(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】インバータ回路、X線照射装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220221BHJP
H02M 3/335 20060101ALI20220221BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220221BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/335 E
H02M3/28 Q
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2017229973
(22)【出願日】2017-11-30
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(73)【特許権者】
【識別番号】515242467
【氏名又は名称】株式会社ティーアンドエス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】坂部 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 清美
(72)【発明者】
【氏名】横島 伸
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-191965(JP,A)
【文献】特開平06-225531(JP,A)
【文献】特開2008-206247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0049599(US,A1)
【文献】特開2002-315347(JP,A)
【文献】米国特許第06111732(US,A)
【文献】国際公開第2012/073983(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0281444(US,A1)
【文献】特開平11-332251(JP,A)
【文献】特開2012-226924(JP,A)
【文献】特開平01-303068(JP,A)
【文献】特開2003-324956(JP,A)
【文献】特開2002-354659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ回路を構成する複数の半導体スイッチ素子と、
前記ブリッジ回路の出力端に接続された変圧器と、
前記複数の半導体スイッチ素子の少なくとも1個に流れる電流が所定値を超えるか否かを検知可能な電流検知器と、
周期的なパルス信号を送信するパルス生成回路と、
前記電流検知器および前記パルス生成回路に接続され、前記電流検知器の検知信号によって出力信号を反転して前記ブリッジ回路の出力を遮断するフリップフロップ回路と、
前記フリップフロップ回路の出力端子からの信号によってON、OFFが制御される電流バイパススイッチと、
前記電流バイパススイッチ、および前記ブリッジ回路に接続され、前記パルス生成回路からの信号に基づいて前記半導体スイッチ素子を前記ブリッジ回路の対角位置において切替可能なゲート信号生成回路と、
を備え
、
前記パルス生成回路は、前記電流バイパススイッチに接続され、前記電流バイパススイッチとの接続端および基準電位部の間にトランジスタを有し、前記フリップフロップ回路は、前記トランジスタがOFFのときに前記トランジスタのコレクタに印加される制御電源からの電圧によりリセットされる、インバータ回路。
【請求項2】
前記ゲート信号生成回路は複数のフォトカプラを有し、前記電流検知器からの信号に基づいて、前記フォトカプラの発光ダイオードにIGBTのONに必要な電流が供給されるか否かが決定される、請求項1記載のインバータ回路。
【請求項3】
前記ゲート信号生成回路は、前記フォトカプラの動作に基づいて前記複数の半導体スイッチ素子の動作を制御する、請求項2記載のインバータ回路。
【請求項4】
前記フォトカプラは前記電流バイパススイッチと並列接続されている、請求項2又は3記載のインバータ回路。
【請求項5】
前記パルス生成回路は、スイッチングレギュレータICにより構成されている、請求項1乃至4
のいずれかに記載のインバータ回路。
【請求項6】
前記フォトカプラは4個あり、2個ずつ直列接続されている、請求項2乃至
4のいずれかに記載のインバータ回路。
【請求項7】
前記フリップフロップ回路はRSフリップフロップ回路であり、S側入力端子は前記電流検知器に接続され、R側入力端子は前記パルス生成回路に接続され、前記フリップフロップ回路の前記出力端子は、前記電流検知器が所定値を超える電流を検知するとき、前記電流バイパススイッチをONし、前記ゲート信号生成回路への電流を前記電流バイパススイッチによりバイパスし、前記ゲート信号生成回路への信号出力を停止して、前記複数の半導体スイッチ素子をOFFにラッチする、請求項1乃至6
のいずれかに記載のインバータ回路。
【請求項8】
前記変圧器の2次巻線電圧を整流する整流器と、前記整流器の出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、前記出力電圧および予め定められた基準電圧を比較して比較結果を出力する誤差増幅器と、をさらに備え、前記パルス生成回路は、前記誤差増幅器からの出力信号に基づいて変調される、請求項1乃至
7のいずれかに記載のインバータ回路。
【請求項9】
前記電流検知器は、前記変圧器と前記半導体スイッチ素子との間に流れる電流を検知する、請求項1乃至
8のいずれかに記載のインバータ回路。
【請求項10】
変圧器を有するインバータ回路と、
前記変圧器の2次巻線に接続されるX線管と、
を備えるX線照射装置であって、
前記インバータ回路は、請求項1乃至
9のいずれかに記載のインバータ回路である、X線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路およびそれを用いたX線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管などの負荷装置に高電圧を印加する電源回路において、直流電源から交番電流を生成するインバータ回路を用いる方式が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、直流電圧源にまたがって半導体スイッチをフルブリッジ回路に構成し、フルブリッジ回路の交番電流出力側に共振用インダクタンス、共振用コンデンサ及び負荷回路を接続してなる直列共振型ブリッジインバータ回路が開示されている。
【0004】
図5に、特許文献1に開示されたDC-DCコンバータ100の回路構成図を示す。DC-DCコンバータ100は、直流電源101、電圧型ブリッジインバータ102、制御回路117、変圧器107、ブリッジ整流回路114を備える。ブリッジ整流回路114は、負荷装置16に接続されている。
【0005】
電圧型ブリッジインバータ102は、4個のIGBT103A、103B、103C、および103Dを備える。各IGBT103A乃至103Dには、ダイオード104A乃至104Dがそれぞれ並列に接続されている。IGBT103Aと103B、IGBT103Cと103Dは、それぞれこの順に直列接続されている。また、IGBT103Aと103Bの直列接続と、IGBT103Cと103Dの直列接続は、直流電源101に対してそれぞれ並列に接続されている。
【0006】
変圧器107は、電圧型ブリッジインバータ102からの電圧を昇圧し、ブリッジ整流回路114に出力する。変圧器107の1次巻線は電圧型ブリッジインバータ102に接続されており、2次巻線はブリッジ整流回路114に接続されている。
【0007】
ブリッジ整流回路114は、変圧器107の2次巻線からの交番電圧を両波整流し、平滑化する。平滑化された直流電圧は、負荷装置16に印加される。
【0008】
制御回路117は、周期的にパルス信号を出力すると共に、負荷装置16への出力電圧をIGBT103A乃至103Dの動作にフィードバックする回路である。制御回路117からの信号は、信号絶縁回路118A、118B、118C、および118Dを通して各IGBTに供給される。制御回路117からのパルス信号により、IGBT103A、103Dの組と、IGBT103B、103Cの組が、両方ともOFFになっている時間(いわゆるデッドタイム)を介して交互に一定時間ONされる。
【0009】
しかしながら、回路中のLC成分から放出される電流や、負荷装置16からの放電により、過電流がIGBTに流れると、各IGBTおよび周辺の電気回路が破壊される可能性がある。特に、負荷装置16としてX線管を使用する時、X線管の放電により過電流が発生する。そこで、過電流の発生を検知することで過電流からIGBTを保護することができるインバータ回路が必要とされている。
【0010】
特許文献2には、IGBTからなるスイッチング素子に流れる過電流を検出する過電流検出手段と、過電流検出手段から出力された過電流検出信号をラッチするラッチ回路等を有し、ラッチ回路のラッチを周期的に解除する手段を備えた過電流保護装置が開示されている。この過電流保護装置は、過電流検出回路とインバータを構成するブリッジ回路との間にフリップフロップ回路を有している。しかしながら、電流検出回路とフリップフロップ回路の間にオペアンプが介在しているため、過電流の検知からIGBTの保護開始までに遅れが生じる。
この回路では、過電流を検知するとインバータは一旦停止するので、後述するような、IGBTの周期的保護ができない。
【0011】
また、この過電流保護装置の制御回路の出力端には、ゲート回路を構成するAND回路が接続されている。仮にAND素子の後段にフォトカプラを実装する場合、フォトカプラの駆動に十分な電流を確保するための回路が必要となるため、部品点数が多く、回路が複雑である。汎用のPWM用ICはフォトカプラのスイッチングに十分な出力電流を持つものであり、このICの出力電流を直接用いることが回路の小型化の面から望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2003-324956号公報
【文献】特開2002-354659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、過電流の発生を検知すると迅速に過電流から半導体スイッチ素子を保護するインバータ回路を提供することを目的の1つとする。
本発明は、PWM制御されるIGBTの過電流保護として、インバータの動作周期に同期して高速保護でき、かつ過電流がなくなった時に、やはりインバータの動作周期に同期して自動復帰できる周期的保護を行うことを目的とする。
具体的には、PWM制御では周期的に、IGBTをPWM制御で指定されたON時間、例えば20kHzの場合、18usecONさせるが、周期的保護では、IGBT電流がON期間中増加し、例えば10usecで過電流レベルとなったときに、PWM制御で指定されたON時間の途中でもOFFさせ、かつ、このOFF状態を次の周期のONタイミングまで維持し、次の周期のONが始まっても過電流状態が復帰しなければ、再びPWM制御で指定されたON時間の途中でOFFさせ、同様にかつこのOFF状態を次の周期のONタイミングまで維持する。そして、過電流状態がなくなれば、次の周期のONが始まったらIGBTをPWM制御で指定されたON時間18usecだけONさせ、自動復帰させる。
この周期的保護では、過電流になってもインバータは停止せずに、IGBTを過電流保護しながら運転継続し、復帰すれば元の状態の運転に戻ることができる。例えば、X線電源で微小な放電の度にインバータを停止しては不都合なこともあり、その微小な放電の間、IGBTを過電流から保護しながらも運転継続したほうが好都合である。そして、過電流状態が長時間継続した場合には、別途設けるオペアンプなどを使用した低速の過電流保護回路でX線電源をOFFさせるのがよい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るインバータ回路は、ブリッジ回路を構成する複数の半導体スイッチ素子と、ブリッジ回路の出力端に接続された変圧器と、複数の半導体スイッチ素子の少なくとも1個に流れる電流が所定値を超えるか否かを検知可能な電流検知器と、周期的なパルス信号を送信するパルス生成回路と、電流検知器およびパルス生成回路に接続され、電流検知器の検知信号によって出力信号を反転してブリッジ回路の出力を遮断するフリップフロップ回路と、フリップフロップ回路の出力端子からの信号によってON、OFFが制御される電流バイパススイッチと、電流バイパススイッチ、およびブリッジ回路に接続され、パルス生成回路からの信号に基づいて半導体スイッチ素子をブリッジ回路の対角位置において切替可能なゲート信号生成回路と、を備える。
【0015】
また、前記ゲート信号生成回路は複数のフォトカプラを有し、前記電流検知器からの信号に基づいて、前記フォトカプラの発光ダイオードに半導体スイッチをONするのに必要な電流が供給されるか否かが決定されるものとしてもよい。
【0016】
また、前記ゲート信号生成回路は、前記フォトカプラの動作に基づいて前記複数の半導体スイッチ素子の動作を制御するものとしてもよい。
【0017】
また、前記フォトカプラは前記電流バイパススイッチと並列接続されていてもよい。
【0018】
また、前期パルス生成回路は、スイッチングレギュレータICにより構成されていてもよい。
【0019】
また、前記フォトカプラは4個あり、2個ずつ直列接続されていてもよい。
【0020】
また、前記フリップフロップ回路はRSフリップフロップ回路であり、S側入力端子は過電流判別用のNANDゲート51を通して前記電流検知器に接続され、R側入力端子はデットタイム検出用NANDゲート52を通して前記パルス生成回路に接続され、前記フリップフロップ回路の前記出力端子は、前記電流検知器が所定値を超える電流を検知するとき、前記電流バイパススイッチをONし、前記ゲート信号生成回路への信号出力を停止して、前記複数の半導体スイッチ素子をOFFにラッチするものとしてもよい。
過電流判別用のNANDゲート51は、電源電圧15Vの約半分、7.5V以上の入力電圧で出力を「0」にしてフリップフロップ22の出力端Qの出力Qを「1」にする機能であり、過電流レベルの基準電圧を持つコンパレータでもよい。
【0021】
また、前記パルス生成回路は、前記電流バイパススイッチに接続され、前記電流バイパススイッチとの接続端および基準電位部の間にトランジスタを有していてもよい。
【0022】
また、前記フリップフロップ回路は、前記トランジスタがOFFのときに前記トランジスタのコレクタに印加される制御電源からの電圧によりリセットされるものとしてもよい。
【0023】
また、前記変圧器の2次巻線電圧を整流する整流器と、前記整流器の出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、前記出力電圧および予め定められた基準電圧を比較して比較結果を出力する誤差増幅器と、をさらに備え、前記パルス生成回路は、前記誤差増幅器からの出力信号に基づいて変調されるものとしてもよい。
【0024】
また、前記電流検知器は、前記変圧器と前記半導体スイッチ素子との間に流れる電流を検知するものとしてもよい。
【0025】
また、本発明の別の観点に係るX線照射装置は、変圧器を有するインバータ回路と、前記変圧器の2次巻線に接続されるX線管と、を備えるX線照射装置であって、前記インバータ回路は、上述のいずれかのインバータ回路である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、インバータ回路において、過電流の発生を検知すると迅速に過電流から半導体スイッチ素子を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明にかかるインバータ回路の実施の形態を示す回路構成図である。
【
図2】上記インバータ回路が備えるパルス生成回路を構成するICの概略ブロック図である。
【
図3】本発明にかかるインバータ回路の別の実施の形態の一部を示す概略構成図である。
【
図4】上記インバータ回路が備える制御回路が出力するパルス信号と、上記インバータ回路が備える電流検知器によって測定される電流との関係を示す模式的なタイムチャートである。
【
図5】関連技術のインバータ回路を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
●インバータ回路
以下、本発明にかかるインバータ回路の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1に示すように、インバータ回路1は、制御回路2、ブリッジインバータ3、直流電源10、ゲート信号生成回路4、電流検知器5、変圧器6を備える。インバータ回路1は、変圧器6の2次巻線を介して接続される負荷装置7に、高電圧を印加するために、直流電源10から交番電圧を生成する。
【0030】
●制御回路2
制御回路2は、パルス生成回路21、誤差増幅器26、フリップフロップ回路22、電流バイパススイッチの例である第1FET23、電流バイパススイッチの例である第2FET24、および整流器25を有する。
【0031】
パルス生成回路21は、ONおよびOFFを周期的に繰り返すパルス信号を生成し、フリップフロップ回路22に送信する回路である。
図2に示すように、パルス生成回路21は、誤差増幅器26、および後述するトランジスタ213、214と共に1個のICで構成されている。このICは、PWMコントローラICやスイッチングレギュレータ用コントローラICといった名称でICとして市販される汎用のPWM用ICである。このICは、例えばTL494(テキサス・インストゥルメンツ社製)である。また、TL494と同等の構成および機能を有するセカンドソース品であってもよい。
【0032】
図1に示すように、パルス生成回路21は、交互にON信号を送信する2個のパルス生成素子215および216を備える。パルス生成回路21が生成するパルス信号の周波数は、例えば20kHz前後である。負荷装置7に供給される電圧は、パルス生成回路21によりPWM制御(Pulse Width Modulation)される。なお、
図2に示すように、パルス生成素子215および216を1個の構成要素で共通化し、その後段に制御素子27が接続されることで2個の出力部に交互にON信号を送信するように構成してもよい。
【0033】
パルス生成素子215の出力側には、トランジスタ213のベースが接続される。パルス生成素子215の出力信号によりトランジスタ213がONになると、フォトカプラ電流制限抵抗61およびフォトカプラ41、42の発光ダイオードに、IGBT31、34のONに必要な電流が流れる。パルス生成素子215の出力信号が止まり、トランジスタ213がOFFになると、パルス生成回路21の外部との接続端211はプルアップ状態となり、電流は流れなくなり、IGBT31、34はOFFする。
【0034】
パルス生成素子216の出力側には、トランジスタ214のベースが接続される。パルス生成素子216の出力信号によりトランジスタ214がONになると、フォトカプラ電流制限抵抗62およびフォトカプラ43、44の発光ダイオードにIGBT32、33のONに必要な電流が流れる。パルス生成素子216の出力信号が止まり、トランジスタ214がOFFになると、パルス生成回路21の外部との接続端212はプルアップ状態となり、電流は流れなくなり、IGBT32、33はOFFする。
【0035】
このように、パルス生成回路21のICは出力部にトランジスタ213、214を持つため、フォトカプラを直接スイッチングするだけの電流を吸い込むことが可能である。
【0036】
接続端211および212は、トランジスタ213および214のコレクタにそれぞれ直接接続されている。トランジスタ213および214のエミッタ端子は、基準電位部に接続されている。
【0037】
パルス生成素子215がONのとき、トランジスタ213はONになり、トランジスタ213のエミッタおよびコレクタに電流が流れ得る状態になる。パルス生成素子215がOFFのとき、トランジスタ213はOFFになる。同様に、パルス生成素子216がONのとき、トランジスタ214はONになり、トランジスタ214のエミッタおよびコレクタに電流が流れ得る状態になる。パルス生成素子216がOFFのとき、トランジスタ214はOFFになる。
【0038】
なお、本実施の形態においては、このトランジスタ213、214はそれぞれバイポーラトランジスタであるが、FETであってもよい。
【0039】
誤差増幅器26は、負荷装置16に印加される電圧を分圧して生成される検出電圧、および予め定められた基準電圧が印加され、検出電圧および基準電圧を比較する構成要素である。検出電圧は、図示を省略された出力電圧検出回路により、変圧器7の2次巻線電圧を整流する整流器の出力電圧を検出して生成される。誤差増幅器26は、印加される検出電圧および基準電圧を比較し、比較結果に基づく信号を出力する。パルス生成回路21は、誤差増幅器26からの出力信号に基づいてパルス幅を変調し、PWM信号を発生させる。
【0040】
フリップフロップ回路22は、(Q)出力端子225を備えるRS型フリップフロップであり、リセット側(以下「R側」という。)入力端子にNANDゲート52が接続され、セット側(以下「S側」という。)入力端子にNANDゲート51が接続される。NANDゲート52は入力端子221および222を有する。NANDゲート51は、入力端子223および224を有する。R側入力端子は、デッドタイム検出用NANDゲート52を通してパルス生成回路の接続端211、212に接続されている。S側入力端子は、過電流判別用のNANDゲート51を通して整流器25に接続され、整流器25を介して電流検知器5に接続されている。出力端子225は、第1および第2FET23、24それぞれのゲート端子に接続されている。
【0041】
第1および第2FET23、24のドレインは、それぞれ抵抗を介して定電圧源20に接続されている。定電圧源20の電圧は、例えば15Vである。
【0042】
FET23、24のソースは、パルス生成回路21が有するトランジスタ213、214のコレクタにそれぞれ接続されている。言い換えれば、パルス生成回路21は、FET23、24との接続端211、212と基準電位部との間にトランジスタ213、214を有する。FET23、24のドレイン-ソース間に電流が流れるとき、定電圧源20からの電流は、トランジスタ213、214を介して基準電位部に流れ込むことができる。
【0043】
また、FET23、24のドレインおよびソースは、ゲート信号生成回路4が有するフォトカプラの発光ダイオードのアノードおよびカソードにも接続されている。この構成については後述する。
【0044】
●ブリッジインバータ3および直流電源10
ブリッジインバータ3は、複数の半導体スイッチ素子の例である4個のIGBT31、32、33、および34を備える。4個のIGBT31乃至34は、フルブリッジ回路を構成する。すなわち、IGBT31と32、IGBT33と34は、それぞれこの順に直列接続されている。また、IGBT31と32の直列接続、およびIGBT33と34の直列接続は、互いに並列に接続されている。
【0045】
直流電源10は、4個のIGBT31乃至34それぞれのコレクタ-エミッタ間に直流電圧を供給するための電源である。直流電源10は、例えば商用200V交流電源を整流平滑することによって構成されている。ブリッジインバータ3は、フルブリッジ回路であっても、ハーフブリッジ回路であってもよい。
【0046】
●ゲート信号生成回路4
ゲート信号生成回路4は、パルス生成回路21の出力信号およびフリップフロップ回路22の出力信号に基づいて、IGBT31乃至34それぞれのコレクタ-エミッタ間に電流を流すか否かを切替可能な回路である。
【0047】
ゲート信号生成回路4は、第1フォトカプラ41、第2フォトカプラ42、第3フォトカプラ43、および第4フォトカプラ44を有する。すなわち、フォトカプラ41乃至44はIGBT31乃至34と同数配置されている。各フォトカプラ41乃至44は、発光ダイオードと、発光ダイオードからの光を受光して信号を出力する受光素子を有してなる。4個のフォトカプラ41乃至44の動作は、4個のIGBT31乃至34の動作にそれぞれ対応するように構成されている。
【0048】
さらに、フォトカプラ41、42、43、44はその絶縁を利用して制御回路2とインバータ3の間の電気的絶縁を行う役目を持つ。例えば、直流電源はAC200Vを整流して得られた直流電源であり、接地されると、AC200V線の地絡事故となる。一方、制御回路2はX線管の電圧などであり、安全な接地電位を基準として動作しており、このX線管の電圧を検出してそのまま制御回路2に持ち込むと、AC200V線の地絡事故を引き起こしてしまう。フォトカプラ41、42、43、44は、制御回路2とインバータ3間の絶縁を取りながら、ON信号を伝達する。
【0049】
第1および第2フォトカプラ41、42の発光ダイオードは、直列に接続されている。また、第3および第4フォトカプラ43、44の発光ダイオードは、直列に接続されている。
【0050】
また、第1FET23のドレインとソースとの間に、直列接続された第1および第2フォトカプラ41、42の発光ダイオードが接続されている。第2FET24のドレインとソースとの間に、直列接続された第3および第4フォトカプラ43、44の発光ダイオードが接続されている。直列接続されたフォトカプラ41、42は、さらにパルス生成回路21のトランジスタ213と直列接続されている。また、直列接続されたフォトカプラ43、44は、さらにトランジスタ214と直列接続されている。
【0051】
4個のIGBT31乃至34の動作は、4個のフォトカプラ41乃至44の動作に依存するように構成されている。具体的には、直列接続された2個のダイオードは、互いに対角に配置された2個のIGBTの動作に対応している。すなわち、フォトカプラ41、42はIGBT31、34を制御し、フォトカプラ43、44はIGBT32、33を制御する。IGBT31、34は同じタイミングで動作するが互いにエミッタ電圧が異なるために、二つのフォトカプラ41、42を直列配置して同時に駆動している。
図1におけるフォトカプラ41乃至44の並び順と、ゲート信号生成回路4の出力端子OUT1乃至OUT8の並び順は、一致していない。
【0052】
過電流を検知した時、フリップフロップ回路22がセットされ、その出力端Qが「1」になると(「1」がHigh、「0」がLowの電圧に対応する正論理である)、第1FET23がONになり、第1および第2フォトカプラ41、42にはIGBT31、34をONするために必要な電流が流れない。同様に、第2FET24がONになると、第3および第4フォトカプラ43、44にはIGBT32、33をONするために必要な電流が流れない。
【0053】
第1乃至第4フォトカプラ41乃至44の発光ダイオードに流れる電流は、上述の通り、フリップフロップ回路22の出力端Qの出力に依存するとともに、パルス生成回路21の動作にも依存する。フリップフロップ回路22の出力端Qの出力が「1」のとき、ゲート信号生成回路4は、パルス生成回路21の出力信号に応じて、IGBT31乃至34のコレクタ-エミッタ間に電流が流れるか否かを切り替える。第1乃至第4フォトカプラ41乃至44の発光ダイオードに、フォトカプラ内のトランジスタを駆動するのに十分な電流が流れていないとき、パルス生成回路21の出力信号に関わらず、IGBT31乃至34は動作しない。
【0054】
本実施の形態においては、2個のフォトカプラが直列接続され、直列接続された2個のフォトカプラが1個のFETと並列接続されている構成であったが、4個のフォトカプラがそれぞれFETと並列接続されている構成であってもよい。この形態においては、制御回路2がフリップフロップ回路22とゲート信号生成回路4との間に有するFETの総数は、4個である。
【0055】
本発明にかかるインバータ回路1によれば、パルス生成素子215、216に接続された出力トランジスタ213、214のコレクタは、FET23、24のソースと接続されている。したがって、トランジスタ213、214のコレクタは、フォトカプラ41乃至44がバイパスされたときも、フォトカプラ41乃至44に直列に接続される抵抗を介して制御電源20に接続される。すなわち、トランジスタ213、214のコレクタ電圧は、周期的にOFFしたときに高レベルになるので、この高レベルの電圧をフリップフロップ回路22のリセットに用いることができる。NANDゲート52は、トランジスタ213、214がともにオフする時、パルス生成回路21の外部との接続端211,212の電圧が+15Vになる。すなわち、デッドタイムで両方の入力が「1」となるので、NANDゲート52の出力が「0」になり、フリップフロップ回路がリセットされる。
【0056】
本発明にかかるインバータ回路1によれば、パルス生成回路21からフォトカプラ41乃至44の間にAND素子などのロジックICが介在せず、パルス生成回路21とフォトカプラ41乃至44が直接接続されている。したがって、パルス生成回路21の出力電流は、フォトカプラ41乃至44を駆動するのに十分である。すなわち、インバータ回路1によれば、少ない部品点数かつ簡素な構成で、交番電圧を生成することができる。
【0057】
なお、
図3に示すように、第1FET23およびフォトカプラ41、42の発光ダイオードは、パルス生成回路21のトランジスタおよびフリップフロップ回路22に対して直列に接続されていてもよい。この場合、第1FET23への入力はフリップフロップの出力端Qの反転が用いられ、第1FET23は平常時にONになり、過電流検出時にOFFになるようにする。第2FET24およびフォトカプラ43、44のダイオードについても同様である。
【0058】
ただし、
図3の回路では、第1FET23がOFFになった際に、第1FET23のソース側が電気的に浮いてしまう。フリップフロップ回路22をリセットするためにこの第1FET23のソース側の電位を利用しているので、この部位の電位をプルアップするための回路がさらに追加で必要である。
【0059】
また、
図3に示すように第1FET23をフォトカプラ41、42と直列に配置した場合は過電流が生じていない平常動作時でも第1FET23にフォトカプラを流れるのと同じ量の電流が流れる。しかし、
図1に示すように第1FET23とフォトカプラ41、42を並列に配置した場合は、平常動作時は第1FET23に電流が流れず、過電流を検知して第1FET23がONになった時間(後述するように、高々PWMのパルス1個分の時間)だけしか電流が流れないため発熱量が小さく、より小型のFETを採用できる。
【0060】
●変圧器6
変圧器6は、ブリッジインバータ3により生成された交番電圧を昇圧し、負荷装置7へ供給する。変圧器6の1次巻線の一端は、コンデンサおよびコイルを介してIGBT31のソースとIGBT32のドレインとの間に接続されている。1次巻線の他端は、IGBT33のドレインとIGBT34のソースとの間に接続されている。変圧器6の2次巻線は、負荷装置7に接続されている。変圧器6の2次巻線側の電圧は、例えば40kV乃至150kV程度である。ただし、変圧器6の電圧はこれに限られず、200kV乃至400kV程度や、さらに高い出力の変圧器6であってもよい。
【0061】
●電流検知器5
電流検知器5は、IGBT31乃至34に流れる電流が所定値を超えるか否かを検知する。電流検知器5は、例えば変流器である。電流検知器5は、変圧器6の1次巻線と、IGBT33およびIGBT34との間の電流を測定する。なお、電流検知器5は、抵抗値が低く、耐電力が高い、既知の抵抗器を直列に挿入して、その両端の電圧を読み取る方式であってもよい。
【0062】
電流検知器5の出力信号はIGBT電流に比例し、かつ縮尺された交番電流であり、制御回路2内の整流器25を介して、電流検出抵抗53に流れ、電流検出抵抗53の両端にIGBT電流に比例した検出電圧を発生する。この検出電圧は、NANDゲート51の短絡された入力端子224、223に接続される。電流検出抵抗53の値を適当に選定することで、IGBTの過電流レベルで、7.5Vの電圧を発生させ、フリップフロップ22の出力Qが「1」になる。整流器25は、例えばブリッジダイオードである。
【0063】
●負荷装置7
負荷装置7は、例えばX線管である。インバータ回路1、およびインバータ回路1が備える変圧器6の2次巻線に接続されたX線管は、X線照射装置を構成する。インバータ回路1は、X線管の陽極-陰極間に高電圧を印加する。なお、本発明にかかるX線照射装置は、据え置き型および携帯型のものを含む。
【0064】
●パルス生成回路21からの出力信号とIGBTの動作説明
図4に、パルス生成素子215の出力信号と、IGBT31乃至34のうち対角に配置された2個のIGBTの動作の様子を示す。
図4において、上段の波形はパルス生成素子215の出力波形を、下段はインバータ電流波形を示す。また、時間t1から時間t3までは、パルス生成素子215とインバータ電流の周期的な変化を示している。
【0065】
時間t1において、パルス生成素子215からON信号が出力されると、フリップフロップ回路22のR側入力端子にON信号が入力される。電流検知器5が所定値を超える電流、すなわち過電流を検知していない場合、フリップフロップ回路22のS側入力端子への入力信号はOFFになる。したがって、出力端子225から出力される信号は0であり、FET23、24はOFFである。したがって、定電圧源20から、第1乃至第4フォトカプラ41乃至44の各発光ダイオードに電圧が印加され得る状態になる。
【0066】
このとき、パルス生成素子215からのON信号は、トランジスタ213をONにする。したがって、定電圧源20からフォトカプラ41および42の各発光ダイオードにフォトカプラ内のトランジスタを駆動するのに十分な電流が流れる。そして、ゲート信号生成回路4は、IGBT31および34のゲートに信号を出力する。すなわち、IGBT31および34はONになる。なおこのとき、パルス生成素子215に対して交番的に動作するパルス生成素子216はOFFであるから、IGBT32および33はOFFである。
【0067】
時間t2に示す通り、上述の状態において、パルス生成素子215からOFF信号が出力されると、フリップフロップ回路22のR側入力端子にOFF信号が入力される。電流検知器5が過電流を検知していない場合、フリップフロップ回路22のS側入力端子への入力信号はOFFである。このとき、フリップフロップ回路22は「保持」状態となるので、出力端子225から出力される信号は0である。第1および第2FET23、24はOFFであるから、第1乃至第4フォトカプラ41乃至44の各ダイオードに電圧が印加され得る状態になる。しかし、パルス生成回路21のトランジスタ213はOFFのため、フォトカプラ41、42の発光ダイオードにはフォトカプラ内のトランジスタを駆動するのに十分な電流が流れず、ゲート信号生成回路4は、IGBT31乃至34のゲートに信号を出力しない。
【0068】
パルス生成素子215からOFF信号が出力されているタイミングで、パルス生成素子216からON信号が出力される。電流検知器5が過電流を検知していない場合は、パルス生成素子215の動作と同様、定電圧源20から、第1乃至第4フォトカプラ41乃至44の各ダイオードに電圧が印加され得る状態になる。この場合、パルス生成素子216のトランジスタ214はONであるから、ゲート信号生成回路4のフォトカプラ43、44にフォトカプラ内のトランジスタを駆動するのに十分な電流が流れて発光し、IGBT32、33はONになる。
【0069】
パルス生成回路21は、パルス生成素子215と216が交互にONとOFFを繰り返す。電流検知器5が過電流を検知しないときは、パルス生成回路21からの周期的なパルス信号に応じてIGBT31乃至34が周期的に動作し、インバータ電流を生成する。
【0070】
時間t3において、再びパルス生成素子215からON信号が出力される。時間t4のように、電流検知器5が過電流を検知すると、フリップフロップ回路22のS側入力端子への入力信号がONになり、出力端子225から出力される信号が1になる。第1および第2FET23、24のゲート端子に電圧が印加され、第1および第2FET23、24がONになる。
【0071】
したがって、定電圧源20からの電流は、フォトカプラ41乃至44に流れることなくトランジスタ213、214を介して基準電位部へ流れる。このとき、IGBT31、34の動作は停止するため、時間t5に示されている通り、インバータ電流の生成は停止する。
【0072】
過電流が流れなくなると、フリップフロップ回路22のS側入力端子への入力は0になる。時間t5からt6までの間、パルス生成素子215の出力はONであるが、フリップフロップ回路22は「保持」状態なので、出力端子225の出力は1のままであり、インバータ電流がストップされた状態が継続する。時間t6において、パルス生成素子215の出力がOFFになると、フリップフロップ回路22のR側入力端子への入力は1となり、出力端子225の出力は0になる。すなわち、平常時の状態に戻る。したがって、インバータ回路1は、時間t7に示されている通り、過電流が流れなくなった後における最初のON信号がパルス生成素子215から供給された時点から、再び交番電圧の生成を開始する。
【0073】
ここでは、パルス生成素子215からON信号が出力されているときに過電流が検知された場合を例に説明したが、パルス生成素子216からON信号が出力されているときも同様である。
【0074】
過電流は、インバータ回路1が有するLC成分に蓄積されたエネルギーの放出や、負荷装置7からの放電などにより発生することが予想される。すなわち、過電流が発生している時間はごく短時間である。したがって、過電流が発生したときには直ちにIGBT31乃至34を絶縁し、かつ、過電流がおさまったときには直ちに交番電圧の生成動作に復帰できることが望ましい。
【0075】
本発明にかかるインバータ回路1によれば、汎用のPWM用ICであるパルス生成回路21の出力電流をフォトカプラ41乃至44の駆動に用いつつ、過電流保護機能をICの周辺回路として実装することができる。
【0076】
また、電流検知器5の出力は、オペアンプなど何の能動素子を介することなくフリップフロップ回路22のS側入力端子に入力されているので、フリップフロップ回路22は、過電流の発生時に迅速に応答し、IGBT31乃至34の動作を停止させることができる。また、過電流が流れなくなった後における最初のON信号から交番電圧の生成を開始することができるため、正常動作への復帰も迅速である。
【0077】
パルス生成回路21は、全てのIGBT31乃至34が休止する休止時間を有するように構成されている。この構成によれば、R側入力端子への入力信号が1のときに、S側入力端子への入力信号が1になる可能性を低くすることができる。すなわち、この構成は、フリップフロップ回路22が不定状態になる可能性を軽減する。
【0078】
なお、本発明を説明するに当たり、負荷装置としてX線管を用いるX線照射装置を想定して説明したが、本発明の技術思想は、X線照射装置に限らず、過電流が発生し得るあらゆる装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 インバータ回路
21 パルス生成回路
22 フリップフロップ回路
23 第1FET
24 第2FET
31 IGBT(半導体スイッチ素子)
32 IGBT(半導体スイッチ素子)
33 IGBT(半導体スイッチ素子)
34 IGBT(半導体スイッチ素子)
4 ゲート信号生成回路
5 電流検知器