(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】引戸の引込み装置
(51)【国際特許分類】
E05F 1/16 20060101AFI20220221BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
E05F1/16 B
E05F5/02 E
(21)【出願番号】P 2017207784
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000155207
【氏名又は名称】株式会社明工
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】山元 則之
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-149438(JP,A)
【文献】特開2006-63767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、ケース内を引戸の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケースに形成されたスライド案内溝に係合する係合突部を有し、且つ上端部が前記ケースから突出状態で設けられ戸枠側に設けられた係合ピンと係脱する関係にあるスライダーと、ピストン先端が前記スライダーに連結された状態で前記ケース内に設けられたピストン式ダンパーと、一端が前記スライダーに係止されるとともに他端が前記ケースに係止され、前記スライダーに引戸の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材とから構成された引戸の引込み装置において、
前記スライダーの上端部であって、前記係合ピンの係合側とは反対側に、引戸の閉操作時に、前記スライダーの上端部に前記係合ピンが衝突した際、前記スライダーの正規の動作範囲以上の回動動作を止めるための回動停止部を備える
とともに、前記回動停止部は側方に突出した板状部材又は側方に突出したブロック状部材によって構成され、前記ケースの上面に衝突することにより、前記スライダーの正規の動作範囲以上の回動動作を停止させるものであることを特徴とする引戸の引込み装置。
【請求項2】
前記スライド案内溝の引戸端部側には、前記スライド案内溝から連続して屈曲状案内溝からなる仮停止部が形成され、
前記スライダーには、引戸の開操作に伴い前記係合ピンに係合して該スライダーを前記スプリング部材の付勢力に抗して引戸端部側に移動させるとともに、スライド案内溝の引戸端部側においてスライダーの係合突部が前記屈曲状案内溝側に案内されることにより該スライダーを揺動させて仮停止状態とし、これに伴い前記係合ピンとの係合が解除される先端側係合片と、引戸の閉操作に伴い前記係合ピンに係合して前記仮停止状態にあるスライダーを揺動動作させ仮停止状態を解除することにより前記先端側係合片と係合ピンとを係合させる基端側係合片とが備えられ、
前記基端側係合片であって、前記係合ピンの係合側とは反対側に、前記回動停止部を設けてある請求項1記載の引戸の引込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の閉操作時に、係合ピンとの衝突による回動動作によって、スライダーの係合突部がスライド案内溝から抜脱するのを防止した引戸の引込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引戸の上端部に固定された吊り車型ランナ装置が戸枠の鴨居に固設されたガイドレールに沿って走行案内される吊戸(吊り引戸)や、引戸の下端部に固定された戸車が戸車用レールに沿って走行案内される引戸では、開き状態から所定の位置まで閉めた後は、閉まり位置まで自動的に引込んで閉止させる引込み装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、
図12に示されるように、ケース50内を引戸の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケース50に形成されたスライド案内溝51aに係合する係合突部52aを有し、且つ上端部が前記ケース50から突出状態で設けられ前記係合ピン55と係脱する関係にあるスライダー52と、ピストン先端が前記スライダー52に連結された状態で前記ケース50内に設けられるピストン式ダンパー53と、一端が前記スライダー52に係止されるとともに他端が前記ケース50に係止され、前記スライダー52に引戸の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材54とから構成され、
前記スライド案内溝51aの引戸端部側には、前記スライド案内溝51aから連続して屈曲状案内溝51bからなる仮停止部Kが形成され、
前記スライダー52には、引戸の開操作に伴い前記係合ピン55に係合して該スライダー52を前記スプリング部材54の付勢力に抗して引戸端部側に移動させるとともに、スライド案内溝51aの引戸端部側においてスライダー52の係合突部52aが前記屈曲状案内溝51b側に案内されることにより該スライダー52を揺動させて仮停止状態とし、これに伴い前記係合ピン55との係合が解除される先端側係合片52bと、引戸の閉操作に伴い前記係合ピン55に係合して前記仮停止状態にあるスライダー52を揺動動作させ仮停止状態を解除することにより前記先端側係合片52bと係合ピン55とを係合させる基端側係合片52cとが備えられ、前記引戸の閉操作時に、前記ピストン式ダンパー53による制動力を受けながら前記スプリング部材54の付勢力により引戸を閉まり位置まで引き込むようにした引込み装置本体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構造の引込み装置の場合は、
図13(A)に示されるように、引戸の閉操作時に、前記スライダー52の基端側係合片52cに係合ピン55が勢いよく衝突すると、
図13(B)に示されるように、軸部材56を回転中心として前記スライダー52が図示で時計回り方向に大きな力で回動し、スライダー52の係合突部52aが上方向に押し上げられる。その際、前記係合突部52aが前記スライド案内溝51aを形成している上方側部材57を上方向に凸状に変形させ、前記スライダー52の係合突部52aが前記スライダー案内溝51aから抜脱するという不具合が発生することがあった。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、引戸の閉操作時に、前記スライダーに係合ピンが勢いよく衝突したとしても、スライダーの係合突部がスライダー案内溝から抜脱するのを防止した引戸の引込み装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、ケースと、ケース内を引戸の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケースに形成されたスライド案内溝に係合する係合突部を有し、且つ上端部が前記ケースから突出状態で設けられ戸枠側に設けられた係合ピンと係脱する関係にあるスライダーと、ピストン先端が前記スライダーに連結された状態で前記ケース内に設けられたピストン式ダンパーと、一端が前記スライダーに係止されるとともに他端が前記ケースに係止され、前記スライダーに引戸の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材とから構成された引戸の引込み装置において、
前記スライダーの上端部であって、前記係合ピンの係合側とは反対側に、引戸の閉操作時に、前記スライダーの上端部に前記係合ピンが衝突した際、前記スライダーの正規の動作範囲以上の回動動作を止めるための回動停止部を備えるとともに、前記回動停止部は側方に突出した板状部材又は側方に突出したブロック状部材によって構成され、前記ケースの上面に衝突することにより、前記スライダーの正規の動作範囲以上の回動動作を停止させるものであることを特徴とする引戸の引込み装置が提供される。
【0008】
上記請求項1記載の発明では、前記スライダーの上端部であって、前記係合ピンの係合側とは反対側に、引戸の閉操作時に、前記スライダーの上端部に前記係合ピンが衝突した際、前記スライダーの正規の動作範囲以上の回動動作を止めるための回動停止部を備えているとともに、前記回動停止部は側方に突出した板状部材又は側方に突出したブロック状部材によって構成され、前記ケースの上面に衝突することにより、前記スライダーの正規の動作範囲以上の回動動作を停止させるものである。
【0009】
従って、引戸の閉操作時に、前記スライダーの基端側係合片に係合ピンが勢いよく衝突して、
図9(B)に示されるように、軸部材を回転中心として前記スライダーが時計回り方向に大きな力で回動し、スライダーの係合突部が上方向に押し上げられた場合であっても、前記スライダーに設けた回動停止部が前記スライダーの正規の動作範囲以上の回動動作を止めるため、前記係合突部がスライド案内溝を形成している上方側部材を変形させることが無くなり、前記スライダーの係合突部が前記スライダー案内溝から抜脱するという不具合が発生するのを防止することができるようになる。
【0010】
請求項2に係る本発明として、前記スライド案内溝の引戸端部側には、前記スライド案内溝から連続して屈曲状案内溝からなる仮停止部が形成され、
前記スライダーには、引戸の開操作に伴い前記係合ピンに係合して該スライダーを前記スプリング部材の付勢力に抗して引戸端部側に移動させるとともに、スライド案内溝の引戸端部側においてスライダーの係合突部が前記屈曲状案内溝側に案内されることにより該スライダーを揺動させて仮停止状態とし、これに伴い前記係合ピンとの係合が解除される先端側係合片と、引戸の閉操作に伴い前記係合ピンに係合して前記仮停止状態にあるスライダーを揺動動作させ仮停止状態を解除することにより前記先端側係合片と係合ピンとを係合させる基端側係合片とが備えられ、
前記基端側係合片であって、前記係合ピンの係合側とは反対側に、前記回動停止部を設けてある請求項1記載の引戸の引込み装置が提供される。
【0011】
上記請求項2記載の発明は、前記スライダーの具体的構造例を示したものである。この場合、前記回転停止部は前記基端側係合片であって、前記係合ピンの係合側とは反対側に設けるようにする。
【発明の効果】
【0012】
以上詳説のとおり本発明によれば、引戸の閉操作時に、スライダーに係合ピンが勢いよく衝突したとしても、スライダーの係合突部がスライダー案内溝から抜脱するのを防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る引込み装置1を備えた引戸2の正面図である。
【
図2】(A)は
図1のII部拡大図であり、(B)はその平面図、(C)は分解図である。
【
図3】引込み装置1を示す、(A)は縦断面図、(B)は上面図である。
【
図6】スライダー15を示す、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図7】スライダー15の背面上方側からの斜視図である。
【
図8】スライダー15の下方側からの斜視図である。
【
図9】(A)~(C)は引込み装置1の作動要領を示す図である。
【
図10】スライダー15に設けた回動停止部材15jの作用を説明するための作動状態図(A)(B)である。
【
図11】第2形態例に係るスライダー15を示す、(A)は上側からの斜視図、(B)は下側からの斜視図である。
【
図13】スライダー作動時の問題点を説明するための要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0015】
〔引込み装置1の構造〕
図1に示される引戸2は、木製の引戸2が鴨居6A、敷居6B及び側枠6C,6Dからなる戸枠6に収容され、前記引戸2の下面に戸車4,4が配設され、鴨居6Aと敷居6Bに案内されながら左右方向に移動可能(開閉可能)となっているものである。
【0016】
前記引戸2の戸先側上端部には、
図2に示されるように、縦溝状の切欠き2aが形成されており、この切欠き2a内に引き込み装置1が設けられているとともに、鴨居6Aに係合ピン10が設けられ、かかる引戸2に開状態からの閉操作が行われると、引込み装置1と係合ピン10とが係合することによって引戸2が閉まり位置まで引き込まれるようになっている。
【0017】
以下、前記引込み装置1及び係合ピン10について詳述する。
【0018】
前記引込み装置1は、
図3に示されるように、ケース12と、ケース12内を引戸2の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケース12に形成されたスライド案内溝13に係合する基端側係合突部14a及び先端側係合突部14bを有し、且つ上端部が前記ケース12から突出状態で設けられることにより前記係合ピン10と係脱する関係にあるスライダー15と、ピストン先端が前記スライダー15に連結された状態で前記ケース12内に設けられたピストン式ダンパー16と、一端が前記スライダー15に係止されるとともに、他端が前記ケース12に係止され、前記スライダー15に引戸2の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材17とから主に構成されている。
【0019】
前記ケース12は、同
図3に示されるように、断面略方形状を成した函体であり、引戸中央側の略半分には、上下方向に区画する中間水平壁12aが設けられ、その上側が部材長手方向に沿って上側に開口する前記ピストン式ダンパー16を収容するためのダンパー収容区間12bとされ、下側が部材長手方向に沿って下側に開口する前記スプリング17を収容するためのスプリング収容空間12cとされている。前記スプリング収容空間12cの引戸中央側端部には、前記スプリング17の一端を係止するための係止溝12eが設けられている。
【0020】
また、ケース12の引戸端部側の略半分には、前記スライダー15がスライド自在に備えられる、部材長手方向に沿って上側に開口するスライダー用空間12dとされている。
【0021】
前記スライダー用空間12dの両側壁にはそれぞれ、前記スライド案内溝13が形成されている。このスライド案内溝13は、引戸2の開閉方向に沿った直線状案内溝13aと、この直線状案内溝13aの引戸端部側に連続して下方向に屈曲する屈曲案内溝13bとからなり、前記屈曲案内溝13bが前記スライダー15の仮停止部Kを構成している。
【0022】
一方、スライダー15は、
図6~
図8に示されるように、前記ピストン先端が連結されるピストン連結部15aと、その下側に延在し前記スプリング部材17の一端が係止される係止溝15dが形成されたスプリング係止部15bと、前記ピストン連結部15aの上側に延在し上端部が前記ケース12の上端から突出状態で設けられる基端側係合片15cと、前記ピストン連結部15aの引戸端部側に延在するとともに、前記基端側係合片15cと所定の離隔幅を設けて、上端部が前記ケース12の上端から突出状態で設けられる先端側係合片15eとから構成されている。前記基端側係合片15cと先端側係合片15eとは、これらの間に前記係合ピン10が係合可能な程度の離隔幅が設けられている。
【0023】
さらに、本発明では前記スライダー15の基端側係合片15c(本発明の「上端部」)であって、前記係合ピン10との係合側とは反対側の面に、引戸2の閉操作時に、前記スライダー15の基端側係合片15cに前記係合ピン10が衝突した際、前記スライダー15の正規の動作範囲以上の回動動作を止めるための回動停止部材15jが設けられている。前記回動停止部材15jは、本発明の「回動停止部」を構成する部材であり、図示例では、側方に突出した板状部材とされ、前記ケース12の上面に衝突することにより、前記スライダー15の正規の動作範囲以上の回動動作を停止させるものである。この「回動停止部材15j」の作用については更に後述する。
【0024】
前記スライダー15のピストン連結部15aには通孔15fが形成され、この通孔15fを貫くとともに、ピストン先端に設けられた通孔(図示せず)を貫く軸部材18(
図3参照)が設けられることにより、ピストン先端とスライダー15とが連結されている。前記軸部材18は、両端がスライダー15の両側に突出した状態で設けられ、この突出した両端部が前記スライド案内溝13に係合する基端側係合突部14a、14aを構成している。
【0025】
また、前記スライダー15の先端側係合片15eの中央部には、両側部に突出する先端側係合突部14b、14bが設けられている。
【0026】
前記先端側係合片15eは、より詳細には、
図7に示されるように、スライダー15の先端部から横向きレ字状に折り返された折返し部15gと、さらにその先端から下方側に向けて延在する垂下片15hと、この垂下片15hの先端に水平方向に突出するとともに、スライダー本体に係合する水平係止片15iとを有する。そして、没入側に押し込んで前記水平係止片15iをスライダー本体に係合させて
図8の状態とする。従って、引戸2の開閉時に係合ピン10が前記垂下片15hに当接し力が加わったとしても、前記水平係止片15iが抜止め防止材となって、前記垂下片15h及び折返し部15gとが抜け出るように上方向側に変形するのを防止する。
【0027】
前記先端側係合片15eは弾性変形可能な樹脂材によって形成することが好ましい。このようにして形成された先端側係合片15eは、上端部から下方向に押圧が加わると、スライダー先端の折り返し部の弾性変形によって上端部が下方向に移動可能となっている。この上下方向の弾性変形量は、スライダー15を引込み装置1に組み込んだ場合に前記係合ピン10を乗り越えることができる程度であって、先端側係合片15eの上端部がケース12内に没入可能な程度とすることが好ましい。
【0028】
次いで、前記ピストン式ダンパー16は、
図5に示されるように、シリンダー16Aとピストン16Bとで構成され、シリンダー16A内部に粘性体(シリコンオイル等)が密閉封入されており、ピストン16Bがシリンダー16A内部を移動する際に、前記粘性体の移動により移動速度に応じた抵抗力(減衰力)が発生してエネルギーを吸収する機構となっているものである。
【0029】
前記引込み装置1の後部(引戸中央側)には、鴨居6Aに形成されたレール溝に対して係合するスライド案内係合部19が設けられている。このスライド案内係合部19は平面視で矩形状を成し、下側に開口する凹部19aを有する部材であり、この凹部19a内にバネ部材20が内設されることにより上方に向けて付勢支持されている。
【0030】
一方、前記鴨居6Aに設けられた係合ピン10は、
図3に示されるように、鴨居6Aに対してビス止めされる基体部3の下面側に設けられている。前記基体部3の下面には、引戸2が上側に跳ね上がって外れたりしないように跳上げ防止3Aが設けられている。
【0031】
〔引込み装置1の作動説明〕
(引戸2の開操作時)
図9(A)に示されるように、引戸2が戸閉まり状態の場合は、前記スライダー15がスライド案内溝13の内、引戸中央側に位置するとともに、このスライダー15の基端側係合片15cと先端側係合片15eとの間の離隔部分に係合ピン10が位置(係合)している。
【0032】
この戸閉まり状態から引戸2の開操作を行うと、
図9(B)に示されるように、係合ピン10と先端側係合片15eとの係合により、スライダー15がスプリング部材17の付勢力に抗して引戸端部側に移動される。そして、
図9(C)に示されるように、スライダー15の先端側係合突部14bが屈曲状案内溝13bまで案内されるとスライダー15が揺動し仮停止状態となる。これに伴い先端側係合片15eと係合ピン10との係合が解除される。従って、
図9(C)に示されるように、引戸2をさらに開操作できるようになる。
【0033】
(引戸2の閉操作時)
次に引戸2の閉操作時の作動状態について説明する。
【0034】
引戸2を開いた状態から
図9(C)に示される所定の位置まで閉操作を行うと、開操作によって仮停止状態とされたスライダー15の基端側係合片15cに係合ピン10が衝突して、スライダー15を揺動動作させ仮停止状態が解除される。これによりスライダー15の基端側係合片15cと先端側係合片15eとの離隔部分に係合ピン10が位置した状態となる。その後は、自動的に前記ピストン式ダンパー16による制動力を受けながらスプリング部材17の付勢力によって、引戸2が閉まり位置まで引き込まれるようになる(
図9(A))。
【0035】
(回動停止部材15jの作動)
引戸2の閉操作時に、
図10(A)に示されるように、前記スライダー15の基端側係合片15cに係合ピン10が勢いよく衝突して、軸部材18を回転中心として前記スライダー15が図示で時計回り方向に大きな力で回動し、スライダー15の係合突部14bが上方向に押し上げられた場合であっても、
図10(B)に示されるように、前記スライダー15に設けた回動停止部材15jがケース12の上面12fに衝突することにより、前記スライダー15の正規の動作範囲以上の回動動作を止めるため、前記係合突部14bがスライド案内溝13を形成している上方側部材を変形させることが無くなり、前記スライダー15の係合突部14bが前記スライダー案内溝13から抜脱するという不具合の発生を完全に防止することができるようになる。
【0036】
〔第2形態例〕
上記形態例では、本発明の「回動停止部」を構成する部材として、基端側係合片15cの係合ピン10との係合側とは反対側の面に、側方に突出した板状部材とされる回動停止部材15jを設けるようにしたが、
図11に示されるように、基端側係合片15cにおいて前記係合ピン10との係合側とは反対側に、該基端側係合片15cに連続かつ一体的に、ブロック状部材とされる回動停止部材15kを設けるようにして前記「回動停止部」を構成するようにしてもよい。
【0037】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、引戸2の閉操作時に、スライダー15に設けた回動停止部材15jがケース12の上面12fに衝突して、それ以上の回動動作を止めるようにしたが、前記回動停止部材15jが別途設けたストッパーに対して衝突させるようにしてもよい。
(2)上記形態例では、下端部に固定された戸車4によって走行案内される引戸2に対して、本発明を適用した例について述べたが、引戸の上端部に設けられた吊り車型ランナ装置が鴨居に固設されたガイドレールに沿って走行案内される吊戸(引戸)に対しても同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…引込み装置、2…引戸、4…戸車、3…基体部、6A…鴨居、6B…敷居、6C・6D…側枠、10…係合ピン、12…ケース、13…スライド案内溝、14a…基端側係合突部、14b…先端側係合突部、15…スライダー、15c…基端側係合片、15e…先端側係合片、15j・15k…回動停止部材、16…ピストン式ダンパー、17…スプリング部材、K…仮停止部