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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】塞栓コイル送達装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020509114
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 CN2018099541
(87)【国際公開番号】W WO2019033978
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-02-16
(31)【優先権主張番号】201710703690.0
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516210768
【氏名又は名称】マイクロポート ニューロテック (シャンハイ) シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】MICROPORT NEUROTECH (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building #16,222 GuangDan Road,Pudong New District ,Shanghai 201318, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(72)【発明者】
【氏名】郭 遠益
(72)【発明者】
【氏名】彭 云飛
(72)【発明者】
【氏名】陳 冰
(72)【発明者】
【氏名】常 孟▲き▼
(72)【発明者】
【氏名】于 海瑞
(72)【発明者】
【氏名】金 巧蓉
(72)【発明者】
【氏名】王 亦群
(72)【発明者】
【氏名】謝 志永
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-071151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシャー及び塞栓コイルを含み、前記プッシャーの遠端と前記塞栓コイルの近端とを接続する箇所が離脱領域である塞栓コイル送達装置であって、
前記塞栓コイル送達装置は、ほどけ防止ワイヤ及び導電ワイヤをさらに含み、
前記ほどけ防止ワイヤは、前記塞栓コイルの近端のコイルに固定されるように前記塞栓コイルに設けられ、
前記導電ワイヤは、前記プッシャーの内部を通過するように設けられ、前記導電ワイヤに絶縁層が被覆され、且つ前記導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点が設けられ、前記導電ワイヤの遠端と前記ほどけ防止ワイヤの近端とが交差接続されることにより前記導電ワイヤおよび前記ほどけ防止ワイヤが前記塞栓コイルの近端のコイルに巻き付けて固定され、さらには、前記導電ワイヤ、前記ほどけ防止ワイヤおよび前記塞栓コイルの近端の三者が固定接続され、前記導電ワイヤの遠端は、「J」型、「U」型又は「T」型であり、前記ほどけ防止ワイヤの近端は、「J」型又は「U」型であり、前記導電ワイヤと前記ほどけ防止ワイヤとが交差接続する箇所に高分子接着剤が塗布されていることを特徴とする、塞栓コイル送達装置。
【請求項2】
前記ほどけ防止ワイヤは、前記塞栓コイルの近端の2番目から6番目のコイルのいずれか一方に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の塞栓コイル送達装置。
【請求項3】
前記離脱領域の曲げ弾性率は150-220Mpaであることを特徴とする、請求項1に記載の塞栓コイル送達装置。
【請求項4】
前記離脱領域の長さは0.3mm-1.0mmであることを特徴とする、請求項1に記載の塞栓コイル送達装置。
【請求項5】
前記導電ワイヤと前記ほどけ防止ワイヤとがUU型、UJ型、JU型、JJ型、TU型又はTJ型で交差接続されることを特徴とする、請求項1に記載の塞栓コイル送達装置。
【請求項6】
前記絶縁層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルアミド及びポリイミドのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の塞栓コイル送達装置。
【請求項7】
離脱器をさらに含み、
前記プッシャーの近端が前記離脱器に挿入され、前記離脱器は、0.5mA-5.0mAの直流電流を前記導電ワイヤに印加するために用いられるを特徴とする、請求項1に記載の塞栓コイル送達装置。
【請求項8】
前記塞栓コイルは、「Ω」状のバスケット型又は螺旋型であることを特徴とする、請求項1に記載の塞栓コイル送達装置。
【請求項9】
プッシャー及び塞栓コイルを提供するステップと、
ほどけ防止ワイヤを、前記塞栓コイルの近端に固定されるように前記塞栓コイルに設けるステップと、
導電ワイヤを前記プッシャーの中心を通過させ、前記導電ワイヤに絶縁層を被覆し、前記導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点を設けるステップと、
前記ほどけ防止ワイヤの近端と前記導電ワイヤの遠端とを交差接続させることにより前記導電ワイヤおよび前記ほどけ防止ワイヤを前記塞栓コイルの近端のコイルに巻き付けて固定させ、さらには、前記導電ワイヤ、前記ほどけ防止ワイヤおよび前記塞栓コイルの近端の三者を固定接続させ、前記導電ワイヤの遠端は、「J」型、「U」型又は「T」型であり、前記ほどけ防止ワイヤの近端は、「J」型又は「U」型であり、前記導電ワイヤと前記ほどけ防止ワイヤとが交差接続する箇所に高分子接着剤を塗布するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の塞栓コイル送達装置の製造方法。
【請求項10】
前記ほどけ防止ワイヤは、前記塞栓コイルの近端の2番目から6番目のコイルのいずれか一方に固定されることを特徴とする、請求項に記載の塞栓コイル送達装置の製造方法。
【請求項11】
前記導電ワイヤと前記ほどけ防止ワイヤとがUU型、UJ型、JU型、JJ型、TU型又はTJ型で交差接続されることを特徴とする、請求項に記載の塞栓コイル送達装置の製造方法。
【請求項12】
前記交差接続する箇所に高分子接着剤を塗布するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の塞栓コイル送達装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器分野に関し、具体的には、塞栓コイル送達装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療の開発は、頭蓋内動脈瘤の治療に新しい技術を提供し、特に塞栓コイルが市場に出て以来、頭蓋内動脈瘤の血管内治療の安全性及び治療効果は大幅が高くなり、開頭術の効果以上に達する。通常、塞栓コイルを脳動脈瘤腔内に導入して腔内で血栓を形成することにより動脈瘤を塞栓する目的を達成する。
【0003】
現在用いられている塞栓コイルは、主に機械的離脱バネコイル、電熱溶融離脱バネコイル及び電気離脱バネコイルを含む。そのうち、最も一般的に使用されるのは、電気離脱バネコイルであり、主にBoston ScientificのGDC及びTargetバネコイルである。1991年にGuglielmiらは初めてGDC電気離脱バネコイルによる頭蓋内動脈瘤の塞栓治療を発表した。GDCは、遠端が白金のバネコイルであり、ステンレス鋼ガイドワイヤに接続され、塞栓コイル材料の設計は、曲折で複雑な脳動脈の動脈瘤病変に達することができる。GDC電気離脱バネコイルは、経皮的血管穿刺により腫瘍腔に詰まり、マイクロカテーテルにより動脈瘤に導入され、塞栓コイルとステンレス鋼ワイヤとを接続する部分が電解により溶融断裂することにより、塞栓コイルが離脱して動脈瘤内に留置され、動脈瘤への血液の流入が阻止される。
【0004】
塞栓コイルの頭蓋内動脈瘤への導入では、重要なステップは、マイクロカテーテルを送達して腫瘍腔口に固定することである。マイクロカテーテルの末端が腫瘍腔における動脈瘤頸部から1/3-1/2の位置に保持され、サイズが動脈瘤の場合、動脈瘤頸部に保持することができる。このようにして抵抗力が小さく、塞栓コイルの巻き取りに有利である。現在、Boston Scientific社のGDC、Targetバネコイル、Medtronic(Ev3)社のAxiumバネコイル、Microvention社のMicroPlexバネコイル及びHydroCoil社のバネコイルには、バネコイルとプッシャーの間の離脱領域(離脱領域とは、塞栓コイルとプッシャーを接続する領域をいい、電解により断裂する離脱点がこの領域にある。しかし、離脱領域は、離脱点ではなく、前記プッシャーの遠端にある柔軟度急変部位からバネコイルの近端にある柔軟度急変部位までの領域である)が比較的長く(少なくとも1.5mmであり、3mmの場合もある)かつ硬い(曲げ弾性率が少なくとも300Mpa以上である)という問題がある。例えば、GDCバネコイルのバネコイルとプッシャーとの間には、バネとPETを接続するためのアンカーが設けられ、離脱領域の長さは1.6mmである。MicroPlexバネコイルは、加熱バネ、支持バネ、PET及び導電ワイヤのため、離脱領域の長さが3.0mmに達する。Axiumバネコイルは、PET、ハイポチューブ及びボールのため、離脱領域の長さが2.0mmに達する。これらの長くて硬い離脱領域は、マイクロカテーテルのキックアウトをもたらしやすい(即ち、腫瘍腔内のマイクロカテーテルの末端が離脱されたバネコイによって腫瘍腔からルキックアウトされ、マイクロカテーテルの末端が担腫瘍動脈に落ちる)。また、現在、治療のために、動脈瘤内に平均5-6個のバネコイルを詰める必要がある。しかし、キックアウトによりマイクロカテーテル変位が起こるため、マイクロカテーテルを腫瘍腔における動脈瘤頸部に近い位置に再配置する必要があり、この場合、既に導入されたバネコイルにより通路が詰まったので、マイクロカテーテルの再配置が困難となり、手術時間が長くなったり、手術が失敗したりする恐れがある。
【0005】
従来の塞栓コイルの離脱領域が長くて硬いことは、プッシャーと塞栓コイルが直接接続されることではなく、機能モジュールを介して接続されるからであると、考えられている。機械的離脱バネコイルでは、プッシャーとバネコイルとの間にアンカーモジュールが介在する。電気溶融離脱バネコイルでは、プッシャーとバネコイルとの間に加熱モジュールが介在する。また、既存の電気離脱バネコイルでは、プッシャーとバネコイルとの間に絶縁モジュールが介在する。
【0006】
そのため、如何に離脱領域の性能を改良し、塞栓コイルの正常の離脱を確保し、マイクロカテーテルのキックアウトを防止するかは、解決しようとする問題である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来技術に存在するマイクロカテーテルがキックアウトされやすい問題を克服する塞栓コイル送達装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
上記問題を解決するために、本発明は、プッシャー及び塞栓コイルを含み、前記プッシャーの遠端と前記塞栓コイルの近端とを接続する箇所が離脱領域である塞栓コイル送達装置であって、
前記塞栓コイル送達装置は、ほどけ防止ワイヤ及び導電ワイヤをさらに含み、
前記ほどけ防止ワイヤは、前記塞栓コイルの近端のコイルに固定されるように前記塞栓コイルに設けられ、
前記導電ワイヤは、前記プッシャーの内部を通過するように設けられ、前記導電ワイヤに絶縁層が被覆され、且つ前記導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点が設けられ、前記導電ワイヤの遠端と前記ほどけ防止ワイヤの近端とが交差接続される塞栓コイル送達装置を提供する。
【0009】
前記塞栓コイル送達装置において、前記ほどけ防止ワイヤは、前記塞栓コイルの近端の2番目から6番目のコイルのいずれか一方に固定される。
【0010】
前記塞栓コイル送達装置において、前記離脱領域の曲げ弾性率は150-220Mpaである。
【0011】
前記塞栓コイル送達装置において、前記離脱領域の長さは0.3mm-1.0mmである。
【0012】
前記塞栓コイル送達装置において、前記導電ワイヤの遠端は、「J」型、「U」型又は「T」型であり、前記ほどけ防止ワイヤの近端は、「J」型又は「U」型であり、前記導電ワイヤと前記ほどけ防止ワイヤとがUU型、UJ型、JU型、JJ型、TU型又はTJ型で交差接続される。
【0013】
前記塞栓コイル送達装置において、前記導電ワイヤと前記ほどけ防止ワイヤとが交差接続する箇所に高分子接着剤が塗布される。
【0014】
前記塞栓コイル送達装置において、前記絶縁層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルアミド和ポリイミドのうちの少なくとも1種を含む。
【0015】
前記塞栓コイル送達装置において、離脱器をさらに含み、前記プッシャーの近端が前記離脱器に挿入され、前記離脱器は0.5mA-5.0mAの直流電流を前記導電ワイヤに印加するために用いられる。
【0016】
前記塞栓コイル送達装置において、前記塞栓コイルは、「Ω」状のバスケット型又は螺旋型である。
【0017】
本発明は、プッシャー及び塞栓コイルを提供するステップと、
ほどけ防止ワイヤを、前記塞栓コイルの近端に固定されるように前記塞栓コイルに設けるステップと、
導電ワイヤを前記プッシャーの中心を通過させ、前記導電ワイヤに絶縁層を被覆し、前記導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点を設けるステップと、
前記ほどけ防止ワイヤの近端と前記導電ワイヤの遠端とを交差接続するステップと、
を含む、前記塞栓コイル送達装置の製造方法をさらに提供する。
【0018】
前記塞栓コイル送達装置の製造方法において、前記ほどけ防止ワイヤは、前記塞栓コイルの近端の2番目から6番目のコイルのいずれか一方に固定される。
【0019】
前記塞栓コイル送達装置の製造方法において、前記導電ワイヤの遠端は、「J」型、「U」型又は「T」型であり、前記ほどけ防止ワイヤの近端は、「J」型又は「U」型であり、前記導電ワイヤと前記ほどけ防止ワイヤとがUU型、UJ型、JU型、JJ型、TU型又はTJ型で交差接続される。
【0020】
前記塞栓コイル送達装置の製造方法において、前記交差接続する箇所に高分子接着剤を塗布するステップをさらに含む。
【0021】
本発明が提供する塞栓コイル送達装置及びその製造方法では、プッシャー及び塞栓コイルを含み、前記プッシャーの遠端と塞栓コイルの近端が離脱領域として接続され、ほどけ防止ワイヤが前記塞栓コイルの近端に固定されるように前記塞栓コイルに設けられ、導電ワイヤが前記プッシャーに設けられ、前記ほどけ防止ワイヤが前記導電ワイヤに接続される。従来技術と比較して、本発明は、ほどけ防止ワイヤを塞栓コイルの近端のコイルに固定し、前記導電ワイヤに絶縁層を設け、導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点を設け、前記ほどけ防止ワイヤと前記導電ワイヤが交差接続されることで導電ワイヤ及びほどけ防止ワイヤが塞栓コイルの近端のコイルに巻き付けて固定される。このような構造により、離脱領域の長さが短縮され、離脱領域がより柔軟になり、塞栓コイルが留置された後、マイクロカテーテルがキックアウトされる状況が基本的に回避され、手術の成功率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の塞栓コイル送達装置の構造模式図である。
図2図1における離脱領域及び塞栓コイルの構造模式図である。
図3】本発明の一実施例に係るほどけ防止ワイヤと導電ワイヤとの接続の模式図である。
図4】本発明の一実施例に係るほどけ防止ワイヤと導電ワイヤとの接続の模式図である。
図5】本発明の一実施例に係るほどけ防止ワイヤと導電ワイヤとの接続の模式図である。
図6】本発明の一実施例に係るほどけ防止ワイヤと導電ワイヤとの接続の模式図である。
図7】本発明の一実施例に係るほどけ防止ワイヤと導電ワイヤとの接続の模式図である。
図8】本発明の一実施例に係る塞栓コイルの模式図である
図9】本発明の一実施例に係る塞栓コイルの模式図である
図10】本発明の一実施例に係る離脱領域の曲げ弾性率測定の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の塞栓コイル送達装置及びその製造方法を詳しく説明する。以下の説明は、本発明の好ましい実施例についての説明だけであり、当業者であれば、本発明の有益な効果を害することなく、本明細書に記載の本発明を修正することができる。従って、以下の説明は、当業者に広く知られていると理解されるべきであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0024】
以下、図面を参照しながら例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の説明及び特許請求の範囲により、本発明の利点及び特徴はより明確になる。なお、図面は非常に単純化された形式であり、すべて不正確な比率を使用しているが、これらは本発明の実施例の目的を容易で明確に説明するためにのみ使用されている。
【0025】
本発明は、塞栓コイル送達装置を提供する。プッシャー及び塞栓コイルを含み、ほどけ防止ワイヤが前記塞栓コイルの近端のコイル部分に固定されるように前記塞栓コイルに設けられ、導電ワイヤが前記プッシャーの内部を通過するように設けられ、前記導電ワイヤに絶縁層が被覆され、導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点が設けられ、前記ほどけ防止ワイヤと前記導電ワイヤとが交差接続される。このような構造設計により、導電ワイヤと塞栓コイルの間に中間モジュールが省略され、離脱領域の長さが短縮され、離脱領域がより柔軟になり、塞栓コイルが留置された後、マイクロカテーテルがキックアウトされる状況が基本的に回避され、手術の成功率が高くなる。
【0026】
以下、前記塞栓コイル送達装置の好ましい実施例により本発明の内容を明確に説明する。本発明の内容は、以下の実施例に制限されず、当業者の従来の技術的手段による他の改良も本発明の範囲内に含まれる。
【0027】
図1に示すように、本発明の塞栓コイル送達装置は、プッシャー106と、塞栓コイル107とを含む。前記プッシャー106の遠端と塞栓コイル107の近端を接続する箇所は、離脱領域103である。いわゆる離脱領域とは、前記プッシャー遠端の柔軟度急変部位から塞栓コイル近端の柔軟度急変部位までの領域をいい、プッシャーと塞栓コイルを接続する箇所に位置し、電解により断裂する離脱点がこの領域中にある。前記塞栓コイルの内部にほどけ防止ワイヤが設けられ、前記ほどけ防止ワイヤが前記塞栓コイル107の近端に固定される。導電ワイヤ104が前記プッシャー106の中心を通過し、前記導電ワイヤ104に絶縁層が被覆される。前記絶縁層の材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルアミド(PEBAX)及びポリイミド(Polyimide)のうちの少なくとも1種である。前記ほどけ防止ワイヤと前記導電ワイヤ104は交差接続される。
【0028】
なお、「遠端」及び「近端」は、各部品又はモジュールのそれぞれの端部についての相対概念である。例えば、操作者に近い端を「近端」として定義し、操作者から遠い端を「遠端」として定義することは、当分野の技術常識であるため、ここで詳しく説明しない。
【0029】
具体的には、図2に示すように、前記ほどけ防止ワイヤ108は、前記塞栓コイル近端1071の2番目から6番目のコイルのいずれか一方に設けられる。
【0030】
上記から分かるように、本発明において、ほどけ防止ワイヤ108は、間接続モジュールを介さずに前記導電ワイヤ104に接続され、そして、塞栓コイル107上に固定されることによりも、堅固が達成され、脱落することがない。これによって、離脱領域の柔軟性が確保されつつ、離脱領域の長さができるだけ短縮され、腫瘍腔内にあるマイクロカテーテルの末端が離脱された塞栓コイル107によって腫瘍腔からキックアウトされることが有効に回避される。一実施例において、前記離脱領域103の長さは0.3mm-1.0mmである。
【0031】
本発明において、前記導電ワイヤ104の遠端と前記ほどけ防止ワイヤ108の近端が交差接続される。図3から図7には、多数の接続方式が示されている。
【0032】
例えば、前記導電ワイヤ104の遠端は「J」型、「U」型又は「T」型であり、前記ほどけ防止ワイヤ108の近端は「J」型又は「U」型である。
【0033】
図3に示すように、導電ワイヤ104の遠端は「U」型であり、ほどけ防止ワイヤ108の近端は「U」型であり、両者はUU型で交差接続される。
【0034】
図4に示すように、導電ワイヤ104の遠端は「J」型であり、ほどけ防止ワイヤ108の近端は「U」型であり、両者はUJ型で交差接続される。
【0035】
図5に示すように、導電ワイヤ104の遠端は「J」型であり、ほどけ防止ワイヤ108の近端は「J」型であり、両者はJJ型で交差接続される。
【0036】
図6に示すように、導電ワイヤ104の遠端は「T」型であり、ほどけ防止ワイヤ108の近端は「J」型であり、両者はTJ型で交差接続される。
【0037】
図7に示すように、導電ワイヤ104の遠端は「T」型であり、ほどけ防止ワイヤ108の近端は「U」型であり,両者はTU型で交差接続される。
【0038】
前記導電ワイヤ104の遠端と前記ほどけ防止ワイヤ108の近端を交差接続することにより、塞栓コイル107とプッシャー106の間に一定の接続強度が保持されるとともに、力が塞栓コイル107に有効に伝達され、塞栓コイル107の送達が保証される。
【0039】
もちろん、前記導電ワイヤ104と前記ほどけ防止ワイヤ108の接続は、本発明で列挙された形式に限定されず、当業者は他の実行可能な方式を柔軟に選択することができる。
【0040】
一実施例において、前記ほどけ防止ワイヤ108と前記導電ワイヤ104を接続する箇所には、高分子接着剤が塗布されることにより、接続強度が増強される。例えば、前記高分子接着剤はUV接着剤、エポキシ接着剤などであってもよい。
【0041】
図3に示すように、本発明において、前記導電ワイヤ104は、コーティング領域1042(即ち、絶縁層)及び露出領域1041を含む。前記露出領域1041は、導電ワイヤ104の遠端にある狭い領域であり、体液中で電解により断裂することによって、プッシャー106と塞栓コイル107が分離されるため、離脱点とも呼ばれる。
【0042】
前記コーティング領域1042のコーティング材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルアミド(PEBAX)及びポリイミド(Polyimide)のうちの少なくとも1種を含む。
【0043】
一実施例において、前記導電ワイヤ104の材質は、金属、例えば、ステンレス鋼、金、銀、鉄などのようなバイオ特性に優れた金属であっても良い。
【0044】
図1に示すように、前記塞栓コイル送達装置は、離脱器105をさらに含む。前記プッシャー106の近端が前記離脱器105に挿入され、前記離脱器105が前記導電ワイヤ104に0.5mA-5.0mA、具体的には、例えば、1.0mA-3.0mAの直流電流を印加することにより、塞栓コイル107とプッシャー106が安全で迅速に分離することができる。前記離脱器105は、操作の利便性の観点から、ハンドヘルド型であってもよい。
【0045】
また、図1に示すように、前記プッシャー106は、互いに接続された金属管状物101と金属ばね管状物102を含む。金属ばね管状物102は、大動脈弓の上の頭蓋内の屈曲血管をスムーズに通過することができ、長さが40-50cmであってもよい。前記金属ばね管状物102の遠端1021は、前記プッシャー106の遠端であり、金属管状物101の近端は、前記離脱器105に挿入することができる。
【0046】
塞栓コイル107が導入鞘管及び併用されるマイクロカテーテル(図示せず)を通過したときにほぼ真直ぐ状態であり、プッシャー106により塞栓コイル107が病変部位に送達される。塞栓コイル107がマイクロカテーテルにより病変部位に送達された後、その二次形態に回復して病変部位の形状に追随するようになり、体外の離脱器105により、塞栓コイル107をプッシャーの遠端から分離させ、導入を完成することができる。
【0047】
図8及び図9に示すように、前記塞栓コイル107の二次形態は、「Ω」状のバスケット型又は螺旋型である。もちろん、必要に応じて、異なるサイズの腫瘍に適応するために、他の形状の塞栓コイル107に設計してもよい。
【0048】
本発明は、
プッシャー及び塞栓コイルを提供するステップと、
ほどけ防止ワイヤを、前記塞栓コイルの近端のコイルに固定されるように前記塞栓コイルに設けるステップと、
導電ワイヤを前記プッシャーに設け、前記導電ワイヤに絶縁層及び遠端にある絶縁層が被覆されていない離脱点を設けるステップと、
前記プッシャーの遠端と前記塞栓コイルの近端が接続されて離脱領域が形成されるように、前記ほどけ防止ワイヤと前記導電ワイヤとを接続するステップと、
を含む、塞栓コイル送達装置の製造方法をさらに提供する。
【0049】
一実施例において、前記ほどけ防止ワイヤは、前記塞栓コイルの2番目から6番目のコイルのいずれか一方に固定される。
【0050】
一実施例において、前記ほどけ防止ワイヤと前記導電ワイヤとを接続された後には、前記ほどけ防止ワイヤと前記導電ワイヤを接続する箇所に高分子接着剤を塗布することにより接続強度を増強させるステップを含む。
【0051】
塞栓コイルは、白金合金線を巻き取ることで作製され得る。白金合金コイルは、異なる長さ及び直径を有してもよい。例えば、白金合金線を芯棒に巻き付けて一次コイルを作製した後、一次コイルを所定の形状に従って金型に巻き取り、形状固定処理を行うことにより、例えば、二次形態が「Ω」状のバスケット型又は螺旋型構造を得ることができる。
【0052】
一実施例において、白金合金コイルは、直径0.003インチのワイヤで作製される。具体的には、ワイヤを金属芯棒に巻き付けて緊密な一次コイルを塞栓コイル107として形成し、一次コイルを所定の「Ω」状バスケット型の二次形態に従って巻き取り、形状固定処理を行うことにより、二次形態が「Ω」状のバスケット型の塞栓コイル107を得る。
【0053】
導電ワイヤ104の遠端を「U」型に作製し(図3)、ほどけ防止ワイヤ108を塞栓コイル107の内部において一次コイルの軸方向に沿って延伸させ(図2における局所断面図)、ほどけ防止ワイヤ108と導電ワイヤ104の「U」型遠端を交差接続してからU型近端を形成し(図3)、そして、ほどけ防止ワイヤ108の近端の「U」の一辺を塞栓コイル107の近端の2番目から6番目のコイルのいずれか一方に巻き付けて固定し(図2)、もう一辺を塞栓コイル107の遠端に戻し、必要に応じて塞栓コイル107の遠端で球冠を作製することで固定する。前記導電ワイヤ104に絶縁層1042を設け、その遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点1041を設け(図3)、導電ワイヤ104とほどけ防止ワイヤ108を交差接続する領域で長さが0.5mmの離脱領域103を形成する。図10に示される3点曲げ法により測定した結果、離脱領域103の曲げ弾性率は150Mpaである。
【0054】
図10に示される3点曲げ法は、以下の方法であり得る。即ち、導電ワイヤ104とほどけ防止ワイヤ108を交差接続して離脱領域103を形成した後、金属ばね管状物102及び塞栓コイル107をそれぞれ固定装置200で挟持し、次に離脱領域103に対して一定の力を加え、例えば、下に10mm押圧することにより曲げ弾性率を測定する。
【0055】
一実施例において、塞栓コイル107の構造は螺旋型に作製され(図9)、白金合金コイルは直径0.00125インチのワイヤで作製される。上述の実施例と同様に、ワイヤを金属芯棒に巻き付けて緊密な一次コイルを形成し、一次コイルを所定の形状、即ち「螺旋型」に従って形状固定処理する。
【0056】
導電ワイヤ104の遠端を「J」型に作製し(図4)、ほどけ防止ワイヤ108を一次コイルの軸方向に沿って延伸させ、ほどけ防止ワイヤ108と導電ワイヤ104の「J」型遠端を交差接続してからU型近端を形成し(図4)、ほどけ防止ワイヤ108の近端の「U」の一辺を塞栓コイル107の近端の2番目から6番目のコイルのいずれか一方に巻き付けて固定し(図2)、もう一辺を塞栓コイル107の遠端に戻す。前記導電ワイヤに絶縁層を設け、導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点を設け、導電ワイヤ104とほどけ防止ワイヤ108を交差接続する領域で長さが1.0mmの離脱領域103を形成する。図10に示される3点曲げ法により測定した結果、離脱領域103の曲げ弾性率は210Mpaである。
【0057】
一実施例において、塞栓コイル107の構造は螺旋型に作製され(図9)、白金合金コイルは直径0.002インチのワイヤで作製される。上述の実施例と同様に、ワイヤを金属芯棒に巻き付けて緊密な一次コイルを形成し、一次コイルを所定の形状、即ち「螺旋型」に従って形状固定処理する。
【0058】
導電ワイヤ104の遠端を「J」型に作製し(図5)、ほどけ防止ワイヤ108を一次コイルの軸方向に沿って延伸させ、ほどけ防止ワイヤ108と導電ワイヤ104の「J」型遠端を交差接続してから「J」型近端を形成し(図5)、そして、ほどけ防止ワイヤ108の近端の「J」の一辺を塞栓コイル107近端の3番目のコイルに巻き付けて固定する。前記導電ワイヤに絶縁層を設け、導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点を設け、導電ワイヤ104とほどけ防止ワイヤ108を交差接続する領域で長さが0.5mmの離脱領域103を形成する。図10に示される3点曲げ法により測定した結果、離脱領域103の曲げ弾性率は150Mpaである。
【0059】
一実施例において、導電ワイヤ104の遠端を「T」型に設計し(図6及び図7)、ほどけ防止ワイヤ108を一次コイルの軸方向に沿って延伸させ、ほどけ防止ワイヤ108の近端を「J」型(図6所示)又は「U」型(図7所示)に設計し、前記導電ワイヤに絶縁層を設け、導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点を設け、導電ワイヤ104とほどけ防止ワイヤ108を交差接続する。
【0060】
図4から7に示される交差接続の方式については、好ましくは、前記ほどけ防止ワイヤ108と前記導電ワイヤ104とを交差接続する箇所に高分子接着剤を塗布することにより接続強度を増強させる。
【0061】
上記から分かるように、本発明が提供する塞栓コイル送達装置及びその製造方法では、プッシャー及び塞栓コイルを含み、前記プッシャーの遠端と塞栓コイルの近端が離脱領域として接続され、ほどけ防止ワイヤが前記塞栓コイルの近端に固定されるように前記塞栓コイルに設けられ、導電ワイヤが前記プッシャーに設けられ、前記導電ワイヤに絶縁層が設けられ、導電ワイヤの遠端に絶縁層が被覆されていない離脱点が設けられ、前記ほどけ防止ワイヤと前記導電ワイヤとが接続される。従来技術と比較して、本発明は、ほどけ防止ワイヤを塞栓コイルの近端に固定することにより、前記ほどけ防止ワイヤと前記導電ワイヤが接続されるため、離脱領域の長さが短縮され、離脱領域がより柔軟になり、塞栓コイルが留置された後、マイクロカテーテルがキックアウトされる状況が基本的に回避され、手術の成功率が高くなる。
【0062】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、当業者は、本発明に対して様々な修正及び変形を加えることができる。本発明のこれらの修正及び変形が本発明の特許請求の範囲及びその同等の技術的範囲に属する場合、本発明は、これらの修正及び変形を含むことを意図する。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10