(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 7/02 20060101AFI20220221BHJP
G02B 1/06 20060101ALI20220221BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20220221BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20220221BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20220221BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
G02C7/02
G02B1/06
G02B3/08
G02B3/14
G02C7/10
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2017116058
(22)【出願日】2017-06-13
【審査請求日】2020-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】520011979
【氏名又は名称】株式会社エルシオ
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 義一
(72)【発明者】
【氏名】李 蕣里
(72)【発明者】
【氏名】跡部 悠未
【審査官】沖村 美由
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-099999(JP,A)
【文献】特開平05-100201(JP,A)
【文献】特開2013-047823(JP,A)
【文献】特表2008-525829(JP,A)
【文献】特開昭62-157007(JP,A)
【文献】特開2016-035510(JP,A)
【文献】特開2016-085427(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117604(WO,A1)
【文献】特開2002-015454(JP,A)
【文献】特開昭61-156227(JP,A)
【文献】特開昭53-033161(JP,A)
【文献】特開2000-249902(JP,A)
【文献】特開2000-207655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C1/00-13/00
G02F1/13
G02B1/00-1/08;3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼に入射する光を制御する眼鏡であって、
光を屈折させる液晶層を含む光学素子と、
前記液晶層に制御電圧を印加して、前記液晶層に鋸歯状の電位勾配を形成し、光の屈折を制御する制御部と
を備え、
前記光学素子は、
第1電極及び第2電極を有する複数の単位電極と、
前記第1電極及び前記第2電極の各々の電気抵抗率よりも大きく、電気絶縁体の電気抵抗率よりも小さい電気抵抗率を有する抵抗層と
を含み、
前記複数の単位電極では、平面視において前記第1電極及び前記第2電極の各々の幅よりも、前記第1電極と前記第2電極との間隔が広くなり、
前記抵抗層は、前記平面視において前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、
前記光学素子は、前記制御部によって焦点距離が制御され、
前記複数の単位電極における前記第1電極には、前記制御部から第1電圧が印加されるとともに、前記複数の単位電極における前記第2電極には、前記制御部から第2電圧が印加され、
前記液晶層に鋸歯状の電位勾配が形成されて前記焦点距離が所定値に設定される場合に、前記第1電圧と前記第2電圧のうちの一方の
電圧の電圧値が他方の
電圧の電圧値よりも高くなり、かつ、前記一方の
電圧の周波数が前記他方の
電圧の周波数よりも高くなる、眼鏡。
【請求項2】
眼の動きを検出する眼検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記眼検出部の検出結果から視線方向を算出し、前記視線方向に基づいて前記光学素子の焦点距離を制御する、請求項1に記載の眼鏡。
【請求項3】
前記光学素子は、光透過率を制御可能な光透過層をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の眼鏡。
【請求項4】
圧力を検出する圧力検出部をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼鏡。
【請求項5】
無線送信される所定信号に応答して、前記眼鏡の所在を報知する報知部をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の眼鏡。
【請求項6】
前記光学素子は、光を偏向させる断面視鋸歯状の光学部材をさらに含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼に入射する光を制御する眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された眼鏡は、視線方向を検出して、焦点を調節する。具体的には、眼鏡は、視線方向検出器と、焦点距離を変化できる可変焦点レンズとを備える。そして、眼鏡は、視線方向検出器からの視線方向信号により、可変焦点レンズの焦点を調節する。
【0003】
可変焦点レンズは、機械式の焦点調節機構を有する。具体的には、可変焦点レンズは、2つの透明な板状対象物と、透明体と、アクチュエーターとを含む。透明体は、空気の屈折率と異なる屈折率を有する変形可能な流動体である。透明体は、2つの板状対象物の間に充満するように介在する。そして、アクチュエーターは、2つの板状対象物の形状及び透明体の形状を変化させる。その結果、2つの板状対象物を通過する光の屈折状態が変化して、焦点が調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された眼鏡では、機械式の焦点調節機構によって焦点を調節するため、焦点調節のための制御の開始時から完了時までの時間を短縮することが困難である。
【0006】
換言すれば、機械式の制御機構では、光の屈折の制御の開始時から完了時までの時間を短縮することが困難である。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械式の制御機構と比較して、光の屈折の制御の開始時から完了時までの時間を短縮できる眼鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、眼鏡は、眼に入射する光を制御する。眼鏡は、光学素子と、制御部とを備える。光学素子は、光を屈折させる液晶層を含む。制御部は、前記液晶層に制御電圧を印加して、前記液晶層に鋸歯状の電位勾配を形成し、光の屈折を制御する。
【0009】
本発明の眼鏡は、眼の動きを検出する眼検出部をさらに備えることが好ましい。前記制御部は、前記眼検出部の検出結果に基づいて、前記制御電圧を制御することが好ましい。
【0010】
本発明の眼鏡において、前記光学素子は、光透過率を制御可能な光透過層をさらに含むことが好ましい。
【0011】
本発明の眼鏡は、圧力を検出する圧力検出部をさらに備えることが好ましい。
【0012】
本発明の眼鏡は、報知部をさらに備えることが好ましい。報知部は、無線送信される所定信号に応答して、前記眼鏡の所在を報知することが好ましい。
【0013】
本発明の眼鏡において、前記光学素子は、光を偏向させる断面視鋸歯状の光学部材をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機械式の制御機構と比較して、光の屈折の制御の開始時から完了時までの時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る眼鏡システムを示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った光学素子の模式的断面図である。
【
図3】(a)は、実施形態1に係る光学素子が凸レンズとして機能するときの液晶層の電位勾配を示す図である。(b)は、実施形態1に係る光学素子が凸レンズとして機能するときの焦点距離を示す図である。(c)は、実施形態1に係る光学素子が凹レンズとして機能するときの液晶層の電位勾配を示す図である。(d)は、実施形態1に係る光学素子が凹レンズとして機能するときの焦点距離を示す図である。
【
図4】実施形態1に係る第1液晶ユニットを示す平面図である。
【
図5】実施形態1に係る第1液晶ユニットの一部を拡大して示す平面図である。
【
図6】
図5のVI-VI線に沿った第1液晶ユニットの断面図である。
【
図7】(a)は、実施形態1に係る第1液晶ユニットを示す平面図である。(b)は、実施形態1に係る液晶層の電位勾配を示す図である。
【
図8】実施形態1に係る眼鏡システムの電気的構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る眼鏡システムを示す斜視図である。
【
図10】実施形態2に係る眼鏡システムの電気的構成を示す図である。
【
図11】実施形態2に係る電圧制御処理を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態3に係る眼鏡システムを示す斜視図である。
【
図13】(a)は、
図12のXIII-XIII線に沿った光学素子の模式的断面図である。(b)は、実施形態3に係る光透過ユニットを示す断面図である。
【
図14】実施形態3に係る眼鏡システムの電気的構成を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態4に係る眼鏡システムを示す斜視図である。
【
図16】実施形態4に係る眼鏡システムの電気的構成を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態5に係る眼鏡システムを示す斜視図である。
【
図18】実施形態5に係る眼鏡システムの電気的構成を示す図である。
【
図19】(a)は、本発明の実施形態6に係る光学素子を示す平面図である。(b)は、
図19(a)のXIXB-XIXB線に沿った光学素子の模式的断面図である。(c)は、実施形態6に係る液晶層の電位勾配を示す図である。
【
図20】実施形態6に係る第1液晶ユニットを示す平面図である。
【
図21】
図20のXXI-XXI線に沿った第1液晶ユニットの断面図である。
【
図22】実施形態6に係る眼鏡システムの電気的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図面の簡略化のため、断面を示す斜線を適宜省略する。
【0017】
(実施形態1)
図1~
図8を参照して、本発明の実施形態1に係る眼鏡システム100について説明する。
図1は、眼鏡システム100を示す斜視図である。
図1に示すように、眼鏡システム100は、眼鏡1と、操作装置200とを備える。操作装置200は、本体a1と、端子a5とを含み、眼鏡1に接続可能である。
【0018】
眼鏡1は、眼鏡1の装着者HMの眼に入射する光を制御する。眼鏡1は、フレームFと、一対の光学素子LNと、制御部17と、操作部19と、バッテリー21と、端子23とを含む。光学素子LNはレンズとして機能する。
【0019】
フレームFは一対の光学素子LNを保持する。また、フレームFは、制御部17、操作部19、バッテリー21、及び端子23を搭載する。
【0020】
具体的には、フレームFは、一対のリム3と、ブリッジ5と、一対のヨロイ7と、一対の丁番9と、一対のテンプル11と、一対のモダン13と、一対のノーズパッド15とを含んでもよい。リム3は光学素子LNを保持する。ブリッジ5は、一対のリム3のうちの一方のリム3と他方のリム3とを連結する。ヨロイ7は、ブリッジ5に対してリム3の外側端部に位置する。ヨロイ7は、丁番9を介してリム3とテンプル11とを連結する。丁番9は、ヨロイ7に対してテンプル11を回動自在に支持する。一対のテンプル11は、装着者HMの頭部を挟み込む。モダン13は、テンプル11の先端領域を覆い、装着者HMの耳の上部に接触する。
【0021】
光学素子LNの各々は、制御部17の制御に従って、光を収束させて凸レンズとして機能したり、光を発散させて凹レンズとして機能したりする。制御部17は、操作部19からの内部操作信号又は操作装置200からの外部操作信号に基づいて、一対の光学素子LNを制御する。操作部19は、装着者HMの操作に応じた内部操作信号を制御部17に送信する。制御部17及び操作部19は、例えば、一対のテンプル11のうちの一方のテンプル11に設置される。バッテリー21は、制御部17及び操作部19に電源電圧を供給する。バッテリー21は、例えば、他方のテンプル11に設置される。端子23は、操作装置200の端子a5と接続可能である。端子23は、例えば、一対のヨロイ7のうちの一方のヨロイ7に設置される。
【0022】
フレームFのうちバッテリー21の収納部分は、フレームFの他の部分よりも耐熱性に優れた材質を用いることが好ましい。また、バッテリー21には、更に安全性を向上させるため、焼損防止機能を搭載してもよい。例えば、温度センサーをバッテリー21近傍に搭載して、規定温度を超えた場合は、制御部17を構成する電子回路を切断できるようにスイッチを設ける。さらに、バッテリー21の近傍には、非接触で充電するための機能を搭載していてもよい。バッテリー21への充電は、リード線を介して実行してもよいし、非接触で実行してもよい。リード線を介する充電機能及び/又は非接触による充電機能は、眼鏡1のケースに組み込まれており、眼鏡1を眼鏡ケースへ保管する際に、連動して充電が実行されるようにしてもよい。また、眼鏡1のケース及び/又は眼鏡1には、充電を補助するための太陽電池が設けられていてもよい。
【0023】
操作装置200は、端子a5及び端子23を介して、装着者HMの操作に応じた外部操作信号を制御部17に送信する。具体的には、操作装置200の本体a1は、ディスプレーa2と、操作キーa3と、スピーカーa4とをさらに含む。ディスプレーa2は画像を表示する。操作キーa3は、装着者HMの操作を受け付ける。そして、本体a1(具体的には本体a1のプロセッサー)は、操作キーa3の操作に応じた外部操作信号を制御部17に送信する。スピーカーa4は音声を出力する。端子a5は、眼鏡1の端子23に対して着脱自在である。操作装置200は、例えば、眼鏡1に専用の端末であってもよいし、スマートフォンのような携帯端末であってもよい。
【0024】
なお、操作装置200は、例えば、カードホルダーに入るサイズを有していてもよい。操作装置200を常時接続した状態で眼鏡1を装用する場合、操作装置200をカードホルダーに入れて使用することもあるからである。また、
図1では、略長方形形状の操作装置200の短辺に対応する端面に端子(以下、「端子TL」と記載する。)が形成されている。そして、端子TLから端子a5までケーブルが延びている。端子TLを短辺に対応する端面に形成すると、縦型のカードホルダーに操作装置200を入れるときに便利である。ただし、端子TLの位置は特に限定されず、例えば、操作装置200の長辺に対応する端面に端子TLを形成してもよい。端子TLを長辺に対応する端面に形成すると、横型のカードホルダーに操作装置200を入れるときに便利である。
【0025】
また、眼鏡1の端子23の設置位置は特に限定されない。例えば、操作装置200を常時接続した状態で眼鏡1を装用する場合(例えば、白内障用又は老眼用として使用する場合)を想定すると、テンプル11の先端面(モダン13の先端面)に設けられていてもよい。例えば、装着者HMが右利きの場合、装着者HMにとって左のテンプル11の先端面(モダン13の先端面)に設けることが好ましい。
【0026】
次に、
図2を参照して、光学素子LNについて説明する。
図2は、
図1のII-II線に沿った光学素子LNの模式的断面図である。
図2に示すように、光学素子LNは、第1基板31と、第1液晶ユニットA1と、第2基板33と、第2液晶ユニットA2と、第3基板35とを含む。第1液晶ユニットA1は、第1基板31を介して、装着者HMの眼EYに対向する。第1基板31、第2基板33、及び第3基板35の各々は、平板状形状を有し、例えば、ガラス製又は合成樹脂製である。第1基板31、第2基板33、及び第3基板35の各々の色彩は、例えば、透明色又は半透明色である。透明色は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよい。また、第1基板31、第2基板33、及び第3基板35の各々は、単一の基板から構成されていてもよいし、複数の基板から構成されていてもよい。例えば、第2基板33は、複数の基板を貼り合わせて構成されていてもよい。また、例えば、第1基板31及び第3基板35において、外気と接触する面には、反射防止用のコーティングが施されていてもよい。
【0027】
第1液晶ユニットA1は、第1基板31と第2基板33との間に配置される。第1液晶ユニットA1は液晶層53(以下、「液晶層53A」と記載する場合がある。)を含む。液晶層53Aは、制御電圧CVの印加に応答して光を屈折させる。その結果、液晶層53Aは、光を収束又は発散させる。なお、実施形態1では、制御電圧CVは、第1電圧V1及び第2電圧V2を含む。
【0028】
第2液晶ユニットA2は、第2基板33と第3基板35との間に配置される。第2液晶ユニットA2は、第2基板33を介して第1液晶ユニットA1に対向している。第2液晶ユニットA2は液晶層53(以下、「液晶層53B」と記載する場合がある。)を含む。液晶層53Bは、制御電圧CVの印加に応答して光を屈折させる。その結果、液晶層53Bは、光を収束又は発散させる。
【0029】
液晶層53A及び液晶層53Bの各々は液晶を含む。例えば、液晶はネマティック液晶であり、液晶の配向は、液晶層53に制御電圧CVが印加されない無電場の環境下では、ホモジニアス配向である。液晶の色彩は、例えば、透明色である。
【0030】
具体的には、平面視において、液晶層53Aの液晶の配向方向は、液晶層53Bの液晶の配向方向に略直交している。平面視は、光学素子LNの光軸Cの延びる方向から光学素子LNを視ることを示す。例えば、液晶層53Aの液晶に対する配向材のラビング方向が、液晶層53Bの液晶に対する配向材のラビング方向に略直交する。なお、液晶の配向方向が異なる点で、液晶層53Aと液晶層53Bとは相違するが、その他の構成は互いに同様である。
【0031】
液晶層53Aと液晶層53Bとを設けることによって、光学素子LNへの入射光を効果的に屈折させることができる。
【0032】
具体的には、光のp偏光成分とs偏光成分とのうちの一方の偏光成分(以下、「偏光成分PA」と記載する。)が、制御電圧CVが印加された液晶層53Aにより屈折し、他方の偏光成分(以下、「偏光成分PB」と記載する。)が液晶層53Aを直進する。偏光成分PAは、液晶層53Aに対しては異常光であり、偏光成分PBは、液晶層53Aに対しては常光である。
【0033】
さらに、液晶層53Aから出射した偏光成分PA及び偏光成分PBは液晶層53Bに入射する。そして、偏光成分PAが液晶層53Bを直進し、偏光成分PBが、制御電圧CVが印加された液晶層53Bにより屈折する。なぜなら、液晶層53Aの液晶の配向方向が液晶層53Bの液晶の配向方向に略直交しているからである。偏光成分PAは、液晶層53Bに対しては常光であり、偏光成分PBは、液晶層53Bに対しては異常光である。
【0034】
以上の結果、光のp偏光成分とs偏光成分との双方を屈折させることができるため、光学素子LNへの入射光を効果的に屈折させることができる。
【0035】
次に、
図1~
図3(d)を参照して、液晶層53に形成される電位勾配について説明する。
図1及び
図2に示すように、制御部17は、液晶層53A及び液晶層53Bの各々に制御電圧CVを印加して、液晶層53A及び液晶層53Bの各々に鋸歯状の電位勾配を形成し、光の屈折を制御する。つまり、制御部17は、液晶層53A及び液晶層53Bの各々に制御電圧CVを印加して、液晶層53A及び液晶層53Bの各々に鋸歯状の電位勾配を形成し、液晶層53A及び液晶層53Bの各々の焦点距離を制御する。
【0036】
液晶層53Aと液晶層53Bとで制御電圧CVは実質的に(ほぼ)共通している。従って、液晶層53Aに印加される制御電圧CVの実効値、周波数、及び波形は、それぞれ、液晶層53Bに印加される制御電圧CVの実効値、周波数、及び波形と実質的に(ほぼ)同一である。その結果、液晶層53Aに形成される電位勾配と液晶層53Bに形成される電位勾配とは実質的に(ほぼ)同一である。但し、眼EYから液晶層53Aまでの光軸Cに沿った距離と、眼EYから液晶層53Bまでの光軸Cに沿った距離との差異に起因する光の屈折効果を微調整するために、液晶層53Aと液晶層53Bとで、制御電圧CV及び他のパラメータを異ならせて制御してもよい。
【0037】
図3(a)は、光学素子LNが凸レンズとして機能するときの液晶層53の電位勾配Gを示す図である。
図3(b)は、凸レンズとして機能する光学素子LNの焦点距離fを示す図である。なお、
図3(b)では、理解の容易のため、光学素子LNの形状をガラス製の凸レンズの形状と同様にしているが、光学素子LNの形状は変化しない。
図3(c)は、光学素子LNが凹レンズとして機能するときの液晶層53の電位勾配Hを示す図である。
図3(d)は、凹レンズとして機能する光学素子LNの焦点距離fを示す図である。なお、
図3(d)では、理解の容易のため、光学素子LNの形状をガラス製の凹レンズの形状と同様にしているが、光学素子LNの形状は変化しない。
【0038】
図3(a)に示すように、液晶層53には、凸レンズを実現するための制御電圧CVの印加に応答して、鋸歯状の電位勾配Gが形成される。その結果、液晶層53は凸レンズ(具体的には凸型フレネルレンズ)として機能する。つまり、光学素子LNが凸レンズとして機能する。例えば、液晶層53に略直交するように入射した光LTは、電位勾配Gに応じて、光軸Cに近づくように屈折して収束する。
【0039】
図3(b)に示すように、光学素子LNが凸レンズとして機能するときは、光学素子LNの焦点距離fは正の値を示す。つまり、光学素子LNの焦点FPが光学素子LNに対して装着者HMの眼の側に位置するときは、焦点距離fは正の値を示す。焦点距離fは、光学素子LNの中心Oから焦点FPまでの距離を示す。
【0040】
図3(c)に示すように、液晶層53には、凹レンズを実現するための制御電圧CVの印加に応答して、鋸歯状の電位勾配Hが形成される。その結果、液晶層53は凹レンズ(具体的には凹型フレネルレンズ)として機能する。つまり、光学素子LNが凹レンズとして機能する。例えば、液晶層53に略直交するように入射した光LTは、電位勾配Hに応じて、光軸Cから離れるように屈折して発散する。
【0041】
図3(d)に示すように、光学素子LNが凹レンズとして機能するときは、光学素子LNの焦点距離fは負の値を示す。つまり、焦点FPが光学素子LNに対して装着者HMの眼の反対側(例えば、物体の側)に位置するときは、焦点距離fは負の値を示す。
【0042】
なお、液晶層53Aと液晶層53Bとの双方が凸レンズとして機能するときに、光学素子LNが凸レンズとして機能する。また、液晶層53Aと液晶層53Bとの双方が凹レンズとして機能するときに、光学素子LNが凹レンズとして機能する。そして、光学素子LNの第2基板33の厚みが比較的小さいため、装着者HMの眼にとって、液晶層53Aの焦点距離と液晶層53Bの焦点距離とは略同一とみなすことができる。従って、光学素子LNの焦点距離fは、液晶層53Aの焦点距離又は液晶層53Bの焦点距離によって示される。つまり、光学素子LNの焦点距離fと液晶層53Aの焦点距離と液晶層53Bの焦点距離とは実質的に同義である。
【0043】
以上、
図1~
図3(d)を参照して説明したように、実施形態1によれば、光学素子LNは液晶層53を含む。加えて、制御部17は、制御電圧CVを液晶層53に印加して、光の屈折を制御する。従って、機械式の制御機構と比較して、光の屈折の制御の開始時から完了時までの時間を短縮できる。その結果、焦点距離fの高速制御を実現できる。
【0044】
加えて、
図3(a)及び
図3(d)を参照して説明したように、実施形態1によれば、制御部17は、液晶層53に鋸歯状の電位勾配(電位勾配G又は電位勾配H)が形成されるように制御電圧CVを液晶層53に印加して、光の屈折を制御する。つまり、制御部17は、液晶層53に制御電圧CVを印加して、液晶層53に鋸歯状の電位勾配(電位勾配G又は電位勾配H)を形成し、光の屈折を制御する。従って、各液晶層53がフレネルレンズ(凸型又は凹型)として機能する。その結果、光学素子LNの厚みが大きくなることを抑制しつつ、光学素子LNの口径を比較的大きくできる。つまり、実用的な厚み及び口径の光学素子LNによって眼鏡1を構成できる。
【0045】
次に、
図4~
図7(b)を参照して、第1液晶ユニットA1について説明する。なお、第2液晶ユニットA2の構成は、第1液晶ユニットA1の構成と同様である。
【0046】
図4は、第1液晶ユニットA1を示す平面図である。
図5は、第1液晶ユニットA1の一部を拡大して示す平面図である。
図6は、
図5のVI-VI線に沿った第1液晶ユニットA1の断面図である。
【0047】
図4及び
図5に示すように、第1液晶ユニットA1は、コア電極50と、センター電極rcと、単位電極r1~単位電極r4と、絶縁層51と、複数の第1境界層61と、第1リード線71と、第2リード線72と、第3境界層73とを含む。単位電極r1~単位電極r4の各々は、第1電極E1及び第2電極E2を含む。電極50、rc、E1、E2、71、72の各々の色彩は、例えば、透明色である。電極50、rc、E1、E2、71、72の各々は、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物:Indium Tin Oxide)により形成される。
【0048】
コア電極50は、円板状形状を有する。円板状形状とは、円形の面状の形状のことである。コア電極50は、センター電極rcに囲まれている。コア電極50及びセンター電極は、第1電極E1と同じ材料により形成される。コア電極50は半径Raを有する。半径Raは、コア電極50の重心からコア電極50の外縁までの距離を示す。光軸Cは、コア電極50に略直交し、コア電極50の重心を通る。
【0049】
コア電極50、センター電極rc、単位電極r1~単位電極r4、第1境界層61、第1リード線71、第2リード線72、及び第3境界層73は、同一階層に配置される。
【0050】
コア電極50、センター電極rc、及び単位電極r1~単位電極r4は、コア電極50を中心とした同心円状に配置される。コア電極50とセンター電極rcとは、絶縁層51によって電気的に絶縁されている。絶縁層51は電気絶縁体である。例えば、絶縁層51の色彩は透明色であり、絶縁層51は二酸化ケイ素(SiO2)により形成される。
【0051】
センター電極rcと単位電極r1との間、単位電極r1と単位電極r2との間、単位電極r2と単位電極r3との間、及び単位電極r3と単位電極r4との間には、それぞれ、第1境界層61が配置される。
【0052】
センター電極rc、第1電極E1、及び第2電極E2の各々は、一部途切れた円環状形状を有する。センター電極rcは半径Rcを有する。半径Rcはセンター電極rcの外半径を示す。また、単位電極r1~単位電極r4は、それぞれ、半径R1~半径R4を有する(R4>R3>R2>R1)。半径Rcは半径R1~半径R4の各々よりも小さい。単位電極r1~単位電極r4は、それぞれ、幅d1~幅d4を有する(d4<d3<d2<d1)。センター電極rcは任意の大きさに設定できるが、光の利用効率を高めるためには、半径Rcは幅d1~幅d4の各々よりも大きいことが好ましい。また、センター電極rcは幅Kcを有する。幅Kcは、センター電極rcの径方向に沿った幅を示す。
【0053】
ここで、単位電極r1~単位電極r4を総称して単位電極rnと記載し、半径R1~半径R4のうち単位電極rnの半径を半径Rnと記載し、幅d1~幅d4のうち単位電極rnの幅を幅dnと記載する場合がある。添字nは、複数の単位電極のうち半径の最も小さい単位電極から半径の最も大きい単位電極に向かって昇順に、複数の単位電極の各々に割り当てられる1以上N以下の整数である。Nは、複数の単位電極の個数であり、実施形態1では、「4」である。
【0054】
図5を参照して、引き続き、第1液晶ユニットA1について説明する。
図5に示すように、単位電極rnの各々において、幅dnは、第1電極E1の幅K1よりも大きく、第2電極E2の幅K2よりも大きい。幅dnは、単位電極rnの各々において、第1電極E1と第2電極E2との間隔を示している。幅K1は、第1電極E1の径方向に沿った幅を示し、幅K2は、第2電極E2の径方向に沿った幅を示す。
【0055】
単位電極rnの半径Rnは、単位電極rnを構成する第2電極E2の半径によって示される。第2電極E2の半径は第2電極E2の外半径を示し、第1電極E1の半径は第1電極E1の外半径を示す。光軸Cから離れる単位電極rnほど、単位電極rnの半径Rnは大きくなる。
【0056】
単位電極rnの幅dnは、単位電極rnを構成する第1電極E1の外縁と第2電極E2の内縁との間の距離によって示される。そして、互いに隣り合う単位電極rnのうち、半径Rnの大きい単位電極rnの幅dnは、半径Rnの小さい単位電極rnの幅dnよりも小さい。また、単位電極rnはセンター電極rcを囲んでいる。
【0057】
第1リード線71は、複数の第2電極E2に接触することなく、コア電極50から、半径の最も大きい第1電極E1に向かって延設される。第1リード線71は直線状である。第1リード線71は、第1電極E1と同じ材料により形成される。
【0058】
コア電極50は第1リード線71に接続される。第1電極E1の各々の両端部のうちの一方端部81は、第1リード線71に接続される。従って、コア電極50及び第1電極E1には、第1リード線71から制御電圧CVとしての第1電圧V1が供給される。
【0059】
コア電極50の半径Raは、センター電極rcの幅Kc、第1電極E1の幅K1、又は第2電極E2の幅K2よりも大きい。実施形態1では、コア電極50の半径Raは、センター電極rcの幅Kc、第1電極E1の幅K1、及び第2電極E2の幅K2の各々よりも大きい。ただし、コア電極50の半径Raは、センター電極rcの内半径よりも小さい。
【0060】
第2リード線72は、複数の第1電極E1に接触することなく、センター電極rcから、複数の第2電極E2のうち半径の最も大きい第2電極E2に向かって延設される。第2リード線72は直線状である。第2リード線72は、第2電極E2と同じ材料により形成される。
【0061】
センター電極rcの両端部のうちの一方端部93は、第2リード線72に接続される。第2電極E2の各々の両端部のうちの一方端部91は、第2リード線72に接続される。従って、センター電極rc及び第2電極E2には、第2リード線72から制御電圧CVとしての第2電圧V2が供給される。
【0062】
第3境界層73は、絶縁層51と同じ電気絶縁体を含み、絶縁層51と同じ材料により形成される。従って、第3境界層73は絶縁層51の一部として形成される。なお、第3境界層73は、絶縁層51と異なる電気絶縁体であってもよい。また、第3境界層73は、第1リード線71と第2リード線72との間に配置される。
【0063】
図6を参照して、引き続き、第1液晶ユニットA1について説明する。
図6に示すように、第1液晶ユニットA1は、コア電極50とセンター電極rcと単位電極r1~単位電極r4と絶縁層51と複数の第1境界層61とに加えて、複数の第2境界層62と、複数の高抵抗層52(複数の抵抗層)と、液晶層53と、第3電極E3とをさらに含む。第1液晶ユニットA1の構造は光軸Cに対して対称である。
【0064】
センター電極rcと単位電極r1の第1電極E1とは第1境界層61を介して隣り合っている。互いに隣り合う単位電極rnのうちの一方の単位電極rnの第2電極E2と他方の単位電極rnの第1電極E1とは、第1境界層61を介して隣り合っている。第1境界層61は、センター電極rcと単位電極r1の第1電極E1とを電気的に絶縁するとともに、互いに隣り合う第2電極E2と第1電極E1とを電気的に絶縁する。第1境界層61は、絶縁層51と同じ電気絶縁体を含み、絶縁層51と同じ材料により形成される。従って、第1境界層61は絶縁層51の一部として形成される。なお、第1境界層61は、絶縁層51と異なる電気絶縁体であってもよい。
【0065】
絶縁層51は、コア電極50及びセンター電極rcと高抵抗層52との間に配置され、コア電極50及びセンター電極rcと高抵抗層52とを電気的に絶縁する。絶縁層51は、第1電極E1及び第2電極E2と高抵抗層52との間に配置され、第1電極E1及び第2電極E2と高抵抗層52とを電気的に絶縁する。絶縁層51は、コア電極50とセンター電極rcとの間に配置され、コア電極50とセンター電極rcとを電気的に絶縁する。絶縁層51は、単位電極rnの各々において、第1電極E1と第2電極E2との間に配置され、第1電極E1と第2電極E2とを電気的に絶縁する。
【0066】
絶縁層51は厚みtsを有する。厚みtsは、絶縁層51のうち第1電極E1と高抵抗層52との間に位置する部分の厚み、絶縁層51のうち第2電極E2と高抵抗層52との間に位置する部分の厚み、絶縁層51のうちコア電極50と高抵抗層52との間に位置する部分の厚み、又は絶縁層51のうちセンター電極rcと高抵抗層52との間に位置する部分の厚みを示す。
【0067】
複数の高抵抗層52及び複数の第2境界層62は同一階層に配置される。複数の高抵抗層52のうち、最も内側の高抵抗層52は、絶縁層51を介して、コア電極50及びセンター電極rcに対向し、円板状形状を有している。他の複数の高抵抗層52は、それぞれ、絶縁層51を介して、単位電極r1~単位電極r4に対向し、円形の帯状である。
【0068】
高抵抗層52は、コア電極50及びセンター電極rcと液晶層53との間に配置されている。また、高抵抗層52は、単位電極rnと液晶層53との間に配置されている。つまり、高抵抗層52の各々は、絶縁層51と第3電極E3との間に配置される。具体的には、高抵抗層52の各々は、絶縁層51と液晶層53との間に配置される。高抵抗層52の電気抵抗率(比抵抗)は、コア電極50の電気抵抗率、センター電極rcの電気抵抗率、第1電極E1の電気抵抗率、及び第2電極E2の電気抵抗率の各々より大きく、絶縁層51の電気抵抗率より小さい。例えば、高抵抗層52の色彩は透明色であり、高抵抗層52は酸化亜鉛(ZnO)により形成される。
【0069】
高抵抗層52の電気抵抗率は、例えば、好適電気抵抗率に設定される。好適電気抵抗率とは、所望の屈折角を実現可能な電位勾配を液晶層に形成するために好適な電気抵抗率のことである。
【0070】
高抵抗層52は厚みthを有する。絶縁層51の厚みtsは、高抵抗層52の厚みthよりも小さい。従って、絶縁層51のうち、第2電極E2と高抵抗層52との間の部分と、第1電極E1と高抵抗層52との間の部分とに、第1液晶ユニットA1の径方向RDに略平行な等電位線が集中することを抑制できる。その結果、絶縁層51のうち、第2電極E2と高抵抗層52との間の部分、及び第1電極E1と高抵抗層52との間の部分において、電位の降下と上昇とを低減できる。以下、このような電位の降下と上昇とを「電位の平滑化現象」と記載する場合がある。なお、径方向RDは、光軸Cに直交する方向であり、光軸Cから離れる方向を向いている。
【0071】
一般的に、電位の平滑化現象は、単位電極rnの幅dnが小さい程、顕著になる。そして、一般的には、電位の平滑化現象によって、好適周波数及び好適電気抵抗率が変化する。好適周波数とは、所望の屈折角を実現可能な電位勾配を液晶層に形成するために好適な周波数のことである。
【0072】
これに対して、実施形態1では、絶縁層51の厚みtsを高抵抗層52の厚みthよりも小さくすることによって、電位の平滑化現象を低減している。従って、単位電極rnの幅dnに依存することなく、電位の平滑化現象を低減できる。その結果、好適周波数及び好適電気抵抗率が単位電極rnの幅dn(電極間隔)に依存して変化することを抑制できる。なお、例えば、第1電圧V1の周波数f1は、複数の好適周波数のうちのいずれかの周波数に設定され、第2電圧V2の周波数f2は、複数の好適周波数のうちのいずれかの周波数に設定される。
【0073】
絶縁層51の厚みtsは、コア電極50及びセンター電極rcと高抵抗層52との間の絶縁と、第1電極E1及び第2電極E2と高抵抗層52との間の絶縁とを保っている限り、小さい程好ましい。絶縁層51の厚みtsが小さい程、好適周波数及び好適電気抵抗率が単位電極rnの幅dnに依存して変化することを抑制できるからである。
【0074】
互いに隣り合う高抵抗層52の間には、第2境界層62が配置される。第2境界層62は、絶縁層51と同じ電気絶縁体を含み、絶縁層51と同じ材料により形成される。従って、第2境界層62は絶縁層51の一部として形成される。なお、第2境界層62は、絶縁層51と異なる電気絶縁体であってもよい。
【0075】
第2境界層62の幅は、第1境界層61の幅と略同一である。第2境界層62の幅は、第2境界層62の径方向に沿った幅を示す。第1境界層61の幅は、第1境界層61の径方向に沿った幅を示す。第2境界層62は、絶縁層51を介して、第1境界層61に対向する。
【0076】
液晶層53は液晶を含む。液晶層53は、単位電極rnと第3電極E3との間に配置され、コア電極50及びセンター電極rcと第3電極E3との間に配置される。液晶層53は、絶縁層51と第3電極E3との間に配置される。具体的には、液晶層53は、高抵抗層52と第3電極E3との間に配置される。液晶層53は厚みtqを有する。
【0077】
第3電極E3には第3電圧V3が印加される。実施形態1では、第3電極E3は接地されており、第3電圧V3は接地電位(0V)に設定される。第3電極E3は、面状であり、単一の層として形成される。第3電極E3は、液晶層53、高抵抗層52、及び絶縁層51を介して、コア電極50、センター電極rc、及び単位電極rnと対向する。例えば、第1電極E1と第2電極E2と第3電極E3との電気抵抗率は略同一である。
【0078】
なお、コア電極50とセンター電極rcと単位電極r1~単位電極r4とは、液晶層53よりも眼に近い。
【0079】
以上、
図4~
図6を参照して説明したように、実施形態1によれば、第1電極E1と第2電極E2とが絶縁層51によって絶縁され、コア電極50とセンター電極rcとが絶縁層51によって絶縁されている。従って、第1電極E1と第2電極E2との間には電流が流れず、コア電極50とセンター電極rcとの間には電流が流れない。その結果、第1液晶ユニットA1における電力損失を抑制できる。第2液晶ユニットA2についても同様である。
【0080】
また、実施形態1によれば、光軸Cから遠い単位電極rnほど、幅dnが小さい。一方、絶縁層51の厚みtsが高抵抗層52の厚みthよりも小さいため、好適周波数及び好適電気抵抗率が単位電極rnの幅dnに依存して変化することを抑制できる。従って、光軸Cに近い単位電極rnと光軸Cから遠い単位電極rnとで、第1電圧V1の周波数f1及び第2電圧V2の周波数f2を異ならせることを要求されず、更に、高抵抗層52の電気抵抗率を異ならせることを要求されない。その結果、第1液晶ユニットA1の設計が複雑になることを抑制できるとともに、第1液晶ユニットA1の製造コストが増加することを抑制できる。第2液晶ユニットA2についても同様である。
【0081】
次に、
図6~
図7(b)を参照して、液晶層53に形成される電位勾配Gについて説明する。
図7(a)は、第1液晶ユニットA1を示す平面図である。
図7(a)では、図面の簡略化のため、第1リード線71、第2リード線72、及び第3境界層73を省略している。また、図面の簡略化のため、センター電極rc、第1電極E1、及び第2電極E2を、途切れていない円環状形状で表している。
図7(b)は、液晶層53の電位勾配Gを示す図である。
図7(b)では、
図7(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面に現れる電位勾配Gが示される。
【0082】
図6~
図7(b)に示すように、第1電圧V1が第2電圧V2よりも小さい場合、コア電極50及び各第1電極E1に第1電圧V1を印加し、センター電極rc及び各第2電極E2に第2電圧V2を印加すると、高抵抗層52、第1境界層61、及び第2境界層62が設けられているため、液晶層53には、光軸Cに対して対称な鋸歯状の電位勾配G(実線)が形成される。換言すれば、第1液晶ユニットA1を平面視した場合(つまり、光軸Cの延びる方向から第1液晶ユニットA1を見た場合)、電位勾配Gは同心円状に形成される。
【0083】
なお、本明細書において、第1電圧V1が第2電圧V2よりも小さいことは、少なくとも第1電圧V1の電圧値v1が第2電圧V2の電圧値v2よりも小さいことを示す。
【0084】
電位勾配Gは、コア電極50及びセンター電極rcに対応して形成される電位勾配Gcと、単位電極r1に対応して形成される電位勾配G1と、単位電極r2に対応して形成される電位勾配G2と、単位電極r3に対応して形成される電位勾配G3と、単位電極r4に対応して形成される電位勾配G4とを含む。電位勾配Gc及び電位勾配G1~電位勾配G4の各々は、第1液晶ユニットA1の径方向RDに対する電位勾配である。
【0085】
電位勾配Gc及び電位勾配G1~電位勾配G4の各々は、高抵抗層52の作用により、滑らかな曲線状であり、段差及び極値(極小値及び極大値)を有しない。
【0086】
電位勾配Gcは、例えば、二次曲線によって表される。電位勾配Gc及び電位勾配G1~電位勾配G4の各々は、光軸Cから径方向RDに向かって電位が高くなるように形成される。また、電位勾配Gc及び電位勾配G1~電位勾配G4については、光軸Cから離れる電位勾配ほど傾斜が急になる。
【0087】
液晶層53に電位勾配Gが形成されると、液晶層53には、電位勾配Gに応じた屈折率勾配が形成される。その結果、液晶層53に入射する入射光は、電位勾配Gc及び電位勾配G1~電位勾配G4の各々に対応する屈折角で光軸Cに近づくように屈折し、液晶層53から出射光として出射される。光軸Cから離れる電位勾配ほど傾斜が急になるため、光軸Cから離れるほど屈折角が大きくなり、出射光は光軸Cに向かって集光される。その結果、第1液晶ユニットA1を凸型フレネルレンズとして機能させることができる。
【0088】
一方、第1電圧V1が第2電圧V2よりも大きい場合、コア電極50及び各第1電極E1に第1電圧V1を印加し、センター電極rc及び各第2電極E2に第2電圧V2を印加すると、高抵抗層52、第1境界層61、及び第2境界層62が設けられているため、液晶層53には、光軸Cに対して対称な鋸歯状の電位勾配H(二点鎖線)が形成される。換言すれば、第1液晶ユニットA1を平面視した場合、電位勾配Hは同心円状に形成される。
【0089】
なお、本明細書において、第1電圧V1が第2電圧V2よりも大きいことは、少なくとも第1電圧V1の電圧値v1が第2電圧V2の電圧値v2よりも大きいことを示す。また、第1電圧V1と第2電圧V2とが同じことは、電圧値v1と電圧値v2とが同じであり、かつ、第1電圧V1の周波数f1と第2電圧V2の周波数f2とが同じことを示す。
【0090】
電位勾配Hは、コア電極50及びセンター電極rcに対応して形成される電位勾配Hcと、単位電極r1に対応して形成される電位勾配H1と、単位電極r2に対応して形成される電位勾配H2と、単位電極r3に対応して形成される電位勾配H3と、単位電極r4に対応して形成される電位勾配H4とを含む。電位勾配Hc及び電位勾配H1~電位勾配H4の各々は、第1液晶ユニットA1の径方向RDに対する電位勾配である。
【0091】
電位勾配Hc及び電位勾配H1~電位勾配H4の各々は、高抵抗層52の作用により、滑らかな曲線状であり、段差及び極値(極小値及び極大値)を有しない。
【0092】
電位勾配Hcは、例えば、二次曲線によって表される。電位勾配Hc及び電位勾配H1~電位勾配H4の各々は、光軸Cから径方向RDに向かって電位が低くなるように形成される。また、電位勾配Hc及び電位勾配H1~電位勾配H4については、光軸Cから離れる電位勾配ほど傾斜が急になる。
【0093】
液晶層53に電位勾配Hが形成されると、液晶層53には、電位勾配Hに応じた屈折率勾配が形成される。その結果、液晶層53に入射する入射光は、電位勾配Hc及び電位勾配H1~電位勾配H4の各々に対応する屈折角で光軸Cから離れるように屈折し、液晶層53から出射光として出射される。光軸Cから離れる電位勾配ほど傾斜が急になるため、光軸Cから離れるほど屈折角が大きくなり、出射光は光軸Cから離れるように発散される。その結果、第1液晶ユニットA1を凹型フレネルレンズとして機能させることができる。
【0094】
以上、
図6~
図7(b)を参照して説明したように、実施形態1によれば、コア電極50及びセンター電極rcに対応して高抵抗層52を設けるとともに、複数の単位電極rnに対応して複数の高抵抗層52を設けているため、電位勾配Gc及び電位勾配G1~電位勾配G4の各々、並びに、電位勾配Hc及び電位勾配H1~電位勾配H4の各々は、滑らかな曲線状になり、段差を有しない。従って、出射光の波面収差を抑制できる。また、電位勾配Gc及び電位勾配G1~電位勾配G4の各々、並びに、電位勾配Hc及び電位勾配H1~電位勾配H4の各々は、極値を有しない。従って、入射光を精度良く屈折させることができるので、第1液晶ユニットA1によって精度の高いフレネルレンズを形成できる。第2液晶ユニットA2についても同様である。
【0095】
次に、
図8を参照して、眼鏡1の動作について説明する。
図8は、眼鏡システム100の電気的構成を示す図である。
図8に示すように、眼鏡1の制御部17は、コントローラー55と、第1電源回路PW1と、第2電源回路PW2とを含む。コントローラー55は、プロセッサー57と、メモリー59とを含む。操作部19は、第1スイッチ65と、第2スイッチ67とを含む。
【0096】
コントローラー55は、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。具体的には、プロセッサー57が、メモリー59に記憶されたコンピュータープログラムを実行して、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。メモリー59は、各種データ及びコンピュータープログラムを記憶する。
【0097】
第1電源回路PW1は、コントローラー55の制御を受けて、第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2の各々の第1リード線71を介して、第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2の各々のコア電極50及び複数の第1電極E1に第1電圧V1印加する。第1電圧V1は制御電圧CVの一例である。第1電圧V1は、交流電圧であり、周波数f1を有する。第1電圧V1は、例えば、矩形波である。第1電圧V1は、実効値V1e及び最大振幅V1mを有する。また、第1電圧V1は電圧値v1を有する。
【0098】
第2電源回路PW2は、コントローラー55の制御を受けて、第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2の各々の第2リード線72を介して、第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2の各々のセンター電極rc及び複数の第2電極E2に第2電圧V2を印加する。第2電圧V2は制御電圧CVの一例である。第2電圧V2は、交流電圧であり、周波数f2を有する。第2電圧V2は、例えば、矩形波である。第2電圧V2は、実効値V2e及び最大振幅V2mを有する。また、第2電圧V2は電圧値v2を有する。
【0099】
第1電圧V1をコア電極50及び複数の第1電極E1に印加するとともに、第2電圧V2をセンター電極rc及び複数の第2電極E2に印加することによって、液晶層53に第1電圧V1及び第2電圧V2が印加されて、液晶層53に電位勾配が形成される。
【0100】
コントローラー55は、操作部19からの内部操作信号又は操作装置200からの外部操作信号に応答して第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御して、第1電圧V1及び第2電圧V2を制御する。第1電圧V1及び第2電圧V2の制御によって、液晶層53の電位勾配を制御できる。具体的には、コントローラー55は、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御して、第1電圧V1と第2電圧V2との差分値DFF(=V1-V2)を制御する。差分値DFFの制御によって、液晶層53の電位勾配を制御できる。その結果、光学素子LNの焦点距離fを制御できる。
【0101】
本明細書において、コントローラー55による第1電圧V1及び第2電圧V2の制御は、電圧値v1及び電圧値v2の制御であってもよいし、周波数f1及び周波数f2の制御であってもよいし、電圧値v1及び電圧値v2並びに周波数f1及び周波数f2の制御であってもよい。また、コントローラー55による差分値DFFの制御は、電圧値v1と電圧値v2との差分値DV(=v1-v2)の制御であってもよいし、周波数f1と周波数f2との差分値DF(=f1-f2)の制御であってもよいし、差分値DV及び差分値DFの制御であってもよい。なお、液晶層53に電位勾配を形成するためには、少なくとも電圧値v1と電圧値v2とが異なればよく、差分値DFはゼロであってもよい。また、差分値DVをゼロにすることによって、液晶層53の電位勾配を消滅させることができる。
【0102】
更に具体的には、第1電圧V1の電圧値v1が第2電圧V2の電圧値v2よりも小さくなるように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、光学素子LN(具体的には液晶層53)は凸レンズとして機能する。液晶層53に電位勾配G(
図3(a))が形成されるためである。また、電圧値v1が電圧値v2よりも小さい場合、電圧値v1と電圧値v2との差分値DV(=v1-v2)の絶対値が大きい程、凸レンズとしての光学素子LNの焦点距離fの絶対値が小さくなる。従って、電圧値v1が電圧値v2よりも小さい場合、差分値DVの絶対値が増加するように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、凸レンズとしての光学素子LNの焦点距離fの絶対値が減少する。
【0103】
なお、本明細書において、電圧値v1は、第1電圧V1の実効値V1e又は最大振幅V1mを示す。電圧値v2は、第2電圧V2の実効値V2e又は最大振幅V2mを示す。また、差分値DVは、実効値V1eと実効値V2eとの差分値(=V1e-V2e)、又は、最大振幅V1mと最大振幅V2mとの差分値(=V1m-V2m)を示す。
【0104】
また、電圧値v1が電圧値v2よりも小さく、周波数f1が周波数f2よりも低い場合、周波数f1と周波数f2との差分値DF(=f1-f2)の絶対値が大きい程、凸レンズとしての光学素子LNの焦点距離fの絶対値が小さくなる。従って、電圧値v1が電圧値v2よりも小さく、周波数f1が周波数f2よりも低い場合、差分値DFの絶対値が増加するように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、凸レンズとしての光学素子LNの焦点距離fの絶対値が減少する。
【0105】
一方、第1電圧V1の電圧値v1が第2電圧V2の電圧値v2よりも大きくなるように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、光学素子LN(具体的には液晶層53)は凹レンズとして機能する。液晶層53に電位勾配H(
図3(d))が形成されるためである。また、電圧値v1が電圧値v2よりも大きい場合、電圧値v1と電圧値v2との差分値DVの絶対値が大きい程、凹レンズとしての光学素子LNの焦点距離fの絶対値が小さくなる。従って、電圧値v1が電圧値v2よりも大きい場合、差分値DVの絶対値が増加するように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、凹レンズとしての光学素子LNの焦点距離fの絶対値が減少する。
【0106】
また、電圧値v1が電圧値v2よりも大きく、周波数f1が周波数f2よりも高い場合、周波数f1と周波数f2との差分値DFの絶対値が大きい程、凹レンズとしての光学素子LNの焦点距離fの絶対値が小さくなる。従って、電圧値v1が電圧値v2よりも大きく、周波数f1が周波数f2よりも高い場合、差分値DFの絶対値が増加するように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、凹レンズとしての光学素子LNの焦点距離fの絶対値が減少する。
【0107】
さらに、電圧値v1と電圧値v2とが同一になるように、かつ、周波数f1と周波数f2とが同一になるように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、液晶層53の電位勾配が消滅する。従って、光学素子LNは、凸レンズ及び凹レンズとしての機能を喪失する。その結果、光学素子LNは、光を収束及び発散させず、光学素子LNに垂直に入射した光は直進する。
【0108】
例えば、装着者HMが第1スイッチ65を押下すると、第1スイッチ65は、コントローラー55に第1内部操作信号を送信する。コントローラー55は、第1内部操作信号を受信すると、差分値DFF(例えば差分値DV)の絶対値が増加するように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。その結果、焦点距離fの絶対値が減少する。
【0109】
一方、例えば、装着者HMが第2スイッチ67を押下すると、第2スイッチ67は、コントローラー55に第2内部操作信号を送信する。コントローラー55は、第2内部操作信号を受信すると、差分値DFF(例えば差分値DV)の絶対値が減少するように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。その結果、焦点距離fの絶対値が増加する。
【0110】
例えば、第1スイッチ65は、一対のテンプル11のうちの一方のテンプル11(以下、この例において「特定テンプル11」と記載する。)の上端面に配置され、第2スイッチ67は、特定テンプル11の下端面に配置される。特定テンプル11の上端面に配置される第1スイッチ65の位置は、特定テンプル11の下端面に配置される第2スイッチ67の位置よりも、丁番9から離れていることが好ましい。なぜなら、人差し指と親指とで特定テンプル11を挟むことで、人差し指で上端面の第1スイッチ65を容易に操作でき、親指で下端面の第2スイッチ67を容易に操作できるからである。
【0111】
以上、
図8を参照して説明したように、実施形態1によれば、制御電圧CV(具体的には第1電圧V1及び第2電圧V2)を制御することによって、容易に液晶層53の電位勾配を制御できる。従って、制御電圧CVの制御によって、光学素子LNの焦点距離fを、負の値(凹レンズに対応)から正の値(凸レンズに対応)まで、比較的広い範囲にわたって容易に変更できる。つまり、眼鏡1の度数を広範囲にわたって容易に変更できる。特に、鋸歯状の電位勾配を形成しているため、光学素子LNの厚みが大きくなることを抑制しつつ、制御電圧CVの制御によって、光学素子LNの焦点距離fを、更に広い範囲にわたって変更できる。
【0112】
(実施形態2)
図9~
図11を参照して、本発明の実施形態2に係る眼鏡システム100Aについて説明する。眼鏡システム100Aは、装着者HMの視線方向に応じて焦点距離fを制御する点で、実施形態1に係る眼鏡システム100と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と相違する点を主に説明する。
【0113】
図9は、眼鏡システム100Aを示す斜視図である。
図10は、眼鏡システム100Aの電気的構成を示す図である。
【0114】
図9に示すように、眼鏡システム100Aは、眼鏡1Aと、操作装置200とを備える。眼鏡1Aは、実施形態1に係る眼鏡1の構成に加えて、一対の眼検出部75をさらに含む。眼検出部75は、装着者HMの眼の動きを検出する。具体的には、一対の眼検出部75は、それぞれ、装着者HMの左眼の動き及び右眼の動きを検出する。
【0115】
一対の眼検出部75はフレームFに搭載される。具体的には、一対の眼検出部75のうちの一方の眼検出部75は、一対のリム3のうちの一方のリム3(例えば、一方のリム3の上部)に設置される。他方の眼検出部75は、他方のリム3(例えば、他方のリム3の上部)に設置される。
【0116】
制御部17は、眼検出部75の検出結果に基づいて、液晶層53の制御電圧CVを制御する。
【0117】
その結果、実施形態2によれば、装着者HMが操作部19及び操作装置200を操作することなく、液晶層53の電位勾配が制御されて、光学素子LNの焦点距離fを変更できる。つまり、眼検出部75による眼の動きの検出結果に応じて光学素子LNの焦点距離fを自動で変更できる。焦点距離fを自動で変更できるため、装着者HMの利便性を向上できる。焦点距離fが自動で変更されると、光学素子LNの度数が自動で変更される。
【0118】
具体的には、
図10に示すように、コントローラー55は、アイトラッキング技術を実行することによって、眼検出部75の各々の検出結果に基づいて、装着者HMの両眼のうちの一方の眼の視線方向SLLと他方の眼の視線方向SLRとを算出する。そして、コントローラー55は、視線方向SLL及び/又は視線方向SLRに基づいて、液晶層53の制御電圧CVを制御する。従って、視線方向SLL及び/又は視線方向SLRに応じて、液晶層53の電位勾配が制御される。その結果、視線方向SLL及び/又は視線方向SLRに応じて、光学素子LNの焦点距離fが変更される。また、コントローラー55は、視線方向SLLと視線方向SLRとから、装着者HMの注視点の位置を算出することもできる。注視点とは、視線方向SLLと視線方向SLRとの交点のことである。
【0119】
アイトラッキング技術の第1例では、眼検出部75が眼の動きを光学的に検出し、コントローラー55が眼検出部75の検出結果に基づいて視線方向を算出する。第1例の具体例として、角膜反射法、暗瞳孔法、明瞳孔法、又は強膜反射法について説明する。
【0120】
角膜反射法、暗瞳孔法、及び明瞳孔法では、眼検出部75の各々は、LED(Light Emitting Diode)のような光源と、カメラ(例えば、ビデオカメラ)のような撮像部とを含む。
【0121】
そして、角膜反射法では、光源が光(例えば赤外光)を眼に照射し、撮像部が眼を撮像する。そして、コントローラー55は、撮像部が出力した眼の映像から、瞳孔の位置と、角膜表面における光源の角膜反射像(具体的には、プルキニエ像)の位置とを検出する。さらに、コントローラー55は、瞳孔の位置と光源の角膜反射像の位置とに基づいて視線方向を算出する。
【0122】
また、暗瞳孔法では、光源が、撮像部のレンズ光軸から離間した位置に設置される。そして、光源が眼に光(例えば赤外光)を照射し、撮像部が眼を撮像する。撮像部が出力した眼の映像のうち、瞳孔部分が暗くなる。そこで、コントローラー55は、映像から暗い瞳孔部分を抽出して、瞳孔部分の動きに基づいて視線方向を算出する。
【0123】
さらに、明瞳孔法では、光源の光軸と撮像部のレンズ光軸とが同軸になるように、光源を設置する。そして、光源が眼に光(例えば赤外光)を照射し、撮像部が眼を撮像する。撮像部が出力した眼の映像のうち、瞳孔部分が明るくなる。そこで、コントローラー55は、映像から明るい瞳孔部分を抽出して、瞳孔部分の動きに基づいて視線方向を算出する。
【0124】
瞳孔部分を眼の状態の検出に利用する他の例として、瞳孔の開き具合の情報を検知して、眼鏡1Aの光透過率を制御してもよい。この例は、後述するように、装着者HMが羞明を患っている場合に有効である。さらに、一般的に近くを見る時には、瞳孔が収縮する現象があるので、瞳孔の開き具合と、瞳孔の開き速度とを、視点の遠近に換算することもできる。
【0125】
また、強膜反射法では、眼検出部75の各々は、発光ダイオードのような発光素子と、フォトダイオード又はフォトトランジスターのような受光素子とを含む。そして、発光素子が眼の角膜と強膜との境界部分に光(例えば赤外光)を照射し、受光素子が境界部分からの反射光を受光する。眼が動くと、光(例えば、光スポット)が角膜を被う部分と強膜を被う部分との割合が変化するため、反射光量が変化する。そこで、受光素子が反射光量を測定し、コントローラー55が反射光量の変化に基づいて視線方向を算出する。
【0126】
アイトラッキング技術の第2例では、眼電位法によって視線方向を検出する。具体的には、眼検出部75が眼の周辺の2箇所の電位差を検出し、コントローラー55が電位差に基づいて眼球の回転角度を算出する。そして、コントローラー55は、眼球の回転角度に基づいて視線方向を算出する。眼電位法では、眼検出部75の各々は、眼の周辺の2箇所に貼付される2つの電極と、2つの電極の電位差を検出する電位差計とを含む。
【0127】
次に、
図11を参照して、視線方向に基づく電圧制御処理について説明する。
図11は、電圧制御処理を示すフローチャートである。
図11の説明では、第1電圧V1と第2電圧V2との差分値DFF(=V1-V2)は、差分値DV(=v1-v2)を示す。
図11に示すように、ルーチンはステップS1~ステップS13を含む。
【0128】
ステップS1において、コントローラー55は、アイトラッキング技術を実行することによって、眼検出部75の各々の検出結果に基づいて、視線方向SLLと視線方向SLRとを算出する。また、コントローラー55は、視線方向SLL及び視線方向SLRを算出する際に、視線方向SLLと水平面とがなす角度θLと、視線方向SLRと水平面とがなす角度θRとを算出する。
【0129】
ステップS3において、コントローラー55は、角度θLと角度θRとの平均値θLRを算出する。
【0130】
ステップS5において、コントローラー55は、平均値θLRが、俯角を示しており、かつ、所定角度θth以上か否かを判定する。所定角度θthは、例えば、ゼロ度よりも大きく、90度未満である。俯角は、水平面に対して下向きの角度を示す。
【0131】
ステップS5で肯定判定をした場合、つまり、平均値θLRが、俯角を示しており、かつ、所定角度θth以上であると判定した場合(ステップS5でYes)、コントローラー55は処理をステップS7に進める。ステップS5での肯定判定は、装着者HMの視線が水平面に対して下方を向いていることを示している。一方、ステップS5での否定判定は、装着者HMの視線が水平方向又は水平面に対して上方を向いていることを示している。
【0132】
ステップS7において、コントローラー55は、前回のステップS5で肯定判定をしたか否かを判定する。前回のステップS5は、前回のルーチンで実行されたステップS5を示す。
【0133】
前回のステップS5で肯定判定をしたと判定した場合(ステップS7でYes)、コントローラー55は処理をステップS1に進める。
【0134】
一方、前回のステップS5で肯定判定しなかったと判定した場合(ステップS7でNo)、コントローラー55は処理をステップS9に進める。
【0135】
ステップS9において、コントローラー55は、第1電圧V1と第2電圧V2との差分値DFFが、現時点の差分値DFFに対して変更されるように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。その結果、光学素子LNの焦点距離fが、差分値DFFに応じて変化する。そして、処理はステップS1に進む。
【0136】
具体的には、コントローラー55は、差分値DFFが負の値を示すように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。
【0137】
例えば、コントローラー55は、差分値DFFが第1所定値PV1から第2所定値PV2になるように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。例えば、第1所定値PV1はゼロであり、第2所定値PV2は負の値である。この例では、差分値DFFが第1所定値PV1から第2所定値PV2になると、光学素子LNの各々は、凸レンズ及び凹レンズとしての機能を喪失している状態から、凸レンズに変化する。例えば、第1所定値PV1は正の値であり、第2所定値PV2は負の値である。この例では、差分値VDが第1所定値PV1から第2所定値PV2になると、光学素子LNの各々は、凹レンズから凸レンズに変化する。
【0138】
一方、ステップS5で否定判定をした場合(ステップS5でNo)、コントローラー55は処理をステップS11に進める。ステップS5での否定判定は、平均値θLRが仰角を示しているとの判定、又は、平均値θLRが、俯角を示しており、かつ、所定角度θthより小さいとの判定を示す。仰角は、水平面に対して上向きの角度を示す。
【0139】
ステップS11において、コントローラー55は、前回のステップS5で否定判定をしたか否かを判定する。
【0140】
前回のステップS5で否定判定をしたと判定した場合(ステップS11でYes)、コントローラー55は処理をステップS1に進める。
【0141】
一方、前回のステップS5で否定判定をしなかったと判定した場合(ステップS11でNo)、コントローラー55は処理をステップS13に進める。
【0142】
ステップS13において、コントローラー55は、第1電圧V1と第2電圧V2との差分値DFFが、現時点の差分値DFFに対して変更されるように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。その結果、光学素子LNの焦点距離fが、差分値DFFに応じて変化する。そして、処理はステップS1に進む。
【0143】
具体的には、コントローラー55は、差分値DFFがゼロ又は正の値を示すように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。
【0144】
例えば、コントローラー55は、差分値DFFが第2所定値PV2から第1所定値PV1になるように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。例えば、第2所定値PV2は負の値であり、第1所定値PV1はゼロである。この例では、差分値DFFが第2所定値PV2から第1所定値PV1になると、光学素子LNの各々は、凸レンズから、凸レンズ及び凹レンズとしての機能を喪失している状態に変化する。例えば、第2所定値PV2は負の値であり、第1所定値PV1は正の値である。この例では、差分値DFFが第2所定値PV2から第1所定値PV1になると、光学素子LNの各々は、凸レンズから凹レンズに変化する。
【0145】
なお、ステップS3を省略してもよい。ステップS3を省略すると、ステップS5において、コントローラー55は、角度θLと角度θRとのうちのいずれかが、俯角を示しており、かつ、所定角度θth以上か否かを判定する。
【0146】
以上、
図11を参照して説明したように、実施形態2によれば、装着者HMが操作部19及び操作装置200を操作することなく、視線方向SLL及び/又は視線方向SLRに応じて、光学素子LNの焦点距離fを変更できる。
【0147】
例えば、正視の装着者HMの視線が水平面よりも上方又は水平方向を向いている場合(例えば、装着者HMが中距離又は遠距離の対象物を視ている場合)、光学素子LNが凸レンズから凸レンズ及び凹レンズとしての機能を喪失している状態に変化するか(ステップS13)、又は、光学素子LNが凸レンズ及び凹レンズとしての機能を喪失している状態に維持される(ステップS11でYes)。一方、例えば、正視の装着者HMの視線が水平方向よりも下方向を向いている場合(例えば、装着者HMが近距離の対象物を視ている場合)、光学素子LNが凸レンズ及び凹レンズとしての機能を喪失している状態から凸レンズに変化するか(ステップS9)、又は、光学素子LNの凸レンズとしての機能が維持される(ステップS7でYes)。
【0148】
従って、正視の装着者HMが操作部19及び操作装置200を操作することなく、眼鏡1Aを、中遠距離用又は近距離用に自動で切り替えることができる。
【0149】
例えば、近視及び遠視又は近視の装着者HMの視線が水平面よりも上方又は水平方向を向いている場合、光学素子LNが凸レンズから凹レンズに変化するか(ステップS13)、又は、光学素子LNの凹レンズとしての機能が維持される(ステップS11でYes)。一方、例えば、近視及び遠視又は近視の装着者HMの視線が水平面よりも下方を向いている場合、光学素子LNが凹レンズから凸レンズに変化するか(ステップS9)、又は、光学素子LNの凸レンズとしての機能が維持される(ステップS7でYes)。
【0150】
従って、近視及び遠視又は近視の装着者HMが操作部19及び操作装置200を操作することなく、眼鏡1Aを、中遠距離用又は近距離用に自動で切り替えることができる。
その他、実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果を有する。
【0151】
また、人間が近距離の対象物を見る場合には、視線が中立位置よりも内側に寄る傾向がある。また、人間が中距離~遠距離の対象物を見る場合には、視線が中立位置から外側に寄る傾向がある。これらの傾向を利用して遠近の制御を行うこともできる。「中立位置」は、人間の両眼のうちの一方の眼の視線と、他方の眼の視線とが略平行であり、かつ、双方の視線が真正面を向いている位置を示す。
【0152】
なお、
図11のステップS9において、コントローラー55は、差分値DFFがゼロを示すように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御し、ステップS13において、コントローラー55は、差分値DFFが正の値を示すように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御してもよい。
【0153】
また、眼鏡1Aは、装着者HMの頭部の動きを検出する頭検出部を有していてもよい。そして、制御部17は、頭検出部の検出結果に基づいて、制御電圧CVを制御して、液晶層53の電位勾配を制御してもよい。頭検出部は、例えば、加速度センサー及び/又はジャイロセンサーである。
【0154】
また、光学素子LNは、仮想現実(VR)用眼鏡に適用されてもよいし、拡張現実(AR)用眼鏡に適用されてもよい。この場合も、複雑なレンズ移動機構などを必要とせず、常に装着者HMの眼の特性に合った焦点制御を実現できる。
【0155】
(実施形態3)
図12~
図14を参照して、本発明の実施形態3に係る眼鏡システム100Bについて説明する。眼鏡システム100Bは、光透過率を制御可能である点で、実施形態1に係る眼鏡システム100と主に異なる。以下、実施形態3が実施形態1と相違する点を主に説明する。
【0156】
図12は、眼鏡システム100Bを示す斜視図である。
図12に示すように、眼鏡システム100Bは、眼鏡1Bと、操作装置200とを備える。眼鏡1Bは、実施形態1に係る眼鏡1の構成に加えて、環境光検出部77をさらに含む。環境光検出部77は、眼鏡1Bの周囲環境の明るさを検出する。環境光検出部77は、例えば、眼鏡1Bの周囲環境の光量を検出する環境光センサーである。環境光検出部77はフレームFに搭載される。具体的には、環境光検出部77は、一対のリム3のうちの一方のリム3(例えば、一方のリム3のうち、ブリッジ5に対する外側端部)に設置される。また、眼鏡1Bは、実施形態1に係る眼鏡1の一対の光学素子LNに代えて一対の光学素子LNAを含み、眼鏡1の制御部17に代えて制御部17Bを含み、眼鏡1の操作部19に代えて操作部19Bを含む。光学素子LNAはレンズとして機能する。
【0157】
次に、
図13(a)及び
図13(b)を参照して、光学素子LNAについて説明する。
図13(a)は、
図12のXIII-XIII線に沿った光学素子LNAの断面図である。
図13(a)に示すように、光学素子LNAは、実施形態1に係る光学素子LNの構成に加えて、光透過率を制御可能な光透過ユニットA3と、第4基板36とをさらに含む。第4基板36は、第1基板31と同様の形状、材質、及び色彩を有する。光透過ユニットA3は、第3基板35と第4基板36との間に配置される。なお、第1液晶ユニットA1は、第1基板31を介して、装着者HMの眼EYに対向する。
【0158】
図13(b)は、
図13(a)に示す光透過ユニットA3を示す断面図である。
図13(b)に示すように、光透過ユニットA3は、第4電極E4と、光透過層85と、第5電極E5とを含む。第4電極E4には第4電圧V4が印加される。第4電圧V4は、直流電圧又は交流電圧である。第4電極E4は、面状であり、単一の層として形成される。第5電極E5には第5電圧V5が印加される。実施形態3では、第5電極E5は接地されており、第5電圧V5は接地電位(0V)に設定される。第5電極E5は、面状であり、単一の層として形成される。
【0159】
光透過層85は光を透過する。光透過層の光透過率は制御可能である。光透過率は、例えば、光透過層85に入射する光の光量Iaに対する光透過層85から出射する光の光量Ibの比率(=Ib/Ia)を示す。光透過層85は、第4電極E4と第5電極E5との間に配置される。
【0160】
光透過層85は、例えば、エレクトロクロミック物質を含む。エレクトロクロミック物質とは、電圧を印加することによって光透過率を可逆的に変化させることの可能な物質のことである。具体的には、エレクトロクロミック物質とは、電圧を印加することによって可視光の吸収スペクトルが可逆的に変化し、着色又は消色を起こす物質のことである。
【0161】
エレクトロクロミック物質は、例えば、無機エレクトロクロミック化合物、有機エレクトロクロミック化合物、又は、エレクトロクロミズムを示す導電性高分子である。具体的には、例えば、エレクトロクロミック物質として、色素系、ポリマー系、金属錯体系、若しくは金属酸化物系のエレクトロクロミック化合物、又は、炭素系の材料を用いることができる。
【0162】
色素系又はポリマー系のエレクトロクロミック化合物は、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、若しくはメタロセン系の低分子系有機エレクトロクロミック化合物、又は、ポリアニリン若しくはポリチオフェンのような導電性高分子化合物である。
【0163】
金属錯体系の化合物は、例えば、鉄シアノ錯体、ルテニウムシアノ錯体、オスミウムシアノ錯体、タングステンシュウ酸錯体、又は希土類ジフタロシアニン錯体である。金属酸化物系の化合物は、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化インジウム、酸化チタン、酸化ニッケル、又は酸化バナジウムである。炭素系の材料は、例えば、機能性グラフェン誘導体、カーボンナノチューブのような導電性炭素材料、その他の炭素同素体である。
【0164】
次に、
図14を参照して、眼鏡1Bの動作について説明する。
図14は、眼鏡システム100Bの電気的構成を示す図である。
図14に示すように、眼鏡1Bの制御部17Bは、実施形態1に係る制御部17の構成に加えて、第3電源回路PW3をさらに含む。操作部19Bは、実施形態1に係る操作部19の構成に加えて、遮断スイッチ87Lと、遮断スイッチ87Rとをさらに含む。
【0165】
コントローラー55は、操作部19Bからの内部操作信号又は操作装置200からの外部操作信号に応答して第3電源回路PW3を制御する。具体的には、プロセッサー57が、メモリー59に記憶されたコンピュータープログラムを実行して、第3電源回路PW3を制御する。第3電源回路PW3は、コントローラー55の制御を受けて、光透過ユニットA3の第4電極E4に第4電圧V4印加する。その結果、第4電圧V4が、第4電極E4を介して光透過層85に印加される。
【0166】
すなわち、コントローラー55は、第3電源回路PW3を介して第4電圧V4を制御し、第4電極E4を介して光透過層85に第4電圧V4を印加して、光透過層85の光透過率を制御する。光透過層85の光透過率は、第4電圧V4の大きさに応じて変化する。
【0167】
例えば、装着者HMが遮断スイッチ87Lを押下すると、遮断スイッチ87Lは、コントローラー55に、第3内部操作信号を送信する。また、光透過層85の光透過率が略ゼロ%であるときに、装着者HMが遮断スイッチ87Lを押下すると、遮断スイッチ87Lは、コントローラー55に、第4内部操作信号を送信する。コントローラー55は、第3内部操作信号又は第4内部操作信号を受信すると、一対の光学素子LNAのうちの一方の光学素子LNA(以下、「光学素子LNAL」と記載する場合がある。)の第4電極E4に印加する第4電圧V4の制御を開始する。なお、遮断スイッチ87Rは遮断スイッチ87Lと同様に動作する。ただし、コントローラー55は、遮断スイッチ87Rが押下されると、他方の光学素子LNA(以下、「光学素子LNAR」と記載する場合がある。)の第4電極E4に印加する第4電圧V4の制御を開始する。
【0168】
例えば、コントローラー55は、遮断スイッチ87Lから第3内部操作信号を受信すると、光学素子LNALの光透過層85の光透過率が最小値(例えば略ゼロ%)になるように、第3電源回路PW3を介して第4電圧V4を制御する。その結果、光学素子LNALの光透過層85の光透過率が最小値(例えば略ゼロ%)に設定される。
【0169】
例えば、コントローラー55は、遮断スイッチ87Lから第4内部操作信号を受信すると、光学素子LNALの光透過層85の光透過率が略ゼロ%よりも大きくなるように、第3電源回路PW3を介して第4電圧V4を制御する。例えば、コントローラー55は、遮断スイッチ87Lから第4内部操作信号を受信すると、光学素子LNALの光透過層85の光透過率が最大値(例えば略100%)になるように、第3電源回路PW3を介して第4電圧V4を制御する。例えば、コントローラー55は、遮断スイッチ87Lから第4内部操作信号を受信すると、光学素子LNALの光透過層85の光透過率が略0%にされる前の光透過率になるように、第3電源回路PW3を介して第4電圧V4を制御する。
【0170】
さらに、コントローラー55は、環境光検出部77の検出結果に基づいて、第3電源回路PW3を制御して、一対の光学素子LNAの各々に対する第4電圧V4を制御する。その結果、装着者HMが操作部19B及び操作装置200を操作することなく、眼鏡1Bの周囲環境の明るさに応じて、一対の光学素子LNAの各々の光透過層85の光透過率を自動で制御できる。例えば、コントローラー55は、眼鏡1Bの周囲環境が明るい程(つまり、周囲環境の光量が多い程)、一対の光学素子LNAの各々の光透過層85の光透過率が小さくなるように、第4電圧V4を制御する。
【0171】
以上、
図13(a)及び
図13(b)を参照して説明したように、実施形態3によれば、第4電圧V4を制御することによって、光透過層85の光透過率を容易に制御できる。つまり、光学素子LNAの光透過率を容易に制御できる。その結果、眼鏡1Bを様々な用途に応用できる。
【0172】
例えば、眼鏡1Bを弱視又は斜視の治療に応用できる。具体的には、装着者HMが弱視又は斜視を患っている場合、コントローラー55は、一対の眼のうちの正常な眼に対応する光学素子LNAの光透過層85の光透過率が略ゼロ%になるように、第4電圧V4を制御する。従って、光学素子LNAが眼帯として機能し、光学素子LNAに対応する眼に入射する光を遮断できる。その結果、弱視又は斜視の治療に有用である。また、眼帯を装着することが要求されないので、装着者HMの煩わしさを低減できる。
【0173】
また、実施形態3によれば、コントローラー55は、光透過層85の光透過率が略ゼロ%になっている時間(以下、「眼帯機能時間」と記載する。)を計測して、眼帯機能時間の情報を記憶することができる。そして、コントローラー55は、端子23及び端子a5を介して、眼帯機能時間の情報を操作装置200に送信することができる。操作装置200(具体的には操作装置200のメモリー)は眼帯機能時間の情報を記憶することができる。従って、弱視又は斜視を患っている装着者HM又は装着者HMの関係者(例えば、保護者又は医療従事者)は、装着者HMが眼帯として機能する光学素子LNAによって弱視又は斜視の治療を行った時間を容易に管理できる。
【0174】
さらに、実施形態3によれば、環境光検出部77を有しているため、眼鏡1Bの周囲環境の明るさに応じて、一対の光学素子LNAの各々の光透過層85の光透過率を自動で制御できる。つまり、装着者HMの眼に入射する光量を自動で制御できる。その結果、眼鏡1Bを操作することが要求されないので、装着者HMの煩わしさを低減できる。特に、眼鏡1Bは、装着者HMが羞明を患っている場合に有用である。なぜなら、装着者HMが操作部19B及び操作装置200を操作することなく、眼鏡1Bの周囲環境が明るい程、光透過層85の光透過率が小さくなるように、第4電圧V4が自動で制御されるからである。
【0175】
さらに、実施形態3によれば、偏光板を設けることを要求されないため、例えば、光学素子LNAの光透過率を最大で90%以上にすることもできる。
その他、実施形態3によれば、実施形態1と同様の効果を有する。
【0176】
なお、操作部19Bは、第3スイッチ及び第4スイッチを有していてもよい。例えば、コントローラー55は、第3スイッチの押下に応答して、光透過層85の光透過率が大きくなるように、第3電源回路PW3を介して第4電圧V4を制御する。その結果、光透過層85の光透過率を大きくできる。例えば、コントローラー55は、第4スイッチの押下に応答して、光透過層85の光透過率が小さくなるように、第3電源回路PW3を介して第4電圧V4を制御する。その結果、光透過層85の光透過率を小さくできる。例えば、装着者HMが羞明を患っている場合に、装着者HMは、第3スイッチ又は第4スイッチを操作することで、自分に適するように、光透過層85の光透過率を手動で調整できる。
【0177】
(実施形態4)
図15及び
図16を参照して、本発明の実施形態4に係る眼鏡システム100Cについて説明する。眼鏡システム100Cは、圧力を検出する点で、実施形態1に係る眼鏡システム100と主に異なる。以下、実施形態4が実施形態1と相違する点を主に説明する。
【0178】
図15は、眼鏡システム100Cを示す斜視図である。
図15に示すように、眼鏡システム100Cは、眼鏡1Cと、操作装置200とを備える。眼鏡1Cは、実施形態1に係る眼鏡1の構成に加えて、第1圧力検出部89(圧力検出部)と、一対の第2圧力検出部95(一対の圧力検出部)とをさらに含む。
【0179】
第1圧力検出部89は、第1圧力検出部89に加えられる圧力を検出する。第1圧力検出部89はフレームFに搭載される。具体的には、第1圧力検出部89は、一対のノーズパッド15のうちの一方のノーズパッド15に設置される。更に具体的には、第1圧力検出部89は、一方のノーズパッド15のうち、他方のノーズパッド15と対向している面に設置される。
【0180】
従って、装着者HMが眼鏡1Cを装着すると、装着者HMの鼻が第1圧力検出部89を押圧するため、第1圧力検出部89は圧力を検出する。その結果、第1圧力検出部89が圧力を検出したことは、装着者HMが眼鏡1Cを装着したことを示す。一方、装着者HMが眼鏡1Cを外すと、装着者HMの鼻による第1圧力検出部89の押圧が解除されるため、第1圧力検出部89は圧力を検出しない。その結果、第1圧力検出部89が圧力を検出しないことは、装着者HMが眼鏡1Cを外したことを示す。
【0181】
第2圧力検出部95の各々は、第2圧力検出部95に加えられる圧力を検出する。一対の第2圧力検出部95はフレームFに搭載される。具体的には、一対の第2圧力検出部95のうちの一方の第2圧力検出部95は、一対のリム3のうちの一方のリム3(例えば、一方のリム3の上部)に設置される。他方の第2圧力検出部95は、他方のリム3(例えば、他方のリム3の上部)に設置される。
【0182】
従って、例えば、装着者HMが眼帯を装着したまま眼鏡1Cを装着すると、眼帯が第2圧力検出部95を押圧するため、第2圧力検出部95は圧力を検出する。その結果、第2圧力検出部95が圧力を検出したことは、装着者HMが眼帯を装着したまま眼鏡1Cを装着したことを示す。一方、装着者HMが眼鏡1Cを外すと、眼帯による第2圧力検出部95の押圧が解除されるため、第2圧力検出部95は圧力を検出しない。その結果、第2圧力検出部95が圧力を検出しないことは、眼帯を装着した装着者HMが眼鏡1Cを外したことを示す。
【0183】
また、例えば、第1圧力検出部89が圧力を検出しており、かつ、第2圧力検出部95が圧力を検出しないことは、装着者HMが、眼帯を装着することなく眼鏡1Cを装着していることを示す。
【0184】
第1圧力検出部89及び第2圧力検出部95の各々は、例えば、圧力センサーである。圧力センサーは、例えば、歪ゲージ抵抗式、半導体ピエゾ抵抗式、静電容量式、又はシリコンレゾナント式により、圧力を検出する。
【0185】
次に、
図16を参照して、眼鏡1Cの動作について説明する。
図16は、眼鏡システム100Cの電気的構成を示す図である。
図16に示すように、眼鏡1Cの制御部17は、第1圧力検出部89の検出結果に基づいて、第1圧力検出部89が圧力を検出した時点から圧力を検出しなくなった時点までの時間、つまり、眼鏡1Cを装着した時間を計測して記憶する。また、制御部17は、第2圧力検出部95の検出結果に基づいて、第2圧力検出部95が圧力を検出した時点から圧力を検出しなくなった時点までの時間、つまり、眼帯を装着したまま眼鏡1Cを装着した時間を計測して記憶する。
【0186】
具体的には、コントローラー55は、第1圧力検出部89からの出力信号のレベルが第1閾値以上か否かを判定する。そして、コントローラー55は、第1圧力検出部89からの出力信号のレベルが第1閾値以上であると判定した時点から、第1圧力検出部89からの出力信号のレベルが第1閾値未満であると判定した時点までの時間(以下、「眼鏡装着時間」と記載する。)を計測して、眼鏡装着時間の情報を記憶する。第1圧力検出部89からの出力信号のレベルが第1閾値以上であると判定したことは、第1圧力検出部89が圧力を検出し、装着者HMが眼鏡1Cを装着したことを示す。一方、第1圧力検出部89からの出力信号のレベルが第1閾値未満であると判定したことは、第1圧力検出部89が圧力を検出していないことを示し、装着者HMが眼鏡1Cを外したことを示す。さらに、コントローラー55は、端子23及び端子a5を介して、眼鏡装着時間の情報を操作装置200に送信する。操作装置200(具体的には操作装置200のメモリー)は眼鏡装着時間の情報を記憶する。
【0187】
従って、実施形態4によれば、装着者HM又は装着者HMの関係者は、装着者HMの眼鏡装着時間を容易に管理できる。例えば、眼鏡1Cを治療又は視力トレーニングに使用している場合、装着者HM又は装着者HMの関係者(例えば、保護者又は医療従事者)は、眼鏡装着時間によって、治療時間又は視力トレーニング時間を容易に管理できる。
【0188】
このようなログ記録機能を利用したトレーニングに加えて、スマートフォンのアプリケーションと度数可変型の眼鏡1Cとの間で、ブルートゥース(登録商標)のような近距離無線通信を利用したトレーニングを提供することもできる。例えば、弱視のトレーニングのためのアプリケーションをスマートフォンに搭載して、アプリケーションによる画面にてトレーニングを行うことができる。さらには、上述の仮想現実(VR)又は拡張現実(AR)のシステムと併用して、ヘッドマウントディスプレイを用いたシステムでのトレーニングを提供できる。この場合、眼鏡1Cと併用してもよいし、光学素子LNのみをヘッドマウントディスプレイに搭載して、焦点制御、光偏向制御、及び光透過率制御といった機能を分担させてもよい。
【0189】
さらには、アプリケーションに人工知能を搭載して、積極的に生活習慣を改善させるようなプログラムを構成するシステムを提供できる。例えば、治療中は自ら進んで眼鏡1Cをかけるように行動を誘起したり、目の疲れを検知して休息を提案したり、明るい場所に居すぎた場合は暗い場所への移動を促したりできる。
【0190】
また、コントローラー55は、第2圧力検出部95からの出力信号のレベルが第2閾値以上か否かを判定する。そして、コントローラー55は、第2圧力検出部95からの出力信号のレベルが第2閾値以上であると判定した時点から、第2圧力検出部95からの出力信号のレベルが第2閾値未満であると判定した時点までの時間(以下、「眼帯装着時間」と記載する。)を計測して、眼帯装着時間の情報を記憶する。第2圧力検出部95からの出力信号のレベルが第2閾値以上であると判定したことは、第2圧力検出部95が圧力を検出し、装着者HMが眼帯を装着したまま眼鏡1Cを装着したことを示す。一方、第2圧力検出部95からの出力信号のレベルが第2閾値未満であると判定したことは、第2圧力検出部95が圧力を検出していないことを示し、眼帯を装着した装着者HMが眼鏡1Cを外したことを示す。さらに、コントローラー55は、端子23及び端子a5を介して、眼帯装着時間の情報を操作装置200に送信する。操作装置200(具体的には操作装置200のメモリー)は、眼帯装着時間の情報を記憶する。
【0191】
従って、実施形態4によれば、装着者HM又は装着者HMの関係者は、装着者HMの眼帯装着時間を容易に管理できる。例えば、眼帯を弱視治療又は斜視治療に使用している場合、装着者HM又は装着者HMの関係者(例えば、保護者又は医療従事者)は、眼帯装着時間によって、眼帯による弱視又は斜視の治療時間を容易に管理できる。
その他、実施形態4によれば、実施形態1と同様の効果を有する。
【0192】
(実施形態5)
図17及び
図18を参照して、本発明の実施形態5に係る眼鏡システム100Dについて説明する。眼鏡システム100Dは、眼鏡システム100Dの所在を報知する機能を有する点で、実施形態1に係る眼鏡システム100と主に異なる。以下、実施形態5が実施形態1と相違する点を主に説明する。
【0193】
図17は、眼鏡システム100Dを示す斜視図である。
図17に示すように、眼鏡システム100Dは、眼鏡1Dと、操作装置200Dとを備える。眼鏡1Dは、実施形態1に係る眼鏡1の構成に加えて、第1報知部97(報知部)と、第2報知部98(報知部)とをさらに含む。
【0194】
第1報知部97及び第2報知部98の各々は、無線送信される第1所定信号FS(所定信号)に応答して、眼鏡1Dの所在を報知する。第1報知部97及び第2報知部98の各々はフレームFに搭載される。
【0195】
具体的には、第1報知部97は、第1所定信号FSに応答して光を出射して、眼鏡1Dの所在を報知する。第1報知部97は、例えば、LED(Light Emitting Diode)のような発光素子である。第1報知部97はブリッジ5に設置される。また、第2報知部98は、第1所定信号FSに応答して音声を出力して、眼鏡1Dの所在を報知する。第2報知部98は、例えば、スピーカーである。第2報知部98は、一対のテンプル11のうちの一方のテンプル11に設置される。
【0196】
また、眼鏡1Dは、実施形態1に係る眼鏡1の制御部17に代えて制御部17Dを含み、眼鏡1の操作部19に代えて操作部19Dを含む。
【0197】
制御部17Dは、操作装置200Dが無線送信した第1所定信号FSを受信すると、光を出射するように第1報知部97を制御するとともに、音声を出力するように第2報知部98を制御する。その結果、第1報知部97が光を出射し、第2報知部98が音声を出力する。
【0198】
従って、実施形態5によれば、眼鏡1Dの所在が不明な場合、眼鏡1Dの持ち主は、操作装置200Dを操作して第1所定信号FSを送信することによって、眼鏡1Dの所在を容易に知ることができる。その結果、眼鏡1Dの紛失を抑制できる。その他、実施形態5によれば、実施形態1と同様の効果を有する。
【0199】
次に、
図18を参照して、眼鏡1Dの動作について説明する。
図18は、眼鏡システム100Dの電気的構成を示す図である。
図18に示すように、眼鏡1Dの制御部17Dは、実施形態1に係る制御部17の構成に加えて、GPSモジュール99と、通信機101とをさらに含む。操作部19Dは、実施形態1に係る操作部19の構成に加えて、探索スイッチ102をさらに含む。また、操作装置200Dは、実施形態1に係る操作装置200の構成に加えて、通信機103をさらに含む。
【0200】
通信機101と通信機103とは相互に無線通信する。そして、通信機101は、通信機103から第1所定信号FSを受信する。通信機101が第1所定信号FSを受信すると、コントローラー55は、光を出射するように第1報知部97を制御するとともに、音声を出力するように第2報知部98を制御する。従って、眼鏡1Dの所在を容易に知ることができる。
【0201】
GPS(Global Positioning System)モジュール99は、眼鏡1Dの位置を検出し、眼鏡1Dの位置情報をコントローラー55に送信する。通信機101が第1所定信号FSを受信すると、コントローラー55は、GPSモジュール99から眼鏡1Dの位置情報を取得する。そして、コントローラー55は、眼鏡1Dの位置情報を操作装置200Dに送信するように、通信機101を制御する。その結果、通信機101は、眼鏡1Dの位置情報を操作装置200Dに送信する。操作装置200Dの通信機103は、眼鏡1Dの位置情報を受信する。そして、ディスプレーa2は、眼鏡1Dの位置情報を表示する。
【0202】
従って、実施形態5によれば、眼鏡1Dの所在が不明な場合、眼鏡1Dの持ち主は、操作装置200Dを操作して第1所定信号FSを送信することによって、眼鏡1Dの位置情報を容易に確認できる。その結果、眼鏡1Dの紛失を更に抑制できる。
【0203】
例えば、眼鏡1Dの持ち主が操作装置200Dの操作キーa3を操作すると、通信機103は、通信機101に第1所定信号FSを送信する。
【0204】
コントローラー55は、操作部19からの内部操作信号に応答して、第2所定信号SSを操作装置200Dに送信するように、通信機101を制御する。その結果、操作装置200Dの通信機103は、第2所定信号SSを受信する。通信機103が第2所定信号SSを受信すると、ディスプレーa2が発光するとともに、スピーカーa4が音声を出力する。
【0205】
従って、実施形態5によれば、操作装置200Dの所在が不明な場合、操作装置200Dの持ち主は、眼鏡1Dの操作部19Dを操作して第2所定信号SSを送信することによって、操作装置200Dの所在を容易に知ることができる。
【0206】
例えば、操作装置200Dの持ち主が探索スイッチ102を押下すると、探索スイッチ102は、コントローラー55に第5内部操作信号を送信する。コントローラー55は、第5内部操作信号を受信すると、第2所定信号SSを操作装置200Dに送信するように、通信機101を制御する。
【0207】
(実施形態6)
図1及び
図19(a)~
図22を参照して、本発明の実施形態6に係る眼鏡システム100(以下、「眼鏡システム100E」と記載する。)について説明する。眼鏡システム100Eは、光を偏向させて出射する点で、実施形態1に係る眼鏡システム100と主に異なる。光の偏向は、入射角度が互いに略同一の複数の光線を、互いに略同一の屈折角で屈折させて出射することを示す。以下、実施形態6が実施形態1と相違する点を主に説明する。
【0208】
実施形態6では、
図1に示すように、眼鏡システム100を眼鏡システム100Eに置き換えて説明する。眼鏡システム100Eは、眼鏡1(以下、「眼鏡1E」と記載する。)と、操作装置200とを備える。そして、眼鏡1Eは、実施形態1に係る眼鏡1の一対の光学素子LNに代えて、一対の光学素子LNBを含む。光学素子LNBは偏向素子として機能する。
【0209】
図19(a)は、光学素子LNBを示す平面図である。
図19(b)は、
図19(a)のXIXB-XIXB線に沿った光学素子LNBの模式的断面図である。
図19(b)は、
図1の光学素子LNを光学素子LNBに置き換えたときのII-II線に沿った断面を示している。
【0210】
図19(a)及び
図19(b)に示すように、光学素子LNBは、実施形態1に係る光学素子LNの構成に加えて、断面視鋸歯状の光学部材PMをさらに含む。また、光学素子LNBは、実施形態1に係る第1液晶ユニットA1に代えて第1液晶ユニットB1を含み、実施形態1に係る第2液晶ユニットA2に代えて第2液晶ユニットB2を含む。第1液晶ユニットB1は液晶層53(以下、「液晶層53A」と記載する場合がある。)を含み、第2液晶ユニットB2は液晶層53(以下、「液晶層53B」と記載する場合がある。)を含む。
【0211】
光学部材PMは光を偏向させる。つまり、光学部材PMは、入射角度が互いに略同一の複数の光線を、互いに略同一の屈折角で屈折させて出射する。光学部材PMは、第1基板31上に設置される。従って、光学部材PMは、第1基板31を介して、第1液晶ユニットB1に対向している。光学部材PMは、例えば、ガラス製の断面視鋸歯状のプリズムである。
【0212】
具体的には、光学部材PMは、複数の光学要素84を含む。複数の光学要素84は、互いに同じ屈折角で光を屈折させる。光学要素84の各々は、例えば、光学素子LNBに垂直に入射する光LTを、第1屈折角θFで屈折させる。その結果、光学部材PMは光を偏向させる。第1屈折角θFは、光学要素84への入射光に対する光学要素84からの出射光の角度を示す。複数の光学要素84は、互いに略平行に並んでいる。光学要素84の各々は三角柱状である。従って、光学要素84の各々は、断面視三角形状(例えば断面視直角三角形状)である。
【0213】
例えば、装着者HMが斜視の眼EYを有し、眼EYが、第3基板35を介して、第2液晶ユニットB2に対向している。そして、光学部材PMは光LTを偏向する。さらに、第1液晶ユニットB1及び第2液晶ユニットB2は、光学部材PMによって偏向された光LTを偏向して出射する。そして、光LTは、眼EYに入射する。実施形態6によれば、光LTを偏向させて、光LTを斜視の眼EYに入射できるので、正常な他方の眼が見ている対象物を、斜視の眼EYでも容易に見ることができる。従って、装着者HMが斜視の眼EYを使うことを促進できる。その結果、眼鏡1Eは、斜視の矯正又は改善のために有効である。
【0214】
なお、
図19(b)では、図面の簡略化のため、第1液晶ユニットB1及び第2液晶ユニットB2による偏向を光LTに反映していない。
【0215】
ここで、第1液晶ユニットB1及び第2液晶ユニットB2の液晶層53が光を偏向する点で、光を収束又は発散させる実施形態1に係る第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2の液晶層53と異なる。つまり、実施形態6では、液晶層53は、偏向素子として機能し、入射角度が互いに略同一の複数の光線を、互いに略同一の屈折角で屈折させて出射する。
【0216】
従って、第1液晶ユニットB1及び第2液晶ユニットB2の液晶層53に形成される電位勾配は、実施形態1に係る第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2の液晶層53に形成される電位勾配と異なる。
【0217】
次に、
図1、
図19(b)、及び
図19(c)を参照して、実施形態6に係る液晶層53に形成される電位勾配Q1について説明する。
図19(c)は、液晶層53の電位勾配Q1を示す図である。
【0218】
図1、
図19(b)、及び
図19(c)に示すように、制御部17は、液晶層53A及び液晶層53Bの各々に制御電圧CVを印加して、液晶層53A及び液晶層53Bの各々に鋸歯状の電位勾配Q1を形成し、光の屈折(実施形態6では光の偏向)を制御する。液晶層53Aと液晶層53Bとで制御電圧CVは共通している。従って、実施形態1と同様に、液晶層53Aに形成される電位勾配Q1と液晶層53Bに形成される電位勾配Q1とは実質的に同一である。
【0219】
具体的には、電位勾配Q1は、複数の電位勾配Q2を含む。つまり、液晶層53には、方向D1に対して直線状の滑らかな電位勾配Q2が形成される。滑らかな電位勾配Q2とは、階段状ではない電位勾配ということを示す。
【0220】
以下、理解を容易にするため、液晶層53に垂直に入射する光LTaの屈折について説明する。
図19(c)に示すように、液晶層53は、電位勾配Q2の勾配角αに応じて、光LTaを第2屈折角θSで屈折(具体的には偏光)させる。第2屈折角θSは、液晶層53への入射光に対する液晶層53からの出射光の角度を示す。実施形態6では、第2屈折角θSは第1屈折角θFよりも小さい。なお、液晶層53は、光学部材PMが屈折(具体的には偏向)させた光を屈折(具体的には偏向)させて出射する。
【0221】
次に、
図20及び
図21を参照して、第1液晶ユニットB1について説明する。以下、第1液晶ユニットB1が第1液晶ユニットA1と相違する点を主に説明する。なお、第2液晶ユニットB2の構成は、第1液晶ユニットB1の構成と同様である。
【0222】
図20は、第1液晶ユニットB1を示す平面図である。
図21は、
図20のXXI-XXI線に沿った第1液晶ユニットB1の断面図である。なお、
図21では、理解を容易にするために、光学部材PM、第1基板31、及び第2基板33を図示している。
【0223】
図20及び
図21に示すように、第1液晶ユニットB1は、複数の単位電極10と、絶縁層51と、複数の第1境界層61と、複数の第2境界層62と、複数の高抵抗層52(複数の抵抗層)と、液晶層53と、第3電極E3とを含む。単位電極10の各々は、第1電極E1と第2電極E2とを含む。
【0224】
複数の単位電極10は、互いに略平行に延びている。単位電極10の延びる方向は、光学要素84の延びる方向に略平行である。1つの単位電極10は、1つの光学要素84に対応して配置され、第1基板31を介して1つの光学要素84に対向する。
【0225】
複数の単位電極10は同一階層に配置される。互いに隣り合う単位電極10のうちの一方の単位電極10の第2電極E2と他方の単位電極10の第1電極E1とは、隣り合っている。第1電極E1と第2電極E2とは、互いに略平行に延びている。
【0226】
第1電極E1と第2電極E2とは、単位電極10を構成し、同一階層に配置されている。単位電極10の各々において、第1電極E1と第2電極E2とは、絶縁層51を介して対向し、間隔W1をおいて並んで延びる直線状である。単位電極10の各々において、第1電極E1と第2電極E2との間隔W1は、第1電極E1の幅K1よりも大きく、第2電極E2の幅K2よりも大きい。ただし、間隔W1は任意の大きさに設定できる。間隔W1は、第1電極E1の内縁と第2電極E2の内縁との間の距離を示す。また、第1電極E1及び第2電極E2の長さは任意に設定できる。
【0227】
また、幅K1は、第1電極E1の方向D1に沿った幅を示す。幅K2は、第2電極E2の方向D1に沿った幅を示す。方向D1は、第1電極E1から第2電極E2に向かう方向であり、第1電極E1及び第2電極E2の各々の長手方向に略直交し、液晶層53に略平行である。
【0228】
第1電極E1には、第1電圧V1が印加される。第2電極E2には、第2電圧V2が印加される。第1電圧V1と第2電圧V2とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第3電極E3には第3電圧V3が印加される。実施形態6では、第3電極E3は接地されており、第3電圧V3は接地電位(0V)に設定される。なお、単位電極10は、液晶層53よりも眼から遠い。
【0229】
絶縁層51は厚みtsを有する。厚みtsは、絶縁層51のうち第1電極E1と高抵抗層52との間に位置する部分の厚み、又は、絶縁層51のうち第2電極E2と高抵抗層52との間に位置する部分の厚みを示す。なお、液晶層53は、単位電極10と第3電極E3との間に配置される。
【0230】
高抵抗層52の電気抵抗率(比抵抗)は、第1電極E1の電気抵抗率及び第2電極E2の電気抵抗率の各々より大きく、絶縁層51の電気抵抗率より小さい。高抵抗層52は厚みthを有する。絶縁層51の厚みtsは、高抵抗層52の厚みthよりも小さい。絶縁層51の厚みtsは、第1電極E1及び第2電極E2と高抵抗層52との間の絶縁を保っている限り、小さい程好ましい。
【0231】
引き続き、
図21を参照して、液晶層53の電位勾配Q1について説明する。
図21では、第1電圧V1が第2電圧V2よりも小さい場合の電位勾配Q1が示されている。電位勾配Q2の各々は、第1電極E1の下方から第2電極E2の下方に至るまで、極値(極小値及び極大値)を有することなく連続的に変化している。また、液晶層53のうち第2境界層62と対向している領域では、電位が急峻に下降している。
【0232】
光学要素84は、方向D1に対して鋭角に傾斜している。そして、第1電圧V1が第2電圧V2よりも小さい場合、電位勾配Q2の各々は、光学要素84と同様に、方向D1に対して鋭角に傾斜する。つまり、光学要素84の傾斜方向と電位勾配Q2の傾斜方向とが揃う。また、第1電圧V1が第2電圧V2よりも小さい場合、液晶層53は、光学部材PMによって屈折した光を、光学部材PMが光を屈折させる側に屈折させる。説明の便宜上、この場合の第2屈折角θS(
図19(c))の符号を「正(プラス)」にする。なお、第1電圧V1が第2電圧V2よりも小さい場合は、電位勾配Q2の勾配角α(
図19(c))は方向D1に対して定められる。
【0233】
一方、第1電圧V1が第2電圧V2よりも大きい場合、電位勾配Q2の各々は、方向D2に対して鋭角に傾斜する。つまり、光学要素84の傾斜方向と電位勾配Q2の傾斜方向とが反対である。方向D2は方向D1の反対方向を示す。この場合、電位勾配Q2は、
図21に示す電位勾配Q2を左右反転した形状を有する。また、第1電圧V1が第2電圧V2よりも大きい場合、液晶層53は、光学部材PMによって屈折した光を、光学部材PMが光を屈折させる側の逆側に屈折させる。説明の便宜上、この場合の第2屈折角θSの符号を「負(マイナス)」にする。なお、第1電圧V1が第2電圧V2よりも大きい場合は、電位勾配Q2の勾配角αは方向D2に対して定められる。
【0234】
また、電位勾配Q2の勾配角αは、第1電圧V1と第2電圧V2との差分値DFF(=V1-V2)の大きさに応じて変化する。具体的には、差分値DFFが大きいほど、勾配角αが大きくなって、第2屈折角θSの絶対値が大きくなる。また、差分値DFFがゼロの場合は、液晶層53は偏向素子としての機能を喪失し、液晶層53に垂直に入射した光は直進する。例えば、第1屈折角θFは15度であり、第2屈折角θSは、差分値DFFの制御によって、マイナス2度からプラス2度までの範囲で変更可能である。従って、この例では、光学素子LNBの光偏向角を、13度から17度までの範囲で変更可能である。
【0235】
また、液晶層53には、第1電極E1及び第2電極E2の長手方向に沿って電位勾配面が形成される。電位勾配面は、第1電極E1及び第2電極E2の長手方向に沿って連続する電位勾配Q2によって形成される面である。従って、第1電極E1及び第2電極E2の長手方向において、第2屈折角θSが略同一になるように、入射光を屈折させて出射できる。
【0236】
次に、
図22を参照して、眼鏡1Eの動作について説明する。
図22は、眼鏡システム100Eの電気的構成を示す図である。
図22に示すように、眼鏡1Eの構成は、実施形態1に係る眼鏡1の構成と同様である。ただし、眼鏡1Eは、実施形態1に係るコア電極50、センター電極rc、第1リード線71、第2リード線72、及び第3境界層73を有していない。
【0237】
第1電源回路PW1は、コントローラー55の制御を受けて、第1液晶ユニットB1及び第2液晶ユニットB2の各々の複数の第1電極E1に第1電圧V1印加する。第1電圧V1は制御電圧CVの一例である。
【0238】
第2電源回路PW2は、コントローラー55の制御を受けて、第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2の各々の複数の第2電極E2に第2電圧V2を印加する。第2電圧V2は制御電圧CVの一例である。
【0239】
コントローラー55は、操作部19からの内部操作信号又は操作装置200からの外部操作信号に応答して第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御して、第1電圧V1及び第2電圧V2を制御する。第1電圧V1及び第2電圧V2の制御によって、液晶層53の電位勾配を制御できる。具体的には、コントローラー55は、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御して、第1電圧V1と第2電圧V2との差分値DFF(=V1-V2)を制御する。差分値DFFの制御によって、液晶層53の電位勾配を制御できる。その結果、第2屈折角θSを、負の値から正の値まで変更できる。また、差分値DFF(具体的には差分値DV)をゼロにすることによって、第2屈折角θSをゼロ度にすることができる。
【0240】
更に具体的には、第1電圧V1の電圧値v1が第2電圧V2の電圧値v2よりも小さくなるように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、液晶層53には断面視鋸歯状の電位勾配Q1が形成される。そして、電位勾配Q1は、方向D1に対して鋭角に傾斜する複数の電位勾配Q2を含む。
【0241】
方向D1に対して鋭角に傾斜する複数の電位勾配Q2が形成されると、液晶層53は、光学部材PMによって屈折した光を、光学部材PMが光を屈折させる側に屈折させる。
【0242】
一方、第1電圧V1の電圧値v1が第2電圧V2の電圧値v2よりも大きくなるように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、液晶層53には断面視鋸歯状の電位勾配Q1が形成される。そして、電位勾配Q1は、方向D2に対して鋭角に傾斜する複数の電位勾配Q2を含む。
【0243】
方向D2に対して鋭角に傾斜する複数の電位勾配Q2が形成されると、液晶層53は、光学部材PMによって屈折した光を、光学部材PMが光を屈折させる側の逆側に屈折させる。
【0244】
なお、第1電圧V1の電圧値v1と第2電圧V2の電圧値v2との差分値DV(=v1-v2)の絶対値が大きい程、第2屈折角θSの絶対値が大きくなる。電圧値v1と電圧値v2とが異なる場合、第1電圧V1の周波数f1と第2電圧V2の周波数f2との差分値DF(=f1-f2)の絶対値が大きい程、第2屈折角θSの絶対値が大きくなる。
【0245】
また、電圧値v1と電圧値v2とが同一になるように、かつ、周波数f1と周波数f2とが同一になるように、コントローラー55が第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御すると、液晶層53は、偏向素子としての機能を喪失する。
【0246】
例えば、装着者HMが第1スイッチ65を押下すると、第1スイッチ65は、コントローラー55に第6内部操作信号を送信する。コントローラー55は、第6内部操作信号を受信すると、差分値DFF(例えば差分値DV)の絶対値が増加するように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。その結果、第2屈折角θSの絶対値が増加する。
【0247】
一方、例えば、装着者HMが第2スイッチ67を押下すると、第2スイッチ67は、コントローラー55に第7内部操作信号を送信する。コントローラー55は、第7内部操作信号を受信すると、差分値DFF(例えば差分値DV)の絶対値が減少するように、第1電源回路PW1及び第2電源回路PW2を制御する。その結果、第2屈折角θSの絶対値が減少する。
【0248】
以上、
図19(b)を参照して説明したように、実施形態6によれば、光学素子LNBが光学部材PMを有するため、眼鏡1Eは、斜視の矯正又は改善のために有効である。
【0249】
加えて、
図21及び
図22を参照して説明したように、実施形態6によれば、制御電圧CV(具体的には第1電圧V1及び第2電圧V2)を制御することによって、容易に液晶層53の電位勾配を制御できる。従って、制御電圧CVの制御によって、第2屈折角θSを、負の値から正の値まで、比較的広い範囲にわたって容易に変更できる。その結果、装着者HMの斜視の程度が変化した場合(例えば斜視が改善した場合)、光学素子LNB及び眼鏡1Eを交換することなく、「変化後の斜視眼」に合わせて第2屈折角θSを調節して、光を「変化後の斜視眼」に入射できる。
【0250】
その他、実施形態6によれば、凸レンズ機能及び凹レンズ機能を除いて、実施形態1と同様の効果を有する。
【0251】
さらに、実施形態6によれば、「眼振」と呼ばれる、眼球が振動してしまう症状の患者に対して、視力を補助したり、治療のためのトレーニングを実行したりできる。具体的には、患者の眼球の振動の周波数(例えば2Hz~3Hz)に合わせて、眼球の振動に追従し、眼振による画像のブレを打ち消す方向に、入射光を傾けるような電圧の制御を実行する。その結果、患者に眼振の症状が現れた場合でも、常に振動のない画像を患者に認識させることができて、眼の正常な発育をサポートすることが可能になる。
【0252】
以上、図面(
図1~
図22)を参照しながら本発明の実施形態及び実施例について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態及び実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)~(5))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0253】
(1)実施形態1~6に係る眼鏡システム100~100Eのそれぞれの特徴を任意に組み合わせて、眼鏡システムを構成してもよい。例えば、
図10に示す眼検出部75を、実施形態3~5の眼鏡1B~1Dに設けて、実施形態2と同様に、装着者HMの視線方向に応じて焦点距離を制御してもよい。例えば、
図14に示す光学素子LNA、操作部19B、及び環境光検出部77を、実施形態4、5の眼鏡1C、1Cに設けて、実施形態3と同様に、光透過率を制御してもよい。例えば、
図16に示す第1圧力検出部89及び第2圧力検出部95を、実施形態5、6の眼鏡1D、1Eに設けて、実施形態4と同様に、圧力を検出してもよい。例えば、
図18に示す制御部17D、操作部19D、第1報知部97、及び第2報知部98を、実施形態6の眼鏡1Eに設けるとともに、
図18に示す操作装置200Dを、実施形態6の眼鏡システム100Eに設けて、実施形態5と同様に、所在を報知する機能を設けてもよい。
【0254】
例えば、
図10に示す眼検出部75を、実施形態6の眼鏡1Eに設けてもよい。そして、制御部17は、視線方向SLL及び/又は視線方向SLRに基づいて、液晶層53の制御電圧CVを制御して、第2屈折角θSを制御する。例えば、制御部17は、液晶層53の制御電圧CVを制御して、視線方向SLL及び/又は視線方向SLRの変化に応じて、第2屈折角θSを変化させる。
【0255】
例えば、
図19に示す光学素子LNBの構成に、
図2に示す第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2を加えて、実施形態1と同様に、制御部17が、光学素子LNBの焦点距離を制御してもよい。例えば、
図19に示す光学素子LNBの構成に、
図13(a)に示す光透過ユニットA3を加えて、実施形態3と同様に、制御部17が、光学素子LNBの光透過率を制御してもよい。例えば、
図19に示す光学素子LNBの構成に、
図2に示す第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2と、
図13(a)に示す光透過ユニットA3とを加えてもよい。
【0256】
(2)実施形態1~6では、一対の光学素子LN、一対の光学素子LNA、及び一対の光学素子LNBを設けたが、1つの光学素子LN、1つの光学素子LNA、及び1つの光学素子LNBを設けもよい。第1液晶ユニットA1及び第2液晶ユニットA2のうちの一方を設けてもよいし、第1液晶ユニットB1及び第2液晶ユニットB2のうちの一方を設けてもよい。実施形態2では、1つの眼検出部75を設けてもよい。実施形態4では、第1圧力検出部89及び第2圧力検出部95のうちのいずれか一方を設けてもよい。1つの第2圧力検出部95を設けてもよい。実施形態5では、第1報知部97及び第2報知部98のうちのいずれか一方を設けてもよい。
【0257】
また、実施形態1~6では、光学素子LNごと、光学素子LNAごと、又は光学素子LNBごとに、別個に制御電圧CVを制御してもよい。
【0258】
(3)実施形態1~6では、単位電極rnの数、及び単位電極10の数は、特に限定されない。単位電極rnごと又は単位電極10ごとに、制御電圧CVを制御してもよい。単位電極rnと、コア電極50及びセンター電極rcとで、制御電圧CVが異なっていてもよい。実施形態1~5では、コア電極50を設けなくてもよい。特に、光学素子LN及び光学素子LNAを凹レンズとして機能させないときには、コア電極50を設けなくてもよい。コア電極50を設けない場合、センター電極rc及び単位電極rnは、センター電極rcを中心とした同心円状に配置される。また、第1リード線71、第2リード線72、及び第3境界層73を設けなくてもよい。この場合、複数のスルーホールを形成して、第1電圧V1及び第2電圧V2を印加する。スルーホールを形成する場合は、センター電極rc、第1電極E1、及び第2電極E2の各々は、途切れていない円環状形状を有する。
【0259】
(4)実施形態1~6において、絶縁層51を設けなくてもよい。絶縁層51の厚みtsは、高抵抗層52の厚みthと同じであってもよいし、高抵抗層52の厚みthよりも大きくてもよい。実施形態1~6では、高抵抗層52が液晶層53と単位電極rn(又は単位電極10)との間に配置され、高抵抗層52が液晶層53とコア電極50及びセンター電極rcとの間に配置されていた。ただし、単位電極rn(又は単位電極10)が高抵抗層52と液晶層53との間に配置され、コア電極50及びセンター電極rcが高抵抗層52と液晶層53との間に配置されてもよい。
【0260】
(5)本明細書及び特許請求の範囲において、直線状は、厳密な直線状の他、略直線状を含む。円環状は、厳密な円環状の他、略円環状を含む。また、円環状形状は、途切れていない円環状形状の他、一部途切れた円環状形状を含む。同心円状は、厳密な同心円状の他、略同心円状を含む。面状は、厳密な面状の他、略面状を含む。鋸歯状は、厳密な鋸歯状の他、略鋸歯状を含む。環状は、厳密な環状の他、略環状を含む。帯状は、厳密な帯状の他、略帯状を含む。曲線状は、厳密な曲線状の他、略曲線状を含む。平板状は、厳密な平板の他、略平板状を含む。円板状は、厳密な円板の他、略円板状を含む。三角形状は、厳密な三角形の他、略三角形状を含む。三角柱状は、厳密な三角柱の他、略三角柱状を含む。
【産業上の利用可能性】
【0261】
本発明は、眼鏡を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0262】
1、1A~1E 眼鏡
17 制御部
53 液晶層
75 眼検出部
85 光透過層
89 第1圧力検出部(圧力検出部)
95 第2圧力検出部(圧力検出部)
97 第1報知部(報知部)
98 第2報知部(報知部)
LN、LNA、LNB 光学素子
PM 光学部材