(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】動作監視システム
(51)【国際特許分類】
A01G 13/08 20060101AFI20220221BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220221BHJP
【FI】
A01G13/08
G01M99/00 A
(21)【出願番号】P 2021167761
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2021-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517433739
【氏名又は名称】下松 雅也
(73)【特許権者】
【識別番号】517433728
【氏名又は名称】ヨランタ ゴレッツ
(72)【発明者】
【氏名】下松雅也
(72)【発明者】
【氏名】ヨランタ ゴレッツ
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特許第6604150(JP,B2)
【文献】特開2021-140403(JP,A)
【文献】特開2019-128704(JP,A)
【文献】特開2014-085799(JP,A)
【文献】特開昭60-201099(JP,A)
【文献】松雪恵之,馬渡勝典,防霜ファンの故障検知に関する一考察,電気・情報関係学会九州支部連合大会講演論文集,日本,2016年09月28日,平成28年度第69回,06-1A-05
【文献】仮屋一昭,加藤正明,池崎勉,携帯電話を用いた農産物監視システムの開発,鹿児島県工業技術センター研究成果発表会予稿集,日本,2007年11月30日,Vol.2007,41頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/08
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防霜ファンの動作監視システムであって
、
防霜ファンを保持する支柱下部に取り付けられた振動を計測するセンサと
、
前記振動を計測するセンサから得られた計測値を動作判定部へ送信する計測値送信部と
、を有するセンサ端末部と
、
前記計測値送信部から受信した計測値と学習済みモデルとを用いて防霜ファンの回転
及び首振
りの動作状態を判定する動作判定部と
、を有し
、
前記振動を計測するセンサは加速度センサである防霜ファンの動作監視システム
。
【請求項2】
請求項1の防霜ファンの動作監視システムであって
、
ファンの回転が停止中で首振りも停止中の動作状態時にファンの支柱に取り付けられた前記センサ端末部から送信された計測値と
、
ファンの回転が動作中で首振りが停止中の動作状態時にファンの支柱に取り付けられた前記センサ端末部から送信された計測値と
、
ファンの回転が動作中で首振りも動作中の動作状態時にファンの支柱に取り付けられた前記センサ端末部から送信された計測値と
、
を用いて前記学習済みモデルを作成する動作判定モデル学習
部をさらに有する防霜ファンの動作監視システム
。
【請求項3】
防霜ファンの動作監視システムであって、
防霜ファンを保持する支柱下部に取り付けられた振動を計測するセンサと、
前記振動を計測するセンサから得られた計測値を動作判定部へ送信する計測値送信部と、を有するセンサ端末部と、
前記計測値送信部から受信した計測値と学習済みモデルとを用いて防霜ファンの回転もしくは首振りまたはその両方の動作状態を判定する動作判定部と、
を有する防霜ファンの動作監視システムであって
、
前記センサ端末部に、温度を計測するセン
サをさらに備え
、
アラートを送信するかを判定するための温度を設定することが可能なユーザーインターフェイスと
、
設定された温度をアラート送信判定部へ送信する設定値送信部と
、
を有するユーザー端末部と
、前記温度を計測するセンサで計測され計測値送信部から送信された計測値と
、前記ユーザーインターフェイスで設定され設定値送信部から送信された設定値と
、前記動作判定部にて判定された動作状態と
、を取得し
、温度計測値が温度設定値以下でかつ前記動作状態がファンの回転が停止中もしくは首振りが停止中の動作状態の場合に
、アラートを送信すると判断するアラート送信判定部と
、
を有する防霜ファンの動作監視システム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防霜ファンの動作監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
凍霜害の発生は収穫直前のお茶を枯れさせ、お茶農家にとって精神的にも経済的にも大きなダメージとなる。お茶農家はこの凍霜害を防ぐために圃場に防霜ファンを設置しておく。防霜ファンは設定温度以下になるとファンの回転と首振動作を行い、圃場のお茶の凍霜害を防いでいる。
【0003】
ところが、防霜ファンは落雷などが原因で動作していないことがあるため、お茶農家は防霜ファンが正しく動作しているかどうかを確認するため深夜と早朝に圃場の見回りをしている。霜の被害は収穫直前のお茶が収穫できなくなるため精神的にも経済的にも大きなダメージとなるが、防霜ファンの見回りは体力的に大変な作業となっている。
【0004】
一般にファンの動作確認の技術として、風力発電のためのファンの状態監視システムがあるが、振動センサに加えて回転速度等を計測するためのセンサをブレードや風車ロータ付近のナセル内に配置している。(特許文献1参照)
【0005】
また、防霜ファンの異常を検知する技術として、防霜ファンの動作監視システムがあるが、振動センサをフィンから所定距離離れた非可動部分またはフィンを回転させるモータの外側等に配置し、さらにファンの稼働状況の示す電力を計測するためのセンサを用いている。(特許文献2参照)
【0006】
その他に、回転機械または往復機械を有する設備状態を監視する技術として、設備状態監視装置があるが、振動センサもしくは回転数、電圧、電流などを計測するセンサを風車翼、ドライブトレイン, 発電機, 風車ロータといった計測対象のある監視対象設備内に配置している。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【0008】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の技術では、ファンの動作を監視するために、回転速度や電力など振動以外の計測手段も用いることを想定しており、センサ設置位置も、ナセルや監視対象整備内、フィン近くのモータの外側といった高所に取り付けることが必要だった。このため、システムのコスト、設置コストが高額となる課題があった。また、お茶農家にとって必要な防霜ファンの回転と首振りの有無を監視できる技術であるという開示はなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、防霜ファンの動作監視システムであって、防霜ファンの支柱下部に設置された振動を検出するセンサと、センサより得られた計測値と学習済みモデルを用いて防霜ファンの回転の有無もしくは首振りの有無、またはその両方を判断する手段と、を有することとしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、振動を検出するセンサを防霜ファンの支柱に手の届く高さの位置で設置するだけでお茶農家に必要な防霜ファンの動作を監視することができ、防霜ファンの動作監視システムコストや導入コストが下がり、お茶農家は実際に導入可能なシステムが得られ、見回りの負担から開放され、凍霜害を防ぐことができる安心感と経済的な効果が得られる。また本発明によると、既存の防霜ファンにも簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を
図1から6を用いて動作監視システムの実施例を説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る動作監視システムにおける防霜ファンと支柱とセンサ端末の位置関係を示す構成図である。
【0016】
一般的な防霜ファンは、ファン部011、モーター部012、首振り機構部013により構成され、支柱020にて地面等から立てられ保持されている。また、首振り機構部013は必ずしも必要ではなく首振り機構部013がない場合もあるが、この場合はモーター部012と支柱020が直接固定される。
【0017】
センサ端末030は防霜ファンの支柱020の下部にバンド、磁石等で固定され、設置位置は作業者の手の届く範囲でもよいし、防犯や悪戯防止の理由で、脚立に登って届く範囲に設置してもよいし、あらかじめ支柱020に防霜ファンの制御盤、電源スイッチなどが取り付けられている場合には、センサ端末030をその中に設置してもよい。支柱020にさまざまな設備が取り付けられていてセンサ端末030を設置するために適切な場所がない場合は支柱020に固定せずに、支柱020の基礎部分に配置してもよいし、支柱020の基礎の付近の地面の上に配置してもよいし、支柱020の付近に防霜ファン以外の設備があり、その設備の中に配置することで業務効率化等が計れる場合は、支柱020付近にある設備内に配置してもよい。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る動作監視システムのシステム構成図である。
【0019】
防霜ファン110は支柱120によって保持され支柱120の下部にセンサ端末130が設置される。
【0020】
センサ端末130はネットワーク140によって中継機150に接続され、さらにネットワーク160によってサーバー170に接続される。また防霜ファンの動作状態の確認や温度設定などの各種設定等を行うユーザー端末180はネットワーク160を通してサーバー170と相互に通信が行われる。
【0021】
センサ端末130に含まれるセンサは全てのセンサが同じ電子回路やチップで構成されていても、異なる電子回路やチップで構成されていてもよく、判定精度を高めたり、あるいはコストを削減するために、学習によるモデル作成時専用の電子回路やチップを有したセンサ端末130と、監視専用の電子回路やチップを有したセンサ端末130を用いてもよく、監視対象の防霜ファンの種類や設置位置によって異なる電子回路やチップを有したセンサ端末130を用いてもよい。
【0022】
ネットワーク140は有線でも無線でもよく、USBケーブル等を用いたUART、I2C通信やBLE、WIFI、LoRaなどのLPWA(LowPower Wide Area)による通信、衛星通信、3G、4G、LTE等のセルラー通信でもよい。
【0023】
中継機150は圃場に設置された複数のセンサ端末130からの計測値を集めて一括して通信することで通信費を削減したり、管理のしやすさといった運用上の利点から、圃場もしくは利用者の自宅に設置してよい。もしくはネットワーク140としてセルラー通信や衛星通信等を使う場合、中継機150は通信業者の基地局にあってもよい。中継機150を実現する機材は、小型のコンピューター、パソコン、ゲートウェイ、ルーター等であってもよい。
【0024】
ネットワーク160は少なくともインターネットに接続できるネットワークであり、中継機150、サーバー170、ユーザー端末180がネットワーク160を利用して通信を行う。
【0025】
サーバー170はセンサ端末130で計測され中継機150から送られた計測値やユーザー端末180から送られた設定値を受信し、防霜ファンの動作の判定やアラート送信判定等を行う。サーバー170を実現する機材は、AWSやGCPなどのクラウドサービスやオンプレミスのサーバーを利用してもよく、さらに利用者の自宅等に設置されたパソコン等を用いてもよい。利用者の自宅等に中継機150とサーバー170を設置した場合は、通信費の削減のためにネットワーク160は、ハブ等で構成されたイントラネットであってもよい。
【0026】
ユーザー端末180は、監視のための温度設定を行ったり、センサ端末130から得られた各種環境の計測値を表示したり、センサ端末130自身の状態を確認したり、防霜ファン110の動作判定結果や、アラートを受け取ったりするために用いられ、携帯電話、スマートフォン、利用者の自宅等にあるパソコンであってもよい。また、ユーザー端末180はセンサ端末130と無線や有線で接続し、センサの名前、位置、各種設定値をインターネットを用いずに圃場等で簡易に設定できるようにするため、BLE、WIFI、LoRaなどの無線やUSBケーブル等を用いた有線で接続してもよい。
【0027】
図3は、本実施の形態に係る動作監視システムの機能ブロック図である。
【0028】
本システムの機能は、大きく3つの機能ブロックに分けられ、防霜ファンの動作状態や環境情報を計測するセンサ端末部230、動作状態やアラート送信の必要性の判定や、これら判定のための学習済みモデルを学習する判定サーバー部270、ユーザに防霜ファンや圃場の状態を表示したりアラート通知のための設定値を設定したり、アラートを受け取ることができるユーザー端末部280から構成される。
【0029】
センサ端末部230は防霜ファンの支柱220から得られた振動を計測する振動センサ231と温度センサ232を有し計測値を送信する計測値送信部233で構成される。振動センサ231は加速度センサ、速度センサー、変位センサであってもよい。センサ端末部230に含まれるセンサは霜の発生の検知や予測のために、湿度センサや風速センサを含んでもよいし、防霜ファンの稼働状態や圃場の状態を確認したり予測したりするために音声センサなどその他のセンサを含んでもよい。またコスト削減のために、振動センサ231以外のセンサがない構成であってもよい。
【0030】
判定サーバー部270は防霜ファンの動作を判定する学習済みモデル271aを有する動作判定部271と学習済みモデル271aを作成する動作判定モデル学習部272と防霜ファンの動作状態をユーザに伝える必要があるかどうかを判定するアラート送信判定部273から構成される。
【0031】
動作判定部271と動作判定モデル学習部272は計測値に対する前処理として、階差系列を求めたり、一定時間前の平均値との差分を計算したり、正規化を行なったりする処理を含んでもよい。
【0032】
動作判定モデル学習部272は防霜ファンの動作状態が分かっている状態で得られた計測値を使って自動的に学習用のデータセットを作成する処理や、学習済みモデル271aを利用して動作推定結果が信頼できる確率値となった計測値を選ぶことで、防霜ファンの動作状態を推定し、その推定結果の計測値を学習用のデータセットとして作成する処理や、最適な機械学習や深層学習などのモデルを選択する処理や、学習済みモデル271aの精度が向上したかを確認する処理や、精度向上が確認された後に、動作判定部271で使われている学習済みモデル271aを自動で置き換える処理を含んでもよい。
【0033】
アラート送信判定部273は、センサ端末部230から送信された測定値やユーザー端末部280から送信された設定値を元にユーザーに防霜ファンの状態をアラート通知するかどうかを判定する処理であるが、センサ端末230からの測定値だけでアラートを通知するかどうか判定する処理を含めてもよいし、計測値と設定値を利用せずに外部のシステムから取得した霜注意報などの情報だけでアラートを判定する処理を含めてもよいし、測定値、設定値、外部システムからの情報を利用し機械学習や深層学習モデル等を用いてアラートの通知を行うかどうかを判定してもよい。アラートは、計測値などから判定された現在の状態から判定されてもよいし、現在の状態から判定された今後の予想状態から判定されてもよい。
【0034】
ユーザー端末部280はユーザインターフェイス281と設定値送信部282等から構成される。
【0035】
ユーザーインターフェイス281は、判定サーバー部270で判定された結果やセンサ端末部230で計測された計測値を表示してもよいし、アラート判定のための設定温度や動作状態等の設定や、センサ端末部230のための各種設定等を設定できるようにしてよい。振動センサ231に対する検知感度の設定や異常値の設定をできるようにしてもよいし、他センサに対する各種設定値を設定してもよい。各種設定値は動作状態の判定やアラート送信判定や予測等に利用してもよい。
【0036】
設定値送信部282は、ユーザーインターフェイス281と判定サーバー部270やセンサ端末部230への設定値の送信や判定結果や計測値の受信等の通信を行う。
【0037】
ネットワーク208は、センサ端末部230、判定サーバー部270、ユーザー端末部280間を相互に通信するネットーワークであり、センサ端末部230と判定サーバー部270間の通信、ユーザー端末部280と判定サーバー部270間の通信に利用される。また、センサ端末部230とユーザー端末280間の通信に利用してもよく、センサ端末部230の設置位置を変更する際などに、設置場所や名前、計測モード等の設定変更を圃場や自宅等でセンサ端末部230に対して簡単にできるようにするために、センサ端末部230にユーザ端末部280からネットワーク208を経由して接続して、センサの各種設定を変更できるようにしてもよい。この場合のネットワーク208はUSBなどの有線やBLE、WIFI、3G、4G、LTEなど無線による通信を行えるネットワークを利用してもよい。あるいは、センサ端末部230とユーザー端末部280が直接通信を行わず、ユーザー端末部280が設定した設定値を判定サーバー部270に保存して、判定サーバー部270からセンサ端末部230に設定値を変更するためのネットワークであってもよい。またネットワーク208には複数の中継機が含まれてもよい。
【0038】
図4は、本実施の形態に係る動作監視システムのフローチャートである。
【0039】
本システムで実施される処理フローには、少なくとも3つの処理フローがあり、それらは学習済みモデル271aの学習を行うモデル学習処理フロー、防霜ファンの動作状態を判定する動作判定処理フロー、ユーザにアラートを通知するかどうかを判定するアラート送信判定処理フローである。また、他の処理フローがあってもよく、センサ端末部230で計測された計測値や判定サーバー部270で判定された結果をユーザー端末部280に表示する処理フローがあってもよいし、ユーザー端末部280の設定値を判定サーバー部270やセンサ端末部230に送信する処理フローがあってもよいし、判定サーバー部270にて、霜の発生を予測したり、防霜ファンの故障を予想する処理フローがあってもよい。
【0040】
モデル学習処理フローでは、振動計測値を入力とし、防霜ファンの動作状態を判定できる学習済みモデルが出力として作成される。
【0041】
防霜ファンの動作状態とは、ファンの回転と首振りの動作状態の有無でそれぞれ動作中と停止中を表現するが、首振り機構部013のない防霜ファンにおいてはファンの回転の有無だけで定義されてもよい。ファンがモーターにより回転している状態は動作中、モーターが停止してファンが停止している状態は停止中と定義されるが、ファンが風により逆回転している状態も停止中と定義してよいし、風によるファンの逆回転状態や異常振動状態や故障予兆状態など、さらに細かい動作状態の区分や表現を用いてもよい。
【0042】
振動計測331aは、防霜ファンの振動を振動センサ231で計測する処理である。モデル学習のための振動計測331aは、防霜ファンがどのような動作状態なのか、わかっている状態で振動を計測する処理である。この時に少なくとも3つの動作状態での振動計測値を用いる。一つ目の動作状態はファンの回転と首振りの両方が停止中の動作状態であり、二つ目の動作状態は、ファンの回転が動作中で首振りが停止中の動作状態であり、三つ目の動作状態は、ファンの回転と首振りの両方が動作中の動作状態の場合の動作状態である。この際、防霜ファンが風によって逆回転している場合であっても、ファンの回転と首振りの両方が停止中の動作状態と定義して振動の計測を行なうことで、停止中の動作状態の判定精度を向上させることができる。計測の方法としては、防霜ファンの支柱020の下部にセンサ端末030を取り付けて、実際の状態を目視やカメラによって防霜ファンの動作を確認しながら計測された振動の計測値を用いてもよいし、温度センサ232の計測値を用いて防霜ファンが停止中であることが明らかな状態の計測値を利用してもよい。首振りのみが停止しファンが回転している状態を実際の防霜ファンで再現したり計測したりすることは困難であり、多くのコストもかかるため、ファンの回転と首振りの動作の学習用に計測する対象のファンは実際の防霜ファンである必要はなく、家庭用の扇風機にセンサ端末230を設置して計測してもよい。計測時間は、防霜ファンの首振りの一往復にかかる時間の半分の時間以上の期間に任意の周波数で計測した計測値を利用すればよく、常時、連続的に計測しても、一定期間の連続的な計測を1時間に4回行うなど断続的に計測してもよい。
【0043】
計測値送信333aは、振動の計測値を動作判定モデル学習部272に送信する処理である。通信手段として、USBなどの有線やBLE、WIFI、LoRa、3G、4G、LTE、などの無線を用いてもよく、中継機150としてパソコンやゲートウェイ、ルーターなどを利用してもよい。一定温度以上の場合に防霜ファンが停止していることが明らかな場合は、温度の計測値を送信して次のモデル学習372で利用してもよい。
【0044】
モデル学習372は、動作判定モデル学習部272に振動の計測値を入力し、学習済みモデル271aを作成する処理である。モデルの学習に利用できる場合は温度等の計測値を入力に含めてもよい。学習に利用する振動の計測値は、単一もしくは複数の防霜ファンや家庭用の扇風機から収集した振動の計測値を用いて、汎用的に利用する学習済みモデル271aを作成してもよいし、防霜ファン毎に得られた振動の計測値を用いて、各防霜ファンのための学習済みモデル271aを複数作成してもよいし、防霜ファンの種類毎に計測した測定値を用いて、防霜ファンの種類毎に学習済みモデル271aを作成してもよい。計測値に対しては精度向上のために階差系列化や一定期間前の平均値を計測値から引く処理や、正規化などの前処理を行ってもよい。モデルには機械学習や深層学習のモデルを用い、LGBM、Multi Head Attention、TimeSeriesForest、Conv1D、BatchNormalization、GlobalAveragePooling1Dなどを用いてもよいし、これらの処理に限定されずその他の処理やアルゴリズムを利用してもよい。
【0045】
動作判定処理フローでは、振動計測値を入力し、モデル学習処理で作成した学習済みモデル271aを用いて判定された防霜ファンの動作状態が出力される。
【0046】
振動計測331bは、防霜ファンの振動を振動センサ231で計測する処理である。
【0047】
計測値送信333bは、振動の計測値を動作判定モデル学習部272に送信する処理である。通信手段として、USBなどの有線やBLE、WIFI、LoRa、3G、4G、LTEなどの無線を用いてもよく、中継機150としてパソコンやゲートウェイ、ルーターなどを利用してもよい。
【0048】
動作判定371は、計測値を学習済みモデル271aに入力し動作判定結果を出力する処理である。出力された動作判定結果は、判定サーバー部270に含まれるデータベースに保存されてもよいし、ユーザー端末部280に送信してもよいし、アラート送信判定部273に送信してもよい。
【0049】
アラート送信判定処理フローでは、ユーザー端末部280で設定された設定値とセンサ端末部230で計測された計測値を入力し、ユーザーに防霜ファンの動作状況についてのアラートを送信するかどうかの判定結果が出力される。
【0050】
温度計測332は、センサ端末部230の温度センサ232で温度を計測する処理である。温度センサ232の設置位置はセンサ端末130の内部に設置してもよいが、茶株面の正確な温度を取得するため、防水機能のある温度センサーケーブルによってセンサ端末130の外部に温度センサ232を露出させ、計測する高さを調整できる構成にしてもよい。
【0051】
計測値送信333cは、温度の計測値をアラート送信判定373に送信する処理である。通信手段として、USBなどの有線やBLE、WIFI、LoRa、3G、4G、LTEなどの無線を用いてもよく、中継機150としてパソコンやゲートウェイ、ルーターなどを利用してもよい。
【0052】
温度設定381は、ユーザー端末部280にてユーザがアラート通知を受けたい温度条件や防霜ファンの動作条件を指定する処理である。設定された温度以下の温度が計測された場合にアラートが届くように設定してもよいし、温度と防霜ファンの動作状態の両方を設定してアラートが届くように設定してもよい。例えば、設定温度として2℃以下に設定し、設定動作として首振りとファンの回転のいずれかが停止中の場合にアラートを送信する設定が可能な場合に、実際の計測温度が2℃以下で首振りもしくはファンの回転が停止している場合にアラートが届くようになる。また単純のために設定できる項目は温度だけにして、設定された温度以下の値が計測されたときに停止状態の動作があればアラートが届くように設定可能となっていてもよい。また温度や防霜ファンの動作条件を設定するだけでなく、ユーザーが各種センサーの測定値や設定値、あるいは外部のシステムからの情報を取捨選択してオリジナルの判定式を作れるように設定可能となっていてもよい。
【0053】
設定値送信382は、温度や動作の設定値をアラート送信判定部273に送信する処理である。通信手段として、BLE、WIFI、LoRa、3G、4G、LTEなどの無線を用いてもよく、中継機150にはパソコンやゲートウェイ、ルーターなどを利用してもよい。
【0054】
アラート送信判定373は、温度の計測値と温度や動作状態の設定値と動作判定処理の判定結果を入力とし、アラートをユーザー端末部280に送信するかどうかの判定結果を出力する判定する判定サーバー部270における処理である。例えば、計測値が設定値以下で、停止している動作が一つでもあればアラートを送信する設定が可能な場合において、設定温度が2℃であり、実際の温度の計測値が1℃であり、動作判定処理の判定結果が、首振り動作が停止中と判定した場合、アラートを送信すると判定される処理が行われる。判定結果からアラートを送信する際は、ユーザー端末部280に対してアラートが表示されるようにしてもよいし、あらかじめ設定されたメールアドレスにメールが送られたり、電話がかかるようにしてもよい。判定の条件は計測値と設定値に基づいて行われるだけではなく、数時間後の温度や霜の発生を予測してアラートを送信すると判定してもよいし、動作判定結果を用いずに外部のシステムからの情報やユーザーが設定した判定式によりアラートを送信するかどうかを判定してもよい。
【0055】
図5は、本実施の形態に係る動作監視システムのユーザがアラートを設定するための設定画面である。
【0056】
ユーザー端末部280がスマートフォンの場合のアラート設定画面481aを示しているが、本画面はウェブサイトであってもよい。また本画面では、アラート発生させる設定温度を指定できる入力ボックスと設定動作を指定できるスイッチボタンによりアラート送信判定の判定式を定義することが可能な画面を示しているが、これ以外の方法であってもよい。
【0057】
図6は、本実施の形態に係る動作監視システムのアラート通知画面である。
【0058】
ユーザー端末部280がスマートフォンの場合のアラート通知画面481bを示しているが、本通知画面はウェブサイトであってもよいし、スマートフォンが苦手なユーザにはメールもしくは電話でアラートの通知が送られてもよい。アラートの内容としては、アラートが発生している圃場、アラート送信時に計測された温度の測定値が表示される。詳細のリンクをクリックすると地図上でアラートが送信された防霜ファンが表示されることで確認が必要な防霜ファンの位置を簡単に知ることができる。
【0059】
このように、想定外の動作をユーザが設定しておくことで、ユーザは普段から安心して過ごせるようにし、防霜ファンの見回り作業を省力化することができる。アラートが通知された際には、防霜ファンの想定外の動作にいち早く気づくことができ、必要な時だけ圃場に駆けつけて対策することができる。
【符号の説明】
【0060】
011 ファン部
012 モーター部
013 首振り機構部
020 支柱
030 センサ端末
110 防霜ファン
120 支柱
130 センサ端末
140 ネットワーク
150 中継機
160 ネットワーク
170 サーバー
180 ユーザー端末
220 支柱
230 センサ端末部
231 振動センサ
232 温度センサ
233 計測値送信部
208 ネットワーク
270 判定サーバー部
271 動作判定部
271a 学習済みモデル
272 動作判定モデル学習部
273 アラート送信判定部
280 ユーザー端末部
281 ユーザーインターフェイス
282 設定値送信部
331a 振動計測
333a 計測値送信
372 モデル学習
331b 振動計測
333b 計測値送信
371 動作判定
332 温度計測
333c 計測値送信
381 温度設定
382 設定値送信
373 アラート送信判定
481a アラート設定画面
481b アラート通知画面
【要約】
【課題】防霜ファンの動作を見回りにより確認していたが大変な作業であり、省力化し低コストで動作状態を確認できる手段を提供する。
【解決手段】振動センサのみを防霜ファンの支柱下部に設置してファンの回転と首振り動作の有無に関する動作状態を遠隔で確認でき、温度や防霜ファンの動作状態からアラートを送信する設定が可能な防霜ファンの動作監視システム。また防霜ファンの動作状態を推定する学習済みモデルは、首振りとファンの回転が動作中の状態で計測された振動の計測値と、首振りとファンの回転が停止中の状態で計測された振動の計測値と、首振りが停止中でファンの回転が動作中の状態で計測された振動の計測値によって学習される。
【選択図】
図2