(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】渦電流検知に基づいた機械力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 5/164 20200101AFI20220221BHJP
A61M 25/095 20060101ALI20220221BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
G01L5/164
A61M25/095
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018084843
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】エフサン・シャメリ
(72)【発明者】
【氏名】ババク・エブラヒミ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第4878513(JP,B2)
【文献】特許第6552816(JP,B2)
【文献】特許第6211299(JP,B2)
【文献】特許第4206195(JP,B2)
【文献】特許第5005128(JP,B2)
【文献】特許第3949730(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0030286(US,A1)
【文献】特許第4480645(JP,B2)
【文献】米国特許第6662034(US,B2)
【文献】欧州特許第0205851(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
A61M
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
対象の体内に挿入されるように構成されたカテーテルであって、前記カテーテルに適用する機械力に応じて折れ曲がるように構成された可撓性遠位部分を含むカテーテルと、
前記カテーテルの前記可撓性遠位部分によって保持された導電性素子であって、前記可撓性遠位部分が折れ曲がる際に前記導電性素子の位置が変化する、導電性素子と、
前記カテーテル内の前記導電性素子の近位に配置された少なくとも1つの送信コイルであって、前記導電性素子内に前記導電性素子の位置とともに変化する渦電流を誘導する交流磁場を発生させるように構成された少なくとも1つの送信コイルと、
前記カテーテル内の前記導電性素子の近位に配置された1つ以上の受信コイルであって、(i)前記送信コイルにより発生する磁場と、(ii)前記渦電流により発生する第2の磁場と、の重ね合わせに応じてそれぞれの信号を出力するように構成された1つ以上の受信コイルと、を備えた、装置。
【請求項2】
前記導電性素子が、前記カテーテルの前記可撓性遠位部分内に保持されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記導電性素子が、前記カテーテルの前記可撓性遠位部分の遠位端に取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記カテーテルが管を更に含み、前記カテーテルの前記可撓性遠位部分が、前記管のより近位側の部分と比較して高い可撓性を有する前記管の可撓性遠位部分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記カテーテルが管を更に含み、前記カテーテルの前記可撓性遠位部分が、前記管から遠位方向に延び、かつ前記管と比較して高い可撓性を有する円筒状要素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記円筒状要素が、前記管から0.5~2mmの距離にわたって遠位方向に延びている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記カテーテルの前記可撓性遠位部分が、少なくとも1つの溝を画定する形状に形成されていることにより高い可撓性を有するものとなっている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの溝が螺旋溝を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記受信コイルが出力する前記それぞれの信号に応じて前記機械力の大きさ及び方向を確定するように構成されたプロセッサを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
電子的インターフェースを更に備え、前記プロセッサは、デジタル信号を発生させるように更に構成され、前記電子的インターフェースは、前記デジタル信号をアナログ信号に変換するように構成され、前記アナログ信号は前記送信コイルの両側に印加されると前記送信コイルに前記交流磁場を発生させる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記受信コイルが前記送信コイル内に少なくとも部分的に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記送信コイルが前記受信コイルの周囲に巻かれている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記導電性素子がプレートを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記導電性素子が管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記導電性素子が中心開口部を画定する形状に形成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記カテーテルの前記可撓性遠位部分の遠位に接続されたアブレーション電極であって、前記カテーテルが前記対象の体内にある間、前記対象の組織内に焼灼電流を流すように構成された、アブレーション電極と、
前記中心開口部を通り、前記アブレーション電極に流体を供給するように構成された流体供給管と、を更に備えた、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記カテーテルの前記可撓性遠位部分の遠位で前記カテーテルに接続された少なくとも1つの生理学的センサと、
前記中心開口部を通り、前記生理学的センサに接続された少なくとも1本の導線と、を更に備えた、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療装置の分野に関し、詳細にはカテーテル用の機械力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
フーコー電流としても知られる渦電流は、伝導体が変化する磁場に曝された際、又は伝導体が静磁場中で振動させられた際に、伝導体内に誘導される電流の閉鎖ループである。
【0003】
その開示内容を本明細書に参照によって援用するところの米国特許第7,984,659号は、線状体の先端が障害物と接触した結果として線状体に長手方向軸の方向の圧縮力が適用された際の線状体の曲がり具合をセンサによって検出することが可能な測定装置について記載している。次いで、線状体の検出された曲がり具合は、曲がり具合と圧縮力との間の所定の関係に基づいて、線状体に適用する長手方向軸の方向の圧縮力に変換されることにより、線状体の移動方向における障害物の存在を圧縮力の増大に基づいて検知することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のいくつかの実施形態により、対象の体内に挿入されるように構成されたカテーテルであって、このカテーテルに適用する機械力に応じて折れ曲がるように構成された可撓性遠位部分を含むカテーテルを含む装置が提供される。装置は、カテーテルの可撓性遠位部分によって保持された導電性素子であって、可撓性遠位部分が折れ曲がる際に導電性素子の位置が変化する、導電性素子を更に含む。装置は、カテーテル内の導電性素子の近位に配置された少なくとも1つの送信コイルであって、導電性素子内に導電性素子の位置とともに変化する渦電流を誘導する交流磁場を発生させるように構成された少なくとも1つの送信コイルを更に含む。装置は、カテーテル内の導電性素子の近位に配置された1つ以上の受信コイルであって、(i)送信コイルにより発生する磁場と、(ii)渦電流により発生する第2の磁場と、の重ね合わせに応じてそれぞれの信号を出力するように構成された1つ以上の受信コイルを更に含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、導電性素子は、カテーテルの可撓性遠位部分内に保持される。
【0006】
いくつかの実施形態では、導電性素子は、カテーテルの可撓性遠位部分の遠位端に取り付けられている。
【0007】
いくつかの実施形態では、カテーテルは管を更に含み、カテーテルの可撓性遠位部分は、管のより近位側の部分と比較して高い可撓性を有する管の可撓性遠位部分を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、カテーテルは管を更に含み、カテーテルの可撓性遠位部分は、管から遠位方向に延び、かつ管と比較して高い可撓性を有する円筒状要素を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、円筒状要素は、管から0.5~2mmの距離にわたって遠位方向に延びている。
【0010】
いくつかの実施形態では、カテーテルの可撓性遠位部分は、少なくとも1つの溝を画定する形状に形成されていることにより高い可撓性を有するものとなっている。
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝は螺旋溝を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、装置は、受信コイルが出力するそれぞれの信号に応じて機械力の大きさ及び方向を確定するように構成されたプロセッサを更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、装置は電子的インターフェースを更に含み、プロセッサは、デジタル信号を発生させるように更に構成され、電子的インターフェースは、デジタル信号をアナログ信号に変換するように構成され、アナログ信号は送信コイルの両側に印加されると送信コイルに交流磁場を発生させる。
【0014】
いくつかの実施形態では、受信コイルは送信コイル内に少なくとも部分的に配置されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、送信コイルは受信コイルの周囲に巻かれている。
【0016】
いくつかの実施形態では、導電性素子はプレートを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、導電性素子は管を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、導電性素子は、中心開口部を画定する形状に形成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、装置は更に、
カテーテルの可撓性遠位部分の遠位に接続されたアブレーション電極であって、カテーテルが対象の体内にある間、対象の組織内に焼灼電流を流すように構成された、アブレーション電極と、中心開口部を通り、アブレーション電極に流体を供給するように構成された流体供給管と、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、装置は、
カテーテルの可撓性遠位部分の遠位でカテーテルに接続された少なくとも1つの生理学的センサと、中心開口部を通り、生理学的センサに接続された少なくとも1本の導線と、を更に含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態により、対象の体内のカテーテル内に配置された少なくとも1つの送信コイルを使用して、カテーテルの可撓性遠位部分によって送信コイルの遠位に保持された導電性素子内で渦電流を誘導する交流磁場を発生させることであって、これにより、カテーテルに適用する機械力に応じて可撓性遠位部分が折れ曲がる際に導電性素子の位置が変化し、渦電流が導電性素子の位置とともに変化する、ことを含む方法が更に提供される。本方法は、導電性素子の近位でカテーテル内に配置された1つ以上の受信コイルを使用して、(i)送信コイルにより発生する磁場と、(ii)渦電流により発生する第2の磁場と、の重ね合わせに応じてそれぞれの信号を出力することを更に含む。本方法は、プロセッサを使用して、受信コイルが出力するそれぞれの信号に応じて機械力の大きさ及び方向を確定することを更に含む。
【0022】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明を図面と併せ読むことによってより深い理解がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態に基づく、対象の体内に挿入されるように構成されたカテーテルを含む装置の概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態に基づく、
図1のカテーテル内に収容された様々な構成要素を示す。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態に基づく、
図1のカテーテル内に収容された様々な構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
概要
いくつかの用途において、カテーテルは対象の体内に挿入された後、身体から情報を取得し、かつ/又は身体を処置するために使用される。例えば、カテーテルを対象の心臓内に挿入した後、心臓の組織を焼灼することができる。
【0025】
このような用途では、カテーテルの遠位端に適用する機械力を測定することが有用であり得る。例えば、この力の大きさに基づき、遠位端と対象の組織との接触の有無を確認することができる。更に、組織によってカテーテルに加えられる力は、カテーテルによって組織に加えられる力に等しいことから、組織に加えられる接触圧力を特定することができる。更に、測定された力の方向に基づいて遠位端の向きを確定することができる。
【0026】
したがって、本発明の実施形態は、その遠位端に機械力センサを備えたカテーテルを提供するものである。センサは、導電性プレート(又は他の任意の適当な導電性素子)を含み、導電性プレートに近接して配置された送信コイル及び複数の受信コイルを更に含む。交流電流が送信コイルに流されて、交流磁場を発生させる。この磁場は導電性プレート内に渦電流を誘導し、この渦電流が受信コイルによって検出される二次磁場を発生させる。(説明を簡単にするため、受信コイルが渦電流を検出する、と言ってよい。)機械力が(例えば組織によって)カテーテルの遠位端に適用されると、送信コイルに対する導電性プレートの位置及び/又は向きが変化し得、その結果、受信コイルが渦電流の変化を検知する。これらの変化を分析することにより、プロセッサは機械力の大きさ及び方向を確定することができる。
【0027】
通常、導電性プレートを保持するカテーテルの遠位部分は、カテーテルの他の部分と比較して高い(すなわち増大した)可撓性を有するものである。例えば、遠位部分は、高い可撓性を付与する螺旋溝を画定する形状とすることができる。この高い可撓性は、カテーテルの遠位端に作用する機械力によって生じる導電性プレートの位置及び/又は向きの変化を増幅させる。
【0028】
有利な点として、カテーテルの可撓性遠位部分の近位で、カテーテル内の概ね同じ軸方向位置に送信コイル及び受信コイルが配置されることで、装置の製造プロセスを単純化することができる。例えば、送信コイルを受信コイルの周囲に巻くことで一体型のコイルパッケージを形成することができ、更にこのコイルパッケージをカテーテル内に簡単に設置することができる。これに対して、送信コイルがカテーテルの可撓性遠位部分の遠位に配置された場合、製造プロセスで受信コイルと送信コイルを別々に設置する必要があり、この設置法は、カテーテルの可撓性遠位部分を通して送信コイルをカテーテルの近位端に接続する導線を配線する必要があるために複雑なものとなる。更に、上述の導線は通常比較的細いものであるため、カテーテルの遠位部分の折れ曲がりによって、導線がカテーテルの使用中に破断する可能性がある。
【0029】
装置の説明
まず
図1を参照するが、
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、対象の体内に挿入されるように構成されたカテーテル22を含む装置20の概略図である。
【0030】
図1は、医師34が、カテーテル22を使用してカテーテルが対象の体内に置かれた状態で信号発生器(SIG GEN)28により発生する焼灼電流を組織内に流すことにより、対象26の心臓組織を焼灼している様子を示している。この手技を行うには、医師34は、最初にカテーテルを対象26の心臓25まで誘導する。次に、医師は、カテーテルの遠位部分29の遠位に接続されたアブレーション電極21からの焼灼信号を心臓25の組織内に流す。この手技の間、ポンプ31によって供給される灌注液を、カテーテルを介して電極21に供給し(
図2~3を参照して更に説明するように)、電極の開口部を通過させることができる。
【0031】
装置20は、カテーテルの遠位部分29によって保持された導電性素子24を含む。例えば、導電性素子24は遠位部分29内に保持され、かつ/又は遠位部分29の遠位端に固定され得る。導電性素子は、プレート、管、又は他の任意の適当に成形された導電性の材料片を含み得る。
【0032】
一般的に、カテーテルの遠位部分29は、カテーテルのより近位の部分と比較してより高い可撓性のものとなっている。(この点に関連して、「可撓性」には、横方向の可撓性及び軸方向の可撓性(例えば圧縮性)が含まれる。)例えば、遠位部分29は、高い可撓性をもたらす螺旋溝27のような少なくとも一本の溝を画定するように成形されることができる。これに代えるか又はこれに加えて、遠位部分29は、カテーテルのより近位の部分よりも高い可撓性を有する材料で作製されることができる。部分29の高い可撓性はそこに適用されるあらゆる機械力に対する部分29の応答を高め、その結果、機械力がカテーテルに適用されると導電性素子24の位置及び/又は向きは比較的大きく変化する。一般的には、保護可撓性管(図示せず)が遠位部分29に被せられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、遠位部分29は、管23のより近位の部分と比較して高い可撓性を有する、カテーテル22の主管23の可撓性遠位部分を含む。例えば、遠位部分29は管23の遠位の溝部分を含み得る。他の実施形態では、
図1に示されるように、遠位部分29は、管23から、例えば約0.5~2mmの距離Lにわたって遠位方向に延びている円筒状要素29aを含む(例えば、製造プロセスの間、円筒状要素29aは管23内に挿入されることにより、円筒状要素の近位端を管23によって保持することができる。)円筒状要素29aは、例えば、溝が形成されていることにより、かつ/又は管23よりも可撓性の高い材料で作製されていることにより、管23と比較して高い可撓性のものとなっている。例えば、円筒状要素29aは溝が形成されたステンレス鋼管で構成することができる(「ばね」と呼ぶこともできる)。
【0034】
装置20は、アブレーション電極21に代えるか又はこれに加えて、1つ以上の検知電極のような他の任意の適当な構成要素を含むことができる点に留意されたい。カテーテル22をアブレーション手技に使用する代わりに、医師はカテーテルを、心臓25内、又は対象26の身体の他の任意の部分の内部で他の任意の適当な手技(例えば電気解剖学的マッピングなど)に使用してもよい。
【0035】
通常、カテーテル22の近位端は、電子的インターフェース46を介して、信号発生器28及びポンプ31以外にプロセッサ(PROC)30を備えるコンソール48に接続されている。電子的インターフェース46は、アナログデジタル(A/D)変換器及びデジタルアナログ(D/A)変換器などの任意の適当な回路を含むことができる。この手技の間、プロセッサ30はデジタル信号を発生させ、この信号はインターフェース46によってアナログ信号に変換される。これらの信号は導電性素子24の近くに配置された送信コイル(
図2~3)の両側に印加されて、送信コイルに交流磁場を発生させる。この磁場は、導電性素子に渦電流を誘導し、この渦電流が導電性素子の近くの受信コイル(
図2~3)によって検出される。受信コイルはアナログ信号を発生させ、このアナログ信号はインターフェース46によってデジタル信号に変換される。プロセッサ30はデジタル信号を受信し、これらの信号を分析することにより、
図2~3を参照して以下で更に述べるように、カテーテルに作用する機械力の大きさ及び方向を確定する。
【0036】
一般的に、プロセッサ30は、単一のプロセッサとして、又は協調ネットワーク化若しくはクラスター化されたプロセッサ群として具体化することができる。プロセッサ30は、通常、プログラムされたデジタル計算装置であり、中央演算処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性の二次記憶装置、例えばハードドライブ若しくはCD ROMドライブ、ネットワークインターフェース及び/又は周辺デバイスを備える。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、当該技術分野で既知であるように、CPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信、又は格納のために結果が生成される。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを通して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に又は付加的に、磁気、光学、若しくは電子メモリなどの非一時的な有形の媒体上に提供及び/又は格納されてもよい。かかるプログラムコード及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載するタスクを行うように構成された、機械又は専用コンピュータを作り出す。
【0037】
次に
図2~3を参照すると、本発明のいくつかの実施形態による、カテーテル22内に収容された装置20の様々な構成要素が示されている。
図2は、これらの構成要素の側面図を示し、
図3は、これらの構成要素の正面図を示す。分かりやすくするため、
図2~3では、管23、遠位部分29、アブレーション電極21は図に示されていない。
【0038】
図2~3に示されるように、装置20は、カテーテル22内の導電性素子24の近位で、かつ通常は遠位部分29からも近位に、例えば導電性素子から0.5~2mmの距離に配置された送信コイル33を備える。通常は、第1の電気絶縁性シース40aが送信コイルと管23との間に配置されている。
【0039】
装置20は、3つ以上の受信コイル36のような複数の受信コイル36を更に含む。受信コイルのそれぞれは、カテーテル22の長手方向軸に対して軸方向、横方向、又は他の任意の適当な向きに方向付けることができる。いくつかの実施形態では、装置20は、外部磁場に応じてカテーテルの位置及び向きを示す信号を発生させる1つ以上の外部磁場検知コイル37を更に含む。(
図2~3では、異なるコイルが中実の構造として示されているが、それぞれのコイルは実際はきつく巻かれた導線からなるものである点に留意されたい。)
【0040】
図に示されるようないくつかの実施形態では、送信コイル33は中心開口部45を画定するような形状であるという点でリング形状である。このような実施形態では、受信コイル36は、少なくとも部分的に開口部45内に(すなわち送信コイル内に)配置することができる。例えば、「概要」で上述したように、送信コイルは受信コイル36の周囲に巻かれることができる。通常、このような実施形態では、第2の電気絶縁性シース40bが受信コイルと送信コイルとの間に配置されている。
【0041】
図1を参照して上述したように、カテーテル22が対象の体内にある間(例えば焼灼電流が対象の組織内に流される間)、交流電圧が送信コイルの両側に印加される。いくつかの実施形態では、この電圧は、10~300mVの振幅及び/又は3~20kHzの周波数を有する。この交流電圧が送信コイル33に交流磁場を発生させ、この交流磁場が導電性素子24内に渦電流を誘導する。この渦電流が送信コイルにより発生する磁場に重ね合わされる第2の磁場を発生させることにより、合成磁場が生じる。(詳細には、第2の磁場は、送信コイルにより発生する磁場と逆向きであるため、例えば、第2の磁場の大きさが大きくなるほど合成磁場の大きさがより小さくなることを意味する。)この合成磁場が受信コイルのそれぞれに電圧を誘導することにより、受信コイルのそれぞれが合成磁場に応じてそれぞれの電流又は電圧信号を出力する。
【0042】
図1を参照して更に上述したように、可撓性遠位部分は、カテーテルの可撓性遠位部分に適用する機械力に応じて折れ曲がる。導電性素子は可撓性遠位部分によって保持されているために可撓性遠位部分が折れ曲がると動き、そのため、カテーテルの可撓性遠位部分に適用する力によって導電性素子の位置及び/又は向きが変化し得る。この変化によって更に、誘導される渦電流に、ひいては受信コイルで誘導される電圧に変化が生じる。
【0043】
受信コイルは異なるそれぞれの位置にあり、かつ/又は互いに異なる向きであるため、導電性素子の位置及び向きは誘導電圧の確定関数である。したがって、プロセッサ30は、受信コイルが出力する信号から導電性素子の位置及び向きを確定することができる。プロセッサは、導電性素子の位置及び向きを考慮して、カテーテルに作用する機械力の大きさ及び方向を更に確定することができる。例えば、プロセッサは、導電性素子の位置及び向きを機械力の大きさ及び方向に対してマッピングする関数、又はルックアップテーブルを用いることができる。このような関数又はルックアップテーブルは、カテーテルに様々な大きさ及び方向の制御された力を加えながら導電性素子の位置及び向きを記録する較正手順において取得することができる。
【0044】
例えば、機械力がカテーテルの遠位部分を圧縮して導電性素子が送信コイル33に近付くように動くと、導電性素子内により大きな渦電流が誘導されるため、送信コイルにより発生する磁場と逆向きの第2の磁場がより大きくなる。その結果、受信コイルのそれぞれに誘導される電圧は低くなる。このより低い電圧に応じて、プロセッサ30は導電性素子の新たな位置、ひいては圧縮力の大きさを確定することができる。
【0045】
通常、導線38が、カテーテルを通ってカテーテルの近位端とコイルとの間に延びている。導線38がインターフェース46から送信コイル33に電気信号を伝送するため、送信コイルは、カテーテル22が対象の体内にある間、交流磁場を発生させることができる。導線38は更に、受信コイル36からインターフェース46に出力信号を伝送する。
【0046】
図1を参照して上述したアブレーション手技では、焼灼電流が信号発生器28からアブレーション電極21に伝送されることが求められる(
図1)。更に、いくつかの用途では、流体供給管42によってポンプ31からアブレーション電極に灌注液を供給することが必要な場合がある。これに代えるか又はこれに加えて、温度センサ(例えば熱電対)又は検知電極などの、カテーテルの可撓性遠位部分及び導電性素子24の遠位においてカテーテルに接続される1つ以上の生理学的センサによって、カテーテルの近位端に伝送される必要のある対象の生理学的パラメータを示す信号を出力させることができる。
【0047】
したがって、いくつかの実施形態において、導電性素子24は、管、導線、及び/又は他の要素を通すことができるような中心開口部(図では破線44によって示される)を画定するような形状である。例えば、導電性素子24は、例えば直径1.5~2.5mm、かつ/又は厚さ若しくは長さ1~2mmのリング状又は管状のものとすることができる。したがって、例えば、流体供給管42は、流体供給管が中心開口部を通してアブレーション電極に流体を供給できるように、導電性素子の中心開口部を通ることができる。これに代えるか又はこれに加えて、熱電対線、及び/又は焼灼電流を伝送する導線などの上記の生理学的センサに接続された導線を導電性素子に通してもよい。
【0048】
他の実施形態では、導電性素子24は閉鎖され、その結果、管、導線、又はその他の要素は、導電性素子に通されない。このような実施形態では、任意の必要な管、導線、又はその他の要素が導電性素子に沿って延びてよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、装置20はちょうど1つの送信コイルを含む。そのような実施形態では、装置20は異なるそれぞれの周波数で送信する3つ以上の送信コイルを含んでよく、そのため、上述したように、あらゆる機械力の大きさ及び方向を確定することができる。あるいは、装置20が1つだけの受信コイルを含む場合であっても、装置20はちょうど1つの送信コイルを含むことができ、プロセッサは任意の機械力の大きさを軸方向などの一方向のみに確定することができる。
【0050】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術には見られないそれらの変形例及び改変例をも含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0051】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
対象の体内に挿入されるように構成されたカテーテルであって、前記カテーテルに適用する機械力に応じて折れ曲がるように構成された可撓性遠位部分を含むカテーテルと、
前記カテーテルの前記可撓性遠位部分によって保持された導電性素子であって、前記可撓性遠位部分が折れ曲がる際に前記導電性素子の位置が変化する、導電性素子と、
前記カテーテル内の前記導電性素子の近位に配置された少なくとも1つの送信コイルであって、前記導電性素子内に前記導電性素子の位置とともに変化する渦電流を誘導する交流磁場を発生させるように構成された少なくとも1つの送信コイルと、
前記カテーテル内の前記導電性素子の近位に配置された1つ以上の受信コイルであって、(i)前記送信コイルにより発生する磁場と、(ii)前記渦電流により発生する第2の磁場と、の重ね合わせに応じてそれぞれの信号を出力するように構成された1つ以上の受信コイルと、を備えた、装置。
(2) 前記導電性素子が、前記カテーテルの前記可撓性遠位部分内に保持されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記導電性素子が、前記カテーテルの前記可撓性遠位部分の遠位端に取り付けられている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記カテーテルが管を更に含み、前記カテーテルの前記可撓性遠位部分が、前記管のより近位側の部分と比較して高い可撓性を有する前記管の可撓性遠位部分を含む、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記カテーテルが管を更に含み、前記カテーテルの前記可撓性遠位部分が、前記管から遠位方向に延び、かつ前記管と比較して高い可撓性を有する円筒状要素を含む、実施態様1に記載の装置。
【0052】
(6) 前記円筒状要素が、前記管から0.5~2mmの距離にわたって遠位方向に延びている、実施態様5に記載の装置。
(7) 前記カテーテルの前記可撓性遠位部分が、少なくとも1つの溝を画定する形状に形成されていることにより高い可撓性を有するものとなっている、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記少なくとも1つの溝が螺旋溝を含む、実施態様7に記載の装置。
(9) 前記受信コイルが出力する前記それぞれの信号に応じて前記機械力の大きさ及び方向を確定するように構成されたプロセッサを更に備える、実施態様1に記載の装置。
(10) 電子的インターフェースを更に備え、前記プロセッサは、デジタル信号を発生させるように更に構成され、前記電子的インターフェースは、前記デジタル信号をアナログ信号に変換するように構成され、前記アナログ信号は前記送信コイルの両側に印加されると前記送信コイルに前記交流磁場を発生させる、実施態様9に記載の装置。
【0053】
(11) 前記受信コイルが前記送信コイル内に少なくとも部分的に配置されている、実施態様1に記載の装置。
(12) 前記送信コイルが前記受信コイルの周囲に巻かれている、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記導電性素子がプレートを含む、実施態様1に記載の装置。
(14) 前記導電性素子が管を含む、実施態様1に記載の装置。
(15) 前記導電性素子が中心開口部を画定する形状に形成されている、実施態様1に記載の装置。
【0054】
(16) 前記カテーテルの前記可撓性遠位部分の遠位に接続されたアブレーション電極であって、前記カテーテルが前記対象の体内にある間、前記対象の組織内に焼灼電流を流すように構成された、アブレーション電極と、
前記中心開口部を通り、前記アブレーション電極に流体を供給するように構成された流体供給管と、を更に備えた、実施態様15に記載の装置。
(17) 前記カテーテルの前記可撓性遠位部分の遠位で前記カテーテルに接続された少なくとも1つの生理学的センサと、
前記中心開口部を通り、前記生理学的センサに接続された少なくとも1本の導線と、を更に備えた、実施態様15に記載の装置。
(18) 方法であって、
対象の体内のカテーテル内に配置された少なくとも1つの送信コイルを使用して、前記カテーテルの可撓性遠位部分によって前記送信コイルの遠位に保持された導電性素子内で渦電流を誘導する交流磁場を発生させることであって、これにより、前記カテーテルに適用する機械力に応じて前記可撓性遠位部分が折れ曲がる際に前記導電性素子の位置が変化し、前記渦電流が前記導電性素子の前記位置とともに変化する、ことと、
前記導電性素子の近位で前記カテーテル内に配置された1つ以上の受信コイルを使用して、(i)前記送信コイルにより発生する磁場と、(ii)前記渦電流により発生する第2の磁場と、の重ね合わせに応じてそれぞれの信号を出力することと、
プロセッサを使用して、前記受信コイルが出力する前記それぞれの信号に応じて前記機械力の大きさ及び方向を確定することと、を含む、方法。
(19) 前記カテーテルの前記可撓性遠位部分の遠位に接続されたアブレーション電極を使用して、前記対象の組織内に焼灼電流を流すことを更に含み、前記交流磁場を発生させることは、前記焼灼電流が前記組織内に流される間、前記交流磁場を発生させることを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記導電性素子が、中心開口部を画定する形状に形成され、前記方法が、前記焼灼電流を前記組織内に流す間、前記中心開口部を通して前記アブレーション電極に流体を供給することを更に含む、実施態様19に記載の方法。