(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】タンク用ジャッキサポート及びタンクの構築方法
(51)【国際特許分類】
E04H 7/18 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
E04H7/18 301Z
(21)【出願番号】P 2017205220
(22)【出願日】2017-10-24
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】中村 英晃
(72)【発明者】
【氏名】小松 駿也
(72)【発明者】
【氏名】池上 純矢
(72)【発明者】
【氏名】藤野 拓郎
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053183(JP,A)
【文献】実開昭57-91232(JP,U)
【文献】特開昭59-41571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 7/00 - 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁に設けられ、ジャッキアップ装置を支持するタンク用ジャッキサポートであって、
前記側壁に沿って配設されたベースプレートと、
前記ベースプレートから張り出した張り出し部と、を有し、
前記張り出し部は、
前記ジャッキアップ装置を支持する支持部と、
前記支持部と前記ベースプレートとの間を接続する複数の脚部と、を有
し、
前記複数の脚部は、前記支持部から前記ベースプレートに向かうに従って互いの間隔が漸次大きくなるように一対で設けられている、
ことを特徴とするタンク用ジャッキサポート。
【請求項2】
前記ジャッキアップ装置の高さ方向の位置を位置決めすると共に、前記支持部の上方で、前記ジャッキアップ装置が回動可能に掛止する掛止部を有する、ことを特徴とする
請求項1に記載のタンク用ジャッキサポート。
【請求項3】
前記ジャッキアップ装置は、
ジャッキ本体と、
前記ジャッキ本体の作動によりストロークするジャッキロッドと、を有し、
前記ジャッキロッドは、座金を介して吊架台に連結され、
前記支持部は、前記吊架台を介して前記ジャッキアップ装置を支持する、ことを特徴とする
請求項1または2のいずれか一項に記載のタンク用ジャッキサポート。
【請求項4】
コンクリート製の外槽の側壁を構築する外槽構築工程と、
前記外槽の側壁にジャッキサポートを設置し、前記ジャッキサポートにジャッキアップ装置を支持させ、前記ジャッキアップ装置による揚体の上昇と、前記上昇した揚体の下側への内槽側板の溶接と、を交互に繰り返して内槽を構築する内槽構築工程と、を有するタンクの構築方法であって、
前記ジャッキサポートとして、
請求項1~3のいずれか一項に記載のタンク用ジャッキサポートを使用する、ことを特徴とするタンクの構築方法。
【請求項5】
前記内槽構築工程は、
前記ジャッキアップ装置の支持位置を上方に変更する支持位置変更工程と、
前記支持位置変更工程の後、前記ジャッキアップ装置を支持していた前記ジャッキサポートの張り出し部を除去する張り出し部除去工程と、を有する、ことを特徴とする
請求項4に記載のタンクの構築方法。
【請求項6】
前記張り出し部除去工程では、前記複数の脚部を切断する、ことを特徴とする
請求項5に記載のタンクの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク用ジャッキサポート及びタンクの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内槽と外槽とを有する二重殻構造のタンクは、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の低温液体の貯蔵に用いられている。下記特許文献1には、金属製の内槽とコンクリート製の外槽とを有する円筒型タンクの構築方法が開示されている。この円筒型タンクの構築方法は、円筒型タンクの工期の短縮を図るため、金属製の内槽とコンクリート製の外槽とを同時に施工している。
【0003】
具体的には、基礎版上で外槽の側壁を内槽の側壁に先行して組み上げつつ、組み上げ途中の外槽の側壁にジャッキアップ装置を据え付け、このジャッキアップ装置により内槽を構成する揚体(屋根部、ナックル部、及び内槽側板の少なくとも一つを含む)を上昇させ、その揚体の下側に内槽側板を順々に取り付けることで、金属製の内槽とコンクリート製の外槽との同時施工を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来手法では、外槽の側壁にジャッキサポートを設置し、当該ジャッキサポートにジャッキアップ装置を支持させている。このようなタンク用ジャッキサポートは、側壁に沿って配置されるベースプレートと、ベースプレートから張り出した張り出し部と、を有する。ベースプレートには、アンカーが接続され、張り出し部は、ベースプレートによって片持ち支持された状態でジャッキアップ装置を支持する。張り出し部にジャッキアップ装置の荷重が加わると、モーメントが作用し、アンカーボルトに引抜力が作用する。この際、張り出し部の根元部には、モーメントの作用により大きな負荷がかかるため、厚みを確保する等して強度を高めることが望まれる。
一方で、上記従来手法では、ジャッキロッドのストローク分、揚体をジャッキアップしたら、吊側のジャッキポイント(支持位置)を順次上方に盛り替えていく。この際、当該張り出し部が揚体と干渉する虞があるため、当該張り出し部を、例えばガス切断機等を用いて撤去するが、強度を高めた張り出し部の撤去は容易ではなく、この張り出し部の撤去に時間を要していた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ジャッキアップ装置を支持する張り出し部の強度を高めつつ、当該張り出し部の撤去に要していた時間を削減し、工期のさらなる短縮を図ることができるタンク用ジャッキサポート及びタンクの構築方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、側壁に設けられ、ジャッキアップ装置を支持するタンク用ジャッキサポートであって、前記側壁に沿って配設されたベースプレートと、前記ベースプレートから張り出した張り出し部と、を有し、前記張り出し部は、前記ジャッキアップ装置を支持する支持部と、前記支持部と前記ベースプレートとの間を接続する複数の脚部と、を有する、という構成を採用する。
【0008】
また、本発明においては、前記複数の脚部は、前記支持部から前記ベースプレートに向かうに従って互いの間隔が漸次大きくなるように一対で設けられている、という構成を採用する。
【0009】
また、本発明においては、前記ジャッキアップ装置の高さ方向の位置を位置決めすると共に、前記支持部よりも上方の位置で、前記ジャッキアップ装置を回動自在に掛止する掛止部を有する、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、前記ジャッキアップ装置は、ジャッキ本体と、前記ジャッキ本体の作動によりストロークするジャッキロッドと、を有し、前記ジャッキロッドは、座金を介して吊架台に連結され、前記支持部は、前記吊架台を介して前記ジャッキアップ装置を支持する、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、コンクリート製の外槽の側壁を構築する外槽構築工程と、前記外槽の側壁にジャッキサポートを設置し、前記ジャッキサポートにジャッキアップ装置を支持させ、前記ジャッキアップ装置による揚体の上昇と、前記上昇した揚体の下側への内槽側板の溶接と、を交互に繰り返して内槽を構築する内槽構築工程と、を有するタンクの構築方法であって、前記ジャッキサポートとして、先に記載のタンク用ジャッキサポートを使用する、という手法を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記内槽構築工程は、前記ジャッキアップ装置の支持位置を上方に変更する支持位置変更工程と、前記支持位置変更工程の後、前記ジャッキアップ装置を支持していた前記ジャッキサポートの張り出し部を除去する張り出し部除去工程と、を有する、という手法を採用する。
【0013】
また、本発明においては、前記張り出し部除去工程では、前記複数の脚部を切断する、という手法を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベースプレートから張り出した張り出し部において、ジャッキアップ装置を支持する支持部が、複数の脚部を介してベースプレートに接続されるため、張り出し部の根元部にかかる負荷を複数の脚部に分散させることができる。このため、複数の脚部の一つ一つの厚みを大きく確保しなくても張り出し部の強度を高めることができ、また、これら脚部を切断すれば張り出し部の撤去も容易に行うことができる。
したがって、本発明では、ジャッキアップ装置を支持する張り出し部の強度を高めつつ、張り出し部の撤去に要していた時間を削減し、工期のさらなる短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態における構築方法の第1工程を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態における構築方法の第2工程を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態における構築方法の第3工程を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態における構築方法の第4工程を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態における構築方法の第5工程を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態における中間ジャッキサポートと吊側架台との取り合いを示す側面図である。
【
図10】
図6に示す吊側架台を取り外した状態の中間ジャッキサポートを示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態における中間ジャッキサポートの作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の側板及びタンクの構築方法について図面を参照して説明する。以下の説明では、LNGを貯蔵する地上式のPC(プレストレスコンクリート)二重殻貯槽の構築方法を例示する。なお、以下の図面において、説明の便宜上、いくつかの部分が拡大され又は省略されており、図面に表されている各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における構築方法の第1工程を示す説明図である。
図2は、本発明の実施形態における構築方法の第2工程を示す説明図である。
本手法では、先ず、
図1に示すように、略円板状の基礎版1を構築する。基礎版1の外周縁部には、内槽アンカーストラップ4を埋設する。また、基礎版1の外周縁部には、外槽2を構築する(外槽構築工程)。この外槽2は、内壁面2aに複数の外槽側板3(側板)が配設されてなるPC壁である。
【0018】
外槽2は、基礎版1上に外槽側板3を組み上げつつ、その外槽側板3を内型枠としてコンクリート5を打設していくことにより構築される。外槽側板3は、鋼製ライナーであってコンクリート型枠を兼ねており、足場6bを設置しつつ外槽側板3の組み上げに追従してコンクリート5を打設することにより、外槽2を下から順に組み上げていく。外槽側板3の組み上げは、タンク周方向において複数の外槽側板3を円筒状に接合し、これを一段ずつ積層することで行われる。外槽側板3を一段組み上げたら、この外槽側板3を用いたコンクリート5の打設をし、これを繰り返し行うことにより、外槽2を組み上げていく。
【0019】
本手法では、このような外槽2の組み上げと並行して、基礎版1上に底部ライナー6を敷設する。次に、基礎版1の中央部に屋根架台7を組み立てる。また、外槽2の基端部に内槽側板9等を取り込むための工事口8を形成する。また、外槽2の基端部の内側に沿って、内槽側板組立用の門型架台10を複数設置する。門型架台10は、内槽側板9が複数組み合わされてなる円筒状の内槽が基礎版1上に最終的に下ろされるべき領域であるアニュラー領域Xを跨ぐように設置する。
【0020】
次に、門型架台10の下に、パーライトコンクリートブロックや構造用軽量コンクリートブロック等の保冷構造体12を仮置きする。門型架台10の下では、保冷構造体12によるアニュラー部13(
図2参照)の保冷工事を行う。アニュラー部13の保冷工事は、例えば、底部冷熱抵抗緩和材の上にパーライトコンクリートブロック、構造用軽量コンクリートブロックを組み立て、その上にアニュラープレートを取り付けることにより行う。
【0021】
アニュラー部13の保冷工事が完了したら、アニュラー部13よりもタンク内側に配置されていた脚部10aをアニュラー部13上に挿げ替える(
図2参照)。このような挿げ替えによって、アニュラー部13よりもタンク内側には干渉物がなくなるため、基礎版1上の中央部の保冷工事を行うことができる。中央部の保冷工事では、底部冷熱抵抗緩和材39の上に泡ガラス40を載置する。そして、その上に不図示のパーライトコンクリートブロックと不図示の内槽底板を順に重ねて敷設する。
【0022】
また、本手法では、上記保冷工事と並行して、
図1に示すように、外槽2にジャッキアップ装置19を複数台設置する。先ず、外槽2の中段部に、吊側架台70(吊架台)を設置する。吊側架台70は、外槽2の内壁面2aに設けた中間ジャッキサポート100(タンク用ジャッキサポート)に着脱可能に締結固定する。また、門型架台10上で組んでいたナックルプレート11に、被吊側架台80を設置する。被吊側架台80には、ジャッキアップ装置19のジャッキ本体19aが連結される。また、吊側架台70には、ジャッキ本体19aの作動よりストロークするジャッキロッド19bが連結される。
【0023】
このようにジャッキアップ装置19を設置したら、ナックルプレート11を吊り上げ、そのジャッキアップによりできた下部空間に、内槽側板9を搬入する。内槽側板9は、所定の溶接位置まで搬送し、隣り合う内槽側板9同士を溶接し、全体で円筒状になるように周方向に繋ぎ合わせる。次に、この内槽側板9の上端部を、ナックルプレート11の下端部に組み付ける。また、ナックルプレート11の上端部は、屋根架台7上で組んでいた内槽屋根14(タンクの屋根)の外周縁部に組み付ける。
【0024】
次に、屋根架台7を除去し、ジャッキアップ装置19によって、内槽屋根14、ナックルプレート11及び内槽側板9を含む揚体60を吊り上げる。ジャッキアップ装置19により内槽側板9の上下幅相当分だけ揚体60を上昇させたら、そのジャッキアップにより内槽側板9の下部にできた空間に、次の内槽側板9を搬入する。搬入した内槽側板9をタンク周方向に繋ぎ合わせたら、その上端と、揚体60の下端(内槽側板9)とを溶接する。このように、本手法では、ジャッキアップ装置19による内槽側板9の上昇と、上昇した内槽側板9の下側への次の内槽側板9の溶接と、を交互に繰り返す(内槽構築工程)。
【0025】
また、この工程中、
図2に示すように、内槽屋根14上で外槽屋根22(タンクの屋根)を組み立てる。外槽屋根22は、内槽屋根14と不図示の連結材で連結され、内槽屋根14と一体的に組み立てられる。また、ジャッキロッド19bのストローク分、揚体60をジャッキアップしたら、吊側のジャッキポイント(支持位置)を順次上方に盛り替える(支持位置変更工程)。吊側のジャッキポイントは、最終的に、外槽2の頂部2Aに変更する。外槽2の頂部2Aには、吊側架台70を連結可能な頂部ジャッキサポート90を設置する。このように、吊側のジャッキポイントを盛り替えつつ、ジャッキアップ装置19による内槽側板9の上昇と、上昇した内槽側板9の下側への次の内槽側板9の溶接と、を交互に繰り返し、内槽側板9の最下段を除く第1の構造物9aを組み立てる。
【0026】
図3は、本発明の実施形態における構築方法の第3工程を示す説明図である。
本手法では、
図3に示すように、内槽側板9の最下段を、第1の構造物9aとは別にアニュラー部13上に組み立てる。門型架台10の解体後、内槽側板9の最下段をアニュラー部13上に載置したら、隣り合う内槽側板9同士を溶接し、全体で円筒状になるように周方向に繋ぎ合わせ、第2の構造物9bを組み立てる。第2の構造物9bを組み立てたら、基礎版1に設置された内槽アンカーストラップ4を取り付ける。また、外槽2の外部には、昇降階段23を設ける。また、外槽2の内側に、ポンプバレル25を搬入する。
【0027】
図4は、本発明の実施形態における構築方法の第4工程を示す説明図である。
次に、本手法では、
図4に示すように、第1の構造物9aをジャッキダウンし、第1の構造物9aの下端部を第2の構造物9bの上端部に降ろし、第1の構造物9aと第2の構造物9bとを溶接し、内槽30を組み立てる。本手法では、ジャッキアップ装置19による内槽30の組み立てから、内槽30の最下段の組み立てを分離し、内槽30の最下段である第2の構造物9bのアニュラー部13上への固定を前倒しで行っている。したがって、本手法では、例えば1カ月程度かかる内槽30のアニュラー部13上への固定がクリティカルパスとならず、従来手法よりも工期の短縮化を図ることができる。
【0028】
図5は、本発明の実施形態における構築方法の第5工程を示す説明図である。
内槽30が完成したら、外槽屋根22は、不図示の連結材による内槽屋根14との連結を解除し、最上段まで組み立てられた外槽2の上端部に据え付ける。また、ジャッキアップ装置19を撤去する。また、外槽屋根22に屋根階段24を設ける。また、ポンプバレル25を設置する。
その後、外槽2の緊張工事を行う。そして、工事口8の閉鎖後、水張りをして耐圧・気密試験を実施する。最後に、内槽30と外槽2との間の内外槽間15に保冷材44を配置し、また、内槽屋根14と外槽屋根22の間にも保冷材44を配置して保冷工事を行い(保冷材配置工程)、塗装工事、配管保冷工事を経てLNGタンク50が構築される。
【0029】
続いて、上述のLNGタンク50の構築方法において使用する中間ジャッキサポート100の構成について、
図6~
図10を参照して詳しく説明する。
【0030】
図6は、本発明の実施形態における中間ジャッキサポート100と吊側架台70との取り合いを示す側面図である。
図7は、
図6に示す矢視A図である。
図8は、
図6に示す矢視B図である。
図9は、
図6に示す矢視C図である。
図10は、
図6に示す吊側架台70を取り外した状態の中間ジャッキサポート100を示す斜視図である。
中間ジャッキサポート100は、
図6に示すように、外槽2に設けられ、ジャッキアップ装置19を支持する。
【0031】
中間ジャッキサポート100は、外槽2の内壁面2aに沿って配設されたベースプレート110と、ベースプレート110からタンク内側に向かって水平に張り出した張り出し部120と、を有する。ベースプレート110は、矩形板状に形成された埋込金物であり、外槽側板3の側板本体3aに形成された矩形状の開口部3a1に接合されている。ベースプレート110は、ジャッキアップ装置19から受ける荷重に耐え得るべく、側板本体3aよりも厚く、例えば3倍程度の厚みで形成されている。
【0032】
ベースプレート110のコンクリート5に接する裏面110bには、ナット113が接合されている。ナット113には、アンカーボルト111(アンカー)が接続されている。アンカーボルト111は、外槽2のコンクリート5に対して垂直(水平)に埋め込まれている。一方、ベースプレート110の表面110aには、張り出し部120が設けられている。張り出し部120は、アンカーボルト111が接続されたベースプレート110によって片持ち支持されている。
【0033】
張り出し部120は、ジャッキアップ装置19を支持する支持部121と、支持部121とベースプレート110との間を接続する複数の脚部122(
図8及び
図10参照)と、を有する。支持部121は、
図6に示すように、吊側架台70を介してジャッキアップ装置19を支持する構成となっている。吊側架台70には、ジャッキアップ装置19のジャッキロッド19bが座金20を介して連結されている。
【0034】
支持部121は、
図10に示すように、長方形の板部材から形成され、その短辺がベースプレート110の表面110aに対する垂直方向(前後方向)に延び、その長辺がベースプレート110の表面110aに平行な鉛直方向(上下方向)に延びている。この支持部121には、
図6に示す取付ボルト101が挿通可能な取付孔121aが形成されている。取付孔121aは、支持部121の長手方向(上下方向)に間隔をあけて複数設けられている。
【0035】
複数の脚部122は、
図8及び
図10に示すように、支持部121からベースプレート110に向かうに従って互いの間隔が漸次大きくなるように一対で設けられている。一対の脚部122は、支持部121と同様に長方形の板部材から形成されており、その短辺がベースプレート110の表面110aの垂直方向に対して斜めに傾いている。本実施形態の張り出し部120は、
図8に示す平面視で、Y字状になっている。
【0036】
具体的には、一対の脚部122のうち、一方の脚部122は、その一方の長辺が接合部123を介して支持部121の一方の板面に接合され、その他方の長辺が接合部124を介してベースプレート110の表面110aに接合されている。また、他方の脚部122は、その一方の長辺が接合部123を介して支持部121の他方の板面に接合され、その他方の長辺が接合部124を介してベースプレート110の表面110aに接合されている。
【0037】
上記構成の張り出し部120は、ベースプレート110の表面110aに沿う水平方向(左右方向)において間隔をあけて一対で設けられている。一対の張り出し部120には、取付ボルト101を介して吊側架台70が着脱可能に取り付けられる。吊側架台70は、支持部121に取り付けられるフレーム部71と、フレーム部71に支持された台座部72と、を有する。なお、本実施形態の吊側架台70は、座金20を連結した状態では一体ものであるが、座金20との連結を解除すれば、左右に分割できる構成となっている。
【0038】
フレーム部71は、取付ボルト101を介して支持部121と接続されるサイドフレーム73と、サイドフレーム73に接合されたフロントフレーム74と、を有する。サイドフレーム73には、支持部121に形成された取付孔121a(
図10参照)に対応する取付孔が複数形成されている。支持部121に形成された取付孔121a及びサイドフレーム73に形成された取付孔は、取付ボルト101の軸よりも一回り大きく、若しくは上下方向に長い長穴とすることが好ましい。
【0039】
また、取付ボルト101としては、支持部121とサイドフレーム73とを摩擦力で締結する高力ボルトを使用することが好ましい。この構成によれば、支持部121に形成された取付孔121aとサイドフレーム73に形成された取付孔との上下方向のズレをある程度許容することが可能となり、取付ボルト101を容易に挿通させることができる。フロントフレーム74は、
図8に示す平面視で、サイドフレーム73に対してT字状に接合されている。このフロントフレーム74には、
図7に示すように、円弧状の切り欠き74aが形成されている。この切り欠き74aからは、ジャッキロッド19bを視認できる。
【0040】
台座部72は、
図8に示すように、T字状のフレーム部71の上面に接合されている。台座部72のサイドの前後には、
図6に示すように、吊側架台70をクレーン等で吊るための吊片75が接合されている。前後の吊片75のうち、後方側(ベースプレート110側)の吊片75には、回動軸76が接合されている。回動軸76は、
図8に示すように、吊側架台70の左右方向に突出して設けられている。
【0041】
ベースプレート110には、回動軸76を介して吊側架台70(ジャッキアップ装置19)の上下方向(高さ方向)の位置を位置決めすると共に、支持部121の上方で、吊側架台70(ジャッキアップ装置19)が回動可能に掛止する掛止部130を有する。掛止部130は、
図10に示すように、水平部131aと、鉛直部131bと、を有するL字状の掛止片131を有する。水平部131aは、ベースプレート110の表面110aに対する垂直方向(前後方向)に延び、鉛直部131bは、水平部131aの先端から上方に立設している。
【0042】
なお、
図6に示すように、水平部131aの上面は、脚部122の上面よりも下方に位置させてもよい。この構成によれば、吊側架台70(ジャッキアップ装置19)から受ける荷重を、強度部材である張り出し部120(脚部122)に負担させることができる。すなわち、
図8に示すように、回動軸76は、一対の脚部122のうち外側の脚部122の上面に載っている。また、回動軸76は、掛止片131よりも外側に延びており、掛止片131の外向き側面には、回動軸76の脱落を防止するサポート132を接合することが好ましい。サポート132には、例えば、コの字状の溝形鋼を使用することができる。
【0043】
上記構成の吊側架台70が、
図6に示すように、取付ボルト101を介して張り出し部120の支持部121に取り付けられると、張り出し部120は、吊側架台70を介してジャッキアップ装置19から荷重を受ける。張り出し部120にジャッキアップ装置19からの荷重が加わると、モーメントが作用し、ベースプレート110に接続された複数のアンカーボルト111に引抜力が作用する。
【0044】
複数のアンカーボルト111は、
図6に示すように、長さの異なる複数のアンカーボルト111(第1のアンカーボルト111A及び第2のアンカーボルト111B)を含む。第1のアンカーボルト111Aは、ベースプレート110の下半分の領域に接合された第1のナット113Aに接続されている。また、第1のアンカーボルト111Aよりも長い第2のアンカーボルト111Bは、ベースプレート110の上半分の領域に接合された第2のナット113Bに接続されている。
【0045】
図9に示すように、ベースプレート110の裏面110bには、アンカーボルト111及びナット113が上下方向及び左右方向に間隔をあけてマトリクス状に配置されている。第2のアンカーボルト111Bは、第1のアンカーボルト111Aよりも長く、太いため、ベースプレート110の上半分の領域に接合された第2のナット113Bは、ベースプレート110の下半分の領域に接合された第1のナット113Aよりもサイズが大きくなっている。
【0046】
複数のアンカーボルト111は、上下方向に列を成している。複数のアンカーボルト111は、ベースプレート110の左右方向の端から順に、第1列112a、第2列112b、第3列112c、第2列112b、第1列112aを形成している。第1列112aは、
図8に示すように、ベースプレート110の左右方向の両端部に配置されるボルト列である。また、第2列112bは、張り出し部120の背面側に配置されるボルト列である。また、第3列112cは、ベースプレート110の左右方向の中央部に配置されるボルト列である。
【0047】
第1列112aを形成する複数の第2のアンカーボルト111Bは、
図6に示すように、上方に向かうに従って順に長くなるように配設されている。ベースプレート110の上半分の領域には、ジャッキアップ装置19の荷重によるモーメントの作用により、上方に向かうに従って引抜力が大きく作用するため、上方には長い第2のアンカーボルト111Bを配設し、コーン状破壊の有効水平投影面積を稼ぐことが好ましい。逆に、ベースプレート110の下半分の領域には、大きな押込力(圧縮力)が作用するため、短い第1のアンカーボルト111Aを配設すればよい。
【0048】
第2列112bを形成する複数の第2のアンカーボルト111Bは、
図6に示すように、長さは一定であるが、第1列111aを形成する複数の第2のアンカーボルト111Bのいずれよりも長くなっている。これは、
図8に示すように、第2列112bが、張り出し部120の背面側に配置され、大きな引抜力が作用するためである。
【0049】
第3列112cを形成する複数の第2のアンカーボルト111Bは、第1列112aを形成する複数の第2のアンカーボルト111Bと同様に、上方に向かうに従って順に長くなるように配置されているが、いずれも第1列112aを形成する複数の第2のアンカーボルト111Bよりも短くなっている。これは、第3列112cが、第2列112bの間に挟まれており、第2列112bが大きな引抜力を負担する結果、ベースプレート110の左右方向の中央部には大きな引抜力が作用しないためである。
【0050】
次に、上記構成の中間ジャッキサポート100の作用について説明する。
上述したように、本手法の内槽構築工程においては、外槽2の側壁に中間ジャッキサポート100を設置し、中間ジャッキサポート100にジャッキアップ装置19を支持させ、ジャッキアップ装置19による揚体60の上昇と、上昇した揚体60の下側への内槽側板9の溶接と、を交互に繰り返して内槽30を構築する。
【0051】
中間ジャッキサポート100は、
図6に示すように、外槽2の側壁に沿って配設されたベースプレート110と、ベースプレート110から張り出した張り出し部120と、を有し、張り出し部120でジャッキアップ装置19を片持ち支持している。張り出し部120にジャッキアップ装置19の荷重(揚体60の重量を含む)が加わると、モーメントが作用し、アンカーボルト111に引抜力が作用する。この際、張り出し部120の根元部には、モーメントの作用により大きな負荷がかかる。
【0052】
本実施形態では、
図8に示すように、ジャッキアップ装置19を支持する張り出し部120の支持部121が、複数の脚部122を介してベースプレート110に接続されている。この構成によれば、張り出し部120の根元部にかかる負荷を、複数の脚部122に分散して負担させることができる。このため、複数の脚部122の一つ一つの厚みを大きく確保しなくても張り出し部120の強度を高めることができる。
【0053】
また、複数の脚部122は、支持部121からベースプレート110に向かうに従って互いの間隔が漸次大きくなるように一対で設けられている。この構成によれば、張り出し部120とベースプレート110とが一定の間隔をあけて複数箇所(広い領域)で接続されるため、ベースプレート110の略全面に引抜力を作用させることができる。このため、ベースプレート110の裏面110bに配置されたアンカーボルト111の一部に局所的に大きな負荷がかかる、といったことがなく、コーン状破壊の許容引抜力を上げることができる。
【0054】
また、本手法の内槽構築工程においては、ジャッキロッド19bのストローク分、揚体60をジャッキアップしたら、ジャッキアップ装置19の支持位置を上方に変更する(支持位置変更工程)。ここで、
図6に示すように、ジャッキロッド19bは、座金20を介して吊側架台70に連結され、支持部121は、吊側架台70を介してジャッキアップ装置19を支持する構成となっているため、吊側架台70をジャッキロッド19bと一体で吊り上げて、ジャッキアップ装置19の支持位置を上方に変更することができる。したがって、吊側架台70とジャッキロッド19bとを解体することなく、ジャッキアップ装置19の支持位置を上方に変更することができ、吊側のジャッキポイントの盛り替え作業にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0055】
また、本実施形態においては、
図6に示すように、ジャッキアップ装置19の高さ方向の位置を位置決めすると共に、支持部121の上方で、ジャッキアップ装置19が回動可能に掛止する掛止部130を有する。この構成によれば、盛り替え先に配置された中間ジャッキサポート100の掛止部130に、吊り上げた吊側架台70の回動軸76を掛止させることで、ジャッキアップ装置19の高さ方向の位置を位置決めし、その後は、クレーン等を使用することなく、人手で吊側架台70を回動軸76回りに回動させることができる。このため、支持部121に形成された取付孔121aと吊側架台70に形成された取付孔との位置合わせが容易になり、取付ボルト101の締結作業を容易に行うことができる。さらに、本実施形態では、取付ボルト101に高力ボルトを使用しているため、高さ方向のある程度のズレは許容できる。
【0056】
また、本手法の内槽構築工程においては、ジャッキアップ装置19の支持位置変更工程の後、ジャッキアップ装置19を支持していた中間ジャッキサポート100の張り出し部120を除去する(張り出し部除去工程)。この手法によれば、張り出し部120が揚体60と干渉することを防止することができる。この張り出し部除去工程では、
図11に示す符号L1で示すように、複数の脚部122を切断することが好ましい。すなわち、本実施形態の張り出し部120は、所定の強度を有するが、その根元部は複数の脚部122によって形成され、脚部122の一つ一つの厚みは大きくないので、ガス切断機等を用いて容易に除去することができるためである。
【0057】
また、本実施形態の張り出し部120は、平面視でY字状に形成されているため、例えば平面視でT字状に形成されたものと比べて、脚部122がある程度正面を向くために、作業者のアクセスが容易で、ガス切断の作業性を向上させることができる。なお、掛止片131も揚体60に干渉するのであれば、
図11に示す符号L2で示すように切断してもよい。なお、切断後の張り出し部120、掛止片131は、グラインダー等をかけてバリ取りをすることが好ましい。
【0058】
このように、上述の本実施形態によれば、外槽2の側壁に設けられ、ジャッキアップ装置19を支持する中間ジャッキサポート100であって、外槽2の側壁に沿って配設されたベースプレート110と、ベースプレート110から張り出した張り出し部120と、を有し、張り出し部120は、ジャッキアップ装置19を支持する支持部121と、支持部121とベースプレート110との間を接続する複数の脚部122と、を有する、という構成を採用することによって、ジャッキアップ装置19を支持する張り出し部120の強度を高めつつ、張り出し部120の撤去に要していた時間を削減し、工期のさらなる短縮を図ることができる。
【0059】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、複数の脚部122がハの字状に配設される構成について説明したが、例えば、複数の脚部122がコの字状に配設されるような構成であってもよい。また、支持部121もベースプレート110に接合されるような構成であってもよい。すなわち、見た目上、3本の脚部を有するような構成であってもよい。また、脚部122を3本以上有するような構成であってもよい。
【0061】
また、例えば、上記実施形態では、ベースプレート110にナット113を介してアンカーボルト111を接続する構成について説明したが、ベースプレート110にアンカーボルト111が直接接合されていてもよい。また、上記実施形態では、アンカーとしてアンカーボルト111を使用していたが、別の種類のアンカーを使用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
2 外槽
2a 内壁面(壁面)
3 外槽側板(側板)
3a 側板本体
3a1 開口部
5 コンクリート
9 内槽側板
19 ジャッキアップ装置
19a ジャッキ本体
19b ジャッキロッド
20 座金
30 内槽
50 LNGタンク(タンク)
60 揚体
70 吊側架台(吊架台)
76 回動軸
100 中間ジャッキサポート(タンク用ジャッキサポート)
110 ベースプレート
111 アンカーボルト
111A 第1のアンカーボルト
111B 第2のアンカーボルト
113 ナット
120 張り出し部
121 支持部
121a 取付孔
122 脚部
130 掛止部