(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】車両用ドアサッシュのシーム溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/06 20060101AFI20220221BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220221BHJP
B23K 11/30 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
B23K11/06 510
B60J5/04 M
B23K11/30 340
(21)【出願番号】P 2017208592
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 二郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康治
(72)【発明者】
【氏名】柳井 利文
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-120986(JP,U)
【文献】特開2018-99718(JP,A)
【文献】実開昭61-31578(JP,U)
【文献】特開2019-81402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一回転中心回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の第一凸部の第一列と、前記第一列から前記第一回転中心の軸方向一方にずれて位置され前記第一回転中心回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の第二凸部の第二列と、を有し
、互いに隣接する前記第一凸部と前記第二凸部とは接触する第一ローラ電極と、前記第一ローラ電極と連動して回転する第二ローラ電極と、によって車両用ドアサッシュの部位のうち重ね合わされた複数の金属板を含む被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う、
車両用ドアサッシュのシーム溶接方法。
【請求項2】
前記第二ローラ電極は、前記第一回転中心と平行な第二回転中心回りの周方向に間隔をあけて配置され前記第一ローラ電極と連動して回転した場合にそれぞれが前記第一凸部と面する複数の第一対向凸部を含む第一対向列と、前記第一対向列から前記第二回転中心の軸方向一方にずれて位置され前記第二回転中心回りの周方向に間隔をあけて配置され前記第一ローラ電極と連動して回転した場合にそれぞれが前記第二凸部と面する複数の第二対向凸部を含む第二対向列と、を備えた、
請求項1に記載の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法。
【請求項3】
前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極とを有するシーム溶接装置によって、互いに面した前記複数の第一凸部のうちの一つと前記複数の第一対向凸部のうちの一つとによって車両用ドアサッシュの部位のうち重ね合わされた複数の金属板を含む被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う第一工程と、
前記シーム溶接装置によって、互いに面した前記複数の第一凸部のうちの他の一つと前記複数の第一対向凸部のうちの他の一つとによって前記被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う第二工程と、
前記シーム溶接装置によって、互いに面した前記複数の第二凸部のうちの一つと前記複数の第二対向凸部のうちの一つとによって前記被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う第三工程と、
前記シーム溶接装置によって、互いに面した前記複数の第二凸部のうちの他の一つと前記複数の第二対向凸部のうちの他の一つとによって前記被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う第四工程と、
を備えた、請求項2に記載の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法。
【請求項4】
前記第二ローラ電極は、前記第一回転中心と平行な第二回転中心回りの周方向に沿った表面が平滑面である、
請求項1に記載の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法。
【請求項5】
前記第一ローラ電極における前記第一凸部と前記第二凸部とが周方向に沿って交互に位置し、前記第二ローラ電極における前記第一対向凸部と前記第二対向凸部とが周方向に沿って交互に位置する、
請求項2または3に記載の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法。
【請求項6】
前記第一ローラ電極における前記第一凸部と前記第二凸部とが周方向に沿って交互に位置する、
請求項4に記載の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアサッシュのシーム溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板が複数重なった被溶接部をシーム溶接で接合したドアサッシュがある。このドアサッシュにおいては、被溶接部が長手方向に沿って連続したシーム溶接によって接合されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、連続したシーム溶接を行うと被溶接部に溶接熱が溜まるため、当該溶接熱によるひずみによってドアサッシュの寸法がばらつくおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、溶接熱によるひずみを軽減することが可能な新規な車両用ドアサッシュのシーム溶接方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法は、例えば、第一回転中心回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の第一凸部の第一列と、前記第一列から前記第一回転中心の軸方向一方にずれて位置され前記第一回転中心回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の第二凸部の第二列と、を有し、互いに隣接する前記第一凸部と前記第二凸部とは接触する第一ローラ電極と、前記第一ローラ電極と連動して回転する第二ローラ電極と、によって車両用ドアサッシュの部位のうち重ね合わされた複数の金属板を含む被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う方法である。
【0007】
本発明の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法は、例えば、前記第二ローラ電極は、前記第一回転中心と平行な第二回転中心回りの周方向に間隔をあけて配置され前記第一ローラ電極と連動して回転した場合にそれぞれが前記第一凸部と面する複数の第一対向凸部を含む第一対向列と、前記第一対向列から前記第二回転中心の軸方向一方にずれて位置され前記第二回転中心回りの周方向に間隔をあけて配置され前記第一ローラ電極と連動して回転した場合にそれぞれが前記第二凸部と面する複数の第二対向凸部を含む第二対向列と、を備えている。
【0008】
本発明の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法は、例えば、前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極とを有するシーム溶接装置によって、互いに面した前記複数の第一凸部のうちの一つと前記複数の第一対向凸部のうちの一つとによって車両用ドアサッシュの部位のうち重ね合わされた複数の金属板を含む被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う第一工程と、前記シーム溶接装置によって、互いに面した前記複数の第一凸部のうちの他の一つと前記複数の第一対向凸部のうちの一つとによって前記被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う第二工程と、前記シーム溶接装置によって、互いに面した前記複数の第二凸部のうちの一つと前記複数の第二対向凸部のうちの一つとによって前記被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う第三工程と、前記シーム溶接装置によって、互いに面した前記複数の第二凸部のうちの一つと前記複数の第二対向凸部のうちの一つとによって前記被溶接部を挟持した状態で前記第一ローラ電極と前記第二ローラ電極との間に通電することによりシーム溶接を行う第四工程と、を備えている。
【0009】
本発明の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法は、例えば、前記第一ローラ電極における前記第一凸部と前記第二凸部とが周方向に沿って交互に位置し、前記第二ローラ電極における前記第一対向凸部と前記第二対向凸部とが周方向に沿って交互に位置している。
【0010】
本発明の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法は、例えば、前記第二ローラ電極は、前記第一回転中心と平行な第二回転中心回りの周方向に沿った表面が平滑面である。
【0011】
本発明の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法は、例えば、前記第一ローラ電極における前記第一凸部と前記第二凸部とが周方向に沿って交互に位置している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用ドアサッシュのシーム溶接方法では、例えば、第一回転中心回りの周方向に間隔をあけた複数の第一凸部および第二凸部を有した第一ローラ電極と、前記第一ローラ電極と連動して回転する第二ローラ電極とにより、ドアサッシュの被溶接部を挟持して回転しつつ通電することでシーム溶接を行う。従って、本発明のドアサッシュでは、溶接部が長手方向に沿って間隔をおいて複数に配置される。よって、溶接部が長手方向に沿って帯状に繋がった従来のドアサッシュよりも、本発明のドアサッシュの方が溶接熱によるひずみが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態の車両を側方から見た側面図である。
【
図3】
図3は、
図2からウェザーストリップ、ガラスラン、および溶接部を省略した断面図である。
【
図5】
図5は、
図4を上側から見たアッパーサッシュの平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態によるシーム溶接ラインを示す模式的かつ例示的な図である。
【
図7】
図7は、アッパーサッシュの連結部をシーム溶接している状態を示す模式的かつ例示的な図である。
【
図10】
図10は、変形例によるアッパーサッシュの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0015】
なお、各図中には、便宜上、方向が示されている。FRは車両前後方向の前方、RRは車両前後方向の後方、UPRは車両上下方向の上方、LWRは車両上下方向の下方、OUTは車両外方(車幅方向の外方)、INは車両内方(車幅方向の内方)を示している。
【0016】
図1は、本実施形態の車両を側方から見た側面図である。
図1に示すように、車両1の左側部においては、前方にフロントドア2が設けられ、フロントドア2の後側にリアドア3が設けられている。リアドア3は、下側に設けられたドアパネル4と、ドアパネル4の上側に設けられたドアフレーム5と、ドアパネル4に保持されて上下移動が可能なドアガラス6と、を有する。
【0017】
ドアフレーム5は、ドアパネル4の上端における前端から上方に延びる前側サイドサッシュ7と、ドアパネル4の上端における後端から上方に延びる後側サイドサッシュ8と、前側サイドサッシュ7および後側サイドサッシュ8の上端同士を車両前後方向に連結するアッパーサッシュ9と、を有している。アッパーサッシュ9は、ドアサッシュの一例である。
【0018】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
図3は、
図2からウェザーストリップ10、ガラスラン11、および溶接部を省略した断面図である。
【0019】
図2に示すように、アッパーサッシュ9の上側には、車両前後方向に沿って延びるウェザーストリップ10が保持され、アッパーサッシュ9の下側には、車両前後方向に沿って延びるガラスラン11が保持されている。ウェザーストリップ10は、弾性部材、例えばゴムで形成されている。ウェザーストリップ10の下部における車両内方側(車幅方向の内方側)には、車両内方に向けて内側突起部10aが突出され、ウェザーストリップ10の下部における車両外方側(車幅方向の外方側)には、車両外方に向けて外側突起部10bが突出されている。ウェザーストリップ10の内側突起部10aは、後述するアッパーサッシュ9の内方側保持部9gによって保持され、ウェザーストリップ10の外側突起部10bは、後述するアッパーサッシュ9の外方側保持部9iによって保持されている。また、ウェザーストリップ10の上部における車両内方側(車幅方向の内方側)には、車両上方に向けて延びる膨出部10cが設けられ、ウェザーストリップ10の上部における車両外方側(車幅方向の外方側)には、車両上方に向けて延びる突片10dが設けられている。リアドア3を閉めたときに、膨出部10cおよび突片10dが車体パネルに押圧されることによって、リアドア3と車体パネルとの液密性を保持する。
【0020】
また、ガラスラン11は、上部に設けられたベース部11aと、ベース部11aの車両内方側から下方に延びる内側脚部11bと、ベース部11aの車両外方側から下方に延びる外側脚部11cと、内側脚部11bおよび外側脚部11cの下端に設けられた一対のリップ11d,11eと、を有する。一対のリップ11d,11eの先端がドアガラス6の表面および裏面に当接することにより、ドアガラス6とアッパーサッシュ9との液密性を保持する。なお、後述するアッパーサッシュ9の内側保持部9fおよび外側保持部9hによって、ガラスラン11を保持している。
【0021】
図2,3に示すように、アッパーサッシュ9は、筒状部9aと意匠部9bと連結部9cとを備えている。筒状部9a、意匠部9b、および連結部9cは、車両前後方向に沿って延びた車幅方向の第一端部9dと第二端部9eとの間で車両前後方向に沿った複数の線状の折曲部12で折れ曲がった一枚の金属板によって繋がって構成されている。以下、具体的に説明する。
【0022】
筒状部9aは、車内側(車幅方向の内方側)に位置し、中空部分を構成する閉断面部であり、車両前後方向に沿って延びている。筒状部9aの車外側(車幅方向の外方側)の上部には、車外方向に向けて凹んだ凹部が設けられており、当該凹部がガラスラン11を保持する内側保持部9fに構成されている。また、筒状部9aの車内側の上部には、ウェザーストリップ10を保持する内方側保持部9gが設けられている。筒状部9aは、金属板が複数の線状の折曲部12で折れ曲がることによって構成されている。車両前後方向は、長手方向の一例である。車幅方向は、短手方向の一例である。
【0023】
意匠部9bは、筒状部9aよりも車外側に離間して位置し車両前後方向に沿って延びている。意匠部9bは、車内側の金属板と車外側の金属板との2枚重ねの構造になっている。車両外方側の金属板における車両外方側の面が意匠面9kである。意匠部9bの下部における車内側の金属板には、外側保持部9hが設けられ、意匠部9bの上部における車内側の金属板には、外方側保持部9iが設けられている。意匠部9bは、複数の線状の折曲部12で折れ曲がることによって構成されている。
【0024】
図3に示すように、連結部9cは、筒状部9aと意匠部9bとを車両前後方向と交差する車幅方向に連結すると共に車両前後方向に沿って延びている。連結部9cは、下側に配置された金属板201(
図6参照)と、上側に配置された金属板201(
図6参照)と、が2枚に重ね合って構成されている。ここで、上述したように、アッパーサッシュ9は、車幅方向の第一端部9dと第二端部9eとの間で複数の折曲部12で折れ曲がった一枚の金属板201で構成されている。従って、連結部9cにおいて、下側に配置された金属板201は、筒状部9aと意匠部9bとの間で架け渡された金属板の中間部9jであり、上側に配置された金属板201は、中間部9jと金属板の厚さ方向に重なるとともに中間部9jと溶接された第一端部9dと、中間部9jと厚さ方向に重なるとともに中間部9jと溶接され第一端部9dと間隙14をあけて面した第二端部9eと、を含む。即ち、連結部9cは、車両用ドアサッシュの部位のうち重ね合わされた複数の金属板を含む被溶接部である。
【0025】
図4は、
図3のアッパーサッシュ9の斜視図である。
図5は、
図4を上側から見たアッパーサッシュ9の平面図である。
【0026】
図4,5に示すように、中間部9jと第一端部9dとが車両前後方向に間隔をあけて配置された複数の第一溶接点W1で溶接されている。本実施形態では、車両前後方向に点在する第一溶接点W1は、等間隔で配置されている。また、中間部9jと第二端部9eとが車両前後方向に間隔をあけて配置された複数の第二溶接点W2で溶接されている。本実施形態では、車両前後方向に点在する第二溶接点W2同士は、等間隔で配置されている。複数の第一溶接点W1と複数の第二溶接点W2とが、車両前後方向に沿って互い違いに配置されている。即ち、車両前後方向で見た場合に、車両前後方向に隣接する第一溶接点W1同士の間に第二溶接点W2が配置されている。
【0027】
次に、アッパーサッシュ9をシーム溶接するシーム溶接ライン100の構造、およびシーム溶接の手順を簡単に説明する。
【0028】
図6は、シーム溶接ライン100を示す模式的かつ例示的な図である。
図7は、アッパーサッシュ9の連結部9cをシーム溶接している状態を示す模式的かつ例示的な図である。
図8は、
図7の第一ローラ電極415を示す斜視図である。
図9は、
図7の第二ローラ電極416を示す斜視図である。
【0029】
まず、
図6に示すように、シーム溶接ライン100は、長尺状の金属板201を巻きつけたコイル200と、コイル200から送られた金属板201を複数回折り曲げるロール成形装置300と、ロール成形装置300で折り曲げられて得られたアッパーサッシュ9の連結部9c(被溶接部)にシーム溶接を施すシーム溶接装置400と、シーム溶接時の溶接熱で生じたアッパーサッシュ9の変形やひずみを矯正する曲げ装置500と、を備えている。なお、ロール成形装置300には、複数の上側ロール型301と、上側ロール型301の下側に設けられた複数の下側ロール型302と、が設けられている。
【0030】
また、
図7~
図9に示すように、シーム溶接に用いるシーム溶接装置400は、上側に配置された第一ローラ電極415と下側に配置された第二ローラ電極416とを備えている。
図8に示すように、第一ローラ電極415は、第一回転中心C1回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の第一凸部415aの第一列R1と、第一列R1から第一回転中心C1の軸方向一方(本実施形態では、
図8の右方向)にずれて位置され第一回転中心C1回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の第二凸部415bの第二列R2と、を有している。第一凸部415aと第二凸部415bとが周方向に沿って互い違いに配置されている。第一凸部415aおよび第二凸部415bは、シーム溶接時に被溶接部に当接する。第一ローラ電極415の径方向中央部には、円形の中央貫通孔415cが設けられている。図示しない駆動軸に中央貫通孔415cが挿入されて保持されており、駆動軸を回転することにより第一ローラ電極415が第一回転中心C1を中心として回転する。
【0031】
図9に示すように、第二ローラ電極416は、第二回転中心C2回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の第一対向凸部416aの第一対向列R10と、第一対向列R10から第二回転中心C2の軸方向一方(本実施形態では、
図9の右方向)にずれて位置され第二回転中心C2回りの周方向に間隔をあけて配置された複数の第二対向凸部416bの第二対向列R20と、を有している。第一対向凸部416aと第二対向凸部416bとが周方向に沿って互い違いに配置されている。第一対向凸部416aおよび第二対向凸部416bは、シーム溶接時に被溶接部に当接する。第二ローラ電極416の径方向中央部には、円形の中央貫通孔416cが設けられている。図示しない駆動軸に中央貫通孔416cが挿入されて保持されており、駆動軸を回転することにより第一ローラ電極415と連動して第二ローラ電極416が第二回転中心C2を中心として回転する。なお、第一回転中心C1と第二回転中心C2とは平行に配置されている。
【0032】
また、第一対向凸部416aのそれぞれは、第二ローラ電極416が第一ローラ電極415と連動して(同期して)回転した場合に第一凸部415aと面するように構成されている。第二対向凸部416bのそれぞれは、第二ローラ電極416が第一ローラ電極415と連動して回転した場合に第二凸部415bと面するように構成されている。
【0033】
次に、シーム溶接の手順を簡単に説明する。
【0034】
図7~
図9に示すように、まず、第一ローラ電極415および第二ローラ電極416において、互いに面した複数の第一凸部415aのうちの一つと複数の第一対向凸部416aのうちの一つとによってアッパーサッシュ9(車両用ドアサッシュ)の部位のうち重ね合わされた複数の金属板を含む連結部9c(被溶接部)を挟持する。この状態で第一ローラ電極415と第二ローラ電極416との間に通電することによりシーム溶接を行う。このシーム溶接によって、
図5に示す第1の溶接部P1が設けられる。(第一工程)
【0035】
次に、第一ローラ電極415および第二ローラ電極416を連動して更に回転させ、互いに面した複数の第二凸部415bのうちの一つと複数の第二対向凸部416bのうちの一つとによって連結部9cを挟持した状態とする。この状態で、第一ローラ電極415と第二ローラ電極416との間に通電することによりシーム溶接を行う。このシーム溶接によって、
図5に示す第2の溶接部P2が設けられる。(第三工程)
【0036】
そして、第一ローラ電極415および第二ローラ電極416を連動して更に回転させ、互いに面した複数の第一凸部415aのうちの他の一つと複数の第一対向凸部416aのうちの一つとによって連結部9cを挟持した状態とする。この状態で、第一ローラ電極415と第二ローラ電極416との間に通電することによりシーム溶接を行う。このシーム溶接によって、
図5に示す第3の溶接部P3が設けられる。(第二工程)
【0037】
さらに、第一ローラ電極415および第二ローラ電極416を連動して更に回転させ、互いに面した複数の第二凸部415bのうちの一つと複数の第二対向凸部416bのうちの一つとによって連結部9cを挟持した状態とする。この状態で、第一ローラ電極415と第二ローラ電極416との間に通電することによりシーム溶接を行う。このシーム溶接によって、
図5に示す第4の溶接部P4が設けられる。(第四工程)
【0038】
また、第一ローラ電極415および第二ローラ電極416を連動して更に回転させると、前述した第一工程のように、互いに面した複数の第一凸部415aのうちの一つと複数の第一対向凸部416aのうちの一つとによって連結部9cにシーム溶接を行う。このシーム溶接によって、
図5に示す第5の溶接部P5が設けられる。このように、第一ローラ電極415および第二ローラ電極416を連動して更に回転させることにより、
図5に示す第5の溶接部P5、第6の溶接部P6、第7の溶接部P7、第8の溶接部P8のように、左右に交互に配置された溶接部が続いて複数設けられる。なお、後述する複数の第一溶接点W1は、第1の溶接部P1、第3の溶接部P3、第5の溶接部P5、第7の溶接部P7、および、これに続く複数の溶接部を含んでいる。後述する複数の第二溶接点W2は、第2の溶接部P2、第4の溶接部P4、第6の溶接部P6、第8の溶接部P8、および、これに続く複数の溶接部を含んでいる。
【0039】
また、
図7に示すように、第一ローラ電極415および第二ローラ電極416を矢印方向に回転させると、アッパーサッシュ9はP方向に移動する。また、シーム溶接は、金属板が重なった連結部9cに発生する電気抵抗熱(ジュール熱)によって金属板が溶融し、溶融部分が冷却によって固化することで、連結部9cにおける2枚の金属板同士が接合される溶接方法である。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態では、例えば、第一回転中心C1回りの周方向に間隔をあけた複数の第一凸部415aおよび第二凸部415bを有した第一ローラ電極415と、第一ローラ電極415と連動して回転する第二ローラ電極416と、でアッパーサッシュ9の連結部9c(被溶接部)を挟持して回転しつつ通電することでシーム溶接を行う。従って、本実施形態のアッパーサッシュ9では、溶接部が長手方向に沿って間隔をおいて複数に配置される。よって、溶接部が長手方向に沿って帯状に繋がった従来のドアサッシュよりも、本実施形態のドアサッシュの方が溶接熱によるひずみが軽減される。
【0041】
本実施形態では、第二ローラ電極416は、第一回転中心C1と平行な第二回転中心C2回りの周方向に間隔をあけて配置され第一ローラ電極415と連動して回転した場合にそれぞれが第一凸部415aと面する複数の第一対向凸部416aを含む第一対向列R10と、第一対向列R10から第二回転中心C2の軸方向一方にずれて位置され第二回転中心C2回りの周方向に間隔をあけて配置され第一ローラ電極415と連動して回転した場合にそれぞれが第二凸部415bと面する複数の第二対向凸部416bを含む第二対向列R20と、を備えている。このように、第二ローラ電極416は、第一凸部415aと面する第一対向凸部416aと、第二凸部415bと面する第二対向凸部416bと、を有する。
【0042】
また、本実施形態のシーム溶接方法では、互いに面した複数の第一凸部415aのうちの一つと複数の第一対向凸部416aのうちの一つとによってアッパーサッシュ9の部位のうち連結部9c(被溶接部)を挟持した状態で第一ローラ電極415と第二ローラ電極416との間に通電することによりシーム溶接を行う第一工程と、互いに面した複数の第一凸部415aのうちの他の一つと複数の第一対向凸部416aのうちの他の一つとによって連結部9cを挟持した状態で第一ローラ電極415と第二ローラ電極416との間に通電することによりシーム溶接を行う第二工程と、互いに面した複数の第二凸部415bのうちの一つと複数の第二対向凸部416bのうちの一つとによって連結部9c(被溶接部)を挟持した状態で第一ローラ電極415と第二ローラ電極416との間に通電することによりシーム溶接を行う第三工程と、互いに面した複数の第二凸部415bのうちの他の一つと複数の第二対向凸部416bのうちの他の一つとによって連結部9c(被溶接部)を挟持した状態で第一ローラ電極415と第二ローラ電極416との間に通電することによりシーム溶接を行う第四工程と、を備えている。
以上から、本実施形態では、シーム溶接を行う際に、第一凸部415aと第一対向凸部416aとで連結部9c(被溶接部)を確実に挟持し、第二凸部415bと第二対向凸部416bとで連結部9c(被溶接部)を確実に挟持することができる。よって、長手方向に沿って間隔をおいて複数に配置される溶接部が設けられる際に、溶接部における母材同士の溶け込みが良好となる。
【0043】
また、
図8,9に示すように、第一ローラ電極415における第一凸部415aと第二凸部415bとが周方向に沿って交互に位置し、第二ローラ電極416における第一対向凸部416aと第二対向凸部416bとが周方向に沿って交互に位置する。従って、
図4,5に示すように、複数の第一溶接点W1と複数の第二溶接点W2とが車両前後方向(長手方向)に沿って互い違いに配置される。よって、車幅方向の断面で見たときに、車両前後方向の各部位において連結部9cの接合強度が均一化される。このため、第一溶接点W1と第二溶接点W2とを車幅方向に揃って配置した場合よりも、アッパーサッシュ9の全体の強度が向上する。また、第一溶接点W1と第二溶接点W2とが車両前後方向に沿って等間隔に並んでいるため、第一端部9dを溶接する際に発生するひずみと第二端部9eを溶接する際に発生するひずみとが交互に打ち消し合い、アッパーサッシュ9の全体で溶接熱によるひずみが更に軽減される。
【0044】
以上、本発明の実施形態を例示したが、前記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら様々な形態や変形された形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0045】
例えば、前述した本実施形態では、第一溶接点W1および第二溶接点W2は共に円形の形状であった。しかし、
図10に示す第一溶接点W101および第二溶接点W102のように、車両前後方向に沿って細長い長方形状や楕円形状であってもよい。この変形例の場合、ローラ電極の第一凸部、第二凸部、第一対向凸部、および第二対向凸部における周方向の長さは、
図8,9に示す第一凸部415a、第二凸部415b、第一対向凸部416a、および第二対向凸部416bの周方向の長さよりも長い。
【0046】
また、本実施形態では、リアドア3のアッパーサッシュ9の連結部9cを被溶接部としたが、
図1に示す前側サイドサッシュ7の連結部や後側サイドサッシュ8の連結部を被溶接部としてもよい。
【0047】
さらに、例えば、下側のローラ電極の外周面を、凸部を設けない平滑面としてもよい。つまり、下側のローラ電極として、第一回転中心C1と平行な第二回転中心C2回りの周方向に沿った表面が平滑面なローラ電極を用いてもよい。この場合、第一凸部415aおよび第二凸部415bを有する第一ローラ電極415を上側に配置し、表面が平滑面なローラ電極を下側に配置する。この場合上側の第一ローラ電極415の回転角度と下側のローラ電極の回転角度とが僅かにずれた場合であっても、下側のローラ電極の外周面が常に被溶接部に当接するため、上側の第一ローラ電極415における第一凸部415aおよび第二凸部415bからの電流が被溶接部を介して下側のローラ電極に確実に通電されやすくなるという効果がある。
【符号の説明】
【0048】
9…アッパーサッシュ(ドアサッシュ)、9c…連結部(被溶接部)、415…第一ローラ電極、416…第二ローラ電極、R1…第一列、R2…第二列、R10…第一対向列、R20…第二対向列、400…シーム溶接装置、415a…第一凸部、415b…第二凸部、416a…第一対向凸部、416b…第二対向凸部。