(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】人体消毒装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
A61L2/18
(21)【出願番号】P 2020077115
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】520146226
【氏名又は名称】▲高▼部 義幸
(73)【特許権者】
【識別番号】520146237
【氏名又は名称】湯淺 浩治
(73)【特許権者】
【識別番号】504339882
【氏名又は名称】増井 吉晴
(73)【特許権者】
【識別番号】504339723
【氏名又は名称】富田 阿津子
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼部 義幸
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 浩治
(72)【発明者】
【氏名】増井 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】富田 阿津子
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074211(JP,A)
【文献】特開2011-067498(JP,A)
【文献】登録実用新案第3165150(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0944801(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00- 2/28
A61L 11/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を噴霧するノズル(2)を複数個有す
る左右一対の柱状噴霧器(1)と、
上記柱状噴霧器(1)の基端を固着した基板(8)と、
薬液を上記柱状噴霧器(1)のノズル(2)に送るポンプユニット(4)と、
上記ノズル(2)からの薬液噴霧をON-OFFさせるスイッチ手段(6)と、
を備え
、
上記スイッチ手段(6)が、上記柱状噴霧器(1)の通り抜け手前位置に設置されて、
通行者が足で踏んで作動する矩形平板状のフットスイッチであると共に、
矩形平板状の上記フットスイッチは、左右一対の上記柱状噴霧器(1)(1)の間隔の
70%以上の幅を有し、
通行者が通り抜ける際に、該フットスイッチを踏むと、時差をもって、上記柱状噴霧器(1)(1)のノズル(2)から薬液が噴霧するように連動させたことを、
特徴とする人体消毒装置。
【請求項2】
上記フットスイッチによる薬液噴霧のON-OFF作動に連動して開閉作動する遮断器(10)を、上記柱状噴霧器(1)の近傍であって、かつ通行者の通り抜け終了の位置に配置した請求項1記載の人体消毒装置。
【請求項3】
上記柱状噴霧器(1)は、テレスコピック構造として、伸縮自在である請求項1
又は2記載の人体消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細菌やウイルスによる感染症を予防するための人体消毒装置として、通路や出入り口等に設置できるプレハブ式で組み立て分解自在にユニット化した殺菌システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の消毒装置は、設置された建物等に入る人が、壁面体により構成される通路空間を通る間に殺菌されるものであり、設置場所が大きくなり、かなりの規模を有する建物でなければ設置困難であるという欠点があった。また、組立、設置に時間を要するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、容易に短時間で、狭い場所に設置でき、小規模な建物等にも適した人体消毒装置を提供することを目的とする。また、簡易な構成でありながら、確実に消毒を行える人体消毒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る人体消毒装置は、薬液を噴霧するノズルを複数個有する左右一対の柱状噴霧器と、上記柱状噴霧器の基端を固着した基板と、薬液を上記柱状噴霧器のノズルに送るポンプユニットと、上記ノズルからの薬液噴霧をON-OFFさせるスイッチ手段と、を備え、上記スイッチ手段が、上記柱状噴霧器の通り抜け手前位置に設置されて、通行者が足で踏んで作動する矩形平板状のフットスイッチであると共に、矩形平板状の上記フットスイッチは、左右一対の上記柱状噴霧器の間隔の70%以上の幅を有し、通行者が通り抜ける際に、該フットスイッチを踏むと、時差をもって、上記柱状噴霧器のノズルから薬液が噴霧するように連動させた。
【0007】
また、上記フットスイッチによる薬液噴霧のON-OFF作動に連動して開閉作動する遮断器を、上記柱状噴霧器の近傍であって、かつ通行者の通り抜け終了の位置に配置した。
また、上記柱状噴霧器は、テレスコピック構造として、伸縮自在である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の人体消毒装置によれば、容易に短時間で、狭い場所に設置できる。身長が相違する一定人数の通行者のグループに対して、殺菌、消毒を行うことができる。また、簡易な構成でありながら、確実に消毒を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】別の実施形態の使用状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1、
図2に示した本発明の人体消毒装置の実施の形態に於て、1は、殺菌、消毒用の薬液を噴霧するための柱状噴霧器であり、左右一対が配設される。2は、薬液を噴霧するノズルであり、柱状噴霧器1に形成される。3は、薬液チューブ3aを保護するチューブ保護部材であり、4は、薬液を柱状噴霧器1のノズル2へ送るポンプユニットであり、5は、薬液を貯留するための薬液タンクであり、6は、上記ノズル2からの薬液噴霧をON-OFF作動させるためのスイッチ手段である。
図1、
図2に示した実施の形態に於ては、スイッチ手段6はフットスイッチである場合を例示している。矢印Yは、通行者が通る進行方向を示す。10は遮断器であるが、詳細は後述する。
【0011】
柱状噴霧器1の基端は、基板8に固着され、柱状噴霧器1と基板8により構成されたユニットにより、通行者が左右一対の柱状噴霧器1,1の間を通るように並設されている。また、薬液を柱状噴霧器1に供給する薬液チューブ3aが、通行者に踏まれて変形、破損することを防止するため、チューブ保護(筒状)部材3が薬液チューブ3aを保護している。
【0012】
柱状噴霧器1は、薬液を噴霧するノズル2を複数個上下所定ピッチで備える。
また、ポンプユニット4は、ケース14内に、(図示省略の)ポンプ、電動モータ、バルブ、配管等を備えている。なお、ポンプユニット4に複数の車輪を取付けて、移動しやすくすることも好ましい。
ポンプユニット4は、人体消毒装置の使用頻度に応じて定期的にエアパージを行って、ノズル2内で、また薬液チューブ3a内で薬液成分が固まって詰まることを防止している。
また、薬液タンク5には、使用する場所において予想される細菌、ウイルス、あるいは花粉等に応じて(各々に対して)効果的であると考えられる薬液を入れ替えて使用する。また、タンク5内の薬液成分の分離、沈殿防止のため、定期的にポンプユニット4がエアを送って攪拌するように構成する。また、タンク5を複数個設けて、2種類以上の薬液を状況に応じて切り換えて使用できるようにするも好ましい。
【0013】
柱状噴霧器1は、伸縮自在のいわゆるテレスコピック構造であり、伸縮する各部分の摩擦力により使用時の高さを決めることができる。または、手動ノブ付ネジにて所定高さで固定可能とする。これにより、消毒される通行者グループの予想される身長に応じて柱状噴霧器1の高さを変更できる。例えば、幼稚園児、小学生等、使用者の平均身長が低い場合に、柱状噴霧器1を低くして対応できる。また、人体消毒装置を移動させる際に、柱状噴霧器1の高さを低くして、移動しやすくすることができる。また、図示省略するが、柱状噴霧器1が取り付けられる基板8に、複数の車輪を取付けると、さらに移動しやすくすることができる。設置時に人体消毒装置を固定するため、車輪はストッパ付きのものが望ましい。
【0014】
建物の入口や公園等に設置した人体消毒装置に対し、通行者が(
図1,
図2の矢印Y方向に)歩行して通り抜けようとする際に、スイッチ手段(フットスイッチ)6を踏むと、時差をもって連動して柱状噴霧器1のノズル2から
図3に示すように薬液が噴霧される。時差をもって連動することで、通行者が左右一対の柱状噴霧器1の間にちょうど達したときに全身にまんべんなく薬液が噴霧されることがわかる。フットスイッチ6の幅は、左右一対の柱状噴霧器1の間隔の70%以上であり、通行者が通路の中心から外れた部分を通過した場合にも確実に作動できる。
【0015】
薬液が噴霧される際、通行者が早く柱状噴霧器1を通りすぎてしまうと、薬液が充分に通行者に付着せず、殺菌、消毒効果が不十分になる虞れがある。これを防止するため、通行者が入ろうとする建物の内部側の近傍に、スイッチ手段6のON-OFF作動と連動して短時間(2~5秒間)閉じる遮断器10を配置している。遮断器10が閉じることで、通行者が一時的に立ち止まることを促し、噴霧された薬液が充分に通行者に付着して、薬液の殺菌、消毒効果が十分に発揮されるようにしている。なお、遮断器10に、複数の車輪を取付けて移動しやすくすることも好ましい。
【0016】
図示省略するが、通行者の体温を検出するセンサを設けて遮断器10と連動させて、体温が通常よりも高い通行者、すなわち感染症に感染している可能性が高い通行者が通ろうとした際に閉じるように構成し、感染している可能性が高い通行者が建物内に立ち入らないようにすることも可能である。また、感染している可能性が高い通行者が検知された場合、検出センサが建物の管理事務所へ自動的に通知する様に構成することも望ましい。
【0017】
上述の
図1,
図2では、スイッチ手段6がフットスイッチである場合を示したが、スイッチ手段6は、通行者の接近を検知する柱状噴霧器1に設けたセンサスイッチであってもよい(図示省略)。この場合、通行者の接近を検知するセンサスイッチと、上述の通行者の体温を検出するセンサ、及び通行者の身長を検出するセンサ等を統合した検知センサシステムを構成することも望ましい。
【0018】
また、上述の
図1,
図2では、スイッチ手段6及び遮断器10は1組が設置され、通行者が建物等に入る場合を想定して説明したが、
図4に示すように柱状噴霧器1の入口側と出口側の両側にスイッチ手段6及び遮断器10を1組ずつ設置して、通行者が建物等に入る際と出る際の両方とも消毒を行うように構成することも好ましい。この場合、通行者が通らないときには、遮断器10は両側とも開いており、通行者が建物等から出る際には、建物等の内部側に設置されたスイッチ手段6により通行者の接近を検知し、建物等の外部側に設置された遮断器10を開閉して、通行者の殺菌、消毒を行う。通行者が建物等に入る際は、上述の
図1,
図2の実施例と同様である。
【0019】
通行者が建物等に入る場合、建物等から出る場合のいずれにおいても、通行者の身長を検出するセンサを上述の検知センサシステムに組み込むことが望ましい。これにより、柱状噴霧器1が有するノズル2(上述の実施例では12個)の内、通行者の身長に応じた適切な数(3~12個)を自動的に作動させ、各人に適切な量の薬液が噴霧できるため、薬液の使用量を削減しつつ適切な殺菌、消毒効果を維持できる。また、より消毒を徹底するため、柱状噴霧器1の近傍に、通行者が手を入れて消毒できる手指消毒器を併設することも望ましい。
【0020】
本発明の人体消毒装置に使用される薬液は、目標とする細菌等に対応したものを適宜選択するが、例えば、大豆抽出アミノ酸を含んだアミノ酸混合液と、精製水ならびに特殊還元性アルカリイオン水と、ブチレングリコールと、界面活性剤と、キレート剤と、を有する抗菌剤である。噴霧される抗菌剤の粒径は、ウイルスに対応することを考慮すると、20~30μmであることが望ましい。
【0021】
図5に、本発明の別の実施形態の使用状態を示す。上述の
図1~4の実施形態に、通行者の足元、特に靴底を消毒できる構成を追加したものである。
靴底には、各種の汚物や、雑菌、その他の汚染物が付着する可能性が高く、感染症予防が必要な建物等に、靴底に付着した病原体、汚染物質が侵入することを防止するため、
図5に示す靴底消毒用のノズル2と金網20を追加する。
金網20は、基板8の両側にわたって設置され、基板8からわずかに高くなるように形成されている。
金網20の上面部には、噴霧された薬液が通る開口部を多数有し、金網20の側部は、開口部を有さず、ノズル2から噴霧された薬液をはね返して金網20の上面開口部に導くように構成される。
この構成により、薬液の使用量を削減しつつ靴底を十分に殺菌、消毒できる。
【0022】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、柱状噴霧器1は四角柱形のものを図示したが、円柱状、あるいは多角柱状のものでもよい。また、遮断器10は、バーが垂下状から水平状へとはね上がる形のものを例示したが、扉が開閉する形式のものでもよい。また、上述の実施の形態ではスイッチ手段6が薬液噴霧をON-OFF作動させるが、通行者の人数が少ない場所においては、スイッチ手段6がポンプユニット4をON-OFFさせるように設定するも可である。
【0023】
本発明は、以上詳述したように、薬液を噴霧するノズル2を複数個有する伸縮自在の左右一対の柱状噴霧器1と、上記柱状噴霧器1の基端を固着した基板8と、薬液を上記柱状噴霧器1のノズル2に送るポンプユニット4と、上記ノズル2からの薬液噴霧をON-OFFさせるスイッチ手段6と、を備えたので、通行者の身長に合わせて適量の薬液を噴霧して、通行者の全身を確実に消毒できる。また、構成が簡易であり、移動容易であるので、消毒が必要な多様かつ広範囲の場所で使用できる。
【0024】
また、スイッチ手段6が、通行者が足で踏んで作動するフットスイッチであるので、通行者が柱状噴霧器1を通過する際に確実にノズル2を作動させることができる。
【0025】
また、スイッチ手段6が、通行者の接近を感知するセンサスイッチであるので、通行者が柱状噴霧器1に接近すると、センサが検知して確実にノズル2を作動させることができる。
【0026】
また、上記スイッチ手段6による薬液噴霧のON-OFF作動に連動して開閉作動する遮断器10を上記柱状噴霧器1の近傍に配置したので、通行者が柱状噴霧器1を通過する際に、短時間立ち止まることとなり、噴霧された薬液を確実に通行者に浴びせることができる。
【0027】
また、上記基板8に複数個の移動用車輪を付設したので、移動が一層容易となり、消毒が必要な多様かつ広範囲の使用場所で使用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 柱状噴霧器
2 ノズル
4 ポンプユニット
5 薬液タンク
6 スイッチ手段
8 基板
10 遮断器