(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】設置具
(51)【国際特許分類】
A01M 29/32 20110101AFI20220221BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20220221BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
A01M29/32
H02G1/02
H02G7/00
(21)【出願番号】P 2018004272
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000139573
【氏名又は名称】株式会社愛洋産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岸 泰至
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 梓
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-141267(JP,A)
【文献】特開2017-175833(JP,A)
【文献】特開2015-154598(JP,A)
【文献】特開2011-182704(JP,A)
【文献】特開2017-038488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0137883(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/00-29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1挟部と、第2挟部と、前記第1挟部と前記第2挟部との間で移動する第3挟部と、を備え、前記第1挟部から所定距離離れた第1挟位置に前記第1挟部側から前記第2挟部側に向かって前記第3挟部を移動させると、前記第2挟部と前記第3挟部との間に架空線を挟む忌避線架線具について、複数の前記忌避線架線具を前記架空線に設置する作業で用いることが可能な設置具であって、
活線作業用の工事具で支持可能な支持部と、
前記第1挟位置よりも前記第1挟部に近い第2挟位置で、前記第1挟部と前記第3挟部との間に挟まれることによって、前記忌避線架線具を取り付けることができる長尺形状のアーム部であって、前記支持部から延設され、長手方向に沿って複数の前記忌避線架線具を並べて取り付けることができる長さを有するアーム部と
を備え
、
前記アーム部は、前記支持部から同一方向に向かって平行に延設された複数の棹状部を有し、
前記忌避線架線具が、操作部と、前記操作部から前記第1挟部を貫通して前記第3挟部まで延設された突出部とを備え、前記操作部が操作されると、前記第3挟部に向かって前記第1挟部から突出する前記突出部の突出量が増減することによって、前記第3挟部が移動するよう構成されており、
前記アーム部は、一対の前記棹状部を備え、
各前記棹状部は、前記突出部を間に挟んで、各前記棹状部の両方を前記第1挟部と前記第3挟部との間のアーム挟空間に通すことが可能な間隔で配置されている設置具。
【請求項2】
請求項1に記載の設置具において、
当該設置具を前記架空線に引っ掛ける引掛部を備え、
前記アーム部における前記第3挟部に対向する面は平面であり、
前記アーム部は、前記引掛部が引っ掛けられた前記架空線の下方の位置で前記忌避線架線具を支持する設置具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の設置具において、
一対の前記アーム部を備え、
各前記アーム部のうちの前記忌避線架線具が設置される部分は、前記支持部を通る同一直線上で、前記支持部から反対方向に向かって延設されている設置具。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項に記載の設置具において、
前記アーム部は、
前記支持部から同一方向に向かって平行に延設された複数の棹状部を有する
設置具。
【請求項5】
請求項
4に記載の設置具において、
前記忌避線架線具が、操作部と、前記操作部から前記第1挟部を貫通して前記第3挟部まで延設された突出部とを備え、前記操作部が操作されると、前記第3挟部に向かって前記第1挟部から突出する前記突出部の突出量が増減することによって、前記第3挟部が移動するよう構成されている場合、
前記アーム部は、
一対の前記棹状部を備え、
各前記棹状部は、
前記第1挟部と前記第3挟部との間のアーム挟空間に通されたときに、各前記棹状部の間に前記突出部を位置させることが可能な間隔をあけて配置されている設置具。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の設置具において、
一対の前記アーム部を備え、
各前記アーム部は、
前記支持部を通る同一直線上で、前記支持部から反対方向に向かって延設されている設置具。
【請求項7】
第1挟部と、第2挟部と、前記第1挟部と前記第2挟部との間で移動する第3挟部と、を備え、前記第1挟部から所定距離離れた第1挟位置に前記第1挟部側から前記第2挟部側に向かって前記第3挟部を移動させると、前記第2挟部と前記第3挟部との間に架空線を挟む忌避線架線具について、複数の前記忌避線架線具を前記架空線に設置する作業で用いることが可能な設置具であって、
活線作業用の工事具で支持可能な支持部と、
前記第1挟位置よりも前記第1挟部に近い第2挟位置で、前記第1挟部と前記第3挟部との間に挟まれることによって、前記忌避線架線具を取り付けることができる長尺形状のアーム部であって、前記支持部から延設され、長手方向に沿って複数の前記忌避線架線具を並べて取り付けることができる長さを有するアーム部と
を備え
、
前記支持部は、
前記アーム部が延設される基礎となる基礎部と、
前記活線作業用の工事具で支持される被支持部と
を有し、
前記被支持部は、
前記アーム部を前記架空線に対して平行に配置したとき、前記基礎部に対して、前記基礎部の下方に配置可能な設置具。
【請求項8】
請求項
7に記載の設置具において、
前記被支持部は、
前記アーム部を前記架空線に平行に配置したとき、前記基礎部に対して、前記架空線の一の側方側の所定位置から、前記架空線の他の側方側に向かって斜め下方に傾斜した傾斜部を有する設置具。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の設置具において、
前記アーム部に取り付けられた各前記忌避線架線具の前記第2挟部と前記第3挟部との間に前記架空線が通されたときに、前記架空線に引っ掛かる引掛部を備える設置具。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の設置具において、
前記アーム部に各前記忌避線架線具が取り付けられているとき、各前記忌避線架線具から所定距離離れた位置に配置されるロープホルダ部であって、前記支持部から直線状に延設され、前記アーム部に平行に延設された前記ロープホルダ部を備える設置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の忌避線架線具を架空線に設置する作業で用いられる設置具に関する。
【背景技術】
【0002】
架空線には、鳥害を防止するため、架空線の上方に鳥害防止用の忌避線が架けられることがある。この忌避線を架空線の上方に架けるために用いられるのが忌避線架線具であり、架空線には複数の忌避線架線具が架空線の長手方向に沿って所定間隔ごとに設置される。
【0003】
忌避線架線具は、架空線に固定される本体部と、忌避線を支持する支柱部と、操作部とを備えている。このうち、支持部は、本体部から延設されており、忌避線架線具は、本体部が架空線に固定されたときに、この支持部が本体部から上方に向かって延設された状態となるように架空線に取り付けられる。この支持部は、忌避線架線具が架空線に設置されると、架空線の上方で忌避線を支持する。
【0004】
一方、操作部は、本体部が架空線に固定されたときに、本体部の下方に配置される。忌避線架線具は、この操作部が操作されると、架空線に設置された本体部が架空線に固定される。
【0005】
このように構成された複数の忌避線架線具を架空線に一度に設置することができる設置具として、
図10に記載された、平板状に形成された設置具100が知られている(特許文献1)。
【0006】
この設置具100は、複数の忌避線架線具を架空線に一度に設置するため、その一方の板面上に、各忌避線架線具200を平行に並べつつ板面に対して垂直に着脱できるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した設置具100を用いて、複数の忌避線架線具200を活線の架空線に設置する作業を行う場合、次のような活線作業用の工事具が用いられることが多い。その工事具は、竿の先端部が二股に分かれて2本の指部をなし、竿の後端部に備えられた操作部を操作すると各指部の遊端が近づき、各指部の遊端の間に対象物を挟んで対象物を把持することが可能な器具である。
【0009】
この活線作業用の工事具を用いて複数の忌避線架線具200を活線の架空線に設置する作業を行う場合、作業員は、まず、設置具100に複数の忌避線架線具200を取り付ける。次に、作業員は、活線作業用の工事具の先端側に設けられた二本の指部で設置具100を挟み、活線作業用の工事具の後端側を持って設置具100を持ち上げ、設置具100に取り付けられた複数の忌避線架線具200を架空線に掛ける。
【0010】
ところで、上述した設置具100を用いて各忌避線架線具200を架空線に掛けた場合、各忌避線架線具200を設置具100から外す必要がある。しかし、設置具100は、板面に対して各忌避線架線具200を垂直に着脱可能に構成されている。しかも、各忌避線架線具200は、架空線に掛けられていて、その掛けられた位置から移動させることができない。そのため、各忌避線架線具200を設置具100に対して動かして各忌避線架線具200を設置具100から外すことができない。
そこで、上述した設置具100を用いて各忌避線架線具200を架空線に掛けた場合、設置具100を動かして、設置具100を各忌避線架線具200から外す必要が生じる。
しかし、設置具100は、各忌避線架線具200が設置具100から外れないように各忌避線架線具200を止めている。そのため、作業員は、設置具100を各忌避線架線具200から外す場合、設置具100を各忌避線架線具200から力を入れて引き剥がす必要がある。そうすると、結果として、各忌避線架線具200を設置具100から外すことができる。
【0011】
しかし、設置具100を各忌避線架線具200から力を入れて引き剥がす作業は、力を要する作業なので、作業者にとって負担のかかる作業であった。
本発明は、各忌避線架線具を簡単に取り外すことができる設置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の設置具は、第1挟部と、第2挟部と、前記第1挟部と前記第2挟部との間で移動する第3挟部と、を備え、前記第1挟部から所定距離離れた第1挟位置に前記第1挟部側から前記第2挟部側に向かって前記第3挟部を移動させると、前記第2挟部と前記第3挟部との間に架空線を挟む忌避線架線具について、複数の前記忌避線架線具を前記架空線に設置する作業で用いることが可能な設置具であって、前記第1挟位置よりも前記第1挟部に近い第2挟位置で、前記第1挟部と前記第3挟部との間に挟まれることによって、前記忌避線架線具を取り付けることができる長尺形状のアーム部であって、前記支持部から延設され、長手方向に沿って複数の前記忌避線架線具を並べて取り付けることができる長さを有するアーム部とを備える。
【0013】
本発明の設置具を用いて忌避線架線具を架空線に取り付ける場合、最初に、各忌避線架線具をアーム部に取り付ける。このとき、各忌避線架線具は、アーム部の長手方向に沿って並べて取り付けられる。
次に、活線作業用の工事具で支持部を支持して、本発明の設置具を架空線に近づける。このとき、アーム部が架空線に平行になるように、本発明の設置具を架空線に近づける。このようにすれば、アーム部に並べて取り付けられた複数の忌避線架線具が架空線に対して平行に配置され、そうすると、複数の忌避線架線具を架空線に一度に掛けることができるからである。
【0014】
各忌避線架線具が架空線に掛けられるとき、架空線は、第2挟部と第3挟部との間に通される。本発明の設置具では、アーム部は、第1挟部と第3挟部との間に挟まれているので、本発明の設置具を用いて忌避線架線具を架空線に掛けるとき、各忌避線架線具を、アーム部に邪魔されることなく掛けることができる。
しかも、各忌避線架線具が架空線に掛けられるとき、アーム部は、架空線に沿って配置されている。そのため、第3挟部を第2挟部側に移動させて、各忌避線架線具がアーム部に対して移動可能な状態になると、各忌避線架線具を架空線に沿って移動させるだけで、各忌避線架線具をアーム部から取り外すことができる。
その後、各忌避線架線具を、架空線に設置される位置まで移動させた後、さらに各忌避線架線具が備える第3挟部を第2挟部側に移動させれば、各忌避線架線具を架空線に固定することができる。
したがって、本発明の設置具を用いると、各忌避線架線具の第3挟部を第2挟部の側に移動させ、アーム部に沿って各忌避線架線具を移動させるだけの簡単な操作で、本発明の設置具から各忌避線架線具を簡単に取り外すことができる。
【0015】
(2)なお、アーム部は、支持部から同一方向に向かって平行に延設された複数の棹状部を有するよう構成されていてもよい。このようにすれば、アーム部の軽量化を図ることができるからである。
【0016】
(3)本発明のように、忌避線架線具が、操作部と、前記操作部から前記第1挟部を貫通して前記第3挟部まで延設された突出部とを備え、前記操作部が操作されると、前記第3挟部に向かって前記第1挟部から突出する前記突出部の突出量が増減することによって、前記第3挟部が移動するよう構成されている場合、前記アーム部は、一対の前記棹状部を備え、各前記棹状部は、前記第1挟部と前記第3挟部との間のアーム挟空間に通されたときに、各前記棹状部の間に前記突出部を位置させることが可能な間隔をあけて配置されていてもよい。
本発明のように、各忌避線架線具が突出部を備える場合でも、各棹状部が、それらの間に突出部を位置させることが可能な間隔をあけて配置されていれば、各忌避線架線具を、アーム部に取り付けることができる。
【0017】
(4)本発明の設置具が一対のアーム部を備える場合、各アーム部は、支持部を通る同一直線上で、支持部から反対方向に向かって延設されていてもよい。
このようにすると、本発明の設置具は、支持部の両側のそれぞれに複数の忌避線架線具を取り付けることができる。そのため、本発明の設置具を用いると、支持部の片側だけに複数の忌避線架線具を取り付けた場合に比べ、多くの忌避線架線具を一度に架空線に取り付けることができる。
【0018】
(5)本発明のように、前記支持部は、前記アーム部が延設される基礎となる基礎部と、前記活線作業用の工事具で支持される被支持部とを有し、前記被支持部は、前記アーム部を前記架空線に対して平行に配置したとき、前記基礎部に対して、前記基礎部の下方に配置可能な構造を有していてもよい。
【0019】
活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に掛ける場合、架空線の下方から活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に近づけることが多い。そのため、本発明の設置具を用いて忌避線架線具を架空線に掛ける場合も、活線作業用の工事具で本発明の設置具の被支持部を支持して、本発明の設置具を架空線に近づけることが多くなる。
【0020】
本発明の設置具は、被支持部が基礎部の下方に位置することができるように構成されている。そのため、活線作業用の工事具で、本発明の設置具に取り付けられた忌避線架線具を架空線に設置する作業を行う場合、活線作業用の工事具で被支持部を支持すれば、その支持した先に忌避線架線具が位置することとなる。
【0021】
したがって、本発明の設置具を用いると、架空線の下方から活線作業用の工事具の先を近づければ、各忌避線架線具を架空線に掛けることができるので、忌避線架線具を下方から架空線に近づける、従来と同じ作業方法で忌避線架線具を架空線に掛けることができる。
【0022】
(6)なお、被支持部は、前記アーム部を前記架空線に平行に配置したとき、前記基礎部に対して、前記架空線の一の側方側の所定位置から、前記架空線の他の側方側に向かって斜め下方に傾斜した傾斜部を有するようにしてもよい。
活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に取り付ける場合、架空線の斜め下方から活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具を架空線に近づける作業を行う場合もあるためである。
【0023】
(7)本発明のように、前記アーム部に取り付けられた各前記忌避線架線具の前記第2挟部と前記第3挟部との間に前記架空線が通されたときに、前記架空線に引っ掛かる引掛部を備えていてもよい。
このようにすると、本発明の設置具を用いて各忌避線架線具を架空線に掛ける場合、各忌避線架線具の第2挟部と第3挟部との間に架空線が通されたとき、本発明の設置具が、引掛部によって架空線に引っ掛けられる。
【0024】
そのため、各忌避線架線具を本発明の設置具から取り外すとき、架空線に引っ掛けられた設置具から各忌避線架線具を取り外すことになるので、本発明の設置具を支えておく必要がない。
したがって、本発明の設置具を用いると、各忌避線架線具を本発明の設置具から外すときの作業員の負担を減らすことができる。
【0025】
(8)本発明のように、前記アーム部に各前記忌避線架線具が取り付けられているとき、各前記忌避線架線具から所定距離離れた位置に配置されるロープホルダ部であって、前記支持部から直線状に延設され、前記アーム部に平行に延設された前記ロープホルダ部を備えるようにしてもよい。
【0026】
このロープホルダ部を備えていると、アーム部に固定された各忌避線架線具間に設置された忌避線を巻き付けておくことができる。しかも、ロープホルダ部は、アーム部に平行に延設されているので、各忌避線架線具をアーム部から外すときに、各忌避線架線具をアーム部の延設方向に移動させれば、ロープホルダ部に巻き付けられた忌避線もロープホルダ部の延設方向に移動してロープホルダ部から外れる。
【0027】
したがって、本発明の設置具を用いると、各忌避線架線具を本発明の設置具に取り付けたときに、忌避線が絡まないようにロープホルダ部に巻き付けておくことができる。
また、本発明の設置具を用いると、忌避線をロープホルダ部に巻き付けておいても、各忌避線架線具をアーム部から取り外す作業とは別に、忌避線をロープホルダ部から取り外す作業を行うことなく、忌避線をロープホルダ部から外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態の設置具に取り付けられる忌避線架線具の斜視図である。(a)は第3挟部を最も下方に移動させた様子を示す正面斜視図、(b)は第3挟部を架空線を第2挟部との間に挟むことが可能な第1挟位置に移動させた様子を示す正面斜視図である。
【
図3】実施形態の設置具の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は右側面図である。
【
図4】実施形態の設置具に忌避線架線具を固定した様子を説明するための説明図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【
図5】実施形態の設置具から忌避線架線具を外し、架空線に固定した様子を説明するための説明図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【
図6】(a)は実施形態の設置具に複数の忌避線架線具を取り付けた様子を説明する写真であり、(b)は、忌避線をロープホルダ部に取り付ける様子を説明する写真である。
【
図7】(a)は複数の忌避線架線具が取り付けられた実施形態の設置具を活線作業用の工事具で支持する様子を説明する写真であり、(b)は、実施形態の設置具に取り付けられた忌避線架線具を架空線に取り付ける様子を説明する写真である。
【
図8】(a)は実施形態の設置具から各忌避線架線具を取り外して架空線に引っ掛けた様子を説明する写真であり、(b)は、架空線に掛かる実施形態の設置具を活線作業用の工事具で架空線から取り外す様子を説明する写真である。
【
図9】架空線に掛けられていた実施形態の設置具を活線作業用の工事具で架空線から取り外した様子を説明する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の設置具は、
図1(a)及び
図1(b)に示す忌避線架線具9を架空線に設置するための設置具である。そのためまず、忌避線架線具9について詳細に説明した後、本実施形態の設置具を説明する。
【0030】
<忌避線架線具9>
忌避線架線具9は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本体部7と、支柱部80と、操作部85とを備えている。本体部7は、三方覆部70と、第3挟部73と、蓋部76とを備えている。
【0031】
三方覆部70は、コ字形状に形成されており、忌避線架線具9が架空線に設置されるとき、架空線の上方側、下方側、及び、一方の側方側を覆う。このうち一方の側方側とは、架空線の軸方向を前後方向としたときの左右方向のいずれかの一方の方向側を意味する。
【0032】
なお、三方覆部70のうち、架空線の下方側を覆う部分を第1挟部71、架空線の上方側を覆部分を第2挟部72とよぶ。
蓋部76は、長方形状に形成されており、忌避線架線具9が架空線に設置されるとき、三方覆部70が架空線を覆っていない部分、すなわち、架空線の他方の側方側を覆う。
【0033】
三方覆部70及び蓋部76は、架空線の外周面を囲って、架空線が入る大きさの取付空間79を形成する。
蓋部76は、長手方向の一端が、第2挟部72の遊端を支点として第2挟部72に対して回動可能に固定されている。具体的には、蓋部76は、架空線の他方の側方側を覆う閉位置から、取付空間79の外部から取付空間79の内部に架空線を差し入れることが可能となる開位置まで回動可能に固定されている。
【0034】
また、蓋部76は、第1挟部71の遊端に設けられた突起710に、蓋部76に設けられている固定用孔760を嵌挿すると、第1挟部71に対して固定することができる。
なお、蓋部76は、第2挟部72に回動可能に取り付けられる側が、突起710に固定用孔760を嵌挿して第1挟部71に固定される側に比べて、幅広に形成されている。
【0035】
支柱部80は、上下方向に長細い平板形状に形成されており、板面が左右方向に対して垂直となるように、第2挟部72の左右方向の中央から上方に向かって延設されている。
【0036】
この支柱部80には、後述する忌避線固定具81が取り付けられる長孔部82が設けられている。この長孔部82は、支柱部80の長さで示すと、支柱部80の上端から下方に1/5下がった地点から3/5下がった地点まで形成された、上下方向に細長い長方形状の孔部である。
【0037】
忌避線固定具81も、長孔部82と同様、上下方向に長細い長方形状に形成されている。長孔部82の内部には、長孔部82の長手方向の中央に、軸方向が前後方向に沿った回転軸が設けられている。忌避線固定具81は、その長手方向の中央部分が、この回転軸に対し回転可能に固定されている。忌避線固定具81は、支柱部80と平行となる位置(以下、「折畳位置」という)まで回転したときに、長孔部82をほぼ埋める大きさに形成されている。
【0038】
忌避線固定具81は、折畳位置に位置するとき、支柱部80に対して固定される。本実施形態では、長孔部82上を通るように忌避線を配置した後、忌避線固定具81を回転させ、忌避線固定具81で忌避線を押して忌避線を長孔部82内に押し入れ、長孔部82内で忌避線固定具81と支柱部80との間に忌避線を挟み、忌避線固定具81を支柱部80に固定すると、忌避線が忌避線架線具9に固定される。すると、忌避線は、取付空間79に位置する架空線から所定距離上方で支柱部80に支持される。
【0039】
第3挟部73は、取付空間79内で上下方向に移動可能に、三方覆部70に対して取り付けられている。また、第3挟部73のうち、蓋部76側の端部には、第3挟部73が架空線を第2挟部72との間に挟むことが可能な位置(以下、第1挟位置という)まで移動させると、蓋部76の幅広な部分に引っ掛かる蓋固定部730が形成されている。
【0040】
本実施形態では、蓋部76を開けて架空線を取付空間79のうち、第2挟部72と第3挟部73との間の空間(以下、架空線挟空間791という)内に差し入れた後、操作部85を操作して、第3挟部73を第1挟位置に移動すれば、第2挟部72と第3挟部73との間に架空線が挟まれて忌避線架線具9が架空線に固定される。また、このとき、蓋部76が蓋固定部730を介して三方覆部70に固定され、架空線が架空線挟空間791から抜けることを抑止する。
なお、後述する設置具1のアーム部3は、取付空間79のうち、第1挟部71と第3挟部73との間の空間(以下、アーム挟空間792という)に挿入される。アーム部3をアーム挟空間792に挿入後、操作部85を操作して、第1挟部71との間にアーム部3を挟むことが可能な位置(以下、第2挟位置という)に第3挟部73を移動すれば、第1挟部71と第3挟部73との間に架空線が挟まれて忌避線架線具9が設置具1に取り付けられる。
【0041】
操作部85は、円筒形状に形成されており、中心軸が第1挟部71の左右方向に沿った長手方向の中央から下方に向かうように、第1挟部71の下面に取り付けられている。また、本実施形態の忌避線架線具9は、操作部85から第1挟部71を貫通して第3挟部73まで延設された突出部90を備えている。さらに、本実施形態の忌避線架線具9には、第1挟部71の上面に、円盤状に形成された取付用円盤91が設置されている。
取付用円盤91は、軸方向に垂直な2つの円盤面のうち、一方の円盤面が第1挟部71の上面と接するように第1挟部71に取り付けられている。また、取付用円盤91は、その中心が第1挟部71の中心に一致するように第1挟部71に取り付けられている。
突出部90は、この取付用円盤91の中心軸と同心状に配置されるとともに、操作部85から、第1挟部71及び取付用円盤91の中心を貫通して、第3挟部73まで延設されている。操作部85が操作されると、第3挟部73に向かって第1挟部71から突出する突出部90の突出量が増減することによって、第3挟部73が第1挟部71と第3挟部73の並び方向に沿って移動する。
【0042】
非把持部78は、前後方向に垂直な板面を有する長板形状に形成されたものであり、三方覆部70の第1挟部71と、三方覆部70が一方の側面側を覆う一方側覆部との境界部分から、他方の側面側の斜め下方に向かって延設されている。非把持部78の板面には、滑り止め用の複数の突起が形成されている。非把持部78は、活線作業用の工事具で把持することができる大きさに形成されている。
【0043】
なお、活線作業用の工事具は、例えば、
図7(a)や
図7(b)に示すように、竿の先端部が二股に分かれて2本の指部をなし、竿の後端部に備えられた操作部を操作すると各指部の遊端が近づき、各指部の遊端の間に対象物を挟んで対象物を把持することが可能な工具である。
【0044】
以上のように構成された複数の忌避線架線具9を架空線に所定間隔ごとに固定するとともに、忌避線をそれぞれの忌避線架線具9の支柱部80に支持させれば、架空線上に鳥害防止用の忌避線を張ることができる。
【0045】
<設置具1>
次に、本実施形態の設置具1について、
図2、
図3(a)~
図3(d)を用いて説明する。
本実施形態の設置具1は、上述の忌避線架線具9を架空線に掛けるために用いられる器具である。
本実施形態の設置具1は、機能部としては、支持部2と、一対のアーム部3と、引掛部4と、一対のロープホルダ部5とを有する。このうち、支持部2は、基礎部20と被支持部21とを有するが、基礎部20は、各アーム部3及び各ロープホルダ部5と一体に形成されているため、基礎部20、一対のアーム部3、及び、一対のロープホルダ部5が一体に形成された部材を一体部材6とよぶ。
【0046】
この一体部材6のうち基礎部20は、長方形の板状に形成されている。具体的には、基礎部20は、長方形状に形成された一対の板面と、これら板面の周囲に形成される側面であって、板厚を形成する4つの側面とを有する形状に形成されている。
【0047】
また、一体部材6のうち、各アーム部3及び各ロープホルダ部5は、基礎部20の4つの側面のうち、長方形状の板面の長手方向に沿った長辺29を含む2つの側面から延設されている。具体的には、一方のアーム部3及びロープホルダ部5は、長辺29を含む2つの側面のうち一方の側面から延設され、他方のアーム部3及びロープホルダ部5は、長辺29を含む2つの側面のうち他方の側面から延設されている。さらに、各アーム部3及び各ロープホルダ部5は、長辺29に対して垂直、かつ、長方形状の板面に沿って、基礎部20からそれぞれ延設されている。
【0048】
なお、以下では、基礎部20を形成する一対の板面に垂直な方向を上下方向、長辺29に沿った方向を左右方向、基礎部20を形成する一対の板面に沿った方向であって、長辺29に垂直な方向を前後方向とよぶ。
各アーム部3は、基礎部20の長辺29に沿った各側面のうち、左右方向の一方側である右方に寄った位置から延設され、各ロープホルダ部5は、基礎部20の長辺29に沿った各側面のうち、左右方向の他方側である左方に寄った位置から延設されている。
【0049】
各アーム部3は、基礎部20から前後方向に平行に延設されるとともに、左右方向に並べられた一対の棹状部30をそれぞれ有する。これら棹状部30は、第1挟部71と第3挟部73との間の空間に通されたときに、各棹状部30の間に突出部90(
図1(b)参照)を位置させることが可能な間隔をあけて配置されている。
【0050】
各棹状部30のうち、右方側の棹状部30には、
図3(c)及び
図3(d)に示すように、棹状部30の下面のうち右方側の縁部に、前後方向に沿って長尺状に形成され、棹状部30の下面から下方に向かって突出した段差部31が設けられている。
【0051】
また、左方側の棹状部30には、棹状部30の下面のうち左方側の縁部に、前後方向に沿って長尺状に形成され、棹状部30の下面から下方に向かって突出した段差部32が設けられている。
また、
図2、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、各棹状部30の先端には、各棹状部30の上面から上方に向かって突出した引掛凸部33が設けられている。
【0052】
各ロープホルダ部5の先端には、
図2、
図3(a)、及び、
図3(d)に示すように、他の部分よりも膨らんだ膨張部50が形成されている。
次に、支持部2の被支持部21について、
図2及び
図3(b)~
図3(d)を用いて説明する。
被支持部21は、基礎部20の左方側の側面から下方側に向かって延設された梁部22と、この梁部22の下端から、右方側の下方に向かって傾斜した傾斜部23とを有している。
【0053】
梁部22は、基礎部20の前後方向の幅と同じ幅を有する、基礎部20に対して垂直な面を形成する。また、傾斜部23も、梁部22の前後方向の幅と同じ幅を有する、梁部22に対して傾斜した面を形成する。
また、傾斜部23には、左右方向の各縁部に沿って、傾斜部23の上面から突出した滑止部230が形成されている。
【0054】
次に、引掛部4について、
図2及び
図3(a)~
図3(c)を用いて説明する。
引掛部4は、基礎部20の上面のうち、左方側に寄った位置に設けられている。
引掛部4は、基礎部20に形成された平面形状の土台部40を備えている。土台部40は、基礎部20の前後方向に沿った幅よりも狭い幅であり、かつ、基礎部20の左右方向に沿った長さよりも短い長さに形成されている。そして、土台部40は、左方側の縁部が基礎部20の左方側の縁部と一致し、下面が基礎部20の上面に重なるように、基礎部20上に取り付けられる。
【0055】
引掛部4は、土台部40の右方側の端部から上方に向かって延設された立面部41を備えている。立面部41は、土台部40と前後方向の幅が同じ面状に形成されている。
引掛部4は、立面部41の上端から左方に向かって延設された掛部42を備えている。掛部42は、立面部41と前後方向の幅が同じ面状に形成されているが、右方側が上方側に向かって凸状に形成され、左方側が下方側に向かって凸状に形成された波形状に形成されている。掛部42のうち、上方側に凸状に形成された部分は、架空線の上面に沿った形状に形成されている。以下、掛部42のうち、上方側に向かって凸状に形成された部分を上方凸部420と呼び、下方に向かって凸状に形成された部分を下方突部421と呼ぶ。
【0056】
引掛部4は、左方側が下方に向かって凸状に形成されているので、引掛部4が架空線に引っ掛けられて、架空線が上方凸部420に嵌ると、上方凸部420から架空線が抜けることを下方突部421が抑制する。
【0057】
また、引掛部4は、下方突部421と土台部40との間に架空線を通すことができる隙間があるように形成されているので、この隙間を通せば、架空線が上方凸部420に嵌る位置に差し入れることができる。
【0058】
さらに、引掛部4は、
図4(a)及び
図4(c)に示すように、第1挟部71と第3挟部73との間にアーム部3が挟まれたとき、第2挟部72よりも下方位置に位置する大きさに形成されている。そのため、このとき架空線を、架空線挟空間791に差し入れると、架空線は、引掛部4に引っ掛かる。
【0059】
次に、上記のように形成された設置具1に、忌避線架線具9を固定する方法について、
図4及び
図5を用いて説明する。
なお、
図4は、忌避線架線具9の第1挟部71と第3挟部73との間にアーム部3を挟むことができる第1挟位置に、第3挟部73が位置する様子を示している。
また、
図5は、忌避線架線具9の第2挟部72及び第3挟部73との間に架空線を挟むことができる第2挟位置に、第3挟部73が位置する様子を示している。
設置具1に忌避線架線具9を取り付ける場合、
図5に示すように、第3挟部73を第2挟部72の側に移動して、第1挟部71と第3挟部73との間の空間にアーム部3を差し込むことができるアーム挟空間792を作る。そして、そのアーム挟空間792に、アーム部3を差し込む。このとき、アーム部3を構成する各棹状部30の間に、忌避線架線具9の突出部が位置するように、アーム部3は、第1挟部71と第3挟部73との間のアーム挟空間792に差し込まれる。
【0060】
次に、操作部を操作して第3挟部を第1挟部71に向かって下げ、
図4に示すように、第1挟部71と第3挟部73との間にアーム部3を挟む。
本実施形態の設置具1は、このように、非常に簡単な操作で、忌避線架線具9をアーム部3に取り付けることができる。
ただし、本実施形態では、アーム部3は、直接的には、第3挟部73と、第1挟部71に設置された取付用円盤91との間に挟まれている。また、アーム部3が、第3挟部73と、取付用円盤91との間に挟まれるとき、段差部31及び段差部32が、取付用円盤91の側面に当たった状態で挟まれるよう、本実施形態の設置具1は構成されている。
【0061】
第3挟部73が第1挟位置に位置するとき、アーム部3を第3挟部73の下面に当てると、引掛部4の上方凸部420が第1挟部71よりも低い位置に位置する。
【0062】
そのため、忌避線架線具9がアーム部3に固定された設置具1を、忌避線架線具9の第2挟部72と第3挟部73との間の架空線挟空間791に架空線を差し入れられるように架空線に運び、引掛部4の上方凸部420に架空線を嵌めると、設置具1が架空線に引っ掛かって、各忌避線架線具9は架空線から浮いた状態で架空線に引っ掛けられる。
【0063】
以上説明した設置具1を用いて、架空線に複数の忌避線架線具9を取り付ける方法を、
図6~
図9を用いて、説明する。
1)
図6(a)に示すように、最初に、設置具1のうち、支持部2の前後両側に設けられたアーム部3に、それぞれ3つずつ忌避線架線具9を固定する。各忌避線架線具9は、操作部85を操作して、各忌避線架線具9の第1挟部71と第3挟部73との間にアーム部3を挟むことによって固定される。
【0064】
2)
図6(b)に示すように、各忌避線架線具9の支柱部80間に取り付けられた忌避線を、ロープホルダ部5に巻き付ける。
3)
図7(a)に示すように、設置具1のうち、傾斜部23を、活線作業用の工事具の先端に取り付けられた指部で挟む。このとき、各忌避線架線具9の蓋部76を開けておく。
4)
図7(b)に示すように、各忌避線架線具9の蓋部76が開いた部分を通して、各忌避線架線具9の第2挟部72及び第3挟部73との間に架空線を差し入れ、引掛部4に架空線を引っ掛ける。すると、設置具1が架空線に引っ掛かるが、各忌避線架線具9は架空線から浮いた状態となる。
【0065】
5)
図8(a)に示すように、各忌避線架線具9を設置具1から外し、架空線に引っ掛ける。
6)
図8(b)に示すように、各忌避線架線具9を設置具1からすべて取り外したら、設置具1が引掛部4を介して引っ掛かった状態となるので、
図9に示すように、傾斜部23を活線作業用の工事具で把持して、設置具1を架空線から取り外す。
【0066】
7)その後、各忌避線架線具9の操作部85を操作して、各忌避線架線具9を架空線に固定する。すると、架空線上に忌避線が架線される。
以上説明した設置具1は、次の様な特徴的な作用効果を奏する。
本実施形態の設置具1を用いて複数の忌避線架線具9を架空線に取り付ける場合、まず、各忌避線架線具9が、アーム部3の長手方向に沿って並べられて、アーム部3に取り付けられる。そして、活線作業用の工事具で支持部2を支持して、アーム部3に取り付けられた複数の忌避線架線具9を架空線に近づける。このとき、アーム部3が架空線に対して平行になるように、複数の忌避線架線具9を架空線に近づける。すると、複数の忌避線架線具9が架空線に一度に取り付けられる。
【0067】
その後、各忌避線架線具9を本実施形態の設置具1から取り外す。本実施形態の設置具1を構成するアーム部3は、直線状に延設され、各忌避線架線具9は、このアーム部3の長手方向に沿って並べて固定されている。このとき、アーム部3は、架空線に対して平行に配置されている。そのため、各忌避線架線具9は、架空線に沿って移動させるだけで、本実施形態の設置具1から取り外すことができる。
【0068】
このように、本実施形態の設置具1は、各忌避線架線具9を架空線に沿って移動させるだけで、アーム部3から取り外すことができる。
【0069】
本実施形態で説明した各忌避線架線具9は突出部90を備えているが、アーム部3を構成する各棹状部30が、それらの間に突出部90を位置させることが可能な間隔をあけて配置されているので、本実施形態の設置具1は、各忌避線架線具9を、アーム部3に取り付けることができる。
【0070】
本実施形態の設置具1は、所定の直線上で、支持部2から前後それぞれ反対側に向かってそれぞれ直線状に延設された対になる各棹状部30を備え、対になる各棹状部30は、複数の忌避線架線具9を取り付け可能な長さをそれぞれ有しているので、支持部2の両側のそれぞれに複数の忌避線架線具9を取り付けることができる。そのため、本実施形態の設置具1を用いると、支持部2の片側だけに複数の忌避線架線具9を取り付けた場合に比べ、多くの忌避線架線具9を一度に架空線に取り付けることができる。
【0071】
本実施形態の設置具1を構成する支持部2は、アーム部3が延設される基礎となる基礎部20と、活線作業用の工事具で支持される被支持部21とを有する。そして、被支持部21は、アーム部3を架空線に対して平行に配置したとき、基礎部20の下方に位置させることが可能な位置に配置されている。
【0072】
活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具9を架空線に取り付ける場合、架空線の下方から活線作業用の工事具を用いて忌避線架線具9を架空線に近づけることが多い。そのため、本実施形態の設置具1を用いて忌避線架線具9を架空線に取り付ける場合も、活線作業用の工事具で本実施形態の設置具1の本体部を支持して、本実施形態の設置具1を架空線に近づけることが多くなる。
【0073】
本実施形態の設置具1は、被支持部21が基礎部20の下方に位置することができるように構成されている。そのため、活線作業用の工事具で、本実施形態の設置具1に設置された忌避線架線具9を架空線に取り付ける作業を行う場合、活線作業用の工事具で被支持部21の傾斜部23を支持すれば、その支持した先に忌避線架線具9が取り付けられることとなる。
【0074】
したがって、本実施形態の設置具1を用いると、架空線の下方から活線作業用の工事具の先を近づければ、忌避線架線具9を架空線に取り付けることができるので、忌避線架線具9を下方から架空線に近づける、従来と同じ作業方法で忌避線架線具9を架空線に取り付けることができる。
【0075】
本実施形態の設置具1を用いて各忌避線架線具9を架空線に取り付けるため、各忌避線架線具9の第2挟部72と第3挟部73との間に架空線が通されたとき、本実施形態の設置具1が、引掛部4によって架空線に引っ掛けられる。
【0076】
そのため、各忌避線架線具9を本実施形態の設置具1から取り外すとき、架空線に引っ掛けられた設置具1から各忌避線架線具9を取り外すことになるので、本実施形態の設置具1を支えておく必要がない。
したがって、本実施形態の設置具1を用いると、各忌避線架線具9を本実施形態の設置具1から外すときの作業員の負担を減らすことができる。
【0077】
本実施形態の設置具1は、ロープホルダ部5を備えているので、アーム部3に固定された各忌避線架線具9間に設置された忌避線をロープホルダ部5に巻き付けておくことができる。しかも、ロープホルダ部5は、アーム部3に平行に延設されているので、各忌避線架線具9をアーム部3から外すときに、各忌避線架線具9をアーム部3の延設方向に移動させれば、ロープホルダ部5に巻き付けられた忌避線もロープホルダ部5の延設方向に移動してロープホルダ部5から外れる。
【0078】
したがって、本実施形態の設置具1を用いると、各忌避線架線具9を本実施形態の設置具1に取り付けたときに、忌避線が絡まないようにロープホルダ部5に巻き付けておくことができる。
また、本実施形態の設置具1を用いると、忌避線をロープホルダ部5に巻き付けておいても、各忌避線架線具9をアーム部3から取り外す作業とは別に、忌避線をロープホルダ部から取り外す作業を行うことなく、忌避線をロープホルダ部5から外すことができる。
【0079】
[他の実施形態]
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲に記載された発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
(1)上記実施形態では、アーム部3を一対の棹状部30を備える構成としたが、忌避線架線具9の形状によっては、アーム部3は1の棹状部30で構成されていてもよい。
(2)上記実施形態では、被支持部21として、梁部22から斜め下方に傾斜した傾斜部23を備える形態のものを説明したが、これに限るものではない。例えば、梁部22が基礎部20の左方側の端部から右方下側に向かって傾斜する形状に形成されていてもよい。
【0080】
(3)本発明の各構成要素は概念的なものであり、上記実施形態に限定されない。例えば、1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1… 設置具 2… 支持部 3… アーム部 4… 引掛部 5…ロープホルダ部
6…一体部材 7… 本体部 9… 忌避線架線具 20…基礎部 21… 被支持部
22…梁部 23… 傾斜部 230… 滑止部 29…長辺 30… 棹状部
31…段差部 32… 段差部 33… 引掛凸部 40…土台部 41… 立面部
42…掛部 420… 上方凸部 421… 下方突部 50…膨張部
70…三方覆部 71… 第1挟部 72… 第2挟部 73…第3挟部
76…蓋部 78… 非把持部 79… 取付空間 80…支柱部
81…忌避線固定具 82… 長孔部 85…操作部 90… 突出部
91…取付用円盤 710… 突起 730…蓋固定部 760… 固定用孔
791…架空線挟空間 792… アーム挟空間。