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特許7026953鼓膜温度を測定するように構成された携帯型生理学的モニタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】鼓膜温度を測定するように構成された携帯型生理学的モニタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20220221BHJP
   G01J 5/00 20220101ALI20220221BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20220221BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
A61B5/01 350
G01J5/00 101G
H04R1/00 327A
H04R1/10 104A
H04R1/10 104B
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018561729
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 GB2017051462
(87)【国際公開番号】W WO2017203251
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】1609131.6
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517184082
【氏名又は名称】イノヴァ デザイン ソリューション エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】INOVA DESIGN SOLUTIONS LTD
【住所又は居所原語表記】Innovation Warehouse 1st Floor 1 East Poultry Avenue London EC1A 9PT United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】マーシュ, レオン
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-070514(JP,A)
【文献】特開2008-060943(JP,A)
【文献】特開2013-013540(JP,A)
【文献】特開2005-260824(JP,A)
【文献】特開2007-163634(JP,A)
【文献】特表2012-525799(JP,A)
【文献】国際公開第2016/036922(WO,A1)
【文献】特開2002-340681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
G01J 5/00
H04R 1/00 - 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼓膜温度を測定するためのウェアラブルデバイスであって、
使用時に耳の外部に位置付けられるハウジングと、
前記ハウジングから延伸し、使用時に前記耳の外耳道に沿って延伸するように形成された耳挿入部を備えており、前記耳挿入部は、
耳挿入部の近位部に設けられており、使用時に前記外耳道を実質的に閉鎖するように構成されている閉鎖部材と、
使用時に前記閉鎖部材から前記外耳道へと遠位方向に延伸する外耳道延伸部材と、
前記外耳道延伸部材の遠位端に設けられており、その遠位端面において赤外線熱電対列を支持する熱電対列モジュールと、
前記外耳道内で前記赤外線熱電対列を実質的に中心化するようにともに構成されている1つまたは複数の中心化部であって、前記外耳道延伸部材および1つまたは複数の中心化部は、使用時に鼓膜温度を測定するために前記外耳道内に前記赤外線熱電対列を配置するように構成されている、1つまたは複数の中心化部と、
前記外耳道延伸部材内に少なくとも部分的に画定され、前記閉鎖部材を通じて前記耳挿入部の遠位部に音声を伝導する導波路として構成されている音響伝導チャネルと
を備え、
前記音響伝導チャネルの開口部は、前記耳挿入部の前記遠位部内で前記赤外線熱電対列から近位方向に画定されており、使用時に前記外耳道内で開くように配置される、
ウェアラブルデバイス。
【請求項2】
前記閉鎖部材は、前記外耳道をその入口においてのみ半径方向に閉鎖するように構成されている、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項3】
前記熱電対列モジュールは、前記外耳道延伸部材と実質的に同軸である、請求項1または2に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項4】
前記外耳道延伸部材の半径方向範囲は、前記1つまたは複数の中心化部の半径方向範囲よりも小さい、請求項1から3のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項5】
前記閉鎖部材における前記外耳道延伸部材の半径方向範囲は、前記閉鎖部材の半径方向範囲よりも小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項6】
前記外耳道延伸部材は、使用時に、前記外耳道の内面から離間するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項7】
前記1つまたは複数の中心化部は、前記外耳道延伸部材から半径方向に延伸する複数のフィンを備え、各フィンのフィン先端は、使用時に、前記外耳道の内面に当接するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項8】
前記フィンは弾性材料から形成されている、請求項7に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項9】
前記音響伝導チャネルは、前記閉鎖部材および前記外耳道延伸部材内に少なくとも部分的に画定され、前記閉鎖部材および前記外耳道延伸部材を通じて前記耳挿入部の前記遠位部に音声を伝導する導波路として構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項10】
前記音響伝導チャネルは、少なくとも部分的に前記外耳道延伸部材の内側壁によって画定される、請求項1から9のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項11】
前記ウェアラブルデバイスは、前記外耳道延伸部材が、使用時に前記外耳道の第1の湾曲部を通過して少なくとも遠位方向に延伸するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項12】
前記ウェアラブルデバイスは、前記1つまたは複数の中心化部が使用時に前記外耳道の第2の湾曲部に位置付けられるように構成されている、請求項11に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項13】
前記閉鎖部材は、使用時に前記外耳道に対して封止する弾性部材として形成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項14】
前記赤外線熱電対列の検知面は、使用時に前記鼓膜において前記外耳道の軸方向に実質的に平行であるように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項15】
前記外耳道延伸部材は、前記閉鎖部材に対する前記熱電対列モジュールの脱を可能にする弾性部を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項16】
使用時に前記耳の艇領域と係合し、それによって、前記耳挿入部を前記外耳道内に保持するように構成されている翼先端部をさらに備える、請求項1から15のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項17】
前記耳挿入部の前記遠位部は、前記音響伝導チャネルの前記開口部を被覆するように構成されている通気性部材をさらに備える、請求項1から16のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項18】
前記通気性部材は、それを通じた空気の通過を可能にしながら、前記音響伝導チャネルの前記開口部を通じた前記耳挿入部への水分または粒子状汚染物の進入を実質的に防止するように構成されている、請求項17に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項19】
前記外耳道延伸部材の近位部から、前記赤外線熱電対列から前記耳挿入部を通じて信号を中継するように構成されている前記熱電対列モジュールまで延伸する電気接続部をさらに備える、請求項1から18のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項20】
前記電気接続部は、可撓性PCBまたはフレキシリジッドPCBである、請求項19に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項21】
前記電気接続部は前記外耳道延伸部材の壁に埋め込まれている、請求項19または20に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項22】
前記耳において前記ウェアラブルデバイスを保持するように構成された前記ハウジングへの耳フック部材に接続するための接続部を前記ハウジングがさらに備える、請求項1から21のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項23】
前記耳フック部材をさらに備える、請求項22に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項24】
使用時に頭部の側面の領域に対して支えるように構成されている頭部支え部をさらに備え、前記領域は、前記耳の外耳の前方にある、請求項1から23のいずれか一項に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項25】
前記頭部支え部は骨伝導マイクロフォンを備える、請求項24に記載のウェアラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的モニタに関し、特に、歩行適用および非歩行適用の間に使用するためのウェアラブル携帯型マルチパラメータモニタに関する。
【背景技術】
【0002】
人は、過酷な環境において運動もしくは活動しているとき、または、身体的もしくは精神的に弱っているために自身の身体の生理学的変化に反応することができない場合に、熱、心臓および呼吸関連の疾病を患う場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
医療、スポーツ医学研究および職業福祉において、様々なモニタリング装置が、バイタルサインパラメータをモニタリングするために使用されているが、バイタルサインの正確なモニタリングのために、これらのモニタは一般的に、非歩行使用に限定され、そのため、それら自体を、歩行使用中のバイタルサインの連続的なモニタリングが望ましい、幅広い可能性のある適用に役立つものにしていない。
【0004】
スポーツ
【0005】
スポーツにおいて、より詳細には職業スポーツおよび運動競技においては、国際競技会が、生理学的、生化学的、生体力学的および心理学的などの身体の様々な制御システムに対する最終的な課題である。職業運動選手およびエリート運動選手は、毎ミリ秒が重要なパフォーマンスを改善しようと常に努力している。スポーツ医学において、生理学者は、生理的状態を評価し、通知戦略に役立てるため、また、研究活動の一環として、中核温、心拍数、水分補給状態、VO2 max(最大酸素摂取量)および乳酸閾値のような身体パラメータを測定することができる。これらのパラメータは、研究室において測定することができるが、このレベルのモニタリングは、制御される状況とは異なり、環境条件、地勢および心理的駆動要因が常に変化している競技場の競争環境においては可能ではない。この制限は、採決もしくは体内に入るプローブのような使用される侵襲的技法、および/または、診断機械、ロガーもしくはコンピュータに接続されているワイヤを有する装置の非実際性、ならびに、何らかの装置のサイズおよび重量に起因する。
【0006】
消費者スポーツ市場において、心拍数モニタは1980年代以来普及しており、スポーツユーザの間で、彼らが自身のフィットネス・レベルを改善しようと努力するときに広く利用されている。近年、速度、距離、カロリー燃焼率、歩数および歩調のような活動のみをモニタリングする、フィットビット(Fitbit)(登録商標)およびジョウボーン(Jawbone)(登録商標)リストバンドのようなフィットネス・モニタ装身具市場が急速に拡大している。スマートウォッチによって活動および心拍数のモニタリングが集約されてもいる。従来、心拍数は、心臓の電気パルスを検出する胸郭バンドを使用して測定されているが、接点が皮膚に十分に接しないという信頼性の問題があり得る。スマートウォッチは心臓血管系の末梢にある、手首領域からパルスを検出するためにタイトなストラップが必要とされるパルスオキシメトリ技法を使用する。これらのデバイスは一定程度成功裏に心拍数を測定するが、今日、大量市場商品を使用して他のバイタルサインパラメータをモニタリングすることはできない。
【0007】
医療
【0008】
救命救急診療において、バイタルサインパラメータ検知を可能にするために複数のデバイスが使用されており、それらのうちのいくつかは非常に侵襲的である。一般的に測定されるバイタルサインパラメータは、中核温、心拍数、血圧、酸素飽和度、および呼吸数である。遠隔医療サービス(長期的な慢性症状を患っている人が自身の家庭で独立して生活するのを助けることを目標とする)の出現によって、健康管理における新たな要件によって、早期介入を可能にし、悪化および入院/再入院を防止するための遠隔患者モニタリングの必要性が強調されている。たとえば、英国だけでも毎年、約159,000人が心臓血管疾患で亡くなっており(出典:British Heart Foundation,2011)、30,000人が低体温症で亡くなっており(出典:BBC News,2013)、25,000人が慢性閉塞性肺疾患(COPD)で亡くなっている(出典:NHS Choices,2013)。
【0009】
生理学的機序および認知機能の衰え、運動の不足、併存疾患の罹患率、および、生理学的副作用のある薬物の広範な使用に起因する、高齢者の間で一般的な問題による危険性が度合いを増している。
【0010】
特に、精神疾患は高齢者にとって一般的であるため、精神疾患を患う人での危険性がさらに度合いを増している。精神疾患患者は、介護において検出および適切な管理ができないことに起因してさらなる危険に晒されており、たとえば、認知症を患う高齢者における経口補水を改善するための特定の介入については、研究および理解が十分でないままである。脆弱な高齢者を必要なときに容易かつ簡便に評価し、即座に適切な介護を与えることができれば、健康転帰を改善し、医療制度をめぐる費用を低減する大きな機会が得られる。
【0011】
新生児、幼児および4歳までの子どもは、高い温度の影響に特に敏感であり、自身の環境を調整し、十分な液体を与えるために他者に依拠する。それらの子どもは、成人と比較して、温度調節系があまり効率的でなく、より多くの熱を生じ(表面積対体重比がより大きいため)、運動中および暑いときに十分な流体を飲む可能性がより低く、体温が3~5倍速く上昇し、あまり汗をかかず、新陳代謝率がより高く、自身をケアし、自身の環境を制御することができないため、熱中症の危険がある。子どもが熱中症を発症する他の危険要因は、運動の不足、太りすぎすなわち肥満、発育遅延または認知障害であり、基礎疾患(糖尿病)を患う者は、より危険性が高い。
【0012】
幼児はまた、流体および溶質の代謝回転が成人の3倍多くなり得るため、成人よりも脱水状態になる可能性が高い。脱水症は、子どもの間で疾病率および死亡率を上げている主要な世界的要因のうちの1つである。世界中で、毎年5歳よりも若い推定8,000人の子どもが、胃腸炎および脱水症のために亡くなっている。胃腸炎だけでも、全小児科入院の約10%になる。
【0013】
軍人、消防士および第一応答者
【0014】
軍人および消防隊で働く人ならびに他の第一応答者は、化学物質、ガス、炎、小型武器およびさらには簡易爆発物(IED)のような危険な脅威から自身を保護するために、個人用保護具(PPE)を装着しなければならない。PPEは、とりわけ、様々な防護服、消防士出動服、防弾チョッキおよび対爆スーツを含み得る。その設計に応じて、PPEは、装着者を包んで脅威から保護し、熱抵抗の増大および発汗メカニズムの無効化に起因して微気候を生成する。これは、作業量の増大、高い周囲温度および湿度レベル、および、太陽への直接暴露によって度合いを増す。正味の効果は、1つまたは複数の環境的脅威からの保護が、熱の脅威および心臓血管への意図しないストレスをもたらしているということである。
【0015】
このストレスが身体運動、高温環境またはPPEの装着によって引き起こされる場合、これは、頻繁に休憩をとること、水分を常に補給すること、ならびに、体温および心拍数を慎重にモニタリングすることによって防止または軽減することができる。しかしながら、長時間の間、高温環境に暴露するかまたはPPEを装着する必要がある状況においては、健康および安全のために、個人用冷却システムが必要とされる。たとえば、戦闘車両で移動している兵士は、華氏150度を超える微気候温度に直面し、車両によって給電される冷却システムを必要とする可能性がある。
【0016】
毎年、訓練および作戦派遣中に軍務員が亡くなっている。2013年7月、ブレコン・ビーコンズにおける訓練中に3人の英国SAS隊員が亡くなったことは広く報道されたが、これはこのことを想起させるものであった。隊員らは熱中症で亡くなった。事実、毎年約1,900人の米国兵士(出典:Heat illness:Prevention is best defence,www.army.mil,2010)および300人の英国兵士(出典:Ministry of Defence,2013)が熱中症の医療処置を受けている。心臓血管疾患もあり、アフガニスタンおよびイラクにおいて亡くなった12人の米国兵士のうちの1人が心臓疾患を患っており、そのうち4分の1は重症例であった(出典:Daily News,2012)
【0017】
消防において、消防士がPPEを装着しながら、極度の環境熱に暴露されているという事実によって危険性が度合いを増しており、必然的な脱水症および温度上昇が、身体の温度調節系および心臓血管系に重大、有害かつ致命的な影響を与える可能性がある。
【0018】
したがって、様々なバイタルサインのうちの1つまたは複数を測定することは、様々な状況において有用性があることは明らかである。様々な状況においてこれらのバイタルサインをモニタリングするための現在利用可能な技法のうちのいくつかをここで説明する。
【0019】
中核温のモニタリング
【0020】
検温の目的は、重要器官の温度である中核温を測定することであり、したがって、それらの器官の温度を最も近く反映する身体部分を識別することが重要である。中核温は、直腸、腸、食道、耳、血流、組織および皮膚(脇の下を含む)において測定することができる。
【0021】
従来、重症ケアの分野において、温度は、水銀体温計を使用して経口で測定されている。この方法は、医療において有効であると考えられているが、喫食、喫飲および呼吸を含む多くの外部および環境変数によって影響を受ける。加えて、ガラス破砕および水銀中毒の可能性のような、健康および安全上の危険性に関して関心が高まっている。水銀体温計は、交差感染の発現および下痢の発生に関与している。ガラス破砕および水銀中毒の危険性に起因して、これを運動中に使用するのは適切でない
【0022】
直腸体温計は、侵襲的で、不快であり、運動および時として労作を制限し、真の中核温からの遅延を経験することが多く、交差汚染の危険性があり、摂取される流体および食品の温度によって影響を受け、現在は研究室における使用に制限されている。食道熱電対は、サーミスタを挿入するのが困難であり、鼻孔に対する刺激があり、通常モニタリング中に被検者に不快感があるため、一般的でない。肺動脈カテーテルは極めて侵襲的であり、運動中に使用するには適していない。
【0023】
腸ラジオピルは、摂取されると腹部の温度を測定し、消化管を通っていくときに身体外部に装着されているデータレコーダに中核温を無線送信する。ピルは使い捨てであるため、これらは非常に費用がかかる。直腸体温計と同様に、それらは摂取される流体および食品の温度によって影響を受け、真の中核温からの遅延を経験する(脳の視床下部の最も近くで見出され得る)。
【0024】
皮膚熱電対は中核からかなり離れており、そのため、中核温測定には適していない。電子体温計は、脇の下からまたは経口で読み値をとり、アルゴリズムを使用して温度を計算するが、これらは常に臨床的に正確であると考えられるとは限らない。
【0025】
鼓膜体温計は、鼓膜の赤外線温度を測定する。鼓膜は脳内の体温調節中枢、すなわち視床下部と血液供給を共有するため、耳式体温計は、中核温を正確に反映する。それゆえ、中核温の変化は、他の部位よりも耳においてより速くかつより正確に反映される。鼓膜体温計は、非常に安全に使用することができ、医学的に正確であると考えられるため、特に家庭医療環境、および、幼児に対する使用において、中核温を測定するための方法としてますます取り入れられるようになってきた。現在、市販されている耳式体温計は、単一の測定値を記録するためにのみ設計されており、装着可能ではない。一般的に、耳式体温計は、医師によって外耳道の開口部で定位置に保持され、外耳道の入口へと一時的に挿入される突起(ホーン)を使用して位置合わせされる熱電対列を含む。結果として、再現性は信頼性を欠くものになり得、時間がかかり、活動に混乱を生じ、交差汚染をもたらし得る。これらのデバイスのすべての一般的な制約は、それらが通常、追加の装置に依存することが多く、効率的にまたは完全に使用するために深い知識を必要とし、複雑すぎて活動を実行しながら操作することができず、常に連続的なモニタリングをもたらさず、ほとんど非歩行のものであるため、操作するために2人以上の人員を必要とすることである。
【0026】
国際公開第2005084531号パンフレットは、鼓膜を介して被検者の中核温を測定するための温度センサを有するイヤピースを備える水分補給モニタを開示している。イヤピースは、使用時には甲介内に設置され、温度センサを外耳道内で外耳道の開放端に位置付ける。イヤピースは使用時には主に、クリップによって耳介の上で定位置に保持される。
【0027】
脈拍数、脈圧および酸素飽和度のモニタリング
【0028】
上半身の脈拍は、こめかみ、頸部、耳または胸部において測定することができる。脈拍を測定する2つの一般的な方法が、心電図(ECG)およびパルスオキシメトリによるものである。
【0029】
パルスオキシメトリは、光吸収または光電式容積脈波記録(PPG)を通じて測定することができる。光吸収を通じたパルスオキシメトリは、赤色光および近赤外光が耳または指のような相対的に薄い組織層を通じて透過されることを含み、透過または反射される赤色光対赤外光の比が、血液中のヘモグロビンおよび酸素ヘモグロビンの相対量の測度である。これらの量の吸収効果は異なるため、脈拍が検出される。酸素飽和度を判定するためにパルスオキシメトリセンサを使用することもできる。
【0030】
市販のほとんどのパルスオキシメータは、拍動ごとの血液量の変化に起因して振動するPPGを取り上げ、それによって、脈拍を検出する。PPG技術の基本形態は、パルスオキシメトリよりも単純であり、少ない構成要素および駆動回路のあまり複雑でない制御しか必要としない。PPGデータを収集するために耳において透過PPGを使用することができ、または、まつげの上の前額部またはこめかみにおいて反射PPGセンサを使用することができる。活動中または非活動中にPPGセンサによって脈拍を測定するための可能な部位は、手首、指、手、耳、肩、またはこめかみである。
【0031】
脈拍は、ECGのような他の方法から判定することもできる。ECGは、身体にわたって離間された電極を使用して、心臓の電気的活動を検出する。スポーツ用途向けに開発されている心拍数モニタ送信機は、2つの電極を使用して、毎心拍の間に皮膚上の電圧差を検出し、この信号を腕時計受信機に連続的に無線送信する。これらのデバイスは心拍数または脈拍数をモニタリングするために一般的に使用されているが、現在、温度のような熱中症の可能性の他の指標をモニタリングするために利用可能なデバイスはなく、熱中症の発症を判定する方法もない。
【0032】
呼吸数のモニタリング
【0033】
呼吸数は、目に見えないバイタルサインと考えられる。通常の呼吸数からの逸脱は、有害な結果の予測因子としてよく知られており、処置の応答を示す。これは、ぜんそく、胸部への外傷または衝撃、腎不全および敗血症を含む代謝性アシドーシス、ならびに、頭部損傷、神経疾患および神経筋疾患を含む中枢性呼吸駆動障害のような、呼吸状態を含む様々な状態をモニタリングまたは検出するために使用することができる。
【0034】
呼吸数は、他のバイタルサインと同程度まで自動化されていないため、病院においてうまく記録されない。呼吸数を判定する現在の方法は、マスクに接続されているパイプ内で自由に動く要素が各呼吸を表し、毎分の呼吸の測度に達するまで看護職員によって60秒の期間にわたってカウントされるシュノーケルマスク、軽量デバイスに重量を加えるマスク上のセンサ、信号が一般的に背景雑音を被る胴体上のセンサ、および、費用がかかるベッド上のセンサである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
実施形態において、鼓膜温度を測定するためのウェアラブルデバイスが提供される。デバイスは、使用時に耳の外耳道に沿って延伸するように形成された耳挿入部を備える。耳挿入部は、耳挿入部の近位部に設けられている閉鎖部材を備え、閉鎖部材は、使用時に外耳道を実質的に閉鎖するように構成されている。耳挿入部は、使用時に閉鎖部材から外耳道へと内側に延伸する外耳道延伸部材と、外耳道延伸部材の内側端に設けられており、その遠位端面において赤外線熱電対列を支持する熱電対列モジュールと、1つまたは複数の中心化(centralising)部とをさらに備える。1つまたは複数の中心化部は一緒に、外耳道内で赤外線熱電対列を実質的に中心化する(centralise)ように構成されている。外耳道延伸部材および1つまたは複数の中心化部は、使用時に鼓膜温度を測定するための赤外線熱電対列を配置するように構成されている。耳挿入部は、外耳道延伸部材内に少なくとも部分的に画定される音響伝導チャネルをさらに備える。音響伝導チャネルは、閉鎖部材を通じて耳挿入部の遠位部に音声を伝導する導波路として構成されている。音響伝導チャネルの出力は、耳挿入部の遠位部内で赤外線熱電対列から後方に画定されており、使用時に外耳道内で鼓膜に向かって開くように配置される。
【0036】
実施形態において、外耳道延伸部材は、閉鎖部材とは別個の、耳挿入部の部分もしくは部であってもよく、ならびに/または、外耳道延伸部材および閉鎖部材は、別個に形成されて、1つにされてもよいし、非-一体的に形成されてもよい。実施形態において、外耳道延伸部材は、閉鎖部材の前方へ延伸し、一般的に、(外耳道延伸部材の長手方向軸に対して直角の方向に)閉鎖部材よりも小さい半径方向外側範囲を有することができる。外耳道延伸部材は、外耳道の壁から離間されており、その長さに沿って実質的に外耳道に接触しない場合があるように、一般的に、使用時に装着者の外耳道の直径よりも半径方向に小さいサイズにされてよい。特に、実施形態において、外耳道延伸部材が閉鎖部材から前方に延伸する、閉鎖部材の近位の外耳道延伸部材の位置で、外耳道延伸部材は、閉鎖部材よりも実質的に小さい半径方向範囲を有することができる。実施形態において、その長さに沿って、外耳道延伸部材は、一般的に、その長さに沿って、閉鎖部材の一般的な半径方向範囲よりも実質的に小さい半径方向範囲を有することができる。
【0037】
したがって、鼓膜温度を正確に測定しながら、耳の中へ音声を中継することが可能である衛生的なウェアラブルデバイスが提供される。ウェアラブルデバイスは、容易に洗浄することができ、閉鎖部材および1つまたは複数の中心化部が空間的に分けられているために、着け心地が良い。外耳道の入口において閉鎖部材を設けることによって、鼓膜温度の正確な測定を可能にするために外耳道を封止することが可能であるが、ウェアラブルデバイスの着け心地が良いことも保証する。1つまたは複数の中心化部は、鼓膜からの赤外線放射を感知するために外耳道内に赤外線熱電対列を配置する。別個の空間的に分けられた閉鎖部材および1つまたは複数の中心化部の使用によって、ウェアラブルデバイスの単一の基本設計が様々な異なる耳の形状およびサイズに合うことが可能になる。特に、1つまたは複数の中心化部は、熱電対列が外耳道内で中央に置かれることを保証し、したがって、熱電対列が外耳道の温度を検出する可能性よりも鼓膜温度を検出する可能性の方が高い。熱電対列モジュールを動かさず、外耳道内であちこちに動かさないこと。
【0038】
鼓膜温度という用語は、鼓膜それ自体からの信号を含む、耳の鼓膜領域から受信される熱信号に基づいて判定される温度を意味することが理解されよう。
【0039】
特許請求されるウェアラブルデバイスの特徴の構成は、使用時の赤外線熱電対列の位置が、高い割合の赤外線信号を鼓膜から受信することなどを可能にし、使用時に鼓膜温度の正確な測定を判定することが可能であるウェアラブルデバイスをもたらす。そのような特徴は、特に、外耳道延伸部材、1つまたは複数の中心化部、および熱電対列モジュールの構成である。
【0040】
耳挿入部の遠位部は、耳挿入部の近位部とは空間的に異なることが理解されよう。遠位部は、近位部から遠位にある。近位部は、遠位部に対して近位である。近位部という用語は、近位部が、ウェアラブルデバイスの任意の特定の特徴もしくは部、または使用者の近位にあることを必要としない。
【0041】
閉鎖部材は、その入口において、またはその近くで、外耳道のみを半径方向に閉鎖するように構成することができる。閉鎖部材は、使用時に外耳道に対して封止する弾性部材として形成することができる。閉鎖部材は、18ミリメートル未満の半径方向範囲を有してもよい。閉鎖部材は、10ミリメートル未満の半径方向範囲を有することができる。閉鎖部材は、3ミリメートルよりも大きい半径方向範囲を有してもよい。閉鎖部材は、5ミリメートルよりも大きい半径方向範囲を有してもよい。閉鎖部材は、音響伝導チャネルの一部を画定する中央通路をその中に画定した可能性がある。
【0042】
熱電対列モジュールは、外耳道延伸部材と実質的に同軸とすることができる。熱電対列モジュールの軸方向は、赤外線熱電対列の検知面に実質的に垂直とすることができる。外耳道延伸部材の軸方向は、外耳道延伸部材内に画定される音響伝導チャネルの少なくとも一部の軸方向と実質的に同軸とすることができる。外耳道延伸部材が、真っすぐでない部材としてインサイチュで形成される場合、熱電対列モジュールは、熱電対列モジュールの軸方向が、その内側端において外耳道延伸部材の軸方向と実質的に位置合わせされる場合、外耳道延伸部材と同軸であると考えることができることが理解されよう。
【0043】
外耳道延伸部材の半径方向範囲は、1つまたは複数の中心化部の半径方向範囲よりも小さくすることができる。したがって、1つまたは複数の中心化部は、外耳道延伸部材の半径方向範囲を越えて延伸することができる。外耳道延伸部材の半径方向範囲は、外耳道延伸部材の内側端における半径方向範囲であってもよい。
【0044】
閉鎖部材における外耳道延伸部材の半径方向範囲は、閉鎖部材の半径方向範囲よりも小さくすることができる。したがって、閉鎖部材は、閉鎖部材における外耳道延伸部材の半径方向範囲を越えて延伸することができる。
【0045】
外耳道延伸部材は、使用時に外耳道の内面から離間するように配置することができる。ウェアラブルデバイスは、閉鎖部材および1つまたは複数の中心化部のみが使用時に外耳道の内面と接触するように構成することができる。したがって、ウェアラブルデバイスは、衛生的であり、様々な使用者にとって着け心地が良いものになることができる。
【0046】
1つまたは複数の中心化部は、外耳道延伸部材から半径方向に延伸する複数のフィンを備えることができる。各フィンのフィン先端は、使用時に外耳道の内面に当接するように配置することができる。1つまたは複数の中心化部は、一体的に形成することができる。フィンは、弾性材料から形成することができる。弾性材料は、ゴム材料、たとえばシリコンであってよい。
【0047】
音響伝導チャネルは、閉鎖部材および外耳道延伸部材内に少なくとも部分的に画定することができる。音響伝導チャネルは、閉鎖部材および外耳道延伸部材を通じて耳挿入部の遠位部に音声を伝導する導波路として構成することができる。
【0048】
音響伝導チャネルは、外耳道延伸部材の内側壁によって少なくとも部分的に画定することができる。外耳道延伸部材の内側壁は、音響伝導チャネルの一部を画定するチューブを形成することができる。
【0049】
外耳道は、外耳道が外耳から鼓膜に向かって内部へ進むにつれて、2回、すなわち、1回目は後部方向に向かって、2回目は前部方向に向かって、湾曲することが理解されよう。したがって、外耳道の第1の湾曲部および外耳道の第2の湾曲部は、外耳道の解剖学的特徴の用語を認識するであろう。第2の湾曲部は、第1の湾曲部と鼓膜の間にある。第1の湾曲部は、外耳の耳介領域からの外耳道の入口と第2の湾曲部の間にある。
【0050】
ウェアラブルデバイスは、外耳道延伸部材が使用時に外耳道の第1の湾曲部の少なくとも内側に延伸するように構成することができる。ウェアラブルデバイスは、1つまたは複数の中心化部が使用時に外耳道の第1の湾曲部の少なくとも内側に位置付けられるように構成することができる。実施形態において、ウェアラブルデバイスは、1つまたは複数の中心化部が使用時に外耳道の第2の湾曲部にまたはこれを越えて位置付けられるように構成することができる。
【0051】
したがって、そこから鼓膜の全体または相当部分に対する直接の見通し線を得ることが可能である、外耳道の第2の湾曲部にまたはその付近に位置付けられる熱電対列から中核温を正確に測定することが可能なウェアラブルデバイスが提供される。
【0052】
赤外線熱電対列の検知面は、使用時に外耳道の鼓膜領域内で外耳道の軸方向に実質的に垂直であるように構成することができる。実施形態において、赤外線熱電対列の検知面は、使用時に鼓膜の面に実質的に平行であるように構成することができる。
【0053】
外耳道延伸部材は、閉鎖部材に対する熱電対列モジュールの脱を可能にする弾性部を備えることができる。したがって、ウェアラブルデバイスは、様々な異なる耳形状に心地よくフィットすることができ、挿入しやすく、耳から取り外しやすい。
【0054】
ウェアラブルデバイスは、使用時に耳の艇領域と係合し、それによって、耳挿入部を外耳道内に保持するように構成されている翼先端部をさらに備えることができる。ウェアラブルデバイスは、翼先端部が、外耳道内で耳挿入部を保持する唯一の保持機能を実質的に提供するように構成することができる。翼先端部は、弾性材料から形成することができる。
【0055】
耳挿入部の遠位部は、音響伝導チャネルの出力を被覆するように構成されている通気性部材をさらに備えることができる。通気性部材は、メッシュ部材であってもよい。メッシュ部材は、金属メッシュであってもよい。通気性部材は、GoreTex(登録商標)部材によって与えることができる。通気性部材は、それを通る空気の通過を可能にしながら、音響伝導チャネルの出力を通じた耳挿入部への水分または粒子状汚染物の進入を実質的に防止するように構成することができる。
【0056】
ウェアラブルデバイスは、外耳道延伸部材の外側端から、赤外線熱電対列から耳挿入部を通じて信号を中継するように構成されている熱電対列モジュールまで延伸する電気接続部をさらに備えることができる。電気接続部は、有線電気接続部を備えることができる。有線電気接続部は、プリント回路基板(PCB)によって与えられることができる。電気接続部は、可撓性PCBまたはフレキシリジッドPCBであってもよい。
【0057】
電気接続部は、外耳道延伸部材内に設けることができる。電気接続部は、外耳道延伸部材の壁に埋め込むことができる。
【0058】
ウェアラブルデバイスは、耳においてウェアラブルデバイスを保持するように構成された耳フック部材に接続するための接続部をさらに備えることができる。接続部は、オスコネクタによって係合可能であるように構成されているメスコネクタであってもよい。ウェアラブルデバイスは、メスコネクタが耳フック部材に接続されていないときにメスコネクタを選択的に被覆するように構成されているコネクタカバーをさらに備えることができる。
【0059】
ウェアラブルデバイスは、耳フック部材をさらに備えることができる。耳フック部材は、耳の耳介領域に掛けるように形成することができる。
【0060】
ウェアラブルデバイスは、使用時に頭部の側面の領域に対して支える(brace)ように構成されている頭部支え面を有する頭部支え部をさらに備えることができ、この領域は、耳の外耳の前方にある。
【0061】
頭部支え部は、骨伝導マイクロフォンを備えることができる。
【0062】
ウェアラブルデバイスは、任意の数の入力ボタンをさらに備えることができる。入力ボタンは、頭部支え部上に設けることができる。入力ボタンは、頭部支え面に実質的に対向して設けることができる。
【0063】
耳挿入部は、使用時に赤外線熱電対列からの信号を出力するために、耳挿入部を通じて延伸する有線電気接続部をさらに備えることができる。
【0064】
音響伝導チャネルは、有線電気接続部を少なくとも部分的に包囲してもよい。音響伝導チャネルは、有線電気接続部を完全に包囲してもよい。
【0065】
1つまたは複数の中心化部は、熱電対列モジュールを鼓膜に向かって実質的に誘導するように構成することができる。
【0066】
音響通路は、外耳道延伸部材内で実質的に同心円状に画定することができる。
【0067】
有線電気接続部は、アンビリカルケーブルであってもよい。
【0068】
音響伝導チャネルは、部分的に熱電対列モジュール内に画定することができる。したがって、音響伝導チャネルの出力を、熱電対列モジュールのハウジング内で与えることができる。
【0069】
音響伝導チャネルは、音響ドライバまたは周囲環境から音声を中継するための受動導波路として構成することができる。
【0070】
音響伝導チャネルは、音響ドライバを備えることができ、音響ドライバは、音声を出力するように音響ドライバを駆動するように構成されており、音響伝導チャネルに結合されている音響入力に電気的に接続されている。
【0071】
ウェアラブルデバイスは、耳の外部から音声を受信するように構成されているマイクロフォンをさらに備えることができる。音響入力は、マイクロフォンから導出される信号によって与えることができる。
【0072】
したがって、様々な状況においてユーザの中核温を測定することが可能なウェアラブルデバイスが提供される。ウェアラブルデバイスは、ウェアラブルデバイスが不注意で耳から外れることを防止するために、耳の外耳道内に保持されるように構成されている。耳挿入部の最内端に赤外線熱電対列を設けることによって、中核温の指標を与えるために使用されることになる鼓膜の可能な限り近くに赤外線熱電対列が設けられることが保証される。この構成は、熱電対センサが任意の耳挿入部の最内端から離れて位置付けられているモデルと比較して、より多くの赤外線放射が赤外線熱電対列に入射することを保証する。
【0073】
音響伝導チャネルは、音声がデバイスの外部から耳挿入部を通じて耳の中へと通過することを可能にするように構成されている、デバイスの外部と耳挿入部の最内端との間を通過することができる。したがって、デバイスの外部からの音声は依然として、ウェアラブルデバイスが挿入されている同じ耳によって聞くことができる。耳挿入部の周りにシールが設けられている場合であっても、音声は依然として伝播することができる。
【0074】
音響伝導チャネルは、受動導波路であってもよい。音響伝導チャネルは、空気および水分が通過することを可能にすることができる。これによって、周囲の熱および水分がデバイスから移動することが可能となる。これは、ユーザが運動のような非常に活発な活動を行っている場合に特に有益である。
【0075】
音響伝導チャネルは、音響入力に電気的に接続され、音声を出力するように音響ドライバを駆動するように構成される音響ドライバを備えることができる。
【0076】
音響入力は、耳の外部から音声を受信するように構成されているマイクロフォンによって与えることができる。
【0077】
ウェアラブルデバイスは、外耳道の外部に設けられるように構成されている外側部分をさらに備えることができ、外側部分の少なくとも一部分は、耳の甲介領域に隣接するように配置される。したがって、ウェアラブルデバイスは、単に耳挿入部に留まらない構成を含むことができる。ウェアラブルデバイスのいくらかの部分は、外耳道内の外部に突出することができる。外側部分の一部を甲介に隣接して位置付けることによって、耳の甲介領域から検出可能である、身体のパラメータを検出するためのさらなるセンサを、ウェアラブルデバイス上に設けることができる。
【0078】
ウェアラブルデバイスは、脈拍数、脈容量、および酸素飽和度のうちの少なくとも1つを測定するように構成されているパルスオキシメトリセンサをさらに備えることができる。
【0079】
パルスオキシメトリセンサは、デバイスの外側部分内に設けることができる。したがって、パルスオキシメトリセンサは、外耳道の外部の耳の一部分において、血管の特性を測定するように構成することができる。
【0080】
ウェアラブルデバイスは、第1の電極および第2の電極を備えるECGセンサをさらに備えることができる。したがって、少なくとも1リードECGモニタを提供することができる。
【0081】
第1の電極は、外側部分または耳挿入部のいずれかに設けることができ、耳と接するように配置することができる。第2の電極は、さらなるウェアラブルデバイスの外側部分または耳挿入部のいずれかに設けることができ、あるいは耳の後ろ、下または正面に設けられるように構成することができる。したがって、ECGセンサの電極は、一方または両方の耳に対して様々な位置に位置付けることができる。
【0082】
ウェアラブルデバイスは、呼吸センサをさらに備えることができる。呼吸センサは、耳挿入部の最内端に設けることができる。呼吸センサは、顎骨を介して呼吸振動を測定することができるように、耳の後ろまたは正面に設けられるように構成することができる。呼吸センサは、甲介に対向して位置付けることができる。
【0083】
ウェアラブルデバイスは、デバイスの動きの指標を測定するように構成されている加速度センサに物理的に結合することができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイスは、加速度センサとパルスオキシメトリセンサの両方を備えることができる。したがって、ウェアラブルデバイスは、血圧および呼吸数を測定するように構成することができる。
【0085】
ウェアラブルデバイスは、センサ信号をさらなるデバイスに送信するように構成されている送受信機をさらに備えることができ、センサ信号は、赤外線熱電対列、パルスオキシメトリセンサ、ECGセンサ、呼吸センサおよび加速度センサのうちの少なくとも1つの測定値に基づく。したがって、デバイスは、さらなるデバイスによって分析可能なデータを出力するように構成される。
【0086】
ウェアラブルデバイスは、イヤピースの形態であってもよい。ウェアラブルデバイスは、個人用生理学的モニタリングデバイスまたは生理学的モニタの形態であってもよい。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、生理学的モニタは、被検者の脈拍数、脈容量、酸素飽和度および呼吸数のうちのいずれか1つまたは組み合わせを連続的に測定するためのパルスセンサをも備えるように構成されており、プロセッサは、パルスセンサからの測定値を受け入れ、測定されている脈拍数、脈圧、脈容量、酸素飽和度および呼吸数の変化を計算するように構成されている。
【0088】
本発明の好ましい実施形態において、生理学的モニタは、被検者の心電図(ECG)を連続的に測定するための心電(ECG)センサをさらに備えるように構成することができ、プロセッサは、ECGセンサから測定値を受け入れ、測定されているECGの変化を計算するように構成されている。
【0089】
本発明の好ましい実施形態において、生理学的モニタは、被検者の呼吸数を連続的に測定するための専用呼吸センサをさらに備えるように構成することができ、プロセッサは、呼吸センサから測定値を受け入れ、測定されている呼吸数、ならびに、または、その代わりに、パルスセンサによって決定することもできる呼吸数の変化を計算するように構成することができる。
【0090】
本発明の好ましい実施形態において、生理学的モニタは、被検者の動きおよび向きを連続的に測定するための運動センサをさらに備えるように構成することができ、プロセッサは、運動センサから測定値を受け入れ、測定されている動きおよび向きの変化を計算するように構成されている。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、生理学的モニタは、心弾動図(BCG)を測定するように構成することができ、プロセッサは、運動センサから測定値を受け入れ、心拍数の変化を示すBCGの変化を計算するように構成されている。
【0092】
本発明の好ましい実施形態において、生理学的モニタは、脈遷移時間(PTT)を測定するように構成することができ、プロセッサは、パルスセンサ、運動センサ(BCG)およびECGセンサのうちの2つ以上の組み合わせから測定値を受け入れ、PTTの変化を計算するように構成されている。脈遷移時間は、脈波速度の測度であり、脈波速度は、相対血圧の推定値である。拡張期および収縮期のPTT測定値を較正し、絶対血圧の推定値を与えるために、PTT測定値に加えて、血圧カフを使用することができる。
【0093】
本発明の好ましい実施形態において、生理学的モニタは、水分補給状態を測定するように構成することができ、プロセッサは、温度センサから測定値を受け入れ、測定されている温度の変化を計算して、(英国特許第2411719号に従って)水分補給状態の変化を判定するように構成されている。
【0094】
本発明の好ましい実施形態において、生理学的モニタは、被検者の鎮静状態および/または麻酔レベルを測定するように構成することができ、プロセッサは、温度センサ、パルスセンサ、呼吸センサおよび運動センサのうちのいずれか1つまたは組み合わせから測定値を受け入れ、鎮静状態および/または麻酔レベルの変化を計算するように構成されている。
【0095】
本発明の好ましい実施形態において、携帯型生理学的モニタは、非侵襲的に中核温、脈拍数、脈圧(PTT)、脈容量、酸素飽和度、ECG、呼吸数、水分補給状態、鎮静状態レベル、麻酔レベル、ならびに動き(BCGを含む)および向きのうちのいずれか1つまたは組み合わせを連続的に測定するように構成されている。これらの生理学的パラメータのすべてはリアルタイムでモニタリングされ、測定値は、ディスプレイおよび/または音響フィードバックを介して被検者、臨床医または介助人員に出力される。このように、被検者、臨床医または他の人員は、自身の/被検者の生理学的パラメータの現在のおよび変化している状態を見る、および/または、聞くことができる。医療状況においてこれらのパラメータの相対変化をモニタリングまたは検出することを通じて、被検者/臨床医/介助人員は、健康状態、悪い健康状態の始まり、および、処置に対する反応を判定することができる。歩行防護およびスポーツ適用において、相対変化は、フィットネス状態、運動能力変化、疲労、疾患の始まりを判定することができ、疾患からの回復、および、新たな環境に置かれたときの順応状態をモニタリングするのを助けることができる。
【0096】
本発明は、医療、職業福祉およびスポーツの分野において特に有用である。すべての前述した生理学的パラメータおよびバイタルサインパラメータを1つの簡便、軽量、無線かつ非侵襲的なマルチパラメータデバイスに組み込むことには、これらのパラメータのほぼすべてが現在別個のデバイスによって測定されており、それらのデバイスのいくつかは侵襲的であり、それらのデバイスのほとんどは電気ケーブルによってつながれているという、従来技術にまさる利点がある。
【0097】
入院患者医療に対する利点としては、本発明がすべてのバイタルサインのモニタリングを1つの小型非侵襲性無線デバイス内で可能にするように設計されているために、患者の快適さおよび動きやすさが向上すること、従来技術、特に、希なケースでは致命的な穿孔を引き起こす場合がある食道プローブとは対照的に、非侵襲的技法によって与えられる安全性が向上すること、患者のケア、転帰がより良好であり、連続的な自動モニタリングに起因してより早期に介入できる結果として、通院回数および病院内で過ごす時間が低減すること、従来技術によって個々の周期的な測定を実行するのとは対照的に、本発明を患者に対する連続的な自動モニタリングに1度適合させるだけでよい結果として、臨床医および看護職員の時間、したがって費用および感染の交差汚染が大幅に低減すること、ならびに、1人の患者のすべてのバイタルサインを測定するために、従来技術の複数の単一パラメータ装置を取得または交換する必要がないことによって、費用がさらに低減することが含まれる。遠隔医療状況において、回復期にあるまたは慢性疾患の患者も、必要なときに適時の介入を保証するために、家庭でまたは介護施設内での遠隔モニタリングを通じてケアの改善を受けることになる。これによって、急病罹患率および再入院ならびに国民保険制度に対するそれらに関連する費用およびリソース負担が低減し、より多くの人が家庭で独立した生活を送ることが可能になる。
【0098】
本発明の利点のさらなる例は、敗血症または脳卒中のような、複数のバイタルサインパラメータが影響する症状を伴う状態のより適時の精度が向上した診断を可能にすることである。敗血症には、高い体温、速い心拍および速い呼吸を含む、急速に発現する可能性がある症状がある。脳卒中は、脳への血液供給の障害を伴う。心拍数、ECG、血圧および酸素飽和度の変化を同時に検出することによって、脳卒中の始まりを早期に判定し、長期にわたる結果を防止する機会を増大させることになる。
【0099】
消防隊および軍事のような職業において、すべてのバイタルサインパラメータを同時にモニタリングし、リアルタイムのフィードバックを提供し、介入を可能にすることによって、本発明は、特に過酷な環境で活動している間に、体温調節障害、心不全および呼吸不全からの疾患および死亡を防止する。そのような脱水症は、体温調節系と心臓血管系の両方に影響を与えるため、本発明は、深刻な脱水症を患う人をより迅速に診断することを可能にし、これによって、熱中症および致命的結果になる可能性が劇的に低減する。本発明はまた、人員の活動プロファイルに関する有用な情報をも提供し、訓練中、フィットネスおよび能力を向上させ、またその向上をモニタリングするために使用することができる。
【0100】
スポーツにおいて、本発明は、職業労働者と同じ状態をはるかにより多数の被検者において防止するのに必須になるが、フィットネス、能力およびウェルネスを向上させるための訓練補助具としてより大きい役割を果たすものと予測される。
【0101】
好ましい実施形態において、携帯型生理学的モニタは、側頭動脈を介して中核温を想定するための熱電対列センサと、耳を介して脈拍数、脈容量、酸素飽和度および呼吸を測定するためのパルスオキシメトリセンサと、ECGを測定するための少なくとも2つの電極センサと、骨伝導振動および/または呼吸を介して呼吸数を測定するためのマイクロフォンと、動き、向きおよびBCGを測定するための加速度計と、PTTの変化を計算するためのパルスセンサ、運動センサ(BCG)およびECGセンサのうちの2つ以上の組み合わせと、被検者および/または他の人に、自身の/現在のおよび変化している生理学的パラメータを通知し、被検者および/または他の人に疾患の始まりまたは疾患のより深刻な状態における介入を喚起するためのリアルタイムのフィードバックを提供する、腕時計、スマートフォンまたは他の視覚および/もしくは聴覚指示モジュールとのいずれか1つまたは組み合わせも含むイヤピースまたはヘッドセットを含む。同じタイプの複数のセンサが含まれる場合、プロセッサは、複数の信号を平均するか、または、個々の信号からのデータを被検者に供給するように構成することができる。
【0102】
さらなる実施形態において、本発明のシステムは、腕時計またはスマートフォンがパルスオキシメトリセンサを含み、すべての他のセンサはイヤピース内に含まれるように構成することができる。
【0103】
熱電対列センサは、入射する赤外線放射を鼓膜から検出し、被検者の中核温と等価な電圧出力を提供する。これはその後、アルゴリズムへと供給され、結果が指示モジュールを介して出力される。好ましくは、結果は、必要に応じて熱中症の任意の警告を含む被検者の中核温である。
【0104】
好ましい実施形態において、熱電対列センサの電圧出力は、英国特許第2411719号による追加のアルゴリズムに供給され、結果が、指示モジュールを介して出力される。好ましくは、結果は、脱水症の任意の警告を含む被検者の水分補給状態である。
【0105】
好ましい実施形態において、携帯型生理学的モニタは、電源始動を受けて直ちに、かつ、第1の測定の前に、熱電対列センサの温度を耳道のおおよその温度に迅速に釣り合わせ、デバイスが耳道に挿入されるときに熱電対列信号を安定化させるための電気ヒータ要素を含む。
【0106】
パルスオキシメトリセンサは、組織を通した複数の異なる波長の光の透過率を通じて被検者の脈の酸素飽和度をモニタリングする。光検出器が、各波長の吸収および存在する酸素飽和度に依存する光の複数の異なる波長の対応する比を受信し、等価な電圧出力を提供する。これはその後、アルゴリズムへと供給され、結果が指示モジュールを介して出力される。好ましくは、結果は、心拍変動/不整脈の検出を含む、被検者の脈拍数、脈容量、酸素飽和度および呼吸数である。さらなる実施形態において、本発明は、総ヘモグロビンに対する酸化ヘモグロビンの割合の間で区別し、酸素欠乏(低酸素症)、動脈血における酸欠(低酸素血症)または組織レベルでの酸欠を含む、悪い健康状態を判定するために、いくつかの波長における光の吸収を測定することによって、酸素の代謝をモニタリングするように構成することができる。
【0107】
パルスオキシメトリセンサに対する代替形態として、またはそれに加えて、本発明のさらなる実施形態は、側頭動脈から脈拍数および脈圧を測定するための圧電モニタリングシステムを組み込むことができる。システムは、動脈を閉塞させるためのカフと、パルス、時間および周波数領域における変化からのコロトコフ音を記録および分析するための圧電接触型マイクロフォンとを備える。
【0108】
身体上に配置されると、少なくとも2つのECG電極が心臓の電気伝導系を測定し、心拍によって生成される電気インパルスを検出し、これによって、インパルスの波形と等価な電圧が与えられる。これはその後、アルゴリズムへと供給され、結果が指示モジュールを介して出力される。好ましくは、結果は被検者の心電図である。
【0109】
マイクロフォンは、頭蓋骨の骨伝導および内耳を介して被検者の呼吸からの振動を検出およびモニタリングし、および/または、被検者の呼吸を介して音波を検出およびモニタリングし、振動および/または音波の振幅と等価な電圧を与える。これはその後、アルゴリズムへと供給され、結果が指示モジュールを介して出力される。好ましくは、結果は、悪い健康状態のモニタリングおよび検出を含む被検者の呼吸数およびプロファイルである。
【0110】
加速度計(3軸、6軸または9軸)は、被検者の動きおよび位置を検出して等価なデータを提供し、当該データは、その後アルゴリズムに供給され、結果が、指示モジュールを介して出力される。好ましくは、結果は、悪い健康状態のモニタリングおよび検出を含む、歩調、速度、距離、歩数、向き、発熱量、活動の状態、活動のレベル、移動度、および/または概日リズムである。加速度計は、3軸、6軸、または9軸加速度計であってもよく、ジャイロスコープおよび/または磁気探知機と合わせてまたはそれらに代えて使用されてもよい。
【0111】
加速度計はまた、各心拍によって血管内に突然に流入する血液から生じる人体の反復的な動きを測定することによって、BCG、すなわち、心拍数を測定する代替的な方法、およびPTTを判定する方法を判定するために使用することもできる。運動データは、アルゴリズムへと供給され、結果が指示モジュールを介して出力され、PTTアルゴリズムに供給される。
【0112】
PPGとBCGとの組み合わせ、または、PPGとECGとの組み合わせ、または、最大の精度のため3者の組み合わせによって判定されるPTTは、血圧(BP)と相関する脈波速度(PWV)を判定するために測定することができる。PTTは、相対BPの推定値を与え、絶対BP(拡張期および収縮期の値)の推定値を得るために較正を必要とする。較正は、モニタリングセッションの開始時にまたはその間にBPカフによって可能にすることができる。
【0113】
本発明のさらなる実施形態において、PPG、加速度計からのデータ、パルスオキシメトリセンサからのデータおよび/または専用呼吸センサからのデータの組み合わせを使用して、運動している被検者の最大有酸素容量(VO2 max)を確立することができる。
【0114】
好ましくは、イヤピースは、耳道の周りの周囲空気が流れることを可能にする1つまたは複数の空気流チャネルを含み、被検者が周囲音を聞き続けることを可能にする。周囲空気が流れることおよび周囲音の伝達を可能するための空気チャネルがないかまたは不十分である場所での聴取に対する不均衡を防止するために、1つまたは複数の外部マイクロフォン、スピーカおよびプロセッサは、音波または骨伝導振動をスピーカから被検者の内耳に向かって伝達する前に、マイクロフォンからの周囲音の測定値を受け入れるように構成することができる。周囲音は、従来の補聴器と同様の方法で、被検者の聴取能力を向上させるために、内耳に伝達される前に増幅することができる。デジタル信号プロセッサ(DSP)を使用して、音響信号品質を向上させることができる。
【0115】
一次および/または遠隔デバイスは、電話デバイスとして動作するために、スピーカに加えて、1つまたは複数の標準的なまたは骨伝導マイクロフォンを組み込むように構成することができ、電話デバイスは、一次デバイスから関連するアンテナおよび回路を含む一次電話デバイスとして、あるいは、音声入力を捕捉し、音声が一次デバイスから受信され、スレーブデバイスを介して被検者に出力され、または、被検者の音声がスレーブデバイスによって捕捉され、一次デバイスに伝達される、一次電話デバイスに対するスレーブデバイスとしてのいずれかでの使用を含む。一次および/または遠隔デバイスは、1つまたは複数のマイクロフォンを利用して、環境雑音を低減するための雑音除去(分離)を可能にすることもできる。雑音除去機構は、音楽再生または通信と周囲環境の聴取との間で切り替えるために、被検者によって切り替え可能であるように構成することができる。
【0116】
代替的な実施形態において、本発明は、モノ音声とともに、通信/電話およびユーザへの伝達もしくは周囲音のために上述した機能を提供する個々のイヤピースとして、または、イヤピースにローカルに記憶されているかもしくは遠隔デバイスから送信される音楽から被検者の内耳にオーディオ音声を付加的に伝達するためにステレオ音声を提供するための一対のイヤピースとして構成することができる。
【0117】
好ましくは、携帯型生理学的モニタイヤピースは、被検者の耳の中に安定してフィットし、一定の位置を維持するように設計される。たとえば、センサ、プロセッサおよび補助電子機器は、被検者の異なるサイズの耳の中に適応的にフィットすることを可能にするために、順応可能なゴムまたはポリウレタン部材などの中に搭載することができる。別の代替形態において、被検者が最良にフィットする快適なものを選択することを可能にするために、様々なサイズのイヤピースが提供されてもよい。さらなる代替形態において、イヤピースは、最適にフィットし快適なものになるために、被検者の耳に対してカスタム成形することができる。
【0118】
本発明の実施形態は、身体障がい者を含むほぼすべての男性および女性によって使用することができる。様々な実施形態は最終的に、
a.職業およびアマチュア運動選手ならびにスポーツマン/ウーマン(ならびに初心者スポーツ愛好家)、
b.スポーツ医学研究、
c.運動生理学、
d.軍人(陸軍、王室海軍および王室空軍、特殊部隊)、
e.警察官、
f.消防士、
g.労働衛生および労作性熱中症または心臓血管疾患の危険性に晒されているもの(製パン業者、農業従事者、建設労働者、鉱山労働者、ボイラー室労働者、工場労働者)、
h.高齢者および体の弱い人、
i.内科患者(入院患者および手術前または手術後の外来患者)、
j.遠隔医療治療、
k.精神および慢性疾患、
l.すべての人を含む在宅医療、
m.小児科、および
n.健常な公衆被検者
の様々な需要を満たすように製造することができる。
【0119】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1】携帯型生理学的モニタリングシステムの一実施形態のブロック図である。
図2図1のシステムを組み込んでいる携帯型生理学的モニタ製品エコシステムの概略図である。
図3図1のシステムを組み込んでいる携帯型生理学的モニタの概略図である。
図4図3のシステムのイヤピースの断面図である。
図5図3のシステムのイヤピースのさらなる実施形態の断面図である。
図6図5のシステムのイヤピースの代替的な構成の断面図である。
図7】較正技法を組み込んでいる携帯型生理学的モニタの概略図である。
図8】センサの入射角が調整可能である携帯型生理学的モニタの概略図である。
図9】本発明の一実施形態によるウェアラブルデバイスの図である。
図10】本発明の一実施形態によるウェアラブルデバイスの図である。
図11】本発明の一実施形態によるウェアラブルデバイスの図である。
図12】本発明の一実施形態によるウェアラブルデバイスの図である。
図13図9図12に示すウェアラブルデバイスの耳挿入部を示す概略図である。
図14図9図12に示すウェアラブルデバイスの耳挿入部の一例を示す断面概略図である。
図15図9図12に示すウェアラブルデバイスの耳挿入部の一例を示す断面概略図である。
図16図9図12に示すウェアラブルデバイスの耳挿入部の構成要素部品を示す分解組立図である。
図17図9図12に示すウェアラブルデバイスのハウジング内の構成要素部品を示す分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0121】
図1は、携帯型生理学的モニタリングシステムの一例のブロック図である。
【0122】
携帯型生理学的モニタリングシステム10は、温度センサ20と、パルスオキシメトリセンサ30と、呼吸センサ50と、運動センサ60と、プロセッサ70と、ディスプレイ90とを含む。好ましくは、携帯型生理学的モニタリングシステムはまた、ECGセンサ40およびスピーカ80をも含む。
【0123】
温度センサ20は、被検者の中核温を測定するように構成されており、パルスオキシメトリセンサ30は、被検者の脈拍数、脈容量および酸素飽和度を測定するように構成されており、ECGセンサ40は、被検者のECGを測定するように構成されており、呼吸センサ50は、被検者の呼吸数を測定するように構成されており、運動センサ60は、被検者の動きおよび向きを測定するように構成されている。すべてのセンサは、測定されている生理学的パラメータをプロセッサ70に通信するように構成されている。測定値を受信すると、プロセッサは、スピーカ80および/またはディスプレイ90にパラメータのうちの1つまたは複数を出力するように構成されている。
【0124】
図2は、図1のシステムを組み込んでいる携帯型生理学的モニタ製品エコシステムの概略図である。
【0125】
イヤピース100は、生理学的パラメータ測定値を、スマートウォッチ120、スマートフォン130、ラップトップまたはデスクトップコンピュータ140およびコンピュータタブレット150のような、一般的な遠隔消費者無線デバイスに通信するように構成されている。家庭でまたは介護施設内での被検者または患者のモニタリングのようなモニタリング用途について、イヤピース100はまた、測定値をインターネット接続可能ハブ160に通信するようにも構成されており、インターネット接続可能ハブは、測定値および/または警告を、必要に応じて被検者または患者を支援するように位置付けられている遠隔モニタリング・対策チームに通信する。
【0126】
図3は、図1のシステムの一部を組み込んでいる携帯型生理学的モニタの概略図である。図4は、図3のモニタのイヤピースの断面図である。
【0127】
携帯型生理学的モニタは、イヤピース100と、スマートウォッチ120またはスマートフォン130のような遠隔無線デバイスとを含む。
【0128】
イヤピース100は、一般的に、使用時に耳の中に保持され、内部に設けられている複数のセンサおよび構成要素を支持する単一部品によって形成されるハウジング110を有する。他の例において、ハウジング110は、複数の別個の形成されている部品から組み立てられてもよい。それにもかかわらず、ハウジング110は、概念的には、図4においてIとマークされている矢印によって示されている内側部分と、図4においてOとマークされている矢印によって示されている外側部分とに分割することができる。内側部分Iは、外耳道内に挿入され、装着者の外耳道とインターフェースするときに、圧縮可能発泡スリーブまたは成形シリコーンイヤピースのように、適合性かつ弾性の材料から一般的に形成される、順応可能カバー109によって使用時には少なくとも部分的に内部に保持されるように成形および構成されている。外側部分は、耳の甲介(すなわち、外耳道の入口に位置する耳のボウル形状の空洞)内に挿入され、ハウジング110の内側部分Iによって少なくとも部分的に内部に保持されるように成形および構成されている。任意選択的に、使用時にイヤピース100を適所にさらに保持するために、使用時に装着者の耳介の上に留められるように外側部分Oから延伸するオーバーイヤークリップが設けられてもよい。
【0129】
イヤピース100は、中核温の基準として鼓膜の温度を測定するために、イヤピースの内側部分Iの端部に位置付けられる熱電対列101を含む。熱電対列101は、外耳道への入口にではなく、外耳道の中のハウジング自体の内部に配置および保持されるようなサイズにされる。熱電対列を鼓膜の近くに配置し、外耳道とインターフェースし、その中に保持されている耳挿入部によって効果的に閉鎖された環境の内部に熱電対列を封止することによって、熱電対列は、たとえ歩行使用中であっても鼓膜からの放射を検知し、非侵襲的にまたは最小侵襲的に正確で長期間の中核温測定を可能にするために定位置に確実に保持することができる。熱電対列は、好ましくは、その検知面が3mm×3mm未満であり、さらにより好ましくは2mm×2mmまたはそれ未満である。イヤピース100における長期間の耳内使用のための適切な熱電対列の一例が、パッケージサイズが1.6mm×1.6mmしかない、米国テキサス州ダラス所在のTexas Instrumentsによって製造されている超小型チップスケールパッケージ入り赤外線熱電対列センサTMP006(http://www.ti.com/product/TMP006#descriptions)である。いくつかの例において、熱電対列は、2mm×2mm以下であってもよい。熱電対列は、物体と接触する必要なしに物体の温度を測定する。このセンサは、測定されている物体から放出される受動的赤外線エネルギーを吸収するために熱電対列を使用し、対応する熱電対列電圧の変化を使用して、物体温度を判定する。熱電対列電圧はデジタル化されて、シリアル通信を通じてプロセッサ70(図4には示されていない)に報告される。較正され、信号がたとえば、1分の窓の測定期間にわたって平均することによって平滑化されると、熱電対列101の誤り率は低減し、熱電対列は摂氏±0.1度の精度をもたらす。熱電対列101は、同じくプロセッサに報告される、ダイ温度を測定するためのオンボードサーミスタ(図示せず)を設けられる。プロセッサは、報告されているダイ温度、および、任意選択的に、ダイ温度と、熱電対列によって検出されている温度との間の差を使用して、熱電対列によって報告される信号内のノイズフロアを低減することができ、より高い信号対雑音比を与える。このタイプの小型熱電対列を使用することによって、熱電対列101は外耳道内に配置および保持されることが可能になり、後述するように、イヤピース100内に追加の構成部品または機能のための空間をももたらしながら、進行中の歩行中核温モニタリングの精度および感度を向上させることが可能になる。
【0130】
イヤピースはまた、耳の甲介内の血管の脈拍数、脈容量および酸素飽和度を測定するための、互いに近接して位置付けられている2つの発光ダイオードおよび光検出器を備えるパルスオキシメトリセンサ102と、耳の甲介から心臓の電気伝導系を測定するように位置付けられているECGセンサ103と、骨伝導を介して内耳を通じて呼吸振動を測定するための呼吸センサ104と、被検者の頭部の動きおよび向きを測定するように位置付けられている加速度計センサ105と、生理学的パラメータ測定値をスマートウォッチ120またはスマートフォン130に通信するように構成されている送受信機106とを含む。
【0131】
パルスオキシメトリセンサ102は、それ自体は耳の甲介領域内に位置付けられている半透明または透明の窓115のすぐ後ろに位置付けられている。
【0132】
代替的な例において、呼吸センサ104は、顎を介して呼吸振動を検出するために耳の甲介の後ろに位置付けられてもよく、これは、鼓膜を介して呼吸振動を検出するために熱電対列101付近でイヤピースの端部に設けられている、図4に示す図3のモニタの例に示す呼吸センサ104の代わりにまたはそれに加えて設けられてもよい。
【0133】
ECGセンサ103は、2つの電極を備え、これらは、代替的な例においては1つが甲介領域内にあり、1つが耳の後ろにあるように構成されてもよく、または、一対として使用される2つのイヤピースがある場合は、各イヤピース内で1つの電極が甲介領域内にあってもよい。
【0134】
イヤピース100、スマートウォッチ120およびスマートフォン130はすべて、電力を供給するための1つまたは複数のバッテリを含む。少なくともイヤピース100の場合、バッテリ107は、イヤピースの中から電源への適切な接続または電源への誘導結合を介して再充電可能であることが好ましい。電池電力を節約するために、送受信機106は、定期的にのみ動作することができる。イヤピース100、スマートウォッチ120およびスマートフォン130は、使用されていないときに電力をさらに節約するためのスリープモードを含むことができる。
【0135】
スマートウォッチ120およびスマートフォン130は、イヤピースから測定値を受信するように構成されている送受信機と、計算を実施するためのプロセッサと、被検者に、上述した生理学的パラメータのうちの1つまたは複数の状態に関するフィードバックを提供するためのディスプレイ90とを含む。好ましくは、モニタは、実質的にリアルタイムで動作する。好ましくは、送受信機106は、ブルートゥース(BlueTooth)(登録商標)Low Energyまたは別の適切な無線通信システムのような無線データプロトコルを介して通信する。
【0136】
使い捨てまたは洗浄可能耳垢ガーゼ108が、耳垢および他の異物がイヤピースに入るのを防止する。
【0137】
イヤピース100の本体の周囲の順応可能カバー109が、被検者に対する快適で良好なフィットを保証する。カバー109は、カスタムまたは汎用成型であってもよく、最良のフィットおよび快適さを保証するために複数の異なるサイズで与えられてもよい。カバー109は、周囲音が被検者の内耳に達することを可能にし、聴取および状況認識に損失がないことを保証し、また、運動中に空気が循環して耳道内に水分が蓄積することを防止することを可能にするための陥凹チャネルを含むことができる。周囲音伝達が必要ない用途においてさえ、熱および空気の伝達を可能にするために、空気の循環が、陥凹チャネルを含むことの唯一の理由であってもよい。
【0138】
順応可能カバー109は、取り外し可能かつ交換可能/置換可能であってもよく、遠隔、居住、臨床および苦痛緩和ケア状況における一連の患者のバイタルサインモニタリングのために、ならびに、一連の患者の手術状況のために、衛生的、非侵襲的または最小侵襲的にイヤピースの使用を可能にする。
【0139】
本発明の一例において、音響生成デバイスからのチューブがイヤピース100に取り付けられて、音響を被検者の内耳に中継することを可能にするために、音響フィードスルーチャネル111を設ける。音響フィードスルーチャネル111は、ハウジング110によって形成することができ、内耳に音声を提供するための導波路として構成する。使用時に外耳道内へと開いている音響フィードスルーチャネル111の出力は、熱電対列101に隣接して配置される。図4に示す図3のモニタの例において、音響フィードスルーチャネル111は、いかなる能動的音響生成源にも結合されておらず、周囲音の受動的スループットが装着者の状況認識を促進することを可能にするために、周囲環境に対してただ開いている。
【0140】
図5は、図3のモニタのイヤピースのさらなる例の断面図である。音響フィードスルーチャネル111に対する代替形態として、スピーカ112によって能動音響を与えることができる。マイクロフォン113をスピーカ112と合わせて使用して、周囲雑音を記録し、補聴器におけるように、雑音除去を可能にするか、または、被検者の聴取を増強するために周囲音を増幅することができる。代替的に、音楽または発話のような音響信号が、たとえば、送受信機106とスマートウォッチ120またはスマートフォン130との間のBlueTooth(登録商標)接続を介してスピーカ112に与えられ、音響フィードスルーチャネル111を通じて装着者に対して再生されてもよい。
【0141】
スピーカ112が設けられる場合、上述した生理学的パラメータの状態フィードバックが、ディスプレイ90を介して提供されるとともに、または、その代わりに、聴覚的に提供され得る。所定のパラメータレベルに達した場合、および/または、介入が必要とされる場合、スピーカ112およびディスプレイ90を介して警告を発することができる。
【0142】
図6は、図5のイヤピースの代替的な構成の断面図である。イヤピース100が単独で使用される場合、スピーカ112は、状態の通信およびフィードバックに有用なモノ音声を提供することができる。代替的な例において、イヤピース100は、2つのスピーカ112を利用することによって、音楽再生のためのステレオ音声出力または通信音声出力の向上した品質を提供するための一対のイヤピースとして構成することができる。この構成において、ケーブル/リーシュ114が、2つのイヤピースを接続して、イヤピースの間で電力を共有するための電気接続を与え、2つのイヤピース間で最適な構成要素の共有を可能にすることができる。リーシュ114はまた、1つのイヤピース100が喪失することを防止するための簡便な方法としても機能し、クリップを設けられる場合に、イヤピース100を衣服に固定する方法を提供することができる。
【0143】
熱電対列101はベアの(コーティングされていない)シリコンダイであるため、(感度に対して約cos2θの重み付けを受けて)180度の視野内でほぼ何処においても現われる熱放射信号の影響を受ける。外耳道の温度は一般的に、鼓膜の温度とは異なり、そのため、身体の中核温の真の測度ではない。標的物体、すなわち、鼓膜は約4mmの半径を有するため、イヤピース100は、熱電対列101が外耳道に沿って鼓膜から約15mm離れる傾向にあるように配置され、これは、実際の鼓膜が視野の相対的に小さい割合を構成することを意味する。したがって、熱電対列101から得られる温度信号の精度を向上させることを可能にするために、この温度効果は補正されるべきである。
【0144】
図7は、較正技法を組み込んでいる携帯型生理学的モニタの概略図である。イヤピース100は、熱電対列101から受信される鼓膜信号を汚染する可能性がある、耳道からの赤外線熱をさらに補償するための耳道の温度勾配マップを作成するために、外耳から鼓膜までの多数の深さにおいて耳道壁の温度を測定するために、イヤピースの外面上にまたはその付近に位置付けられるサーミスタ116を組み込むように構成することができる。サーミスタ116はまた、測定温度が環境温度とは対照的に耳道の温度範囲内にあることをチェックすることによって、イヤピースが外耳からの距離との関係において耳道内で正確な深さに配置されることを保証するのを助けるために使用することもできる。サーミスタ116は、この事例において、デバイスが被検者の耳道内に配置されており、測定値が耳に対応することをプロセッサに警告する役割も果たす。それと同時に、サーミスタは、イヤピースが一時的にまたは使用の終わりに被検者から取り外されるときに、これをプロセッサに警告する。
【0145】
サーミスタ116に代えて、デバイスが耳道内に挿入され、正確な深さに位置付けられているか否かを検出する同じ機能に、容量センサが使用されてもよい。耳道の壁に対する容量センサの接触およびコンダクタンスが、この機能を可能にする。
【0146】
図8は、熱電対列センサ101の入射角が調整可能である携帯型生理学的モニタの概略図である。最高の精度を保証するために、鼓膜の見通し線に対する熱電対列101の角度を調整することを可能にするために、イヤピース100は、イヤピースが耳道内に位置付けられるときの被検者に対するデバイスの設定中に調整され得る旋回ヘッド117または他のメカニズムを組み込むことができる。プロセッサは、熱電対列101の最適な角度を示す、最高温度が測定されたときに、これを被検者または臨床医に警告するように構成される。
【0147】
図9図17は、異なる角度から見た、ウェアラブルデバイスまたはその構成要素の図である。図1図8に関連して説明されている前述したウェアラブルデバイスの特徴は、図9図17の実施形態に組み込むことができることが理解されよう。ウェアラブルデバイス200は、イヤピースの形態であり、ハウジング250を備える。使用時に、ハウジング250は、使用者の耳の外部に位置付けられる。耳挿入部210は、使用時にハウジング250から使用者の外耳道へと延伸する。耳挿入部210は、使用時に部分的に前方および上方へ延伸する。耳挿入部210は、耳挿入部210の近位部に設けられる閉鎖部材212を備える。耳挿入部210は、閉鎖部材212と耳挿入部210の遠位部において赤外線熱電対列(図示せず)を支持する熱電対列モジュール(図示せず)とから延伸する外耳道延伸部材214も含む。耳挿入部210は、外耳道内に熱電対列モジュールを中心化するために、耳挿入部210の遠位部において中心化部216を備える。窓キャップ220は、ウェアラブルデバイス200の取り扱い中の損傷から赤外線熱電対列を保護している。音響伝導チャネル(図示せず)は、耳挿入部210内に画定され、耳挿入部210の遠位部において設けられている出力218まで延伸する。耳挿入部210は、閉鎖部材212の最も広い半径方向範囲から軸方向に約15ミリメートル延伸する。
【0148】
閉鎖部材212は、ゴム材料、この例ではシリコンから形成され、外耳道の外側領域を封止し、それによって、外耳道を外耳道の外部の周囲環境から実質的に分離するように形成されている。閉鎖部材212は、各々が異なる耳形状およびサイズを有する様々な異なる使用者に心地よくフィットするように、弾性材料から形成されている。閉鎖部材212は、実質的にドーム形状を有するように形成されている。このようにして、閉鎖部材212は、外耳道の外側領域へと容易に押し込まれ、外耳道内に耳挿入部210を保持するのを助ける。
【0149】
音響伝導チャネルは、閉鎖部材212を通じて鼓膜に音声の伝導を促進するように構成されている。出力218は、耳挿入部210の遠位部において、赤外線熱電対列(図示せず)の後ろで開いている。これは、赤外線熱電対列が、音響伝導チャネルの出力のために耳挿入部210の端面に空間を設計する必要なしに耳挿入部210の最内端に位置付けることができることを保証する。
【0150】
外耳道延伸部材214および中心化部216を各々、さらに以下で図14を参照して説明する。
【0151】
ハウジング250は、ハウジング250の上部領域から延伸するゴムループとして形成されている翼先端部270を備える。翼先端部270は、耳の艇領域と係合する弾性部として形成されている。翼先端部270は、ハウジング250から上方および後方へ部分的に延伸する。ハウジング250は、使用時に耳の前方にある頭部の領域に対して支えるように構成されている頭部支え面を備える頭部支え部260をさらに備える。頭部支え面は、骨伝導マイクロフォン262に対する接点を備えている。骨伝導マイクロフォン262は、前述したように動作するように構成されている。
【0152】
一例では、翼先端部270は、フック部材の形態であってもよく、閉ループを形成する必要はない。さらなる例では、翼先端部270は、耳の艇領域と係合するように成形された実質的に平面の突起の形態であってもよい。
【0153】
ハウジング250は、接続部264をさらに備える。接続部264は、耳フック部材(図示せず)に接続可能であるように構成されている。耳フック部材は、耳に掛け、ウェアラブルデバイス200を耳で定位置にさらに保持するために使用されることができる。
【0154】
ハウジング250の最外側面は、入力ボタン280として使用可能である。入力ボタン280は、ウェアラブルデバイス200の動作を制御するための電気接点スイッチの形態である。いくつかの入力ボタンは、ハウジング250の最外側面上、またはハウジング250の上の他の場所、のどちらかに設けることができることが理解されるであろう。
【0155】
ここで、耳挿入部210をさらに詳しく説明する。
【0156】
図13は、図9図12に示すウェアラブルデバイスの耳挿入部を示す概略図である。この図では、耳挿入部210は、閉鎖部材212なしで示されている。耳挿入部210は、外耳道延伸部材214を延伸する閉鎖部材搭載部222を備える。前述したように、中心化部216、出力218、および窓キャップ220が、耳挿入部210の遠位部に設けられている。
【0157】
図14は、図9図12に示すウェアラブルデバイスの耳挿入部の一例を示す断面概略図である。耳挿入部210の断面(cut-through)が示され、耳挿入部210の内部構造を示している。耳挿入部210の近位部から遠位部まで移動することにより、閉鎖部材搭載部222は、閉鎖部材212がそれに搭載された形で付与される。外耳道延伸部材214は、閉鎖部材搭載部222を越えて遠位方向に延伸するように形成されている。音響伝導チャネル224は、耳挿入部210内に画定される。特に、音響伝導チャネルは、少なくとも部分的に、外耳道延伸部材214の内側壁によって画定される。前述したように、音響伝導チャネル224は、耳挿入部210の遠位部に音声を伝導する。
【0158】
外耳道延伸部材214は、弾性チューブとして形成されており、音響伝導チャネル224の一部を画定する。外耳道延伸部材214は、ゴム材料、たとえばシリコンから形成されており、様々な異なる外耳道形状にフィットするように可撓性である。図14に詳細に示すように、中心化部216は、音響伝導チャネル224の出力218(図13を参照されたい)を設ける3つの開口部がその中に画定される実質的に円筒状の中央領域を備える。開口部は、中央領域の周りに円周方向に離間されている。中心化部216は、各々が中央領域から半径方向に延伸する3つのフィン226をさらに備える。各フィン226の根元は、3つの開口部の間にセパレータを形成している。フィン先端228は、各フィン226の半径方向最外側範囲に設けられている。中心化部216は、弾性材料、たとえばシリコンから形成されている。フィン226は、外耳道の内面に対して変形可能であり、それによって、耳挿入部210の遠位部を外耳道内で実質的に中心化するように形成されている。
【0159】
通気性部材236は、音響伝導チャネル224の出力218を被覆するために、耳挿入部210の遠位部に設けられている。通気性部材236は、それを通る空気の通過を可能にしながら、耳挿入部210への水分および汚染物の通過を実質的に防止するように構成されている透過性部材として形成されている。例では、通気性部材236は、GoreTex(登録商標)メッシュから形成されている。
【0160】
耳挿入部210の遠位部は、熱電対列モジュール(図示せず)内に赤外線熱電対列230をさらに備える。赤外線熱電対列230の検知面は、耳挿入部210の軸方向に対して実質的に直角であり、それに沿って、音響伝導チャネル224が外耳道延伸部材214内に延伸する。赤外線熱電対列230の検知面は、窓キャップ220によって保護されている。
【0161】
図15は、図9図12に示すウェアラブルデバイスの耳挿入部の一例を示す断面概略図である。耳挿入部210は、閉鎖部材212内に示されている。有線232の形態をした電気接続部は、ウェアラブルデバイス200のハウジングから耳挿入部210を通じて遠位方向に延伸する。有線232は、耳挿入部210の遠位部において熱電対列モジュールPCB234の第1の側に(たとえば、はんだ付けによって)接続されている。赤外線熱電対列230は、熱電対列モジュールPCB234の第1の側に対向する第2の側に搭載されている。このようにして、赤外線熱電対列230からの信号は、耳挿入部210から、ウェアラブルデバイス200のハウジング250内に設けられたさらなる電気構成要素(図示せず)に出力することができる。音響伝導チャネル224は、有線232を包囲している。この構成は、音声と赤外線熱電対列230からの信号の両方を搬送するのに、耳挿入部210の外耳道延伸部材214を通る1つの通路しか必要とされないことを意味する。これらのこのような構成は、空間の効率的な使用を表し、空間が制約された環境において音声が内耳へと提供されることも可能にしながら、熱電対列を内耳において、鼓膜の近くに確実かつ正確に位置付けることを可能にする。
【0162】
他の実施形態では、可撓性PCBまたはフレキシリジッドPCBは、赤外線熱電対列230から耳挿入部210の外に信号を搬送するために有線232の代わりに使用することができることが理解されよう。
【0163】
図16は、図9図12に示すウェアラブルデバイスの耳挿入部の構成要素部品を示す分解組立図である。耳挿入部210の近位部から、耳挿入部は、その上に閉鎖部材212が搭載されるように構成されている閉鎖部材搭載部222を備える。外耳道延伸部材214は、閉鎖部材搭載部222から遠位方向に延伸する。架橋部材240は、外耳道延伸部材214を音響伝導チャネル出力部材238に接続する。音響伝導チャネル出力部材238は、音響伝導チャネル224の出力218を与える複数の(この例は、3つの)開口部をその中に画定している。音響伝導チャネル出力部材238はまた、熱電対列モジュールPCB234および赤外線熱電対列230を収容する熱電対列モジュールとして機能する。窓キャップ220が、音響伝導チャネル出力部材238の遠位面上に設けられている。通気性部材236は、音響伝導チャネル224の出力218を被覆するために音響伝導チャネル出力部材238の周りに設けられている。中心化部216は、使用時に外耳道内で赤外線熱電対列230を中心化するために音響伝導チャネル出力部材238上に設けられている。中心化部216内に画定される開口部は、音響伝導チャネル出力部材238内に画定される開口部と実質的に位置合わせされる。このようにして、音響は、耳挿入部210の近位部から、外耳道延伸部材214内で、耳挿入部210の外に、音響伝導チャネル出力部材238内および中心化部216内に画定される開口部を通じて、外耳道へと、鼓膜に向かって伝導することができる。
【0164】
図17は、図9図12に示すウェアラブルデバイスのハウジング内の構成要素部品を示す分解組立図である。ハウジング250は、ウェアラブルデバイス200の動作を制御するための、および赤外線熱電対列230から外部デバイスにセンサ信号を中継するための電子構成要素を含む。ハウジング250は、第1のハウジングシェルを設ける後部ハウジング部材252、および第2のハウジングシェルを設ける前部ハウジング部材254から形成されている。耳挿入部ハウジング部材258は、前部ハウジング部材254から耳挿入部210の方向に延伸する。前部ハウジング部材254と後部ハウジング部材252の上面はともに、接続部264を画定している。コネクタカバー266は、使用されていないとき、接続部264を被覆することができる。入力ボタン280は、後部ハウジング部材252の外側面上で延伸するように形成されているパネル部材の形態で設けられている。後部ハウジング部材252および前部ハウジング部材254によって形成された空洞内に、一次PCB290が設けられている。一次PCB290は、可撓性PCB292を介して、耳挿入部ハウジング部材258内に設けられている二次PCB294に電気的に接続されている。音響ドライバ274も、耳挿入部ハウジング部材258内に設けられており、二次PCB290に接続されている。
【0165】
被検者の耳道内へと挿入されると、赤外線熱電対列230は、入射する赤外線放射を鼓膜から検出し、被検者の中核温と等価な電圧出力を提供する。好ましくは、プロセッサは、これを摂氏温度または華氏温度単位の温度読み値へと変換する。
【0166】
甲介内に配置されると、パルスオキシメトリセンサ102は、組織を通過する赤色光および赤外光の透過率を通じて被検者の脈の酸素飽和度および容量を検出する。好ましくは、プロセッサは、これを脈拍数、脈容量および酸素飽和度の読み値へと変換する。いくつかの実施形態において、血圧カフをパルスオキシメトリセンサと合わせて使用して、脈圧読み値を提供し、および/または、パルスオキシメトリセンサを較正することができる。好ましくは、結果は、分あたりの拍動での脈拍数、水銀柱ミリメートル単位の脈圧および脈容量、ならびに、パーセンテージとしての酸素飽和度である。いくつかの実施形態において、結果はまた、容積脈波を出力することもできる。
【0167】
パルスオキシメトリセンサ102に対する代替形態として、またはそれに加えて、本発明のさらなる実施形態は、側頭動脈から脈拍数および脈圧を測定するための圧電モニタリングシステムを組み込むことができる。システムは、動脈を閉塞させるためのカフと、パルスの変化からのコロトコフ音を記録および分析するための圧電接触型マイクロフォンとを備える。
【0168】
甲介内に配置されると、ECGセンサ103は、心臓の電気伝導系を検出する。好ましくは、プロセッサは、これをミリボルト毎秒単位のECG読み値へと変換する。
【0169】
被検者の耳道内へと挿入されると、骨伝導マイクロフォン104は、内耳を通じて呼吸振動を検出する。好ましくは、プロセッサは、これを分あたりの呼吸の呼吸数へと変換する。骨伝導マイクロフォンは、熱電対列モジュール100t内に設け、これによって支持することができる。
【0170】
加速度計105は、被検者の動きおよび向きをモニタリングする。好ましくは、プロセッサは、これを、被検者の歩調、速度、距離、向きおよび発熱量のうちの1つまたは複数の読み値へと変換し、その結果は、それぞれ分あたりの回転数またはストローク、キロメートル毎時またはマイル毎時、メートルもしくはキロメートルまたはマイル、度、および、カロリーまたはキロカロリー毎時の単位である。いくつかの実施形態において、データはまた、中核温と組み合わせて使用して、被検者の概日リズムの指標を与えることができ、結果は好ましくは、時間単位の時間量である。
【0171】
好ましくは、測定読み値は、イヤピースプロセッサに入力され、存在し、ユーザによって構成される場合はイヤピーススピーカ112を介してリアルタイムで被検者に定期的に中継され、スマートウォッチ120およびスマートフォン130のような遠隔デバイスに送信され、当該遠隔デバイスにおいて、オンボードプロセッサおよびソフトウェアアプリケーションが、測定読み値をテキスト形式およびグラフィック形式で、ディスプレイ90を介して被検者に出力する。
【0172】
好ましくは、イヤピースは、遠隔デバイスとペアリングされるまで、または、そうされない限り、測定読み値をその内部メモリ内に記憶し、その場合、測定読み値は遠隔デバイスに無線送信され、遠隔デバイスのメモリ内に限られた期間にわたって記憶され、ソフトウェアアプリケーションを通じてアクセスされる。いくつかの実施形態において、データはクラウド(インターネット)にアップロードされてもよく、そこで、被検者は自身のデータを、より長期の記憶のための遠隔デバイスに加えて、ユーザアカウントに記憶することができ、ここでも、遠隔デバイス上のソフトウェアアプリケーションによってアクセスすることができる。両方の事例において、被検者はその後、1つまたは複数の以前の分析セッションからの自身の生理学的データにアクセスすることができる。
【0173】
被検者が自身のバイタルサインパラメータを通知および/または警告されるために、一次デバイス(イヤピース)は、遠隔デバイスに依存せず、遠隔デバイスは必ずしも必要とされないが、存在する場合は一次ユニットに依存する。
【0174】
好ましくは、被検者の生理学的パラメータは、特定の間隔をおいて、または、たとえば、1秒から15分の間の所定のリスト(1秒、5秒、15秒、30秒、1分、5分、15分)から被検者によって選択可能な間隔をおいて測定される。各間隔について、その期間中に記録されるサンプルは平均され、平均測定値は、上述したように音響および/または視覚手段によって被検者および/または他の人に通信される。デバイスによって測定されるものとしての被検者の任意の生理学的パラメータが測定値の安全限界に達する場合、一次デバイスおよび/または遠隔デバイスは、選択されている間隔時間にかかわらず、この限界に達すると直ちに、音響および/または視覚手段によって被検者および/または他の人に警告する。好ましくは、被検者および/または他の人はまた、一次デバイスの測定の限界内に存在する、所定のリストから自身のパラメータ限界を選択することもできる。
【0175】
イヤピースならびにスマートウォッチおよび/または他の遠隔ユニットの構成に応じて、被検者は、音声もしくは振動警告、または両方の選択肢の間で選択することが可能であり得る。
【0176】
様々な実施形態は最終的に、
a.職業およびアマチュア運動選手ならびにスポーツマン/ウーマン(ならびに初心者スポーツ愛好家)、
b.スポーツ医学研究、
c.運動生理学、
d.軍人(陸軍、王室海軍および王室空軍、特殊部隊)、
e.警察官、
f.消防士、
g.労働衛生および労作性熱中症または心臓血管疾患の危険性に晒されているもの(製パン業者、農業従事者、建設労働者、鉱山労働者、ボイラー室労働者、工場労働者)、
h.会社管理職、
i.高齢者および体の弱い人、
j.内科患者(入院患者および手術前または手術後の外来患者)、
k.遠隔医療治療、
l.精神および慢性疾患、
m.すべての人を含む在宅医療、
n.小児科、および
o.健常な公衆ユーザ
の様々な需要を満たすように製造することができる。
【0177】
たとえば、運動選手は実際の数値レベルに関心がある場合があり、公衆ユーザは信号機などの形態の指標(たとえば、緑=正常な生理学的パラメータ、黄=少し損なわれた生理学的パラメータ、赤=被検者は疾患に達している)を好む場合がある。同様に、入院患者自身は、自身の生理学的状態に関心を払わずまたは理解しない場合があり、出力データは、分析および処置介入のために医療スタッフに渡され得、または、必要に応じて、患者の測定されている生理学的パラメータの自動調整のための制御システムに供給され得る。いくつかの実施形態は、メモリおよび接続/送信システムを含むことができ、それによって、生理学的状態および/または能力のより詳細な分析のために、データを経時的に記録して、コンピュータにアップロードすることができる。
【0178】
臨床医もしくは他の医療関係者、安全管理者またはスポーツマンのトレーナ/コーチによって使用することができる本発明の例示的な実施形態は図2に示されており、イヤピース100は追加の機能を有することができ、ハブまたは基地局160と通信することができる。基地局は可搬性である必要はないため、より大型のディスプレイおよび/またはより強力なスピーカ、ならびに、被検者が基地局からさらに遠くへ移動し、依然としてコンタクトをとったままにすることを可能にするためにより大きい受信半径を有する送受信機を含むことができる。基地局は、スマートウォッチまたは他の遠隔デバイスと合わせて使用することができ、そのため、被検者と安全管理者または他の支援する人の両方が、生理学的パラメータのデータを見ることが可能であり、事実、特定の需要に応じて、異なるタイプの情報さえ提供され得る。
【0179】
加速度計および他の上述したセンサからのデータを処理して、被検者の概日リズムを判定することもでき、この情報は、認知症ならびに睡眠障害および行動障害の検出および管理を含むいくつかの目的に使用することができる。いくつかの実施形態は、被検者の環境の周辺光を測定し、被検者の概日リズムをより良好に予測または判定するための周辺光センサをさらに含むことができる。
【0180】
プロセッサは、パルスセンサ、心弾動図(BCG)のための運動センサおよびECGセンサのうちの2つ以上の組み合わせからの測定値を受け入れ、脈遷移時間(PTT)の変化を計算し、脈遷移時間から脈波速度の測度および相対血圧の推定値を生成するように構成されている血圧推定モジュールをインスタンス化するための、メモリ内に記憶されている命令を実行することができる。代替的に、未処理のパルスセンサ、BCGおよび/またはECGのデータは、ウェアラブルデバイスから、それ自体が血圧推定モジュールを提供することができるスマートフォンまたはスマートウォッチのような別のデバイスに送信されてもよい。
【0181】
デバイスを使用して、排卵日、妊娠可能期間、不妊期間、月経の始まりおよび/または終わり、月経期間、月経周期の始まりおよび/または終わりの日、ならびに、月経周期の任意の他の日のような生理学的パラメータを判定することを含め、女性被検者の月経周期を予測または判定することもできる。基礎中核温を毎日、各日の同じ時刻に測定することによって、プロセッサは、基礎中核温上昇の最も大きい差から、排卵日を判定するように構成することができる。このデータ、および、被検者が月経の最初の日を入力することによって、すべての他のパラメータが判定され得、将来の月経の予測に使用され得、妊娠の補助として作用することができる。
【0182】
種々のフィットネス需要について最大フィットネス利益を達成することができるいくつかの心拍数ゾーンがあることが分かっているため、パルスオキシメトリセンサからのデータを、被検者のフィットネス訓練を補助するために使用することができる。
【0183】
デバイスはまた、運動選手が自身の「上限温度」および疲労、たとえば、運動選手が数時間にわたって自身のピークで活動している超持久事象に達するのを防止するために使用することもできる。極端な温度の指標は、運動選手が、疲労に達して運動を停止しまたはさらには倒れることなく、自身の労作を低減して運動を継続することを可能にする。これは、たとえ水分補給のために水が利用可能でない場合であっても当てはまる。それゆえ、デバイスを使用することによって、運動選手は競技会において貴重な時間を失わず、心臓疾患および生理学的損害の危険を低減することができる。
【0184】
加えて、中核温および心拍数測定値は、加速度計からのデータと組み合わせて、被検者の水分補給状態を判定するために使用することができる。一定の作業負荷における中核温および心拍数の増大は脱水状態を示すため、水分補給状態を予測することができ、被検者が脱水状態になり、または、熱中症を患うのを防止するために、腕時計および/または他の遠隔デバイスに警告を送信することができる。
【0185】
したがって、イヤピース100を使用してモニタリングされる様々なバイタルサインは、装着者の健康または運動の状態の指標を提供するために、いくつかの異なる方法で組み合わせることができる。
【0186】
さらなる実施形態において、特に兼用(マルチユースの)イヤピースを用いる医療において、イヤピースは使い捨てもしくは洗浄可能レンズカバーおよび/またはフィルタを組み込むことができ、それらは特にイヤピースにフィットするように設計され、それにより複数の被検者に対して使用されるときに、塵芥または体組織および耳垢の侵入およびイヤピース上の蓄積物および交差汚染を防止する。
【0187】
本発明のいくつかの実施形態において、イヤピースの外部、たとえば、スマートウォッチまたはスマートフォン内に位置するプロセッサによって実行されるものとして記載されている機能は、代わりに、ウェアラブルデバイスの一部分として、特にイヤピースの一部分として提供されるプロセッサによって実行されてもよいことが諒解されよう。プロセッサがウェアラブルデバイス内に設けられるとき、プロセッサによって実行可能な命令を記憶するためにも、メモリが設けられてもよいことも諒解されよう。
【0188】
たとえば、ウェアラブルデバイスは、パルスセンサ、心弾動図(BCG)のための運動センサおよびECGセンサのうちの2つ以上の組み合わせからの測定値を受け入れ、脈遷移時間(PTT)の変化を計算し、脈遷移時間から脈波速度の測度および相対血圧の推定値を生成するように構成されている血圧推定モジュールを備えることができる。ウェアラブルデバイス内のプロセッサは、血圧推定モジュールに必要なステップを実行するために使用することができる。
【0189】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通じて、「~を備える」(“comprise”)および「~を含む」(“contain”)という単語ならびにそれらの変化形は、「含むが限定されない」(“including but not limited to”)ことを意味し、他の部分、追加物、構成要素、数またはステップを除外するようには意図されない(また、除外しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通じて、文脈が別途要求しない限り、単数形は複数形を含む。特に、不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈が別途要求しない限り、複数および単数を企図しているものとして理解されるべきである。
図1
図2
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