IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図1
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図2
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図3
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図4
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図5
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図6
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図7
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図8
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図9
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図10
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図11
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図12
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図13
  • 特許-半導体装置およびその製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20220221BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20220221BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20220221BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20220221BHJP
   C23C 18/32 20060101ALI20220221BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
H01L21/88 T
C23C18/31 A
C23C18/32
H01L21/88 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017161043
(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公開番号】P2019040975
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】利根川 丘
(72)【発明者】
【氏名】稲川 浩巳
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-028079(JP,A)
【文献】特開昭59-100565(JP,A)
【文献】特開2000-235964(JP,A)
【文献】特開平06-216131(JP,A)
【文献】特開平05-206054(JP,A)
【文献】特開昭61-242018(JP,A)
【文献】特開昭59-172770(JP,A)
【文献】特開2011-077201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/60-21/607
H01L 21/768
H01L 23/48-23/50
H01L 23/52-23/538
H01L 21/28-21/288
H01L 21/44-21/445
H01L 29/40-29/51
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 21/331
H01L 29/861-29/885
H01L 21/329
C23C 18/31
C23C 18/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンからなる半導体基板上に形成され、且つ、第1導電膜と、前記第1導電膜上に形成された第2導電膜とを有するパッド電極と、
前記第2導電膜上に形成され、且つ、外部接続用端子と接続するためのメッキ膜と、
を有し、
前記第1導電膜は、アルミニウムを主成分とし、且つ、シリコンが添加された膜からなり、
前記第2導電膜は、前記第1導電膜を構成する材料と異なる材料で構成され、
前記第2導電膜は、アルミニウムを主成分とし、且つ、銅が添加された膜、または、アルミニウムを主成分とし、且つ、銅およびシリコンが添加された膜からなり、
前記第1導電膜は、前記半導体基板の表面に直接接し、
前記第1導電膜の表面の結晶面は、前記半導体基板の表面の結晶面を引き継いでおり、
前記半導体基板の表面の結晶面、および、前記第1導電膜の表面の結晶面は、(001)面であり、
前記第2導電膜の表面の結晶面は、(111)面である、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2導電膜と前記メッキ膜とは直接接している、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1導電膜と前記第2導電膜との間に、前記第1導電膜を構成する材料の酸化物である第1絶縁膜が形成されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1導電膜と前記第2導電膜との間に、前記第1導電膜および前記第2導電膜とは異なる材料からなるアモルファス膜が形成されている、半導体装置。
【請求項5】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記半導体基板にはダイオードが形成されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第2導電膜の表面の(111)面の面積率は、前記第1導電膜の表面の(111)面の面積率よりも高い、半導体装置。
【請求項7】
(a)シリコンからなる半導体基板上に、スパッタリング法によって第1導電膜を形成する工程、
(b)前記第1導電膜上に、スパッタリング法によって第2導電膜を形成する工程、
(c)前記第1導電膜および前記第2導電膜をパターニングすることで、パッド電極を設ける工程、
(d)前記パッド電極上に、無電解メッキ法によって、外部接続用端子と接続するためのメッキ膜を形成する工程、
を有し、
前記第1導電膜は、アルミニウムを主成分とし、且つ、シリコンが添加された膜からなり、
前記第2導電膜は、前記第1導電膜を構成する材料と異なる材料で構成され、
前記第2導電膜は、アルミニウムを主成分とし、且つ、銅が添加された膜、または、アルミニウムを主成分とし、且つ、銅およびシリコンが添加された膜からなり、
前記(a)工程において、前記第1導電膜は、前記半導体基板の表面に直接接するように形成され、前記第1導電膜の表面の結晶面は、前記半導体基板の表面の結晶面を引き継でおり、
前記半導体基板の表面の結晶面、および、前記第1導電膜の表面の結晶面は、(001)面であり、
前記第2導電膜の表面の結晶面は、(111)面である、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2導電膜と前記メッキ膜とは直接接している、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、更に、
(e)前記(a)工程と前記(b)工程との間に、前記第1導電膜の表面を酸素雰囲気に晒すことによって、前記第1導電膜上に第1絶縁膜を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程は、前記(a)工程後に、前記半導体基板をスパッタリング装置外へ取り出して大気に晒すことで行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程は、前記半導体基板を前記(a)工程で使用したスパッタリング装置外へ取り出さずに、前記スパッタリング装置内部に酸素ガスを導入することで行われ、
前記(b)工程は、前記(e)工程後、前記半導体基板を前記スパッタリング装置外へ取り出さずに行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、更に、
(f)前記(a)工程と前記(b)工程との間に、スパッタリング法またはCVD法によって、前記第1導電膜上にアモルファス膜を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板にはダイオードが形成されており、
前記(a)工程前に、前記ダイオードが形成されている前記半導体基板の表面に対して清浄化処理が施されている、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、更に、
前記(c)工程と前記(d)工程の間に、ジンケート処理が2回行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記メッキ膜は、ニッケルを主成分とする膜である、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、OPM電極を有する半導体装置およびその製造方法に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の信頼性を高めるなどの要求から、半導体基板上に例えばアルミニウムを主体とするパッド電極を形成し、このパッド電極上にOPM(Over Pad Metal)電極と呼ばれる導電層を形成し、このOPM電極にクリップまたはボンディングワイヤなどの外部接続用端子を接続させる構造が提案されている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1には、無電解メッキ法を用いて、アルミニウムを主体とするパッド電極上に、ニッケル膜および金膜からなるOPM電極を形成する技術が開示されている。
【0004】
また、以下の特許文献2には、ダイオードとIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とを逆並列に接続させたIGBTモジュールが開示されている。
【0005】
また、以下の非特許文献1には、単結晶のアルミニウム(Al)から(100)面、(110)面および(111)面を得た後、これらの面に対して、亜鉛(Zn)を含む水溶液を用いたジンケート処理、および、無電解Ni-Pメッキ処理を施す技術が開示されている。そして、非特許文献1には、各結晶面の違いが、析出されるZn粒子のサイズと、Ni-Pメッキ膜の成長とにどのような影響を与えるのかについての検討が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-235964号公報
【文献】特開2007-227412号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「Al単結晶表面上へのジンケート処理と無電解Ni-Pメッキ」表面技術 Vol.48, No.8, p.820-825, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に開示されているように、アルミニウムの(100)面に対してジンケート処理を行った場合、比較的サイズの大きいZn粒子が析出され、その上に形成されるNi-Pメッキ膜の膜厚が均一にならないという問題がある。Ni-Pメッキ膜の表面は荒れた状態であり、緻密な膜ではないので、半導体装置外部からの水分などが浸入しやすい。このため、Ni-Pメッキ膜とアルミニウム膜との界面で腐食が起きるなどの問題が発生し、Ni-Pメッキ膜がアルミニウム膜から剥離しやすくなってしまう。そうすると、特許文献1のように、アルミニウムを主体とするパッド電極上に、ニッケルなどのメッキ膜からなるOPM電極を形成した場合、OPM電極がパッド電極から剥離しやすくなり、半導体装置の信頼性が低下してしまう。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
一実施の形態である半導体装置およびその製造方法は、半導体基板上に形成され、且つ、第1導電膜と、第1導電膜上に形成された第2導電膜とを有するパッド電極と、第2導電膜上に形成され、且つ、外部接続用端子と接続するためのメッキ膜とを有する。そして、第1導電膜の表面の結晶面は、第2導電膜の表面の結晶面と異なっている。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1である半導体装置の断面図である。
図2図1に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図3図2に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4図3に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図5図4に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図6図5に続く半導体装置の製造工程を示すプロセスフローである。
図7図6に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図8】実施の形態1の半導体装置とIGBTとをモジュール化した概略図である。
図9図8の半導体装置を実装した状態を示す平面図である。
図10図9のA-A線に沿った断面図である。
図11】実施の形態3である半導体装置の要部断面図である。
図12図11に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図13図12に続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図14図13の半導体装置を実装した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0015】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0016】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
【0017】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0018】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
図1図7を用いて、本実施の形態の半導体装置とその製造方法を説明する。本実施の形態では、半導体装置に搭載される半導体素子として、例えば超高速整流用ダイオード(Fast Recovery Diode)として使用されるダイオードDIを示す。
【0020】
図1に示すように、まず、n型の導電性を有し、且つ、シリコンなどの半導体からなる基板を用意する。この基板は、ダイオードDIのドリフト領域DRを構成する。次に、イオン注入法などによって、ドリフト領域DRの表面付近に、p型の導電性を有する不純物領域ANを形成する。不純物領域ANは、ダイオードDIのアノード領域を構成する。
【0021】
また、本実施の形態では、ドリフト領域DRおよびアノード領域ANを含む構造を、半導体基板SUBとして説明する。
【0022】
ここで、ドリフト領域DRの表面の結晶面は、(001)面となっている。(001)面のシリコン基板は一般的に広く用いられているため、他の結晶面の基板を用意と比較して、製造コストを抑えられる。また、ドリフト領域DRの表面に形成されたアノード領域ANの表面の結晶面も(001)面となっている。すなわち、半導体基板SUBの表面の結晶面は(001)面となっている。
【0023】
また、図1では、半導体基板SUBの表面に、薄い自然酸化膜または異物などとして、絶縁膜IF1が形成されている状態を記している。
【0024】
次に、図2に示すように、半導体基板SUBの表面に、清浄化処理として、例えば四フッ化炭素(CF)を含むガスを用いた反応性ドライエッチング処理、および、フッ化水素(HF)を含む洗浄液を用いたウェットエッチング処理を施す。この清浄化処理によって、アノード領域ANを含む半導体基板SUBの表面に付着している絶縁膜IF1が除去される。この清浄化処理は、主に、ダイオードDIのフォワード抵抗を低減するために行われ、後に形成されるパッド電極PDと半導体基板SUBとの接触抵抗を低減するために行われる。
【0025】
次に、図3に示すように、例えばスパッタリング法によって、半導体基板SUB上に、例えばアルミニウムを主成分とし、且つ、少量のシリコンが添加された導電膜AL1を形成する。なお、導電膜AL1の膜厚は2500nm程度である。また、スパッタリング法による導電膜AL1の形成温度は、室温(23℃)~200℃程度であり、より好適には150℃程度である。なお、ここで導電膜AL1に少量のシリコンを添加している理由は、導電膜AL1と半導体基板SUBとの界面がスパイク状の形状となることを抑制させるためである。
【0026】
ここで、導電膜AL1がアルミニウム膜である場合、アルミニウム膜を上記のスパッタリング法で形成すると、アルミニウム膜の結晶構造は面心立方構造(FCC:Face-Centered Cubic)であることから、導電膜AL1の表面は、下地の影響を受けない場合には、ほぼ全面が最密面である(111)面となる。しかし、本実施の形態の導電膜AL1は、半導体基板SUBの表面の結晶面を引き継いで形成されるため、導電膜AL1の表面の結晶面は(001)面となっている。この理由は、導電膜AL1の形成工程は、図2で行った清浄化処理の直後に行われるため、導電膜AL1は、半導体基板SUBの表面の結晶面を引き継ぎやすい状況で形成されるからである。また、本実施の形態のダイオードDIでは、フォワード抵抗をより低減させる目的から、導電膜AL1と半導体基板SUBとの間に、導電膜AL1よりも高抵抗の窒化チタンなどからなるバリアメタル膜は形成せず、半導体基板SUBに直接、導電膜AL1を形成している。
【0027】
なお、結晶学の視点から立方晶においては、(001)面は、(100)面および(010)面と等価な結晶面である。従って、本実施の形態の導電膜AL1の(001)面は、非特許文献1で開示されている(100)面と等価な結晶面として扱う。ここで、非特許文献1にも記されているように、後の工程で、導電膜AL1の(001)面上にジンケート処理を施すと、比較的サイズの大きい亜鉛粒子が析出され、その後の工程で形成されるニッケルなどのメッキ膜の膜厚が均一にならないという問題がある。そうすると、メッキ膜と導電膜AL1との剥離が起きやすくなり、半導体装置の信頼性が低下してしまう。
【0028】
言い換えれば、本実施の形態のように、図2の清浄化処理を行っていなければ、半導体基板SUBの表面には薄い自然酸化膜または異物などが存在している。この状態で導電膜AL1を形成した場合には、導電膜AL1は、半導体基板SUBの表面の結晶面を引き継ぎ難くなるので、導電膜AL1の表面には、(001)面とは異なる結晶面も形成されやすくなる。しかしながら、ダイオードDIの低抵抗化のためには、清浄化処理を行って、薄い自然酸化膜または異物を除去することが望ましい。そうすると、パッド電極PDを構成する導電膜AL1の表面の結晶面も(001)面となってしまう。
【0029】
そこで、本願発明者は、清浄化処理を行って、ダイオードDIの低抵抗化を実現すると共に、パッド電極PDの表面の結晶面を、(001)面とは異なる結晶面にする方法を考案した。
【0030】
図4は、図3に続く半導体装置の製造方法の断面図である。
【0031】
図3で説明したように、導電膜AL1の表面の結晶面は(001)面となっている。この状態で、図4に示すように、まず、導電膜AL1の表面に絶縁膜BIFを形成する。この絶縁膜BIFは、導電膜AL1の表面を酸素を含む雰囲気に晒すことで形成され、例えば、半導体基板SUBをスパッタリング装置外へ一旦取り出して、室温(23℃)で大気に晒すことで形成される。すなわち、絶縁膜BIFは、導電膜AL1を構成する材料の酸化物からなり、例えば酸化アルミニウムからなる。また、絶縁膜BIFの膜厚は、0.5nm以上であって4.0nm以下であり、より好ましくは1.0nm以上であって3.0nm以下である。
【0032】
次に、例えばスパッタリング法によって、絶縁膜BIF上に、例えばアルミニウムを主成分とし、且つ、シリコンが添加された導電膜AL2を形成する。なお、導電膜AL2の膜厚は2500nm程度である。また、スパッタリング法による導電膜AL2の形成温度は、室温(23℃)~200℃程度であり、より好適には150℃程度である。
【0033】
ここで、導電膜AL2と導電膜AL1との間に形成されている絶縁膜BIFにより、導電膜AL2は、導電膜AL1の表面の結晶面である(001)面を引き継がなくなり、(001)面とは異なる結晶面で形成することができる。
【0034】
本実施の形態では、スパッタリング法による導電膜AL2の成膜の初期段階では、導電膜AL2の表面の結晶面は、主に(111)面となっている。具体的には、導電膜AL2の表面面積の90%以上が(111)面となっている。このように、成膜の初期段階で、導電膜AL2の一部に(110)面が存在したとしても、続くスパッタリング法の成膜段階にて、(110)面の粒子は、導電膜AL2の大部分を構成する(111)面の粒子に覆われるため、最終的に導電膜AL2の表面の大部分は(111)面となる。好ましくは、最終的に導電膜AL2の表面の90%以上が(111)面となっており、より好ましくは、最終的に導電膜AL2の表面の99%以上が(111)面となっている。
【0035】
このように、(001)面の結晶面を有する導電膜AL1の表面に薄い絶縁膜BIFを形成したことで、パッド電極PDの表面となる導電膜AL2の表面の結晶面を(111)面とすることができた。すなわち、絶縁膜BIFは、結晶の配向性を遮断させるための膜として機能する配向性遮断膜である。
【0036】
本実施の形態では、パッド電極PDを導電膜AL1と導電膜AL2との2層構造として示すが、導電膜AL2の上に、更に絶縁膜BIFのような絶縁膜を形成し、続いて導電膜AL2のような導電膜を形成することで、パッド電極PDを3層以上の構造としても良い。
【0037】
また、上述のように、絶縁膜BIFの膜厚は、0.5nm以上であって4.0nm以下であり、より好ましくは1.0nm以上であって3.0nm以下である。これは、導電膜AL2が導電膜AL1の結晶面を引き継がなくなる厚さであると共に、導電膜AL2と導電膜AL1との間で導通性が十分に確保される膜厚である。すなわち、本実施の形態のようなダイオードDIは、数百ボルトの電圧が印加される素子であるため、上記膜厚からなる絶縁膜BIFは、ダイオードDIの特性に影響を及ぼさない。
【0038】
次に、図5に示すように、フォトリソグラフィー法およびドライエッチング法を用いて、導電膜AL2、絶縁膜BIFおよび導電膜AL1をパターニングすることで、導電膜AL2および導電膜AL1を主体とするパッド電極PDが形成される。
【0039】
次に、パッド電極PDを覆うように、半導体基板SUB上に、例えば感光性ポリイミドなどの有機樹脂からなる絶縁膜IF2を形成する。次に、絶縁膜IF2を選択的に感光することで、絶縁膜IF2にパッド電極PDの一部を露出する開口部OP1を形成する。なお、絶縁膜IF2の材料は、上記の有機樹脂に代えて、酸化シリコンまたは窒化シリコンなどの無機絶縁膜としてもよい。
【0040】
図6は、後述の図7で導電層OPMが形成される工程までのプロセスフローを示しており、パッド電極PDに対する、プラズマエッチング処理S11およびメッキ処理S12~S20を示している。本実施の形態では、メッキ処理は、表面処理S12~S14、ジンケート処理S15~S17および無電解メッキ処理S18~S20を含むものとして説明する。なお、S12~S20の各処理の後に、純水洗浄処理を行ってもよい。
【0041】
無電解メッキ処理S18~S20によって、パッド電極PD上に、メッキ膜である導電膜PF1~PF3が形成されるが、その前に、パッド電極PDの表面に対してプラズマエッチング処理S11および表面処理S12~S14が施される。プラズマエッチング処理S11および表面処理S12~S14は、パッド電極PDの表面に形成された、自然酸化膜、脂分および異物などの除去を目的として行われる。
【0042】
図6のステップS11に示すように、まず、導電膜AL2の表面に対して、例えばアルゴン(Ar)のような不活性ガスを用いたプラズマエッチング処理を施す。このプラズマエッチング処理によって、導電膜AL2の表面の自然酸化膜が除去される。
【0043】
次に、導電膜AL2の表面に対して、表面処理S12~S14、ジンケート処理S15~S17および無電解メッキ処理S18~S20の順番で、メッキ処理が施される。
【0044】
図6のステップS12に示すように、導電膜AL2の表面に対して、例えば水酸化ナトリウムなどを含有する弱アルカリ性の水溶液を用いた脱脂処理を施す。この脱脂処理によって、主に、導電膜AL2の表面に形成された脂分、および、導電膜AL2の表面の自然酸化膜が除去される。
【0045】
次に、図6のステップS13に示すように、例えば銅(Cu)を含むアルカリ性の水溶液を用いたエッチング処理を施す。このエッチング処理は、導電膜AL2表面付近に存在するアルミニウム酸化物の除去を目的として行われ、本実施の形態のように、導電膜AL2をシリコンが添加されたアルミニウムで形成した場合に効果的である。すなわち、導電膜AL2表面付近に存在するアルミニウム酸化物をアルカリ性の水溶液で溶解し、アルミニウム表面をアルミニウムよりも標準電極電位の高い銅で置換することで、導電膜AL2の表面付近に存在するアルミニウム酸化物を効率的に減らすことができる。
【0046】
次に、図6のステップS14に示すように、導電膜AL2の表面に対して、例えば硝酸を含む水溶液を用いた酸洗浄を施す。この酸洗浄によって、ステップS13で置換された銅が硝酸を含む水溶液中に溶解し、導電膜AL2の表面から銅が除去される。
【0047】
次に、図6のステップS15に示すように、導電膜AL2の表面に対して、第1ジンケート処理を行う。
【0048】
なお、非特許文献1にも開示されているように、仮に導電膜AL2の表面が(001)面であった場合には、亜鉛粒子の成長はより不均一となり、そのサイズが更に大きくなってしまう。
【0049】
次に、図6のステップS16に示すように、導電膜AL2の表面に対して、酸洗浄を行う。例えば、硝酸を含む水溶液を用いることで、第1ジンケート処理で析出した亜鉛粒子を、硝酸を含む水溶液中に溶解する。この処理により、導電膜AL2の表面には、アルミニウムが均一に現れる。
【0050】
次に、図6のステップS17に示すように、導電膜AL2の表面に対して、第2ジンケート処理を行う。これにより、亜鉛粒子が再びアルミニウム上へ析出される。ジンケート処理を2回繰り返すことによって、緻密で均一なZn膜を形成することができる。これにより、後の工程で形成されるニッケルなどのメッキ膜を均一に析出させることができる。
【0051】
次に、図6のステップS18~S20および図7に示すように、パッド電極PDの表面に対して無電解メッキ処理を施すことで、導電膜PF1~PF3が順次形成される。
【0052】
まず、図6のステップS18に示すように、無電解メッキ法によって、露出しているパッド電極PDの表面(導電膜AL2の表面)上に、例えばニッケル(Ni)を主成分とする導電膜PF1を形成する。この導電膜PF1を形成するには、導電膜AL2の表面を、例えばニッケルイオンを含有するメッキ用水溶液に浸す。この時、図6のジンケート処理によって析出していた亜鉛粒子は、メッキ用水溶液中に溶解する。この時、亜鉛粒子から出る電子によってニッケルが還元析出される。すなわち、亜鉛粒子が析出していた領域には、ニッケルが置換析出し、析出したニッケルを触媒としてメッキ膜が成長することで導電膜PF1が形成される。上述のように、本実施の形態では、各亜鉛粒子のサイズが小さくて均一であるため、置換析出されるニッケル膜もほぼ均一な状態で成長する。従って、導電膜PF1の膜厚の均一性を高くすることができる。
【0053】
その後、図6のステップS19およびステップS20に示すように、無電解メッキ法によって、導電膜PF1上に、例えばパラジウム(Pd)を主成分とする導電膜PF2、および、例えば金(Au)を主成分とする導電膜PF3を順次形成することで、これらのメッキ膜の積層膜からなる導電層OPMを形成する。これらの導電膜PF2および導電膜PF3は、膜厚の均一性の高い導電膜PF1の上に形成されているため、導電膜PF2および導電膜PF3も、それぞれ、均一性の高い膜厚として形成される。従って、導電層OPMの膜厚の均一性を高めることができる。
【0054】
なお、導電膜PF1の膜厚は1000~4000nm程度であり、導電膜PF2の膜厚は100~400nm程度であり、導電膜PF3の膜厚は30~200nm程度である。
【0055】
また、導電膜PF1は、導電層OPMの主体となる膜であるので、シート抵抗の低い材料で構成されることが好ましい。導電膜PF3は、主に、外部接続用端子TRとの接着性を向上させるために設けられており、導電膜PF1よりも、外部接続用端子TRとの接着性の高い材料で構成されることが好ましい。また、導電膜PF2は、導電膜PF1が導電膜PF3の表面に拡散して、導電膜PF1と導電膜PF3との境界が腐食されることを防止する目的で設けられている。
【0056】
また、導電層OPMは、導電膜PF1と導電膜PF3との積層膜、または、導電膜PF1と導電膜PF2との積層膜としてもよい。また、導電膜PF1および導電膜PF2の膜中には、リン(P)が含有されていてもよい。
【0057】
以上のようにして、パッド電極PD上にメッキ膜からなる導電層OPMが形成される。なお、この導電層OPMがダイオードDIのアノード電極を構成する。
【0058】
次に、半導体基板SUBの裏面にカソード領域CTおよび裏面電極BEを形成する。
【0059】
まず、半導体基板SUBの裏面を研磨し、半導体基板SUBの厚さを薄くする。次に、イオン注入法を用いて、半導体基板SUBの裏面側からn型の不純物を導入することで、ドリフト領域DRよりも高い不純物濃度を有するカソード領域CTを形成する。その後、熱処理を施すことで、導入した不純物を活性化させる。次に、スパッタリング法を用いて、カソード領域CTに接する側から順番に、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)および金(Au)などの金属膜を堆積させることで、これらの金属膜からなるカソード電極(裏面電極)BEが形成される。
【0060】
以上の工程によって、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0061】
図8は、本実施の形態の半導体装置が形成されている半導体ウェハを、後工程処理のダイシング工程によってチップCP1に個片化した後、本実施の形態のダイオードDIと、IGBTからなる半導体素子をモジュール化したときの1構成を示した概略図である。この概略図では、導電層OPMなど各構成の寸法は、図7などで説明した寸法と異なる。
【0062】
図8において、チップCP1は本実施の形態のダイオードDIが形成されている半導体装置であり、チップCP2はIGBTの半導体素子が形成されている半導体装置である。
【0063】
IGBTは、図8の左側に示される構造からなる。図8に示すように、ドリフト領域1を構成するn型の半導体基板の表面には、p型のベース層2が形成されている。ベース層2の表面にはn型のソース層3が形成されており、ベース層2およびソース層3は、アルミニウム膜などからなるエミッタ電極6によって共通に接続されている。ドリフト領域1とソース層3とに挟まれたベース層2は、チャネル領域となっており、このチャネル領域上にはゲート絶縁膜4を介して、ゲート電極5が形成されている。ドリフト領域1の裏面側(半導体基板の裏面側)には、n型の不純物が導入されたバッファ層7と、p型の不純物が導入されたエミッタ層8と、コレクタ電極9とが形成されている。
【0064】
また、図8に示すように、ダイオードDIのカソード電極BEと、IGBTのコレクタ電極9とは電気的に接続されており、ダイオードDIのアノード電極(導電層)OPMと、IGBTのエミッタ電極6とは電気的に接続されている。
【0065】
図9および図10は、図8のIGBTモジュールを構成するチップCP1およびチップCP2をパッケージ化した場合の一例を示している。図10は、図9の平面図に示されるA-A線に沿った断面図である。なお、図9では、外部接続用端子TRの形状を見易くするため、図10に記載している封止樹脂MRおよびダイパッドDPの図示を省略している。ここでは、外部接続用端子TRの一例として、例えば銅板などからなるクリップを用いて、チップCP1とチップCP2とを接続して1パッケージ化した場合を示している。
【0066】
図9および図10に示すように、ダイパッドDP上には半田BP1を介して、チップCP1およびチップCP2が搭載されている。ダイパッドDPは、チップCP1およびチップCP2に電源電位を供給する電源電位端子DTとしての機能も備える。すなわち、チップCP1のカソード電極BE、および、チップCP2のコレクタ電極9は、半田BP1を介して、電源電位端子DT(ダイパッドDP)と電気的に接続している。
【0067】
また、外部接続用端子TRと、チップCP1およびチップCP2とは、半田BP2を介して接続されている。外部接続用端子TRは、導電性の接着剤などを介して、接地電位端子STと電気的に接続している。ここで、チップCP1の導電層OPMは半田BP2に接続している。すなわち、チップCP1のアノード電極(導電層)OPM、および、チップCP2のエミッタ電極6は、半田BP2および外部接続用端子TRを介して、接地電位端子STと電気的に接続している。
【0068】
なお、詳細な説明は省略するが、IGBTのゲート電極5は、外部接続用端子TRとは別のボンディングワイヤなどにより別端子へ接続される。
【0069】
そして、ダイパッドDPおよび外部接続用端子TRと接続された、チップCP1およびチップCP2は、封止樹脂MRによって封止されている。以上のようにして、本実施の形態の半導体装置がパッケージ化されている。
【0070】
また、外部接続用端子TRとしては、銅または金からなるボンディングワイヤでもよい。しかし、本実施の形態のように、ダイオードDIのアノード電極(導電層)OPMの面積、および、IGBTのエミッタ電極6の面積が大きく、且つ、数百ボルトが印加される半導体装置においては、他チップとの接続にかかる抵抗を減らすため、面積の大きい銅クリップなどを用いることが望ましい。なお、半田BP1,BP2に代えて、焼結した銀(Ag)を用いてもよい。
【0071】
以下に、本実施の形態の主な特徴を簡単に纏めて記す。本実施の形態の主な特徴は、導電膜AL2の表面の結晶面を、導電膜AL1の表面の結晶面とは異なる結晶面で形成している点にある。
【0072】
例えば、パッド電極PDの表面の結晶面が(001)面で形成されている場合、図6の第1および第2ジンケート処理において、析出される亜鉛粒子のサイズが大きいため、その後、無電解メッキ法によって形成されるニッケルなどのメッキ膜の析出を均一にできず、メッキ膜の表面が粗くなるという問題があった。このため、パッド電極PDと導電層OPMとの界面に水分などが浸入し、その界面において剥離が起きやすい構造となっており、半導体装置の信頼性が低下する問題があった。更に、メッキ膜の表面の外観異常が発生していた。
【0073】
これに対して、本実施の形態では、(001)面を有する導電膜AL1上に、薄い絶縁膜BIFを形成したことで、絶縁膜BIF上に形成される導電膜AL2は、導電膜AL1の表面の結晶面の影響を受けなくなり、導電膜AL2の表面の結晶面を(111)面とすることができた。このため、図6の第1および第2ジンケート処理において、析出される各亜鉛粒子のサイズが均一で小さくなったため、その後、無電解メッキ法によって形成されるニッケルなどからなる導電膜PF1の析出を、比較的均一に形成できるようになった。このため、パッド電極PDと導電層OPMとの界面で剥離が起きにくい構造とすることができ、半導体装置の信頼性を向上させることができた。更に、メッキ膜の表面の外観異常も抑制できた。
【0074】
特に、本実施の形態では、導電膜AL1の下地となる半導体基板SUBに対して、清浄化処理を施し、半導体基板SUBの表面を清浄に保つ工夫を施していた。これにより、半導体基板SUBと導電膜AL1との接触抵抗を低減させて、ダイオードDIの低抵抗化を実現していた。しかし、導電膜AL1が、半導体基板SUBの表面の結晶面である(001)面を引き継いで形成されやすくなったため、導電膜AL1の表面の結晶面も(001)面になりやすくなっていた。ここで、上記のように、導電膜AL1上に、絶縁膜BIFを介して導電膜AL2を形成したことによって、導電膜AL2の表面の結晶面を(111)面とすることができたので、パッド電極PDと導電層OPMとの界面で剥離が起きにくい構造とすることができた。すなわち、本実施の形態の技術を用いることで、半導体装置の性能を向上させると共に、半導体装置の信頼性を向上させることができた。
【0075】
(実施の形態1の変形例1)
実施の形態1では、図4において、半導体基板SUBをスパッタリング装置外へ一旦取り出して大気に晒すことで、導電膜AL1上に絶縁膜BIFを形成していた。
【0076】
これに対して、本変形例1では、半導体基板SUBをスパッタリング装置外へ出さずに別のチャンバへ移し、スパッタリング装置内に酸素を含有するガスを導入し、導電膜AL1の表面を酸素雰囲気に晒すことで、絶縁膜BIFを形成する。具体的に、このような酸素雰囲気に晒す工程は、酸素ガス雰囲気で室温で処理をおこなう。この酸化処理は、熱処理を加えても良く、または、酸素ガスを用いたプラズマを照射するなどの方法で行っても良い。
【0077】
その後、半導体基板SUBをスパッタリング装置外へ出さずに、実施の形態1と同様のスパッタリング法によって、絶縁膜BIF上に導電膜AL2を形成する。
【0078】
このように、絶縁膜BIFの形成のために、半導体基板SUBをスパッタリング装置外へ出す必要がないので、次工程である導電膜AL2の形成を速やかに行うことができる。従って、実施の形態1と比較して、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0079】
(実施の形態1の変形例2)
実施の形態1では、図4において、導電膜AL2を、導電膜AL1を構成する材料と同じ材料で構成しており、例えばアルミニウムを主成分とし、且つ、シリコンが添加された材料で形成していた。
【0080】
これに対して、本変形例2では、導電膜AL2を、導電膜AL1を構成する材料と異なる材料で構成しており、例えばアルミニウムを主成分とし、且つ、銅が添加された材料で形成している。すなわち、導電膜AL2に添加されている元素は、導電膜AL1に添加されている元素とは異なっている。
【0081】
導電膜AL1は、ダイオードDIと直接接しており、半導体基板SUBと導電膜AL1との界面のスパイク形状を低減する目的から、シリコンが添加されたアルミニウム膜で形成されている。しかし、導電膜AL2はダイオードDIとは直接接しないので、導電膜AL2の材料は、シリコンが添加されたアルミニウム膜以外の材料でもよい。ここで、シリコンが添加されたアルミニウム膜よりも、銅が添加されたアルミニウム膜の方がエレクトロマイグレーションに優れることから、本変形例2の導電膜AL2では、銅が添加されたアルミニウム膜を適用している。
【0082】
また、導電膜AL2に銅が添加されたアルミニウム膜を用いたことで、図6のステップS13のエッチング処理工程を省略することができる。すなわち、前述のステップS13では、導電膜AL2表面に存在するアルミニウム酸化物を、標準電極電位の高い銅を含む水溶液を用いて置換していた。しかし、本変形例2では、導電膜AL2中に銅が既に含まれている。このため、導電膜AL2の表面に対して、ステップS12のアルカリ性水溶液を用いた脱脂処理やその後のジンケート処理によって導電膜AL2表面の酸化物を更に効率的に除去することができる。ジンケート処理によって亜鉛粒子が更に析出しやすくなり、無電解メッキ処理によってニッケルが更に置換析出しやすくなる。このように、本変形例2では、図6のステップS13を省略することができるので、半導体装置の製造方法を簡略化することができる。
【0083】
また、導電膜AL2は、アルミニウムを主成分とし、且つ、銅およびシリコンが添加された材料で形成してもよい。
【0084】
なお、本変形例2で開示した技術を、前述の変形例1に適用することもできる。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態1では、導電膜AL2の結晶面を導電膜AL1の結晶面と異ならせるために、導電膜AL1上に絶縁膜BIFを形成していた。
【0086】
これに対して、実施の形態2では、導電膜AL1上に、導電膜AL1とは異なる材料からなり、且つ、アモルファス状態の導電膜である、アモルファス膜を形成している。なお、このアモルファス膜は、実施の形態1の絶縁膜BIFを置き換えたものであるので、その図示は省略する。すなわち、実施の形態2においては、図4などに示される図番「BIF」がアモルファス膜である。
【0087】
このようなアモルファス膜は、スパッタリング法またはCVD法などによって形成され、例えば窒化タンタル、窒化チタンまたは窒化タングステンを主成分とする膜からなる。また、アモルファス膜の膜厚は0.5nm以上であって4.0nm以下であり、より好ましくは1.0nm以上であって3.0nm以下である。すなわち、上記材料は、このような薄い膜厚であれば、アモルファス状態で存在することができる。アモルファス膜は、アモルファス状態であるため、特定の結晶面を有さない。従って、アモルファス膜上に、導電膜AL2をスパッタリング法で形成すると、実施の形態1と同様に、導電膜AL2は導電膜AL1の結晶面を引き継がず、主に(111)面を結晶面として成長する。すなわち、アモルファス膜は、絶縁膜BIFと同様に、結晶の配向性を遮断させるための膜として機能する配向性遮断膜である。従って、実施の形態2の半導体装置においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0088】
なお、本実施の形態2で開示した技術に、前述の実施の形態1の変形例2を適用することもできる。
【0089】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1で使用した導電膜AL1および導電膜AL2を、パワーMOSの配線に適用している。ここでは、パワーMOSの配線の一例として、導電膜AL1および導電膜AL2を、ソース電極SPDに適用した場合で説明する。
【0090】
実施の形態3における半導体装置の構造およびその製造方法を、図11図13を用いて、以下に説明する。
【0091】
図11には、n型のゲート電極GEと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEを覆う絶縁膜IF3と、p型のチャネル領域CHと、n型のソース領域SRと、ドレイン領域であるn型のドリフト領域NVおよびn型の基板SBと、を有するn型のパワーMOSが示されている。
【0092】
このようなパワーMOSを製造する方法の一例を以下に説明する。
【0093】
まず、n型の導電性を有し、且つ、シリコンなどの半導体からなる基板SBを用意する。次に、例えばエピタキシャル法によって、基板SB上に、n型の導電性を有し、且つ、基板SBよりも低い不純物濃度を有するドリフト領域NV(不純物領域NV)を形成する。なお、本実施の形態においては、基板SBとドリフト領域NVとを含む構造を、半導体基板SUBとして説明する。
【0094】
次に、ドリフト領域NV内に溝を形成した後、その溝内の側面および底面に、例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜GIを形成する。次に、溝内を埋め込むように、ゲート絶縁膜GI上に、例えば多結晶シリコンからなるゲート電極GEを形成する。次に、イオン注入法によって、ドリフト領域NVの上部に、p型の導電性を有するチャネル領域CHを形成する。チャネル領域CHとドリフト領域NVとの境界は、ゲート電極GEの底面よりも上部に位置している。次に、イオン注入法によって、チャネル領域CHの上部に、n型の導電性を有するソース領域SR(不純物領域SR)を形成する。次に、ソース領域SRの一部上およびゲート電極GE上に、絶縁膜IF3を選択的に形成する。次に、絶縁膜IF3から露出している領域に対してドライエッチングを行うことで、ソース領域SRを貫通してチャネル領域CHに到達する開口部OP2を形成する。以上で、n型のパワーMOSが製造される。
【0095】
次に、図12に示すように、絶縁膜IF3上に、ソース電極SPDとなる導電膜AL1および導電膜AL2を形成する。
【0096】
まず、開口部OP2内および絶縁膜IF3上に、例えばチタンタングステン(TiW)または窒化チタン(TiN)からなるバリアメタル膜BMを形成する。その後、開口部OP2内を埋め込むように、バリアメタル膜BM上に、例えばアルミニウムを主成分とする導電膜AL1を形成する。これにより、ソース電極SPDの一部となる導電膜AL1は、バリアメタル膜BMを介して、ソース領域SRおよびチャネル領域CHと電気的に接続する。
【0097】
なお、実施の形態3では、前述の実施の形態1および2と異なり、半導体基板SUBと導電膜AL1との間にはバリアメタル膜BMが形成されている。従って、導電膜AL1は、アルミニウムを主成分とし、且つ、シリコンが添加された材料でもよいし、アルミニウムを主成分とし、且つ、銅が添加された材料でもよい。
【0098】
ここで、導電膜AL1はスパッタリング法を用いて形成されるが、その形成する際の最高温度は、250~400℃程度であり、実施の形態1よりも高い温度である。この理由は、開口部OP2内に導電膜AL1を埋め込んだ時に、導電膜AL1にボイドができないようにするためである。この導電膜AL1の形成は、成膜初期を室温(23℃)~200℃程度の低温でおこない、次のステップで埋め込みのため250~400℃程度の高温で成膜をおこなう2段階成膜としてもよい。また、開口部OP2の上部に位置する導電膜AL1の表面と、ゲート電極GEの上部に位置する導電膜AL1の表面との間には、段差が発生してしまう。この段差をできるだけ無くし、導電膜AL1の表面全体をできるだけ平坦にするためにも、導電膜AL1の形成温度を高温とすることが有効である。本実施の形態の半導体装置では、後の工程でソース電極SPD上に導電層OPMを形成する。そのため、ソース電極SPDの一部となる導電膜AL1に対して、ボイドを無くし、且つ、その表面を平坦にすることで、導電層OPMの膜厚をより均一に近づけることができる。
【0099】
しかしながら、このように比較的高温で形成されたアルミニウム膜は、実施の形態1のような比較的低温で形成されたアルミニウム膜に比べて、アルミニウム粒子のサイズが大きくなる傾向がある。すなわち、導電膜AL1の表面の結晶面は(111)面だけでなく、(001)面が発生しやすくなる。従って、この導電膜AL1上に導電膜OPMを形成すると、実施の形態1と同様に、ソース電極SPDと導電層OPMとの間で剥離が起きやすくなってしまう。
【0100】
従って、実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、導電膜AL1上に薄い絶縁膜BIFを形成し、その後、絶縁膜BIF上に導電膜AL2を形成する。これによって、導電膜AL2の表面の結晶面を、導電膜AL1の表面の結晶面と異ならせることができる。なお、絶縁膜BIFおよび導電膜AL2の形成方法は、実施の形態1での形成方法と同じである。従って、本実施の形態においても、導電膜AL2の表面の結晶面は(111)面となっている。
【0101】
なお、本実施の形態においては、導電膜AL2の形成温度は、導電膜AL1の形成温度よりも低い温度であり、例えば室温(23℃)~200℃程度であり、より好適には150℃程度である。すなわち、導電膜AL1は比較的高温で形成したことによって、その表面の平坦性が向上したが、粒径の大きい(001)面が発生する可能性も大きくなっていた。そこで、導電膜AL2を比較的低温で形成することで、粒径の大きい(001)面の発生を抑制することができる。言い換えれば、実施の形態3においては、導電膜AL2の表面の(111)面の面積率は、導電膜AL1の表面の(111)面の面積率よりも高くなっている。
【0102】
その後、フォトリソグラフィー法およびドライエッチング法を用いて、導電膜AL2、絶縁膜BIF、導電膜AL1およびバリアメタル膜BMをパターニングすることで、図12に示すソース電極SPDが形成される。なお、この時に、パワーMOSのゲート電極GEと接続するゲート用パッド電極GPDも形成される(図示は省略)。
【0103】
次に、図13に示すように、ソース電極SPDの一部である導電膜AL2上の一部を露出するように、導電膜AL2上に、開口部OP1を有する絶縁膜IF2を形成する。なお、絶縁膜IF2の形成方法および材料については、実施の形態1と同じである。
【0104】
次に、実施の形態1と同様の手法を用いて、各導電膜PF1~PF3を順次形成することで、開口部OP1内の導電膜AL2上に、導電層OPMを形成する。
【0105】
その後、実施の形態1と同様に、基板SBの裏面を研磨し、ドレイン電極(裏面電極)BEを形成する。
【0106】
以上の工程によって、実施の形態3の半導体装置が製造される。
【0107】
以上のように、実施の形態3においても、ソース電極SPDと導電層OPMとの剥離を抑制することができ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0108】
図14は、実施の形態3のパワーMOSが形成されたチップCP3をパッケージ化した際の図を示している。ここでは、導電層OPMに接続される外部接続用端子TRの一例として、例えば銅板などからなるクリップを用いた場合で説明する。
【0109】
図14に示すように、ダイパッドDP上には半田BP3を介して、チップCP3が搭載されている。ダイパッドDPは、チップCP3に電源電位を供給する電源電位端子DTとしての機能も備える。すなわち、チップCP3のドレイン電極BEは、半田BP3を介して、電源電位端子DT(ダイパッドDP)と電気的に接続している。
【0110】
また、外部接続用端子TRとチップCP3とは、半田BP4を介して接続されている。外部接続用端子TRは、半田BP5を介して、接地電位端子STと電気的に接続している。ここで、チップCP3の導電層OPMは半田BP4に接続している。すなわち、チップCP3のソース電極SPDは、導電層OPM、半田BP4、外部接続用端子TRおよび半田BP5を介して、接地電位端子STと電気的に接続している。
【0111】
また、パワーMOSのゲート用パッド電極GPDは、ボンディングワイヤWBにより、ゲート電位端子GTへ接続される。
【0112】
そして、このようなチップCP3は、封止樹脂MRによって封止されている。以上のようにして、実施の形態3の半導体装置がパッケージ化されている。
【0113】
また、本実施の形態3で開示した技術に、実施の形態1の変形例1および変形例2、または、実施の形態2の技術を適用することもできる。
【0114】
また、実施の形態3では、導電膜AL1および導電膜AL2を、パワーMOSのソース電極SPDに適用したが、導電膜AL1および導電膜AL2を、IGBTのエミッタ電極として適用することもできる。また、IGBTに適用する際には、パワーMOSのドレイン領域であるドリフト領域NVはコレクタ領域となり、パワーMOSのチャネル領域CH
はベース領域となる。
【0115】
また、実施の形態3に示した技術をIGBTに適用する場合、実施の形態1の図8図10に示したチップCP2の代わりに、実施の形態3に示したチップCP3を適用してもよい。
【0116】
以上、本発明者らによってなされた発明を各実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 ドリフト領域
2 ベース層
3 ソース層
4 ゲート絶縁膜
5 ゲート電極
6 エミッタ電極
7 バッファ層
8 エミッタ層
9 コレクタ電極
AL1、AL2 導電膜
AN アノード領域(不純物領域)
BE 裏面電極(カソード電極、ドレイン電極)
BIF 絶縁膜
BM バリアメタル膜
BP1~BP5 半田
CH チャネル領域
CP1~CP3 チップ
CT カソード領域(不純物領域)
DI ダイオード
DP ダイパッド
DR ドリフト領域
DT 電源電位端子
GE ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
GPD ゲート用パッド電極
GT ゲート電位端子
IF1~IF3 絶縁膜
MR 封止樹脂
NV ドリフト領域(不純物領域)
OP1、OP2 開口部
OPM 導電層(アノード電極)
PD パッド電極
PF1~PF3 導電膜(メッキ膜)
S11~S20 ステップ
SB 基板
SPD ソース電極(配線)
SR ソース領域(不純物領域)
ST 接地電位端子
SUB 半導体基板
TR 外部接続用端子(クリップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14