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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
G06T1/00 400G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017198540
(22)【出願日】2017-10-12
(65)【公開番号】P2019074794
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】FCNT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】畑中 貴浩
【審査官】千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-130102(JP,A)
【文献】特開2008-305028(JP,A)
【文献】特開2005-301658(JP,A)
【文献】特開2005-269644(JP,A)
【文献】特開2005-115513(JP,A)
【文献】特開2002-87175(JP,A)
【文献】特表2005-528680(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037738(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/049997(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1方向を長手方向とし、指紋センサを有し、当該電子機器の側面部に設けられ、前記側面部に対して垂直方向へ移動可能可能である操作部と、
前記指紋センサによる検出結果に基づいて、指紋認証処理と、前記操作部での前記第1方向に沿ったユーザの指の動きに応答する処理とを行う処理装置とを含み、
前記指紋センサのセンシング部は、前記第1方向での前記操作部の中心に対してオフセットして配置される、電子機器。
【請求項2】
表示部を更に含み、
前記センシング部は、前記中心に対して前記第1方向で前記表示部における画面下端に近い側にオフセットして配置され、
前記処理は、前記指紋センサにより検出される前記指の動きに基づく前記表示部における画面制御処理を含む、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記操作部は、前記指紋センサが埋設される樹脂部を含む、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記指紋センサは、チップの形態であり、基板上に実装され、かつ、前記第1方向で前記センシング部がオフセットされる側とは逆側で前記基板上の電極に電気的に接続される、請求項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の側面部に、指紋センサを有する操作部を設け、操作部でのユーザの指の動きによる操作に基づき表示部における画面スクロール機能を実現する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-301658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、操作部の長手方向の長さよりも短いセンシング部を有する指紋センサを用いた場合に、操作部でのユーザの指の動きによる操作に関する操作性を高めることが難しい。かかる操作性を高めるためには、指の動きに対応する方向での操作部の長さをある程度長くし、かつ、操作部における指紋センサの実効領域(即ち指紋センサが機能できるユーザの指の接触領域)も同方向で長くすることが有用となる。この点、操作部の長手方向の長さに一致するサイズのセンシング部を有する指紋センサを設けることは、指紋センサの汎用性やコスト、指紋センサに係る配線スペース確保等の観点から難しい場合がある。操作部の長手方向の長さよりも有意に短いセンシング部を有する指紋センサを用いると、操作部における指紋センサの実効領域が、操作部の一部の領域に限定されてしまい、操作性が悪くなるおそれがある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本発明は、操作部の長手方向の長さよりも短いセンシング部を有する指紋センサを用いた場合でも、操作部でのユーザの指の動きによる操作に関する操作性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、第1方向を長手方向とし、指紋センサを有する操作部と、
前記指紋センサによる検出結果に基づいて、指紋認証処理と、前記操作部での前記第1方向に沿ったユーザの指の動きに応答する処理とを行う処理装置とを含み、
前記指紋センサのセンシング部は、前記第1方向での前記操作部の中心に対してオフセットして配置される、電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本発明によれば、操作部の長手方向の長さよりも短いセンシング部を有する指紋センサを用いた場合でも、操作部でのユーザの指の動きによる操作に関する操作性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施例による電子機器1の外観を概略的に示す2面図(平面図及び側面図)である。
図2】サイドキーを通るXY平面で切断した際の電子機器1の一部の概略的な断面図である。
図3】処理装置により実行される処理の一例を示す概略フローチャートである。
図4】比較例の構成の説明図である。
図5】指がY1側にある状態での比較例の断面図である。
図6】指がY2側にある状態での比較例の断面図である。
図7】指の接触位置とユーザの認識とのずれの説明図である。
図8】指がY1側にある状態での本実施例によるサイドキーの断面図である。
図9】指がY2側にある状態での本実施例によるサイドキーの断面図である。
図10】長さL4が比較的大きい場合の説明図である。
図11】長さL4が比較的大きい場合の説明図である。
図12】比較例の場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施例による電子機器1の外観を概略的に示す2面図(平面図及び側面図)である。図1には、互いに直交する3方向であるX方向、Y方向(第1方向の一例)、及びZ方向が定義されている。以下では、説明上、電子機器1の短手方向を、X方向とし、電子機器1の長手方向を、Y方向とし、電子機器1の厚み方向を、Z方向とする。また、以下では、説明上、Y方向のY1側を、「画面上側(画面下端から遠い側)」とし、Y方向のY2側を、「画面下側(画面下端に近い側)」とする。また、Z方向のZ1側を「上側」とする。また、以下で、機器上面部とは、特に言及しない限り、電子機器1における上側の表面を供する部位を表す。また、機器側面部とは、特に言及しない限り、電子機器1における部位であって、Z方向に垂直な方向を法線とする側の表面を供する部位を表す。機器底面部等についても同様である。
【0011】
電子機器1は、携帯型であるが、固定型であってもよい。携帯型の電子機器1は、スマートフォンや、携帯電話、PDA(personal digital assistant)、タブレットのような携帯型情報端末、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、腕時計型のウェアラブル端末等であってもよい。
【0012】
電子機器1は、筐体10と、天板部材12とを含む。
【0013】
筐体10は、例えば樹脂により形成される。筐体10は、機器側面部と、機器底面部(機器下面部)とを形成する。筐体10は、更に機器上面部の一部(天板部材12の外周部)を形成してもよい。以下、筐体10内とは、機器側面部、機器底面部、及び機器上面部よりも機器中心側の空間である。筐体10内には、処理装置4(図1にて点線で模式的に図示)のような各種電子部品が搭載される。
【0014】
天板部材12は、機器上面部を形成する表面部材である。天板部材12は、例えば液晶パネルユニットや有機EL(ElectroLuminescence)パネルユニット等で用いられる天板部材である。尚、天板部材12は、タッチパネルを一体的に含んでよい。本実施例では、一例として、天板部材12は、ガラス板であり、筐体10内の液晶パネルユニット12b(表示部の一例)の上側を覆う。
【0015】
電子機器1は、各種機能を実現する処理装置4(図1にて点線で模式的に図示)を筐体10内に含む。処理装置4は、コンピュータであり、例えば基板(図示せず)上に実装されるLSI(Large-Scale Integration)などのIC(Integrated Circuit)パッケージにより実現されてもよい。尚、処理装置4は、複数のコンピュータにより協動して実現されてもよい。
【0016】
処理装置4は、後述の指紋センサ42からの指紋画像(指紋センサ42による検出結果の一例)に基づいて、指紋認証処理、及び、サイドキー40でのY方向に沿ったユーザの指の動きに応答する処理を行う。処理装置4の処理の具体例は、図3を参照して後述する。
【0017】
電子機器1は、機器側面部にサイドキー40(操作部の一例)を備える。サイドキー40は、機器側面部に形成される開口101を介して表面401が露出する態様で設けられる(図2も参照)。この際、サイドキー40は、押し込み操作されていない状態では、図1に示すように、機器側面部から僅かに突出してよい。但し、他の実施例では、サイドキー40は、機器側面部と面一になるように設けられてもよい。
【0018】
サイドキー40は、押し込み操作(押圧操作)が可能である。即ち、処理装置4は、X方向(機器側面部に対して垂直な方向)での変位が可能である。サイドキー40のX1側への押し込み操作により実現される機能は、任意であるが、例えば、電子機器1の電源のオン/オフ機能や、音量の増減のような調整機能等であってもよい。尚、変形例では、サイドキー40は、押し込み操作が不能であってよい。即ち、サイドキー40は、機器側面部に固定されてもよい。
【0019】
サイドキー40は、ユーザの指によるY方向のスライド操作(又はなぞり操作、以下、スライド操作で代表する)が可能な表面401を供する。以下、サイドキー40の操作性とは、特に言及しない限り、サイドキー40におけるY方向のスライド操作の操作性を意味する。即ち、サイドキー40の操作性とは、特に言及しない限り、サイドキー40の長手方向でのスライド操作の操作性を意味する。サイドキー40は、操作性を高めるために、Y方向を長手方向とする形態を有する。サイドキー40は、例えば、Y方向の長さが15mm以上である。尚、サイドキー40のそれぞれの短手方向の寸法(電子機器1の厚さ方向の寸法)は、実質的には電子機器1の厚さ等に依存して決まる。
【0020】
サイドキー40は、指紋センサ42を有する。指紋センサ42は、指紋画像を取得する。指紋センサ42は、静電式のような任意の方式であってよい。但し、指紋センサ42は、指紋画像の取得(読み取り)にユーザの指のなぞりを必要するタイプ(即ちスウィープ型)ではない。
【0021】
例えば、指紋センサ42は、サイドキー40の表面401付近のX2側に設けられるICチップの形態であり、ICチップのX2側の表面にセンシング部421(図2参照)として多数の金属電極が配列される。サイドキー40の表面401にユーザの指が置かれた状態で、電流を印加するとセンシング部421の金属電極と指の表面がコンデンサを形成し、指の凹凸に応じた電荷が溜まる。電極と指表面の距離が近いと電荷が比較的多く溜り、距離が遠いと電荷が比較的少し溜まる。その電荷を金属電極ごとに読み出し、例えば8ビット(=256)の明暗階調にA/D変換することで指紋画像が取得される。例えば、256×300=76800個の金属電極が50μm(500dpi)ピッチの間隔で配列される。この場合、指紋の凹凸のピッチはおよそ200μm程度であるため、指紋認証に十分な解像度の指紋画像が得られる。
【0022】
尚、本実施例では、一例として、サイドキー40は、画面を見る姿勢のユーザにとって左側となるX2側に設けられる。従って、ユーザは、左手で電子機器1を把持しながら、左手の親指でサイドキー40に触れることができる。この場合、左手の親指による指紋認証及びスライド操作が可能である。或いは、ユーザは、右手で電子機器1を把持しながら、右手の人差し指等を機器底面部側から回し込んでサイドキー40に触れることができる。この場合、右手の人差し指等による指紋認証及びスライド操作が可能である。但し、変形例では、サイドキー40は、逆側(X1側)に設けられてもよいし、両側にそれぞれ設けられてもよい。
【0023】
図2は、サイドキー40を通るXY平面で切断した際の電子機器1の一部の概略的な断面図である。図2には、Y方向でのサイドキー40の中心を通る中心線O(X方向に延びる中心線O)が示される。尚、図2は概略図であるので図示していないが、サイドキー40は、抜け止めのフランジ部等を備えてもよいし、筐体10との間に防水機構等が設けられてもよい。
【0024】
本実施例では、一例として、サイドキー40は、指紋センサ42を内蔵する。即ち、サイドキー40は、指紋センサ42を一体的に含むセンサパッケージとして形成される。具体的には、サイドキー40における指紋センサ42は、樹脂(例えばエポキシ樹脂)により封止される。図2には、封止用の樹脂部50が示され、樹脂部50には、指紋センサ42が埋設されている。サイドキー40の表面401は、樹脂部50により形成される。また、本実施例では、一例として、樹脂部50は、押し込み操作されていない状態のサイドキー40における機器側面部から露出する部位全体の表面を形成する。但し、機器外部から可視となる樹脂部50の表面(サイドキー40の表面401等)は、意匠のために塗装等されてもよい。
【0025】
本実施例では、一例として、指紋センサ42は、ICチップの形態であり、基板60上に実装される。指紋センサ42は、上述のように多数の金属電極(図示せず)が配列されたセンシング部(アクティブエリア)421を有する。センシング部421は、指紋センサ42のX2側の表面の略全体にわたり延在する。本実施例では、一例として、センシング部421は、Y方向で指紋センサ42の中心に対して中心合わせされる。但し、センシング部421は、X2側の表面にワイヤ64との接続用の電極(図示せず)が配置される関係で、指紋センサ42のY方向の中心よりもY2側に若干オフセットされてもよい。尚、本実施例では、一例として、“指紋センサ42のY方向の長さ(図2のL2参照)”は、センシング部421の同長さと略等しい。換言すると、指紋センサ42のY方向の長さは、実質的に、センシング部421の同長さに応じて決まり、これらの長さの差は僅かである。従って、以下において、指紋センサ42のY方向の長さの説明は、センシング部421の長さの説明として読み替えることもできる。
【0026】
指紋センサ42は、Y方向のY1側で基板60上の電極61に電気的に接続される。電極61との電気的な接続は、例えばワイヤボンディング(ワイヤ64参照)により実現される。尚、基板60は、X1側の表面上の電極62を介して例えばFPC(Flexible Printed Circuit)(図示せず)に電気的に接続され、FPCを介して処理装置4に電気的に接続される。
【0027】
樹脂部50は、例えばモールド成形により形成される。樹脂部50は、図2に示すように、基板60のX2側の表面に接合するとともに、指紋センサ42やワイヤ64を内包する。尚、樹脂部50は、基板60の側面部にも接合する態様で形成されてもよい。
【0028】
本実施例では、Y方向の長さに関して、サイドキー40は、指紋センサ42のセンシング部421よりも長い。即ち、サイドキー40の長さL1は、指紋センサ42の長さL2よりも長い。従って、X方向に視て、指紋センサ42のセンシング部421は、サイドキー40の表面401の全体とは重ならず、一部のみと重なる。
【0029】
また、本実施例では、指紋センサ42のセンシング部421は、Y方向でサイドキー40の中心(中心線O参照)に対してY2側にオフセットして配置される。即ち、Y方向でのセンシング部421の中心は、Y方向でのサイドキー40の中心よりもY2側にオフセット(偏心)される。例えば、指紋センサ42とサイドキー40におけるY方向でY2側の縁部との間の、Y方向の長さを、L3とし、指紋センサ42とサイドキー40におけるY方向でY1側の縁部との間の、Y方向の長さを、L4とする。このとき、L3<L4の関係が成り立つ。これにより、後述するように操作性が向上する。
【0030】
尚、指紋センサ42のセンシング部421は、Z方向については、Z方向でサイドキー40の中心と中心合わせされていてよい。
【0031】
図3は、処理装置4により実行される処理の一例を示す概略フローチャートである。
【0032】
ステップS300では、処理装置4は、指紋センサ42からの信号を取得する。尚、指紋センサ42が指紋画像を取得している場合は、処理装置4は、指紋画像を指紋センサ42からの信号として取得する。
【0033】
ステップS302では、処理装置4は、ステップS300で得た信号に基づいて、サイドキー40に指が触れたか否かを判定する。図3では、一例として、処理装置4は、指紋センサ42が指紋画像を取得した場合に、サイドキー40に指が触れたと判定する。判定結果が“YES”の場合は、ステップS304に進み、それ以外の場合は、ステップS324に進む。
【0034】
ステップS304では、処理装置4は、画面フラグF1が“0”であるか否かを判定する。画面フラグF1が“0”であることは、画面がオフ状態であることを意味する。画面フラグF1の初期値(電子機器1の電源オン時にセットされる値)は“1”である。判定結果が“YES”の場合は、ステップS306に進み、それ以外の場合は、ステップS310に進む。
【0035】
ステップS306では、処理装置4は、サイドキー40の押し込み操作があったか否かを判定する。サイドキー40の押し込み操作は、サイドキー40のX1側に設けられるスイッチ(図示せず)の状態に基づいて判定できる。判定結果が“YES”の場合は、ステップS308に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理はそのまま終了する。
【0036】
ステップS308では、処理装置4は、画面をオン状態に移行させ、画面フラグF1を“1”にセットする。
【0037】
ステップS310では、処理装置4は、指紋認証成功フラグF2が“0”であるか否かを判定する。指紋認証成功モードフラグF2が“0”であることは、指紋認証が成功していない状態であることを意味する。指紋認証成功モードフラグF2の初期値(電子機器1の電源オン時の値)は“0”である。判定結果が“YES”の場合は、ステップS312に進み、それ以外の場合は、ステップS318に進む。
【0038】
ステップS312では、処理装置4は、ステップS300で得た指紋画像に基づいて、指紋認証処理を実行する。指紋認証処理は、ステップS300で得た指紋画像と、処理装置4の記憶装置(図示せず)内に予め登録した指紋画像との整合性をチェックすることで実現される。指紋認証処理の詳細なアルゴリズムは、パターンマッチングや特徴点データのみの比較など、任意である。
【0039】
ステップS314では、処理装置4は、指紋認証が成功したか否かを判定する。即ち、処理装置4は、ステップS300で得た指紋画像と、予め登録した指紋画像とが整合したか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合は、ステップS316に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理はそのまま終了する。
【0040】
ステップS316では、処理装置4は、指紋認証成功フラグF2を“1”にセットする。指紋認証成功モードフラグF2が“1”であることは、指紋認証が成功し、画面ロックが解除されている状態であることを意味する。尚、この際、処理装置4は、ステップS300で得た指紋画像を初期画像(前回画像)として記憶してもよい。
【0041】
ステップS318では、処理装置4は、ステップS300で得た指紋画像(今回画像)を記憶する。
【0042】
ステップS320では、処理装置4は、Y方向での指の移動方向及び移動量を算出する。指の移動方向及び移動量は、例えば指紋画像の前回画像と今回画像とに基づいて導出できる。具体的には、時間的に連続する指紋画像間のずれ(指の位置のずれ)を算出することで指の移動方向及び移動量を導出できる。
【0043】
ステップS322では、処理装置4は、ステップS320で得た移動方向及び移動量に基づいて、画面制御処理を行う。画面制御処理は、例えば、画面内の画像のスクロール処理、画面の遷移処理、及び、画面内の画像の拡大/縮小処理の少なくともいずれか1つである。画面内の画像は、実行中のアプリケーションに依存するが、例えば地図画像である。
【0044】
ステップS324では、処理装置4は、画面オフ条件が成立したか否かを判定する。画面オフ条件は、任意であるが、例えば無操作状態が所定時間以上継続した場合に成立する。判定結果が“YES”の場合は、ステップS326に進み、それ以外の場合は、今回周期の処理はそのまま終了する。
【0045】
ステップS326では、処理装置4は、画面をオフ状態に移行させ、画面フラグF1を“0”にリセットし、かつ、指紋認証成功フラグF2を“0”にリセットする。
【0046】
図3に示す処理によれば、サイドキー40におけるY方向に沿ったユーザの指の動きに応答する処理(図3では画面制御処理)が実現される。また、サイドキー40の押し込み操作に応答する処理が実現される。即ち、サイドキー40の押し込み操作をトリガとして、画面のオン状態への遷移が実現される。
【0047】
尚、図3では、一例として、指紋センサ42が画面オフ状態でも機能するが、これに限られない。即ち、指紋センサ42は、画面がオン状態になった際に(ステップS308参照)、起動してもよい。
【0048】
次に、図4乃至図9を参照して、本実施例の効果について説明する。
【0049】
図4乃至図6は、比較例の説明図であり、図4は、平面図であり、図5及び図6は、図4のラインIV-IVに沿った断面図である。図5では、指がY1側にある状態が示され、図6では、指がY2側にある状態が示されている。図7は、指の接触位置とユーザの認識とのずれの説明図であり、操作面600における指の状態を示す側面図である。図8及び図9は、本実施例によるサイドキー40の断面図であり、図8では、指がY1側にある状態が示され、図9では、指がY2側にある状態が示されている。尚、図8及び図9では、ワイヤ64等の図示は省略されている。
【0050】
ここでは、一般的な使用態様として、ユーザは、左手で電子機器1を把持しながら、左手の親指でサイドキー40に触れながらスライド操作を行う場合を想定する。この場合、親指の向きはY方向に略平行となり、親指の先側は、Y方向でY1側となる。以下、指とは、特に言及しない限り、親指を表す。
【0051】
比較例によるサイドキー40Aでは、本実施例とは異なり、指紋センサ42(及びそのセンシング部421、以下同じ)は、Y方向でサイドキー40の中心に中心合わせされる。この場合、図5に示す指の位置では、指紋センサ42は、指紋画像を取得できるが、図6に示す指の位置では、指紋センサ42は、指紋画像を取得できない。図6に示す指の位置では、指紋センサ42のセンシング部421よりも指がY2側に位置するためである。
【0052】
従って、比較例では、サイドキー40AのY方向の一部に指紋センサ42の実効領域(指紋センサ42が機能できるユーザの指の接触領域)が一部に限定されてしまう。具体的には、サイドキー40AのY方向のY2側の端部に、指紋センサ42の実効領域が形成されず、サイドキー40AのY方向のY2側の端部が不感領域となる。このため、比較例では、サイドキー40AのY方向の長さに対して、スライド操作が可能なストロークを最大化できず、操作性が悪くなる。例えば、ユーザが比較的スライド操作量の大きい操作を行う際に、2回以上スライド操作を繰り返すなどの負担が生じるおそれがある。
【0053】
ここで、図7に示すように、ユーザの一般的な傾向として、操作面600におけるユーザが指で触れていると認識する範囲Q1と、操作面600における指が実際に触れている範囲Q2との間には、有意なずれ(乖離)がある。具体的には、ユーザは、指が実際に触れている範囲Q2よりも、指先の方で触れていると認識する傾向がある。ユーザは、図6に示す指の位置では、指が指紋センサ42に触れていると認識する傾向となる。
【0054】
従って、比較例の場合、サイドキー40AのY方向のY2側の端部が不感領域となることで、違和感が生じ、操作性が悪くなる。具体的には、図6に示す指の位置では、ユーザは、指で触れていると認識する範囲(図7のQ1参照)がサイドキー40A上であるので、図6に示す指の位置でもスライド操作が可能であることを期待する傾向となる。しかしながら、実際は、上述のように、図6に示す指の位置は不感領域内であるので、図6に示す指の位置ではスライド操作が不能である。この結果、ユーザは、違和感を覚え、操作性が悪くなる。また、ユーザは、サイドキー40Aの画面上側に指がある場合は指紋センサ42が反応するが、サイドキー40Aの画面下側に指がある場合は指紋センサ42が反応しないように感じ、指紋センサ42の反応がサイドキー40AのY方向の中心に関して対称ではないような違和感を覚えうる。尚、サイドキー40Aと指紋センサ42(センシング部421)のY方向の長さが、より大きくなれば、この違和感はより大きくなる。
【0055】
これに対して、本実施例によるサイドキー40では、上述のように、指紋センサ42のセンシング部421は、Y方向でサイドキー40の中心(中心線O参照)に対してY2側にオフセットして配置される。この場合、図9に示す指の位置でも、指紋センサ42は、指紋画像を取得できる。これは、図9に示す指の位置でも、X方向に視て指の先の部分が指紋センサ42のセンシング部421に依然として重なる位置関係となるためである。また、図8に示す指の位置でも、指紋センサ42は、指紋画像を取得できる。これは、図8に示す指の位置でも、X方向に視て指の腹の部分が指紋センサ42のセンシング部421に重なる位置関係となるためである。このため、本実施例では、サイドキー40のY方向の長さに対して、スライド操作が可能なストロークを最大化でき、比較例に比べて操作性が良好である。また、指紋センサ42の反応がサイドキー40のY方向の中心に関して略対称又は対称となるので、上述した比較例で生じる違和感を低減又は無くすことができる。
【0056】
このようにして本実施例によれば、サイドキー40の表面401において、サイドキー40のY方向の略全体にわたり、指紋センサ42の実効領域(即ち指紋センサ42が指紋画像を取得できるユーザの指の接触領域)を形成できる。即ち、本実施例によれば、サイドキー40の長手方向(Y方向)の長さL1よりも有意に短い長さL2の指紋センサを用いても、サイドキー40のY方向の略全体にわたり、指紋センサ42の実効領域を形成できる。これにより、上述した比較例で生じる違和感を低減又は無くし、操作性を高めることができる。
【0057】
換言すると、本実施例によれば、操作性を悪化させることなく、指紋センサ42のY方向の長さをサイドキー40のY方向の長さよりも短くできるので、使用できる指紋センサ42のサイズの自由度を高めることができる。
【0058】
また、本実施例によれば、指紋センサ42のセンシング部421がY方向でサイドキー40の中心に対してY2側にオフセットして配置されるので、指紋センサ42のY1側で、指紋センサ42に係る配線スペースを確保することが容易となる。尚、指紋センサ42に係る配線スペースとは、例えば、ワイヤ64(図2参照)の配線スペースやワイヤボンディングの作業スペースである。即ち、本実施例によれば、指紋センサ42に係る配線スペースを確保するために指紋センサ42のY方向の長さをサイドキー40のY方向の長さよりも短くしても、Y方向の長さが指紋センサ42とサイドキー40とで同じ構成の場合と同等の操作性を維持できる。これは、本実施例のように、指紋センサ42のY1側で、指紋センサ42に係る配線スペースを確保することとすれば、指紋センサ42のY1側で不感領域が生じ難いためである。
【0059】
尚、本実施例では、上述のように、指紋センサ42のセンシング部421がオフセットされる側(電子機器1の場合は、Y2側)とは反対側に指先が来る態様のスライド操作に対して、操作性が向上する。上述した電子機器1の場合は、センシング部421がオフセットされる側は、画面下側に対応するので、通常のスライド操作としては、画面上側に指先が来る態様のスライド操作が想定される。但し、画面上側が電子機器1の向きに応じて変化する構成では、“画面上側”が変化することから、指紋センサ42のセンシング部421がオフセットされる側が上述した実施例とは逆であることも可能である。この場合、サイドキー40は、例えば電子機器1のY方向の中心に配置されてよい。
【0060】
次に、図2を再び参照しつつ、図10を参照して、各種長さL1、L2、L3、及びL4の関係等について説明する。
【0061】
図10及び図11は、長さL4が比較的大きい場合の不都合の説明図であり、サイドキー40の平面図(X方向に視たときの平面図)である。図12は、比較例の場合の説明図である。図10乃至図12には、ユーザが、右手で電子機器1を把持し右手の人差し指で指紋センサ42を触れる際の、人差し指の接触範囲Q3が模式的に示されている。この場合、X方向に視て人差し指の向きはY方向に略直角となる。図10は、人差し指の接触範囲Q3がY2側である場合を示し、図11は、人差し指の接触範囲Q3がY1側である場合を示す。
【0062】
ところで、指紋認証処理(画面ロックを解除させる操作)だけの観点からは、比較例(図4等参照)で示したような指紋センサ42の位置(センター位置)の方が、本実施例よりも有利である。これは、例えば右手の人差し指で指紋センサ42を触れる際の接触範囲Q3はY方向に短いため、図11に示す接触範囲Q3の場合、X方向に視て接触範囲Q3のうちの指紋センサ42のセンシング部421に重なる部分が小さくなる傾向があるためである。
【0063】
従って、本実施例において、長さL4が比較的大きくなると、右手の人差し指での指紋認証処理が難しくなるという不都合が生じうる。
【0064】
本実施例において、このような不都合を低減又は防止する観点から、長さL4は、好ましくは、指紋センサ42に係る配線スペース確保の観点と樹脂部50の成形条件等から決まる最小限の値である。例えば、長さL4は、ユーザが指で触れていると認識する範囲(図7のQ1参照)の長さ(Y方向での長さ)に対応するように適合されてもよい。この場合、長さL4は、好ましくは、親指の平均的なサイズを考慮して、10mm以下である。或いは、長さL4は、Y方向での接触範囲Q3の長さに対応するように適合されてもよい。この場合、長さL4は、好ましくは、人指し指の平均的なサイズ(幅)を考慮して、5mm以下である。
【0065】
ここで、長さL1は、指でなぞるスペースを確保してサイドキー40の操作性を高める観点からは、ある程度長いことが好ましく、例えば13mm以上かつ20mm以下の範囲内である。これは、スライド操作のストロークを確保する観点から決まる。長さL3は、例えば樹脂部50の成形条件等から決まる最小値であり、例えば0.5mm~2mmの範囲内である。このようにして、長さL1及び長さL3が決まると、上述した長さL4の最適値に依存して長さL2の最適値は決まる。
【0066】
尚、長さL2が最適値である指紋センサ42を確保することは、汎用性やコスト等の観点から難しい場合がある。従って、指紋センサ42の長さL2は、最適値と一致しなくてもよい。この場合も、L3<L4の関係である限り、同じサイズの指紋センサ42を用いた比較例(図4等参照)に比べて、依然として指紋センサ42の実効領域を大きくできる(即ち不感領域を小さくできる)。
【0067】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0068】
例えば、上述した実施例では、サイドキー40の表面401は、平面状であるが(即ちYZ平面に平行であるが)、YZ平面に対して僅かな傾斜部を有してもよい。
【0069】
また、上述した実施例では、サイドキー40は、機器側面部に設けられるが、機器底面部や、機器上面部(例えば天板部材12まわりの額縁領域)に設けられてもよい。
【0070】
また、上述した実施例では、電子機器1は、表示部(液晶パネルユニット12b)を備えているが、表示部を備えていなくてもよい。例えば、サイドキー40は、車載の電子機器に組み込まれてもよい。例えば、サイドキー40は、車両のコンソールボックスやステアリングホイールに設けられてもよい。コンソールボックスに設けられる場合、サイドキー40は、車両前後方向が長手方向になる向きで配置されてよい。この場合、サイドキー40の長手方向の中心に対してユーザ側(車両前後方向で後側)にセンシング部421がオフセットして配置されれば、同様の効果が得られる。また、ステアリングホイールに設けられる場合、サイドキー40は、ステアリングホイールの中立位置でユーザから視てステアリングホイールの12時位置と6時位置とを結ぶ方向が長手方向になる向きで配置されてよい。この場合、サイドキー40の長手方向の中心に対して6時位置に近い側にセンシング部421がオフセットして配置されれば、ステアリングホイールを握る手の指(例えば親指)による6時位置側からの操作性に関して同様の効果が得られる。この場合、処理装置4は、車載のコンピュータにより実現されてよく、表示部は、車載の表示部(例えばマルチメディア系の表示装置やヘッドアップディスプレイなど)により実現されてもよい。また、サイドキー40のスライド操作により実現される機能は、車載オーディオ装置の音量調整や、車載空調装置の温度調整等であってよい。この場合、サイドキー40及び車載のコンピュータは、車載の表示部とは無関係に動作できる。
【0071】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
[付記1]
第1方向を長手方向とし、指紋センサを有する操作部と、
前記指紋センサによる検出結果に基づいて、指紋認証処理と、前記操作部での前記第1方向に沿ったユーザの指の動きに応答する処理とを行う処理装置とを含み、
前記指紋センサのセンシング部は、前記第1方向での前記操作部の中心に対してオフセットして配置される、電子機器。
[付記2]
表示部を更に含み、
前記センシング部は、前記中心に対して前記第1方向で前記表示部における画面下端に近い側にオフセットして配置され、
前記処理は、前記指紋センサにより検出される前記指の動きに基づく前記表示部における画面制御処理を含む、付記1に記載の電子機器。
[付記3]
前記画面制御処理は、画面内の画像のスクロール処理、画面の遷移処理、及び、画面内の画像の拡大/縮小処理の少なくともいずれか一方を含む、付記2に記載の電子機器。
[付記4]
前記操作部は、当該電子機器の側面部に設けられる、付記2又は3に記載の電子機器。
[付記5]
前記操作部は、当該電子機器の側面部に設けられ、前記側面部に対して垂直な方向での変位が可能である、付記1~3のうちのいずれか1項に記載の電子機器。
[付記6]
前記処理装置は、前記操作部の前記変位に応答する処理を更に行う、付記5に記載の電子機器。
[付記7]
前記操作部は、前記指紋センサが埋設される樹脂部を含む、付記1~6のうちのいずれか1項に記載の電子機器。
[付記8]
前記指紋センサは、チップの形態であり、基板上に実装され、かつ、前記第1方向で前記センシング部がオフセットされる側とは逆側で前記基板上の電極に電気的に接続される、付記7に記載の電子機器。
[付記9]
前記指紋センサと、前記操作部における前記第1方向の縁部との間は、前記第1方向で10mm以下である、付記1~8のうちのいずれか1項に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0072】
1 電子機器
4 処理装置
10 筐体
12 天板部材
12b 液晶パネルユニット
40 サイドキー
42 指紋センサ
50 樹脂部
60 基板
61 電極
62 電極
64 ワイヤ
101 開口
401 表面
421 センシング部
600 操作面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12