(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】金属製造プロセスのための炉アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F27B 3/10 20060101AFI20220218BHJP
F27B 3/18 20060101ALI20220218BHJP
F27D 27/00 20100101ALI20220218BHJP
【FI】
F27B3/10
F27B3/18
F27D27/00
(21)【出願番号】P 2019543351
(86)(22)【出願日】2017-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2017052941
(87)【国際公開番号】W WO2018145754
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2019-11-11
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(73)【特許権者】
【識別番号】517278059
【氏名又は名称】テノヴァ エッセ. ピ. ア.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トン, リトン
(72)【発明者】
【氏名】レーマン, アンデルス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ホンリャン
(72)【発明者】
【氏名】グラッセッリ, アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】レアーリ, シルヴィオ マリア
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/192866(WO,A1)
【文献】特開平06-050666(JP,A)
【文献】特開昭62-041577(JP,A)
【文献】特開平10-078291(JP,A)
【文献】特開昭62-073591(JP,A)
【文献】特表2014-519551(JP,A)
【文献】特開2004-251530(JP,A)
【文献】特開2014-210972(JP,A)
【文献】特開平09-061065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 1/00- 3/00
C21C 5/02- 5/06
C21C 5/52- 5/56
F27B 1/00- 3/28
F27D 3/00- 5/00
F27D 17/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ間サイクル中に連続的に又は小バケットで金属を受け入れるフラットバス操業用に構成され、底部(3a)、炉壁及び炉蓋を有する電気アーク炉(3)と、
電気アーク炉(3)内の溶融金属(M)の撹拌を可能にするために、電気アーク炉(3)の底部(3a)の下に配置されるように構成された電磁撹拌機(5)と
を備え、
金属装入領域(11)が、電気アーク炉(3)の底部(3a)の中心点に対して偏心して配置され、
電磁撹拌機(5)が、進行磁界を撹拌方向軸に沿う第一の方向に発生させるように構成された複数のコイルを備え、電磁撹拌機(5)が、電気アーク炉(3)の中心線を通り電気アーク炉(3)のタッピング孔(3b)又は注ぎ口(3c)の中心を通って延びる中心面(7)に対して撹拌方向軸
が角度(α)をなすように配置されるように構成され、
電磁撹拌機(5)が、金属装入領域(11)に向かって又はその逆方向に溶湯流れを生じさせるように配置されている、
金属製造プロセスのための炉アセンブリ(1;1-1;1-2;1-3;1-4)。
【請求項2】
角度(α)が0°~90°の範囲にある、請求項1に記載の炉アセンブリ(1;1-1;1-2;1-3;1-4)。
【請求項3】
角度(α)が90°である、請求項1に記載の炉アセンブリ(1;1-1;1-2;1-3;1-4)。
【請求項4】
角度(α)が、0°より大きく90°より小さい、請求項1に記載の炉アセンブリ(1;1-1;1-2;1-3;1-4)。
【請求項5】
電磁撹拌機(5)が電気アーク炉(3)の下に中心を置いて配置される、請求項1から4の何れか一項に記載の炉アセンブリ(1)。
【請求項6】
電磁撹拌機(5)が、電気アーク炉の下に偏心して配置される、請求項1から5の何れか一項に記載の炉アセンブリ(1)。
【請求項7】
電磁撹拌機(5)内の電流を制御するように構成された周波数変換器と、周波数変換器を制御するように構成された制御システムとを備えた、請求項1から
6の何れか一項に記載の炉アセンブリ(1;1-1;1-2;1-3;1-4)。
【請求項8】
電気アーク炉が、電気アーク炉の側面から金属材料の装入を受けるように構成されている、請求項1から
7の何れか一項に記載の炉アセンブリ(1;1-1;1-3)。
【請求項9】
電気アーク炉が、電気アーク炉の上方から金属材料の装入を受けるように構成されている、請求項1から
8の何れか一項に記載の炉アセンブリ(1;1-2;1-3;1-4)。
【請求項10】
電気アーク炉が、金属材料の連続的な装入を受けるように構成されている、請求項
8又は
9に記載の炉アセンブリ(1;1-1;1-3;1-4)。
【請求項11】
電気アーク炉が、シャフトを介して金属材料のバケット装入を受けるように構成されている、請求項
8又は
9に記載の炉アセンブリ(1;1-2;1-3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に金属製造に関し、特に金属製造プロセスのための炉アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットバス操業(FBO)は、スクラップ、銑鉄、直接還元鉄(DRI)、溶銑、又は熱間ブリケット化鉄(HBI)などの金属材料を、炉蓋を開放しないで電気アーク炉(EAF)の炉浴中に連続的に供給するか又は小バケットで装入するプロセスである。金属の装入中、電気アークに連続的に電力供給され、金属材料が炉浴中で連続的に溶融される。このプロセスは高いエネルギー効率と少ない電極消費をもたらす。
【0003】
フラットバス溶融プロセスの一つの問題は、特に常に低温ゾーンである金属装入領域における炉浴の温度均一化である。低温ゾーンでの不完全な金属溶融は、濃度勾配、信頼性のない測定、危険なプロセス制御、過熱浴、及び過剰タップ温度などの潜在的な問題を引き起こす。この不均一な温度の問題を解決するために、炉浴の撹拌が溶湯対流を改善するために推奨される。このために、多孔質プラグによる底部ガス撹拌がこれらの炉の幾つかにおいて実施されてきた。
【0004】
底部ガス撹拌では、直接的又は間接的なガスパージを伴う多孔質プラグが底部耐火物に設置されている。炉の大きさに応じて、通常3~5個の多孔質プラグが必要とされる。撹拌強度は、ガス、典型的には窒素又はアルゴンによって、また流量と圧力によって制御される。
【発明の概要】
【0005】
底部ガス撹拌に伴う幾つかの課題がある。例えば、プラグから離間したデッドゾーンのために不完全な炉浴混合となり、炉浴内の均一化が制限される。更に、撹拌パターンと方向が、プラグの位置によって固定され、水平方向の流速が限定される。更に、多孔質プラグの周りの耐火物の磨耗がより深刻であり、底部のプラグがメルトブレイクアウトの危険点となる。最後に、多孔質プラグの寿命は底部をライニング処理した場合より短いことが多く、多孔質プラグの操業中の保全は困難で複雑な作業である。
【0006】
上記に鑑みて、本開示の目的は、従来技術の問題を解決するか、又は少なくとも軽減する金属製造プロセスのための炉アセンブリを提供することである。
【0007】
従って、フラットバス操業用に構成され、底部を有する電気アーク炉と、電気アーク炉内の溶融金属の撹拌を可能にするために、電気アーク炉の底部の下に配置されるように構成された電磁撹拌機とを備えた、金属製造プロセスのための炉アセンブリが提供される。
【0008】
それによって得ることができる効果は、炉浴中にデッドゾーンがないか又は本質的にデッドゾーンがなく、溶湯浴全体の撹拌を達成することができることである。従って、フラットバス操業用に構成された電気アーク炉を使用する更に効率的な金属製造が提供されうる。
【0009】
更に、多孔質プラグの場合のように、耐火物のライニングに悪影響を及ぼさず、溶融金属のブレイクアウトの危険性もない。加えて、電磁撹拌機コイルの長寿命はメンテナンスを殆ど必要としない。
【0010】
電磁撹拌は溶湯表面の過熱を減少させ、アークゾーンからの熱は急速にバルク溶湯に伝達される。表面過熱温度の低下は、電源投入期間中の炉壁及び炉蓋への熱損失を減少させ、それによって電力消費を減少させる。電源投入時の過熱低減の他の利点は、電気アーク炉のスラグライン領域での耐火物摩耗が少ないことである。
【0011】
フラットバス操業プロセスを行う電気アーク炉に対する電磁撹拌機によってもたらされる更なる効果は、プロセスの信頼性が著しく改善されることである。例えばスクラップとクロム鉄の急速溶融は、化学組成と温度の両方において溶湯浴の素早い均一化をもたらし、標的とされる鋼タッピング重量及び温度が確保される。炉浴全体の温度が均一であると、滑らかなタッピングがもたらされ、タッピングの遅れが少なくなる。溶湯浴中の温度成層化の排除はまたタッピング温度を低下させる。高偏心底タッピングにとらわれない開放頻度は、操業安全性と生産性の両方にとって非常に重要な利点である。
【0012】
一実施態様によれば、電気アーク炉は金属装入領域を有し、電磁撹拌機が、金属装入領域における溶融金属の撹拌をもたらすように配置されるように構成されている。
【0013】
金属装入領域は、装入した金属材料を受け入れる電気アーク炉の内部の領域である。それは、電気アーク炉の底部の一部を含み、そこで、電気アーク炉に供給された金属材料が最初に蓄積された後、電気アーク炉内の熱によって溶融され、電磁撹拌機の撹拌によって残りの溶湯と混合される。
【0014】
一実施態様によれば、金属装入領域は、電気アーク炉の底部の中心点に対して偏心して配置される。
【0015】
一実施態様によれば、電磁撹拌機は、進行磁界を撹拌方向軸に沿う第一の方向に発生させるように構成された複数のコイルを備え、電磁撹拌機は、電気アーク炉の中心を通り電気アーク炉のタップ穴又は注ぎ口を通って延びる中心面に対して撹拌方向軸が中心面に対してある角度をなすように配置されるように構成されている。
【0016】
従って、電気アーク炉内の溶融金属の撹拌方向に沿った撹拌方向軸を規定する第一の方向は、中心面と交差する。中心面は、アーク炉が操業中のとき、すなわちタップ間溶融サイクルにあるときの垂直面である。
【0017】
このようにして、撹拌力は金属装入領域に直接向けられ、従って常に低温の金属装入領域又はエリアにおいてより効率的な撹拌を達成することができる。ここで低温とは、溶湯の残りに対して低温であることを意味する。
【0018】
一実施態様によれば、角度は0°~90°の範囲にある。
【0019】
一実施態様によれば、角度は90°である。
【0020】
一実施態様によれば、角度は、0°より大きく90°より小さい。
【0021】
よって、電磁撹拌機によって生じる撹拌力は、0~90度の範囲の選択可能な角度で金属装入領域の低温スクラップゾーン領域に向けられる。この電磁撹拌機の構成は、炉内の低温金属装入領域又はゾーンに向かう又はその後方への溶湯流を作り出し、これが金属溶融及び炉温度の均一化を大きく改善する。
【0022】
一実施態様によれば、電磁撹拌機は、電気アーク炉の下に中心を置いて配置される。
【0023】
一実施態様によれば、電磁撹拌機は、電気アーク炉の下に偏心して配置される。
【0024】
一実施態様は、電気アーク炉に対する電磁撹拌機の向きを制御して角度を調整するように構成された電磁撹拌機位置制御装置を備える。
【0025】
撹拌方向を変えることができることによって、よりフレキシブルな制御がもたらされうる。例えば、電磁撹拌機を中心面に対して所定の角度に向けることによって、溶湯の十分な全体的な撹拌が、すなわち金属装入領域においても、もたらされる一方、撹拌は、欧州特許出願公開第2751510号に開示された形で、タップ穴上方の渦形成を低減しうる。
【0026】
一実施態様は、電磁撹拌機内の電流を制御するように構成された周波数変換器と、周波数変換器を制御するように構成された制御システムとを備える。
【0027】
一実施態様によれば、電気アーク炉は、電気アーク炉の側面から金属材料の装入を受けるように構成されている。
【0028】
一実施態様によれば、電気アーク炉は、電気アーク炉の上方から金属材料の装入を受けるように構成されている。
【0029】
一実施態様によれば、電気アーク炉は、金属材料の連続的な装入を受けるように構成されている。
【0030】
電気アーク炉は、例えばコンベヤベルト又はランナによる金属材料の連続的な装入を受けるように構成されうる。代替的に又は追加的に、電気アーク炉は、電気アーク炉の炉蓋の穴から金属材料の連続的な装入を受けるように構成されてもよい。これに関連して、蓋、又は炉蓋には、電気アーク炉内への金属材料の頂部供給を可能にするための貫通開口部又は穴が設けられうる。
【0031】
一実施態様によれば、電気アーク炉は、シャフトを介して金属材料のバケット装入を受けるように構成される。
【0032】
一般に、特許請求の範囲において使用される全ての用語は、ここで他に明示的に定義されない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。特に明記されない限り、部材、装置、構成要素、手段などに対する全ての言及は、部材、装置、構成要素、手段などの少なくとも一例に言及しているものとしてオープンに解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の概念の特定の実施態様が、以下の添付図面を参照して、例としてここに説明される。
【
図1】電気アーク炉と電気アーク炉の下に設けられた電磁撹拌機との一部透視上面図を概略的に示す;
【
図2a-5b】一部透視上面図及び断面図で炉アセンブリの様々な例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の概念は、例示的な実施態様が示されている添付の図面を参照して以下により十分に説明される。しかしながら、本発明の概念は多くの異なる形態で具体化されてもよく、ここに記載の実施態様に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施態様は、この開示が十分でかつ完全なものとなり、本発明の概念の範囲を当業者に十分に伝えるように、例示として提供されるものである。明細書全体を通して、同じ番号は同じ部材を指す。
【0035】
本開示は、金属製造プロセス用の炉アセンブリに関する。金属製造プロセスは、例えば、製鋼プロセス、アルミニウム製造プロセス、又は鉛製造プロセスでありうる。
【0036】
炉アセンブリは、電気アーク炉と、電気アーク炉の下に配置されるように構成され、それによって電気アーク炉内の溶融金属の撹拌を可能にする電磁撹拌機とを備える。電磁撹拌機は、例えば電気アーク炉ロッカー上に取り付けられるように構成され、電気アーク炉傾倒システムと共に回転されるように構成され得、あるいは電磁撹拌機は、例えば、固定されるか又はタッピング操作時に電気アーク炉の底部と同期して回転するように構成された、例えばトロリー上のような、別個の支持構造上で電気アーク炉の下部に取り付けられるように構成されうる。
【0037】
ここに提示された電気アーク炉は、フラットバス操業用に構成されている。ここでは、電気アーク炉は、タップ間サイクル中に金属を連続的に受け入れるように構成されている。この目的のために、電気アーク炉はタップ間サイクル中に金属が連続的に装入されるように構成されている。装入アセンブリ及び電気アーク炉は、例えば、Consteel(登録商標)、Quantum(登録商標)、又はEcoArc(登録商標)手順/アセンブリ、又は電気アーク炉の炉蓋からの連続的なDRI供給用に構成されうる。従って、電気アーク炉は、例えば、電気アーク炉の側面から金属材料が装入されるように構成することができ、その場合、電気アーク炉は、シャフト炉として構成することができる。あるいは、電気アーク炉は、炉蓋から金属材料が装入されるように構成されてもよい。金属材料は予熱されていても、高温でも低温でもよい。
【0038】
図1は、金属製造用の炉アセンブリ1の一例の一部透過上面図を概略的に示す。炉アセンブリ1は、タップ間サイクル中に金属材料を受け入れて保持するように構成された本体又は炉殻を有する電気アーク炉3を備える。
【0039】
本体又は炉殻は、更に、その中に含まれるあらゆる金属材料を溶融するために本体又は炉殻内に降下するように配置された複数の電極を収容するように構成される。
【0040】
電気アーク炉3は、本体又は炉殻からの金属の熱のタッピングを可能にするために、タップ穴3b、あるいは代替的又は追加的に注ぎ口3cを有する底部3aを備える。タップ穴3bを含む変形例の場合、タップ穴3bは、炉殻の底部3aの中心点に対して、ずらされて、又は中心から偏心して配置される。
【0041】
炉アセンブリ1は電磁撹拌機5を更に備える。電気アーク炉3の底部3aは、非磁性窓を備え、その窓の下に電磁撹拌機5が設置されるように構成される。非磁性窓は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、又は任意の他の種類の非磁性金属材料を含みうる。
【0042】
電磁撹拌機5は、磁心と磁心の周囲に配置された複数のコイル(図示せず)を備えている。電磁撹拌機5に多相低周波AC電流を供給することができるように、複数のコイルはAC電源のそれぞれの電気位相に接続されるように構成されうる。従って、複数のコイルは、それぞれのAC電流が適切に供給されたときに、撹拌方向軸9に沿って進行磁場が生成されるように構成される。
【0043】
動作中、複数のコイルを通る低周波AC電流が、電気アーク炉の底部を貫通する進行磁界を発生させ、それによって溶融金属又は溶湯に力を発生させる。磁場は溶湯の深さ全体を貫通するので、溶湯は、電気アーク炉の全直径/幅を横切って撹拌方向軸9に沿って炉浴の深さ全体にまで、同じ方向に流れる。溶湯は、電気アーク炉壁に到達した後、電気アーク炉の側面に沿って逆流する。
【0044】
更に、
図1には、底部3aの中心点及びタップ穴3bの中心を通って、又は注ぎ口3cがある場合には注ぎ口3cの中心を通って延びる中心面7が示されている。この面は、典型的には、炉アセンブリ1が金属工場(works)又は金属工場(mill)、例えば製鉄所又はアルミニウム工場に設置されたときの垂直面である。
【0045】
電磁撹拌機5は、中心面7と中心面7に交差する撹拌方向軸9との間に角度αが存在するように構成される。
図1に示された例では、角度αは90°である。
【0046】
一変形例によれば、中心面7と撹拌方向軸9との間の角度αは、0°~90°の範囲内にありうる。例えば、角度αは0°であり得、又は角度αは0°より大きく90°未満でありうる。この後者の場合、電磁撹拌機5は中心面7に対して傾斜しているか又は斜めに配置される。電磁撹拌機5は電気アーク炉の中心に対して電気アーク炉の下に中心を置いて配置され得、又は中心からずらされて配置されうる。
【0047】
中心面7に対する電磁撹拌機の向きは、手動で又は自動化された形で調節することができる。例えば、炉アセンブリは、電気アーク炉3に対する、特に中心面7に対する電磁撹拌機5の向きを制御し、それによって角度αを調節するように構成された電磁撹拌機位置制御装置を備えうる。角度αは、例えば、必要な溶湯の全体的な撹拌の瞬間量に基づいて、及び電気アーク炉3がタップ穴を有する場合にはタップ穴3aの上方での渦低減の必要性に基づいて調節し又は制御することができる。従って、電磁撹拌機5の向きは、最適な全体的撹拌と渦低減の間の妥協点でありうる。
【0048】
電気アーク炉3はまた金属装入領域11を有しており、これは炉殻内に連続的に装入される金属材料が最初に電気アーク炉3内に蓄積される本体又は炉殻の底部3aの領域である。
図1の例に示されるように、金属装入領域11は、底部3aの中心に対して偏心して配置されてもよい。あるいは、金属装入領域11は、底部3aの中心に又は本質的に中心に配置されてもよい。
【0049】
電気アーク炉が、炉蓋の貫通開口部又は穴を通して金属材料が装入されるように構成されている場合、金属装入領域11は、典型的には本体又は炉殻の底部にではなく、溶湯の表面又はメニスカス上にある。この場合、金属装入領域は、電気アーク炉の水平断面内の中心に配置されてもよく、又は中心から外れて配置されてもよい。
【0050】
電磁撹拌機5は、電磁撹拌機5によって生成される撹拌力が、金属装入領域11によって形成された低温ゾーンに、又は中心面7に対する電磁撹拌機5の向きに応じて90°までの角度で、向けられるように配置される。それにより、電気アーク炉3内の金属装入領域11に向かって又はその逆方向に溶湯流れを生じさせることができ、これが、ガスと組み合わせて多孔質プラグを使用する場合又は使用しない場合と比較して、金属溶融及び温度均一化を大きく改善する。前述のように、電磁撹拌機5は電気アーク炉の下に中心を置いて配置されてもよく、又は中心を外して配置されてもよい。後者の場合、電磁撹拌機は、例えば、金属装入領域11の下に、中心面7に対して0°から90°の間の何れかの角度αで配置することができる。
【0051】
炉アセンブリは、電磁撹拌機の複数のコイル内の電流を制御し、それによって炉殻に含まれる溶融金属又は溶湯の撹拌を制御するように構成された図示しない電力変換器、典型的には周波数変換器を備えうる。この場合、炉アセンブリは、また、周波数変換器を制御し、それによって電磁撹拌機内の電流を制御するように構成された制御システムを備えうる。
【0052】
炉アセンブリの様々な例が、
図2a~5bを参照して以下に示される。
【0053】
図2aは、フラットバス操業を行う炉アセンブリ1の一例の一部透視底面図を示す。例示された炉アセンブリ1-1には、コンベヤベルト4によって炉殻の側面から金属材料が連続的に供給される。電磁撹拌機5は、電気アーク炉3の底部の下方に配置されている。実線で示された電磁撹拌機5は、
図1に示される中心面7に対して90°である角度αで描かれている。電磁撹拌機5はまた破線で他の向きでも示されており、そこでは、角度αは中心面7に対して0°である。電磁撹拌機5は、0°~90°の間の任意の角度α又は0°~90°の間の本質的に任意の角度αを伴う向きになるように構成されうる。例えば、電磁撹拌機が電動機で駆動される場合、全ての角度を達成することが可能であるとは限らず、実際の配向は電磁撹拌機位置制御装置によってもたらされる分解能に依存しうる。
【0054】
図2bには、
図2aのA-A線に沿った断面である炉アセンブリ1-1の断面図が示されている。ここでは、溶湯M中に浸漬されている電極13、並びに金属装入領域11がまた示されている。この例によれば、金属材料は、側面から電気アーク炉3に向かって移動するコンベアベルト4によって炉殻又は本体に連続的に装入することができる。
【0055】
図3aは、フラットバス操業を行う炉アセンブリ1の他の例の一部透視上面図を示す。例示された炉アセンブリ1-2には、電気アーク炉3の上方に配置されたシャフト15を介して、炉頂から例えば電気アーク炉3における偏心位置に金属材料が供給される。電磁撹拌機5はまた
図1に示される中心面7に対して0°~90°の範囲内に向けることができる。
図3bは、B-B線に沿った断面を通して炉アセンブリ1-2を示す。
【0056】
図4aは、フラットバス操業を行う炉アセンブリ1の他の例の一部透視上面図を示す。例示された炉アセンブリ1-3には、側部からコンベヤベルト4を介して金属材料が連続的に供給され、それはまた電気アーク炉3の上方に配置されたシャフト15を介して炉頂から装入される。供給は、コンベアベルトとシャフトによって交互に、又は同時にもたらされうる。この例では、電気アーク炉は溶湯をタッピングするための注ぎ口を有しているが、代わりにタップ穴を設けてもよい。
【0057】
この場合もまた、電磁撹拌機5は、
図1に示された中心面7に対して0°~90°の範囲内で配向されるように構成することができる。
図4bは、C-C線に沿った断面を通して炉アセンブリ1-3を示す。
【0058】
図5aは、フラットバス操業を行う炉アセンブリ1の他の例の一部透視上面図を示す。例示された炉アセンブリ1-4には、コンベアベルト又はランナによって電気アーク炉3の上方から連続的に金属材料が供給される。電気アーク炉3の炉蓋には、コンベヤベルト又はランナによって電気アーク炉3内に金属材料を供給するための貫通開口部16、すなわち供給穴、例えば「第5の穴」が設けられている。金属材料は、例えば直接還元鉄を含むか又は直接還元鉄でありうる。
【0059】
電磁撹拌機5は、前述のように、
図1に示される中心面7に対して0°~90°の範囲内で配向させることができる。
図5bは、D-D線に沿った断面を通して炉アセンブリ1-3を示す。
【0060】
連続供給に使用される金属材料は、例えば、スクラップ、フェロアロイ、直接還元鉄、熱間ブリケット化鉄、銑鉄、溶銑、又は金属材料と酸化物の混合物でありうる。
【0061】
本発明の概念を主に幾つかの例を参照して上に説明した。しかし、当業者には容易に理解されるように、上に開示されたもの以外の他の実施態様も、添付の特許請求の範囲によって定まる本発明の概念の範囲内で同様に可能である。