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特許7026856DCバスコンデンサをオンラインモニタリングする方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】DCバスコンデンサをオンラインモニタリングする方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220218BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021531357
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2020002643
(87)【国際公開番号】W WO2020179280
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】19160324.0
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】フーブ、ロラン
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-527024(JP,A)
【文献】特開2010-286426(JP,A)
【文献】Xing-Si Pu, Thanh Hai Nguyen, Dong-Choon Lee, Kyo-Beum Lee, Jang-Mok Kim,Fault Diagnosis of DC-Link Capacitors in Three-Phase AC/DC PWM Converters by Online Estimation of Equivalent Series Resistance,IEEE Transactions on Industrial Electronics,米国,IEEE,2013年09月,Volume 60, Issue 9,pages 4118-4127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 - 11/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置内に含まれるDCバスコンデンサをオンラインモニタリングする方法であって、前記電力変換装置は、パルス幅変調を使用して各スイッチングサイクルにおける出力段を通して負荷に供給される電力を制御し、前記方法は、
前記DCバスコンデンサの電圧を測定し、測定された前記DCバスコンデンサの電圧をアナログフィルタを使用してフィルタリングして、前記パルス幅変調によって生成された高周波数成分のみを含む周波数帯域内の周波数成分を有するフィルタリングされたDCバス電圧リプルを得るステップと、
前記パルス幅変調の周波数の倍数であるサンプリングレートにおいて前記フィルタリングされたDCバス電圧リプルをサンプリングするステップと、
前記パルス幅変調のスイッチング情報を得るステップと、
前記パルス幅変調の時間周期内で少なくとも1回、前記出力段に供給される出力電流をサンプリングするステップと、
前記パルス幅変調のセグメントごとに、前記出力段に供給される電流を再構成するステップと、
再構成された電流のデジタルフィルタリングを実行して、前記フィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルと同じ周波数において、フィルタリングされた再構成された電流のサンプルを得るステップと、
前記フィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルを使用して、前記フィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値を計算するステップと、
前記フィルタリングされた再構成された電流のサンプルを使用して、前記フィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値を計算するステップと、
計算された前記フィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値および計算された前記フィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値から前記DCバスコンデンサの等価直列抵抗を求めるステップと、
前記DCバスコンデンサの温度を測定又は推定するステップと、
前記等価直列抵抗の値を、前記DCバスコンデンサの温度に依存する閾値と比較して、比較結果に従って、前記DCバスコンデンサがその寿命に到達したか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記再構成された電流のデジタルフィルタリングは、無限インパルス応答フィルタを使用して実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再構成された電流のデジタルフィルタリングは、線形時間不変フィルタの時間領域解を使用して実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタリングされた再構成された電流は、前記パルス幅変調の周波数の少なくとも4倍に等しいレートにおいてサンプリングされることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタリングされたDCバス電圧リプルは、前記パルス幅変調の周波数の少なくとも4倍に等しいレートにおいてサンプリングされることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値および前記フィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値は、所定の時間ウィンドウ内で実行された累積から計算されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電力変換装置は、フロントエンドダイオード整流器を有する三相インバータであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記パルス幅変調は、空間ベクトル変調であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
電力変換装置内に含まれるDCバスコンデンサをオンラインモニタリングする装置であって、前記電力変換装置は、パルス幅変調を使用して各スイッチングサイクルにおける出力段を通して負荷に供給される電力を制御し、前記オンラインモニタリングする装置は、
前記DCバスコンデンサの電圧を測定し、測定された前記DCバスコンデンサの電圧をアナログフィルタを使用してフィルタリングして、前記パルス幅変調によって生成された高周波数成分のみを含む周波数帯域内の周波数成分を有するフィルタリングされたDCリンク電圧リプルを得る手段と、
前記パルス幅変調の周波数の倍数であるサンプリングレートにおいて、前記フィルタリングされたDCリンク電圧リプルをサンプリングする手段と、
前記パルス幅変調のスイッチング情報を得る手段と、
前記パルス幅変調の時間周期内で少なくとも1回、前記出力段に供給される出力電流をサンプリングする手段と、
前記パルス幅変調のセグメントごとに、前記出力段に供給される電流を再構成する手段と、
前記再構成された電流のデジタルフィルタリングを実行して、前記フィルタリングされたDCリンク電圧リプルのサンプルと同じ周波数においてフィルタリングされた再構成された電流のサンプルを得る手段と、
前記フィルタリングされたDCリンク電圧リプルのサンプルを使用して前記フィルタリングされたDCリンク電圧リプルの二乗平均平方根値を計算する手段と、
前記フィルタリングされた再構成された電流のサンプルを使用して前記フィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値を計算する手段と、
計算された前記フィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値および計算された前記フィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値から前記DCバスコンデンサの等価直列抵抗を求める手段と、
前記DCバスコンデンサの温度を測定又は推定する手段と、
前記等価直列抵抗の値を、前記DCバスコンデンサの温度に依存する閾値と比較して、比較結果に従って、前記DCバスコンデンサがその寿命に到達したか否かを判断する手段と、
を備えることを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、電力変換装置に含まれるDCバスコンデンサをオンラインモニタリングする方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクスの分野では、DCバスコンデンサには、通常、電解コンデンサが用いられているため、損傷しやすい構成要素として知られている。電解コンデンサが故障すると、電力変換装置全体の動作停止状態に陥る。
【0003】
DCバスコンデンサは、多くの場合、製品の長寿命化を制限する最も重要な因子である。そのため、機器のサービスに対する外乱を最小限に抑えながら、これらの構成要素をタイムリーに交換できる状態モニタリング(condition monitoring)技術への関心が高まっている。
【0004】
DCバスコンデンサの経年劣化を検出する種々の解決策が提案されている。通常、経年劣化の検出は、DCバスコンデンサのいくつかのパラメータの変動をモニタリングすることによって行われる。例えば、DCバスコンデンサの寿命を検出するためには、DCバスコンデンサの静電容量値の減少を用いてもよいし、等価直列抵抗(ESR:equivalent series resistance)の増加を利用してもよいし、又は、損失係数の増加を用いてもよい。パラメータの推定は、コンデンサの電圧及び電流の測定値を用いて行うことができる。
【0005】
電力変換装置の動作中に動作するとともに、コンデンサ電流センサを使用しないコンデンサ経年劣化検出方法は、通常、十分に正確ではなく、例えば回生動作のような、特別な動作モードを適用することが必要になる。しかしながら、コストを最小化する等の理由で、又は、通常は望ましくない、DCバスへの寄生インダクタンスを加えることになるという理由で、コンデンサ電流センサを追加することは好ましくないか又は不可能である場合がある。
【0006】
経年劣化の検出精度に影響を与える一番の因子は、経年劣化の限界の定義である。経年劣化の限界は、通常、決められた温度における固定値か、又は、モニタリングするコンデンサのタイプで事前に知られた初期特性若しくはデータシート情報のいずれかから導出される異なる温度における値の組み合わせか、のいずれかである。データシート情報は、メーカーによる許容範囲が比較的大きいので、モニタリングする特定のコンデンサに対して十分に正確ではない。加えて、経年劣化の推定には独自の精度があり、このことが、正確な経年劣化を検出する上での更なる制限因子となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低コストであり、外乱に強く、再現性のある性能を有し、電力変換装置の特別な動作モードを必要としない、電力変換装置に含まれる非侵入式のDCバスコンデンサの状態モニタリングシステムを提供するものである。
【0008】
本発明は、電力変換装置の通常動作中に動作する正確なESR値推定方法を用いて、DCバスコンデンサ状態のオンラインモニタリングを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明は、電力変換装置内に含まれるDCバスコンデンサをオンラインモニタリングする方法であって、電力変換装置は、パルス幅変調を使用して各スイッチングサイクルにおける出力段を通して負荷に供給される電力を制御し、本方法は、
DCバスコンデンサの電圧を測定し、測定されたDCバスコンデンサの電圧をアナログフィルタを使用してフィルタリングし、パルス幅変調によって生成された高周波数成分のみを含む周波数帯域内の周波数成分を有するフィルタリングされたDCバス電圧リプルを得るステップと、
パルス幅変調の周波数の倍数であるサンプリングレートにおいて、フィルタリングされたDCバス電圧リプルをサンプリングするステップと、
パルス幅変調のスイッチング情報を得るステップと、
パルス幅変調の時間周期内で少なくとも1回、負荷に供給される出力電流をサンプリングするステップと、
パルス幅変調のセグメントごとに、出力段に供給される電流を再構成するステップと、
再構成された電流のデジタルフィルタリングを実行して、フィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルと同じ周波数において、フィルタリングされた再構成された電流のサンプルを得るステップと、
フィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルを使用して、フィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値を計算するステップと、
フィルタリングされた再構成された電流のサンプルを使用してフィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値を計算するステップと、
計算されたフィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値および計算されたフィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値からDCバスコンデンサの等価直列抵抗を求めるステップと、
DCバスコンデンサの温度を測定又は推定するステップと、
等価直列抵抗値を、DCバスコンデンサの温度に依存する閾値と比較して、比較結果に従って、DCバスコンデンサがその寿命に到達したか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0010】
本発明はまた、電力変換装置内に含まれるDCバスコンデンサをオンラインモニタリングする装置であって、電力変換装置は、パルス幅変調を使用して各スイッチングサイクルにおける出力段を通して負荷に供給される電力を制御し、装置は、
DCバスコンデンサの電圧を測定し、測定されたDCバスコンデンサの電圧をアナログフィルタを使用してフィルタリングし、パルス幅変調によって生成された高周波数成分のみを含む周波数帯域内の周波数成分を有するフィルタリングされたDCバス電圧リプルを得る手段と、
パルス幅変調の周波数の倍数であるサンプリングレートにおいて、フィルタリングされたDCバス電圧リプルをサンプリングする手段と、
パルス幅変調のスイッチング情報を得る手段と、
パルス幅変調の時間周期内で少なくとも1回、負荷に供給される出力電流をサンプリングする手段と、
パルス幅変調のセグメントごとに、出力段に供給される電流を再構成する手段と、
再構成された電流のデジタルフィルタリングを実行して、フィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルと同じ周波数においてフィルタリングされた再構成された電流のサンプルを得る手段と、
フィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルを使用してフィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根(RMS)値を計算する手段と、
フィルタリングされた再構成された電流のサンプルを使用してフィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値を計算する手段と、
計算されたフィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値および計算されたフィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値からDCバスコンデンサの等価直列抵抗を求める手段と、
DCバスコンデンサの温度を測定又は推定する手段と、
等価直列抵抗値を、DCバスコンデンサの温度に依存する閾値と比較して、比較結果に従って、DCバスコンデンサがその寿命に到達したか否かを判断する手段と、
を備えることを特徴とする、装置に関する。
【0011】
それゆえ、本発明は、電力変換装置の通常動作中の任意の時点で動作する正確なESR値推定方法を使用するDCバスコンデンサ状態のオンラインモニタリングを可能にする。
【0012】
本発明では、DCバスコンデンサの静電容量値又はESR値の推定できるので、外乱の影響を一切考慮する必要がない。なぜならば、自然に存在する電圧及び電流リプルが本発明によって使用されているためである。
【0013】
DCバスコンデンサを通る電流は、正確に計算される。
【0014】
特定の特徴によれば、再構成された電流のデジタルフィルタリングは、無限インパルス応答フィルタを使用して実行される。
【0015】
それゆえ、再構成された電流をフィルタリングすることにより、その周波数成分を対象の帯域に低減することができるとともに、フィルタリングされたDCバス電圧リプルをサンプリングしたのと同じ周波数へダウンサンプリングすることができる。特に、ダウンサンプリング周波数の半分よりも高い周波数の成分は、エイリアシング効果を回避するために減衰される。また、ESRの推定のために対象の帯域外の高調波を除去するために、デジタルフィルタリングが必要である。無限インパルス応答フィルタ(IIR)によって、容易にフィルタリングを実施することができる。
【0016】
特定の特徴によれば、再構成された電流のデジタルフィルタリングは、線形時間不変フィルタの時間領域解を使用して実行される。
【0017】
それゆえ、そのようなフィルタを用いることによって、IIR(無限インパルス応答)フィルタを使用するフィルタリングと比較してより高速に実行することができる。
【0018】
特定の特徴によれば、フィルタリングされたコンデンサ電流は、パルス幅変調の周波数の少なくとも4倍に等しいレートにおいてダウンサンプリングされる。
【0019】
それゆえ、主要なスイッチング高調波の情報は、例えば、SVPWM変調の事例におけるスイッチング周波数の第2高調波のように維持される。
【0020】
特定の特徴によれば、フィルタリングされたDCバス電圧リプルは、パルス幅変調の周波数の少なくとも4倍に等しいレートにおいてサンプリングされる。
【0021】
それゆえ、主要なスイッチング高調波の情報は、例えば、SVPWM変調の事例におけるスイッチング周波数の第2高調波のように維持される。サンプル周波数の半分よりも高い周波数の高調波は、ESRの推定には必要ではなく、エイリアシングを回避するためにフィルタリングによって減衰されるので、十分に低い振幅の高調波であると予測される。
【0022】
特定の特徴によれば、RMS値は、所定の時間ウィンドウ内で実行される累積から計算される。
【0023】
それゆえ、RMS計算の結果は、検討される時間ウィンドウの最後においてのみ更新される。時間ウィンドウ中に実行される中間計算は、各平方されたサンプル値の単純な累積である。
【0024】
特定の特徴によれば、電力変換装置は、フロントエンドダイオード整流器を有する三相インバータである。
【0025】
それゆえ、前段によって伝達される電流は、低周波数成分(DC及び低周波数外乱)のみを含む。これは、モータ駆動インバータにおいて見出される一般的な構成である。DCリアクトルは、時として、低リプル電圧リプルの振幅を低減することによってDCバス電圧のフィルタリングを向上させるのに使用される。
【0026】
特定の特徴によれば、パルス幅変調は、空間ベクトル変調である。
【0027】
空間ベクトル変調は、DCリンクの利用率を高めることができる。なぜならば、同じDCリンク電圧値の場合、他のタイプの変調と比較して、より高い電圧を負荷に供給するためである。主なスイッチング高周波は、変調周波数の2倍であるため、ESRの推定のための主要な周波数を構成する。
【0028】
本発明の特徴は、例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】電力変換装置の一例を表す図である。図1の例では、本発明によるDCバスコンデンサ状態モニタリングシステムを含む三相インバータのアーキテクチャの一例を表す。
図2】本発明によるDCバスコンデンサ状態モニタリングシステムの処理ユニットのアーキテクチャを表す図である。
図3】本発明による、電力変換装置のDCバスコンデンサの状態をモニタリングするアルゴリズムの一例を表す図である。
図4】本発明に従って使用される三相インバータの信号を表す図である。
図5】無限インパルス応答フィルタを使用する再構成された電流Iinvのデジタルフィルタリングの一例の図である。
図6】線形時間不変フィルタの状態空間方程式の時間領域解を使用する再構成された電流Iinvのデジタルフィルタリングの一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、電力変換装置の一例を表す図である。図1の例では、本発明によるDCバスコンデンサ状態モニタリングシステムを含む三相インバータのアーキテクチャの一例を表している。
【0031】
電力変換装置は、主に、図1の例では三相インバータ160である出力段、DCバスコンデンサ150、フロントエンドダイオード整流器110、及び処理ユニット100から構成される。場合によっては、ダイオードフロントエンド整流器110の後段に、DCリアクトルLdcが配置されることもある。
【0032】
DCバスコンデンサ150は、複数のコンデンサから構成することができる。その場合、コンデンサバンクが形成される。
【0033】
電力変換装置は、三相交流(AC)電力105を受信し、例えば三相モータである負荷130を駆動する。
【0034】
一変形形態では、電力変換装置は、例えば太陽光発電システムのようなDC電源から電力を受信する。そのような変形形態では、電力変換装置は、フロントエンドダイオード整流器を備えない。
【0035】
電力変換装置が交流電力によって給電される別の変形形態では、電力変換装置の前段には、フロントエンドダイオード整流器に後置されるPFC(力率補正段)、例えば、出力段よりもはるかに高い周波数においてスイッチングされるインターリーブ型昇圧コンバータを備えることができる。その事例では、前段は、ESR推定のための分析の帯域外の非常に高い周波数高調波を生成する。
【0036】
別の変形形態では、電力変換装置の前段は、ESR推定のための分析の帯域内のHF成分を生成する(例えば、比較的低い周波数においてスイッチングされる昇圧段)が、その出力電流Irecの計算又は測定のいずれかを可能にし、その後、電流Irecを再構成された電流Iinvから減算して、推定されたコンデンサ電流を計算することができる。
【0037】
負荷130の各相は、135a、135b及び135cと表記される1つの電流センサを備える。一変形形態では、負荷130の2つの相のみが1つずつ電流センサを備え、負荷の残りの一相の電流は、これらの2つの電流センサによって提供される値から求められる。
【0038】
電力変換装置は、DCバスコンデンサ150の温度を検知する温度センサ140を備えることができる。代替的に、コンデンサの温度は、例えば、電力変換装置内の雰囲気温度、及びその動作点を考慮して、又は変換装置の体積体内の既知の測定温度から、推定することもできる。
【0039】
本発明によれば、DCバスコンデンサ150の等価直列抵抗器値ESRがモニタリングされる。
【0040】
処理ユニット100は、例えば、パルス幅変調方法として空間ベクトル変調を用いて三相インバータ160のスイッチを制御し、DCバスコンデンサの状態をモニタリングする。三相インバータ160は、一連のスイッチSah、Sal、Sbh、Sbl、Sch及びSclを介してDCバス電圧を三相交流出力電圧に変換し、三相負荷130に接続された三相出力脚部を形成する。
【0041】
本発明は、外乱を一切もたらすことなくDCバスコンデンサ150の等価直列抵抗を推定することを目的とする。本発明は、前段、例えば、DC電源又はフロントエンドダイオード整流器のいずれかによって供給される電力が、本発明に従って測定が実行される周波数帯域内で高周波数リプルを一切提供しないことを考慮して、通常動作中に三相インバータ160によって生成される高周波数リプルを使用する。その場合、DCバスコンデンサ150を通る電流Icの高周波数成分は、三相インバータ160によって生成されるIinvの高周波数リプル電流に等しい。
【0042】
本発明は、DCバスコンデンサ150と直列の電流センサを一切必要としない。なぜならば、DCバスコンデンサ150を通る高周波数リプル電流Icが、電流Iinvの正確な再構成及びフィルタリングから推定されるためである。
【0043】
本発明は、DCバスコンデンサ150の等価直列抵抗を求めるために、対象の周波数帯域内の高周波数コンデンサ電圧及び電流を考慮する。
【0044】
電解コンデンサのための対象の周波数帯域は、通常、数kHz~最大100kHzまで拡大される。この周波数範囲内では、静電容量値の影響は、DCバスコンデンサ150の等価直列抵抗と比較して無視できるほど小さくなる。非常に低い等価直列インダクタンス(ESL)の影響も無視することができる。また、周波数帯域は、三相インバータ160のスイッチング周波数の1つ又はいくつかの有意の高調波を含まなければならない。
【0045】
さらに、DCバスコンデンサ150の共振周波数(fres)が有意の高調波に近い場合、等価直列抵抗の推定は、より正確である。
【0046】
その場合、本発明は、整流器によって伝達される電流(DCリアクトルLdcの値、動作点等に依存して連続又は不連続のものであり得る)を知る必要がない。それゆえ、提案されるオンラインモニタリング方法は、DCリアクトルの有無を問わず、フロントエンド整流器を有する電力変換装置に適用することができ、特定の動作モードを一切必要としない。
【0047】
本発明によれば、
DCバスコンデンサ150の電圧が測定され、測定された電圧をアナログフィルタを使用してフィルタリングすることによって、パルス幅変調によって生成された高周波数成分のみを含む周波数帯域内の周波数成分を有するフィルタリングされたDCバス電圧リプルが得られ、
パルス幅変調の周波数の倍数であるサンプリングレートにおいて、フィルタリングされたDCバス電圧リプルがサンプリングされ、
パルス幅変調のスイッチング情報が得られ、
パルス幅変調の時間周期内で少なくとも1回、負荷に供給される出力電流がサンプリングされ、
パルス幅変調のセグメントごとに、出力段に供給される電流が再構成され、
再構成された電流のデジタルフィルタリングを実行することによって、フィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルと同じ周波数において、フィルタリングされた再構成された電流のサンプルが得られ、
フィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルを使用して、フィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値が計算され、
フィルタリングされた再構成された電流のサンプルを使用して、フィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値が計算され、
計算されたフィルタリングされたDCバス電圧リプルの二乗平均平方根値および計算されたフィルタリングされた再構成された電流の二乗平均平方根値からDCバスコンデンサの等価直列抵抗が計算され、
等価直列抵抗値が、閾値と比較され、比較結果に従って、DCバスコンデンサがその寿命に到達したか否かが判断される。
【0048】
図2は、本発明による、DCバスコンデンサ状態モニタリングシステムの処理ユニットのアーキテクチャを表している。
【0049】
処理ユニット100は、例えば、バス201によって接続された構成要素と、図3に開示されるようなプログラムによって制御されるプロセッサ200とに基づくアーキテクチャを有する。
【0050】
バス201は、プロセッサ200を、リードオンリーメモリROM202、ランダムアクセスメモリRAM203、入出力I/O IF(インターフェース)205及びアラームインターフェース206に接続する。メモリ203は、図3に開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムの変数及び命令を受信するように意図されたレジスタを含む。
【0051】
プロセッサ200は、入出力I/O IF205を通じて、温度センサ140によって検知された温度、センサ135a、135b、135cによって検知された電流値、DCバスコンデンサ電圧を受信し、三相インバータ160にコマンド信号を伝送する。入出力I/O IFは、アナログ対デジタル変換装置を含む。例えば、DCバス電圧、出力相電流のような種々の信号を取得するためには、高DCバス電圧のスケーリング、例えばアンチエイリアシングフィルタのようなローパスフィルタリングのようないくつかのアナログ信号調整も当然含まれる。
【0052】
プロセッサ200は、DCバスコンデンサ150の寿命を検出したとき、メンテナンス要求を通知する、例えばLED又はアラーム信号であるアラームモジュール206に命令する。
【0053】
リードオンリーメモリ、又は場合によっては、フラッシュメモリ202は、処理ユニット100の電源が投入されると、ランダムアクセスメモリ203にロードされる、図3に開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムの命令を含む。代替的に、プログラムは、ROMメモリ202から直接実行することもできる。
【0054】
処理ユニット100によって行われる制御は、PC(パーソナルコンピュータ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)又はマイクロコントローラ等のプログラマブルコンピューティングマシンによる命令又はプログラムのセットの実行によってソフトウェアにおいて実現することもできるし、マシン、又は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等の専用構成要素によってハードウェアにおいて実現することもできる。
【0055】
換言すれば、処理ユニット100は、処理ユニット100に、図3に開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムを実行させる回路部、又は回路部を備える装置を備える。
【0056】
図3は、本発明による、電力変換装置のDCバスコンデンサの状態をモニタリングするアルゴリズムの一例を表している。
【0057】
本アルゴリズムは、電力変換装置が三相インバータである場合に処理ユニット100のプロセッサ200によってこのアルゴリズムが実行される一例において開示される。
【0058】
ステップS300において、プロセッサ200は、三相インバータ160のスイッチング情報を得る。
【0059】
例えば、三相インバータ160は、三相インバータ160のパルス幅変調方法として用いられる空間ベクトル変調を用いて制御される。
【0060】
空間ベクトル変調(SVM)は、パルス幅変調(PWM)の制御のためのアルゴリズムである。この方法は、モータ駆動応用の場合、三相AC駆動モータの可変速度を制御するのに一般に用いられる。この方法の基本的な考え方は、回転基準ベクトルの合成である。その回転中、基準ベクトルは、6つのセクタを連続的に横断する。三相電力インバータは、基準ベクトルの1回転ごとに各出力相電圧の完全低周波数電気期間を生成する。新たな基準ベクトルが、スイッチング間隔ごと、典型的には数kHzにおいて計算される。したがって、ステップS300は、スイッチング間隔ごとに1回実行される。
【0061】
したがって、基準ベクトルの各合成により、図4に記載するようなインバータの3つの脚部の特定のPWMパターンが生成される。異なるゲート信号の起動の持続時間は、電圧参照ベクトルの合成プロセスの結果直接得られ、電圧参照ベクトルは、さらに、三相インバータの制御に依存する。
【0062】
図4は、本発明に従って用いられる三相インバータの信号を表している。
【0063】
図4は、空間ベクトル変調の時間周期Tsw内の三相インバータ電流Iinvの変動を表している。
【0064】
信号Vsah、Vsbh及びVschは、スイッチSah、Sbh及びSchに供給されるゲート信号である。信号Vsah、Vsbh及びVschの遷移は、スイッチング間隔Tsw内の異なる領域又はセグメントを定義する。
【0065】
三相インバータ電流Iinvは、各セグメントS1~S7間で変動する。
【0066】
ステップS301において、プロセッサ200は、時間周期Tsw内に少なくとも1回、負荷130の少なくとも2つの位相における出力電流のサンプリングをコマンドする。
【0067】
サンプル及びスイッチング情報は、ステップS302において、第1のバッファに記憶される。第1のバッファは、RMS値の正確な計算(計算は、ステップS304~S307において開示される)を可能にするのに十分な時間取得されたこれらのデータを記憶するようにサイズ決めされている。
【0068】
ステップS303において、プロセッサ200は、第1のバッファがフル(full:満杯)であるか否かをチェックする。第1のバッファがフルである場合、プロセッサ200は、ステップS304に移行する。フルではない場合、プロセッサ200は、ステップS300に戻る。
【0069】
ステップS304において、プロセッサ200は、第1のバッファに記憶された三相インバータ160のスイッチング情報及び測定された相電流を使用して、図4に示されたセグメントごとに電流Iinvを再構成する。
【0070】
ステップS305において、プロセッサ200は、再構成された電流Iinvのデジタルフィルタリングを実行する。
【0071】
再構成されたインバータ電流には、実際には、電流のスイッチングに起因する非常に高い周波数成分が含まれる。それゆえ、この信号は、周波数帯域について、コンデンサ電圧処理に使用されるフィルタと同じ応答を示すフィルタを用いてフィルタリングされなければならない。
【0072】
フィルタリングは、デジタルフィルタリングである。
【0073】
例えば、デジタルフィルタリングは、電圧フィルタリングに使用されるアナログフィルタの周波数応答と同様の周波数応答のような所望の周波数応答を有する無限インパルス応答フィルタIIRを使用して実行することができる。これは、かなり単純明快な手法であり、フィルタ応答を求めるとともに、ステップS309において開示されるコンデンサ電圧リプルサンプリングと同じ周波数、例えば、周波数Fsw=1/Tswの10倍の周波数においてフィルタリングされた信号値を維持するために、無限応答フィルタを反復して評価することによって適用することができる。正確な応答を計算するのに必要とされる反復回数が多いため、フィルタリング結果は、デジタル積分が小さいΔtを必要とするので長い処理時間を要する場合がある。ここで、Δtは、Tswを分割するのに使用される「仮想の」小さい時間間隔であり、すなわち、フィルタ応答、及びスイッチング間隔Tsw内のインバータ電流のスイッチング位置の時間分解能を定義する。
【0074】
例えば、Fsw=10kHz及びΔt=1μsであるとすると、スイッチング間隔は、100個の小さい時間間隔Δtに分割され、その間のフィルタの応答には、IIRの100回の評価が必要となる。
【0075】
一例を、図5を参照して説明する。
【0076】
図5は、無限インパルス応答フィルタを使用する再構成された電流Iinvのデジタルフィルタリングの一例である。
【0077】
信号Vsah、Vsbh及びVschは、スイッチSah、Sbh及びSchに供給されるゲート信号である。信号Vsah、Vsbh及びVschの遷移は、スイッチング間隔Tsw内の異なる領域又はセグメントを定義する。
【0078】
曲線Iinvは、図4で既に示されたように、三相インバータ160のスイッチング情報及び測定された電流から再構成された電流である。
【0079】
黒点は、フィルタリングされたコンデンササンプルと同じ周波数において取得されたIIRの100回の評価のうち、ステップS306において取得された10個のサンプルである。
【0080】
代替的に、フィルタリングプロセスを高速化するために、フィルタの状態方程式の時間領域解を使用することが可能である。時間領域方程式は、実際には、線形時間不変(LTI)フィルタモデルの状態方程式からの或る演算の後に導出することができる。線形時間不変フィルタの時間領域方程式は、初期条件の関数である。フィルタの入力は、線形時間不変フィルタに適用される一連のシフトされた電圧ステップとみなすことができる再構成された電流Iinvである。
【0081】
得られた連立方程式は、限られた数の計算ステップで対象の点におけるフィルタの出力応答をはるかに高速にかつ正確に計算することを可能にする。
【0082】
一例を、図6を参照して説明する。
【0083】
図6は、線形時間不変フィルタの時間領域解を使用する再構成された電流Iinvのデジタルフィルタリングの一例である。
【0084】
信号Vsah、Vsbh及びVschは、スイッチSah、Sbh及びSchに供給されるゲート信号である。信号Vsah、Vsbh及びVschの遷移は、スイッチング間隔Tsw内の異なる領域又はセグメントを定義する。
【0085】
曲線Iinvは、図4で既に示されたように、三相インバータ160のスイッチング情報及び測定された電流から再構成された電流である。
【0086】
スイッチング間隔内の再構成された電流についてのフィルタリングプロセスは、次のように作成される:
信号Inv’_fの黒点は、線形時間不変フィルタの時間領域解を使用してフィルタリングされた信号の初期状態及び最終状態を表す。
【0087】
状態変数の最終値は、状態変数の初期条件、すなわち、直前のセグメントの最後におけるそれらの値を考慮して、各セグメントの最後において計算される。
【0088】
その後、フィルタ状態変数の値を求めて、対象の点、すなわち、Tsw/nの倍数において出力するために、2回目の反復が実行される。これは、検討されるサンプリング点が属するセグメントを求め、状態変数の関連付けられた初期条件及びフィルタの入力を使用して状態変数の方程式を計算し、その後、出力サンプルを計算することによって、点ごとに行われる。
【0089】
例えば、デジタルフィルタリングは、1次ローパスデジタルフィルタリングを使用して実行され、その方程式は、次のとおりである:
Iinv_filt=Iinv-Initval(1-e-(t+tinit)/τ
ここで、Initvalは、セグメントSi(ただし、i=1~7)の開始時における再構成された電流の値であり、tinitは、セグメントSiの開始の時点であり、Iinvは、検討されるセグメントにおける計算されたインバータ電流の値であり、τは、フィルタの時定数である。ここで、同様にフィルタの出力に対応する1つのみの状態変数、それゆえ、評価すべき1つのみの方程式が存在する。
【0090】
信号Inv_fの黒点は、サンプリングされたフィルタリングされたDCバス電圧リプルと同じ周波数において、ステップS306において取得された10個のサンプル(n=10)であり、これらのサンプルは、時間領域方程式並びに線形時間不変フィルタの初期状態及び最終状態から計算される。
【0091】
プロセッサ200は、セグメントごとに、tinit及びInitvalを求め、その後、プロセッサ200は、時点tj=j*Tsw/n(ただし、j=1~n)においてフィルタリングされた電流を、上記で言及された定式を使用して計算する。例えば、nは、10に等しく、フィルタリングされたDCバス電圧リプルの同じ時間周期(Tsw)について取得されるサンプルの数である。
【0092】
ステップS307において、プロセッサ200は、フィルタリングされた電流のRMS値を計算する。フィルタリングされた電流のRMS値は、DCバスの低周期外乱の倍数におよそ等しく、例えば、電力変換装置が三相ダイオード整流器を備える場合には、入力周波数の第6高調波周辺である時間ウィンドウ内で実行された累積から計算される。累積は、フィルタリングされた電流の全てのサンプルに対して実行され、RMS値(平均及び平方根)の最終計算は、時間ウィンドウ全体が処理されると、すなわち、第1のバッファが全体的に処理された場合にのみ実行される。
【0093】
ステップS308において、プロセッサ200は、ハードウェアフィルタリングを使用して調整されたDCバスコンデンサ150の電圧を得る。
【0094】
DCバスコンデンサの電圧は、自身の対象の高周波数成分を分離し、かつ低周波数外乱を阻止するために、アナログフィルタによってフィルタリングされる。フィルタリングは、アナログ信号調整(DC抑制、低周波数外乱の事前減衰(pre-attenuation)、アンチエイリアシング)によって実行される。低周波数外乱の振幅が依然として過大である場合、この振幅を例えば追加のハイパスフィルタリングによって更に阻止することができる。
【0095】
ステップS309において、フィルタリングされたDCバス電圧リプルは、Tsw/nごとに(n*Fswに等しい周波数において)サンプリングされる。
【0096】
サンプリング周波数は、推定のための対象の範囲内のその周波数成分:本質的には、SVPWM変調のためのスイッチング周波数の高調波2、で精度の良い信号を捕捉することを可能にする。オーバーサンプリング係数nは、理論上では少なくとも4以上でなければならないが、10等のより高いオーバーサンプリング係数が好ましい。なぜならば、より高いオーバーサンプリング係数は、CPUに対する負担を加えることになる過度に高いオーバーサンプリング周波数を考慮に入れて、アンチエイリアシングフィルタリングに対する制約を大幅に削減するためである。
【0097】
ステップS310において、サンプルは、第2のバッファに記憶される。
【0098】
ステップS311において、プロセッサ200は、第2のバッファがフルであるか否かをチェックする。第2のバッファがフルである場合、プロセッサ200は、ステップS312に移行する。フルではない場合、プロセッサ200は、ステップS308に戻る。
【0099】
ステップS312において、プロセッサ200は、第2のバッファに記憶されたフィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルのRMS値を計算する。
【0100】
フィルタリングされた電圧のRMS値は、DCバスの低周期外乱の倍数におよそ等しく、例えば、電力変換装置が三相ダイオード整流器を備える場合には、入力周波数の第6高調波周辺である時間ウィンドウ内で実行された累積から計算される。累積は、フィルタリングされた電圧サンプルの全てに対して実行され、RMS値(平均及び平方根)の最終計算は、第2のバッファがフルになった後にのみ実行される。通常、第2のバッファのサイズは、ステップS304において使用された第1のバッファの充填と同じ持続時間中のフィルタリングされたDCバス電圧リプルのサンプルを記憶することを可能にする。
【0101】
一変形形態として、インバータ電流Iinvを測定するために電流センサが利用可能である場合、HFコンデンサ電流の推定は、コンデンサ電圧処理と同一の処理を用いて得ることができる。その事例では、ステップS300~S306がステップS308~S311のシーケンスと同様の取得ループに置き換えられるが、コンデンサ電圧の代わりに測定されたインバータ電流Iinvが調整され、ステップS307は同じままである。
【0102】
ステップS313において、プロセッサ200は、フィルタリングされた電流のRMS値によってフィルタリングされた電圧のRMS値を除算することによって、DCバスコンデンサ150の等価直列抵抗器値を推定する。
【0103】
次のステップS314において、プロセッサ200は、DCバスコンデンサが寿命に達したか否かをチェックする。寿命の基準は、その経年劣化の限界に達したDCバスコンデンサ150のESRの推定である。経年劣化の限界は、ESRの推定が、測定又は推定されたコンデンサ温度Tにおける寿命のESR値よりも高い場合、到達する。経年劣化の限界に達した場合、プロセッサ200は、メンテナンスが必要であることを示すようにアラームを起動するステップS315に移行する。
【0104】
寿命のESRは、初期起動の後、又はメンテナンス動作の後に実行される初期自己較正手順に従って求められる。
【0105】
較正期間、例えば数時間~数週間で選択可能な較正期間中、異なる安定した動作温度Tごとに、プロセッサ200は、その時点において測定されたESRの値、ESRiniに対して相対的に計算される予測寿命のESR値を記録する。例えば、ESRlimit=2*ESRiniである。
【0106】
自己較正期間の最後において、不揮発性メモリに記憶された、較正中に遭遇する温度の範囲を包含する異なる寿命のESR値の表が利用可能であり、これにより、未来の経年劣化試験が可能になる。この手順は、電力変換装置の通常動作中に実行され、外乱をもたらすことはない。
【0107】
寿命の基準が真である場合、プロセッサ200は、DCバスコンデンサ150がその寿命に達しており、メンテナンス手順が必要であることを示すアラーム信号の伝送をステップS315においてコマンドする。
【0108】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6