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特許7027267高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/00 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
C21B7/00 304
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018119807
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020002387
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】上村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】古長 達廣
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-161392(JP,A)
【文献】特開2003-105413(JP,A)
【文献】特開2012-162787(JP,A)
【文献】特開昭60-100609(JP,A)
【文献】実開平05-030293(JP,U)
【文献】特開2008-231491(JP,A)
【文献】登録実用新案第3138013(JP,U)
【文献】特開平07-217364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00-9/16
E04G 23/00-23/08
E21B 1/00-19/24,
44/00-44/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する貫通孔を連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットする高炉における銑鉄切断装置であって、
コアビットが先端に設けられたコアチューブを回転駆動しつつ銑鉄へ向けて前進させて、該コアビットで銑鉄を切削して上記貫通孔を形成するコアボーリング機に、先行して形成された該貫通孔の内部に挿抜自在に挿入される円柱状挿入体及び該挿入体を該貫通孔内部の周壁に離脱可能に定着させる定着手段を有して、該貫通孔形成時に該コアチューブを介して該コアボーリング機に伝達される切削反力を当該コアボーリング機から該挿入体を介して銑鉄に伝達して支持させるアンカー部を連結して構成され、
上記挿入体は上記コアチューブの側方に位置され、該挿入体には、銑鉄の上方であって該コアチューブの側方に位置させて、当該コアチューブの前進を案内するガイドが設けられ、
該ガイドは、上記コアチューブの周側面を包囲するように当該コアチューブの外周に沿う弧状凹部で形成されることを特徴とする高炉における銑鉄切断装置。
【請求項2】
前記定着手段は、前記挿入体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて拡開自在に設けられ、拡開されて該周壁に圧接される圧接手段と、上記挿入体内を軸方向にスライド自在に貫通して上記貫通孔内部に突出され、スライド操作されて上記圧接手段を拡開させる操作手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の高炉における銑鉄切断装置。
【請求項3】
前記定着手段は、前記挿入体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて膨出自在な弾性体を備え、膨出される該弾性体が該周壁に圧接される圧接手段と、上記挿入体内を軸方向にスライド自在に貫通して上記貫通孔内部に突出され、スライド操作されて上記圧接手段の上記弾性体を膨出させる操作手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の高炉における銑鉄切断装置。
【請求項4】
前記定着手段は、前記挿入体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて進退自在に設けられ、進出されて該周壁に圧接され、圧接反力で該挿入体の周面を当該周壁に圧着させるジャッキであることを特徴とする請求項1に記載の高炉における銑鉄切断装置。
【請求項5】
前記ジャッキは、前記挿入体の軸方向に複数設けられることを特徴とする請求項4に記載の高炉における銑鉄切断装置。
【請求項6】
前記アンカー部は、前記コアチューブの両側に配設されることを特徴とする請求項1~5いずれかの項に記載の高炉における銑鉄切断装置。
【請求項7】
請求項1~6いずれかの項に記載の高炉の銑鉄切断装置を用い、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する前記貫通孔を、前記コアボーリング機を用いて連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットすることを特徴とする高炉における銑鉄切断方法。
【請求項8】
一つの前記貫通孔の形成後、一つの当該貫通孔から所定の間隔を隔てて、次の前記貫通孔を形成し、その後、これら貫通孔同士の間に新たな貫通孔を形成して、前記貫通孔を連続的に形成することを特徴とする請求項7に記載の高炉における銑鉄切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアボーリング機のコアビットで銑鉄を切削して貫通孔を形成する際、貫通孔形成時の反力に抗して、コアボーリング機を銑鉄に対し固定して設置することが可能であり、特に、構造が簡単でコアボーリング機を容易に銑鉄に固定的に設置することが可能であって、これによりコアボーリング機で安定的にかつ効率良く貫通孔を銑鉄に形成することができる高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉体内部に残留する銑鉄を撤去する際に適用可能な技術として、特許文献1~4が知られている。特許文献1の「高炉の残銑の撤去方法」は、外周に鉄皮を備えた高炉内の残銑を撤去する方法であって、上記高炉の下部外周に存する鉄皮の一部を除去して開口部を形成し、上記残銑の露出部に第1の発破孔を穿設するとともに、上記高炉の下部外周のうち上記開口部以外の位置に存する鉄皮を貫通して上記残銑に第2の発破孔を穿設し、上記第1及び第2の発破孔に爆薬を装填して上記残銑を発破して撤去するようにしている。
【0003】
特許文献2の「高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法」は、外側の鉄皮と内側の耐火レンガで構成される高炉の炉体内部に残留する銑鉄をブロック状の銑鉄塊にして撤去するために、該銑鉄に切り込みを入れて切断面を形成するための高炉における銑鉄切断装置であって、上記銑鉄に、上記炉体を貫通して並行に設定して設けられた2つのワイヤソー配索経路と、これら2つのワイヤソー配索経路を相互に連通するために、上記銑鉄に、これらワイヤソー配索経路と交差する方向に設定して設けられた連結経路と、上記一方のワイヤソー配索経路から上記連結経路を介して上記他方のワイヤソー配索経路へ挿通され、上記炉体外方に延出されるワイヤソーと、上記炉体外方に設置され、上記ワイヤソーを駆動するワイヤソー駆動装置と、上記2つのワイヤソー配索経路それぞれに、上記炉体内部に位置させて配置され、上記ワイヤソーを上記ワイヤソー駆動装置へ案内する固定シーブと、上記2つのワイヤソー配索経路の中間位置に、これらワイヤソー配索経路に沿って上記銑鉄及び上記炉体に削孔して形成され、上記連結経路と連通される通孔と、該通孔内にスライド自在に設けられ、上記2つのワイヤソー配索経路に跨がる上記ワイヤソーを上記炉体外方へ向かって上記耐火レンガ内縁に接近するように牽引する牽引手段とを備え、上記耐火レンガの内縁に沿う位置まで上記切断面を形成するために、上記固定シーブが、これに掛けられた上記ワイヤソーを上記炉体に向かって該耐火レンガの内縁位置まで移動可能に、該耐火レンガの内縁位置に位置決めされるようにしている。
【0004】
特許文献3の「解体工法」は、残銑を解体する解体工法を、残銑を分割する分割ラインを設定する分割ライン設定工程と、下向きに穿孔する油圧ドリル装置を備え、残銑上を走行可能な油圧クローラドリルによって、分割ラインに沿うとともに、所定間隔を隔てた複数の分割孔を、分割ラインに全体に亘って穿孔する穿孔工程と、穿孔工程完了後に、残銑から油圧クローラドリルを退去させる穿孔機退去工程と、所定間隔を隔てた複数の分割孔によって分割ラインで残銑を分割して分割ブロックとして搬出する分割ブロック搬出工程とで構成されている。
【0005】
特許文献4の「鉄筋コンクリートの解体方法」は、鉄筋コンクリート壁のコンクリート部分は打撃式ドリルによって壁面に格子状の連続溝を穿設し、該連続溝の深部の鉄筋を含む部分はコアーカッターによって鉄筋を切断し、これらの穿設手段を繰返して格子状の連続溝を所定深さまで穿設したのち、上部から下方に向かって前記連続溝の深部に達する切断部を形成して所望のブロック形状に切断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3977543号公報
【文献】特許第5512300号公報
【文献】特開2012-162787号公報
【文献】特開昭61-158569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いずれの背景技術にあっても、銑鉄等を切断するにあたり、削孔装置のドリルなどによって、発破孔や、ワイヤソーの経路、分割孔、連続溝などの削孔を銑鉄に形成するようにしている。
【0008】
銑鉄にドリルなどで削孔を形成する際、スラストやトルクの形で、大きな反力が削孔装置に作用する。削孔装置は、銑鉄に対し固定して設置されないため、削孔形成時の反力、特にスラストが影響して、当該削孔装置が振れ動いてしまったり、削孔装置の姿勢が傾いたりしてしまう。削孔装置が設置される銑鉄の表面には不陸があるため、これら振れ動き等が助長されることとなっていた。
【0009】
削孔装置に振れ動きや傾きが生じると、削孔に曲がりが生じたり、削孔スピードを上げることができないなど、削孔装置による作業を安定的かつ効率的に実施することができないという課題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、コアボーリング機のコアビットで銑鉄を切削して貫通孔を形成する際、貫通孔形成時の反力に抗して、コアボーリング機を銑鉄に対し固定して設置することが可能であり、特に、構造が簡単でコアボーリング機を容易に銑鉄に固定的に設置することが可能であって、これによりコアボーリング機で安定的にかつ効率良く貫通孔を銑鉄に形成することができる高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる高炉における銑鉄切断装置は、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する貫通孔を連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットする高炉における銑鉄切断装置であって、コアビットが先端に設けられたコアチューブを回転駆動しつつ銑鉄へ向けて前進させて、該コアビットで銑鉄を切削して上記貫通孔を形成するコアボーリング機に、先行して形成された該貫通孔の内部に挿抜自在に挿入される円柱状挿入体及び該挿入体を該貫通孔内部の周壁に離脱可能に定着させる定着手段を有して、該貫通孔形成時に該コアチューブを介して該コアボーリング機に伝達される切削反力を当該コアボーリング機から該挿入体を介して銑鉄に伝達して支持させるアンカー部を連結して構成され、上記挿入体は上記コアチューブの側方に位置され、該挿入体には、銑鉄の上方であって該コアチューブの側方に位置させて、当該コアチューブの前進を案内するガイドが設けられ、該ガイドは、上記コアチューブの周側面を包囲するように当該コアチューブの外周に沿う弧状凹部で形成されることを特徴とする。
【0014】
前記定着手段は、前記挿入体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて拡開自在に設けられ、拡開されて該周壁に圧接される圧接手段と、上記挿入体内を軸方向にスライド自在に貫通して上記貫通孔内部に突出され、スライド操作されて上記圧接手段を拡開させる操作手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
前記定着手段は、前記挿入体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて膨出自在な弾性体を備え、膨出される該弾性体が該周壁に圧接される圧接手段と、上記挿入体内を軸方向にスライド自在に貫通して上記貫通孔内部に突出され、スライド操作されて上記圧接手段の上記弾性体を膨出させる操作手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
前記定着手段は、前記挿入体に、前記貫通孔内部の前記周壁に向けて進退自在に設けられ、進出されて該周壁に圧接され、圧接反力で該挿入体の周面を当該周壁に圧着させるジャッキであることを特徴とする。
【0017】
前記ジャッキは、前記挿入体の軸方向に複数設けられることを特徴とする。
【0018】
前記アンカー部は、前記コアチューブの両側に配設されることを特徴とする。
【0019】
本発明にかかる高炉における銑鉄切断方法は、上記高炉における銑鉄切断装置を用い、高炉の炉体内部に残留する銑鉄にこれを貫通する前記貫通孔を、前記コアボーリング機を用いて連続的に形成して、当該銑鉄をラインカットすることを特徴とする。
【0020】
一つの前記貫通孔の形成後、一つの当該貫通孔から所定の間隔を隔てて、次の前記貫通孔を形成し、その後、これら貫通孔同士の間に新たな貫通孔を形成して、前記貫通孔を連続的に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法にあっては、コアボーリング機のコアビットで銑鉄を切削して貫通孔を形成する際、貫通孔形成時の反力に抗して、コアボーリング機を銑鉄に対し固定して設置することができ、特に、構造が簡単でコアボーリング機を容易に銑鉄に固定的に設置することができて、これによりコアボーリング機で安定的にかつ効率良く貫通孔を銑鉄に形成することができる。詳細には、挿入体はコアチューブの側方に位置され、挿入体には、銑鉄の上方であってコアチューブの側方に位置させて、当該コアチューブの前進を案内するガイドが設けられ、ガイドは、コアチューブの周側面を包囲するように当該コアチューブの外周に沿う弧状凹部で形成されるので、(1)銑鉄の上面には凹凸があって、コアビットが銑鉄の上面に不均衡に接して切削が開始されるため、コアチューブに傾きが生じ易いこと、また、(2)既に貫通孔が形成されている側では、コアチューブの側面にかかる反力が小さくなるため、これによってコアビットが傾いてしまうことがあること、さらに、(3)既設の貫通孔側には削孔反力が生じないため、コアチューブが貫通孔の側に傾く場合もあることに対して、ガイドによってコアチューブの姿勢を保つことができ、精度よく貫通孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明にかかる高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法の好適な一実施形態であって、銑鉄に貫通孔を形成している様子を示す側面図である。
図2図1に対応する平面図である。
図3図1に示した高炉における銑鉄切断装置の拡大側面図である。
図4図1に示した高炉における銑鉄切断装置の概略平面図である。
図5図4中、A-A線矢視図である。
図6図1に示した高炉における銑鉄切断装置のアンカー部に備えられる定着手段を示す要部拡大図である。
図7図6に示した定着手段の他の例を説明する説明図であって、(A)は貫通孔への挿入前の状態、(B)は、貫通孔へ挿入した状態、(C)は操作ロッドを引き上げたときの状態、(D)は操作ロッドを環状プレートに定着した状態をそれぞれ示す図である。
図8図6に示した定着手段のさらに他の例を説明する説明図であって、(A)は一部破断要部拡大図、(B)は(A)中、B-B線矢視断面図、(C)は(B)の構成の変形例を示す断面図である。
図9図1に示した高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法で連続的に形成される貫通孔に関し、アンカー部とコアビットとの位置関係を示す説明図である。
図10】本発明にかかる高炉における銑鉄切断装置の変形例を示す要部平面図である。
図11図10中、B-B線矢視図である。
図12】本発明にかかる高炉における銑鉄切断装置の他の変形例を示す側面図である。
図13】本発明にかかる高炉における銑鉄切断装置のさらに他の変形例を示す側面図である。
図14】本発明にかかる高炉における銑鉄切断装置のさらに他の変形例を示す説明図であって、(A)は側面図、(B)は(A)中、C-C線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法で銑鉄に貫通孔を形成している様子を示す側面図、図2は、図1に対応する平面図、図3は、図1に示した高炉における銑鉄切断装置の拡大側面図、図4は、図1に示した高炉における銑鉄切断装置の概略平面図、図5は、図4中、A-A線矢視図、図6は、図1に示した高炉における銑鉄切断装置のアンカー部に備えられる定着手段を示す要部拡大図、図7は、図6に示した定着手段の他の例を説明する説明図であって、(A)は貫通孔への挿入前の状態、(B)は、貫通孔へ挿入した状態、(C)は操作ロッドを引き上げたときの状態、(D)は操作ロッドを環状プレートに定着した状態をそれぞれ示す図、図8は、図6に示した定着手段のさらに他の例を説明する説明図であって、(A)は一部破断要部拡大図、(B)は(A)中、B-B線矢視断面図、(C)は(B)の構成の変形例を示す断面図、図9は、図1に示した高炉における銑鉄切断装置及び銑鉄切断方法で連続的に形成される貫通孔に関し、アンカー部とコアビットとの位置関係を示す説明図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、高炉1の炉体2内部には、基礎部分3上の耐火レンガ4で取り囲まれて、銑鉄5が残留する。本実施形態に係る高炉における銑鉄切断装置6は、この銑鉄5を高炉1内から搬出可能な塊状物に切断するために用いられる。
【0025】
切断にあたり、本実施形態に係る高炉における銑鉄切断装置6は、銑鉄5に、その上面5aから下方の耐火レンガ4まで達するように上下方向縦向きに貫通する貫通孔7を連続的に形成し、これら連続する貫通孔7によって銑鉄5を直線状や折れ線状、曲線状にラインカットするようになっている。
【0026】
高炉1の炉体2内部には、図示しない開口部から、銑鉄5の上面5a上に、本実施形態に係る高炉における銑鉄切断装置6が搬入される。この高炉における銑鉄切断装置6は、図3図5にも示すように、コアボーリング機31にアンカー部8を設けることによって構成される。高炉における銑鉄切断装置6を構成するコアボーリング機31及びアンカー部8は、銑鉄5の上面5a上を自在に走行移動される走行体33に搭載される。
【0027】
コアボーリング機31は主に、走行体33上に上下方向縦向きに立設された支持ポスト34と、支持ポスト34に上下方向ヘスライド移動自在に設けられたアーム部35と、アーム部35に内蔵して当該アーム部35と支持ポスト34の間に設けられ、アーム部35に設けられた操作ハンドル36の回動操作で支持ポスト34の高さ方向に沿ってアーム部35を銑鉄5に対して前進させるために、当該アーム部35を上下方向へ直線往復スライド移動させる、例えばラックアンドピニオン機構などの操作力伝達機構(図12図13参照)と、アーム部35上に搭載されたモータ部37と、モータ部37から垂下され、アーム部35を介してその下方へ突出されたモータ駆動軸38と、モータ駆動軸38に着脱自在にかつ下方へ向けて設けられ、モータ部37で回転駆動される中空円筒体状のコアチューブ39と、コアチューブ39の下部先端に設けられ、銑鉄5に環状の切削溝を切削して、この切削溝で形成されるコア体40が銑鉄5から抜き出されることで貫通孔7が形成されるように、コアチューブ39を介してモータ部37により回転駆動されるコアビット32とを備えて構成される。
【0028】
貫通孔7内のコア体40は、銑鉄5をラインカットしていく工程中、適宜なタイミングで、貫通孔7から抜き出される。抜き出しは、コア体40の上端に吊り具を溶接し、当該吊り具を介して重機でコア体40を吊り上げるなどの方法で行われる。なお、後述するアンカー部8の挿入体18を挿入しない貫通孔7については、内部のコア体40は、抜き出してもよいし、そのまま残置しておいてもよい。
【0029】
コアビット32は、円形に溝掘りする形式で切削溝、ひいては貫通孔7を形成するために、コアチューブ39の周方向に沿う円形の刃形態で形成される。
【0030】
走行移動される走行体33が貫通孔形成位置で停止されると、コアボーリング機31は、コアビット32が銑鉄5の上面5aに面するようにセットされる。コアビット32が設けられたコアチューブ39をモータ部37で回転駆動しつつ、モータ部37を搭載するアーム部35が、操作ハンドル36により、操作力伝達機構を介して支持ポスト34に沿って銑鉄5の上面5aへ向けて前進される。アーム部35の前進によりコアチューブ39が下方へ向けて移動され、モータ部37でコアビット32が回転されることにより、銑鉄5に切削溝が形成されていく。
【0031】
アーム部35が支持ポスト34の下端に達したときには、モータ部37が停止され、モータ駆動軸38とコアチューブ39の連結が切り離される。次いで、アーム部35が操作ハンドル36の操作で支持ポスト34の上端側へ後退され、後退されたモータ部37と切り離されたコアチューブ39との間に、追加のコアチューブが継ぎ足される。
【0032】
その後、モータ部37によるコアチューブ39の回転駆動とアーム部35の前進が再開され、コアビット32による切削溝の形成が継続される。このようにして、コアチューブ39を回転駆動しつつ銑鉄5へ向けて前進させ、コアビット32により銑鉄5を貫通する切削溝が形成されるまで、削孔作業が行われる。
【0033】
コアボーリング機31には、図3図5に示すように、コアチューブ39と隣り合う位置にアンカー部8が一体的に設けられる。アンカー部8は、支持ポスト34に隣接させて走行体33に立設されたスライド用ポスト10と、スライド用ポスト10に上下方向へスライド自在に設けられ、適宜高さ位置でスライド用ポスト10に対しロックして位置固定されるたスライダ11と、スライダ11に、コアチューブ39の側方に位置するようにして着脱自在に設けられ、貫通孔7の内部に挿抜自在に挿入するために、軸心が上下方向に向くように縦向きに設けられ、走行体33からこれよりも下方へ向けて垂下される円柱状挿入体18と、挿入体18に設けられ、当該挿入体18を貫通孔7に離脱可能に定着させる定着手段19とを備えて構成される。
【0034】
スライド用ポスト10に対するスライダ11の上下方向移動及び位置固定は、上述した操作力伝達機構と同様な手段によってなされる。
【0035】
スライダ11により所定の高さ位置に保持される挿入体18と、アーム部35の前進で走行体33よりも下方へ向けて移動されて高さ位置が変化するコアビット32との高さ位置関係について、削孔作業前は、図3に示すように、コアビット32が挿入体18の下端の高さ位置よりも高く、削孔作業の進捗に従うアーム部35の前進でコアビット32が下降していって、削孔作業途中で、反対に挿入体18の下端がコアビット32の高さ位置よりも高くなるように設定される。
【0036】
削孔作業開始前において、コアビット32よりも挿入体18の下端がより下方に突出される関係であるため、挿入体18は、少なくとも一つの貫通孔7が形成された後に、当該貫通孔7の内部へスライダ11によって下降される。
【0037】
そして、当該貫通孔7に挿入体18が挿入され、後述する定着手段19で貫通孔7に定着されたならば、その挿入状態でコアビット32の下降を伴う削孔作業が行われる。挿入体18を挿入するために先行形成される貫通孔7は、上記コアボーリング機31によって形成されたものであっても、あるいは他の削孔手段で形成されたものであっても、いずれであってもよい。また、この先行形成される貫通孔7は、未完の貫通孔、すなわち貫通していない削孔(例えば、その後の削孔作業で貫通孔7に仕上げられる)であってもよい。
【0038】
挿入体18の外径寸法は、少なくともその一部が貫通孔7内部に挿抜可能な寸法に設定される。
【0039】
走行体33を介してコアボーリング機31と一体的に設けられるアンカー部8の挿入体18と、コアボーリング機31に備えられるコアチューブ39とは、水平方向に互いに間隔を隔てて平行に配置され、先行形成された貫通孔7に削孔作業前に挿入される挿入体18によって、削孔作業を行う際のコアチューブ39の位置が位置決めされる。
【0040】
図12は、高炉における銑鉄切断装置6の変形例を示す側面図である。この変形例では、コアボーリング機31を搭載する走行体33を省略し、コアボーリング機31の支持ポスト34が立設されるベースプレート13を銑鉄5の上面5aにアンカーで固定設置する場合である。
【0041】
ベースプレート13には、アンカー部8が一体的に設けられる。具体的にはベースプレート13の下面には、コアチューブ39から間隔を隔てた位置から垂設して、挿入体18が設けられる。この変形例では、定着手段19として、ジャッキ20を用いた場合が示されている。
【0042】
ベースプレート13を、上下2枚の板材を水平方向にスライド自在に重ね合わせて伸縮自在に構成し、下方の板材に挿入体18を設け、上方の板材に支持ポスト34を設けるようにして、挿入体18とコアチューブ39の水平方向距離を調整可能とするようにしてもよい。
【0043】
このような変形例であっても、コアチューブ39を介してコアボーリング機31に伝達されるスラストやトルクなどの削孔反力を、アンカー部8によって銑鉄5に伝達して支持させることができ、コアボーリング機31を銑鉄5に対し、固定して設置することができる。
【0044】
図13は、高炉における銑鉄切断装置6の他の変形例を示す側面図である。この変形例でも、上記変形例と同様にコアボーリング機31を搭載する走行体33が省略され、コアボーリング機31の支持ポスト34そのものの直下に、コアチューブ39から間隔を隔てて、アンカー部8が一体的に設けられている。
【0045】
具体的には、支持ポスト34の下方部分が、貫通孔7に挿入される挿入体18として利用されている。定着手段19としては、ジャッキ20を用いた場合が示されている。
【0046】
このような変形例であっても、コアチューブ39を介してコアボーリング機31に伝達されるスラストやトルクなどの削孔反力を、アンカー部8によって銑鉄5に伝達して支持させることができ、コアボーリング機31を銑鉄5に対し、固定して設置することができる。
【0047】
スライダ11の下方移動によって貫通孔7へ挿入される挿入体18の挿入深さ、すなわち、挿入体18の下端から銑鉄上面5aまでの寸法は、当該挿入体18に設けられる定着手段19が貫通孔7の内部に納まるように設定される(図8中、符号Pを参照)。
【0048】
本実施形態にあっては、定着手段19は図3図6に示すように、挿入体18の下方部分に組み込んで設けられる。図6に示すように、この定着手段19では、挿入体18が中空筒体状に形成されると共に、挿入体18に、貫通孔7内部の周壁7aに向けて拡開自在に設けられ、拡開されて周壁7aに圧接される圧接手段23と、挿入体18内を軸方向にスライド自在に貫通して貫通孔7内部に突出され、スライド操作されて圧接手段23を拡開させる操作手段24とから構成される。
【0049】
圧接手段23は、挿入体18の下方であって、貫通孔7の周方向に間隔を隔てて配列され、それぞれ貫通孔7内部の周壁7aに向けて揺動自在に支持された複数の揺動ブロック23aから構成される。図示例では、揺動ブロック23aは、2つ設けられている。揺動ブロック23aは、操作手段24の操作ロッド24aに設けられかつ銑鉄5の上面5aに設置される環状プレート25cに取り付けて設けられる。また、操作手段24は、貫通孔7内部へ達する操作ロッド24aと、上端が小径で下端が大径なコーン状に形成されて操作ロッド24aの下端に設けられ、配列された揺動ブロック23aに取り囲まれて配置されるコーン部材24bとから構成される。
【0050】
スライダ11がスライド用ポスト10にロックされ、挿入体18によって揺動ブロック23aの高さが変わらないように固定した状態で、操作ロッド24aが上方へスライド操作されると、コーン部材24bが上昇して各揺動ブロック23aを貫通孔7の周壁7aに向けて揺動させることにより、圧接手段23全体としては拡開されて周壁7aに圧接されることとなり、これにより定着作用が得られるようになっている。揺動ブロック23aの定着作用が得られたら、操作ロッド24aに設けてある締め込みナット51を回して、当該操作ロッド24aに沿って下降して環状プレート25cの上面に螺着させ押し付けることで、揺動ブロック23aの拡開状態を保持する。また、環状プレート25cに対する締め込みナット51の螺着を解除して、操作ロッド24aが下方へスライド操作されることで、揺動ブロック23aが周壁7aから離脱され、これにより定着作用が解除されるようになっている。
【0051】
挿入体18が定着手段19で貫通孔7内部の周壁7aに定着されることにより、コアビット32で銑鉄5に貫通孔7を形成するときに、コアチューブ39を介して銑鉄5からコアボーリング機31に伝達される削孔反力が、コアボーリング機31から挿入体18の定着手段19を介して銑鉄5に伝達され支持される。
【0052】
また、この定着作用及びガイド12により、削孔作業にあたり、コアチューブ39が安定して下向き下方に案内される。揺動ブロック23aの外表面には、貫通孔7内部の周壁7aに接触したときに摩擦力が得られるように、凹凸加工が施される。また、貫通孔7内部の周壁7aを形成する銑鉄5との接触による摩滅が抑制されるように、少なくとも揺動ブロック23aの外表面は、銑鉄5よりも大きな硬度で形成される。
【0053】
図7には、挿入体18に設けられる定着手段19の他の例が示されている。この定着手段19では、挿入体18が中空筒体状に形成されると共に、挿入体18に、貫通孔7内部の周壁7aに向けて膨出自在な弾性体25aを備えて、膨出される弾性体25aが周壁7aに圧接される圧接手段25と、挿入体18内を軸方向にスライド自在に貫通して貫通孔7内部に突出され、スライド操作されて圧接手段25の弾性体25aを膨出させる操作手段としての操作ロッド26とから構成される。
【0054】
圧接手段25の弾性体25aは、通孔25bを有する中空円筒体状に形成され、その上面が、挿入体18を貫通する操作ロッド26に接合されかつ銑鉄5の上面5aに設置される環状プレート25cに当接される。また、弾性体25aの下面には、リングプレート52が設けられ、このリングプレート52にナット体25dが当接される。操作ロッド26は、挿入体18の下端から通孔25bを介してナット体25dと螺合される。
【0055】
操作ロッド26が上方へスライド操作されると、弾性体25aがリングプレート52と環状プレート25cとの間で圧縮され、これにより弾性体25aがその径方向外方へ膨出されて貫通孔7の周壁7aに圧接され、これにより定着作用が得られるようになっている。弾性体25aの定着作用が得られたら、操作ロッド26に設けてある締め込みナット51を回して、当該操作ロッド26に沿って下降して環状プレート25cの上面に螺着させ押し付けることで、弾性体25aの膨出状態を保持する。殊に、弾性体25aはその弾性により貫通孔7の周壁7aの凹凸を吸収できるので、周壁7aに密着させることができる。また、環状プレート25cに対する締め込みナット51の螺着を解除して、操作ロッド26が下方へスライド操作されることで、弾性体25aが復原されて周壁7aから離脱され、これにより定着作用が解除されるようになっている。
【0056】
これら図6及び図7に示した定着手段19の場合、挿入体18を貫通孔7の中心に位置付けることができ、アンカー部8の隣接位置でコアボーリング機31により削孔される貫通孔7の位置精度を高めることができる。
【0057】
図8には、挿入体18に設けられる定着手段19のさらに他の例が示されている。この定着手段19では、挿入体18の下方部分に備えられるジャッキ20で構成される。ジャッキ20は、挿入体18内部に収納された油圧ユニット部20aと、油圧ユニット部20aに設けられ、挿入体18周りの1個所に横向きに向けて形成された穴21を介して、貫通孔7内部の周壁7aに向けて挿入体18の径方向外方へ進退自在に進出されるラム20bとから構成される。
【0058】
ラム20bは、油圧ユニット部20aで駆動されて進出されると、周壁7aに圧接され、この圧接による反力で、穴21とは反対側で、挿入体18の周面を周壁7aに圧着させる。挿入体18には、穴21の反対側に位置させて、凹凸加工され大きな硬度を有する超高合金製のグリッパー50が設けられ、このグリッパー50が貫通孔7内部の周壁7aに、摩滅が抑制されつつ大きな摩擦力で定着される。ラム20bは、油圧ユニット部20aで駆動されて後退されると、グリッパー50と共に、挿入体18を貫通孔7内部の周壁7aから離脱させる。
【0059】
図示例では、ジャッキ20は、挿入体18の軸方向、すなわち貫通孔7の深さ方向に上下に2台設けられていて、これらジャッキ20のラム20bは挿入体18の径方向の同一方向に進退されるようになっている。このように、2台以上複数台のジャッキ20を備えることにより、挿入体18は長い距離にわたり、貫通孔7に安定して定着される。図8(B)は、グリッパー50を一つ設けた場合、図8(C)は、グリッパー50を、挿入体18周りに間隔を隔てて2つ設けた場合を示している。油圧ユニット部20aへの油圧供給は、挿入体18の内部を通じて、コアボーリング機31側から行っても、あるいは別途独立した油圧供給系を設けて行うようにしてもよい。
【0060】
また、コアチューブ39の側方に位置される挿入体18の周側面には、コアチューブ39の周側面を包囲する形状で形成され、銑鉄5の上面5aよりも上方であってコアチューブ39の側方に位置させて、当該コアチューブ39の前進を案内するためのガイド12が備えられる。本実施形態にあっては、ガイド12は、上下方向に向けてコアチューブ39の外周に沿う弧状凹部で形成され、これにより、コアチューブ39の周側面を部分的に包囲し、当該コアチューブ39が傾くなどのズレを規制する。
【0061】
詳細には、銑鉄5の上面5aには凹凸があって、円形の刃形態であるコアビット32が銑鉄5の上面5aに不均衡に接して切削が開始されるため、コアチューブ39に傾きが生じ易い。また、既に貫通孔7が形成されている側では、コアチューブ39の側面にかかる反力が小さくなるため、これによってコアビット32が傾いてしまうこともある。さらに、既設の貫通孔7側には削孔反力が生じないため、コアチューブ39が貫通孔7の側に傾く場合もある。本実施形態では、ガイド12によってコアチューブ39の姿勢を垂直下方に保つことができ、精度よく貫通孔7を形成することができる。
【0062】
図9に示すように、挿入体18を挿入するために先行形成される貫通孔7xと、貫通孔7を新たに形成するためのコアビット32とは、両者がラップするような間隔であっても、あるいは、これら貫通孔7x及びコアビット32の横向き水平方向の間隔Zが、双方にラップしてそれらの間に位置されることとなる貫通孔7yほぼ一つ分の寸法を隔てた間隔(Z≦W;Wは貫通孔7の孔径)であってもよい。
【0063】
後者の場合には、貫通孔7を連続形成するために、先行形成する貫通孔7x,7yが2つ隣り合わせで形成され、挿入体18がこれら貫通孔7x,7yに順次に挿入されて、コアビット32による削孔作業が行われる。
【0064】
先行形成する貫通孔7の個数は異なるけれども、上記いずれの場合であっても、銑鉄5をラインカットする貫通孔7が連続的に形成される。また、図9に矢印Qで示すように、ラインカットの形態は、隣接する貫通孔7同士に角度を付けることで、直線状に限ることなく、折れ線状や曲線状の形態とされる。
【0065】
図10及び図11は、高炉における銑鉄切断装置6のさらに他の変形例を示す図であって、図10は要部平面図、図11は、図10中、B-B線矢視図である。この変形例では、コアチューブ39の両側に一対でアンカー部8が設けられている。
【0066】
コアボーリング機31及びアンカー部8の構成は、上記実施形態と同様である。アンカー部8をコアチューブ39の両側に一対設ければ、コアボーリング機31を固定的に設置する作用及びコアチューブ39のガイド作用をさらに向上して、コアボーリング機31により安定的にかつ効率良く貫通孔7を銑鉄5に形成することができる。
【0067】
この変形例の場合には、最初に2つの貫通孔7が、貫通孔1つ分の間隔を空けて先行形成され、先行形成された2つの貫通孔7それぞれに各挿入体18を挿入した状態で、これら貫通孔7の間にコアボーリング機31で貫通孔7が削孔されて、3つの貫通孔7がセットで形成される。その後は、3つの貫通孔7のうち、端に位置する貫通孔7に対し、貫通孔1つ分の間隔を空けて一つの貫通孔7を先行形成し、これら貫通孔7の間にコアボーリング機31で貫通孔7を削孔するようにして、貫通孔7を2つずつ新設していく。
【0068】
この場合、コアボーリング機31を2台用いて、1台は、端部に位置する貫通孔7に対して貫通孔1つ分の間隔Zを空けて、一つの貫通孔7を先行形成させるようにし、もう1台が、これら2つの貫通孔7の間に、さらに貫通孔7を形成するように作業を行うことが望ましい。なお、これら3つの貫通孔7の真ん中の貫通孔7からは、コア体40を抜き出す必要はない。
【0069】
図14は、高炉における銑鉄切断装置6のさらに他の変形例を示す説明図である。この変形例でも、上記変形例と同様にコアボーリング機31を搭載する走行体33が省略されている。
【0070】
この変形例では、図13の構成を基に、コアボーリング機31の支持ポスト34の下端部をコアチューブ39の側方へ向けて横向きに折曲形成してアンカー部8の挿入体18を一体的に形成し、さらにこの挿入体18に、図4に示したと同様なガイド12を設けるようにしたものである。このような変形例であれば、ガイド12によってコアチューブ39の前進を的確に案内することができる。
【0071】
次に、本実施形態に係る高炉における銑鉄切断装置6を用いた高炉における銑鉄切断方法について説明する。本実施形態に係る高炉における銑鉄切断方法は基本的には、高炉1の炉体2内部に残留する銑鉄5にこれを貫通する貫通孔7を、コアボーリング機31を用いるなどして連続的に形成し、当該銑鉄5をラインカットするものであり、その際、一つの貫通孔7の形成後、一つの当該貫通孔7から所定の間隔を隔てて、次の貫通孔7を形成し、その後、これら貫通孔7同士の間に新たな貫通孔7を形成して、貫通孔7を連続的に形成する場合が含まれる。
【0072】
高炉1の炉体2内部に残留する銑鉄5を切断する際には、コアボーリング機31及びアンカー部8を備えた走行体33や、図12図14に変形例として示したコアボーリング機31を銑鉄5の上面5a上に搬入する。削孔作業に際しては、コアボーリング機31等を備えた走行体33を複数台用いることが効率的である。
【0073】
まず、連続的に形成されて銑鉄5をラインカットする貫通孔7のうち、最初の貫通孔7を、アンカー部8の挿入体18を挿入するための貫通孔7として先行して形成する。上述したように、先行形成する貫通孔7は、挿入体18とコアチューブ39との間隔に応じて、一つまたは複数個形成する。
【0074】
これらの先行形成する貫通孔7は、これも上述したように、本実施形態に係る高炉における銑鉄切断装置6を構成するコアボーリング機31で形成しても、あるいは、他の削孔手段で形成しても、いずれであってもよい。
【0075】
次いで、スライド用ポスト10のスライダ11をスライド移動して下降させることにより、挿入体18を先行形成された貫通孔7に挿入する。貫通孔7に挿入された挿入体18の定着手段19を作動させ、貫通孔7内部の周壁7aに揺動ブロック23aを圧接し、この圧接反力で挿入体18を貫通孔7の周壁7aに圧着させて定着させる。
【0076】
挿入体7の貫通孔9への挿入深さは、揺動ブロック23aが収納される程度でよく、深く挿入する必要がないので、手間がかかることなく、容易かつ短時間でアンカー部8の設置を完了することができる。
【0077】
挿入体18が貫通孔7に定着されることにより、コアボーリング機31、ひいてはこれを搭載する走行体33を銑鉄5に対し、固定して設置することができる。
【0078】
この際、挿入体18が、銑鉄上面5aよりも下方の貫通孔7内部に定着されている一方、コアビット32は、銑鉄上面5aよりも上方に位置されている。挿入体18を貫通孔7内部に定着させたら、コアビット32による削孔作業を開始する。削孔作業は、コアボーリング機31のモータ部37でコアチューブ39を介してコアビット32を回転駆動しつつ、操作ハンドル36で操作されるアーム部35でモータ部37を銑鉄5に向けて前進させることで行う。
【0079】
コアビット32で銑鉄5に貫通孔7を形成していくとき、コアチューブ39を介してコアボーリング機31に伝達されるスラストやトルクなどの削孔反力は、アンカー部8により、すなわち定着手段19で貫通孔7に定着された挿入体18により、銑鉄5に伝達されて支持される。
【0080】
このようにアンカー部8により、削孔反力を銑鉄5に伝達して支持させるようにしたので、コアボーリング機31、そしてまたこれを備える走行体33に生じる振れ動きを抑制することができ、また走行体33の姿勢が傾くことを防止することができる。
【0081】
また、挿入体18と貫通孔7を形成するコアチューブ39との間隔が、例えば図13の変形例のように、せいぜいコアチューブ39の外径のせいぜい一つ分から二つ分よりも狭くなるように配置される構成であるので、削孔反力が生じる位置(コアチューブ39)とこの削孔反力に抗する定着位置(挿入体18)との距離が短く、走行体33を含むコアボーリング機31側に作用する応力負担を軽減できて、効率良く安定的に削孔反力に抗することができる。
【0082】
従って、コアボーリング機31で形成される貫通孔7に曲がりが生じることを防止できると同時に、高い削孔スピードで作業を行うことができて、貫通孔7を安定的かつ効率的に形成することができる。
【0083】
殊に、コアボーリング機31は、小動力で切削できるので、切削作業で生じる反力も小さく、また、コアチューブ39内に残るコア体40が内側から当該コアチューブ39を支持するので、この面からも、コアボーリング機31で形成される貫通孔7は位置精度高く、かつ孔曲がりが生じることなく形成でき、貫通孔7を安定的かつ効率的に形成することができる。ガイド12については、コアビット32による削孔作業の最初の段階で削孔(貫通孔7)に曲がりが生ずることを防止できればよいので、挿入体18が挿入される貫通孔7のすぐ上、すなわち銑鉄5のすぐ上に位置するように設置されればよい。
【0084】
そして、安定的に貫通孔7を形成できることにより、正確な位置に貫通孔7を形成でき、貫通孔7を連続的に形成するにあたり、貫通孔7同士のラップ量を僅かとして、貫通孔7の形成個数を減少させることができ、施工効率を向上することができる。
【0085】
貫通孔7が新設される度に、アンカー部8の挿入体18を定着させる貫通孔7をずらし、コアボーリング機31で新たな貫通孔7の形成を継続することにより、銑鉄5を貫通する貫通孔7を連続的に形成して、銑鉄5をラインカットすることができる。
【0086】
削孔反力を銑鉄5に支持させるアンカー部8は、挿入体18と定着手段19とで構成して、コアボーリング機31に一体的に設けるだけであって、構造が簡単であると同時に、コアボーリング機31を銑鉄5に対し適切かつ確実に固定的に設置することができる。
【0087】
上述したコアボーリング機31であれば、例えば、貫通孔同士の間隔が5mm程度であっても、削孔することができる。また、銑鉄表面付近ではラップしていても、途中から離れてしまっている貫通孔について、残っている部分をコアボーリング機31で削孔することができる。さらに、炉の外周なども、コアボーリング機31であれば、削孔することができる。
【0088】
高炉1の炉体2内部に残留する銑鉄5を切断する際には、コアボーリング機31及びアンカー部8を備えた走行体33のみを使用しても良く、その場合、図12図14に示した変形例に係る銑鉄切断装置6を混在させても良く、またこれらの変形例に係る銑鉄切断装置6のみを使用するようにしても良い。また、ドリルによって銑鉄5に円形の貫通孔を形成する穿孔機を併用しても良い。
【0089】
上記実施形態では、コアボーリング機31にアンカー部8を一体的に設けて構成する場合について説明したが、削孔時に必要な反力を銑鉄5に伝達できるようにコアボーリング機31とアンカー部8とが連結されていればよく、すなわち、アンカー部8とコアボーリング機31とを別体で製作し、例えばピンと張った鎖等で両者をつないで、コアボーリング機31に作用する反力を、銑鉄5側のアンカー部8に負担させるようにしてもよい。
【0090】
本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。アンカー部8の挿入体18は例えば、挿入体18とコアチューブ39が貫通孔7を2つもしくは3つ跨いだ間隔を隔てて配置されてもよく、また、スライド用ポスト10を位置調整自在として、当該間隔を調節可能にしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 高炉
2 炉体
5 銑鉄
6 高炉における銑鉄切断装置
7 貫通孔
7a 貫通孔内部の周壁
8 アンカー部
12 ガイド
18 円柱状挿入体
19 定着手段
20 ジャッキ
23 圧接手段
24 操作手段
25 圧接手段
25a 弾性体
26 操作ロッド
31 コアボーリング機
32 コアビット
39 コアチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14