IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ケーブイケーの特許一覧

特許7027123節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓
<>
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図1
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図2
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図3
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図4
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図5
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図6
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図7
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図8
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図9
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図10
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図11
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図12
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図13
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図14
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図15
  • 特許-節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220221BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
E03C1/042 C
F16K31/44 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017210603
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019082063
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笠原 直之
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-248540(JP,A)
【文献】特開平09-119559(JP,A)
【文献】特開2004-100405(JP,A)
【文献】特開2004-92217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00- 1/10
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体の操作軸部に取り付けられた回転操作式のハンドルの節度感付与部材であって、
前記ハンドルに取り付けられて、前記ハンドルと一体回転する第1部材と、
前記水栓本体に取り付けられる第2部材とを備え、
前記第1部材及び前記第2部材には、互いに干渉することで前記ハンドルの回転動作に抵抗を付与する抵抗部が設けられ、
前記第1部材は、前記ハンドルにおいて前記操作軸部が挿入される軸挿入部と前記操作軸部との間に装着されて、前記ハンドルに付与された回転力を前記操作軸部に伝達する筒状のアダプタ部分と、前記アダプタ部分よりも径が大きく、前記抵抗部を構成する筒状の本体部分とが一体に設けられており、
前記アダプタ部分は、前記軸挿入部に挿入されるとともに、前記アダプタ部分の内周側に前記操作軸部が挿入されることを特徴とする節度感付与部材。
【請求項2】
前記第1部材の本体部分は、筒状に構成され、
前記第1部材の抵抗部は、前記本体部分の内周及び外周の少なくともいずれかに設けられている請求項1に記載の節度感付与部材。
【請求項3】
前記第1部材の抵抗部は、前記本体部分の軸方向に沿う溝部で構成されている請求項2に記載の節度感付与部材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された節度感付与部材を備えた水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、節度感付与部材及び節度感付与部材を備えた水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転操作式のハンドルを有する水栓について、ハンドルを操作した際に使用者にクリック感を伝えるための技術が記載されている。図16(a)に示すように、特許文献1の水栓80は、水栓本体82と、水栓本体82のスピンドル82aに連結されるハンドル81とを備えている。水栓本体82には、上記クリック感を伝えるための構成として、円板状のリテーナ84が固定されている。図16(b)に示すように、リテーナ84には、径方向外側に向かって山形状に曲がった板バネ85が取り付けられている。また、ハンドル81の下端には、リテーナ84に係合するリング83がハンドル81と一体回転可能に固定されている。図16(b)に示すように、リング83は、リテーナ84の外周側に配置され、リング83の内周には、径方向外側に窪んだ溝部83aが設けられている。ハンドル81を所定の角度回転させた際に、リング83の溝部83aに板バネ85の頂点部85aが係合することによって、使用者にクリック感が伝わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-119559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水栓のハンドルには、種類等に応じた様々な形状のものが存在する。そのため、特許文献1の技術を適用する場合、ハンドルの下端に固定できるように、ハンドルの形状に合ったリングをハンドルの形状毎にそれぞれ用意する必要がある。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハンドルの操作にクリック感等の節度感を付与する節度感付与部材に関して、形状異なるものの、軸挿入部の形状は共通するハンドルにも共通して用いることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための節度感付与部材は、水栓本体の操作軸部に取り付けられた回転操作式のハンドルの節度感付与部材であって、前記ハンドルに取り付けられて、前記ハンドルと一体回転する第1部材と、前記水栓本体に取り付けられる第2部材とを備え、前記第1部材及び前記第2部材には、互いに干渉することで前記ハンドルの回転動作に抵抗を付与する抵抗部が設けられ、前記第1部材は、前記ハンドルにおいて前記操作軸部が挿入される軸挿入部と前記操作軸部との間に装着されて、前記ハンドルに付与された回転力を前記操作軸部に伝達する筒状のアダプタ部分と、前記アダプタ部分よりも径が大きく、前記抵抗部を構成する筒状の本体部分とが一体に設けられており、前記アダプタ部分は、前記軸挿入部に挿入されるとともに、前記アダプタ部分の内周側に前記操作軸部が挿入されることを要旨とする。
【0006】
上記構成においては、ハンドル側に設けられる第1部材について、抵抗部を構成する本体部を、ハンドルにおいて操作軸部が挿入される軸挿入部と操作軸部との間に装着されるアダプタ部分と一体に設けている。一般に、水栓の種類によってハンドルの形状が異なる場合であっても、軸挿入部と操作軸部との間に装着されるアダプタ部材(所謂、ハンドル金具)の形状は共通であることが多い。そのため、アダプタ部材の代わりに第1部材を装着することにより、アダプタ部材と同様に、形状の異なるハンドルにも第1部材を取付けることができる。したがって、形状の異なるハンドルにも共通して適用可能となる。
【0007】
上記節度感付与部材について、前記第1部材の本体部分は、筒状に構成され、前記第1部材の抵抗部は、前記本体部分の内周及び外周の少なくともいずれかに設けられていることが好ましい。この構成によれば、本体部分の内周や外周における所定の位置に抵抗部を選択的に設けることができる。
【0008】
上記節度感付与部材について、前記第1部材の抵抗部は、前記本体部分の軸方向に沿う溝部で構成されていることが好ましい。この構成によれば、ハンドルの回転方向に対して、溝部の延びる方向を直交させることができるため、抵抗部を一定の形状で繰り返し形成することが容易になる。
【0009】
上記節度感付与部材を備えた水栓であることが好ましい。この構成によれば、上記節度感付与部材の機能を奏する水栓とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の節度感付与部材によれば、形状異なるものの、軸挿入部の形状は共通するハンドルに共通して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の水栓の斜視図。
図2図1の水栓における水栓本体の斜視図。
図3図1の水栓における水栓本体の分解斜視図。
図4】本実施形態の切換弁の斜視図。
図5】(a)は切換ハンドルの斜視図、(b)は、切換ハンドルの別角度の斜視図、(c)は、(b)のc-c線断面図と第1部材の断面図。
図6】切換ハンドルと切換弁と節度感付与部材の分解斜視図。
図7】切換ハンドルと切換弁と節度感付与部材の別角度の分解斜視図。
図8】第1部材と第2部材とが係合した状態を示す端面図。
図9】変更例の第1部材の正面図。
図10】別の変更例の第1部材の斜視図。
図11】(a)は、さらに別の変更例の第1部材の正面図、(b)は、さらに別の変更例の第2部材の正面図。
図12】さらに別の変更例の第1部材と切換弁の斜視図。
図13】(a)は、さらに別の変更例の第1部材と第2部材の斜視図、(b)は、さらに別の変更例の第1部材と第2部材の別角度の斜視図。
図14】さらに別の変更例の第1部材と第2部材の斜視図。
図15】さらに別の変更例の第1部材と第2部材の端面図。
図16】(a)は、従来技術の水栓の部分断面図、(b)は、(a)のb-b線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を説明する。
図1~3に示すように、水栓10は、浴室内の台(デッキ)11上に設置されている。水栓10は、台11の上面に配置された湯用配管12及び水用配管13に接続されて、湯用配管12及び水用配管13から供給された湯水が流れる金属製(例えば、銅合金製)のボデー20と、ボデー20を覆うカバー19とを備えている。ボデー20の背面側には、エルボ管14を介してシャワー用のホース15に接続される第1吐出口30aが設けられるとともに、ボデー20の上部には、集中吐水用の吐水管16に接続される第2吐出口30bが設けられている。
【0013】
図2に示すように、ボデー20の一方の側部(図面の紙面左側の側部)の内部には、混合水の温度を調整する混合弁21が収容されている。混合弁21は、操作軸部44がボデー20及びカバー19から露出した状態とされ、その操作軸部44に対して、混合水の温度を調節する温調ハンドル17が取り付けられている。
【0014】
図3に示すように、ボデー20の正面側の中央部分の内部には、第1吐出口30a及び第2吐出口30bからの吐止水を切り換える切換弁40が収容されている。切換弁40は、操作軸部43(図4参照)がボデー20及びカバー19から露出した状態とされ、その操作軸部43に対して、混合水の吐止水や流路の切り換えを行う切換ハンドル18が取り付けられている。本実施形態においては、ボデー20、混合弁21、及び切換弁40により水栓本体が構成される。
【0015】
次に、切換弁40の構成について説明する。
図4に示すように、切換弁40は、筒状のケーシング41を有する。ケーシング41の内部には、ケーシング41に対して相対回転することにより、第1吐出口30a及び第2吐出口30bからの吐止水が切り換わるように構成された弁体42が収容されている。また、切換弁40は、弁体42を操作する操作軸部43を備えている。操作軸部43は、弁体42と一体回転可能、且つケーシング41に対して相対回転可能に構成されるとともに、その一部がケーシング41の一端側から突出している。ケーシング41から突出する操作軸部43の一端側の外周面には、全周に亘り軸方向に延びる溝部43aが形成されている。この溝部43aは、切換ハンドル18が取り付けられる取付部として機能する。また、操作軸部43の一端側の端面には、軸方向に沿ってネジ孔43bが設けられている。切換弁40のケーシング41における一端側の外周には、軸方向に延びる溝部41bが形成されている。
【0016】
次に、切換ハンドル18の構成について説明する。
図5(a)、(b)に示すように、切換ハンドル18は、一端側に底壁18dを有する筒状部18aと、筒状部18aの周面から突出するレバー18bとを有する。そして、筒状部18aの内部には、他端側に開口する孔状の軸挿入部18cが形成されている。この軸挿入部18cは、断面形状が六角形状に構成されている。切換ハンドル18の筒状部18aの底壁18dの中央部には、図5(c)に示すように、軸挿入部18cに達する貫通孔18eが設けられている。また、切換ハンドル18の底壁18dには、キャップ18fが装着されている。
【0017】
また、図5(c)に示すように、筒状部18aの内部において、軸挿入部18cの他端側の端部よりも他端側には、所定の収容空間Sが設けられている。すなわち、軸挿入部18cの他端側の端部は、筒状部18aの他端側の端部よりも一端側に位置しており、筒状部18aの内部における他端側に収容空間Sとなる空間が形成されている。この収容空間Sは、後述する第1部材としての回転部材50の本体部分52を収容する空間として機能する。
【0018】
次に、節度感付与部材70の構成について説明する。
図6、7に示すように、水栓10は、節度感付与部材70を備え、節度感付与部材70を介して切換弁40と切換ハンドル18とが接続されている。節度感付与部材70は、切換ハンドル18に取り付けられる第1部材としての回転部材50と、切換弁40に取り付けられる第2部材としての固定部材60とから構成されている。
【0019】
固定部材60は、その内周側に操作軸部43を挿通させる挿通孔を有する筒状部61を有している。筒状部61の内周には、切換弁40のケーシング41の一端側の外周に設けられた溝部41bに嵌合する嵌合溝61cが設けられるとともに、筒状部61の一端側には、径方向内側に延びて挿通孔の径を部分的に小さくする係止部62が設けられている。この係止部62は、切換弁40の操作軸部43を挿通させることができる程度の大きさに構成されている。
【0020】
また、固定部材60は、筒状部61の外周面から突出し、筒状部61の周方向に沿って延びる延設部61aを有する。延設部61aの先端には、径方向外側に突出する凸部61bが設けられている。延設部61aの先端は、筒状部61の外周と間隔を置いて形成されていることにより、径方向からの力に対して弾性を有した状態となっている。この延設部61aは、筒状部61の周方向における異なる2箇所に設けられている。
【0021】
図6、7に示すように、回転部材50は、切換ハンドル18の軸挿入部18cに挿入される筒状のアダプタ部分51と、アダプタ部分51の他端側に一体に設けられ、アダプタ部分51と同軸上、且つアダプタ部分51よりも径が大きく構成された筒状の本体部分52とを有する。ここで、「一体に設けられ」とは、アダプタ部分51と本体部分52とが一体に成形された態様を意味するとともに、アダプタ部分51と本体部分52とが接着剤によって接合された態様や、アダプタ部分51と本体部分52とが互いに係合した状態で接続された態様を含むものとする。アダプタ部分51の外形は、横断面六角形状になっており、切換ハンドル18の軸挿入部18cに挿入した状態において、軸挿入部18cに嵌合して、切換ハンドル18と回転部材50とが一体回転可能となるように構成されている。また、アダプタ部分51の内径は、切換弁40の操作軸部43を挿通可能な大きさであるとともに、図5(c)に示すように、アダプタ部分51の内周には、操作軸部43の一端側の外周に設けられた溝部43aに嵌合する嵌合溝51aが形成されている。
【0022】
本体部分52は、その外径が、切換ハンドル18の筒状部18aの内周よりも小径となるように形成されるとともに、その内径が、固定部材60の延設部61aの凸部61bにおける外径よりも僅かに小さくなるように形成されている。また、回転部材50の本体部分52の内周には、軸方向に延びる三角溝状の干渉溝52aが全周に亘って複数、設けられている。
【0023】
次に、節度感付与部材70を介した切換弁40と切換ハンドル18の接続構成について説明する。
図6、7に示すように、まず、切換ハンドル18の軸挿入部18cに、回転部材50のアダプタ部分51を挿入することにより、切換ハンドル18に対して回転部材50が一体回転可能に取り付けられる。この際、図5(c)に示すように、回転部材50の本体部分52は、大部分が切換ハンドル18の収容空間S内に収容された状態となる。
【0024】
また、固定部材60の筒状部61の挿通孔に切換弁40の操作軸部43を挿入することにより、切換弁40のケーシング41の外周に対して固定部材60が取り付けられる。このとき、切換弁40のケーシング41の外周に設けられた溝部41bと、固定部材60の筒状部の内周に設けられた嵌合溝61cとが嵌合するとともに、固定部材60の係止部62が、切換弁40のケーシング41の一端側の端面41aに当接することにより、固定部材60は、切換弁40のケーシング41に対して相対回転不能に固定される。
【0025】
次に、切換ハンドル18に取り付けられた回転部材50のアダプタ部分51に、固定部材60が取り付けられた切換弁40の操作軸部43を挿入することにより、回転部材50を介して、切換弁40の操作軸部43に対して切換ハンドル18が取り付けられる。このとき、切換弁40の操作軸部43の外周に設けられた溝部43aと、回転部材50のアダプタ部分51の内周に設けられた嵌合溝51aとが嵌合することにより、切換ハンドル18及び回転部材50は、切換弁40の操作軸部43に対して一体回転可能に固定される。
【0026】
また、切換弁40のケーシング41に取り付けられた固定部材60は、回転部材50の本体部分52の内側に収容された状態となる。そして、回転部材50の本体部分52の内周に設けられた干渉溝52aに固定部材60の延設部61aの凸部61bが干渉した状態となる。次に、切換ハンドル18の外面側から切換ハンドル18の底壁18dの貫通孔18eにネジ(図示せず)を挿入するとともに、切換弁40の操作軸部43のネジ孔43bに螺合する。これにより、切換弁40に対して切換ハンドル18が抜け止めされた状態で固定される。
【0027】
図8に示すように、節度感付与部材70を介して切換弁40に取り付けられた切換ハンドル18を回転操作すると、回転部材50の本体部分52の内周に設けられた干渉溝52aと、固定部材60の延設部61aの凸部61bとが干渉することによって抵抗が生じる。したがって、回転部材50の本体部分52の内周に設けられた干渉溝52aと、固定部材60の延設部61aの凸部61bとによって、互いに干渉することでハンドルの回転動作に抵抗を付与する抵抗部が構成されている。そして、この抵抗部により、回転操作全体にカチカチとした節度感としてのノッチ感が生じる。
【0028】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)切換ハンドル18に取り付けられる回転部材50について、アダプタ部分51よりも径が大きく、抵抗部を構成する筒状の本体部分52を、切換ハンドル18において操作軸部43が挿入される軸挿入部18cと操作軸部43との間に装着される筒状のアダプタ部分51と一体に設けている。また、アダプタ部分51は、軸挿入部18cに挿入されるとともに、アダプタ部分51の内周側に操作軸部43が挿入される。一般に、水栓の種類によって切換ハンドル18の形状が異なる場合であっても、軸挿入部18cと操作軸部43との間に装着されるアダプタ部材(所謂、ハンドル金具)の形状は共通であることが多い。そのため、アダプタ部材の代わりに回転部材50を装着することにより、アダプタ部材と同様に、形状異なるものの、軸挿入部の形状は共通するハンドルにも回転部材50を取付けることができる。したがって、形状異なるものの、軸挿入部の形状は共通するハンドルにも共通して適用可能となる。
【0029】
(2)仮に、回転部材50において、アダプタ部分51と本体部分52とが別体で構成され、それぞれが別々に切換ハンドル18に取り付けられていると、アダプタ部分51の回転軸と、本体部分52の回転軸とが一致するように位置決めする必要があるため、構造が複雑になる。これに対し、本実施形態では、回転部材50におけるアダプタ部分51と本体部分52とが一体に設けられているため、切換ハンドル18の回転軸と回転部材50の本体部分52の回転軸を同一軸上とすることが容易になる。
【0030】
(3)回転部材50の本体部分52は、大部分が切換ハンドル18の収容空間S内に収容された状態となっているため、切換ハンドル18の外観に影響を与え難くなっている。
(4)回転部材50と固定部材60とで構成される節度感付与部材70は、水栓の外観を構成する部材ではないため、耐久性等の性質を重視した材料選択が可能である。また、仮に、抵抗部が摩耗した場合であっても、節度感付与部材70のみを交換すればよいため、切換ハンドル18自体を交換しなくてもよい。
【0031】
(5)回転部材50を、既存のアダプタ部材(ハンドル金具)と交換することで、既存の水栓にも、切換ハンドルを交換することなく、後付けで本実施形態の節度感付与部材70を取付け可能である。
【0032】
(6)節度感付与部材70を取付けることによって、切換ハンドル18に自転防止機能を付与することができる。
(7)回転部材50の本体部分52は、筒状に構成され、回転部材50の抵抗部は、本体部分52の内周に設けられている。したがって、本体部分52の内周における所定の位置に抵抗部を選択的に設けることができる。
【0033】
(8)回転部材50の抵抗部は、本体部分52の軸方向に沿う干渉溝52aで構成されている。したがって、切換ハンドル18の回転方向に対して、溝部の延びる方向を直交させることができるため、抵抗部を一定の形状で繰り返し形成することが容易になる。
【0034】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・抵抗部として設けられる干渉溝は、回転部材50の本体部分52の内周に全周に亘って形成された構成に限定されず、本体部分52の内周に部分的に形成されていてもよい。例えば、図9に示すように、本体部分52の内周において、90度の間隔をおいた4箇所に干渉溝52bが形成されていてもよい。この場合、切換ハンドル18を回転させると、90度回転する毎にクリック感が付与され、特定位置に達したことを操作者に伝えることができる。すなわち、抵抗部の形状を適宜選択することにより、回転操作全体にカチカチとしたノッチ感や、特定位置に達したことを操作者に伝えるクリック感といった節度感を付与することができる。
【0035】
・抵抗部として設けられる干渉溝は、回転部材50の本体部分52の軸方向に沿う形状に限定されず、固定部材60の延設部61aの凸部61bと干渉して抵抗が生じる任意の形状を採用することができる。固定部材60の延設部61aの凸部61bと干渉する形状としては、例えば、図10に示すように、本体部分52の内周に設けられた複数の凸部52cであってもよい。また、複数の凸部52cに代えて、複数の凹部であってもよく、凸部52cと凹部が混在した形状であってもよい。
【0036】
・本実施形態では、抵抗部として、回転部材50の本体部分52の内周に干渉溝52aが形成されるとともに、固定部材60の筒状部61に凸部61bが形成されていたが、この態様に限定されない。例えば、図11(a)に示すように、回転部材50の本体部分52の内周に延設部52dを形成し、この延設部52dの先端に凸部52eが形成されるとともに、図11(b)に示すように、固定部材60の筒状部61の外周に溝部61dが形成されていてもよい。さらに、この場合、図12に示すように、固定部材60が切換弁40と一体に構成されていてもよい。すなわち、切換弁40のケーシング41における一端側の外周に形成された溝部41cを、抵抗部として用いてもよい。
【0037】
・回転部材50側に設けられる抵抗部は、回転部材50の本体部分52の内周に形成された態様に限定されず、本体部分52の外周に形成されていてもよい。例えば、図13(a)、(b)に示すように、回転部材50の本体部分52の外周に軸方向に沿う干渉溝52fを設けるとともに、固定部材60の筒状部61から径方向外側に延びた状態で設けられた延設部61eの先端が、回転部材50の本体部分52の外周側から干渉溝52fに干渉するように構成してもよい。また、図14に示すように、回転部材50のアダプタ部分と本体部分52とを接続する接続壁53に、複数の凹部52gを設けるとともに、固定部材60の係止部62に複数の凸部62aを設け、凹部52gと凸部62aとを干渉させてもよい。さらに、この態様において、接続壁53側に凸部62aが設けられ、係止部62側に凹部52gが設けられていてもよく、接続壁53と係止部62の両方に、凸部62aと凹部52gが混在して設けられていてもよい。
【0038】
・本実施形態では、図5(c)に示すように、切換ハンドル18の収容空間Sに、回転部材50の本体部分52の大部分が収容されていたが、収容空間Sに本体部分52の全体が収容されていてもよい。収容空間Sに本体部分52の全体が収容されることにより、回転部材50をより目立たなくすることができる。また、切換ハンドル18が収容空間Sを有してなく、本体部分52の全てが切換ハンドル18から露出した状態であってもよい。
【0039】
・固定部材60の筒状部61に設けられる延設部61aの形状は、本実施形態の形状に限定されない。回転部材50の本体部分52に設けられる干渉溝52aと干渉して節度感を付与することができる形状を適宜採用することができる。例えば、図15に示すように、固定部材60の外周面に突起部材61fを配置し、この突起部材61fをコイルばね61gによって径方向外側に付勢して、回転部材50の本体部分52の干渉溝52aと干渉するように構成してもよい。
【0040】
・回転部材50のアダプタ部分51の外形は横断面六角形状に限定されない。切換ハンドル18の軸挿入部18cに挿入されて、切換ハンドル18と一体回転可能であれば、六角形状以外に、多角形状や楕円形等の横断面を適宜採用することができる。
【0041】
・本実施形態では、節度感付与部材は切換ハンドル18に設けられていたが、切換ハンドル18以外のハンドルに設けられていてもよい。切換ハンドル18以外のハンドルとしては、例えば、温調ハンドル17が挙げられる。
【0042】
・本実施形態の節度感付与部材は、混合水栓に備えられていたが、混合水栓以外の水栓に備えられていてもよい。
上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
【0043】
(イ)第2部材の抵抗部は、筒状の本体部の一端側から本体部の周方向に沿って延びる延設部に設けられた凸部によって構成されている節度感付与部材。
【符号の説明】
【0044】
18…切換ハンドル(ハンドル)、18c…軸挿入部、43…操作軸部、50…回転部材(第1部材)、51…アダプタ部分、52…本体部分、60…固定部材(第2部材)、70…節度感付与部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16