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特許7026862弾性シート打抜き装置、および弾性シート打抜きシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】弾性シート打抜き装置、および弾性シート打抜きシステム
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/02 20060101AFI20220218BHJP
   B26F 1/44 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
B26F1/02 E
B26F1/44 J
B26F1/02 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021550013
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2021016117
【審査請求日】2021-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598124249
【氏名又は名称】エア・ウォーター・マッハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 健二
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】実公昭58-3677(JP,Y2)
【文献】特開2007-260820(JP,A)
【文献】特開2003-311345(JP,A)
【文献】特開昭63-151441(JP,A)
【文献】特開昭55-001941(JP,A)
【文献】実公昭58-3678(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/00 - 11/32
B21D 28/00 - 28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート部および前記プレート部から下方に突出するパンチ部を備えるパンチプレート、前記パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、前記上下方向に移動可能な状態で前記プレート部に支持されたストリッパープレート、前記ストリッパープレートを、その移動範囲の下端の下端位置に付勢する付勢部材、および前記ストリッパープレートの前記下方に位置し、前記上下方向から見た場合に前記パンチ部と重なる位置に当該パンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイプレートを有し、前記ダイプレートに打抜き対象の弾性シートが配置されると前記パンチプレートを上方から前記ダイプレートに接近させ、前記ストリッパープレートと前記ダイプレートとの間に前記弾性シートを挟んだ後に、前記ストリッパープレートから前記下方に突出する前記パンチ部により前記弾性シートを打抜いて当該パンチ部の先端部分を前記穴部に挿入し、しかる後に、前記パンチプレートおよび前記ストリッパープレートを前記ダイプレートから前記上方に離間させる弾性シート打抜き装置において、
前記上下方向で対向する前記ストリッパープレートのストリッパープレート表面および前記ダイプレートのダイプレート表面には、前記ストリッパープレート表面と前記ダイプレート表面とを当接させた時に前記弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられており、
前記ダイプレートは、全属製のダイプレート本体と、前記ダイプレート本体の表面に設けられたフッ素樹脂含有のコーティング層と、を備え、
前記ダイプレート表面、前記ダイプレート側凹部の内面、および前記穴部において前記パンチ部が挿入されたときに当該パンチ部の径方向外側に位置する内周壁面は、前記コーティング層により覆われていることを特徴とする弾性シート打抜き装置。
【請求項2】
プレート部および前記プレート部から下方に突出するパンチ部を備えるパンチプレート、前記パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、前記上下方向に移動可能な状態で前記プレート部に支持されたストリッパープレート、前記ストリッパープレートを、その移動範囲の下端の下端位置に付勢する付勢部材、および前記ストリッパープレートの前記下方に位置し、前記上下方向から見た場合に前記パンチ部と重なる位置に当該パンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイプレートを有し、前記ダイプレートに打抜き対象の弾性シートが配置されると前記パンチプレートを上方から前記ダイプレートに接近させ、前記ストリッパープレートと前記ダイプレートとの間に前記弾性シートを挟んだ後
に、前記ストリッパープレートから前記下方に突出する前記パンチ部により前記弾性シートを打抜いて当該パンチ部の先端部分を前記穴部に挿入し、しかる後に、前記パンチプレートおよび前記ストリッパープレートを前記ダイプレートから前記上方に離間させる弾性シート打抜き装置において、
前記上下方向で対向する前記ストリッパープレートのストリッパープレート表面および前記ダイプレートのダイプレート表面には、前記ストリッパープレート表面と前記ダイプレート表面とを当接させた時に前記弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられており、
前記ダイプレートは、樹脂製のダイプレート本体部と、前記ダイプレート本体部を下方から支持する金属製の支持プレート部と、を備え、
前記ダイプレート表面、前記ダイプレート側凹部の内面、および前記穴部において前記パンチ部が挿入されたときに当該パンチ部の径方向外側に位置する内周壁面は、前記ダイプレート本体部に設けられていることを特徴とする弾性シート打抜き装置。
【請求項3】
プレート部および前記プレート部から下方に突出するパンチ部を備えるパンチプレート、前記パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、前記上下方向に移動可能な状態で前記プレート部に支持されたストリッパープレート、前記ストリッパープレートを、その移動範囲の下端の下端位置に付勢する付勢部材、および前記ストリッパープレートの前記下方に位置し、前記上下方向から見た場合に前記パンチ部と重なる位置に当該パンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイプレートを有し、前記ダイプレートに打抜き対象の弾性シートが配置されると前記パンチプレートを上方から前記ダイプレートに接近させ、前記ストリッパープレートと前記ダイプレートとの間に前記弾性シートを挟んだ後に、前記ストリッパープレートから前記下方に突出する前記パンチ部により前記弾性シートを打抜いて当該パンチ部の先端部分を前記穴部に挿入し、しかる後に、前記パンチプレートおよび前記ストリッパープレートを前記ダイプレートから前記上方に離間させる弾性シート打抜き装置において、
前記上下方向で対向する前記ストリッパープレートのストリッパープレート表面および前記ダイプレートのダイプレート表面には、前記ストリッパープレート表面と前記ダイプレート表面とを当接させた時に前記弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられており、
前記ダイプレート表面および前記ダイプレート側凹部の内面は、粗面であり、十点平均粗さをDとした場合に、以下の条件式を満たすことを特徴とする弾性シート打抜き装置。
5μm ≦ D ≦ 40μm
【請求項4】
プレート部および前記プレート部から下方に突出するパンチ部を備えるパンチプレート、前記パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、前記上下方向に移動可能な状態で前記プレート部に支持されたストリッパープレート、前記ストリッパープレートを、その移動範囲の下端の下端位置に付勢する付勢部材、および前記ストリッパープレートの前記下方に位置し、前記上下方向から見た場合に前記パンチ部と重なる位置に当該パンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイプレートを有し、前記ダイプレートに打抜き対象の弾性シートが配置されると前記パンチプレートを上方から前記ダイプレートに接近させ、前記ストリッパープレートと前記ダイプレートとの間に前記弾性シートを挟んだ後に、前記ストリッパープレートから前記下方に突出する前記パンチ部により前記弾性シートを打抜いて当該パンチ部の先端部分を前記穴部に挿入し、しかる後に、前記パンチプレートおよび前記ストリッパープレートを前記ダイプレートから前記上方に離間させる弾性シート打抜き装置において、
前記上下方向で対向する前記ストリッパープレートのストリッパープレート表面および前記ダイプレートのダイプレート表面には、前記ストリッパープレート表面と前記ダイプレート表面とを当接させた時に前記弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられており、
前記パンチ部は、先端面の中央に、当該先端面の外周縁よりも前記下方に突出する中央突出部分を備え、
前記中央突出部分の先端は、前記パンチ部の軸線と垂直な平面であることを特徴とする弾性シート打抜き装置。
【請求項5】
プレート部および前記プレート部から下方に突出するパンチ部を備えるパンチプレート、前記パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、前記上下方向に移動可能な状態で前記プレート部に支持されたストリッパープレート、前記ストリッパープレートを、その移動範囲の下端の下端位置に付勢する付勢部材、および前記ストリッパープレートの前記下方に位置し、前記上下方向から見た場合に前記パンチ部と重なる位置に当該パンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイプレートを有し、前記ダイプレートに打抜き対象の弾性シートが配置されると前記パンチプレートを上方から前記ダイプレートに接近させ、前記ストリッパープレートと前記ダイプレートとの間に前記弾性シートを挟んだ後に、前記ストリッパープレートから前記下方に突出する前記パンチ部により前記弾性シートを打抜いて当該パンチ部の先端部分を前記穴部に挿入し、しかる後に、前記パンチプレートおよび前記ストリッパープレートを前記ダイプレートから前記上方に離間させる弾性シート打抜き装置において、
前記パンチプレートを、前記ストリッパープレートが前記ダイプレート表面から前記上方に離間する待機位置と、前記パンチ部の前記先端部分が前記穴部に挿入された打抜き完了位置との間で昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構を駆動制御する打抜き制御部と、を有し、
前記上下方向で対向する前記ストリッパープレートのストリッパープレート表面および前記ダイプレートのダイプレート表面には、前記ストリッパープレート表面と前記ダイプレート表面とを当接させた時に前記弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられており、
前記打抜き制御部は、前記パンチプレートを前記待機位置から前記打抜き完了位置に移動させる第1速度よりも、前記パンチプレートを前記打抜き完了位置から前記待機位置に戻す第2速度を遅くすることを特徴とする弾性シート打抜き装置。
【請求項6】
前記パンチ部の前記先端部分は、先端から前記上方に向かって順に、打抜き部と、柱部と、を備え、
前記上下方向から見た場合に、前記柱部は、前記打抜き部の内側に位置することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置。
【請求項7】
前記パンチ部の先端面は、粗面であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置。
【請求項8】
前記パンチ部は、樹脂製であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置。
【請求項9】
前記パンチ部は、先端面の中央に、当該先端面の外周縁よりも前記下方に突出する中央突出部分を備え、
前記中央突出部分の先端は、前記パンチ部の軸線と垂直な平面であることを特徴とする請求項1、2、3または5に記載の弾性シート打抜き装置。
【請求項10】
前記ストリッパープレート表面、および前記ストリッパープレート側凹部の内面は、粗面であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置。
【請求項11】
前記弾性シートから打抜かれた打抜き部分を回収する回収機構を備え、
前記回収機構は、前記ダイプレートの下方に配置され前記穴部と連通する回収箱と、前記回収箱に連通する吸気口を備える吸気機構と、前記吸気機構を駆動制御する吸気機構制御部と、を有し、
前記吸気機構制御部は、前記ストリッパープレートが前記ダイプレートに接触している間、前記吸気機構を駆動することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置。
【請求項12】
前記ダイプレート側凹部に配置された前記弾性シートを前記ダイプレートから外に吹き飛ばす弾性シート除去機構を有することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置。
【請求項13】
前記弾性シートは、エラストマー製であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置。
【請求項14】
請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置と、
前記弾性シートを、前記弾性シートが滞留する滞留位置から前記弾性シート打抜き装置の前記ダイプレート側凹部に搬送する弾性シート搬送装置と、を備え、
前記滞留位置は、槽内の温度調節を行う温度調節機構を有する温度槽内に設定されていることを特徴とする弾性シート打抜きシステム。
【請求項15】
請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の弾性シート打抜き装置として、第1弾性シート打抜き装置および第2弾性シート打抜き装置を有するとともに、予め定めた供給位置にある前記弾性シートを前記第1弾性シート打抜き装置の前記ダイプレートである第1ダイプレートの前記ダイプレート側凹部に供給する第1弾性シート搬送装置と、前記第1ダイプレート上の前記弾性シートを前記第2弾性シート打抜き装置の前記ダイプレートである第2ダイプレートの前記ダイプレート側凹部に移動させる第2弾性シート搬送装置と、を有し、
前記第1弾性シート打抜き装置の前記パンチ部である第1パンチ部と、前記第2弾性シート打抜き装置の前記パンチ部である第2パンチ部とは、前記上下方向から見た場合の輪郭形状が互いに異なり、
前記弾性シートは、打抜きによって環状のシール材となる環状製品部と、前記環状製品部を除いたバリ部と、を備え、
前記第1弾性シート打抜き装置は、前記第1パンチ部により前記バリ部における前記環状製品部の内側の内側バリ部分を打抜き、
前記第2弾性シート打抜き装置は、前記第2パンチ部により前記環状製品部を打抜くことを特徴とする弾性シート打抜きシステム。
【請求項16】
前記第1弾性シート搬送装置は、第1吸着面および当該第1吸着面に設けられた第1吸気口を備える第1吸着部と、前記第1吸気口に連通する第1吸気機構と、前記第1吸着部を移動させる第1吸着部移動機構と、前記第1吸気機構および前記第1吸着部移動機構を駆動制御する第1搬送制御部と、を備え、
前記第1搬送制御部は、前記第1吸着面を予め定めた前記供給位置にある前記弾性シートに隙間を開けて対向させて前記第1吸気機構を駆動して当該第1吸着面に前記弾性シートを吸着し、前記第1吸着部を移動させて前記第1吸着面を前記第1ダイプレートの前記ダイプレート側凹部の前記上方に配置して前記第1吸気機構を停止させることを特徴とする請求項15に記載の弾性シート打抜きシステム。
【請求項17】
前記バリ部は、前記弾性シートの外周縁に沿って全周に渡って設けられた枠状バリ部分を備え、
前記環状製品部は、前記枠状バリ部分の内周側に位置し、
前記第2弾性シート搬送装置は、第2吸着面および当該第2吸着面に設けられた第2吸気口を備える第2吸着部と、前記第2吸気口に連通する第2吸気機構と、前記第2吸着部を移動させる第2吸着部移動機構と、前記第2吸気機構および前記第2吸着部移動機構を駆動制御する第2搬送制御部と、を備え、
前記第2搬送制御部は、前記第2吸着面を前記第1ダイプレートのダイプレート側凹部に配置された前記弾性シートに隙間を開けて対向させて前記第2吸気機構を駆動して当該第2吸着面に前記弾性シートを吸着し、前記第2吸着部を移動させて前記第2吸着面を前記第2ダイプレートの前記ダイプレート側凹部の前記上方に位置させ、しかる後に、前記第2吸気機構を停止させ、
前記第2吸気口は、前記第2吸着面において前記枠状バリ部分と対向する枠状の対向領域に設けられていることを特徴とする請求項16に記載の弾性シート打抜きシステム。
【請求項18】
プレート部および前記プレート部から下方に突出するパンチ部を備えるパンチプレート、前記パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、前記上下方向に移動可能な状態で前記プレート部に支持されたストリッパープレート、前記ストリッパープレートを、その移動範囲の下端の下端位置に付勢する付勢部材、および前記ストリッパープレートの前記下方に位置し、前記上下方向から見た場合に前記パンチ部と重なる位置に当該パンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイプレートを有し、前記ダイプレートに打抜き対象の弾性シートが配置されると前記パンチプレートを上方から前記ダイプレートに接近させ、前記ストリッパープレートと前記ダイプレートとの間に前記弾性シートを挟んだ後に、前記ストリッパープレートから前記下方に突出する前記パンチ部により前記弾性シートを打抜いて当該パンチ部の先端部分を前記穴部に挿入し、しかる後に、前記パンチプレートおよび前記ストリッパープレートを前記ダイプレートから前記上方に離間させる弾性シート打抜き装置と、
前記弾性シートを搬送する弾性シート搬送装置と、を有し、
前記上下方向で対向する前記ストリッパープレートのストリッパープレート表面および前記ダイプレートのダイプレート表面には、前記ストリッパープレート表面と前記ダイプレート表面とを当接させた時に前記弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられており、
前記弾性シート搬送装置は、前記弾性シートを、前記弾性シートが滞留する滞留位置から前記弾性シート打抜き装置の前記ダイプレート側凹部に搬送し、
前記滞留位置は、槽内の温度調節を行う温度調節機構を有する温度槽内に設定されていることを特徴とする弾性シート打抜きシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイプレートに配置した弾性シートをパンチプレートのパンチで打抜く弾性シート打抜き装置に関する。また、弾性シート打抜き装置によって弾性シートを打抜いて環状のシール材を製造する弾性シート打抜きシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
板状の被加工材をパンチ部で打抜いて製品を製造する打抜き装置は、特許文献1に記載されている。同文献の打抜き装置は、パンチ部を備えるパンチ部材と、パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、上下方向に移動可能な状態でパンチ部材に支持されたストリッパープレートと、ストリッパープレートを移動範囲の下端位置に付勢する付勢する付勢部材と、を有する。また、打抜き装置は、ストリッパープレートの下方に位置し、上下方向から見た場合にパンチ部と重なる位置にパンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイを有する。上下方向で対向するストリッパープレートの表面、およびダイの表面は、平坦面である。
【0003】
被加工物がダイの表面に載置されると、打抜き装置は、パンチ部材を上方からダイに接近させる打抜き動作を行う。これにより、まず、ストリッパープレートとダイとの間に被加工物をクランプする。そして、更に、パンチ部材がダイに接近すると、ストリッパープレートから下方に突出するパンチ部がダイ上の被加工物を打抜き、パンチ部の先端部分は、穴部に挿入された状態となる。その後、パンチ部材は、ダイから上方に離間して、元の待機位置に戻る。同文献の打抜き装置によれば、被加工物は、ストリッパープレートとダイとによってクランプされた状態で打抜かれる。従って、打抜き時に、被加工物がダイ上で移動することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】昭58-25946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Oリングなどの環状のシール材は、エラストマー製の弾性シートを打抜いて製造される。ここで、弾性シートの打抜きに上記の打抜き装置を利用する場合には、弾性シートがストリッパープレートとダイとによって挟まれたときに、潰されて、変形する。打抜き前に弾性シートが変形すると、パンチ部が打抜き対象の部分とは異なる部分に接触して、この部分を傷つけてしまうという問題がある。
【0006】
また、弾性シートを上記の打抜き装置で打抜く場合には、打抜き時に弾性シートがパンチ部に粘着し、打抜き後に、パンチ部が弾性シートにおける打抜き対象の部分の周辺部分を穴部に引き込んでしまうことがある。この場合、弾性シートにおける打抜き部分の周辺部分は、変形して、パンチ部と穴部の内周壁面との隙間に入り込む。従って、打抜き部分の周辺部分に擦り傷などが形成される場合がある。また、穴部への弾性シートの引き込みが大きくなると、弾性シートの変形が大きくなるので、打抜き対象の部分の周辺部分に破断が発生することがある。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、打抜きの前後で、弾性シートが変形することを防止或いは抑制できる弾性シート打抜き装置を提供することにある。また、かかる弾性シート打抜き装置を備える弾性シート打抜きシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、プレート部および前記プレート部から下方に突出するパンチ部を備えるパンチプレート、前記パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、前記上下方向に移動可能な状態で前記プレート部に支持されたストリッパープレート、前記ストリッパープレートを、その移動範囲の下端の下端位置に付勢する付勢部材、および前記ストリッパープレートの前記下方に位置し、前記上下方向から見た場合に前記パンチ部と重なる位置に当該パンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイプレートを有し、前記ダイプレートに打抜き対象の弾性シートが配置されると前記パンチプレートを上方から前記ダイプレートに接近させ、前記ストリッパープレートと前記ダイプレートとの間に前記弾性シートを挟んだ後に、前記ストリッパープレートから前記下方に突出する前記パンチ部により前記弾性シートを打抜いて当該パンチ部の先端部分を前記穴部に挿入し、しかる後に、前記パンチプレートおよび前記ストリッパープレートを前記ダイプレートから前記上方に離間させる弾性シート打抜き装置において、前記上下方向で対向する前記ストリッパープレートのストリッパープレート表面および前記ダイプレートのダイプレート表面には、前記ストリッパープレート表面と前記ダイプレート表面とを当接させた時に前記弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、打抜き時に弾性シートを上下方向から挟むストリッパープレートおよびダイプレートには、これらを当接させた時に弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられている。従って、弾性シートがストリッパープレートとダイプレートとの間に挟まれたときに、弾性シートは自己の形状を転写した空間に収容される。これにより、弾性シートが、打抜き前に潰されて変形することを防止或いは抑制できる。よって、第1パンチ部が、弾性シートの打抜き対象の部分とは異なる部分に接触することを防止或いは抑制できる。
【0010】
また、ストリッパープレート表面とダイプレート表面とが当接したときに、弾性シートは、弾性シートの上面の形状に対応する転写形状を備えるストリッパープレート側凹部に嵌るとともに、弾性シートの下面の形状に対応する転写形状を備えるダイプレート側凹部に嵌る。従って、弾性シートは、ストリッパープレートとダイプレートとの間に区画された空間内において、ダイプレート表面の面内方向に変形することが規制された状態となる。従って、パンチ部が弾性シートを貫通する際に弾性シートがパンチ部に粘着し、パンチ部が穴部に侵入する際に弾性シートを穴部の側に引っ張った場合でも、弾性シートが穴部に引き込まれることを防止或いは抑制できる。すなわち、弾性シートが打抜かれた後に、弾性シートが変形することが防止或いは抑制される。
【0011】
本発明の第1の形態では、前記ダイプレートは、全属製のダイプレート本体と、前記ダイプレート本体の表面に設けられたフッ素樹脂含有のコーティング層と、を備え、前記ダイプレート表面、前記ダイプレート側凹部の内面、および前記穴部において前記パンチ部が挿入されたときに当該パンチ部の径方向外側に位置する内周壁面は、前記コーティング層により覆われていることを特徴とする。穴部の内周壁面がフッ素樹脂含有のコーティング層で覆われていれば、穴部の内周壁面が金属面である場合と比較して、滑りやすくなる。従って、打抜きに際してパンチ部が弾性シートを穴部に引き込んだときに、弾性シートが穴部の内周壁面を滑る。これにより、パンチ部が弾性シートを打抜くスピードが低下することを防止或いは抑制できる。よって、パンチ部により弾性シートを精度よく打抜くことができる。また、ダイプレート表面、およびダイプレート側凹部の内面がフッ素樹脂含有のコーティング層で覆われていれば、これらの面が金属面である場合と比較して、滑り
やすくなる。従って、弾性シートをダイプレート側凹部に配置する際に弾性シートとダイプレート側凹部とがダイプレート表面の面内方向でずれた場合には、弾性シートは、ダイプレート表面およびダイプレート側凹部の内面を滑り、その下面がダイプレート側凹部に嵌る状態にセットされる。これにより、弾性シートは、ダイプレート上の所定の位置に正確に配置される。従って、ダイプレートとストリッパープレートとの間に弾性シートを挟んだときに、弾性シートが潰れることがない。また、弾性シートがダイプレート上の所定の位置に正確に配置されるので、パンチ部により、弾性シートを正確に打抜くことができる。
【0012】
本発明の第2の形態では、前記ダイプレートは、樹脂製のダイプレート本体部と、前記ダイプレート本体部を下方から支持する金属製の支持プレート部と、を備え、前記ダイプレート表面、前記ダイプレート側凹部の内面、および前記穴部において前記パンチ部が挿入されたときに当該パンチ部の径方向外側に位置する内周壁面は、前記ダイプレート本体部に設けられていることを特徴とする。穴部の内周壁面が樹脂からなるダイプレート本体部に設けられていれば、穴部の内周壁面が金属面である場合と比較して、滑りやすくなる。従って、打抜きに際してパンチ部が弾性シートを穴部に引き込んだときに、弾性シートが穴部の内周壁面を滑る。これにより、パンチ部が弾性シートを打抜くスピードが低下することを防止或いは抑制できる。よって、パンチ部により弾性シートを精度よく打抜くことができる。また、ダイプレート表面およびダイプレート側凹部の内面が樹脂からなるダイプレート本体部に設けられていれば、これらの面が金属面である場合と比較して、滑りやすくなる。従って、弾性シートをダイプレート側凹部に配置する際に弾性シートとダイプレート側凹部とがダイプレート表面の面内方向でずれた場合には、弾性シートは、ダイプレート表面およびダイプレート側凹部の内面を滑り、その下面がダイプレート側凹部に嵌る状態にセットされる。これにより、弾性シートは、ダイプレート上の所定の位置に正確に配置される。従って、ダイプレートとストリッパープレートとの間に弾性シートを挟んだときに、弾性シートが潰れることがない。また、弾性シートがダイプレート上の所定の位置に正確に配置されるので、パンチ部により、弾性シートを正確に打抜くことができる。
【0013】
本発明の第3の形態では、前記ダイプレート表面および前記ダイプレート側凹部の内面は、粗面であり、十点平均粗さをDとした場合に、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
5μm ≦ D ≦ 20μm
このような条件式を満たせば、ダイプレート表面およびダイプレート側凹部の内面と、弾性シートと、の接触面積が低下する。ここで、各面の十点平均粗さDが条件式の下限値を下回る場合には、弾性シートがダイプレートに貼り付きやすくなるので、打抜き後の弾性シートをダイプレート側凹部から取り出すのに支障が出る場合がある。また、各面の十点平均粗さDが条件式の上限値を上回る場合には、各面の凹凸によって、弾性シートに傷がつく場合がある。
【0014】
本発明の第4の形態では、前記パンチ部は、先端面の中央に、当該先端面の外周縁よりも前記下方に突出する中央突出部分を備え、前記中央突出部分の先端は、前記パンチ部の軸線と垂直な平面であることを特徴とするこのようにすれば、パンチ部が弾性シートの打抜き対象の部分に接触したときに、中央突出部分の先端の平面が弾性シートにおける打抜き対象の部分を押して弾性変形させる。従って、パンチ部によって打抜かれた後に、弾性シートの打抜き部分は自己の弾性復帰力によって元の形状に戻る。これにより、弾性シートの打抜き部分は、パンチ部の先端面から剥離しやすくなる。よって、弾性シートの打抜き部分がパンチ部に貼り付いて脱落せず、打抜き後に、打抜き部分がパンチプレートとともに上方に移動してしまうことを防止できる。
【0015】
本発明の第5の形態では、前記打抜き制御部は、前記パンチプレートを前記待機位置から前記打抜き完了位置に移動させる第1速度よりも、前記パンチプレートを前記打抜き完了位置から前記待機位置に戻す第2速度を遅くすることを特徴とする。このようにすれば、弾性シートを打抜いた後に、ストリッパープレートが弾性シートから上方に離間する際の移動速度が遅くなる。従って、ダイプレートから上方に離間するストリッパープレートに弾性シートが引っ張られることを防止或いは抑制できる。よって、弾性シートが第1ダイプレート上で移動することを防止或いは抑制できる。
【0016】
本発明において、前記パンチ部の前記先端部分は、先端から前記上方に向かって順に、打抜き部と、柱部と、を備え、前記上下方向から見た場合に、前記柱部は、前記打抜き部の内側に位置するものとすることができる。これにより、パンチ部の先端部分がダイプレートの穴部に挿入されたときに、柱部と穴部の内周壁面との間に隙間が形成される。従って、パンチ部の先端部分が穴部に侵入する際に打抜き部が弾性シートを穴部に引き込んだ場合でも、弾性シートと柱部とが密着して、更に、パンチ部が弾性シートを穴部の奥まで引き込むことを防止できる。従って、弾性シートが破れることを防止或いは抑制できる。また、本発明において、前記パンチ部の先端面は、粗面であることが望ましい。このようにすれば、パンチ部の先端面と弾性シートとが接触する接触面積を低減できる。従って、パンチ部によって打抜かれた弾性シートの打抜き部分がパンチ部の先端面に貼り付いて脱落せず、打抜き後に、打抜き部分がパンチプレートとともに上方に移動してしまうことを防止できる。さらに、本発明において、前記パンチ部は、樹脂製であるものとすることができる。このようにすれば、パンチ部が金属製である場合と比較して、パンチ部を滑りやすいものとすることが容易である。従って、パンチ部が弾性シートを穴部に引き込むことを抑制しやすい。
【0017】
本発明の第1、第2、第3、第5の形態において、前記パンチ部は、先端面の中央に、当該先端面の外周縁よりも前記下方に突出する中央突出部分を備え、前記中央突出部分の先端は、前記パンチ部の軸線と垂直な平面であるものとすることができる。このようにすれば、パンチ部が弾性シートの打抜き対象の部分に接触したときに、中央突出部分の先端の平面が弾性シートにおける打抜き対象の部分を押して弾性変形させる。従って、パンチ部によって打抜かれた後に、弾性シートの打抜き部分は自己の弾性復帰力によって元の形状に戻る。これにより、弾性シートの打抜き部分は、パンチ部の先端面から剥離しやすくなる。よって、弾性シートの打抜き部分がパンチ部に貼り付いて脱落せず、打抜き後に、打抜き部分がパンチプレートとともに上方に移動してしまうことを防止できる。
【0018】
本発明において、前記パンチプレートを、前記ストリッパープレートが前記ダイプレート表面から前記上方に離間する待機位置と、前記パンチ部の前記先端部分が前記穴部に挿入された打抜き完了位置との間で昇降させる昇降機構と、前記昇降機構を駆動制御する打抜き制御部と、を有し、前記打抜き制御部は、前記パンチプレートを前記待機位置から前記打抜き完了位置に移動させる第1速度よりも、前記パンチプレートを前記打抜き完了位置から前記待機位置に戻す第2速度を遅くするものとすることができる。このようにすれば、弾性シートを打抜いた後に、ストリッパープレートが弾性シートから上方に離間する際の移動速度が遅くなる。従って、ダイプレートから上方に離間するストリッパープレートに弾性シートが引っ張られることを防止或いは抑制できる。よって、弾性シートが第1ダイプレート上で移動することを防止或いは抑制できる。
【0019】
本発明において、前記ストリッパープレート表面、および前記ストリッパープレート側凹部の内面は、粗面であることが望ましい。このようにすれば、弾性シートとストリッパープレートとが接触する接触面積を低減できる。従って、ストリッパープレートがダイプレートから上方に離間する際に、弾性シートがストリッパープレートに貼り付いてしまうことを防止或いは抑制できる。
【0020】
本発明において、前記弾性シートから打抜かれた打抜き部分を回収する回収機構を備え、前記回収機構は、前記ダイプレートの下方に配置され前記穴部と連通する回収箱と、前記回収箱に連通する吸気口を備える吸気機構と、前記吸気機構を駆動制御する吸気機構制御部と、を有し、前記吸気機構制御部は、前記ストリッパープレートが前記ダイプレートに接触している間、前記吸気機構を駆動するものとすることができる。このようにすれば、パンチ部が弾性シートを打抜いたときに、パンチ部の先端部分の径方向外側の面と、穴部の内周壁面との間を、回収箱の側に向かう気流が発生する。これにより、パンチ部によって打抜かれた弾性シートの打抜き部分がパンチ部に貼り付いて脱落しなくなることを防止或いは抑制できる。また、回収箱の側に向かう気流により、パンチ部から脱落した打抜き部分を、回収箱に回収することが容易となる。
【0021】
本発明において、前記ダイプレート側凹部に配置された前記弾性シートを前記ダイプレートから外に吹き飛ばす弾性シート除去機構を有することが望ましい。このようにすれば、打抜きが完了した後にダイプレート側凹部に配置されている弾性シートを、ダイプレート表面上で移動させることなく、ダイプレートから除去できる。
【0022】
本発明において、前記弾性シートは、エラストマー製であるものとすることができる。
【0023】
次に、本発明の弾性シート打抜きシステムは、上記の弾性シート打抜き装置と、前記弾性シートを、前記弾性シートが滞留する滞留位置から前記弾性シート打抜き装置の前記ダイプレート側凹部に搬送する弾性シート搬送装置と、を備え、前記滞留位置は、槽内の温度調節を行う温度調節機構を有する温度槽内に設定されていることを特徴とする。すなわち、本発明の弾性シート打抜きシステムは、プレート部および前記プレート部から下方に突出するパンチ部を備えるパンチプレート、前記パンチ部が上下方向に貫通可能な貫通孔を備え、前記上下方向に移動可能な状態で前記プレート部に支持されたストリッパープレート、前記ストリッパープレートを、その移動範囲の下端の下端位置に付勢する付勢部材、および前記ストリッパープレートの前記下方に位置し、前記上下方向から見た場合に前記パンチ部と重なる位置に当該パンチ部の先端部分を受け入れ可能な穴部を備えるダイプレートを有し、前記ダイプレートに打抜き対象の弾性シートが配置されると前記パンチプレートを上方から前記ダイプレートに接近させ、前記ストリッパープレートと前記ダイプレートとの間に前記弾性シートを挟んだ後に、前記ストリッパープレートから前記下方に突出する前記パンチ部により前記弾性シートを打抜いて当該パンチ部の先端部分を前記穴部に挿入し、しかる後に、前記パンチプレートおよび前記ストリッパープレートを前記ダイプレートから前記上方に離間させる弾性シート打抜き装置と、前記弾性シートを搬送する弾性シート搬送装置と、を有し、前記上下方向で対向する前記ストリッパープレートのストリッパープレート表面および前記ダイプレートのダイプレート表面には、前記ストリッパープレート表面と前記ダイプレート表面とを当接させた時に前記弾性シートの形状を転写した転写形状の空間を区画するストリッパープレート側凹部およびダイプレート側凹部が設けられており、前記弾性シート搬送装置は、前記弾性シートを、前記弾性シートが滞留する滞留位置から前記弾性シート打抜き装置の前記ダイプレート側凹部に搬送し、前記滞留位置は、槽内の温度調節を行う温度調節機構を有する温度槽内に設定されていることを特徴とする。
【0024】
弾性シートは、鉄やアルミより線膨張係数が高く、温度による寸法の変化が大きい。従って、弾性シート打抜き装置が設置されている環境の温度状態により、弾性シートの寸法が設計寸法から変化している場合がある。ここで、弾性シートをダイプレート側凹部に嵌め込むためには、弾性シートが弾性シート打抜き装置に供給される前に、弾性シートを設計寸法に合致させることが望ましい。これに対して、本発明の弾性シート打抜きシステムでは、弾性シートは、弾性シート打抜き装置に供給される前に、温度調節機構を有する温度槽内に設定された滞留位置で滞留する。従って、槽内の温度を調節することにより、弾性シートを設計寸法に合致させることができる。
【0025】
また、本発明の別の形態の弾性シート打抜きシステムは、上記の弾性シート打抜き装置として、第1弾性シート打抜き装置および第2弾性シート打抜き装置を有するとともに、予め定めた供給位置にある前記弾性シートを前記第1弾性シート打抜き装置の前記ダイプレートである第1ダイプレートの前記ダイプレート側凹部に供給する第1弾性シート搬送装置と、前記第1ダイプレート上の前記弾性シートを前記第2弾性シート打抜き装置の前記ダイプレートである第2ダイプレートの前記ダイプレート側凹部に移動させる第2弾性シート搬送装置と、を有し、前記第1弾性シート打抜き装置の前記パンチ部である第1パンチ部と、前記第2弾性シート打抜き装置の前記パンチ部である第2パンチ部とは、前記上下方向から見た場合の輪郭形状が互いに異なり、前記弾性シートは、打抜きによって環状のシール材となる環状製品部と、前記環状製品部を除いたバリ部と、を備え、前記第1弾性シート打抜き装置は、前記第1パンチ部により前記バリ部における前記環状製品部の内側の内側バリ部分を打抜き、前記第2弾性シート打抜き装置は、前記第2パンチ部により前記環状製品部を打抜くことを特徴とする。
【0026】
本発明の弾性シート打抜きシステムでは、環状のシール材を製造する際に、まず、第1弾性シート打抜き装置によって弾性シートの内側バリ部分を打抜く。次に、弾性シートを第1弾性シート打抜き装置から第2弾性シート打抜き装置に搬送する。その後、第2弾性シート打抜き機構によって弾性シートの環状製品部を打抜く。本発明によれば、第1弾性シート打抜き装置において、打抜きの前後で、弾性シートが変形することを防止或いは抑制できる。従って、第1弾性シート打抜き装置により内側バリ部分を打抜く際に、第1パンチ部が、内側バリ部分の外周側に位置する環状製品部に接触して、環状製品部を傷つけてしまうことが防止或いは抑制される。また、第1パンチ部が環状製品部を穴部の側に引き込んでしまい、環状製品部に擦り傷が形成されること、および破断が発生することを防止或いは抑制できる。よって、2台の弾性シート打抜き装置を用いた2回の打抜きで環状製品部を製造したときに、シール材となる環状製品部に傷が発生していることを防止或いは抑制できる。また、第2弾性シート打抜き装置では、打抜きに際して弾性シートが変形することが防止或いは抑制されている。従って、第2弾性シート打抜き装置は、シール材となる環状製品部を精度よく打抜くことができる。
【0027】
本発明において、前記第1弾性シート搬送装置は、第1吸着面および当該第1吸着面に設けられた第1吸気口を備える第1吸着部と、前記第1吸気口に連通する第1吸気機構と、前記第1吸着部を移動させる第1吸着部移動機構と、前記第1吸気機構および前記第1吸着部移動機構を駆動制御する第1搬送制御部と、を備え、前記第1搬送制御部は、前記第1吸着面を予め定めた前記供給位置にある前記弾性シートに隙間を開けて対向させて前記第1吸気機構を駆動して当該第1吸着面に前記弾性シートを吸着し、前記第1吸着部を移動させて前記第1吸着面を前記第1ダイプレートの前記ダイプレート側凹部の前記上方に配置して前記第1吸気機構を停止させるものとすることができる。
【0028】
このようにすれば、第1吸着部は、第1吸着面を弾性シートに押し付けた状態で当該弾性シートを第1吸着面に吸引するのではなく、第1吸着面を弾性シートから離間させた状態で供給位置にある弾性シートを上方に吸引して、第1吸着面に吸着する。従って、弾性シートが第1吸着面に吸着される際に、第1吸着面を弾性シートに押し付けることがない。よって、弾性シートが変形することを防止できる。また、弾性シートが第1吸着面に貼り付くことを防止できる。さらに、摩擦により、弾性シートが帯電することを防止或いは抑制できる。従って、帯電により弾性シートが第1吸着面に貼り付くことを防止できる。これにより、第1吸気機構を停止したときに、弾性シートが第1吸着面から離間させることが容易となるので、弾性シートを第1ダイプレートのプレート側凹部に配置することが容易となる。
【0029】
本発明において、前記バリ部は、前記弾性シートの外周縁に沿って全周に渡って設けられた枠状バリ部分を備え、前記環状製品部は、前記枠状バリ部分の内周側に位置し、前記第2弾性シート搬送装置は、第2吸着面および当該第2吸着面に設けられた第2吸気口を備える第2吸着部と、前記第2吸気口に連通する第2吸気機構と、前記第2吸着部を移動させる第2吸着部移動機構と、前記第2吸気機構および前記第2吸着部移動機構を駆動制御する第2搬送制御部と、を備え、前記第2搬送制御部は、前記第2吸着面を前記第1ダイプレートのダイプレート側凹部に配置された前記弾性シートに隙間を開けて対向させて前記第2吸気機構を駆動して当該第2吸着面に前記弾性シートを吸着し、前記第2吸着部を移動させて前記第2吸着面を前記第2ダイプレートの前記ダイプレート側凹部の前記上方に位置させ、しかる後に、前記第2吸気機構を停止させ、前記第2吸気口は、前記第2吸着面において前記枠状バリ部分と対向する枠状の対向領域に設けられているものとすることができる。
【0030】
このようにすれば、第2吸着部は、第2吸着面を弾性シートに押し付けた状態で当該弾性シートを第2吸着面に吸引するのではなく、第2吸着面を弾性シートから離間させた状態で第1ダイプレートのダイプレート凹部にある弾性シートを上方に吸引して、第2吸着面に吸着する。従って、弾性シートが第2吸着面に吸着される際に、第2吸着面を弾性シートに押し付けることがない。よって、弾性シートが変形することを防止できる。また、弾性シートが第2吸着面に貼り付くことを防止できる。さらに、摩擦により、弾性シートが帯電することを防止或いは抑制できる。従って、帯電により弾性シートが第2吸着面に貼り付くことを防止できる。これにより、第2吸気機構を停止したときに、弾性シートが第2吸着面から離間させることが容易となるので、弾性シートを第2ダイプレートのプレート側凹部に配置することが容易となる。また、第2弾性シート搬送装置では、第2吸気口は、第2吸着面において弾性シートの枠状バリ部分と対向する対向領域に設けられる。これにより、第2吸着部は、弾性シートの外周縁部分を全周に渡って第2吸着面に吸引することが可能となる。従って、弾性シートにおける枠状バリ部分の内周側に第1弾性シート打抜き装置が打抜いた孔が形成されていても、第2吸着部は弾性シートを吸着できる。また、第2吸着部が弾性シートの外周縁部分を全周に渡って吸引すれば、吸着された弾性シートに撓みが発生することを防止或いは抑制できる。従って、弾性シートを第2ダイプレートのプレート側凹部に正確に配置できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、弾性シートは、打抜きに際してダイプレートとストリッパープレートとの間に挟まれたときに、自己の形状を転写した空間内に収容される。従って、打抜き前に、弾性シートが潰されて、変形することを防止或いは抑制できる。また、弾性シートは、自己の形状を転写した空間に収容されることにより、ダイプレート表面の面内方向に変形することが規制または抑制された状態となる。従って、打抜き時にパンチ部が弾性シートを穴部の側に引っ張った場合でも、打抜き後に、弾性シートが穴部の側に引き込まれることを防止或いは抑制できる。よって、弾性シートが打抜かれた後に、弾性シートが変形することが防止或いは抑制される。
【0032】
また、本発明の弾性シート打抜きシステムによれば、第1打抜き装置において、打抜き部分の周辺に位置する環状製品部に傷が発生することを防止或いは抑制できる。また、第2打抜き装置において、環状製品部を精度よく打抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】弾性シート打抜きシステムの正面図である。
図2】弾性シート打抜きシステムを上方から見た場合の平面図である。
図3】弾性シートの平面図および断面図である。
図4】第1弾性シート打抜き装置の説明図である。
図5】弾性シートを打抜く直前の第1弾性シート打抜き装置の説明図である。
図6】弾性シートを打抜いた直後の第1弾性シート打抜き装置の説明図である。
図7】第1弾性シート打抜き装置の第1パンチ部の説明図である。
図8】第2弾性シート打抜き装置の第2パンチ部の説明図である。
図9】供給機構の説明図である。
図10】弾性シート移動機構および搬送機構の説明図である。
図11】テーブルおよび位置決め機構の斜視図である。
図12】第2弾性シート搬送装置の説明図である。
図13】弾性シート打抜きシステムの動作のフローチャートである。
図14】変形例のダイプレートの説明図である。
図15】変形例1の吸引部の説明図である。
図16】変形例2の吸引部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に図面を参照して、本発明を適用した弾性シート打抜きシステムを説明する。
【0035】
(全体構成)
図1は、弾性シート打抜きシステムの正面図である。図2は、所定の高さから下方に向かって弾性シート打抜きシステムを見た場合の説明図である。図2は、図1のJ-J線の高さ位置から下方を見た場合である。図3(a)は、弾性シートの平面図である。図3(b)は、図3(a)のK-K線断面図である。本例の弾性シート打抜きシステム1は、弾性シート2を、2台の弾性シート打抜き装置3、4で順番に打抜いてOリングなどの環状のシール材を製造する。
【0036】
図1に示すように、弾性シート打抜きシステム1は、弾性シート2を打抜くための第1弾性シート打抜き装置3と、第1弾性シート打抜き装置3が打抜いた弾性シート2を更に打抜くための第2弾性シート打抜き装置4を有する。また、弾性シート打抜きシステム1は、弾性シート2を第1弾性シート打抜き装置3に供給する第1弾性シート搬送装置5と、弾性シート2を第1弾性シート打抜き装置3から第2弾性シート打抜き装置4に搬送する第2弾性シート搬送装置6と、を有する。さらに、弾性シート打抜きシステム1は、第1弾性シート打抜き装置3、第2弾性シート打抜き装置4、第1弾性シート搬送装置5、第2弾性シート搬送装置6を連携して駆動させる制御部7を有する。
【0037】
第1弾性シート打抜き装置3と第2弾性シート打抜き装置4は、一方向に配列されている。ここで、第1弾性シート打抜き装置3と第2弾性シート打抜き装置4との配列方向をX方向、X方向と直交する方向をY方向、X方向およびY方向と直交する方向をZ方向とする。Z方向は上下方向である。また、X方向において、第2弾性シート打抜き装置4が位置する側をX1方向、その反対側をX2方向とする。Y方向の一方側をY1方向、他方側をY2方向とする。また、下方をZ1方向、Z2方向をZ2方向とする。
【0038】
(弾性シート)
図3に示すように、弾性シート2は、その厚み方向から見た場合の輪郭形状が、正方形である。弾性シート2の輪郭は、互いに対向して平行に延びる第1辺58aおよび第2辺58bと、互いに対向して第1辺58aおよび第2辺58bと直交する方向に平行に延びる第3辺58cおよび第4辺58dを備える。なお、弾性シート2は、6角形形状を備える場合もある。この場合、弾性シート2は、互いに対向して平行に延びる第1辺58aおよび第2辺58bと、互いに対向して第1辺58aおよび第2辺58bと直交する方向に平行に延びる第3辺58cおよび第4辺58dと、第1辺58aおよび第3辺58cと交差する方向に延びて第1辺58aおよび第3辺58cを接続する第5辺と、第5辺と対向して第2辺58bと第4辺58dとを接続する第6辺と、を備える。
【0039】
また、弾性シート2は、環状のシール材となる複数の環状製品部60と、複数の環状製品部60を除いたバリ部61と、を備える。複数の環状製品部60は、弾性シート2の中央部分にマトリックス状に配列されている。各環状製品部60は、厚み方向から見た場合に円環状である。各環状製品部60の周方向の一部分を厚み方向に切断した断面は、円形である。
【0040】
バリ部61は、弾性シート2の外周縁に沿って全周に渡って設けられた枠状バリ部分61aを備える。枠状バリ部分61aは、一定幅で設けられている。複数の環状製品部60は、枠状バリ部分61aの内周側に位置する。また、バリ部61は、各環状製品部60の内側に位置する内側バリ部分61bと、枠状バリ部分61aの内周側において各環状製品部60の外側に位置する外側バリ部分61cと、を備える。内側バリ部分61bは、環状製品部60と隣接する位置にZ1方向およびZ2方向に突出する環状の内側突部を備える。内側突部の断面形状は、矩形であり、Z1方向およびZ2方向に向かって先細りとなる。外側バリ部分61cは、枠状バリ部分61aの内周側で連続するとともに、枠状バリ部分61aに連続する。外側バリ部分61cは、環状製品部60と隣接する位置にZ1方向およびZ2方向に突出する環状の外側突部を備える。外側突部の断面形状は、矩形であり、Z1方向およびZ2方向に向かって先細りとなる。
【0041】
ここで、第1弾性シート打抜き装置3は、弾性シート2から内側バリ部分61bを打抜く。第2弾性シート打抜き装置4は、内側バリ部分61bが打抜かれた弾性シート2から環状製品部60を打抜く。第2弾性シート打抜き装置4により打抜かれた環状製品部60は、環状のシール材となる。本例では、シール材は、Oリングである。
【0042】
弾性シート2は、エラストマー製である。本例では、弾性シート2は、熱硬化性エラストマーからなる。熱硬化性エラストマーは、弾性があり、撓みやすい。また、熱硬化性エラストマーは、粘着性を備える。熱硬化性エラストマーの線膨張係数は、1×10-4/℃~3×10-4/℃である。熱硬化性エラストマーの線膨張係数は、鉄の線膨張係数と比較して、10~40倍大きい。ここで、弾性シート2は、ラバーインジェクション成型機により製造される。すなわち、弾性シート2は、熱硬化性エラストマーを所定の成形温度とした金型に注入し、圧力をかけて成形される。弾性シート2は、熱硬化性エラストマーと同様の性質を備える。すなわち、弾性シート2は、弾性および粘着性を備える。また、弾性シート2は、鉄と比較して、線膨張係数が10~40倍大きい。
【0043】
(第1弾性シート打抜き装置)
図4は、第1弾性シート打抜き装置3の説明図である。図4では、パンチプレートは待機位置にある。図5は、弾性シートを打抜く直前の第1弾性シート打抜き装置3の説明図である。図6は、第1パンチ部によって弾性シートを打抜いた直後の第1弾性シート打抜き装置3の説明図である。図7は、第1パンチ部の説明図である。
【0044】
図4に示すように、第1弾性シート打抜き装置3は、第1プレート部11と、第1プレート部11からZ1方向に突出する第1パンチ部12と、を備える第1パンチプレート13を有する。また、第1弾性シート打抜き装置3は、Z方向に移動可能な状態で第1プレート部11に支持された第1ストリッパープレート15を有する。第1ストリッパープレート15は、第1パンチ部12がZ方向に貫通可能な第1貫通孔16を備える。第1ストリッパープレート15は、その移動範囲のZ1方向の端に位置する下端位置15Aと、下端位置15Aよりも第1プレート部11に近い上側位置15B(図5図6参照)との間を移動する。さらに、第1弾性シート打抜き装置3は、第1ストリッパープレート15を、下端位置15Aに付勢する第1付勢部材17を有する。
【0045】
また、第1弾性シート打抜き装置3は、第1ストリッパープレート15のZ1方向に位置する第1ダイプレート18を有する。図2に示すように、第1ダイプレート18は、Z方向から見た場合に第1パンチ部12と重なる位置に、第1パンチ部12の先端部分14を受け入れ可能な第1穴部19を備える。
【0046】
さらに、第1弾性シート打抜き装置3は、図1に示すように、第1パンチプレート13を昇降させる第1昇降機構21を有する。第1昇降機構21は、第1パンチプレート13を、第1ストリッパープレート15がダイプレート表面18aからZ2方向に離間する待機位置13Aと、第1パンチ部12の先端部分14が第1穴部19に挿入された打抜き完了位置13Bとの間で昇降させる。図4に示す状態は、第1パンチプレート13が待機位置13Aに配置された状態であり、図6に示す状態は、第1パンチプレート13が打抜き完了位置13Bに配置された状態である。
【0047】
第1パンチ部12は、弾性シート2から内側バリ部分61bを打抜く。図4に示すように、第1パンチ部12は、第1プレート部11からZ1方向に突出する。図7に示すように、第1パンチ部12において、弾性シート2を打抜く際に第1ダイプレート18の第1穴部19に侵入する先端部分14は、先端からZ2方向に向かって順に、打抜き部25と、柱部26と、を備える。Z方向から見た場合に、打抜き部25および柱部26は円形である。Z方向から見た場合に、柱部26は、打抜き部25の内側に位置する。本例では、柱部26と打抜き部25とは同軸であり、柱部26は、打抜き部25より外径寸法が小さい。
【0048】
第1パンチ部12の先端面12a、すなわち、打抜き部25の先端面12aは、外周縁にZ1方向に突出する環状突出部分25aを備える。また、打抜き部25の先端面12aは、中央部分にZ1方向に突出する中央突出部分25bを備える。中央突出部分25bは、円錐台形状を備える。中央突出部分25bの先端は、Z方向に延びる第1パンチ部12の軸線と垂直な平面である。環状突出部分25aと中央突出部分25bとは径方向で離間している。径方向における環状突出部分25aと中央突出部分25bとの間には環状の窪みが形成されている。中央突出部分25bは、環状突出部分25aよりもZ1方向に突出する。
【0049】
本例では、第1パンチ部12は、導電性の金属からなる。第1パンチ部12の先端部分14には、全面に、ブラスト加工が施されている。これにより、第1パンチ部12の先端面12aは、粗面とされる。第1パンチ部12の先端面12aは、十点平均粗さをPとしたときに、次の条件式(1)を満たす。
5μm ≦ P ≦ 20μm ・・(1)
ここで、Pは、次の条件式(2)を満たすことがより望ましい。
8μm ≦ P ≦ 12μm ・・(2)
本例では、P=10μmであり、条件式(1)、(2)を満たす。
【0050】
次に、第1ストリッパープレート15は、導電性の金属からなる。図4に示すように、パンチプレート13が待機位置13Aに配置されているときに、第1ストリッパープレート15の各第1貫通孔16には、第1パンチ部12の先端部分14が挿入されている。第1付勢部材17は、第1プレート部11の四隅と第1ストリッパープレート15の四隅との間に配置された4本のコイルバネである。図4に示すように、第1ストリッパープレート15が下端位置15Aにあるときに、第1パンチ部12の先端面12aの中央突出部分25bの先端は、第1ストリッパープレート15の下面であるストリッパープレート表面15aからZ1方向に突出する。従って、図5に示すように、ストリッパープレート表面15aがダイプレート18に接触したときに、第1パンチ部12の中央突出部分25bの先端は、ダイプレート18上に位置する弾性シート2の内側バリ部分61bに接触する。図6に示すように、第1ストリッパープレート15が上側位置15Bにあるときに、第1パンチ部12の先端部分14は、ストリッパープレート表面15aからZ1方向に突出する。
【0051】
ここで、図4に示すように、ストリッパープレート表面15aには、ストリッパープレート側凹部27が設けられている。ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aは、粗面である。ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aは、十点平均粗さをSとした場合に、次の条件式(3)を満たす。
5μm ≦ S ≦ 40μm ・・(3)
ここで、Sは、次の条件式(4)を満たすことがより望ましい。
8μm ≦ S ≦ 12μm ・・(4)
本例では、S=10μmであり、条件式(3)、(4)を満たす。
【0052】
第1ダイプレート18は、その上面であるダイプレート表面18aに、ダイプレート側凹部28を備える。ダイプレート側凹部28は、打抜き対象の弾性シート2が配置される第1打抜き位置Aに形成される。図5に示すように、ストリッパープレート表面15aとダイプレート表面18aとを当接させた時に、ダイプレート側凹部28とストリッパープレート側凹部27とは対向する。また、第1ストリッパープレート15と第1ダイプレート18との間には、ダイプレート側凹部28とストリッパープレート側凹部27とによって、弾性シート2の形状を転写した転写形状の空間29が区画される。
【0053】
ここで、図4に示すように、第1ダイプレート18は、導電性の金属からなる第1ダイプレート本体31と、第1ダイプレート本体31の表面に設けられたフッ素樹脂含有の第1コーティング層32と、を備える。第1コーティング層32は、PTFE含有ニッケルメッキ層、テフロン(登録商標)コート層などである。これにより、ダイプレート表面18a、ダイプレート側凹部28の内面28a、および第1穴部19においてパンチ部12が挿入されたときに先端部分14の径方向外側に位置する内周壁面19aは、第1コーティング層32により覆われている。
【0054】
ダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aは、粗面である。すなわち、これらの面の第1コーティング層32の表面は、粗面である。ダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aは、十点平均粗さをDとしたときに、次の条件式(5)を満たす。
5μm ≦ D ≦ 40μm ・・(5)
ここで、Dは、次の条件式(6)を満たすことがより望ましい。
8μm ≦ D ≦ 12μm ・・(6)
本例では、D=10μmであり、条件式(5)、(6)を満たす。
【0055】
次に、第1弾性シート打抜き装置3は、図1に示すように、第1昇降機構21を駆動制御する第1打抜き制御部22を有する。第1打抜き制御部22は、第1昇降機構21を駆動して第1パンチプレート13を昇降させる際に、第1パンチプレート13を待機位置13Aから打抜き完了位置13Bに移動させる第1速度V1(図4図5参照)よりも、第1パンチプレート13を打抜き完了位置13Bから待機位置13Aに戻す第2速度V2(図6参照)を遅くする。
【0056】
また、第1弾性シート打抜き装置3は、第1パンチ部12によって打抜かれた内側バリ部分61bを回収する第1回収機構23を有する。図4に示すように、第1回収機構23は、第1ダイプレート18のZ1方向に配置され第1穴部19と連通する第1回収箱24と、第1回収箱24に連通する第1吸気口34aを備える第1吸気機構34と、を備える。さらに、第1弾性シート打抜き装置3は、図1に示すように、第1吸気機構34を駆動制御する第1吸気機構制御部35を備える。第1吸気機構制御部35は、第1ストリッパープレート15が第1ダイプレート18に接触している間、吸気機構34を駆動する。
【0057】
ここで、図1に示すように、第1弾性シート打抜き装置3は、第1弾性シート打抜き装置3の動作を司る第1制御部10を備える。第1制御部10は、弾性シート打抜きシステム1の制御部7と一体、または通信可能に設けられている。第1打抜き制御部22および第1回収機構23の第1吸気機構制御部35は、第1制御部10に設けられている。
【0058】
図4に示すように、第1ダイプレート18に打抜き対象の弾性シート2が配置されると、第1打抜き制御部22は、第1パンチプレート13を第1ダイプレート18に接近させる。これにより、第1弾性シート打抜き装置3は、第1ストリッパープレート15と第1ダイプレート18を接触させて、これらの間に弾性シート2を挟む(図5参照)。その後、更に、第1パンチプレート13が第1ダイプレート18に接近すると、第1弾性シート打抜き装置3は、第1ストリッパープレート15からZ1方向に突出する第1パンチ部12により弾性シート2を打抜いて、第1パンチ部12の先端部分14を第1穴部19に挿入する(図6参照)。しかる後に、第1弾性シート打抜き装置3は、第1パンチプレート13をZ2方向に移動させる。これにより、第1パンチプレート13および第1ストリッパープレート15は、第1ダイプレート18からZ2方向に離間して、図4に示す状態となる。第1パンチ部12により打抜かれた内側バリ部分61bは、第1回収機構23によって回収される。
【0059】
(第2弾性シート打抜き装置)
図8は、第2弾性シート打抜き装置4のパンチ部12の先端部分14の形状の説明図である。第2弾性シート打抜き装置4は、第1弾性シート打抜き装置3と対応する構成を備える。従って、第2弾性シート打抜き装置4の説明では、第2弾性シート打抜き装置4と対応する対応する構成には、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、第2弾性シート打抜き装置4の説明では、第1弾性シート打抜き装置3の説明と同様に、図4図5図6を用いる。
【0060】
図4に示すように、第2弾性シート打抜き装置4は、第2プレート部11と、第2プレート部11からZ1方向に突出する第2パンチ部12と、を備える第2パンチプレート13を有する。また、第2弾性シート打抜き装置4は、Z方向に移動可能な状態で第2プレート部11に支持された第2ストリッパープレート15を有する。さらに、第2弾性シート打抜き装置4は、第2ストリッパープレート15を、下端位置15Aに付勢する第2付勢部材17を有する。第2付勢部材17は、4本のコイルバネである。また、第2弾性シート打抜き装置4は、第2ストリッパープレート15のZ1方向に位置する第2ダイプレート18を有する。さらに、第2弾性シート打抜き装置4は、図1に示すように、第1パンチプレート13を昇降させる第1昇降機構21を有する。第2昇降機構21は、第2パンチプレート13を、第2ストリッパープレート15がダイプレート表面18aからZ2方向に離間する待機位置13Aと、第2パンチ部12の先端部分14が第2穴部19に挿入された打抜き完了位置13Bとの間で昇降させる。
【0061】
第2パンチ部12は、弾性シート2から環状製品部60を打抜く。図8に示すように、第2パンチ部12は、円柱形状である。第2パンチ部12の外径寸法は、第1パンチ部12の打抜き部25の外径寸法よりも大きい、第2パンチ部12の先端面12aは、円形であり、外周縁から内周側に向かってZ2方向に傾斜するテーパー面である。先端面12aは、パンチ部の中心軸線と直交する平面に対し、Z2方向に向かって30度傾斜する。本例では、第2パンチ部12は、導電性の金属からなる。また、第2パンチ部12の先端面12aには、ブラスト加工が施されている。これにより、第2パンチ部12の先端面12aは、粗面とされる。第2パンチ部12の先端面12aは、十点平均粗さをPとしたときに、P=10μmであり、上記の条件式(1)、(2)を満たす。
【0062】
第2ストリッパープレート15は、導電性の金属からなる。また、第2ストリッパープレート15は、第2パンチ部12がZ方向に貫通可能な第2貫通孔16を備える。第2貫通孔16の内径は、第1ストリッパープレート15の第1貫通孔16の内径よりも大きい。各第2貫通孔16には、第2パンチ部12の先端部分14が挿入されている。第2ストリッパープレート15が上側位置15Bにあるときに、第2パンチ部12の先端部分14は、ストリッパープレート表面15aからZ1方向に突出する。
【0063】
ストリッパープレート表面15aには、ストリッパープレート側凹部27が設けられている。ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aは、粗面である。ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aの十点平均粗さをSとした場合に、S=10μmであり、上記の条件式(3)、(4)を満たす。
【0064】
第2ダイプレート18は、その上面であるダイプレート表面18aに、第2パンチ部12を受け入れ可能な第2穴部19を備える。第2穴部19の内径は、第1ダイプレート18の第1穴部19の内径よりも大きい。図4に示す第1ダイプレート18と同様に、ダイプレート表面18aにおいて、打抜き対象の弾性シート2が配置される第2打抜き位置Bには、ダイプレート側凹部28が設けられている。図5に示す状態と同様に、第1ストリッパープレート15のストリッパープレート表面15aと第2ダイプレート18のダイプレート表面18aとを当接させた時に、ダイプレート側凹部28とストリッパープレート側凹部27とは対向する。また、第2ストリッパープレート15と第2ダイプレート18との間には、ダイプレート側凹部28とストリッパープレート側凹部27とによって、弾性シート2の形状を転写した転写形状の空間29が区画される。
【0065】
ここで、第2ダイプレート18は、導電性の金属からなる第2ダイプレート本体31と、第2ダイプレート本体31の表面に設けられたフッ素樹脂含有の第2コーティング層32と、を備える。これにより、ダイプレート表面18a、ダイプレート側凹部28の内面28a、および第2穴部19の内周壁面19aは、第2コーティング層32により覆われている。また、ダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aは、粗面である。ダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aは、十点平均粗さをDとしたときに、D=10μmであり、上記の条件式(5)、(6)を満たす。すなわち、第2コーティング層32によって覆われているダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aの十点平均粗さは10μmである。
【0066】
次に、図1に示すように、第2弾性シート打抜き装置4は、第2昇降機構21を駆動制御する第2打抜き制御部22を有する。第2打抜き制御部22は、第2昇降機構21を駆動して第2パンチプレート13を昇降させる際に、第2パンチプレート13を待機位置13Aから打抜き完了位置13Bに移動させる第2速度V2(図4図5参照)よりも、第2パンチプレート13を打抜き完了位置13Bから待機位置13Aに戻す第2速度V2(図6参照)を遅くする。
【0067】
また、第2弾性シート打抜き装置4は、第2パンチ部12によって打抜かれた環状製品部60を回収する第2回収機構23を有する。図4に示すように、第2回収機構23は、第2ダイプレート18のZ1方向に配置され第2穴部19と連通する第2回収箱24と、第2回収箱24に連通する第2吸気口34aを備える第2吸気機構34と、を備える。また、図1に示すように、第2回収機構23は、第2吸気機構34を駆動制御する第2吸気機構制御部35を備える。第2吸気機構制御部35は、第2ストリッパープレート15が第2ダイプレート18に接触している間、吸気機構34を駆動する。
【0068】
さらに、図1に示すように、第2弾性シート打抜き装置4は、第2ダイプレート18のダイプレート側凹部28に配置された弾性シート2を第2ダイプレート18から外に吹き飛ばす弾性シート除去機構41を備える。弾性シート除去機構41は、第2ダイプレート18のZ2方向であって、第2ダイプレート18からX2方向に離間する位置に設けられた複数のノズル42と、ノズル42に接続された送気ポンプ43と、を備える。また、弾性シート除去機構41は、送気ポンプ43を駆動制御する弾性シート除去機構制御部45を備える。
【0069】
複数本のノズル42の先端開口は、ダイプレート側凹部28のX2方向の端部分に向けられている。弾性シート除去機構制御部45は、弾性シート2の打抜きが完了して、第2ストリッパープレート15が第2ダイプレート18からZ2方向に離間すると、送気ポンプ43を駆動してノズル42から圧縮空気を吐出させる。これにより、ノズル42からダイプレート側凹部28のX2方向の端部分に向かって斜めZ2方向から圧縮空気が吹き付けられる。この結果、ダイプレート側凹部28に配置されている弾性シート2は、ダイプレート側凹部28からZ2方向をX1方向に向かって飛び出して、第2ダイプレート18のX1方向に落下する。なお、第2ダイプレート18のX1方向には、環状製品部60が打抜かれた弾性シート2を回収するために、不図示の回収箱が配置されている。
【0070】
ここで、図1に示すように、第2弾性シート打抜き装置4は、第2弾性シート打抜き装置4の動作を司る第2制御部40を備える。第2制御部40は、弾性シート打抜きシステム1の制御部7と一体、または通信可能に設けられている。第2打抜き制御部22、第2回収機構23の第2吸気機構制御部35、および弾性シート除去機構41の弾性シート除去機構制御部45は、第2制御部40に設けられている。
【0071】
(第1弾性シート搬送装置)
第1弾性シート搬送装置5は、テーブル51と、弾性シート2をテーブル51のテーブル表面51aに設定された載置領域Cに供給する供給機構52を備える。図2に示すように、供給機構52は、予め設定した滞留位置Eにおいて、弾性シート2を積層した状態で保持するストッカー53を備える。また、供給機構52は、ストッカー53からテーブル51に弾性シート2を移動させる弾性シート移動機構54を備える。
【0072】
また、第1弾性シート搬送装置5は、テーブル表面51aの載置領域Cに配置された弾性シート2を載置領域C内の供給位置Dに位置決めする位置決め機構55を備える。さらに、第1弾性シート搬送装置5は、供給位置Dに位置決めされた弾性シート2を吸着して移動させ、吸着の解除によって第1弾性シート打抜き装置3の第1打抜き位置Aに配置する搬送機構56を有する。
【0073】
ここで、テーブル51は、第1弾性シート打抜き装置3のX2方向に位置する。テーブル51、第1弾性シート打抜き装置3、および第2弾性シート打抜き装置4は、X方向に一列に配置されている。テーブル51と滞留位置Eにあるストッカー53とは、Y方向に配列されている。ストッカー53はテーブル51のY1方向に位置する。
【0074】
(供給機構)
図9は、供給機構52の説明図である。図10(a)は、弾性シート移動機構54の吸着部の断面図である。図10(b)は、弾性シート移動機構54の吸着部をZ1方向から見た場合の斜視図である。図10(a)では、吸着部に弾性シート2が吸着されている状態を模式的に示す。図9に示すように、ストッカー53内において、弾性シート2は、Z方向に積み重ねられている。弾性シート移動機構54は、ストッカー53の一番上の弾性シート2をテーブル51のテーブル表面51aに設定した載置領域C(図2参照)に移動させる。
【0075】
図9に示すように、ストッカー53は、角筒部65と、角筒部65の下端開口を封鎖する底板部66と、を備える。角筒部65は、X方向で対向する側板のそれぞれにZ方向に延びるスリット67を備える。弾性シート2は、角筒部65の内側に積層されている。底板部66は、昇降機構68により、角筒部65の内側をZ方向に昇降可能である。昇降機構68は、弾性シート移動機構54が弾性シート2を1枚移動させる毎に、底板部66を所定距離だけ上昇させる。弾性シート2は、第1辺58aおよび第2辺58bをX方向に向け、第3辺58cおよび第4辺58dをY方向に向けた姿勢でストッカー53に収容されている。ここで、図2に示すように、滞留位置Eは、槽内の温度調節を行う温度調節機構70aを有する温度槽70内に設定されている。従って、ストッカー53は温度槽70内に位置する。弾性シート2は、温度槽70内で所定時間以上滞留する。
【0076】
弾性シート移動機構54は、図2図9に示すように、吸着面71および当該吸着面71に設けられた吸気口72を備える吸着部73と、吸気口72に連通する吸気機構74と、吸着部73および吸気機構74を移動させる吸着部移動機構75と、を備える。
【0077】
図9に示すように、吸着部73は、Z方向から見た場合の形状が矩形の吸引プレート81を備える。吸引プレート81は、その中央部分からZ2方向に突出する筒部82を備える。また、吸引プレート81は、図10に示すように、下面の中央部分に正方形形状の凹部83を備える。凹部83をZ方向から見た場合の大きさは、弾性シート2よりも小さい。凹部83の中心部分には、吸引プレート81をZ方向に貫通する連通口84が設けられている。連通口84は筒部82に連通する。
【0078】
吸引プレート81の下面には、シート状の網部材85が固定されている。網部材85は、矩形であり、凹部83を下方から封鎖する。また、網部材85の外周縁には、シート状の枠体86が貼り付けられている。本例では、網部材85は、金網であり、導電性を備える。枠体86は、クレープ紙を基材とする。より具体的には、枠体86は、クレープ紙からなる基材および基材の一方面に設けられた粘着層を備えるテープを、網部材85の外周縁に枠状に貼り付けることにより構成されている。テープの表面、すなわち、枠体86の下面は、粗面である。ここで、枠体86の下面、および網部材85の下面は、弾性シート2を吸着するための吸着面71を構成する。従って、吸着面71は、粗面部分を備える。また、吸着面71は、導電性の金属部分を備える。吸着面71に設けられた吸気口72は、網部材85が備える多数の開口である。
【0079】
枠体86からなる吸着面71の枠状部分71aは、吸着面71に弾性シート2を吸着したときに弾性シート2の外周縁に接触する。枠状部分71aの表面は、十点平均粗さをRとした場合に、次の条件式(7)を満たす。
8μm ≦ R ・・(7)
本例では、R=50μmであり、条件式(7)を満たす。
【0080】
図9に示すように、吸気機構74は、エジェクター88を備える。エジェクター88は、空気流入口88aと、ディフューザーと、ディフューザーと空気流入口88aとを連通させるボディと、ボディに駆動流体を流入させて空気流入口88aからディフューザーに向かう気流を発生させる気流発生機構と、を備える周知のものである。エジェクター88は、空気流入口88aが吸引プレート81の筒部82に連通する。これにより、エジェクター88の空気流入口88aは、吸引プレート81の筒部82、連通口84、および凹部83を介して、網部材85の開口である吸気口72に連通する。
【0081】
図1に示すように、吸着部移動機構75は、吸着部73を支持する支持部91と、支持部91をY方向およびZ方向に移動させる支持部移動機構92と、を備える。支持部移動機構92は、モータなどの駆動源を備える。図2に示すように、吸着部移動機構75は、予め設定した所定の搬送経路G1に沿って、吸着部73を移動させる。
【0082】
ここで、図1に示すように、供給機構52は、吸気機構74および弾性シート移動機構54を駆動制御する搬送制御部93を備える。搬送制御部93は、弾性シート打抜きシステム1の制御部7と一体、または通信可能に設けられている。搬送制御部93は、弾性シート2をストッカー53からテーブル51に供給する際に、まず、吸着部移動機構75を駆動制御して吸着部73を移動させ、その吸着面71をストッカー53に積層された弾性シート2に隙間を開けて対向させる。次に、搬送制御部93は、吸気機構74を駆動して弾性シート2を吸い上げて、吸着面71に吸着するとともに、吸着部移動機構75を駆動して吸着部73を所定の搬送経路G1に従ってY2方向に移動させる。その後、搬送制御部93は、吸着部73を、その吸着面71がテーブル表面51aの載置領域Cに対向する位置に配置する。しかる後に、搬送制御部93は、吸気機構74の駆動を停止する。これにより、弾性シート2を吸着面71から落下させて、載置領域Cに供給する。
【0083】
(テーブルおよび位置決め機構)
図11は、テーブル51および位置決め機構の説明図である。図2に示すように、テーブル51は、ストッカー53のY2方向に位置する。テーブル51は、金属製であり、水平なテーブル表面51aを備える。図11に示すように、テーブル表面51aには、フッ素樹脂を含有するコーティング層99が設けられている。本例では、コーティング層99が含有するフッ素樹脂は、PTFEである。テーブル表面51aの中央部分には、供給機構52から供給される弾性シート2が載置される載置領域Cが設定されている。載置領域Cは、弾性シート2を厚み方向から見た場合の平面形状よりも広い領域である。また、載置領域Cの中央部分には、弾性シート2を位置決めするための供給位置Dが設定されている。供給位置Dは、弾性シート2の平面形状と対応する形状および大きさを備える領域である。載置領域Cには、複数の通気口101が設けられている。複数の通気口101は、マトリックス状に配列されている。本例では、複数の通気口101は、供給位置Dを含む矩形の領域に設けられている。
【0084】
テーブル51には、弾性シート2がテーブル表面51aに供給されたことを検出する第2センサー103が設けられている。第2センサー103は、発光部と、受光部と、センシング部103aと、を備える。発光部と、受光部とは、光ファイバーにより接続されている。センシング部103aは、光ファイバーにおける発光部と受光部との間に設けられている。センシング部103aはテーブル表面51aの中央に設けられている。発光部と受光部とは、テーブル51の下方に配置されている。第2センサー103は、弾性シート打抜きシステム1の制御部7に接続される。弾性シート2がテーブル表面51aに供給されると、受光部の受光量が変動する。これにより受光部からの出力が変化する。従って、制御部7は、第2センサー103からの出力に基づいて、テーブル表面51aに弾性シート2が存在することを検出できる。
【0085】
位置決め機構55は、弾性シート2が載置領域Cに載置されると、弾性シート2を供給位置Dに位置決めする。図1に示すように、位置決め機構55は、テーブル表面51aにおける載置領域Cに設けられた通気口101から空気を噴出させて弾性シート2をテーブル表面51aから浮上させる浮上機構105と、浮上した弾性シート2をテーブル表面51aに沿って移動させて供給位置DのZ2方向に位置する浮上位置Fに配置する配置機構106と、を有する。供給位置Dおよび浮上位置Fは、弾性シート2と平面形状に対向する形状の領域である。
【0086】
浮上機構105は、不図示のコンプレッサーおよび送気ポンプを備える。送気ポンプは、通気口101に連通しており、コンプレッサーからの圧縮空気を通気口101から噴き出す。ここで、浮上機構105により弾性シート2がテーブル表面51aから浮上した状態には、弾性シート2の全体がテーブル表面51aから離間しておらず、弾性シート2の一部分がテーブル表面51aに接触している状態が含まれる。従って、弾性シート2が浮上位置Fに配置された状態には、弾性シート2の一部分がテーブル表面51aに接触している状態が含まれる。
【0087】
図11に示すように、配置機構106は、載置領域Cで浮上する弾性シート2の外周縁にX1方向から当接可能な第1配置部材111、載置領域Cで浮上する弾性シート2の外周縁にX1方向から当接可能な第2配置部材112、載置領域Cで浮上する弾性シート2の外周縁にY1方向から当接可能な第3配置部材113、および載置領域Cで浮上する弾性シート2の外周縁にY2方向から当接可能な第4配置部材114を備える。第1配置部材111、および第2配置部材112は、それぞれテーブル表面51aから起立してY方向に延びる板状の部材である。第3配置部材113、および第4配置部材114は、それぞれテーブル表面51aから起立してX方向に延びる板状の部材である。
【0088】
また、配置機構106は、テーブル51のZ1方向に、第1配置部材111を載置領域CのX1方向に離間する第1離間位置H1と浮上位置Fとの間でX方向に移動させる第1配置部材移動機構115、第2配置部材112を載置領域CのX2方向に離間する第2離間位置H2と浮上位置Fとの間でX方向に移動させる第2配置部材移動機構116と、第3配置部材113を載置領域CのY1方向に離間する第3離間位置H3と浮上位置Fとの間でY方向に移動させる第3配置部材移動機構117、および第4配置部材114を載置領域CのY2方向に離間する第4離間位置H4と浮上位置Fとの間でY方向に移動させる第4配置部材移動機構118を備える。各配置部材移動機構115~118は、テーブル表面51aに設けられたスリット119に沿って各配置部材111~114を移動させる。
【0089】
ここで、図1に示すように、位置決め機構55は、浮上機構105、第1配置部材移動機構115、第2配置部材移動機構116、第3配置部材移動機構117、および第4配置部材移動機構118を駆動制御して弾性シート2を供給位置Dに位置決めする位置決め制御部120を備える。より具体的には、位置決め制御部120は、浮上機構105を駆動制御する浮上機構制御部121と、第1配置部材移動機構115、第2配置部材移動機構116、第3配置部材移動機構117、および第4配置部材移動機構118を駆動制御する移動制御部122と、を有する。位置決め制御部120は、弾性シート打抜きシステム1の制御部7と一体、または通信可能に設けられている。
【0090】
位置決め制御部120は、弾性シート2が載置領域Cに供給されると、浮上機構105を駆動して弾性シート2をテーブル表面51aから浮上させるとともに、第1配置部材移動機構115、第2配置部材移動機構116、第3配置部材移動機構117、および第4配置部材移動機構118を駆動して、第1離間位置H1にある第1配置部材111、第2離間位置H2にある第2配置部材112、第3離間位置H3にある第3配置部材113、および第4離間位置H4にある第4配置部材114を、同時に、浮上位置Fに向かって移動させる。これにより、弾性シート2は、各配置部材111~114に接触して供給位置Dに移動する。弾性シート2が浮上位置Fに配置されると、浮上機構制御部121は、浮上機構105を停止させる。これにより、弾性シート2は、浮上位置Fから下降して、供給位置Dに配置される。弾性シート2が供給位置Dに配置されると、移動制御部122は、第1配置部材移動機構115、第2配置部材移動機構116、第3配置部材移動機構117、および第4配置部材移動機構118を駆動して、浮上位置Fにある第1配置部材111、第2配置部材112、第3配置部材113、および第4配置部材114のそれぞれを、第1離間位置H1、第2離間位置H2、第3離間位置H3、および第4離間位置H4に戻す。
【0091】
(搬送機構)
搬送機構56は、供給位置Dに位置決めされた弾性シート2を、第1弾性シート打抜き装置3の第1ダイプレート18に設定された第1打抜き位置Aに搬送する。搬送機構56は、供給機構52の弾性シート移動機構54と同様の構成を備える。従って、搬送機構56の説明では、弾性シート移動機構54と対応する構成には、同一名称および同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0092】
図1に示すように、搬送機構56は、吸着面71(第1吸着面)および当該吸着面71に設けられた吸気口72(第1吸気口)を備える吸着部73(第1吸着部)と、吸気口72に連通する吸気機構74(第1吸気機構)と、吸着部73および吸気機構74を移動させる吸着部移動機構75(第1吸着部移動機構)と、を備える。図5(a)に示すように、吸着部73は、吸引プレート81を備える。吸引プレート81は、その中央部分からZ2方向に突出する筒部82を備える。また、吸引プレート81は、下面の中央部分に正方形形状の凹部83を備える。凹部83の中心部分には、吸引プレート81をZ方向に貫通する連通口84が設けられている。連通口84は筒部82に連通する。
【0093】
図10(b)に示すように、吸引プレート81の下面には、凹部83を下方から封鎖するシート状の網部材85が固定されている。網部材85の外周縁には、シート状の枠体86が貼り付けられている。網部材85は、金網であり、導電性を備える。枠体86の下面は、粗面である。枠体86の下面、および網部材85の下面は、弾性シート2を吸着するための吸着面71を構成する。従って、吸着面71は、粗面部分を備える。また、吸着面71は、導電性の金属部分を備える。吸着面71に設けられた吸気口72は、網部材85が備える多数の開口である。枠体86からなる吸着面71の枠状部分71aは、吸着面71に弾性シート2を吸着したときに弾性シート2の外周縁に接触する。枠状部分71aの表面は、十点平均粗さをRとした場合に、R=50μmであり、上記の条件式(7)を満たす。
【0094】
図10(a)に示すように、吸気機構74は、エジェクター88を備える。エジェクター88の空気流入口88aは、吸引プレート81の筒部82、連通口84、および凹部83を介して、網部材85の開口である吸気口72に連通する。図1に示すように、吸着部移動機構75は、吸着部73を支持する支持部125と、支持部125をX方向およびZ方向に移動させる支持部移動機構126と、を備える。支持部移動機構126は、モータなどの駆動源を備える。
【0095】
ここで、図1に示すように、搬送機構56は、吸気機構74および吸着部移動機構75を駆動制御する搬送制御部123(第1搬送制御部)を備える。搬送制御部123は、弾性シート打抜きシステム1の制御部7と一体、または通信可能に設けられている。搬送制御部123は、テーブル51上で弾性シート2が供給位置Dに位置決めされると、吸着部移動機構75を駆動制御して吸着部73を移動させて、その吸着面71を供給位置Dに配置された弾性シート2に隙間を開けて対向させる。次に、搬送制御部123は、吸気機構74を駆動して弾性シート2を吸い上げて、吸着面71に吸着するとともに、吸着部移動機構75を駆動して吸着部73を所定の搬送経路G2に従ってY2方向に移動させる。その後、搬送制御部123は、吸着部73を、第1弾性シート打抜き装置3の第1ダイプレート18に設定された第1打抜き位置Aに対向させる。しかる後に、搬送制御部123は、吸気機構74の駆動を停止する。これにより、弾性シート2を吸着面71から落下させて、第1打抜き位置Aに配置する。
【0096】
(第2弾性シート搬送装置)
図12(a)は、第2弾性シート搬送装置6の吸着部73の断面図である。図12(b)は、第2弾性シート搬送装置6の吸着部73をZ1方向から見た場合の斜視図である。図12(a)では、吸着部73に弾性シート2が吸着されている状態を模式的に示す。第2弾性シート搬送装置6は、第1弾性シート打抜き装置3の第1打抜き位置Aに配置された弾性シート2を、第2弾性シート打抜き装置4の第2ダイプレート18に設定された第2打抜き位置Bに搬送する。第2弾性シート搬送装置6は、第1弾性シート搬送装置5の弾性シート移動機構54および搬送機構56と対応する構成を備える。従って、第2弾性シート搬送装置6の説明では、弾性シート移動機構54および搬送機構56と対応する構成には、同一名称および同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0097】
図1に示すように、第2弾性シート搬送装置6は、吸着面71(第2吸着面)および当該吸着面71に設けられた吸気口72(第2吸気口)を備える吸着部73(第2吸着部)と、吸気口72に連通する吸気機構74(第2吸気機構)と、吸着部73および吸気機構74を移動させる吸着部移動機構75(第2吸着部移動機構)と、を備える。図7に示すように、吸着部73は、吸引プレート81を備える。吸引プレート81は、その中央部分からZ2方向に突出する筒部82を備える。また、吸引プレート81は、下面の中央部分に正方形形状の凹部83を備える。凹部83の中心部分には、吸引プレート81をZ方向に貫通する連通口84が設けられている。連通口84は筒部82に連通する。
【0098】
図12に示すように、吸引プレート81の下面には、凹部83を下方から封鎖するシート状の網部材85が固定されている。網部材85の外周縁には、シート状の枠体86が貼り付けられている。また、網部材85における枠体86の内周側には、シート状の矩形体87が貼り付けられている。矩形体87および枠体86の下面は、粗面である。径方向で矩形体87と枠体86とは離間しており、矩形体87と枠体86との間の隙間からは、網部材85が下方に露出する。網部材85において矩形体87と枠体86との間の隙間から露出する枠状の網部分85aは、吸着部73が弾性シート2を吸着する際に、弾性シート2の枠状バリ部分61aと対向する。網部材85において矩形体87と枠体86との間の隙間から露出する枠状の網部分85aの複数の開口は、吸気口72である。
【0099】
矩形体87の下面、枠体86の下面、および、網部材85において矩形体87と枠体86との間の隙間から露出する枠状の網部分85aの下面は、弾性シート2を吸着するための吸着面71を構成する。従って、吸着面71は、導電性の金属部分を備える。ここで、枠体86および矩形体87からなる吸着面71の枠状部分71aおよび矩形部分71bは、吸着面71に弾性シート2を吸着したときに、弾性シート2の中央部分および外周縁に接触する。枠状部分71aの表面および矩形部分71bの表面は、十点平均粗さをRとした場合に、R=50μmであり、上記の条件式(7)を満たす。
【0100】
吸気機構74は、エジェクター88を備える。エジェクター88の空気流入口88aは、吸引プレート81の筒部82、連通口84、および凹部83を介して、網部材85の開口である吸気口72に連通する。
【0101】
図1に示すように、吸着部移動機構75は、吸着部73を支持する支持部127と、支持部125をX方向およびZ方向に移動させる支持部移動機構128と、を備える。支持部移動機構128は、モータなどの駆動源を備える。本例では、搬送機構56の支持部移動機構126は、第2弾性シート搬送装置6の支持部移動機構128を兼ねる。すなわち、本例では、X方向において、供給位置D、第1打抜き位置A、第2打抜き位置Bは、等間隔で設定されている。また、テーブル表面51a、第1ダイプレート18のダイプレート表面18a、および第2ダイプレート18のダイプレート表面18aは、同じ高さに設定されている。これにより、搬送機構56の支持部移動機構126は、搬送機構56の支持部125と第2弾性シート搬送装置6の支持部125とを一定間隔で同時に移動させることにより、供給位置Dから第1打抜き位置Aへの弾性シート2の移動と、第1打抜き位置Aから第2打抜き位置Bへの弾性シート2の移動とを並行して行うことができる。
【0102】
ここで、第2弾性シート搬送装置6は、吸気機構74および吸着部移動機構75を駆動制御する搬送制御部124(第2搬送制御部)を備える。搬送制御部124は、弾性シート打抜きシステム1の制御部7と一体、または通信可能に設けられている。搬送制御部124は、第1弾性シート打抜き装置3において弾性シート2の内側バリ部分61bの打抜き動作が完了すると、吸着部移動機構75を駆動制御して吸着部73を移動させて、吸着面71をダイプレート表面18aの第1打抜き位置Aにある弾性シート2に隙間を開けて対向させる。次に、搬送制御部124は、吸気機構74を駆動して、弾性シート2をZ2方向に吸い上げて、吸着面71に吸着する。また、搬送制御部124は、吸着部移動機構75を駆動して吸着部73を所定の搬送経路G3に従ってX1方向に移動させる。その後、搬送制御部124は、吸着部73を、第2弾性シート打抜き装置4の第2ダイプレート18に設定された第2打抜き位置Bに対向させる。しかる後に、搬送制御部124は、吸気機構74の駆動を停止する。これにより、弾性シート2を吸着面71から落下させて、第2打抜き位置Bに配置する。
【0103】
(弾性シート打抜きシステムの動作)
図13は、弾性シート打抜きシステム1の動作のフローチャートである。図8に示すように、シール材を製造する際には、まず、弾性シート2をストッカー53に保持して滞留位置Eに配置する。これにより、弾性シート2を温度槽70内で滞留させる(ステップST1)。次に、弾性シート打抜きシステム1は、ストッカー53からテーブル51へ弾性シート2を搬送し(ステップST2)、テーブル51において、弾性シート2を供給位置Dに位置決めする(ステップST3)。その後、弾性シート打抜きシステム1は、弾性シート2を供給位置Dから第1弾性シート打抜き装置3の第1打抜き位置Aに搬送し(ステップST4)、第1弾性シート打抜き装置3により弾性シート2の内側バリ部分61bを打抜く(ステップST5)。しかる後に、弾性シート打抜きシステム1は、弾性シート2を第1打抜き位置Aから第2弾性シート打抜き装置4の第2打抜き位置Bへ搬送し(ステップST6)、第1弾性シート打抜き装置3により弾性シート2の環状製品部60を打抜く(ステップST7)。これにより、シール材の製造が完了する。
【0104】
(弾性シートの温度槽内での滞留)
ラバーインジェクション成型機により製造された弾性シート2は、ストッカー53に積載されて温度槽70内の滞留位置Eに配置される。これにより、弾性シート2は、所定時間以上、温度槽70内に滞留させられる。
【0105】
ここで、製造時の温度条件および圧力条件に起因して、弾性シート2の寸法には、製造ロット毎に、バラツキが発生している場合がある。従って、製造ロットによっては、弾性シート2の寸法が、設計寸法に合致していないことがある。かかる問題に対して、本例では、温度槽70の槽内の温度を調節して、ストッカー53に収容された弾性シート2の寸法を変化させて、設計寸法に合致させる。
【0106】
弾性シート2の寸法を変化させる際には、槽内の温度を、-50℃~60℃の範囲で調節する。槽内の温度を10℃上昇させたときに、弾性シート2の寸法は0.1%~0.3%大きくなる。なお、弾性シート2によっては、槽内の温度を調節することにより、弾性シート2の粘度を上昇させて、弾性シート2の剛性を高める場合がある。また、弾性シート2が静電気を帯びている場合に、槽内の温度を0°以下とする場合もある。槽内の温度を0°以下とした場合には、弾性シート2を温度槽70から外に搬送したときに、弾性シート2表面に結露が発生する。これにより、静電気が除去される。
【0107】
弾性シート2の寸法を設計寸法とすれば、ステップST3において、弾性シート2を、テーブル51上で精度よく位置決めすることができる。また、弾性シート2の寸法を設計寸法としておけば、ステップST5、ステップST7において、弾性シート2を第1弾性シート打抜き装置3の第1打抜き位置Aおよび第2弾性シート打抜き装置4の第2打抜き位置Bに精度よく配置することができるので、弾性シート2の所望の部分を精度よく打抜くことができる。
【0108】
(ストッカーからテーブルへの弾性シートの搬送)
シール材を製造する際には、搬送制御部93は、供給機構52の吸気機構74および弾性シート移動機構54を駆動制御して、ストッカー53にある弾性シート2を吸着部73の吸着面71に吸着し、吸着部73を所定の搬送経路G1(図2参照)に沿って移動させ、吸着の解除によってテーブル51に設定された載置領域Cに供給する。
【0109】
ここで、吸着面71の吸気口72から空気を吸い込む吸気機構74は、吸い込む空気の単位時間当たりの吸込量が大きいエジェクター88を備える。従って、搬送制御部93は、吸着部73の吸着面71を弾性シート2と隙間を開けて対向させた後に、吸気機構74を駆動して弾性シート2を吸い上げて吸着面71に吸着させることができる。これにより、吸着面71を弾性シート2に押し付けずに弾性シート2を吸着面71に吸引できるので、弾性シート2を吸着面71に吸着する際に、弾性シート2が変形したり、破れたりすることを防止できる。
【0110】
また、図10に示すように、吸着面71は、弾性シート2を吸着したときに弾性シート2の外周縁に接触する枠状部分71aを備える。吸気口72は、枠状部分71aの内周側に位置する。枠状部分71aは、粗面である。従って、エジェクター88の駆動によって吸着部73が吸着面71に弾性シート2を吸着しているときに、吸着面71の枠状部分71aと、この枠状部分71aに接触する弾性シート2の外周縁との間を、空気が流れる。言い換えれば、吸着面71に弾性シート2が吸着されているときに、吸着面71と弾性シート2との間に、弾性シート2の外周側から、吸気口72が存在する枠状部分71aの内周側に向かう気流が発生する。これにより、吸着面71と弾性シート2とが密着状態となることがないので、エジェクター88の駆動を停止したときに、吸着面71から弾性シート2が離間しやすい。よって、弾性シート2をテーブル51の載置領域Cに配置することが容易である。
【0111】
さらに、枠状部分71aの表面は、十点平均粗さをRとした場合に、R=50μmであり、以下の条件式(7)を満たす。
8μm ≦ R ・・(7)
従って、エジェクター88の駆動によって吸着部73が吸着面71に弾性シート2を吸着しているときに、吸着面71と弾性シート2との間を空気が流れやすくなる。ここで、十点平均粗さRが条件式(7)の下限値を下回った場合には、吸着面71と弾性シート2との間を空気が流れ難くなる。
【0112】
また、吸着面71は、導電性の金属からなる金属部分(網部材85)を備える。従って、弾性シート2が静電気などによって帯電している場合でも、その電荷を金属部分から吸着部73の側に逃がすことができる。
【0113】
(テーブルに供給された弾性シートの位置決め)
弾性シート2がテーブル51上に供給されると、位置決め制御部120は、第2センサー103からの出力により、弾性シート2が載置領域Cに配置されたことを取得する。弾性シート2が載置領域Cに配置されると、位置決め制御部120は、浮上機構105を駆動してテーブル表面51aの通気口101から空気を噴出させて、弾性シート2をテーブル表面51aから浮上させる。また、図11において矢印で示すように、位置決め制御部120は、これと並行して、第1配置部材移動機構115、第2配置部材移動機構116、第3配置部材移動機構117、および第4配置部材移動機構118を駆動して、第1離間位置H1にある第1配置部材111、第2離間位置H2にある第2配置部材112、第3離間位置H3にある第3配置部材113、および第4離間位置H4にある第4配置部材114を、同時に、浮上位置Fに向かって移動させる。
【0114】
第1配置部材111、第2配置部材112、第3配置部材113、および第4離間位置H4が供給位置Dに達すると、弾性シート2は、供給位置Dの上方に位置する浮上位置Fに配置される。第1配置部材111、第2配置部材112、第3配置部材113、および第4離間位置H4が供給位置Dに達すると、位置決め制御部120は、浮上機構105を停止させる。これにより、弾性シート2は、浮上位置Fから下降して、テーブル表面51aの供給位置Dに配置される。
【0115】
ここで、弾性シート2がテーブル表面51aから浮上した状態には、弾性シート2の全体がテーブル表面51aから離間しておらず、弾性シート2の一部分がテーブル表面51aに接触している状態が含まれる。弾性シート2の一部分がテーブル表面51aに接触している場合でも、弾性シート2が浮上しているので、弾性シート2はスティックスリップすることなくテーブル51上を移動する。また、弾性シート2の一部分がテーブル表面51aに接触している場合でも、テーブル表面51aにフッ素樹脂を含有するコーティング層99が設けられているので、弾性シート2がテーブル51上を移動しやすい。
【0116】
その後、弾性シート2が供給位置Dに配置されると、位置決め制御部120は、第1配置部材移動機構115、第2配置部材移動機構116、第3配置部材移動機構117、および第4配置部材移動機構118を駆動して、供給位置Dにある第1配置部材111、第2配置部材112、第3配置部材113、および第4配置部材114のそれぞれを、第1離間位置H1、第2離間位置H2、第3離間位置H3、および第4離間位置H4に戻す。
【0117】
(供給位置から第1弾性シート打抜き装置への弾性シートの搬送)
弾性シート2がテーブル表面51aの供給位置Dに位置決めされると、搬送制御部123は、搬送機構54の吸気機構74および吸着部移動機構75を駆動制御して、弾性シート2を吸着部73の吸着面71に吸着し、吸着部73を所定の搬送経路G2(図2参照)に沿って移動させ、吸着の解除によって第1打抜き位置Aに配置する。
【0118】
ここで、搬送機構54において、吸着面71の吸気機構74から空気を吸い込む吸気機構74は、吸い込む空気の単位時間当たりの吸込量が大きいエジェクター88を備える。従って、搬送制御部123は、吸着部73の吸着面71を弾性シート2と隙間を開けて対向させた後に、吸気機構74を駆動して弾性シート2を吸い上げて吸着面71に吸着させることができる。これにより、吸着面71を弾性シート2に押し付けずに弾性シート2を吸着面71に吸引できるので、弾性シート2を吸着面71に吸着する際に、弾性シート2が変形することを防止できる。
【0119】
また、吸着面71は、弾性シート2を吸着したときに弾性シート2の外周縁に接触する枠状部分71aを備える。吸気機構74は、枠状部分71aの内周側に位置する。枠状部分71aの表面は、十点平均粗さをRとした場合に、R=50μmであり、上記の条件式(7)を満たす。従って、エジェクター88の駆動によって吸着部73が吸着面71に弾性シート2を吸着しているときに、吸着面71の枠状部分71aと、この枠状部分71aに接触する弾性シート2の外周縁との間を、空気が流れる。これにより、吸着面71と弾性シート2とが密着状態となることがないので、エジェクター88の駆動を停止して吸着を解除したときに、吸着面71から弾性シート2が離間しやすい。よって、弾性シート2を第1打抜き位置Aに配置することが容易である。従って、弾性シート2を第1打抜き位置Aに正確に配置できる。
【0120】
さらに、吸着面71は、導電性の金属からなる金属部分(網部材85)を備える。従って、弾性シート2が静電気などによって帯電している場合でも、その電荷を金属部分から吸着部73の側に逃がすことができる。
【0121】
(第1弾性シート打抜き装置による弾性シートの打抜き)
弾性シート2が第1打抜き位置Aに供給されるときに、パンチプレート13は、待機位置13Aに配置されている。図4に示すように、弾性シート2が第1打抜き位置Aに供給されると、弾性シート2は、第1ダイプレート18のダイプレート側凹部28にセットされる。弾性シート2がセットされると、第1打抜き制御部22は、第1パンチプレート13を待機位置13Aから打抜き完了位置13Bに向かって下降させる。その後、図5に示すように、第1パンチプレート13が第1ダイプレート18に接近すると、第1弾性シート打抜き装置3は、第1ストリッパープレート15と第1ダイプレート18を接触させて、これらの間に弾性シート2を挟む。その後、更に、第1パンチプレート13が第1ダイプレート18に接近すると、図6に示すように、第1弾性シート打抜き装置3は、第1ストリッパープレート15からZ1方向に突出する第1パンチ部12により弾性シート2の内側バリ部分61bを打抜いて、第1パンチ部12の先端部分14を第1穴部19に挿入する。しかる後に、第1打抜き制御部22は、第1パンチプレート13および第1ストリッパープレート15を第1ダイプレート18からZ2方向に離間させる。これにより、図4に示すように、パンチプレート13は、待機位置13Aに戻る。
【0122】
ここで、吸気機構制御部35は、第1ストリッパープレート15が第1ダイプレート18に接触している間、吸気機構34を駆動する。また、第1打抜き制御部22は、第1パンチプレート13を待機位置13Aから打抜き完了位置13Bに移動させる第1速度V1よりも、第1パンチプレート13を打抜き完了位置13Bから待機位置13Aに戻す第2速度V2を遅くする。
【0123】
本例では、打抜き時に弾性シート2をZ方向から挟む第1ストリッパープレート15および第1ダイプレート18には、これらを当接させた時に弾性シート2の形状を転写した転写形状の空間29を区画するストリッパープレート側凹部27およびダイプレート側凹部28が設けられている。従って、弾性シート2が第1ストリッパープレート15と第1ダイプレート18との間に挟まれたときに、弾性シート2は自己の形状を転写した空間29に収容される。これにより、弾性シート2が、打抜き前に潰されて変形することを防止或いは抑制できる。よって、第1パンチ部12が、弾性シート2の打抜き対象である内側バリ部分61bとは異なる部分に接触することを防止或いは抑制できる。
【0124】
また、ストリッパープレート表面15aとダイプレート表面18aとが当接したときに、弾性シート2は、弾性シート2の上面の形状に対応する転写形状を備えるストリッパープレート側凹部27に嵌るとともに、弾性シート2の下面の形状に対応する転写形状を備えるダイプレート側凹部28に嵌る。従って、弾性シート2は、第1ストリッパープレート15と第1ダイプレート18との間に区画された空間29内において、ダイプレート表面18aの面内方向に変形することが規制された状態となる。従って、第1パンチ部12が弾性シート2を貫通する際に弾性シート2が第1パンチ部12に粘着し、第1パンチ部12が第1穴部19に侵入する際に弾性シート2を第1穴部19の側に引っ張った場合でも、弾性シート2が第1穴部19に引き込まれることを防止或いは抑制できる。
【0125】
ここで、ダイプレート表面18a、ダイプレート側凹部28の内面28aは、フッ素樹脂含有の第1コーティング層32により覆われている。従って、ダイプレート表面18a、およびダイプレート側凹部28の内面28aは、これらの面が金属面である場合と比較して、滑りやすい。よって、搬送機構56が弾性シート2をダイプレート側凹部28に供給する際に弾性シート2とダイプレート側凹部28とがダイプレート表面18aの面内方向でズレた場合でも、弾性シート2はダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aを滑り、その下面がダイプレート側凹部28に嵌る状態にセットされる。これにより、弾性シート2は、第1ダイプレート18上の第1打抜き位置Aに正確に配置される。従って、第1ダイプレート18と第1ストリッパープレート15との間に弾性シート2を挟んだときに、弾性シート2が潰れることがない。また、弾性シート2は、第1ダイプレート18上の第1打抜き位置Aに正確に配置されるので、第1パンチ部12により、弾性シート2を正確に打抜くことができる。
【0126】
また、弾性シート2は、ストッカー53から第1打抜き位置Aに搬送される前に、テーブル51に載置されて、テーブル51上で供給位置Dに位置決めされる。その後、供給位置Dに位置決めされた弾性シート2は、搬送機構によって吸着されて移動し、吸着の解除によって第1打抜き位置Aに配置される。従って、弾性シート2は、テーブル51上で供給位置Dに位置決めされた位置決めの精度と同様な精度で、第1打抜き位置Aに配置される。よって、弾性シート2は、第1打抜き位置Aに精度よく供給される。
【0127】
さらに、本例では、第1ダイプレート18の第1穴部19の内周壁面19aは、第1コーティング層32により覆われている。従って、第1穴部19の内周壁面19aは、当該内周壁面19aが金属面である場合と比較して、滑りやすくなる。従って、打抜きに際して第1パンチ部12が弾性シート2を第1穴部19に引き込んだときに、弾性シート2が第1穴部19の内周壁面19aを滑る。これにより、第1パンチ部12が弾性シート2を打抜くスピードが低下することを防止或いは抑制できる。よって、第1パンチ部12により弾性シート2を精度よく打抜くことができる。
【0128】
また、ダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aは、十点平均粗さをDとした場合に、D=10μmであり、次の条件式(5)、(6)を満たす。
5μm ≦ D ≦ 40μm ・・(5)
8μm ≦ D ≦ 12μm ・・(6)
条件式(5)を満たせば、弾性シート2と、ダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aと、の接触面積が低下する。ここで、十点平均粗さDが条件式(5)の下限値を下回る場合には、弾性シート2が第1ダイプレート18に貼り付きやすくなるので、打抜き後の弾性シート2をダイプレート側凹部28から取り出すのに支障が出る場合がある。また、十点平均粗さDが条件式(5)の上限値を上回る場合には、粗面の凹凸によって、弾性シート2に傷がつく場合がある。本例では、ダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aの十点平均粗さは、条件式(6)を満たす。従って、弾性シート2がダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aに貼り付きにくい。また、ダイプレート表面18aおよびダイプレート側凹部28の内面28aが粗面であることにより、弾性シート2が傷付くことを抑制しやすい。
【0129】
また、第1パンチ部12の先端部分14は、先端からZ2方向に向かって順に、打抜き部25と、柱部26と、を備える。柱部26は打抜き部25よりも細く、Z方向から見た場合に打抜き部25の内側に位置する。従って、第1パンチ部12の先端部分14が第1ダイプレート18の第1穴部19に侵入したときに、柱部26と第1穴部19の内周壁面19aとの間に隙間が形成される。従って、第1パンチ部12の先端部分14が第1穴部19に侵入する際に打抜き部25が弾性シート2を第1穴部19の側に引っ張ったときに、弾性シート2と柱部26とが密着して、更に、第1パンチ部12が弾性シート2を第1穴部19の奥に引っ張ることを防止できる。また、柱部26と第1穴部19の内周壁面19aとの間に隙間が形成されるので、第1パンチ部12の外周側に位置する弾性シート2の環状製品部60が柱部26と第1穴部19の内周壁面19aとの間で擦れること防止或いは抑制できる。これにより、環状製品部60に傷が発生することを防止できる。
【0130】
本例において、第1パンチ部12の先端面12aは、粗面である。また、第1パンチ部12の先端面12aは、十点平均粗さをPとしたときに、P=10μmであり、次の条件式(1)、(2)を満たす。
5μm ≦ P ≦ 20μm ・・(1)
8μm ≦ P ≦ 12μm ・・(2)
条件式(1)を満たせば、第1パンチ部12の先端面12aと弾性シート2とが接触する接触面積を低減できる。従って、第1パンチ部12によって打抜かれた弾性シート2の内側バリ部分61bが第1パンチ部12の先端面12aに貼り付いて脱落せず、打抜き後に、内側バリ部分61bが第1パンチプレート13とともにZ2方向に移動してしまうことを防止できる。すなわち、十点平均粗さPが条件式(1)の下限値を下回る場合には、弾性シート2が第1パンチ部12の先端面12aに貼り付きやすくなる。十点平均粗さPが条件式(1)の上限値を上回る場合には、第1パンチ部12の先端面12aが弾性シート2に接触したときに、弾性シート2に傷がつく場合がある。本例では、第1パンチ部12の先端面12aの十点平均粗さPは、条件式(2)を満たす。従って、バリ部分61bが第1パンチ部12から脱落しやすい。また、第1パンチ部12が粗面であることにより製品部60が傷付くことを抑制しやすい。
【0131】
また、第1パンチ部12は、先端面の中央に、当該先端面の外周縁よりもZ1方向に突出する中央突出部分25bを備える。中央突出部分25bの先端は、第1パンチ部12の軸線と垂直な平面である。従って、第1パンチ部12が弾性シート2の内側バリ部分61bに接触したときに、中央突出部分25bの先端の平面が弾性シート2における内側バリ部分61bを押して弾性変形させる。よって、内側バリ部分61bが第1パンチ部12によって打抜かれた後に、内側バリ部分61bは自己の弾性復帰力によって元の形状に戻る。これにより、内側バリ部分61bは、第1パンチ部12の先端面から離間しやすくなる。従って、第1パンチ部12によって打抜かれた弾性シート2の内側バリ部分61bが第1パンチ部12に貼り付いて、脱落しなくなることを防止或いは抑制できる。よって、打抜き後に、内側バリ部分61bが第1パンチ部12とともにZ2方向に移動してしまうことを防止できる。
【0132】
さらに、第1打抜き制御部22は、第1パンチプレート13を待機位置13Aから打抜き完了位置13Bに移動させる第1速度V1よりも、第1パンチプレート13を打抜き完了位置13Bから待機位置13Aに戻す第2速度V2を遅くする。これにより、第1ストリッパープレート15が弾性シート2からZ2方向に離間する際の第1ストリッパープレート15の移動速度が遅くなる。従って、第1ダイプレート18から上方に離間する第1ストリッパープレート15に弾性シート2が引っ張られることを防止或いは抑制できる。よって、弾性シート2が第1ダイプレート18上で移動することを防止或いは抑制できる。
【0133】
また、ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aは、十点平均粗さをSとした場合にS=10μmであり、次の条件式(3)、(4)を満たす。
5μm ≦ S ≦ 40μm ・・(3)
8μm ≦ S ≦ 12μm ・・(4)
条件式(3)を満たせば、ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aと、弾性シート2とが接触する接触面積を低減できる。従って、弾性シート2が、ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aに貼り付くことを防止或いは抑制できる。ここで、十点平均粗さSが条件式(3)の下限値を下回る場合には、弾性シート2が第1ストリッパープレート15に貼り付きやすくなる。従って、第1ストリッパープレート15が第1ダイプレート18からZ2方向に離間する際に、弾性シート2が第1ストリッパープレート15に引っ張られて、第1ダイプレート18のダイプレート側凹部28から動いてしまうことがある。また、十点平均粗さSが条件式(3)の上限値を上回る場合には、粗面の凹凸によって、弾性シート2に傷がつく場合がある。本例では、ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aの十点平均粗さSは、条件式(4)を満たす。従って、弾性シート2が第1ストリッパープレート15に貼り付いてしまうことを、より防止しやすい。また、ストリッパープレート表面15aおよびストリッパープレート側凹部27の内面27aが粗面であることによって弾性シート2が傷付くことを防止しやすい。
【0134】
さらに、本例では、第1回収機構23の吸気機構制御部35は、第1ストリッパープレート15が第1ダイプレート18に接触している間、吸気機構34を駆動する。従って、第1パンチ部12が弾性シート2を打抜いたときに、第1パンチ部12の先端部分14の径方向外側の面と、第1穴部19の内周壁面19aとの間を、第1回収箱24の側に向かう気流が発生する。これにより、第1パンチ部12によって打抜かれた弾性シート2の内側バリ部分61bが第1パンチ部12に貼り付いて、脱落しなくなることを防止或いは抑制できる。また、第1回収箱24の側に向かう気流により、第1パンチ部12から脱落した内側バリ部分61bを、第1回収箱24に回収することが容易となる。
【0135】
(第1弾性シート打抜き装置から第2弾性シート打抜き装置への弾性シートの搬送)
第1弾性シート打抜き装置3による弾性シート2の打抜きが完了すると、搬送制御部124は、第2弾性シート搬送装置6の吸気機構74および吸着部移動機構75を駆動制御して、弾性シート2を、吸着部73の吸着面71に吸着し、吸着部73を所定の搬送経路G3(図2参照)に沿って移動させ、吸着の解除によって第2打抜き位置Bに配置する。
【0136】
ここで、図12に示すように、第2弾性シート搬送装置6の吸着部73は、吸着面71において弾性シート2の枠状バリ部分61aと対向する枠状の対向領域に吸引口72を備える。これにより、吸着部73は、弾性シート2の外周縁部分を全周に渡って吸着面71に吸引できる。従って、弾性シート2における枠状バリ部分61aの内周側に第1弾性シート打抜き装置3が打抜いた孔が形成されていても、吸着部73は弾性シート2を吸着できる。また、吸着部73が弾性シート2の外周縁部分を全周に渡って吸引するので、吸着された弾性シート2に撓みが発生することを防止或いは抑制できる。従って、弾性シート2をダイプレート表面38aの第2打抜き位置Bに正確に配置できる。
【0137】
また、第2弾性シート搬送装置6において、吸着面71の第3吸気口から空気を吸い込む吸気機構74は、吸い込む空気の単位時間当たりの吸込量が大きいエジェクター88を備える。従って、搬送制御部124は、吸着部73の吸着面71を弾性シート2と隙間を開けて対向させた後に、吸気機構74を駆動して弾性シート2を吸い上げて吸着面71に吸着させることができる。また、吸着面71は、弾性シート2を吸着したときに弾性シート2の外周縁に接触する枠状部分71aと、弾性シート2の枠状バリ部分61aよりも内周側に接触する矩形部分71bを備える。枠状部分71aおよび矩形部分71bは、粗面である。従って、吸着面71に弾性シート2が吸着されているときに、吸着面71と弾性シート2との間を空気が流れる。これにより、吸着面71と弾性シート2とが密着状態となることがないので、エジェクター88の駆動を停止したときに、吸着面71から弾性シート2が離間しやすい。よって、弾性シート2を第2打抜き位置Bに配置することが容易である。従って、弾性シート2を第2打抜き位置Bに正確に配置できる。
【0138】
また、枠状部分71aの表面および矩形部分71bの表面は、十点平均粗さをRとした場合に、R=50μmであり、上記の条件式(7)を満たす。従って、エジェクター88の駆動によって吸着部73が吸着面71に弾性シート2を吸着しているときに、吸着面71と弾性シート2との間を空気が流れやすい。
【0139】
また、吸着面71は、導電性の金属からなる金属部分(網部材85)を備える。従って、弾性シート2が静電気などによって帯電している場合でも、その電荷を金属部分から吸着部73の側に逃がすことができる。
【0140】
(第2弾性シート打抜き装置による弾性シートの打抜き)
弾性シート2が第2打抜き位置Bに供給されると、弾性シート2は、第2ダイプレート18のダイプレート側凹部28にセットされる。弾性シート2がセットされると、第2打抜き制御部22は、第2パンチプレート13を待機位置13Aから打抜き完了位置13Bに向かって下降させる。その後、第2パンチプレート13が第2ダイプレート18に接近すると、第2弾性シート打抜き装置4は、第2ストリッパープレート15と第2ダイプレート18を接触させて、これらの間に弾性シート2を挟む。その後、更に、第2パンチプレート13が第2ダイプレート18に接近すると、第2弾性シート打抜き装置4は、第2ストリッパープレート15からZ1方向に突出する第2パンチ部12により弾性シート2の内側バリ部分61bを打抜いて、第2パンチ部12の先端部分14を第2穴部19に挿入する。しかる後に、第2打抜き制御部22は、第2パンチプレート13および第2ストリッパープレート15を第2ダイプレート18からZ2方向に離間させる。これにより、パンチプレート13は、待機位置13Aに戻る。
【0141】
ここで、吸気機構制御部35は、第2ストリッパープレート15が第2ダイプレート18に接触している間、吸気機構34を駆動する。また、第2打抜き制御部22は、第2パンチプレート13を待機位置13Aから打抜き完了位置13Bに移動させる第1速度V1よりも、第2パンチプレート13を打抜き完了位置13Bから待機位置13Aに戻す第2速度V2を遅くする。
【0142】
弾性シート2の打抜きが完了して、第2パンチプレート13および第2ストリッパープレートが第2ダイプレート18からZ2方向に離間すると、弾性シート除去機構制御部45は、送気ポンプ43を駆動して、ノズル42から圧縮空気を吐出する。これにより、弾性シート除去機構41は、ダイプレート側凹部28に配置されている弾性シート2を、吹き飛ばして、第2ダイプレート18のX1方向に落させる。
【0143】
第2弾性シート打抜き装置4においても、第1弾性シート打抜き装置3と同様の作用効果を得ることができる。ここで、第2弾性シート打抜き装置4では、第2パンチ部12の先端面12aが環状製品部60に接触するが、第2パンチ部12の先端面12aの十点平均粗さは、P=10μmであり、条件式(1)の上限値および条件式(2)の上限値よりも小さい。従って、第2パンチ部12の先端面12aが粗面であることにより、環状製品部60に傷がつくことを防止或いは抑制できる。
【0144】
本例の弾性シート打抜きシステム1では、環状のシール材を製造する際に、まず、第1弾性シート打抜き装置3によって弾性シート2の内側バリ部分61bを打抜く。次に、弾性シート2を第1弾性シート打抜き装置3から第2弾性シート打抜き装置4に搬送する。しかる後に、第2弾性シート打抜き装置4によって弾性シート2の環状製品部60を打抜く。
【0145】
本例では、第1弾性シート打抜き装置3および第2弾性シート打抜き装置4のそれぞれにおいて、打抜きの前後で、弾性シート2が変形することを防止或いは抑制できる。よって、第1弾性シート打抜き装置3において、第1パンチ部12が、打抜き対象の内側バリ部分61bと隣り合う環状製品部60に接触して、環状製品部60を傷つけてしまうことが防止或いは抑制される。また、第1弾性シート打抜き装置3において、打抜き対象の内側バリ部分61bの周辺に位置する環状製品部60に擦り傷が形成されること、および、破断が発生することを防止或いは抑制できる。よって、2台の弾性シート打抜き装置3、4を用いた2回の打抜きで環状製品部60を製造したときに、シール材となる環状製品部60に傷が発生していることを防止或いは抑制できる。また、第2弾性シート打抜き装置4では、打抜きに際して弾性シート2が変形することが防止或いは抑制されている。従って、第2弾性シート打抜き装置4は、シール材となる環状製品部60を精度よく打抜くことができる。
【0146】
(変形例)
第1弾性シート打抜き装置3の第1パンチ部12は、樹脂製としてもよい。この場合、第1パンチ部12を形成する樹脂は、ポリアセタール樹脂、高分子量ポリエチレン樹脂、或いはフッ素樹脂とすることができる。このようにしても、第1パンチ部12の先端部分14が滑りやすくなる。従って、上記の第1パンチ部12と同様の作用効果を得ることができる。ここで、第2弾性シート打抜き装置4の第2パンチ部12についても、樹脂製とすることができる。
【0147】
(ダイプレートの変形例)
図14は、変形例のダイプレートの説明図である。図14に示すように、第1弾性シート打抜き装置3において、第1ダイプレート18は、樹脂製のダイプレート本体部150と、ダイプレート本体部150をZ1方向から支持する金属製の支持プレート部151と、を備えるものすることができる。この場合、ダイプレート表面18a、ダイプレート側凹部28の内面28a、および第1穴部19において第2パンチ部12が挿入されたときに先端部分14の径方向外側に位置する内周壁面19aは、ダイプレート本体部150に設けられる。ダイプレート本体部150を形成する樹脂は、ポリアセタール樹脂、高分子量ポリエチレン樹脂、或いはフッ素樹脂とすることができる。このようにしても、ダイプレート表面18a、ダイプレート側凹部28の内面28a、および第1穴部19において第2パンチ部12が挿入されたときに先端部分14の径方向外側に位置する内周壁面19aが滑りやすくなる。従って、上記の第1ダイプレート18と同様の作用効果を得ることができる。ここで、第2弾性シート打抜き装置4の第2ダイプレート18についても、樹脂製のダイプレート本体部150と、ダイプレート本体部150をZ1方向から支持する金属製の支持プレート部151と、を備えるものすることができる。
【0148】
(吸着部の変形例)
図15(a)は、変形例1の吸着部の断面図である。図15(b)は、変形例1の吸着部をZ1方向から見た場合の斜視図である。図15(a)では、吸着部73に弾性シート2が吸着されている状態を模式的に示す。図16(a)は、変形例2の吸着部の断面図である。図16(b)は、変形例2の吸着部をZ1方向から見た場合の斜視図である。図16(a)では、吸着部73に弾性シート2が吸着されている状態を模式的に示す。図15に示す変形例1の吸着部73は、第1弾性シート搬送装置5の弾性シート移動機構54の吸着部73および搬送機構56の吸着部73として、用いることができる。本例の吸着部73は、網部材85および枠体86に換えて、導電性の板金部材130を備える。図15に示すように、板金部材130は、吸引プレート81の下面に固定されて凹部83を下方から封鎖する。また、板金部材130は、Z方向から見た場合に凹部83と重なる位置に当該凹部83に連通する複数の吸気口72を備える。複数の吸気口72はマトリックス状に形成される。板金部材130において複数の吸気口72が形成されている領域は、Z方向から見た場合に、凹部83よりも小さい。吸気口72は、凹部83、連通口84、および筒部82を介してエジェクター88に連通する。板金部材130の下面は、粗面とする。
【0149】
ここで、板金部材130の下面は、吸着面71である。弾性部材において、複数の吸気口72が形成されている領域の外側の領域は、吸着面71に弾性シート2を吸着した時に弾性シート2の外周縁が接触する枠状部分71aである。枠状部分71aは、粗面である。このようにしても、弾性シート移動機構54の吸着部73、搬送機構56の吸着部73と同様の作用効果を得ることができる。
【0150】
また、図16に示す変形例2の吸着部73のように、弾性シート2を吸着したときに、枠状バリ部分61aと対応する対向領域にのみ吸気口72を備えれば、第2搬送シート搬送装置の吸着部73に替えて用いることができる。すなわち、本例の吸着部73は、凹部83を封鎖する板金部材130は、吸着面71の中央に吸気口72を備えない矩形部分71bを備え、矩形部分71bの外周側に吸気口72を備えない枠状部分71aを備え、矩形部分71bと枠状部分71aとの間の矩形の領域に凹部83と連通する吸気口72を備える。矩形部分71bおよび枠状部分71aは、粗面である。本例の吸着部73は、第2弾性シート搬送装置6の吸着部73と同様の作用効果を得ることができる。
【要約】
弾性シート打抜き装置(1)は、第1ダイプレート(18)に弾性シート(2)が配置されると第1パンチプレート(13)を第1ダイプレート(18)に接近させ、第1ストリッパープレート(15)と第1ダイプレート(18)との間に弾性シート(2)を挟んだ後に、第1ストリッパープレート(15)から突出するパンチ部(12)により弾性シート(2)を打抜く。ストリッパープレート表面(15a)と第1ダイプレート表面(18a)には、当接させた時に弾性シート2の形状を転写した転写形状の空間(29)を区画するストリッパープレート側凹部(27)と、ダイプレート側凹部(28)とが設けられている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16