(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
H02N2/04
(21)【出願番号】P 2017245354
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】713013504
【氏名又は名称】株式会社ミクロブ
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】秦 良彰
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-274543(JP,A)
【文献】特開2007-274757(JP,A)
【文献】特開2012-222883(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸の一端に圧電素子を固定した軸状の振動ユニットと、該振動ユニットに摩擦係合して前記振動ユニットの軸方向に移動する移動体とを備える駆動装置であって、
筐体の底面から立設された一対となる支持片の上端に、前記移動体が係合された前記振動ユニット両端
それぞれの下面が固着されることで、前記振動ユニットが前記筐体に支持されることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
駆動軸の一端に圧電素子を固定した軸状の振動ユニットと、該振動ユニットに摩擦係合して前記振動ユニットの軸方向に移動する移動体とを備える駆動装置であって、
筐体の底面から立設された一対となる支持片の上端に、前記移動体が係合された前記振動ユニット両端それぞれの下面が接着剤によって固着されることで、前記振動ユニットが前記筐体に支持されることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
駆動軸の一端に圧電素子を固定した軸状の振動ユニットと、該振動ユニットに摩擦係合して前記振動ユニットの軸方向に移動する移動体とを備える駆動装置であって、
筐体の底面から立設された一対となる支持片の上端に、前記移動体が係合された前記振動ユニット両端それぞれの下面が前記支持片に対して前記振動ユニットの軸方向に相対移動不能に固着されることで、前記振動ユニットが前記筐体に支持されることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
駆動軸の一端に圧電素子を固定した軸状の振動ユニットと、該振動ユニットに摩擦係合して前記振動ユニットの軸方向に移動する移動体とを備える駆動装置であって、
筐体の底面から立設された一対となる支持片の上端に、前記移動体が係合された前記振動ユニット両端の下面が固着されることで、前記振動ユニットが前記筐体に支持される構成であって、
前記移動体に設けたアーム部と、前記筐体に設けた固定アームとを有し、前記振動ユニットの振動によって前記アーム部を前記振動ユニットの軸方向に移動させることで、前記アーム部と前記固定アームとを接離させるグリッパを備えていることを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを駆動力に変換する駆動装置に関するものであって、特に、圧電素子といった振動子の駆動により機械的動作を実行する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気エネルギーを機械的仕事に変換する装置として、圧電素子を利用した駆動装置がある。このような駆動装置として、駆動部材の一端を取り付けた圧電素子を伸縮させることにより、駆動軸に摩擦係合した移動体を移動させるものがある(特許文献1参照)。特許文献1における駆動装置は、固定枠に支持固定された圧電素子の一端に駆動部材の一端を固定し、駆動部材の他端が固定枠の貫通穴で支持されている。当該駆動装置は、駆動部材をその長手方向に往復移動させることで、駆動部材に摩擦係合した移動体を駆動軸に沿って移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の駆動装置は、駆動部材を固定枠の貫通穴に挿入させるとともに、支持部材により圧電素子を側方から支持させている。そのため、固定枠に貫通穴を設ける必要があるばかりか、圧電素子を支持させるための支持部材を必要とした構成となる。従って、特許文献1の駆動装置を組み立てる際、その部品点数と組立工数が多くなるだけでなく、構成部品形状が複雑になるとともに組立作業が煩雑になるという問題がある。一方、組立作業の煩雑さを解消する場合には、駆動装置が大型化してしまうという問題もある。更に、駆動部材は固定枠の貫通穴内で往復移動できるように支持されているため、貫通穴に対して駆動部材を挿入する際、貫通穴の径方向にわずかなすき間を設けて径方向の自由度を持たせるべく、すき間ばめの嵌合が必要となる。
【0005】
また、特許文献1の駆動装置では、圧電素子が、支持部材を介して固定枠に弾性的に支持されているため、圧電素子と固定枠の相対位置は外部からの振動、温度変化、温度ショックなどにより変化する恐れがある。そして、圧電素子が固定枠に対し相対位置が変化すると、圧電素子に取り付けられた駆動部材は固定枠に対して自由度を持っているため、固定枠に対する駆動部材の相対位置が変化してしまう。従って、駆動部材に摩擦係合した移動体についても、固定枠に対する相対位置が変化することとなることから、駆動装置をサブミクロンやナノメーターレベルの微細精密操作においては適用困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、組立作業が容易であるとともに微細精密操作にも適用可能な駆動装置を提供することを技術的課題としている。
【0007】
本発明は、駆動軸の一端に圧電素子を固定した軸状の振動ユニットと、該振動ユニットに摩擦係合して前記振動ユニットの軸方向に移動する移動体とを備える駆動装置であって、筐体の底面から立設された一対となる支持片の上端に、前記移動体が係合された前記振動ユニット両端の下面が固着されることで、前記振動ユニットが前記筐体に支持されるものである。
【0008】
上記駆動装置において、前記支持片の上端に、前記振動ユニットの端部の少なくとも一部が配置される切り欠きが設けられているものとしてもよい。
【0009】
上記駆動装置において、前記移動体の係合部が、前記振動ユニットの軸方向から視て前記振動ユニットの外周の一部を覆う形状を有しており、前記係合部を前記振動ユニットの外周に沿わせるとともに前記係合部の両端に弾性体を係止させて、前記移動体を前記振動ユニットに係合させるものとしてもよい。
【0010】
上記駆動装置において、前記筐体には、前記圧電素子と電気的に接続するリード線を外部から導入する導入部を備えており、前記移動体の移動方向に沿って、前記導入部が前記圧電素子と前記駆動軸との境界よりも前記圧電素子側に設けられているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の駆動機構は、駆動軸の一端に圧電素子を固定した軸状の振動ユニット両端を筐体に固定する構成としているため、筐体に対して振動ユニットを一つの方向から近づけ押し付けて固定するだけで、組み立てすることが可能である。従って、筐体に対して振動ユニットが極めて安定的に固定されると同時に、組み立て時に振動ユニットを筐体に対して一つの方向から設置するだけでよいため、手動組み立て及び自動組み立てのいずれにおいても、駆動機構が微少な構成物でありながらその組立容易性を向上できる。また、剛性部材となる筐体に対して振動ユニットを固着させる構成とするため、移動体を振動ユニットに対して移動させる際、安定した精密な動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】は、本発明の第1実施形態となる駆動装置の外観を示すもので、(A)が平面図であり、(B)が正面図である。
【
図2】は、同駆動装置の内部構成を示すもので、(A)が左側面図であり、(B)が右側面図である。
【
図3】は、同駆動装置の内部構成を示す斜視図である。
【
図4】は、同駆動装置の動作状態を示すもので、(A)がA-A断面図であり、(B)が平面図である。
【
図5】は、同駆動装置の振動ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【
図6】は、同駆動装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図7】は、本発明の第2実施形態となる駆動装置の外観を示すもので、(A)が平面図であり、(B)が正面図である。
【
図8】は、同駆動装置の内部構成を示すもので、(A)が左側面図であり、(B)が右側面図である。
【
図9】は、同駆動装置の内部構成を示す斜視図である。
【
図10】は、同駆動装置の動作状態を示すもので、(A)がA-A断面図であり、(B)が平面図であり、(C)がB-B断面図である。
【
図11】は、同駆動装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図12】は、本発明の第3実施形態となる駆動装置の内部構成を示すもので、(A)が平面図であり、(B)が正面図である。
【
図13】は、同駆動装置の内部構成を示す左側面図である。
【
図14】は、本発明の第4実施形態となる駆動装置の内部構成を示すもので、(A)が平面図であり、(B)が正面図である。
【
図15】は、同駆動装置の内部構成を示す左側面図である。
【
図16】は、本発明の第4実施形態となる駆動装置の内部構成を示す左側面図である。
【
図17】は、本発明の駆動装置をグリッパに適用した例を示す平面図であり、(A)がグリッパを開いた状態を示し、(B)がグリッパを当接させた状態を示し、(C)がグリッパを限界まで閉じた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「前後」「上下」など)を用いる場合は、図中の矢印に示すように、
図1(A)で紙面に直交する方向を平面視とし、この方向を基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態となる駆動装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の駆動装置の構成を示す平面図及び正面図であり、
図2は、本実施形態の駆動装置の構成を示す左右側面図である。
図3は、本実施形態の駆動装置の構成を示す斜視図であり、
図4は、本実施形態の駆動装置の動作を示す図である。
図5及び
図6は、本実施形態の駆動装置の組立工程を説明するための分解斜視図である。なお、上述したように、以下の説明において、振動ユニット1の軸方向(移動体ユニット2の移動方向)を左右方向とするとともに、移動体ユニット2の出力アーム(移動体)21の延設された方向を前後方向として、前後、左右、上下の各方向を設定する。
【0015】
図1~
図6に示すように、本実施形態の駆動装置は、駆動軸12の一端に圧電素子11を固定した軸状の振動ユニット1と、振動ユニット1に摩擦係合して振動ユニット1の軸方向に移動する移動体ユニット2とを備える。そして、筐体3の底面31から立設された一対の支持片32A,32B上端に、移動体ユニット2が係合された振動ユニット1両端の下面が固着されることで、振動ユニット1が筐体3に支持されている。
【0016】
すなわち、駆動装置は、圧電素子11の一端に駆動軸12の一端を固定した振動ユニット1を、圧電素子11と駆動軸12の互いに固定された端部とは反対側のニか所の端部で固定枠32に固定している。筐体3は、底面31の外周縁より立設させた固定枠32を有しており、この固定枠32の左右側壁部分が左右一対の支持片32A,32Bに相当する。そして、右側の支持片32Bに圧電素子11の他端が固定される一方、左側の支持片32Aに駆動軸12の他端が固定される。このとき、固定枠32に対して振動ユニット1を一つの方向(上方向)から押し付けて接着剤33で接着するなどの方法で、振動ユニット1が固定枠32へ固定される。また、振動ユニット1の駆動軸12には、移動体ユニット2が摩擦係合されており、駆動軸12の軸方向に沿って移動体ユニット2が移動する。
【0017】
圧電素子11と駆動軸12は、筐体3の固定枠32へ固定する前に前工程として圧電素子11の一端に駆動軸12の一端を固定し振動ユニット1として組み立てられている。振動ユニット1を構成する圧電素子11と駆動軸12は、接着剤により接着されるものとしてもよい。このとき、圧電素子11と駆動軸12とを接着する接着剤として、熱伝導接着剤を使用することで、圧電素子11の熱を駆動軸12に伝達させて圧電素子11の温度上昇を低減できるため、移動体ユニット2の移動速度を高速にできると共に圧電素子11への電気信号のデューティ比を高めることができる。は、駆動軸12に接触させた状態となる出力アーム21の基端部(係合部)23に、弾性を有するアーム固定部材22を装着することで、駆動軸12と摩擦係合している。出力アーム21の基端部23は、側面視で二股に分岐させたL字形状を有しており、一方が後方に延びた上側固定部23Aとなり、他方が下方に延びた前側固定部23Bとなる。アーム固定部材22は、例えば、側面視L字形状に屈曲された板状の摩擦バネなどの弾性体で構成され、アーム固定部材22の一端(後方上縁側)が、基端部23の上側固定部23Aと連結される一方、アーム固定部材22の多端(下方前縁側)が、基端部23の前側固定部23Bと連結される。
【0018】
出力アーム21は、基端部23より前方に延設させたアーム部24を有しており、アーム部24は、基端部23の上側固定部23Aの左右一方の辺縁であって前側固定部23Bの前面から前方に向けて延設されている。出力アーム21の基端部23は、上側固定部23Aの後方縁に上側に突起させた上側係止部23Xを有する一方、前側固定部23Bの下方縁に前側に突起させた前側係止部23Yを有する。すなわち、出力アーム21の基端部23は、後方縁に側面視鈎状となる上側係止部23Xを有する上側固定部23Aと、下方縁に側面視鈎状となる前側係止部23Yを有する前側固定部23Bとを分岐させて構成されている。
【0019】
アーム固定部材22は、後側下方端から上方に向かって延びる後方板部22Aと、後方板部22Aの下方縁から前方に向かって延びる下方板部22Bとを有しており、後方板部22Aの上縁にL字状に屈曲させた上側係止部22Xが設けられる一方、下方板部22Bの前縁にL字状に屈曲させた前側係止部22Yが設けられる。アーム固定部材22は、後方板部22Aの上下中途部を前方に突設させるとともに、下方板部22Bの前後中途部を上方に突設させており、後方板部22Aと下方板部22Bとの連結部分が側面視でU字状に形成されている。また、上側係止部22Xが、後方板部22A上縁から前方に延びた後に下方へ屈曲させて構成されており、前側係止部22Yが、下方板部22B前縁から上方に延びた後に後方へ屈曲させて構成されている。
【0020】
出力アーム21は、基端部23を駆動軸12の外周面の一部に当接させるようにして、振動ユニット1に取り付けられる。このとき、出力アーム21の基端部23において、上側固定部23A下面が駆動軸12上面に接触するとともに、基端部23の前側固定部23B後面が駆動軸12前面に接触する。すなわち、出力アーム21は、基端部23が駆動軸12の左右方向一部における上面及び前面を覆うようにして、振動ユニット1に取り付けられる。また、上側固定部23A後縁が駆動軸12後縁よりも後方に突出するとともに、前側固定部23B下縁が駆動軸12下縁よりも下方に突出している。
【0021】
アーム固定部材22が、基端部23で覆われた駆動軸12における露出した外周面を覆うようにして、出力アーム21が取り付けられた振動ユニット1に取り付けられる。このとき、アーム固定部材22は、後方板部22Aの突設部分前面を駆動軸12後面に当接させるとともに、下方板部22Bの突設部分上面を駆動軸12下面に当接させる。すなわち、アーム固定部材22は、駆動軸12の出力アーム21の基端部23で覆われた箇所の後面及び下面を覆うようにして、振動ユニット1に取り付けられる。また、アーム固定部材22は、後方板部22A上縁をアーム固定部材22の基端部23上面より上方へ突出させることで、上側係止部22Xを基端部23の上側係止部23Xに係止させる一方、下方板部22B前縁をアーム固定部材22の基端部23前面より前方へ突出させることで、前側係止部22Yを基端部23の前側係止部23Yに係止させる。
【0022】
出力アーム21は、基端部23両端における上側係止部23X及び前側係止部23Yに、アーム固定部材22両端の上側係止部22X及び前側係止部22Yが引っ掛けられて、駆動軸12との2か所の接触部で駆動軸12を押さえつけて、駆動軸12との聞で摩擦力を発生する。すなわち、出力アーム21は、アーム固定部材22により駆動軸12の方向に引き付けられ、駆動軸12と接触している二つの面(上面及び前面)において駆動軸12との間で摩擦力を発生させる。このようにして、出力アーム21とアーム固定部材22を組み合わせた移動体ユニット2が振動ユニット1に対して摩擦係合した状態となる。
【0023】
移動体となる出力アーム21の基端部23が、振動ユニット1の軸方向から視て振動ユニット1の外周の一部を覆う形状、すなわち、振動ユニット1の軸方向に対して垂直な面上で振動ユニット1の外周の一部を覆う形状を有している。そして、基端部23を振動ユニット1の外周に沿わせるとともに基端部23の両端を弾性体であるアーム固定部材22で連結させて、出力アーム21を振動ユニット1に係合させている。すなわち、出力アーム21の基端部23を、駆動軸12の前側上方より覆い被せるようにして、駆動軸12の前面及び上面に当接させて設置する。その後、アーム固定部材22を広げて、駆動軸12の後側下方より基端部23の両端を挟み込むようにして、上側係止部23X及び前側係止部23Yそれぞれを上側係止部22X及び前側係止部22Yを係止させて、駆動軸12に対して、出力アーム21の基端部23を摩擦係合させる。
【0024】
このように、移動体ユニット2は、出力アーム21の基端部23と弾性体となるアーム固定部材22とで駆動軸12を挟むようにして振動ユニット1に設置されるため、振動ユニット1に対する移動体ユニット2の組み込みが容易に行えるとともに、移動体ユニット2を適度な力で振動ユニット1に摩擦係合できる。このとき、アーム固定部材22の弾性力を変更することで、振動ユニット1に対する移動体ユニット2の摩擦力を変更できるものとしてもよいし、アーム固定部材22の駆動軸12への接触面積を変更することで、振動ユニット1に対する移動体ユニット2の摩擦力を変更できるものとしてもよい。
【0025】
また、移動体ユニット2は、出力アーム21のアーム部24を前方に延設させた構成を有しているが、駆動軸12を四角柱状とするとともに、出力アーム21の基端部23及びアーム固定部材22をL字状に構成することで、アーム部24による回転モーメントにより移動体ユニット2が振動ユニット1に対して回転することを規制できる。すなわち、出力アーム21の基端部23及びアーム固定部材22それぞれが駆動軸12の外周面を押圧しながら当接することにより、駆動軸12に対する出力アーム21の回転を防止できる。このとき、出力アーム21の基端部23及びアーム固定部材22は、前側固定部23Bと後方板部22Aとで駆動軸12の前後を狭持するとともに、上側固定部23Aと下方板部22Bとで駆動軸12の上下を狭持することで、駆動軸12に摩擦係合している。
【0026】
上述のようにして、移動体ユニット2を駆動軸12に挿入させるようにして摩擦係合した振動ユニット1は、筐体3の固定枠32に対して一つの方向(上方向)から押し付けられて固定枠32上に載置される。このとき、移動体ユニット2が組み付けられた振動ユニット1は、接着剤33による接着などで固定枠32上に固定される。すなわち、固定枠32の左右側壁となる支持片32A,32B上に、絶縁材料による接着剤33を塗布した後、移動体ユニット2が係合された振動ユニット1を筐体3の上方から下降させて、振動ユニット1両端を支持片32A,32B上に載置させる。このとき、振動ユニット1を上から押しつけることで、接着剤33により振動ユニット1を筐体3の固定枠32上に固着させる。これにより、筐体3の固定枠32に対して振動ユニット1が極めて安定的に固定されると同時に、組み立て時に振動ユニット1を筐体3に対して一つの方向(上方向)から設置させるだけでよいので、手動組み立て及び自動組み立てのいずれにおいても組立容易性を向上できる。また、接着剤33は、エポキシ、ウレタン、ゴム、シリコン、シアノアクリレート、ポリイミド系などの接着剤が使用可能であり、駆動装置の仕様や用途に応じて適宜選択できる。更に、接着剤33は、組立工程にあわせて、常温硬化型、熱硬化型、光硬化型などの各種より適宜選択されるものである。
【0027】
すなわち、移動体ユニット2を組み付けられた振動ユニット1は、固定枠32の二辺の外周に沿って設けられた凸部となる支持片32A,32Bそれぞれに、駆動軸12と圧電素子11を乗せるようにして固定される。この固定枠32に対する振動ユニット1の固定は、固定枠32における支持片32A,32Bに接着剤33を必要量塗布しておき、振動ユニット1を位置決め治具により位置決めして、固定枠32に押し付けて駆動軸12と圧電素子11を固定枠32に接着固定する。このように固定枠32に振動ユニット1を接着する際、固定枠32に対する振動ユニット1の位置や姿勢を固定した状態で把持すればよく、固定枠32に振動ユニット1を押しつけることに限定されるものではない。そして、接着剤33で振動ユニット1を筐体3に組み付けることで、移動体ユニット2の運動軌跡、位置、及び姿勢に対して最適となる位置に振動ユニット1の取り付け位置を調整できる。なお、固定枠32に対する振動ユニット1の固定方法は、上述した接着による固定方法以外に、超音波溶着などによる固定方法を用いてもよい。
【0028】
筐体3は、底面31の外周縁より立設させた外周壁となる固定枠32を有しており、固定枠32のうちの左右側壁が、支持片32A、32Bとして振動ユニット1の左右両端を支持する。すなわち、圧電素子11の一端が支持片32B上に接着剤33により固着される一方で、駆動軸12の一端が支持片32B上に接着剤33により固着される。接着剤33の弾性係数は、筐体3を構成する材料(例えば、金属又は繊維強化樹脂など)の弾性係数よりも低い。従って、接着剤33が弾性を有する緩衝材として機能するため、圧電素子11の一端が支持片32Aに対して、接着剤33の弾性による範囲内で変位可能であるとともに、駆動軸12の一端が支持片32Aに対して変位可能となる。そのため、振動ユニット1は、上下方向、左右方向、前後方向の3軸方向だけでなく、当該3軸に対する3回転方向についても、筐体3に対して変位できる自由度(6自由度)を有する。従って、筐体3に外力が加わっても接着剤33で吸収されることとなり、振動ユニット1に対して外力への影響を抑制できるため、固定枠32に対して極めて安定的に固定された振動ユニット1上で、動く移動体ユニット2に、固定枠32に対して安定した精密な動作をさせることができる。
【0029】
筐体3は、固定枠32のうちの前側壁32C及び後側壁32Dの高さを、左右側壁となる支持片32A,32Bよりも高くなるように構成している。このとき、前側壁32C及び後側壁32Dの上端が、振動ユニット1に係合された移動体ユニット2の上端(アーム固定部材22の上端)よりも高くなる。これにより、天井面41の左右側縁から下方に左右側壁42,43を垂設させたU字状(コ字状)のカバー4で、筐体3が覆われたとき、カバー4の天井面41下面と移動体ユニット2上端との間に間隙を設けて干渉を防ぐことができ、移動体ユニット2が振動ユニット1に対して左右にスライド可能となる。
【0030】
筐体3上方からカバー4を被せたとき、カバー4は、天井面41の前縁側下面が筐体3の前側壁32C上端に当接するとともに、天井面41の後縁側下面が筐体3の後側壁32D上端に当接する。このとき、振動ユニット1が固定された筐体3をカバー4で上方から覆うことで、筐体3の底面31とカバー4の天井面41とで上下が被覆された空間34の前後左右が、筐体3の前後側壁32C,32D及びカバー4の左右側壁42,43で囲まれる。そして、筐体3及びカバー4で囲まれた空間34内には、筐体3の支持片32A,32Bに固定支持された振動ユニット1が、移動体ユニット2が駆動軸12に摩擦係合された状態で左右に延びるように配置されている。振動ユニット1の左右幅は、筐体3の左右幅より短く構成されており、振動ユニット1(圧電素子11)の右端側面が支持片32Bの外側面(右側面)よりも内側(左側)に位置するとともに、振動ユニット1(駆動軸12)の左端側面が支持片32Aの外側面(左側面)よりも内側(右側)に位置している。これにより、振動ユニット1による左右方向の振動や、上下方向又は前後方向を回転軸とする振動により、振動ユニット1が筐体3やカバー4に干渉することを防止し、振動ユニット1又は筐体3及びカバー4の破損を防止できる。
【0031】
筐体3は、前側壁32Cの一部を切り欠いたアーム用開口部32Eを有しており、出力アーム21のアーム部24を外部に突出させている。アーム用開口部32Eは、その左右幅が移動体ユニット2の左右移動幅より大きくなるように、前側壁32Cの上縁左側を切り欠いて構成されており、アーム用開口部32E上方及び左側方がカバー4の天井面41及び左側壁42により覆われている。また、筐体3は、後側壁32Dの一部を切り欠いたリード線用開口部(導入部)32Fを有しており、移動体ユニット2の圧電素子11に接続されたリード線5がリード線用開口部32Fより外部に引き出される。リード線用開口部32Fは、後側壁32Dの上縁右側を切り欠いて構成されるとともに、振動ユニット1右端側となる圧電素子11に対向する位置に設けられ、リード線用開口部32F上方がカバー4の天井面41に覆われている。
【0032】
振動ユニット1において、振動ユニット1の軸方向に対して垂直となる断面が、圧電素子11の方が駆動軸12よりも大きい。本実施形態では、圧電素子11の上下高さが、駆動軸12の上下高さよりも高く、圧電素子11上面が駆動軸12上面よりも高い位置となっている。このとき、圧電素子11下面と駆動軸12下面とは、同一高さとなっている。これにより、駆動軸12に摩擦係合している移動体ユニット2が右側に移動する際、出力アーム21の基端部23右側面が、圧電素子11の左側面と当接することで、移動体ユニット2の右側変位が制限される。一方、左側の支持片32A上面に駆動軸12下面が接着剤33を介して固着されている。これにより、駆動軸12に摩擦係合している移動体ユニット2が左側に移動する際、出力アーム21の基端部23左側面が、筐体3の固定枠32(支持片32Aの右側面)と当接することで、移動体ユニット2の左側変位が制限される。
【0033】
なお、振動ユニット1において、圧電素子11と駆動軸12の上下高さを同一とし、前後幅を異なるものとしてもかまわない。すなわち、圧電素子11の前後幅を駆動軸12の前後幅よりも広くすることで、出力アーム21の基端部23右側面が、圧電素子11の左側面と当接することで、移動体ユニット2の右側変位が制限される。すなわち、圧電素子11の外周面(前後面及び上下面)の少なくとも一面が、駆動軸12の外周面に対して突出するように構成して、圧電素子11の突出部分の左側面に出力アーム21の基端部23右側面を当接させることで、移動体ユニット2の右側変位を制限できる。なお、圧電素子11下面を駆動軸12下面よりも下側に突出させた場合、駆動軸12を固定する支持片32Aの高さを、圧電素子11を固定する支持片32Bの高さより低くすることで、振動ユニット1を筐体3の底面31に対して平行(水平)に設置できる。
【0034】
筐体3には、圧電素子11と電気的に接続するリード線5を外部から導入するリード線用開口部(導入部)32Fを備えており、移動体ユニット2の移動方向に沿って、リード線用開口部32Fが圧電素子11と駆動軸12との境界よりも圧電素子11側に設けられている。圧電素子11は、例えば、振動ユニット1の軸方向(左右方向)に圧電材料が積層された積層型の圧電素子で構成されるとともに、その前後面に一対の電極を有している。そして、2本のリード線5それぞれが、圧電素子11における前後一対の電極それぞれに半田又は導電接着剤などにより接続されており、圧電素子11を駆動するための電圧波形が、2本のリード線5を介して外部の駆動回路から印加される。そして、固定枠32の後側壁32Dには、浅い切欠き部で構成されるリード線用開口部32Fが設けられており、このリード線用開口部32Fより、圧電素子11に接続された2本のリード線5が外部に引き出される。
【0035】
筐体3の固定枠32において、後側壁32Dにおけるリード線用開口部32Fが、圧電素子11の後面に対向する位置に設けられている。従って、圧電素子11の前後面に設けられた電極とリード線用開口部32Fとの距離が短くなるため、圧電素子11に接続される2本のリード線5を短くできる。また、リード線用開口部32Fを圧電素子11上面より上方で開口させた構成とすることで、圧電素子11に接続されたリード線5の屈曲箇所を少なくでき、リード線5の破損を防止できる。また、リード線用開口部32Fの左縁を、振動ユニット1における圧電素子11と駆動軸12との境界位置とすることで、移動体ユニット2の移動幅よりも外側(右側)にリード線5を配線できるため、移動体ユニット2とリード線5との接触を防止して、リード線5の破損や移動体ユニット2の移動に対する干渉を防止できる。
【0036】
圧電素子11は、変動する電圧波形が印加されることで、振動ユニット1の軸方向に伸縮して、駆動軸12の軸方向(長手方向)の振動を誘起させる。この振動ユニット1における振動を、時間軸で非対称な周期となる振動とすることで、移動体ユニット2を駆動軸12の軸方向に沿って移動させることができる。このとき、圧電素子11には、のこぎり波、非対称三角波、非対称正弦波などといった、時間軸方向に非対称な周期の振動を有する電圧波形による電気信号が与えられる。なお、非対称三角波及び非対称正弦波による電圧波形は、時間軸方向に対称性を持つ三角波や正弦波を時間軸方向に歪ませることで非対称性を与えることで生成される。なお、圧電素子11は、積層型の圧電素子に限定されるものではなく、バルク型の圧電素子としてもかまわない。また、振動ユニット1において、圧電素子11の代わりに、磁歪素子などの振動子を駆動軸12に連結させる構成とし、当該振動子により駆動軸12への振動を励起させるものとしてもよい。
【0037】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態となる駆動装置について、図面を参照して説明する。本実施形態の駆動装置において、第1実施形態の駆動装置と同一の部分については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図7は、本実施形態の駆動装置の構成を示す平面図及び正面図であり、
図8は、本実施形態の駆動装置の構成を示す左右側面図である。
図9は、本実施形態の駆動装置の構成を示す斜視図であり、
図10は、本実施形態の駆動装置の構成を示す断面図及び平面図である。
図11は、本実施形態の駆動装置の組立工程を説明するための分解斜視図である。
【0038】
図7~
図11に示すように、本実施形態の駆動装置は、第1実施形態の駆動装置と異なり、筐体3に設けられた左右一対の支持片32A,32Bそれぞれの上端に、振動ユニット1の端部の少なくとも一部が配置される切り欠きによる振動ユニット設置部35,36が設けられている。すなわち、筐体3は、矩形の外形を有する固定枠32を底面31外周に立設させている。固定枠32は、振動ユニット1の駆動軸12と圧電素子11を固定するための土手状の凸部となる左右一対の支持片32A,32Bと、カバー4の左右側壁42,43と組み合わされて筐体3の外周壁を構成する前後側壁32C,32Dとを備えている。そして、固定枠32における左右一対の支持片32A,32Bはそれぞれ、その上面の一部が切り欠かれることで、駆動軸12の他端が嵌合又は遊嵌される振動ユニット設置部(駆動軸設置部)35と、圧電素子11の他端が嵌合又は遊嵌される振動ユニット設置部(圧電素子設置部)36とが凹設されている。
【0039】
本実施形態の駆動装置は、固定枠32における支持片32A,32Bに振動ユニット1の両端を嵌め込む凹部となる振動ユニット設置部35,36が設けられている。そして、この振動ユニット設置部35,36に振動ユニット1を筐体3の上から嵌め込むようにして設置するため、筐体3に対する振動ユニット1の位置決めが容易となる。振動ユニット設置部35,36はそれぞれ、振動ユニット1の両端の前後幅より広く構成された凹部で構成されている。これにより、振動ユニット1による前後方向の振動や、上下方向又は左右方向を回転軸とする振動により、振動ユニット1が筐体3に干渉することを防止し、振動ユニット1又は筐体3の破損を防止できる。また、振動ユニット設置部35,36を構成する凹部の深さは、駆動軸12及び圧電素子11それぞれの少なくとも一部が嵌る深さであればよい。
【0040】
本実施形態の例では、振動ユニット1において、圧電素子11と駆動軸12の前後幅を同一幅で構成しているため、振動ユニット設置部35,36を構成する凹部の前後幅を同一幅とする。なお、振動ユニット1が、圧電素子11の前後幅を駆動軸12の前後幅より広くなるように構成される場合、振動ユニット設置部36の前後幅を振動ユニット設置部35よりも広くなるように構成する。また、本実施形態の例では、振動ユニット1において、圧電素子11と駆動軸12の下面を面一に構成しているため、振動ユニット設置部35,36を構成する凹部の深さを同一深さとする。なお、振動ユニット1が、圧電素子11の下面を駆動軸12の下面より下方に位置するように構成される場合、振動ユニット設置部36の深さを振動ユニット設置部35よりも深くなるように構成することで、振動ユニット1を筐体3の底面31に対して平行に設置できる。
【0041】
本実施形態の駆動装置を組み立てる際、第1実施形態の駆動装置と同様、まず、移動体ユニット2が、出力アーム21の基端部23と弾性体となるアーム固定部材22とで駆動軸12を挟むようにして、振動ユニット1に組み込まれる。そして、移動体ユニット2が駆動軸12に摩擦係合された振動ユニット1が、筐体3上方より固定枠32に対して押しつけられることで、筐体3に組み込まれる。このとき、本実施形態では、支持片32A、32Bの振動ユニット設置部35,36に接着剤33を塗布した後、振動ユニット1の左右両端が振動ユニット設置部35,36に嵌るように、振動ユニット1を筐体3上方より支持片32A、32B上に載置して押圧することで、振動ユニット1を支持片32A、32Bに固定させる。このように、本実施形態では、支持片32A,32B上に設けた振動ユニット設置部35,36を目印として、振動ユニット1を筐体3に組み込むことができるため、組み付け時の振動ユニット1の姿勢を一定なものとでき、組立容易性を向上できる。また、接着剤33を塗布する箇所が振動ユニット設置部35,36に制限できるため、接着剤33の塗布位置を一定に決めることができるとともに、接着剤33を無駄に塗布することがなくなる。
【0042】
振動ユニット1が筐体3に固定されると、圧電素子11の前後面に対して半田付けされた2本のリード線5を後側壁32Dにも受けたリード線用開口部32Fより筐体3外側に引き出す。このとき、リード線用開口部32Fにおいて、リード線5を絶縁材料による接着剤などで固定するものとしても構わない。そして、カバー4を筐体3上方より下降させて、振動ユニット1が左右方向に延設された筐体3をカバー4で被覆し、駆動装置を組み上げる。このとき、振動ユニット1に摩擦係合された移動体ユニット2のアーム部24が前後方向に延びて、筐体3の前側壁32Cに設けられたアーム用開口部32Eより前方に突出する。
【0043】
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態となる駆動装置について、図面を参照して説明する。本実施形態の駆動装置において、第1実施形態の駆動装置と同一の部分については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図12は、本実施形態の駆動装置の構成を示す平面図及び断面図であり、
図13は、本実施形態の駆動装置の構成を示す左側面図である。
【0044】
図12及び
図13に示すように、本実施形態の駆動装置は、第1実施形態の駆動装置と異なり、圧電素子11の電極とワイヤボンディングなどにより2本の金属ワイヤ6で電気的に接続される2つの端子用電極37を筐体3に設けて、2本のリード線5を筐体3外部で接続する構成を有している。圧電素子11の前後面の電極部分には、金属片による素子用電極13が導電性接着剤又は半田などで固着されている。前後一対の素子用電極13はそれぞれ、圧電素子11の前後面下端から外側に突出するようにL字状に屈曲した形状を有しており、上下に延びる接着固定部13Aが圧電素子11の電極部に固定される一方、前後に延びる突出部分となるワイヤ固定部13Bの上面に金属ワイヤ6の一端(前端)が固着されている。素子用電極13は、そのワイヤ固定部13B下面が圧電素子11下面と面一になるように、圧電素子11の前後面の下側に固定されている。
【0045】
筐体3は、圧電素子11の右端を支持する支持片32Bにより、振動ユニット1における一対の素子用電極13を支持できるように構成されている。前後一対の素子用電極13はそれぞれ、圧電素子11を挟んだ前後位置であって左右方向で異なる位置に設置されている。本実施形態では、一対の素子用電極13の左右間隔は、ワイヤボンディングによる2本の金属ワイヤ6の設置可能な左右幅で決定されるものであってもよい。そして、筐体3の支持片32Bは、その左右幅が左側の素子用電極13の左縁から右側の素子用電極13の右縁より広くなるように構成されている。キャピラリを用いて金属ワイヤ6をワイヤボンディングする際に、素子用電極13をキャピラリにて押圧しても、筐体3の支持片32Bにより素子用電極13を支持できる。
【0046】
端子用電極37は、筐体3の後側壁32Dにおけるリード線用開口部32Fの上面から後面に沿うようなL字上を有しており、絶縁性接着剤などにより後側壁32Dに対して左右一対に固着されている。端子用電極37は、リード線用開口部32F上面に固定されたワイヤ固定部37Aの上面に、金属ワイヤ6の他端(後端)がワイヤボンディングにより固着されるとともに、32D後面に固定されたリード線固定部37Bの後面に、5の一端が半田付けなどにより固着される。一対となる端子用電極37は、左右に隣接して配置されるとともに、左側の端子用電極37右端と、右側の端子用電極37左端とが離間するようにして配置されている。
【0047】
また、一対の端子用電極37それぞれの左右位置は、振動ユニット1における一対の素子用電極13の左右位置と同等の位置となっており、2本の金属ワイヤ6が平面視で平行になるように配線される。これにより、振動ユニット1が振動したとしても、2本の金属ワイヤ6同士が接触することがなく、振動ユニット1の電気的又は機械的な故障や破損を防止できる。また、筐体3及びカバー4に囲まれた空間34内にリード線5を引き込む必要がないため、外部の動作によりリード線5が変形した場合であっても、金属ワイヤ6の断線を防止できる。なお、本実施形態の例では、一対の素子用電極13が左右方向で重ならないような位置に設置されているものとしているが、素子用電極13それぞれの一部が左右方向に対して重なるような位置に配置されるものとし、支持片32Bの左右幅を狭くして、圧電素子11の支持面積を小さくするものとしても構わない。
【0048】
本実施形態の駆動装置は、支持片32B上面に塗布した接着剤33により、圧電素子11と共に前後一対の素子用電極13を固着させる。このとき、固化した接着剤33が弾性を有するものとすることで、圧電素子11と支持片32Bとの間だけでなく、素子用電極13と支持片32Bとの間においても、接着剤33が緩衝材として機能する。なお、本実施形態の例では、支持片32Bにおける圧電素子11との当接箇所総てに接着剤33を塗布するものとしたが、圧電素子11との当接箇所のうち圧電素子11の右端側に接着剤33を塗布するようにしても構わない。これにより、圧電素子11と支持片32Bとの当接箇所総てを接着する場合と比べて、圧電素子11と支持片32Bとの接着面積が狭くなるため、振動ユニット1の筐体3に対する自由度が大きくなるため、振動ユニット1の動作を安定して実行させることができる。
【0049】
筐体3において、後側壁32Dの右上側を切り欠くことでリード線用開口部32Fが設けられており、リード線用開口部32F上面の高さ位置が圧電素子11上面よりも高い位置となる。これにより、圧電素子11前面に固定された素子用電極13に一端が固着された金属ワイヤ6を端子用電極37まで配線する際、当該金属ワイヤ6による圧電素子11への接触を防ぎながら、金属ワイヤ6に圧電素子11を跨がせることができる。なお、配線された金属ワイヤ6の最上部は、筐体3の後側壁32Dの最上面よりも低い位置など、カバー4の天井面41よりも低くなるように配線することで、金属ワイヤ6がカバー4と接触することなく配線することで、振動ユニット1の振動による金属ワイヤ6の断線などを防止できる。
【0050】
なお、本実施形態において、前後一対の素子用電極13の左右位置を異なるものとしたが、前後一対の素子用電極13の左右位置を同一位置としても構わない。これにより、筐体3において、支持片32Bの左右幅を、駆動軸12を支持する支持片32Aの左右幅と同等に構成できる。このとき、前側の素子用電極13と接続される金属ワイヤ6は、後側の素子用電極13と右側の端子用電極37との間で配線される金属ワイヤ6に接触しないように、平面視で斜行させて配線されることで、左側の端子用電極37に接続される。また、本実施形態において、支持片32Bの左右幅を前後方向に沿って同一幅となるように構成するものを例に挙げたが、一対の素子用電極13の左右位置が異なる場合において、右側に位置する素子用電極13を支持される箇所のみ、支持片32Bの左右幅を広く構成するものとしても構わない。
【0051】
更に、本実施形態において、第1実施形態と同様、筐体3の支持片32A,32Bの上面を平坦に構成するものとしたが、第2実施形態と同様に、支持片32A,32Bの上面を切り欠いて振動ユニット設置部35,36を凹設した構成としても構わない。このとき、素子用電極13が振動ユニット設置部36前後となる支持片32B上面に設置されるものとしても構わないし、前後の素子用電極13を含めて振動ユニット設置部36に圧電素子11をはめ込むようにするものとしても構わない。なお、前後の素子用電極13も振動ユニット設置部36上面に設置される構成とした場合、振動ユニット設置部36の前後幅について、圧電素子11の前後に金属ワイヤ6を素子用電極13にボンディングするためのキャピラリを挿入できる幅とすることが好ましい。
【0052】
<第4実施形態>
以下に、本発明の第4実施形態となる駆動装置について、図面を参照して説明する。本実施形態の駆動装置において、第2及び第3実施形態の駆動装置と同一の部分については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図14は、本実施形態の駆動装置の構成を示す平面図及び断面図であり、
図15は、本実施形態の駆動装置の構成を示す左側面図である。
【0053】
図14及び
図15に示すように、本実施形態の駆動装置は、第3実施形態の駆動装置と異なり、前後一対の素子用電極13それぞれを圧電素子11の前後面それぞれと上面とに固定させた構成としている。すなわち、前後一対の素子用電極13は、電極となる圧電素子11前後面それぞれに導電性接着剤又は半田により固定される接着固定部13Aの上縁で屈曲させたワイヤ固定部13Bを、前後方向で互いに近づく方向に延設させている。すなわち、前側の素子用電極13は、上下に延びた接着固定部13A上縁から後方に向かって延びるワイヤ固定部13Bを、圧電素子11上面に固定しており、後側の素子用電極13は、接着固定部13A上縁から前方に向かって延びるワイヤ固定部13Bを、圧電素子11上面に固定している。
【0054】
本実施形態の駆動装置は、第2実施形態と同様、筐体3の支持片32A,32Bそれぞれに、振動ユニット1の両端を嵌入させる凹部となる振動ユニット設置部35,36が設けられている。また、筐体3は、第3実施形態と同様、後側壁32Dの右上側を切り欠くことでリード線用開口部32Fが設けられており、リード線用開口部32Fには、左右一対の端子用電極37が並設されている。そして、リード線用開口部32F上面を、第3実施形態と同様、圧電素子11上面よりも高い位置とすることで、リード線用開口部32Fの開口面積が小さくなるため、筐体3及びカバー4による空間34内への塵埃の進入などを防止できる。なお、リード線用開口部32F上面を、圧電素子11上面の高さ位置と同等又は低くするものとしてもよい。これにより、ワイヤボンディングされた金属ワイヤ6の最上部位置が低くなるため、カバー4の高さを低くしたとしても、金属ワイヤ6と天井面41との接触を防止できるため、駆動装置を小型化できる。
【0055】
本実施形態の駆動装置は、圧電素子11上面に素子用電極13のワイヤ固定部13Bを載置した構成となるため、リード線用開口部32F上の端子用電極37のワイヤ固定部37Aと素子用電極13のワイヤ固定部13Bとの距離が短くなり、金属ワイヤ6を短尺に構成できる。また、素子用電極13のワイヤ固定部13Bの高さ位置と、端子用電極37のワイヤ固定部37Aの高さ位置とを近づけた構成となり、金属ワイヤ6を圧電素子11上面よりも上方で配線できる。そのため、ボンディングするためのキャピラリを挿入しやすくなり、配線作業が容易になるだけでなく、圧電素子11への金属ワイヤ6の接触を確実に防止できる。更に、キャピラリにより金属ワイヤ6の一端を素子用電極13に固着させる際、圧電素子11を上方から押圧することとなるため、圧電素子11を接着剤33により確実に筐体3の支持片32Bに固定できる。
【0056】
なお、本実施形態において、第2実施形態と同様、支持片32A,32Bの上面を切り欠いて振動ユニット設置部35,36を凹設した構成したが、第1実施形態と同様、筐体3の支持片32A,32Bの上面を平坦に構成するものとしても構わない。また、
図16に示すように、筐体3の支持片32A,32B上面の高さを圧電素子11上面の高さと同一高さとするとともに、深さを圧電素子11の高さと同等とする凹部による振動ユニット設置部35,36を支持片32A,32Bに設けるものとしても構わない。このとき、圧電素子11の前後面に固定された素子用電極13は、その上部におけるワイヤ固定部13Bを圧電素子11の前後外側に向かって延設させた構成を有し、振動ユニット設置部36の前後外側となる支持片32B上面にワイヤ固定部13Bが支持される。また、振動ユニット設置部35,36の前後幅は、圧電素子11の前後面に固定される素子用電極13の接着固定部13Aの厚みを含んだ幅よりも広くすることが好ましい。なお、振動ユニット設置部35については、駆動軸12の前後幅よりも広い前後幅であればよく、振動ユニット設置部36の前後幅よりも狭いものとしても構わない。
【0057】
<適用例>
本発明の駆動装置をグリッパに適用した例について、
図17を参照して以下に説明する。なお、本例では、第1実施形態における駆動装置をグリッパに適用した構成を例に挙げて説明するが、第2~第4実施形態における駆動装置についても適用可能である。また、
図17は、グリッパの動作を示す図であり、移動体ユニット2の状態を明らかにするため、カバー4をはずした状態での平面図を示している。
【0058】
図17に示すように、本例に示すグリッパは、移動体ユニット2における出力アーム21のアーム部24先端を内側(左側)に屈曲させるとともに、アーム部24先端部と対称となる先端部を有する固定アーム25を筐体3における固定枠32の後側壁32Dに突設させている。グリッパは、振動ユニット1の振動により移動体ユニット2を左右に移動させることで、アーム部24先端と固定アーム25先端とを接離させる。17(A)は、移動体ユニット2を最も左側に位置させて、アーム部24と固定アーム25とを開いた状態とし、この開いた状態から移動体ユニット2を右側に移動させることで、アーム部24先端を固定アーム25先端に近づけて、アーム部24と固定アーム25とを閉じていく。
図17(B)に示すように、アーム部24先端と固定アーム25先端とが接触した状態となったとき、出力アーム21の基端部23は、振動ユニット1の圧電素子11の左端(圧電素子11と駆動軸12の境界)まで到達しておらず、移動体ユニット2は更に右側に移動可能な状態にある。
【0059】
出力アーム21は、アーム部24の左右方向の厚みを薄くして、アーム部24を撓ませることが可能に構成されており、
図17(C)のように、アーム部24と固定アーム25とを接触させた状態のまま、更に移動体ユニット2を右側に移動できる。このように、アーム部24を可撓する構造とすることで、アーム部24の撓みによる弾性力がアーム部24と固定アーム25との把持力の強度を上げる。また、アーム部24を撓ませてアーム部24と固定アーム25とを閉じた状態とすることで、アーム部24と固定アーム25とを開く際に、アーム部24の撓みによる弾性力が作用し、アーム部24が固定アーム25から離れる方向に移動体ユニット2が円滑に移動する。更に、グリッパとして組み立てた際に、固定アーム25先端と出力アーム21の先端との位置あわせが容易になる。このとき、出力アーム21の基端部23がアーム部24の撓みに応じて傾くようにしてもよい。なお、本例において、出力アーム21におけるアーム部24の左右幅を薄くすることで、アーム部24を撓ませる構造としたが、出力アーム21における基端部23を高剛性材料で構成する一方、アーム部24を可撓性材料で構成することで、アーム部24を撓ませることができるものとしても構わない。
【符号の説明】
【0060】
1 振動ユニット
2 移動体ユニット
3 筐体
4 カバー
5 リード線
6 金属ワイヤ
11 圧電素子
12 駆動軸
13 素子用電極
13A 接着固定部
13B ワイヤ固定部
21 出力アーム(移動体)
22 アーム固定部材(弾性体)
22A 後方板部
22B 下方板部
22X 上側係止部
22Y 前側係止部
23 基端部(係合部)
23A 上側固定部
23B 前側固定部
23X 上側係止部
23Y 前側係止部
24 アーム部
25 固定アーム
31 底面
32 固定枠
32A 支持片
32B 支持片
32C 前側壁
32D 後側壁
32E アーム用開口部
32F リード線用開口部(導入部)
33 接着剤
34 空間
35 振動ユニット設置部(駆動軸設置部)
36 振動ユニット設置部(圧電素子設置部)
37 端子用電極
37A ワイヤ固定部
37B リード線固定部
41 天井面
42 左側壁
43 右側壁