】
「実質的な相同性」は、アミノ酸配列または核酸配列の間の比較を含む。当業者であれば理解するように、二つの配列はそれらが対応する位置に相同な残基を含む場合、「実質的に相同」であると一般的にみなされる。相同残基は同一の残基である場合がある。あるいは、相同残基は、適度に類似した構造および/または機能的特徴を持つ非同一残基であってもよい。例えば、当業者には周知のように、特定のアミノ酸は「疎水性」または「親水性」のアミノ酸、および/または「極性」または「非極性」の側鎖を持つものとして一般的に分類される。あるアミノ酸を、同タイプの別のアミノ酸で置換することはしばしば、「相同」置換とみなされ得る一般的なアミノ酸分類を下記に要約する。
【表2】
【表3】
【0094】
当技術分野で周知のように、アミノ酸または核酸配列は、ヌクレオチド配列に対するBLASTNおよびBLASTP、gapped BLAST、およびアミノ酸配列に対するPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む、様々なアルゴリズムの任意のものを使用して比較することができる。かかるプログラムの例は、Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.,215(3):403-410;Altschul,S.F.et al.,1997,Methods in Enzymology; Altschul, S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402;Baxevanis,A.D.,and B.F.F.Ouellette(eds.)Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;およびMisener et al.(eds.)Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1998に記載されている。相同配列を特定することに加えて、上述のプログラムは相同性の程度の指標を一般的に提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、残基の関連する区間に渡って、その対応残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が相同の場合、実質的に相同であるとみなされる。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列である。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17またはそれ以上の残基である。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列に沿った隣接残基を含む。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列に沿って不連続な残基を含み、例えばポリペプチドまたはその一部のフォールディングされた構造により引き合わされた非隣接残基を含む。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上の残基である。
【0095】
「実質的な同一性」は、アミノ酸または核酸の配列間の比較を含む。当業者であれば理解するように、二つの配列はそれらが対応する位置に同一な残基を含む場合、「実質的に同一」であると一般的にみなされる。当技術分野で周知のように、アミノ酸または核酸配列は、ヌクレオチド配列に対するBLASTNおよびBLASTP、gapped BLAST、およびアミノ酸配列に対するPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む、様々なアルゴリズムの任意のものを使用して比較することができる。かかるプログラムの例は、Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.,215(3):403-410;Altschul,S.F.et al.,1997,Methods in Enzymology;Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402;Baxevanis,A.D.,and B.F.F.Ouellette(eds.)Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;およびMisener et al.(eds.)Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1998に記載されている。同一配列の特定に加え、上述のプログラムは多くの場合、同一性の程度の指標も提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、残基の関連する区間に渡って、その対応残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が同一の場合、実質的に同一であるとみなされる。一部の実施形態では、関連する区間は完全配列である。一部の実施形態では、関連する区間は少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上の残基である。
【0096】
「標的化ベクター」、「標的化構築物」または「核酸構築物」は、標的化領域を含有するポリヌクレオチド分子を含む。標的化領域は、標的細胞、組織または動物の配列と同一または実質的に同一の配列を含み、相同組み換えにより、標的化構築物を、細胞、組織または動物のゲノム内の位置に統合する。部位特異的リコンビナーゼ認識部位(例えば、loxP部位またはFrt部位)を使用して標的にする標的化領域も含まれる。一部の実施形態では、本明細書に記載される標的化構築物は、特定の対象の核酸配列または遺伝子(たとえばレポーター遺伝子、または同種遺伝子もしくは異種遺伝子)、選択マーカー、対照配列および/または制御配列、ならびにリコンビナーゼもしくは組み換え誘導性タンパク質をコードする他の核酸配列をさらに含有する。一部の実施形態では、標的化構築物は、対象の遺伝子の全部または一部をさらに備えていてもよく、この場合において対象の遺伝子は、内因性配列によってコードされるタンパク質と類似の機能を有するポリペプチドの全部または一部をコードする。一部の実施形態では、標的化構築物は、対象のヒト化遺伝子の全部または一部をさらに含有し、対象の当該ヒト化遺伝子は、内因性配列によってコードされるポリペプチドと類似の機能を持つポリペプチドの全部または一部をコードする。一部の実施形態では、標的化構築物は、レポーター遺伝子の全部または一部を備えていてもよく、この場合においてそのレポーター遺伝子は、当分野に公知の技術を使用して容易に特定される、および/または測定されるポリペプチドをコードする。
【0097】
「トランスジェニック動物」、「トランスジェニック非ヒト動物」、または「Tg」は、任意の非天然非ヒト動物を含み、非ヒト動物の細胞の一つ以上が、対象のポリペプチドの全部または一部をコードする、異種核酸および/または異種遺伝子を含有している。一部の実施形態では、異種核酸および/または遺伝子は、例えばマイクロインジェクションを用いるか、または組み換えウイルスによる感染を用いるなどの計画的な遺伝子操作を介した前駆細胞への導入によって、直接的または間接的に細胞内に導入される。遺伝子操作という用語は、伝統的な交配技術を含めずに、むしろ組み換えDNA分子の導入を対象にするものである。この分子は、染色体内に組み込まれてもよく、または染色体外で複製するDNAであってもよい。用語「Tg」には、異種核酸および/もしくは遺伝子に対してヘテロ接合性もしくはホモ接合性である動物、ならびに/または異種核酸および/または遺伝子の単一コピーもしくは多コピーを有する動物が含まれる。
【0098】
「治療」、「治療する」または「治療すること」は、特定の疾患、障害、および/もしくは状態の一つ以上の症状、特徴、および/または原因を部分的または完全に軽減、改善、緩和、阻害、発症を遅延、重篤度を低下、および/または発生率を低下させる物質(例えば、治療剤候補物質)の任意の投与を含む。一部の実施形態では、このような治療は、関連する疾患、障害および/または状態の兆候を示さない被験者、および/または疾患、障害、および/または状態の早期兆候のみを示す被験者に対して行われる場合がある。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害および/または状態の一つ以上の確立された兆候を示す被験者に対して行われる場合がある。一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、および/または状態を患うとして診断された被験者に対するものである場合がある。一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、および/または状態の発症リスクの増加と統計的に相関する一つ以上の感受性因子を持つことが知られている被験者に対するものである場合がある。
【0099】
「バリアント」は、参照実体と相当の構造的同一性を示すが、参照実体と比較したときに一つ以上の化学的部分の存在またはレベルにおいて参照実体とは構造的に異なる実体を含む。多くの実施形態では、「バリアント」は、その参照実体とは機能的にも異なる。概して、特定の実体が、参照実体の「バリアント」であると正しくみなされるかどうかは、参照実体とのその構造同一性の程度に基づいている。当業者であれば理解するように、すべての生物学的または化学的参照実体は特定の特徴的構造要素を持つ。「バリアント」は、定義によると、一つ以上のこのような特徴的構造要素を共有する別個の化学的実体である。いくつかの例を挙げると、小分子は特徴的なコア構造要素(例えば、マクロサイクルコア)および/または一つ以上の特徴的懸垂部分を持つ場合があり、従って小分子のバリアントは、コア構造要素および特徴的懸垂部分を共有するが、その他の懸垂部分および/またはコア内に存在する結合のタイプ(単に対する二重、Eに対するZなど)が異なるものであり、ポリペプチドは、直線または三次元空間でお互いに対して指定された位置を持つおよび/または特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸から成る特徴的配列要素を持つ場合があり、核酸は、直線または三次元空間でお互いに対して指定された位置を持つ複数のヌクレオチド残基から成る特徴的配列要素を持つ場合がある。例えば、「バリアントポリペプチド」は、アミノ酸配列の一つ以上の差異および/またはポリペプチド骨格に共有結合した化学的部分(例えば、炭化水素、脂質など)の一つ以上の差異の結果として、参照ポリペプチドとは異なる場合がある。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は、参照ポリペプチドと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または99%の全体的配列同一性を示す。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は、少なくとも一つの特徴的配列要素を参照ポリペプチドと共有しない。一部の実施形態では、参照ポリペプチドは一つ以上の生物活性を持つ。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドの生物活性の一つ以上を共有する。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドの生物活性の一つ以上を欠く。一部の実施形態では、「バリアントポリペプチド」は参照ポリペプチドと比べて一つ以上の生物活性のレベル減少を示す。多くの実施形態で、特定位置での少数の配列変更がなければ対象のポリペプチドが親のものと同一のアミノ酸配列を持つ場合、対象のポリペプチドは親または参照ポリペプチドの「バリアント」であるとみなされる。一般的に、親と比べて、バリアントの残基の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、または2%未満が置換される。一部の実施形態では、「バリアント」は、親と比べて、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個の置換残基を有する。しばしば、「バリアント」は、非常に少数の(例えば、5、4、3、2、または1未満)の置換された機能残基(すなわち、特定の生物活性に参加する残基)を持つ。さらに、「バリアント」は一般的には5、4、3、2、または1以下の付加または欠失を持ち、親と比べて付加または欠失を持たないことがよくある。さらに、任意の付加または欠失は一般的には、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6未満であり、通常は約5、約4、約3、または約2残基である。一部の実施形態では、親または参照ポリペプチドは自然界に見られるものである。当業者であれば理解するように、特に対象のポリペプチドが感染因子ペプチドである時、対象の特定ポリペプチドの複数のバリアントは、通常は自然界に見られる場合がある。一部の実施形態において、非ヒト動物は、異種ヘキサヌクレオチド伸長配列の標的とされる挿入に使用される核酸構築物のバリアントを含むであろう。非限定的な例として、そのような核酸構築物は、5’側の第一の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートをn個、3’側の第二の異種ヘキサヌクレオチド隣接配列、そして任意で、好ましくはリコンビナーゼ認識配列に隣接される薬剤抵抗性レポーター遺伝子を含んでもよい。実施例1に示されるように、標的挿入から得られた動物は、内因性座位中に核酸構築物のバリアントを含んでもよく、たとえば当該バリアントは、n個未満の配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを含み、および/または薬剤抵抗性遺伝子を欠く。たとえば、図1Bおよび1Cを参照のこと。したがって本明細書に含まれる配列のバリアントは、本質的に参照親配列と同一であるが、一個以上のリピートおよび/または薬剤抵抗性遺伝子を欠く配列を含む。
【0100】
「ベクター」は、それが関連している別の核酸を輸送することができる核酸分子を含む。一部の実施形態では、ベクターは、染色体外複製および/または、真核および/または原核細胞などの宿主細胞中でそれらが連結している核酸の発現能力がある。動作可能に連結された遺伝子の発現を誘導することができるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。
【0101】
「野生型」は、(変異体、病気の、変更されたなどに対して)「正常」な状態または状況で自然界に存在するような構造および/または活性を有する実体を含む。当業者であれば、野生型遺伝子およびポリペプチドはしばしば複数の異なる形態(例えば、アレル)で存在することを理解するであろう。
[発明を実施するための形態]
【0102】
内因性C9ORF72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を有する非ヒト動物が提供される。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は、本明細書に記載されるように改変されたC9ORF72座位に関しヘテロ接合性である。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は、第一の改変C9orf72座位と第二の改変C9orf72座位を含み、当該第一座位と第二座位は異なっている。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は、本明細書に記載されるように改変されたC9ORF72座位に関しホモ接合性である。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の存在に起因してALS様疾患および/またはFTD様疾患を発症する。
【0103】
本発明の様々な態様が以下のセクションに詳細に記載される。セクションの使用は本発明を限定することを意図しない。各セクションは本発明の任意の態様に適用することができる。本明細書において、別段の指定がない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。
C9ORF72
【0104】
筋委縮性側索硬化症(ALS)は、ルー・ゲーリック病とも呼称され、最も発生頻度の高い成人発症型の麻痺疾患であり、上位運動ニューロンおよび/または下位運動ニューロンの消失を特徴とする。ALSは米国全体で20,000人もの多くの人々が罹患し、毎年新たに約5,000人が発症している。前頭側頭型認知症(FTD)は、元々医師のアーノルド・ピックにちなんでピック病と呼称されており、脳の前頭葉または側頭葉における進行性の細胞変性により生じる障害群である。FTDは、すべての認知症例の10~15%を占めると報告されている。ヒトC9ORF72遺伝子の二つの非コードエクソンであるエクソン1aと1bの間の(および任意でエクソン1aと1bにわたる)ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、ALSとFTDの両方と関連づけられている(DeJesus-Hernandez,M.et al.,2011,Neuron 72:245-256;Renton,A.E.et al.,2011,Neuron 72:257-268;Majounie,E. et al.,2012,Lancet Neurol.11:323-330;Waite,A.J.et al.,2014,Neurobiol.Aging 35:1779.e5-1779.e13)。GGGGCC(配列番号1)のヘキサヌクレオチドリピート伸長は、家族性ALS症例の約50%を占め、および多数の非家族性のALS症例の原因であると推測されている。家族性FTD症例の約25%に、そして散発性FTD症例の約8%に存在している。
【0105】
C9ORF72におけるヘキサヌクレオチドリピート伸長配列に関連した多くの病的態様が報告されており、例えばリピート長に依存性のRNA凝集体の形成、特異的RNA結合タンパク質の隔離、そしてジペプチドリピートタンパク質の蓄積と凝集などがある(例えば、Stepto,A.et al.,2014,Acta Neuropathol.127:377-389に概要があり、Almeida,S.et al.,2013,Acta Neuropathol.126:385-399;Bieniek,K.F.et al.,2014,JAMA Neurol.71(6):775-781;van Blitterswijk,M.et al.,2014,Mol.Neurodegen.9:38,10ページなども参照のこと)。ヘキサヌクレオチド配列(GGGGCC、配列番号1)のリピートを66個含有する異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有するよう作製されたノックインマウスは、自身のニューロン中にRNA凝集体と、ジペプチドタンパク質の凝集を示す。これらのマウスは皮質ニューロンの消失を示し、6か月齢で行動および運動の欠損を呈した(Chew,J.et al.,2015,Science May 14.Pii:aaa9344)。しかしながらそのようなリピート伸長が疾患をもたらす機序は、毒性機能の獲得または消失を介するにしろ、未だ未解明である。さらにヘキサヌクレオチドリピート伸長配列中のより少数のリピートがALS/FTDに与える寄与も不明である。
【0106】
C9ORF72はエンドソーム輸送を制御することが報告されているが(Farg,M.A.et al.,2014,Human Mol.Gen.23(13):3579-3595)、C9ORF72の細胞機能の多くが未だ不明である。実際に、C9ORF72は、機能不明な、特徴未解析のタンパク質をコードする遺伝子である。C9ORF72周辺が把握されていないにもかかわらず、ALSおよび/またはFTDに対する遺伝子操作細胞株を含む数種の動物モデルが開発されている(Roberson,E.D.,2012,Ann.Neurol.72(6):837-849;Panda,S.K.et al.,2013,Genetics 195:703-715;Suzuki,N. et al.,2013,Nature Neurosci.16(12):1725-1728;Xu,Z.et al.,2013,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.110(19):7778-7783;Hukema,R.K.et al.,2014,Acta Neuropathol.Comm.2:166,4 pages)。蛍光レポーターに操作可能に連結され、テトラサイクリン応答性因子により制御された80個のGGGGCCリピートを含有するが、C9orf72周辺配列は何も伴わない異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含むトランスジェニックマウス系統を使用した別の報告において、ALS-FTD患者において観察されたものと類似した神経細胞質内封入体が示された。このことから、ヘキサヌクレオチドGGGGCC配列の伸長リピートは、それ自身が疾患の原因である可能性が示唆される(Hukema,R.K.et al.,2014,Acta Neuropathol.Comm.2:166,4ページ)。これらのマウスはCNSの細胞における初期のC9orf72発現プロファイルを確立し、リピート伸長と関連した作用機序の何らかの理解の提供に有用であった。しかし構成設計は得られたトランスジェニック動物の表現型に影響を与え得る(例えば、Muller,U.,1999,Mech.Develop.81:3-21を参照のこと)。例えば誘導型GGGGCCリピートを含むトランスジェニックマウス系統(Hukema,2014、上記)は、ヒト隣接配列を伴わずに設計された。これは恐らくそのような周辺配列がリピート配列の翻訳に影響を与えると考えられたためである。したがって、C9ORF72介在性バイオロジーを活用する、このようなin vivoシステムは治療応用に対して不完全である。
C9ORF72およびヘキサヌクレオチドリピート伸長配列
【0107】
マウスC9ORF72転写物のバリアントが当分野に報告されており(例えば、Koppers et al.,Ann Neurol(2015);78:426-438;Atkinson et al.,Acta Neuropathologica Communications(2015)3:59)、さらに図1Aにも図示する。三つの報告されているマウスC9ORF72転写物バリアントに関するゲノム情報は、Ensemblウェブサイトにて、ENSMUST00000108127(V1)、ENSMUST00000108126(V2)、およびENSMUST00000084724(V3)という番号でも入手可能である。非ヒト(例えば齧歯類)のC9ORF72のmRNA配列とアミノ酸配列の例を表2に明記する。mRNA配列に関しては、カッコ内の太字はコード配列を示し、その太字で示されるなかで、連続したエクソンは、大文字と小文字を交互にすることで分けられている。アミノ酸配列に関しては、成熟ポリペプチド配列は、その示されるアミノ酸配列中で太字部分である。
【0108】
ヒトC9ORF72転写バリアントは当分野に公知である。あるヒトC9ORF72転写物バリアントは中心領域および3’コード領域で複数のエクソンを欠損し、そしてその3’末端のエクソンは、バリアント3(以下を参照)で使用されるスプライス部位を越えて伸長しており、このためバリアント3と比較して新たな3’非翻訳領域(UTR)が生じている。このバリアントは非常に短いポリペプチドをコードし、そのC末端アミノ酸は、その他の二つのバリアントにコードされるC末端アミノ酸とは明確に異なっている。このバリアントのmRNA配列とアミノ酸配列はそれぞれ、GenBankアクセッション番号NM_145005.6およびNP_659442.2に見出すことができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。NM_145005.6およびNP_659442.2の配列はそれぞれ配列番号10と配列番号11として明記される。第二のヒトC9ORF72の転写物バリアント(2)は、バリアント3と比較して5’非翻訳領域(UTR)が異なっている。このバリアントのmRNA配列とアミノ酸配列はそれぞれ、GenBankアクセッション番号NM_018325.4およびNP_060795.1に見出すことができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。NM_018325.4およびNP_060795.1の配列はそれぞれ配列番号12と配列番号13として明記される。第三のヒトC9ORF72の転写物バリアント(3)は、三つの報告されているバリアントの中で最も長い配列を含み、より長いアイソフォームをコードしている。このバリアントのmRNA配列とアミノ酸配列はそれぞれ、GenBankアクセッション番号NM_001256054.2およびNP_001242983.1に見出すことができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。NM_001256054.2およびNP_001242983.1の配列はそれぞれ配列番号14と配列番号15として明記される。バリアント2とバリアント3は、同じタンパク質をコードする。
【0109】
ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は概して、少なくとも1事例、たとえば配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列GGGGCCのリピートを一つ含有するヌクレオチド配列である。内因性非ヒトC9orf72座位への挿入の目的に対し、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列を少なくとも1事例(リピート)、より好ましくは2事例(リピート)以上含有し、ヒト第9染色体のオープンリーディングフレーム72’(C9orf72)の非コードエクソン1aと1bまたはその一部にわたる(および任意で含む)ゲノム核酸配列と同一であり得るか、または実質的に同一であり得る。異種ヘキサヌクレオチド伸長配列の非限定的な例としては、配列番号1、配列番号2(GGGGCCヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個含む)、および配列番号3(GGGGCCヘキサヌクレオチド配列のリピートを100個含む)が挙げられる。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
C9ORF72標的化ベクター、およびC9ORF72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が挿入された非ヒト動物の作製
【0110】
本明細書に記載されるように内因性C9ORF72座位内に異種ヘキサヌクレオチド伸長配列が挿入された非ヒト動物作製のための標的化ベクターまたは標的化構築物を本明細書において提供する。
A.大型標的化ベクター
【0111】
一細胞期胚以外の細胞において、「大型標的化ベクター」または「LTVEC」である標的化ベクターを使用してもよく、この大型標的化ベクターには、細胞中で相同組換えを行うことを目的とした他の方法で一般的に使用される核酸配列よりも大きい核酸配列に相当する、または当該核酸配列に由来する相同アームを含有する標的化ベクターを含む。LTVECは、細胞中で相同組換えを行うことを目的とした他の方法で一般的に使用される核酸配列よりも大きい核酸配列を有する核酸挿入を含有する標的化ベクターを含む。例えばLTVECは、従来のプラスミド系標的化ベクターではサイズ制限の問題で適合させることができない大きな座位の改変を可能にする。例えば標的とされる座位、すなわち5’および3’の相同アームは、従来的な方法では標的とすることができない細胞の座位、または不正確になら標的とされることができるか、もしくはヌクレアーゼ物質(例えばCasタンパク質)により誘導されるニックまたは二本鎖切断が無い状況下で著しく低い効率でのみ、標的とされることができる細胞の座位に対応することができる。
【0112】
標的化ベクターは、相同アームを含む。標的化ベクターが核酸挿入も含む場合、相同アームは当該核酸挿入に隣接してもよい。言及を容易にするために、本明細書において相同アームを5’および3’(すなわち上流および下流)相同アームと呼称する。この専門用語は、外因性修復鋳型内の核酸挿入に対する相同アームの相対位置に関連する。この5’および3’相同アームは、対象のゲノム領域内の領域に対応し、これを本明細書においてそれぞれ「5’標的配列」および「3’標的配列」と呼称する。
【0113】
相同アームと標的配列は、その二つの領域が充分なレベルの配列相同性を互いに共有し、相同組換え反応の基質として作用する場合に、互いに「対応する」または「対応している」。「相同」という用語は、対応する配列と同一であるか、または配列同一性を共有するDNA配列を含む。所与の標的配列と、外因性修復鋳型中に存在する対応する相同アームの間の配列同一性は、相同組換えが発生し得る任意の程度の配列同一性であってもよい。例えば外因性修復鋳型の相同アーム(またはその断片)と標的配列(またはその断片)により共有される配列同一性の量は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性であってもよく、それにより当該配列は相同組換えを受ける。相同アームと対応する標的配列の間の対応する相同領域は、相同組換えを促進するために充分である任意の長さの領域であってもよい。相同アームは、対称であってもよく(各々およそ同じ長さ)、または非対称であってもよい(一方が他方より長い)。
【0114】
相同アームは、細胞に由来する座位に対応してもよい(例えば標的とされた座位)。あるいは、例えば相同アームは、細胞ゲノム内に統合された、異種または外因性のDNAセグメントの領域に対応してもよく、例えば導入遺伝子、発現カセット、または異種もしくは外因性のDNA領域が挙げられる。あるいは、標的化ベクターの相同アームは、酵母人工染色体(YAC)の領域、細菌人工染色体(BAC)の領域、ヒト人工染色体の領域、または適切な宿主細胞中に含有される任意の他の遺伝子操作された領域に相当してもよい。さらに標的化ベクターの相同アームは、BACライブラリー、コスミドライブラリー、もしくはP1ファージライブラリーの領域に対応するか、またはそれらから誘導されてもよく、または合成DNAから誘導されてもよい。
【0115】
LTVECの例としては、細菌人工染色体(BAC)、ヒト人工染色体、または酵母人工染色体(YAC)から誘導されたベクターが挙げられる。LTVEC、およびその作製方法の非限定的な例は、例えば米国特許第6,586,251号、第6,596,541号、および第7,105,348号、ならびにWO2002/036789に記載されており、それら各々が参照によりその全体ですべての目的に対して本明細書に組み込まれる。LTVECは、直線型であってもよく、または環状型であってもよい。
【0116】
LTVECは、任意の長さであってもよく、典型的には少なくとも10kbの長さである。例えばLTVECは、約50kb~約500kb、約50kb~約75kb、約75kb~約100kb、約100kb~約125kb、約125kb~約150kb、約150kb~約175kb、約175kb~約200kb、約200kb~約225kb、約225kb~約250kb、約250kb~約275kb、約275kb~約300kb、約300kb~約325kb、約325kb~約350kb、約350kb~約375kb、約375kb~約400kb、約400kb~約425kb、約425kb~約450kb、約450kb~約475kbまたは約475kb~約500kbであってもよい。あるいはLTVECは、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、または少なくとも500kb以上であってもよい。この大きさのLTVECは大きすぎて従来的なアッセイ法、例えばサザンブロッティングやロングレンジ(例えば1kb~5kb)PCRなどでは標的化事象のスクリーニングを行うことができない。
【0117】
LTVEC中の5’相同アームと3’相同アームの総計は、多くの場合少なくとも10kbである。例として、5’相同アームは、約5kb~約150kbの範囲であってもよく、および/または3’相同アームは、約5kb~約150kbの範囲であってもよい。各相同アームは例えば、約5kb~約10kb、約10kb~約20kb、約20kb~約30kb、約30kb~約40kb、約40kb~約50kb、約50kb~約60kb、約60kb~約70kb、約70kb~約80kb、約80kb~約90kb、約90kb~約100kb、約100kb~約110kb、約110kb~約120kb、約120kb~約130kb、約130kb~約140kb、約140kb~約150kb、約150kb~約160kb、約160kb~約170kb、約170kb~約180kb、約180kb~約190kb、または約190kb~約200kbであってもよい。5’相同アームと3’相同アームの総計は例えば、約10kb~約20kb、約20kb~約30kb、約30kb~約40kb、約40kb~約50kb、約50kb~約60kb、約60kb~約70kb、約70kb~約80kb、約80kb~約90kb、約90kb~約100kb、約100kb~約110kb、約110kb~約120kb、約120kb~約130kb、約130kb~約140kb、約140kb~約150kb、約150kb~約160kb、約160kb~約170kb、約170kb~約180kb、約180kb~約190kb、約190kb~約200kb、約200kb~約250kb、約250kb~約300kb、約300kb~約350kb、または約350kb~約400kbであってもよい。あるいは各相同アームは、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも110kb、少なくとも120kb、少なくとも130kb、少なくとも140kb、少なくとも150kb、少なくとも160kb、少なくとも170kb、少なくとも180kb、少なくとも190kb、または少なくとも200kbであってもよい。同様に、5’相同アームと3’相同アームの総計は、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも50kb、少なくとも60kb、少なくとも70kb、少なくとも80kb、少なくとも90kb、少なくとも100kb、少なくとも110kb、少なくとも120kb、少なくとも130kb、少なくとも140kb、少なくとも150kb、少なくとも160kb、少なくとも170kb、少なくとも180kb、少なくとも190kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、または少なくとも400kbであってもよい。
【0118】
LTVECは、細胞中で相同組換えを行うことを目的とした他の方法で一般的に使用される核酸配列よりも大きい核酸配列を有する核酸挿入を含有する。例えばLTVECは、約1kb~約5kb、約5kb~約10kb、約10kb~約20kb、約20kb~約40kb、約40kb~約60kb、約60kb~約80kb、約80kb~約100kb、約100kb~約150kb、約150kb~約200kb、約200kb~約250kb、約250kb~約300kb、約300kb~約350kb、約350kb~約400kb、約400kb~約450kb、約450kb~約500kb、またはそれ以上の範囲の核酸挿入を含有してもよい。あるいは核酸挿入は、少なくとも1kb、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも20kb、少なくとも30kb、少なくとも40kb、少なくとも60kb、少なくとも80kb、少なくとも100kb、少なくとも150kb、少なくとも200kb、少なくとも250kb、少なくとも300kb、少なくとも350kb、少なくとも400kb、少なくとも450kb、または少なくとも500kbであってもよい。
B.大型標的化ベクターの構築
【0119】
本明細書に記載される標的化ベクターを構築するために使用される技術の多くが標準的な分子生物学的技術であり、当業者に公知である(例えば、Sambrook,J.,E.F.Fritsch and T.Maniatis.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Vols.1,2, and 3,1989;Current Protocols in,Molecular Biology,Eds.Ausubel et al.,Greene Publ.Assoc.,Wiley Interscience,NYを参照のこと)。大型標的化ベクターを構築するための当分野に公知の任意の技術を使用することができる。
【0120】
一つの例において、大型標的化ベクター(LTVEC)を構築するための方法は、以下を含む:(a)対象の遺伝子または染色体座位を含有する大型ゲノムDNAクローンを取得すること、および(b)改変カセットに相同ボックス1および2を付加し、LTVECを作製すること。かかる方法は任意で、各LTVECが正しく操作されていることを確認することをさらに含んでもよい。かかる方法は任意で、真核細胞への導入のためにLTVEC DNAを精製、調製、および直線化することをさらに含んでもよい。かかる方法はUS2004/0018626、US2013/0309670、およびWO2013/163394にさらに記載され、それら各々はその全体で参照によりすべての目的に対し本明細書に組み込まれる。
【0121】
対象の遺伝子または座位は、たとえば詳細な構造または機能データなどの具体的な基準に基づいて選択されることができ、または様々なゲノムシークエンスプロジェクトの成果により、可能性のある遺伝子または遺伝子断片を予測できるようになったため、そのような詳細情報が無くとも選択されることができる。LTVECを作製するために、対象の遺伝子もしくは座位の完全な配列または遺伝子構造を知る事は必須ではない。対象のゲノムクローンを取得するために、ならびにLTVECの作製に使用される相同ボックスを作製するために、および定量的アレル改変(MOA)アッセイで使用するためのプローブを作製するために唯一必要とされる配列情報はおよそ80~100ヌクレオチドである。
【0122】
対象の遺伝子または座位が選択された時点で、この遺伝子または座位を含有する大型ゲノムクローンを取得することができる。このクローンは、いくつかの方法のうちの任意の一つで取得されることができ、そのような方法としては、限定されないが、標準的なハイブリダイゼーションまたはPCR技術または当業者に周知の任意の他の方法による適切なDNAライブラリー(例えばBAC、PAC、YAC、またはコスミド)のスクリーニングが挙げられる。
【0123】
相同ボックスは、大型クローン化ゲノム断片からLTVECを作製するために使用される細菌相同組換えの部位に印付ける。相同ボックスは短いDNAセグメントであり、多くは二本鎖で、少なくとも40ヌクレオチドの長さであり、改変される領域に隣接する大型クローン化ゲノム断片内の領域に対して相同である。改変カセットに相同ボックスが付加されることで、細菌で相同組換えが行われた後、その改変カセットは、改変される領域を置き換える。細菌相同組換えを使用した標的化ベクターの作製技術は、様々なシステム(例えば、Yang et al.(1997)Nat.Biotechnol.15:859-865,Muyrers et al.(1999)Nucleic Acids Res.27:1555-1557;Angrand et al.(1999)Nucleic Acids Res.27:e16;Narayanan et al.(1999)Gene Ther.6:442-447;Yu,et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:5978-5983を参照のこと。これら各々がその全体で参照によりすべての目的に対し本明細書に組み込まれる)で実施することができる。そのような技術の一例は、ETクローニング(例えば、Zhang et al.(1998)Nat.Genet.20:123-128; Narayanan et al. (1999) Gene Ther.6:442-447を参照のこと。それら各々が参照によりその全体ですべての目的に対し本明細書に組み込まれる)、およびこの技術の変法(例えば、Yu et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:5978-5983を参照のこと。その全体ですべての目的に対し本明細書に組み込まれる)である。ETとは、recEおよびrecTタンパク質を指し、それらが相同組換え反応を実行する。RecEはエクソヌクレアーゼであり、直線状の二本鎖DNAを5’から3’方向にトリミングして、3’一本鎖オーバーハングを有する直線状二本鎖断片が残される。この一本鎖オーバーハングが、一本鎖DNA(ssDNA)結合活性を有するrecTタンパク質により覆われる。ETクローニングは、recEおよびrecTの大腸菌遺伝子産物ならびにバクテリオファージラムダ(λ)タンパク質のλgamを一過性に発現する大腸菌を使用して行われる。λgamタンパク質は、ドナーDNA断片がrecBCエクソヌクレアーゼ系により分解されることを防ぎ、例えば頻繁に使用される大腸菌株DH10bなどのrecBC宿主における効率的なETクローニングに好ましい。
【0124】
LTVECも、DNAアセンブリ法により作製することができ、たとえばGibson DNAアセンブリ法またはGibson DNAアセンブリの改変法をはじめとするin vitroDNAアセンブリ法などがある。例えば、US2015/0376628、US2016/0115486、WO2015/200334、およびUS2010/0035768を参照のこと。それら各々が参照によりその全体ですべての目的に対し本明細書に組み込まれる
【0125】
核酸アセンブリの伝統的な方法は、制限酵素を用いた従来的な酵素消化、核酸クローニング、そして核酸のライゲーションといった時間のかかる工程を採用している。大きな断片またはベクターをアセンブリするには、これらの方法ではより困難である。しかしながらヌクレアーゼの柔軟な標的特異性(例えばガイドRNAとCas9ヌクレアーゼ)は、迅速アセンブリ反応での使用に適した形態への核酸の転換に利用することができる。例えば、US2015/0376628、US2016/0115486、およびWO2015/200334を参照のこと。それら各々が参照によりその全体ですべての目的に対し本明細書に組み込まれる
【0126】
重複配列を有する対象の任意のDNA分子、例えば天然型DNA、クローン化DNA分子、合成DNAなどのDNAを当該方法によりアセンブリすることができる。二つの核酸のアセンブリは、二つの核酸の鎖を結合させる任意の方法を含む。例えばアセンブリは、消化された核酸を結合させ、各核酸からの鎖を他方の鎖にアニーリングおよび伸長させる。その工程において、各鎖は他方の鎖の伸長の鋳型としての役割を果たす。
【0127】
任意のin vitroまたはin vivoDNAアセンブリ法または迅速コンビナトリアル法を使用して、核酸をアセンブリすることができる。例えば重複末端を有する第一および第二の核酸をリガーゼ、エクソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、およびヌクレオチドを用いて結合させ、一定温度、例えば50℃でインキュベートしてもよい。具体的には、T5エクソヌクレアーゼを使用して、dsDNAの5’末端からヌクレオチドを除去して、相補的なオーバーハングを生成してもよい。その後、相補的な一本鎖DNAオーバーハングをアニーリングし、ギャップ充填にDNAポリメラーゼを使用し、そしてTaqDNAリガーゼを使用して得られたニックを50℃で封してもよい。ゆえに、重複末端配列を共有する二つの核酸は、共有結合的に封された分子へと一工程の定温反応で結合されることができる。例えば、Gibson et al.(2009)Nature Methods 6(5):343-345を参照のこと。当該文献は参照によりその全体ですべての目的に対して本明細書に組み込まれる。
【0128】
部位特異的ヌクレアーゼ物質(例えばガイドRNA特異的Casタンパク質)は、そのエンドヌクレアーゼ活性により生成された末端配列を選択および操作することにより、迅速で効率的な核酸の結合を可能とする。例えばDNAアセンブリ法は、第一のポリヌクレオチドと、所望される標的部位に特異的なヌクレアーゼ物質(例えばgRNA-Cas複合体)およびエクソヌクレアーゼを組み合わせてもよい。標的部位は、ヌクレアーゼが核酸を切断したときに、その切断により生成され、得られた末端が、第一の核酸とアセンブリされる第二の核酸の末端に対し相補的な領域(例えば重複末端)を有するように選択されてもよい。これらの相補的末端をその後にアセンブリし、単一のアセンブリされた核酸を生成してもよい。ヌクレアーゼ物質(例えばgRNA-Cas複合体)は、個々の標的部位に特異的であるため、この方法により正確に部位特異的な様式での核酸改変が可能となる。切断時に第二の核酸の末端配列に対して相補的な末端配列が生成されるよう、標的部位に特異的なヌクレアーゼ物質(例えばgRNA-Cas複合体)を選択することにより、定温アセンブリを使用して、得られた消化済み核酸をアセンブリすることができる。従って、重複末端配列を生じさせる核酸およびヌクレアーゼ物質(例えばgRNA-Cas複合体)を選択することにより、迅速コンビナトリアル法により核酸がアセンブリされ、迅速および効率的にアセンブリされた最終核酸が生成され得る。あるいは相補的な末端を有していない核酸を、各核酸に対し相補的な末端を有するよう設計された結合用オリゴとともにアセンブリすることもできる。結合用オリゴを使用することで、二個以上の核酸が継ぎ目なくアセンブリされ、それによって、得られたアセンブリ済み核酸中の不必要な配列を減らすことができる。
【0129】
その後にLTVECが正しく操作されたかどうかの確認が行われてもよい。例えば診断的PCRを使用して、対象の遺伝子または染色体内にドナー断片が導入されたことにより作製された新規連結部を確認することができる。あるいは、またはさらに、診断的制限酵素消化を行って、細菌相同組換えプロセスの間に所望される改変のみがLTVEC内に導入されたことを確認することもできる。あるいは、またはさらに、LTVEC、特に改変部位におよぶ領域を直接配列解析して、対象の遺伝子または染色体内へのドナー断片の導入により作製された新規連結部を確認してもよい。
【0130】
真核細胞内へ導入するためのLTVEC DNAの何らかの精製と、さらなる調製の後に、長い相同アームに隣接した改変内因性遺伝子または染色体座位DNAを残すような方法でLTVECを直線化することが好ましい。これは、稀にしか消化を行わない任意の適切な制限酵素を用いて、好ましくはベクターの骨格中でLTVECを直線化することにより、行うことができる。適切な制限酵素の例としては、NotI、Pad、SfiI、SrfI、Swal、FseIなどが挙げられる。制限酵素の選択は実験的に決定されてもよく(すなわち、いくつかの異なるレア候補切断物質を検証することによる)、またはLTVECの配列が公知であったときには、配列を解析し、その解析に基づいて適切な制限酵素を選択することにより決定されてもよい。
C.C9orf72-HRE核酸構築物
【0131】
DNA配列を使用して、ノックイン動物用のLTVECを調製してもよい(例えば、C9ORF72-HRE)。典型的には、ヘキサヌクレオチド伸長配列および/または選択マーカーを含むポリヌクレオチド分子(たとえば挿入核酸)は、ベクター、好ましくはDNAベクターに挿入され、適切な宿主細胞中でそのポリヌクレオチド分子が複製される。
【0132】
ポリヌクレオチド分子(または挿入核酸)は、標的の座位内に統合されることが望まれるDNAのセグメントを含む。一部の実施形態では、挿入核酸は、対象のポリヌクレオチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、挿入核酸は、一つ以上の発現カセットを含む。一部のある実施形態では、発現カセットは、対象のポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドは選択マーカー、および/またはレポーター遺伝子を、一部のある実施形態では発現に影響を与える様々な制御構成要素とともにコードする。事実上、すべての対象のポリヌクレオチドが挿入核酸内に含有されることができ、それにより、標的のゲノムの座位で統合されることができる。本明細書において開示される方法は、標的とされるC9ORF72ゲノム座位内に統合される対象ポリヌクレオチドを、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個またはそれ以上提供する。
【0133】
一部の実施形態では、挿入核酸中に含有される対象ポリヌクレオチドは、レポーターをコードする。一部の実施形態では、対象のポリヌクレオチドは、選択マーカーをコードする。
【0134】
一部の実施形態では、対象ポリヌクレオチドは、部位特異的認識部位(たとえば、loxP、Frtなど)に隣接し、またはこれを含む。一部のある実施形態では、部位特異的認識部位は、レポーターをコードするDNAセグメント、および/または選択マーカーをコードするDNAセグメントに隣接する。挿入核酸内に含有されることができる選択マーカーとレポーター遺伝子を含む対象ポリヌクレオチドの例が本明細書に記載される。
【0135】
プラスミド、DNA構築物、および/または標的化ベクターの調製、ならびに宿主生物の形質転換に使用される様々な方法が当技術分野に公知である。原核細胞と真核細胞の両方に適した他の発現システム、ならびに一般的な組み換え法に関しては、以下を参照のこと:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,J.et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989。
【0136】
上述のように、ノックイン動物用標的化ベクターの構築における使用のための非ヒト(例えば齧歯類)C9ORF72の核酸配列とアミノ酸配列の例が、表2に提示される。その他の非ヒトC9ORF72配列も、GenBankデータベース中に見出すことができる。本明細書に開示されるC9ORF72標的化ベクターは、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列と、任意でレポーター遺伝子および/または選択マーカーをコードする配列を一つ以上含み、当該配列はトランスジェニック非ヒト動物のゲノム内に挿入される標的領域の隣接配列と同一、または実質的に相同な配列(「相同アーム」とも呼称される)に隣接される。
【0137】
一例ではあるが、挿入開始点は、第一のエクソン、たとえば第一の非コードエクソンの上流(5’)、その中、または下流(3’)に設定されてもよく、それにより挿入核酸は、内因性制御配列(例えばプロモーター)に操作可能に連結され得る。異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の標的化挿入を行うための標的化戦略を、図1Bおよび図1Cに提示する。薬剤選択カセットは、loxpP(LP)リコンビナーゼ認識部位に隣接され、この部位により、当該薬剤選択カセットのCre介在性除去が可能となる。これは特に、選択カセットの除去を可能とする。したがって表現型解析の前に薬剤カセットを除去し、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列のみを残してもよく、一部の実施形態においては、1コピーのリコンビナーゼ認識部位も残す。
【0138】
本明細書において、図1Bおよび1Cに図示される改変マウスC9orf72アレルに有用な核酸構築物が開示され、この場合において当該核酸構築物は、配列番号8および配列番号9として明記される配列を含む。配列番号8は、5’から3’方向に、5’相同アーム(配列番号20)、ヒトC9orf72遺伝子のエクソン1aの一部とエクソン1bのすべてにおよび、およびそれらを含む962bpのヒト配列(配列番号2)、ヒトユビキチン1および/またはEm7プロモーターの制御下でネオマイシン抵抗性遺伝子を含有する、loxPに挟まれたネオマイシン抵抗性カセット(配列番号21)、ならびに3’相同アーム(配列番号22)を含む。配列番号9は、5’から3’方向に、5’相同アーム(配列番号23)、ヒトC9orf72遺伝子のエクソン1aの一部とエクソン1bのすべてにおよび、およびそれらを含む1261bpのヒト配列(配列番号3)、ヒトユビキチン1および/またはEm7プロモーターの制御下でネオマイシン抵抗性遺伝子を含有する、loxPに挟まれたネオマイシン抵抗性カセット(配列番号24)、ならびに3’相同アーム(配列番号25)を含む。
【0139】
本明細書に記載されるように、内因性C9orf72座位への異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入は、C9orf72座位またはその一部と、挿入核酸の置換、またはその挿入/付加を含んでもよい。一部の実施形態では、挿入核酸は、レポーター遺伝子を備える。一部のある実施形態では、レポーター遺伝子は、内因性C9orf72プロモーターに動作可能に連結されて配置される。かかる改変により、内因性C9orf72プロモーターにより誘導されるレポーター遺伝子の発現が可能となる。あるいは、レポーター遺伝子は、内因性C9orf72プロモーターと動作可能に連結されて配置されない。
【0140】
様々なレポーター遺伝子(または検出可能部分)が、本明細書に記載される標的化ベクターにおいて使用されることができる。レポーター遺伝子の例としては、たとえば、β-ガラクトシダーゼ(lacZ遺伝子によりコードされる)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(eGFP:enhanced Green Fluorescent Protein)、MmGFP、青色蛍光タンパク質(BFP)、強化型青色蛍光タンパク質(eBFP:enhanced blue fluorescent protein)、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-Red、DsRed、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、黄色蛍光タンパク質(YFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(eYFP:enhanced yellow fluorescent protein)、Emerald、CyPet、シアン蛍光タンパク質(CFP)、Cerulean、T-Sapphire、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書に記載される方法は、β-ガラクトシダーゼをコードするlacZレポーター遺伝子を使用した標的化ベクターの構築を示すが、本開示を読んだ当業者であれば、本明細書に記載される非ヒト動物は、レポーター遺伝子が無くても作製されることができ、または当分野に公知の任意のレポーター遺伝子を用いて作製されることを理解するであろう。
【0141】
適切な場合、レポーターポリペプチドの全部または一部をコードする遺伝物質またはポリヌクレオチド配列のコード領域は、非ヒト動物での発現のために最適化されたコドンを含むように改変される場合がある(例えば、米国特許第5,670,356号および第5,874,304号を参照)。コドン最適化配列は合成配列であり、非コドン最適化親ポリヌクレオチドによってコードされる同一ポリペプチド(または全長ポリペプチドと実質的に同じ活性を有する全長ポリペプチドの生物活性断片)をコードすることが好ましい。一部の実施形態では、レポーターポリペプチド(たとえば、lacZ)の全部または一部をコードする遺伝物質のコード領域は、特定の細胞型(例えば、齧歯類細胞)に対して、コドン利用を最適化するように変更された配列を含んでもよい。例えば、非ヒト動物(たとえば齧歯類)のゲノム内に挿入されるレポーター遺伝子のコドンは、その非ヒト動物の細胞中での発現に対し最適化されていてもよい。このような配列はコドン最適化配列として記述される場合がある。
【0142】
本明細書に記載される異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入、内因性C9ORF72座位の破壊を含む非ヒト動物作製のための組成物および方法が提供され、例えばC9ORF72プロモーターなどの内因性マウスプロモーター、およびエクソン1aと1bに存在する、ヒトの制御性の、C9ORF72制御性配列などから異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を発現する非ヒト動物を作製するための組成物および方法を含む。一部の実施形態では、内因性プロモーターおよび内因性制御配列から異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を発現する非ヒト動物を作製するための組成物および方法も提供される。方法は、非ヒト動物のゲノム内に、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列をコードする本明細書に記載される標的化ベクターを挿入することを含み、それによりC9ORF72座位の非コード配列のすべてまたは一部が削除される。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物は、本明細書に記載される標的化ベクターを含む内因性C9ORF72座位を含む。
【0143】
本明細書に記載される標的化ベクターは、ES細胞内に導入され、Frendewey,D.,et al.,2010,Methods Enzymol.476:295-307に記載されるようにC9orf72座位の破壊を担持するESクローニングがスクリーニングされる。様々な宿主胚が、本明細書に開示される方法および組成物において利用されることができる。たとえば、標的の遺伝子改変を有する多能性および/または分化全能性の細胞が、対応する生物から、前-桑実胚段階の胚(たとえば、8細胞期の胚)に導入されてもよい。例えば、米国特許第7,576,259号、第7,659,442号、第7,294,754号、およびUS2008/0078000A1を参照のこと。それらすべて、参照によりその全体ですべての目的に対して本明細書に組み込まれる。他の例では、ドナーES細胞は、2細胞期、4細胞期、8細胞期、16細胞期、32細胞期、または64細胞期の宿主胚に移植されてもよい。この宿主胚はさらに胚盤胞であってもよく、または前-胚盤胞の胚、前-桑実胚の段階の胚、桑実胚段階の胚、非小型化(uncompacted)桑実胚の段階の胚、または小型化(compacted)桑実胚段階の胚であってもよい。
【0144】
一部の実施形態では、VELOCIMOUSE(登録商標)方法(Poueymirou,W.T.et al.,2007,Nat.Biotechnol.25:91-99)を適用して、8細胞期の胚に陽性ES細胞を注入し、完全ES細胞由来F0世代のヘテロ接合性マウスを作製してもよく、このマウスが、lacZ発現プロファイリングを行う、または交配させてホモ接合性とさせることができる。C9orf72座位中に破損を有する非ヒト動物を作製する方法の例を、実施例の1において提供する。
【0145】
ノックアウトおよびノックインを含むトランスジェニック非ヒト動物を生成する方法は、当技術分野に公知である(例えば、Gene Targeting:A Practical Approach,Joyner,ed.,Oxford University Press,Inc.(2000)を参照のこと)。例えば、トランスジェニック齧歯類の作製は、内因性齧歯類遺伝子の遺伝子座位の破壊と、齧歯類ゲノム内へのレポーター遺伝子の導入、一部の実施形態ではその内因性齧歯類遺伝子と同じ位置での導入を任意で含んでもよい。
【0146】
マウスC9orf72のゲノム構造の(正確な縮尺ではない)略図が、図1Aに提供される(上のボックス)。内因性マウスC9orf72座位の非コード配列と異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の置換を行うための標的化戦略の例も図1Aに提供される(下のボックス)。図示されるように、エクソン1とATG開始コドンの間におよぶゲノムDNA、またはその一部が、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列および部位特異的リコンビナーゼ認識部位に隣接された薬剤選択カセットと置換される。この戦略で使用される標的化ベクターは任意で、未分化細胞においてリコンビナーゼが発現されるよう発生的に制御されたプロモーターに操作可能に連結されたリコンビナーゼコード配列を含む。本明細書に記載される標的化ベクター中に含まれ得る発生的制御性プロモーターの例が表3に提供される。本明細書に記載の標的化ベクターに使用されうる追加の適切なプロモーターは、米国特許第8,697,851号、第8,518,392号、及び第8,354,389号に記載のものを含む。これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)。相同組換えが行われると、内因性マウスC9orf72座位のエクソン1(またはエクソン1内)からエクソン2におよぶ例えばおよそ800~1000bpの非コード配列が、標的化ベクターに含有される配列により置換される。薬剤選択カセットは、例えば任意で発生依存性の様式で除去されてもよく、それによって、その生殖系細胞に上述のC9orf72座位中の破損を含むマウスから派生した子孫は、分化した細胞から発生の間に選択マーカーを脱落させる(米国特許第8,697,851号、第8,518,392号、および第8,354,389号を参照。これらすべては参照により本明細書に組み込まれる)。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
D.細胞内へのLTVECの導入
【0147】
LTVEC DNAは、任意の標準的な方法を使用して真核細胞内に導入されることができる。「導入すること」には、配列が細胞内部へのアクセスを獲得するような様式で、細胞に核酸を提示することが含まれる。導入は任意の手段により達成することができる。
【0148】
本明細書に提供される方法は、細胞内に核酸を導入する特定の方法に依存せず、少なくとも一つの細胞の内部へのアクセスを核酸が得ることにのみ依存する。様々な細胞型に核酸を導入する方法が当分野に公知であり、例えば、安定的トランスフェクション法、一過性トランスフェクション法、およびウイルス介在法などが挙げられる。
【0149】
トランスフェクションのプロトコール、ならびに核酸を細胞に導入するためのプロトコールは変化し得る。非限定的なトランスフェクション方法としては、化学系のトランスフェクション法が挙げられ、リポソーム、ナノ粒子、リン酸カルシウム(例えば、Graham et al.(1973)Virology 52(2):456-67,Bacchetti et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74(4):1590-4、およびKriegler,M(1991).Transfer and Expression:A Laboratory Manual.New York:W.H.Freeman and Company.pp.96-97を参照のこと。それら各々がその全体で参照により本明細書に組み込まれる)、デンドリマー、またはたとえばDEAEデキストランもしくはポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーの使用が挙げられる。非化学的な方法としては、エレクトロポレーション法、ソノ-ポレーション法、および光学的トランスフェクション法が挙げられる。粒子系のトランスフェクション法としては、遺伝子銃、または磁性補助トランスフェクション法(例えば、Bertram(2006)Current Pharmaceutical Biotechnology 7,277-285を参照のこと。その全体で参照により本明細書に組み込まれる)の使用が挙げられる。ウイルス法もトランスフェクションに使用することができる。
【0150】
細胞への核酸導入は、エレクトロポレーション法、細胞質内注入法、ウイルス感染、アデノウイルス、アデノ随伴性ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、トランスフェクション法、脂質介在トランスフェクション法、またはヌクレオフェクション法でも介在されることができる。ヌクレオフェクション法は、改善されたエレクトロポレーション法であり、核酸基質を細胞質だけでなく、核膜を通り、核内にも送達されるようにすることができる。さらに、本明細書に開示される方法においてヌクレオフェクション法を使用すると、多くの場合は通常のエレクトロポレーション法よりもずっと少ない細胞で済む(例えば、通常のエレクトロポレーション法では700万個が必要であるのに比べて、たった約200万個が必要)。一つの例において、ヌクレオフェクション法は、LONZA(登録商標)NUCLEOFECTOR(商標)システムを使用して実行される。
【0151】
細胞(例えば1細胞期胚)内への核酸の導入は、マイクロインジェクション法により実施されることもできる。1細胞期胚において、マイクロインジェクション法は、母親および/または父親の前核内または細胞質内へと導入され得る。マイクロインジェクション法が一つの前核にのみ導入される場合、より大きなサイズの父親の前核が好ましい。mRNAのマイクロインジェクションは細胞質内であることが好ましく(例えば、mRNAを翻訳機構へと直接送達するため)、一方でタンパク質またはCasタンパク質をコードするDNAのマイクロインジェクションは核/前核内であることが好ましい。あるいは、マイクロインジェクションは核/前核と細胞質の両方へと注入されることにより実施されてもよい。最初に核/前核内に針が導入され、第一の量が注入されてもよく、そして1細胞期胚から針を取り出しながら、第二の量を細胞質内へと注入してもよい。ヌクレアーゼ物質タンパク質が細胞質内に注入される場合、そのタンパク質は、確実に核/前核へと送達されるように核局在化シグナルを含有することが好ましい。マイクロインジェクションの実施方法は公知である。例えば、Nagy et al.,2003,Manipulating the Mouse Embryo.Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press);Meyer et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.107:15022-15026、およびMeyer et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109:9354-9359を参照のこと。それら各文献は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
細胞内に核酸またはタンパク質を導入するための他の方法としては、例えば、ベクター送達、粒子介在送達、エクソソーム介在送達、脂質ナノ粒子介在送達、細胞浸透ペプチド介在送達、または埋め込み型装置介在送達が挙げられる。
【0153】
細胞内への核酸導入は、1回またはある期間にわたり複数回実施することができる。例えば導入は、ある期間にわたり少なくとも2回、ある期間にわたり少なくとも3回、ある期間にわたり少なくとも4回、ある期間にわたり少なくとも5回、ある期間にわたり少なくとも6回、ある期間にわたり少なくとも7回、ある期間にわたり少なくとも8回、ある期間にわたり少なくとも9回、ある期間にわたり少なくとも10回、ある期間にわたり少なくとも11回、ある期間にわたり少なくとも12回、ある期間にわたり少なくとも13回、ある期間にわたり少なくとも14回、ある期間にわたり少なくとも15回、ある期間にわたり少なくとも16回、ある期間にわたり少なくとも17回、ある期間にわたり少なくとも18回、ある期間にわたり少なくとも19回、またはある期間にわたり少なくとも20回実施されてもよい。
E.標的の遺伝子改変を有する細胞のスクリーニングおよび特定
【0154】
LTVECの導入が成功した細胞は、LTVECへ選択マーカー遺伝子が遺伝子導入されたかどうかに応じて、選択剤に暴露することにより選択されることができる。非限定的な例として、選択マーカーがネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子である場合(例えば、Beck et al.(1982)Gene 19:327-336を参照のこと。その全体で参照によりすべての目的に対し本明細書に組み込まれる)、LTVECを取り込んだ細胞は、G418含有培地中で選択することができる。LTVECを有さない細胞は死ぬ一方で、LTVECを取り込んだ細胞は生き残る(例えば、Santerre,et al.(1984)Gene 30:147-156を参照のこと。その全体ですべての目的に対して参照により本明細書に組み込まれる)。そのような選択マーカーは、例えばG418、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、ネオマイシンまたはピューロマイシンなどの抗生物質に対する抵抗性を与えることができる。このような選択マーカーとしては、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hyg)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(puro)、およびブラストサイジンSデアミナーゼ(bsr)が挙げられる。さらに他の実施形態において、選択マーカーは、誘導型プロモーターに操作可能に連結され、選択マーカーの発現は、細胞に対し毒性がある。そのような選択マーカーの非限定的な例としては、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)または単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)が挙げられる。
【0155】
本明細書に開示される方法は、改変ゲノムを有する細胞を特定することをさらに含んでもよい。様々な方法を使用して、標的の遺伝子改変、たとえば欠失または挿入を有する細胞を特定することができる。かかる方法は、標的の遺伝子改変を標的座位で有する一つの細胞を特定することを含んでもよい。
【0156】
標的の改変をスクリーニングするための従来的なアッセイ、たとえばロングレンジPCR、サンガー配列解析法、またはサザンブロッティング法などは、挿入された標的化ベクターと、標的の座位を関連づける。例えばロングレンジPCRアッセイに関しては、一つのプライマーは挿入されたDNA内の配列を認識することができ、一方で他のプライマーは、標的化ベクターの相同アームの末端を越えた対象配列のゲノム領域を認識する。しかし相同アームのサイズが大きいために、LTVECはそのような従来的なアッセイによりスクリーニングすることができない。LTVECの標的化をスクリーニングするために、アレル消失(LOA:loss-of-allele)アッセイおよびアレル獲得(GOA:gain-of-allele)アッセイを含むアレル改変(MOA:modification-of-allele)アッセイを使用してもよい(例えば、US2014/0178879およびFrendewey et al.(2010)Methods Enzymol.476:295-307を参照のこと。それら各々が参照によりその全体ですべての目的に対し本明細書に組み込まれる)。アレル消失(LOA)アッセイは、従来的なスクリーニング論理を転換し、突然変異が誘導された天然座位のコピー数を定量する。正しい標的細胞クローンにおいて、LOAアッセイは(X染色体またはY染色体上ではない遺伝子に関して)二つの天然アレルのうちの一つを検出する。他方のアレルは標的改変により破壊されている。同じ主旨を、アレル獲得(GOA)アッセイとして逆に適用し、挿入された標的化ベクターのコピー数を定量することもできる。例えばGOAアッセイとLOAアッセイを組み合わせて使用することで、天然標的遺伝子を1コピー消失し、薬剤抵抗性遺伝子または他の挿入マーカーを1コピー獲得した、ヘテロ接合性の正しい標的クローンが明らかにされるであろう。
【0157】
例として、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)をアレル定量法として使用することができる。しかし、ゼロ、1、および2コピーの標的遺伝子の差を確実に識別することができる任意の方法、またはゼロ、1、および2コピーの核酸挿入の差を確実に識別することができる任意の方法を使用して、MOAアッセイを開発することもできる。例えばTAQMAN(登録商標)を使用して、特に参照遺伝子との比較を行うことによりゲノムDNA試料中のDNA鋳型のコピー数を定量することができる(例えば、米国特許第6,596,541号を参照のこと。当該特許は参照によりその全体ですべての目的に対して本明細書に組み込まれる)。参照遺伝子は、標的遺伝子または座位と同じゲノムDNA中で定量される。ゆえにTAQMAN(登録商標)増幅は2回行われる(各々、それぞれのプローブを用いて行われる)。一つのTAQMAN(登録商標)プローブは、参照遺伝子の「Ct」(閾値サイクル)を決定する。一方で他方のプローブは、標的化が成功して置換された標的遺伝子または座位の領域のCtを決定する(すなわち、LOAアッセイ)。Ctは、TAQMAN(登録商標)プローブのそれぞれに対する開始DNAの量を反映する数量であり、すなわち、充分量の配列が少ないと、閾値サイクルに達するまでより多くのPCRサイクルが必要となる。TAQMAN(登録商標)反応のための鋳型配列のコピー数を半分まで減らすことで、約1Ct単位の増加が生じるであろう。標的遺伝子または座位の一つのアレルが相同組換えにより置換された細胞中でのTAQMAN(登録商標)反応は、非標的細胞のDNAと比較して参照遺伝子のCtが増加することなく、標的TAQMAN(登録商標)反応に対し1Ctの増加が生じるであろう。GOAアッセイに対しては、別のTAQMAN(登録商標)プローブを使用して核酸挿入のCtを決定することができ、当該核酸挿入は、標的化が成功することで、標的とされた遺伝子または座位を置換する。
【0158】
スクリーニング工程に、アーム特異的アッセイが含まれてもよく、このアッセイは、標的ゲノム座位に正しく標的化挿入された核酸挿入と、標的ゲノム座位外のゲノム位置に無作為にトランスジェニック挿入された核酸挿入を識別するために使用されるアッセイである。アーム特異的アッセイは、LTVEC相同アーム中のDNA鋳型のコピー数を決定する。例えば、US 2016/0177339、WO 2016/100819、US 2016/0145646、およびWO 2016/081923を参照のこと。それら各々が参照によりその全体ですべての目的に対し本明細書に組み込まれる。このアッセイは、LTVECによる正しい標的化を立証する、有用な拡大標準LOAおよびGOAアッセイである。例えばLOAおよびGOAアッセイ単独では、正しい標的細胞クローンと、標的ゲノム座位の欠失とゲノム中の別の場所でのLTVECの無作為統合が同時に生じたクローンを識別することはできない。標的細胞における選択圧は選択カセットに依存しており、そのため、ゲノムの別の場所でLTVECの無作為トランスジェニック統合が起こると、多くの場合、選択カセットとLTVECの隣接領域は含んでいるが、LTVECのより離れた領域は除外している可能性がある。例えばLTVECの一部がゲノム内に無作為に統合され、そのLTVECが3’相同アームに隣接した選択カセットとともに約5kb以上の長さの核酸挿入を含んでいる場合、一部の例においては、5’相同アームではなく3’相同アームが選択カセットとともにトランスジェニックに統合されるであろう。あるいは、5’相同アームに隣接した選択カセットの場合、一部の例においては、3’相同アームではなく5’相同アームが選択カセットとともにトランスジェニックに統合されるであろう。例として、LOAおよびGOAアッセイを使用して、LTVECの標的統合を評価し、そしてGOAアッセイが選択カセットまたはLTVECに固有の任意の他の(非アーム)領域に対するプローブを利用する場合、LTVECの無作為トランスジェニック統合と標的ゲノム座位でのヘテロ接合性欠失の組み合わせは、標的ゲノム座位でのLTVECのヘテロ接合性の標的統合と同じリードアウトをもたらすであろう。LTVECによる正しい標的化を確認するために、LOAおよび/またはGOAアッセイと併せてアーム特異的アッセイを使用してもよい。
【0159】
適切な定量的アッセイの他の例としては、蛍光介在in situハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、定温DNA増幅、固定化プローブに対する定量的ハイブリダイゼーション、INVADER(登録商標)プローブ、TAQMAN(登録商標)分子ビーコンプローブ、またはECLIPSE(商標)プローブ法(例えば、US 2005/0144655を参照のこと。参照によりその全体ですべての目的に対して本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0160】
次世代シークエンス(NGS)をスクリーニングに使用してもよく、特に改変された1細胞期胚において使用してもよい。次世代シークエンスは、「NGS」または「超並列シークエンス」または「ハイスループットシークエンス」とも呼称され得る。MOAアッセイおよび保持アッセイに加えてそのようなNGSをスクリーニングツールとして使用し、標的遺伝子改変の正確な内容を規定し、モザイク現象を検出してもよい。モザイク現象とは、一つの個体に異なる遺伝子型を有する二個以上の細胞群が存在することを指し、当該個体は単一受精卵(すなわち接合体)から発生している。本明細書に開示される方法において、選択マーカーを使用して標的クローンをスクリーニングする必要はない。例えば、本明細書に記載されるMOAおよびNGSアッセイは、選択カセットを使用することなく信頼に足るアッセイであり得る。
F.遺伝子改変非ヒト動物を作製する方法
【0161】
遺伝子改変された非ヒト動物は、本明細書に開示される様々な方法を採用することで作製することができる。本明細書に記載される方法をはじめとする、遺伝子改変生物を作製するための任意の便利な方法またはプロトコールが、かかる遺伝子改変非ヒト動物の作製に適している。例えば胚性幹(ES)細胞などの多能性細胞の遺伝子改変から開始される当該方法は、以下を含む:(1)1細胞期胚ではない多能性細胞のゲノムを、本明細書に記載される方法を使用して改変すること、(2)遺伝子改変された多能性細胞を特定または選択すること、(3)遺伝子改変された多能性細胞を宿主胚内に導入すること、および(4)遺伝子改変された多能性細胞を含有する宿主胚を代理母に移植および妊娠させること。その後代理母は、標的の遺伝子改変を含み、生殖細胞系列を介して標的の遺伝子改変を伝達することができる非ヒト動物のF0世代を産生する。遺伝子改変されたゲノム座位を担持する動物は、本明細書に記載されるアレル改変アッセイ(MOA)を介して特定されることができる。ドナー細胞は、任意の段階、例えば胚盤胞期または前-桑実胚期(すなわち4細胞期または8細胞期)などで宿主胚に導入されることができる。生殖細胞系列を介して遺伝子改変を伝達することができる子孫が作製される。多能性細胞は、本明細書の別の箇所において検討されるように例えばES細胞(例えば齧歯類ES細胞、マウスES細胞、またはラットES細胞)であってもよい。例えば、米国特許第7,294,754号を参照のこと。これは参照によりその全体ですべての目的に対して本明細書に組み込まれる。
【0162】
あるいは、1細胞期胚を遺伝子改変することから始まる当該方法は概して以下を含む:(1)1細胞期胚のゲノムを、本明細書に記載される方法を使用して改変すること、(2)遺伝子改変された胚を特定または選択すること、および(3)遺伝子改変された胚を代理母に移植および妊娠させること。その後代理母は、標的の遺伝子改変を含み、生殖細胞系列を介して標的の遺伝子改変を伝達することができる非ヒト動物のF0世代を産生する。遺伝子改変されたゲノム座位を担持する動物は、本明細書に記載されるアレル改変アッセイ(MOA)を介して特定されることができる。
【0163】
核移植技術を使用して、非ヒト哺乳類動物を作製することもできる。簡潔に述べると、核移植の方法は以下の工程を含み得る:(1)卵母細胞を除核する工程、または除核された卵母細胞を提供する工程;(2)除核された卵母細胞と組み合わされるドナー細胞またはドナー核を単離または提供する工程;(3)その細胞または核を、除核卵母細胞に注入し、再構成細胞を形成させる工程;(4)再構成細胞を非ヒト動物の子宮に移植し、胚を形成させる工程;および(5)胚を発生させる工程。かかる方法において、卵母細胞は通常、死亡した動物から採取されるが、生きた動物の卵管および/または卵巣のいずれかから単離されてもよい。卵母細胞は、除核の前に当分野の当業者に公知の様々な培地中で成熟されることができる。卵母細胞の除核は、当分野の当業者に公知の多くの方法において実施することができる。除核卵母細胞にドナー細胞またはドナー核を注入して再構成細胞を形成させることは、融合前の透明帯下にドナー細胞をマイクロインジェクションすることにより行われてもよい。融合は、接触/融合面の全体にわたりDC電気パルスを与えること(エレクトロフュージョン)により、たとえばポリエチレングリコールなどの融合促進化学物質に細胞を暴露することにより、またはたとえばセンダイウイルスなどの不活化ウイルスを用いることにより、誘導されてもよい。再構成細胞は、核ドナーとレシピエント卵母細胞の融合の前、融合の間、および/または融合の後に、電気的および/または非電気的手段により活性化されてもよい。活性化の方法としては、電気パルス、化学誘導ショック、精子の侵入、卵母細胞中の二価カチオン値の上昇、および卵母細胞中の細胞タンパク質のリン酸化の減少(キナーゼ阻害物質によるものとして)が挙げられる。活性化された再構成細胞または胚は、当分野の当業者に公知の培地中で培養され、その後、動物の子宮に移植されてもよい。例えば、US2008/0092249、WO1999/005266、US2004/0177390、WO2008/017234、および米国特許第7,612,250号を参照のこと。それら各々が参照によりその全体ですべての目的に対し本明細書に組み込まれる。
【0164】
本明細書に提示される様々な方法により、遺伝子改変された非ヒトF0動物の作製が可能となり、この場合において当該遺伝子改変されたF0動物の細胞は、標的の遺伝子改変を含んでいる。F0動物を作製するために使用された方法に応じて、標的の遺伝子改変を有するF0動物内の細胞数は変化するであろうと認識されている。対応する生物(例えば8細胞期のマウス胚)から、例えばVELOCIMOUSE(登録商標)法を介して前-桑実胚期の胚内にドナーES細胞を導入することにより、標的の遺伝子改変を有する細胞を含むF0動物の細胞群の割合が高くなる。例えば、US2014/0331340、US2008/0078001、US2008/0028479、US2006/0085866、およびWO2006/044962を参照のこと。それら各々が参照によりその全体ですべての目的に対し本明細書に組み込まれる。例えば非ヒトF0動物の細胞寄与の少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、85%、86%、87%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が、標的の遺伝子改変を有する細胞群を含んでもよい。さらにF0動物の生殖細胞のうち少なくとも一個以上が標的の遺伝子改変を有してもよい。
【0165】
遺伝子改変された創始非ヒト動物は、そのゲノム中に内因性ゲノムC9ORF72配列が存在しないことで特定することができ、当該配列は、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列で置換されており、ならびに/または当該非ヒト動物の組織または細胞中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、薬剤抵抗性遺伝子および/もしくはレポーターが存在(および/または発現)することで特定することができる。次いでトランスジェニック創始非ヒト動物を使用して、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を担持する追加の非ヒト動物と交配させ、それにより、各々が本明細書に記載されるC9ORF72座位のコピーを一個以上担持する一連の非ヒト動物を生成することができる。
【0166】
トランスジェニック非ヒト動物はまた、導入遺伝子の発現の制御または誘導を可能にする選択されたシステムを含有するように生成されてもよい。システムの例としては、バクテリオファージP1のCre/loxPリコンビナーゼシステム(例えば、Lakso,M.et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6232-6236を参照のこと)および出芽酵母のFLP/Frtリコンビナーゼシステム(O’Gorman,S.et al,1991,Science 251:1351-1355)が挙げられる。そのような動物は、例えば1種は異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列をコードする導入遺伝子を含有し、もう1種はリコンビナーゼ(例えばCreリコンビナーゼ)をコードする導入遺伝子を含有する、2種のトランスジェニック動物を交配させることにより、「二重の」トランスジェニック動物を構築することにより提供され得る。
【0167】
マウス中の内因性C9ORF72座位に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を挿入することを採用した実施形態を本明細書において詳細に検討しているが、C9ORF72座位中に破損を含む他の非ヒト動物も提供される。そのような非ヒト動物としては、本明細書に開示されるC9ORF72座位の非コード配列を置換するように遺伝子改変されることができる任意の非ヒト動物が挙げられ、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌牛、雄牛、水牛)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲザル)などの哺乳類が挙げられる。例えば、好適な遺伝子改変可能ES細胞が直ちに利用可能でない非ヒト動物については、遺伝子改変を含む非ヒト動物を作るために他の方法が採用される。このような方法には、例えば、非ES細胞ゲノム(例えば、線維芽細胞または人工多能性細胞)を改変すること、および体細胞核移植(SCNT)を利用して好適な細胞、例えば除核卵母細胞、に遺伝子改変されたゲノムを導入すること、および改変された細胞(例えば、改変された卵母細胞)を胚の形成に好適な条件下で非ヒト動物に懐胎させることが挙げられる。
【0168】
簡潔に述べると、核移植の方法は、(1)卵母細胞を除核する工程;(2)除核された卵母細胞と組み合わされるドナー細胞またはドナー核を単離する工程;(3)その細胞または核を、除核卵母細胞に注入し、再構成細胞を形成させる工程;(4)再構成細胞を動物の子宮に移植し、胚を形成させる工程;および(5)胚を発生させる工程、を含む。かかる方法において、卵母細胞は通常、死亡した動物から採取されるが、生きた動物の卵管および/または卵巣のいずれかから単離してもよい。卵母細胞は、除核の前に当分野の当業者に公知の様々な培地中で成熟されてもよい。卵母細胞の除核は、当分野の当業者に公知の様々な方法で行うことができる。再構成細胞を形成させるために、除核卵母細胞にドナー細胞またはドナー核を挿入することは、典型的には、融合前の透明帯下にドナー細胞をマイクロインジェクションすることにより行われる。融合は、接触/融合面の全体にわたりDC電気パルスを与えること(エレクトロフュージョン)により、たとえばポリエチレングリコールなどの融合促進化学物質に細胞を暴露することにより、またはたとえばセンダイウイルスなどの不活化ウイルスを用いることにより、誘導されてもよい。再構成細胞は、典型的には、核ドナーとレシピエント卵母細胞の融合の前、融合の間、および/または融合の後に、電気的および/または非電気的手段により活性化される。活性化の方法としては、電気パルス、化学誘導ショック、精子の侵入、卵母細胞中の二価カチオン値の上昇、および卵母細胞中の細胞タンパク質のリン酸化の減少(キナーゼ阻害物質によるものとして)が挙げられる。活性化された再構成細胞または胚は、典型的には、当分野の当業者に公知の培地中で培養され、その後、動物の子宮に移される。たとえば、米国特許出願公開2008-0092249A1、WO1999/005266A2、米国特許出願公開2004-0177390A1、WO2008/017234Al、および米国特許第7,612,250号を参照のこと。それら各々は、参照により本明細書に援用される。
【0169】
非ヒト動物ゲノム(例えば、ブタ、雌牛、齧歯類、ニワトリなどのゲノム)の改変方法には、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALエフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nuclease、TALEN)を利用して、ゲノムを改変し、本明細書に記載されるC9ORF72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を含ませることが含まれる。
【0170】
一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は哺乳類である。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、例えば、トビネズミ上科またはネズミ上科の小哺乳類である。一部の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変された動物は齧歯類である。一部の実施形態では、本明細書に記載の齧歯類は、マウス、ラット、およびハムスターから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載の齧歯類はネズミ上科から選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変動物は、ヨルマウス科(例えば、マウス様のハムスター)、キヌゲネズミ科(例えば、ハムスター、New Worldラットおよびマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(純種のマウスおよびラット、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(キノボリマウス、ロックマウス、オジロラット、マダガスカルラットおよびマウス)、トゲヤマネ科(例えば、トゲヤマネ)、およびメクラネズミ科(例えば、メクラネズミ、タケネズミ、および高原モグラネズミ)から選択された科由来である。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変齧歯類は、純種のマウスまたはラット(ネズミ科)、アレチネズミ、トゲマウス、およびタテガミネズミから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変マウスはネズミ科のメンバー由来のものである。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は齧歯類である。一部のある実施形態では、本明細書に記載の齧歯類はマウスおよびラットから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物はマウスである。
【0171】
一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、およびC57BL/Olaから選択されるC57BL系のマウスである齧歯類である。一部の実施形態では、本明細書に記載のマウスは、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129/SvJae、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2の系統からなる群から選択される129系である(例えば、Festing et al.,1999,Mammalian Genome 10:836; Auerbach,W.et al.,2000,Biotechniques 29(5):1024-1028,1030,1032を参照のこと)。一部の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変マウスは、前述の129系と前述のC57BL/6系との混合である。一部の実施形態では、本明細書に記載のマウスは、前述の129系の混合、または前述のBL/6系の混合である。一部の実施形態では、本明細書に記述された混合の129系は129S6(129/SvEvTac)系である。一部の実施形態では、本明細書に記載のマウスはBALB系(例えばBALB/c系)である。一部の実施形態では、本明細書に記載のマウスは、BALB系と前述の別系統の混合である。
【0172】
一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物はラットである。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のラットは、Wistarラット、LEA系統、Sprague Dawley系統、Fischer系統、F344、F6、およびDark Agoutiから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記述されたラット系は、ウィスター、LEA、Sprague Dawley、フィッシャー、F344、F6、およびDark Agoutiから成る群から選択された二つ以上の系の混合である。
【0173】
ラット多能性細胞および/または分化全能性細胞は、たとえばACIラット系統、Dark Agouti(DA)ラット系統、Wistarラット系統、LEAラット系統、Sprague Dawley(SD)ラット系統、またはたとえばFisher F344もしくはFisher F6などのFischerラット系統をはじめとする任意のラット系統由来であってもよい。ラット多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、上記の二つ以上の系統の混合から誘導された系統から取得されたものであってもよい。例えば、ラット多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、DA系統またはACI系統由来のものであってもよい。ACIラット系統は、黒アグーチを有し、腹部と足は白色で、RT1av1ハプロタイプであることが特徴である。当該系統は、Harlan Laboratoriesをはじめとする様々な供給源から入手可能である。ACIラット由来のラットES細胞株の例は、ACI.G1ラットES細胞である。Dark Agouti (DA)ラット系統は、野鼠色の毛色を有し、RT1av1ハプロタイプであることが特徴である。当該ラットは、Charles River及びHarlan Laboratoriesをはじめとする様々な供給源から入手可能である。DAラット由来のラットES細胞株の例は、DA.2BラットES細胞株と、DA.2CラットES細胞株である。一部の例では、ラットの多能性細胞及び/または分化全能性細胞は、近交系ラット由来である。例えば、2014年2月20日に出願されたU.S.2014/0235933A1を参照のこと。当該出願は参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0174】
内因性C9ORF72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を含む非ヒト動物が提供される。一部の実施形態において、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入は、病原性ではない。一部の実施形態において、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入は、本明細書に記載される表現型、例えばALSおよび/またはFTDと関連した表現型を一つ以上生じさせる。異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入は、例えばサザンブロット法またはポリメラーゼ連鎖反応遺伝子型決定反応などにより、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列中の配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピート数などのおよその事例数を決定することにより直接測定されてもよい。
内因性C9ORF72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を有する非ヒト動物を使用する方法
【0175】
本明細書に記載される非ヒト動物は、神経変性性の疾患、障害、および状態に対し改善された動物モデルを提供する。特に本明細書に記載される非ヒト動物は、例えば上位運動ニューロンの症状および/または非運動ニューロンの消失を特徴とする、ALSおよび/またはFTDなどのヒト疾患へと当てはめられる改善動物モデルを提供する。
【0176】
本明細書に記載される非ヒト動物は、様々なアッセイに有用な、内因性C9ORF72座位中に挿入された病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有する、および/または発現する改善されたin vivoシステム及び生体物質(例えば、細胞)の供給源を提供する。様々な実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物を使用して、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長の発現および/または活性に関連した一つ以上の症状を治療、予防、および/または阻害する治療剤が開発され得る。様々な実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物を使用して、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物に結合する治療剤候補物質(例えば、抗体、gRNA(CRISPR RNAおよびtracRNAを含む)およびsiRNAなど)が特定、スクリーニング、および/または開発される。様々な実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物を使用して、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えば例えばRAN翻訳から生じたその発現産物の活性を阻害する治療剤候補物質(例えば、抗体、gRNA(CRISPR RNAおよびtracRNAを含む)およびsiRNAなど)がスクリーニングおよび開発される。様々な実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物を使用して、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物(転写物)のアンタゴニストおよび/またはアゴニストの、本明細書に記載される非ヒト動物の結合プロファイルが決定される。一部の実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物を使用して、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物に結合する一つ以上の治療用抗体候補のエピトープが決定される。
【0177】
様々な実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物を使用して、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物を標的とする薬剤の薬物動態プロファイルが決定される。様々な実施形態で、本明細書に記載される一つ以上の非ヒト動物、および一つ以上の対照非ヒト動物または参照非ヒト動物が、それぞれ、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物を標的とする一つ以上の候補物質に様々な投与量(例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5 mg/mg, 7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、または50mg/kg以上)で暴露される。候補治療薬抗体は、経口および非経口投与経路を含む、任意の望ましい投与経路で投薬される場合がある。非経口経路は、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、くも膜下腔内、側脳室内、頭蓋内、胸腔内または注入のその他の経路を含む。非注射経路は、例えば、経口、経鼻、経皮、肺、直腸、口腔、膣、眼を含む。投与は、連続注入、局所投与、インプラント(ゲル、膜など)からの持続放出、および/または静脈内注射による場合もある。非ヒト動物(ヒト化および対照)から血液が様々な時点(例えば、0時間、6時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、または最大30日またはそれ以上の日数)で単離される。本明細書に記載される非ヒト動物から取得された試料を使用して、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物を標的とする、投与される薬剤の薬物動態プロファイルを決定するための、限定されないが総IgG、抗治療抗体反応、凝集をはじめとする様々なアッセイが実施されてもよい。
【0178】
様々な実施形態で、本明細書に記載される非ヒト動物を使用して、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばリピート関連非AUG(RAN:Repeat-associated non-AUG)翻訳から生じたその発現産物の活性を防ぐ、調節する、および/または阻害する治療効果、ならびに細胞変化の結果としての遺伝子発現に対する効果が測定される。様々な実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物、または当該動物から単離された細胞は、当該非ヒト動物の病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、またはRAN翻訳から生じたその発現産物を標的とする薬剤に暴露され、その後の一定期間後、例えばRNA凝集体の形成、RAN翻訳産物からのタンパク質凝集、運動ニューロンおよび/または非運動ニューロンの機能など、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物に依存したプロセス(または相互作用)に対する効果が解析される。
【0179】
本明細書に記載の非ヒト動物からの細胞は、その場限りで単離して使用するか、または多世代にわたって培養物中で維持することができる。様々な実施形態では、本明細書に記載の非ヒト動物からの細胞は(例えば、ウイルスの使用によって)不死化され、培養物中(例えば、連続培養物中)で無期限に維持される。
【0180】
本明細書に記載される非ヒト動物は、薬剤(例えば、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物を標的とする薬剤)の薬物動態特性および/または有効性を評価するためのin vivoシステムを提供する。様々な実施形態において、薬剤は、本明細書に記載される一つ以上の非ヒト動物、当該非ヒト動物から誘導された細胞、もしくはそれと同じ遺伝子改変を有するものに送達または投与され、その後、当該非ヒト動物(または当該非ヒト動物から単離された細胞)のモニタリングが行われ、またはそれらに対し一つ以上のアッセイが実施され、当該非ヒト動物に対する当該薬剤の効果が決定されてもよい。薬物動態特性としては、動物がどのように薬剤を様々な代謝物へと処理するか(または、限定されないが有毒代謝物を含む一つ以上の薬剤代謝物の有無の検出)、薬剤の半減期、投与後の薬剤の循環レベル(例えば、薬剤の血清濃度)、抗薬物反応(例えば、抗薬物抗体)、薬剤の吸収および分布、投与経路、薬剤の排泄および/またはクリアランスの経路が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、薬剤の薬物動態および薬力学特性は、本明細書に記載される非ヒト動物において、またはその使用を通してモニターされる。
【0181】
一部の実施形態では、アッセイを行うことには、薬剤が投与される非ヒト動物の表現型及び/または遺伝子型への効果を決定することを含む。一部の実施形態では、アッセイを行うことには、薬剤のロット間変動を決定することを含む。一部の実施形態では、アッセイの実施は、本明細書に記載される非ヒト動物に投与された薬剤の効果と、参照非ヒト動物に投与された薬剤の効果の間の差異を決定することを含む。様々な実施形態において、参照非ヒト動物は、例えば非病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入、または改変無し(すなわち野生型の非ヒト動物)など、本明細書に記載される改変を有してもよい。
【0182】
薬剤の薬物動態特性を評価するために非ヒト動物で(またはそれらから単離された細胞でおよび/またはそれらを使用して)測定されうるパラメーターの例には、凝集、オートファジー、細胞分裂、細胞死、補体介在性溶血、DNA完全性、薬物特異抗体力価、薬剤代謝、遺伝子発現アレイ、代謝活性、ミトコンドリア活性、酸化ストレス、食作用、タンパク質生合成、タンパク質分解、タンパク質分泌、ストレス反応、標的組織薬剤濃度、標的外組織薬剤濃度、転写活性などが挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、本明細書に記載される非ヒト動物を使用して、薬剤(例えば、病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、または例えばRAN翻訳から生じたその発現産物を標的とする薬剤)の薬学的有効量が決定される。
【実施例
【0183】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をどのように作成し、使用するかを当業者に説明するために提供されており、発明者がその発明として見なすものの範囲を限定することを意図していない。別途示されていない限り、温度は摂氏で示され、圧力は大気圧またはその近くである。
実施例1 非ヒト胚性幹細胞において、内因性非ヒトC9ORF72座位に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を挿入する
【0184】
本実施例は、非ヒト動物、特に齧歯類の胚性幹細胞内へのC9orf72座位での異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の標的挿入を解説する。特に本実施例は、マウスC9orf72座位の非コード配列の一部と、異種ヒトヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の置換を具体的に記載するものであり、当該ヒト配列は、マウスC9orf72プロモーターおよび/または例えばヒトC9orf72遺伝子のエクソン1aおよび/または1bに存在し得る因子などのヒト制御性因子と操作可能に連結されて配置される。内因性マウスC9orf72座位に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を挿入するためのC9orf72-HRE標的化ベクターは、過去に記載されるように作製された(例えば、米国特許第6,586,251号、Valenzuela et al.,2003,Nature Biotech.21(6):652-659、およびAdams,N.C.and N.W.Gale,in Mammalian and Avian Transgenesis-New Approaches,ed.Lois,S.P.a.C.,Springer Verlag,Berlin Heidelberg,2006を参照)。得られた改変C9orf72座位は、図1Aの下のボックスに図示される。
【0185】
簡潔に述べると、配列番号8または配列番号9として明記される配列を含む標的化ベクターを、マウスRP23 BACライブラリー(Adams,D.J.et al.,2005,Genomics 86:753-758)由来の細菌人工染色体(BAC)クローンを使用して作製し、F1ハイブリッド(129S6SvEvTac/C57BL6NTac)胚性幹(ES)細胞へと導入し、その後、G418を含有する選択培地中で培養した。エレクトロポレーションを行った10日後、薬剤抵抗性コロニーを摘まみ上げ、従前に記載されるように正しく標的化されたものをスクリーニングした(Valenzuelaら、上記;Frendewey,D.et al.,2010,Methods Enzymol.476:295-307)。標的のES細胞を分析して、サザンブロット解析および/またはC9orf72-HRE座位の増幅により、標的のマウスES細胞クローン中に存在するヘキサヌクレオチドリピート伸長のおよそのサイズを決定する。
【0186】
具体的には、サザンブロット解析を行い、標的のC9ORF72トランスジェニックマウスES細胞中に存在するヘキサヌクレオチドリピート伸長のおよそのサイズを決定した。ゼラチンコートされた96ウェルプレートの一つのウェルで増殖した標的のマウスESクローンからゲノムDNAを抽出した。ES細胞クローンが100%コンフルエンスに達した時点で、細胞を1xPBSで2回洗浄し、50uLの溶解緩衝液(1M Tris pH 8.5、0.5M EDTA、20% SDS、5M NaCl、および1mg/mLのプロテナーゼK)中、37℃で一晩溶解させた。125uLの氷冷された200プルーフエタノールを各ウェルに添加してDNAを沈殿させ、次いで、4℃で一晩インキュベーションした。沈殿したDNAを70%エタノールで2回洗浄し、空気乾燥させ、30uLの0.5x TE pH 8.0中に再懸濁させた。
【0187】
抽出されたゲノムDNA(gDNA)をHindIIとScaIを用いて一晩、37℃で消化させ、1%アガロースゲル上でサイズ分離させた。電気泳動後のアガロースゲルを変性させ(1M NaCl、5% NaOH)、中和した(1.5M NaCl、0.5M Tris pH 7.5)。その後、消化されたgDNAをHybond-Nメンブレン(Amersham社)へと一晩、毛管輸送を介して移した。
【0188】
ヒト化標的化ベクター内に含まれる252bpのXmaI断片(図2A参照)に相当するプローブ
(5’-CCGGGGCGGGGCTGCGGTTGCGGTGCCTGCGCCCGCGGCGGCGGAGGCGCAGGCGGTGGCGAGTGGGTGAGTGAGGAGGCGGCATCCTGGCGGGTGGCTGTTTGGGGTTCGGCTGCCGGGAAGAGGCGCGGGTAGAAGCGGGGGCTCTCCTCAGAGCTCGACGCATTTTTACTTTCCCTCTCATTTCTCTGACCGAAGCTGGGTGTCGGGCTTTCGCCTCTAGCGACTGGTGGAATTGCCTGCATCCGGGCC-3’;(配列番号29)を、
Prime-It II Random Primer Labeling Kit(Agilent社)を使用して32Pで標識した。変性させたプローブをExpressHyb Hybridization Solution(Takara社)中で希釈し、調整済み膜とともに65℃で一晩インキュベートした。オートラジオグラフィーフィルムを72時間、プローブが付着したブロットに暴露させた。
【0189】
図2Bに示されるように、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを三個含有する、挿入された非病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有するES細胞クローン(8027 A-C4)は、配列番号4として明記される配列を含有するC9orf72-HRE-3標的化ベクターの導入と、薬剤抵抗性カセットの除去の後に取得された。配列番号6として明記される配列を含有するC9orf72-HRE-100 標的化ベクターの導入が行われた後、配列番号7として明記される配列のバリアントであり、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを約92個含有する、挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有するES細胞クローンが少なくとも二個(8029 A-A3と8029 A-A6)取得された。C9orf72-HRE-100標的化ベクター(8028)の導入と薬剤抵抗性カセットの除去を行った後にも、配列番号7として明記される配列のバリアントであり、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを約30個含有する、挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有する少なくとも二個のES細胞クローン(8029 B-A6および8029 B-A4)が取得された。
【0190】
さらにAmplideX PCR/CE C9ORF72 Kit(Asuragen社)をメーカーの説明書に従い使用して、記載される内因性C9orf72ES細胞クローンへと挿入された、異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列中の配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の事例数を確認した。3xリピートのクローン(8027 A-C4)、2個体の92xリピートのクローン(8029 A-A3、8029 A-A6)、および2個体の30xリピートのクローン(8029 B-A4、8029 B-A10)から精製されたmESCゲノム総DNAをインプットDNAとして使用した。F1H4 mESCゲノム総DNAを陰性対照として使用し、および公知のC9ORF72ヘキサヌクレオチド伸長リピートアレルを有する患者由来のCoriell Cell Repositoryで精製されたヒト血液細胞ゲノムDNA(サンプルND11836 (HRE遺伝子型:8/伸長)、ND14442 (2/伸長)、ND6769(13/44))を陽性対照として使用した(Coriell Institute for Medical Research)。表4のプライマーを使用したPCRを、ABI 9700サーマルサイクラー(Thermo Fisher社)上で行った。増幅物は、POP-7ポリマー(Thermo Fisher社)とNuSieveアガロースゲル(Lonza社)を使用した、ABI 3500xL GeneScan上のキャピラリー電気泳動により大きさが計測された。2-ログのDNAラダー(New England BioLabs社)分子量マーカーを比較のためにアガロースゲル上に流し、SYBR Gold Nucleic Acid Stain(Thermo Fisher社)を用いてバンドを可視化させた。
表4
【表6】
【0191】
図2Bにより、マウスES細胞クローンの8027 A-C4の内因性C9orf72座位内に挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列内に、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートが3個存在すること、マウスES細胞クローンの8029 B-A9と8029 B-A10の内因性C9orf72座位内に挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列内に、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートが約30個存在すること、そしてマウスES細胞クローンの8029 A-A3と8029 A-A6の内因性C9orf72座位の異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列内に、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートが約92個存在することが確認された。
実施例2:内因性マウスC9ORF72座位で異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有する胚性幹細胞から誘導された運動ニューロンおよび非ヒト動物の作製
【0192】
胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン
【0193】
野生型C9orf72座位に対しホモ接合性の親胚性幹細胞(ESC)(対照)、または配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列の約3個(C9orf72HRE +/-30個(C9orf72HRE30 +/-)、または92個((C9orf72HRE92 +/-)のリピートで遺伝子改変されたC9orf72に対しヘテロ接合性の親胚性幹細胞を、胚性幹細胞用培地(ESM;DMEM + 15% ウシ胎仔血清+ペニシリン/ストレプトマイシン+グルタミン+非必須アミノ酸+ヌクレオシド+βメルカプトエタノール+ピルビン酸ナトリウム+LIF)において2日間培養した。その間、培地は毎日交換された。ES培地を、トリプシン処理の1時間前に、7mlのADFNK培地(Advanced DMEM/F12+Neurobasal培地+10% Knockout血清+ペニシリン/ストレプトマイシン+グルタミン+βメルカプトエタノール)と交換した。ADFNK培地を吸引し、0.05%トリプシン-EDTAでESCをトリプシン処理した。沈殿細胞を12mlのADFNK中に再懸濁し、懸濁液中で2日間増殖させた。レチノイン酸(RA)とスムーズンドアゴニストを補充したADFNK中でさらに4日間細胞を培養して運動ニューロン(ESMN)を得た。解離させた運動ニューロンを、胚性幹細胞誘導運動ニューロン培地(ESMN;Neurobasal培地+2% ウマ血清+B27+グルタミン+ペニシリン/ストレプトマイシン+βメルカプトエタノール+10ng/ml GDNF、BDNF、CNTF)中に播種し、成熟させた。
【0194】
非ヒト動物
【0195】
VELOCIMOUSE(登録商標)法(DeChiara,T.M.et al.,2010,Methods Enzymol.476:285-294;Dechiara,T.M.,2009,Methods Mol.Biol.530:311-324;Poueymirou et al.,2007,Nat.Biotechnol.25:91-99)を使用した。この方法において、標的のES細胞を非小型化8細胞期Swiss Webster胚に注入して、C9orf72-HRE(3xまたは100x)挿入に対しヘテロ接合性の、健常な完全ES細胞誘導F0世代マウスを生成した。F0世代のヘテロ接合性のオスを、C57Bl6/NTacのメスと交配させてF1ヘテロ接合体を作製し、このF1ヘテロ接合体同士を交雑させて、分子学的解析および表現型解析のためにF2世代のC9orf72-HRE+/+、C9orf72-HRE+/-および野生型のマウスを作製した。
実施例3 内因性C9orf72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を有する運動ニューロンまたは脳組織の解析
【0196】
最近、Liuら、(2017)Cell Chem.Biol.24:141-148は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)とデジタル液滴ポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)を使用して、ALSに罹患する患者から単離された人工多能性幹細胞(iPSC)から誘導されたヒト線維芽細胞株、またはヒト星状膠細胞および運動ニューロンにより発現されたC9orf72 座位からのセンスRNA転写物またはアンチセンスRNA転写物のコピー数を定量した。Liuら、(2017)、上記は、健康な患者から誘導された線維芽細胞と比較して、患者から誘導された線維芽細胞中のセンスイントロン、アンチセンス、およびセンスのC9orf72転写物の数が有意に高いことを見出した。平均して、患者由来の線維芽細胞当たり、3~4コピーのC9orf72のイントロンおよびアンチセンスの転写物、そして約15~20コピーのC9orf72センスmRNA転写物が検出された。Liuら、(2017)上記。Liuら、(2017)、上記は対照的に非罹患線維芽細胞株において、C9orf72の一個以下のイントロンおよびアンチセンスの転写物と、5~10個コピーのセンスmRNA転写物が検出されたことを示している。線維芽細胞と同様に、健康な対照から誘導された星状膠細胞と神経細胞と比較して、患者から誘導された星状膠細胞と神経細胞のほうがイントロン、アンチセンス、およびセンスのC9orf72転写物の発現が高かった。Liuら、(2017)、上記。RNA凝集体を含有する細胞の割合、細胞当たりの凝集体の平均数、および細胞間で異なる凝集体数の分布を算出することにより、および罹患個体由来または健康個体由来の細胞におけるC9orf72転写物数の決定において、Liuら、(2017)は、罹患個体由来細胞で認められる各凝集体は、単一変異体C9orf72のイントロン転写物またはアンチセンス転写物であり、さらには少数のRNA分子が疾患に大きな影響を与え得ることを提唱した。
【0197】
本実施例において、繁殖コロニーにおけるヘキサヌクレオチドリピートのサイズの安定性は、上述のAmplideX PCR/CE C9ORF72 Kit(Asuragen社)を使用してF2動物において確認された(データは示さず)。さらに野生型C9orf72座位(対照)、または配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個、30個または92個含有する遺伝子改変C9orf72座位を含有するマウス胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)、脳組織、および親胚性幹細胞中のRNA転写物が検証された。野生型C9orf72座位(対照)、または配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個、30個または92個含有する遺伝子改変C9orf72座位を含有する親胚性幹細胞から誘導されたESMNにおいて、RNA凝集体とジペプチドリピートタンパク質レベルも評価した。
【0198】
材料および方法
【0199】
定量的ポリメラーゼ連鎖反応
【0200】
各試料から総RNAを抽出し、様々な領域に隣接するプライマーと、改変C9orf72-HRE座位のそれら領域を検出するプローブを使用して逆転写した。検出可能な領域には、マウスとヒトの配列の連結部にわたる領域、ヒト配列のみにわたる領域、またはマウス配列のみにわたる領域が含まれる。GAPDHまたはβ2-マイクログロブリンのQPCRは、即時利用可能なキットのプローブとプライマーを使用して実施された。
【0201】
具体的には、RNAは、野生型(WT)C9orf72座位(対照)、または配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個、30個または92個含有する遺伝子改変C9orf72座位を含有するマウスから単離された胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)、親胚性幹(ES)細胞、または全脳から単離された。
【0202】
総RNAは、メーカーのプロトコールに従いDirect-zol RNA Miniprepプラスキット(Zymo Research社)を使用して単離された。約1μgの総RNAを、DNaseI(Thermo Fisher社)を用いて25℃で15分間処置した。EDTAを加え、混合液を65℃で10分間インキュベートした。逆転写(RT)反応を、Maxima H Minus First Strand cDNA Synthesis Kit with dsDNase (ThermoFisher社)を用いて実施した。DNaseI処置の後、RT緩衝液、ランダムヘキサマープライマー、dNTPs、Maxima Hマイナス酵素ミックスを含有する10μLのRT混合液を加えて20μLの最終体積とした。RT反応混合液を10分間、25℃、次いで15分間、50℃、次いで5分間、そして85℃でインキュベートして、酵素を不活化した。cDNAミックスを水で希釈して、100μLの最終体積とした。
【0203】
逆転写を行った後、PCR反応溶液を、PCR混合液、プローブおよび遺伝子特異的プライマーを合わせて5μL、ならびに3μLのcDNAを含有する最終体積8μLへと再構成させた。別段の記載がない限り、最終的なプライマーとプローブの濃度はそれぞれ0.5μMと0.25μMであった。qPCRを、ViiA(商標)7 Real-Time PCR Detection System(ThermoFisher社)上で実施した。PCR反応は、光学384ウェルプレート中で95℃、10分、そして95℃、3秒と60℃、30秒を45サイクルで、四重に行われた。各解析(A、B、F、G、H)に使用されたプライマーおよびプローブの配列ならびに配列番号を表5に提示する。
表5
【表7】
【0204】
ウェスタンブロット解析
【0205】
分化した胚様体(EB)を集め、SDSサンプル緩衝液(2% SDS、10%グリセロール、5% βメルカプトエタノール、60mM TrisHCl、pH 6.8、ブロモフェノールブルー)中でホモジナイズした。タンパク質抽出物は、RC DCタンパク質アッセイ(BioRad社)を使用して定量した。抽出物(10μg)を、4~20%のSDS-PAGEゲル(Thermo Fisher社)上に泳動させ、iBLOTトランスファーユニット(Thermo Fisher社)を使用してニトロセルロース膜上に移した。イムノブロットは、C9orf72とGAPDH(Millipore社)に対する一次抗体を用いてプローブ付加した。結合した抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼが結合した二次抗体(Abcam社)とともにインキュベートし、次いでSuperSignal West Pico化学発光基質(Thermo Scientific社)を使用した化学発光を行うことにより検出した。シグナルは、Full Speed Blue感受性医療用X線フィルム(Ewen Parker XRay Corporation)を使用したオートラジオグラフィーにより検出した。相対タンパク質値は、ImageJを使用して算出した。
【0206】
RNAと翻訳産物を検出するための蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)と免疫蛍光法(IF)
【0207】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)と免疫蛍光法をそれぞれ使用して、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチドリピート配列から転写されたRNAの位置、ならびにそれらから翻訳されたジペプチドリピートタンパク質の位置を、実施例3に記載されるように作製された胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン(ESMN)において決定した。簡潔に述べると、ESMNを4ウェルチャンバースライド(Lab-Tek II チャンバースライドシステム、ThermoFisher Scientific社)中で増殖させ、PBS中、4%PFA(Electron Microscopy Sciences社)で固定した。次いで細胞を、ピロ炭酸ジエチル(DEPC)PBS/0.2% Triton X-100(Fisher Scientific社、カタログ番号 #BP151)で透過処理し、DEPC-PBCで洗浄してブロッキングし、以下に記載されるようにRNA転写産物の検出に対してはLNAまたはDNAオリゴヌクレオチドで染色し、RAN翻訳産物の検出に対しては抗ポリGA抗体で染色した。染色後、スライドを適切な蛍光色素とともにインキュベートし、Fluoromount G(Southern Biotech社)で包埋し、共焦点顕微鏡を使用して可視化した。
【0208】
センスまたはアンチセンスのRNA転写産物の検出
【0209】
スライドは、50%ホルムアミド(IBI Scientific社、カタログ番号#IB72020)、DEPC 2×SSC[300mM 塩化ナトリウム、30mM クエン酸ナトリウム(pH 7.0)]、10%(w/v)硫酸デキストラン(Sigma-Aldrich社、カタログ番号 #D8960)、およびDEPC 50mM リン酸ナトリウム(pH 7.0)からなる緩衝液とともに、30分、66℃(LNAプローブ用)または55℃(DNAプローブ用)で前ハイブリダイゼーションを行った。次いでハイブリダイゼーション緩衝液を排出させ、ハイブリダイゼーション緩衝液中、400μlの40nM LNAプローブミックスまたは200ng/mlのDNAプローブミックスを各スライドに添加し、暗所で3時間、66℃(LNAプローブ用)または55℃(DNAプローブ用)でインキュベートした。LNAプローブとインキュベートしたスライドは、DEPC 2×SSC/0.1% Tween20(Fisher Scientific社、カタログ番号BP337)中、室温で1回リンスし、そしてDEPC 0.1×SSC中、65℃で3回リンスした。DNAプローブとインキュベートしたスライドは、2xSSC中、40%ホルムアミドを用いて3回洗浄し、そしてPBS中で1回簡単に洗浄した。続いてスライドを1μg/mL DAPI(Molecular Probes Inc.)とともにインキュベートした。
【0210】
本実施例で使用されたLNAおよびDNAオリゴヌクレオチドプローブの配列及び配列番号、ならびにプローブのハイブリダイゼーション条件を、以下の表6に提示する。
表6
【表8】
【0211】
ジペプチドリピートタンパク質産物の検出
【0212】
透過処理の後、スライドを、0.2%TritonX100含有トリス緩衝生理食塩水(pH7.4)(TBS-T)中で希釈された5%正常ロバ血清でブロッキングした。スライドは、5%正常ロバ含有TBS-T中で希釈されたポリGAに対する一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートされた。TBS-Tで3回洗浄した後、スライドは、Alexa 488または555(TBS-T中、1:1000、ThermoFisher社)およびDAPI(1μg/ml) (Molecular Probes Inc.)に結合した種特異的二次抗体とともに室温で1時間インキュベートされた。TBS-Tで3回洗浄した後、スライドをFluoromount G(Southern Biotech社)で包埋し、共焦点顕微鏡を使用して可視化した。
【0213】
結果
【0214】
図4、5、および6に示されるように、C9orf72で配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含有するマウスからのESMN、全脳および神経組織は、C9orf72mRNA転写物の発現増加を示した。この増加は、C9orf72座位のエクソン1aと1bの間に存在するヘキサヌクレオチドリピートの数と相関しているように思われた。図6も、内因性C9orf72座位で配列番号1として明記される異種ヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個または92個含有するマウスから単離された神経組織、および同様のものを含有するESMNと同様に、C9orf72発現が、内因性C9orf72座位で配列番号1として明記される異種ヘキサヌクレオチド配列のリピートを3個または92個含有するマウスにおいて、例えば筋肉および神経などの非神経組織でも増強されていたことを示す。さらにこの増強は、ヒト化C9orf72アレルに特異的であった。ヘテロ接合性マウスにおいて、リピート配列を含まないマウスC9orf72アレルの発現増強は観察されなかった(データは示さず)。
【0215】
試算すると、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを30個もしくは92個有するESMNまたは脳細胞は、細胞当たりC9orf72 mRNAのコピーをおよそ17個有していることが示唆され、これはLiuら、(2017)上記、の結果と一致している。配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピート数の増加は、C9orf72タンパク質レベル(図7および8)、センスおよびアンチセンスのC9orf72 RNA凝集体の核蓄積ならびに細胞質蓄積(図9Aおよび9B)、そしてジペプチドリピートタンパク質(図10)における増加とも直接相関している。本明細書において示されるデータから、C9orf72座位で配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピート数が増加すると、ALSと診断された患者から単離されたヒト細胞と類似した分子表現型(例えば転写増加、RNA凝集体の蓄積、および/またはジペプチドリピートタンパク質の増加など)を示す細胞が生じることが示され、このことから、本明細書に開示される非ヒト動物を神経変性疾患の疾患モデルとして使用することが支持される。
実施例4 内因性C9orf72座位に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を有する非ヒト動物の行動解析
【0216】
本実施例は、実施例1に記載される内因性齧歯類(例えばマウス)C9orf72座位における異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入から生じる、例えば体重減少および/または著しい運動異常などのALS様の症状に関する、本明細書に記載される非ヒト動物(例えば齧歯類)の行動解析を記載する。
【0217】
上述のように内因性C9orf72座位内に病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が挿入されたマウス、および/または例えば野生型マウスもしくは上述のように内因性C9orf72座位内に非病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が挿入されたマウスなどの対照マウスの表現型試験は、8、18、37週齢(メス)および57~60週齢(オス)で行われる。体重は週に2回ベースで計測され、体組成はμCTスキャン(Dynamic 60)により解析される。標準的な24スキャンを使用して、頸部脊椎の質量を可視化する。全ての動物の手順は、Regeneron Pharmaceuticalsの動物実験委員会により承認を受けたプロトコールに準拠して行われた。
【0218】
全体的な運動機能の評価は、盲目的主観スコアリングアッセイを使用して行われる。運動障害の解析は、ロータロッド(rotarod)、オープンフィールドロコモーター、およびキャットウォーク試験を使用して実施される。運動障害スコアは、ALS Therapy Development Instituteにより開発されたシステム(ALSTDI,Gill A.et al.,2009,PLoS One 4:e6489)を使用して測定される。キャットウォーク検査の間、ビデオカメラで下から記録しながら対象は照明を当てたガラスのプラットフォームを歩いて渡る。例えば歩幅パターン、個々の足を回す早さ、姿勢の持続、および圧力などの歩き方に関連したパラメーターが各動物に対して報告される。この検査を使用して、マウスを表現型解析し、新規化学物質を運動能力に対するそれら効果に関して評価する。CatWalk XTは、ラットとマウスの足取りと歩き方を定量的に評価するシステムである。それを使用して、中枢神経、末梢神経、筋肉、または骨格の異常に関するほぼすべての種類の実験モデルにおける、齧歯類の運動能力を評価する。
【0219】
キャットウォーク歩き方解析:Noldus CatWalk XT 10のランウェイの開始地点に動物を置き、それらの正面に開口端を置く。マウスは自発的にランウェイの端まで走り、逃げようとする。カメラが記録し、システムのソフトウェアが足取りを測定する。足取りは、足の配置の異常を解析する。
【0220】
オープンフィールド検査:マウスをKinder Scientificオープンフィールドシステムに置き、60分間評価する。この装置は赤外線ビームとコンピューターソフトウェアを使用して、微細な動き、X+Yの移動、動いた距離、飼育イベントの数、飼育に費やされた時間、そして動かない時間を算出する。
【0221】
ロトロッド(Rotorod):ロトロッドテスト(IITC Life Science社、ウッドランドヒルズ、カリフォルニア州)は、マウスが回転する梁から落ちるまでの時間を測定する。ロトロッドは、1rpmで開始し、180秒かけて15rpmまで加速する実験レジームに設定される。その後、漸増レジームの後に動物が落ちるまでの時間を記録する。動物が落ちることなく梁上に留まる三つの最長時間の平均と最大値を使用して、落下時間を評価する。180秒よりも長く梁上に何とか留まった動物は無症状と判断される。
【0222】
上位運動ニューロン障害は、痙縮(すなわち硬直)、反射増大、振戦、動作緩慢、そしてバビンスキー兆候として現れる。下位運動ニューロン障害は、肢の筋力低下、萎縮、握り締め、丸まり、および引きずり、ならびに線維束性攣縮として現れる。延髄障害は、嚥下困難、不明瞭な発音、そして舌の線維束性攣縮として現れる。全体的な運動機能も32週齢の開始時から60週齢まで所与の週齢での生存動物の割合として評価される。マウスは毎週体重測定され、全体的な運動機能の評価は、盲目的主観スコアリングアッセイ(上述)を使用して行われる。毎週、または月に2回、臨床神経学的検査が2群のマウスに対して行われ、後肢筋肉の運動障害、振戦、および硬直が判断される。運動障害に関しては、盲目的神経学的スコアリングスケールは0(症状無し)から4(マウスは、横向きに置かれてから30秒以内に正しい位置に自分を置くことができない)であり、表7に示されるように使用される。
【表9】
【0223】
振戦および硬直に関しては、ゼロ(症状無し)から3(重度)のスケールのスコアリングシステムが使用される。表8は、検査中の動物の運動障害、振戦および硬直に関連したスコアリング技法を明記する。
【表10】
【0224】
別の実験において、マウスは握力検査を使用して検査される。簡潔に述べると、握力は、前肢の最大筋力として神経筋機能を測定するものであり、センサーに繋がれた格子上の、マウスにより与えられた握りにより評価される。取得されたすべての握力値は、マウスの体重に対して標準化される。
【0225】
別の実験において、対照マウス、および内因性C9orf72 座位内に挿入された病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含むマウスから60週齢で脊髄の腰部を組織病理学的分析のために採取する。脊髄中の運動ニューロンの総数、および運動ニューロンの平均細胞体面積を、被験コホートおよび対照コホートの両方において観察する。
【0226】
対照マウス、および病原性異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の挿入を含む被験マウスの温痛覚を、20週齢で、動物を48℃、52℃、または55℃に維持した金属表面(IITC社、ウッドランドヒルズ、カリフォルニア)上に置くことで検査する。反応までの時間は、熱刺激に対して撫でられた動物が後肢をさっと動かすまでに経過した時間として定義された。マウスは、後肢をなめること、または後肢を震わせることの2種の防衛的な振る舞いのいずれかを行うまでプレート上に置かれる。
実施例5 CRISPR/Cas9システムを使用して、非ヒト胚性幹細胞中の内因性非ヒトC9ORF72座位から異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を除去する
【0227】
参照ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列(配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも1個、少なくとも約3個、少なくとも約5個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも約60個、少なくとも約70個、少なくとも約80個、または少なくとも約90個、好ましくは連続的に含む)に対し可能性のあるガイドRNA(gRNA)配列が分析され、スコアリングされる。有効である可能性があるgRNA(例えば、crRNAおよび/またはtracRNA)をコードするDNAが合成され、発現構築物内に配置される。当該構築物は、Casタンパク質をコードする核酸を含んでもよい。例えば、図12を参照のこと。参照ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含むES細胞を、gRNAおよび/またはCasタンパク質、ならびに薬剤抵抗性遺伝子をコードするDNAを含む発現構築物でトランスフェクトする。薬剤抵抗性クローンを連続希釈により取得し、分析用に増幅させ、凍結させる。各薬剤抵抗性ES細胞クローンからDNAを単離し、PCRにより分析して、アガロースゲル上で可視化させる。正しいサイズのPCR産物を切り出し、さらに配列解析して、標的のヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が欠失していることを確認する。
【0228】
図11は、例えば実施例1で作製された8029 A-A6 ES細胞に存在するような、例えば配列番号45として明記される配列を有する参照ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列とその位置の非限定的な例の図を正確な縮尺ではないが提供するものであり、それらはgRNAによる標的化が成功した可能性が高かったものである。図11に図示される位置を標的とするcrRNAをコードするDNA配列。その例示的な配列は配列番号45として提供され、それぞれの配列番号は表9に提供される。特に配列番号46~50として明記される配列は、U6プロモーターでの最適発現のために、配列番号45として明記される参照ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列中には存在しない最初のグアニンを含む。
【表11】
【0229】
表9に明記されるcrRNAをコードするDNAを作製し(Integrated DNA Technologies社)、tracRNAをコードするDNA(例えば、配列番号63として明記される配列を含むDNA)と操作可能に連結して発現構築物内に挿入した。crRNAをコードする配列のライゲーションの成功は、表10に明記されるベクタースクリーニングプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により確認され、gRNA(crRNAとtracrRNA)コード配列の配列は、ベクターシークエンシングプライマーを使用したシークエンス解析で確認され、このプライマー配列もまた表10に明記される。U6プロモーターの制御下にある正しいgRNAコード配列、cas9タンパク質をコードする核酸、およびピューロマイシン抵抗性遺伝子を含む発現構築物が増幅され、精製された。図12
【表12】
【0230】
実施例1で取得され、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを約92個含むヘキサヌクレオチドリピート伸長配列(例えば、配列番号45として明記される参照配列)を含む8029 A-A6クローンを、表9に明記されるcrRNA(プラスtracrRNA配列)の異なる組み合わせ、ピューロマイシン抵抗性遺伝子、およびCRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼ遺伝子を用いてトランスフェクトした。一つの組み合わせにおいて、ES細胞は、配列番号45の190位、196位、274位、899位、905位、1006位、および1068位で始まる配列を標的とするCRISPR/Cas9システム(例えばcas9タンパク質、ならびに/または配列番号39、44、および46~50として明記される配列を有するgRNA挿入をコードする核酸を含む発現構築物)を用いてトランスフェクトされた。第二の組み合わせにおいて、ES細胞は、配列番号45の196位、1006位、および1067位を標的とするCRISPR/Cas9システム(例えば、cas9タンパク質をコードする核酸、ならびに/または配列番号39、50および44としてそれぞれ明記される配列を含むgRNA挿入をコードするDNAを含む発現構築物)を用いてトランスフェクトされた。第三の組み合わせにおいて、ES細胞は、配列番号45の196位、272位および1005位および1067位を標的とするgRNA挿入(例えば、cas9タンパク質をコードする核酸、ならびに/または配列番号39、47、50および44としてそれぞれ明記される配列を含むgRNA挿入をコードする核酸を含む発現構築物)を用いてトランスフェクトされた。
【0231】
ピューロマイシン抵抗性ESクローンは、連続希釈により取得され、培地(500ml KO DMEM培地、95ml熱不活化FBS、12mL L-グルタミン、6mL ペニシリン-ストレプトマイシン、6mL非必須アミノ酸、1.2mL B-メルカプトエタノール)中で培養され、分析用に増殖され、そして凍結された。各クローンのDNAは、メーカー(Qiagen社)のプロトコールに従いDNAase Blood and Tissue Kitを使用して単離され、表10に明記されるクローンスクリーニングフォワードプライマーおよびリバーススクリーニングプライマーを使用したPCRにより分析した。PCR産物はアガロースゲル電気泳動により可視化され、正しいサイズのPCR産物を切り出し、さらに配列解析して、標的のヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が欠失していることを確認した。
【0232】
160個のクローンのうち、100個のクローンを検査し、11個が、例えば300塩基対~700塩基対の間の増幅PCR産物を示したなど、ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の欠失を示した(データを示さず)。配列解析から、ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の欠失が確認された(データは示さず)。検証した三つの組み合わせのうち、配列番号45の196位、1005位および1067位の組み合わせを標的とするCRISPR/Casシステムが、ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の欠失に最も効果的であったことが証明された。この組み合わせは、11個の陽性クローンのうちの10個をもたらした。配列番号45の196位、272位、1005位、および1067位の組み合わせを標的とするCRISPR/Casシステムは、1クローンをもたらした。
均等
【0233】
本発明の少なくとも一つの実施形態のこのような記述されたいくつかの側面を持つ、様々な修正、変更、および改善を当業者であれば容易に思いつくことが当業者には理解されるはずである。このような修正、変更、および改善は本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内であることが意図される。従って、前述の説明および図面は例示のみとしてのものであり、本発明は以下の請求項によって詳細に記述される。
【0234】
請求の範囲において、請求項の構成要素を修飾するための例えば、「第一」、「第二」、「第三」等の順序の用語の使用は、それ自体は一つの請求項の構成要素が他を超えるという任意の有意性、先行又は順序を暗示するものではなく、さもなければ方法の行為が行われる時間的順序を暗示するものでもない。それらは、請求項の構成要素を識別するために、特定の名称を有する一つの請求項の構成要素を、(順序の用語の使用以外は)同一の名称を有する他の構成要素から識別するための標識として単に使用されているものである。
【0235】
本明細書および本特許請求の範囲において、「a」および「an」という冠詞は、そうではないことが明確に示されない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。群の一つ以上の要素の間に「または」を含む請求項または記述は、そうではないことが示されるかまたはそうでなければ文脈から明らかでない限り、群の要素のうちの一つ、二つ以上、またはすべてが、所定の生成物またはプロセスに存在する、採用される、または別手段により関連する場合に成立するとみなされる。本発明は、群の正確に一つの要素が所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、二つ以上、または群の要素全体が所定の生成物またはプロセスに存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態も含む。さらに、本発明は、別途指定されない限り、または矛盾または不一致が起こることが当業者には明らかでない限り、変形、組み合わせ、および記載された請求項の一つ以上からの一つ以上の限定、要素、句、記述用語などが、同じ基礎請求項に依存する別の請求項(または関連する任意のその他の請求項)に導入される並べ替えすべてを網羅することを理解すべきである。記載されたような要素が存在する場合(例えば、マーカッシュ群または類似の形式で)、要素の各サブグループも開示され、任意の要素を群から除去することができる。当然のことながら、一般的に、本発明、または本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むとして言及される場合、本発明のある実施形態または本発明の態様は、このような要素、特徴などから成る、または実質的にそれらから成る。簡潔にするために、これらの実施形態はすべての場合において、多くの言葉では本明細書に特に記述されていない。これも当然のことながら、本発明の任意の実施形態または態様は、特定の除外が明細書に列挙されているかどうかにかかわらず、請求項から明示的に除外される可能性がある。
【0236】
当業者であれば、アッセイまたは本明細書に記述されたその他のプロセスで得られた値に起因する一般的な標準偏差または誤差を認識するであろう。
【0237】
本発明の背景を説明し、その実践に関して追加的詳細を提供するための本明細書において言及される出版物、ウェブサイト及びその他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
そのゲノム中に内因性C9orf72座位内に挿入された異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む非ヒト動物または非ヒト動物細胞であって、前記配列は、前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも一個含有する、非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目2)
前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも30個含有する、項目1に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目3)
前記ヘキサヌクレオチドリピート伸長は、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも90個含有する、項目1または項目2に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目4)
前記非ヒト動物または非ヒト動物細胞が、(i)野生型C9orf72座位を含有する対照動物と比較してC9orf72転写物発現の増加、(ii)野生型C9orf72座位を含有する対照動物と比較してRNA凝集体数の増加、(iii)野生型C9orf72座位を含有する対照動物と比較してジペプチドリピートタンパク質レベルの増加、または(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ、を示す、項目1~3のいずれか一項に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目5)
前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、内因性C9orf72座位の最初の非コード内因性エクソンとエクソン2の間に位置付けられる、項目1~4のいずれか一項に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目6)
前記内因性C9orf72座位が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7として明記されるヌクレオチド配列、またはそのバリアントを含有する、項目5に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目7)
前記非ヒト動物が、齧歯類であるか、または前記非ヒト動物細胞が、齧歯類細胞である、項目1~6のいずれか一項に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目8)
前記齧歯類がラットもしくはマウスであるか、または前記非ヒト動物細胞がラット細胞もしくはマウス細胞である、項目7に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目9)
前記非ヒト動物がマウスであるか、または前記非ヒト動物細胞がマウス細胞であり、前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを92個含有し、ならびに前記マウスまたはマウス細胞が、以下の三つの特徴、(i)野生型C9orf72座位を含有する対照動物と比較してC9orf72転写物発現の増加、(ii)野生型C9orf72座位を含有する対照動物と比較してRNA凝集体数の増加、および(iii)野生型C9orf72座位を含有する対照動物と比較してジペプチドリピートタンパク質レベルの増加、のすべてを示す、項目8に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目10)
前記非ヒト動物が、前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列に対してホモ接合性である、項目1~9のいずれかに記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目11)
前記非ヒト動物が、前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列に対してヘテロ接合性である、項目1~9のいずれか一項に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目12)
前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列が、第一の異種ヘキサヌクレオチド伸長配列であり、前記非ヒト動物または非ヒト動物細胞が、第二の異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列に対してもヘテロ接合性であり、前記第一の伸長配列が、前記第二の異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列とは異なるリピート数を有する、項目11に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目13)
前記第一の異種リピート伸長配列が、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを1~3個含有し、前記第二の異種リピート伸長配列が、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを4~100個含有する、項目12に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目14)
前記非ヒト動物細胞が、胚性幹細胞、胚性幹細胞から誘導された運動ニューロン、脳細胞、皮質細胞、神経細胞、筋細胞、心細胞、または生殖細胞である、項目1~13のいずれか1項に記載の非ヒト動物または非ヒト動物細胞。
(項目15)
項目14に記載の胚性幹細胞から誘導された不死化細胞株または運動ニューロン。
(項目16)
そのゲノムが内因性C9orf72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む非ヒト動物胚性幹細胞であって、前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記されるヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも一個含有する、非ヒト動物胚性幹細胞。
(項目17)
項目16に記載の胚性幹細胞から作製される非ヒト動物胚。
(項目18)
そのゲノムがヘキサヌクレオチド配列を含む非ヒト動物の作製方法であって、前記方法が、
そのゲノムが内因性C9orf72座位中に異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含むように、前記非ヒト動物のゲノムを改変することであって、前記異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列は、配列番号1として明記される前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも一個含有する、改変することを含む、方法。
(項目19)
前記改変することが、
(a)挿入核酸を含む核酸構築物を非ヒト胚性幹細胞内に導入することであって、前記挿入核酸は、5’から3’方向に、(i)前記C9orf72座位の5’標的配列に対して相同な5’相同アーム、(ii)異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列、および(iii)前記C9orf72座位の5’標的配列に対して相同な3’相同アーム、を含有する、導入すること、
(b) (a)から遺伝子改変された齧歯類胚性幹細胞を取得すること、および、
(c) (b)の前記遺伝子改変された齧歯類胚性幹細胞を使用して齧歯類を作製すること、を含むプロセスにより達成される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記挿入核酸が、5’相同アームと3’相同アームの間に、一つ以上の選択マーカーをコードする一つ以上の遺伝子をさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記挿入核酸が、5’相同アームと3’相同アームの間に、一つ以上の部位特異的組み換え部位をさらに含む、項目19または20に記載の方法。
(項目22)
前記挿入核酸が、5’相同アームと3’相同アームの間に、リコンビナーゼ認識部位に隣接したリコンビナーゼ遺伝子と選択マーカーをさらに含み、前記リコンビナーゼ認識部位は、除去を誘導するよう方向づけられる、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記5’相同アームが、前記内因性C9orf72座位のエクソン1またはその一部に対して同一であるか、または実質的に同一である、項目19~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記5’相同アームが、配列番号20または配列番号23として明記される前記ヌクレオチド配列を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記3’相同アームが、前記内因性C9orf72座位のイントロン1の少なくとも一部に対して同一であるか、または実質的に同一である、項目19~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記3’相同アームが、配列番号22または配列番号25として明記される前記ヌクレオチド配列を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記挿入核酸が、配列番号2または配列番号4として明記される核酸配列を含む、項目18~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記挿入核酸が、配列番号3または配列番号6として明記される核酸配列を含む、項目18~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記挿入に対しホモ接合性の齧歯類が作製されるように、(c)で作製された前記齧歯類を交配させる工程をさらに含む、項目18~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記非ヒト動物が齧歯類である、項目18~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記齧歯類がマウスまたはラットである、項目30に記載の方法。
(項目32)
項目18~31のいずれか一項に記載の方法により取得可能な非ヒト動物。
(項目33)
ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列の存在と関連した疾患または状態の治療のための治療剤候補物質を特定する方法であって、
(a)候補物質を、配列番号1として明記された前記ヘキサヌクレオチド配列のリピートを少なくとも一個含むヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含むよう遺伝子改変されたC9ORF72座位を含む非ヒト動物または非ヒト動物細胞に投与すること、
(b)前記候補物質が前記疾患または状態に関連した兆候、症状および/または状態の一つ以上に対する効果を有するかどうかを決定するためのアッセイを1種以上実施しすること、および
(c)前記疾患または状態と関連した兆候、症状および/または状態に対する効果を有する前記候補物質を前記治療剤候補物質として特定すること、を含む、方法。
(項目34)
前記候補物質が、非ヒト動物にin vivoで投与され、および任意で、前記アッセイが、前記候補物質の投与後に前記非ヒト動物から単離された組織に対してin vitroで行われる、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記候補物質が、非ヒト胚性幹細胞から誘導された運動ニューロンに対してin vitroで投与される、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記アッセイが、C9orf72遺伝子産物を検出する定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)である、項目33~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
qPCRは、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、またはそれらの任意の組み合わせに明記されるヌクレオチド配列を有するプライマーおよび/またはプローブを用いて実施される、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記アッセイは、C9orf72のセンスRNA転写物またはアンチセンスRNA転写物を含むRNA凝集体を測定する、項目33~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記アッセイは、配列番号81、配列番号82、配列番号83、および/または配列番号84のいずれか一つに明記されるヌクレオチド配列を有するプローブを一つ以上使用した蛍光in situハイブリダイゼーションである、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記アッセイは、ポリGAジペプチドリピートタンパク質を測定する、項目33~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
異種ヘキサヌクレオチドリピート伸長配列を含む宿主細胞。
(項目42)
前記宿主細胞は、細菌細胞である、項目41に記載の宿主細胞。
(項目43)
Casタンパク質および/または一つ以上のgRNAを含むCRISPR/Casシステムであって、前記一つ以上のgRNAは、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含むDNAによりコードされる、CRISPR/Casシステム。
(項目44)
前記一つ以上のgRNAが、第一、第二、および第三のgRNAを含み、前記第一のgRNAは、配列番号39として明記される配列を含むDNAによりコードされ、前記第二のgRNAは、配列番号44として明記される配列を含むDNAによりコードされ、および前記第三のgRNAは、配列番号50として明記される配列を含むDNAによりコードされる、項目43に記載のCRISPR/Casシステム。
(項目45)
配列番号47として明記される配列を含むDNAによりコードされる第四のgRNAをさらに含む、項目44に記載のCRISPR/Casシステム。
(項目46)
第五、第六、および第七のgRNAをさらに含み、前記第五のgRNAは、配列番号46として明記される配列を含むDNAによりコードされ、前記第六のgRNAは、配列番号48として明記される配列を含むDNAによりコードされ、および前記第七のgRNAは、配列番号49として明記される配列を含むDNAによりコードされる、項目45に記載のCRISPR/Casシステム。
(項目47)
前記gRNAが、配列番号63、64、または65として明記される配列を含むDNAによりコードされるtracrRNAを含む、項目42~46のいずれか一項に記載のCRISPR/Casシステム。
(項目48)
前記tracrRNAが、配列番号63として明記される配列を含むDNAによりコードされる、項目47に記載のCRISPR/Casシステム。
(項目49)
前記tracrRNAが、配列番号64として明記される配列を含むDNAによりコードされる、項目47に記載のCRISPR/Casシステム。
(項目50)
前記tracrRNAが、配列番号65として明記される配列を含むDNAによりコードされる、項目47に記載のCRISPR/Casシステム。
(項目51)
発現構築物をさらに含み、前記発現構築物が、前記Casタンパク質をコードする核酸および/または少なくとも一つのgRNAをコードするDNAを含み、任意で前記発現構築物が薬剤抵抗性遺伝子をさらに含む、項目43~50のいずれか一項に記載のCRISPR/Casシステム。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
【配列表】
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