(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】カプセル化された非晶質炭酸カルシウム組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/16 20160101AFI20220221BHJP
A23C 9/13 20060101ALI20220221BHJP
A61K 33/10 20060101ALI20220221BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220221BHJP
A61K 9/56 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220221BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220221BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220221BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220221BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
A23L33/16
A23C9/13
A61K33/10
A61K9/48
A61K9/56
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/44
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/06
A61K47/42
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/04
A61P3/02
(21)【出願番号】P 2020118611
(22)【出願日】2020-07-09
(62)【分割の表示】P 2017505170の分割
【原出願日】2015-07-30
【審査請求日】2020-08-05
(32)【優先日】2014-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515217694
【氏名又は名称】アモーフィカル リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アボ リジク,アリ
(72)【発明者】
【氏名】ハーショービッツ,シャロン
(72)【発明者】
【氏名】ベン,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラム,イーガル
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-500332(JP,A)
【文献】特表2013-503611(JP,A)
【文献】特開2011-036239(JP,A)
【文献】特表2009-518322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23C、A61K、A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物であって、複数の固体のAAC粒子を含有し、前記AAC粒子が各々、
i.ACCコアであって、非晶質の形態で前記ACCを安定化させる少なくとも1つの安定剤を含む、安定化したACCを含有するACCコアと、
ii.少なくとも
2つのコーティング層を含み、かつ前記ACCコアを完全にコーティングするカプセル化マトリックスであって、
前記少なくとも2つのコーティング層は、
第1の膜形成ポリマーを含む第1の内部コーティング層、および
膜形成ポリマーおよび脂質から成る群から選択されるカプセル化剤を含む他のコーティング層、
を含み、前記少なくとも2つのコーティング層は、各々が前記AACを少なくとも部分的にコーティングし、前記膜形成ポリマーはセルロース、セルロース誘導体、メチルメタクリレート、およびそれらの組合せから選択され、前記脂質は食用ワックス、脂肪酸、脂肪酸エステル、油およびそれらの組合せから選択され、かつ、任意選択で、前記コーティング層は天然樹脂、生体適合性ポリマー、ポロラミン蛋白、前記ACCを安定化させる物質、界面活性剤、着色剤および顔料から選択される少なくとも1つの物質をさらに含む、カプセル化マトリックス、
を含有し、
前記カプセル化マトリックスは湿度または水性媒体に晒された場合にも非晶質形態の炭酸カルシウムを維持し、かつ前記AACコアは固体である、
固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項2】
前記カプセル化マトリックスは、少なくとも50℃の外温、水性溶媒または酸溶媒に晒された場合に非晶質炭酸カルシウムの形態を実質的に維持する、請求項
1に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項3】
前記セルロース誘導体はエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項
1に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項4】
(i)前記食用ワックスはミツロウ、カンデリラワックス、カルナウバワックス、ジャパンワックス、大豆ワックス、アルファワックス、米糠ワックス、ベイベリーワックス、キャスターワックス、モンタンワックス、ミクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、およびそれらの組合せから成る群から選択され;(ii)前記脂肪酸はステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、およびそれらの組合せから成る群から選択され;(iii)前記脂肪酸エステルはステアリン酸グリセリドまたはポリステアリン酸スクロースであり、かつ(iv)前記油は植物油、液体パラフィン、中鎖トリグリセリド、およびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項5】
前記カプセル化マトリックスは天然樹脂、生体適合性ポリマー、ポロラミン蛋白、前記ACCを安定化させる物質、界面活性剤、着色剤および顔料から選択される少なくとも1つの物質をさらに含有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項6】
前記天然樹脂はシェラックである、請求項
5に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項7】
前記生体適合性ポリマーはポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
5に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項8】
前記ポロラミン蛋白はゼインである、請求項
5に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤はポリソルベート、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸のスクロースエステル、グリセロールモノステアレート、ステアロイルラクチレート、レシチンおよびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項10】
前記ACC
の安定剤は有機酸、有機酸、リン酸化アミノ酸、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、オルガノアミン化合物、ヒドロキシ基を有する有機化合物、有機リン化合物、またはその塩、ビスホスホネート化合物、有機リン酸エステル化合物、有機ホスホン酸化合物、無機亜リン酸、ポリリン酸塩化合物、有機界面活性剤、生体必須無機イオンおよびそれらの組合せから成る群から適宜独立して選択される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項11】
前記ACCコアと前記カプセル化マトリックスとの重量比は1:5~5:1である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのコーティング層
は脂質を含む、請求項
1に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項13】
前記カプセル化マトリックスは少なくとも3つのコーティング層を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項14】
前記カプセル化マトリックスは
、膜形成ポリマーを含む第1のコーティング層と、脂質を
含む少なくとも2つのコーティング層
、を含み、前記脂質は同じであってもよいし、異なっていてもよい、請求項1
3に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項15】
前記カプセル化マトリックスは、膜形成ポリマーを
含む第1のコーティング層と、膜形成ポリマーを含む少なくとも1つの追加的なコーティング層と、脂質を含む少なくとも1つのコーティング層、を含み、
前記膜形成ポリマーは同じであってもよいし、異なっていてもよ
い、請求項1
3に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項16】
前記ACCはシリカをさらに有する、請求項1~
15のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項17】
前記非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物は、(i)前記ACCコアおよび(ii)前記カプセル化マトリックスを含み、
(i)前記ACCコアは前記ACCと、前記ACCを非晶質形態に安定化させる少なくとも1つの安定剤と、シリカを
含み、
(ii)前記カプセル化マトリックスは少なくとも1つのサブコーティング層と、少なくとも2つのコーティング層を有し、前記少なくとも1つのサブコーティング層は膜形成ポリマーであり、かつ前記少なくとも2つのコーティング層は脂質から成るカプセル化剤を有し、前記少なくとも1つのサブコーティング層は前記ACCコアを少なくとも部分的にコーティングし、前記膜形成ポリマーはセルロース誘導体である、請求項1に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項18】
前記カプセル化マトリックスは6.5~7.5のpH範囲で安定な前記ACCを放出するように構成される、請求項1~
17のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項19】
前記組成物が水性媒体に少なくとも4日間晒された後も、前記炭酸カルシウムの少なくとも70%が非晶質を維持し、かつ溶解しないままである、請求項1~
18のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項20】
前記カプセル化マトリックスにより、前記組成物が水性媒体に少なくとも1週間晒された後も、前記炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質を維持し、かつ溶解しないままである、請求項1~
18のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項21】
前記カプセル化マトリックスにより、前記組成物が酸性媒体に少なくとも1週間晒された後も、前記炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質を維持する、請求項1~
18のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項22】
前記カプセル化マトリックスにより、前記組成物が酸性媒体に少なくとも3週間晒された後も、前記炭酸カルシウムの少なくとも10%が非晶質を維持する、請求項1~
18のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項23】
前記カプセル化マトリックスにより、前記組成物が水性媒体に95℃で少なくとも2分間晒された後も、あるいは前記組成物が1,200ワットのマイクロ波放射に少なくとも1.5分間晒された後も、前記炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質を維持する、請求項1~
18のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項24】
食品と混合する場合に、前記組成物は不活性である、請求項1~
23のいずれか一項に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項25】
前記食品と混合する場合に、前記組成物によって前記食品の味、色、pHが変化しない、請求項
24に記載の固体のカプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物。
【請求項26】
請求項1~
23のいずれか1項に記載の前記カプセル化した非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物を有する食品。
【請求項27】
前記食品が乳製品である、請求項
26に記載の食品。
【請求項28】
前記乳製品が発酵乳を有する、請求項
27に記載の食品。
【請求項29】
前記乳製品が酸性である、請求項
27に記載の乳製品。
【請求項30】
前記乳製品がヨーグルトである、請求項
27~34のいずれか一項に記載の乳製品。
【請求項31】
前記食品は消費する前に少なくとも50℃の温度で加熱する必要がある、請求項
27に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質の炭酸カルシウムを含む食用組成物、および斯かる組成物を含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは人体で最も重要なミネラルの1つと考えられている。骨塩量の維持に必要であり、神経伝達物質のエキソサイトーシスにとって重要であり、筋肉細胞の収縮に関与し、心臓の脱分極ミネラルとしてナトリウムに置き換わり、あるいは他の多くの生理機能に関係する。
【0003】
カルシウムの生物学的利用能は、食事中のカルシウムの中で腸により潜在的に吸収可能な部分、および生理機能、特に骨のミネラル化に使用可能または骨量の減少を制限するのに使用可能な部分と定義できる(非特許文献1を参照)。従って、食事中のカルシウム基準を満足させるには、食事中の天然カルシウム量に加え、サプルメントからのカルシウムの生物学的利用能および補充も考慮されるべきである。
【0004】
米国における食事からの平均カルシウム摂取量は、あらゆる年齢および性別グループ、特に女性において、栄養摂取基準(RDA)をはるかに下回っている。基準を満足させているのは、9歳から17歳の少年の約25%並びに少女の10%に過ぎないと推定されている。ダイエット食品はアメリカ人の食事中カルシウムの75%を提供している。しかし、骨量増大の最も重要な時期に、青年達は一般的にミルクよりもソフトドリンクを飲む傾向にある。
【0005】
19歳以上の成人のカルシウムに関するUK栄養摂取基準量(RNI)は700mg/日であるが、子供、青年並びに授乳中の女性は必要量がそれよりも高い。ティーンエイジャーの少年少女および19歳から24歳の女性の多くが、カルシウムに関する更に低い栄養摂取基準量(LRNI)も満足させていない。すなわち彼らの摂取量は不適切であると言える。
【0006】
様々な食品がカルシウムを含んでいるが、100グラム当たりまたは一回の食事当たりに提供され、体で効果的に吸収され、体の特定部分に運ばれるカルシウム量は多様である。西洋人の食事の主なカルシウム源はミルクおよびミルク製品、次がシリアルおよびシリアル製品である。しかし、ミルクおよびミルク製品からのカルシウムの生物学的利用能はカルシウム含有量の約30%である。
【0007】
食料品に含まれるカルシウムは、天然源であれ合成沈殿物であれ、有機カルシウム塩と無機カルシウム塩の両方を含んでいる。カルシウムの無機相の1つである炭酸カルシウムは認可された食品添加物であり、栄養サプルメント市場で商業的に使用される主な化合物である。炭酸カルシウムは既知の6つの多形体を有しており、その3つは無水結晶(すなわちカルサイト、アラゴナイトおよびバテライト)であり、2つは水和物(結晶性モノハイドロカルサイトおよびイカアイト)であり、1つは水和非晶質すなわち非晶質炭酸カルシウム(ACC)である。斯かる相のうち熱力学的に最も安定しているのはカルサイトであり、最も不安定なのがACCである。ACCは、オストワルドの階段律に従う過飽和溶液から沈殿する一時的な多形体である。何らかの成分または化合物で安定させなければ、ACCは、急速かつ完全に、より安定した5つの多形体のうちの1つに数秒内に結晶化する。溶解度試験によれば炭酸カルシウムの多形体には大きい違いがある。結晶相は溶解性が低いと考えられるので、非晶質の多形体はカルサイトよりも溶解度が約120倍高い。
【0008】
自然界では、ACCは僅かな種類の有機体でしか利用されておらず、主な有機体は甲殻類、および一時的なミネラル沈着部位でACCの安定化能力を発達させた他の無脊椎動物である。斯かる有機体は、カルシウムの定期的流動化、吸収および沈殿にとって特に効果的なミネラル源を必要としている。甲殻類のうち例えばザリガニでは、胃石と呼ばれる特殊化された一時的貯蔵器官に大量のACCが蓄えられる。合成ACCを合成/安定化する技術がいくつか報告されており、そのうちの1つがリンアミノ酸を使用するものであり、大気条件下で、4か月超、ACCを安定化できる(非特許文献2を参照)。
【0009】
生物学的利用能の高いカルシウム源は、例えば食品産業で有益に使用でき、イオン性カルシウムの優れた胃腸内(GI)吸収を可能にするので、哺乳動物の生理機能に容易に利用可能である。特に、非晶質の炭酸カルシウムは、高いカルシウム利用能を有する食料品を提供するため、食品添加物として使用できるが、その非晶質相は、製造中、貯蔵中、および/または食品容器を消費者が開けて大気中の湿気に晒した後も、食品中で安定していなければならない。
【0010】
(特許文献1)は、例えば、微粉末に粉砕された、薬剤/機能性食品カルシウム組成物として有益な胃石器官を開示している。(特許文献2)は、例えば、リン酸化ペプチドまたはアミノ酸で安定させた合成ACCを含む薬剤/機能性食品組成物を開示している。(特許文献3)は、例えば、懸濁物か粉末として取得可能な安定した非晶質カルシウムの調製方法を開示している。これは、水溶性カルシウム塩、水溶性炭酸塩、第一および第二安定剤、並びに水混和性有機溶媒を段階的に混合する方法である。
【0011】
しかし、安定化されたACCでさえ、高水分量または湿気、低pHおよび/または高温等の環境条件の故に、早期溶解および/または結晶化が生じるという弱点を有している。斯かる不安定化条件は、例えば、種々の商業用食品の加工または貯蔵中に生じる。従って、製造から消費まで非晶質を維持するようなやり方でACCを食品に取り入れることができるかどうかが課題である。
【0012】
マイクロカプセル化は、食品への生物活性組成物、特にプロバイオティクス、ミネラル、ビタミン、フィトステロール、ルテイン、脂肪酸、リコペンおよび抗酸化物の送達を改善するのに広範に利用されている有用な技術である。いくつかのマイクロカプセル化技術が食品産業で使用されるために開発されており、「機能性食品」と呼ばれるものの製造に有望視されている。マイクロカプセル化は、主に他の食品組成物との相互作用を妨害することにより、食品へのビタミンおよびミネラルの送達を促進するものである。例えば、鉄の生物学的利用能は、ある種の食品成分(例えばタンニン、フィチン酸塩、ポリフェノール等)と相互作用を起こすことにより極めて悪い影響を受ける。加えて、鉄は脂肪酸およびビタミンの酸化的分解を触媒する。リポソームのカプセル化技術は、食品組成物と反応する鉄の機能を減少させるので、鉄を液状食品に送達するのに頻繁に使用される。更に、レシチンリポソームで乳酸カルシウムをカプセル化することにより、望ましくないカルシウム/蛋白質反応を防ぎつつ、牛のミルク中のカルシウムレベルと同等のカルシウムレベルで豆乳を強化できる(非特許文献3を参照)。
【0013】
カプセル化および送達システムを達成する加工技術が種々知られている。例えば、食品成分および機能性食品カプセル化用の噴霧乾燥、凍結乾燥および関連工程、食品成分および機能性食品カプセル化用の噴霧冷却および噴霧チリング、食品成分および機能性食品カプセル化用の共押出(非特許文献4)等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO 2005/115414
【文献】WO 2009/053967
【文献】WO 2014/024191
【非特許文献】
【0015】
【文献】Gueguen et al., J, Am, Coll. Nutr,. 2000, Vol. 19(2), pages 119S-136S
【文献】Meiron et al., J. Bone Min. Res., 2011, Vol. 26(2), pages 364-372
【文献】Champagne and Fustier, Current Opinion in Biotechnology, 2007, Vol.18, pages 184-190
【文献】Encapsulation Technologies and Delivery Systems for Food Ingredients and Neutraceuticals, Woodhead Publishing, 2012, ISBN: 978-0-85709-124-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
機能性食品分野、特にカルシウム強化食品分野において、生物学的利用可能な非晶質炭酸カルシウム製剤へのニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、カプセル化された安定な非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物を提供し、該組成物はACCコアとカプセル化マトリックスを有する。斯かる組成物は種々の食品に使用でき、水分量または酸性pHの高い食品の食品添加物として特に有用である。従って、斯かるカプセル化された安定なACC組成物は、非晶質の炭酸カルシウムが有する特長、例えば向上したカルシウムの生物学的利用能が提供できる。本発明に開示されているカプセル化ACC組成物は、特に高湿度、酸性環境または高温を含む結晶化促進条件下であっても、長期間安定して貯蔵できる。
【0018】
本発明は、1つの態様において、ACCおよびACCを非晶質の状態で安定させる少なくとも1つの物質を含むACCコアと、少なくとも1つのコーティング層を含むカプセル化マトリックスとを含む複数のACC粒子から成るカプセル化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物を提供し、少なくとも1つのコーティング層は膜形成ポリマーおよび脂質からなる群から選択されるカプセル化剤を含み、更に少なくとも1つのコーティング層は少なくとも部分的にACCコアをコーティングしている。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも50℃の外温に晒された場合にもACCは実質的に非晶質であり続ける。いくつかの実施形態では、水性媒体に晒された場合にもACCは実質的に非晶質であり続ける。いくつかの実施形態では、水に晒された場合にもACCは実質的に非晶質であり続ける。いくつかの実施形態では、酸性媒体に晒された場合にもACCは実質的に非晶質であり続ける。いくつかの実施形態では、約4から約5のpHを有する酸性媒体に晒された場合にもACCは実質的に非晶質であり続ける。
【0020】
いくつかの実施形態では、膜形成ポリマーは、セルロース、セルロース誘導体、メチルメタクリレートおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、セルロース誘導体は、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0021】
いくつかの実施形態では、脂質は、食用ワックス、脂肪酸、脂肪酸エステル、油およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、食用ワックスは、ミツロウ、カンデリラワックス、カルナウバワックス、ジャパンワックス、大豆ワックス、アルファワックス、米糠ワックス、ベイベリーワックス、キャスターワックス、モンタンワックス、ミクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂肪酸エステルは、ステアリン酸グリセリドまたはポリステアリン酸スクロースである。いくつかの実施形態では、前記油は、植物油、液体パラフィン、中鎖トリグリセリド油およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0022】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、天然樹脂、生体適合性ポリマー、ポロラミン蛋白、ACCを安定させる物質、界面活性剤、着色剤および顔料から選択される少なくとも1つの物質を更に有する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、脂質を含むコーティング層は、天然樹脂、生体適合性ポリマー、ポロラミン蛋白、ACCを安定させる物質、界面活性剤、着色剤および顔料から選択される少なくとも1つの物質を更に有する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0023】
いくつかの実施形態では、天然樹脂はシェラックである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、プロラミン蛋白はゼインである。いくつかの実施形態では、ACC安定化剤は、各々独立に、有機酸、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、オルガノアミン化合物、ヒドロキシ基を含む有機化合物、有機リン化合物またはその塩、ビスホスホネート化合物、有機リン酸エステル化合物、有機ホスホン酸化合物、無機亜リン酸、ポリリン酸塩化合物、有機界面活性剤、生体必須無機イオンおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸のスクロースエステル、グリセロールモノステアレート、ステアロイルラクチラートおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0024】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの重量比は1対10から10対1である。上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの重量比は1対5から5対1である。上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの重量比は1対3から3対1である.上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの重量比は1対2から2対1である。上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの重量比は1対1である。
【0025】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは少なくとも2つのコーティング層を有する。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、膜形成ポリマーを有する少なくとも2つのコーティング層を有し、各層の膜形成ポリマーは同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、膜形成ポリマーを有する少なくとも1つのコーティング層と、脂質を有する少なくとも1つのコーティング層とを有する。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、脂質を有する少なくとも2つのコーティング層を有し、各層の膜形成ポリマーは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、少なくとも3つのコーティング層を有する。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、膜形成ポリマーを有する少なくとも1つのコーティング層と、脂質を有する少なくとも2つのコーティング層とを有し、前記脂質は同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、同じであっても異なっていてもよい膜形成ポリマーを有する少なくとも1つのコーティング層と、脂質を有する少なくとも1つのコーティング層とを有する。
【0027】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアはシリカを更に有する。
【0028】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスはACCコアを完全にコーティングする。
【0029】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、当該組成物は、食料品と混合された場合に不活性である。上述の組成物のいくつかの実施形態では、当該組成物は、食料品と混合された場合に食料品の味を変化させない。上述の組成物のいくつかの実施形態では、当該組成物は、食料品と混合された場合に食料品の色を変化させない。上述の組成物のいくつかの実施形態では、当該組成物は、食料品と混合された場合に食料品のpHを変化させない。
【0030】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が水性媒体に少なくとも4日間晒された後も、炭酸カルシウムの少なくとも70%が非晶質を維持しており、溶解しないままである。上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が水性媒体に少なくとも1週間晒された後も、炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質を維持しており、溶解しないままである。
【0031】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、当該組成物が酸性媒体に少なくとも1週間晒された後も、炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質を維持している。上述の組成物のいくつかの実施形態では、当該組成物が酸性媒体に少なくとも3週間晒された後も、炭酸カルシウムの少なくとも10%が非晶質を維持している。
【0032】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、当該組成物が水性媒体に95℃で少なくとも2分間晒された後も、炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質を維持している。上述の組成物のいくつかの実施形態では、当該組成物が1,200ワットのマイクロ波放射に少なくとも1.5分間晒された後も、炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質を維持している。
【0033】
本発明は、別の態様では、上記カプセル化ACC組成物の少なくとも1つを有する食品を更に提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、乳製品は発酵乳を有する。いくつかの実施形態では、乳製品は酸性である。いくつかの実施形態では、乳製品はヨーグルトである。いくつかの実施形態では、食品は消費する前に少なくとも50℃の温度で加熱する必要がある。いくつかの実施形態では、食品は、缶詰製品、冷凍食品および粉末食品からなる群から選択される。
【0035】
本発明および本発明の実施形態の上記特徴並びに他の特徴は、添付の図面を参照することにより、以下の例示的で非制限的な本発明の実施形態を通し、更に理解されることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】
図1Aは、カプセル化ACC組成物(処方5)のX線回析(XRD)パターンを示す。
【
図1B】
図1Bは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方5)のXRDパターンを示す。
【
図2A】
図2Aは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方11)のXRDパターンを示す。
【
図2B】
図2Bは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方12)のXRDパターンを示す。
【
図2C】
図2Cは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方13)のXRDパターンを示す。
【
図2D】
図2Dは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方14)のXRDパターンを示す。
【
図2E】
図2Eは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方15)のXRDパターンを示す。
【
図2F】
図2Fは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方16)のXRDパターンを示す。
【
図3A】
図3Aは、カプセル化ACC組成物(処方11)の走査電子顕微鏡(SEM)像(倍率5000倍)を示す。
【
図3B】
図3Bは、カプセル化ACC組成物(処方11)のSEM像(倍率2000倍)を示す。
【
図3C】
図3Cは、カプセル化ACC組成物(処方15)のSEM像(倍率5000倍)を示す。
【
図3D】
図3Dは、カプセル化ACC組成物(処方15)のSEM像(倍率2000倍)を示す。
【
図3E】
図3Eは、非カプセル化ACCのSEM像を示す(倍率30,000倍)
【
図4A】
図4Aは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方17)のXRDパターンを示す。
【
図4B】
図4Bは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方18)のXRDパターンを示す。
【
図4C】
図4Cは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方19)のXRDパターンを示す。
【
図4D】
図4Dは、30分水に浸漬した後の、カプセル化ACC組成物(処方20)のXRDパターンを示す。
【
図5A】
図5Aは、カプセル化ACC組成物(処方21)の光学顕微鏡像を示す。
【
図5B】
図5Bは、カプセル化ACC組成物(処方22)の光学顕微鏡像を示す。
【
図5C】
図5Cは、カプセル化ACC組成物(処方23)の光学顕微鏡像を示す。
【
図6】
図6は、ヨーグルトの液相におけるカルシウムの溶解を示す。(◆)処方21、(■)処方22、(▲)処方23、(x)結晶炭酸カルシウム(CCC)、(*)非カプセル化ACC、および(●)ヨーグルト(対照)。
【
図7A】
図7Aは、ヨーグルトと混合したカプセル化ACC組成物(処方21)のXRDを示しており、XRDは実験の最初の日に行われたものである。
【
図7B】
図7Bは、ヨーグルトと混合したカプセル化ACC組成物(処方21)のXRDを示しており、XRDは実験の最後の日に行われたものである。
【
図8A】
図8Aは、ヨーグルトと混合したカプセル化ACC組成物(処方22)のXRDを示しており、XRDは実験の最初の日に行われたものである。
【
図8B】
図8Bは、ヨーグルトと混合したカプセル化ACC組成物(処方22)のXRDを示しており、XRDは実験の最後の日に行われたものである。
【
図9A】
図9Aは、ヨーグルトと混合したカプセル化ACC組成物(処方23)のXRDを示しており、XRDは実験の最初の日に行われたものである。
【
図9B】
図9Bは、ヨーグルトと混合したカプセル化ACC組成物(処方23)のXRDを示しており、XRDは実験の最後の日に行われたものである。
【
図10】
図10は、ヨーグルトと混合した非カプセル化ACCのXRDを示しており、XRDは実験の最初の日に行われたものである。
【
図11】
図11は、カプセル化ACC組成物(処方32)のXRDパターンを示している。
【
図12A】
図12Aは、ヨーグルトと混合したカプセル化ACC組成物(処方27)のXRDを示しており、XRDは実験の第1週目後に行われたものである。
【
図12B】
図12Bは、ヨーグルトと混合したカプセル化ACC組成物(処方27)のXRDを示しており、XRDは実験の第2週目後に行われたものである。
【
図13】
図13は、カプセル化ACC組成物(処方45)のXRDパターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
食品サプルメントにおいて、非晶質炭酸カルシウムは、結晶相の炭酸カルシウムよりも溶解し易く吸収可能な炭酸カルシウム源であることが報告されている。しかし、本発明者達は、他の発明者同様、ACCは、安定化されていたとしても、水性および/または酸性の環境下では安定性が低下することを見出している。斯かる環境に晒されると、ACCは急速に結晶相の炭酸カルシウムに変換される。ACCをカプセル化するにあたり主な技術的課題の1つは、食品または食品加工に使用されるカプセル化用のキャリア物質が食品グレードでなければならず、更に活性成分と環境の間にバリヤーを形成できるものでなければならないと言うことである。しかし、通常の湿度(相対湿度約60%)でも非晶質炭酸カルシウムの安定性は欠如しており、嵩密度および圧縮性が低いので、カプセル化ACC製品の開発および斯かるカプセル化の有効化は極めて難しいと考えられている。
【0038】
特に、カプセル化成分はその指定用途について承認を得なければならず、また、カプセル化工程には高温が要求されるし、食品または化粧品などの最終製品用途には製造または処理中に加熱が必要であるので、本発明者達は、ACCをマイクロカプセル化するのは容易なことではないことに気付いた。加えて、カプセル化ACCの添加が最終製品のテクスチャ特性に影響が及ぼすようなことがあってはならない。特に、食品の感覚刺激特性、例えば味は、カプセル化成分や、食品媒体にACCを溶解する際(例えばACCをヨーグルトに添加する際)に生じるpHの変化等により影響を受ける。更に、マイクロカプセル化された顆粒が存在すると、粉末により引き起こされる望ましくない感覚が口内に生じる可能性がある。最終製品の品質を損なわないようにするため、カプセル化製剤またはACCコアの全成分は、その製造、貯蔵または消費中、最終製品に不活性であるべきである。
【0039】
本発明は、上述の技術的問題を実質的に乗り越えるACC組成物を初めて開示する。更に本明細書で初めて開示されることであるが、本発明は、異なる特性を有する1つ以上のACCコーティング層が商業的に有用なカプセル化ACC組成物を提供すること、該組成物が水を含む環境および/または酸性の環境下で安定であり、高温に晒されても極めて安定しており、食品等の生産品の外観および感触を変えることがないことも開示する。
【0040】
本発明は、1つの態様において、ACCおよびACCを非晶質の状態で安定させる少なくとも1つの物質を含むACCコアと、少なくとも1つのコーティング層を含むカプセル化マトリックスとを含む複数のACC粒子から成るカプセル化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)組成物を提供し、少なくとも1つのコーティング層は膜形成ポリマーおよび脂質からなる群から選択されるカプセル化剤を含み、更に少なくとも1つのコーティング層は少なくとも部分的にACCコアをコーティングしている。
【0041】
「カプセル化」と言う用語は、ACCの化学的または構造的特性を変えることなく、ACCコアと1つ以上のカプセル化層を有するカプセル化マトリックスとを物理的に相互作用させる工程を意味する。更に、「カプセル化」と言う用語は、ACCがカプセル化マトリックス内にまたはそれによって完全にカプセル化されていない状態、すなわち組成物内のACCの少なくとも一部がカプセル化マトリックスと相互作用していない状態も含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、活性成分は安定したACCを有する、または安定したACCから成る。いくつかの実施形態では、活性成分は、ACCに加えて、人による使用または消費を意図した少なくとも1つの追加の活性成分を更に有する。斯かる追加の活性成分には、限定されないが、機能性食品剤、食品添加物、ビタミン、ミネラル、油等が含まれる。いくつかの実施形態では、本質的にWO 2005/115414(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されているように、安定なACCコアは、胃石器官またはその一部を粉末状に粉砕したものを含む。いくつかの実施形態では、安定なACCは、他の天然源から得られる生物学的に製造された他のACCも含む。いくつかの実施形態では、安定なACCは、化学合成手段により製造される。いくつかの実施形態では、安定なACCは、天然の安定なACCと合成された安定なACCとの組み合わせを含む。
【0043】
カプセル化された安定なACCの活性成分は、安定なACCに加え、マグネシウム、亜鉛、リン酸塩、ビタミンB、CまたはD、葉酸および/またはATP等の1つ以上の化粧料、機能性食品剤または食品添加物を含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、活性成分の少なくとも50重量%は、カプセル化された安定なACCのカプセル化マトリックス内にカプセル化されている。いくつかの実施形態では、活性成分の少なくとも70重量%は、カプセル化された安定なACCのカプセル化マトリックス内にカプセル化されている。いくつかの実施形態では、活性成分の少なくとも90重量%は、カプセル化された安定なACCのカプセル化マトリックス内にカプセル化されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、ACCは約30重量%超の活性成分を含んでいる。活性成分は、機能性食品剤または食品添加物を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、ACCは少なくとも10重量%の活性成分を含む。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物の活性成分は安定なACCから成る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「カプセル化」と言う用語は、1つの物質を他の物質内に取り込むことにより、数ナノメートル(nm)から数ミリ(mm)の粒子径の粒子を製造する工程を意味する。本明細書で使用される場合、「粒子径」と言う用語は、ある粒子の断面における最長径を意味し、それには、例えば実質的に球状の粒子の場合には、その直径が含まれる。取り込まれた物質は外部の化学物質から保護され、あるいは部分的に保護され、「コア物質」、「充填物」、「内部相」または「ペイロード相」と呼ぶことができる。カプセル化する物質は、「コーティング」、「膜」、「メンブレン」、「シェル」、「キャリア物質」、「壁物質」、「外部相」、「外部覆い」または「マトリックス」と呼ぶことができる。
【0047】
本発明の原理によれば、カプセル化ACC組成物はカプセル化マトリックスを有しており、その適用により非晶質の炭酸カルシウムが維持される。本明細書で初めて開示されることであるが、カプセル化された安定なACCは、水性媒体内で少なくとも4日間も、その非晶質の少なくとも約70%を維持した。
【0048】
「非晶質の」、「非晶質相」、「非晶質」および「非晶質状態」と言う用語は同じ意味で使用でき、炭酸カルシウムの結晶または溶解形態ではない相、形態または状態にある多形体を意味する。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、カプセル化工程はマトリックス材を提供し、それにより、安定なACCはカプセル化マトリックス全体に分配される。いくつかの実施形態では、カプセル化工程はコア-シェル材を提供し、それにより、安定なACCはカプセル化材のシェル内に閉じ込められる。
【0050】
いくつかの実施形態では、活性成分粒子はカプセル化マトリックス内に均一にカプセル化されている。いくつかの実施形態では、活性成分粒子は、カプセル化マトリックス内に凝集している。カプセル化ACCは、平均粒子径が約0.1μmから100μm(例えば0.5μmから50μm、1μmから10μm、あるいは0.1μmから4μm)である粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC粒子は、更に小さい粒子を含む凝集体を有してもよい。カプセル化ACCは、平均粒子径が約0.1μmから1000μm(例えば0.2μmから500μm、1μmから100μm、あるいは5μmから50μm)である凝集体を含んでもよい。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、平均粒子径が約0.1μmから50μmの粒子を有している。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、平均粒子径が約0.2μmから1000μmの粒子凝集体を有している。
【0052】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、最高約15重量%の水を含んでいる。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、平均粒子径が約0.1μmから100μmの粒子を形成する。いくつかの実施形態では、該組成物は、平均粒子径が約0.2μmから1000μmの粒子凝集体を有している。
【0053】
いくつかの実施形態では、安定なACCは、カプセル化された安定なACC組成物の全重量の少なくとも約8重量%存在している。安定なACCは、任意で、カプセル化された安定なACCの全重量の少なくとも約30重量%存在している。いくつかの実施形態では、安定なACC組成物の約50重量%超がカプセル化マトリックス内に分散され取り込まれている。いくつかの実施形態では、本発明の組成物には水が実質的に全く含まれていない。
【0054】
本明細書で使用される場合、「カプセル化マトリックス」と言う用語は、ACCコアを少なくとも部分的にコーティングしているコーティング層全てを含む。従って、カプセル化マトリックスが複数のコーティング層を含んでいる場合、斯かるコーティング層は共にカプセル化マトリックスを構成する。全てのコーティング工程がACCコアの完全なコーティングを保証する訳ではないので、本明細書で使用される場合、「カプセル化マトリックス」と言う用語は、ACCコアの相対的表面被覆の程度とは無関係に、ACCコアをコーティングするために全コーティング工程で使用される賦形剤も更に含む。同じ理由により、本明細書で使用される場合、「カプセル化マトリックス」と言う用語は、ACCコアを完全にコーティングするコーティング層または予め適用されたコーティング、並びにACCコアを部分的にしかコーティングしない部分コーティング層および/または予め適用されたコーティングも含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「コーティング層」と言う用語は、ACCコアの少なくとも一部を覆う物質の層、あるいは中間コーティング層を意味する。本明細書で記載されるコーティング層は最初に流体または液体として適用され、析出後、例えば表面エネルギーの違い等により駆動されて、コーティングの自己集合または再配置がある程度生じる。コーティング層が望ましいパターン化を達成した後、コーティング層は例えば硬化および/または乾燥により固まらせてもよい。本明細書で使用される場合、「コーティング」と言う用語は、物質の層を適用する工程を示す意味で使用される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「膜形成ポリマー」と言う用語は、それ自体でまたは膜形成補助剤の存在下に、支持体上に連続した付着性の膜を形成可能なポリマーを意味する。
【0057】
「膜形成ポリマー」と言う用語は、主に、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、メチルセルロース(MC)カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはセルロースアセテートまたはフタレート、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム、あるいは膜形成化工澱粉誘導体、例えば、デキストリン、マルトデキストリン、グアーガム、トラガカントガム、アラビアゴムまたはキサンタンガムから選択される食用ポリマーを意味する。
【0058】
「脂質」と言う用語は当業界では広く知られ使用されており、本明細書で使用される場合、一般的に、炭化水素を含み水に溶けない天然の分子を意味する。
【0059】
いくつかの実施形態では、ACCは、カプセル化組成物を少なくとも50℃の外温に晒した場合、実質的に非晶質のままである。いくつかの実施形態では、カプセル化組成物を水性媒体に晒した場合、実質的に非晶質のままである。カプセル化組成物を水に晒した場合、実質的に非晶質のままである。カプセル化組成物を酸性媒体に晒した場合、実質的に非晶質のままである。カプセル化組成物を約4から約5のpHを有する酸性媒体に晒した場合、実質的に非晶質のままである。
【0060】
本発明には、水性条件下でACCを少なくとも1週間安定化できるカプセル化剤またはカプセル化用物質、例えば、ACCがその非晶質相の少なくとも20%維持するのを可能にする、および/またはカプセル化組成物がACCの初期含有量の少なくとも20%を維持するのを可能にするカプセル化剤またはカプセル化用物質が含まれており、この点は理解されるべきである。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0061】
本明細書で使用される場合、「外温、湿度または酸性に実質的に安定」と言う句は、一般的に、カプセル化マトリックスと相互作用する際、ACCは、温度、水含有量および/または外的環境(例えば組成物を添加する媒体)のpHにはほとんど影響されない、および/または極めて鈍感であることを意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「上記組成物を湿気に晒した場合における増大したACCの安定性」と言う句は、組成物を湿気(例えば水等の湿気の多い環境)に晒した場合に生じる、裸のACCコアとカプセル化されたACCコアとの間の安定性の違いに関係している。水性媒体中のACC組成物の安定性を測定する方法は、限定されないが、例えば、以下の実施例の項で提供される。本明細書で使用される場合、「溶解しない」と言う用語は、一般的に、「カルシウムイオンを形成しない」と言う意味である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「上記組成物を酸に晒した場合における増大したACCの安定性」と言う句は、組成物を酸(例えばヨーグルト等の酸性の環境)に晒した場合に生じる、裸のACCコアとカプセル化されたACCコアとの間の安定性の違いに関係している。
【0064】
本明細書で使用される場合、「上記組成物を高温に晒した場合における増大したACCの安定性」と言う句は、組成物を50℃超の温度(例えばコーティング中の融解ワックス等の温かい環境または成分)に晒した場合に生じる、裸のACCコアとカプセル化されたACCコアとの間の安定性の違いに関係している。
【0065】
本明細書で使用される場合、「水性媒体における増大したACCの安定性」、「酸性媒体における増大したACCの安定性」および「増大したACC熱安定性」と言う用語は、ACCの非カプセル化安定形と比較した、本発明のカプセル化ACC組成物の各安定性に関係している。本明細書で使用される場合、「裸のACCコア」と言う用語は、ACCと該ACCを安定させる少なくとも1つの非晶質物質とを含む、カプセル化されていないACCコアを意味する。
【0066】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、水性媒体中少なくとも1週間、非晶質相のACCの少なくとも50%を保持する。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、水性媒体中少なくとも1週間、非晶質相のACCの少なくとも60%を保持する。任意で、水性媒体中少なくとも1週間、非晶質相のACCの少なくとも70%、非晶質相の少なくとも80%、非晶質相の少なくとも90%、非晶質相の少なくとも95%、更には非晶質相の少なくとも98%を保持する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、非晶質相を保持するACCは溶解していないACCである。
【0067】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、水性媒体中少なくとも2週間、非晶質相のACCの少なくとも40%を保持する。任意で、カプセル化された安定なACC組成物は、水性媒体中少なくとも3週間、あるいは少なくとも1か月間、更に少なくとも2か月間、非晶質相のACCの少なくとも40%を保持する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの好ましい実施形態では、非晶質相を保持するACCは溶解していないACCである。
【0068】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、水性媒体中少なくとも4日間、非晶質相のACCの少なくとも70%を保持する、あるいは非晶質相の少なくとも80%、非晶質相の少なくとも90%、非晶質相の少なくとも95%、更には非晶質相の少なくとも98%を保持する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの好ましい実施形態では、非晶質相を保持するACCは溶解していないACCである。
【0069】
水性媒体は、水、溶液、分散液、ゲル、乳濁液または懸濁液を含んでもよい。いくつかの実施形態では、水性媒体は水を含む食料品を含む。水性媒体は、安定なACCを含む食物の製造中に存在してもよい。水性媒体は、カプセル化された安定なACCを含む食物の加工中に存在してもよい。水性媒体は、カプセル化された安定なACCを含む食物の貯蔵中に存在してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、酸性の水性媒体中少なくとも1週間、非晶質相のACCの少なくとも40%、例えば、非晶質相のACCの50%、非晶質相の60%、非晶質相の70%、非晶質相の80%、非晶質相の90%、非晶質相の95%、更には非晶質相の98%を保持する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの好ましい実施形態では、非晶質相を保持するACCは溶解していないACCである。
【0071】
いくつかの実施形態では、酸性の水性媒体は、酸性溶液、分散液、ゲル、乳濁液または懸濁液を含む。水性媒体は、任意で、水を含む酸性の食料品を含む、または水を含む酸性の食料品から成る。酸性媒体のpHは約2から6.5の範囲、例えば、3から6、4から5.5または4.5から5の範囲であってよい。
【0072】
任意で、カプセル化された安定なACC組成物は、大気の湿気に晒された場合、少なくとも1週間、非晶質相のACCの少なくとも40%、例えば、非晶質相のACCの50%、非晶質相の60%、非晶質相の70%、非晶質相の80%、非晶質相の90%、非晶質相の95%、更には非晶質相の98%保持する。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、大気の湿気に晒された場合、少なくとも1週間、例えば、1か月間、6か月間、1年あるいは2年以上、非晶質相のACCの少なくとも40%を保持する。
【0073】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が水性媒体に少なくとも4日間晒された後、炭酸カルシウムの少なくとも70%が非晶質で保持され、溶解しないままである。上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が水性媒体に少なくとも1週間晒された後、炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質で保持され、溶解しないままである。
【0074】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が酸性媒体に少なくとも1週間晒された後、炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質で保持される。上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が酸性媒体に少なくとも3週間晒された後、炭酸カルシウムの少なくとも10%が非晶質で保持される。酸性媒体中のACC組成物の安定性を測定する方法は、限定されないが、例えば、以下の実施例の項で提供される。本明細書で使用される場合、一般的に、「酸性媒体」と言う用語は、pH7未満、6未満、5未満、4未満、3未満または2未満、好ましくは約4.2と4.5の間のpHを有する媒体を意味する。
【0075】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が水性媒体に95℃で少なくとも2分間晒された後、炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質で保持される。上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物が水性媒体に1,200ワットのマイクロ波放射に少なくとも15分間晒された後、炭酸カルシウムの少なくとも20%が非晶質で保持される。
【0076】
いくつかの実施形態では、膜形成ポリマーは、セルロース、セルロース誘導体、メチルメタクリレートおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、セルロース誘導体は、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0077】
いくつかの実施形態では、脂質は食用ワックス、脂肪酸、脂肪酸エステル、油およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、食用ワックスは、ミツロウ、カンデリラワックス、カルナウバワックス、ジャパンワックス、大豆ワックス、アルファワックス、米糠ワックス、ベイベリーワックス、キャスターワックス、モンタンワックス、ミクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂肪酸エステルは、ステアリン酸グリセリドまたはポリステアリン酸スクロースである。いくつかの実施形態では、前記油は、植物油、液体パラフィン、中鎖トリグリセリド油およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0078】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、天然樹脂、生体適合性ポリマー、ポロラミン蛋白、ACCを安定させる物質、界面活性剤、着色剤および顔料から選択される少なくとも1つの物質を更に有する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、脂質を含むコーティング層は、天然樹脂、生体適合性ポリマー、ポロラミン蛋白、ACCを安定させる物質、界面活性剤、着色剤および顔料から選択される少なくとも1つの物質を更に有する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0079】
本明細書で使用される場合、「天然樹脂」と言う用語は、植物滲出物を一般的に意味する。天然樹脂は、限定されないが、例えばシェラック(食品添加物として使用される場合、E番号としてE904を有する)である。カプセル化された安定なACC組成物は、約2重量%から90重量%の天然樹脂を含んでもよい。ゼインもシェラックも食品産業界では特に艶出し剤として使用される。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約2重量%から40重量%の天然樹脂を含む。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約5重量%から22重量%の天然樹脂を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、天然樹脂はシェラックである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、プロラミン蛋白はゼインである。
【0081】
本明細書で使用される場合、「食用ワックス」と言う用語は、人間の消費に適した合成ワックス、例えば、食品グレードの石油製品、あるいは植物、昆虫(ミツバチに似た昆虫)または動物から得られる天然のワックスを意味する。いくつかの実施形態では、食用ワックスは、ミツロウ、カンデリラワックス、カルナウバワックス、ジャパンワックス、大豆ワックス、アルファワックス、米糠ワックス、ベイベリーワックス、キャスターワックス、モンタンワックス、ミクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態によれば、食用ワックスは、カンデリラワックス、ミツロウ、パラフィンワックスおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態によれば、カプセル化された安定なACC組成物は、カンデリラワックス、ミツロウ、およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。カプセル化された安定なACC組成物は、約5重量%から60重量%の食用ワックスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約5重量%から50重量%の食用ワックスを含んでもよい。カプセル化された安定なACC組成物は、約15重量%から26重量%の食用ワックスを含んでもよい。
【0082】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸」と言う用語は、長い脂肪族の尾(鎖)を有するカルボン酸(飽和でも不飽和でもよい)を一般的に意味する。適切な脂肪酸には、限定されないが、炭素数6~24、炭素数10~24、または炭素数14~22、更に炭素数16~20の炭化水素鎖を有するほとんどの脂肪酸が含まれる。他の実施形態では、脂肪酸はオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸およびラウリン酸からなる群から選択される。脂肪酸は飽和でも不飽和でもよい。いくつかの好ましい実施形態では、脂肪酸は飽和している。いくつかの実施形態では、脂肪酸はステアリン酸を含む。カプセル化された安定なACC組成物は、約1重量%から60重量%の脂肪酸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約1重量%から25重量%の脂肪酸を含む。他の実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約1重量%から10重量%の脂肪酸を含む。
【0083】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸エステル」と言う用語は、脂肪酸とアルコールの組み合わせから生じるエステルを一般的に意味する。いくつかの実施形態では、脂肪酸エステルはグリセロールモノステアレートを含む。カプセル化された安定なACC組成物は、約5重量%から60重量%の脂肪酸エステルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約2重量%から30重量%の脂肪酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約5重量%から22重量%の脂肪酸エステルを含む。他の実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約1重量%から10重量%の脂肪酸エステルを含む。他の実施形態では、脂肪酸エステルはステアリン酸グリセリドまたはポリステアリン酸スクロースである。
【0084】
本明細書で使用される場合、「油」と言う用語は、大気温度下で粘性を有する液体であり、疎水性かつ親油性である、無極性の化学物質を意味する。油は、任意で、植物油、液体パラフィン、中鎖トリグリセリド油、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、油は植物油を含む。適切な植物油は、限定されないが、パーム油である。他の実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、中鎖トリグリセリド油を含む。カプセル化された安定なACC組成物は、約10重量%から60重量%の油を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約10重量%から30重量%の油を含む。いくつかの実施形態では、油は、植物油、液体パラフィン、中鎖トリグリセリド油およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0085】
本発明でカプセル化剤として使用するのに適した生体適合性ポリマーは、生分解性であってもよいし、非生分解性であってもよい。非生分解性の生体適合性ポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリビニルアルコール(PVA)が含まれる。生分解性ポリマーには、ポリエステル、例えば、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体等を含めてもよい。カプセル化された安定なACC組成物は、約20重量%から60重量%の生体適合性ポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約25重量%から55重量%の生体適合性ポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約30重量%から40重量%の生体適合性ポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0086】
安定なACCのカプセル化に有用な蛋白質には、大豆蛋白、乳汁蛋白および/またはゼラチンを含めてもよい。限定されないが、適切な蛋白質はゼインである。カプセル化された安定なACC組成物は、約5重量%から90重量%の蛋白質を含んでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、カプセル化された安定なACC組成物は、界面活性剤または乳化剤を含む。「界面活性剤」および「乳化剤」と言う用語は、同じ意味で使用できる。界面活性剤には、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、またはそれらの組み合わせを含めてもよい。いくつかの実施形態によれば、界面活性剤は非イオン界面活性剤である。
【0088】
可能な非イオン界面活性剤の例には、限定されないが、ポリソルベート、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ツイーン20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(ツイーン40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(ツイーン60)およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ツイーン80)、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステル、例えば、Myrj45、Myrj49、Myrj52およびMyrj59、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ソルビタンモノラウレート(スパン20)、ソルビタンモノパルミテート(スパン40)、ソルビタンモノオレエート(スパン80)およびソルビタンモノステアレート(スパン60)、オクタン酸/デクタン酸のモノ/ジグリセリド、例えば、限定されないが、Imwitor742およびImwitor308、ポリオキシエチレンアルキニルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル(Brij52、Brij56、Brij58)、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンオキシドヘキサデシルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル等、ポリエトキシレンひまし油誘導体、例えば、クレモホールEL、ELPおよびRH40、PEG-6オクタン酸/デカン酸グリセリド、例えば、Softigen767等、ポリオキシエチレングリセロールトリオレエート、例えば、限定されないが、Tagat TO、デカグリセロールモノ/ジオレエート、例えば、Caprol PGE860等、脂肪酸のスクロースエステル、例えば、限定されないが、パーム油のスクロースエステル、およびそれらの組み合わせが含まれる。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0089】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸のスクロースエステル、グリセロールモノステアレート、ステアロイルラクチレート、レシチンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
可能な陽イオン界面活性剤には、限定されないが、ホスファチド、例えば、ホスファチジルコリン等、四級アンモニウム陽イオン界面活性剤、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等、ピリジニウム陽イオン界面活性剤、例えば、限定されないが、ドデシルピリジニウムクロリド、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0091】
カプセル化された安定なACC組成物を調製するのに有用な陰イオン界面活性剤には、アルキル硫酸ナトリウム、例えば、限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、例えば、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム等、ステアリン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0092】
両性界面活性剤には、レシチン、N-ドデシルアラニン、コカミドプロピルアミノベタイン、またはそれらの組み合わせが含まれる。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0093】
界面活性剤の種類および量は、界面活性剤の親水性/親油性バランス(HLB)または水中油型乳濁液に適した界面活性剤混合物を得るため、当業者が決定してもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物には、ポリソルベート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、またはそれらの組み合わせが含まれる。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0094】
カプセル化された安定なACC組成物は、約5重量%から60重量%の界面活性剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約5重量%から50重量%の界面活性剤を含んでもよい。カプセル化された安定なACC組成物は、約25重量%から50重量%の界面活性剤を含んでもよい。カプセル化された安定なACC組成物は、約13重量%から36重量%の界面活性剤を含んでもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、少なくとも1つの界面活性剤を更に含む。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」と言う用語は、2つの液体間または液体と固体間の表面張力(または界面張力)を下げる化合物を一般的に意味する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸のスクロースエステル、グリセロールモノステアレート、ステアロイルラクチレート、レシチンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、少なくとも1つの界面活性剤または乳化剤を含む。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。本発明のいくつかの実施形態による界面活性剤または乳化剤は、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ステアロイルラクチレート、脂肪酸のスクロースエステル、グリセロールモノステアレート、レシチン、医薬品消費の承認を得た他の食品グレードの界面活性剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0097】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは着色剤または顔料を更に含む。いくつかの実施形態では、着色剤または顔料は、最後または外部のコーティング層に含まれる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態の原理によれば、驚くべきことに、製剤中のACCを安定させるのに適した安定化剤をカプセル化マトリックスに少なくとも1つ添加すればカプセル化ACCの安定性が向上すると言うことが更に見いだされた。特定の理論や機構に拘束されずに推論すれば、ACCの表面が壊れた場合、カプセル化マトリックス安定剤がそれを補充するのであろう。上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、ACCを安定させる、または安定化が可能な少なくとも1つの物質を更に含んでいる。「ACCを安定させる」または「ACC安定剤」と言う用語は、ACCと相互作用し、ACCを非晶質状態に保つあらゆる物質を意味する。「ACCの安定化が可能な」と言う用語は、ACCとは相互作用しないが、相互作用を起こした場合には、ACCを非晶質に維持するあらゆる物質を意味する。
【0099】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックス内の少なくとも1つのACC安定剤は、安定なACCの少なくとも1つの安定剤と同じACC安定剤である。あるいは、いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックス内のACC安定剤(複数も可)は、安定なACC内の1つ以上の安定剤とは異なっていてもよい。上述のように、ACC安定剤は、カプセル化マトリックス内に取り込まれ、例えば溶解または物的損害等でマイクロカプセルが壊された場合に、ACCを更に安定化するのを助ける。その場合、添加された安定化剤が、表面を壊されたACCの安定化を補充できる。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックス内の少なくとも1つの安定剤はカルボン酸を有する。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックス内の少なくとも1つの安定剤は、リン酸化有機化合物またはホスホン酸塩を有する。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスには、クエン酸、乳酸、ホスホセリン、ホスホスレオニン、およびそれらの組み合わせが含まれる。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスはクエン酸を含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、カプセル化マトリックスの全重量の約0.1重量%から約15%を構成する。
【0100】
いくつかの実施形態では、ACC安定化剤は、各々独立に、有機酸、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、ヒドロキシカルボン酸の硫酸エステル、オルガノアミン化合物、ヒドロキシ基を有する有機化合物、有機リン化合物またはその塩、ビスホスホネート化合物、有機リン酸エステル化合物、有機ホスホン酸化合物、無機亜リン酸、ポリリン酸塩化合物、有機界面活性剤、生体必須無機イオンおよびそれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択される。
【0101】
カプセル化された安定なACC組成物は、約0.1重量%から15重量%の安定剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約1重量%から10重量%の安定剤を含む。安定剤は、任意で、限定されないが、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミン基、ホスフィノ基、ホスホノ基、ホスフェート基、スルホニル基またはスルフィノ基から選択される1つ以上の官能基を有する分子を含んでもよい。水酸化物と結合したヒドロキシ基を有する化合物は、任意で、カルボキシル等の他の官能基を有するが、該ヒドロキシ基はエステル化されない。有機酸は、例えば、アスコルビン酸または酢酸を含んでもよく、任意で、少なくとも2つのカルボキシル基を有し分子量が250g/mol以下の分子、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等を含む。有機酸は、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、アコニット酸、またはそれらの組み合わせを更に含んでもよい。エステルには、例えば、ホスホエノールプルベートが含まれてもよい。別の実施形態では、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステルはアミノ酸、例えば、ホスホセリン、ホスホスレオニン、スルホセリン、およびスルホスレオニンンを含んでもよい。別の実施形態では、安定化分子は、アミノ酸のリン酸エステル、例えば、ホスホクレアチンである。水酸化物と結合したヒドロキシ基を有する化合物は、例えば、モノサッカライド、ジサッカライド、トリサッカライド、オリゴサッカライド、およびポリサッカライド、例えばスクロース、あるいはグリセロール等のポリオールを含んでもよい。ヒドロキシ基を有する化合物は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシ酸、またはセリンあるいはスレオニン等のヒドロキシ基を有するアミノ酸を更に含んでもよい。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0102】
食品消費用に承認されたACC安定剤の特定の非制限的例には、フィチン酸、クエン酸、第二ピロリン酸ナトリウム、アデノシン5’一リン酸(AMP)ナトリウム塩、アデノシン5’二リン酸(ADP)ナトリウム塩、アデノシン5’三リン酸(AMP)二ナトリウム塩水和物、ホスホセリン、リン酸化アミノ酸、食品グレードの界面活性剤、ステアロイルラクチル酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。いくらかの実施形態によれば、安定剤は、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、例えば、ホスホエノールピルベート、ホスホセリン、ホスホスレオニン、スルホセリンまたはスルホスレオニン、並びにモノサッカライド、ジサッカライド、トリサッカライド、オリゴサッカライドおよびポリサッカライド、例えばスクロース、マンノース、グルコースから選択されるヒドロキシ基を有する有機化合物から選択される少なくとも1つの成分を含む。ヒドロキシ基を有する化合物は、少なくとも1つの水酸化アルカリ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を更に含んでもよい。リン酸化された酸がオリゴペプチドおよびポリペプチドに存在していてもよい。本発明の他の実施形態では、安定剤は有機酸、好ましくは、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸を含むカルボン酸である。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。有機酸は、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、乳酸、アコニット酸、リンゴ酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるのが好ましい。
【0103】
本発明のいくらかの実施形態では、ACC安定剤は、リン酸化アミノ酸、ポリオールおよびそれらの組み合わせから選択される。いくらかの実施形態では、安定なACCは、1つのカルボン酸または複数のカルボン酸から成る安定剤を含む。いくらかの実施形態では、安定なACCは、安定剤としてリン酸化化合物を含むが、その場合、リン酸化は有機化合物のヒドロキシ基に行われる。いくらかの実施形態では、安定なACCは、クエン酸、ホスホセリン、ホスホスレオニンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される安定剤を含む。いくらかの実施形態では、安定なACCはクエン酸を含む。
【0104】
ホスフェート基、ホスファイト基、ホスホネート基およびそれらの塩またはエステルを含む安定剤の非制限的な例には、フィチン酸、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸テトラエチル、リブロース二リン酸、エチドロン酸およびその他の医療用二リン酸塩、3-ホスホグリセリン酸塩、グリセルアルデヒド-3-リン酸、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸ナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、ニトリロトリ(メチルホスホン酸)、5-ホスホ-D-リボース-1-二リン酸5ナトリウム塩、アデノシン-5’-二リン酸2ナトリウム塩、アデノシン-5’-三リン酸ナトリウム塩水和物、アルファ-D-ガラクトサミン-1-リン酸、2-ホスホ-L-アスコルビン酸3ナトリウム塩、アルファ-D-ガラクトース-1-リン酸2ナトリウム塩5水和物、アルファ-D-ガラクトサミン-1-リン酸、O-ホスホリルエタノールアミン2ナトリウム水和物、2,3-ジホスホ-D-グリセリン酸5ナトリウム塩、ホスホ(エノール)ピルビン酸1ナトリウム塩水和物、D-グリセルアルデヒド-3-リン酸、sn-グリセロール-3-リン酸リチウム塩、D-(-)-3-ホスホグリセリン酸2ナトリウム塩、ホスホノ酢酸、DL-2-アミノ-3-ホスホノプロピオン酸、またはそれらの組み合わせが含まれる。生体必須無機イオンには、特に、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、リン、硫黄、窒素、酸化物相のリンまたは硫黄、あるいはアンモニアまたはニトロ基としての窒素が含まれてもよい。
【0105】
安定剤は、ホスホネート化合物、例えば、限定されないが、フィチン酸またはビスホスホネート、ポリホスフェート、例えば、限定されないが、ピロホスフェートまたはポリホスファネート、あるいはオルガノポリホスフェート、例えば、限定されないが、アデノシンジホスフェート(ADP)またはアデノシントリホスフェート(ATP)を更に含んでもよい。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態では、ACCはホスホセリン(P-Ser)またはホスホスレオニン(P-Thr)で安定させる。いくつかの実施形態では、安定なACCはスクロースと水酸化ナトリウムの組み合わせを含む。本発明のいくつかの実施形態では、ACCはクエン酸で安定させる。ACCは、任意で、ホスホセリンとクエン酸の組み合わせで安定させる。
【0107】
安定なACCは、第一安定剤と第二安定剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第一安定剤と第二安定剤は類似している。他の実施形態では、第一安定剤と第二安定剤は異なる安定剤を有する。第一安定剤および/または第二安定剤は、独立に、有機酸、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、アミノ酸を含むオルガノアミン化合物、炭水化物を含むヒドロキシ基含有有機化合物、有機リン化合物またはその塩、生体必須無機イオン、またはそれらの組み合わせから選択できる。安定なACCは3つ以上の安定剤を含み得るが、その場合、該安定剤は同じであってもよいし、異なっていてもよい。安定なACCは3つ以上の安定剤を含み得るが、その場合、ACCの形成および沈殿中に1つ以上の安定剤がACCに添加され(従って「内部」安定剤を構成する)、上記形成後、ACC粒子の表面に別の1つ以上の安定剤が添加される(従って「外部」安定剤を構成する)。安定なACCおよびその調製の更なる例が、参照によりその全体が本明細書に援用される、国際特許公開番号第WO 2009/053967号およびWO 2014/024191号に開示されている。
【0108】
カプセル化マトリックスおよび安定なACCは、各々、1つ以上の安定剤を有してもよい。カプセル化マトリックスに含まれる少なくとも1つの安定剤は、安定なACCに含まれる少なくとも1つの安定剤と同じであってもよい。カプセル化マトリックスに含まれる安定剤(複数も可)は、任意に、安定なACCに含まれる安定剤(複数も可)と同じである。あるいは、安定剤は異なった安定剤であってもよい。カプセル化マトリックスの安定剤は、有機酸、リン酸化有機酸、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、リン酸化アミノ酸およびその誘導体、水酸化アルキルと結合したヒドロキシ基含有有機化合物、またはそれらの組み合わせを含む、上記記載の安定剤のいずれをも有することができる。カプセル化マトリックスは、2つ以上の安定剤、例えば、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の安定剤を含んでもよい。カプセル化マトリックスに含まれる安定剤は、上記開示の安定剤のリストから独立に選択できるが、その場合、該安定剤は同じであってもよいし、異なっていてもよい。カプセル化された安定なACC組成物は、約0.1重量%から20重量%の安定剤を有してもよいが、その場合、カプセル化マトリックスは最大約20重量%の安定剤を含んでもよく、安定なACCは0.1重量%から10重量%の安定剤を含んでもよい。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0109】
本明細書で使用される場合、「ACC安定剤」または「ACC安定化剤」と言う用語は同じ意味で使用され、カプセル化されていない炭酸カルシウムを実質的に乾燥した条件下で非晶質状態に保つのに役立つあらゆる物質を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に乾燥した条件」または「乾燥」と言う用語は、安定なACCの全量に対して15重量%未満の水を含む安定なACCの環境を意味する。
【0110】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの比率は1対10から10対1である。上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの比率は1対5から5対1である。上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの比率は1対3から3対1である。上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアとカプセル化マトリックスとの比率は1対2から2対1である。
【0111】
本明細書で使用される場合、「厚いコーティング」と言う用語は、ACC成分よりも重い1層以上のコーティングを一般的に意味する。いくつかの実施形態では、ACCは最大10%w/wを構成し、コーティングは粒子の少なくとも90%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ACCは最大20%w/wを構成し、コーティングは粒子の少なくとも80%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ACCは最大30%w/wを構成し、コーティングは粒子の少なくとも70%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ACCは最大40%w/wを構成し、コーティングは粒子の少なくとも60%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ACCは50%w/w未満を構成し、コーティングは粒子の50%w/w超を構成する。
【0112】
本明細書で使用される場合、「薄いコーティング」と言う用語は、ACC成分よりも軽い1層以上のコーティングを一般的に意味する。いくつかの実施形態では、ACCは最大90%w/wを構成し、コーティングは粒子の少なくとも10%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ACCは最大80%w/wを構成し、コーティングは粒子の少なくとも20%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ACCは最大70%w/wを構成し、コーティングは粒子の少なくとも30%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ACCは最大60%w/wを構成し、コーティングは粒子の少なくとも40%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、ACCは50%w/w超を構成し、コーティングは粒子の50%w/w未満を構成する。
【0113】
いくつかの実施形態では、薄いコーティングは厚いコーティングと比較してあまり好ましくない、および/または食用製品の味を変化させる。いくつかの実施形態では、コア成分中のシリカ量が少なければ、あるいはそれが存在しなければ、コーティングされたACCを含む食用製品の味が改善する。
【0114】
例えば、カプセル化実験により、活性成分量とカプセル化効率と間の相関関係が示されている。カプセル化材の量を増やせば、湿った条件下で安定なACCの安定度が増大する。実験条件下において、安定なACCの量が60重量%程度に高いと、以下に示されるように(例えば、以下の処方21を参照)、カプセル化された状態で安定することが分かった。斯かる例では、当該活性成分は安定なACCから成る。従って、いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、少なくとも約8重量%、例えば、約10%、約15%、約20%、約30%または約40%の活性成分を含む。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、少なくとも約5重量%、例えば、約10%、約15%、約20%、約30%または約40%の安定なACCを含む。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約20重量%超の安定なACC、または約30重量%超、更には約40重量%超の安定なACCを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では(例えば、以下の処方21を参照)、カプセル化された安定なACC組成物は、少なくとも約50%の活性成分、例えば、安定なACCを含む。本発明者達が実験的に証明したことであるが、1週間の冷蔵保存後、約90%のカプセル化された安定なACCがカプセル化されたままであったし、斯かる貯蔵の2週間後、少なくとも約70%のカプセル化された安定なACCがカプセル化されたままであったし、斯かる貯蔵の3週間後、約50%のカプセル化された安定なACCがカプセル化されたまま(これは活性成分の約25%超の量に相当)であった。
【0116】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、ACCコアは更にシリカを有する。
【0117】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスはACCコアを完全にコーティングする。
【0118】
本発明で使用される場合、「少なくとも2つのコーティング層」と言う句は、少なくとも2つのコーティング工程でコーティングされているACCコアを一般的に意味し、斯かる工程には異なるコーティング技術が関係していてもよいし、類似の技術が関係していてもよい。各工程において、ACCコア(第一工程)または予備コーティングされたACCコア(第2工程)をコーティングするのに、類似のコーティング層または異なるコーティング層が用いられる。
【0119】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは第一カプセル化剤と第二カプセル化剤を有し、当該第一カプセル化剤および第二カプセル化剤は、調製手順の異なる工程でACCコアに添加される。第一カプセル化剤および第二カプセル化剤は同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第一カプセル化剤および第二カプセル化剤は異なっている。第二カプセル化剤は1つ以上の工程で添加してもよい。第一カプセル化剤と第二カプセル化剤との比率は、約4対1から約1対4であってよい。第一カプセル化剤および/または第二カプセル化剤は、別個のカプセル化剤の組み合わせを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化は複数の工程で行われ、複数層のコーティングをACC粒子または凝集体上に施してもよい。斯かる実施形態では、各層の組成は異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、内部層はカプセル化工程中に更なる安定性を提供できるし、外部層は保存期間中の更なる保護、家庭料理中の更に優れた安定性、消費中のより好ましい味並びに他の機能目的、例えば、投与時の管理放出等を提供する。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、内部層はカプセル化工程中に更なる熱安定性を提供できるし、外部層は湿気および/または水に対するより優れた保護を提供する。
【0120】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは外部コーティングで更にコーティングされる。本明細書で使用される場合、外部コーティングと言うのは、カプセル化後、追加のマトリックス層を形成することなく、カプセル化されたACCコア上に施される物質を意味する。例えば、斯かる外部コーティングは、カプセル化マトリックスに耐水シール性を提供できる。代替的に、コーティングは、潤滑剤、円滑剤、着色剤、増粘剤、結合剤、調味料またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を含んでもよい。適切な賦形剤には、限定されないが、二酸化チタン、シリカ、タルクまたは硼酸、および/または砂糖が含まれる。外部コーティングはカプセル化剤を含んでもよい。当該カプセル化剤とカプセル化マトリックスのカプセル化剤は同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、コーティングは、カプセル化マトリックスのカプセル化剤とは異なるカプセル化物質を含んでいる。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスとコーティングの重量比は約10対1から約1対3であってよい。
【0121】
本明細書で使用される場合、「2つのコーティング層から成る」と言う句は、2つのコーティング工程でコーティングされているACCコアを一般的に意味し、斯かる工程には異なるコーティング技術が関係していてもよいし、類似の技術が関係していてもよい。各工程において、ACCコア(第一工程)または予備コーティングされたACCコア(第2工程)をコーティングするのに、類似のコーティング層または異なるコーティング層が用いられる。
【0122】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、少なくとも1つの膜形成ポリマーを含む1つのコーティング層から成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、少なくとも1つの脂質を含む1つのコーティング層から成る。
【0123】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは2つのコーティング層から成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは膜形成ポリマーを有する2つのコーティング層から成るが、その場合、各層の膜形成ポリマーは同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは膜形成ポリマーを有する1つのコーティング層と、脂質を有する1つのコーティングとから成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは脂質を有する2つのコーティング層から成るが、その場合、各層の脂質は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、カプセル化マトリックスは少なくとも2つの別個のカプセル化剤を含む。2つのカプセル化剤の重量比は、約4対1から約1対4であってよい。いくつかの実施形態では、重量比は約3対1から約1対3、または約2対1から約1対2である。いくつかの好ましい実施形態では、重量比は約1対1である。
【0125】
特に、カプセル化マトリックスは、4対1から1対4、3対1から1対3、2対1から1対2、更には約1対1の重量比で、天然樹脂と蛋白質を含んでいてもよい。別の実施形態では、カプセル化マトリックスは、4対1から1対4、3対1から1対3、2対1から1対2、更には約1対1の重量比で、天然樹脂と脂肪酸を含んでいてもよい。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。
【0126】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、第一カプセル化剤と第二カプセル化剤を含む。特に、第一カプセル化剤は天然樹脂、脂肪酸またはそれらの組み合わせを含み、第二カプセル化剤は油または脂肪酸エステルを含む。他の実施形態では、第一カプセル化剤は生体適合性ポリマーを含み、第二カプセル化剤は油を含む。いくつかの実施形態では、第一カプセル化剤は食用ワックスを含み、第二カプセル化剤は親水コロイドを含む。第一カプセル化剤と第二カプセル化剤との重量比は、約4対1から約1対4であってよい。
【0127】
本明細書で使用される場合、「親水コロイド」と言う用語は、水溶性ポリマー、すなわち組成物の粘性を高める機能のある親水コロイドを意味する。いくつかの実施形態では、親水コロイドは、セルロース、セルロース誘導体、例えば、セルロースエーテル、セルロースエステル、またはそれらの塩を含む。セルロース誘導体は、限定されないが、アルキルおよびヒドロキシアルキルセルロース、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはそれらの組み合わせを含む。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACCは、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される親水コロイドを含む。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、親水コロイドはエチルセルロースである。
【0128】
他の適切な親水性コロイドは、限定されないが、ローカスビーンガム(LBG)、グアーガム、キサンタンガム、トラガカントガム、ラムダカラギーナン、アラビアゴム、カラヤガム、タマリンドガム、加水分解ゼラチン、タマリンドガム、フェヌグリークガム、カシアガム、タラガム、寒天、アラゴース、アルギン酸塩、キチン、キトサン、カードラン、ジェラン、コンニャクマンナン、ペクチンおよびカラギーナンを含む。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。カプセル化された安定なACC組成物は、約2重量%から50重量%の親水コロイドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約2重量%から20重量%の親水コロイドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約8重量%から11重量%の親水コロイドを含んでもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、内部カプセル化組成物と外部カプセル化組成物とを有する。内部カプセル化組成物および外部カプセル化組成物は同じであってもよいし、異なっていてもよいし、1つ以上の共通成分を含んでいてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、内部カプセル化組成物および外部カプセル化組成物は異なっている。特に、内部カプセル化組成物は天然樹脂、脂肪酸またはそれらの組み合わせを含んでもよく、外部カプセル化組成物は油および/または脂肪酸エステルを含んでもよい。内部カプセル化組成物と外部カプセル化組成物との重量比は、約4対1から約1対4であってよい。
【0130】
カプセル化は2工程以上で行ってもよい。第一または第二カプセル化組成物と同じまたは異なる組成物の追加のカプセル化層を粒子状に追加コーティングとして沈積させてもよい。いくつかの実施形態では5層以下が使用されるし、いくつかの実施形態では2つ以下のカプセル化工程が使用される。
【0131】
本明細書で使用される場合、「少なくとも3つのコーティング層」と言う句は、少なくとも3つのコーティング工程でコーティングされているACCコアを一般的に意味し、斯かる工程には異なるコーティング技術が関係していてもよいし、類似の技術が関係していてもよい。各工程において、ACCコア(第一工程)または予備コーティングされたACCコア(第2工程)をコーティングするのに、類似のコーティング層または異なるコーティング層が用いられる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「3つのコーティング層から成る」と言う句は、3つのコーティング工程でコーティングされているACCコアを一般的に意味し、斯かる工程には異なるコーティング技術が関係していてもよいし、類似の技術が関係していてもよい。各工程において、ACCコア(第一工程)または予備コーティングされたACCコア(第2工程)をコーティングするのに、類似のコーティング層または異なるコーティング層が用いられる。
【0133】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは3つのコーティング層から成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは膜形成ポリマーを含む1つのコーティング層と脂質を含む2つのコーティング層から成るが、その場合、脂質は同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは膜形成ポリマーを含む2つのコーティング層(その場合、膜形成ポリマーは同じであってもよいし、異なっていてもよい)と脂質を含む1つのコーティング層から成る。
【0134】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは4つのコーティング層から成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは膜形成ポリマーを含む1つのコーティング層と脂質を含む3つのコーティング層から成るが、その場合、脂質は同じであってもよいし、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは脂質を含む1つのコーティング層と膜形成ポリマーを含む3つのコーティング層から成るが、その場合、膜形成ポリマーは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0135】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは5つのコーティング層から成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは膜形成ポリマーを含む1つのコーティング層と脂質を含む4つのコーティング層から成るが、その場合、脂質は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティング層は、脂肪酸および樹脂、好ましくは、ステアリン酸およびシェラックを含む、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティング層は、脂肪酸および樹脂、好ましくは、ステアリン酸およびシェラックを重量比4対1から1対4で含む、またはその重量比で成る。いくつかの実施形態では、脂肪酸および樹脂、好ましくは、ステアリン酸およびシェラックを重量比4対1から1対4で含む、またはその重量比で成る少なくとも1つのコーティング層は、安定なACCとの関係では、重量比3対1から1対1である。いくつかの実施形態では、脂肪酸および樹脂、好ましくは、ステアリン酸およびシェラックを重量比4対1から1対4で含む、またはその重量比で成る少なくとも1つのコーティング層は、安定なACCとの関係では、重量比2対1である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティング層は、ポリマー、好ましくはPVPを更に含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティング層は、蛋白質、好ましくはゼインを含まない。
【0137】
いくつかの実施形態では、脂肪酸および樹脂、好ましくは、ステアリン酸およびシェラックを重量比4対1から1対4で含む、またはその重量比で成る少なくとも1つのコーティング層は、安定なACCとの関係では、重量比2対1であり、ACC安定剤、好ましくはクエン酸を更に含む。いくつかの実施形態では、脂肪酸および樹脂、好ましくは、ステアリン酸およびシェラックを重量比4対1から1対4で含む、またはその重量比で成る少なくとも1つのコーティング層は、安定なACCとの関係では、重量比2対1であり、脂肪酸および樹脂と共に、ACC安定剤、好ましくはクエン酸を重量比1対10で更に含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、ステアリン酸およびシェラックを重量比4対1から1対4で含む、またはその重量比で成る少なくとも1つのコーティング層は、安定なACCとの関係では、重量比2対3であり、ACC安定剤、好ましくはクエン酸を更に含む。いくつかの実施形態では、脂肪酸および樹脂、好ましくは、ステアリン酸およびシェラックを重量比4対1から1対4で含む、またはその重量比で成る少なくとも1つのコーティング層は、安定なACCとの関係では、重量比2対3であり、脂肪酸および樹脂と共に、ACC安定剤、好ましくはクエン酸を重量比1対5で更に含む。いくつかの実施形態では、上述の少なくとも1つのコーティング層は、油、好ましくはパーム油、または脂肪酸、好ましくはグリセリルモノステアレートを含む第二のコーティング層により更にコーティングされる。
【0139】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは少なくとも2つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、各コーティング層は親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは少なくとも2つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、各コーティング層は親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成り、少なくとも1つのコーティング層は、ワックスおよび脂肪酸エステル、好ましくは、カンデリラワックス、ソルビタンモノステアレートおよびステアリン酸グリセリルを含む、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成る外部コーティング層を含まない。
【0140】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成る少なくとも3つのコーティング層と、ワックスおよび脂肪酸エステル、好ましくはカンデリラワックスおよびステアリン酸グリセリルを含む、またはそれらから成る少なくとも1つのコーティング層とを含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成る少なくとも1つのコーティング層を含む、またはそれから成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロース、およびColorconを含む、またはそれらから成る少なくとも2つのコーティング層を含む、またはそれらから成る。
【0141】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、ワックス、脂肪酸エステルおよび界面活性剤、好ましくは、カンデリラワックス、パラフィンワックス、ステアリン酸グリセリドおよびSisternaを含む、またはそれらから成る少なくとも2つのコーティング層を含む、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またそれから成る少なくとも1つのコーティング層と、ワックスおよび脂肪酸、好ましくは、ミツロウおよびステアリン酸を含む、またはそれらから成る少なくとも2つのコーティング層とを含む、またはそれらから成る。
【0142】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またそれから成る少なくとも1つのコーティング層と、ワックスおよび脂肪酸エステル、好ましくは、カンデリラワックス、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタントリステアレートを含む、またはそれらから成る少なくとも1つのコーティング層とを含む、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは少なくとも4つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、第一(内部)コーティング層は、生体適合性ポリマー、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)およびポリビニルアルコール(PVA)を含み、またはそれから成り、第二コーティング層は、ワックス、脂肪酸エステル、親水コロイドおよび脂肪酸、好ましくはミツロウ、ポリオキシソルビタンモノオレエートおよびソルビタンモノステアレートを含み、またはそれらから成り、第三コーティング層は、ワックス、脂肪酸エステル、親水コロイドおよび脂肪酸、好ましくはミツロウ、ポリオキシソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、メチルセルロースおよびステアリン酸を含み、またはそれらから成り、第四(外部)コーティング層は、ワックス、脂肪酸エステル、親水コロイドおよび脂肪酸、好ましくはミツロウ、ポリオキシソルビタンモノオレエートおよびソルビタンモノステアレートを含み、またはそれらから成る。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成る少なくとも1つのコーティング層と、ワックスおよび脂肪酸エステル、好ましくはカンデリラワックス、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタントリステアレートを含む、またはそれらから成る少なくとも1つのコーティング層と、ワックスおよび脂肪酸エステル、好ましくはミツロウ、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタントリステアレートを含む、またはそれらから成る少なくとも1つのコーティング層とを含む、またはそれらから成る。
【0143】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロースおよびColorconを含む、またはそれらから成る少なくとも1つのコーティング層を含む、またはそれらから成る。
【0144】
いくつかの実施形態では、ACCコアはシリカを含み、カプセル化マトリックスは、親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成る少なくとも1つのコーティング層と、ワックス、好ましくはカルナウバワックスおよびカンデリラワックスを含む、またはそれらから成る少なくとも2つのコーティング層とを含む、またはそれらから成る。
【0145】
いくつかの実施形態では、ACCコアはシリカを含み、カプセル化マトリックスは少なくとも4つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、第一(内部)コーティング層は親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成り、少なくとも3つのコーティング層は、各々、ワックス、好ましくは米糠ワックスおよびカルナウバワックスを含む、またはそれらから成る。
【0146】
いくつかの実施形態では、ACCコアはシリカを含み、カプセル化マトリックスは少なくとも2つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、コーティング層は、各々、ワックス、好ましくはカルナウバワックスおよびカンデリラワックスを含む、またはそれらから成る。
【0147】
いくつかの実施形態では、ACCコアはシリカを含み、カプセル化マトリックスは少なくとも4つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、第一(内部)コーティング層は親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成り、第二および第三コーティング層は、各々、ワックスおよび脂肪酸エステル、好ましくはカンデリラワックス、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタントリステアレートを含む、またはそれらから成り、第四(外部)コーティング層は、ワックス、好ましくはミツロウおよびカンデリラワックスを含む、またはそれらから成る。
【0148】
いくつかの実施形態では、ACCコアはシリカを含み、カプセル化マトリックスは少なくとも4つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、第一(内部)コーティング層は親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成り、少なくとも3つのコーティング層は、ワックス、好ましくはカルナウバワックスおよびミツロウ並びに界面活性剤、好ましくはスパン65およびスパン60を含む、またはそれらから成る。
【0149】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは少なくとも4つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、第一(内部)コーティング層は親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成り、少なくとも3つのコーティング層は、ワックス、好ましくはカルナウバワックスおよびミツロウ並びに界面活性剤、好ましくはスパン65およびスパン60を含む、またはそれらから成る。
【0150】
いくつかの実施形態では、ACCコアはシリカを含み、カプセル化マトリックスは少なくとも5つのコーティング層を含む、またはそれらから成るが、その場合、第一(内部)コーティング層は親水コロイド、好ましくはエチルセルロースを含む、またはそれから成り、少なくとも4つのコーティング層は、ワックス、好ましくはカルナウバワックスおよびミツロウ並びに界面活性剤、好ましくはスパン65およびスパン60を含む、またはそれらから成る。
【0151】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約5~75重量%の安定なACC、約5~40重量%の天然樹脂、約5~40重量%の脂肪酸、および約0.1~15重量%の安定剤を含む。カプセル化された安定なACC組成物は、任意で、約42~62重量%の安定なACC、約2~20重量%の天然樹脂、約5~22重量%の脂肪酸または脂肪酸エステル、約1~10重量%の安定剤、および約10~30重量%の油を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約20~70重量%の安定なACC、約2~20重量%の親水コロイド、約5~50重量%の食用ワックス、および約5~50重量%の界面活性剤を含む。カプセル化された安定なACC組成物は、任意で、約20~70重量%の安定なACC、約2~20重量%の親水コロイド、約5~50重量%の食用ワックス、約5~50重量%の界面活性剤、および約2~25重量%の脂肪酸または脂肪酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、約5~30重量%の安定なACC、約25~55重量%の生体適合性ポリマー、約10~30重量%の油、約1~10重量%の脂肪酸エステル、および約25~55重量%の界面活性剤を含む。
【0153】
上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、食料品と混合された場合に不活性である。上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、食料品と混合された場合に、その食料品の味を変えない。上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、食料品と混合された場合に、その食料品の色を変えない。上述の組成物のいくつかの実施形態では、組成物は、食料品と混合された場合に、その食料品のpHを変えない。
【0154】
別の態様では、本発明は、上述のカプセル化された安定なACC組成物を少なくとも1つ含む食品を更に提供する。
【0155】
ある食品または食品適用に関しては、消費中に不快な感触を与えないため、平均粒子径は150μm未満に制限されている。いくつかの実施形態では、平均粒子径は約100~200μmであるべきである。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明のカプセル化マトリックスは、食品の消化中にACCの放出を制御するように構成される。本明細書に詳述されているように、カプセル化ACCの種々の組成物が、液体または柔らかい乳製品に用いられた場合に、非晶質の維持およびカルシウムイオンへの溶解欠如という両方の意味で安定である。いくつかの実施形態では、カプセル化は、胃腸(GI)管においてカルシウムを管理放出させる。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、安定なACCをGI管で放出するように構成される。いくつかの実施形態では、6.5と7.5の間のpHで安定なACCを放出させるように構成される。いくつかの実施形態では、約2未満のpHで安定なACCを放出するように構成される。カプセル化マトリックスは、任意で、例えばGI管内でカルシウムを管理放出させるように構成される。本明細書で使用される場合、「管理放出」と言う用語は、刺激および/または時間に反応して安定なACCを放出するという意味に取られてもよい。例えば、カプセル化マトリックスは、GI管に沿って徐放出される、あるいは(GI管の一部に)遅延放出されるように構成してもよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、安定なACCを管理放出させるように構成される。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、GI管内で安定なACCを放出するように構成される。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、約2未満のpHで安定なACCを放出するように構成される。いくつかの実施形態では、カプセル化マトリックスは、約3未満のpHで安定なACCを放出するように構成される。カプセル化マトリックスは、任意で、約4未満のpHで安定なACCを放出するように構成される。
【0158】
いくつかの実施形態では、食品は乳製品である。いくつかの実施形態では、乳製品は発酵ミルクを含む。いくつかの実施形態では、乳製品は酸性である。いくつかの実施形態では、乳製品はヨーグルトである。いくつかの実施形態では、食品は、消費前に少なくとも50℃の温度で加熱する必要がある。いくつかの実施形態では、食品は、缶詰製品、冷凍食品および粉末食品からなる群から選択される。
【0159】
別の態様では、本発明は上記カプセル化ACC組成物の1つを含む食料品を提供する。
【0160】
本発明のカプセル化された安定なACCは、食品添加物として種々の食料品に用いることができる。特に、カプセル化された安定なACC組成物は、水を含む食料品に用いることができる。食料品の水分含量は、該食料品の全重量の5~98%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、水を含む食品は酸性である。いくつかの実施形態では、食料品に用いられるカプセル化された安定なACC組成物は、以下に更に詳述されるように、該食料品を大気中の湿気に晒した場合にも安定である。
【0161】
いくつかの実施形態では、食料品に用いられるカプセル化された安定なACC組成物は、該食料品の貯蔵器官中ずっと安定している。いくつかの実施形態では、食料品に用いられるカプセル化された安定なACC組成物は、該食料品の加工中ずっと安定している。食料品に用いられるカプセル化された安定なACC組成物は、任意で、該食料品を消費者が後処理している間(例えばミルクまたは水を加える間)ずっと安定している。食料品に用いられるカプセル化された安定なACC組成物は、貯蔵中、大気中の湿気に晒されてもずっと安定している。斯かる実施形態において、ある任意の期間中「ずっと安定している」という用語は、その期間の始めにおける食品中の量と比較し、その期間の終わりの時点でのACCの非晶質相の少なくとも40%、例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%または98%が維持されていることを意味する。いくつかの好ましい実施形態では、非晶質相を維持するACCは溶解していないACCである。
【0162】
いくつかの実施形態では、食料品に用いられるカプセル化された安定なACC組成物は、該食料品が約10℃から25℃の温度、例えば、-5℃から20℃または0℃から10℃の温度で貯蔵される間ずっと安定している。
【0163】
本発明のカプセル化された安定なACC組成物は、乳製品、例えば、限定されないが、ヨーグルト、ミルク、クリーム、およびヨーグルト、ミルクおよびクリームをベースとした飲み物、例えば、チョコレートミルク、フレーバーミルク、アイスコーヒー、サワークリーム、サワーミルク、ソフトチーズ、カテジチーズ、スプレッドチーズ、泡立てクリーム、フレーバーヨーグルト、プリン、並びに少なくとも5重量%の水と菜食主義者またはビーガン用のあらゆる代替物(例えば大豆ベースの代替物を含む)を含む他のあらゆる乳製品に用いることができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、食料品は水を含んでいる。いくつかの実施形態では、食料品の水分量は約5重量%から約98重量%である。いくつかの実施形態では、食料品のpHは酸性である。いくつかの実施形態では、食料品は、製造、貯蔵および/または消費中、冷凍または加熱される。いくつかの実施形態では、食料品は、製造、貯蔵および/または消費中、マイクロ波放射に晒される。
【0165】
いくつかの実施形態によれば、本明細書記載のカプセル化された安定なACC組成物を含む食料品が提供される。いくつかの実施形態によれば、カプセル化された安定なACC組成物は、食料品に用いられると、炭酸カルシウムの少なくとも20%、少なくとも30%、更には少なくとも40%を非晶質で維持する。いくつかの実施形態によれば、カプセル化された安定なACC組成物は、食料品に用いられると、ACC含量の少なくとも20%、少なくとも30%、更にはACC含量の少なくとも40%を維持する。いくつかの実施形態では、「ACC含量」と言う用語は、溶解しないままで残る安定なACCを意味する。食料品は水を含む食料品であってもよい。食料品の水分量は約5%から約98%であり得る。カプセル化された安定なACC組成物を含む食料品は、任意で、乾燥状態で貯蔵され、消費前に液体を加えて水分量を約5重量%から約98重量%にし、その後、長期間(例えば、最高4日間、あるいはそれ以上)液体を加えた後、更に貯蔵してもよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物は、水の存在下、該組成物を含む食料品の市販前調製を行った後、炭酸カルシウムの少なくとも20%を非晶質相で維持する。斯かる市販前調製中、カプセル化された安定なACCは、任意で、約5重量%から約98重量%の水分量を有する環境に、少なくとも24時間晒される。斯かる食料品の貯蔵中、カプセル化された安定なACCは、任意で、50重量%未満、更には20重量%未満の水分量に晒される。
【0167】
いくつかの実施形態では、食料品は乳製品である。いくつかの実施形態では、食料品は酸性の乳製品である。特定の実施形態では、乳製品はヨーグルトである。他の乳製品は、ミルク、クリーム、およびヨーグルト、ミルクおよびクリームをベースとした飲み物、例えば、チョコレートミルク、フレーバーミルク、アイスコーヒー、サワークリーム、サワーミルク、ソフトチーズ、カテジチーズ、スプレッドチーズ、泡立てクリーム、フレーバーヨーグルト、プリン、および他のあらゆる乳製品並びに菜食主義者またはビーガン用のあらゆる代替物(例えば少なくとも5重量%の水を含む大豆ベースの代替物を含む)等であり得る。任意で、乳製品またはその代替物は15重量%超の水を含み、ある実施形態では、50重量%以上の水を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、本発明は、安定なACCを有する水を含む食料品を提供するが、その場合、ACCは、その非晶質相を少なくとも20%、少なくとも30%、更には少なくとも40%、少なくとも4日間、更には少なくとも1週間保持する。いくつかの実施形態では、食料品は、ACC含量の少なくとも20%を少なくとも1週間、あるいは少なくとも30%、更には少なくとも40%保持する。いくつかの実施形態では、安定なACCは安定剤を含んでいる。安定なACCは、任意で、カプセル化剤を含む。いくつかの実施形態では、安定なACCは、安定化剤とカプセル化剤の組み合わせを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、食料品は乳製品である。いくつかの実施形態では、乳製品は、ヨーグルト、ミルク、チーズ、アイスクリームおよびクリームからなる群から選択される。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。いくつかの実施形態では、乳製品はヨーグルトである。いくつかの実施形態では、薄い層のコーティングは、ヨーグルトの味、ヨーグルトの色、またはヨーグルトのpHに影響を与えない。いくつかの実施形態では、薄い層のコーティングは、ヨーグルトの味、ヨーグルトの色、またはヨーグルトのpHに影響を与えない。
【0170】
別の態様では、本発明は、上記のカプセル化された安定なACC組成物を調製するための1工程製造法を更に提供するが、この方法には、噴霧乾燥またはパンコーティングからなる群から選択される工程が含まれる。
【0171】
別の態様では、本発明は、上記のカプセル化された安定なACC組成物を調製するための複数工程製造法を更に提供するが、この方法には少なくとも2工程が含まれ、各工程は、独立に、噴霧乾燥、流動層コーティング、パンコーティングおよび乳化からなる群から選択される。
【0172】
本発明は、カプセル化された安定なACC組成物の調製方法を更に提供する。いくつかの実施形態では、該方法は、安定なACCを含む活性成分を提供することと、少なくとも1つのカプセル化剤を含むカプセル化マトリックス内に安定なACCをカプセル化することとを有する。活性成分のカプセル化は、あらゆる既知のカプセル化技術、例えば、限定されないが、噴霧乾燥、流動層コーティング、ソリューションコーティング、パンコーティング、噴霧コーティング、超音波噴霧、溶融射出、溶融押出、乳化、コアセルベーション、押出、共押出、包接錯体形成、超臨界流体(RESS)の急速膨張によるカプセル化、凍結乾燥または真空乾燥、ナノ粒子調製、およびそれらの組み合わせに従って実行できる。いくつかの実施形態では、カプセル化技術は、噴霧乾燥、流動層コーティング、乳化およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、活性成分のカプセル化は1工程法である。他の実施形態では、カプセル化処理は複数工程法である。特定の実施形態では、カプセル化処理は2工程法である。カプセル化処理の各工程には、上記カプセル化技術を適用してもよい。
【0173】
いくつかの実施形態では、上述の組成物は、1工程カプセル化法で製造される。いくつかの実施形態では、カプセル化処理は噴霧乾燥またはパンコーティングを含む。いくつかの実施形態では、上述の組成物は、複数工程カプセル化法で製造される。いくつかの実施形態では、複数工程カプセル化処理は、噴霧乾燥、流動層コーティング、パンコーティングおよび乳化からなる群から独立に選択される少なくとも2つの工程を含む。いくつかの実施形態では、複数工程カプセル化処理は、少なくとも2つの層(組成または配合面で同じであってもよいし、異なっていてもよい)により安定なACCをカプセル化するプロセスを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、カプセル化された安定なACC組成物の調製方法は噴霧乾燥を含む。活性成分の噴霧乾燥は、活性成分をキャリア物質の水溶液に溶解、乳化または分散し、混合物をホットチャンバ内に原子化および噴霧することにより、一般的に達成される。任意で、活性成分を有機溶液内に噴霧乾燥してもよい。
【0175】
いくつかのプロセスでは、特に、安定なACCを結晶化させる傾向にある高温工程を必要とするプロセスでは、該プロセスおよび乾燥中にACCの安定性を最大化するため、水の代わりに有機溶媒を使用するのが好ましいであろう。斯かる場合には、水の存在は、例えば、溶媒組成物の1重量%、5重量%、10重量%、20重量%、50重量%または80重量%のレベルまで完全に排除できる。カプセル化プロセスのいくつかの実施形態では、エタノール、アセトン、プロパン、ブタン、酢酸ブチル、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、メチルプロパン-1-オール、メチルプロパン-2-オール、酢酸メチル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ヘキサン、エチルメチルケトン、イソブテンまたはジエチルエーテルを含む有機溶媒(有機溶媒の混合物も含む)に可溶なカプセル化剤を用いて行うことができる。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態では、カプセル化処理には、水相、有機相またはそれらの組み合わせを有する溶液が含まれるが、その場合、水と有機溶媒は混和可能、部分的に混和可能または混和不能(従って乳濁液を形成する)である。各可能性は本発明の個別の実施形態を表している。有機相はエタノール、アセトン、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。水相と有機相の重量比は約1対8から約1対99であってよい。いくつかの実施形態では、噴霧乾燥溶液における水相と有機相の重量比は1対11.5である。いくつかの実施形態によれば、噴霧乾燥溶液は、本質的に、エタノール、アセトン、プロパン、ブタン、酢酸ブチル、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、メチルプロパン-1-オール、メチルプロパン-2-オール、酢酸メチル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ヘキサン、エチルメチルケトン、イソブテン、ジエチルエーテル、イソプロピルアルコールまたはそれらの組み合わせから成る溶媒を含む。
【0177】
いくつかの実施形態によれば、カプセル化プロセスの溶液は、疎水性カプセル化剤の溶解パラメーターの故に、水を本質的に全く含まない。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、カプセル化された安定なACC組成物の調製方法は噴霧乾燥または流動層コーティングを含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、噴霧乾燥と流動層コーティングとを有する2工程カプセル化プロセスを含む。
【0179】
流動層コーティングは、バッチ処理または連続設定で粉末粒子にコーティングを施す技術である。粉末粒子は特定の温度の空気流で浮遊させ、それに原子化されたコーティング材を噴霧する。各粒子は、噴霧ゾーンに来る度に、時間と共に徐々に覆われる。コーティング材は、ポンピングおよび原子化が可能でなければならず、熱に安定していなければならず、粒子表面上に膜を形成できなければならないので、良好な粘性を有していなければならない。コーティング材は、親水コロイドまたは蛋白質の水溶液を含んでいてもよい。あるいは、溶融脂質をコーティング材として使用できるが、その場合、該脂質は底部または上部から適用できる。使用される脂質は、例えば、硬化植物油、脂肪酸、脂肪酸エステル、界面硬化剤および/またはワックスである。本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、流動層コーティング材は、溶融脂質、例えば、限定されないが、油または脂肪酸エステルを含む。
【0180】
いくつかの実施形態によれば、カプセル化された安定なACC組成物の調製方法は乳化を含む。親水性の活性成分の乳化処理には、油と活性成分の水溶液とを含む油中水型乳濁液を形成することと、カプセル化剤および任意で界面活性剤を添加することと、油中水型乳濁液の水相を崩壊させてカプセル化活性成分を形成することとを含んでもよい。乳化によりカプセル化を行うのに適したカプセル化剤は、生体適合性ポリマーおよび脂肪酸エステルを含む。油中水型乳濁液の油相を形成する油は、液体パラフィン、植物油または中鎖トリグリセリド油を含んでもよい。
【0181】
本発明のいくつかの実施形態では、カプセル化処理はマトリックス材を提供するが、その場合、安定なACCはカプセル化マトリックス全体に分配される。他の実施形態では、カプセル化処理はコアシェル材を提供するが、その場合、安定なACCは、カプセル化材のシェル内のコアに包み込まれる。カプセル化処理は、任意で、カプセル化マトリックス内に分配されたACCを有するコアシェル材を提供する。カプセル化処理は、任意で、カプセル化材上のコーティング内に包み込まれたコアシェル材を提供する。
【0182】
いくつかの実施形態では、ACC粉末配合物とコーティング組成物の溶媒との比は、ACCの結晶化を最小化するため、1対1までである。いくつかの実施形態では、コアACC組成物は、カプセル化の前にサブコーティングされる。いくつかの実施形態では、斯かるサブコーティング材は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される親水コロイドを含む。いくつかの実施形態では、カプセル化処理には加熱が含まれる。いくつかの実施形態では、斯かる加熱は80℃から120℃にまで達する。いくつかの実施形態では、カプセル化は非水性環境下で行われる。いくつかの実施形態では、マトリックス組成物は、本質的に、エタノール、アセトン、プロパノール、プロパン、ブタン、酢酸ブチル、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、メチルプロパン-1-オール、メチルプロパン-2-オール、酢酸メチル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ヘキサン、エチルメチルケトン、イソブテン、ジエチルエーテル、イソプロピルアルコールまたはそれらの組み合わせから成る溶媒を含む。いくつかの実施形態によれば、カプセル化された安定なACC組成物は、1工程プロセスまたは複数工程プロセス含むカプセル化手順により製造される。カプセル化手順は、噴霧乾燥、流動層コーティング、ソリューションコーティング、パンコーティング、噴霧コーティング、超音波噴霧、溶融射出、溶融押出、乳化、コアセルベーション、押出、共押出、包接錯体形成、超臨界流体(RESS)の急速膨張によるカプセル化、凍結乾燥または真空乾燥、ナノ粒子調製、またはそれらの組み合わせからなる群から選択してもよい。
【0183】
いくつかの実施形態によると、カプセル化された安定なACC組成物のカプセル化処理は、噴霧乾燥、流動層コーティング、乳化またはそれらの組み合わせから選択される。
【0184】
本明細書で使用される場合、量、期間等の測定可能な値に関する「約」と言う用語は、特定の値から+/-10%、+/-5%、+/-1%、更には+/-0.1%の変量を含むものと解釈される。
【0185】
これまで本発明を一般的に記載してきたが、以下の実施例を参照することにより、その内容がより容易に理解されることであろう。但し、以下の実施例は例示的に示されたものであり、本発明を制限する意図を持つものではない。
【0186】
実施例
実施例1 カプセル化された安定なACCの1工程(噴霧乾燥)調製(処方1~10)
材料:使用される材料は以下の方法で入手した。Amorphical社製の安定化ACC材、Acros社のPVP K90(ロット番号:AO206330001)、Gattefosse社製のグリセリンジステアレート(Precitol ATO 5)(ロット番号:131343)、メルク社製のステアリン酸(ロット番号:K36786561 716)、シグマ社製のゼイン(ロット番号:SLBB1867V)、Fluka社製のシェラックワックス(ロット番号:BCBJ2843V)、J.T.Baker社製の無水アルコール(ロット番号:1104004002)、J.T.Baker社製のアセトン(ロット番号:1101810004)、マキシマ社製の99,995純粋な圧縮窒素(200atm)。
【0187】
ACCをカプセル化するため、以下の表1および表2に要約される組成物を噴霧乾燥を用いて製造した。噴霧乾燥したカプセル化ACCの全体的な調整方法は以下の工程を含む。(1)カプセル化剤の有機/水溶液による溶解、(2)微細なACC凝集物の分散、および(3)従来の実験室スケールの噴霧乾燥器による噴霧乾燥。
【0188】
以下の方法が、評価した全組成物の代表的なものである。ゼインとシェラックの混合物をエタノール/水、アセトン/水またはエタノール/アセトンの混合液に40℃で溶解した。次に、他の全ての不活性成分を該溶液に溶解した。得られた透明な溶液を室温まで冷した。
【0189】
ACCの適量を450ミクロンメッシュの篩にかけた。450ミクロン以下の分画を純粋エタノールまたはアセトンに分散し、実験室スケールのホモジェナイザーを用いて10,500rpmで均質化した。ACC分散液をカプセル化賦形剤溶液に添加し、得られた分散液を連続撹拌下に噴霧乾燥した。内部温度は100℃から110℃に保ち、外部温度は75℃から82℃に保った。乾燥ガスは窒素を用いた。その結果、顆粒状の粉末粒子が得られた。
【0190】
以下の表1および表2は、適切なカプセル化配合物の評価に用いた種々の配合物/溶媒混合物を示す。
【0191】
【0192】
【0193】
処方5、7、9および10を水試験の前にX線を用いて分析したが、非晶質構造はほとんど維持されており、噴霧乾燥プロセスも重大な結晶化を何ら引き起こさなかったことを、XRDパターンが証明した。処方5は微量のバテライトと0.7%のカルサイトを示したのみであった(
図1A)。
【0194】
噴霧乾燥バッチを更に試験した。水と約30分間混合し、0.8μmの酢酸セルロース膜で粉末を濾過し、終夜真空オーブンで乾燥し、それからX線を用いて分析した。水に浸漬した粉末のXRDパターンは非水和の噴霧乾燥粉末のそれとは全く異なるものであった。水に浸漬した粉末は、例えば
図1BのXRDパターンから分かるように、完全に結晶化されていた(ほとんどがカルサイト)。特定の理論や機構に拘束されずに推論すれば、水へ晒されることによりACCの結晶化が生じたと考えられる。
【0195】
走査電子顕微鏡(SEM)で調べた配合物は、カプセル化材とランダムに混合されたACCの凝集体を示した。形成された顆粒は、典型的な粒子径が5ミクロンから20ミクロンの範囲の不規則な形を有していた。微細なACC粒子および凝集体がカプセル化材の表面にも検出された。特定の理論や機構に拘束されずに推論すれば、少なくともACCのある部分が、凝集体の外部表面か、あるいは乾燥工程中に形成された内部表面(凝集体粒子内に空洞が形成されている)で水に晒されたことを示しているようだ。
【0196】
実施例2 水性媒体を使用しない、カプセル化された安定なACCの1工程(噴霧乾燥)調製(処方11~16)
処方1~10で見られる結晶化の問題を乗り越えるため、ゼイン、シェラック、ステアリン酸およびポリビニルピロリドン(PVP)賦形剤を基に、追加の配合物を調製した(表3)。有効なカプセル化を得るため、ACCの重量%を60%から30~35%に減らし、処理中、水性媒体(水)の使用を無くした。処方1~16は30分間水中で試験し、それから濾過し、真空で乾燥した。得られた粉末は、水の侵入に対して処方1~10よりも有意に優れた安定性を示した。従って、脂肪酸(ステアリン酸)および樹脂(シェラック)を含むシェルがACC粒子に耐水性を与えると結論してもよいであろう。脂肪酸と樹脂間の重量比(例えば1対1、0.5対1.5または1.5対0.5の混合)は、耐水性の程度を慎重に操作し予め決定するのに使用し得ることも分かった。水に浸漬させた処方11~16のXRDの結果を以下の表4および
図2A~
図2Fに示す。組成物中に水性媒体がなければ、結晶化および結晶相の防止に極めて優れた効果が生じることを、この結果は更に示している。
【0197】
【0198】
【0199】
ACC/樹脂/脂肪酸の相互作用を更によく理解するため、処方11(結晶化は僅かに31%)および処方15(結晶化67%)をSEM分析した。処方11では、3ミクロンから8ミクロンの丸い形の粒子および凝集体が観察される(
図3Aおよび
図3B)(ACC33%、ステアリン酸33%、シェラック33%)。対照的に、処方15では、極めて不規則な形の粒子が観測された(
図3Cおよび
図3D)(ACC34%、ステアリン酸30%、シェラック15%、PVP6%、ゼイン15%)。これは成分の不親和性と相分離の証拠である。
図3Eは非カプセル化ACCの比較SEM像を示す。
【0200】
実施例3 安定化剤を添加した、カプセル化された安定なACCの1工程(噴霧乾燥)調製(処方17~20)
追加の噴霧乾燥カプセル化処理を、処方11の安定組成物に4%から6%のACC安定剤クエン酸(CA)を添加することにより行った。追加組成物(処方17~20)を表5に示す。特定の理論や機構に拘束されずに推論すれば、クエン酸はACCの表面と反応し結晶化を更に防止すると考えられる。しかし、クエン酸のACC表面への沈積により、カプセル化配合物の付着親和性が高まり、更に密閉されたシェルが形成されるという可能性もある。
【0201】
【0202】
以前の実験同様、得られた組成物を水中に30分間浸漬した。次に、乾燥粉末をXRD分析にかけた。その結果は、ACCがほぼ完全に保持されている状態を示した。XRD分析により、3%未満の結晶化が観察された。
【0203】
実施例4 カプセル化された安定なACCの2工程(噴霧乾燥および流動層)調製(処方21~23)
材料:使用される材料は以下の方法で入手した。Amorphical社製の安定化ACC材、BASF社製のモノステラリン酸グリセリル(クチーナ)、メルク社製のステアリン酸、シグマ社製のクエン酸、Fluka社製のシェラックワックス、社製のパーム油、J.T.Baker社製の無水アルコール(ロット番号:1104004002)、J.T.Baker社製のアセトン(ロット番号:1101810004)、マキシマ社製の99,995純粋な圧縮窒素(200atm)。
【0204】
プロセス用機器:使用される機器は以下の方法で入手した。Precisa社製のセミ化学天秤、Swery Electronics社製のアルミ箔袋/シーリングマシン、除湿器S&M DHUM-16 PLUS、ホモジェナイザーART-Micra D8(番号11000)、冷却ブロック付ビュッヒミニ噴霧乾燥器B-290(除湿器B-290)、圧縮機/供給ガス濾過システム、実験室スケール流動層マシン、99.995純粋な圧縮窒素(200atm)を有するバルーン。
【0205】
ACCカプセル化処理および組成物
表7に要約した組成物は、噴霧乾燥および流動層コーティング技術を用いて製造した。表7は表6に示される処方21の第二工程カプセル化を示す。このカプセル化は、パーム油かグリセロールモノステアレート(クチーナ)を含む溶融カプセル化剤を用いた流動層ホットメルトコーティング法で実行した。流動層工程用に試験したパラメーターは、トップ/ボトム噴霧、送り速度、入口温度、流動空気量および原子化空気圧である。
【0206】
【0207】
【0208】
結果
製造された組成物の光学顕微鏡像
全てのプロセスからフリーフローの粉末が得られた。製造された粉末の形態は光学顕微鏡で調べた。
図5Aから
図5Cは、噴霧乾燥した組成物(処方21、
図5A)、パーム油でコーティングした流動層(処方22、
図5B)およびグリセリルモノステアレートワックスでコーティングした流動層(処方23、
図5C)の画像を示す。
【0209】
図が示すように、全工程において球状の粒子が製造された。噴霧乾燥した粒子は多分散系であり、3ミクロンから20ミクロンの丸い形を含む。パーム油でコーティングした試料に7ミクロンから8ミクロンの単粒子または40ミクロン超の凝集体が見いだされた。対照的に、グリセリルモノステアレートでコーティングした試料は、30μmの凝集体を含んでおり、該凝集体は10ミクロンから18ミクロンの粒子を含んでいた。
【0210】
コーティングされたACC組成物のCa+2アッセイ測定
斯かる試料中のCa量を滴定技術で試験した。その結果を表8に示す。滴定法は以下のように行った。処方21~23を各々約100mg計量し200mLのビーカーに入れ、約30mLの無水アルコールを添加してコーティングを溶解した。次に、約20mLの4M HClを添加し、ACCをCa2+に変えた。残りの手順は、カルシウム量測定用の標準分析滴定法に従って実行した。
【0211】
【0212】
表8に示されるデータは、粒子調製中、ACCが完全に非晶質に保持されている更なる証拠である。
【0213】
実施例5 1工程(噴霧乾燥)または2工程(噴霧乾燥および流動層)によって製造されたカプセル化された安定なACCの安定性試験
2つの主な影響がカプセル化された粉末配合体中のACC量を枯渇し得る。それはヨーグルトの液相中への溶解と再結晶化である。従って、ヨーグルト中のマイクロカプセル化されたACCの安定性を分析するため、以下の手順を開発した。カプセル化された安定なACCを、カプセル化していない安定なACCおよび結晶性炭酸カルシウム(CCC)と比較した。炭酸カルシウムの各タイプを全ヨーグルト製品に加え、撹拌しながら様々な期間貯蔵した。次にヨーグルトを遠心分離し、Ca滴定およびXRDを用いて固相を評価した。そのままのヨーグルトの空試料も対照として試験した。
【0214】
Strauss Group Ltd.が製造した3%Danoneヨーグルトの600mgを、100gのヨーグルト中に5重量%のカルシウムを含むように、カルシウム含有配合体と混合した。各混合バッチを12の試料を含むように分け、6つの異なる期間の各期間において、各バッチから2つの試料を取り出した。1つの試料はXRDに使用し、もう1つの試料はCa滴定に使用した。試料は4℃(家庭の冷蔵庫でヨーグルトを貯蔵する典型的な温度)で貯蔵した。
【0215】
Ca滴定により、一定の間隔で、カプセル化ACCの安定性に関し、ヨーグルトの固相のCa量を、最初は毎日、1週間後は1日置きまたは2日置きに分析した。約50mL(またはそれ未満)の試料を4℃で遠心分離した。得られた結果をCCCヨーグルトおよびヨーグルトの空試料に対して比較分析した(表9および
図6)。
【0216】
Ca滴定は次のように行った。10mLのddWおよび1mLの4N HCl溶液を遠心分離した各試料に添加し、約10秒間振盪した。溶液中に溶解しない固体が残った場合は、テスト容器に4N HClを更に1mL添加した。最後の工程は、固体が全て無くなるまで継続した。
【0217】
次に、2mLの0.1M Mg-EDTAと少量(1~2mg)の指示薬ミックス(エリオクロームブラックT+NaCl)を各試料に添加した。指示薬が完全に溶解するまで約10mLのDDWを添加した。この段階で発色は生じないはずである。次に20mLのアンモニア緩衝液(NH4Cl)を添加した。溶液の色は予定通り紫になった。撹拌後、0.9mLの0.01M EDTAを添加すると、溶液の色が青ないし濃い紫色に変わった。次に該溶液を撹拌し、ビュレットに入った0.1M EDTAの流れで滴定した。色が鮮明な青に変わりそれ以上変化しなかったので滴定は完了した。
【0218】
3日から5日間凍結乾燥した試料を用いてXRD実験を行った。対照として、5%のCaを含むカプセル化ACCをヨーグルトと混合し、遠心分離し、その後すぐに固相の試料を凍結乾燥した。安定性試験の前後におけるカプセル化ACCのXRDスペクトルを
図7Aおよび
図7B(処方21)、
図8Aおよび
図8B(処方22)、
図9Aおよび
図9B(処方23)に示す。
図10はヨーグルトと混合した非カプセル化ACCのXRDスペクトルを示す。
【0219】
実験結果の分析
追加のカルシウムサプルメントのないヨーグルトの固相におけるカルシウム量は約0.16重量%である。対照バッチでは、9重量%の非カプセル化CCCがヨーグルトに添加されたが、1日保存した後、固相に約5重量%が検出された。このレベルは13日間の試験期間中本質的にずっと維持された。
【0220】
カプセル化された安定なACCにおいては、1日後、ヨーグルトの固相に約2重量%のカルシウムしか存在しなかった。Caの溶解が飽和レベル(CCCを用いた上記対照実験では4%のCa)未満であるので、カプセル化がACC粒子を保護したのは明白である。従って、最初の日に、カプセル化ACCの約60%がヨーグルトの水相に溶解した。不十分なカプセル化の所為で、水に直接接触したカプセル化マトリックス内の粒子だけが、実験の最初の日に即座に溶解した。対照的に、完全にカプセル化されたACC粒子は溶解せず、カプセルマトリックスにより形成されたバリヤーのお陰でほとんどが最初の非晶質相を維持した。溶解していないACCは、13日の試験期間中ずっと、80%ないし90%の非晶質相を維持した。
【0221】
【0222】
実施例6 パンコーティングプロセスを用いたエチルセルロースによるカプセル化(処方26)
溶液Aはエチルセルロース(15%)およびエタノール(85%)で調製した。エチルセルロースは、それが完全に溶解し溶液が透明になるまで、高剪断力ホモジェナイザーを用いて徐々にエタノールに添加した。400gの量のACCをパンコーティングマシンに加えた。次に、パンの速度を最高にして、湿った顆粒性密度が得られるまで、600gの溶液Aをコーティングマシンに(噴霧ノズルを通して)噴霧した。湿った顆粒は流動層プロセスで乾燥した。乾燥した顆粒は、顆粒ミリングマシンで乾式製粉した(粒子径の減少)。製粉したACC/エチルセルロースの粉末をパンコーティングマシン上に置いた。375gの量の溶液B(60gのエチルセルロースと700gのエタノールを混合して調製)をACC含有粉末上にコーティングとして噴霧した。
【0223】
得られた顆粒は再び乾燥/製粉した。小さい粒子径を達成するには製粉工程が極めて重要なので、ミクロンレベルの粒子径が必要な場合は、ボールミル/ジェットミル等の別の乾式製粉機器が必要であろう。適切なコーティング装置であればどれでも(噴霧乾燥器システム等)使用できる。適切な製粉機であればどれでも使用できる。
【0224】
実施例7 パンコーティングプロセスを用いたエチルセルロース/ワックス乳化剤によるカプセル化(処方27および処方28)
処方27:カンデリラワックス(80g)、スパン60(ソルビタンモノステアレート)(40g)、ステアリン酸グリセリル(40g)およびエタノール(400g)を含む溶液を調製した。該混合液を80~85℃に加熱した。処方26のACC/エチルセルロース粉末150gをパンコーティングマシン上に置いた。次に、パン速度を最大にして、湿った顆粒/ドウ相が得られるまで、カンデリラワックス溶液をコーティングパンの中央に非常にゆっくりと添加した。次に、該湿った配合物を流動層プロセスにより乾燥させ、顆粒化マシンを用いて製粉した。最小の粒子径を達成するには製粉工程が極めて重要なので、ミクロンレベルの粒子径が必要な場合は、ボールミル/ジェットミル等の別の乾式製粉機器を使用すべきである。適切なコーティング装置であればどれでも(噴霧乾燥器システム等)使用できる。適切な製粉機であればどれでも使用できる。
【0225】
処方28:エチルセルロース(90g)とエタノール(1kg)の溶液を調製した。エチルセルロースは、それが完全に溶解し溶液が透明になるまで、高剪断力ホモジェナイザーを用いて徐々にエタノールに添加した。処方27をパンコーティングマシン上に置いた。パン速度を最大にし、上記溶液を該粉末上に噴霧(400g)した。湿った媒体を流動層で乾燥させ、顆粒ミリングマシンで製粉して均一な粒子を形成した。噴霧/乾燥/製粉プロセスを繰り返した。
【0226】
実施例8 パンコーティングを用いたエチルセルロースによるACCコーティング(処方29および処方30)
処方29:溶液Aはエチルセルロース(175g)およびエタノール(2.1kg)で調製した。エチルセルロースは、それが完全に溶解し透明な溶液が得られるまで、高剪断力ホモジェナイザーを用いて徐々にエタノールに添加した。900gの量のACCをパンコーティング装置に置いた。次に、パンの速度を最高にして、溶液A(約420g)をACC上に噴霧した。湿った顆粒/ドウ配合物は流動層乾燥技術で乾燥した。乾燥した媒体は顆粒ミリングマシンで製粉し、均一な粒子径にした。溶液Aが全て消費されるまで、上述の噴霧/乾燥/製粉プロセスを繰り返した。
【0227】
処方30:112A280000White(Colorcon(登録))をコーティングした機能食品サプルメント(36g)とエタノール(200g)とを含む溶液を調製した。(Colorcon(登録)はヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タルクおよび二酸化チタンを含む)。Colorcon(登録)は、それが完全に分散するまで、高剪断力ホモジェナイザーを用いて徐々にエタノールに添加した。分散液は白色でなければならない。190gの量の処方29をパンコーティングマシン上に置いた。次に、パンの速度を最高にして、200gの上記溶液を粉末上に噴霧した。次に、噴霧された配合物を乾燥し製粉した。
【0228】
実施例9 レーディゲミキサータイプによるワックスおよび乳化剤を用いたACCコーティング(処方31)
ステアリン酸ステアリル(10g)、ミツロウ(20g)、カンデリラワックス(45g)、エタノール(30g)、ソルビタンモノステアレート(10g)およびポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(10g)を含む溶液Aを調製した。全成分を混合し、80~85℃に加熱した。200gの量のACCをミキサー・グラニュレーター・ホリゾンタル(レーディゲ)に置いた。ミキサーの速度を最高にして、上記溶液(270g)を非常にゆっくりと添加した。湿った配合物を流動層で乾燥し、顆粒ミリングマシンを用いて製粉した。
【0229】
エタノール(300g)、パラフィンワックス(40g)、ステアリン酸ステアリル(45g)、Sisterna SP01(E473)(5g)およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(5g)を含む溶液Bを調製した。全成分を混合し、80~85℃に加熱した。ミキサーの速度を最高にして、溶液Bを非常にゆっくりと添加した。湿った混合物を流動層技術で乾燥した。乾燥した媒体は顆粒ミリングマシンで製粉した。
【0230】
実施例10 パンコーティングを用いたエチルセルロース、ワックスおよび乳化剤によるACCコーティング(処方32、処方33および処方34)
処方32:PEG400(200g)とPVA(10g)とを混合して溶液を調製し、85~90℃に加熱した。200gの量のACCをミキサー・グラニュレーター・ホリゾンタル(レーディゲ)に置いた。ミキサーの速度を最高にして、該溶液130gを非常にゆっくりと添加した。ミツロウ(25g)、エタノール(300g)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20g)およびソルビタンモノステアレート(7g)を用いて第二の溶液を調製し、その混合物を80~85℃で加熱した。ミキサーの速度を最高にして、第二溶液160gを非常にゆっくりと添加した。湿った配合物を部分的に流動層技術で乾燥した。ミツロウ(35g)、エタノール(500g)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(25g)、ソルビタンモノステアレート(10g)、メチルセルロース(20g)およびステアリン酸(30g)から第三の溶液を調製した。次に、ミキサーの速度を最高にして、第三溶液200gを非常にゆっくりと添加した。最終製品は僅かに湿ってドウのように見えた。
【0231】
処方33:エチルセルロース(60g)とエタノール(600g)からなる溶液Aを調製した。400gのACCをパンコーティングマシン上に置いた。パン速度を最高にし、600gの溶液AをACC粉末上に噴霧した。湿った顆粒/ドウ密度の混合物を流動層乾燥技術で乾燥し、顆粒ミリングマシンで製粉して均一な粒子を形成した。カンデリラワックス(120g)、エタノール(800g)、ARLACEL60(ソルビタンモノステアレート)(60g)およびスパン65(ソルビタントリステアレート)(100g)を混合して溶液Bを調製し、撹拌しながら80~85℃に加熱した。該製品をパンコーティングマシン上に置き、パン速度を最高レベルにし、湿った顆粒/ドウ密度が達成されるまで、溶液B400gをコーティングパンの中央に非常にゆっくりと注いだ。混合物を流動層乾燥技術で乾燥し、顆粒ミリングマシンで製粉して均一な粒子を形成した。該配合物の製造には、適切なコーティングマシンであればどれでも使用できる(例えば噴霧乾燥器システム)。
【0232】
処方34:処方32の製品300gをパンコーティングマシン上に置いた。パン速度を最高レベルにし、湿った顆粒/ドウ相が達成されるまで、処方32の溶液B300gをコーティングパンの中央に非常にゆっくりと添加した。該湿った相を流動層乾燥技術で乾燥し、顆粒ミリングマシンで製粉して均一な粒子を形成した。
【0233】
実施例11 パンコーティングマシンを用いたエチルセルロース、ワックス、乳化剤および疎水性風味を用いたACCコーティング(処方35)
処方33のバッチ50gをパンコーティングマシン上に置いた。パン速度を最高レベルにし、湿った顆粒/ドウ相が達成されるまで、以下に記載の溶液50gをコーティングパンの中央に非常にゆっくりと添加した。該溶液は、トゥッティフルッティ風味(Sypris)(0.7%)、ミツロウ(12%)、エタノール(71.3%)、ソルビタンモノステアレート(6%)およびソルビタントリステアレート(10%)から成った。湿った密度の相を流動層乾燥技術で乾燥し、顆粒ミリングマシンで製粉して均一な粒子を形成した。乾燥粉末を50メッシュの篩で選別した。この製品のACC推定量は、全添加成分に基づき、55重量%から60重量%の範囲であった。
【0234】
実施例12 パンコーティングを用いたColorcon(登録)コーティングシステムによるACCコーティング(処方37)
112A280000White(Colorcon(登録))をコーティングした機能食品サプルメント(180g)とエタノール(1.6kg)から成る溶液Aを調製した。(Colorcon(登録)はヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、タルクおよび二酸化チタンを含む)。白色の分散液が得られた。200gの量のACCをパンコーティングマシン上に置いた。パンの速度を最高にし、溶液A400gをACC上に噴霧した。湿った相を流動層技術で乾燥した。乾燥した配合物を顆粒ミリングマシンで製粉して均一な粒子径にし、コーティングパンに置いた。噴霧/乾燥/製粉ンプロセスをもう一度繰り返した。
【0235】
実施例13 ヨーグルトの種々のバッチに関する安定性試験手順
処方27および処方32を原子吸光(AA)分析技術によりCa含有量に関して分析し、使用したACCの安定性をラマンおよびXRD分光技術により分析した(
図11および
図12)。次に、真正ヨーグルトの上澄み液中の安定性に関し、選別されたバッチを3週間試験した。実験は、遠心分離で固体懸濁物から分離した、Strauss Group Ltd.製の3%の脂肪含有ヨーグルト(pH約4.2~4.5)の溶液を用いて行った。
【0236】
毎週、懸濁したACCを収集し、ACCが依然として安定しているか、または結晶化しているか否か、あるいはどの程度安定しているか、または結晶化しているかを分析した。30mLのヨーグルト溶液にカプセル化された配合物2.5gを混合することにより、カプセル化ACCの各バッチからヨーグルト溶液を含む試料を3つか4つ作製した。試料は、実験中、4℃の冷蔵庫に保存した。各週の終わりに、水およびコーティングの残渣を除くため、溶液を濾過し、エタノール(150mL)で3回洗浄し、更にアセトン(150mL)で洗浄した。試料中のACCの割合を測定するため、残った濾液を集め、偏光顕微鏡、ラマン分光器およびXRDで試験した(
図12Aおよび
図12B)。
【0237】
空試験
空試験(1):コーティングしていない安定なACC:コーティングしていない安定なACCをエタノール/アセトン(容量比50/50)溶液に懸濁し、約65℃~70℃に10分間加熱した。懸濁したACCを濾過し、乾燥し、異なる側面から試料データを集めるため、ラマン分光試験を3回行った。ラマン試験の結果は、ACCの非晶質相が95.45%、96.55%および93.61%保持されていることを示している。この結果は、斯かる手順がACCを有意に結晶化しないことを示している。
【0238】
空試験(II):カプセル化された安定なACC:この手順では、表10の各カプセル化ACC配合物をエタノール/アセトン(容量比50/50)溶液に懸濁し、約65℃~70℃に10分間加熱した。分析の残りは前述の空試料の場合と同様であり、その目標は、コーティングがACCから除かれており、分光分析はカプセル化なしのACCのみについて行われたことを確認することであった。3つの異なる点におけるラマン分析は、ACCの非晶質相が94.35%、97.42%および96.11%保持されていることを示していた。
【0239】
ヨーグルトにおけるカプセル化されていない安定なACCの比較試験:2.5gの量のコーティングしていない安定なACCを、遠心分離を用いて固体から分離したヨーグルト溶液50mLと混合した。懸濁液から試料を採取し、圧縮空気を用いてそれを乾燥した(合成ACCの安定性試験に典型的に使用される手順)。乾燥粉末を偏光顕微鏡で調べた。3分後に得られた試料はまだ安定していた。13分後、ACCは結晶化を開始した(約20%が結晶化)。19分後、ほとんどのACCが結晶化した(80%超が結晶化)。試験に付された全カプセル配合物の安定性を要約している表10に示されるように、非カプセル化ACCの安定値は、改善されたカプセル化配合物のいくつかの値よりも3桁低い値を示した。
【0240】
最高3週間ヨーグルト溶液に懸濁されたカプセル化ACCの種々のバッチにおける安定性試験の要約:表10は、上述の試料に関して記載した種々のバッチの結果を要約したものである。1週間後に15%超の安定性を示すバッチは、商業目的に適していると考えられる。3週間後に30%超の安定性を示すバッチは、選り抜きの商業目的に特に適していると考えられる。
【0241】
【0242】
実施例14 パンコーティング+加熱(処方38~41)
380gのACCをコーティングパンに入れた。330gのエチルセルロース10%溶液(30gエチルセルロース+300gアルコール)をゆっくりとパンに添加し、混合した。次に、100℃の送風機を用いて2時間パンの中身を乾燥し、粉末を70メッシュの篩を用いて粉砕した。アルコール600g、ミツロウ30g、カンデリラワックス70g、ソルビタンモノステアレート6gおよびソルビタントリステアレート20gの混合物であるコーティング配合物を調製し、沸騰するまで加熱した(コート#2)。コート#2をパンに加え、混合し、次に乾燥し、粉末を粉砕した。アルコール340g、ミツロウ50gおよびカンデリラワックス30gの混合物であるコーティング配合物を調製し、沸騰するまで加熱した(コート#3)。コート#3をパンに加え、混合し、次に乾燥し、粉砕し、再び乾燥した。
【0243】
【0244】
表11が提供するデータは、ヨーグルト中のコーティング層を増やしても非晶質状態には更なる改善が見られないことを示しており、従って、処方38~処方41の成功はコア配合物内の疎水性シリカの使用、およびエチルセルロースのサブコーティング層の使用に起因するという仮説が立てられる。
【0245】
組成物および調製
処方38:1サブコーティング+2コーティング。600gのACC(+6.25%AEROSIL200、親水性シリカ)を140メッシュの篩に掛け、粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。エチルセルロース10%溶液660g(エチルセルロース60g+アルコール600g)をゆっくりとパンに加え、300rpmで30分間混合した(コート#1)。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。粉末は70メッシュの篩を用いて粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。ガラス製のビーカー内で、アルコール300g、カルナウバワックス40gおよびカンデリラワックス40gを混合した(ワックスミックス#1)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#2)。ワックスミックス#1をパンに加え、350rpmで2分間混合した。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。粉末は70メッシュの篩を用いて粉砕した。ガラス製のビーカー内で、アルコール350g、カルナウバワックス40gおよびカンデリラワックス40gを混合した(ワックスミックス#2)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#3)。ワックスミックス#2をパンに加え、300rpmで2分間混合した。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。粉末は100メッシュの篩を用いて粉砕した。中身を100℃の送風機で2時間乾燥した。
【0246】
処方39:1サブコーティング+3コーティング。240gのACC(+10%AEROSIL200)を140メッシュの篩に掛け、粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。エチルセルロース340g(10%溶液)をゆっくりとパンに加え、300rpmで30分間混合した(コート#1)。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。ガラス製のビーカー内で、アルコール250g、米糠ワックス40gおよびカルナウバワックス40g(を混合した)(ワックスミックス#1)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#2)。ワックスミックス#1をパンに加え、300rpmで2分間混合した。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。ガラス製のビーカー内で、アルコール350g、米糠ワックス40gおよびカルナウバワックス40gを混合した(ワックスミックス#2)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#3)。ワックスミックス#2をパンにゆっくり加え、300rpmで2分間混合した。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。粉末は70メッシュの篩を用いて粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。ガラス製のビーカー内で、アルコール150g、米糠ワックス10gおよびカルナウバワックス10gを混合した(ワックスミックス#3)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#4)。ワックスミックス#3をパンにゆっくり加え、300rpmで2分間混合した。中身を100℃の送風機で2時間乾燥した。粉末は140メッシュの篩を用いて粉砕した。
【0247】
処方40:2コーティング。250gのACC(+6.25%AEROSIL200)を140メッシュの篩に掛け、粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。ガラス製のビーカー内で、アルコール650g、カルナウバワック35gおよびカンデリラワックス20gを混合した(ワックスミックス#1)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#1)。ワックスミックス#1をパンに加え、350rpmで2分間混合した。中身は100℃の送風機で3時間乾燥した。粉末は70メッシュの篩を用いて粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。ガラス製のビーカー内で、アルコール250g、カルナウバワック15gおよびカンデリラワックス10gを混合した(ワックスミックス#2)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#2)。ワックスミックス#2をパンにゆっくり加え、300rpmで2分間混合した。中身は100℃の送風機で3時間乾燥した。粉末は100メッシュの篩を用いて粉砕した。
【0248】
処方41:1サブコーティング+3コーティング。350gのACC(+10%SIPERNAT 50S(疎水性シリカ))を70メッシュの篩に加え、粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。エチルセルロース770g(10%溶液)をゆっくりとパンに加え、300rpmで30分間混合した(コート#1)。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。ガラス製のビーカー内で、アルコール300g、15gのスパン60、30gのスパン65およびカンデリラワックス35gを混合した(ミックス#1)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#2)。第一コーティング層:ワックスミックス#1をパンに加え、300rpmで2分間混合した。中身は85℃の送風機で2時間乾燥した。粉末は70メッシュの篩を用いて粉砕した。第二コーティング配合物の調製:ガラス製のビーカー内で、アルコール300g、15gのスパン60、30gのスパン65およびカンデリラワックス35gを混合した(ミックス#2)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#3)。第二コーティング層:ワックスミックス#2をパンに加え、300rpmで2分間混合した。中身は85℃の送風機で2時間乾燥した。粉末は70メッシュの篩を用いて粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。第三コーティング配合物の調製:ガラス製のビーカー内で、アルコール250g、ミツロウ25gおよびカンデリラワックス25gを混合した(ミックス#3)。内容物を沸騰するまで加熱した(コート#4)。第三コーティング層:ワックスミックス#1をパンに加え、300rpmで2分間混合した。中身を85℃の送風機で2時間乾燥した。粉末は70メッシュの篩を用いて粉砕した。
【0249】
この実施例はサブコーティング+3コーティング層を示しており、厚い密閉可能なコーティングをもたらす結果となった。この実施例は、ACCコア配合物の耐熱性が改善されたこと、すなわち加熱処理時にACCの結晶化が減少することを示している。複数層コーティングの利点は、ACCを結晶化から更に良く保護することである。
【0250】
手順1
理化学用ガラスに10mLの水道水を満たした。水をホットプレートで95℃に加熱し、撹拌機を用いて連続撹拌した。95℃で、2.5gのカプセル化ACC粉末を加え、5分間、加熱撹拌した。次に、該ガラスの加熱を止め、室温近くまで放冷した。表12は濾過および洗浄後のXRDの結果を示している。
【0251】
手順2
理化学用ガラスに10mLの水道水を満たした。2.5gのカプセル化ACC粉末を加え、2分間、混合した。該ガラスを従来の家庭用電子レンジを用いて1,200ワットで1.5分間加熱した。水温は95~100℃に達した。次に、該ガラスを電子レンジ(MW)から出し、室温近くまで放冷した。表12は濾過および洗浄後のXRDの結果を示している。
【0252】
【0253】
実施例15 コーティングされていないコア組成物の耐熱性(処方42)
4コーティング(層)(エチルセルロースのサブコーティング層と3つのワックス組成物層。10.3%エチルセルロース、12%カンデリラワックス、5%ソルビタントリステアレート、3%ソルビタンモノステアレート、2.7%ヒュームドシリカおよび2%ミツロウでコーティングした65%ACC)でコーティングしたACC粒子(5%)と水酸化ナトリウム(1%)を94%ヨーグルトに加えた。ヨーグルトは沸騰するまで(95℃)加熱し、マグネチックスターラーを用いて混合しながら10分間加熱を続けた。ヨーグルトの熱い溶液を400メッシュの篩を用いて濾過した。XRDの結果:35%の結晶、65%の非晶質。
【0254】
実施例16 シリカフリーのコア配合物のサブコーティング+3層コーティング(処方44)
コーティングプロセスはコーティングパン、ホリゾンタルミキサー、あるいは他の適切な混合装置を用いて行い得る。380gのACC(AEROSOL200なし)を2mmの篩に加え、粉砕した。粉末をコーティングパンに加えた。サブコーティング層:エチルセルロース10%溶液330g(エチルセルロース30g+アルコール300g)をパンに加え、300rpmで30分間混合した(コート#1)。内容物は100℃の送風機を用いて2時間乾燥した。粉末(粉末=ACCコア配合物+エチルセルロースのサブコーティング層)を70メッシュの篩を用いて粉砕した。粉末はコーティングパンに加えた。第二コーティング層(コーティング疎水性溶液の調製):ガラス製のビーカー内で、アルコール600g、ミツロウ30g、カンデリラワックス70g、ソルビタンモノステアレート6gおよびソルビタントリステアレート20gを混合した。中身を沸騰するまで加熱した(コート#2)。コート#2(疎水性溶液)をパンに加え、350rpmで2分間混合した。中身は100℃の送風機で2時間乾燥した。粉末(2つのコーティング層を有するコア配合物)は70メッシュの篩を用いて粉砕した。別のコーティング層用の別のコーティング疎水性溶液の調製:ガラス製のビーカー内で、アルコール340g、ミツロウ50gおよびカンデリラワックス30gを混合した。中身を沸騰するまで加熱(コート#3)し、次にそれをパンに加え、300rpmで2分間混合した。内容物は100℃の送風機を用いて2時間乾燥した。粉末(ACCコア配合物+サブコーティング層+2つの疎水性コーティング層)を70メッシュの篩を用いて粉砕した。内容物は100℃の送風機を用いて2時間乾燥した。
【0255】
結果製品を熱安定性に関して調べた。該製品の一部を沸騰水に加え、2分間放置した。結果:コア配合物の炭酸カルシウムの95%が結晶化した。該製品の一部を電子レンジに入れ、最高温度で2分間放置した。結果:コア配合物の炭酸カルシウムの84%が結晶化した。
【0256】
コア配合物にシリカを加え、それを更にサブコーティングし、2つのコーティング層でコーティングすれば、ACC粉末配合物の耐熱性が改善されるというのが、可能性のある結論である。
【0257】
実施例17 サブコーティング+4層コーティング(処方45)
ACC105gと4%シリカを70メッシュで製粉し、それをミキサーに入れた。粒子は10%エチルセルロース溶液99gでサブコーティング(冷間プロセス)し、乾燥し、70メッシュで製粉した。第一コーティング層:サブコーティングしたACCコア104gをミキサーに入れ、加熱し、カンデリラワックス23g、イソプロパノール47g、1.13gのスパン60および1.84gのスパン65と混合し、乾燥し、70メッシュで製粉した。第二コーティング層:上記工程の粒子をミキサーに入れ、加熱し、カンデリラワックス2g、アルコール35g、ミツロウ0.7g、0.35gのスパン60および0.35gのスパン65と混合し、乾燥し、70メッシュで製粉した。第三コーティング層:上記工程の粒子をミキサーに入れ、加熱し、ミツロウ1.55g、アルコール27g、0.062(g)のスパン60および0.155gのスパン65およびカンデリラワックス0.97gと混合し、乾燥し、60メッシュで製粉した。第四コーティング層:上記工程の粒子をミキサーに入れ、加熱し、ミツロウ0.25g、アルコール35g、0.1gのスパン60および0.25gのスパン65およびカンデリラワックス1.56gと混合し、乾燥し、40メッシュで製粉した。
【0258】
最終カプセル化ACC製品の試料のカルシウム濃度をICP(誘導結合プラズマ)で測定した。残りはカプセル化材(サブコーティング+4つのコーティング層)であると考えられる。最終カプセル化ACC製品のXRDは、コーティングプロセス完了時点のものである(
図13)。更に、処方45は、ヨーグルトに入れた場合、満足のいく感覚刺激性の結果を与えた。
【0259】
本発明は特定の例について記載されているが、多くの変形および修正が可能であることは当業者には理解されるであろう。従って、本発明は記載されている特定の実施形態に制限されるように解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲を参照することにより、本発明の範囲、精神および概念は更に容易に理解されるであろう。