IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トーヨーカネツ株式会社の特許一覧

特許7027030ピッキングハンド及びピッキング移載装置
<>
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図1
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図2
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図3
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図4
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図5
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図6
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図7
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図8
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図9
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図10
  • 特許-ピッキングハンド及びピッキング移載装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】ピッキングハンド及びピッキング移載装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20220221BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
B25J15/06 D
B25J13/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016134121
(22)【出願日】2016-07-06
(65)【公開番号】P2017019100
(43)【公開日】2017-01-26
【審査請求日】2019-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2015136344
(32)【優先日】2015-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】篠原 啓樹
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】貞光 大樹
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-47681(JP,A)
【文献】特開2000-127074(JP,A)
【文献】特開平8-243961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を吸着するための複数の吸着機構が表面に設けられた略球体もしくは略多面体として構成される吸着手段と、
ピッキングするための搬送対象物を探し出す探り当て機能を果たすように前記吸着手段を動作させる制御機構とを備えたことを特徴とするピッキングハンドであって、
前記探り当て機能は、前記搬送対象物が入れられた原料BOXに前記吸着手段を進入させる際に、前記原料BOX内を前記吸着手段がプログラムで設定されたとおりに平面的に移動しながら前記吸着手段の接触を介して物品を認識検知し目的の搬送対象物であるか否かを判定する作業を該目的の搬送対象物が認識できるまで繰り返すものである、ピッキングハンド。
【請求項2】
前記複数の吸着機構のそれぞれに対して空気の供給/吸出しを行うエア制御装置と、
前記複数の吸着機構のそれぞれに対して前記エア制御装置からの空気の吸着の有無を判定する吸着状態判定部と、
前記吸着状態判定部による空気の吸着の有無の判定に応じて前記エア制御装置から前記複数の吸着機構のそれぞれに対して空気の供給/吸出しを制御する吸着制御部と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のピッキングハンド。
【請求項3】
前記吸着手段は、少なくとも一部の吸着機構が前記搬送対象物の表面もしくはその一部に係合したときに前記搬送対象物の形状に適応して変形する可撓性を有することを特徴とする請求項1もしくは2記載のピッキングハンド。
【請求項4】
一定の表面積を有する表面に複数の吸着機構が設けられた略球体もしくは略多面体として構成される吸着手段と、
ピッキングするための搬送対象物を探し出す探り当て機能を果たすように前記吸着手段を動作させる制御機構とを備えることを特徴とするピッキング移載装置であって、
前記探り当て機能は、前記搬送対象物が入れられた原料BOXに前記吸着手段を進入させる際に、前記原料BOX内を前記吸着手段がプログラムで設定されたとおりに平面的に移動しながら前記吸着手段の接触を介して物品を認識検知し目的の搬送対象物であるか否かを判定する作業を該目的の搬送対象物が認識できるまで繰り返すものである、ピッキング移載装置。
【請求項5】
前記複数の吸着機構のそれぞれに対して空気の供給/吸出しを行うエア制御装置、前記複数の吸着機構のそれぞれに対して前記エア制御装置からの空気の吸着の有無を判定する吸着状態判定部、前記吸着状態判定部による空気の吸着の有無の判定に応じて前記エア制御装置から前記複数の吸着機構のそれぞれに対して空気の供給/吸出しを制御する吸着制御部を備えたピッキングハンドと、
前記吸着手段に接続されるロボットアームと、
前記ロボットアームに直接もしくは間接的接続されるマニピュレータと、
前記ピッキングハンドによって搬送対象物が懸持されている場合には前記マニピュレータを介して前記ロボットアームを移動させる移動機構と
をさらに備えたことを特徴とする請求項に記載のピッキング移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、対象物を吸着するための真空把持装置に係り、特に、物流集配拠点での多品種物品の配送箱等の詰め替え移載における自動物品移載のロボットアームの物品真空把持装置に係るピッキングハンド及びピッキング移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商品物流拠点においては、大量に入荷される多品種商品を仕向け先別に仕分け包装するための商品の出荷容器への移載作業を、ロボット等を利用して行われている。この場合、他種多様な形状を有する商品の中から指定商品のみを特定し、ロボットアームを操作して商品をピックアップするが、このためにはカメラ画像認識装置等を用いて商品箱内を画像撮影し、特定商品のみを認識し、その商品の外形等のデータに応じてロボットアームが指定位置に移動して指定商品を把持し、その後出荷容器に移動して商品を配置する。しかしこの作業は、商品の画像認識による特定を要することから、アームによる商品外形に応じた保持動作など非常に綿密なプログラムによるロボット操作が必要となり、できる限り早く効率的に大量の商品を移載することを要求される物流拠点においては、作業が遅すぎる上に、綿密なプログラム制御により高価なロボットなど経済的な負荷が大きく、現実的な効率化には至らない。
【0003】
実際のロボットアームによる商品保持においては、真空吸引パッドを商品にあてがい真空吸着によって商品を把持する手法が主技術となっているが、一様に平面をもつ物品に対しては真空吸引パッドによる吸着は対応できるが、多種多様な外観形状を有する商品を逐次吸着把持する機能を発揮する技術には至っていない。
【0004】
たとえば、特許文献1では、ロボット等を用いたピッキングの自動化システムにおいて、人の目に替わるビジョンシステムを用いて、各動作毎にワークピッキング位置を計算してロボットに移動指示を出してピッキングをする技術思想が開示されている。しかし、この例では、やはり、カメラ、照明機器、コントローラによって細密にシステムが構成され、システムの複雑化、コスト高につながる。従来からの経済性の問題に対しての根本的な解決策を提示したことにはなっていない。つまりスピードを要求される多品目多商品の多数顧客への配送出荷用のピッキングには適合できていないと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-169640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、ロボット等を用いたピッキングの自動化システムにおいて、人の目に代わるビジョンシステムを用いて、各動作毎にワークピッキング位置を計算してロボットに移動指示を出している。この方式では、ロボットシステムを用いてワークをピッキングする際に、ケース及びワークの位置情報を測定しロボットに動作指示しなければならない。この処理時間は各動作に必ず含まれる数字であり、サイクルタイムの拡大につながる。また、一般的なビジョンシステムは、カメラ、照明機器、コントローラにて構成され、システムの複雑化、コスト高につながる。
【0007】
精密なプログラムに基づき稼働する高価なロボットを用いずに、簡易な真空吸着パッドにより、商品を特定し、安全に把持し、素早く移載することが可能な経済効率も格段に向上させることができるピッキングハンド及びピッキング移載装置を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、本発明に係るピッキング移載装置のピッキングハンドは、ピッキングするための搬送対象物の存在を確認するための確認手段を備えたことを特徴とする。つまり、搬送対象物を吸着するための複数の吸着機構が設けられた吸着手段と、上記複数の吸着機構のそれぞれに対して空気の供給/吸出しを行うエアシリンダと、上記複数の吸着機構のそれぞれに対して上記エアシリンダからの空気の吸着の有無を判定する吸着状態判定部と、上記吸着状態判定部による空気の吸着の有無の判定に応じて上記エアシリンダから上記複数の吸着機構のそれぞれに対して空気の供給/吸出しを制御する吸着制御部とを具備して構成される。
【0009】
上記構成において、上記搬送対象物の存在を確認する確認手段をさらに具備し、上記吸着制御部は上記確認手段による確認の結果に応じて上記空気の供給及び/もしくは吸出しを制御するようにしてもよい。
【0010】
本発明に係るピッキング移載装置のピッキングハンドは、ピッキング対象の個別ワークの位置を測定してからロボットに動作指示を与えるのではなく、対象ワークが含まれたケース内にハンドを移動させハンドの判断で個別ワークをピッキングする。例えば、同一アイテムのワーク(商品)が収納されているケースからワークを1個取り出す際に、予め位置決めされた対象ワークが含まれたケースに、複数のマトリクス状に並んだ独立した真空吸着パッドをもつピキングハンドを移動、接近させ、さらにワークの存在を確認する確認手段によって最初に吸着した真空吸着パッドを優先して動作させることで、確実に1個のワーク(商品)をピッキングする。そして、そのワークを把持したまま移動し、他のケースへと移載することができる。
【0011】
例えばピッキングハンドの先端部形状が、ワークの収納されたケースの内平面と略同一形状であり、その表面にメッシュ状に多数の吸着パッドがあれば、ケースの中のどの位置にワークがあってもピッキングハンドのいずれかの吸着パッドがワークを捉え吸着把持することができる。
【0012】
つまり、本発明に係るピッキング移載装置のピッキングハンドの先端器具である吸着ヘッドは、搬送ラインで用いる場合、搬送箱の投入口の大きさに合わせた面積の吸着板(おそらく長方形)に、例えば20個の吸着口が設けられており、この吸着口は独立して空気の吸着コントロールが可能なものであり、吸着板が搬送箱に投入されると最初に商品に接触した吸着口のみがセンサーにより反応して吸着動作(他の吸着口はストップ)して商品に吸い付いて取り出しを行なう。動作詳細については予めプログラム化されたアルゴリズムに従う。
【0013】
上記構成において、上記吸着手段は、複数の吸着機構の吸着口が平面板状のパット底部に設けられる構成とすることもできる。
【0014】
また、上記構成においては、上記吸着手段は表面に上記吸着機構が設けられた略球体もしくは略多面体として構成されるとしてもよい。
【0015】
さらに、上記構成においては、上記吸着手段は、少なくとも一部の吸着機構が上記搬送対象物の表面もしくはその一部に係合したときに上記搬送対象物の形状に適応して変形する可撓性を有する構成としてもよい。本発明は吸着機構の吸着部の全体形状を限定するものではなく、臨機応変に被吸着物品の形状に合わせて構成できることが特徴である。
【0016】
吸着パッド及び/若しくはピッキングハンドを構成する部材が、可撓性を有する部材であれば吸着把持の瞬間にワークである商品等を傷つけることなく緩衝性をもって把持することができる。可撓性を有する部材とは、シリコン樹脂、合成ゴム樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、軟質ウレタン樹脂、軟質ポリエチレン樹脂又は繊維質部材などの他に他種考えられるが、本発明はそれらを限定するものではない。柔らかく把持する機能を付与するためのものである。
【0017】
本発明に係るピッキング移載装置は、一定の表面積を有する表面に複数の吸着機構が設けられた吸着手段、上記複数の吸着機構のそれぞれに対して空気の供給/吸出しを行うエア制御装置、上記複数の吸着機構のそれぞれに対して上記エア制御装置からの空気の吸着の有無を判定する吸着状態判定部、上記吸着状態判定部による空気の吸着の有無の判定に応じて上記エア制御装置から上記複数の吸着機構のそれぞれに対して空気の供給/吸出しを制御する制御部を備えたピッキングハンドと、上記吸着手段に接続されるロボットアームと、上記ロボットアームに直接もしくは間接的接続されるマニピュレータと、上記ピッキングハンドによって搬送対象物が懸持されている場合には上記マニピュレータを介して上記ロボットアームを移動させる移動機構と、さらにピッキングするための搬送対象物を確認する確認手段とを備えたことを特徴とすることもできる。
【0018】
例えば、本発明に係るピッキング移載装置は、ロボットアームのような移動するマニピュレータの先端部に敷設されたピッキングハンドを有し、その先端部表面に複数の吸着盤を有する略球状のような可撓性のある吸着ヘッドから構成することもできる。吸着ヘッドが略球形であれば、吸着ヘッドがマニピュレータの動きに従いケースの中を移動しつつワーク表面に接触し吸着把持することができる。吸着ヘッドはさらに多面体形状であってもよい。搬送対象物を柔らかく包み込むように把持する機能を有する可撓性部材であればなおよい。但し本発明は吸着ヘッドの形状を限定するものではない。また上記エア制御装置は、空気の供給又は吸出しのできるエアシリンダ装置等であってよく、エア制御方法を限定するものではない。
【0019】
本発明に係るピッキング移載装置は、ロボット自体は搬送ラインの横に置くマニピュレータタイプであっても、搬送ラインの上に設けたレールから吸着板を下ろす短軸タイプであっても、どちらでも対応できる。本発明は、ピッキングハンドを移動させてワークを移載する移動機構及び駆動システムについて限定するものではない。
【0020】
本発明に係るピッキング移載装置によれば、多種多様な物品の移動又は移載作業においてビションシステムの処理時間が省略できるため、サイクルタイムの短縮が可能である。
【0021】
本発明に係るピッキング移載装置によればビジョンセンサに伴う故障リスクが無い。またビジョンセンサ及び周辺機器が不要のためコストダウンが図れる。
【0022】
本発明に係るピッキング移載装置によれば、物品の移動又は移載作業において、安全で早く、且つ低コスト簡易システムによって対応できるため、作業効率の大幅な増進につながる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば物流集配拠点での他種物品の配送箱等の詰め替え移載において、高価なプログラム制御のロボットアームを使用せずに、商品を簡易に選択し、吸着ピッキングし移載することができるため、安全で作業性のよい物品移載が可能となり、経済効率も格段に向上させることの可能な物流集配拠点が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の全体イメージを示した概念図である。
図2】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッド部分の詳細を示した概念図である。
図3】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッドを構成する1の吸着部を示した概念図である。
図4】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の全体イメージを示した概念図である。
図5】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッド部分の詳細を示した概念図である。
図6】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッド部分の詳細を示した断面概念図である。
図7】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッド部分の動きを示した概念図である。
図8】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着ヘッドを示した概念図である。
図9】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッドの動きを動作フロー図で示した概念図である。
図10】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着ヘッドを示した概念図である。
図11】本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着ヘッドの動きを動作フロー図で示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の全体イメージを示した概念図である。本図に示すように、出荷用の商品が入った原料BOX2と出荷するための集荷BOX1がコンベヤライン上を本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置に向かって移動してくる。
【0027】
原料BOX2の中には商品がランダムに入っている。図1に示すように本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置4のマニュピレータ5は、その先端に吸引装置を装備した吸着ヘッド7を具備する。吸着ヘッド7の形状は原料BOX2の内面積より小さいか又は同等であり、原料BOXの中に入り、先に早く接触した商品を1つ吸着して把持する。上記吸引装置は、空気の供給又は吸出しのできるエアシリンダ装置等であってエア制御方法を限定するものではない。
【0028】
マニュピレータ5は、その後、把持した商品を検査棚に移動させて、検査センサーは、その商品がピックアップすべき商品であるか否かを検査することもできる。検査方法は重量測定等であってよい。たとえば検査が完了した後は、再びマニュピレータ5が商品を吸着して集荷BOX(集品BOX)1に移載して終了する。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着ヘッド部分の詳細を示した概念図である。同図の下図は吸着ヘッドの先端部を下から見た図であり、上の図は吸着ヘッド6を横から見た図である。同図に示すように、吸着ヘッド部には吸着パッド10がメッシュ状に多数配列装着されている。上の図に示すように吸着パッド10を真空吸引するためのピッキング移載装置のマニピュレータ5が連結されている。(図2においては矢印で示す。)メッシュ状配列方法については単純平方に限定するものではなく細密配列であってもよい。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッドを構成する1の吸着パッド部を示した概念図である。同図に示すように、1つの吸着パッドは、吸着盤11と収縮部13とセンサー部12とを備えて構成されており、吸着盤11には真空吸着により商品が吸着される。同時に収縮部13が自在に収縮又は延伸をして商品の形状に適合する。
【0031】
センサー部12は、例えば各エア配管のバルブ/圧力スイッチを制御するためのエア圧力センサーでもあってよい。また、把持した商品の重量を検知する計量センサーであってもよい。又は電気的接触感知センサー、感圧センサー等であってもよい。商品が吸着されていること、商品が指定の商品であること、さらに商品が1つであること等を感知できればよい。商品把持状態を簡易に判断できる感知機能を有するセンサーであれば従来技術をもって対応できる。吸着機構については後述する。
【0032】
吸着盤11、吸着パッド10は全体が可撓性を有する部材で構成されている。シリコン樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、軟質ウレタン樹脂、軟質ポリエチレン樹脂、軟質合成ゴム樹脂等が考えられるが、その他の軟質部材であっても繊維質部材であってもよい。これにより物品を吸着把持する際、物品表面形状に従い確実に密着し吸引エアの漏洩を防止する。
【0033】
図1及び図2に示すように、原料BOX2の内部に入った吸着ヘッド7は、吸着パッドの吸引吸着により、最初に接触した商品を吸引吸着し、それを吸着パッド10のセンサー部12が感知する。そして商品が1つであることを感知した後、マニピュレータ5によって移動する。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の全体イメージを示した概念図である。同図に示すように、吸着パッドを操作する装置は吸引装置を用いた単軸ロボットでもよいし、マニピュレータを用いた簡易アーム状でもよい。図4においては、例えば一次ピッキング14と二次ピッキング15に両装置を分けてわかり易く示している。一次ピッキング14において原料BOX2からピッキングされた商品3は検査棚8で指示通りの商品か否か検査され、二次ピッキング15によって集荷BOX1に移載される。もちろんこの動作は一台の装置及びマニピュレータ5で行われてもよい。
【0035】
一次ピッキング14の吸着ヘッド7は、1種類の商品が複数収納された原料BOX2から、指示された個数の商品をピッキングする。二次ピッキング15の吸着ヘッド7は検査後の商品3を出荷BOX1に移載する。但し、原料BOX内の商品データ(寸法・重量等)は、ピッキング動作開始前にピッキング移載装置の制御プログラムに入力されている。
【0036】
図4の場合の設備構成は、原料BOX2の搬送ライン上の1次ピッキング部及び検査棚8、出荷BOX1の搬送ライン、マニピュレータ(2次ピッキング)5を備えて成り、たとえば商品サイズ毎に吸着ヘッド等を設計することができる。商品形態はインターネット通販等で取り扱う一般的な商品を前提とするが、外形的に吸着パッドの吸着にそぐわない不安定な形状はもちろん除外してもよい。
【0037】
一次ピッキング部に到着した原料BOX2が位置決めされると、単軸ロボット16に組み込まれた吸着パッド7が下降し、原料BOX2内の商品を吸着する。吸着パッドはチェック弁付き複数系統を備えて構成される。吸着動作は一度に複数商品が吸着しないように最初に吸着信号がONしたら他系統はOFFさせることもできる。詳細は後述する。
【0038】
商品を吸着したら単軸ロボット16が上昇、吸引装置を介して商品を検査棚上8に移載する。商品を移載したら吸着パッドはホームポジションに戻る。
【0039】
検査棚はたとえば電子秤上に設置され、周囲に出力エリアセンサーが組み込まれている。商品の重量又は形状を電子秤や画像認識等の手段で検査し指示通りの商品であることを認識することができる。これらの検査機能は従来の技術において対応できる。
【0040】
上記からの収集データを基に検査棚上商品の数量及び位置データを演算、算出してマニピュレータ5の吸着ハンドで商品をピックアップし、出荷BOX1に投入する。商品配置が被る等でデータ収集できないときは検査棚を傾けて商品位置をずらす等の処置で、再度データ収集を試みる。検査棚に残った余剰商品はマニピュレータ5で原料BOX2に戻せばよい。或いは検査棚を傾けて原料BOX2に落とす等々で対応できる。これらの動作は予めプログラミングされていればよい。
【0041】
図4に示すように、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着ヘッドは、図2に示した原料BOX2の形状に相応した四角形状に限定するものではない。吸着ヘッドの形状は、例えば円形又は球形等ランダムに設定できる。これは、移載する商品の形状、形態を考慮して決定すればよい。
【0042】
図5は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッド部分の詳細を示した概念図である。同図に示すように、吸着ヘッド7が略球状である場合を示している。球状表面には多数の吸着パッド10の吸着盤11が設けられている。吸着ヘッド7は前述のように可撓性部材で満たされているため柔軟に表面形状を変化させることができる。
【0043】
図6は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッド部分の詳細を示した断面概念図である。同図に示すように、多数の吸着盤11を表面に有する球状の吸着ヘッド7の内部は、各吸着盤11にセンサー部12が連接しており、商品を吸着把持したことをセンサーで感知する。センサー部12については仕様例を後述する。
【0044】
略球状である吸着ヘッド7は、商品が吸着把持されることにより、その商品の外形にフィットした形状に変形し、商品を安全かつ確実に把持することができる。構成部材は上記のように可撓性を有する軟質部材から構成されることにより、商品外形に適合するフレキシビリティがある。これにより吸着ヘッドは商品の形状に合わせて密着把持することができる。
【0045】
図7は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッド部分の動きを示した概念図である。同図に示すように、例えば吸着ヘッド7が図5図6に示すように球状であれば、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置のマニピュレータ5は、原料BOX2の中に吸着ヘッド7が進入した際、例えば同図に示すようにAの位置からB、C、D、E、Fの順に移動しながら(探り当てながら)内部の商品を吸着把持することができる。
【0046】
吸着ヘッド7は、最初の商品を吸着把持し、センサー感知してピッキングし、そして移載することができる。このような球状の吸着ヘッド7であれば、原料BOXのサイズが変更されても、原料BOXの内形状に合わせてマニピュレータ5の動きを、例えば上記A~Fの動作のようにプログラム設定するだけで対応することができる。本機能を以降「探り当て機能」と称する。
【0047】
本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の先端器具である吸着ヘッド7は、搬送ラインで用いる場合、搬送箱の投入口の大きさに合わせた面積の吸着ヘッド(おそらく長方形)又は略球形の吸着ヘッドに、例えば30個の吸着口が設けられており、この吸着口は独立して空気の吸着コントロールが可能なものであり、吸着板が搬送箱に投入されると最初に商品に接触した吸着口のみがセンサーにより反応して吸着動作(他の吸着口はストップ)して商品に吸い付いて取り出しを行う。
【0048】
上述したのは、図1の搬送ラインで搬送箱に同一商品が入れられた箱が搬送されていると、その中から、1つだけ商品を素早く効率的に取り出す方法である。従来、この種のロボットアームに取り付けてある先端器具は、本発明と同じ吸着方式であっても、先端にはカメラ等のセンサー類が多数備えられ、これらを用いて、商品の位置を正確に割り出し、それから商品をピックアップするという「画像認識」「位置検出」そして「取り出し」の3度に渡る主工程を厳密なプログラムコントロールに従い作業を行うように規定されていた。
【0049】
しかし、商品がそれなりのスピードで搬送されているラインで、このようにいちいち場所を確認しながらピッキングをしていたのでは、効率が悪く、スピードにおいても対応できない。
【0050】
本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置は、ロボット自体は搬送ラインの横に置くマニピュレータタイプであっても、搬送ラインの上に設けたレールから吸着ヘッドを下ろす短軸タイプであっても、どちらでも対応できる。極めてシンプルな機械装置で対応できることになる。
【0051】
図8は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着ヘッドを示した概念図である。本図に具体例として示すようにピースピッキングロボットによるマニピュレータ5の先端部には複数の吸着パッド10をもつパット形状型の吸着ヘッド7が敷設されている。また各吸着パッド10のエア圧を制御するための回路例を二点鎖線部内の図に示している。センサー部12は例えば圧力感知部であって一定圧力で商品3を把持していることを感知する。またセンサー部12は、重量感知センサーであってもよく、指示通りの商品の把持であるか否かを感知することができる。制御機構17は、全体制御コンピュータに連結される態様であってもよい。
【0052】
図9は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッドの動きを動作フロー図で示した概念図である。本図は、ピースピッキングロボットの具体例を動作フローで示しており、吸着ヘッド及び吸着パッドの動作及び各動作におけるプログラム上の判断システムの事例を示している。
【0053】
図9では、吸着ヘッド7の吸着パッド10によって原料BOX2の中の商品3をピッキングする動作フローをプロセスAからプロセスHの順で表している。プロセスBでヘッド7が商品に近接し、プロセスCで商品を1つ吸着把持してプロセスDで上昇しつつ重量等の検査を実施する。検査が合格であればプロセスEで商品は集荷BOX1に投入される。
【0054】
例えば、プロセスCと同じ段階であるプロセスFのように複数商品を吸着把持してしまった場合は、プロセスGの重量検査において、商品がひとつになるよう余分な商品の吸着を外す。重量等の検査で合格になった場合にプロセスEに至る。検査NGのコースは繰り返しの工程を示す。吸着パッドのエア圧を開放して余分な商品を落とす順番は、例えばヘッドの外側の商品から外すというように任意に設定すればよい。また重量検査でなく吸引エア圧により吸引する吸着盤の数から検査し、余分な商品の吸着を解除することにより成してもよい。
【0055】
図10は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着ヘッドを示した概念図である。本図は、吸着パッド10が略球状又は略多面体形状である場合を示している。図10に示すように略球状又は略多面体形状を有する吸着ヘッド7が、その表面に複数の吸着パッド10を敷設しているイメージを表している。また各吸着パッド11のエア圧を制御するための回路例を二点鎖線部内に概略図で示している。各吸着パッド11に敷設されたセンサー部12が例えば吸引エア圧を感知する場合は、その圧力を制御機構17に伝達し圧力の維持または開放(オープン)の指示を受ける。
【0056】
図11は、本発明の一実施形態に係るピッキング移載装置の吸着パッドの動きを動作フロー図で示した概念図である。同図の破線内に示すように、略球状又は略多面体形状を有する吸着ヘッド7は供給された商品BOX内を移動しつつ商品を検知するいわゆる探り当て機能18を有する。探り当て機能18については、図7での説明の通りである。個々の吸着パッドが略球状の表面に配設されていることにより上下方向以外の方向に対して商品を検知することができる。
【0057】
図11に示すように、吸着ヘッド7の吸着パッド10によって原料BOX2の中の商品3をピッキングする動作フローをプロセスAからプロセスHの順で表している。プロセスBでヘッド7が商品に近接し、プロセスCで商品を1つ吸着把持してプロセスDで上昇しつつ重量等の検査を実施する。検査が合格であればプロセスEで商品は集荷BOX1に投入される。
【0058】
例えば、プロセスCの段階でプロセスFのように複数商品を吸着把持してしまった場合は、プロセスGの重量検査において、商品がひとつになるよう余分な商品の吸着を外す。重量等の検査で合格になった場合にプロセスEに至る。検査NGのコースは繰り返しの工程を示す。吸着パッド10を開放して余分な商品を落とす順番は例えばヘッドの外側の商品から外すというように任意に設定すればよい。
【0059】
例えば図5に代表的に示した吸着ヘッド7は、吸着物の重量測定や吸引エア圧による物品検知及び認識機能を備える場合を主に記載したが、その他の検知認識方法を用いてもよい。吸着ヘッド7は、図7に示すように、吸着すべき物品を自ら探し出す動作を行う機能、いわゆる「探り当て機能」を有する。探り当て機能を発揮するためのセンサー機能の中には、画像撮影認識(画像映像認識)、超音波センサー、温度センサー、圧力センサー、電気信号センサー、磁気センサー、紫外線や赤外線などの電磁波感知などが対応できる。これらのセンサーを吸着ヘッド部7又は吸着盤11又はセンサー部12に具備し、各々のセンサーに対応した認識判定プログラムを制御機構17であるコンピュータに有することにより探り当て機能は被吸着物品の特性に応じたピッキング目的にかなったものになることは言うまでもない。
【0060】
探り当てるとは、探り当てる目的の物品又は商品とのハンド吸着部の接触を介してその物品を認識検知し、目的物であるか否かを判定する作業を目的物が認識できるまで繰り返す作業の継続のことをいう。例えば画像認識やIR又はUV電磁波、超音波による判定は非接触検知であるが、温度、圧力、吸引圧力、重量等のセンサーによる認識は接触認識である。本発発明は、吸着ヘッドによる作業であるが物品認識においては接触又は非接触について特に限定するものではない。物品又は商品の認識ができれば吸着ヘッドによって吸着ピッキングできることに変わりはないからである。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。これらはすべて、本技術思想の一部である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上述したように、本願に係る発明によれば、物流集配拠点での他種物品の配送箱等の詰め替え移載において、高価なプログラム制御のロボットアームを使用せずに、商品を簡易に選択し、吸着ピッキングし移載することができるため、安全で作業性のよい物品移載が可能となり、経済効率も格段に向上させることの可能な物流集配拠点が実現される。
【0063】
本発明は、物流集配拠点での商品ピッキング工程のみならず、あらゆる物品の移載に利用することができる。例えば、製造工程における組み付け部品の選択移載にも利用可能である。よって本願は、各種産業に対して大きな有益性をもたらすものである。
【符号の説明】
【0064】
1 集荷BOX(集品BOX)
2 原料BOX
3 商品
4 ピッキング移載装置
5 マニピュレータ
6 エアシリンダ
7 吸着ヘッド
8 検査棚
9 検査センサー
10 吸着パッド
11 吸着盤
12 センサー部
13 収縮部
14 一次ピッキング
15 二次ピッキング
16 単軸ロボット
17 制御機構
18 探り当て機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11