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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】分析装置及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20220221BHJP
   G01N 21/17 20060101ALN20220221BHJP
【FI】
G01N15/14 B
G01N15/14 C
G01N21/17 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018099790
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019035733
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2017155421
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】増田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 由紀夫
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/058699(WO,A1)
【文献】米国特許第9562860(US,B1)
【文献】特開平06-288895(JP,A)
【文献】特開平08-320285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有形成分を含む検体の流路を有するフローセルと、
前記流路を透過した光を少なくとも第一光路と第二光路とに分岐させる分岐部と、
前記第一光路の光と前記第二光路の光とを用いて、前記流路内の前記検体の画像を撮像する第一撮像部及び第二撮像部と、
前記撮像した画像を処理する制御部と、
を備え、
前記第一撮像部と前記第二撮像部とは、同じ視野角を有するが、特性が異なる画像を撮像する、分析装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一撮像部によって撮像された画像から前記有形成分の位置情報を生成し、前記位置情報に基づいて前記第二撮像部によって撮像された画像から前記有形成分の画像を切り出す処理を行う、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記分岐部から前記第一光路に分岐した光を用いて前記第一撮像部が撮像した画像と、前記分岐部から前記第二光路に分岐した光を用いて前記第二撮像部が撮像した画像とを対比して、前記有形成分の検出処理を行う、請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第一撮像部は、入射光量を減少させる光学部材を備え、前記第一撮像部の被写界深度は前記第二撮像部の被写界深度よりも大きい、請求項1から3の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記第二撮像部は所定の波長の光を透過する光学フィルタを備え、前記第一撮像部に入射する光と、前記第二撮像部に入射する光の波長特性が異なる、請求項1から4の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記第一撮像部の画素数が、前記第二撮像部の画素数よりも小さい、請求項1から5の何れか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
有形成分を含む検体の流路を有するフローセルに光源からの光を照射する工程と、
前記流路を透過した光を少なくとも第一光路と第二光路とに分岐させる工程と、
前記第一光路の光を用いて前記流路内の前記検体の画像である第一画像を撮像する工程と、
前記第二光路の光を用いて前記第一画像と同じ視野角を有するが、特性が異なる第二画像を撮像する工程と、
前記第一画像から前記有形成分を含む第一切り出し画像を切り出し、前記第一切り出し画像の位置情報を特定する工程と、
前記位置情報に基づいて前記第二画像から前記有形成分の第二切り出し画像を切り出す工程と、
を含む分析方法。
【請求項8】
前記第一切り出し画像と前記第二切り出し画像とを対比して、前記有形成分を検出する工程を更に含む、請求項7に記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
採取した尿の検査において、透明な部材で形成されたフローセルの流路を流れる尿検体をフローセルの壁越しに撮像することが考えられている。例えば、フローセル内に設けられた流路を流れる尿検体を撮像し、撮像された画像を解析することにより尿中の沈渣成分(血球、上皮細胞、円柱、細菌、結晶などの尿中の有形(固形)成分)の分析を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置では、検出領域を通過する尿検体中の沈渣成分を検出器でとらえ、遅延時間が経過した後、検出領域よりも下流の撮像領域でパルス光源を発光させると共に沈渣成分を撮像している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-288895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フローセルの流路の中央部と壁面近くとでは沈渣成分が流れる速度が異なるため、フローセル内の沈渣成分の通過位置を検出し、この通過位置によって遅延時間を調整することが行われている。このため、制御が複雑となる。また、沈渣成分を検出領域において検出するための光学系、及び沈渣成分を撮像領域において撮像するための光学系が夫々必要となるため、装置として複雑となり製造コストも高くなる。
【0005】
本発明の目的は、検体中の有形成分の検出及び分析を、より低コストで実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、有形成分を含む検体の流路を有するフローセルと、前記流路を透過した光を少なくとも第一光路と第二光路とに分岐させる分岐部と、前記第一光路の光と前記第二光路の光とを用いて、前記流路内の前記検体の画像を撮像する第一撮像部及び第二撮像部と、前記撮像した画像を処理する制御部と、を備え、前記第一撮像部と前記第二撮像部とは、同じ視野角を有するが、特性が異なる画像を撮像する、分析装置である。
【0007】
また、本発明の態様は、上記した分析装置に対応する方法の発明を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検体中の有形成分の検出及び分析を、より低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る分析装置の概略構成を示した図である。
図2】フローセルの概略構成を示した図である。
図3】合流部及びテーパ部付近の概略構成を示した図である。
図4】第四通路を流通するシース液と検体の分布を示した図である。
図5】有形成分を分類するフローを示したフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係る分析装置の概略構成を示した図である。
図7】有形成分を分類するフローを示したフローチャートである。
図8】第3の実施形態に係る分析装置の概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る分析装置20の概略構成を示した図である。分析装置20は、撮像装置1を備えている。撮像装置1は、検体として例えば尿を撮像し、撮像された画像を解析することにより例えば尿中の有形成分の分析を行う。ただし、撮像装置1は、例えば血液や体液などの尿以外の液体検体中の有形成分の分析に対して適用することも可能である。
【0012】
撮像装置1は、検体を撮像する撮像部10、撮像用の光源12、及びフローセルユニット13を備える。フローセルユニット13は、検体が流通するフローセル13Aを固定配置するステージ(図示省略)を備える。フローセル13Aはステージに対して脱着自在としてもよい。
【0013】
撮像装置1は、対物レンズ101、分岐部102、第一レンズ群103A、第二レンズ群103B、マスク104、第一カメラ105A、第二カメラ105Bを備えている。第一カメラ105A及び第二カメラ105Bは、例えばCCD(Charge Coupled Device)
イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージ
センサなどの撮像素子を用いて撮像を行う。以下では、対物レンズ101、分岐部102、第一レンズ群103A、マスク104、第一カメラ105Aを合わせて第一撮像部100Aといい、対物レンズ101、分岐部102、第二レンズ群103B、第二カメラ105Bを合わせて第二撮像部100Bという。第一レンズ群103A及び第二レンズ群103Bは、夫々接眼レンズを含み、さらに結像レンズを有する場合もある。フローセル13Aは、光源12と対物レンズ101との間に配置され、光源12及び対物レンズ101は、第一撮像部100Aと第二撮像部100Bとで共用される。
【0014】
分析装置20には、制御部としてのコントローラ14が設けられている。コントローラ14は、CPU14A、ROM14B、RAM14C、EEPROM14D、およびインターフェイス回路14Eを備えており、バス線14Fにより相互に接続されている。
【0015】
CPU(central processing unit)14Aは、ROM(read only memory)14Bに
格納されてRAM(random access memory)14Cに読み込まれたプログラムに基づいて動作し、分析装置20の全体を制御する。ROM14Bには、CPU14Aを動作させるためのプログラムやデータが格納されている。RAM14Cは、CPU14Aにワーク領域を提供するとともに、各種のデータやプログラムを一時的に記憶する。EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)14Dは、各種の設定データ
などを記憶する。インターフェイス回路14Eは、CPU14Aと各種回路との間の通信を制御する。
【0016】
インターフェイス回路14Eには、第一撮像部100A、第二撮像部100B、光源12、第一ポンプ15A及び第二ポンプ15Bの制御線が接続されており、これらの機器が、コントローラ14からの制御信号によって制御される。第一ポンプ15Aは、第一供給管132Aを介してフローセル13Aにシース液を供給するポンプであり、第二ポンプ15Bは、第二供給管133Aを介してフローセル13Aに検体を供給するポンプである。
シース液とは、フローセル13A中の検体の流れを制御する液体であり、例えば検体が尿である場合に生理食塩水が適用される。但し、生理食塩水以外の溶液をシース液として用いてもよい。
【0017】
分岐部102は、フローセル13Aからの光を2以上の方向に分岐させる。分岐部102は、例えばハーフミラーなどのスプリッタであり、対物レンズ101を通過した光の一部を透過させ、残りを反射することにより、光を2方向に分岐している。そして、分岐された光のうち、分岐部102を透過した光が第一レンズ群103Aに入射され、第一カメラ105Aが有する撮像素子の撮影面に入射する。すなわち、第一撮像部100Aにおいて撮像に供される。一方、分岐部102で反射された光が第二レンズ群103Bに入射され、第二カメラ105Bが有する撮像素子の撮像面に入射する。すなわち、第二撮像部100Bにおいて撮像に供される。分岐部102と第一カメラ105Aとの間の光の光路を第一光路といい、分岐部102と第二カメラ105Bとの間の光の光路を第二光路という。また、図1に示すように、分岐部102は対物レンズ101の光軸11B上に配置されている。また、図1では、第一光路の光軸を111Aで示し、第二光路の光軸を111Bで示している。
【0018】
マスク104は、分岐部102と第一レンズ群103Aとの間に配置されている(すなわち、第一光路に挿入されている)。マスク104は、板に円形の穴を開けて形成され、第一レンズ群103Aの光軸111Aがマスク104の穴の中心軸を通り、第一光路の光軸111Aと直交する位置に配置されている。マスク104は、第一光路において光の一部を遮ることにより第一カメラ105Aへ向かう光の光量を減少させる絞りとして機能する。マスク104によって第一カメラ105Aの被写界深度が深くなる。
【0019】
図2は、フローセル13Aの概略構成を示した図である。フローセル13Aは、第一板130と第二板131とを接合(例えば熱圧着)することにより形成される。図2は、第一板130側からフローセル13Aを見た図である。なお、図2に示すフローセル13Aの幅方向を直交座標系におけるX軸方向、長さ方向をY軸方向、厚さ方向をZ軸方向とする。撮像される検体はフローセル13A内でY軸方向に流れる。対物レンズ101の光軸11Bは、Z軸方向に配置されている。
【0020】
フローセル13Aの材料には、PMMA(アクリル樹脂)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PP(ポリプロピレン)、石英ガラスといった例えば90%以上の可視光透過性がある材料を採用することができる。
【0021】
第一板130には、シース液を供給するための第一供給口132、検体を供給するための第二供給口133、シース液及び検体を排出するための排出口134が設けられている。第一供給口132、第二供給口133、排出口134は、夫々第一板130を貫通している。第一供給口132は第一板130の長手方向の一端側に設けられており、第二供給口133は第一板130の長手方向の他端側に設けられおり、排出口134は第一板130の長手方向の第一供給口132と第二供給口133との間に設けられている。
【0022】
第一供給口132、第二供給口133、排出口134は、互いに通路135A、135B、136、138によって連通されている。これら通路135A、135B、136、138は、第一板130の接合面側の表面から断面が矩形となるように凹んで形成されている。また、これら通路135A、135B、136、138の断面は、深さ方向(図2のZ軸方向)よりも幅方向(図2のX軸方向)のほうが大きくなるように形成されている。第一板130と第二板131とを接合すると、第二板131は、通路135A、135B、136、138を形成する壁材となる。
【0023】
第一供給口132には、第一通路135A及び第二通路135Bが接続されている。第一通路135A及び第二通路135Bは、夫々逆回りに、第一板130の外縁に沿って第二供給口133側に向かい、合流部137において合流している。また、第二供給口133には、第三通路136が接続されており、第三通路136は、合流部137において、第一通路135A及び第二通路135Bと合流している。合流部137は、第四通路138を介して排出口134に接続されている。第四通路138には、合流部137から排出口134に向かって第四通路138の深さ(第一板130の板厚方向(Z軸方向)の長さ)が徐々に小さくなるテーパ形状に形成されたテーパ部138Aが形成されている。テーパ部138Aには、例えば2°~8°の傾斜が設けられている。
【0024】
第一供給口132には、図1に示した第一供給管132Aが接続され、第二供給口133には、図1に示した第二供給管133Aが接続され、排出口134には、排出管(図示省略)が接続されている。第一供給管132Aから第一供給口132に供給されたシース液は、第一通路135A及び第二通路135Bを流通する。第二供給管133Aから第二供給口133に供給された検体は第三通路136を流通する。そして、シース液及び検体が合流部137において合流して第四通路138を流通し、排出口134から排出管に排出される。
【0025】
図3は、合流部137及びテーパ部138A付近の概略構成を示した図である。合流部137においては、第三通路136が第二板131側に偏って配置されており、検体は、合流部137において、第二板131に沿って流れる。
【0026】
図4は、第四通路138を流通するシース液と検体の分布を示した図である。図4における上側からシース液と検体とが別々に供給された後、合流部137で合流している。合流部137においてシース液と検体とが合流した直後では、シース液内の検体は、第二板131の壁面側の比較的狭い範囲に集中している(図4のA-A断面参照)。その後、検体がテーパ部138Aを流通すると、検体がシース液に押されて第二板131の壁面近くで壁面に沿って扁平状に広がる(図4のB-B断面参照)。さらに検体が流れると、Tubular-pinch効果により検体が第二板131の壁面から離れて、第四通路138の中央方向
へ持ち上げられる(図4のC-C断面参照)。
【0027】
有形成分の分布は、シース液中での検体流体の分布の影響を受ける。より多くの有形成分を撮像可能な位置において撮像を行うことにより、有形成分の分析精度を高めることができる。フローセル13A中では、図4の断面図に示されるように、Y軸方向の位置によって検体の流れが変化する。図4のC-C断面の位置では、B-B断面の位置よりも、Z軸方向における検体の幅が大きくなる。図4のC-C断面の位置では、検体中の有形成分がZ軸方向に広がって分布するため、有形成分の撮像には不向きである。
【0028】
一方、図4のB-B断面の位置では、上方からシース液が検体を第二板131に押しつけるように流れ、検体がシース液で押しつぶされて薄く広がる。そのため、図4のB-B断面の位置では、検体中の有形成分がZ軸方向に広がらずに存在しており、焦点が合いやすい。なお、シース流体、検体流体とも層流を形成しており、ほとんど混ざり合うことはない。このようなB-B断面の位置は、有形成分を撮像するのに適したY軸方向の位置で
あるため、このY軸方向の位置で検体を撮像する。この位置を撮像位置といい、この撮像位置に対物レンズ101の光軸11Bを合わせている。
【0029】
第一撮像部100Aでは、第一光路にマスク104が挿入されて第一カメラ105Aへ向かう光量が絞られる(開口数が減少する)。一方、第二光路には、マスク104に相当する絞りは設けられていない。このため、第一撮像部100Aで撮像される画像の被写界深度は、第二撮像部100Bで撮像される画像の被写界深度よりも深くなっている。これ
に対し、第二撮像部100Bの分解能は、第一撮像部100Aの分解能よりも高くなっている。なお、マスク104に形成する穴の直径は、第一撮像部100Aにおいて所望の開口数になるように設定する。所望の開口数は、第一撮像部100Aに要求される被写界深度に応じて設定することができる。
【0030】
また、第二撮像部100Bで撮像される画像の被写界深度が、第一撮像部100Aで撮像される画像の被写界深度に含まれるように、第二撮像部100Bの被写界深度が設定されている。
【0031】
第一カメラ105A及び第二カメラ105Bで、フローセル13Aを流通する検体中の有形成分の静止画像を同時に撮像する。撮像は、拡大撮像であり、光源12の点灯時間と第一カメラ105A及び第二カメラ105Bの撮像時間(露光時間)は、コントローラ14により同期される。光源12からフローセル13Aには平行光が入射する。撮像に際して光源12を1~複数回点灯させる。光源12の点灯時間は検体の流速に依存し、被写体ぶれが許容範囲内となるように、例えば0.1~10μsecに設定される。1露光に対して、光源12を複数回発光させることにより、一画像に含まれる有形成分の数を多くしてもよい。より多くの有形成分を撮像することにより、有形成分の分析精度をさらに高めることができる。この場合の光源12の点滅タイミングは、同じ検体が撮像されないように、検体の流速と光源12の点灯時間との関係を考慮して決定する。光源12は、例えばキセノンランプまたは白色LEDを採用することができるが、これに限らず、他の光源を採用することも可能である。このような画像を複数撮像する。
【0032】
光路を分岐部102で第一光路と第二光路とに分岐させ、第一光路と第二光路とのうちの第一光路のみにマスク104を設けることで、フローセル13Aを透過した光源12からの光の像を第一撮像部100Aと第二撮像部100Bとで同時に撮像すると、視野角が同じで被写界深度及び分解能などの特性が異なる2つの画像を取得することができる。被写界深度が第二撮像部100Bより深い第一撮像部100Aで撮像した画像は、有形成分にピントが合う範囲が広いため、有形成分の位置、数を求めるのに適している。一方、分解能がより高い第二撮像部100Bで撮像した画像は、細胞核等の形態観察や種類別に分類した有形成分をさらに詳細に分類をするのに適している。
【0033】
CPU14Aは、第一撮像部100A及び第二撮像部100Bを用いたフローセル13Aを流れる検体の撮像を行い、第一撮像部100Aにより撮像された画像から、有形成分の位置、大きさ、数を把握し、把握された有形成分の大きさから画像の切り出しサイズを決定し、切り出し画像を生成する。切り出し画像は、背景画像と撮像した画像とを比較し、差異がある箇所を四角で囲ってその内部の画像を切り出した画像である。
【0034】
CPU14Aは、切り出し画像の生成に先立って、記憶された画像のデータを用いて、画像ごとに、各画素の画素値を平均化したものを背景画像として作成する。画素値は各画素の輝度でも良くRGB値でもよい。切り出し画像は、CPU14AがROM14Bに格納されているプログラム(切り出し処理)を実行することにより生成される。切り出し画像は、切り出し位置、切り出しサイズと共にRAM14Cに記憶される。例えば、CPU14Aは、撮像された画像に含まれるすべての有形成分について切り出し画像を生成する。
【0035】
CPU14Aは、第一撮像部100Aにより撮像された画像から生成された切り出し画像(以下、第一切り出し画像という)と同じ切り出し位置及び同じ切り出しサイズの画像を、第二撮像部100Bにより撮像された画像から切り出して切り出し画像(以下、第二切り出し画像という)を生成する。そして、第一切り出し画像と第二切り出し画像とを関連付けてRAM14Cに記憶させる。第一切り出し画像及び第二切り出し画像は、CPU
14Aにより各種分析に供される。
【0036】
第一撮像部100Aで撮像された画像から有形成分を認識可能なため、第二撮像部100Bで撮像した画像から有形成分を認識する処理を実施する必要がない。このように、第一撮像部100Aにより撮像された画像に基づいて、有形成分が存在する位置、大きさ、数を把握し、第二撮像部100Bにより撮像された画像に基づいて、有形成分の細かな形態観察を実施する。この形態観察により、有形成分を高精度に分析及び分類することができる。
【0037】
図5は、有形成分を分類するフローを示したフローチャートである。本フローチャートは、CPU14Aによって実行される。
【0038】
ステップS101では、CPU14Aは、第一撮像部100A及び第二撮像部100Bによって撮像される画像を取得する。以下では、第一撮像部100Aによって撮像された画像を第一画像といい、第二撮像部100Bによって撮像された画像を第二画像という。
【0039】
ステップS101の処理が完了するとステップS102へ進み、CPU14Aは、第一画像から有形成分を切り出して第一切り出し画像を生成し、RAM14Cに記憶させる。
【0040】
ステップS102の処理が完了するとステップS103へ進み、CPU14Aは、第一切り出し画像の位置情報及び特徴量を取得する。第一切り出し画像の位置情報及び特徴量は、第一切り出し画像と関連付けてRAM14Cに記憶される。特徴量には、色、形状、大きさを例示できる。特徴量の取得には、予めROM14Bに記憶されたプログラムが用いられる。
【0041】
ステップS103の処理が完了するとステップS104へ進み、CPU14Aは、第二画像から有形成分を切り出して切り出し画像(第二切り出し画像)を生成する。第二切り出し画像は、複数の第一切り出し画像の夫々の位置情報に基づいて、第一切り出し画像と同じ位置で同じサイズの画像を切り出すことにより生成される。
【0042】
ステップS104の処理が完了するとステップS105へ進み、CPU14Aは、第二切り出し画像の特徴量を取得する。第二切り出し画像の特徴量は、第二切り出し画像と関連付けてRAM14Cに記憶される。
【0043】
ステップS105の処理が完了するとステップS106へ進み、CPU14Aは、ステップS103及びステップS105で取得された特徴量に基づいて、有形成分の分類を行う。分類には、予めROM14Bに記憶されたプログラムが用いられる。例えばCPU14Aは、第一切り出し画像の特徴量または第二切り出し画像の特徴量と、予めROM14Bに記憶されている有形成分毎の特徴量と、を比較することにより有形成分の分類を行う。
【0044】
ステップS106の処理が完了するとステップS107へ進み、CPU14Aは、ステップS106で分類された有形成分の種類毎に有形成分を計数し、次いでステップS108へ進んでステップS107での計数結果を出力する。この計数結果に基づいて、CPU14Aが、各種分析を行ってもよい。
【0045】
このように第一切り出し画像に基づいて、有形成分の位置や数を特定することができ、第二切り出し画像に基づいて、有形成分の分類を行うことにより、有形成分の分析精度を高めることができる。また、第一画像及び第二画像という異なる特性を備える画像を取得する際に、光源12及び対物レンズ101が夫々1つで済む。また、視野角が同じである
第一画像と第二画像とを同時に撮像することにより、第一画像と第二画像との撮像に遅延時間を設ける必要ないため、装置及び制御を簡略化することができる。これにより、検体中の有形成分の検出及び分析を、より低コストで実現することができる。
【0046】
なお、上記説明では、光量を減少させる光学部材としてマスク104を採用しているが、これに代えて、光学スリットを採用することもできる。
【0047】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、マスク104によって第一画像の被写界深度及び分解能を変化させているが、第2の実施形態では、第一撮像部100Aにマスク104を配置することに代えて、第二撮像部100Bに光学フィルタ106を配置する。以下では、主に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0048】
図6は、第2の実施形態に係る分析装置20の概略構成を示した図である。第一撮像部100Aにおいて、マスク104が設けられていない。第二撮像部100Bにおいて、第二カメラ105Bと第二レンズ群103Bとの間に光学フィルタ106が設けられている。光学フィルタ106は、例えば、所定の波長の光のみを透過する光学フィルタである。
【0049】
例えば、尿検体中の沈渣成分として赤血球を検出する場合について説明する。赤血球は緑色を吸収するため、緑色を透過する光学フィルタ106を設けることで、検体中の赤血球以外の有形成分を第二カメラ105Bにより撮像することができる。このときに同時に第一カメラ105Aによって撮像された画像には、赤血球を含む有形成分が撮像されている。そして、第一画像において認知できる有形成分が、第二画像では認知できない場合には、この有形成分は赤血球であると分類できる。したがって、赤血球と、赤血球によく似たシュウ酸カルシウム結晶などとを精度よく区別することができる。光学フィルタ106の透過波長は、検体流体や有形成分に応じて、適宜選択することが可能である。光学フィルタ106は、区別したい有形成分に応じて容易に付け替え可能である。
【0050】
このように、光学フィルタ106を用いることにより、検体中の有形成分の分類が容易に可能となる。CPU14Aは、第一画像から第一切り出し画像を生成し、第一切り出し画像と同じ位置及びサイズの第二切り出し画像を第二画像から生成して第一切り出し画像と比較し有形成分の分類を行う。
【0051】
図7は、有形成分を分類するフローを示したフローチャートである。本フローチャートは、CPU14Aによって実行される。
【0052】
ステップS201からステップS205までは、CPU14Aが、図5に示したステップS101からステップS105と同じ処理を実行する。
【0053】
ステップS205の処理が完了するとステップS206へ進み、CPU14Aは、ステップS203及びステップS205で取得された特徴量に基づいて、有形成分の分類を行う。例えば、第一切り出し画像では有形成分が認知できるが、対応する同じ位置の第二切り出し画像では有形成分が認知できない場合には、光学フィルタ106によって透過できなかった波長の光に対応する有形成分であると分類される。分類には、予めROM14Bに記憶されたプログラムが用いられる。
【0054】
ステップS206の処理が完了するとステップS207へ進み、CPU14Aは、ステップS206で分類された有形成分を計数し、次いでステップS208へ進んでステップS207の計数結果を出力する。この計数結果に基づいて、CPU14Aが、各種分析を行ってもよい。また、CPU14Aは、分類した第一切り出し画像に基づいて有形成分を
分析してもよく、第二切り出し画像の中で有形成分が認識できる画像に基づいて有形成分を分析してもよい。
【0055】
このように第一切り出し画像及び第二切り出し画像に基づいて、有形成分の分類を行うことにより、有形成分の分析精度を高めることができる。また、複数の光路のうち一方に光学フィルタ106を挿入することにより、第一撮像部100A及び第二撮像部100Bに入射する光の波長特性が異なる。そのため、第一画像及び第二画像という異なる特性を備える画像を取得する際に、光源12及び対物レンズ101が夫々1つで済む。また、同じ視野範囲を同時に撮影することにより、第一画像と第二画像との撮像に遅延時間を設ける必要ないため、装置及び制御を簡略化することができる。これにより、検体中の有形成分の検出及び分析を、より低コストで実現することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
第1の実施形態及び第2の実施形態では、撮像部として第一撮像部100A及び第二撮像部100Bを設けているが、さらに多くの撮像部を設けることもできる。また、第1の実施形態に係るマスク104と第2の実施形態に係る光学フィルタ106とは、組み合わせることができる。また、穴径の異なる複数のマスクを異なる撮像部に夫々設けることもできる。また、透過する光の波長が異なる複数の光学フィルタを異なる撮像部に夫々設けることもできる。また、スリットを備えることもできる。以下、撮像部を3つ設ける構成について説明する。
【0057】
図8は、第3の実施形態に係る分析装置20の概略構成を示した図である。撮像装置1は、第一撮像部100A、第二撮像部100B、第三撮像部100Cを備えている。また、撮像装置1は、第一分岐部102A及び第二分岐部102Bを備えている。第一撮像部100Aは、対物レンズ101、第一分岐部102A、第一レンズ群103A、マスク104、第一カメラ105Aを備えている。第二撮像部100Bは、対物レンズ101、第一分岐部102A、第二分岐部102B、第二レンズ群103B、光学フィルタ106、第二カメラ105Bを備えている。第三撮像部100Cは、対物レンズ101、第一分岐部102A、第二分岐部102B、第三レンズ群103C、第三カメラ105Cを備えている。
【0058】
第一レンズ群103A、第二レンズ群103B、第三レンズ群103Cは、夫々接眼レンズを含み、さらに結像レンズを有する場合もある。対物レンズ101および光源12は、第一撮像部100Aと第二撮像部100Bと第三撮像部100Cとで共用される。
【0059】
第一分岐部102A及び第二分岐部102Bは、例えばハーフミラーなどのスプリッタである。第一分岐部102Aは、対物レンズ101を通過した光の一部を透過させ、残りを反射することにより、光を2方向に分岐している。第一分岐部102Aを透過する光が第一レンズ群103Aに入射され、第一撮像部100Aにおいて撮像に供される。
【0060】
第二分岐部102Bは、第一分岐部102Aで反射した光の一部を透過させ、残りを反射することにより、光を更に2方向に分岐している。第二分岐部102Bを透過する光が第二レンズ群103Bに入射され、第二撮像部100Bにおいて撮像に供される。第二分岐部102Bで反射される光が第三レンズ群103Cに入射され、第三撮像部100Cにおいて撮像に供される。
【0061】
コントローラ14には、第一撮像部100A、第二撮像部100B、第三撮像部100C、光源12、及び、第一ポンプ15A及び第二ポンプ15Bが接続されており、これらの機器が、コントローラ14によって制御される。
【0062】
CPU14Aは、第一撮像部100A、第二撮像部100B、及び第三撮像部100Cによって同じ視野角の画像を同時に撮像する。そして、第一撮像部100Aにより撮像された画像から、有形成分の位置、大きさ、数を把握し、第二撮像部100B及び第三撮像部100Cにより撮像された画像から検体中の有形成分の分類を実施し、第三撮像部100Cにより撮像された画像に基づいて、有形成分の細かな形態観察を実施する。マスク104の穴径や光学フィルタ106の種類は、有形成分の種類や分析内容に応じて適宜選択する。有形成分の分析では、図5または図7に示したフローチャートと同様の処理を行えばよい。
【0063】
以上説明したように、3つ以上の撮像部を備える場合であっても、同じ視野角の画像を同時に撮像することができるため、装置及び制御を簡略化することができる。これにより、検体中の有形成分の検出及び分析を、より低コストで実現することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、例えば、第一撮像部100Aに第一カメラ105Aへの入射光量を減少させる光学部材を設けたり、第二撮像部100Bに光学フィルタ106を設けたりしているが、これはどこか1つの撮像部に光学部材または光学フィルタを設ければよいことは言うまでもない。
【0065】
また、上記実施形態では、フローセル13Aのテーパ部138A通過後の検体は、フローセル13Aの壁面に接触している態様を一例として説明したが、フローセルの構造及び検体の流れについてはこの態様だけに限定されない。例えば、フローセル13Aのテーパ部138A通過後に、検体の周りをシース液が取り囲み、シース液の中心部で検体が薄く引き伸ばされる構造のフローセルを用いてもよい。なお、上記の実施形態で使用される第一カメラ105A、第二カメラ105Bについては特に制限がなく、同じカメラを用いてもよいし、性能の異なるカメラを用いてもよいことは言うまでもない。
【0066】
(第4の実施形態)
図1を用いて本実施形態について説明する。本実施形態では、第一撮像部100Aの第一カメラ105Aが有する撮像素子の画素数(以下、第一カメラ105Aの画素数、または、第一撮像部100Aの画素数ともいう。)が、第二撮像部100Bの第二カメラ105Bが有する撮像素子の画素数(以下、第二カメラ105Bの画素数、または、第二撮像部100Bの画素数ともいう。)よりも小さい。第一撮像部100Aには、マスク104が備えられているため、第一撮像部100Aで撮像される画像の被写界深度は、第二撮像部100Bで撮像される画像の被写界深度よりも深くなっている。一方、第二撮像部100Bの分解能は、第一撮像部100Aの分解能よりも高くなっている。また、第一撮像部100Aの視野角と第二撮像部100Bの視野角とは同じである。
【0067】
ここで、撮像部の分解能に対して適当なカメラの画素数が存在するため、各撮像部の分解能を考慮していない画素数のカメラを用いた場合には、分解能に対して画素数が小さく(少なく)なりすぎたり、または、大きく(多く)なりすぎたりする場合がある。分解能に対して画素数が大きく(多く)なりすぎるとは、分解能に対して一画素のサイズが小さすぎる状態をいう。分解能に対して画素数が小さく(少なく)なりすぎるとは、分解能に対して一画素のサイズが大きすぎる状態をいう。仮に、第二撮像部100Bの分解能に応じた画素数のカメラを第一撮像部100Aに用いると、第一撮像部100Aでは分解能に対して画素数が必要以上に大きくなる場合がある。一方、第一撮像部100Aの分解能に応じた画素数のカメラを第二撮像部100Bに用いると、第二撮像部100Bでは分解能に対して画素数が小さくなり過ぎる場合がある。
【0068】
これに対して、第一カメラ105Aの画素数を第二カメラ105Bの画素数よりも小さくすることで、第一撮像部100A及び第二撮像部100Bの夫々の分解能に応じた画素
数のカメラを配置することができる。なお、第一カメラ105Aと第二カメラ105Bとの画素数の組み合わせには、例えば、(1)第一カメラ105Aの画素数を200万~300万画素とし、第二カメラ105Bの画素数を1800万~2000万画素とする組み合わせ、(2)第一カメラ105Aの画素数を200万~300万画素とし、第二カメラ105Bの画素数を500万~1200万画素とする組み合わせ、(3)第一カメラ105Aの画素数を100万画素以下とし、第二カメラ105Bの画素数を200万~300万画素とする組み合わせなどが考えられるが、画素数の組み合わせはこれらに限らない。例えば、第一カメラ105Aの画素数は、有形成分の位置、数を求めるのに適した画素数であればよい。一方、第二カメラ105Bの画素数は、有形成分の細かな形態観察に適した画素数であればよい。このような画素数を選択することにより、第一カメラ105Aの画素数が第二カメラ105Bの画素数よりも小さくなる。
【0069】
一般に、カメラの画素数が小さくなるほどカメラの価格が低くなるため、第一カメラ105Aの画素数を第二カメラ105Bの画素数よりも小さくすることにより、第一カメラ105Aの価格を低下させるせることができ、以て分析装置20全体としてのコストを削減することができる。また、一般に、画素数が小さくなるほど画像処理の負荷が小さくなるため、第一カメラ105Aの画素数を第二カメラ105Bの画素数よりも小さくすることにより、第一カメラ105Aで撮像した画像の処理速度を高めることができ、以て分析装置20全体としての処理速度を高めることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 撮像装置
12 光源
13A フローセル
14 コントローラ
20 分析装置
100A 第一撮像部
100B 第二撮像部
101 対物レンズ
102 分岐部
104 マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8