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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】歩行支援装具
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20220221BHJP
   A41D 13/12 20060101ALI20220221BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220221BHJP
   A41C 1/00 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
A61H3/00 B
A41D13/12 136
A41D13/05 125
A41D13/05 136
A41D13/05 118
A41C1/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021133952
(22)【出願日】2021-08-19
【審査請求日】2021-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521367499
【氏名又は名称】アイディアホーム九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】柳 正弘
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0448514(KR,Y1)
【文献】実開昭63-056207(JP,U)
【文献】実公昭13-010752(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3134594(JP,U)
【文献】特開平09-302504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
A41D 13/12
A41D 13/05
A41C 1/00
A61F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腰部に着脱可能に巻き付けられて、左後部に左ベルト通し部が設けられるとともに、右後部に右ベルト通し部が設けられた腰部ベルトと、
着用者の左臀部と左太股との付け根に当たり左太股部に巻き付けられて、左大臀筋を持ち上げる左臀部ベルトと、
着用者の右臀部と右太股との付け根に当たり右太股部に巻き付けられて、右大臀筋を持ち上げる右臀部ベルトと、
着用者の胸部に着脱可能に巻き付けられる胸部ベルトと、
上記左臀部ベルトに下端部が連結されて、上記腰部ベルトの左ベルト通し部を通過して、着用者の背中の左側部から左肩の上を回って上記胸部ベルトの左前部分に、上端部が連結される左肩吊りベルトと、
上記右臀部ベルトに下端部が連結されて、上記腰部ベルトの右ベルト通し部を通過して、着用者の背中の右側部から右肩の上を回って上記胸部ベルトの右前部分に、上端部が連結される右肩吊りベルトと、
上記左肩吊りベルトの長さを調整する左ベルト長さ調整手段と、
上記右肩吊りベルトの長さを調整する右ベルト長さ調整手段と、
着用者の下腹部のみを被覆する前身頃とを備え、
該前身頃の上縁部には、上記腰部ベルトが連結され、
上記前身頃の左下縁部には、上記左臀部ベルトが連結され、
上記前身頃の右下縁部には、上記右臀部ベルトが連結され、
上記胸部ベルトの前中央部と上記腰部ベルトの前中央部とは、腹部ベルトにより連結された歩行支援装具。
【請求項2】
上記左臀部ベルトおよび上記右臀部ベルトには合成樹脂製または金属製のワイヤを配置した請求項1に記載の歩行支援装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は歩行支援装具、詳しくは装具着用者の臀部をベルトにより上方に向かって持ち上げることで、着用者の歩行能力を高めてその歩行を支援する歩行支援装具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、肥満や高齢により臀部が垂れ下がることがある。その場合、足を前後に動かして歩行するときに、垂れた臀部が邪魔になって歩行障害が生じていた。
そこで、これを解消する従来技術として、例えば特許文献1に記載の「パンティーガードル」などが知られている。
これは、横方向に伸縮性がある布地製のパンツ本体の裏面に、左右の腰部から内転筋に沿って前面の股下に至るように設けた補強弾性帯Xと、腹部中央を頂点として、背面で大殿筋を持ち上げるように設けた補強弾性帯Yとを備え、これらの補強弾性帯X,Yを、股関節の位置で重なり合うようにしたものである。
【0003】
これを装着して歩行すれば、補強弾性体Yによって、腹部中央を頂点として着用者の背面で大殿筋が持ち上げられる。その結果、臀部の垂れが抑制されて歩行が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-188213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、補強弾性体Yにより着用者の背面で、腹部中央を頂点として大殿筋を持ち上げる機能を有しているものの、着用者の下半身に装着する下着にすぎない。そのため、臀部の持ち上げ力は弱く、特に着用者が肥満症の場合には、十分とは言えなかった。
また、大臀筋の歩行し易い持ち上げ高さには個人差があるが、特許文献1に記載のものには、その対策が講じられていなかった。
さらに、一般的に人間の臀部は左右で大きさ(重さ)が異なっている。そのため、垂れた臀部を持ち上げる際には、この点も考慮する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のものでは、この左臀部,右臀部の大きさの違いについての対策もされていなかった。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、長さ調整可能な左肩吊りベルトおよび右肩吊りベルトによって、着用者の左右の大臀筋を個別に持ち上げるように構成すれば、上述した課題は全て解消されることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
すなわち、この発明は、着用者の左右の臀部の大きさに応じて、垂れ下がった左右の大臀筋を歩行し易い高さまで持ち上げて、着用者の歩行能力を高めることが可能な歩行支援装具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、着用者の腰部に着脱可能に巻き付けられて、左後部に左ベルト通し部が設けられるとともに、右後部に右ベルト通し部が設けられた腰部ベルトと、着用者の左臀部と左太股との付け根に当たり左太股部に巻き付けられて、左大臀筋を持ち上げる左臀部ベルトと、着用者の右臀部と右太股との付け根に当たり右太股部に巻き付けられて、右大臀筋を持ち上げる右臀部ベルトと、着用者の胸部に着脱可能に巻き付けられる胸部ベルトと、上記左臀部ベルトに下端部が連結されて、上記腰部ベルトの左ベルト通し部を通過して、着用者の背中の左側部から左肩の上を回って上記胸部ベルトの左前部分に、上端部が連結される左肩吊りベルトと、上記右臀部ベルトに下端部が連結されて、上記腰部ベルトの右ベルト通し部を通過して、着用者の背中の右側部から右肩の上を回って上記胸部ベルトの右前部分に、上端部が連結される右肩吊りベルトと、上記左肩吊りベルトの長さを調整する左ベルト長さ調整手段と、上記右肩吊りベルトの長さを調整する右ベルト長さ調整手段と、着用者の下腹部のみを被覆する前身頃とを備え、該前身頃の上縁部には、上記腰部ベルトが連結され、上記前身頃の左下縁部には、上記左臀部ベルトが連結され、上記前身頃の右下縁部には、上記右臀部ベルトが連結され、上記胸部ベルトの前中央部と上記腰部ベルトの前中央部とは、腹部ベルトにより連結された歩行支援装具である。
【0009】
ここでいう「歩行支援装具」とは、着用者が装着することで、歩行時の障害となる垂れ下がった臀部(大臀筋)を持ち上げることにより、着用者が歩行し易くするものである。
腰部ベルトおよび胸部ベルトの素材は任意である。例えば、各種の布帛(特に織布)、各種の皮革、各種の合成樹脂などでもよい。
【0010】
腰部ベルトは、例えば、伸縮性を有する環状帯でもよい。また、腰部ベルトを1本の平帯とし、その両端部に、着用者の腰部に腰部ベルトを着脱可能とする各種の掛止構造を配設してもよい。掛止構造としては、例えば、各種のバックル、各種の面状ファスナなどを採用することができる。
左ベルト通し部,右ベルト通し部は、例えば、腰部ベルトの左側部,右側部に連結された布製のものでも、腰部ベルトの左側部,右側部に形成された通し穴などでもよい。
【0011】
左臀部ベルト,右臀部ベルトの素材は任意である。例えば、各種の布帛(特に織布)、各種の皮革、各種の合成樹脂、各種の金属などでもよい。
左臀部ベルト,右臀部ベルトは、左肩吊りベルト,右肩吊りベルトを介して、対応する大臀筋を持ち上げることができれば、適度な伸縮性を有するものでもよい。また、左臀部ベルト,右臀部ベルトは、互いに連結状態のものでも、互いに分離状態のものでもよい。さらには、左臀部,右臀部と太腿との付け根に、合成樹脂製または金属製のワイヤを配置して持ち上げてもよい。
【0012】
胸部ベルトの素材は任意である。例えば、各種の布帛(特に織布)、各種の皮革、各種の合成樹脂などでもよい。
胸部ベルトは、例えば伸縮性を有する環状帯でもよい。また、胸部ベルトを1本の平帯とし、その両端部に、着用者の胸部に胸部ベルトを着脱可能とする各種の掛止構造を配設してもよい。掛止構造としては、例えば各種のバックル、各種の面状ファスナなどを採用することができる。
【0013】
左右の肩吊りベルトの素材は任意である。例えば、各種の布帛(特に織布)、各種の皮革、各種の合成樹脂などでもよい。
左肩吊りベルト,右肩吊りベルトの各下端部と、左臀部ベルト,右臀部ベルトとの各連結としては、例えば縫着などによる固定を採用することができる。または、各種の掛止部材による掛止でもよい。
【0014】
左肩吊りベルト,右肩吊りベルトの各上端部と胸部ベルトとの各連結としては、例えば吊りカン、バックル、面状ファスナといった各種の掛止部材による掛止を採用してもよい。また、縫着などによる固定でもよい。
これらの腰部ベルト、左臀部ベルト,右臀部ベルト、胸部ベルトおよび左肩吊りベルト,右肩吊りベルトの各サイズ(幅、長さなど)、各形状、各使用本数などは、それぞれのベルトの機能を満たしていれば任意である。
【0015】
左ベルト長さ調整手段,右ベルト長さ調整手段の構造は任意である。例えば各種のアジャスタ(例えば、ベルトアジャスタ、ウエストアジャスタなどを含む)、各種の長さ調整可能なバックル、各種の面状ファスナなどを採用することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、上記左臀部ベルトおよび上記右臀部ベルトには合成樹脂製または金属製のワイヤを配置した請求項1に記載の歩行支援装具である。
【0017】
前身頃の素材は任意である。例えば、各種の布帛(織布、不織布または編布)、各種の皮革(合成皮革、人工皮革)、各種の合成樹脂などでもよい。
前身頃には、着用者の股部を被覆するクロッチ部や、左右一対の脇部をそれぞれ設けてもよい。
【0018】
腹部ベルトの素材は任意である。例えば、各種の布帛、各種の皮革などでもよい。
腹部ベルトのサイズ(幅、長さなど)、形状、伸縮性の有無や使用本数などは、腹部ベルトの機能を満たしていれば任意である。
腰部ベルトは、着用者の腰部に巻き付け可能であれば、前身頃の上縁部の全長にわたって連結(縫着、溶着を含む)してもよく、その一部のみに連結してもよい。
【0019】
胸部ベルトの前中央部と腹部ベルトの上端部との連結や、腰部ベルトの前中央部と腹部ベルトの下端部との連結は、それぞれ掛止部材により着脱可能としてもよく、または縫着などにより固定してもよい。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、着用者が歩行支援装具を着用することで、着用者の左右の大殿筋の下側の位置にそれぞれ当接された左臀部ベルト,右臀部ベルトは、胸部ベルトに上端部が連結されて、途中部が左ベルト通し部,右ベルト通し部に通された左肩吊りベルト,右肩吊りベルトにより、個別に引き上げる。
その際、それぞれ個人差がある左右の臀部の大きさや、着用者の歩行し易い大殿筋の高さ位置に合わせて、左ベルト長さ調整手段,右ベルト長さ調整手段によって、左肩吊りベルト,右肩吊りベルトの長さを各々調整する。これにより、着用者により左右の臀部の大きさに応じて、垂れ下がった左右の大臀筋を歩行し易い高さまで持ち上げて、着用者の歩行能力を高めることができる。
【0021】
また、このとき、左肩吊りベルト,右肩吊りベルトの途中部が、左ベルト通し部,右ベルト通し部にそれぞれ通されるため、左肩吊りベルト,右肩吊りベルトは、着用者の背中に沿ったスムースな引き回しとなるとともに、左肩吊りベルト,右肩吊りベルトによる引き上げ時の両肩への負荷も、腰部ベルトにより分散される。
また、歩行支援装具を着用することで、着用者の下腹部を前身頃により押さえ、ボディラインを整えることができる。
この前身頃付きの歩行支援装具において、左ベルト長さ調整手段,右ベルト長さ調整手段を使用し、着用者の左右の臀部の大きさの違いや、着用者の歩行し易い各大臀筋の高さ位置に合わせて、左肩吊りベルト,右肩吊りベルトの長さを各々調整すれば、左肩吊りベルトと右肩吊りベルトとにテンションの違いが発生する。
これにより、着用者の胸部に巻き付けた胸部ベルトが傾斜し易くなり、この傾きが腹部ベルトを介して前身頃の引き上げに影響を及ぼす。すなわち、左臀部ベルト,右臀部ベルトが下縁部に連結された前身頃の左右部分の吊り上げ力に偏りが生じ、その結果、一方の臀部ベルトが他方より強く引き上げられ、これを原因として着用者が歩行しにくくなるおそれがある。
そこで、ここでは、腹部ベルトの上端部を胸部ベルトの前中央部に連結する一方、腹部ベルトの下端部を腰部ベルトの前中央部に連結している。これにより、仮に胸部ベルトが傾斜しても、前身頃の引き上げ力に左右の偏りは発生しにくくなる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、左臀部ベルトおよび右臀部ベルトにワイヤを配置したため、これらのベルトにより左右の大臀筋をより確実に持ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の実施例1に係る歩行支援装具の使用状態を示すその正面図である。
図2】この発明の実施例1に係る歩行支援装具の使用状態を示すその背面図である。
図3】この発明の実施例1に係る歩行支援装具の使用状態を示すその側面図である。
図4】この発明の実施例1に係る歩行支援装具の一部を構成する前身頃の拡大正面図である。
図5】この発明の実施例1に係る歩行支援装具の一部を構成する脇部の拡大側面図である。
図6】この発明の実施例1に係る歩行支援装具の一部を構成する左臀部ベルト,右臀部ベルトの拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例
【0026】
図1図3に示すように、この発明の実施例1に係る歩行支援装具10は、着用者の下腹部を被覆する前身頃11と、前身頃11の上縁部に連結されて、着用者の腰部に着脱可能に巻き付けられた腰部ベルト12と、前身頃11の左下縁部に連結されて、着用者の左股部に巻き付けた状態で左大臀筋を持ち上げる左臀部ベルト13と、前身頃11の右下縁部に連結されて、着用者の右股部に巻き付けられた状態で右大臀筋を持ち上げる右臀部ベルト14と、着用者の胸部に着脱可能に巻き付けられる胸部ベルト15と、左臀部ベルト13に下端部が連結されて、着用者の背中の左側部から左肩の上を回って胸部ベルト15の左前部分に、上端部が連結される左肩吊りベルト16と、右臀部ベルト14に下端部が連結されて、着用者の背中の右側部から右肩の上を回って胸部ベルト15の右前部分に、上端部が連結される右肩吊りベルト17と、左肩吊りベルト16の長さを調整する左アジャスタ(左ベルト長さ調整手段)18と、右肩吊りベルト17の長さを調整する右アジャスタ(右ベルト長さ調整手段)19と、胸部ベルト15の前中央部と腰部ベルト12の前中央部とを着脱可能に連結する腹部ベルト30とを備えている。
【0027】
以下、これらの構成部品を具体的に説明する。
図1および図4に示すように、前身頃11は大判な下向き略三角形の織布で、その下中央部に、着用者の股部を被覆するクロッチ部20が縫着されている。また、前身頃11の左上側には左脇部21が縫着される一方、前身頃11の右上側には右脇部22が縫着されている。
【0028】
腰部ベルト12は適度な伸縮性を有する織布製の長尺帯で、その長さ方向の中間部分が、前身頃11の上縁部の全長にわたって縫着されている。この腰部ベルト12の長さ方向の中間部の外側には、下ボタン23が縫着されている。また、腰部ベルト12の左後部の表側には、布製の左ベルト通し部24が縫着されている(図5)。一方、腰部ベルト12の右後部の表側には、布製の右ベルト通し部25が縫着されている。
【0029】
図4図6に示すように、左臀部ベルト13は織布製の環状帯で、その長さ方向の中間部が、前身頃11の左下縁部およびクロッチ部20の左縁部の各全長にわたって縫着されている。
一方、右臀部ベルト14も織布製の環状帯で、その長さ方向の中間部が、前身頃11の右下縁部およびクロッチ部20の右縁部の各全長にわたって縫着されている。なお、これら一対の臀部ベルト13,14は、臀部と太ももとの境部分(後方視してお尻の底の位置で太ももとの付け根部分)に当たり、装着されるように、その長さは調整されている。また、例えばベルト自体に弾性力を付加して長さ調整可能な構成とすることができる。
【0030】
図1図3に示すように、胸部ベルト15は織布製の長尺帯である。胸部ベルト15の長さ方向の一端部にはプラスチック製のバックルBのソケットSが連結され、胸部ベルト15の長さ方向の他端部にはバックルBのプラグPが連結されている。プラグPには、胸部ベルト15の長さを調整するアジャスタAが設けられている(図1)。
また、胸部ベルト15には、その左前部分に左ボタン27が縫着されるとともに、その右前部分に右ボタン28が縫着されている。
さらに、胸部ベルト15の左後部分には、左肩吊りベルト16が差し通される左ベルト通し部50が縫着されるとともに、胸部ベルト15の右後部分には、右肩吊りベルト17が差し通される右ベルト通し部51が縫着されている。
【0031】
左肩吊りベルト16は長尺な織布製のもので、その下端部が、腰部ベルト12の左ベルト通し部24と胸部ベルト15の左ベルト通し部50とを各通過して、左臀部ベルト13の長さ方向の中間部(左大臀筋の下中央部との当接部分)に縫着されている(図2図5および図6)。一方、左肩吊りベルト16の上端部には、左肩吊りベルト16の長さを調整する左アジャスタ18が対配置された左吊りカン26が取り付けられている(図1)。この左吊りカン26を、胸部ベルト15の左ボタン27に掛止することで、左肩吊りベルト16が、胸部ベルト15の左前部分に着脱自在に連結される。
【0032】
右肩吊りベルト17は長尺な織布製のもので、その下端部が、腰部ベルト12の右ベルト通し部25と胸部ベルト15の右ベルト通し部51とを各通過して、右臀部ベルト14の長さ方向の中間部(右大臀筋の下中央部との当接部分)に縫着されている(図2図5および図6)。一方、右肩吊りベルト17の上端部には、右肩吊りベルト17の長さを調整する右アジャスタ19が対配置された右吊りカン29が取り付けられている(図1)。この右吊りカン29を、胸部ベルト15の右ボタン28に掛止することで、右肩吊りベルト17が、胸部ベルト15の右前部分に着脱自在に連結される。
【0033】
図1に示すように、腹部ベルト30は縦方向に延びる布製のもので、その上端部が胸部ベルト15の前中央部に縫着されている(図2図5および図6)。一方、腹部ベルト30の下端部には、腹部ベルト30の長さを調整する下アジャスタ31が対配置された下吊りカン32が取り付けられている(図1)。この下吊りカン32を、腰部ベルト12の下ボタン23に掛止することで、腹部ベルト30が、胸部ベルト15と腰部ベルト(前身頃11の上縁部)12との間に、着脱自在に連結される。
【0034】
次に、図1図6を参照して、この発明の実施例1に係る歩行支援装具10の使用方法を説明する。
図4図6に示すように、歩行支援装具10の着用時、着用者は、まず両脚を腰部ベルト12の上部開口から左臀部ベルト13,右臀部ベルト14に差し通して、歩行支援装具10のパンツ状の部分を装着する。これにより、着用者の下腹部が前身頃11により押さえられて、腰部ベルト12が着用者の腰部に巻き付けられるとともに、左臀部ベルト13,右臀部ベルト14が着用者の左右の大殿筋の下側の位置に各当接される。
【0035】
その後、図1図3に示すように、胸部ベルト15を着用者の胸部に巻き付け、そのバックルBのプラグPを胸部の前でソケットSに掛止して、胸部ベルト15を胸部に固定する。このとき、胸部ベルト15の長さが適切でない場合には、プラグPに連結されたアジャスタAを利用して、胸部ベルト15の長さを調整する。
次いで、左肩吊りベルト16を着用者の背中の左側部から左肩の上を通して前方へ引出し、左肩吊りベルト16の下端部の左吊りカン26を、胸部ベルト15の左前部分に配された左ボタン27に掛止する。
【0036】
一方、右肩吊りベルト17を着用者の背中の右側部から左肩の上を通して前方へ引出し、右肩吊りベルト17の下端部の右吊りカン29を、胸部ベルト15の右前部分に配された右ボタン28に掛止する。
その後、腹部ベルト30の下端部の下吊りカン32を、胸部ベルト15の下ボタン23に掛止することで、歩行支援装具10の装着が完了する。
【0037】
歩行支援装具10の着用後は、個人差がある左右の臀部の大きさや、着用者の歩行し易い大殿筋の高さ(位置)に合わせて、着用者の左右の大殿筋の下に当接された左臀部ベルト13,右臀部ベルト14の引き上げ力を、左アジャスタ18,右アジャスタ19により、左肩吊りベルト16,右肩吊りベルト17の長さを各々変更して調整する。
これにより、着用者により左右の臀部の大きさに応じて、垂れ下がった左右の大臀筋が歩行し易い高さまで持ち上げられ、その後の歩行時に着用者の歩行能力を高めることができる。
【0038】
しかも、左肩吊りベルト16,右肩吊りベルト17の途中部は、左ベルト通し部24,右ベルト通し部25にそれぞれ通されている。そのため、左肩吊りベルト16,右肩吊りベルト17は、着用者の背中に沿った上着のシルエットを崩しにくい引き回しとなるとともに、これらの各肩吊りベルト16,17による左右の大殿筋の引き上げ時に生じる両肩への負荷の一部を腰部ベルト15が受ける。その結果、この両肩への負荷は、その分だけ分散して軽減される。
また、歩行支援装具10を着用することで、着用者の下腹部を前身頃11により押さえて、ボディラインを整えることができる。
【0039】
ところで、このような前身頃11付きの歩行支援装具10において、左アジャスタ18,右アジャスタ19を使用し、着用者の左右の臀部の大きさの違いや、着用者の歩行し易い各大殿筋の高さに合わせて、左肩吊りベルト16,右肩吊りベルト17の長さを各々調整すれば、左肩吊りベルト16と右肩吊りベルト17とにテンションの違いが発生する。そのため、着用者の胸部に巻き付けた胸部ベルト15は傾斜し易くなり、この傾きが腹部ベルト30を介して前身頃11の引き上げに影響を及ぼす。
【0040】
すなわち、左臀部ベルト13,右臀部ベルト14が下縁部に連結された前身頃11の左右部分の吊り上げ力には偏りが生じ、その結果、一方の臀部ベルトが他方より強く引き上げられ、これを原因として着用者が歩行しにくくなるおそれがある。
そこで、ここでは、腹部ベルト30の上端部を胸部ベルト15の前中央部に連結する一方、腹部ベルト30の下端部を腰部ベルト12の前中央部に連結している(図1)。これにより、仮に胸部ベルト15が傾斜しても、前身頃11の引き上げ力に左右の偏りは発生しにくくなる。なお、各ベルトは合成繊維による布製、金属ワイヤ入りの布製などとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、着用者の歩行を支援する歩行支援装具として有用な技術である。
【符号の説明】
【0042】
10 歩行支援装具、
11 前身頃、
12 腰部ベルト、
13 左臀部ベルト、
14 右臀部ベルト、
15 胸部ベルト、
16 左肩吊りベルト、
17 右肩吊りベルト、
18 左アジャスタ(左ベルト長さ調整手段)、
19 右アジャスタ(右ベルト長さ調整手段)、
24 左ベルト通し部、
25 右ベルト通し部、
30 腹部ベルト。
【要約】
【課題】着用者の臀部に応じて、垂れ下がった大臀筋を歩行し易い高さまで持ち上げて、着用者の歩行能力を高められる歩行支援装具を提供する。
【解決手段】歩行支援装具10の着用時、着用者の左右の大殿筋の下に当接された左臀部ベルト13,右臀部ベルト14を、左肩吊りベルト16,右肩吊りベルト17により個別に引き上げる。その際、着用者の左右の臀部の大きさに応じ、かつ着用者の歩行し易い各大殿筋の高さに合わせて、左アジャスタ18,右アジャスタ19により、対応する肩吊りベルト16,17の長さを調整する。これにより、着用者の左右の臀部の大きさに応じて、垂れ下がった左右の大臀筋を歩行し易い高さまで持ち上げて、着用者の歩行能力を高めることができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6