(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】電力変換装置及び鉄道車両
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220221BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220221BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
B60L3/00 C
(21)【出願番号】P 2017232546
(22)【出願日】2017-12-04
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 怜子
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-204366(JP,A)
【文献】特開2013-071482(JP,A)
【文献】特開2003-048533(JP,A)
【文献】特開平05-003274(JP,A)
【文献】特開2012-151342(JP,A)
【文献】特開2017-98329(JP,A)
【文献】特開2014-143250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換部を構成する複数の半導体素子と、
前記複数の半導体素子を第1の面で支持する受熱板と、
前記受熱板に固定され、前記複数の半導体素子の間を仕切る第1仕切り部材と、
前記受熱板とともに前記第1仕切り部材を挟むように配置されたカバーと、
を備
え、
前記カバーには、第2溝が形成され、
前記第1仕切り部材は、前記第2溝に嵌合されたことにより前記カバーに固定されている電力変換装置。
【請求項2】
前記受熱板には第1溝が形成され、
前記第1仕切り部材は、前記第1溝に嵌合されたことにより前記受熱板に固定されている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記カバーにおける前記複数の半導体素子とは反対側に固定された第1電気機器を備える請求項
1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記受熱板に固定され、前記複数の半導体素子全体を挟むように配置された一対の第2仕切り部材を備える請求項1
から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
電力変換部を構成する複数の半導体素子と、
前記複数の半導体素子を第1の面で支持する受熱板と、
前記受熱板に固定され、前記複数の半導体素子の間を仕切る第1仕切り部材と、
前記受熱板に固定され、前記複数の半導体素子全体を挟むように配置された一対の第2仕切り部材と、
前記受熱板の前記第1の面における前記一対の第2仕切り部材の外側に固定された第1電気機器と、
を備える電力変換装置。
【請求項6】
電力変換部を構成する複数の半導体素子と、
前記複数の半導体素子を第1の面で支持する受熱板と、
前記受熱板に固定され、前記複数の半導体素子の間を仕切る第1仕切り部材と、
前記受熱板における前記第1の面とは反対側の第2の面に固定された第2電気機器と、
を備える電力変換装置。
【請求項7】
前記受熱板を冷却液により冷却する放熱部を備える請求項1
から6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記受熱板から突出する突部を備える請求項1
から6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記受熱板を冷却するヒートパイプを備える請求項1
から6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
請求項1
から9のいずれか一項に記載の電力変換装置を備える鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置及び鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、電力変換装置が備えられている場合がある。電力変換装置では、スイッチング動作を行う半導体素子、抵抗器等の電気機器により電力変換部が構成されている。半導体素子のスイッチング動作により、半導体素子から熱が発生する。半導体素子から熱を効果的に放熱させるために、半導体素子を固定した受熱板から放熱させることが検討されている。
半導体素子が故障しても電力変換装置を動作させるために、電力変換装置が複数の半導体素子を並列に備える場合がある。
【0003】
半導体素子が故障すると、故障した半導体素子が飛散する。このため、半導体素子毎に受熱板を用意し、半導体素子間の距離を確保することが好ましい。このように構成すると、故障した半導体素子の影響が他の半導体素子に及びにくくなる。
しかし、半導体素子毎に受熱板を用意すると、複数の受熱板が必要となる。また、受熱板の両面に半導体素子を取付けると、電力変換装置内に半導体素子用に確保すべきスペースが大きくなる。そのため通例では、電力変換装置は、複数の半導体素子を1つの受熱板の第1の面上に取付けて構成されている。
【0004】
しかしながら、上記の電力変換装置では、複数の半導体素子の1つが故障すると、故障した半導体素子が飛散したときに他の半導体素子が損傷する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、受熱板の第1の面上の複数の半導体素子の1つが故障しても他の半導体素子が損傷することを抑えることができる電力変換装置及び鉄道車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電力変換装置は、複数の半導体素子と、受熱板と、第1仕切り部材と、カバーと、を持つ。前記複数の半導体素子は、電力変換部を構成する。前記受熱板は、前記複数の半導体素子を第1の面で支持する。前記第1仕切り部材は、前記受熱板に固定され、前記複数の半導体素子の間を仕切る。前記カバーは、前記受熱板とともに前記第1仕切り部材を挟むように配置される。前記カバーには、第2溝が形成される。前記第1仕切り部材は、前記第2溝に嵌合されたことにより前記カバーに固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の鉄道車両を模式的に示す側面図。
【
図2】一実施形態の鉄道車両における電力変換部のブロック図。
【
図3】一実施形態の鉄道車両における電力変換装置の要部を側面視した断面図。
【
図4】
図1中のIV-IV線に相当する断面図である。
【
図5】一実施形態の変形例における電力変換装置の要部を側面視した断面図。
【
図6】一実施形態の変形例における電力変換装置の要部を側面視した断面図。
【
図7】一実施形態の変形例における電力変換装置の要部を側面視した断面図。
【
図8】一実施形態の変形例における電力変換装置の要部を側面視した断面図。
【
図9】一実施形態の変形例における電力変換装置の要部を側面視した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の電力変換装置及び鉄道車両を、図面を参照して説明する。
【0010】
以下、鉄道車両の一実施形態を
図1から
図9を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の鉄道車両1は、車体11と、車輪21と、本実施形態の電力変換装置31と、制御部71と、を備えている。
例えば、車体11は、レール22が延びる方向に長い直方体状に形成されている。車体11内には、機械室12が形成されている。機械室12内に、電力変換装置31が設置されている。車体11の天面には、上方に向かってパンタグラフ13が設けられている。パンタグラフ13は、架線14に架線14の下方から接触可能になるように配置されている。パンタグラフ13は、電力変換装置31に電線42(
図2参照)等により接続されている。
なお、本実施形態では、パンタグラフ13を介して架線14から電力変換装置31に電力供給を行うとして説明を行う。しかし、鉄道車両に搭載された発電機や蓄電装置から電力変換装置31に電力供給を行ってもよい。
【0011】
車輪21は、車体11の幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。車輪21は、レール22上に配置されている。車輪21は、台車23に設けられた回転軸24周りに回転可能に支持されている。台車23は、車体11の底面に固定されている。
回転軸24には、電動機25A,25Bが図示しないギアボックス等を介して連結されている。電動機25A,25Bは、電力変換装置31に後述する電線48,49(
図2参照)により接続されている。電動機25A,25Bは、電力変換装置31から交流による電力が入力されると、ギアボックス等を介して回転軸24を回転させる。この例では、電動機25A,25Bのいずれも回転軸24を回転させることができる。
【0012】
図1及び
図3に示すように、電力変換装置31は、複数の半導体素子32A,32B,32Cと、受熱板33と、第1仕切り板(第1仕切り部材)34A,34Bと、第2仕切り板(第2仕切り部材)35A,35Bと、カバー36と、第1電気機器37Aと、放熱部38と、を備えている。
以下では、半導体素子32A,32B,32Cを、半導体素子32A~32Cと略して示す場合がある。後述する第1溝53A,53B,53C,53D等についても同様である。
【0013】
この例では、
図2に示すように、半導体素子32Aはコンバータを構成し、半導体素子32B,32Cはそれぞれインバータを構成する。なお、半導体素子32A~32Cを含んで、電力変換部41が構成される。コンバータを構成する半導体素子32Aは、パンタグラフ13から電線42を介して送られる交流を直流に変換する。インバータを構成する半導体素子32B,32Cは、電線43,44によりコンバータを構成する半導体素子32Aに並列に接続されている。インバータを構成する半導体素子32B,32Cは、直流を交流に変換する。
なお、この例では、コンバータやインバータを構成する半導体素子を1つのパッケージで示している。しかし、各相毎や各上下アーム毎等、複数の半導体素子でモジュール(パッケージ)を構成してもよい。
【0014】
電線43,44には、開放スイッチ45,46がそれぞれ設けられている。開放スイッチ45は、電線43を電流が流れる閉状態と、電線43を電流が流れない開状態と、に切替えることができる。開放スイッチ46は、開放スイッチ45と同様に電線44に対して閉状態と開状態とに切替えることができる。
半導体素子32B,32Cには、半導体素子32B,32Cが変換した交流の電流値を検出する電流センサが取付けられていることが好ましい。電流センサは、半導体素子32B,32Cが故障したか否かを検出するために用いられる。ただし、半導体素子32B,32Cの故障を検出するセンサは、これに限られない。
電流センサは、検出結果を定期的に制御部71に送信する。
【0015】
半導体素子32Bと電動機25Aとは、電線48により接続されている。半導体素子32Cと電動機25Bとは、電線49により接続されている。
なお、電力変換装置31が駆動する電動機の数は特に限定されず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。例えば、電力変換装置31が誘導電動機を駆動するときは、インバータを構成する半導体素子で複数の誘導電動機を駆動してもよい。また、電力変換装置31が同期電動機を駆動するときは、同期電動機と同数のインバータを構成する半導体素子を設けて駆動してもよい。
【0016】
図4に示すように、例えば、受熱板33は厚さ方向に見た正面視において矩形状に形成されている。
図3及び
図4に示すように、受熱板33内には、流路52が形成されている。流路52は、正面視における受熱板33の中央部に形成されている。流路52は、受熱板33の長手方向に沿って延びている。なお、正面視において、流路52の入口及び出口の幅は、流路52の長手方向の中央部の幅よりも狭いことが好ましい。例えば、受熱板33は、長手方向が上下方向に沿うように配置されている。
流路52内には、図示しないコルゲートフィン等の伝熱促進部材が配置されている。伝熱促進部材は、流路52の内面に固定されている。
【0017】
受熱板33の第1の面33aには、第1溝53A,53B,53C,53Dが形成されている。第1溝53A~53Dは、受熱板33の幅方向に延びるとともに、受熱板33の長手方向に互いに間隔を空けて配置されている。第1溝53A~53Dは、受熱板33の長手方向に沿って、この順で並べて配置されている。第1溝53A~53Dは、受熱板33の幅方向の各端部に達していない。第1溝53A~53Dは、受熱板33内の流路52に達していない(
図3参照)。
受熱板33の四隅には、貫通孔54がそれぞれ形成されている。貫通孔54は、受熱板33を厚さ方向に貫通している。受熱板33の正面視において、貫通孔54は流路52の外側に配置されている。
受熱板33は、熱伝導率の大きいアルミニウムや銅等の金属で形成されている。受熱板33をアルミニウムで形成すると、受熱板33をより軽くすることができる。
【0018】
受熱板33の第1の面33aにおける第1溝53Aと第1溝53Bとの間の部分に、半導体素子32Aが支持されている。例えば、半導体素子32Aは伝熱性を有するグリースを介して受熱板33の第1の面33aに固定されている。
同様に、受熱板33の第1の面33aにおける第1溝53Bと第1溝53Cとの間の部分に、半導体素子32Bが支持されている。受熱板33の第1の面33aにおける第1溝53Cと第1溝53Dとの間の部分に、半導体素子32Cが支持されている。半導体素子32A~32Cは、受熱板33の長手方向に沿って、この順で並べて配置されている。
半導体素子32A~32Cは、正面視において流路52が形成された範囲内に配置されていることが好ましい。
【0019】
図3に示すように、カバー36は、受熱板33と同様の板状に形成されている。カバー36は、受熱板33の第1の面33aに対向し、かつ受熱板33に平行になるように配置されている。カバー36は、受熱板33とともに第1仕切り板34A,34B及び第2仕切り板35A,35Bを挟むように配置されている。
カバー36における受熱板33の第1の面33aに対向する第1の面36aには、第2溝56A,56B,56C,56Dが形成されている。第2溝56A~56Dは、第1溝53A~53Dと同様に形成され、第1溝53A~53Dにそれぞれ対向するように配置されている。
カバー36の四隅には、貫通孔57がそれぞれ形成されている。
【0020】
第2仕切り板35Aは、受熱板33の第1溝53A及びカバー36の第2溝56Aにそれぞれ嵌合されたことにより受熱板33及びカバー36に固定されている。同様に、第1仕切り板34Aは、受熱板33の第1溝53B及びカバー36の第2溝56Bにそれぞれ嵌合されたことにより受熱板33及びカバー36に固定されている。第1仕切り板34Bは、受熱板33の第1溝53C及びカバー36の第2溝56Cにそれぞれ嵌合されたことにより受熱板33及びカバー36に固定されている。第2仕切り板35Bは、受熱板33の第1溝53D及びカバー36の第2溝56Dにそれぞれ嵌合されたことにより受熱板33及びカバー36に固定されている。
【0021】
第1仕切り板34A,34B及び第2仕切り板35A,35Bは、受熱板33の第1の面33a及びカバー36の第1の面36aにそれぞれ配置されている。第1仕切り板34A,34B及び第2仕切り板35A,35Bは、それぞれの厚さ方向が受熱板33の長手方向になるように配置されている。
第1仕切り板34Aは、半導体素子32Aと半導体素子32Bとの間を仕切っている。同様に、第1仕切り板34Bは、半導体素子32Bと半導体素子32Cとの間を仕切っている。一対の第2仕切り板35A,35Bは、半導体素子32A~32C全体を受熱板33の長手方向に挟むように配置されている。
【0022】
第1仕切り板34A,34B及び第2仕切り板35A,35Bを形成する材料は、アルミニウム等の金属や樹脂等、特に限定されない。カバー36を形成する材料も、同様である。カバー36は、電気的な絶縁性を有する材料で形成してもよい。
【0023】
受熱板33及びカバー36は、ボルト59及びナット60により互いに固定されている。具体的には、ボルト59が、カバー36の貫通孔57及び受熱板33の貫通孔54にそれぞれ挿入されている。受熱板33におけるカバー36とは反対側に突出したボルト59に、ナット60が嵌め合っている。ボルト59及びナット60により、第1仕切り板34A,34B、第2仕切り板35A,35Bを間に挟んだ受熱板33及びカバー36を受熱板33が、厚さ方向に挟み込まれている。
なお、受熱板33、カバー36、及び第2仕切り板35A,35Bにより、受熱板33の幅方向に形成された開口を塞ぐように、第2仕切り板を設けてもよい。
【0024】
第1電気機器37Aは、カバー36における半導体素子32A~32Cとは反対側の第2の面36bに固定されている。例えば、第1電気機器37Aは、半導体素子32A~32Cの駆動ための回路である。第1電気機器37Aは、半導体素子32A~32Cに電気的に接続され、半導体素子32A~32Cを制御する。
【0025】
放熱部38は、受熱板33を水等の冷却液により冷却する。
図1に示すように、放熱部38は、熱交換器63と、配管64と、ブロア(送風機)65と、ポンプ66と、を有している。
熱交換器63には、フィンチューブ型等の任意の熱交換器が用いられる。熱交換器63は、受熱板33の流路52内を流れた冷却液を放熱させる。配管64は、受熱板33の流路52及び熱交換器63に順次接続されている。配管64には、冷却液を蓄えるためのタンク68が設けられていることが好ましい。
ブロア65には、ターボファンやシロッコファン等の任意のファンが用いられる。ブロア65は、熱交換器63に対向するように配置され、熱交換器63に空気を流す。ポンプ66は、配管64に冷却液を流す。
このように、電力変換装置31では、いわゆる循環式液冷方式の放熱部38により受熱板33が冷却される。
【0026】
制御部71は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を有している。制御部71は、鉄道車両1全体の制御を行う。制御部71には、開放スイッチ45,46、ブロア65、及びポンプ66等が接続されている。制御部71は、電流センサから送信された電流値に基づいて、半導体素子32B,32Cが故障したか否かを判断する。
【0027】
次に、以上のように構成された鉄道車両1の動作について説明する。なお、初期状態では、開放スイッチ45,46は閉状態になっている。
架線14からパンタグラフ13、電線42を介して電力変換装置31の半導体素子32Aに交流が供給されると、第1電気機器37Aは半導体素子32A~32Cを駆動する。半導体素子32Aは、交流を直流に変換する。変換された直流は、電線43,44を通して半導体素子32B,32Cにそれぞれ供給される。半導体素子32Bは、直流を交流に変換し、変換した交流を電動機25Aに供給する。電動機25Aは、ギアボックス等を介して回転軸24を回転させる。レール22上で車輪21が回転する。
同様に、半導体素子32Cが変換した交流により、電動機25Bが車輪21を回転させる。このように、電動機25A,25Bの駆動力により、鉄道車両1が走行する。
電流センサは、半導体素子32B,32Cが変換した交流の電流値を、定期的に制御部71に送信する。
【0028】
半導体素子32A~32Cは、電力変換をするときに熱を発する。制御部71は、ブロア65及びポンプ66を駆動する。
半導体素子32A~32Cが発した熱は、受熱板33及び伝熱促進部材を介して流路52内の冷却液に伝達される。冷却液に熱が伝達されると、半導体素子32A~32Cが冷却される。
流路52内で加熱された冷却液は、ポンプ66により配管64内を流れ、熱交換器63内に流れ込む。ブロア65が機械室12内の空気を熱交換器63に流すことにより、冷却液の熱が熱交換器63を介して空気に伝達される。こうして、機械室12内の空気が加熱され、熱交換器63内の冷却液が冷却される。熱交換器63内で冷却された冷却液は、配管64内を流れて再び受熱板33の流路52内に流れ込む。
なお、配管64内を流れる冷却液の量が減少した場合は、冷却液がタンク68内から配管64内に供給される。
【0029】
例えば、鉄道車両1が走行している間に、半導体素子32Cが故障したとする。故障した半導体素子32Cは飛散するが、電力変換装置31が第1仕切り板34A,34Bを備えるため、飛散して半導体素子32A,32B側に向かった半導体素子32Cが第1仕切り板34A,34Bにより遮られる。
また、電力変換装置31が第2仕切り板35Bを備えるため、飛散して半導体素子32A,32Bとは反対側に向かった半導体素子32Cが第2仕切り板35Bにより遮られる。
【0030】
半導体素子32Cが故障すると、半導体素子32Cが変換した電流値が少なくなる。制御部71は、電流センサが送信した電流値から、半導体素子32Cが故障したと判断する。制御部71は、開放スイッチ46を開状態にし、半導体素子32C及び電動機25Bを制御対象から切り離す。
ただし、半導体素子32Bが変換した交流により車輪21が回転するため、鉄道車両1は走行を続ける。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置31によれば、故障して飛散した半導体素子32Cが半導体素子32A,32B側に向かったとしても、半導体素子32Cは第1仕切り板34A,34Bにより遮られる。従って、受熱板33の第1の面33a上の半導体素子32Cが故障しても半導体素子32A,32Bが損傷することを抑えることができる。1枚の受熱板33に複数の半導体素子32A~32Cを固定することで、電力変換装置31を小型化することができる。
第1仕切り板34A,34Bは、受熱板33に形成された第1溝53B,53Cに嵌合されたことにより受熱板33に固定されている。このため、受熱板33のうち第1仕切り板34A,34Bを固定したい部分に流路52が形成されていても、その部分に貫通孔を形成して流路52に支障が生じることなく、受熱板33に第1仕切り板34A,34Bを固定することができる。
【0032】
電力変換装置31がカバー36を備え、第1仕切り板34A,34Bはカバー36に形成された第2溝56B,56Cに嵌合されたことによりカバー36に固定されている。第1仕切り板34A,34Bを挟むように配置された受熱板33及びカバー36により第1仕切り板34A,34Bが固定されているため、受熱板33及びカバー36に第1仕切り板34A,34Bをより確実に固定することができる。カバー36を用いて、第1電気機器37Aを段積みすることができる。
第1電気機器37Aは、カバー36の第2の面36bに固定されている。故障して飛散した半導体素子32Cが第1電気機器37A側に向かったとしても、半導体素子32Cはカバー36により遮られる。従って、半導体素子32Cが故障しても第1電気機器37Aが損傷することを抑えることができる。
【0033】
電力変換装置31が、第2仕切り板35A,35Bを備える。故障して飛散した半導体素子32Cが第2仕切り板35A,35Bの外側に向かったとしても、半導体素子32Cは第2仕切り板35A,35Bにより遮られる。従って、半導体素子32Cが故障しても第2仕切り板35A,35Bの外側に配置された部品等が損傷することを抑えることができる。
電力変換装置31が、受熱板33を冷却液により冷却する放熱部38を備える。空気等の気体による冷却に比べて電熱性能が比較的高い冷却液により、受熱板33を効率的に冷却することができる。
【0034】
また、本実施形態の鉄道車両1によれば、受熱板33の第1の面33a上の半導体素子32Cが故障しても半導体素子32A,32Bが損傷することを抑えた電力変換装置31を用いて鉄道車両1を構成することができる。
なお、電力変換装置31は、第2仕切り板35A,35B、カバー36、第1電気機器37A、及び放熱部38を備えなくてもよい。
【0035】
本実施形態の電力変換装置31は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図5に示す電力変換装置76のように、電力変換装置31の各構成に加えて、受熱板33における第1の面33aとは反対側の第2の面33bに固定された第2電気機器37Bを備えてもよい。例えば、第2電気機器37Bは抵抗器であり、半導体素子32A~32Cに電気的に接続されている。
このように構成された変形例の電力変換装置76では、故障して飛散した半導体素子32Cが第2電気機器37B側に向かったとしても、半導体素子32Cは受熱板33により遮られる。従って、半導体素子32Cが故障しても第2電気機器37Bが損傷することを抑えることができる。
【0036】
図6に示す電力変換装置81のように、電力変換装置76の各構成において、第1電気機器37Aが受熱板33の第1の面33aに固定されてもよい。この変形例では、受熱板33は、半導体素子32Aに対する半導体素子32C側に長く形成されている。
第1電気機器37Aは、半導体素子32Cに対する半導体素子32Bとは反対側、すなわち、第2仕切り板35A,35Bの外側に配置されている。第1電気機器37Aと半導体素子32Cとは、第2仕切り板35Bにより仕切られている。
このように構成された変形例の電力変換装置81では、故障して飛散した半導体素子32Cが第1電気機器37A側に向かったとしても、半導体素子32Cは第2仕切り板35Bにより遮られる。従って、半導体素子32Cが故障しても第1電気機器37Aが損傷することを抑えることができる。また、受熱板33の第1の面33aに、半導体素子32A~32Cだけでなく第1電気機器37Aも配置することができる。
【0037】
図7に示す電力変換装置86のように、電力変換装置81の第2電気機器37Bを受熱板33の第1の面33aに固定してもよい。この変形例では、第2電気機器37Bは、第1電気機器37Aに対する半導体素子32Cとは反対側に配置されている。
このように構成された変形例の電力変換装置86では、故障して飛散した半導体素子32Cが電気機器37A,37B側に向かったとしても、半導体素子32Cは第2仕切り板35Bにより遮られる。従って、半導体素子32Cが故障しても電気機器37A,37Bが損傷することを抑えることができる。また、半導体素子32A~32C及び電気機器37A,37B(電力変換装置86)を、受熱板33の厚さ方向に薄く配置することができる。
【0038】
図8に示す電力変換装置91のように、電力変換装置31の放熱部38に代えて、複数のフィン部材(突部)92を備えてもよい。複数のフィン部材92及び受熱板33で、放熱フィン式の放熱部93が構成される。複数のフィン部材92は、受熱板33の第2の面33bから受熱板33の厚さ方向に突出している。複数のフィン部材92は、受熱板33の長手方向に沿って上下方向に延びていることが好ましい。受熱板33の幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。
なお、受熱板33に設けられるフィン部材92の数に制限はなく、フィン部材92の数は1つでもよい。
【0039】
このように構成された変形例の電力変換装置91では、半導体素子32A~32Cが発した熱は、受熱板33及び複数のフィン部材92を介して放熱部93の近傍の空気に伝達される。空気に熱が伝達されると、半導体素子32A~32Cが冷却される。
放熱部93により加熱された空気は、膨張して密度が低くなる。密度が低くなった空気は、受熱板33の幅方向に隣り合うフィン部材92の間等を通って上方に移動する。放熱部93は、いわゆる自然対流方式により冷却される。
このように構成された変形例の電力変換装置91では、放熱部93に冷却液を用いないため、放熱部93を小型化することができる。
なお、電力変換装置91が、放熱部93に空気を流すブロア94を備えてもよい。例えば、ブロア94は、複数のフィン部材92に沿って上方に向かって空気を流す。この場合、放熱部93は、いわゆる強制対流方式により冷却され、自然対流方式に比べて冷却性能が向上する。
【0040】
図9に示す電力変換装置96のように、電力変換装置31の放熱部38に代えて、受熱板33を冷却するヒートパイプ97を備えてもよい。例えば、ヒートパイプ97は、上下方向に延びるように配置されている。ヒートパイプ97の下端部が、受熱板33の第2の面33bに固定されている。ヒートパイプ97の上端部には、複数のフィン部材98が固定されていることが好ましい。ヒートパイプ97内には、代替フロン等の作動液が封入されている。
【0041】
このように構成された変形例の電力変換装置96では、半導体素子32A~32Cが発した熱は、受熱板33を介してヒートパイプ97の下端部に伝達される。ヒートパイプ97に熱が伝達されると、半導体素子32A~32Cが冷却される。
ヒートパイプ97の下端部内の作動液は、伝達された熱により気化して作動ガスとなる。作動ガスは、密度が低くなってヒートパイプ97の上端部内に移動する。ヒートパイプ97の上端部内に移動した作動ガスは、複数のフィン部材98により熱が奪われる。熱が奪われた作動ガスは、液化して作動液になる。作動液は、密度が高くなってヒートパイプ97の下端部内に移動する。
このように、ヒートパイプ97の作動液の気化熱を利用して、半導体素子32A~32Cを効率的に冷却することができる。
【0042】
なお、変形例の電力変換装置96では、ヒートパイプ97に代えて、圧縮機により高温かつ高圧にした作動ガスを絞り膨張させて冷却する放熱部を備えてもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、第1仕切り板34Aは、受熱板33に形成された第1溝53Bに嵌合されたことにより受熱板33に固定されているとした。しかし、第1仕切り板34Aは、受熱板33のうち正面視において流路52が形成されていない部分に設けられた貫通孔に、ボルト等により受熱板33に固定されているとしてもよい。この場合、受熱板33に第1溝53Bは形成されない。第1仕切り板34Bについても同様である。
第1仕切り部材が第1仕切り板34A,34Bであり、第2仕切り部材が第2仕切り板35A,35Bであるとした。しかし、第1仕切り板34A,34B及び第2仕切り板35A,35Bの形状は、板状に限定されず、ブロック状等でもよい。
【0044】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第1仕切り板34A,34Bを持つことにより、受熱板33の第1の面33a上の半導体素子32A~32Cの1つが故障しても他の半導体素子が損傷することを抑えることができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1…鉄道車両、31,76,81,86,91,96…電力変換装置、32A,32B,32C…半導体素子、33…受熱板、33a…第1の面、33b…第2の面、34A,34B…第1仕切り板(第1仕切り部材)、35A,35B…第2仕切り板(第2仕切り部材)、36…カバー、37A…第1電気機器、37B…第2電気機器、38…放熱部、41…電力変換部、53A,53B,53C,53D…第1溝、56A,56B,56C,56D…第2溝、92…フィン部材(突部)、97…ヒートパイプ