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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】梁、床用制振装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/98 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
E04B1/98 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018065484
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019173494
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】石田 琢志
(72)【発明者】
【氏名】稲井 慎介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友祐
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-263158(JP,A)
【文献】特開2011-241603(JP,A)
【文献】特開平9-242384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/98
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の垂直の接合面に対して一端側において水平に接続された梁の上下方向の振動を抑制するための制振装置であって、
前記柱の接合面に固定される第1の取り付け部材と、当該第1の取り付け部材に前記接合面と平行で水平の支持軸により回転自在に支持されるギアボックスと、当該ギアボックス内において前記支持軸に固着される受動小歯車と、前記第1の取り付け部材に固着され前記支持軸に連結される回転軸を有するロータリダンパと、前記ギアボックス内に前記支持軸と平行に固着される固定軸と、当該固定軸に固着され前記受動小歯車に噛み合う駆動大歯車と、前記梁に固着される第2の取り付け部材と、一端側において前記第2の取り付け部材に前記接合面と直交する水平方向に所定範囲で移動自在に支持される支持部材と、当該支持部材の他端側において前記固定軸と同心上で回転自在に支持される連結軸と、当該連結軸に回転自在に支持され前記ギアボックスに固定される支持アームとを具備することを特徴とする梁、床用制振装置。
【請求項2】
前記支持アームは、中央の軸受部において前記連結軸に回転自在に支持され当該軸受部から半径方向に延びて外側端部において前記ギアボックスの外側面に固定される一対からなることを特徴とする請求項1に記載の梁、床用制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁や床等の大スパンの構造物に対する歩行者や車両の移動により生じる振動を抑制するための制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の階層を備えて構築される大スパン架構建物の制振構造として、特許文献1に記載されるものが知られている。この制振構造は、一階層を形成する梁部材あるいは床部材の端部側に下端を接続して斜設される方杖材と、方杖材の上端と一階層の上の他階層との間に、付加振動系として直列に配設されて方杖材と他階層の梁部材あるいは床部材を接続する回転慣性質量ダンパー及びばね部材とを備えて構成される。付加振動系の周期は、梁部材あるいは床部材の周期と同調させることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-169605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の制振装置は、制振構造部を構成するために、上下の床に対し機器要素を通して接続する必要があるから、装置の設置に制約がある。
したがって、本発明は、装置の設置に大きな制約がなく、構造簡易な制振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の制振装置1は、柱Cの接合面C1に固定される第1の取り付け部材2と、当該第1の取り付け部材2に接合面C1と平行で水平の支持軸4により回転自在に支持されるギアボックス5と、当該ギアボックス5内において支持軸4に固着される受動小歯車6と、第1の取り付け部材2に固着され支持軸4に連結される回転軸7aを有するロータリダンパ7と、ギアボックス5内に支持軸4と平行に固着される固定軸8と、当該固定軸8に固着され受動小歯車6に噛み合ってギアボックス5と一体に支持軸4を中心に公転する駆動大歯車9と、梁Bに固着される第2の取り付け部材3と、一端側において第2の取り付け部材3に接合面C1と直交する水平方向に所定範囲で移動自在に支持される支持部材10と、当該支持部材10の他端側において固定軸8と同心上で回転自在に支持される連結軸12と、連結軸12に回転自在に支持されギアボックス5に固定される支持アーム11とを具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の制振装置においては、歯車機構と回転型ダンパの採用により、減衰力が増幅されて梁・床に伝えられるので、小型で制振効果が大きく、設置も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る制振装置の正面図である。
図2図1の制振装置の右側面図である。
図3図1の制振装置の左側面図である。
図4図1の制振装置の平面図である。
図5図1の制振装置における梁との連結部の拡大断面図である。
図6図1の制振装置における梁との連結部の拡大左側面である。
図7図1の制振装置における梁との連結部の拡大平面である。
図8図1の制振装置における支持アーム部の断面図である。
図9図1の制振装置におけるギアボックス部の断面図である。
図10図1の制振装置における振動時の左側面図である。
図11図1の制振装置における梁との連結部の他の実施形態を示すもので、(A)は側面図、(B)は正面図である。
図12図1の制振装置における梁との連結部のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は側面図、(B)は正面図である。
図13図1の制振装置における梁との連結部のさらに他の実施形態を示すもので、(A)は側面図、(B)は正面図である。
図14】2つのロータリーダンパを備えた制振装置の実施形態の平面図である。
図15図1の制振装置の概略的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1ないし図4において、制振装置1は、柱Cの垂直の接合面C1に対して一端側において水平に接続された梁Bの上下方向の振動を抑制するための制振装置であり、柱Cと梁Bとの間に介設される。制振装置1は、一端側において柱Cの垂直の接合面C1に第1の取り付け部材2を介して接続され、他端側において梁Bの下面B1
に第2の取り付け部材3を介して接続される。
【0009】
図9において、第1の取り付け部材であるブラケット2の平行一対の支持片2a間に、接合面C1と平行で水平の支持軸4が回転自在に支持される。ギアボックス5は、ブラケット2の支持片2a間において支持軸4上に回転自在に支持される。ギアボックス5内において、支持軸4上に受動小歯車6が固着される。したがって、ギアボックス5と受動小歯車6とは、支持軸4を中心に相対回転自在である。
【0010】
図9に示すように、支持軸4の一端側は、ブラケット2の一方の支持片2aを貫通し、カップリング4aを介してロータリダンパ7の回転軸7aに接続される。ロータリダンパ7は、ブラケット2の一方の支持片2aの外側に固着される。
【0011】
ギアボックス5内には、固定部材5aを介して固定軸8が支持軸4と平行に固着される。この固定軸8上に、受動小歯車6と噛み合う駆動大歯車9が固着される。したがって、梁Bの振動による連結軸12(固定軸8)の上下方向の変位に伴い、ギアボックス5が支持軸4を中心に回転すると、駆動大歯車9が、ギアボックス5と一体に、支持軸4を中心に受動小歯車6の周りを公転する。これにより、受動小歯車6が増速されて自転する。この受動小歯車6の回転はロータリダンパ7により制動される。
【0012】
図1図3において、第2の取り付け部材3は、梁Bの下面B1に固着される。第2の取り付け部材3は、支持部材10、支持アーム11、連結軸12を介して、ギアボックス5に接続される。したがって、ギアボックス5は、第2の取り付け部材3により、連結軸12を中心に回転自在に支持される。
【0013】
図5図6に示すように支持部材10は、梁Bの側方へ水平に延びる水平板部10aと、この水平板部10aから直交方向に下方へ延びる垂直板部10bと、この垂直板部10bを水平に貫通するように固着された軸受部10cとを具備する。軸受部10cに連結軸12が支承される。
【0014】
第2の取り付け部材3は、固定板部3aと、この固定板部3aとの間に支持部材10の水平板部10aを受ける摺動保持部3bとを具備する。水平板部10aは、摺動保持部3bにより、梁Bの幅方向には固定され、図6における隙間Gの範囲で梁Bの長手方向には移動自在に支持される。
【0015】
図1図8に示すように、支持アーム11は、中央の軸受部11aと、軸受部11aからギアボックス5の側面に平行に延びる一対のアーム部11bとを具備し、アーム部11bの端部において接続金具11cでギアボックス5の上下の側面に固定される。図9に示すように、軸受部11aは、ギアボックス5の固定軸8と同一軸線上に配置され、支持部材10の軸受部10cと対向して連結軸12を支承する。したがって、ギアボックス5は、固定軸8と同一軸線上の連結軸12を中心に回転自在であると共に、支持軸4を中心に回転自在である。
【0016】
図10に示すように、制振対象である梁Bに、柱Cとの接合部を中心に上下に揺れる振動が発生すると、ギアボックス5が支持アーム11を介して梁Bと共に振動するが、ギアボックス5は、実質的に支持軸4で柱Cに枢支され、連結軸12で梁Bに枢支されているので、ギアボックス5に回転半径の異なる2つの回転力が作用することになる。このような回転半径の差による回転のズレを吸収するために、支持部材10が、図6における隙間Gの範囲で梁Bの長手方向に移動自在に構成される。したがって、支持軸4や連結軸12に荷重(せん断力)が生じることはない。
【0017】
梁Bの上下方向の振動に伴い、ギアボックス5が連結軸12(固定軸8)を中心に回転しつつ、支持軸4を中心に回転すると、ギアボックス5と一体に駆動大歯車9が受動小歯車6の周りを公転する。これに伴い、駆動大歯車9に噛み合う受動小歯車6が自転する。この自転の速度は、支持軸4を中心とするギアボックス5の回転に対して増速される。受動小歯車6の回転は、支持軸4から回転軸7aを介してロータリダンパ7に伝わり、これにより減衰される。
【0018】
制振装置1は、梁Bの振動に伴う角度変位によるギアボックス5の回転運動を歯車6,9によりロータリダンパ7へ伝達する構造となっている。ロータリダンパ7の代表的な構造は、軸の回転を粘性体あるいは粘弾性体により制動する構造である。ロータリダンパ7へ入力される回転は歯車機構により増速される。また、増速された回転によりロータリダンパ7が出力する回転方向の減衰力は、歯車機構により増幅されて梁Bへ伝えられる。この歯車機構部の作用により、ダンパ単体で用いた場合と比較して、梁Bに対するより効率的な制振効果が得られる。
【0019】
梁Bの振動に伴う運動を歯車6,9同士で効果的にロータリダンパ7へ伝達するために、梁B側の歯車9は梁Bに固定され、ロータリダンパ7側の歯車6は回転自由に設置される。そして、歯車6,9同士は、リンク(腕)としてのギアボックス5で接続される構造である。
【0020】
以上、制振装置1の支持部材10が、梁Bのフランジの下面B1に接続される場合を説明したが、支持部材10の、梁Bへの接続部位は、これに限定されない。例えば、図11、12,13のように梁Bのフランジ部の上面や、梁Bの左右面、あるいは上下左右面に同時に接続して設置することもできる。また、干渉等の問題がなければ、ロータリダンパ7をギアボックス5の片側だけでなく、図14のように両側に配置することで、更に減衰力を向上させることができる。
【0021】
この制振装置1の構造と作用を図15の概略的機構説明図について説明する。歯車機構において梁Bの振動により歯車機構へ入力される角速度と歯車機構が出力する角速度の関係を式1に示す。同様にロータリダンパ7が出力する減衰力が歯車機構により出力されて梁Bへ伝わる際の減衰力の関係を式2に示す。
【数1】
ω:歯車Aに対する歯車Bの角速度[rad/s]
:歯車Bのピッチ円半径[m]
ω:歯車Aに対する腕Cの角速度[rad/s]
:歯車Aのピッチ円半径[m]
:歯車Aの歯数
:歯車Bの歯数
【数2】
:歯車Bのモーメント[Nm]
:腕Cのモーメント[Nm]
歯車機構により、式3に示すように、ロータリダンパ7が出力する減衰力が増幅されて梁Bに伝えられることから、ロータリダンパの小型化も可能となる。
【数3】
C:装置の減衰係数[Nm・s/rad]
:ロータリダンパの減衰係数[Nm・s/rad]
【符号の説明】
【0022】
1 制振装置
2 第1の取り付け部材(ブラケット)
2a 支持片
3 第1の取り付け部材
3a 固定板部
3b 摺動保持部
4 支持軸
4a カップリング
5 ギアボックス
5a 固定部材
6 受動小歯車
7 ロータリダンパ
7a 回転軸
8 固定軸
9 駆動大歯車
10 支持部材
10a 水平板部
10b 垂直板部
10c 軸受部
11 支持アーム
11a 軸受部
11b アーム部
11c 接続金具
12 連結軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15