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特許7026876一部がコーティングされた放出制御固形製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】一部がコーティングされた放出制御固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/36 20060101AFI20220221BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20220221BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220221BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220221BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220221BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
A61K9/36
A61K9/30
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017504225
(86)(22)【出願日】2015-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2015076028
(87)【国際公開番号】W WO2015154656
(87)【国際公開日】2015-10-15
【審査請求日】2018-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2019-12-27
(31)【優先権主張番号】201410139563.9
(32)【優先日】2014-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516304241
【氏名又は名称】ウェン、 シャオガン
(73)【特許権者】
【識別番号】517080876
【氏名又は名称】オーバーシーズ ファーマシューティカルズ(グアンジョウ)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウェン、 シャオガン
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】穴吹 智子
【審判官】渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-221416(JP,A)
【文献】国際公開第2008/006216(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102614141(CN,A)
【文献】特表2009-543875(JP,A)
【文献】特表2007-501773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、コーティング層とからなる放出制御固形製剤であって、
前記コアが、2層以上であり、それぞれの層が活性薬物と添加剤とを含み、
前記コーティング層が、水溶性ポロゲンと、徐放・放出制御素材とを含み、
前記コーティング層が、活性成分を含むか、または含まず、
前記コアの表面が、前記コーティング層で完全に被覆されず、前記コアの表面の上層の一部が固形製剤の表面に露出しており、
前記コーティング層の前記徐放・放出制御素材が、水不溶性素材であり、前記コーティング層の総量に対して68~78重量%で含まれ、
前記水不溶性素材が、エチルセルロース、セルロースアセテートポリマー、アクリル樹脂からなる群から選ばれる1種または複数種であり、
前記水溶性ポロゲンが、ポリビニルピロリドン、ラクトース、塩化ナトリウムからなる群から選ばれる1種または複数種であり、前記コーティング層の総量に対して20重量%、又は20~30重量%で含まれ、
前記コアと前記コーティング層の重量比が3:5である、ことを特徴とする、放出制御固形製剤。
【請求項2】
前記コアが3層であり、前記3層中の成分が、上層の成分が最初に放出され、中間層の成分が次に放出され、下層の成分が最後に放出されるようにそれぞれの層の成分が順次放出される、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
前記コーティング層の外面に、活性成分を含むか、または含まない、もう1層のコーティングを有する、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項4】
錠剤である請求項1に記載の固形製剤。
【請求項5】
前記コーティング層が1種類の活性薬物を含み、前記コアが別の種類の活性薬物を含む、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項6】
請求項4に記載の固形製剤を、打錠機でプレスすることにより調製する方法であって、
1)錠芯を調製するための各組成成分を混合し、I番パンチで一回目のプレスを行って、錠芯を得る工程と、
2)II番パンチに交換し、コーティング層を調製するための各組成成分を混合した後、中金型に充填する工程と、
3)工程1)でプレスした錠芯を中金型の中央に充填し、二回目のプレスを行って、固形製剤を得る工程と
を含み、
前記I番パンチの直径がII番パンチの直径より小さい、固形製剤の調製方法。
【請求項7】
前記工程2)と3)を、
II番パンチに交換した後、工程1)でプレスした錠芯を中金型の中央に充填し、その後、中金型の中で錠芯の周囲に、均一に混合されたコーティング層の組成成分を充填して、二回目のプレスを行うことへ変更する、請求項6に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、以下の中国特許に対する優先権を主張するものである。
出願番号:201410139563.9
出願日:2014-04-08
発明の名称:新型放出制御錠
【0002】
本発明は製薬の技術分野に属し、一部がコーティングされた放出制御固形製剤に関するものである。
【背景技術】
【0003】
固体徐放・放出制御製剤において、活性薬物を徐放・放出制御素材でコーティングする手段がよく用いられる。しかし、この手段では、予想される薬物放出効果を達成できないことがある。例えば、複数の薬物の活性成分が、異なる速度で、予想される時点で放出することが望まれる場合、従来の技術では、実現することが困難である。パルス的な投与によって、異なる放出行為、特に遅い放出から速い放出になる指数関数的な放出が得られる薬物の放出手段が好適である。これまでの製剤は、そのような効果を達成することができない。
【0004】
そのため、放出行為を制御する目的を達成するには、製剤の構造を変える必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薬物の活性成分が異なる放出速度で、予想される時点でパルス的に放出され、望まれる放出制御効果を達成できる、新たな構造の放出制御固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、活性薬物と添加剤を含むコアと、コーティング素材を含み、活性成分を含むか、または含まないコーティング層とからなる放出制御固形製剤において、前記コアの表面の一部がコーティングで被覆されずに固形製剤の表面に露出していることを特徴とする、新たな構造の放出制御固形製剤を設計した。
【0007】
即ち、本発明の製剤のコーティングが、完全にコアを被覆せず、コアの一部が、固形製剤の表面に露出している。
【0008】
本発明の一実施形態では、薬物のコアの一部が露出しているため、その部分によって、コアの薬物の放出を制御することに寄与する。
【0009】
前記露出している部分において、その部位、面積及び形状が限定されず、実用中に、具体的な製剤の活性成分の放出要求と薬剤生産の利便性に応じて、それぞれの製剤について異なる形状を設計することができる。
【0010】
前記コアは1層または複数層であり、1層以上の徐放層であってもよく、あるいは速放層と徐放層を共に含んでもよい。
【0011】
コアが2層以上である場合、最外層の成分が最初に放出され、第二外層の成分が次に放出され、コアの最内層の成分が最後に放出されるようにそれぞれの層の成分が順次放出される。このようにして、それぞれの薬物の放出順番と放出タイミングを制御することができる。
【0012】
前記徐放層の素材は、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルオキシドから選ばれる。
【0013】
前記コーティング層の素材は、水可溶性または水不溶性であり、前記水可溶性のコーティング素材は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種または複数種であり、前記水不溶性のコーティング素材は、エチルセルロース、セルロースアセテートポリマー、アクリル樹脂から選ばれる1種または複数種である。
【0014】
前記コーティング素材は、ポリビニルピロリドン、ラクトース、塩化ナトリウムから選ばれる1種または複数種である水溶性ポロゲンをさらに含んでもよい。
【0015】
上記の固形製剤が錠剤である場合、そのコアは、1層以上の錠状物からなる錠芯である。錠芯の一つの底面(頂面と見なされてもよい)の一部がコーティング素材で被覆されずに露出している(図面1、2、3を参照)。
【0016】
本発明のもう一つの実施形態では、製剤の外面に、活性成分を含むか、または含まない、もう1層のコーティングを有する。
【0017】
本発明のまた一つの実施形態では、前記コーティング層が圧縮コーティング法で調製されてなる。
【0018】
前記のコアとコーティングの成分には、さらに一般の薬物製剤、例えば充填剤、崩壊剤、滑剤、流動助剤などから選ばれる薬用添加剤を含む。当該分野の技術の要求に応じて選択して用いられる。
【0019】
例えば、充填剤は、ラクトース、アルファデンプン、微晶セルロースから選ばれる1種または複数種であり、崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、および架橋ポリビニルピロリドンから選ばれる1種または複数種であり、滑剤は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびタルク粉から選ばれる1種または複数種であり、流動助剤は、微粉シリカゲル等である。
【0020】
本発明の固形製剤が錠剤である場合、一般の打錠機でタブレットのプレスを行ってもよいが、規格の異なる二種類のパンチが必要で、一般的には、
1)錠芯を調製するための各組成成分を混合し、I番パンチで一回目のプレスを行って、錠芯を得る工程と、
2)II番パンチに交換し、コーティング層を調製するための各組成成分を混合した後、中金型に充填する工程と、
3)工程1)でプレスした錠芯を中金型の中央に充填し、二回目のプレスを行って、固形製剤を得る工程と
を含み、
前記I番パンチの直径がII番パンチの直径より小さい。
【0021】
上記方法では、前記工程2)と3)を、II番パンチに交換した後、工程1)でプレスした錠芯を中金型の中央に充填し、その後、中金型の中で錠芯の周囲に、均一に混合されたコーティング層の組成成分を充填して、二回目のプレスを行うことへ変更してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下の技術効果を有する。
【0023】
薬物の放出面は露出している部分のみであるため、その露出の表面積を制御することによって、放出を制御する目的を達成できる。また、薬物が露出していない部分から放出されることはないため、定速放出の効果を達成できる。
【0024】
コアが2層以上である場合、最外層の成分が最初に放出され、第二外層の成分が次に放出され、コアの最内層の成分が最後に放出されるようにそれぞれの層の成分が順次放出される。このようにして、それぞれの薬物の放出順番と放出タイミングを制御することができる。
【0025】
本発明の製剤では、コアにおけるそれぞれの層の活性成分の量、徐放・放出制御素材の種類と用量を制御することや、圧縮コーティング層の活性成分及び徐放・放出制御素材の種類と用量と活性成分の用量を制御することによって、複数の薬物活性成分を異なる速度で、異なる時点で放出させて、パルス的な投与が可能になり、異なる放出行為、例えばゼロ次放出、一次放出、特に遅い放出から速い放出になる指数関数的な放出が得られる。
【0026】
以上の発明の効果は、各実施例で得られる放出グラフから見られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】錠芯が単層錠である放出制御錠の構造模式図であり、1が錠芯であり、2がコーティングである。
図2】錠芯が2層錠である放出制御錠の構造模式図であり、1が錠芯の徐放層であり、2が錠芯の速放層であり、3がコーティングである。
図3】錠芯が別の2層錠である放出制御錠の構造模式図であり、1が錠芯の第1徐放層であり、2が錠芯の第2徐放層であり、3がコーティングである。
図4】実施例1での錠芯と、本発明の方法で調製された同様な錠芯を含む放出制御錠との溶出グラフの比較である。錠芯が変わらなくても、錠芯が一部露出したコーティング層を有する放出制御製剤を調製すると、放出行為が明らかに異なって、様々な臨床用薬の要求に応えることに寄与することが分かる。以上のグラフから、本発明の調製方法では、薬物の体外溶出を一次放出からゼロ次放出へ変更することができる。
図5】実施例2での錠芯と、本発明の方法で調製された同様な錠芯を含む放出制御錠との溶出グラフの比較である。錠芯が変わらなくても、錠芯が一部露出したコーティング層を有する放出制御製剤を調製すると、放出行為が明らかに異なって、様々な臨床用薬の要求に応えることに寄与することが分かる。以上のグラフから、本発明の調製方法では、薬物がまず徐々に放出され、その後すばやく放出されることが可能になる。
図6】実施例3での錠芯と、本発明の方法で調製された同様な錠芯を含む放出制御錠との溶出グラフの比較である。錠芯が変わらなくても、錠芯が一部露出したコーティング層を有する放出制御製剤を調製すると、放出行為が明らかに異なって、様々な臨床用薬の要求に応えることに寄与することが分かる。以上のグラフから、本発明の調製方法では、薬物の放出速度が徐々に速くなることが可能になる。
図7】実施例4での錠芯と、本発明の方法で調製された同様な錠芯を含む放出制御錠との溶出グラフの比較である。錠芯が変わらなくても、錠芯が一部露出したコーティング層を有する放出制御製剤を調製すると、放出行為が明らかに異なって、様々な臨床用薬の要求に応えることに寄与することが分かる。以上のグラフから、本発明の調製方法では、薬物がそれぞれの速度で徐々に定速放出されることが可能になる。
図8】実施例1、実施例5、実施例6、実施例7における放出制御錠の溶出グラフの対照であり、コーティングにおける可溶性素材であるラクトースの含有量が多いほど、コーティングの溶出速度が速くなるのが分かる。
図9】実施例1、実施例8、実施例9、実施例10における放出制御錠の溶出グラフの対照であり、錠芯における徐放素材の含有量が多いほど、錠芯の溶出速度が遅くなるのが分かる。
図10】錠芯が実施例12における3層の錠芯である放出制御錠の構造模式図であり、1が錠芯の上層薬物含有層であり、2が錠芯の中間バリア層であり、3が錠芯の下層薬物含有層であり、4が薬物含有コーティングであり、5が最外層の薬物含有フィルムコーティングである。
図11】実施例12における放出制御錠の溶出グラフであり、徐放的な投与とパルス的な投与とを組み合わせた薬物の放出手段であることが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明における薬物の溶出の検出方法は、中国薬局方2010版二部付録XD放出度測定第一法(徐放、放出制御、遅延放出製剤に適用)に準じて、タブレットを0.1mol/L塩酸溶液900mlに投入し、バスケット法で、100回転/分で、37℃で、規定されるサンプリング点で適量の溶出液を吸引し、タブレットの累積放出度を算出して、溶出グラフをプロットする。
【実施例
【0029】
実施例1 コアが単層である(1層の徐放層のみを有する)放出制御製剤
製剤は、1層の徐放層のみを有する単層錠である錠芯と、錠芯外に被覆されたコーティングとを含む。図1に示すように、コアの頂面の一部が、コーティングで被覆されずに固形製剤の表面に露出している。
【0030】
成分と含有量は以下の通りであり、1000錠として、1錠あたりの重さが800mgである。
【0031】
【表1】
【0032】
調製方法:
1、錠芯の原料と添加剤を処方に準じて秤量して、十分に混合した後使用に備え、そして、I番パンチの直径がII番より小さい二種類の規格のパンチを選択する;
【0033】
2、回転式打錠機を用いて、パンチIをセットし、打錠機の充填深さと打錠力を調整して、錠剤重さが1錠あたり300mg、錠芯硬度90Nである錠芯をプレスする;
【0034】
3、処方に準じてコーティング用添加剤を秤量し、十分に混合して使用に備える;
【0035】
4、回転式打錠機を用いて、パンチIIをセットし、打錠機のプロセスパラメータを調整して、プレスした錠芯をダイの中央に置き、混合したコーティング素材を充填して、錠芯の底面と側面の全体がコーティング素材で被覆された、タブレットの総重量800mg、硬度100Nであるタブレットをプレスする。
【0036】
薬物の溶出を検出し、溶出グラフを図4に示す。該当図から分かるように、錠芯の放出が一次放出する傾向にあり、外層コーティングを添加して放出制御錠を調製すると、タブレットの放出が定速となる。
【0037】
実施例1では、錠芯は、頂面のみが外に露出し、溶出期間中、錠芯における有效成分が頂面のみを通して放出されており、放出面積が一定であるため、ゼロ次放出の効果を果たせる。実施例1で調製した薬物モデルは、脳心血管類薬物に適しており、浸透ポンプ技術に代わって薬物の定速放出の目的を達成できる。
【0038】
実施例2 コアが2層(徐放層と速放層)である放出制御製剤
製剤は、2層の錠である錠芯と、錠芯外に被覆されたコーティングを含む。図2に示すように、コアの頂面の一部がコーティングで被覆されずに固形製剤の表面に露出している。
【0039】
成分と含有量は以下の通りであり、1000錠として、1錠あたりの重さが800mgである。
【0040】
【表2】
【0041】
調製方法:
1、錠芯の徐放層、錠芯の速放層の原料と添加剤を処方に準じて秤量し、それぞれ十分に混合した後使用に備え、そして、I番パンチの直径がII番より小さい二種類の規格のパンチを選択する;
【0042】
2、回転式打錠機を用いて、パンチIをセットし、打錠機の充填深さと打錠力を調整して、錠芯の徐放層の重さ200mg、錠芯の速放層の重さ100mg、錠芯硬度80Nである錠芯をプレスする;
【0043】
3、処方に準じてコーティング用添加剤を秤量し、十分に混合して使用に備える;
【0044】
4、回転式打錠機を用いて、パンチIIをセットし、打錠機のプロセスパラメータを調整して、プレスした錠芯の色の付いた速放層を上に向けてダイの中央に置き、混合したコーティング素材を充填して、錠芯の底面と側面の全体がコーティング素材で被覆された、タブレットの総重量800mg、硬度100Nであるタブレットをプレスする。
【0045】
薬物の溶出を検出し、溶出グラフを図5に示す。該当図から分かるように、単独の錠芯では、速放層がすぐに崩壊するため、溶出速度が速く、薬物の90%溶出には6時間しかかからない。コーティング付きの放出制御錠を調製すると、溶出が最初遅くてその後速くなるという放出傾向にある。
【0046】
実施例2における錠芯は、徐放-速放の2層の錠からなり、溶出される期間中、錠芯のうち徐放部が最初に溶解され、徐放層における活性成分が徐々に放出され、徐放層の放出が終了した後、速放層が迅速に崩壊し、迅速的な投与の目的を達成する。
【0047】
実施例2で調製した薬物モデルは、朝のこわばり、心筋梗塞等の夜明けに発生しやすい疾患を治療する薬物に適しており、速放層の放出時間を薬物の服用後の4-6時間後にコントロールでき、患者が寝る前に薬を飲むと、夜明けに発病する可能性が避けられる。なお、大部分の胃中での吸収がよいが、胃の下部での吸収に劣る薬物にも適する。pHが低い条件では、薬物が徐々に放出され、放出された部分が基本的に吸収され利用されるが、環境pHが向上する時に、薬物の溶解度が低下し、生体の薬物に対する吸収が悪くなり、その場合、薬物の放出量を増加することで、バイオアベイラビリティーが低下するという問題を改善する。
【0048】
実施例3 コアが単層である(1層の徐放層のみを有する)放出制御製剤
製剤は、1層の徐放層のみを有する単層錠である錠芯と、錠芯外に被覆されたコーティングとを含む。図1に示すように、コアの頂面の一部がコーティングで被覆されずに固形製剤の表面に露出している。
【0049】
成分と含有量は以下の通りであり、1000錠として、1錠あたりの重さが800mgである。
【0050】
【表3】
【0051】
調製方法:
1、錠芯の原料と添加剤を処方に準じて秤量し、十分に混合した後使用に備え、そして、I番パンチの直径がII番より小さい二種類の規格のパンチを選択する;
【0052】
2、回転式打錠機を用いて、パンチIをセットし、打錠機の充填深さと打錠力を調整して、錠剤重さが1錠あたり300mg、錠芯硬度90Nである錠芯をプレスする;
【0053】
3、処方に準じてコーティング用添加剤を秤量し、十分に混合して使用に備える;
【0054】
4、回転式打錠機を用いて、パンチIIをセットし、打錠機のプロセスパラメータを調整して、プレスした錠芯をダイの中央に置き、混合したコーティング素材を充填して、錠芯の底面と側面の全体がコーティング素材で被覆された、タブレットの総重量800mg、硬度100Nであるタブレットをプレスする。
【0055】
薬物の溶出を検出し、溶出グラフを図6に示す。図6から分かるように、単独の錠芯では、4時間後に完全に溶解され、薬物の放出度が90%以上にも達し、外層コーティングを被覆して放出制御錠を調製すると、4時間内に薬物の放出が遅く、4時間以降に薬物の放出速度が速くなり、8時間で溶出が終了する。
【0056】
実施例3の錠芯は単層錠であり、コーティングに活性成分が含まれ、コーティング素材には、可溶性のヒドロキシプロピルメチルセルロースを選択して使用し、溶出実験で、タブレットの外層コーティングが徐々に溶解され、コーティングにおける活性成分が次々と放出されており、薬物が頂面のみから放出され、積算放出量が不十分である問題を改善する。シェルが溶解された後、錠芯が完全に外に露出し、薬物が四方から拡散し始め、薬物放出量が増加する。当該薬物モデルは、辰の刻(午前七時から九時の間)に発病する疾患の治療薬にも使用することができる。作用効果は実施例2と類している。
【0057】
実施例4 コアが2層(2層の徐放層)である放出制御製剤
製剤は、第1徐放層と第2徐放層からなる2層の錠である錠芯と、錠芯外に被覆されたコーティングとを含む。図3に示すように、コアの頂面の一部がコーティングで被覆されずに固形製剤の表面に露出している。
【0058】
成分と含有量は以下の通りであり、1000錠として、1錠あたりの重さが800mgである。
【0059】
【表4】
【0060】
調製方法:
1、錠芯の第1徐放層、錠芯の第2徐放層の原料と添加剤を処方に準じて秤量して、それぞれ十分に混合した後使用に備え、そして、I番パンチの直径がII番より小さい二種類の規格のパンチを選択する;
【0061】
2、回転式打錠機を用いて、パンチIをセットし、打錠機の充填深さと打錠力を調整して、錠芯の第1徐放層と錠芯の第2徐放層の重さがいずれも150mg、錠芯の総重量300mg、硬度90Nである錠芯をプレスする;
【0062】
3、処方に準じてコーティング用添加剤を秤量し、十分に混合して使用に備える;
【0063】
4、回転式打錠機を用いて、パンチIIをセットし、打錠機のプロセスパラメータを調整して、プレスした錠芯の色の付いた速放層を上に向けてダイの中央に置き、混合したコーティング素材を充填して、錠芯の底面と側面の全体がコーティング素材で被覆された、タブレットの総重量800mg、硬度100Nであるタブレットをプレスする。
【0064】
薬物の溶出を検出し、溶出グラフを図7に示す。図7から分かるように、錠芯の溶出グラフが一次放出を示し、0.5hで既に30%以上が放出され、10時間の積算溶出量が90%以上にも達しており、放出制御錠の放出は、0~5hでの放出速度が遅く、5~12hでの放出速度が速くなるという二つの段階を有する特徴を示すが、二つの段階がいずれも定速放出を示す。
【0065】
実施例4のタブレットの錠芯は、放出速度が異なる2種類からなる2層の錠であり、上層の放出速度が遅く、下層の放出速度が速い。
【0066】
実施例5~10
実施例5~10の製剤は、実施例1と同様に、コアが単層である(1層の徐放層のみを有する)放出制御製剤である。
【0067】
成分と含有量は以下の通りであり、1000錠として、1錠あたりの重さが800mgである。
【0068】
【表5】
【0069】
なお、本願では、放出制御錠の外層コーティングにおける可溶性成分の量と錠芯における徐放素材の含有量の薬物の溶出に対する影響も開示されており、調製方法は実施例1と同様である。
【0070】
実施例1、実施例5、実施例6、実施例7のタブレットの溶出を比較すれば、図8から分かるように、コーティングにおける可溶性素材であるラクトースの含有量が多いほど、コーティングの溶出速度が速くなる。
【0071】
実施例1、実施例8、実施例9、実施例10のタブレットの溶出を比較すれば、図9から分かるように、錠芯における徐放素材の含有量が多いほど、錠芯の溶出速度が遅くなる。
【0072】
実施例11
本実施例における放出制御製剤のコアが3層(いずれの層も活性成分を含む)であり、不完全なコーティング層にも活性物質が含まれ、最外層のフィルムコーティングにも活性物質が含まれる。図10に示すように、コアの上層薬物含有層の一部がコーティングで被覆されずに固形製剤の表面に露出している。
【0073】
成分と含有量は以下の通りであり、1000錠として、1錠あたりの重さが800mgである。
【0074】
【表6】
【0075】
調製方法:
1、錠芯の上層、中間層、下層の原料と添加剤を処方に準じて秤量し、それぞれ十分に混合した後使用に備え、そして、I番パンチの直径がII番より小さい二種類の規格のパンチを選択する;
【0076】
2、回転式打錠機を用いて、パンチIをセットし、打錠機の充填深さと打錠力を調整して、錠芯の上層の重さ100mg、中間層の重さ100mg、下層の重さ100mg、錠芯の総重量300mg、硬度100Nである錠芯をプレスする;
【0077】
3、処方に準じてコーティング用添加剤を秤量し、十分に混合し使用に備える;
【0078】
4、回転式打錠機を用いて、パンチIIをセットし、打錠機のプロセスパラメータを調整して、プレスした錠芯の色の付いた速放層を上に向けてダイの中央に置き、混合したコーティング素材を充填して、錠芯の底面と側面の全体がコーティング素材で被覆された、タブレットの総重量800mg、硬度120Nであるタブレットをプレスする;
【0079】
5、処方に準じてコーティングパウダーを秤量して、コーティング液を調製し、高速コーティング機で最外層のフィルムコーティングを被覆し、コーティングの重量が2%増加する。
【0080】
薬物の溶出を検出し、溶出グラフを図11に示す。図から分かるように、薬物の放出がパルス的であって、最外層のフィルムコーティングが最初に薬物を放出し、15分後、上層錠芯が溶出し薬物を放出し始め、中間錠芯が1.5時間後に薬物を放出し始め、下層錠芯が3.5時間後に放出し始める。また、圧縮コーティングにおける薬物は、最外層のフィルムコーティングの溶解後、溶出期間全体に亘って薬物を持続放出する。
<付記>
<項1>
活性薬物と添加剤を含むコアと、徐放・放出制御素材を含み、活性成分を含むか、または含まないコーティング層とからなる放出制御固形製剤において、前記コアの表面がコーティング層で完全に被覆されず、一部が固形製剤の表面に露出していることを特徴とする、放出制御固形製剤。
<項2>
前記コアが1層または複数層であり、前記層が徐放層であり、あるいは速放層と徐放層を共に含み、コアが2層以上である場合、最外層の成分が最初に放出され、第二外層の成分が次に放出され、コアの最内層の成分が最後に放出されるようにそれぞれの層の成分が順次放出される、<項1>に記載の固形製剤。
<項3>
前記コーティング層が圧縮コーティング法で調製されてなる、<項1>に記載の固形製剤。
<項4>
前記コーティング層の素材が水可溶性または水不溶性であり、前記水可溶性のコーティング素材が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種または2種であり、前記水不溶性のコーティング素材が、エチルセルロース、セルロースアセテートポリマー、アクリル樹脂から選ばれる1種または複数種であることを特徴とする、<項1>に記載の固形製剤。
<項5>
前記コーティング層の素材が、ポリビニルピロリドン、ラクトース、塩化ナトリウムから選ばれる1種または複数種である水溶性ポロゲンをさらに含むことを特徴とする、<項1>に記載の固形製剤。
<項6>
前記コーティング層の外面に、活性成分を含むか、または含まない、もう1層のコーティングを有する、<項1>~<項5>のいずれか一項に記載の固形製剤。
<項7>
錠剤である<項1>に記載の固形製剤。
<項8>
コアは、1層以上の錠状物からなる錠芯である、<項7>に記載の固形製剤。
<項9>
<項7>または<項8>に記載の固形製剤の調製方法であって、
打錠機でタブレットのプレスを行い、
1)錠芯を調製するための各組成成分を混合し、I番パンチで一回目のプレスを行って、錠芯を得る工程と、
2)II番パンチに交換し、コーティング層を調製するための各組成成分を混合した後、中金型に充填する工程と、
3)工程1)でプレスした錠芯を中金型の中央に充填し、二回目のプレスを行って、固形製剤を得る工程と
を含み、
前記I番パンチの直径がII番パンチの直径より小さい、固形製剤の調製方法。
<項10>
前記工程2)と3)を、
II番パンチに交換した後、工程1)でプレスした錠芯を中金型の中央に充填し、その後、中金型の中で錠芯の周囲に、均一に混合されたコーティング層の組成成分を充填して、二回目のプレスを行うことへ変更する、<項9>に記載の調製方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11