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特許7026972インピーダンススペクトルデータを用いた解析処理方法、インピーダンススペクトルデータ解析処理システム、および、インピーダンススペクトル解析処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】インピーダンススペクトルデータを用いた解析処理方法、インピーダンススペクトルデータ解析処理システム、および、インピーダンススペクトル解析処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20220221BHJP
   G01R 27/28 20060101ALI20220221BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220221BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220221BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220221BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R27/28 Z
H01M10/48 P
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M6/02 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020532307
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027936
(87)【国際公開番号】W WO2020022124
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2018137404
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 清
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104914312(CN,A)
【文献】国際公開第2018/131071(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/071801(WO,A1)
【文献】鷲見 裕史,平野 隆行,緩和時間分布法による等価回路作成支援ソフトウェアの開発,電池討論会講演要旨集 THE 57TH BATTERY SYMPOSIUM IN JAPAN ,日本,(公社)電気化学会 電池技術委員会 第57回 電池討論会実行委員長 金村 聖志,2016年11月28日,p.195
【文献】小林 清(KOBAYASHI,Kiyoshi),緩和時間分布(DRT)を用いたSOFC電極反応解析の不確定性 Uncertainty of SOFC electrode rcaction analysis by the DRT technique,電気化学会講演要旨集 第81回大会 ,日本,公益社団法人電気化学会,2014年05月12日,P。106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
G01R 27/28
G01R 27/30
G01R 31/389
H01M 6/02
H01M 8/04
H01M 10/48
H01M 10/04
H01M 10/058
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定されたインピーダンススペクトルデータを用いて解析処理する方法であって、
前記測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定するステップと、
前記判定するステップで設定し直すと判定した場合、前記対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すステップと、
前記判定するステップで設定し直さないと判定した場合には前記測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の範囲、または、前記判定するステップで設定し直すと判定した場合には前記設定し直された対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する分割数を設定するステップと、
正則化最小二乗法を適用し、次式(A)

(pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を満たすように、前記対数緩和時間の範囲および設定した前記分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析するステップと
を包含する方法。
【請求項2】
前記判定するステップは、前記測定されたインピーダンススペクトルデータが、
(1)インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、インピーダンス実数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でプラトーを有さないか、
(2)インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、インピーダンス虚数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でピークを有さないか、または、
(3)インピーダンスプロットにおいて円弧を有さない場合に
前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、
前記設定し直すステップは、
(1’)前記インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス実数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でプラトーとなるように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、
(2’)前記インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス虚数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でピークを有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、
(3’)前記インピーダンスプロットにおいて円弧を有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記判定するステップは、前記測定された対数周波数の範囲について、次式(a)および次式(b)


(kは対数緩和時間の配列番号、pは測定されたデータ点の配列番号、fおよびfはk番目およびp番目の周波数、jは単位虚数、Nは測定データ点数、Rは高周波限抵抗、τはk番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を用いて、自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を求め、前記測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲に前記Rがピークを有さない場合に、前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、
前記設定し直すステップは、前記測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲を超えて前記Rがピークを有するように、前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記解析するステップにおいて、前記式(A)における前記キャパシタンスのインピーダンスは、次式(B)
Z(f)=T/(j2πf) ・・・(B)
で与えられる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記解析するステップは、正則化非線形最適化法を用いて算出する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記正則化非線形最適化法は、Tikhonov正則化法、Lasso正則化法およびElastic Net正則化法からなる群から選択される正則化法を採用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記正則化非線形最適化法は、Levenberg-Marquardt法、シンプレックス法、および、共役勾配法からなる群から選択される非線形最適化法を採用する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記解析するステップで得られた前記パラメータを前記式(A)に代入し、理論インピーダンススペクトルを求めるステップと、
前記求めた理論インピーダンススペクトルと前記測定されたインピーダンススペクトルとを表示し、比較し、一致するか否かを判定するステップと
をさらに包含する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記表示し、比較し、一致するか否かを判定するステップが、一致しないと判定した場合、前記設定し直すステップ以降を繰り返す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定されたインピーダンススペクトルデータは、一次電池、二次電池、燃料電池、キャパシタ材料、防蝕処理を施した金属およびセラミックス材料からなる群から選択される試料のインピーダンススペクトルデータである、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
測定されたインピーダンススペクトルデータを用いたインピーダンススペクトルデータ解析処理システムであって、
制御装置と、
表示装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定する対数緩和時間判定部と、
前記対数緩和時間判定部が設定し直すと判定した場合、前記測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す対数緩和時間設定部と、
前記対数緩和時間判定部が設定し直さないと判定した場合には前記測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の範囲、または、前記対数緩和時間判定部が設定し直すと判定し場合には前記対数緩和時間設定部が設定し直した対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する分割数を設定する分割数設定部と、
正則化最小二乗法を適用し、次式(A)

(pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を満たすように、前記対数緩和時間の範囲および設定した前記分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析するパラメータ解析部と
をさらに備え、
前記表示装置は、前記制御装置における解析結果を表示する
解析処理システム。
【請求項12】
前記制御装置の前記対数緩和時間判定部は、前記測定されたインピーダンススペクトルデータが、
(1)インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、インピーダンス実数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でプラトーを有さないか、
(2)インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、インピーダンス虚数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でピークを有さないか、または、
(3)インピーダンスプロットにおいて円弧を有さない場合に
前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、
前記制御装置の前記対数緩和時間設定部は、
(1’)前記インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス実数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でプラトーとなるように、前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、
(2’)前記インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス虚数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でピークを有するように、前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、
(3’)前記インピーダンスプロットにおいて円弧を有するように前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す
請求項11に記載の解析処理システム。
【請求項13】
前記制御装置の前記対数緩和時間判定部は、前記測定された対数周波数の範囲について、次式(a)および次式(b)


(kは対数緩和時間の配列番号、pは測定されたデータ点の配列番号、fおよびfはk番目およびp番目の周波数、jは単位虚数、Nは測定データ点数、Rは高周波限抵抗、τはk番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を用いて、自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を求め、前記測定された対数周波数の範囲に前記Rがピークを有さない場合に、前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、
前記制御装置の前記対数緩和時間設定部は、前記測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲を超えて前記Rがピークを有するように前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す
請求項11に記載の解析処理システム。
【請求項14】
前記制御装置は、オペレータが、前記表示装置に表示された前記測定されたインピーダンススペクトルデータから目視にて前記(1)~(3)を判定し、前記(1’)~(3’)を手動にて設定し直す入力端末を備える、請求項12に記載の解析処理システム。
【請求項15】
前記制御装置は、オペレータが、前記表示装置に表示された前記自然対数緩和時間分布抵抗Rkの対数緩和時間依存性から目視にて前記測定された対数周波数の範囲に前記Rkがピークを有するか否かを判定し、前記測定された対数周波数の範囲を超えて前記Rkがピークを有するように、前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を手動にて設定し直す入力端末を備える、請求項13に記載の解析処理システム。
【請求項16】
前記式(A)において、前記キャパシタンスのインピーダンスは、次式(B)
Z(f)=T/(j2πf) ・・・(B)
で与えられる、請求項11~15のいずれかに記載の解析処理システム。
【請求項17】
前記制御装置は、得られた前記パラメータを前記式(A)に代入し、理論インピーダンススペクトルを求め、前記求めた理論インピーダンススペクトルと前記測定されたインピーダンススペクトルとを前記表示装置に表示し、比較し、前記理論インピーダンススペクトルと前記測定されたインピーダンススペクトルとが一致するか否かを判定する判定部をさらに備える、請求項11~16のいずれかに記載の解析処理システム。
【請求項18】
コンピュータに、
測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定するステップと、
前記判定するステップで設定し直すと判定した場合、前記対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すステップと、
前記判定するステップで設定し直さないと判定した場合には前記測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の範囲、または、前記判定するステップで設定し直すと判定した場合には前記設定し直された対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を設定するステップと、
正則化最小二乗法を適用し、次式(A)

(pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を満たすように、前記対数緩和時間の範囲および設定した分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析するステップと
を実行させるための、インピーダンススペクトルデータ解析処理プログラム。
【請求項19】
前記判定するステップは、前記測定されたインピーダンススペクトルデータが、
(1)インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、インピーダンス実数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でプラトーを有さないか、
(2)インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、インピーダンス虚数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でピークを有さないか、または、
(3)インピーダンスプロットにおいて円弧を有さない場合に、
前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、
前記設定し直すステップは、
(1’)前記インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス実数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でプラトーとなるように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、
(2’)前記インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス虚数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でピークを有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、
(3’)前記インピーダンスプロットにおいて円弧を有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す
請求項18に記載のインピーダンススペクトルデータ解析処理プログラム。
【請求項20】
前記判定するステップは、測定された対数周波数の範囲について、次式(a)および次式(b)


(kは対数緩和時間の配列番号、pは測定されたデータ点の配列番号、fおよびfはk番目およびp番目の周波数、jは単位虚数、Nは測定データ点数、Rは高周波限抵抗、τはk番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を用いて、自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を求め、前記測定された対数周波数の範囲に前記Rがピークを有さない場合に、前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、
前記設定し直すステップは、前記測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲を超えて前記Rがピークを有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す
請求項18に記載のインピーダンススペクトルデータ解析処理プログラム。
【請求項21】
前記解析するステップで得られた前記パラメータを前記式(A)に代入し、理論インピーダンススペクトルを求めるステップと、
前記求めた理論インピーダンススペクトルと前記測定されたインピーダンススペクトルとを表示装置に表示し、比較し、一致するか否かを判定するステップと
をさらに実行させる、請求項18~20のいずれかに記載のインピーダンススペクトルデータ解析処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンススペクトルデータを用いた解析処理方法、インピーダンススペクトルデータ解析処理システム、および、インピーダンススペクトル解析処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
測定されたインピーダンススペクトルデータの解析法として、連続緩和時間分布を求める方法が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1によれば、対数で等間隔に取られた周波数(f)と複素インピーダンス(Z)とが測定データとして得られた場合、複素インピーダンスは次式(a)および(b)で与えられるとして解析される。式(a)のRとRは未定値であり測定データを再現するために必要なパラメータである。
【0003】
【数1】
【0004】
ここで、kは対数緩和時間の配列番号、pは測定されたデータ点の配列番号、fおよびfはk番目およびp番目の周波数、jは単位虚数、Nは測定データ点数、Rは高周波限抵抗、τはk番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値である。
【0005】
しかしながら、非特許文献1によれば、一次電池、二次電池、キャパシタ、腐食系のインピーダンスのような周波数の低下によってインピーダンス絶対値が一定の値に収束しない、または、インピーダンス絶対値が一定の値に収束していないデータに対して、式(a)および式(b)を適用し得られるR値セットは、測定されたインピーダンススペクトルデータを再現できない場合がある。さらに、上述の試料はインダクタ成分を含むため、インピーダンス虚数項が正値を取る場合にも式(a)および式(b)は適用できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】P.Braunら,J. Electroceram.,38,157-167(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上から、本発明の課題は、測定されたインピーダンススペクトルデータを用いた解析処理方法、インピーダンススペクトルデータ解析処理システム、および、インピーダンススペクトルデータ解析処理プログラムを提供することである。本発明のさらなる課題は、測定されたインピーダンススペクトルデータに対して緩和時間分布解析を可能にする解析処理方法、インピーダンススペクトルデータ解析処理システム、および、インピーダンススペクトルデータ解析処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による測定されたインピーダンススペクトルデータを用いて解析処理する方法は、前記測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定するステップと、前記判定するステップで設定し直すと判定した場合、前記対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すステップと、前記判定するステップで設定し直さないと判定した場合には前記測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の範囲、または、前記判定するステップで設定し直すと判定した場合には前記設定し直された対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する分割数を設定するステップと、正則化最小二乗法を適用し、次式(A)
【0009】
【数2】

(pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を満たすように、前記対数緩和時間の範囲および設定した前記分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析するステップとを包含し、これにより上記課題を解決する。
【0010】
前記判定するステップは、前記測定されたインピーダンススペクトルデータが、(1)インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、インピーダンス実数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でプラトーを有さないか、(2)インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、インピーダンス虚数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でピークを有さないか、または、(3)インピーダンスプロットにおいて円弧を有さない場合に、前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、前記設定し直すステップは、(1’)前記インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス実数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でプラトーとなるように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、(2’)前記インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス虚数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でピークを有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、(3’)前記インピーダンスプロットにおいて円弧を有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直してもよい。
【0011】
前記判定するステップは、前記測定された対数周波数の範囲について、次式(a)および次式(b)
【0012】
【数3】
【0013】
(kは対数緩和時間の配列番号、pは測定されたデータ点の配列番号、fおよびfはk番目およびp番目の周波数、jは単位虚数、Nは測定データ点数、Rは高周波限抵抗、τはk番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を用いて、自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を求め、前記測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲に前記Rがピークを有さない場合に、前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、前記設定し直すステップは、前記測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲を超えて前記Rがピークを有するように、前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直してもよい。
【0014】
前記解析するステップにおいて、前記式(A)における前記キャパシタのインピーダンスは、次式(B)
Z(f)=T/(j2πf) ・・・(B)
で与えられてもよい。
【0015】
前記解析するステップは、正則化非線形最適化法を用いて算出してもよい。
【0016】
前記正則化非線形最適化法は、Tikhonov正則化法、Lasso正則化法およびElastic Net正則化法からなる群から選択される正則化法を採用してもよい。
【0017】
あるいは、前記正則化非線形最適化法は、Levenberg-Marquardt法、シンプレックス法、および、共役勾配法からなる群から選択される非線形最適化法を採用してもよい。
【0018】
前記解析するステップで得られた前記パラメータを、前記式(A)に代入し、理論インピーダンススペクトルを求めるステップと、前記求めた理論インピーダンススペクトルと前記測定されたインピーダンススペクトルとを表示し、比較し、一致するか否かを判定するステップとをさらに包含してもよい。
【0019】
前記表示し、比較し、一致するか否かを判定するステップが、一致しないと判定した場合、前記設定し直すステップ以降を繰り返してもよい。
【0020】
前記測定されたインピーダンススペクトルデータは、一次電池、二次電池、燃料電池、キャパシタ材料、防蝕処理を施した金属およびセラミックス材料からなる群から選択される試料のインピーダンススペクトルデータであってもよい。
【0021】
また、本発明による測定されたインピーダンススペクトルデータを用いたインピーダンススペクトルデータ解析処理システムは、制御装置と、表示装置とを備え、前記制御装置は、前記測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定する対数緩和時間判定部と、前記対数緩和時間判定部が設定し直すと判定した場合、前記測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す対数緩和時間設定部と、前記対数緩和時間判定部が設定し直さないと判定した場合には前記測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の範囲、または、前記対数緩和時間判定部が設定し直すと判定し場合には前記対数緩和時間設定部が設定し直した対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する分割数を設定する分割数設定部と、正則化最小二乗法を適用し、次式(A)
【0022】
【数4】
【0023】
(pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を満たすように、前記対数緩和時間の範囲および設定した前記分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析するパラメータ解析部とをさらに備え、前記表示装置は、前記制御装置における解析結果を表示し、これにより上記課題を解決する。
【0024】
前記制御装置の前記対数緩和時間判定部は、前記測定されたインピーダンススペクトルデータが、(1)インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、インピーダンス実数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でプラトーを有さないか、(2)インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、インピーダンス虚数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でピークを有さないか、または、(3)インピーダンスプロットにおいて円弧を有さない場合に、前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、前記制御装置の前記対数緩和時間設定部は、(1’)前記インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス実数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でプラトーとなるように、前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、(2’)前記インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス虚数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でピークを有するように、前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、(3’)前記インピーダンスプロットにおいて円弧を有するように前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直してもよい。
【0025】
前記制御装置の前記対数緩和時間判定部は、前記測定された対数周波数の範囲について、次式(a)および次式(b)
【0026】
【数5】
【0027】
(kは対数緩和時間の配列番号、pは測定されたデータ点の配列番号、fおよびfはk番目およびp番目の周波数、jは単位虚数、Nは測定データ点数、Rは高周波限抵抗、τはk番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)を用いて、自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を求め、前記測定された対数周波数の範囲に前記Rがピークを有さない場合に、前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、前記制御装置の前記対数緩和時間設定部は、前記測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲を超えて前記Rがピークを有するように前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直してもよい。
【0028】
前記制御装置は、オペレータが、前記表示装置に表示された前記測定されたインピーダンススペクトルデータから目視にて前記(1)~(3)を判定し、前記(1’)~(3’)を手動にて設定し直す入力端末を備えてもよい。
【0029】
前記制御装置は、オペレータが、前記表示装置に表示された前記自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性から目視にて前記測定された対数周波数の範囲に前記Rがピークを有するか否かを判定し、前記測定された対数周波数の範囲を超えて前記Rがピークを有するように前記パラメータ解析部で用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を手動にて設定し直す入力端末を備えてもよい。
【0030】
前記式(A)において、前記キャパシタのインピーダンスは、次式(B)
Z(f)=T/(j2πf) ・・・(B)
で与えられてもよい。
【0031】
前記制御装置は、得られた前記パラメータを、前記式(A)に代入し、理論インピーダンススペクトルを求め、前記求めた理論インピーダンススペクトルと前記測定されたインピーダンススペクトルとを前記表示装置に表示し、比較し、前記理論インピーダンススペクトルと前記測定されたインピーダンススペクトルとが一致するか否かを判定する判定部をさらに備えてもよい。
【0032】
また、本発明によるインピーダンススペクトルデータ解析処理プログラムは、コンピュータに、測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定するステップと、前記判定するステップで設定し直すと判定した場合、前記対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すステップと、前記判定するステップで設定し直さないと判定した場合には前記測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の範囲、または、前記判定するステップで設定し直すと判定した場合には前記設定し直された対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を設定するステップと、正則化最小二乗法を適用し、次式(A)
【0033】
【数6】

(pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を満たすように、前記対数緩和時間の範囲および設定した分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析するステップとを実行させ、これにより上記課題を解決する。
【0034】
前記判定するステップは、前記測定されたインピーダンススペクトルデータが、(1)インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、インピーダンス実数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でプラトーを有さないか、(2)インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、インピーダンス虚数項が、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でピークを有さないか、または(3)インピーダンスプロットにおいて円弧を有さない場合に、前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、前記設定し直すステップは、(1’)前記インピーダンス実数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス実数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でプラトーとなるように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、(2’)前記インピーダンス虚数項と対数周波数との関係において、前記インピーダンス虚数項が、前記測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でピークを有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか、(3’)前記インピーダンスプロットにおいて円弧を有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直してもよい。
【0035】
前記判定するステップは、測定された対数周波数の範囲について、次式(a)および次式(b)
【0036】
【数7】
【0037】
(kは対数緩和時間の配列番号、pは測定されたデータ点の配列番号、fおよびfはk番目およびp番目の周波数、jは単位虚数、Nは測定データ点数、Rは高周波限抵抗、τはk番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値)
を用いて、自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を求め、前記測定された対数周波数の範囲に前記Rがピークを有さない場合に、前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定し、前記設定し直すステップは、前記測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲を超えて前記Rがピークを有するように前記解析するステップに用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直してもよい。
【0038】
前記解析するステップで得られた前記パラメータを、前記式(A)に代入し、理論インピーダンススペクトルを求めるステップと、前記求めた理論インピーダンススペクトルと前記測定されたインピーダンススペクトルとを表示装置に表示し、比較し、一致するか否かを判定するステップとをさらに実行させてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の測定されたインピーダンススペクトルデータを用いて解析処理する方法は、測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、計算に用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定するステップと、設定した対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を設定するステップと、正則化最小二乗法を適用し、上述の式(A)を満たすように、設定した対数緩和時間の範囲について、パラメータR、T、LおよびRを解析するステップとを包含する。
【0040】
本発明者は、キャパシタ成分およびインダクタ成分を考慮した新たな式(A)を採用することにより、一次電池、二次電池、腐食系、キャパシタのインピーダンスのように周波数の低下によってインピーダンス絶対値が一定の値に収束しない、または、インピーダンス絶対値が一定の値に収束していないデータであっても、測定されたインピーダンススペクトルデータを再現する各種パラメータを求めることができることを見出した。このようにして求めたパラメータを利用することにより、上述のインピーダンススペクトルデータに対しても緩和時間分布解析が可能となる。また、計算に用いる対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定し、設定した対数緩和時間領域での等間隔分割数を設定するので、上記式(A)に基づいてパラメータを求めた際に、高精度に測定されたインピーダンススペクトルデータを再現できる。このような解析処理方法を採用すれば、解析処理システムおよびそれを実行するプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明のインピーダンススペクトルデータを解析処理する工程を示すフローチャートである。
図2図2は、判定するステップを説明する模式図である。
図3図3は、別の判定するステップを説明する模式図である。
図4図4は、図1に続く本発明のインピーダンススペクトルデータを解析処理する工程を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明のインピーダンススペクトルデータ解析処理システムを示すブロック図である。
図6図6は、比較例1で用いた電気回路を示す図である。
図7図7は、図6に示す電気回路を用いて1MHzから1Hzの周波数で計算したインピーダンススペクトルデータの一覧である。
図8図8は、比較例1による図7のインピーダンススペクトルデータに基づく自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
図9図9は、比較例1による図8で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
図10図10は、実施例1による図7のインピーダンススペクトルデータに基づいて、対数緩和時間の範囲を再設定した自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
図11図11は、実施例1による図10で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
図12図12は、比較例2のコイン型リチウム電池のインピーダンススペクトルデータを示す図である。
図13図13は、比較例2による図12のインピーダンススペクトルデータに基づく自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
図14図14は、比較例2による図13で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
図15図15は、実施例2による図12のインピーダンススペクトルデータに基づいて、対数緩和時間の範囲を再設定した自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
図16図16は、実施例2による図15で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
図17図17は、比較例3のGoogle Impedance Spectroscopyフォーラムにアップロードされた絶縁性酸化物のインピーダンススペクトルデータを示す図である。
図18図18は、比較例3による図17のインピーダンススペクトルデータに基づく自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
図19図19は、比較例3による図18で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、アップロードされたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
図20図20は、実施例3による図17のインピーダンススペクトルデータに基づいて、対数緩和時間の範囲を再設定した自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
図21図21は、実施例3による図20で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、アップロードされたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図1は、本発明のインピーダンススペクトルデータを解析処理する工程を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS110:測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定する。後述する解析に用いる対数緩和時間の範囲の見直しを行うことにより、解析の精度を向上させることができる。なお、測定されたインピーダンススペクトルデータは、電気化学測定によって測定された外部データを用いてもよいし、その場で測定したデータであってもよい。ステップS110で設定し直すと判定した場合は、次のステップS120を行うが、設定し直さないと判定した場合はステップS130を行う。
【0045】
ステップS120:測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す。
ステップS130:ステップS120で設定し直した対数緩和時間の範囲、または、ステップS110で設定し直さないと判定した場合には測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を設定する。これにより、対数緩和時間の分割点数を制御できるので、解析の精度や解析速度を向上させることができる。このような分割数の設定は、オペレータ(ユーザ)が手動にて設定してもよいし、コンピュータが適宜設定するようにしてもよい。
【0046】
ステップS140:正則化最小二乗法を適用し、式(A)を満たすように、ステップS120で設定した対数緩和時間の範囲およびステップS130で設定した分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析する。
【0047】
【数8】
【0048】
ここで、pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値である。
【0049】
式(A)は、本願発明者が新たに考案した式であり、キャパシタ成分およびインダクタ成分を考慮しているため、周波数の低下によってインピーダンス絶対値が一定の値に収束しない、または、インピーダンス絶対値が一定の値に収束していないデータに対しても、測定されたインピーダンススペクトルデータを再現する各種パラメータを求めることができる。さらに、式(A)の解析に用いる対数緩和時間の範囲およびその分割数は、ステップS120およびステップS130において見直されているため、各種パラメータを高精度に求めることができる。
【0050】
ここで、ステップS110における判定方法について説明する。
図2は、判定するステップを説明する模式図である。
【0051】
図2の(A)は、測定されたインピーダンススペクトルデータのインピーダンス実数項と対数周波数との関係を模式的に示す図である。図2の(B)は、測定されたインピーダンススペクトルデータのインピーダンス虚数項と対数周波数との関係を模式的に示す図である。図2の(C)は、測定されたインピーダンススペクトルデータのインピーダンスプロットを模式的に示す図である。図2の(A)~(C)において、実線が測定されたインピーダンススペクトルデータであるとする。
【0052】
図2の(A)において、(1)インピーダンス実数項が、測定された対数周波数範囲において低周波数側および高周波数側でプラトー(横ばい)でない場合には、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定する。設定し直すと判定した場合には、(1’)インピーダンス実数項が測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側でプラトーとなるように、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直せばよい。
【0053】
なお、本願明細書において、「プラトー(横ばい)であるか否か」とは、後述する実施例のように、インピーダンス実数項の対数周波数に対する変化を目視にて観察した際に、高周波数側および低周波数側において横ばいの領域を有するか否かを意図するが、インピーダンス実数項を対数でとった際の変化が高周波数側および低周波数側で直線的になっている(プラトーである)、直線的になっていない(プラトーでない)と判定してもよい。このような対数を用いた判定は後述する制御装置の対数緩和時間判定部が行ってもよい。
【0054】
図2の(A)を参照すれば、インピーダンス実数項が、低周波数側(fmin)および高周波数側(fmax)のいずれでもプラトーを示していないため、測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側(fmin’)および高周波数側(fmax’)でプラトーとなるようにし、これを対応する対数緩和時間の最大値および最小値とすればよい。なお、図2の(A)では、測定された対数周波数の低周波数側および高周波数側のいずれも設定し直すと判定したが、いずれかのインピーダンス実数項がプラトーであれば一方だけ設定し直してもよい。
【0055】
図2の(B)において、(2)インピーダンス虚数項が、測定された対数周波数範囲において低周波数側および高周波数側で下向きピークを有しない場合には、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定する。設定し直すと判定した場合には、(2’)インピーダンス虚数項が測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側および高周波数側で下向きピークを有するように、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直せばよい。
【0056】
図2の(B)を参照すれば、インピーダンス虚数項が、低周波数側(fmin)および高周波数側(fmax)のいずれでも下向きピークを有していないため、測定された対数周波数の範囲を超えて低周波数側(fmin’)および高周波数側(fmax’)で下向きピークを有するようにし、これを対応する対数緩和時間の最大値および最小値とすればよい。なお、図2の(B)では、測定された対数周波数の低周波数側および高周波数側のいずれも設定し直すと判定したが、いずれかのインピーダンス虚数項が下向きピークを有していれば一方だけ設定し直してもよい。
【0057】
図2の(C)において、(3)インピーダンスプロットにおいて円弧を有しない場合には、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定する。設定し直すと判定した場合には、(3’)インピーダンスプロットにおいて円弧を有するように、例えば、インピーダンス実数項をZreal minからZreal min’へ、Zreal maxからZreal max’へと変更し、これに対応する対数緩和時間の最大値および最小値とすればよい。なお、図2の(C)では、対数緩和時間の最大値および最小値のいずれも設定し直すと判定したが、インピーダンスプロットのいずれかが円弧になっていれば一方だけ設定し直してもよい。
【0058】
図3は、別の判定するステップを説明する模式図である。
【0059】
まず、測定されたインピーダンススペクトルデータを、測定された対数周波数の範囲について、次式(a)および次式(b)を用いて、自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を求める。
【0060】
【数9】
【0061】
ここで、kは対数緩和時間の配列番号、pは測定されたデータ点の配列番号、fおよびfはk番目およびp番目の周波数、jは単位虚数、Nは測定データ点数、Rは高周波限抵抗、τはk番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値である。
【0062】
式(a)および(b)は、非特許文献1においても適用される公知の式である。このようにして求めた対数緩和時間分布解析において、測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲にRのピークを有しない場合には、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すと判定する。設定し直すと判定した場合には、測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲を超えてRがあたかもピークを有するように、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直せばよい。
【0063】
図3を参照すれば、Rkが対数緩和時間の両端(τminおよびτmax)においてピークを有しないため、測定された対数周波数の範囲をこえてRが対数緩和時間の両端(τmin’およびτmax’)においてあたかもピークを有するようにし、これに対応する対数緩和時間の最大値および最小値とすればよい。なお、図3では、Rkは、対数緩和時間の両端においてピークを有しないが、いずれか一方においてピークを有していれば一方だけを設定し直してもよい。このようにして設定し直した場合、式(A)から得られる自然対数緩和時間分布抵抗Rは、設定された対数緩和時間の範囲にピークを有することになる。
【0064】
また、測定したインピーダンススペクトルデータによっては、試料に応じて、いずれか一方にのみピークを有する場合もある。この場合には、そのピークが、測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲にあるか否かによって、対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定すればよい。
【0065】
図2および図3を参照して説明したステップS110の再設定をし直すか否かの判断は、オペレータがディスプレイ等に表示されたデータを見て、目視・手動にて行ってもよいし、コンピュータが判断してもよい。コンピュータが判断し、再設定する場合には、表示されたデータを外挿し、例えば、図2の(A)であれば、インピーダンス実数項のプラトーな対数周波数範囲が、fmax’Hz以上fmin’Hz以下となるようにして、対数緩和時間の最大値および/または最小値を再設定すればよい。
【0066】
なお、ステップS110において設定し直すと判定しない場合には、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および最小値をステップS140の解析に使用すればよい。
【0067】
再度図1に戻る。
ステップS140において、式(A)におけるキャパシタのインピーダンスは、次式(B)で与えられてもよい。
Z(f)=T/(j2πf) ・・・(B)
【0068】
従来、正則化最小二乗法は、パラメータ値を最小化する項を含むため、キャパシタンス(C)のインピーダンスを、Z(f)=1/(Cj2πf)で与えていた。しかしながら、本願発明者は、キャパシタのインピーダンスの式では計算が発散する場合があるが、本願発明者が提案する上記式(B)を採用することにより、計算の発散を抑制し、正則化非線形最適化を適用できることを見出した。
【0069】
ステップS140において、式(A)による非線形最適化は、パラメータ数が多すぎる悪設定問題または不良設定問題になる場合があるため、正則化非線形最適化法を用いて最適化してもよい。このような正則化非線形最適化法は、Tikhonov正則化法、Lasso正則化法およびElastic Net正則化法からなる群から選択される正則化法を採用してもよい。あるいは、正則化非線形最適化法は、Levenberg-Marquardt法、シンプレックス法、および、共役勾配法からなる群から選択される非線形最適化法を採用してもよい。当然ながら、これらの正則化法と非線形最適化法とを組み合わせてもよい。
【0070】
ステップS140において、パラメータ初期値は適当な正値を事前に設定するとよい。後述する実施例ではR=1、T=10fmax’、L=10fmax’+3、R=|Zimag av|/Mとしている。|Zimag av|は測定された全インピーダンス虚数値の平均値の絶対値である。初期値の設定値は0以外の正値かつ正則化非線形最適化の計算によって測定結果を再現しうる値であればよく、上記の与え方に限られるものではない。
【0071】
ステップS110~S140によって、パラメータR、K、LおよびRを高精度に求めることができる。なお、ステップS140を行った後、再度ステップS120および/またはステップS130の設定を見直し、ステップS140を繰り返し行ってもよい。
【0072】
本発明によれば、周波数の低下によってインピーダンス絶対値が一定の値に収束しない、または、インピーダンス絶対値が一定の値に収束していないデータに対しても、測定されたインピーダンススペクトルデータを再現する各種パラメータを求めることができるため、測定されたインピーダンススペクトルデータとして、一次電池、二次電池、燃料電池、キャパシタ材料、防蝕処理を施した金属およびセラミックス材料からなる群から選択される試料のインピーダンススペクトルデータを採用できる。
【0073】
図4は、図1に続く本発明のインピーダンススペクトルデータを解析処理する工程を示すフローチャートである。
【0074】
ステップS140:ステップS120およびステップS130に続いて、式(A)を満たすようにパラメータを求める。
ステップS150:ステップS140で得られたパラメータを式(A)に代入し、理論インピーダンススペクトルデータを求める。
ステップS160:理論インピーダンススペクトルと測定されたインピーダンススペクトルとを重ねて表示して比較する。
【0075】
このようにすることにより、ステップS140で得られたパラメータの妥当性を目視にて瞬時に判断できる。詳細には、ステップS150で求めた理論インピーダンススペクトルデータと測定されたインピーダンススペクトルデータとが良好に一致すれば、ステップS140で得られたパラメータが妥当であると判断できる。一方、理論インピーダンススペクトルデータと測定されたインピーダンススペクトルデータとが一致しない場合には、再度、ステップS120および/またはステップS130において、対数緩和時間の最大値および/または最小値、ならびに、分割数を設定し直し、ステップS140、ステップS150およびステップS160を繰り返してもよい。
【0076】
次に、図1に記載の解析処理する方法を実施するインピーダンススペクトルデータ解析システムについて説明する。
図5は、本発明のインピーダンススペクトルデータ解析処理システムを示すブロック図である。
【0077】
本発明のインピーダンススペクトルデータ解析処理システム(以降では単に解析処理システムと称する)500は、少なくとも、制御装置510と、表示装置520とを備える。
【0078】
制御装置510は、数緩和時間判定部511において、測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定する。設定し直すと判定した場合は、対数緩和時間設定部512において対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直す。分割数設定部513は、設定し直さないと判定した場合には、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の範囲で、または対数緩和時間設定部512において設定し直された対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を設定する(図1のステップS120およびS130)。ここで、対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かの判定や、設定した対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数の設定の詳細は、図1図3を参照して説明したとおりであるため省略する。
【0079】
さらに、制御装置510のパラメータ解析部514において、正則化最小二乗法を適用し、次式(A)を満たすように、設定した対数緩和時間の範囲および設定した分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析する(図1のステップS140)。
【0080】
【数10】
【0081】
ここで、pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値である。
【0082】
表示装置520は、パラメータ解析部514における解析結果を表示する。表示装置520は、解析結果を表示できれば任意の表示装置が採用されるが、ディスプレイ装置やプロジェクタ装置である。
【0083】
制御装置510は、入力端末(図示せず)をさらに備えてもよい。これにより、オペレータが、表示装置520に表示されたデータを目視にて確認し、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定し、設定した対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を設定する。
【0084】
制御装置510は、得られたパラメータを、再度式(A)に代入し、理論インピーダンススペクトルデータを求め、理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとを表示装置520に表示させ、比較する。
【0085】
解析処理システム500は、インピーダンススペクトルデータを測定する電気化学測定装置530と接続されていてもよく、測定されたインピーダンススペクトルデータを制御装置510が受け取るように構成されてもよい。
【0086】
また、制御装置510は、上述の機能を発揮するものであれば制限はないが、好ましくは、少なくとも、メモリ、中央処理装置(CPU)、ハードディスクドライブ(HDD)、ドライブ装置、および、通信制御部を備えるコンピュータ装置であり得る。詳細には、オペレーティングシステム(OS)および図1に示す解析処理を実施するためのアプリケーションプログラム(インピーダンススペクトルデータ解析処理プログラム)がHDDに格納され、CPUによって実行され、HDDからメモリに読みだされる。CPUが、アプリケーションプログラムの内容に応じて、ドライブ装置、通信制御部あるいは表示装置520の動作を制御する。
【0087】
通信制御部が測定されたインピーダンススペクトルデータを受信し、メモリに格納するか、あるいは、電気化学測定装置530で測定されたインピーダンススペクトルデータをメモリに格納する。次いで、コンピュータ装置のCPUは、アプリケーションプログラムを実行し、測定されたインピーダンススペクトルデータを読み出し、そのデータに基づいて、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定するステップ(図1のステップS110)と、判定するステップで設定した対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を設定するステップ(図1のステップS130)と、正則化最小二乗法を適用し、次式(A)を満たすように、設定した対数緩和時間の範囲および設定した分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析するステップ(図1のステップS140)とを行う。
【0088】
【数11】
【0089】
ここで、pは測定されたデータ点の配列番号、lは対数緩和時間の配列番号、fはp番目の周波数、jは単位虚数、Mは対数緩和時間の分割数、Tはキャパシタンス(C)の逆数、Lはインダクタンス、Rは高周波限抵抗、τはl番目の緩和時間、Rはτにおける抵抗値、|Δlnτ|は自然対数緩和時間の間隔の絶対値である。
【0090】
なお、上述のステップS110~S140は、上述したとおりであるため重複して説明するのを避ける。解析するステップで得られたパラメータは、メモリに格納されるようにしてもよい。
【0091】
さらに、コンピュータ装置のCPUは、アプリケーションプログラムをさらに実行し、解析するステップで得られたパラメータを式(A)に代入し、理論インピーダンスを求めるステップ(図4のS150)と、求めた理論インピーダンススペクトルと測定されたインピーダンススペクトルとを表示装置に表示し、比較するステップ(図4のS160)とを行ってもよい。ここでも、上述のステップS150~S160は、上述したとおりであるため重複して説明するのを避ける。
【0092】
上述のアプリケーションプログラム(インピーダンススペクトルデータ解析処理プログラム)は、HDDに格納されるものとして説明したが、コンピュータ読み取り可能なリムーバルディスク等に格納され頒布される、または、インターネットなどのネットワーク回線や通信制御部を通じて頒布され、コンピュータにインストールされてもよい。
【0093】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例
【0094】
[比較例1]
比較例1では、図6に示す電気回路に周波数1MHzから1Hz、対数周波数で等間隔に1桁あたり10点のインピーダンススペクトルデータに基づいて、上述の式(a)および(b)を用いて自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性(従来法の緩和時間分布解析)を調べた。さらに、得られた緩和時間分布解析から理論インピーダンススペクトルデータを計算し、測定されたインピーダンススペクトルデータと比較した。これらの結果を図7図9に示す。
【0095】
図6は、比較例1で用いた電気回路を示す図である。
図7は、図6に示す電気回路を用いて1MHzから1Hzの周波数で計算したインピーダンススペクトルデータの一覧である。
【0096】
図7の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図7の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図7の(C)は、インピーダンスプロットを示す。図7の(A)によれば、インピーダンス実数項は、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でプラトーでなかった。図7の(B)によれば、インピーダンス虚数項は、測定された対数周波数の範囲のうち低周波数側および高周波数側でピークを有しなかった。図7の(C)は、インピーダンスプロットが円弧を有しなかった。
【0097】
図8は、比較例1による図7のインピーダンススペクトルデータに基づく自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
【0098】
図8によれば、従来法の緩和時間分布解析では、測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲にRのピークを有しないことが分かった。
【0099】
図9は、比較例1による図8で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
【0100】
図9の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図9の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図9の(C)は、インピーダンスプロットを示し、白丸が測定されたインピーダンススペクトルデータ(すなわち図7と同じ)を表し、実線が理論インピーダンススペクトルデータを表す。図9によれば、理論インピーダンススペクトルデータは、とりわけ点線で示す領域において、測定されたインピーダンススペクトルデータを再現できていないことが確認された。
【0101】
[実施例1]
実施例1では、比較例1と同じ電気回路で測定されたインピーダンススペクトルデータ(図7)に基づいて、図1図4に記載の解析処理方法を実施した。詳細には、図7の(A)~(C)、および、図8を参照し、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定した(図1のステップS110)。判定は目視にて行った。
【0102】
図7の(A)において、インピーダンス実数項が、測定された対数周波数の範囲(1Hz~1MHz)を超えて低周波数側および高周波数側でプラトーとなるように、図7の(B)において、インピーダンス虚数項が、測定された対数周波数の範囲(1Hz~1MHz)を超えて低周波数側および高周波数側にピークを有するように、図7の(C)において、インピーダンスプロットが円弧を有するように、ならびに、図8において、対数緩和時間の範囲を超えてRがあたかもピークを有するように、対数緩和時間の最大値および最小値を、log(1/(2π×10-2[s]))およびlog(1/(2π×10[s]))に手動にて設定し直した。
【0103】
設定された対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を対数スケールで緩和時間1桁あたり10点に手動にて設定した(図1のステップS130)。次いで、正則化最小二乗法を適用し、式(A)を満たすように、設定した対数緩和時間の範囲および設定した分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析した(図1のステップS140)。この解析には、さらに、式(B)、および、Tikhonovの正則化非線形最適化法を用い、コンピュータ装置が実施した。なお、パラメータの初期値としてR=1、T=10fmax’、L=10fmax’+3、R=Zimag av/Mを用いた。ここで、Zimag avは測定された全インピーダンス虚数値の平均値(1.7Ω)であり、fmax’は10Hzであり、Mは91であった。結果を図10に示す。さらに、緩和時間分布解析から理論インピーダンススペクトルデータを計算し、測定されたインピーダンススペクトルデータと比較した。結果を図11に示す。
【0104】
図10は、実施例1による図7のインピーダンススペクトルデータに基づいて、対数緩和時間の範囲を再設定した自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
【0105】
図10によれば、対数緩和時間の範囲を再設定し、本発明者が考案した式(A)を用いた緩和時間分布解析では、設定された対数緩和時間の範囲にRのピークを有することが分かった。
【0106】
図11は、実施例1による図10で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
【0107】
図11の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図11の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図11の(C)は、インピーダンスプロットを示し、白丸が測定されたインピーダンススペクトルデータ(すなわち図7と同じ)を表し、実線が理論インピーダンススペクトルデータを表す。図11によれば、理論インピーダンススペクトルデータは、測定されたインピーダンススペクトルデータを完全に再現でき、得られたパラメータが妥当であることが目視にて確認された。
[比較例2]
比較例2では、市販のコイン型リチウム電池(CR1620)の測定されたインピーダンススペクトルデータに基づいて、上述の式(a)および(b)を用いて自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性(従来法の緩和時間分布解析)を調べた。市販のコイン型リチウム電池(CR1620)のインピーダンススペクトル測定には電気化学測定装置(ソーラートロン製,1296型ポテンショ・ガルバノスタットと同社製1255型周波数応答特性装置を接続した装置)を用いて測定した。さらに、得られた緩和時間分布解析から理論インピーダンススペクトルデータを計算し、測定されたインピーダンススペクトルデータと比較した。これらの結果を図12図14に示す。
【0108】
図12は、比較例2のコイン型リチウム電池のインピーダンススペクトルデータを示す図である。
【0109】
図12の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図12の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図12の(C)は、インピーダンスプロットを示すが、周波数が小さくなってもインピーダンス実数項およびインピーダンス虚数項ともに一定値に収束しないスペクトルになった。これは、コイン型リチウム電池において、低周波数域で物質拡散に伴う特性インピーダンスが現れるためである。
【0110】
図13は、比較例2による図12のインピーダンススペクトルデータに基づく自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
【0111】
図13によれば、従来法の緩和時間分布解析では、測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲にRのピークを有しないことが分かった。
【0112】
図14は、比較例2による図13で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
【0113】
図14の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図14の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図14の(C)は、インピーダンスプロットを示し、白丸が測定されたインピーダンススペクトルデータ(すなわち図12と同じ)を表し、実線が理論インピーダンススペクトルデータを表す。図14によれば、理論インピーダンススペクトルデータは、とりわけ点線で示す領域(対数周波数logfが約-1)において、測定されたインピーダンススペクトルデータを再現できていないことが確認された。
【0114】
[実施例2]
実施例2では、比較例2と同じコイン型リチウム電池で測定されたインピーダンススペクトルデータ(図12)に基づいて、図1図4に記載の解析処理方法を実施した。詳細には、図13を参照し、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定した(図1のステップS110)。
【0115】
図13において、対数緩和時間の範囲を超えてRがあたかもピークを有するように、対数緩和時間の最大値および最小値を、log(1/(2π×10-3[s]))およびlog(1/(2π×10[s]))に手動にて設定し直した。
【0116】
設定された対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を対数スケールで緩和時間1桁あたり10点に手動にて設定した(図1のステップS130)。次いで、正則化最小二乗法を適用し、式(A)を満たすように、設定した対数緩和時間の範囲および設定した分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析した(図1のステップS140)。なお、パラメータの初期値としてR=1、T=10fmax’、L=10fmax’+3、R=|Zimag av|/Mを用いた。ここで、|Zimag av|は測定された全インピーダンス虚数値の平均値の絶対値(1.7Ω)であり、fmax’は10Hzであり、Mは91であった。この解析には、式(B)、および、Tikhonovの正則化非線形最適化法を用い、コンピュータ装置が実施した。結果を図15に示す。さらに、緩和時間分布解析から理論インピーダンススペクトルデータを計算し、測定されたインピーダンススペクトルデータと比較した。結果を図16に示す。
【0117】
図15は、実施例2による図12のインピーダンススペクトルデータに基づいて、対数緩和時間の範囲を再設定した自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
【0118】
図15によれば、対数緩和時間の範囲を再設定し、本発明者が考案した式(A)を用いた緩和時間分布解析では、設定された対数緩和時間の範囲にRのピークを有することが分かった。
【0119】
図16は、実施例2による図15で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、測定されたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
【0120】
図16の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図16の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図16の(C)は、インピーダンスプロットを示し、白丸が測定されたインピーダンススペクトルデータ(すなわち図12と同じ)を表し、実線が理論インピーダンススペクトルデータを表す。図16によれば、理論インピーダンススペクトルデータは、測定されたインピーダンススペクトルデータを完全に再現でき、得られたパラメータが妥当であることが目視にて確認された。
【0121】
[比較例3]
比較例3では、Google Impedance Spectroscopyフォーラム(https://groups.google.com/forum/#!forum/impedance-spectroscopy)にアップロードされている絶縁性酸化物のインピーダンススペクトル(図17)に基づいて、上述の式(a)および(b)を用いて自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性(従来法の緩和時間分布解析)を調べた。さらに、得られた緩和時間分布解析から理論インピーダンススペクトルデータを計算し、測定されたインピーダンススペクトルデータと比較した。これらの結果を図18および図19に示す。
【0122】
図17は、比較例3のGoogle Impedance Spectroscopyフォーラムにアップロードされた絶縁性酸化物のインピーダンススペクトルデータを示す図である。
【0123】
図17の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図17の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図17の(C)は、インピーダンスプロットを示すが、周波数が小さくなってもインピーダンス実数項およびインピーダンス虚数項ともに一定値に収束しないスペクトルになった。
【0124】
図18は、比較例3による図17のインピーダンススペクトルデータに基づく自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
【0125】
図18によれば、従来法の緩和時間分布解析では、測定された対数周波数に相当する対数緩和時間の範囲にRのピークを有しないことが分かった。
【0126】
図19は、比較例3による図18で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、アップロードされたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
【0127】
図19の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図19の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図19の(C)は、インピーダンスプロットを示し、白丸がアップロードされたインピーダンススペクトルデータ(すなわち図17と同じ)を表し、実線が理論インピーダンススペクトルデータを表す。図19によれば、理論インピーダンススペクトルデータは、とりわけ点線で示す領域において、測定されたインピーダンススペクトルデータを再現できていないことが確認された。
【0128】
[実施例3]
実施例3では、比較例3と用いたインピーダンススペクトルデータ(図17)に基づいて、図1図4に記載の解析処理方法を実施した。詳細には、図18を参照し、測定された対数周波数に対応する対数緩和時間の最大値および/または最小値を設定し直すか否かを判定した(図1のステップS110)。
【0129】
図18において、対数緩和時間の範囲を超えてRがあたかもピークを有するように、対数緩和時間の最大値および最小値を、log(1/(2π×10-2[s]))およびlog(1/(2π×10[s]))に手動にて設定し直した。
【0130】
設定された対数緩和時間の範囲で等間隔に分割する数を対数スケールで緩和時間1桁あたり10点に手動にて設定した(図1のステップS130)。次いで、正則化最小二乗法を適用し、式(A)を満たすように、設定した対数緩和時間の範囲および設定した分割数について、パラメータR、T、LおよびRを解析した(図1のステップS140)。なお、パラメータの初期値としてR=1、T=10fmax’、L=10fmax’+3、R=|Zimag av|/Mを用いた。ここで、|Zimag av|は測定された全インピーダンス虚数値の平均値の絶対値(1.2×10Ω)であり、fmax’は10Hzであり、Mは71であった。この解析には、式(B)、および、Tikhonovの正則化非線形最適化法を用い、コンピュータ装置が実施した。結果を図20に示す。さらに、緩和時間分布解析から理論インピーダンススペクトルデータを計算し、アップロードされたインピーダンススペクトルデータと比較した。結果を図21に示す。
【0131】
図20は、実施例3による図17のインピーダンススペクトルデータに基づいて、対数緩和時間の範囲を再設定した自然対数緩和時間分布抵抗Rの対数緩和時間依存性を示す図である。
【0132】
図20によれば、対数緩和時間の範囲を再設定し、本発明者が考案した式(A)を用いた緩和時間分布解析では、設定された対数緩和時間の範囲にRのピークを有することが分かった。
【0133】
図21は、実施例3による図20で得られた緩和時間分布解析から計算した理論インピーダンススペクトルデータと、アップロードされたインピーダンススペクトルデータとの比較を示す図である。
【0134】
図21の(A)は、インピーダンス実数項と対数周波数との関係を示し、図21の(B)は、インピーダンス虚数項と対数周波数との関係を示し、図21の(C)は、インピーダンスプロットを示し、白丸がアップロードされたインピーダンススペクトルデータ(すなわち図17同じ)を表し、実線が理論インピーダンススペクトルデータを表す。図21によれば、理論インピーダンススペクトルデータは、アップロードされたインピーダンススペクトルデータを完全に再現でき、得られたパラメータが妥当であることが目視にて確認された。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のインピーダンススペクトルデータ解析処理方法を採用すれば、インピーダンス絶対値が一定の値に収束しないようなデータに対してもモデルによる再現を可能とし、緩和時間分布解析も可能となる。このような解析処理方法を採用すれば、インピーダンススペクトルデータ解析処理システムおよび解析処理プログラムを提供でき、一次電池、二次電池、キャパシタ、腐食系など種々の試料に対してインピーダンススペクトルデータの解析が可能となる。
【符号の説明】
【0136】
500 インピーダンススペクトルデータ解析処理システム
510 制御装置
520 表示装置
530 電気化学測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21