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特許7027266高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/00 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
C21B7/00 304
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018119805
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020002385
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】上村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】古長 達廣
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-161392(JP,A)
【文献】実開平04-057587(JP,U)
【文献】特開2012-162787(JP,A)
【文献】特開2008-231491(JP,A)
【文献】実開平05-030293(JP,U)
【文献】登録実用新案第3138013(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00-9/16
E04G 23/00-23/08
E21B 1/00-19/24,
44/00-44/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する貫通孔を連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットする高炉の銑鉄切断装置であって、
削孔ビットが先端に設けられた削孔ロッドを回転駆動しつつ銑鉄へ向けて前進させて、該削孔ビットで銑鉄に上記貫通孔を形成する削孔機に、先行して形成された該先行する貫通孔の内部に挿抜自在に挿入される軸体及び該軸体を該先行する貫通孔内部の周壁に離脱可能に定着させる定着手段を有して、該削孔ビットによる貫通孔形成時に該削孔ロッドを介して該削孔機に伝達される削孔反力を当該削孔機から該軸体を介して銑鉄に伝達して支持させるアンカー部を連結して構成され、
上記軸体と上記削孔ロッドとは、該軸体が挿入される上記先行する貫通孔から、ほぼ貫通孔1つ分を隔てた位置に、上記削孔ビットで上記貫通孔が形成されるように、貫通孔の孔径にほぼ等しい寸法を隔てて配置されることを特徴とする高炉の銑鉄切断装置。
【請求項2】
高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する貫通孔を連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットする高炉の銑鉄切断装置であって、
削孔ビットが先端に設けられた削孔ロッドを回転駆動しつつ銑鉄へ向けて前進させて、該削孔ビットで銑鉄に上記貫通孔を形成する削孔機に、先行して形成された該先行する貫通孔の内部に挿抜自在に挿入される軸体及び該軸体を該先行する貫通孔内部の周壁に離脱可能に定着させる定着手段を有して、該削孔ビットによる貫通孔形成時に該削孔ロッドを介して該削孔機に伝達される削孔反力を当該削孔機から該軸体を介して銑鉄に伝達して支持させるアンカー部を連結して構成され、
上記先行する貫通孔と上記貫通孔を形成する上記削孔ビットが一部ラップするように、該先行する貫通孔に挿入される上記軸体または上記定着手段は、上記削孔ロッドと干渉する部分が凹ませられ、かつ、該先行する貫通孔のすぐ隣りに、当該先行する貫通孔と横並びで相互に連通するように連続的に該削孔ビットで該貫通孔が形成されることを特徴とする高炉の銑鉄切断装置。
【請求項3】
前記軸体は、前記削孔ロッドの前進を案内するために、該削孔ロッドと間隔を隔てて平行に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の高炉の銑鉄切断装置。
【請求項4】
前記定着手段は、前記軸体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて進退自在に設けられ、進出されて該周壁に圧接され、圧接反力で該軸体の周面を当該周壁に圧着させるジャッキであることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の高炉の銑鉄切断装置。
【請求項5】
前記ジャッキは、前記軸体の軸方向に複数設けられることを特徴とする請求項4に記載の高炉の銑鉄切断装置。
【請求項6】
前記定着手段は、前記軸体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて拡開自在に設けられ、拡開されて該周壁に圧接される圧接手段と、上記軸体内を軸方向にスライド自在に貫通して上記貫通孔内部に突出され、スライド操作されて上記圧接手段を拡開させる操作手段とを備えることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の高炉の銑鉄切断装置。
【請求項7】
前記定着手段は、前記軸体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて膨出自在な弾性体を備え、膨出される該弾性体が該周壁に圧接される圧接手段と、上記軸体内を軸方向にスライド自在に貫通して上記貫通孔内部に突出され、スライド操作されて上記圧接手段の上記弾性体を膨出させる操作手段とを備えることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の高炉の銑鉄切断装置。
【請求項8】
前記削孔機及び前記アンカー部の少なくともいずれか一方には、銑鉄表面に接離自在に押し当てられ、削孔反力を銑鉄に伝達する押圧部材が備えられることを特徴とする請求項1~7いずれかの項に記載の高炉の銑鉄切断装置。
【請求項9】
請求項1~8いずれかの項に記載の高炉の銑鉄切断装置を用い、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する前記貫通孔を、前記削孔機を用いて連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットすることを特徴とする高炉の銑鉄切断方法。
【請求項10】
請求項1,3~8いずれかの項に記載の高炉の銑鉄切断装置を用い、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する前記貫通孔を、前記削孔機を用いて連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットするようにし、
該ラインカットは、一つの前記先行する貫通孔の形成後、一つの当該先行する貫通孔から貫通孔の孔径にほぼ等しい寸法を隔てて、次の前記貫通孔を前記削孔ビットで形成し、その後、これら貫通孔同士の間に新たな貫通孔を該削孔ビットで形成して、前記貫通孔を連続的に形成することを特徴とする高炉の銑鉄切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔形成時の反力に抗して、削孔装置を銑鉄に対し固定して設置することが可能であり、特に、構造が簡単で削孔装置を容易に銑鉄に固定的に設置することが可能であって、これにより削孔装置で安定的にかつ効率良く削孔を銑鉄に形成することができる高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉体内部に残留する銑鉄を撤去する際に適用可能な技術として、特許文献1~4が知られている。特許文献1の「高炉の残銑の撤去方法」は、外周に鉄皮を備えた高炉内の残銑を撤去する方法であって、上記高炉の下部外周に存する鉄皮の一部を除去して開口部を形成し、上記残銑の露出部に第1の発破孔を穿設するとともに、上記高炉の下部外周のうち上記開口部以外の位置に存する鉄皮を貫通して上記残銑に第2の発破孔を穿設し、上記第1及び第2の発破孔に爆薬を装填して上記残銑を発破して撤去するようにしている。
【0003】
特許文献2の「高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法」は、外側の鉄皮と内側の耐火レンガで構成される高炉の炉体内部に残留する銑鉄をブロック状の銑鉄塊にして撤去するために、該銑鉄に切り込みを入れて切断面を形成するための高炉における銑鉄切断装置であって、上記銑鉄に、上記炉体を貫通して並行に設定して設けられた2つのワイヤソー配索経路と、これら2つのワイヤソー配索経路を相互に連通するために、上記銑鉄に、これらワイヤソー配索経路と交差する方向に設定して設けられた連結経路と、上記一方のワイヤソー配索経路から上記連結経路を介して上記他方のワイヤソー配索経路へ挿通され、上記炉体外方に延出されるワイヤソーと、上記炉体外方に設置され、上記ワイヤソーを駆動するワイヤソー駆動装置と、上記2つのワイヤソー配索経路それぞれに、上記炉体内部に位置させて配置され、上記ワイヤソーを上記ワイヤソー駆動装置へ案内する固定シーブと、上記2つのワイヤソー配索経路の中間位置に、これらワイヤソー配索経路に沿って上記銑鉄及び上記炉体に削孔して形成され、上記連結経路と連通される通孔と、該通孔内にスライド自在に設けられ、上記2つのワイヤソー配索経路に跨がる上記ワイヤソーを上記炉体外方へ向かって上記耐火レンガ内縁に接近するように牽引する牽引手段とを備え、上記耐火レンガの内縁に沿う位置まで上記切断面を形成するために、上記固定シーブが、これに掛けられた上記ワイヤソーを上記炉体に向かって該耐火レンガの内縁位置まで移動可能に、該耐火レンガの内縁位置に位置決めされるようにしている。
【0004】
特許文献3の「解体工法」は、残銑を解体する解体工法を、残銑を分割する分割ラインを設定する分割ライン設定工程と、下向きに穿孔する油圧ドリル装置を備え、残銑上を走行可能な油圧クローラドリルによって、分割ラインに沿うとともに、所定間隔を隔てた複数の分割孔を、分割ラインに全体に亘って穿孔する穿孔工程と、穿孔工程完了後に、残銑から油圧クローラドリルを退去させる穿孔機退去工程と、所定間隔を隔てた複数の分割孔によって分割ラインで残銑を分割して分割ブロックとして搬出する分割ブロック搬出工程とで構成されている。
【0005】
特許文献4の「鉄筋コンクリートの解体方法」は、鉄筋コンクリート壁のコンクリート部分は打撃式ドリルによって壁面に格子状の連続溝を穿設し、該連続溝の深部の鉄筋を含む部分はコアーカッターによって鉄筋を切断し、これらの穿設手段を繰返して格子状の連続溝を所定深さまで穿設したのち、上部から下方に向かって前記連続溝の深部に達する切断部を形成して所望のブロック形状に切断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3977543号公報
【文献】特許第5512300号公報
【文献】特開2012-162787号公報
【文献】特開昭61-158569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いずれの背景技術にあっても、銑鉄等を切断するにあたり、削孔装置のドリルなどによって、発破孔や、ワイヤソーの経路、分割孔、連続溝などの削孔を銑鉄に形成するようにしている。
【0008】
銑鉄にドリルなどで削孔を形成する際、スラストやトルクの形で、大きな反力が削孔装置に作用する。削孔装置は、銑鉄に対し固定して設置されないため、削孔形成時の反力、特にスラストが影響して、当該削孔装置が振れ動いてしまったり、削孔装置の姿勢が傾いたりしてしまう。削孔装置が設置される銑鉄の表面には不陸があるため、これら振れ動き等が助長されることとなっていた。
【0009】
削孔装置に振れ動きや傾きが生じると、削孔に曲がりが生じたり、削孔スピードを上げることができないなど、削孔装置による作業を安定的かつ効率的に実施することができないという課題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、削孔形成時の反力に抗して、削孔装置を銑鉄に対し固定して設置することが可能であり、特に、構造が簡単で削孔装置を容易に銑鉄に固定的に設置することが可能であって、これにより削孔装置で安定的にかつ効率良く削孔を銑鉄に形成することができる高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる高炉の銑鉄切断装置は、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する貫通孔を連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットする高炉の銑鉄切断装置であって、削孔ビットが先端に設けられた削孔ロッドを回転駆動しつつ銑鉄へ向けて前進させて、該削孔ビットで銑鉄に上記貫通孔を形成する削孔機に、先行して形成された該先行する貫通孔の内部に挿抜自在に挿入される軸体及び該軸体を該先行する貫通孔内部の周壁に離脱可能に定着させる定着手段を有して、該削孔ビットによる貫通孔形成時に該削孔ロッドを介して該削孔機に伝達される削孔反力を当該削孔機から該軸体を介して銑鉄に伝達して支持させるアンカー部を連結して構成され、上記軸体と上記削孔ロッドとは、該軸体が挿入される上記先行する貫通孔から、ほぼ貫通孔1つ分を隔てた位置に、上記削孔ビットで上記貫通孔が形成されるように、貫通孔の孔径にほぼ等しい寸法を隔てて配置されることを特徴とする。
また、本発明にかかる高炉の銑鉄切断装置は、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する貫通孔を連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットする高炉の銑鉄切断装置であって、削孔ビットが先端に設けられた削孔ロッドを回転駆動しつつ銑鉄へ向けて前進させて、該削孔ビットで銑鉄に上記貫通孔を形成する削孔機に、先行して形成された該先行する貫通孔の内部に挿抜自在に挿入される軸体及び該軸体を該先行する貫通孔内部の周壁に離脱可能に定着させる定着手段を有して、該削孔ビットによる貫通孔形成時に該削孔ロッドを介して該削孔機に伝達される削孔反力を当該削孔機から該軸体を介して銑鉄に伝達して支持させるアンカー部を連結して構成され、上記先行する貫通孔と上記貫通孔を形成する上記削孔ビットが一部ラップするように、該先行する貫通孔に挿入される上記軸体または上記定着手段は、上記削孔ロッドと干渉する部分が凹ませられ、かつ、該先行する貫通孔のすぐ隣りに、当該先行する貫通孔と横並びで相互に連通するように連続的に該削孔ビットで該貫通孔が形成されることを特徴とする。
【0012】
前記軸体は、前記削孔ロッドの前進を案内するために、該削孔ロッドと間隔を隔てて平行に配置されることを特徴とする。
【0013】
前記定着手段は、前記軸体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて進退自在に設けられ、進出されて該周壁に圧接され、圧接反力で該軸体の周面を当該周壁に圧着させるジャッキであることを特徴とする。
【0014】
前記ジャッキは、前記軸体の軸方向に複数設けられることを特徴とする。
【0015】
前記定着手段は、前記軸体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて拡開自在に設けられ、拡開されて該周壁に圧接される圧接手段と、上記軸体内を軸方向にスライド自在に貫通して上記貫通孔内部に突出され、スライド操作されて上記圧接手段を拡開させる操作手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
前記定着手段は、前記軸体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて膨出自在な弾性体を備え、膨出される該弾性体が該周壁に圧接される圧接手段と、上記軸体内を軸方向にスライド自在に貫通して上記貫通孔内部に突出され、スライド操作されて上記圧接手段の上記弾性体を膨出させる操作手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
前記削孔機及び前記アンカー部の少なくともいずれか一方には、銑鉄表面に接離自在に押し当てられ、削孔反力を銑鉄に伝達する押圧部材が備えられることを特徴とする。
【0019】
本発明にかかる高炉の銑鉄切断方法は、上記高炉の銑鉄切断装置を用い、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する前記貫通孔を、前記削孔機を用いて連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットすることを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる高炉の銑鉄切断方法は、上記高炉の銑鉄切断装置を用い、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する前記貫通孔を、前記削孔機を用いて連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットするようにし、該ラインカットは、一つの前記先行する貫通孔の形成後、一つの当該先行する貫通孔から貫通孔の孔径にほぼ等しい寸法を隔てて、次の前記貫通孔を前記削孔ビットで形成し、その後、これら貫通孔同士の間に新たな貫通孔を該削孔ビットで形成して、前記貫通孔を連続的に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法にあっては、削孔形成時の反力に抗して、削孔機を銑鉄に対し固定して設置することができ、特に、構造が簡単で削孔機を容易に銑鉄に固定的に設置することができて、これにより削孔機で安定的にかつ効率良く削孔を銑鉄に形成することができる。また、(1)軸体と削孔ロッドとは、軸体が挿入される先行する貫通孔から、ほぼ貫通孔1つ分を隔てた位置に、削孔ビットで貫通孔が形成されるように、貫通孔の孔径にほぼ等しい寸法を隔てて配置される、または(2)先行する貫通孔と貫通孔を形成する削孔ビットが一部ラップするように、先行する貫通孔に挿入される軸体または定着手段は、削孔ロッドと干渉する部分が凹ませられ、かつ、先行する貫通孔のすぐ隣りに、当該先行する貫通孔と横並びで相互に連通するように連続的に削孔ビットで貫通孔が形成されるので、すなわち、軸体は、削孔ロッドから貫通孔の孔径以下の間隔を隔てて配置される構成であるので、削孔反力が生じる位置(削孔ロッド)とこの削孔反力に抗する定着位置(軸体)との距離が短く、削孔機側に作用する応力負担を軽減できて、効率良く安定的に削孔反力に抗することができる。従って、削孔機で形成される貫通孔に曲がりが生じることを防止できると同時に、高い削孔スピードで作業を行うことができて、貫通孔を安定的かつ効率的に形成することができる。また、安定的に貫通孔を形成できることにより、正確な位置に貫通孔を形成でき、貫通孔を連続的に形成するにあたり、貫通孔同士のラップ量を僅かとして、貫通孔の形成個数を減少させることができ、施工効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明にかかる高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法の好適な一実施形態であって、銑鉄に貫通孔を形成している様子を示す側面図である。
図2図1に対応する平面図である。
図3図1に示した高炉の銑鉄切断装置の拡大側面図である。
図4図3中、A-A線矢視図である。
図5図1に示した高炉の銑鉄切断装置であって、削孔ロッドとアンカー部の位置関係を含めて示す要部拡大図である。
図6図1に示した高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法で連続的に形成される貫通孔とアンカー部の位置関係を示す説明図である。
図7図1に示した高炉の銑鉄切断装置のアンカー部に備えられる定着手段を説明する説明図であって、(A)は一部破断要部拡大図、(B)は(A)中、B-B線矢視断面図、(C)は(B)の構成の変形例を示す断面図である。
図8図7に示した定着手段の他の例を説明する説明図であって、(A)は貫通孔への挿入前の状態、(B)は、貫通孔へ挿入した状態、(C)は操作ロッドを引き上げたときの状態、(D)は操作ロッドを環状プレートに定着した状態をそれぞれ示す図である。
図9図7に示した定着手段のさらに他の例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法で銑鉄に貫通孔を形成している様子を示す側面図、図2は、図1に対応する平面図、図3は、図1に示した高炉の銑鉄切断装置の拡大側面図、図4は、図3中、A-A線矢視図、図5は、図1に示した高炉の銑鉄切断装置であって、削孔ロッドとアンカー部の位置関係を含めて示す要部拡大図、図6は、図1に示した高炉の銑鉄切断装置及び高炉の銑鉄切断方法で連続的に形成される貫通孔とアンカー部の位置関係を示す説明図、図7は、図1に示した高炉の銑鉄切断装置のアンカー部に備えられる定着手段を説明する説明図であって、(A)は一部破断要部拡大図、(B)は(A)中、B-B線矢視断面図、(C)は(B)の構成の変形例を示す断面図、図8は、図7に示した定着手段の他の例を説明する説明図であって、(A)は貫通孔への挿入前の状態、(B)は、貫通孔へ挿入した状態、(C)は操作ロッドを引き上げたときの状態、(D)は操作ロッドを環状プレートに定着した状態をそれぞれ示す図、図9は、図7に示した定着手段のさらに他の例を示す要部拡大図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、高炉1の炉体2内部には、基礎部分3上の耐火レンガ4で取り囲まれて、銑鉄5が残留する。本実施形態に係る高炉の銑鉄切断装置6は、この銑鉄5を高炉1内から搬出可能な塊状物に切断するために用いられる。
【0025】
切断にあたり、本実施形態に係る高炉の銑鉄切断装置6は、銑鉄5に、その上面5aから下方の耐火レンガ4まで達するように上下方向縦向きに貫通する貫通孔7を連続的に形成し、これら連続する貫通孔7によって銑鉄5を直線状や折れ線状、曲線状にラインカットするようになっている。
【0026】
高炉1の炉体2内部には、図示しない開口部から、銑鉄5の上面5a上に、本実施形態に係る高炉の銑鉄切断装置6が搬入される。この高炉の銑鉄切断装置6は、図3図5にも示すように、削孔機11にアンカー部8を設けることによって構成される。
【0027】
高炉の銑鉄切断装置6を構成する削孔機11及びアンカー部8は、銑鉄5の上面5a上を自在に走行移動されるクローラ9に設けられた起伏式の作業用アーム10に搭載される。削孔機11は、銑鉄5に貫通孔7を形成する際に、起伏操作される作業用アーム10によって、銑鉄上面5aに向けて下向きにセットされる。削孔機11に関し、下向きにセットされた状態で、以下説明する。
【0028】
削孔機11は、上下方向縦向きに長く形成され、作業用アーム10に取り付けられた基台12と、基台12に、上下方向へ移動自在に搭載された回転駆動部13と、基台12に設けられ、回転駆動部13を銑鉄5に対して前後進させるために、当該回転駆動部13を上下方向へ直線往復移動させる移動機構14と、回転駆動部13に着脱自在にかつ下方へ向けて設けられ、回転駆動部13で回転駆動される削孔ロッド15と、削孔ロッド15の下部先端に設けられ、銑鉄5に貫通孔7を形成するために、削孔ロッド15を介して回転駆動部13により回転駆動される削孔ビット16とを備えて構成される。
【0029】
走行移動されるクローラ9が貫通孔形成位置で停止されると、削孔機11は、削孔ビット16が銑鉄5の上面5aに向くように、作業用アーム10によって下向きにセットされる。削孔ビット16が設けられた削孔ロッド15を回転駆動部13で回転駆動しつつ、当該回転駆動部13が移動機構14により基台12に沿って銑鉄5の上面5aへ向けて前進される。回転駆動部13の前進により削孔ロッド15が下方へ向けて移動され、回転駆動部13で削孔ビット16が回転されることにより、銑鉄5に削孔が形成されていく。
【0030】
回転駆動部13が基台12の下端に達したときには、回転駆動部13が停止され、当該回転駆動部13と削孔ロッド15の連結が切り離される。次いで、回転駆動部13が移動機構14により基台12の上端側へ後退され、後退された回転駆動部13と切り離された削孔ロッド15との間に、追加の削孔ロッドが継ぎ足される。
【0031】
その後、回転駆動部13による削孔ロッド15の回転駆動と移動機構14による回転駆動部13の前進が再開され、削孔ビット16による削孔の形成が継続される。このようにして、削孔ロッド15を回転駆動しつつ銑鉄5へ向けて前進させ、削孔ビット16により銑鉄5を貫通する貫通孔7が形成されるまで、削孔作業が行われる。
【0032】
削孔機11には、削孔ロッド15と隣り合う位置にアンカー部8が一体的に設けられる。アンカー部8は、基台12に取付固定される取付ブラケット17と、取付ブラケット17に着脱自在に設けられ、貫通孔7の内部に挿抜自在に挿入するために、基台12からこれよりも下方へ向けて垂下される軸体18と、軸体18に設けられ、当該軸体18を貫通孔7に離脱可能に定着させる定着手段19とを備えて構成される。
【0033】
基台12に対し取付ブラケット17で一定の高さ位置に保持される軸体18と、回転駆動部13の前進で基台12よりも下方へ向けて移動されて高さ位置が変化する削孔ビット16との高さ位置関係について、削孔作業前は、削孔ビット16が軸体18の下端の高さ位置よりも高く、削孔作業の進捗に従う回転駆動部13の前進で削孔ビット16が下降していって、削孔作業途中で、反対に軸体18の下端が削孔ビット16の高さ位置よりも高くなるように設定される。
【0034】
削孔作業開始前において、削孔ビット16よりも軸体18の下端がより下方に突出される関係であるため、軸体18は、少なくとも一つの貫通孔7が形成された後に、取付ブラケット17に取り付けられる。すなわち、アンカー部8、少なくともその軸体18を削孔機11に装着する前に、先行して貫通孔7を形成するようにし、この先行形成した貫通孔7に、作業用アーム10の操作で当該軸体18を挿入するようにする。
【0035】
そして、当該貫通孔7に軸体18が挿入され、後述する定着手段19で貫通孔7に定着されたならば、その挿入状態で削孔ビット16の下降を伴う削孔作業が行われる。なお、貫通孔7への軸体18の挿入操作については、作業用アーム10の先端部に、基台12の傾きや高さを調節する機構を設けるようにしてもよい。軸体18を削孔機11に取り付ける際の先行形成される貫通孔7は、上記削孔機11によって形成されたものであっても、あるいは他の削孔手段で形成されたものであっても、いずれであってもよい。また、この先行形成される貫通孔7は、未完の貫通孔、すなわち貫通していない削孔(例えば、その後の削孔作業で貫通孔7に仕上げられる)であってもよい。
【0036】
軸体18の外径寸法は、貫通孔7に挿抜可能な寸法に設定される。削孔機11に一体的に設けられるアンカー部8の当該軸体18と、削孔機11に備えられる削孔ロッド15とは、互いに間隔を隔てて平行に配置され、先行形成された貫通孔7に削孔作業前に挿入される軸体18によって、削孔作業を行う際の削孔ロッド15の位置が位置決めされ、またその前進が案内されるようになっている。軸体18と削孔ロッド15との横向き水平方向の間隔Wは、図5に示すように、削孔ロッド15の削孔ビット16で形成される貫通孔7の孔径D以下の寸法(W≦D)に設定される。これにより、形成される貫通孔7が僅かながらラップして、貫通孔7同士の連続性が確保される。
【0037】
この貫通孔7の孔径D以下の寸法とは、2つの場合がある。第1の場合は、図5及び図6に示すように、軸体18が挿入される先行形成された貫通孔7(H1)からほぼ貫通孔1つ分を隔てた位置に、削孔ビット16で貫通孔7(H2)が形成されるもので、軸体18と削孔ロッド15とが貫通孔7の孔径Dにほぼ等しい広い寸法を隔てて配置される。
【0038】
第1の場合は、貫通孔7を連続形成するために、先行形成する貫通孔7(H1)が2つ隣り合わせに並べて形成され、いずれか一方(図中、左側)の貫通孔7(H1)に軸体18を挿入した状態で、他方(図中、右側)の貫通孔7(H1)を跨いだ位置に削孔ビット16で貫通孔7(H2)を形成し、これにより貫通孔7が3つ並ぶようにし、その後、他方(図中、右側)の貫通孔7(H1)に軸体18を挿入した状態で、削孔ビット16で形成した貫通孔7(H2)を跨いだ位置に、さらに削孔ビット16で貫通孔7(H2)を形成して、貫通孔7が4つ並ぶようにする。以後は、この繰り返しにより、連続的に貫通孔7が形成される。
【0039】
第2の場合は、図示しないけれども、軸体18が挿入される先行形成された貫通孔7のすぐ隣りに、当該貫通孔7と横並びで相互に連通するように連続的に削孔ビット16で貫通孔7が形成されるもので、先行形成された貫通孔7と削孔ビット16が一部ラップするため、軸体18または定着手段19の断面は、削孔ロッド15と干渉する部分が凹ませられている。
【0040】
先行形成する貫通孔7の個数は異なるけれども、第1及び第2の場合のいずれにあっても、銑鉄5をラインカットする貫通孔7が連続的に形成される。また、図6に矢印Zで示すように、ラインカットの形態は、隣接する貫通孔7同士に角度を付けることで、直線状に限ることなく、折れ線状や曲線状の形態とされる。
【0041】
作業用アーム10によって貫通孔7へ挿入される軸体18の挿入深さ、すなわち、軸体18の下端から銑鉄上面5aまでの寸法Pは、図7に示すように、当該軸体18に設けられる定着手段19が貫通孔7の内部に納まるように設定される。
【0042】
本実施形態にあっては、定着手段19は図5及び図7に示すように、軸体18の下方部分に備えられるジャッキ20で構成される。ジャッキ20は、軸体18内部に収納された油圧ユニット部20aと、油圧ユニット部20aに設けられ、軸体18周りの1個所に横向きに向けて形成された穴21を介して、貫通孔7内部の周壁7aに向けて軸体18の径方向外方へ進退自在に進出されるラム20bとから構成される。
【0043】
ラム20bは、油圧ユニット部20aで駆動されて進出されると、周壁7aに圧接され、この圧接による反力で、穴21とは反対側で、軸体18の周面を周壁7aに圧着させる。軸体18には、穴21の反対側に位置させて、凹凸加工され大きな硬度を有する超高合金製のグリッパー50が設けられ、このグリッパー50が貫通孔7内部の周壁7aに、摩滅が抑制されつつ大きな摩擦力で定着される。ラム20bは、油圧ユニット部20aで駆動されて後退されると、グリッパー50と共に、軸体18を貫通孔7内部の周壁7aから離脱させる。
【0044】
図示例では、ジャッキ20は、軸体18の軸方向、すなわち貫通孔7の深さ方向に上下に2台設けられていて、これらジャッキ20のラム20bは軸体18の径方向の同一方向に進退されるようになっている。このように、2台以上複数台のジャッキ20を備えることにより、軸体18は長い距離にわたり、貫通孔7に安定して定着される。図7(B)は、グリッパー50を一つ設けた場合、図7(C)は、グリッパー50を、軸体18周りに間隔を隔てて2つ設けた場合を示している。
【0045】
軸体18が定着手段19で貫通孔7内部の周壁7aに定着されることにより、削孔ビット16で銑鉄5に貫通孔7を形成するときに、削孔ロッド15を介して銑鉄5から削孔機11に伝達される削孔反力が、削孔機11から軸体18の定着手段19を介して銑鉄5に伝達され支持される。また、この定着作用により、削孔作業にあたり、削孔ロッド15が安定して下向き下方に案内される。油圧ユニット部20aへの油圧供給は、軸体18の内部を通じて、削孔機11側から行っても、あるいは別途独立した油圧供給系を設けて行うようにしてもよい。
【0046】
削孔機11には図1,3~5に示すように、その基台12から垂下され、作業用アーム10の操作によって銑鉄5の上面5aに接離自在に押し当てられて、削孔反力の主に水平方向の振れ動きを銑鉄5に伝達する押圧部材22が設けられる。すなわち、本実施形態では、アンカー部8に加えてさらに、貫通孔形成時に銑鉄5から削孔ロッド15を介して削孔機11に伝達される削孔反力が当該押圧部材22によっても銑鉄5で支持されるようになっている。
【0047】
押圧部材22は図示例では、銑鉄5の上面5aに押し当てられる先端が刃状に形成された板状部材で形成される。押圧部材22は、アンカー部8と共に、あるいは軸体18が貫通孔7に挿入されない貫通孔形成時に、使用される。押圧部材22は、アンカー部8の取付ブラケット17等に設けるようにしてもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係る高炉の銑鉄切断装置6を用いた高炉の銑鉄切断方法について説明する。本実施形態に係る高炉の銑鉄切断方法は基本的には、高炉1の炉体2内部に残留する銑鉄5にこれを貫通する貫通孔7を、削孔機11を用いるなどして連続的に形成し、当該銑鉄5をラインカットするものであり、その際、一つの貫通孔7の形成後、一つの当該貫通孔7から所定の間隔を隔てて、次の貫通孔7を形成し、その後、これら貫通孔7同士の間に新たな貫通孔7を形成して、貫通孔7を連続的に形成する場合が含まれる。
【0049】
高炉1の炉体2内部に残留する銑鉄5を切断する際には、作業用アーム10に削孔機11及びアンカー部8を備えたクローラ9を銑鉄5の上面5a上に搬入する。削孔作業ないし切断作業に際しては、削孔機11等を備えたクローラ9を複数台用いることが効率的である。
【0050】
まず、連続的に形成されて銑鉄5をラインカットする貫通孔7のうち、最初の貫通孔7を、アンカー部8の軸体18を挿入するための貫通孔7として先行して形成する。上述したように、先行形成する貫通孔7は、軸体18と削孔ロッド15との間隔Wに応じて、一つまたは複数個形成する。
【0051】
これらの先行形成する貫通孔7は、これも上述したように、本実施形態に係る高炉の銑鉄切断装置6を構成する削孔機11で形成しても、あるいは、他の削孔手段で形成しても、いずれであってもよい。例えば、削孔機11で削孔する際には、押圧部材22を銑鉄5の上面5aに押し当てることで、削孔反力を銑鉄5に伝達して支持させることができ、削孔機11により、曲がりのない貫通孔7を高い削孔スピードで形成することができる。
【0052】
次いで、削孔機11に、取付ブラケット17を介して、ジャッキ20を備えた軸体18を一体的に設ける。そして、作業用アーム10により、軸体18を先行形成された貫通孔7に挿入する。貫通孔7に挿入された軸体18のジャッキ20を作動させ、貫通孔7内部の周壁7aにラム20bを圧接し、この圧接反力で軸体18を貫通孔7の周壁7aに圧着させて定着させる。
【0053】
軸体18の貫通孔7への挿入深さは、表面付近の残留する銑鉄5には不純物が多く脆いので、ある程度深く設定される。挿入深さは、先行形成する際の反力や切り屑から判定可能であるので、手間がかかることなく、容易かつ短時間でアンカー部8の設置を完了することができる。
【0054】
軸体18が貫通孔7に定着されることにより、削孔機11、ひいてはこれを搭載するクローラ9を銑鉄5に対し、固定して設置することができる。また、押圧部材22も銑鉄5の上面5aに押し当てる。
【0055】
この際、軸体18が、銑鉄上面5aよりも下方の貫通孔7内部に定着されている一方、削孔ビット16は、銑鉄上面5aよりも上方に位置されている。軸体18を貫通孔7内部に定着させたら、削孔ビット16による削孔作業を開始する。削孔作業は、削孔機11の回転駆動部13で削孔ロッド15を介して削孔ビット16を回転駆動しつつ、移動機構14で回転駆動部13を銑鉄5に向けて前進させることで行う。
【0056】
削孔ビット16で銑鉄5に貫通孔7を形成していくとき、削孔ロッド15を介して削孔機11に伝達されるスラストやトルクなどの削孔反力は、アンカー部8により、すなわち定着手段19で貫通孔7に定着された軸体18により、銑鉄5に伝達されて支持される。
【0057】
このようにアンカー部8により、削孔反力を銑鉄5に伝達して支持させるようにしたので、削孔機11、そしてまたこれを備えるクローラ9に生じる振れ動きを抑制することができ、またクローラ9の姿勢が傾くことを防止することができる。
【0058】
また、軸体18は、削孔ロッド15から貫通孔7の孔径D以下の間隔を隔てて配置される構成であるので、削孔反力が生じる位置(削孔ロッド15)とこの削孔反力に抗する定着位置(軸体18)との距離が短く、クローラ9を含む削孔機11側に作用する応力負担を軽減できて、効率良く安定的に削孔反力に抗することができる。削孔機11及びクローラ9の振れ動きは、押圧部材22によっても抑制することができる。
【0059】
従って、削孔機11で形成される貫通孔7に曲がりが生じることを防止できると同時に、高い削孔スピードで作業を行うことができて、貫通孔7を安定的かつ効率的に形成することができる。また、安定的に貫通孔7を形成できることにより、正確な位置に貫通孔7を形成でき、貫通孔7を連続的に形成するにあたり、貫通孔7同士のラップ量を僅かとして、貫通孔7の形成個数を減少させることができ、施工効率を向上することができる。
【0060】
貫通孔7が新設される度に、アンカー部8の軸体18を定着させる貫通孔7をずらし、削孔機11で新たな貫通孔7の形成を継続することにより、銑鉄5を貫通する貫通孔7を連続的に形成して、銑鉄5をラインカットすることができる。
【0061】
削孔反力を銑鉄5に支持させるアンカー部8は、軸体18とジャッキ20などの定着手段19とで構成して、削孔機11に一体的に設けるだけであって、構造が簡単であると同時に、削孔機11を銑鉄5に対し適切かつ確実に固定的に設置することができる。
【0062】
また、押圧部材22も、削孔機11またはアンカー部8に単に取り付けられ、作業用アーム10の操作で単に銑鉄5の上面5aに押し当てるだけであって、簡単な構造で的確に削孔反力を銑鉄5に支持させて、削孔機11等の振れ動きを抑制することができる。
【0063】
図8には、軸体18に設けられる定着手段19の他の例が示されている。この定着手段19では、軸体18が中空筒体状に形成されると共に、軸体18に、貫通孔7内部の周壁7aに向けて膨出自在な弾性体25aを備えて、膨出される弾性体25aが周壁7aに圧接される圧接手段25と、軸体18内を軸方向にスライド自在に貫通して貫通孔7内部に突出され、スライド操作されて圧接手段25の弾性体25aを膨出させる操作手段としての操作ロッド26とから構成される。
【0064】
圧接手段25の弾性体25aは、通孔25bを有する中空円筒体状に形成され、その上面が、軸体18を貫通する操作ロッド26に接合されかつ銑鉄5の上面5aに設置される環状プレート25cに当接される。また、弾性体25aの下面には、リングプレート52が設けられ、このリングプレート52にナット体25dが当接される。操作ロッド26は、軸体18の下端から通孔25bを介してナット体25dと螺合される。
【0065】
操作ロッド26が上方へスライド操作されると、弾性体25aがリングプレート52と環状プレート25cとの間で圧縮され、これにより弾性体25aがその径方向外方へ膨出されて貫通孔7の周壁7aに圧接され、これにより定着作用が得られるようになっている。弾性体25aの定着作用が得られたら、操作ロッド26に設けてある締め込みナット51を回して、当該操作ロッド26に沿って下降して環状プレート25cの上面に螺着させ押し付けることで、弾性体25aの膨出状態を保持する。殊に、弾性体25aはその弾性により貫通孔7の周壁7aの凹凸を吸収できるので、周壁7aに密着させることができる。また、環状プレート25cに対する締め込みナット51の螺着を解除して、操作ロッド26が下方へスライド操作されることで、弾性体25aが復原されて周壁7aから離脱され、これにより定着作用が解除されるようになっている。
【0066】
図9には、軸体18に設けられる定着手段19のさらに他の例が示されている。この定着手段19では、軸体18が中空筒体状に形成されると共に、軸体18に、貫通孔7内部の周壁7aに向けて拡開自在に設けられ、拡開されて周壁7aに圧接される圧接手段23と、軸体18内を軸方向にスライド自在に貫通して貫通孔7内部に突出され、スライド操作されて圧接手段23を拡開させる操作手段24とから構成される。
【0067】
圧接手段23は、軸体18の下方であって、貫通孔7の周方向に間隔を隔てて配列され、それぞれ貫通孔7内部の周壁7aに向けて揺動自在に支持された複数の揺動ブロック23aから構成される。揺動ブロック23aは、操作手段24の操作ロッド24aに設けられかつ銑鉄5の上面5aに設置される環状プレート25cに取り付けて設けられる。また、操作手段24は、貫通孔7内部へ達する操作ロッド24aと、上端が小径で下端が大径なコーン状に形成されて操作ロッド24aの下端に設けられ、配列された揺動ブロック23aに取り囲まれて配置されるコーン部材24bとから構成される。
【0068】
操作ロッド24aが上方へスライド操作されると、コーン部材24bが上昇して各揺動ブロック23aを貫通孔7の周壁7aに向けて揺動させることにより、圧接手段23全体としては拡開されて周壁7aに圧接されることとなり、これにより定着作用が得られるようになっている。揺動ブロック23aの定着作用が得られたら、操作ロッド24aに設けてある締め込みナット51を回して、当該操作ロッド24aに沿って下降して環状プレート25cの上面に螺着させ押し付けることで、揺動ブロック23aの拡開状態を保持する。また、環状プレート25cに対する締め込みナット51の螺着を解除して、操作ロッド24aが下方へスライド操作されることで、揺動ブロック23aが周壁7aから離脱され、これにより定着作用が解除されるようになっている。
【0069】
これら図8及び図9に示した定着手段19の場合、図7に示した定着手段19とは異なり、軸体18を貫通孔7の中心に位置付けることができ、アンカー部8の隣接位置で削孔機11により削孔される貫通孔7の位置精度をさらに高めることができる。これら他の例の定着手段19であっても、上記実施形態と同様の作用効果が得られることはもちろんである。
【0070】
上記実施形態では、削孔機11にアンカー部8を一体的に設けて構成する場合について説明したが、削孔時に必要な反力を銑鉄5に伝達できるように削孔機11とアンカー部8とが連結されていればよく、すなわち、アンカー部8と削孔機11とを別体で製作し、例えばピンと張った鎖等で両者をつないで、削孔機11に作用する反力を、銑鉄5側のアンカー部8に負担させるようにしてもよい。
【0071】
本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。例えば、押圧部材22は設けなくてもよい。また、アンカー部8の軸体18は、削孔ロッド15から貫通孔7の孔径以上離して配置されても、例えば、軸体18と削孔ロッド15が貫通孔7を2つもしくは3つ跨いだ間隔を隔てて配置されてもよく、当該間隔を調節可能としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 高炉
2 炉体
5 銑鉄
5a 銑鉄上面
6 高炉の銑鉄切断装置
7 貫通孔
7a 貫通孔内部の周壁
8 アンカー部
11 削孔機
15 削孔ロッド
16 削孔ビット
18 軸体
19 定着手段
20 ジャッキ
22 押圧部材
23 圧接手段
24 操作手段
25 圧接手段
25a 弾性体
26 操作ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9