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特許7026957循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)を使用して癌を有する被験体における全生存期間及び無増悪生存期間を予測する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)を使用して癌を有する被験体における全生存期間及び無増悪生存期間を予測する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20220221BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20220221BHJP
   G01N 33/574 20060101ALN20220221BHJP
【FI】
G01N33/48 M
C12Q1/06
G01N33/574 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019543943
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018000082
(87)【国際公開番号】W WO2018151865
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】62/479,664
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/459,961
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/618,728
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/503,041
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517411139
【氏名又は名称】クレアティブ マイクロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダムス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】タン チャ-メイ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0178630(US,A1)
【文献】国際公開第2016/033103(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0315295(US,A1)
【文献】特表2015-523559(JP,A)
【文献】国際公開第2010/005991(WO,A2)
【文献】Daniel L Adams,Circulating giant macrophages as a potential biomarker of solid tumors,Proc Natl Acad Sci U S A.,2014年03月04日,111(9),pp.3514-9,doi: 10.1073/pnas.1320198111
【文献】Daniel L Adams,Circulating Cancer-Associated Macrophage-Like Cells Differentiate Malignant Breast Cancer and Benign Breast Conditions,Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.,2016年07月,25(7),pp.1037-42,doi: 10.1158/1055-9965.EPI-15-1221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する被験体の全生存期間(OS及び無増悪生存期間(PFSを予測するための方法であって、前記方法が、癌を有する被験体に由来する血液試料中の循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)のサイズを決定することを含み、前記試料中の少なくとも1個のCAMLのサイズが約50μm以上である場合に、前記被験体のOS及びPFSは、どのCAMLのサイズも約50μmを超えない癌を有する被験体よりも短いことが示される、方法。
【請求項2】
癌を有する被験体のOS及びPFSを予測するための方法であって、前記方法が、癌を有する被験体に由来する血液試料の選択された体積中の循環CAMLの比を決定することを含み、該比が血液試料7.5mL当たり約6個以上のCAMLと等しい場合、前記被験体のOS及びPFSは、血液試料7.5mL当たり6個未満のCAMLと等しい比を持つ癌を有する被験体よりも短いことが示される、方法。
【請求項3】
癌を有する被験体のOS及びPFSを予測するための方法であって、前記方法が、癌を有する被験体に由来する血液試料中のCAMLにおけるCEP17ドットの数を決定することを含み、前記試料中の少なくとも1個のCAMLが約10以上のCEP17ドットを有する場合、前記被験体のOS及びPFSは、被験体に由来する血液試料中のどのCAMLも約10以上のCEP17ドットを有しない癌を有する被験体よりも短いことが示される、方法。
【請求項4】
前記OS及び/又はPFSが少なくとも12カ月の期間に及ぶ、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記OS及び/又はPFSが少なくとも24カ月の期間に及ぶ、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記血液試料のサイズが5mL~15mLである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記CAMLが、以下の特徴:
(a)サイズが約14μm~64μmの大型の異型倍数体核、又は単一細胞における複数の核、
(b)サイズが約20μm~300μmの細胞サイズ、並びに、
(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、楕円形、二本足、三本足以上、細い足、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状、
を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記CAMLが、以下の追加の特徴:
(d)CD14陽性表現型、
(e)CD45発現、
(f)EpCAM発現、
(g)ビメンチン発現、
(h)PD-L1発現、
(i)単球CD11Cマーカー発現、
(j)内皮CD146マーカー発現、
(k)内皮CD202bマーカー発現、及び、
(l)内皮CD31マーカー発現、
の1つ以上を有する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記血液試料の供給源が、末梢血である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記血液試料が、前肘静脈血、下大静脈血、大腿静脈血、門脈血又は頸静脈血である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が、固形腫瘍、ステージIの癌、ステージIIの癌、ステージIIIの癌、ステージIVの癌、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、食道癌、又はその他の固形腫瘍癌である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
CAMLが、サイズ排除法、免疫捕獲、赤血球溶解、白血球枯渇、FICOLL、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー、磁気浮上、及び様々なマイクロ流体チップ、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の手段を使用して、前記決定のため前記血液試料から単離される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
CAMLが、マイクロフィルタを使用することを含むサイズ排除法を用いて、前記血液試料から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロフィルタが約5ミクロン~約20ミクロンの範囲の孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記マイクロフィルタの細孔が、円形、レーストラック形、楕円形、正方形、及び長方形の細孔形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロフィルタが、精密な細孔形状及び均一な細孔分布を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
CAMLが、物理的なサイズに基づく選別、流体力学的なサイズに基づく選別、分類、捕捉、免疫捕獲、大きな細胞の濃縮、又はサイズに基づく小さな細胞の排除によってマイクロ流体チップを使用して単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
CAMLが、CellSieve(商標)低圧精密濾過アッセイを使用して前記決定のため前記血液試料から単離される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、固形腫瘍等の癌を有する被験体における全生存期間及び無増悪生存期間に関する予測を行うための血液及びその他の体液中のバイオマーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞が原発固形腫瘍から離脱すると、それらの腫瘍細胞は血液又はリンパの循環に入り込み、最終的には血流を出て、臓器又は組織のいずれかに入って転移を形成する。癌関連死の90%は転移のプロセスによって引き起こされる。最も一般的な転移部位は肺、肝臓、骨及び脳である。循環に見られる腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞(CTC)と称される。多くの研究発表及び臨床試験は、CTCが、(i)血流中のCTCの計数によって予後の生存及び癌再発の情報を提供すること、並びに(ii)タンパク質発現レベル、CTCにおける遺伝子突然変異及び転座の発生の検査を通じて治療情報を提供することにおいて臨床的有用性があることを示す。しかしながら、ステージIVの癌患者さえも、CTCは被験体における癌の発症及び/又は存在との一貫した関連性を示さない。CTCはステージIVの乳癌、前立腺癌及び結腸直腸癌で最も頻繁にみられるが、同じ癌の初期段階では稀である。また、CTCはその他の癌では稀である。
【0003】
循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML:circulating cancer associated macrophage-like cell)は、癌を有する被験体の血液に見られる別の癌関連細胞型である。CAMLは、試験した全ての固形腫瘍及び全てのステージの癌と関連がある。CAMLは倍数体であり、サイズが約25μm~約300μmと非常にサイズが大きい。これらの倍数体細胞は、CD45(-)又はCD45(+)のいずれかとなる可能性があり、CD11c、CD14及びCD31を発現することから、骨髄系起源であることが確認される。それらは、しばしばCTC及び細胞残屑を貪食する過程で見られる[1、7]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液及びその他の体液中のCAML等のバイオマーカーの識別及び特性評価と関連するアッセイを使用して予後の情報を提供することができる。本発明は、臨床医及びその他の重要な目標に対してかかる手段を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫及び黒色腫を含む固形腫瘍を有する被験体の血液に見られる特有の特徴を有する或る種の細胞を使用する方法に関する。「循環癌関連マクロファージ様細胞」(CAML)と称されるこれらの循環細胞は、癌を有する被験体において固形腫瘍の存在と関連していることが示されている。CAMLと関連する5つの形態が特性付けられ記載されている[1、2]。CAMLは、精密マイクロフィルタを使用する精密濾過によってステージI~ステージIVの固形腫瘍を有する被験体の末梢血において一貫して見られた。
【0006】
CAMLと関連する医学用途としては、限定されないが、癌の早期発見及び癌の診断を提供するバイオマーカーとしての、特に癌の再燃又は再発の早期の発見及び診断における、並びに癌突然変異の判定における、上記細胞の使用が挙げられる。また、CAMLは、疾患の進行及び患者の生存に関する予測を行う際にバイオマーカーとして臨床的有用性を有することが、本明細書に提示されるデータによって示される。
【0007】
CAMLは、癌マーカーとして独立して、又は循環腫瘍細胞(CTC)、上皮間葉転換細胞(EMT)、循環癌関連血管内皮細胞(CAVE)、無細胞DNA(cfDNA)、循環腫瘍DNA(ctDNA)、メチル化DNA、患者の疾患のより完全な理解を提供するプロテオミクス、メタボロミクス、リピドミクス及びその他のバイオマーカーと組み合わせて使用され得る。
【0008】
より具体的には、第1の実施の形態では、本発明は、癌を有する被験体の全生存期間(OS)及び無増悪生存期間(PFS)を予測する方法に関する。これらの方法は、癌を有する第1の被験体に由来する生体試料中の循環細胞のサイズを決定することと、癌を有する第2の被験体と結果を比較することとを含む。より大型の細胞を有する被験体のOS及びPFSは、より小型の細胞を有する被験体のOS及びPFSより短いと予測される。
【0009】
一態様において、上記方法は、癌を有する被験体に由来する生体試料中の循環細胞のサイズを決定することを含み、上記試料中の少なくとも1個の細胞のサイズが約50μm以上である場合に、上記被験体のOS及びPFSは、どの細胞のサイズも約50μmを超えない癌を有する被験体よりも短いと予測される。
【0010】
第2の実施の形態において、本発明は、癌を有する被験体のOS及びPFSを予測する方法に関する。この方法は、癌を有する被験体に由来する生体試料の選択された体積中の循環細胞の比を決定することを含み、該比が生体試料7.5mL当たり約6個以上の細胞と等しい場合、上記被験体のOS及びPFSは、生体試料7.5mL当たり6個未満の細胞と等しい比を持つ癌を有する被験体よりも短いと予測される。
【0011】
第3の実施の形態において、本発明は、癌を有する被験体のOS及びPFSを予測する方法に関する。上記方法が、癌を有する被験体に由来する生体試料中の循環細胞におけるCEP17ドットの数を決定することを含み、上記試料中の少なくとも1個の細胞が約10以上のCEP17ドットを有する場合、上記被験体のOS及びPFSは、被験体に由来する生体試料中のどの細胞も約10以上のCEP17ドットを有しない癌を有する被験体よりも短いと予測される。
【0012】
本発明の実施の形態の或る特定の態様において、OS若しくはPFS、又はその両方は少なくとも12カ月の期間に及ぶ。本発明の実施の形態の他の態様において、OS若しくはPFS、又はその両方は少なくとも24カ月の期間に及ぶ。
【0013】
本発明の実施の形態の或る特定の態様において、上記生体試料のサイズは5mL~15mLである。
【0014】
本発明の各実施の形態及び態様において、上記循環細胞は、以下の各特徴:
(a)サイズが約14μm~64μmの大型の異型倍数体核、又は単一細胞における複数の核、
(b)サイズが約20μm~300μmの細胞サイズ、並びに、
(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、楕円形(oblong)、二本足、三本足以上(more than two legs)、細い足(thin legs)、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状、
のそれぞれを有するものとして定義され得る。
【0015】
本発明の実施の形態の或る特定の態様において、上記循環細胞は、以下の追加の特徴:(d)CD14陽性表現型、
(e)CD45発現、
(f)EpCAM発現、
(g)ビメンチン発現、
(h)PD-L1発現、
(i)単球CD11Cマーカー発現、
(j)内皮CD146マーカー発現、
(k)内皮CD202bマーカー発現、及び、
(l)内皮CD31マーカー発現、
の1つ以上を有するものとして更に定義され得る。
【0016】
本発明の各態様及び実施の形態では、循環細胞は「癌関連マクロファージ様細胞」、又はCAMLと称される場合がある。
【0017】
本発明の実施の形態の或る特定の態様において、上記生体試料の供給源は、限定されるものではないが、末梢血、血液、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、組織、及び尿の1つ以上であり得る。生体試料が血液である場合、例えば、血液は、前肘静脈血、下大静脈血、大腿静脈血、門脈血又は頸静脈血であってもよい。上記試料は、新鮮試料であってもよく、又は解凍される適切に調製された凍結保存試料であってもよい。
【0018】
本発明の実施の形態の或る特定の態様において、上記癌は、固形腫瘍、ステージIの癌、ステージIIの癌、ステージIIIの癌、ステージIVの癌、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、食道癌、又はその他の固形腫瘍癌である。
【0019】
本発明の実施の形態の或る特定の態様において、循環細胞は、サイズ排除法、免疫捕獲、赤血球溶解、白血球枯渇、FICOLL、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー、磁気浮上、及び様々なマイクロ流体チップ、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の手段を使用して、上記決定工程のため上記生体試料から単離される。
【0020】
本発明の一態様において、循環細胞は、マイクロフィルタを使用することを含むサイズ排除法を用いて、上記生体試料から単離される。上記マイクロフィルタは、約5ミクロン~約20ミクロンの範囲の孔径を有してもよい。上記マイクロフィルタの細孔は、円形、レーストラック形、楕円形、正方形、及び/又は長方形の細孔形状を有してもよい。上記マイクロフィルタは、精密な細孔形状及び/又は均一な細孔分布を有してもよい。
【0021】
本発明の別の態様において、循環細胞は、物理的なサイズに基づく選別、流体力学的なサイズに基づく選別、分類、捕捉、免疫捕獲、大きな細胞の濃縮、又はサイズに基づく小さな細胞の排除によってマイクロ流体チップを使用して上記生体試料から単離される。
【0022】
本発明の更なる態様において、循環細胞は、CellSieve(商標)低圧精密濾過アッセイを使用して上記生体試料から単離される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】CAMLを識別し、そのサブタイプを特定するために使用される細胞分化マーカーの強度を示す図である。
図2】6つの異なる癌及び異なるステージの癌においてCTC対CAMLの存在を比較する図である。
図3A】異なるステージの癌におけるサイズによるCAMLの平均数を示す図である。
図3B】異なるステージの癌におけるサイズによるCAMLの平均数を示す図である。
図4】CAMLのサイズと細胞1個当たりのCEP17のドット数との関係を示す図である。
図5】n=157患者の探索セット及びn=158患者の検証セットについて24カ月間の全生存(OS)の確率のプロットを示す図である。データをCAMLのサイズ50μm以上及び50m未満について分析する。探索セット(n=157);ハザード比:3.4(95%CI=2.1~5.6、p<0.001)。検証セット(n=158);ハザード比:4.2(95%CI=2.3~7.7、p<0.001)。
図6】n=157患者の探索セット及びn=158患者の検証セットについて24カ月の無増悪生存(PFS)の確率のプロットを示す図である。データをCAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析する。探索セット(n=157);ハザード比:3.2(95%CI=2.1~5.0、p<0.001)。検証セット(n=158);ハザード比:3.8(95%CI=2.7~6.8、p<0.001)。
図7】CAMLの数6個以上及び6個未満についてn=293患者試料に対して分析した24カ月間のOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図8】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満についてn=293患者試料に対して分析した24カ月間のOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図9】CAMLサイズ50μm未満、50μm~110μm及び110μm超について、ステージIとステージII(左パネル)、及びステージIIIとステージIV(右パネル)に分けたn=293患者試料に対して分析した24カ月間のPFSを示す図である。
図10A】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間のステージIの患者(n=62)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図10B】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間のステージIIの患者(n=72)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図10C】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間のステージIIIの患者(n=69)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図10D】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間のステージIVの患者(n=106)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図11A】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間の乳癌患者(n=59)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図11B】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間の食道癌患者(n=27)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図11C】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間の非小細胞肺癌(NSCLC)患者(n=59)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図11D】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間の膵臓癌患者(n=59)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図11E】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間の前立腺癌患者(n=74)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
図11F】CAMLのサイズ50μm以上及び50μm未満について分析した24カ月間の腎細胞癌(RCC)患者(n=37)に対するOS(左パネル)及びPFS(右パネル)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な構成及び要素等の明細書に定義される事項は、本発明についての包括的な理解を支援するために提供されるものに他ならない。したがって、当業者は、本明細書に記載される実施形態の様々な変更及び修正が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく行われ得ることを認識する。
【0025】
癌は世界で最も恐れられている疾患のうちの1つであり、あらゆる国のあらゆる集団及びあらゆる民族に罹患する。男性と女性の両方のおよそ40%が、一生のうちに癌を発症する。アメリカ合衆国だけでも、常時、1200万人を超える癌患者がおり、2018年には新たな癌の症例が170万に上り、死亡数が60万人を超えると推定された。世界中の癌による死亡は、年間約800万人に上ると推定され、そのうち300万人は、患者が治療を受けられる先進国で死亡している。
【0026】
選択された治療法の効果があるかどうかを迅速に判断することができ、生存に関する予後を提供することができる診断が存在することが理想的である。
【0027】
この開示では、その他のどの癌関連細胞よりも、ステージI~ステージIVの固形腫瘍患者の血液に一貫して見られる細胞型が提示される。これらの循環細胞は、原発腫瘍と同じ腫瘍マーカーを含むマクロファージ様細胞であり、それらの細胞を本明細書では循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)と称する。
【0028】
循環腫瘍細胞(CTC)に加えて、癌を有する患者に由来する生体試料中に存在するCAMLは、例えば、精密濾過法を含むサイズ排除法の使用を通じて単離され、特性評価され得る。マイクロフィルタは、赤血球及び大半の白血球が通過するように十分大きいが、CTC及びCAML等のより大きな細胞を保持する細孔で形成され得る。次いで、直接フィルタ上で又はその他の手段のいずれかによって収集した細胞を特性評価することができる。
【0029】
単独で使用される場合、CAMLには多くの臨床的有用性がある。さらに、生体試料中でのCAMLの特性評価は、診断技術の感度及び特異度を更に改善させるため、血液中のCTC、無細胞DNA及び遊離タンパク質等のその他マーカーのアッセイと組み合わされてもよい。これは、CAML及びCTCが同じ手段を用いて同時に単離され、識別され得ることから特に当てはまる。
【0030】
循環腫瘍細胞
本明細書で定義されるように、癌腫と関連するCTCは、多くのサイトケラチン(CK)を発現する。CK8、CK18及びCK19は、最も一般に発現され、診断に使用されるサイトケラチンであるが、測量をこれらのマーカーだけに限定する必要はない。固形腫瘍CTCの表面は、通常、上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現する。しかしながら、この発現は均一すなわち一貫したものではない。CD45は白血球マーカーであるため、CTCはCD45を全く発現しない。CTC及びCAML等の腫瘍関連細胞を識別するアッセイでは、CK8、CK18及びCK19等の固形腫瘍と関連するマーカーに対する抗体、又はCD45若しくはDAPIに対する抗体を使用することで十分である。染色技術と形態学とを組み合わせることにより、病理学的に定義可能なCTC(PDCTC)、アポトーシスCTC及びCAMLが識別され得る[3]。
【0031】
固形腫瘍と関連するPDCTCはCK8、CK18及びCK19を発現し、以下の特徴によって識別され、定義され得る:
DAPIによって染色される「癌様」核。核は、通常ドットパターンを有し大きいが、細胞が分裂状態にある場合には例外として、核が圧縮されることもある。
CK8、CK18及びCK19の1つ以上の発現;上皮癌に由来するCTCは、通常少なくともCK8、CK18及びCK19を発現する。サイトケラチンは線維状パターンを有する。
CD45発現の欠如。
【0032】
アポトーシスCTCはCK8、CK18及びCK19を発現する癌と関連し、以下特徴によって識別され定義され得る:
核の分解
CK8、CK18及びCK19の1つ以上の発現;全てのサイトケラチンが線維状のパターンであるのではなく、部分又は全体が断片化されたスポットの形状のように見える。 CD45発現の欠如。
【0033】
循環癌関連マクロファージ様細胞(CAML)
本明細書で定義されるように、本発明の方法で使用される循環細胞は「CAML」と称される場合がある。「循環細胞」に対するそれぞれの言及はCAMLと同じ意味であり、「CAML」に対するそれぞれの言及は循環細胞と同じ意味である。CAMLと称されるか「循環細胞」と称されるかにかかわらず、これらの細胞は、以下の特徴の1つ以上を有することを特徴とする:
CAMLは、拡大した融合核小体が一般的であるものの、大型の異型倍数体核又は細胞内にしばしば点在する複数の個別の核を有する。CAML核は、一般的には直径約10μm~約70μmのサイズ、より一般的には直径約14μm~約64μmのサイズの範囲である。
多くの癌に対して、CAMLは、その疾患の癌マーカーを発現する。例えば、上皮癌と関連するCAMLはCK8、CK18又はCK19、ビメンチン等を発現し得る。マーカーは、典型的には拡散されているか、又は液胞及び/又は摂取された物質と結び付いている。任意のマーカーに対する染色パターンは、細胞全体の至る所でほぼ均一に広がる。肉腫、神経芽細胞腫及び黒色腫については、CK8、CK18、CK19に代えて、癌と関連するその他マーカーを使用することができる。
CAMLはCD45陽性又はCD45陰性の場合があり、本発明は両方の種類のCAMLの使用を包含する。
CAMLは、大きく、最長寸法でおよそ20ミクロン~およそ300ミクロンのサイズである。
CAMLは、紡錘形、オタマジャクシ形、円形、楕円形、二本足、三本以上の足、細い足、及び無定形の形状を含む、多くの明らかに異なる形態学的形状で見られる。
癌腫に由来するCAMLは、典型的には拡散したサイトケラチンを有する。
CAMLがEpCAMを発現する場合、EpCAMは典型的には細胞の至る所に拡散されているか、又は液胞及び/又は摂取された物質と結び付いており、細胞全体を通してほぼ均一であるが、いくつかの腫瘍はEpCAMの発現が非常に低いか又はそれを発現しないことから、全てのCAMLがEpCAMを発現するわけではない。
CAMLがマーカーを発現する場合、マーカーは典型的には細胞の至る所に拡散されるか、又は液胞及び/又は摂取された物質と一体化されており、細胞全体を通してほぼ均一であるが、全てのCAMLが等しい強度で同じマーカーを発現するわけではない。
CAMLは、しばしば、腫瘍起源のマーカーと関連するマーカーを発現する。例えば、腫瘍が前立腺癌起源であり、PSMAを発現する場合には、かかる患者に由来するCAMLもまたPSMAを発現する。別の例として、原発腫瘍が膵臓起源であり、PDX-1を発現する場合には、かかる患者に由来するCAMLもまたPDX-1を発現する。更なる例として、原発腫瘍又は癌起源のCTCがCXCR-4を発現する場合、かかる患者に由来するCAMLもCXCR-4を発現する。
原発腫瘍又は癌を起源とするCTCが薬物標的のバイオマーカーを発現する場合、かかる患者に由来するCAMLもまた薬物標的のバイオマーカーを発現する。免疫療法のかかるバイオマーカーの一例は、PD-L1である。
CAMLは、単球マーカー(例えばCD11c、CD14)及び内皮細胞マーカー(例えばCD146、CD202b、CD31)を発現する。
CAMLは、Fcフラグメントを結合する能力を有する。
【0034】
広範囲なマーカーセットを、CAMLに対するそれらの発現について評価し、結果を図1に示す。本発明の一態様では、本発明のCAMLは、図1に示されるマーカーの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、又は21個全てを発現する。マーカーを、異なる癌を有する93名の異なる患者に由来する1118個のCAMLに対してスクリーニングした。CAMLを最初に単離し、DAPI、サイトケラチン及びCD45により識別し、次いで、連続して骨髄/マクロファージ、白血球、巨核球、上皮細胞、内皮細胞、前駆細胞/幹細胞、及び運動性のマーカーを含む合計27個のマーカーで再染色した。図1からわかるように、マーカー発現は0%~96%に及ぶ。ほとんど全てのCAMLが、CD31のレベルを発現することがわかり、通常サイトケラチン、CD14、CXCR4、ビメンチン及びその他マーカーを共発現した。しかしながら、CAMLは明らかな骨髄系マーカー(CD14)を含んだが、CD31マーカーは96%とより頻繁に発現された。
【0035】
また、CAMLは、古典的な細胞分化の理解と一致するようには見えない多数の表現型(すなわち、CD45[白血球]及びサイトケラチン[上皮]、CD11c[マクロファージ]及びCD41[巨核球]、CD146[内皮]及びCD41/CD61[巨核球]、CD41/CD61[巨核球]及びCD68/CD163[スカベンジャーマクロファージ]の共発現)を示す。マーカーの多くが、複数の細胞型に現われる。合わせると、これらのデータは、CAMLが、幹細胞及び血管新生促進能力と関連する多くの表現型の属性を持つ、分化プロセスの早期の骨髄由来細胞であることを示す。
【0036】
CAMLは、図1に示されるように、H&E等の比色分析染色、又は特異的マーカーの蛍光染色によって可視化され得る。細胞質について、CD31は最も陽性の表現型である。CD31単独で、又は図1中のその他陽性マーカー若しくは腫瘍と関連する癌マーカーとの組み合わせが推奨される。
【0037】
本発明の様々な実施形態及び態様において、上記循環細胞及びCAMLは、以下の特徴:(a)サイズが約14μm~64μmの大型の異型倍数体核、又は単一細胞における複数の核、(b)サイズが約20ミクロン~300ミクロンの細胞サイズ、並びに(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、楕円形、二本足、三本足以上、細い足、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状を有する細胞として定義され得る。更なる実施形態において、上記CAMLは、以下の追加の特徴:(d)CD14陽性表現型、(e)CD45発現、(f)EpCAM発現、(g)ビメンチン発現、(h)PD-L1発現、(i)単球CD11Cマーカー発現、(j)内皮CD146マーカー発現、(k)内皮CD202bマーカー発現、及び(l)内皮CD31マーカー発現の1つ以上を有するものとしても定義され得る。
【0038】
上で示唆されるように、本明細書に記載されるCAML及びCTCに特有の特徴は、それらを、癌等の疾患のスクリーニング及び診断、治療のモニタリング、疾患の進行及び再発のモニタリングの方法を含む臨床法における使用に適したものとする。
【0039】
細胞のサイズを使用するOS及びPFの予測
上の概要で示唆されるように、本発明は、循環細胞サイズに基づいて、癌を有する被験体の全生存期間(OS)及び無増悪生存期間(PFS)を予測する方法に関する。これらの方法は、癌を有する第1の被験体に由来する生体試料中の循環細胞のサイズを決定することと、癌を有する第2の被験体と結果を比較することとを含む。より大型の細胞を有する被験体のOS及びPFSは、より小型の細胞を有する被験体のOS及びPFSより短いと予測される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、上記方法は、癌を有する被験体に由来する生体試料中の循環細胞のサイズを決定することを含み、上記試料中の少なくとも1個の細胞のサイズが約50μm以上である場合に、上記被験体のOS及びPFSは、どの細胞のサイズも約50μmを超えない癌を有する被験体よりも短いと予測される。
【0041】
50μmという値を、この方法に対するカットオフ値と見なすことができる。この方法の関連する態様では、カットオフ値は、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μm、50μm、51μm、52μm、53μm、54μm、55μm、56μm、57μm、58μm、59μm、又は60μm以上のいずれか1つであってもよい。
【0042】
本発明の一態様において、本発明の方法は、癌を有する被験体に由来する生体試料中の循環細胞のサイズを決定することを含み、上記試料中の少なくとも1個の細胞のサイズが約50μm以上である場合に、上記被験体のOS及びPFSは、どの細胞のサイズも約50μmを超えない癌を有する被験体よりも短いと予測される。
【0043】
この方法に関して、特定の循環細胞のサイズが、細胞の状態及び形態、サイズを決定する状況、並びにサイズを決定する方法に依存して変化し得ることを認識するのは重要である。循環細胞が取る形態の種類としては、紡錘形、オタマジャクシ形、円形、楕円形、二本足等(本明細書で更に定義される)が挙げられることから、サイズもまた測定のため選択された細胞上の2点に依存して変化し得る。しかしながら、細胞のサイズは、一般的には、細胞体上の最も離れた2点間で測定されることになる。したがって、形状が球形である場合、細胞の直径が測定される。形状が紡錘形である場合、細胞の軸長に沿った2つの末端間の距離を測定することができる。
【0044】
この実施形態の各態様では、循環細胞はCAMLとも称される場合がある。
【0045】
細胞数を使用するOS及びPFSの予測
また、本発明は、循環細胞数に基づいて癌を有する被験体のOS及びPFSを予測する方法に関する。これらの方法は、癌を有する被験体に由来する生体試料の選択された体積中の循環細胞の比を決定することを含み、該比が生体試料7.5mL当たり約4個以上の細胞と等しい場合、上記被験体のOS及びPFSは、生体試料7.5mL当たり4個未満の細胞と等しい比を持つ癌を有する被験体よりも短いと予測される。
【0046】
循環細胞4個という値を、この方法に対するカットオフ値と見なすことができる。この方法の関連する態様では、カットオフ値は、生体試料7.5mL当たり、細胞4個、4.5個、5個、5.5個、6個、6.5個、7個、7.5個、8個、8.5個、9個、9.5個又は10個以上のいずれか1つであってもよい。
【0047】
更なる例として、本発明の方法は、癌を有する被験体に由来する生体試料の選択された体積中の循環細胞の比を決定することを含み、該比が生体試料7.5mL当たり約6個以上の細胞と等しい場合、上記被験体のOS及びPFSは、生体試料7.5mL当たり6個未満の細胞と等しい比を持つ癌を有する被験体よりも短いと予測される。
【0048】
この実施形態の各態様では、循環細胞はCAMLとも称される場合がある。
【0049】
CEP17ドット数を使用するOS及びPFSの予測
本発明は、さらに、循環細胞において検出されるCEP17ドットの数に基づいて、癌を有する被験体のOS及びPFSを予測する方法に関する。これらの方法は、癌を有する被験体に由来する生体試料中の循環細胞におけるCEP17ドットの数を決定することを含み、上記試料中の少なくとも1個の細胞が約8以上のCEP17ドットを有する場合、上記被験体のOS及びPFSは、被験体に由来する生体試料中のどの細胞も約8以上のCEP17ドットを有しない癌を有する被験体よりも短いと予測される。
【0050】
あらゆる混同を回避するため、「被験体に由来する生体試料中のどの細胞も約8又はCEP17ドットを有しない」の句は、生体試料中の各細胞が7以下のCEP17ドットを有することを意味すると理解されるべきである。
【0051】
CEP17ドット「8以上」という値を、この方法に対するカットオフ値と見なすことができる。この方法の関連する態様では、カットオフ値は、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、又は15以上のいずれか1つのCEP17ドットであってもよく、又はそれより多くてもよい。
【0052】
本発明の一態様において、本発明の方法は、癌を有する被験体に由来する生体試料中の循環細胞におけるCEP17ドットの数を決定することを含み、上記試料中の少なくとも1個の細胞が約10以上のCEP17ドットを有する場合、上記被験体のOS及びPFSは、被験体に由来する生体試料中のどの細胞も約10以上のCEP17ドットを有しない癌を有する被験体よりも短いと予測される。あらゆる混同を回避するため、「被験体に由来する生体試料中のどの細胞も約10又はCEP17ドットを有しない」の句は、生体試料中の各細胞が9以下のCEP17ドットを有することを意味すると理解されるべきである。
【0053】
この実施形態の各態様では、循環細胞はCAMLとも称される場合がある。
【0054】
本発明の各方法では、全生存期間(OS)若しくは無増悪生存期間(PFS)、又はそれらの両方は、少なくとも約1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、24カ月、25カ月、26カ月、27カ月、28カ月、29カ月、又は30カ月以上の期間に及ぶ。本発明の一態様では、OS若しくはPFS、又はそれらの両方が少なくとも約24カ月の期間に及ぶ。
【0055】
本明細書で使用される全生存期間(OS)は、癌を有する被験体が、診断の日、治療を開始した日、又は癌の進行を評価するため採血した日等の選択された日から生存した時間の長さを意味する。
【0056】
本明細書で使用される無増悪生存期間(PFS)は、癌を有する被験体が、治療を開始した日、又は癌の進行を評価するため採血した日等の選択された日から生存した時間の長さであって、癌が悪化又は進行していない期間の長さを意味する。
【0057】
本発明の各方法では、循環細胞(CAML)を分析する生体試料の量が変化し得ることは明らかであろう。しかしながら、上記方法が細胞のサイズの決定に基づく場合、適切な数の細胞を得るため、生体試料は少なくとも約2.5mLとされるべきである。また、生体試料の量は、少なくとも約3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、7.5mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、12.5mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、17.5mL、18mL、19mL、20mL、21mL、22mL、22.5mL、23mL、24mL、25mL、26mL、27mL、27.5mL、28mL、29mL、又は30mL以上であってもよい。また、生体試料の量は、約2.5mL~20mL、約5mL~15mL、又は約5mL~10mLであってもよい。本発明の一態様では、生体試料は約7.5mLである。
【0058】
生体試料中の循環細胞(CAML)数に基づいて癌を有する被験体のOS及びPFSを予測する方法に関して、癌を有する被験体に由来する生体試料の選択された体積における循環細胞(CAML)の比を決定する。様々な量の生体試料を使用することができるが、試料の大きさに対する試料中の細胞数の比が決定され、被験体間で比較されることが理解される。例えば、試料15mL中に8個の細胞の比は、試料7.5mL中に4個の細胞、及び試料3.75mL中に2個の細胞と等しい。
【0059】
本発明の各実施形態及び態様において、上記循環細胞(CAML)は、以下の特徴:
(a)サイズが約14μm~64μmの大型の異型倍数体核、又は同一細胞における複数の核、
(b)サイズが約20μm~300μmの細胞サイズ、並びに、
(c)紡錘形、オタマジャクシ形、円形、楕円形、二本足、三本足以上、細い足、及び無定形からなる群から選択される形態学的形状、
のそれぞれを有するものとして定義され得る。
【0060】
本発明の実施形態の或る特定の態様において、上記循環細胞(CAML)は、以下の追加の特徴:(d)CD14陽性表現型、
(e)CD45発現、
(f)EpCAM発現、
(g)ビメンチン発現、
(h)PD-L1発現、
(i)単球CD11Cマーカー発現、
(j)内皮CD146マーカー発現、
(k)内皮CD202bマーカー発現、及び、
(l)内皮CD31マーカー発現、
の1つ以上を有するものとして更に定義され得る。
【0061】
本発明の各実施形態及び態様において、上記生体試料の供給源は、限定されるものではないが、末梢血、血液、リンパ節、骨髄、脳脊髄液、組織、及び尿の1つ以上であり得る。生体試料が血液である場合、例えば、血液は、前肘静脈血、下大静脈血、大腿静脈血、門脈血又は頸静脈血であってもよい。上記試料は、新鮮試料であってもよく、又は解凍される凍結保存試料であってもよい。
【0062】
癌を有する2名の被験体間の循環細胞(CAML)のサイズを比較する場合、被験体が同じ種類の癌を有していることが好ましい。しかしながら、因子のなかでもとりわけ、癌の種類、癌のステージ、癌の進行の速度、治療歴、並びに癌の寛解及び/又は再発の病歴に関して2名の被験体を完全に一致させることは困難な場合がある。したがって、この方法で比較されている2名の被験体の癌の特徴に幾つかの違いが存在してもよいことが理解されるべきである。
【0063】
本発明の各実施形態及び態様において、上記癌は、固形腫瘍、ステージIの癌、ステージIIの癌、ステージIIIの癌、ステージIVの癌、癌腫、肉腫、神経芽細胞腫、黒色腫、上皮細胞癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肝臓癌、頭頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、食道癌、又はその他の固形腫瘍癌である。当業者は、本発明の方法が特定の形態又は種類の癌に限定されず、多種多様な癌と関連して実施され得ることを十分に理解する。
【0064】
本発明の各実施形態及び態様において、循環細胞(CAML)は、サイズ排除法、免疫捕獲、赤血球溶解、白血球枯渇、FICOLL、電気泳動、誘電泳動、フローサイトメトリー、磁気浮上、及び様々なマイクロ流体チップ、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の手段を使用して、上記決定工程のため上記生体試料から単離される。特定の態様では、サイズ排除法は、マイクロフィルタの使用を含む。
【0065】
本発明の一態様において、循環細胞(CAML)は、マイクロフィルタを使用することを含むサイズ排除法を用いて、上記生体試料から単離される。好適なマイクロフィルタは、様々な孔径及び形状を有し得る。マイクロフィルタは、約5ミクロン~約20ミクロンの範囲の孔径を有してもよい。本発明の或る特定の態様では、孔径が約5ミクロン~10ミクロンであり、その他の態様では、孔径が約7ミクロン~8ミクロンである。より大きな孔径は、フィルタ上のほとんどのWBCの汚染を排除する。上記マイクロフィルタの細孔は、円形、レーストラック形、楕円形、正方形、及び長方形の細孔形状を有し得る。上記マイクロフィルタは、精密な細孔形状及び/又は均一な細孔分布を有し得る。
【0066】
本発明の別の態様では、循環細胞(CAML)は、物理的なサイズに基づく選別、流体力学的なサイズに基づく選別、分類、捕捉、免疫捕獲、大きな細胞の濃縮、又はサイズに基づく小さな細胞の排除によってマイクロ流体チップを使用して上記生体試料から単離される。循環細胞(CAML)捕捉効率は、回収方法に依存して変化し得る。異なるプラットフォーム上で捕捉され得る循環細胞(CAML)サイズもまた、変化し得る。予後及び生存を決定するために循環細胞サイズを使用することの原理は同じであるが、統計値は変化する。CellSieve(商標)マイクロフィルタを使用する循環細胞の収集は、100%の捕捉効率及び高品質の細胞を提供する。
【0067】
本発明の別の態様では、血液収集チューブが存在する。CellSave血液収集チューブ(カリフォルニア州サンディエゴのMenarini Silicon Biosystems Inc.)は、安定した細胞の形態及びサイズを提供する。その他の利用可能な血液収集チューブは、細胞安定性を提供しない。ほとんどのその他の血液収集チューブでは、細胞は拡大する場合があり、バースト収集(burst collect)することさえある。
【0068】
本発明の別の態様では、細胞をCAML細胞自体であると特異的に識別することなく、代わりに、単に細胞質及び核のサイズに基づいて細胞を識別して、試料中の大きな細胞を識別する。例は、H&E染色等の比色分析染色を使用する技術、又は単にCK(+)細胞を見ることである。
【0069】
本発明の更なる態様において、循環細胞(CAML)は、CellSieve(商標)低圧精密濾過アッセイを使用して上記生体試料から単離される。
【実施例
【0070】
試料の収集及び処理
本明細書で提供され、以下に概説される各実施例では、末梢血をCellSaveチューブ(カリフォルニア州サンディエゴのMenarini Silicon Biosystems Inc.)に収集し、96時間以内に処理した。CellSieve(商標)精密濾過技術を使用して、血液試料中の全ての癌関連細胞(CTC、EMT、CEC及びCAML)を収集した。CellSieve(商標)マイクロフィルタは、9mmの区域内に、160000個超の、均一な配列の、孔径7μmの細孔を有する。試薬は、前固定バッファー、後固定バッファー、透過処理バッファー及び抗体カクテルを含む。濾過を行う技術は、5mL/分で引くように設定されたシリンジポンプ[6]又は真空ポンプ[4]のいずれかを使用した。フィルタを通って引く前に、前固定バッファー7.5mL中で血液7.5mLを前固定することによって濾過プロセスを開始させた。次いで、フィルタ及び捕捉された細胞を、洗浄、後固定、洗浄、透過処理及び洗浄に供した。次いで、フィルタ上に捕捉された細胞を、FITC抗サイトケラチン8、18、19と、フィコエリトリン(PE)複合化EpCAMと、Cy5-抗CD45(5)とからなる抗体カクテルで染色した後、洗浄した。フィルタをスライドガラス上に置き、Fluoromount-G/DAPI(Southern Biotech)で封入した(cover-slipped:カバーガラスにて封入した)。特定の蛍光キューブ及び白黒カメラを使用して細胞を撮像するため、Carl Zeiss AxioCamを備えるオリンパス株式会社のBX54WI蛍光顕微鏡を使用した。細胞間の均等なシグナル比較のため、曝露を3秒(Cy5)、2秒(PE)、100ミリ秒~750ミリ秒(FITC)及び10ミリ秒~50ミリ秒(DAPI)としてプリセットした。Zen2011 Blue(Carl Zeiss)を使用して画像を処理した。
【0071】
幾つかの癌はCK及びEpCAMの高い発現を必ずしも示すとは限らないことから、フィルタ上の細胞をCD31及び/又はCD14で再染色し、CAML数を改善した。再染色技術は公開されている通りである[5]。その後、細胞を再び撮像した。CD31は、肺癌に対するCAML数を増加させた。
【0072】
癌患者の血液中のCTC及びCAMLの頻度
PDCTCは、癌の初期段階ではめったに見られない。PDCTCがステージIII及びステージIVの乳癌及び前立腺癌の患者でより頻繁に見られるが、その他の大半の固形腫瘍で見られる頻度は低い。CAMLはより一般的に見られる。
【0073】
例として、末梢全血7.5mLは、293名の癌患者(乳癌(n=59)、前立腺癌(n=52)、膵臓癌(n=59)、肺癌(n=59)、食道癌(n=27)、及び腎細胞癌(n=37))及び30名の健康な対照から得られた。試料を、CellSieve(商標)精密濾過アッセイを使用して分析した。
【0074】
図2からわかるように、CAMLはPDCTCよりも一般的であることがわかった。CAMLは、ステージI(n=60)(84%)、ステージII(n=62)(94%)、ステージIII(n=65)(95%)の転移前の患者、及び転移性ステージIV(n=97)(97%)の患者、及び9名の未分類(判定していない)を含む患者試料の93%で見られたが、全ての健康な対照では存在しなかった。したがって、CAMLは固形腫瘍の初期段階において高確率で見られるが、CTCはそうではなかった。
【0075】
ステージに応じたCAMLの数及びサイズの変化
図3A及び図3Bは、図2からの試料に対するステージに基づいてCAMLの数及びサイズを分析した。ステージが増加するにつれて、CAMLの平均数は増加する。端から端まで25μm~50μmのサイズを有するCAMLの平均数は、全てのステージでほぼ同じである。しかしながら、サイズが50μm~100μm及びサイズが100μm超のCAMLの平均数は、図3Bに示されるように、ステージと共に増加する。
【0076】
CAMLサイズと核区域のCEP17ドットの数との相関
CAMLサイズの増加を、腫瘍細胞及び腫瘍物質のCAML貪食の結果であると仮定した。実際に、実験により、貪食された核の数の指標である染色体計数プローブ17(CEP17)のドット数が、細胞のサイズと十分相関することが実証された。図4は、サイズが25μm~50μmのCAMLよりも、サイズが50μm超のCAMLはより多くのCEP17のドットを有することを示す。また、データは、50μmのCAMLサイズが、図3Bに提示される疾患進行に関する結果と一致する、境界線であることを示唆する。
【0077】
疾患の侵攻性を決定するサイズ基準の開発
図3及び図4は、侵攻性疾患を区別するため50μmが使用され得ることを示唆する。末梢全血7.5mLを、CellSieve(商標)精密濾過アッセイを使用して分析した。様々な癌及びステージに由来する、24カ月に亘って追跡した157名の患者の探索セットを、OS(図5中、点線の曲線)及び無増悪生存期間(図6中、点線の曲線)について分析した。OSに対するハザード比は3.4であり、p<0.001で95%CI=2.1~5.6である。PFSに対するハザード比は3.2であり、p<0.001で95%CI=2.1~5.0である。これは、50μm以上のCAMLサイズを有する患者は、より短いPFS及びOSを有することを示す。
【0078】
類似する様々な癌及びステージに由来する158名の患者の検証セットを、OS(図5中、実線の曲線)及びPFS(図6中、実線の曲線)について分析した。OSに対するハザード比は4.2であり、p<0.001で95%CI=2.3~7.7である。PFSに対するハザード比は3.8であり、p<0.001で95%CI=2.7~6.8である。検証結果は探索結果と十分一致する。
【0079】
CAMLサイズの多変量解析及び予後の情報
図5及び図6に示されるデータに基づいて、OS及びPFSに対する多変量解析を、上に記載されるn=293患者試料に対して行った。患者を24カ月に亘って追跡した。下記表に示されるように、多変量解析を行った。50μmのCAMLサイズは、OS及びPFSを決定する最も重要なパラメーターであることを示す。p値が小さいほど、統計が正確である確率が高い。
【表1】
【0080】
CAMLの数に基づくOS及びPFSの分析を図7に示す。このデータは、末梢血試料7.5mL中のCAMLの数が6個以上のCAMLである場合、OSとPFSはいずれも、同じサイズの試料中に6個未満のCAMLを有する患者と比較して減少することを示す。
【0081】
OS及びPFSと関連する更なるデータを図8に提示する。図8に提示されるデータは、CAMLサイズ:50μm以上対50μm未満に基づく。p値によって示されるように、50μm以上のCAMLサイズは、予後不良の予測に非常に重要である。
【0082】
図9は、50μm未満、50μm~100μm、及び100μm超の3つの異なるCAMLサイズにプロットを分離した。CAMLサイズが大きくなるほど、予後がより悪くなることが明らかである。また、たとえステージI及びステージII(左図)に対する予後の決定であっても、CAMLサイズが重要であることに注目することが大切である。
【0083】
全てのステージ及び様々な癌において生存及び進行のコンセプトを予測するCAMLサイズの有用性の実証を可能とするため、n=315のより大きな試料サイズを使用した。315名の癌患者は、(乳癌(n=59)、前立腺癌(n=74)、膵臓癌(n=59)、肺癌(n=59)、食道癌(n=27)、及び腎細胞癌(n=37))に由来する。それらの患者は、ステージI(62)、ステージII(72)、ステージIII(n=69)、ステージIV(106)及び6名の未分類であった。
【0084】
図10A図10Dは、それぞれ、ステージI、ステージII、ステージIII及びステージIVに関して、50μm以上及び50μm未満のCAMLサイズに対するOS(左図)及びPFS(右図)の詳細な情報を提供する。
【0085】
図11A図11Fは、それぞれ、乳癌、食道癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵臓癌、前立腺癌及び腎細胞癌に関して、50μm以上及び50μm未満のCAMLサイズに対するOS(左図)及びPFS(右図)の詳細な情報を提供する。ステージによって又は癌によって、50μm超のCAMLサイズはOS及びPFSの不良を示す。最適なサイズカットオフは、最適なp値に関して、癌の種類に応じてわずかに変化する可能性がある。
【0086】
参考文献
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図1
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