IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェレシス エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特許-高分子ヒドロゲルおよびその調製方法 図1
  • 特許-高分子ヒドロゲルおよびその調製方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】高分子ヒドロゲルおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/717 20060101AFI20220221BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20220221BHJP
   C08J 3/075 20060101ALN20220221BHJP
   C08J 3/24 20060101ALN20220221BHJP
   C08K 5/092 20060101ALN20220221BHJP
   C08L 101/14 20060101ALN20220221BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220221BHJP
【FI】
A61K31/717
A61P1/10
C08J3/075 CEP
C08J3/24 Z
C08K5/092
C08L101/14
C08L101/16
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017176735
(22)【出願日】2017-09-14
(62)【分割の表示】P 2015115944の分割
【原出願日】2008-08-08
(65)【公開番号】P2018040002
(43)【公開日】2018-03-15
【審査請求日】2017-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-01-10
(31)【優先権主張番号】PCT/IT2007/000584
(32)【優先日】2007-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514240817
【氏名又は名称】ジェレシス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・サンニーノ
(72)【発明者】
【氏名】ルイギ・アムブロジオ
(72)【発明者】
【氏名】ルイギ・ニコライス
(72)【発明者】
【氏名】クリスチアン・デミトリ
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】鳥居 福代
【審判官】渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-082301(JP,A)
【文献】特開2004-010634(JP,A)
【文献】特表2003-512320(JP,A)
【文献】米国特許第5948829(US,A)
【文献】特開昭63-264534(JP,A)
【文献】特開昭59-210026(JP,A)
【文献】特開2000-60487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72, A61K31/00-31/80, A61K47/00-47/69, C08B1/00-37/18, C08J3/00-3/28,99/00, C08K3/00-13/08, C08L1/00-101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ヒドロゲルを含む便秘を治療するための医薬であって、前記高分子ヒドロゲルは、カルボキシメチルセルロースとクエン酸を含み、前記クエン酸は前記カルボキシメチルセルロースを架橋し、ここで、前記高分子ヒドロゲルはその必要がある被験者の消化管内の流体含有量を修正する、医薬。
【請求項2】
カルボキシメチルセルロースに対するクエン酸の重量比が、1重量%から5重量%である請求項記載の医薬。
【請求項3】
便秘を治療するための医薬を製造するための、クエン酸で架橋されたカルボキシメチルセルロースを含む高分子ヒドロゲルの使用、であってここで、前記高分子ヒドロゲルはその必要がある被験者の消化管内の流体含有量を修正する、使用。
【請求項4】
カルボキシメチルセルロースに対するクエン酸の重量比が、1重量%から5重量%である請求項記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子ヒドロゲルおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子ヒドロゲルは、大量の水を吸収できる架橋親水性重合体である。特に、その乾燥重量の10倍を超える量の水を吸収できる架橋高分子ヒドロゲルは、「超吸収性」と定義される。これらの材料の中には、乾燥重合体1グラム当たり1リットルを超える水さえ吸収することができるものもある。
【0003】
架橋または架橋節、すなわち、高分子ヒドロゲルの網目構造を形成する高分子鎖間の物理結合または化学結合は、重合体-液体系の構造的完全性を保証し、一方では重合体の完全な可溶化を防止し、もう一方では分子網中において水相の保持を可能にする。
【0004】
市場で現在購入可能な超吸収性高分子ヒドロゲルは、その著しい吸水特性によってだけでなく、恐らく高い含水量によるその生体適合性によっても、および、中でも、外部刺激に応じてその吸収特性を調節する可能性によって特徴付けられる。その結果、例えば、多くの工業的用途のための感知器または作動器の製造のために、このような高分子ヒドロゲルをインテリジェント材料として用いることができる。個人的衛生吸収性製品の分野における吸収性コアとしての通常用途の他に、例えば、制御された放出薬剤の調合物、人工筋肉、感知器などの開発のための生物医学の分野、ならびに農業および園芸、例えば、乾燥地土壌における水および栄養分の制御された放出のための機器等における新しい用途および革新的な用途がある。
【0005】
しかしながら、現在利用可能な超吸収性高分子ヒドロゲルは、ほとんど専らアクリル系の製品であり、それ故に生物分解性ではない。
【0006】
環境保護問題における興味が高まっていることを考慮すると、近年にわたり、従来の超吸収性ポリアクリル類の特性と同様の特性を有する、生分解性重合体に基づく超吸収性材料の開発に膨大な興味が注がれてきた。
【0007】
超吸収性高分子ヒドロゲルを得るのに用いられる生分解性重合体の例は、デンプン誘導体およびセルロース誘導体である。
【0008】
1990年には、AnbergenおよびOppermann(非特許文献1)は、完全にセルロース誘導体から作られた超吸収性材料の合成のための方法を提唱した。具体的には、彼らはヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)を用い、ジビニルスルホンで塩基性溶液中にて化学的に架橋した。しかしながら、このような材料の吸収特性は、アクリル系の超吸収性材料のそれと比較して高くはない。
【0009】
1996年には、AnbergenおよびOppermannによって提唱された合成法を研究しているEspositoおよびその共働者らは(非特許文献2)、当該材料の物理的特性に主に作用するゲルの吸収特性を増加させるための方法を開発した。基本的な考えは、毛管現象によって水の吸収および保持を促進するような、重合体構造物への微細孔の導入であった。前記微細孔は乾燥工程の間に誘発され、この工程は重合体のための非溶剤中の位相反転によって行われ、このように得られた重合体の吸収特性は、空気乾燥したゲルのそれよりも著しく優れていた。
【0010】

セルロースに対して二官能性である任意の試薬を用いて、CMCNaを化学的に架橋することができる。AnbergenおよびOppermannによる合成法に用いられるジビニルスルホンの他に、エピクロルヒドリン、ホルムアルデヒド、および様々なジエポキシド類が架橋剤として用いられてきた。しかしながら、このような化合物は、その未反応状態において高い毒性を有する(特許文献2)。いくつかのカルボジイミドが、従来と異なる架橋剤の中で知られている。具体的には、塩化または非塩化のカルボキシメチルセルロース(CMC)を架橋するためのカルボジイミドの使用が、特許文献2に記載されていた。カルボジイミド類は、それ自体は結合に関わることなく、セルロース高分子間のエステル結合の形成を誘発し、代わりに非常に低い毒性を有する尿素誘導体を生じさせる(非特許文献3)。カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩およびヒドロキシエチルセルロースを、架橋剤としてのカルボジイミドを用いて架橋することによって得られた超吸収性高分子ヒドロゲルは、特許文献3にて開示されている。
【0011】

しかしながら、特許文献3にて架橋剤として用いられるカルボジイミドは、極めて高価であるという欠点を有する。さらに、CMCNaを用いた架橋反応の間に、この物質はわずかに毒性を有する尿素誘導体に変化し、これを洗浄工程で除去しなければならず、それによって、製造工程の費用および複雑性がさらに増加する。これらの不利益は極めて都合が悪く、特に、高分子ヒドロゲルの大規模な製造を必要とし、その結果、出発物質の購入、および合成の間に生成される毒性物質の除去の両方に関して高い費用を必要とするその用途に関してはなおさらである。
【0012】
さらに、非常に低いものの、一定度の毒性を有する物質の生成は、生物医学的用途および薬学的用途において、このような重合体を用いる可能性を排除する主要因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第3,589,364号
【文献】ES 484964
【文献】WO2006/070337号
【非特許文献】
【0014】
【文献】Anbergen U, Opperman W, Polymer, 31, 1854 (1990)
【文献】Esposito F et al., J Appl Polym Sci, 60, 2403 (1996)
【文献】Choi YS et al., Biomaterials, 20, 409 (1999)
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、架橋剤としてのカルボジイミドの使用に関連する上述の欠点を克服する高分子ヒドロゲルを提供することである。
【0016】
これらの目的およびその他の目的は、本明細書にて定義されているような、本発明の高分子ヒドロゲルおよびその調製方法によって達成される。本発明の高分子ヒドロゲルは、架橋剤としての、クエン酸等のポリカルボン酸の使用に基づき、好適な実施形態では、分子スペーサの使用をも含む。
【0017】

本発明は、一部分において、クエン酸(3-カルボキシ-3-ヒドロキシ-1,5-ペンタン二酸、以下、「CA」と呼ぶ)を用いた可溶なセルロース誘導体の架橋が、高分子ヒドロゲルおよび超吸収性高分子ヒドロゲルの生成をもたらすという発見に関する。CAは天然に産出し、毒性がなく、かつ低費用で市場にて購入可能である。CAは、織物用途および食品用途において、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプン等の重合体のための架橋剤として報告されてきたが(参考文献7~11)、これらの用途において、CAは、不溶な繊維を架橋してさらに安定化させ、強化された弾性および力学的特性を有する織物を提供するのに用いられる。しかしながら、高分子ヒドロゲルおよび超吸収性高分子ヒドロゲルを調製するためのカルボキシメチルセルロース、またはその他の可溶な親水性重合体を架橋することを目的とするCAの使用は、これまで開示されてこなかった。
【0018】

本発明による高分子ヒドロゲルを調製する方法は、ポリカルボン酸を用いて、随意に分子スペーサとして機能する化合物の存在下で、親水性重合体を含む水溶液を架橋する工程を含む。
【0019】

一つの実施形態では、当該水溶液は、例えば、ヒドロキシル化重合体等の2つ以上の親水性重合体を含む。例えば、当該水相は、第1の親水性重合体および第2の親水性重合体を含み得、これらは、重量基準において同一または異なる量で存在し得る。一つの実施形態では、当該第1の親水性重合体はイオン性重合体であり、当該第2の重合体は非イオン性重合体である。
【0020】

好適な一つの実施形態では、本発明は、(a)カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、クエン酸、および分子スペーサの水溶液を提供する工程、(b)当該水溶液を加熱し、それによって水を蒸発させ、当該カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースを架橋し、高分子ヒドロゲル材料を生成する工程、(c)当該高分子ヒドロゲル材料を水または極性有機溶媒で洗浄し、洗浄された高分子ヒドロゲルを生成する工程、(d)当該洗浄された高分子ヒドロゲルをセルロース非溶剤中に含浸させ、それによって乾燥された高分子ヒドロゲルを生成する工程を含む、高分子ヒドロゲルを調製するための方法を提供する。
【0021】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明の方法を用いて調製することができる、超吸収性高分子ヒドロゲル等の高分子ヒドロゲルを提供する。このような高分子ヒドロゲルは、ポリカルボン酸で架橋した少なくとも1つの親水性重合体を含む。さらに、本発明は、このような高分子ヒドロゲルを含む製造品を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】クエン酸によって架橋する重合体の提案された機構を説明する。
図2】本発明の高分子ヒドロゲルを経口で投与したラット、および賦形剤のみを投与したラットに関して、時間の関数で表現した累積の食物摂取量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、高分子ヒドロゲル、当該高分子ヒドロゲルを調製する方法、当該高分子ヒドロゲルの使用方法、および当該高分子ヒドロゲルを含む製造品を提供する。
【0024】
本発明の高分子ヒドロゲルを調製する方法は、親水性重合体を含む水溶液をポリカルボン酸で架橋し、それによって当該高分子ヒドロゲルを生成する工程を含む。いくつかの実施形態では、当該水溶液は、2つ以上の親水性重合体を含む。例えば、当該水溶液は、第1の親水性重合体および第2の親水性重合体を含み得、これらは、重量基準において同一または異なる量で存在し得る。好適な実施形態では、当該第1の親水性重合体はイオン性重合体であり、当該第2の重合体は非イオン性重合体である。
【0025】
当該架橋反応は、好ましくは高温、例えば、室温(25℃)よりも高い温度で行われる。例えば、約30℃から約150℃、好ましくは約50℃から約120℃の温度にて当該反応を行うことができる。一つの実施形態では、当該架橋反応が高温で行われる間、当該反応溶液は水の除去によって濃縮される。当該水の除去は、例えば、蒸発によって達成することができる。一つの実施形態では、わずかな当該水が除去される。別の実施形態では、実質的に全ての当該水が除去され、それによって乾燥した残留物を生成する。随意に、当該反応混合物は、乾燥するまで水を除去した後の一定時間高温に維持される。
【0026】
本明細書にて用いられる「親水性重合体」という用語は、実質的に水溶性であり、かつ好ましくは、ヒドロキシル化された単量体単位を含む重合体を指す。親水性重合体は同種重合体であり得、これは、1つのみの反復単量体単位、または2つ以上の異なる反復単量体単位を含む共重合体を含む。好適な一つの実施形態では、当該親水性重合体は、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコール、または多糖類のようにヒドロキシル化される。
適切な多糖類の例としては、置換セルロース、置換デキストラン、デンプンおよび置換デンプン、グリコサミノグリカン、キトサン、ならびにアルギン酸塩が挙げられる。
【0027】
用いることができる多糖類としては、メチルセルロース、エチルセルロース、およびn-プロピルセルロースを含む、CからCのアルキルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシ-n-プロピルセルロース、ヒドロキシ-n-ブチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース等の、ヒドロキシ-CからCのアルキルセルロースおよびヒドロキシ-CからCのアルキル-CからCのアルキルセルロースを含む置換アルキルセルロース、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルデンプン、およびカルボキシキメチルデンプン等のデンプン、硫酸デキストラン、リン酸デキストラン、およびジエチルアミノデキストラン等の置換デキストラン、ヘパリン、ヒアルロナン、コンドロイチン、硫酸コンドロイチン、および硫酸ヘパランを含むグリコサミノグリカン、ならびにポリグルクロン酸、ポリマヌロン酸、ポリガラクツロン酸、およびポリアラビン酸等のポリウロン酸が挙げられる。
【0028】
本明細書にて用いられる「イオン性重合体」という用語は、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、またはホスホン酸基等の酸性官能基、あるいはアミノ基、置換アミノ基、またはグアニジル基等の塩基性官能基を有する単量体単位を含む重合体を指す。適切なpH範囲の水溶液中にある場合、酸性官能基を含むイオン性重合体はポリ陰イオンであることがあり、このような重合体を、本明細書では「陰イオン性重合体」と呼ぶ。
同様に、適切なpH範囲の水溶液中において、塩基性官能基を含むイオン性重合体はポリ陽イオンである。このような重合体を、本明細書では「陽イオン性重合体」と呼ぶ。本明細書にて用いられるイオン性重合体、陰イオン性重合体、および陽イオン性重合体という用語は、適切な対イオンと組み合わせて、当該酸性官能基または塩基性官能基が電荷を帯びていない親水性重合体、ならびにいくつかまたは全ての当該酸性官能基または塩基性官能基が電荷を帯びている重合体を指す。適切な陰イオン性重合体としては、アルギン酸塩、硫酸デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリグルクロン酸、ポリマヌロン酸、ポリガラクツロン酸、ポリアラビン酸、硫酸コンドロイチン、およびリン酸デキストランが挙げられる。適切な陽イオン性重合体としては、キトサンおよびジメチルアミノデキストランが挙げられる。好適なイオン性重合体の一つはカルボキシメチルセルロースであり、これを酸性型にて用いることができ、あるいはナトリウムまたはカリウム等の適切な陽イオンとともに塩として、用いることができる。
【0029】
本明細書にて用いられる「非イオン性重合体」という用語は、酸性基または塩基性基等の、イオン化可能な官能基を有する単量体単位を含まない親水性重合体を指す。このような重合体は、水溶液中において非荷電である。本方法における使用に適切な非イオン性重合体の例は、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコール、コーンスターチおよびヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、およびn-プロピルセルロースを含む、CからCのアルキルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシ-n-プロピルセルロース、ヒドロキシ-n-ブチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびエチルヒドロキシエチルセルロース等の、ヒドロキシ-CからCのアルキルセルロースおよびヒドロキシ-CからCのアルキル-CからCのアルキルセルロースを含む置換アルキルセルロースである。
【0030】
本明細書にて用いられる「ポリカルボン酸」という用語は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸等の、2つ以上のカルボン酸官能基を有する有機酸を指し、このような有機酸の無水型も含む。ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、o-フタル酸、イソフタル酸、m-フタル酸、およびテレフタル酸が挙げられる。好適なジカルボン酸としては、CからC12のジカルボン酸が挙げられる。適切なトリカルボン酸としては、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、およびプロパン-1,2,3-トリカルボン酸が挙げられる。適切なテトラカルボン酸としては、ピロメリット酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3’,3,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7-テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,7-テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,6-テトラカルボキシナフタレン、3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、ブタンテトラカルボン酸、およびシクロペンタンテトラカルボン酸が挙げられる。特に好適なポリカルボン酸の一つはクエン酸である。
【0031】
当該方法は、例えば、水等の極性溶媒、例えば、メタノールまたはエタノール等のアルコール等の極性有機溶媒、あるいはこれらの混合物中で当該高分子ヒドロゲルを洗浄することによって、当該高分子ヒドロゲルを精製する工程をさらに含み得る。当該極性溶媒中に含浸した高分子ヒドロゲルは膨潤し、当該重合体の網目構造内に組み込まれなかった副生成物または未反応のポリカルボン酸等の任意の成分を放出する。水が当該極性溶媒として好適であり、蒸留水がさらにより好適である。この工程の間に、当該ゲルの最大膨潤度に到達するのに必要とされる水の体積は、当該ゲル自体の初期体積よりも約10倍から20倍大きい。工業規模においてこの工程の間に必要とされるだろう相当量の水、ならびに洗浄液の廃棄および/または再生利用を考慮に入れると、合成過程において、何らかの毒性を有する副生成物の存在を回避する重要性は明白となる。当該高分子ヒドロゲルの洗浄工程を1回以上繰り返すことができ、随意に用いる極性溶媒を変更することができる。例えば、メタノールまたはエタノール、その後蒸留水で当該ヒドロゲルを洗浄することができ、これら2つの工程を随意に1回以上繰り返すことができる。
【0032】
当該方法は、当該高分子ヒドロゲルの乾燥をさらに含み得る。当該乾燥工程は、セルロース非溶剤中に完全に膨潤した高分子ヒドロゲルを含浸させること、すなわち、相反転として知られる方法によって行われる。適切なセルロース非溶剤としては、例えば、アセトンおよびエタノールが挙げられる。相反転によって当該高分子ヒドロゲルを乾燥させることで、毛管現象によって当該高分子ヒドロゲルの吸収特性を改善する最終的な微細孔構造をもたらす。さらに、当該細孔が相互に連結しているか開いている場合、すなわち、当該細孔が互いに繋がっている場合、当該ゲルの吸収動態/脱着動態は同様に改善される。完全または部分的に膨潤したゲルが非溶剤中に含浸される場合、当該ゲルが白色の粒子としてガラス状固体の形態で沈殿するまで、当該ゲルは水の排除を伴い相反転する。当該非溶剤中の様々な洗浄液が、短時間で乾燥したゲルを得るために必要となり得る。例えば、当該膨潤した高分子ヒドロゲルが、当該非溶剤としてのアセトン中に含浸される場合、水/アセトンの混合物が生成され、これは当該ヒドロゲルが乾燥するにつれて増加し、一定のアセトン/水の濃度にて、例えば、アセトン中で約55%の濃度にて、水はもはや当該高分子ヒドロゲルから抜け出すことができず、従って、未使用のアセトンを当該高分子ヒドロゲルに添加し、当該乾燥過程を進行させなければならない。乾燥の間に、当該アセトン/水の比率が高いほど、当該乾燥過程はより速くなる。細孔の寸法は、当該乾燥過程の速度、および当該高分子ヒドロゲルの粒子の初期寸法に影響され、より大きい粒子およびより速い過程は、当該細孔の寸法を増加させる傾向があり、微小規模の範囲内にある細孔の寸法は好適であるが、その理由は、この大きさの範囲内にある細孔が強力な毛管効果を示し、より高い収着および保水容量をもたらすからである。
【0033】
空気乾燥、凍結乾燥、またはオーブン乾燥等の別の方法によって、本発明の高分子ヒドロゲルも乾燥させることができる。これらの乾燥方法を、単独で、併用して、または上記の非溶剤の乾燥工程と併用して用いることができる。例えば、当該高分子ヒドロゲルを非溶剤中で乾燥し、その後、空気乾燥、凍結乾燥、オーブン乾燥、またはこれらを併用して、非溶剤の任意の微量の残留物を除去することができる。当該非溶剤の残留物が完全に除去されるまで、例えば、約30℃から45℃の温度でオーブン乾燥を行うことができる。
その後、当該洗浄されて乾燥された高分子ヒドロゲルをそのまま用いることができ、あるいは粉砕して望ましい大きさの高分子ヒドロゲルの粒子を生成することができる。
【0034】
当該架橋溶液は、分子スペーサとして作用する化合物を随意に含み得る。本明細書にて用いられる「分子スペーサ」というこの用語は、架橋した高分子ヒドロゲルの網目構造の形成をかなりの程度までもたらす反応には関与しないが、増加した吸収能力を有する高分子ヒドロゲルをもたらすポリヒドロキシル化化合物である。当該分子スペーサは、時に当該架橋反応にわずかな程度まで関与し得るが、当該分子スペーサは、重合鎖への接触を立体的に妨げ、それにより重合鎖間の平均距離を増大することによって機能すると考えられている。それ故、架橋は、すぐ近くにない部位にて起こり得、それによって、当該高分子ヒドロゲルの吸収特性を大いに増加させるほど拡張するための、当該重合体の網目構造の能力を促進することができる。本発明の方法において、分子スペーサとしての使用に適切な化合物としては、スクロース、ソルビトール、植物性グリセロール、マンニトール、トレハロース、ラクトース、マルトース、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、アラビトール、グリセロール、イソマルト、およびセロビオースを含む、単糖類、二糖類、および糖アルコールが挙げられる。当該分子スペーサは、当該溶媒に対して、好ましくは約0.5重量%から約10重量%、より好ましくは約2重量%から約8重量%、より好ましくは約4重量%の量で架橋溶液中に含まれる。
【0035】
本発明の好適な一つの実施形態によれば、当該高分子ヒドロゲルを合成するのに用いられる分子スペーサは、ソルビトール、スクロース、および植物性グリセロールから成る群から選択される。
【0036】
本発明の方法の特に好適な一つの実施形態によれば、水の重量を参照して0.5重量%から10重量%の範囲内、好ましくは水の重量を参照して2重量%から8重量%の範囲内の濃度にて、さらにより好ましくは水の重量を参照して4重量%の濃度にて、ソルビトールが当該分子スペーサとして用いられる。
【0037】
一つの実施形態では、当該水溶液は、イオン性重合体、好ましくは陰イオン性重合体、最も好ましくはカルボキシメチルセルロースを含む。特に好適な一つの実施形態では、当該陰イオン性重合体はカルボキシメチルセルロースであり、当該ポリカルボン酸はクエン酸である。
【0038】
別の実施形態では、当該水溶液としては、イオン性重合体および非イオン性重合体を含む。当該イオン性重合体は、好ましくは陰イオン性重合体であり、最も好ましくはカルボキシメチルセルロースである。当該非イオン性重合体は、好ましくは置換セルロースであり、より好ましくはヒドロキシアルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルアルキルセルロースであり、最も好ましくはヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)である。当該好適なポリカルボン酸はクエン酸である。
【0039】
当該イオン性重合体および非イオン性重合体の重量比(イオン性:非イオン性)は、約1:10から約10:1、好ましくは約1:5から約5:1の範囲であり得る。好適な実施形態では、当該重量比は1:1よりも大きく、例えば、約2から約5である。特に好適な一つの実施形態では、当該イオン性重合体はカルボキシメチルセルロースであり、当該非イオン性重合体はヒドロキシエチルセルロースであり、当該重量比(イオン性:非イオン性)は約3:1である。
【0040】
特に高い膨潤比(SR)を有する超吸収性高分子ヒドロゲルの生成をもたらす、本発明の方法の好適な一つの実施形態では、当該水溶液中の合計の前駆体濃度は、当該出発水溶液の水の重量を参照して少なくとも2重量%であり、当該架橋剤の量は、当該前駆体の濃度を参照して約1重量%から約5重量%の間である。本記述では、用語「前駆体」は、当該高分子ヒドロゲルの重合体網目構造の形成のための前駆体として用いられる一つまたは複数の親水性重合体を指し、例えば、ある実施形態では、「前駆体の重量」は、用いられるCMCNaの重量、または用いられるCMCNaおよびHECの総合重量である。当該水溶液は、水の重量に対して、好ましくは約4重量%の量のソルビトールを含む。
【0041】
膨潤比(SR)は、高分子ヒドロゲルの水を吸収する能力の基準である。SRは、平衡における膨潤測定を通じて得られ(例えば、10 -5の感度を有するSartorius社製の微量計を用いる)、それは下記の式を用いて計算される:
SR=(W-W)/W
(式中、Wは、24時間の蒸留水中での含浸後における高分子ヒドロゲルの重量であり、Wは、含浸前の高分子ヒドロゲルの重量であり、高分子ヒドロゲルは、任意の残留水を除去するためにあらかじめ乾燥されている。)
本発明の調製方法に従い、本実施形態では、当該架橋反応は、好ましくは約60℃から約120℃の間の温度で行われる。本方法のこの工程の間に温度を変えることで、当該重合体の網目構造の架橋度を増加または減少させることを可能にする。架橋温度は約80℃が好適である。
【0042】
本発明の方法の特に好適な一つの実施形態は、(工程1)一つもしくは複数の親水性重合体、カルボン酸、および随意に、分子スペーサを室温で水中に溶解させること、(工程2)水を、2日間にわたって40℃で当該溶液から除去すること、(工程3)工程2の生成物は、10時間の間80℃まで加熱し、架橋反応を引き起こし、高分子ヒドロゲルを生成すること、(工程4)当該高分子ヒドロゲルを、24時間にわたって水で3回洗浄すること、(工程5)当該洗浄された高分子ヒドロゲルを、24時間アセトン中に含浸し、水を除去すること、(工程6)当該高分子ヒドロゲルを、5時間の間45℃にてオーブン内でさらに乾燥させること、(工程7)当該乾燥された高分子ヒドロゲルを粉砕し、高分子ヒドロゲルの粒子を提供することを含む。
【0043】
本発明は、本発明の方法を用いて調製することができる高分子ヒドロゲルも提供する。
このような高分子ヒドロゲルは、ポリカルボン酸と架橋した親水性重合体を含む。その他の実施形態では、本発明の高分子ヒドロゲルは、ポリカルボン酸によって架橋された少なくとも2つの親水性重合体を含む。好適な一つの実施形態では、当該高分子ヒドロゲルは、イオン性重合体、および非イオン性重合体、およびポリカルボン酸、好ましくはCからC12のジカルボン酸、トリカルボン酸、またはテトラカルボン酸を含み、当該ポリカルボン酸は、当該イオン性重合体および当該非イオン性重合体を架橋する。非イオン性重合体に対するイオン性重合体の重量比は、好ましくは約1:5から約5:1、より好ましくは約2:1から約5:1、最も好ましくは約3:1である。特に好適な一つの実施形態では、当該イオン性重合体はカルボキシメチルセルロースであり、当該非イオン性重合体はヒドロキシエチルセルロースであり、当該ポリカルボン酸はクエン酸である。好適な別の実施形態では、当該高分子ヒドロゲルは、イオン性重合体、例えば、陰イオン性重合体または陽イオン性重合体を含む。より好ましくは、当該イオン性重合体は、カルボキシメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム等のその塩である。特に好適な別の実施形態では、当該高分子ヒドロゲルは、クエン酸で架橋したカルボキシメチルセルロースを含む。
【0044】
本発明の高分子ヒドロゲルは、少なくとも約5の膨潤比を有する。好ましくは、本発明の高分子ヒドロゲルは超吸収性高分子ヒドロゲルであり、例えば、少なくとも10のSRを有する高分子ヒドロゲルである。好適な実施形態では、本発明の高分子ヒドロゲルは、少なくとも約20のSR、約30のSR、約40のSR、約50のSR、約60のSR、約70のSR、約80のSR、約90のSR、または約100のSRを有する。例えば、ある実施形態では、本発明の高分子ヒドロゲルは、約10から約100のSR、約20から約100のSR、約30から約100のSR、約40から約100のSR、約50から約100のSR、約60から約100のSR、約70から約100のSR、約80から約100のSR、または約90から約100のSRを有する。ある実施形態では、本発明は、最大で150のSR、200のSR、250のSR、300のSR、330のSR、または350のSRを有する高分子ヒドロゲルを含む。
【0045】
ある実施形態では、本発明の高分子ヒドロゲルは、その乾燥重量の少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍の量の、血液、血漿、尿、腸液、または胃液等の1つ以上の体液を吸収することができる。
当該高分子ヒドロゲルの体液を吸収する能力を、1体以上の被験者から得られた体液の試料を用いて、あるいは擬似尿または擬似胃液等の擬似体液を用いて試験することを含む、従来の手段を用いて試験することができる。ある好適な実施形態では、当該高分子ヒドロゲルは、ある体積の擬似胃液(SGF)をその8倍の体積の水と混合することによって調製される、相当量の流体を吸収することができる。当該分野で知られているUSP試験液手順を用いて、SGFを調製することができる。いくつかの実施形態では、本発明の高分子ヒドロゲルは、その乾燥重量の少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍以上のこのSGF/水の混合物を吸収することができる。
【0046】
本発明の高分子ヒドロゲルとしては、様々な水和度を有する架橋した重合体が挙げられる。例えば、当該高分子ヒドロゲルの約0重量%から約5重量%が、水または水性流体である状態等の、実質的な乾燥状態または無水状態から、当該高分子ヒドロゲルが最大量の水または水性流体を吸収している状態までを含む、相当量の水または水性流体を含む状態までの範囲の水和状態にて、当該高分子ヒドロゲルを提供することができる。
【0047】
肥満症を治療するための方法、食物摂取量およびカロリー摂取量を減らすための方法、または満腹を維持するための方法において、本発明の高分子ヒドロゲルを用いることができる。当該方法は、好ましくは、ヒトを含む哺乳類等の被験者に当該高分子ヒドロゲルを摂取させることによって、有効量の本発明の高分子ヒドロゲルを被験者の胃に投与する工程を含む。例えば、食物のカロリー含有量に付加することなく食塊の体積を増加させることによって胃の体積を引き上げるために、このような高分子ヒドロゲルを用いることができる。食前にまたは食物との組み合わせにて、例えば、食物と当該高分子ヒドロゲルの混合物として、被験者が当該高分子ヒドロゲルを摂取することができる。摂取して胃液と、または胃液および水の混合物と接触すると、当該高分子ヒドロゲルは膨潤する。乾燥し、部分的な膨潤状態または完全な膨潤状態において、単独、あるいは液体または乾燥食物との混合物にて、当該高分子ヒドロゲルを摂取することができるが、好ましくはその流体容量を大幅に下回る水和状態にて摂取され、より好ましくは、当該高分子ヒドロゲルは無水状態で摂取される。従って、当該高分子ヒドロゲルによって引き上げられた胃の体積は、被験者によって摂取された高分子ヒドロゲルの体積よりも大幅に大きいものであり得る。
本発明の高分子ヒドロゲルは、胃から小腸へと移動して膨潤することによって、体積を引き上げ、かつ/または小腸壁に圧力を加えることもできる。好ましくは、当該高分子ヒドロゲルは、体内からの排出のために十分収縮する前に、被験者による食物摂取を阻害するのに十分な時間、小腸内で膨潤したままになる。被験者による食物摂取を阻害するのに十分な時間は一般的に、被験者が食べるのに必要な時間、および摂取された食物が小腸を通過するのに必要な時間であることがあり、このような収縮は、例えば、流体を放出し、体内からの排出のために十分に体積を減少させる架橋の損失による分解によって起こり得る。本方法における使用に好適な重合体は、pH依存の膨潤を示し、低いpHよりも高いpHにてより大きい膨潤が観測される。従って、このような重合体は、胃内容物のpHを上昇させる食物および/または水が存在し、小腸に移動するのでなければ、胃の中で大幅に膨潤しない。食物と摂取される場合、当該高分子ヒドロゲルは、最初に胃の中で膨潤し、その後、胃の食物が空になり、pHが降下し、その後胃から小腸に移動する場合に収縮する。小腸のより高いpH環境にて、当該高分子ヒドロゲルは膨潤し、小腸内の体積を引き上げ、かつ/または小腸壁に圧力を加える。
【0048】
当該高分子ヒドロゲルの微環境のpHを変更し、それによってその流体を吸収する能力を改変する薬品であるpH調整剤と併用して、当該高分子ヒドロゲルを随意に投与することができる。例えば、陰イオン性重合体を含む高分子ヒドロゲルに関して、当該微環境のpHを増加させる薬品は、当該高分子ヒドロゲルの膨潤性を増加させることができる。本発明の高分子ヒドロゲルとの使用に適切なpH調整剤としては、緩衝剤、Hブロッカー、プロトンポンプ阻害剤、酸中和物(anatacids)、タンパク質、栄養シェイク、およびこれらの混合物が挙げられる。適切な緩衝剤および酸中和物としては、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびこれらの混合物が挙げられる。適切なHブロッカーとしては、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
適切なプロトンポンプ阻害剤としては、オメプラゾール、ランソプラゾール、エソルネプラゾール、パントプラゾール、アベプラゾール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
例えば、慢性腎臓疾患および急性腎臓疾患を含む腎臓疾患を患う被験者、具体的には腎臓透析を受けている被験者のための治療法として消化管から水を除去するためにも、本高分子ヒドロゲルを用いることができる。さらに、その必要がある被験者の消化管内の流体含有量を修正するために、たとえば、便秘治療のために、当該高分子ヒドロゲルを用いることができる。
【0051】
本発明は、本発明の高分子ヒドロゲルを含む製造品をさらに含む。このような製造品としては、例えば、個人医療のための吸収性製品(すなわち、乳児用ナプキン、生理用ナプキンなど)等の消費者向け製品において、および農業製品(例えば、水および栄養分の制御された放出のための機器)において、ポリアクリル高分子ヒドロゲルが従来から用いられる製品が挙げられる。いくつかの実施形態では、用いられるカルボキシメチルセルロースの量に依存し、当該ゲル構造内の細孔の誘起によって改善することができる本発明の高分子ヒドロゲルの吸収特性は、ポリアクリルゲルのそれに相当する。それ故、本発明の方法によって得られる高分子ヒドロゲルは、上記全ての分野における使用において高分子ヒドロゲルを適切にする力学的特性を有する。しかしながら、本高分子ヒドロゲルは、アクリル高分子ヒドロゲルと比べて、生分解性、製造過程の間の何らかの副生成物が存在しないこと、およびより少なくかつ容易に入手可能な試薬を使用すること等の利点を有する。
このような特徴は、生物医学分野および製薬分野においても同様に、本発明の高分子ヒドロゲルの実用化を可能にする。
【0052】
従って、本発明の範囲は、水および/または水溶液を吸収することができ、かつ/または、水および/または水溶液と接触する場合に膨潤することができる製品における吸収性材料としての、本発明の方法によって得られる高分子ヒドロゲルの用途も含む。
【0053】
本発明の高分子ヒドロゲルおよび超吸収性高分子ヒドロゲルは、限定されない例として挙げられる下記の分野にて吸収性材料として用いることができる:
栄養補助食品(例えば、限られた時間胃の中に保持されて満腹を持続している感覚を与えることができる、低カロリー食事のための栄養補助食品中の充填剤として、あるいは水、および乾燥状態または膨潤状態にある飲料に含まれる、無機塩類またはビタミン等の低分子量化合物のサプリメントとしてのもの)と、
農業製品(例えば、水および/または栄養分および/または植物化学物質の制御された放出のため、具体的には不毛で荒廃した地域、およびいかなる場合でも頻繁な灌漑を行うことが可能でない地域における耕作のための機器における分野であり、植物の根を囲んでいる地域における土壌と乾燥型にて混合されるこのような製品は、灌漑の間に水を吸収し、それを保持することができ、時に耕作に有用な栄養分および植物化学物質とともに、ゆっくりそれを放出することができる製品)と、
衛生用および家庭用の吸収性製品(例えば、乳児用ナプキン、および生理用ナプキンなどにおける吸収性コア)と、
おもちゃおよび小道具(例えば、水または水溶液と接触した時点で、その大きさを大幅に変化することができる製品における分野)の分野と、
生物医学分野(例えば、潰瘍および/または火傷等の、滲出性の高い創傷の治療のための吸収性包帯等の、生物医学機器および/または医療機器において、あるいは眼科での使用に適応させた液体をゆっくり放出するのに適した徐放性の重合体薄膜における分野)と、
体液管理の分野、すなわち、有機体内での、例えば、浮腫、CHF(慢性心不全)、および透析の場合に、体内からの流体の排出を促進することができる製品中の液体量を制御するための分野。
【0054】
吸収性材料として本発明の高分子ヒドロゲルを含む上記の製品も、本発明の範囲内に含まれる。
【0055】
本発明は、医学分野における本発明の任意の高分子ヒドロゲルの用途をさらに含む。このような用途としては、肥満症、またはカロリー制限が治療効果、軽減効果、または予防効果を有する、任意の医学的障害または疾患の治療のための薬剤の調製における、高分子ヒドロゲルの用途が挙げられる。
【0056】
下記の実施例は、本発明をさらに説明するために挙げたものであり、その範囲を制限すると解釈してはならない。
【実施例
【0057】
本発明の材料および方法は、本発明の範囲の説明のみを目的とし、これを制限しない下記の実施形態を併用してより一層理解されたい。当該開示されている実施形態に対する様々な変更および改変は、当業者にとって明白であり、本発明の化学構造、誘導体、調合物、および/または方法に関連する変更および改変を無制限に含むような変更および改変を、本発明の精神および添付の特許請求の範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0058】
実施例1:カルボキシメチルセルロース/ヒドロキシエチルセルロース混合物のクエン酸架橋
材料
CMCNa(分子量 700kDa、0.9DS、食品等級)、HEC(分子量 250kDa、食品等級)をEigenmann e Veronelli S. p. A. Milano社より購入し、クエン酸をDal Cin S. p. A. Sesto San Giovanni Milano社より入手し、そのままの状態で用いた。
【0059】
高分子ヒドロゲルの合成
下記の手順に従って架橋剤としてクエン酸を用い、CMCNaおよびHECを水中で反応させることによって高分子ヒドロゲルの試料を得た。第一に、重量比が3/1に等しいCMCNaとHECの混合物を用いて、合計の重合体濃度が2重量%の水を、透明な溶液を得るまで、室温でゆっくりと撹拌することによって蒸留水中に溶解させた。CMCNaのみを用いる場合、高分子電解質鎖間の静電反発力、および最も反応性が高い部位であるC6位でのヒドロキシル基の高置換度が原因で、乏しい架橋効率が報告されている(参考文献13)。CMCNaの溶解は採用した濃度において遅く、それ故、5分後、粘性のわずかな増加を伴った透明の溶液を得るまで最初にHECを水に添加し、その後、CMCNaを添加し、粘性の大幅な増加を伴った透明な溶液を得るまで撹拌を続けた(24時間)。最後に、様々な架橋度を有する試料を得るために、様々な濃度(1.75%、2.75%、3.75%、10%、および20%w/w重合体)のCAを添加した。この最終溶液を用い、10mm厚の試料を成形した。全ての試料を最初に30℃で24時間あらかじめ乾燥して吸収水を除去し、その後、架橋反応のために温度を80℃に保った(中間制御を用いて24時間)。
【0060】
さらに、純粋なHECを含む試料、またはCAで架橋した純粋なCMCNa試料も、HEC/CMCNaの混合物のために用いた同一の実験条件に正確に従って調製した。
【0061】
全ての試料をFTIR測定で解析した。1738cm-1のカルボニル領域において、無水物の特徴的な伸縮バンドを監視することによって無水物の生成を検知した(参考文献14)。
【0062】
膨潤比
Sartorius社製の微量天秤(10-5の感度)を用いて、蒸留水中で全ての試料に対して平衡膨潤の測定を行った。約24時間にわたる蒸留水中での含浸の前後に試料を秤量することによって膨潤比を測定した。膨潤比(SR)を、下記のように定義した:SR=(W-W)/W
(式中、Wは膨潤した高分子ヒドロゲルの重量であり、Wは、乾燥試料の重量である(参考文献15)。)
示差走査熱量計
示差走査熱量計(Mettler-Toledo 822e Mettler DSC)を、熱分析のために用いた。走査温度範囲および加熱速度は、それぞれ10℃から200℃、5℃/分であった。
【0063】
採用した熱サイクルは、(1)10℃から100℃まで加熱、(2)100℃で3分の等温維持、(3)100℃から10℃まで冷却、(4)10℃から200℃まで加熱、(5)200℃で等温維持、(6)室温まで冷却であった。空の平皿を評価基準として用いた。
【0064】
フーリエ変換赤外分光法
減衰全反射(ATR)の結晶解析装置を装備したJASCO FT IR 660 plus分光光度計で、全てのFTIRスペクトルを記録した。4cm-1の分解能、300回の走査回数、4000cm-1から600cm-1の吸収範囲にて、ATRの結晶解析装置上で直接薄膜試料を用いた。
【0065】
結果および考察
純粋なクエン酸のDSC自記温度記録図は、約60℃でピークを示し、これは無水物を生じる脱水に関する水の損失過程に起因する。約160℃で開始する完全な分解を、2回目の走査で観測する。
【0066】
純粋なCMCNa粉末およびHEC粉末のDSC解析は、いくらかの水が重合体中に未だに吸収されていることを示す。100℃超過にて、CMCNaの予想される分解ピークを検知する。CMCNaおよびHECは両方、100℃未満で熱安定性を示す。
【0067】
比率が3:1のCMCNa/HEC、および3.75重量%の重合体のクエン酸を用いて得られた高分子ヒドロゲルの薄膜を、30℃で24時間試料を乾燥させた後にDSCによって解析し、その後粉末にした。無水化過程による水の蒸発に関連する、大きな吸熱ピークは明白である。エステル化に起因する小さな発熱ピークは、最初のピーク上に重なっている。2回目の加熱サイクルにおいて、架橋したセルロース混合物のガラス転移(Tg=38℃)を観測した。
【0068】
この予備DSC調査の後、下記の手順に従って様々な高分子ヒドロゲルの試料を調製した。水中で試薬を混合した後、乾燥条件にて反応容器を24時間30℃に保ち、水を除去した。その後、最初のDSC解析の結果に従って、クエン酸無水物を得るために、温度を60℃超に上昇させた。この限界温度を超えると、クエン酸無水物は、セルロースのOH基との架橋反応に使用可能になる。表1にまとめているように、温度およびCAの濃度等の合成手順を最適化するために、様々な反応条件を試みた。架橋過程における2つの異なる反応温度、80℃および120℃を試みた。しかしながら、分解の危険を防止するため、または反応速度を制限するために、80℃の温度を選択した。さらに、非常に高い濃度(10重量%および20重量%)のCAを、各化学反応の工程に関連するFTIR信号を増幅させるために最初に用いた。各重合体とのCAの反応性を検討するために、最初、純粋なCMCNaおよびHECをCAで架橋した。
【0069】
表1
【表1】
【0070】
クエン酸のFTIRスペクトル、加熱前のA10の反応混合物のFTIRスペクトル、および5時間加熱した後のA10の反応混合物のFTIRスペクトルを記録した。CAのスペクトルにおいて、カルボン酸に基づく1715cm-1に中心を置く強力なC=Oバンドを観測することが可能である。試料A10のFTIRスペクトルは、セルロースに特有の1590cm-1における強力な吸収バンドを示す(参考文献16)。加熱後、約1590cm-1における当該吸収バンドをなお観測し、加えて1738cm-1に新たなバンドが出現する。無水物は、1758cm-1および1828cm-1周辺のカルボニル領域にて2つの伸縮バンドを示す。高振動数のバンドであるほど、非環式無水物においてより強くなり、一方、環式無水物は、より高振動数における伸縮バンドよりも強いより低振動数のC=O伸縮バンドを示す(参考文献14)。1738cm-1にて観測される新たなピークは、無水物の生成、セルロースのヒドロキシル基とCAの反応に必要な中間反応に関連する、より低振動数におけるカルボニル基の特徴的な伸縮バンドに原因があり得る。その一方で、より高振動数に予想されたカルボニルのピークは、その弱い強度が原因で恐らく検知することができない。
【0071】
クエン酸、加熱前のB10の反応混合物、および6.5時間の加熱後のB10の反応混合物のFTIRスペクトルを記録した。HECのスペクトルは、加熱前後にて1590cm-1におけるバンドを再び示す一方、1738cm-1におけるカルボニル基の吸収が、試料A10に対して観測されたように、80℃で加熱した後にのみ現れる。
【0072】
FTIR解析は、一般に定性的手法であると考えられているが、Comaおよびその共働者らによって調査された文献における文献研究は、架橋したセルロース誘導体における架橋速度の決定のための初期近似において、赤外分光法を用いることができ得るということを立証した(参考文献9)。この検討材料を発端として、80℃で最終的に架橋を引き起こす様々な反応の発生を、様々な反応時間にてFTIRスペクトルを記録することによって監視した。
【0073】
カルボニル基を表す1738cm-1における吸収ピークの下の領域(A)を、全てのスペクトルにおいて不変である、1592cm-1における参照吸収ピークの下の領域(A)と比較した。無水物の発生を、反応時間の関数であるA/Aの比率として評価した。CMCNa重合体のFTIRスペクトルは、反応を20%CAまたは10%CAを用いて80℃で行う場合、両方とも同様の傾向を示す:加熱前には存在しない無水物のバンドは、最初の1時間のほとんど直後に最大値に到達し、引き続き3時間後に最小値まで減少し、その後5時間後に再び増加し、2つ目の最大値に到達した。最後に、遅い過程であるほど、24時間後にバンド領域を0まで収縮する。20%CAの反応スペクトルにおいて、2つ目の最大値が、10%CAの溶液にて観測された値(A/A=0.04)よりも高い値(A/A=0.10)に一致するということは注目に値する。
【0074】
1738cm-1周辺のピークは、遊離CAに関連する無水化過程、その後の無水C=O基の高速の消失をもたらすセルロースのOHとの、この無水物の1回目の縮合に起因していると見なす。その後、ここで重合体に結合したカルボキシレート基は、1738cm-1のピークの増加をもたらす無水物を再び生成することができる。架橋に関与するこの無水物の2回目の反応は、新たな無水物基の消費、およびその結果として起こる1738cm-1におけるピークの減少をもたらす。この2回目の反応はより遅いが、その理由は、それが大きい高分子に結合した基を含み、それ故に立体的に阻害されるからであり、その他のセルロースの架橋方法に関しても報告されている通りである(参考文献17)。この考えられる反応機構を、膨潤測定によって確認する。
【0075】
20%CAまたは10%CAの何れかを用いて80℃で反応を行う場合において、HEC重合体の反応に対するFTIRスペクトルも記録した。10%CAの場合において、反応時間が0時間から6.5時間に増加する場合、無水物のバンド強度は0から0.098に増加するが、反応時間が24時間に到達する場合は0まで降下する。20%CAの反応は、5時間で最大値である0.079を与える同一の傾向に正確に従う。架橋機構がCMCNaに関して記載されているものと同一であると見なすと、無水化反応およびエステル化反応は、この場合同時に現れる。それ故、FTIRスペクトルでは、HEC重合体は単独のピークを示す。この後半の結果は、Xieおよびその共働者らの結論と一致した(参考文献18)。彼らは、様々な反応時間でCAと熱的に反応したデンプンにおいて、架橋エステル化の評価として置換度を調査し、数時間後に最大値を発見した。
【0076】
24時間後に記録した全てのFTIRスペクトルにおいて観測したデータを説明するために、我々は、いかなる場合でも、24時間オーブン内に貯蔵する場合に重合体は不安定であるということを想定したが、その理由は、エステル基も含む重合体構造を改変する、未確認の第2の反応が発生するからである。Xieおよびその共働者ら(参考文献18)の研究は、置換度は最大値に到達し、その後減少するが、その理由は、反応時間が7時間よりも長い場合に、デンプンからの置換基の解離が起こるからであるということを推測した。
【0077】
最後に、この調査を完了するために、CMCNaおよびHECの重合体混合物を架橋した。CMCNaは、溶液中での体積変化過程を増加させるその構造内にカルボン酸官能基を有する。反応経路に従う事前の試みは失敗した。
【0078】
恐らく、検討した反応系は、多くの様々な反応中心を有する非常に複雑なものである。
8時間および13時間の加熱後にて、上記に記載したC10の反応のFTIRスペクトルを比較した。反応物試料C20は同様のスペクトルを示す。さらに、重合体混合物を用いる場合(C10およびC20)、広い信号が約1715cm-1にて現れるが、当該反応においてより高濃度のCAを用いる場合は特にそうであるということは注目に値する。実際に、20%のCAを用いる場合、1715cm-1におけるCAの信号は非常に広く、1590cm-1における重合体の信号と重複しており、その結果、明瞭なバンドを検知することができない。
【0079】
しかしながら、加熱前の1715cm-1周辺のバンドに注目されたい。加熱前のC10の反応混合物は、1715cm-1周辺のバンドが、その他の反応物(A10、A20、B10、B20)に対して上記で監視した吸収領域を覆い、その結果、カルボニル基に対する明快な帰属が困難であることを示す。しかしながら、その他2つのスペクトルは、このバンドが架橋反応の間により高い波数に移動するということを表している。具体的には、8時間後には、FTIRスペクトルは1711cm-1から1736cm-1の範囲内に広いバンドを示し、13時間後には、このバンドは1737cm-1における狭い吸収バンドとしてさらに明瞭に現れ、これはカルボニル基に特有である。C20の反応のスペクトルは同様の結果を与える。C10試料およびC20試料を架橋する場合、カルボニル基の定量分析は可能ではないが、純粋な重合体の反応に対して観測されたものと同様の、カルボニルのピークの評価を想定することができる。
【0080】
架橋の反応速度も監視し、反応過程の間の膨潤挙動を検討した。(a)10%または20%のCA濃度を伴うCMCNa、(b)10%または20%のCA濃度を伴うHEC、(c)10%または20%のCA濃度を伴うCMCNaおよびHEC(3/1)の混合物、(d)1.75%、2.75%、または3.75%のCA濃度を伴うCMCNaおよびHEC(3/1)の混合物に対する時間の関数として膨潤比を計算した。
【0081】
得られた結果は、10%のクエン酸で架橋したCMCNaの膨潤が、24時間後の同一のクエン酸濃度で架橋したHECよりも高いということを表している。20%のクエン酸をセルロースに添加する場合、膨潤曲線の形は、HECおよびCMCNaに対するものと同様である。この場合において、架橋が進行するにつれて、HEC系の試料の膨潤は、CMCNa試料よりも速く減少し、CAおよびHECの間の反応速度がより高いことを表している。これが起こる理由は恐らく、HECがCMCNaよりも立体的に阻害されておらず、CMCNa鎖よりも速く反応することができるからである。加えて、各反復単位において、HECはCMCNaよりも多くのOH基を有する(3対2)からである。
【0082】
ゲル化の開始時点にてCMCNa/CA試料の最大膨潤を観測し、3時間後に2回目のエステル化反応、架橋をもたらすものが開始する。その後、架橋過程が増加するにつれて、対応する平衡の水分収着は減少し、FTIR解析の結果を裏付ける。
【0083】
CAで架橋した純粋なHECに関して、同様の反応機構を想定することができる。しかしながら、この場合は、重合体に結合したカルボキシル基の不在の結果として、全体の挙動がわずかに異なる。CAが、高分子電解質の網目構造の形成を担う親水性のカルボキシル基を導入するということを考慮に入れて、膨潤実験の結果を解釈されたい。それ故、水分収着は大幅に増加するが、その理由は、カルボキシル基が最初にHEC鎖に、その後ゲル状網目構造に結合するからである。CMCNaの高分子ヒドロゲルにおいて、この効果は好ましくあり得ないが、その理由は、大量の-COOH基、CMCNa鎖に結合するものは、ゲル化の開始時点において既に網目構造に結合しているからである。HECおよびCMCNaの混合物に関して、同様の傾向を観測する。
【0084】
減少した濃度のクエン酸(重合体の重量に対して、1.75%、2.75%、3.75%)を用いて、高膨潤度を示す実用的用途の高分子ヒドロゲルを得た。クエン酸濃度が3.75%の場合、膨潤比は900に到達することができる。膨潤後に、この高分子ヒドロゲルは十分な剛性によって特徴付けられ、合成タンクの形状を同一に保つことができる。
架橋剤として毒性の試薬であるジビニルスルホンを用いて以前に合成された高分子ヒドロゲル(参考文献13)、およびCMCNaおよびHECの間の同一の比率を、200という最大膨潤比によって特徴付けた。この場合、環境に優しい架橋剤を用いてより高い膨潤比を得る。1.75%未満のCA濃度において、不十分な力学的特性に関連する弱い架橋を観測する。
【0085】
結論
この研究は、CMCNa/HECの混合物の架橋剤として、CAを上手く用いることができるということを初めて示した。図1に示すように、無水物の中間生成に基づくエステル化機構を、CAとセルロース重合体の反応を説明するために提唱する。
【0086】
CMCNa/HECの系に関する架橋反応を、DSC解析またはFTIR解析の何れかによって観測した。様々な架橋反応の発生を、過剰量のクエン酸を用いて様々な反応時間において収集したFTIRスペクトルによって監視した。様々な反応時間において監視した膨潤比は、FTIR解析から解明した反応経路を裏付けた。実用的用途において最適な膨潤度(900)を、低濃度のCAを用いて実現した。この実施例1に記載されている方法を通じて得た高分子ヒドロゲルは、初期費用および生産費用を減少させ、その合成過程の間に任意の毒性を有する中間体を避ける多大な利点を有する。
【0087】
実施例2:ソルビトールの存在下における、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース/ヒドロキシエチルセルロース混合物のクエン酸架橋材料および方法
用いた全ての材料をAldrich Italia社より準備し、さらなる改変をせずに用いた。特性解析において用いた装置は、標準的な実験用ガラス器具、標準的な合成のための棚および計測器に加えて、走査型電子顕微鏡(SEM)であるJEOL JSM-6500F、精度が10-5であるSartorius社製の秤、Isco社製のミキサー、およびARES血流計であった。
【0088】
クエン酸(CA)を架橋剤として、ソルビトールを分子スペーサとして用い、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMCNa)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)の水溶液を架橋することによって、高分子ヒドロゲルを調製した。出発液中のわずかな量の試薬によって、ゲルの組成物を与える。前記組成物を定義するのに用いたパラメータは以下の通りである:
(i)前駆体の重量濃度(%)=溶液中の重合体の全質量(例えば、CMCNa+HEC)(g)×100/水の質量(g)
(ii)HECに対するCMCNaの重量比=溶液中のCMCNaの質量(g)/溶液中のHECの質量(g)
(iii)架橋剤(CA)の重量濃度(%)=溶液中のCAの質量(g)×100/溶液中の前駆体の質量(g)
(iv)分子スペーサ(例えば、ソルビトール)の重量濃度(%)=分子スペーサの質量(g)×100/水の質量(g)
実験室試験は、濃度2%未満の重合体、および濃度1%未満のCAは何れも、ゲルの架橋を実現せず、非常に乏しい力学的特性を有するゲルの合成をもたらすということを立証した。一方、濃度が約5%よりも高いCAは、架橋度および重合体の安定を大幅に増加させるが、超吸収性ゲルの吸収特性を過剰に減らす。
【0089】
CMCNaはイオン性重合体種であるため、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)に対するカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMCNa)の重量比を調節することによって、望ましい吸収特性を実現することが可能である。0/1および5/1の間、好ましくは1/1および3/1の間にあるCMCNa/HECの重量比を観測し、最適な吸収特性を有する高分子ヒドロゲルの合成を可能にした。
【0090】
本発明による様々な高分子ヒドロゲルの合成に関連し、クエン酸の重量パーセント(重量%)、および重合体前駆体の組成物が互いに異なる例を下記に挙げる。
【0091】
高分子ヒドロゲルAの調製:蒸留水を含むビーカー中に、蒸留水の重量を参照して4重量%の濃度であるソルビトールを添加し、完全に可溶化するまで混合し、これは数分以内に可溶化した。CMCNa/HECの重量比が3/1であり、蒸留水の重量を参照して総濃度が2重量%であるCMCNa重合体およびHEC重合体を添加する。重合体の全量が可溶化を遂げるまで混合を進行させると、溶液が透き通った。この段階において、前駆体の重量を参照して1重量%である濃度のクエン酸を、粘性が大いに増加していた溶液に添加した。これによって得た溶液を容器に注ぎ、48℃で48時間乾燥させた。この過程の間、高分子を安定化し、高分子ヒドロゲルの骨格である重合体網目構造にする。架橋過程の終了時に、室温で24時間、高分子ヒドロゲルを蒸留水で洗浄した。この工程の間、高分子ヒドロゲルは膨潤し、それによって不純物を除去した。最大の膨潤度および全ての不純物の除去を達成するために、24時間の洗浄工程の間に、蒸留水を用いて少なくとも3回洗浄を行った。この洗浄工程の終了時に、ガラス状の白色沈殿物を得るまで、非溶剤としてのアセトン中の相反転によって高分子ヒドロゲルを乾燥させた。その後、沈殿物を約3時間45℃のオーブン内に入れ、任意のわずかなアセトンの残留物を除去する。
【0092】
高分子ヒドロゲルBの調製:当該重合体がCMCNaのみでできていることと、CMCNa濃度が蒸留水の重量を参照して2重量%であることのみを除いては、高分子ヒドロゲルBは高分子ヒドロゲルAと同様に調製した。
【0093】
高分子ヒドロゲルCの調製:クエン酸濃度がCMCNaの重量を参照して2重量%であることのみを除いては、高分子ヒドロゲルCは高分子ヒドロゲルBと同様に調製した。
【0094】
高分子ヒドロゲルDの調製:クエン酸濃度がCMCNaの重量を参照して0.5重量%であることのみを除いては、高分子ヒドロゲルDは高分子ヒドロゲルBと同様に調製した。
【0095】
吸収測定
上記のように調製した高分子ヒドロゲルの吸収特性を試験するために、蒸留水中にて高分子ヒドロゲルの吸収測定を行った。吸収測定は原則として、蒸留水中の乾燥工程から得た乾燥試料を配置し、平衡状態に到達するまでそれが膨潤するようにすることから成る。
【0096】
当該ゲルの吸収特性を、上記で説明した式に従って定義した膨潤比(SR)に基づいて評価する。実験誤差の影響を最小限にするために、各ゲルからの3つの試料において各試験を行い、その後、3つの測定結果の平均値を有効値と見なした。
【0097】
3つの乾燥試料を各試験ゲルから採取したが、それぞれが異なる重量および大きさを有していた。重量を記録した後、室温で大量の蒸留水中にて試料を膨潤させた。24時間後に平衡に到達した時、膨潤比を決定するために試料をもう1回秤量した。
【0098】
結果
下記の表2は、膨潤比に関して、試薬の濃度および架橋時間を変化させて(6時間、13時間、18時間、24時間)得られたいくつかの結果を報告している。
【0099】
表2
【表2】
【0100】
nr=架橋せず
重合体濃度の増加は、最終生成物の膨潤特性に対して悪影響を与えるということに注目されたく、架橋時間は、吸収特性の重大な影響を与えるということにも注目されたい。
【0101】
従って、重合体濃度を2%に固定し続け、クエン酸濃度を変化させてさらなる実験を行った。その結果を表3にて報告する。
【0102】
表3
【表3】
【0103】
nr=架橋せず
表3は、最良の膨潤比を有する試料がg22と表す試料であり、1%のクエン酸(CA)濃度によって特徴付けられるということを示す。
【0104】
従って、当該溶液からHECを完全に除去してさらなる実験を行った。これは当該高分子ヒドロゲルをより親水性にし、それによって膨潤比の増加をもたらす。表4は得られたいくつかの結果を示す。
【0105】
表4
【表4】
【0106】
nr=架橋せず
最も高い膨潤比は、13時間の架橋時間および1%のクエン酸濃度に関連する。より短い架橋時間とともに、より高いクエン酸濃度は、等しく申し分のない膨潤比をもたらすが、当該反応は非常に速く、かつより制御しづらくなるということにも注目されたい。
【0107】
最後に、吸収特性を促進することができ得る材料内に細孔を作り出すことによって、膨潤比を増加させる可能性を評価した。その目的のために、12時間架橋を行った試料g31を24時間蒸留水中で膨潤させ、その後、アセトン中の相反転によって乾燥させた。この手法を用いて、200の膨潤比を得た。
【0108】
実施例3:擬似胃液(SGF)およびSGF/水の混合物中の高分子ヒドロゲルの膨潤
本実施例は、37℃の様々な媒体中での、インビトロの膨潤および崩壊の実験における実施例2で高分子ヒドロゲルBと表示される超吸収性ヒドロゲルの評価について記載している。
【0109】
37℃での動力学(100%SGF中にて)
擬似胃液(「SGF」)、またはSGFおよび水の混合物の何れか一方の中に100mgの乾燥した高分子ヒドロゲルを含浸させ、平衡状態に到達するまで膨潤させた。USP試験液手順に従ってSGFを調製した。様々な時点において、各流体中の膨潤比を決定した。その結果を表5および表6に記載する。
【0110】
表5.37℃での100%SGF中の乾燥高分子ヒドロゲルBの膨潤。15分、30分、60分、および90分にて重量を記録した。
【表5】
【0111】
表6.37℃でのSGFおよび水の混合物(1:8)中の乾燥高分子ヒドロゲルBの膨潤。15分、30分、60分、および90分にて重量を記録した。
【表6】
【0112】
37℃での動力学(SGFの添加を伴う)
水和した高分子ヒドロゲルに対する消化の影響をシミュレートするために、60分後に上記(表6、SGF/水)の膨潤した高分子ヒドロゲルに、100%SGFをゆっくり添加し、ゲル粒子を崩壊させた。添加したSGFの累積体積の関数として、膨潤比を監視した。その結果を表7に記載する。
【0113】
表7
【表7】
【0114】
膨潤(1:8のSGF/水中にて)、崩壊(SGF中にて)、および再膨潤の動力学(擬似腸液中にて)
全て37℃において、1:8のSGF/水中の膨潤、SGF中の崩壊、および擬似腸液(SIF)中の再膨潤(その後、分解)の全サイクルを通じて、膨潤比を監視することによって実験を行った。再膨潤/分解の動力学に関して、行った実験および結果を表8に示す。可能であればpH値を示した。
【0115】
表8.SGF/水中の膨潤、SGF中の崩壊、およびSIF中の再膨潤の動力学
【表8】
【0116】
結論:
この高分子ヒドロゲルは、擬似胃液(pH1.5)中にて約15倍、擬似胃液/水の混合物(pH3)中にて約85倍に膨潤する。これは、当該高分子ヒドロゲルが、3未満のpHにおいて(CMCのpKaは-3.1である)、ドナン効果の不在によって当該高分子ヒドロゲルの膨潤が制限される、pH/膨潤の相関関係を有するということを示している。当該重合体は、増加したpHの擬似腸液中でも膨潤することができる。
【0117】
実施例4:ラットの摂食行動に対する高分子ヒドロゲルの影響
実験動物における高分子ヒドロゲルBの影響を評価するために、一連の実験を行った。
これらの調査の目的の1つは、ラットの食物摂取に対する高分子ヒドロゲルBの影響を決定することである。経口強制給飼による、あらかじめ膨潤させた高分子ヒドロゲルBの急性投与によって、本調査をオスのスプラーグドーリーラットで行った。
【0118】
高分子ヒドロゲルおよび賦形剤の投与(高分子ヒドロゲルBをあらかじめ水中で膨潤させた、10mLの水中に100mg)より先に、全部で22匹のオスのスプラーグドーリーラットを無作為に2つの体重に合わせた群に分けた。食物および水の摂取量(デジタル式秤)、ならびに自発運動(連続ブレーキ梁)を、投与後に40時間5分毎にオンラインで監視した。食物および水の摂取量のデータを、MaNi FeedWin、デジタル式秤量槽を用いたオンライン式コンピュータ制御の給餌システムを用いて収集した。2種類の基準となる食物摂取量(デジタル式秤)、および舐めた回数を監視した。全てのデータをエクセルの表計算ソフトに入力し、その後関連する統計分析を行った。特に指定のない限り、結果を平均の±SEMとして示す。1元または2元配置分散分析(ANOVA)を用いて、当該データの統計的評価を行う。
【0119】
結果および結論
時間の関数として表現した累積の食物摂取量のグラフである図2は、典型的な研究結果を表す。基準線における群の間に相違は無かった。強制飼養による8mLの高分子ヒドロゲルBの投与はラットに満腹を促し、食物摂取量に大幅な減少をもたらした。黄線内に示すように、この高分子ヒドロゲルは食物摂取量の著しい減少を引き起こし、これは2時間にわたって持続した。これらのデータは、高分子ヒドロゲルBが動物に満腹を促すことができ、食物摂取量の減少をもたらすということを示唆している。
本願発明の実施態様は、以下のとおりである。
1. (a)親水性重合体、およびポリカルボン酸、またはその無水物を含み、前記ポリカルボン酸が、C からC 12 のジカルボン酸、トリカルボン酸、またはテトラカルボン酸である水溶液を準備する工程と、
(b)前記ポリカルボン酸によって前記親水性重合体を架橋し、それによって高分子ヒドロゲルを生成するのに適切な条件下で工程(a)の溶液を維持する工程と、を含む、高分子ヒドロゲルを調製するための方法。
2. 前記高分子ヒドロゲルが少なくとも約10の膨潤比を有する、1に記載の方法。
3. 前記高分子ヒドロゲルが少なくとも約50の膨潤比を有する、2に記載の方法。
4. 前記高分子ヒドロゲルが少なくとも約100の膨潤比を有する、3に記載の方法。
5. 前記親水性重合体が、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコール、および多糖類から成る群から選択される、1に記載の方法。
6. 前記親水性重合体が、置換セルロース、置換デキストラン、置換デンプン、グリコサミノグリカン、およびポリウロン酸から成る群から選択される、5に記載の方法。
7. 前記親水性重合体が、C からC のアルキルセルロース、ヒドロキシ-C からC のアルキルセルロース、およびヒドロキシ-C からC のアルキル-C からC のアルキルセルロースから成る群から選択される、6に記載の方法。
8. 前記親水性重合体が、メチルセルロース、エチルセルロース、n-プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシ-n-プロピルセルロース、ヒドロキシ-n-ブチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシキメチルデンプン、硫酸デキストラン、リン酸デキストラン、ジエチルアミノデキストラン、ヘパリン、ヒアルロナン、コンドロイチン、硫酸コンドロイチン、硫酸ヘパラン、ポリグルクロン酸、ポリマヌロン酸、ポリガラクツロン酸、およびポリアラビン酸から成る群から選択される、6に記載の方法。
9. 前記水溶液が少なくとも2つの親水性重合体を含む、1に記載の方法。
10. 前記水溶液がイオン性重合体および非イオン性重合体を含む、9に記載の方法。
11. 前記イオン性重合体が、アルギン酸塩、硫酸デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリグルクロン酸、ポリマヌロン酸、ポリガラクツロン酸、ポリアラビン酸、硫酸コンドロイチン、リン酸デキストラン、キトサン、およびジメチルアミノデキストランから成る群から選択される、10に記載の方法。
12. 前記非イオン性重合体が、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、n-プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシ-n-プロピルセルロース、ヒドロキシ-n-ブチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびエチルヒドロキシエチルセルロースから成る群から選択される、10に記載の方法。
13. 前記イオン性重合体がカルボキシメチルセルロースであり、前記非イオン性重合体がヒドロキシエチルセルロースである、10に記載の方法。
14. 前記ポリカルボン酸がクエン酸である、13に記載の方法。
15. 前記ポリカルボン酸が、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、o-フタル酸、イソフタル酸、m-フタル酸、テレフタル酸、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、ピロメリット酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3’,3,4’-テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7-テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,7-テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,6-テトラカルボキシナフタレン、3,3’,4,4’-テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、ブタンテトラカルボン酸、およびシクロペンタンテトラカルボン酸から成る群から選択される、14に記載の方法。
16. 前記ポリカルボン酸がクエン酸である、1に記載の方法。
17. 前記水溶液がさらに分子スペーサを含む、1に記載の方法。
18. 前記分子スペーサが、単糖類、二糖類、および糖アルコールから成る群から選択される、17に記載の方法。
19. 前記分子スペーサが、スクロース、ソルビトール、植物性グリセロール、マンニトール、トレハロース、ラクトース、マルトース、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、アラビトール、グリセロール、イソマルト、およびセロビオースから成る群から選択される、18に記載の方法。
20. 前記工程(b)において前記溶液が高温に維持される、1に記載の方法。
21. 前記溶液が約60℃から約120℃の温度に維持される、20に記載の方法。
22. 前記工程(b)において、前記水が部分的または完全に蒸発される、20に記載の方法。
23. (c)前記高分子ヒドロゲルを水、極性有機溶媒、またはこれらの混合物で洗浄し、それによって洗浄された高分子ヒドロゲルを生成する工程、をさらに含む、1に記載の方法。
24. (d)前記洗浄された高分子ヒドロゲルを乾燥させる工程、をさらに含む、23に記載の方法。
25. 前記工程(d)が、前記洗浄された高分子ヒドロゲルをセルロース非溶剤中に含浸させることを含む、24に記載の方法。
26. 前記工程(d)が、前記洗浄された高分子ヒドロゲルをオーブン内で乾燥させることをさらに含む、27に記載の方法。
27. (a)当該前駆体重合体が、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、クエン酸、および分子スペーサから成る、前駆体重合体の水溶液を準備する工程と、
(b)前記水溶液を加熱し、それによって前記水を蒸発させ、クエン酸でカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースを架橋し、それによって高分子ヒドロゲル材料を生成する工程と、
を含む、高分子ヒドロゲルを調製するための方法。
28. 前記分子スペーサがソルビトールである、27に記載の方法。
29. ヒドロキシエチルセルロースに対するカルボキシメチルセルロースの重量比が約3であり、前記工程(a)の溶液中の水に対する、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの混合重量比が少なくとも約2%であり、前記工程(a)の溶液中の水に対するソルビトールの重量比が約4%であり、前駆体重合体に対するクエン酸の重量比が約1%から約5%である、28に記載の方法。
30. (a)カルボキシメチルセルロース、クエン酸、および分子スペーサの水溶液を準備する工程と、
(b)前記水溶液を加熱し、それによって前記水を蒸発させ、前記カルボキシメチルセルロースを架橋して高分子ヒドロゲル材料を生成する工程と、
を含む、高分子ヒドロゲルを調製するための方法。
31. 前記分子スペーサがソルビトールである、30に記載の方法。
32. 前記工程(a)の溶液中の水に対するソルビトールの重量比が約4%であり、カルボキシメチルセルロースに対するクエン酸の重量比が約1%から約5%である、31に記載の方法。
33. 1に記載の方法によって生成される高分子ヒドロゲル。
34. 27に記載の方法によって生成される高分子ヒドロゲル。
35. 前記高分子ヒドロゲルが少なくとも約10の膨潤比を有する、33または34の何れかに記載の高分子ヒドロゲル。
36. C からC 12 のジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸から選択されるイオン性重合体およびポリカルボン酸を含み、前記ポリカルボン酸が前記イオン性重合体を架橋する高分子ヒドロゲル。
37. 前記イオン性重合体がカルボキシメチルセルロースであり、前記ポリカルボン酸がクエン酸である、36に記載の高分子ヒドロゲル。
38. カルボキシメチルセルロースに対するクエン酸の重量比が約1%から約5%である、37に記載の高分子ヒドロゲル。
39. 少なくとも10の膨潤比を有する、37に記載の高分子ヒドロゲル。
40. 少なくとも50の膨潤比を有する、39に記載の高分子ヒドロゲル。
41. 少なくとも100の膨潤比を有する、40に記載の高分子ヒドロゲル。
42. (a)イオン性重合体と、
(b)非イオン性重合体と、
(c)C からC 12 のジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸から選択され、前記イオン性重合体および前記非イオン性重合体を架橋するポリカルボン酸と、
を含む高分子ヒドロゲル。
43. 前記イオン性重合体がカルボキシメチルセルロースであり、前記非イオン性重合体がヒドロキシエチルセルロースであり、前記ポリカルボン酸がクエン酸である、42に記載の高分子ヒドロゲル。
44. ヒドロキシエチルセルロースに対するカルボキシメチルセルロースの重量比が約1:5から5:1であり、クエン酸がカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの混合重量と比較して1重量%から5重量%の量で存在する、43に記載の高分子ヒドロゲル。
45. ヒドロキシエチルセルロースに対するカルボキシメチルセルロースの重量比が約2から約5である、44に記載の高分子ヒドロゲル。
46. ヒドロキシエチルセルロースに対するカルボキシメチルセルロースの重量比が約3である、45に記載の高分子ヒドロゲル。
47. 少なくとも約10の膨潤比を有する、42に記載の高分子ヒドロゲル。
48. 少なくとも約50の膨潤比を有する、47に記載の高分子ヒドロゲル。
49. 少なくとも約100の膨潤比を有する、48に記載の高分子ヒドロゲル。
50. 33、36、または42の何れか1項に記載の高分子ヒドロゲルを含む製造品。
51. 前記製造品が、体内から水または水溶液を除去するための機器または調合薬、農業において水、栄養分、または植物性製剤の制御された放出のための機器、個人的衛生および家庭衛生のための吸収性製品、水または水溶液と接触する場合にその大きさを変えるように適合されるおもちゃおよび機器、生物医学機器、および眼科において液体をゆっくりと放出することができる重合体薄膜から成る群から選択される、50に記載の製造品。
【0120】
参考文献
[1] Anbergen U, Opperman W, Polymer, 31, 1854 (1990) (非特許文献1)
[2] Esposito F et al., J Appl Polym Sci, 60, 2403 (1996) (非特許文献2)
[3] Denn WL, Ferguson GN, US 3,589,364, 1971(米国特許第3,589,364号) (特許文献1)
[4] Sachetto JP et al., ES 484964, 1978(特許文献2)
[5] Choi YS et al., Biomaterials, 20, 409 (1999) (非特許文献3)
[6] 国際特許出願第WO2006/070337号(特許文献3)
[7] Glusker JP. Ace. Chem. Res. 1980;13:345-352
[8] Wang CC et al., Applied Catalysis A: General 2005;293: 171-179
[9] Coma V et al., Carbohydrate Polymers 2003;51:265-271
[10] Xie XS et al., Food Research International 2006;39:332-341
[11] Yang CQ et al., J. Appl. Polym. Sci. 1998;70:2711-2718
[12] Flory PJ. , Principles of Polymer Chemistry, Ithaca, NY: Cornell University Press, 1953
[13] Sannino A. et al., Polymer 2005; 46:4676
[14] Silverstein R.M., et al. Spectrometric Identification of Organic Compounds, Wiley, 1991, pp 120-130
[15] Peppas NA, Polymer hydrogels in Medicine and Pharmacy; CRC Press, Boca Raton, Florida, 1987, p.29
[16] Chen CC and Wang CC, J. Sol-Gel Sci. Technol. 2006, 40: 31
[17] Xie XS and Liu Q, Starch 2004, 56:364
[18] Khutoyanskaya OV et al., Macromol. Chem. Phys. 2005, 206: 1497
図1
図2