(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】動力資源タンクを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20220218BHJP
B29C 33/52 20060101ALI20220218BHJP
B29C 33/54 20060101ALI20220218BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/52
B29C33/54
B29C45/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020144143
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】A 50758/2019
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】516256272
【氏名又は名称】ケーティーエム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】KTM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ロッホナー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ラヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト シュタードルバウアー
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-236609(JP,A)
【文献】特開平10-119055(JP,A)
【文献】特開2003-291208(JP,A)
【文献】特開2002-160266(JP,A)
【文献】特開2017-202573(JP,A)
【文献】特開2007-315873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0019551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の
プラスチックから成る動力資源タンク(1)を製造する方法であって、
中子材料から形成された中子(2)を提供するステップであって、前記中子(2)は、少なくとも1つの保持領域(3)を有していて、該保持領域(3)を介して、前記中子(2)を金型(4)内またはプラスチック賦形機内に保持する、ステップと、
プラスチック溶融物(8)により前記中子(2)を取り囲むステップであって、前記中子(2)を金型(4)内またはプラスチック賦形機内に保持する前記少なくとも1つの保持領域(3)において、前記動力資源タンク(1)に少なくとも1つの開口(5)を残す、ステップと、
前記中子材料を前記動力資源タンク(1)から残っている前記開口(5)を介して除去するステップと、
を含む方法において、
前記中子(2)の、前記少なくとも1つの保持領域(3)とは別の制限された部分領域に、形状安定性の機能エレメント(7)を配置し、該機能エレメント(7)を、前記プラスチック溶融物(8)による前記取囲み中に、前記中子(2)によって保持し、前記プラスチック溶融物(8)による前記取囲み時に、前記動力資源タンク(1)の内側の表面(9)を形成し、前記プラスチック溶融物(8)による前記取囲み時に、前記内側の表面(9)に前記機能エレメント(7)を結合し、前記機能エレメント(7)を、前記プラスチック溶融物(8)の硬化および前記動力資源タンク(1)からの前記中子材料の除去後に、前記機能エレメント(7)が前記動力資源タンク(1)の内部へのアクセス部を有しているように、材料結合式かつ/または形状結合式に保持
し、
前記機能エレメント(7)が、電子的な機能エレメントを含むことを特徴とする、自動車用のプラスチックから成る動力資源タンク(1)を製造する方法。
【請求項2】
前記中子(2)は、細流性または流動性である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記機能エレメント(7)が、
センサ(12)および/または送受信ユニットを含む、請求項
1または2記載の方法。
【請求項4】
前記機能エレメント(7)が、シールエレメント(13)および/または取付けエレメント(14)を含む、請求項
1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記中子(2)の、前記少なくとも1つの保持領域(3)とは別の制限された部分領域に、
構造エレメント(6)を配置し、該構造エレメント(6)を、前記プラスチック溶融物(8)による前記取囲み中に、前記中子(2)によって保持し、前記プラスチック溶融物(8)による前記取囲み時に、前記動力資源タンク(1)の内側の表面(9)を形成し、該内側の表面(9)上に、前記構造エレメント(6)上に配置された構造特徴(10)を、前記プラスチック溶融物(8)による前記取囲み時に転写し、前記構造エレメント(6)を、前記プラスチック溶融物(8)の少なくとも部分的な硬化後に、残っている前記開口(5)を介して前記動力資源タンク(1)から除去する
、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記構造エレメント(6)は、金属製かつ/またはセラミック製である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記構造特徴(10)が、前記構造エレメント(6)の平滑な表面によって形成されている、請求項
5または6記載の方法。
【請求項8】
前記構造エレメント(6)が、面状の領域を有しており、該面状の領域上に前記構造特徴(10)が配置されている、請求項
5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記機能エレメント(7)および/または前記構造エレメント(10)を、前記プラスチック溶融物(8)による前記取囲み中に、前記中子(2)によって形状結合式かつ/または力結合式かつ/または材料結合式に保持する、請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記中子(2)が、2つの保持領域(3)を有しており、該保持領域(3)を介して、前記中子(2)を、金型(4)内またはプラスチック賦形機内に保持する、請求項1から
9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの保持領域(3)に、
保持手段(16)が配置されており、該保持手段(16)により、前記中子(2)を金型(4)またはプラスチック賦形機内に保持する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記保持手段(16)は、金属製である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記中子(2)が、少なくとも2つのセグメント(2a,2b,2c)から構成されており、それぞれ2つのセグメント(2a,2b,2c)が、結合手段(17)を介して互いに結合されており、該結合手段(17)を、前記プラスチック溶融物(8)による前記取囲み後に、残っている前記開口(5)により前記動力資源タンク(1)から除去する、請求項1から
12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記中子(2)が、砂または発泡材小球から成っている、請求項1から
13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記中子(2)が、可溶性または粉砕可能な材料から成る被覆部を有している、請求項
14記載の方法。
【請求項16】
前記中子を、3D印刷法により製造する、請求項1から
15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項1から
16までのいずれか1項記載の方法によって、
自動車用の
プラスチックから成る動力資源タンク(1)を製造するための中子(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックから成る自動車用の動力資源タンク(Betriebsmitteltank)を製造する方法であって、
好適には細流性(rieselfaehigen)または流動性を有する中子材料から製造された中子を提供するステップであって、中子が少なくとも1つの保持領域を有しており、この保持領域を介して、中子を金型内またはプラスチック賦形機内に保持する、ステップと、
プラスチックにより中子を取り囲むステップであって、中子を金型内またはプラスチック賦形機内に保持する少なくとも1つの保持領域において、動力資源タンクに少なくとも1つの開口を残す、ステップと、
残っている開口を介して動力資源タンクから中子材料を除去するステップと、
を含む方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、プラスチックから成る自動車用の動力資源タンクを製造するための中子と、自動車用の動力資源タンクとに関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術において、プラスチックから成る中空体を製造するために中子を使用することが知られている。中子を製造するために、少なくとも1種の細流性または流動性の中子材料、好適には顆粒が使用される。中子材料は、通常、圧縮されて特定の形状を成す。次いで、中子は、金型またはプラスチック賦形機の中空室内に保持され、液状のプラスチック溶融物によって取り囲まれる。圧力を加えられて硬化した後に、中子はプラスチック被覆部と一緒に取り出され、場合によっては溶剤を用いて洗浄されるので、最終的にはプラスチックから成る中空体が製造される。この中空体の形状は、中子の表面に一致する。このような中子は、消失性中子(verlorener Formkern)としても知られている。このような中子と、中子を用いた繊維強化された構造中空構成部材を製造するための方法とは、独国特許出願公開第102013106876号明細書に示されている。
【0004】
国際公開第2017/148997号は、同様に、繊維強化された中空構成部材を製造するための中子に関する。中子は、少なくとも部分的に配置されたコーティングを備えた支持中子を有している。このコーティングは、膨張材料を含んでいる。中子上には、強化繊維を備えた母材が配置される。次いで、中子は成形金型内にもたらされる。母材は、温度上昇および/または圧力上昇によって硬化し、膨張材料は温度上昇時に膨張し、これにより強化繊維が成形金型の内面へと押し付けられる。
【0005】
国際公開第2017/148998号も、繊維強化された構造中空構成部材を示している。中子内には、通路が配置され、通路内には、強化繊維および/または母材材料が導入される。母材材料の硬化および中子の洗浄後に、通路内に導入された材料は、補強エレメントとして、特に構造中空構成部材内の補強ステーとして残る。補強エレメントは、中空構造部材の表面と同時に製造され、構造中空構成部材の壁部に形状結合式かつ材料結合式に結合される。
【0006】
国際公開第2018/108674号は、繊維強化された構成部材を製造するための消失性中子に関する。中子は、セグメント化されて形成されている。セグメント同士の間には、弾性的かつ/または柔軟な補償エレメントが配置されている。これにより、構成部材の製造時の両セグメント間の並進方向かつ/または回転方向のずれが補償可能である。製造のために、補強繊維を、母材と一緒に消失性中子の周囲に配置することができ、その後に中子を成形金型内で硬化させる。さらに、構成部材の外面上に補強エレメントを押し当てることができる。補強エレメントは、母材と一緒に硬化することができ、これにより、補強エレメントと母材との間で材料結合式の結合が生じる。補強エレメントには、取付け手段、たとえばねじ山付きインサート、スリーブ、フックおよび/または孔が配置されていてよい。これにより、取付け手段は、補強エレメントと一緒に簡単な形式で外面において製造すべき構造部材に配置することができる。
【0007】
特開2003-291208および特開平10-119055は、消失性中子を用いてプラスチックタンクを製造するための方法を示している。この方法では、押出成形されたプレート形の半製品の形の固いプラスチックが中子の周囲に配置される。中子によって遮断弁が重力的に中子内で保持される。押出成形されたプラスチック半製品は、中子と一緒にプレスされ、これにより遮断弁に結合される。プラスチック半製品のオーバラップした領域が溶着される。次いで、プレスされたプラスチック半製品の周囲に、別のプラスチック層をたとえば射出成形法によって取り付けることができる。この方法は、遮断弁が動力資源タンクによって不十分にしか保持されないという欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術における欠点は、中子を用いて製造される中空構成部材の内部を加工するか、または装入部材を中空構成部材の内部の予め規定された箇所に配置し、紛失することなしにその箇所に取り付ける可能性が欠落していることである。これは、特に自動車用の動力資源タンクに関する。したがって、本発明の課題は、中子を用いてプラスチックから動力資源タンクを製造する方法を提供することであって、動力資源タンクの内側の表面が特別に加工されることが望ましく、かつ/または装入部材が動力資源タンクの内部の予め規定された箇所に配置され、その箇所に取り付けられることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって、かつ/または請求項2に記載の特徴を有する方法によって解決される。本発明の別の有利な構成は、従属請求項において定義されている。
【0010】
プラスチックから成る自動車用の本発明に係る動力資源タンクを製造するために、まず、好適には細流性または流動性の中子材料から製造された中子を提供する。たとえば、中子材料は、バインダおよび/または顆粒を含んでいてよく、顆粒は、特に、たとえばガラス、セラミックス材料および/または砂のような無機質な原料を含んでいてよい。
【0011】
中子は、少なくとも1つの保持領域を有している。この保持領域を介して、中子は、金型内またはプラスチック賦形機内、たとえば射出成形機内に保持される。このような金型およびプラスチック賦形機は、基本的に先行技術において公知である。保持領域は、中子の残りの部分と同一の材料から成っていてよい。しかし、保持領域が、たとえば金属製またはセラミックス製の保持エレメントとして形成されていることが規定されていてもよい。保持エレメントは、取付け手段、たとえばねじ山を備えていてよく、この取付け手段により、中子をプラスチック賦形機内または金型内に保持することができる。
【0012】
プラスチック賦形機またはプラスチック溶融物を金型内に導入する各機械の種類に応じて、中子は液状またはペースト状のプラスチック溶融物によって取り囲まれる。たとえば、プラスチック溶融物が金型内またはプラスチック賦形機内に導入され、これにより中子がプラスチック溶融物によってプラスチックの射出成形時に取り囲まれ、かつ/または背面射出成形される。この場合に、先行技術において自体公知の射出成形機を使用することができ、これによりコスト廉価な製造法が実現可能である。中子を金型またはプラスチック賦形機内に保持する保持領域において、製造すべき動力資源タンクに開口が残る。なぜならば、この領域では、プラスチック溶融物による取囲みが可能ではないからである。
【0013】
本発明に係る方法のために、様々なプラスチック材料が考慮され、たとえばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(たとえばポリアミド6)、ポリエチレン(たとえばクロスリンクポリエチレン(XPE)または高密度ポリエチレン(HDPE))、共重合体(たとえばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH))のような熱可塑性プラスチックが考慮される。ポリプロピレンおよびポリエチレンから成る混合物も可能である。
【0014】
繊維強化プラスチックの使用も可能である。この場合、たとえば炭素繊維強化プラスチック(CFK)またはガラス繊維強化プラスチック(GFK)のような全ての可能なバリエーションが考慮される。この場合、射出成形によって中子をプラスチック溶融物によって取り囲む前に、中子に繊維を配置することが可能である。
【0015】
プラスチックの少なくとも部分的な硬化後に、中子材料は、残っている開口を介して動力資源タンクから除去される。このために、バインダを有する中子材料の場合、このバインダが溶剤によって可溶性であり、これにより中子材料は開口から簡単に洗い出すことが可能であると有利なことがある。このような溶剤は、たとえば酸、塩基、水および/またはアルコールを含んでいてよい。バインダを含まない中子材料の場合、中子材料は単に水または圧縮空気によって動力資源タンクの内部から除去することができる。
【0016】
本発明によれば、中子の、保持領域とは別の制限された部分領域に、構造エレメントを配置し、この構造エレメントを、液状またはペースト状のプラスチック溶融物による取囲み中に、中子によって保持することが規定されている。プラスチック溶融物による取囲み時に、動力資源タンクの内側の表面を形成し、この表面上に、構造エレメント上に配置された構造特徴を、プラスチック溶融物による取囲み時に、プラスチック溶融物の硬化中に転写する。構造エレメントは、中子と、動力資源タンクとの間に位置しており、動力資源タンクの内面の最終形状に影響を与える。
【0017】
この構造特徴は、たとえば、構造エレメント上の幾何学的な構造であってよく、動力資源タンクの内壁上には、この幾何学的な構造のネガ形状が形成される。この方法により、たとえば、動力資源タンクの内面の領域に複数の通路を形成することができ、これにより動力資源の特別な流れ挙動を達成することができる。一実施形態では、構造特徴が、構造エレメントの平滑な表面によって形成されている。動力資源タンクの内側の表面へのこの構造特徴の転写時には、プラスチック溶融物による取囲み時に構造エレメントに対峙している領域は、極めて平滑な内壁を有している。このような平滑な表面は、動力資源タンク内で、たとえば、後から動力資源タンク内に配置されるフランジのための当付け面として働くために、または動力資源タンク内に到達した燃料またはオイルの滴下を容易にするために必要となり得る。極めて平滑な表面を有する動力資源タンクの内壁の部分領域は、動力資源タンクの内部に配置された構成部材のための摩耗防止部としても、または支承面としても機能することができる。
【0018】
構造エレメントは、好適には、金属製かつ/またはセラミック製の材料から成っていてよい。構造エレメントのために、たとえば、装入エレメントが考慮される。この装入エレメントは、動力資源タンクの内側の表面粗さに影響を与えることができ、たとえば特に平滑な内側の表面を形成することができる。構造エレメントの構成に応じて、動力資源タンクの内側に、リブ、バッフル壁、充填通路、シール面またはねじ山も形成することもできる。内側のリブにより、動力資源タンクの特定の部分を補強し、より安定的に構成することができる。バッフル壁は、動力資源の比較的大きな移動を車両の運動中に阻止することができる。これは特に、燃料タンクおよび高い傾斜位置が発生することがあるオートバイにとって重要である。リブおよびバッフル壁が、動力資源タンクの一体的な構成部材であり、動力資源タンクの製造と同時に形成され、同一の材料から成っていると、特に有利である。これにより、動力資源タンク内の応力を阻止するか、または減らすことができる。
【0019】
一実施形態では、構成エレメントが面状の領域を有しており、この面状の領域上に、構造特徴が配置されている。これにより、動力資源タンクの内側の面状の領域に、たとえば幾何学的な構造を備えることができ、または動力資源タンクの内側の面状の領域を特に平滑に形成することができる。
【0020】
プラスチック溶融物による取囲みおよび溶融物の少なくとも部分的な硬化または完全な硬化後に、構造エレメントは、場合によっては構造エレメントの粉砕後に、残っている開口を通じて動力資源タンクから、好適には、中子材料の除去と同時に、または中子材料の除去後に除去される。これは、動力資源タンクが少なくともある程度の硬さを有するやいなや可能である。
【0021】
本発明によれば、さらに、中子の、保持領域とは別の制限された部分領域における構造エレメントの配置に対して付加的または代替的に、形状安定性の機能エレメントを配置し、この機能エレメントを、液状またはペースト状のプラスチック溶融物による取囲み中に、中子によって保持することが規定されている。機能エレメントは、特に中子によって形状結合式または力結合式に保持することができる。プラスチック溶融物による取囲み時に、動力資源タンクの内側の表面を形成する。この表面に、機能エレメントを、プラスチック溶融物による取囲み時に結合する。プラスチック溶融物の硬化およびプラスチック溶融物の少なくとも部分的な硬化または完全な硬化後に可能である動力資源タンクからの中子材料の除去後に、機能エレメントは、動力資源タンクに、この機能エレメントが動力資源タンクの内部へのアクセス部を有しているように、材料結合式かつ/または形状結合式に結合されている。
【0022】
これにより、機能エレメントの少なくとも1つの面が、動力資源タンクとの結合後にも自由なままであり、機能エレメントにより満たされるべき機能を動力資源タンクの内部に関連させることができる。機能エレメントは、たとえば電子的な機能エレメントであってよく、この電子的な機能エレメントは、センサおよび/または送受信ユニットを有している。このようなセンサは、たとえば動力資源タンクの充填状態および動力資源タンク内に配置された動力資源の状態を検出して、送信ユニットを介して、たとえば自動車のディスプレイに警告を表示するために伝達することができる。
【0023】
センサの場合、このセンサは、ピエゾセンサであってもよい。ピエゾセンサは、動力資源タンクの内部の圧力状態に関する情報を与える。機能エレメントは、たとえば制御および/または調節ユニットを有していてよい。動力資源の状態に応じて制御または調節信号が自動車に伝達されるか、またはこのような信号が自動車の運転状態に依存して得られる。機能エレメントは、たとえば一体的な温度センサを含んでいてもよい。温度センサは同様に動力資源の状態に関する情報を与える。機能エレメントは、付加的または代替的に、たとえば動力資源タンクの充填状態、動力資源タンク内の圧力、動力資源タンク内の流量の測定および/または動力資源タンク内に配置されている別の対象物に対する間隔の測定のための別のセンサを有していてもよい。機能エレメントは、チップであってよく、チップは、純正部材の識別を可能にする。動力資源タンクの内部における配置により、チップの交換、ひいては悪用は実際には不可能である。さらに、送受信ユニットを介して、盗難された自動車の発見が可能であってもよい。
【0024】
機能エレメントは、シールエレメントおよび/または取付けエレメントを含んでいてよい。特に、燃料タンクでは、タンクの内部に、たとえばエンジンに向かう液状の燃料のための、または活性炭フィルタに向かう気化された燃料のための様々な供給管路および導出管路が配置されている。動力資源タンクの内部において、既に予め規定された位置に配置されているシールエレメントにより、供給管路および導出管路との気密または液密な結合を確保することができる。取付けエレメントは、たとえばねじ山付きインサートであってよい。このねじ山付きインサートにより、付加的な構成部材を動力資源タンクの内部に取り付けることができる。しかし、ねじ山付きインサートは、保持領域に接続した領域において中子に配置することもできる。このようなねじ山付きインサートを介して、動力資源タンク自体を自動車に取り付けることが可能であってよい。
【0025】
機能エレメントは、たとえばケーブルガイドであってもよい。ケーブルガイドは、動力資源タンクの内部に配置されていて、動力資源タンクに固く結合される。これにより、特にケーブルを引き込む場合に、ケーブルガイドのずれは不可能である。
【0026】
機能エレメントとして、たとえば金属、プラスチック、セラミックまたはハイブリッド材料から成る、動力資源タンクの内部で様々な機能を満たす様々な装入体も機能する。このような装入体は、たとえば取付け手段であってよく、この取付け手段により、たとえば気化器への供給管路または場合によっては設けられる接続エレメントのような、後から動力資源タンク内に配置される別の対象物を取り付けることができる。同様に、装入体は、たとえばケーブルガイドのためのガイドエレメントおよび保持エレメントとしても機能することができる。しかし、機能エレメントは、本発明に係る方法によって動力資源タンクの内部に配置することができるスイッチとして形成されていてもよい。
【0027】
形状安定性の機能エレメントは、この機能エレメントが、プラスチック溶融物による取囲み中に変形せず、これによりその機能を制限されないという目的を満たす。プラスチック溶融物による取囲み中の中子における配置および保持により、機能エレメント、あるいは構造エレメントが、動力資源タンクの内部の予め規定された領域に位置決めされ、または構造特徴が予め規定された領域に転写されることが確保される。
【0028】
本発明に係る動力資源タンクは、燃料タンク、オイルタンク、あるいはたとえばブレーキ液のような別の動力資源のためのタンクであってよい。射出成形機も本発明に係る方法によりプラスチック溶融物を配置するために規定されているので、本発明により動力資源タンクを射出成形することができる。射出成形された動力資源タンクの内部に形状安定性の機能エレメントの形の装入部材を予め規定された箇所において取り付けるか、または予め規定された箇所において内側の表面の所望の性質を形成することが可能である。
【0029】
本発明に係る方法により製造される動力資源タンクは、構造エレメントを動力資源タンクの内部に配置することができ、または機能エレメントを動力資源タンクの内部において定置に位置決めすることができ、その際に動力資源タンクが機能エレメントの位置決め後または内面における加工後に事後的に閉鎖される必要がないという利点を有している。したがって、溶着シームは不要である。さらに、このような動力資源タンクを一定かつ予め規定された壁厚で製造することができる。これは、重要な安全観点である。すなわちこれにより、動力資源タンクができるだけ小さな、しかし安全技術的な観点から十分な壁厚を有していることが可能となる。これにより、安全性に関する犠牲を甘受する必要なしに、軽量の動力資源タンクが可能となる。
【0030】
中子は、一実施形態では、2つ以上の保持領域を有している。これらの保持領域を介して、中子が金型内またはプラスチック賦形機、たとえば射出成形機内で保持される。これにより、中子をより安定的に金型内またはプラスチック賦形機内に保持することができる。さらに、中子材料の除去がより容易に可能である。同時に、1つまたは複数の保持領域に残る、動力資源タンクの開口を介して、動力資源を供給または導出することができる。
【0031】
本発明の一実施形態では、機能エレメントおよび/または構造エレメントは、プラスチック溶融物による取囲み中に、中子によって形状結合式に保持される。このために、たとえば、構造エレメントおよび/または機能エレメントの特定の領域が保持領域として機能し、中子材料を、中子の製造中にこの保持領域の周囲に配置することが規定されていてよい。
【0032】
付加的または代替的に、機能エレメントおよび/または構造エレメントを、プラスチック溶融物による取囲み中に、中子によって力結合式に保持することが規定されていてよい。このために、たとえば、構造エレメントおよび/または機能エレメント上に、雄ねじ山が配置されていて、中子がこれに適合する雌ねじ山を備えた切欠きを有していることが規定されていてよい。機能エレメントおよび/または構造エレメントは、次いでこの切欠き内に配置され、ねじ山を介して保持される。これにより特に強固な保持が可能である。
【0033】
付加的または代替的に、機能エレメントおよび/または構造エレメントを、プラスチック溶融物による取囲み中に、材料結合式に中子によって保持することが規定されていてよい。このために、構造エレメントおよび/または機能エレメントが、接着材によって中子上に接着されることが規定されていてよい。
【0034】
形状結合式、力結合式かつ/または材料結合式の結合部は、機能エレメントおよび/または構造エレメントと中子との特に安定的な結合を可能にするので、プラスチック溶融物による取囲み中の機能エレメントおよび/または構造エレメントのずれの恐れが減少する。
【0035】
少なくとも1つの保持領域に、好適には金属製の保持手段が配置されており、この保持手段により、中子を金型内またはプラスチック賦形機内に保持することが規定されていてよい。この保持手段は、たとえば雄ねじ山または別の取付け手段を有していてよい。
【0036】
中子は、一実施形態では、少なくとも2つのセグメントから構成されていてよく、それぞれ2つのセグメントは、結合手段を介して互いに結合されていてよい。結合手段は、たとえば、並進方向または回転方向のずれを補償するために、弾性的な補償手段であってよい。結合手段は、プラスチック溶融物による取囲み後に、残っている開口を通じて動力資源タンクから除去される。セグメント化された中子により、アンダカット部を有する幾何学形状も容易に実現することができる。
【0037】
中子は、顆粒を含んでいてよい。顆粒は、砂および/または発泡材小球から成っていてよい。発泡材小球は、小さな重量の利点を提供し、これにより中子の取り扱いが容易にされる。中子のためには、特に170~220μmの粒径を有する砂が考慮される。発泡材小球として、たとえば1~5mmの粒径を有する標準ポリスチロール顆粒が考慮される。
【0038】
中子は、一実施形態では、可溶性または破砕可能な材料から成る被覆部を有していてよい。中子のためのこのような被覆部は、先行技術において公知である。被覆面により、被覆部内に配置された中子のためのバインダを省略することが可能であってよい。
【0039】
中子は、先行技術において自体公知の3D印刷法によって製造することができる。これは、特に機能エレメントおよび/または構造エレメントの配置にとって利点をもたらす。
【0040】
本発明はさらに、上述の方法のうちの1つの方法によってプラスチックから成る自動車用の動力資源タンクを製造するための中子に関する。中子は、特別に形成された領域を有していてよく、この領域において、構造エレメントまたは形状安定性の機能エレメントが、プラスチック溶融物による取囲み中に保持される。
【0041】
本発明は、さらに、自動車用の動力資源タンクに関する。動力資源タンクは、プラスチック射出成形法を介して、好適には上述のような方法によって製造される。
【0042】
本発明の別の利点および特徴を、様々な実施例について添付の図面に基づき議論する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】内部に配置された中子を備えた動力資源タンクの概略的な横断面図である。
【
図2】複数のセグメントから構成された中子を部分的に切断して示す概略的な斜視図である。
【
図3】a~cは、動力資源タンクの内部における機能エレメントの配置および動力資源タンクの内側表面上への構造エレメントの転写に関する概略図である。
【
図4】転写された構造特徴を有する動力資源タンクの内部領域を示す概略図である。
【
図5】金型内における中子の配置に関する概略図である。
【
図6】a~eは、本発明に係る方法の経過に関する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、3つのセグメント2a,2b,2cから構成された本発明に係る中子2を概略的な横断面図で示している。セグメント2a,2b,2cは、それぞれ結合手段17を介して結合されている。中子2の制限された部分領域において、構造エレメント6と、センサ12の形の形状安定性の機能エレメントとが、中子2によって保持されている。中子2の制限された部分領域において保持される別の形状安定性の機能エレメントは、ねじ山の形の取付けエレメント13、ケーブルガイド15ならびに一般的な機能エレメント7、たとえばRFIDチップである。構造エレメント6および機能エレメント7,12,13,15は、プラスチック溶融物8による取囲み中に、中子2によって保持される。
図1は、動力資源タンク1を、プラスチック溶融物8の少なくとも部分的な硬化後に、かつ金型4からの除去後に示している。次いで、中子2a,2b,2cと、結合手段17と、構造エレメント10とが、動力資源タンク1の内部から除去される。
【0045】
図1に図示された状況では、本発明に係る中子2は、既に、熱可塑性プラスチックの形の部分的に硬化されたプラスチック溶融物8によって取り囲まれている。機能エレメント7,12,13,15は、溶融物8の硬化後に、動力資源タンク1によって材料結合式かつ/または形状結合式に保持される。構造エレメント6は、その上に配置された構造特徴10を備えた面状の領域、たとえば平滑な表面を有している。構造特徴10は、プラスチック溶融物8による取囲み時に、動力資源タンク1の内側の表面9上に転写される。
【0046】
上述の制限された部分領域は、中子2が金型4内に保持されている保持領域3とは別である。プラスチック溶融物8の硬化後に、中子材料は、動力資源タンク1内で保持領域3の傍らに残っている開口5を介して除去される。結合手段17および構造エレメント6も、残っている開口5を介して除去される。
【0047】
特に、機能エレメント7およびセンサ12では、これらのエレメントが動力資源タンク1のアンダカットされた領域に配置されていて、したがって動力資源タンク1の内部および外部へのアクセス部を除いてプラスチック溶融物8によって取り囲まれていることが確認可能である。センサ12では、たとえばデータ線路または制御線路を接続するために、動力資源タンク1の外面上の領域にアクセスが可能である。アンダカット部は、特に中子2のセグメント化に基づいて可能である。
【0048】
図2は、本発明に係る中子2を概略的な斜視図で示している。
図1に示したセグメント2b,2cが切断されて図示されており、これにより、セグメント2a,2b,2cを互いに結合している結合手段17が確認可能である。セグメント2cは、完全な形状で図示されている。このようなセグメント2a,2b,2cにより、動力資源タンク1のための大きなアンダカット部が可能になる。
【0049】
図3aでは、左図において、機能エレメント7、たとえばピエゾ素子が、どのように中子2によって保持されるかが概略的に図示されている。機能エレメント7は、その長手方向延在方向から垂直方向に立ち上がる保持領域を有しており、この保持領域の周囲に中子材料が配置され、これにより機能エレメント7と中子2との間の形状結合式の結合部が形成される。中子2は、たとえば金型4内でプラスチック溶融物8、たとえば熱可塑性プラスチックによって取り囲まれる。次いで、プラスチック溶融物8が硬化すると、中子材料の除去後に、形状安定性の機能エレメント7は、本発明に係る動力資源タンクによって形状結合式かつ材料結合式に保持され、たとえば動力資源タンク1内の内容物に関するデータを検出するために、内部へのアクセス部を有している。同時に、この場合、機能エレメント7は、たとえばデータ線路または制御線路に接続するために、動力資源タンク1の外部へのアクセス部も残るように保持される。
【0050】
図3bには、プラスチック溶融物8による取囲み中に中子2によって保持される、構造エレメント6の面状の領域の平坦な表面の形の構造特徴10が、熱可塑性のプラスチックから成る本発明に係る動力資源タンク1の内側の表面9上にどのように転写されるが概略的に示されている。この際に、構造エレメント6の表面のネガ形状が転写される。中子材料の除去後に、動力資源タンク1の内側の表面9が平滑である1つの領域18が残る一方で、この領域18を除く内側の表面9は、粗い表面を有する領域14を形成する。
【0051】
図3cには、様々なリブ形状の形の複数の構造特徴10がその上に配置されている面状の領域を有する構造エレメント6が、本発明に係る動力資源タンク1の内側の表面9上にどのように転写されるかを概略的に図示している。構造エレメント6は、中子2によって、プラスチック溶融物8による取囲み中に保持される。これにより、リブ形状のネガ形状が、動力資源タンク1の内側の表面9上で、構造エレメント5が中子2によってプラスチック溶融物8による取囲み中に保持されていた領域に生じる。リブ形状は、動力資源タンク1の内側の表面9がこの領域においてたとえば様々なアンダカット部を有することができ、これにより特に高い安定性が達成されることを可能にする。
【0052】
図4は、本発明に係る動力資源タンク1の内部領域を概略的な斜視図で示している。領域18は、構造エレメント6の構造特徴10の転写により転写された平滑な表面を有している。この表面領域は、構造エレメント6の表面領域の平滑なネガ形状を成す。これに対して、領域15は、プラスチック溶融物8による中子2の取囲み時に形成された粗い表面を有している。
図3bには、平滑な表面の形のこのような構造特徴10が、動力資源タンク1の内壁上にどのように転写されるかが例示的かつ概略的に図示されている。
【0053】
図5は、本発明に係る中子2が、プラスチック射出成形機の金型4内にどのように保持されるかを概略図で示している。構造エレメント6は、中子2に接着されていて、これにより、プラスチック溶融物8による取囲み中に、中子2によって保持される。これにより、平滑な表面の形の構造エレメント10は、形成される本発明に係る動力資源タンク1の内側の表面9上に転写される。中子2は、2つの保持領域3を有している。これらの保持領域3を介して、中子2は金型4内に保持される。このために、たとえば金属ピンの形の保持手段16が、中子2に接して、または中子2内に配置されている。保持手段16は、クランプ19を介して金型4内に保持される。プラスチック溶融物8による中子2の取囲み、硬化、中子材料の除去および保持手段16の除去後に、動力資源タンク1内に開口5が残る。
【0054】
図6a~
図6eには、本発明に係る方法の様々なステップが概略的に図示されている。
図6aでは、中子2が金型4内で保持手段16を介して保持される。次いで、型4が閉じられ、液状のプラスチック溶融物8が、たとえばプラスチック射出成形機の可塑化スクリュ20を介して型4内に射出される。プラスチック溶融物8は、たとえば、熱可塑性の材料であってよい。
【0055】
図6bには、液状のプラスチック溶融物8がどのように可塑化スクリュ20から型4内に射出され、中空室21内での配置により中子2がどのようにプラスチック溶融物8によって取り囲まれるかが示されている。保持手段16が配置されている保持領域3には、プラスチック溶融物8は配置されない。したがって、この箇所で動力資源タンク1内に開口5が残る。
【0056】
図6cは、離型のステップを概略的に示している。離型時に、動力資源タンク1、保持手段および動力資源タンク1内に配置された中子2を有する中間製品が、型4から取り出される。
【0057】
図6dには、中子2が、たとえば水または溶剤により、どのように動力資源タンク1の内部から洗い出されるかを概略的に図示している。中子材料は、開口5を介して流出することができる。
【0058】
完成した構成部材が、
図6eに概略的に示されている。見易くするために、
図6eでは、機能エレメント7または転写された構造特徴10は図示されていない。
【符号の説明】
【0059】
1 動力資源タンク
2 セグメント2a,2b,2cを備えた中子
3 保持領域
4 金型
6 開口 動力資源タンク
6 構造エレメント
7 機能エレメント
8 プラスチック溶融物
9 動力資源タンクの内側の表面
10 構造特徴
11 動力資源タンク内部
12 センサ
13 取付けエレメント
14 粗い表面を有する領域
15 ケーブルガイド
16 保持手段
17 結合手段
18 平滑な表面を有する領域
19 クランプ
20 可塑化スクリュ
21 中空室