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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】エアフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/00 20220101AFI20220221BHJP
   A01M 29/34 20110101ALI20220221BHJP
【FI】
B01D46/00 C
A01M29/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017021991
(22)【出願日】2017-02-09
(65)【公開番号】P2018038997
(43)【公開日】2018-03-15
【審査請求日】2019-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2016170212
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【弁理士】
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【弁理士】
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】柳本 晃利
(72)【発明者】
【氏名】茂田 誠
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-039922(JP,A)
【文献】登録実用新案第3025085(JP,U)
【文献】特開2013-071058(JP,A)
【文献】特開2016-014500(JP,A)
【文献】特開2016-131967(JP,A)
【文献】特開2015-229156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D46/00-46/54
B01D39/00-39/20
A01M1/00-99/00
F24F7/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流入口および空気流出口を有し、内部にろ材を収容したフィルタ枠と、
フィルタ枠の前記空気流出口に配置した防虫シートと、
前記フィルタ枠の前記空気流出口周縁に嵌め込まれた嵌め込み枠と、を備え、
前記防虫シートの周縁部を前記フィルタ枠と前記嵌め込み枠との間で保持したエアフィルタ装置であり、
前記フィルタ枠は、外周面部と、この外周面部から枠内に向かって延びる幕板部とを備え、前記空気流出口が前記幕板部によって囲まれた開口であり、
前記嵌め込み枠は、前記空気流出口内に嵌め込まれる嵌め込み部と、この嵌め込み部から前記幕板部の外面に延びたフランジ部と、を備え、
前記防虫シートの周縁部は、前記フィルタ枠への前記嵌め込み枠の嵌めこみ状態において、前記嵌め込み部の外面から前記フランジ部の内面にかけて配置され、少なくとも前記幕板部と前記フランジ部との間で保持されるエアフィルタ装置
【請求項2】
前記フィルタ枠の幕板部の内周面と、前記嵌め込み枠の嵌め込み部の外面との隙間(C)が、防虫シートの厚みを除いて3mm以下であり、前記嵌め込み部の気流方向の長さ(L)が2~30mm、前記フランジ部の高さ(Y)が2~30mmである請求項に記載のエアフィルタ装置。
【請求項3】
前記幕板部の外面および前記フランジ部の内面には、それぞれ互いに交差する仕切り板が立設されており、前記防虫シートの周縁部は、各仕切り板を越えて、前記嵌め込み部の外面から前記フランジ部の内面にかけて配置される請求項またはに記載のエアフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタ枠の外周面部から前記嵌め込み枠のフランジ部外面にかけて配置された略L字形の外枠をさらに備えた請求項のいずれかに記載のエアフィルタ装置。
【請求項5】
前記略L字形の外枠のコーナー部には、弾性部材が取付けられており、前記フィルタ枠への前記嵌め込み枠の嵌めこみ状態において、前記弾性部材が前記フランジ部の先端部を圧着している請求項に記載のエアフィルタ装置。
【請求項6】
前記嵌め込み枠は、前記空気流出口内に嵌め込まれる嵌め込み部と、この嵌め込み部から前記幕板部の外面に延びたフランジ部と、このフランジ部の先端から折曲されて前記フィルタ枠の外周面部に延びる外枠部とを備えた請求項のいずれかに記載のエアフィルタ装置。
【請求項7】
前記フランジ部と外枠部とのコーナー部には、弾性部材が取り付けられており、前記フィルタ枠への前記嵌め込み枠の嵌めこみ状態において、前記弾性部材が前記防虫シートを介して前記幕板部に圧着している請求項6に記載のエアフィルタ装置。
【請求項8】
前記嵌め込み枠は、上下または両側部のいずれかに、前記外枠部から前記フィルタ枠の空気流入口に延びる一対の延伸板部を有しており、この一対の延伸板部の先端には前記フィルタ枠の空気流入口側の幕板部に係止するための折曲部を有する請求項またはに記載のエアフィルタ装置。
【請求項9】
空気流入口および空気流出口を有し、内部にろ材を収容したフィルタ枠と、
フィルタ枠の前記空気流出口に配置した防虫シートと、
前記フィルタ枠の前記空気流出口周縁に嵌め込まれた嵌め込み枠と、を備え、
前記防虫シートの周縁部を前記フィルタ枠と前記嵌め込み枠との間で保持したエアフィルタ装置であり、
前記フィルタ枠は、前記空気流出口側に立ち上がり片が設けられており、
前記嵌め込み枠は、前記フィルタ枠の外周面部の内面に対面する嵌め込み部と、その先端に設けられ、前記フィルタ枠の前記立ち上がり片と対面するフランジ部とを備え、
前記防虫シートの周縁部は、フィルタ枠の外周面部と嵌め込み部との間、および立ち上がり片とフランジ部との間で保持されると共に、嵌め込み部からフランジ部へ折り曲げられた形状を有するエアフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫の侵入を防止する機能を有するエアフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般ビルのオフィスや製造工場内などにクリーンな空気を取り込むために、空調設備には大気中の浮遊粒子を除去する為のエアフィルタが装着されている。このエアフィルタには、例えば大気中の大きな塵やホコリを捕集するプレフィルタがある。このプレフィルタのろ材繊維間の開口径が数mmある箇所もあるため、小さな昆虫がプレフィルタを通過することがある。特に、狭い隙間を這う習性の昆虫はエアフィルタの下流側まで這い出ることがあり、昆虫が室内に侵入することがある。
【0003】
特許文献1には、プレフィルタのろ材の外周面を、織物または編物からなる防虫シートで被覆したフィルタが開示されている。
特許文献2には、シート状のろ材の周縁部を嵌め込まれている枠材に、周縁にフレームを有する防虫シート(防虫網)を、前記枠材の周方向に延びる弾性部材に押しつける機構を設けたフィルタが開示されている。
【0004】
一般に、防虫網や織物、編物などの防虫シートは、ろ材よりも網目が細かく作製されているので、ろ材よりも先に目詰まりを起こすことが多い。そのため、定期的に防虫シートを取り外し、交換もしくは洗浄する必要がある。しかしながら、特許文献1、2に開示のフィルタは、フレーム等の固定部材を取り外し、ろ材等をすべて取り出さなければ、防虫シートを交換または洗浄できないため、作業が煩雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-071058号公報
【文献】特開2016-014500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、防虫シートの交換や洗浄を簡単に行うことができるエアフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)空気流入口および空気流出口を有し、内部にろ材を収容したフィルタ枠と、フィルタ枠の前記空気流出口に配置した防虫シートと、前記フィルタ枠の前記空気流出口周縁に嵌め込まれた嵌め込み枠と、を備え、前記防虫シートの周縁部を前記フィルタ枠と前記嵌め込み枠との間で保持したことを特徴とするエアフィルタ装置。
(2)前記フィルタ枠は、外周面部と、この外周面部から枠内に向かって延びる幕板部とを備え、前記空気流出口が前記幕板部によって囲まれた開口であり、前記嵌め込み枠は、前記空気流出口内に嵌め込まれる嵌め込み部と、この嵌め込み部から前記幕板部の外面に延びたフランジ部と、を備え、前記防虫シートの周縁部は、前記フィルタ枠への前記嵌め込み枠の嵌めこみ状態において、前記嵌め込み部の外面から前記フランジ部の内面にかけて配置され、少なくとも前記幕板部と前記フランジ部との間で保持される(1)に記載のエアフィルタ装置。
(3)前記フィルタ枠の幕板部の内周面と、前記嵌め込み枠の嵌め込み部の外面との隙間(C)が、防虫シートの厚みを除いて3mm以下であり、前記嵌め込み部の気流方向の長さ(L)が2~30mm、前記フランジ部の高さ(Y)が2~30mmである(2)に記載のエアフィルタ装置。
(4)前記幕板部の外面および前記フランジ部の内面には、それぞれ互いに交差する仕切り板が立設されており、前記防虫シートの周縁部は、各仕切り板を越えて、前記嵌め込み部の外面から前記フランジ部の内面にかけて配置される(2)または(3)に記載のエアフィルタ装置。
(5)前記フィルタ枠の外周面部から前記嵌め込み枠のフランジ部外面にかけて配置された略L字形の外枠をさらに備えた(2)~(4)のいずれかに記載のエアフィルタ装置。
(6)前記略L字形の外枠のコーナー部には、弾性部材が取付けられており、前記フィルタ枠への前記嵌め込み枠の嵌めこみ状態において、前記弾性部材が前記フランジ部の先端部を圧着している(5)に記載のエアフィルタ装置。
(7)前記嵌め込み枠は、前記空気流出口内に嵌め込まれる嵌め込み部と、この嵌め込み部から前記幕板部の外面に延びたフランジ部と、このフランジ部の先端から折曲されて前記フィルタ枠の外周面部に延びる外枠部とを備えた(2)~(4)のいずれかに記載のエアフィルタ装置。
(8)前記フランジ部と外枠部とのコーナー部には、弾性部材が取り付けられており、前記フィルタ枠への前記嵌め込み枠の嵌めこみ状態において、前記弾性部材が前記防虫シートを介して前記幕板部に圧着している(7)に記載のエアフィルタ装置。
(9)前記嵌め込み枠は、上下または両側部のいずれかに、前記外枠部から前記フィルタ枠の空気流入口に延びる一対の延伸板部を有しており、この一対の延伸板部の先端には前記フィルタ枠の空気流入口側の幕板部に係止するための折曲部を有する(7)または(8)に記載のエアフィルタ装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアフィルタ装置は、内部にろ材を収容したフィルタ枠の空気流出口に防虫シートを配置し、防虫シートの周縁部を、フィルタ枠と嵌め込み枠との間で保持しているため、嵌め込み枠をフィルタ枠から取り外すだけで防虫シートを取り出すことができるため、防虫シートの交換や洗浄を簡単に行うことができる。
また、防虫シートの縁部を、フィルタ枠の外側で、フィルタ枠と防虫シート固定部との間で保持しても、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るエアフィルタ装置を示す断面図である。
図2図1に示すエアフィルタ装置の分解斜視図である。
図3図1に示すエアフィルタ装置の部分拡大断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るエアフィルタ装置を示す断面図である。
図5】(a)~(c)はそれぞれ本発明の第3実施形態に係るエアフィルタ装置を示す部分断面図である。
図6】(a)~(c)はそれぞれ本発明の第4実施形態に係るエアフィルタ装置を示す部分断面図である。
図7】(a)および(b)はそれぞれ組立前および組立後における本発明の第5実施形態に係るエアフィルタ装置を示す部分断面図である。
図8】(a)および(b)はそれぞれ組立前および組立後における本発明の第6実施形態に係るエアフィルタ装置を示す断面図である。
図9】第6実施形態において使用される嵌め込み枠の斜視図である。
図10】(a)および(b)はそれぞれ組立て前における本発明の第7実施形態に係るエアフィルタ装置を示す部分断面図である。
図11】第7実施形態にて使用される防虫シートと板材の平面図である。
図12】本発明の第8実施形態に係るエアフィルタ装置を示す部分断面図である。
図13】本発明の第8実施形態に係るエアフィルタ装置を示す断面図である。
図14】(a)および(b)はそれぞれ組立前および組立後における本発明の第9実施形態に係るエアフィルタ装置を示す部分断面図である。
図15】本発明の第10実施形態に係るエアフィルタ装置を示す部分断面図である。
図16】(a)は第10実施形態の嵌め込み枠を示す斜視図であり、(b)は平面図である。
図17】(a)~(c)はそれぞれ本発明の第10実施形態に係るフィルタ枠の脱着方法を示す模式図である。
図18】本発明の別の実施形態に係るエアフィルタ装置の取り付けを示す模式図である。
図19図18に示すエアフィルタ装置の嵌め込み枠を示す斜視図である。
図20】試験例1で使用した試験装置を示す概略説明図である。
図21】試験例2で使用した試験装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るエアフィルタ装置100は、図1に示すように、空気流入口1aから空気流出口1bを有するフィルタ枠1の内部にろ材4が充填されると共に、フィルタ枠1の空気流出口1bに防虫シート3が配置されている。フィルタ枠1の空気流出口1b周縁には、嵌め込み枠2が嵌め込まれており、防虫シート3は、その周縁部をフィルタ枠1と嵌め込み枠2との間で保持されている。空気の気流Aは空気流入口1aから空気流出口1bへと流れる。
【0011】
フィルタ枠1は、外周面部13と、この外周面部13の両側端部から枠内に向かって延びる幕板部14、15を備える。空気流入口1aおよび空気流出口1bは、それぞれ幕板部15、14によって囲まれた開口である。
【0012】
フィルタ枠1内に収容されるろ材4としては、例えば不織布を用いることができる。ろ材4の材質としては、従来からろ材として使用されている繊維がいずれも使用可能であり、例えばポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの高分子化合物繊維、あるいは鉄、ステンレス、銅、アルミなどの金属繊維、ガラス繊維などがあげられる。
ろ材4の繊維径は捕集したい粒子径及び捕集効率によって適時変更することができる。粗塵捕集のためのプレフィルタとして使用する場合、ろ材4を構成する繊維の平均繊維径は1nm~500μmであるのが好ましく、3~200μmであるのがより好ましい。
【0013】
上記不織布としては、例えば、乾式不織布や湿式不織布のほか、繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集して得られる不織布等があげられる。不織布は、繊維の絡合の程度を調整するため、ニードルパンチ装置や水流絡合装置に供することができる。また、不織布を構成する繊維同士をバインダで一体化するか、あるいは、不織布を加熱処理することで繊維同士を一体化することができる。
【0014】
本実施形態では、ろ材4として平板状のものを使用しているが(図2を参照)、これに限定されず、例えば複数枚を並べて収容してもよく、さらに折り加工を施したプリーツ形状で用いてもよい。
【0015】
フィルタ枠1の材質としては、強度と耐久性を有すれば特に限定されず、例えばアルミニウム、鉄、亜鉛、亜鉛鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ステンレスなどの金属、木、樹脂などがあげられる。
【0016】
フィルタ枠1の空気流出口1bには防虫シート3が配置される。防虫シート3は、昆虫の侵入を防止するためのものであって、例えば織物、編物、不織布などがあげられる。防虫シート3が織物または編物の場合、対象とする昆虫により好ましい平均開口径は異なるが、微細な昆虫の侵入を防ぐために編物または織物の平均開口径は小さいほど好ましく、平均開口径が1mm以下であるのが好ましく、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは350μm以下である。また、通気抵抗を考慮すると、開口率は40%以上が好ましく、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。
なお、平均開口径とは、特許第5793040号公報の段落[0044]に定義されるとおりであり、無作為に選んだ50個の開口における開口径の平均値をいう。開口径とは、織物または編物における主面の電子顕微鏡写真から、開口の面積を測定し、この開口の面積と同じ面積の円の直径をいう。また、開口率とは編物または織物の単位面積における開口部の面積の割合のことである。無作為に写した編物または織物の開口が100以上写った主面の顕微鏡写真から、開口が10以上写った単位面積あたりの開口面積を求め、(式1)より開口率を算出する。
(式1) 開口率(%)=(開口面積/単位面積)×100
【0017】
防虫シート3が不織布の場合、目付量は昆虫の侵入を防止するうえで30g/m2以上であるのが好ましく、より好ましくは50g/m2以上であり、さらに好ましくは80g/m2以上である。好ましい目付量は30~100g/m2程度である。
【0018】
防虫シート3を構成する織物、編物または不織布の材質としては、前記したろ材4と同様な材質を使用することができる。
【0019】
フィルタ枠1の空気流出口1bには、図2に示すように、防虫シート3を介して嵌め込み枠2が嵌めこまれ、フィルタ枠1との間で防虫シート3を空気流出口1bで保持する。嵌め込み枠2は、空気流出口1bに嵌め込まれる嵌め込み部2aと、この嵌め込み部2aから幕板部14の外面に対面するフランジ部2bとを備える。この嵌め込み枠2の材質としては、フィルタ枠1と同様なものであってもよい。
【0020】
防虫シート3は、フィルタ枠1と嵌め込み枠2との間で、周縁部30を保持されて取り付けられる。このとき、防虫シート3の周縁部30は、図1に示すように、フィルタ枠1への嵌め込み枠2の嵌めこみ状態において、嵌め込み部2aの外面からフランジ部2bの内面にかけて配置され、幕板部14とフランジ部2bとの間で挟持される。
【0021】
防虫シート3の周縁部30の隙間を通って昆虫が室内に侵入するのを防止するうえで、図3に示すように、フィルタ枠1の幕板部14の内周面と、嵌め込み枠2の嵌め込み部2aの外面との隙間Cはできるだけ小さいのが好ましく、防虫シートの厚み分を除いた隙間Cは理想的には存在しないのがよいが、嵌め込み枠2の嵌め込み易さや、加工精度(公差)を考慮すると、隙間Cは防虫シートの厚みを除いて3mm以下が好ましく、より好ましくは2mm以下であり、さらに好ましくは1mm以下であるのがよい。また、嵌め込み部2aをフィルタ枠1にしっかりとはめ込み、使用中に緩んだりしないように、嵌め込み部21の長さLは、2~30mm程度であるのがよい。さらに、フランジ部2bの高さYは、フランジ部2bと幕板部14との間でのシール性を考慮すると、2~30mm程度であるのがよい。
【0022】
上記したように、フィルタ枠1の空気流出口1bに防虫シート3を介して嵌め込み枠2を嵌め込み、防虫シート3を保持して得られるエアフィルタ装置100は、ケーシング(図示せず)内に収容され、特開2006-035084号公報に示されるような回転型締め付け機構やネジ止めなどの押圧部材で押圧固定することができる。このとき、嵌め込み枠2のフランジ部2bは、幕板部14に防虫シート3を介して押圧される。そのため、防虫シート3の周縁部30はさらに確実に封止される。均一な力で押圧固定することで本願発明のエアフィルタ装置とケーシングとの隙間を無くし、昆虫の下流側への流入を防ぐことができる。本発明のエアフィルタ装置を取り付けるケーシングは、空気の通気方向と直交する方向にエアフィルタ装置の取付・取外し口を設け、ケーシングからエアフィルタ装置を出し入れできるサイドアクセス方式と、ケーシング内に人が入れる点検口を設け、ケーシング内に人が入りエアフィルタ装置を取り付け、取外しができるフロントアクセス式の両方使用することができる。また、特にサイドアクセス方式のケーシングにおいてエアフィルタ装置を複数台通気方向と直交する方向に連結させて使用することができる。
【0023】
本実施形態では、上記のように幕板部14の内周面と、嵌め込み部2aの外面との隙間Cから昆虫の侵入を防止すると共に、さらに幕板部14とフランジ部2bとの間で防虫シート3を挟持しているので、昆虫が室内に侵入するのを2重に防止している。
しかも、本実施形態のエアフィルタ装置によれば、嵌め込み枠2をフィルタ枠1から取り外すだけで防虫シート3を取り出すことができるため、防虫シート3の交換や洗浄を簡単に行うことができる。
【0024】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を図4に示す。なお、第1実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態におけるフィルタ枠11は、前述の実施形態におけるフィルタ枠1と異なり、空気流入口1a側にのみ幕板部15を有している。フィルタ枠11の空気流出口1b側には、立ち上がり片25が設けられている。立ち上がり片25は、本実施形態のフィルタ装置を保持するケーシング26に係止される。
嵌め込み枠21は、フィルタ枠11の外周面部11aの内面に対面する嵌め込み部21aと、その先端に設けられたフランジ部21bとを備える。フランジ部21bは、フィルタ枠11の立ち上がり片25と対面する。そのため、フィルタ枠11の空気流出口1b側において、防虫シート3の周縁部30は、フィルタ枠11の外周面部11aと嵌め込み部21aとの間、および立ち上がり片25とフランジ部21bとの間で保持されると共に、嵌め込み部21aからフランジ部21bは折り曲げられて形状を有することにより、昆虫の侵入を効果的に防止している。
なお、図3に示した隙間C、嵌め込み部2aの長さL、およびフランジ部2bの高さYは、そのまま本実施形態に適用可能である。その他は、前述の第1実施形態と同じである。
【0025】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態を図5(a)~(c)に示す。なお、第1実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。
図5(a)に示すフィルタ枠12は、空気流出口1b側の幕板部14aの外面に、互いに平行に延びる2つの仕切り板5a、5aが立設されている。また、嵌め込み枠22のフランジ部22bの内面には、上記仕切り板5a、5aと交互に、かつ互いに交差する仕切り板5b、5bが形成されている。仕切り板5a、5bは、それぞれ幕板部14aまたはフランジ部22bに一体に形成されていてもよく、あるいは接着、溶接等によって取り付けられていてもよい。
そのため、防虫シート3の周縁部30は、各仕切り板5a、5bを乗り越えるようにジグザグ状になって幕板部14aとフランジ部22bとの間に保持される。このとき、仕切り板5a、5bの少なくとも1つは、端面が対向する幕板部14aまたはフランジ部22bに防虫シート3を介して当接しているのが好ましい。
【0026】
仕切り板5a、5bの数や位置は、図5(a)に限定されるものではなく、例えば、図5(b)に示すように、フランジ部22bの仕切り板5b、5bを幕板部14aの仕切り板5a、5aの外側に設けてもよく、あるいはこれとは逆に、仕切り板5b、5bを仕切り板5a、5aの内側に設けてもよい。
図5(c)は、フランジ部22bに仕切り板5bを1つだけ設け、その両側に幕板部14aの仕切り板5a、5aを設けた構成を示している。これとは逆に、仕切り板5aを1つとし、その両側に仕切り板5b、5bを設けてもよい。
【0027】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態を図6(a)~(c)に示す。なお、第1実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。
図6(a)に示すエアフィルタ装置101は、図1~3に示したエアフィルタ装置100において、フィルタ枠1の外周面部13から嵌め込み枠2のフランジ部2b外面にかけて、断面が略L字形の外枠6を配置したものである。外枠6を設けることで、フィルタ枠1と嵌め込み枠2との間の隙間を塞ぐことができ、昆虫の侵入をさらに防ぐことができる。外枠6の材質は、特に限定されず、フィルタ枠1と同じ材質でもよく、例えば亜鉛、亜鉛鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ステンレス、アルミニウム、鉄などの金属、木、樹脂などがあげられる。その他は第1実施形態と同じである。
【0028】
また、図6(a)に示すエアフィルタ装置101において、図6(b)に示すように、外枠6の内面に弾性部材7が取付けられていてもよい。弾性部材7は、フィルタ枠1へ嵌め込み枠2を嵌め込んだ状態において、フランジ部2bの先端部を圧着すると共に、フランジ部2bの先端部では、弾性部材7が直接または防虫シート3を介して幕板部14に密着することにより、フランジ部2bと幕板部14との隙間から昆虫が侵入するのを防止することができる。弾性部材7はフランジ部2bの外面に取り付けられていてもよい。弾性部材7としては、例えば各種のエラストマーが挙げられる。エラストマーとしては、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーがある。熱硬化性エラストマーとしては、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化スチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴムなどの合成ゴム、天然ゴムなどがある。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系などがある。弾性部材7の硬さは取り付けるケーシングとフィルタ装置の間に使用される弾性部材の硬さと同じでも良く、異なっていても良い。押圧部材で押圧したときの枠の撓みを考慮すると弾性部材7の方が硬いほうが好ましい。弾性部材7の硬度は2~50が好ましい。硬度の測定はJIS K 6253デュロメ-タ Eタイプに則る。
【0029】
嵌め込み枠2と外枠6とは一体化されてもよい。図6(c)は、このような一体化された嵌め込み枠23を示している。嵌め込み枠23は、空気流出口1b内に嵌め込まれる嵌め込み部23aと、この嵌め込み部23aから幕板部14の外面に延びたフランジ部23bと、このフランジ部23bの先端から折曲されてフィルタ枠1の外周面部13に延びる外枠部23cとを備える。
フランジ部23bの内面には、前記と同様な弾性部材7が取り付けられている。弾性部材7は幕板部14に密着することにより、フランジ部23bと幕板部14との隙間から昆虫が侵入するのを防止することができる。なお、弾性部材7はシール性を上げるためにあった方が好ましいが、無くても良い。
なお、図6(c)に示す実施形態の変形として、嵌め込み枠23の嵌め込み部23aとフランジ部23bと外枠部23cとで形成された断面コ字形の溝内に防虫シート3の周縁部を収容した後、この防虫シート3の上に重なるように弾性部材を上記溝内に挿入し、防虫シート3を固定するようにしてもよい。
【0030】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態に係るエアフィルタ装置102を図7(a)、(b)に示す。なお、第1実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。
図7(a)、(b)は、防虫シート3の取付け手順を示しており、同図(a)に示すように、フィルタ枠1の空気流出口1bの周縁に嵌め込まれた嵌め込み枠24は、空気流出口内に嵌め込まれる嵌め込み部24aと、この嵌め込み部24aから前記幕板部の外面に延びたフランジ部24bと、フランジ部24bの先端に設けられ、フランジ部21bの外面に位置したL形の折り返し片24c(防虫シート固定部)とを備える。防虫シート3は嵌め込み枠24より外側の空気流出口1bに配置される。
【0031】
防虫シート3を空気流出口1bに固定するには、図7(a)に示す状態から、折り返し片24cをフランジ部24bの外面に対面するように折り曲げる。これにより、図7(a)に示すように、嵌め込み枠24の嵌め込み部24aと折り返し片24cとの間、および嵌め込み枠24のフランジ部24bと折り返し片24cとの間でそれぞれ防虫シート3を挟持するので、防虫シート3の縁部から昆虫が侵入するのを効果的に防止することができる。その他は第1実施形態と同じである。
折り返し片24cは、フランジ部24bの上端に一体に形成され、フランジ部24bと折り返し片24cとの境界部を、例えば薄肉にするなどして折り返し部を形成することができる。なお、折り返し片24cは、フランジ部24bと別体であってもよく、この場合は折り返し片24cを、防虫シート3を介してフランジ部24bに固定するようにしてもよい。
【0032】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態に係るエアフィルタ装置103を図8(a)、(b)および図9に示す。なお、第1実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。図8(a)、(b)は、エアフィルタ装置103の組立手順を示している。
本実施形態に係るエアフィルタ装置103は、図6(c)に示した一体型の嵌め込み枠23を使用したものである。図9は嵌め込み枠23を示している。フィルタ枠16は、内面に仕切り板17が設けられ、仕切り板17より空気流入口1aにろ材4´を収容している。ろ材4´の空気流入口1a側の前面には押え具20が、ろ材4´の背面には格子状の井桁18がそれぞれ配置され、ろ材4´を保持している。
【0033】
防虫シート3は、フィルタ枠16の空気流出口1bに配置され、その外側に嵌め込み枠23が配置される。防虫シート3の周縁部は、フィルタ枠16の幕板部14の外面に設けた弾性部材7´と、嵌め込み枠23の嵌め込み部23aとフランジ部23bと外枠部23cとで形成された断面コ字形の溝32内の底部に設けた弾性部材7とによって保持されている。この状態では、フィルタ枠16の仕切り板17より空気流入口1a側に空間19が形成される。この空間19は標準フィルタサイズにするためのスペーサーである。このスペーサー部分にはろ材を入れても良く、入れなくても良い。
本実施形態に係るエアフィルタ装置103は、防虫シート3の縁部から昆虫が侵入するのを効果的に防止することができる。その他は第1実施形態と同じである。
【0034】
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態に係るエアフィルタ装置104を図10(a)、(b)および図11に示す。なお、第1~6実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。
図10(a)に示すエアフィルタ装置104は、嵌め込み枠23の嵌め込み部23aとフランジ部23bと外枠部23cとで形成された断面コ字形の溝32内の底部に弾性部材70(ガスケット等)が予め配置されている。弾性部材70は溝32内の底部に接着等で固定してもよい。
防虫シート3を固定する際は、嵌め込み枠23全体に広げた防虫シート3の周縁部を、予め内部に弾性部材70を設けた溝32内に押し込んだ後、弾性部材71を溝32内に嵌め込み、2つの弾性部材70、71で防虫シート3の周縁部を保持して固定する。
図10(b)に示すように、溝32内の底部の弾性部材70´は、溝32の底部全体に設けられていてもよい。弾性部材70(70´),71は、上述した弾性部材7、7´と同じ材質で形成されていてもよい。
【0035】
防虫シート3の少なくとも両側縁部または上下縁部には、図11に示すように、平行な2枚の板材31を取り付けてもよい。この板材31は、嵌め込み枠23へ防虫シート3を取り付ける際のガイドとなり、この板材31を嵌め込み枠23の溝32内に嵌め込むことで、防虫シート3が適切な位置に簡単に取り付けられる。
【0036】
板材31は防虫シート3の全周縁部30を囲うように枠状に取り付けてもよい。防虫シート3への板材31の取り付け方は特に限定されず、例えば、防虫シート3の一辺の端部を内側へ折り返し、折り返した一端をシートに、例えば熱融着、糸で縫合する、テープ、接着剤、ホッチキスなどで接着して袋を作り、この袋に板材31を収容する方法や、2枚の板材31で防虫シート3を挟み、2枚の板材31ごとリベット、ネジ(ボルトとナット)で止める方法、板材31ごとピンなどの止め具で固定する方法、防虫シート3以外の第2の部材で防虫シート3の一辺に袋を形成し、板材31を収容する方法などがある。
【0037】
板材31の厚みは、0.5~2.0mmがよく、さらに好ましくは0.5~1.5mmであるのがよい。板材31の幅は、フランジ部23bの幅以下であることがよく、5~30mmがよく、さらに好ましくは5~20mmであるのがよい。また、板材31の長さは防虫シート3の長さに対して、板材31を収容するために袋を形成するために、同じ長さ以下であるのがよく、防虫シート3の長さに対して20~100mm短いことがよく、さらに好ましくは40~80mm短いことがよい。
【0038】
本実施形態に係るエアフィルタ装置104は、予め防虫シート3を嵌め込み枠23に固定しているので、防虫シート3が嵌め込み枠23から外れるのを効果的に防止することができる。これにより、例えば防虫シート3の交換時などに嵌め込み枠23をフィルタ枠16から外す場合、防虫シート3が外れて捕獲した虫などが散乱してしまうことや、強風により防虫シート3が飛んでしまうことなどを防止できる。また、防虫シート3が嵌め込み枠23に固定されているので、持ち運びも容易である。さらに板材31を防虫シ-ト3に取付けた事で、嵌め込み枠23への取付け位置が決まるため、防虫シ-ト3の取り付けが誰でも簡単にできる。その他は第6実施形態と同じである。また、このような防虫シート3の板材31および弾性部材70(70´),71による固定手段は、他のエアフィルタ装置にも適宜使用してもよい。
【0039】
<第8実施形態>
本発明の第8実施形態に係るエアフィルタ装置105を図12に示す。なお、第1~7実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。
図12に示すエアフィルタ装置105は、図8に示したエアフィルタ装置103や図10に示したエアフィルタ装置104に対して、嵌め込み枠23´の外枠部23cを、フィルタ枠16の周縁部の全部または大部分を覆い被せるまで長くしたものである。これにより、例えばフィルタ枠16と嵌め込み枠23´とが固定されていないときでも、嵌め込み枠23´の外周の長さがフィルタ枠16を覆い被せているので、簡単に外れることはない。
【0040】
さらに、嵌め込み枠23´とフィルタ枠16とより強固に固定するため、図13に示すエアフィルタ装置105´のように、嵌め込み枠23´の内周面部の上面または下面の少なくとも一方に、例えばゴムやバネなどの反発力のある弾性部材77を取り付けていてもよい。この弾性部材77の反発力により嵌め込み枠23´とフィルタ枠16とが圧接し、より強固に固定される。さらに、弾性部材77の代わりに、簡単に着脱が可能であり、低コストである部材(例えば面ファスナーなど)を用いてもよい。
【0041】
<第9実施形態>
本発明の第9実施形態に係るエアフィルタ装置106を図14(a)および(b)に示す。なお、第1~8実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。
図14(a)に示すエアフィルタ装置106は、図10に示す嵌め込み枠23や図12に示す嵌め込み枠23´に対して、嵌め込み枠231の外枠部23cの内周面部に、少なくとも1つの凸部8を形成したものである。また、フィルタ枠16´の外周面部13の表面には少なくとも1つの溝状の凹部80が設けられている。凸部8は例えばエンボス加工で形成することができ、凹部80は例えばフィルタ枠16´をかしめることで形成した溝であってもよい。凸部8および凹部80はそれぞれフィルタ枠16´と嵌め込み枠231とに形成されているが、設置箇所が逆であってもよい。
【0042】
凸部8および凹部80は、図14(b)に示すように、嵌め込み枠231とフィルタ枠16´とを固定する際、嵌め込み枠231に形成された凸部8が、フィルタ枠16´の凹部80に落とし込まれ固定される。これにより、嵌め込み枠231とフィルタ枠16´とが正常な位置で固定され、簡単に外れることはない。
【0043】
<第10実施形態>
本発明の第10実施形態に係るエアフィルタ装置107を図15~17に示す。なお、第1~9実施形態と同じ部材には、同一符号を付して説明を省略する。
図15に示すエアフィルタ装置107の嵌め込み枠25は、その外枠部25cの左右の面に空気流入口1a側へ突出させて伸ばした一対の延伸板部9と、この一対の延伸板部9の先端を略直角(90度)に折り曲げて形成した折曲部90を備えている。この折曲部90は、フィルタ枠16を嵌め込み枠25内に内包した状態で、フィルタ枠16の空気流入口1a側の面の両隅(幕板部15)に引掛けて固定(係止)するためにものである。図16(a)に示す延伸板部9の幅方向の長さLは特に限定されないが、短い方が曲げやすくなり、折曲部90を形成しやすい。
【0044】
嵌め込み枠25の延伸板部9は、折曲部90の折り曲げ方向と反対方向に撓むまたは弾性を有する。この弾性により延伸板部9を外側に撓ませて広げることで、フィルタ枠16を嵌め込み枠25へ簡単に収容することができる。延伸板部9は嵌め込み枠25の一部であり、素材は特に限定されないが、例えばアルミニウムなどの薄い金属板やプラスチック板で形成されるのがよい。なお、延伸板部9は、嵌め込み枠25の上下面に設けられていてもよい。
【0045】
図16(a)に示すように、嵌め込み枠25は、その少なくとも一端に切り欠き部99(切り欠き部99a、99b)を有するのがよい。この切り欠き部99は、嵌め込み枠25をダクトなどに固定する際、カムなどの締め付け治具(回転型締め付け機構)が当たらないようにするものである。さらに、切り欠き部99を設けることで、延伸板部9の幅方向の長さLが短くなり、フィルタ枠16を収納する時に延伸板部9を外側に撓み易くする効果がある。
図16(b)に示すように、延伸板部9は、フランジ部25bとは反対方向、すなわち外枠部25cから空気流入口1a側へ突出している。この延伸板部9は、図16(b)に示すように、嵌め込み枠25の外側の方向へ撓みやすい弾性を有し、開口状態となってフィルタ枠16を収容することができる。
【0046】
延伸板部9および折曲部90を設けた嵌め込み枠25は、図17(a)~(c)に示すように、フィルタ枠16を収容し、固定することができる。
まず、図17(a)に示すように、嵌め込み枠25の一方の折曲部90にフィルタ枠16の一方の側面を押し当てると、折曲部90を介して延伸板部9が外側へ開く。次に、嵌め込み枠25の他方の折曲部90を外側に広げてフィルタ枠16を嵌め込み枠25の内側に入れる。フィルタ枠16の両端は折曲部90に共に接している(図17(b))。最後に、フィルタ枠16を空気流出口1b側に当接するように嵌め込み枠25内に押し込むと、図17(c)に示すようにフィルタ枠16が収容される。このとき、フィルタ枠16の空気流入口1a側の面は、折曲部90で保持されているので、簡単に外れることはない。
フィルタ枠16を取り外す時は、延伸板部9を外側に開いて取り出せばよい。なお、フィルタ枠16の収容または取り出し時には、使用者が手で延伸板部9または折曲部90を掴んで、外側に開いてもよく、そのための把手や指の引掛け部などが延伸板部9または折曲部90に設けてあってもよい。
【0047】
本発明の別の実施形態に係るエアフィルタ装置201は、例えばフィルタケーシングと呼ばれるフィルタ取付箇所を備えたダクト内に設置される。このエアフィルタ装置201は、図18のようにフィルタ取付用の開口202が複数ある横引き(スライド)式のフィルタ取付箇所に取り付けることもある。図18に示すように、横引き式では、フィルタケーシングのダクト側面に扉210を有しており、ダクト内にはフィルタ取付用の開口202が複数並設されており、その上下にフィルタ取付用の上部レール203および下部レール204が設けられている。本発明のエアフィルタ装置201は、連結具209で相互に連結されており、フィルタ取付用の開口202への装着時には、扉210をあけて、図に示す矢印の方向に複数のフィルタ201を順次ダクト内に挿入する。フィルタ取付用の開口202に対してフィルタを押し付ける押圧機構がフィルタケーシングに設置されていても良い。
図18に示した連結具209は連結と切り離しを任意に行えることができ、フィルタ取外し時に連結が外れないことが好ましい。連結具209として両面テープ、面ファスナー、クランク型金属板、鍵状金属板などがある。図19にクランク型金属板301を備えた嵌め込み枠25を示す。このクランク型金属板301(連結具209)は、嵌め込み枠25の外枠部25cの面に設けられる。
【0048】
次に試験例を挙げて本発明のエアフィルタ装置を詳細に説明する。
【0049】
(試験例1)防虫シートの開口径の検討
1.テスト方法
図20に示すように、一方を蓋40で閉じたアクリル樹脂管41内に、昆虫(ミカンキイロアザミウマ)50頭を入れた昆虫容器42を置き、それよりも開口側に1段または2段の防虫シート43,44を設置した。次にアクリル樹脂管41を容器45内に入れ、アクリル樹脂管41の開口付近に純水46を置いた。この状態で所定時間(1時間および60時間)放置し、各防虫網43,44を通過した昆虫数を確認した。
2.テスト品
1段または2段の防虫シート43,44はそれぞれ以下の通りである。
(テストNo.M1)
一段目の防虫シート43:ナイロン糸の編み物、平均開口径450μm
(テストNo.M2)
一段目の防虫シート43:ナイロン糸の編み物、平均開口径370μm
二段目の防虫シート44:ナイロン糸の編み物、平均開口径320μm
3.テスト結果
テスト結果を表1に示す。
【表1】
この結果から、次の試験例2に使用する防虫シートの平均開口径を310μm以下とした。
【0050】
(試験例2)フィルタに対する昆虫通過の検討
1.テスト方法
図21に示すように、試験用ダクト47の中央に設けた取り付け枠54にテスト品48を隙間なく取り付けるために、回転型締め付け機構55を用い、取り付け枠54とテスト品48との間に介在した弾性部材(下記テスト品を参照)が1.5mm圧縮されるように取り付けた。また、試験用ダクト47の気流Aの上流側端部および下流側端部には昆虫が透過しないことを確認した中性能フィルタ49、50をそれぞれ用い、前記と同様に回転型締め付け機構55にて各取り付け枠56,56´に対して、上記と同様に弾性部材が1.5mm圧縮されるように取り付けた。
テスト品48と上流側中性能フィルタ49との間であって、テスト品48に近接した部位に第1の昆虫容器51を配置し、中央部に第2の昆虫容器52を配置した。各昆虫容器51、52には、それぞれ昆虫(ミカンキイロアザミウマ)50頭が入れてある。
テスト品48の下流側には水を入れた容器53を置き、この状態で所定時間(1時間および60時間)放置し、テスト品48を下流側に向けて通過した虫数を確認した。
2.テスト品
(テストNo.K1)
図8に示したエアフィルタ装置103において、防虫シート及び嵌め込み枠を装着していないフィルタを使用した(ブランク)。使用したろ材はプレフィルタである。また、幕板部14には全周にわたって弾性部材7´が装着してある。
使用したフィルタ枠16の寸法は、弾性部材7´の厚みを除いて305×305×50mmであり、幕板14の長さは20mmである。弾性部材7´は幕板14からの高さが5mm、幅10mmである。
(テストNo.K2)
図8図9に示したエアフィルタ装置103を使用した。ろ材はブランクと同じプレフィルタであり、防虫シートには平均開口径230μmの防虫網(厚さ0.5mm)を使用した。フィルタ枠の寸法は、305×305×61mmである。
嵌め込み枠23の嵌め込み部23aの長さLは12mm、フランジ部23bの幅は21.5mm、外枠部23cの幅は20mmである。上記寸法から、幕板部14の内周面と嵌め込み枠23の嵌め込み部23aの外面との隙間Cは1.5mmとなる。なお、幕板14の外面およびフランジ部23bの内外面には前記と同じ弾性部材を貼付した。
(テストNo.K3)
テストNo.K1と同じフィルタ枠を使用し、図1図2に示した防虫シートの取り付け機構を採用した。ろ材はブランクと同じプレフィルタであり、防虫シートには平均開口径230μmの防虫網(厚さ0.5mm)を使用した。フィルタ枠の寸法は、305×305×56mmである。
ここで、フィルタ枠1の嵌め込み部21の長さLは7mm、フランジ部2bの高さYは10mmであり、幕板部14の内周面と嵌め込み部2aの外面との隙間Cは1mmである。
(テストNo.K4)
図15図16に示したエアフィルタ装置107を使用した。ろ材はブランクと同じプレフィルタであり、防虫シートには平均開口径230μmの防虫網(厚さ0.5mm)を使用した。フィルタ枠の寸法は、305×305×65mmである。
嵌め込み枠25の嵌め込み部25aの長さLは12mm、フランジ部25bの幅は21.5mm、外枠部25cの幅は66mm、折り曲げ部90の幅は8mm、切り欠き部99は切り欠き部99aの幅は40mm、切り欠き部99bの幅は20mmである。上記寸法から、幕板部15の内周面と嵌め込み枠25の嵌め込み部25aの外面との隙間Cは1.5mmとなる。なお、弾性部材7及び弾性部材7´は高さが5mm、幅10mmのものを使用した。
(テストNo.K5)
テストNo.K4と同様の条件の図15図16に示したエアフィルタ装置107を使用した。テストNo.K4とは異なり、図11に示すように、防虫シート3の周縁部30に並行な2枚の板材31を取り付けたものを使用した。板材はそれぞれ防虫シートの周縁に袋を成形して収納した。防虫シートに板材を収納するための袋を成形するために、防虫シート3の一辺の端部を内側へ折り返し、折り返した一端のシートに糸で縫合した。板材の材質としてはアルミニウムを使用し、寸法が縦260mm、横10mm、厚さ1mmの板材を使用した。
3.テスト結果
テスト結果を表2に示す。
【表2】
この結果から、本発明に係るテストNo.K2、K3、K4、K5のエアフィルタ装置は、昆虫の透過がないフィルタであることがわかる。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係るエアフィルタ装置を詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,11,12、16 フィルタ枠
1a 空気流入口
1b 空気流出口
2,21,22,23,23´、231、24,25 嵌め込み枠
2a、21a,22a,23a 嵌め込み部
2b、21b,22b,23b フランジ部
3 防虫シート
4、4´ ろ材
5a、5b 仕切板
6 外枠
7、7´、70、71、77 弾性部材
8 凸部
80 凹部
9 延伸板部
90 折曲部
99 切り欠き部
13、11a 外周面部
14、15 幕板部
17 仕切り板
18 井桁
19 空間
20 押え具
21c 折り返し部
23c 外枠部
30 周縁部
31 板材
100~107 エアフィルタ装置
A 気流
L 幅方向の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21