(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】多情報軌道回路
(51)【国際特許分類】
B61L 23/16 20060101AFI20220221BHJP
B61L 3/08 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
B61L23/16 E
B61L3/08 A
(21)【出願番号】P 2018120252
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2020-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】517251812
【氏名又は名称】株式会社社会システム開発研究所
(72)【発明者】
【氏名】中村 英夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋子
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-264820(JP,A)
【文献】実開平06-067251(JP,U)
【文献】特開平08-067248(JP,A)
【文献】国際公開第2017/222544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/16
B61L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信部(10)、受信部(20)およびレール(101)からなる軌道回路(2)において、
該受信部(20)は、それぞれの軌道回路(2)に応じて作成された灯器制御テーブル(7)を備え、
列車(1)が在線する該軌道回路を0番目軌道回路(2
0)とし、該0番目軌道回路から後方に数えてn(n=1,2,・・・,k,・・・)番目の軌道回路(2)をn番目軌道回路(2
n)と定め、
上記送信部(10)で送信する軌道回路信号(30)は、該n番目軌道回路に対応した第n軌道回路信号(30
n)であることにして、
上記受信部(20)では、受信した第n軌道回路信号(30
n)を分析し、列車(1)が在線する0番目軌道回路(2
0)からの順番を表す順番情報(4)を知得して、上記灯器制御テーブル(7)を参照し、該灯器制御テーブル(7)に記された、該順番情報(4)に対応した、多現示式色灯信号機(3)への灯器制御出力(6)を索引して出力することにより、多現示式色灯信号機(3)を制御可能とする多情報軌道回路
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方軌道回路の情報を別回線により取得することなく多現示式色灯信号機の制御ができる多情報軌道回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車の在線を検知する軌道回路は、信号灯器の制御に用いられるが、列車密度や運転速度向上のために多現示化が進んでいる。この中でR、Y、Gの3現示を制御する場合には、非特許文献1で示されているように3値の状態が取れる二元三位式軌道回路を用いることで、前方軌道回路の情報を別回線で取得することなく信号灯器の制御が行えていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、4現示、5現示、6現示といった多現示化が進むと、二元三位式軌道回路の場合でも前方にある軌道回路の情報を別回線によって取得して信号灯器の制御を行わねばならず、通信用のケーブル敷設などのコストが課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明に係る軌道回路は、列車が在線する軌道回路からの順番に対応した軌道回路信号を送信する。軌道回路の処理部においては、受信した軌道回路信号をもとに、在線する軌道回路からの順番情報を知得し、その順番情報に対応した信号現示の灯器制御出力を行う。同時に、後続の軌道回路の送信部に、知得した順番情報を伝達する。
【発明の効果】
【0006】
この結果、本発明を用いることにより、前方軌道回路情報を別回線により取得することなく、多現示の信号灯器の点灯制御が行える。
【0007】
また、レールに流れる軌道回路信号を車上の受信アンテナで受信することにより、前方列車が在線する軌道回路がわかるため、車上に位置検知機能と線区データをもつことにより、デジタルATCやATS-P形なみの高い機能を持った列車保安制御システム実現への展望が開かれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】 多情報軌道回路の一実施事例を示す図である。
【
図2】 多情報軌道回路の送信部と受信部の機能を説明する図である。
【
図3】 第n軌道回路信号の例(その1)を示す図である。
【
図4】 第n軌道回路信号の例(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の多情報軌道回路は、隣接する前方軌道回路の受信情報を下に自軌道回路が送信すべき軌道回路信号を一義に決定し、送信するものである。
【0010】
図1は、本発明の多情報軌道回路の一実施事例を示す図である。列車1が在線する軌道回路の受信部20では軌道回路電流30が受信できないことになるが、この軌道回路を0番目軌道回路2
0と呼ぶ。さらに、該0番目軌道回路2
0から順次1番目軌道回路2
1、2番目軌道回路2
2と軌道回路に順番をつけていくものとし、レールにはこの順番情報4(
図1には記載されず)に対応した第k軌道回路信号30
kを生成して送信する。さらに、該順番情報4をもとに多現示式色灯信号機3の制御を行うことになるが、その詳細については
図2を用いて説明する。
【0011】
図2は、多情報軌道回路の送信部10と受信部20の機能を説明する図である。受信部20では、受信した第k軌道回路信号30
kを波形分析部21で分析し、順番情報4を得る。該順番情報4は処理部5と隣の軌道回路の送信部10の波形生成部11に伝達される。該処理部5は、順番情報4をもとに多現示式色灯信号機3に対する灯器制御出力6を生成して出力する。
【0012】
該灯器制御出力6の生成として
図2では灯器制御テーブル7を参照する方式を示しており、受信部20には、処理部5と灯器制御テーブル7が具備されている。該灯器制御テーブル7には、順番情報4に対応した灯器制御出力6が記録されている。処理部5は、順番情報4のkをもとに上記灯器制御テーブル7を索引して灯器制御出力6を得、多現示式色灯信号機3に出力する。なお、順番情報4に対する灯器制御出力6の関係は、軌道回路2の長さや、多現示式色灯信号機3のもつ色灯信号の種類によって多様であるため、この制御方式ではそれぞれの軌道回路2に応じて灯器制御テーブル7が用意されることになる。
【0013】
上記順番情報4は、処理部5のほかに隣の軌道回路の送信部10の波形生成部11に伝達されることを説明したが、順番情報4を用いた送信部10の処理について
図2を用いて説明する。該波形生成部11は受信した順番情報4であるkに1を加えたk+1を自らの軌道回路2の順番情報4として認識する。この順番情報4の内容k+1をもとに、送信部10に具備された軌道回路プロファイルテーブル8を索引する。該軌道回路プロファイルテーブル8には、順番情報4のそれぞれに対応した第n軌道回路信号30
n(n=1,2,・・・,k,・・・)の生成情報31
n(n=1,2,・・・,k,・・・)が記録されており、索引した生成情報31
k+1をもとに第k+1軌道回路信号30
k+1を生成してレール101に送信する。
【0014】
レール101に送信される第n軌道回路信号30
nの例について
図3および
図4を用いて説明する。
図3は、1周期の時間50内に得られる1波形中の波の数を順番情報4に対応させた例である。第1軌道回路信号30
1の場合には、1波形に一つの波が、また、第2軌道回路信号30
2の場合には、1波形に二つの波が存在する。これに対し、
図4の例の場合には、1周期の時間50内に必ず2つの波が得られるものとし、その波の少ない方の間隔を順番情報4に対応させている。なお、
図4では、間隔を数え易くするために送信されない間を破線の波で埋めているが、実際に送信される第n軌道回路信号30
nは、実線の波形のみになり、破線の波は送信されない。また、理解を容易にするために基本となる波を、Sin波として図示したが、矩形波であっても、高周波をAM変調したり断続させたりしたものであっても本発明の目的を満たすことは明らかであり、第n軌道回路信号30
nの波形の様態についてはなんら制限するものではない。
【符号の説明】
【0015】
1 列車
2 軌道回路
20 0番目軌道回路
2n n番目軌道回路;n(n=1,2,・・・,k,・・・)
3 多現示式色灯信号機
4 順番情報
5 処理部
6 灯器制御出力
7 灯器制御テーブル
8 軌道回路プロファイルテーブル
10 送信部
11 波形生成部
20 受信部
21 波形分析部
30 軌道回路信号
30n 第n軌道回路信号;n(n=1,2,・・・,k,・・・)
31 生成情報
50 1周期の時間
101 レール