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  • 特許-撮像光学系および撮像装置 図1
  • 特許-撮像光学系および撮像装置 図2
  • 特許-撮像光学系および撮像装置 図3
  • 特許-撮像光学系および撮像装置 図4
  • 特許-撮像光学系および撮像装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】撮像光学系および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 17/08 20060101AFI20220221BHJP
   G02B 15/16 20060101ALI20220221BHJP
   G02B 13/14 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
G02B17/08 A
G02B15/16
G02B13/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017218681
(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公開番号】P2019090890
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】山岸 晃
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-044115(JP,A)
【文献】特公昭48-042509(JP,B1)
【文献】特開昭61-039015(JP,A)
【文献】特開2010-262163(JP,A)
【文献】米国特許第05089910(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103913840(CN,A)
【文献】特開2017-219642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力の反射光学系と、
前記反射光学系の像面側に配置された正の屈折力の屈折光学系とから構成され
前記反射光学系は、物体側に凹面を向けた主鏡と、
前記主鏡の光軸上に配置され、前記主鏡に反射された光を像面側に導く副鏡とから構成され
前記屈折光学系は、物体側から順に、ズーミングの際に前記反射光学系と一体で移動し、フォーカシングの際に独立して移動する第1のレンズ群と、
ズーミングの際に独立して移動する第2のレンズ群とから構成されている、撮像光学系。
【請求項2】
請求項1において、
前記反射光学系の合成焦点距離fmと、当該撮像光学系の望遠端から広角端にわたる合成焦点距離faとが以下の条件を満たす、撮像光学系。
10<fm/fa<20
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2のレンズ群は、ズーミングの際に独立して移動する負の屈折力の前群と、
ズーミングの際に独立して移動する正の屈折力の後群とを含む、撮像光学系。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記屈折光学系を構成するレンズはゲルマニウム製またはカルコゲナイド製である、撮像光学系。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の撮像光学系と、
前記撮像光学系の像面側に配置された撮像デバイスとを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射光学系を含む撮像光学系および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンパクトな反射屈折光学系を提供することが記載されている。この反射屈折光学系は、物体側から順に、主反射鏡と副鏡とを持つ正屈折力の第1レンズ群と正屈折力の第2レンズ群とを有し物体の1次像を形成する対物光学系と、この1次像からの光により射出瞳を形成する接眼光学系とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-273674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反射光学系を含むコンパクトな撮像光学系であって、ズーミングが可能で、さらに、フォーカシングの機構も簡易に実現できる撮像光学系が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、物体側から順に、正の屈折力の反射光学系と、反射光学系により像面側に導かれた光を結像する正の屈折力の屈折光学系とを有する撮像光学系である。反射光学系は、物体側に凹面を向けた主鏡と、主鏡の光軸上に配置され、主鏡に反射された光を像面側に導く副鏡とを含む。屈折光学系は、物体側から順に、ズーミングの際に反射光学系と一体で移動し、フォーカシングの際に独立して移動する第1のレンズ群と、ズーミングの際に独立して移動する第2のレンズ群とを含む。
【0006】
物体側に反射光学系を配置した撮像光学系は、物体側の大口径のレンズを反射光学系に置き換えることができるので、レンズの価格を抑えることができ、特に、レンズが高額になりやすい赤外線撮像光学系に適している。また、撮像光学系の全長を短縮でき、FNo.の小さな明るい光学系を提供できるというメリットもある。本発明においては、撮像光学系を、物体側に配置された反射光学系と、像面側に配置された屈折光学系とに分けて構成することにより、ズーミングおよびフォーカシングの際に、反射光学系と屈折光学系とを分けて制御することが容易となる。その一方、最も反射光学系側に配置される第1のレンズ群をズームの際に反射光学系と一体で移動することによりズーミングの際の諸収差の補正を行い、さらに、反射光学系の像面側に配置された第1のレンズ群でフォーカシングを行うことにより、反射光学系を含むインナーフォーカス型の撮像光学系を提供できる。
【0007】
反射光学系の合成焦点距離fmと、当該撮像光学系の望遠端から広角端にわたる合成焦点距離faとが以下の条件を満たしてもよい。
10<fm/fa<20 ・・・(1)
下限を下回ると、反射光学系のパワーが強くなりすぎて収差補正が難しくなり、上限を上回ると反射光学系のパワーが小さくなりすぎて撮像光学系の全長が長くなる。
【0008】
屈折光学系の第2のレンズ群は、ズーミングの際に独立して移動する負の屈折力の前群と、ズーミングの際に独立して移動する正の屈折力の後群とを含んでもよい。屈折光学系を構成するレンズはゲルマニウム製またはカルコゲナイド製であってもよい。
【0009】
本発明の他の態様の1つは、上記に記載の撮像光学系と、撮像光学系の像面側に配置された撮像デバイスとを有する撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】撮像光学系を含む撮像装置の構成を示す図。
図2】レンズデータを示す図。
図3】非球面係数を示す図。
図4】ズームデータを示す図。
図5】諸数値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、撮像用の光学系を備えた撮像装置(カメラ、カメラ装置)の一例を示している。図1(a)は広角端の配置を示し、図1(b)は望遠端の配置を示す。この撮像装置1は、撮像光学系(結像光学系、レンズシステム)6と、撮像光学系6の像面側(画像側、撮像側、結像側)3に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面)5とを有する。この撮像デバイス5は、赤外線(赤外光)の画像が取得できるように調整されており、撮像装置1は、サーマル・イメージング・システム、監視用途などの赤外光撮像装置である。また、撮像光学系6は、赤外線用の望遠用ズームレンズシステムである。
【0012】
撮像光学系6は、物体側2から順に、正の屈折力の反射光学系10と、反射光学系10の像面側3に配置された正の屈折力の屈折光学系20とを有する。反射光学系10は、物体側(被写体側)2からの光を集光する対物レンズとしての機能を含み、屈折光学系20は、反射光学系10により像面側3に導かれた光を像面である撮像デバイス5に結像する機能を含む。
【0013】
反射光学系10は、物体側2に凹面を向けた正のパワーの主鏡M1と、主鏡M1の光軸7上に配置され、主鏡M1に反射された光を像面側に導く、像面側3に凸面を向けた負のパワーの副鏡M2とを含む。この反射光学系10においては、副鏡M2は、光軸7に沿って光を反射し、主鏡M1の像面側3に、光軸7に同軸上に配置された屈折光学系20へ光を導く。
【0014】
屈折光学系20は、物体側2から順に、ズーミングの際に反射光学系10と一体で移動し、フォーカシングの際に独立して移動する第1のレンズ群G1と、ズーミングの際に独立して移動する第2のレンズ群G2とを含む。第2のレンズ群G2は、さらに、ズーミングの際に独立して移動する負の屈折力の前群G2fと、ズーミングの際に独立して移動する正の屈折力の後群G2bとを含む。
【0015】
最も物体側2の反射光学系10と第1のレンズ群G1とが全体として正のパワーの移動群を構成し、広角端から望遠端へ変倍する際に、物体側2へ移動する。前群G2fは、全体として負のパワーの移動群を構成し、広角端から望遠端へ変倍する際に、像面側3へ移動する。後群G2bは、全体として正のパワーの移動群を構成し、広角端から望遠端へ変倍する際に、像面側3へ移動する。
【0016】
本例の屈折光学系20においては、第1のレンズ群G1は、ゲルマニウム製の両凸の正レンズL1の一枚構成である。第2のレンズ群G2の前群G2fは、カルコゲナイド製で像面側3に凸の負のメニスカスレンズL2と、ゲルマニウム製で像面側3に凸の正のメニスカスレンズL3との2枚構成である。第2のレンズ群G2の後群G2bは、カルコゲナイド製で物体側2に凸の正のメニスカスレンズL4の一枚構成である。
【0017】
図2に撮像光学系6を構成する各光学素子(ミラーおよびレンズ)のデータを示している。曲率半径(Ri)は物体側2から順に並んだ各光学素子の各面(S)の曲率半径(mm)、面間隔diは各面の間の光軸に沿った距離(mm)、屈折率ndは各レンズの屈折率(波長11μm)、各レンズの焦点距離(波長11μm)を示す。
【0018】
主鏡M1の面S1、副鏡M2の面S2、レンズL1の物体側2の面S3、レンズL2の像面側3の面S6、レンズL3の像面側3の面S8、レンズL4の物体側2の面S9は非球面であり、図3(a)および(b)に非球面係数を示す。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、図3(a)および(b)に示した係数K、A、B、C、DおよびEを用いて次式で表わされる。なお、「En」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/R)Y2/[1+{1-(1+K)(1/R)2Y2}1/2]
+AY4+BY6+CY8+DY10+EY12
【0019】
図4に、変倍の際に移動する各群G1、G2f、G2bおよび撮像デバイス5の各面間隔V1、V2およびV3の値を示している。図5に、撮像光学系6の諸数値を示している。この撮像光学系6は、変倍比1.5のズーム光学系(変倍光学系)であり、F値(FNo.)は広角端で1.4、望遠端で2.1であり、広角端から望遠端にかけて2.5以下と明るい赤外線用の変倍光学系6となっている。また、副鏡M2の面S2から撮像デバイス5の撮像面までの光軸上の距離が広角端で227mm、望遠端で241mmであり、広角端から望遠端にかけて250mm以下とコンパクトな赤外線用の光学系6となっている。
【0020】
反射光学系10の合成焦点距離fmは3725mmであり、撮像光学系6の全系の合成焦点距離faは、広角端で200.0mm、望遠端で299.9mmであり、fm/faは、広角端で18.63、望遠端で12.42であり、条件(1)を満たす。したがって、コンパクトで、諸収差の補正が良好な赤外線撮像光学系6を提供できる。
【0021】
この撮像光学系6は、物体側2に反射光学系10を配置しており、物体側2の大口径となる集光光学系をレンズではなく反射光学系に置き換えている。したがって、赤外線光学系において高価格の要因の1つである物体側2の大口径のレンズを省略することが可能であり、低コストでFNo.が小さく、明るい赤外線光学系を提供できる。特に、反射光学系10を正のパワーの主鏡M1と、主鏡M1と向き合う負のパワーの副鏡M2との組み合わせによるカセグレンタイプの光学系とすることにより反射光学系10の全長を短縮し、全体としてコンパクトな撮像光学系6を実現している。
【0022】
さらに、物体側2に反射光学系10を配置し、像面側3に屈折光学系20を配置し、屈折光学系20の最も物体側2の第1のレンズ群G1をズーミングする際に反射光学系10と一体で動かし、第1のレンズ群G1をフォーカシングの際に動かしてインナーフォーカスを実現している。したがって、ズーミングの際に移動する移動群を反射光学系10の単独で構成せずに第1のレンズ群G1を含めることにより収差補正を可能とするとともに、その第1のレンズ群G1を反射光学系10の内部ではなく主鏡M1よりも像面側3に離すことにより簡単な機構でインナーフォーカスを実現している。
【0023】
さらに、屈折光学系20は4枚構成であり、物体側2からゲルマニウム製のレンズL1,カルコゲナイド製のレンズL2、ゲルマニウム製のレンズL3およびカルコゲナイド製のレンズL4を配置している。ゲルマニウムガラスは、2~20μmの赤外領域に透過波長帯を有し、屈折率が4.0前後と高く、3~12μmの波長帯近傍において特に低分散特性を有するレンズ材料である。一方、カルコゲナイドガラスは、赤外線透過性が高く、ゲルマニウムレンズよりも低屈折率で高分散なレンズ材料である。赤外線に対して、屈折率および分散が異なるレンズを交互に配置することにより色収差が良好に補正された赤外線用の撮像光学系6を提供できる。特に、第2のレンズ群G2の前群G2fは、負のパワーのカルコゲナイド製のレンズL2と正のパワーのゲルマニウムレンズL3との組み合わせであって、同じ方向を向いたメニスカスレンズが組み合わされた移動群となっており、ズーミングの際の色収差補正に良好に作用する。
【0024】
また、反射光学系10から出力された光が最初に入力される第1のレンズ群G1がインナーフォーカス用のレンズであり、さらに、それに、屈折率の高いゲルマニウム製のレンズL1を採用することによりフォーカス調整機能を高めている。また、屈折光学系20の3つの移動群、すなわち、第1のレンズ群G1、第2のレンズ群G2の前群G2f、後群G2bは、正-負-正の対称的なパワー配置となっており、収差補正に適したパワー配置を備えている。
【0025】
なお、上記では、ゲルマニウム製のレンズおよびカルコゲナイド製のレンズを備えた赤外線(赤外光)用の撮像装置を例に本発明を説明しているが、赤外光用としては、シリコン製のレンズ、ZnS製のレンズなどを採用してもよく、反射光学系10と可視光用の屈折光学系20との組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 撮像装置、 6 撮像光学系
10 反射光学系、 20 屈折光学系
図1
図2
図3
図4
図5