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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】回収容器及び回収デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20220221BHJP
【FI】
G01N1/10 V
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018130917
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020008464
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 理緒
(72)【発明者】
【氏名】藤元 宏充
(72)【発明者】
【氏名】西垣 舞穂
(72)【発明者】
【氏名】古里 紀明
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-090131(JP,A)
【文献】国際公開第2004/046693(WO,A1)
【文献】特開2009-128110(JP,A)
【文献】特開2017-026554(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0157728(US,A1)
【文献】特開2000-146957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
G01N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の軸と、前記軸の先端に形成され、液体検体を保持可能な吸収体と、を有する検体採取具における前記吸収体に保持された液体検体を回収するための回収容器であって、
筒状の胴部と、
前記胴部の上端に設けられる上端開口と、
前記胴部の内周面において、下方へ内径が窄まるように形成されているテーパ壁面と、
前記テーパ壁面の下端に設けられる回収開口と、
前記回収開口よりも下方に形成されている下端開口と、
前記回収開口と下端開口とを連絡する回収路と、
を備えるとともに、
前記テーパ壁面には前記回収開口へ連絡する壁面溝が形成されており、
前記テーパ壁面は前記検体採取具の前記吸収体を内接することで、前記検体採取具を支持可能に形成され
前記回収路の周囲には前記下端開口へ連絡する回収溝が配設されている、回収容器。
【請求項2】
前記胴部の内周面において、前記上端開口と前記テーパ壁面との間に誘導路が介在している、請求項1記載の回収容器。
【請求項3】
前記液体検体は唾液である、請求項1又は請求項に記載の回収容器。
【請求項4】
前記液体検体はヒト以外の動物由来である、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の回収容器。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の回収容器と、
前記回収容器を収容する外挿容器と、
を備える、回収デバイス。
【請求項6】
前記上端開口の辺縁に前記外挿容器の開口部の辺縁に係止する係止縁が設けられている、請求項記載の回収デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体検体を保持した綿棒等の検体採取具からその液体検体を回収する回収容器及び回収デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を保持可能な吸収体を有する検体採取具を用いて、唾液、血液、尿等の検体を採取し、その吸収体に保持された検体を回収し、その回収した検体を用いて各種物性又は成分等の検査及び調査等が実施されている。このような検体採取具としては、たとえば、棒状の軸を備え、その軸の先端に、吸収体としての綿体を有する綿棒が利用されている。
【0003】
検体の採取に用いられる綿棒は、採取対象(たとえば、ヒト又はヒト以外の動物)、検体の種類(たとえば、血液、尿又は唾液)及び必要とされる検体の量によって、綿体の量や綿体が取り付けられる軸の長さ等が適宜に選択される。そのため、様々な種類の綿棒が使用されている。
【0004】
たとえば、下記特許文献1において、筒状の容器内に、底が透過性のバスケットを設けた法医学資料の収集容器が開示されている。具体的には、このバスケット内にDNAを含む検体(たとえば口腔綿棒)を入れ、バスケット内を満たすように容器内に分解/溶解緩衝液を加え、DNAが溶出した液体を回収した後、バスケット内の検体に残存した液体を遠心分離することにより回収することが可能である。
【0005】
また、下記特許文献2においては、柄がついたスポンジで採取された検体を、希釈液を収容した内径の窄まった容器に挿入することで検体を絞り出すことの可能な器具が開示されている。
【0006】
さらに、下記特許文献3においては、リブの容器中心方向の長さが、上部から底部に向かって段階的に長くなっている検体容器が開示されている。また、容器内部にはあらかじめ抽出液が充填されている。ここに綿棒を挿入し、リブに擦り付けるように綿棒を回転させて、綿球から検体を抽出液に排出させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2010-534324号公報
【文献】特開平10-090131号公報
【文献】特許第5080395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術はいずれも容器内に希釈液又は溶解液が収容され、抽出対象物をその希釈液又は溶解液に溶解した状態で回収を行うものであった。
【0009】
上記の問題点に鑑み、本発明の実施態様は、綿棒の綿体のような吸収体に保持した液体検体そのものについて、吸収体への残存量をできるだけ少なくしつつ回収することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示における回収容器は、棒状の軸と、前記軸の先端に形成され、液体検体を保持可能な吸収体と、を有する検体採取具における前記吸収体に保持された液体検体を回収するための回収容器であって、
筒状の胴部と、
前記胴部の上端に設けられる上端開口と、
前記胴部の内周面において、下方へ内径が窄まるように形成されているテーパ壁面と、
前記テーパ壁面の下端に設けられる回収開口と、
を備えるとともに、
前記テーパ壁面には前記回収開口へ連絡する壁面溝が形成されており、
前記テーパ壁面は前記検体採取具の前記吸収体を内接することで、前記検体採取具を支持可能に形成されている。
【0011】
また、本開示における回収デバイスは、前記回収容器と、前記回収容器を収容する外挿容器と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本実施態様によれば、綿棒の綿体のような吸収体に保持した液体検体そのものについて、吸収体への残存量をできるだけ少なくしつつ回収量を多くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の実施形態における回収容器の正面図である。
図1B図1Aの回収容器の側面図である。
図1C図1B図1D及び図1EのI-I断面図である。
図1D図1Aの回収容器の平面図である。
図1E図1Aの回収容器の底面図である。
図2A】本発明の実施形態における外挿容器の側面図である。
図2B図2Aの外挿容器の正面図である。
図2C図2BのII-II断面図である。
図3A】本発明の実施形態における回収デバイスの正面図である。
図3B図3AのIII-III断面図である。
図4A】本発明の実施形態における回収デバイスの使用状態を示す正面断面図である。
図4B】本発明の実施形態における回収デバイスの使用状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示に係る回収容器は、棒状の軸と、その軸の先端に形成され、液体検体を保持可能な吸収体と、を有する検体採取具における吸収体に保持された液体検体を回収するためのものである。この回収容器は、筒状の胴部と、その胴部の上端に設けられる上端開口と、その胴部の内周面において、下方へ内径が窄まるように形成されているテーパ壁面と、そのテーパ壁面の下端に設けられる回収開口と、を備えるとともに、そのテーパ壁面には回収開口へ連絡する壁面溝が形成されており、そのテーパ壁面は検体採取具の吸収体を内接することで、検体採取具を支持可能に形成されている。
【0015】
検体採取具としては、吸収体としての綿体を備える綿棒が適している。検体採取具の軸は棒状であればよい。換言すると、検体採取具としての綿棒は、棒状の軸の先端に、吸収体としての綿体を有する。また、本開示に係る回収容器は特に長軸の綿棒に適している。吸収体は、たとえば毛細管現象により、液体検体を吸収体内に保持可能な吸蔵性を備えていればよい。さらに、容易に液体検体を搾り取ることのできるような易可撓性を備えていてもよい。吸収体としては、たとえば綿体又はスポンジ等が挙げられる。
【0016】
回収容器は、両端が開口した筒状の胴部を有する。ここで、本開示においては、液体検体を回収する際に回収容器が載置される状態によって、上下を定めている。すなわち、回収容器の中で、重力に従って液体検体が移動する方向が下方であり、その反対方向が上方である。
【0017】
胴部の上端に設けられる上端開口は、胴部の内部に、検体採取具の吸収体を挿入可能な程度の口径を有する。ここで、胴部とは、回収容器において、筒状の外観を呈していて、内部に空間を有している部分をいう。
【0018】
テーパ壁面とは、胴部の内周面において下方へ向かって内径が窄まる構造を有している部分をいう。また、テーパ壁面には壁面溝が設けられている。ここで、壁面溝の底面については、テーパ壁面のように傾斜していてもよいし、そうでなくてもよい。換言すると、テーパ壁面は、下方に向かうにつれて、内径を窄める傾斜面を少なくとも有している部分、ということもできる。ここで、テーパ壁面の内径とは、テーパ壁面の内面側に内接する内接円の直径をいう。具体的には、検体採取具の先端に形成された吸収体(たとえば、綿棒の先端の綿体)を回収容器の内部に挿入したときに、吸収体が接触し得るテーパ壁面部分の内接円の直径ということもできる。このような構成によって、テーパ壁面は検体採取具の吸収体を内接することで、検体採取具を支持可能に形成されている。たとえば、綿棒のような検体採取具を軸の部分も含めて回収容器の軸心部分で支持する上では、テーパ壁面は、下方へ向かうに従って、回収容器の軸心方向へ傾斜していることが好ましい。
【0019】
また壁面溝の形状は、液体検体の表面張力、接触角、密度、粘度及び夾雑物の有無などの性質に応じて、適時選択できる。たとえば、壁面溝の幅、深さ及び長さを、液体検体の毛細管現象を引き起こすために最適なものに選択することができる。また、たとえば、壁面溝の容量を検体量に対して十分大きくすることができる。これにより、吸収体に保持された液体検体が流入できる壁面溝を常に確保することができ、壁面溝から液体検体を滞りなく脱離させることができる。そして、吸収体から液体検体の回収量を増やすことや、一度吸収体から離脱した液体検体がその吸収体に再吸収されることを防ぐことができる。また、たとえば、液体検体が不溶性の夾雑物を含んでいる場合、壁面溝の幅や深さを大きくすることで、そのような不溶性の夾雑物が壁面溝に詰まることを防ぐことができる。
【0020】
なお、胴部の内周面から軸心方向に複数のリブが突設されている場合、壁面溝がテーパ壁面の大部分を占めることになる。換言すると、このようなリブとリブとの間の空間が壁面溝となり、テーパ壁面はこれらリブ及び壁面溝の全てを含んだ構造として把握できる。このような場合、テーパ壁面の内面側に内接する内接円は、複数のリブに接している。換言すると、壁面溝の底は下方へ窄まるように傾斜していなくても、リブの内周縁が軸心方向かつ下方へ傾斜していればよい。
【0021】
テーパ壁面の下端には、回収開口が形成されている。この回収開口には、壁面溝が連絡している。なお、この回収開口よりも下方に、胴部の下端に設けられた下端開口が形成されていてもよい。この回収開口と下端開口とは、回収路で連絡している。
【0022】
また、胴部の内周面において、上端開口とテーパ壁面との間に誘導路が介在していてもよい。ここでこの誘導路とは、上端開口からテーパ壁面に至るまでの間で、内径が特に窄まっていない部分をいう。
【0023】
本開示に係る回収容器は以上の構成により、以下のような作用効果を奏する。
【0024】
まず、液体検体が保持された検体採取具の吸収体を先頭にして、回収容器の上端開口から検体採取具を挿入し、検体採取具の先端にある吸収体をテーパ壁面に接触させる。この際、このテーパ壁面は、下方に向かって胴部の内部の内径が窄まるように傾斜している。そのため、この内径の範囲に収まる大きさの吸収体を有する検体採取具であれば、吸収体を回収容器の下方に挿入させていくことにより、吸収体はテーパ壁面によって挟まれる。これにより吸収体は複数箇所でテーパ壁面に支持されるとともに、吸収体はテーパ壁面で係止される。また、テーパ壁面の内径は下方に向かって連続的に狭まっていることにより、回収容器は、様々な大きさの吸収体を有する検体採取具を確実に固定することができ、液体検体を回収することができる。また吸収体を複数箇所で支持しているため、検体採取具の軸も含め安定して立位を保たせることができる。よって、様々な大きさの綿体を有する綿棒を検体採取具として用いた場合でも、その綿棒の軸は特に手指又は別途の手段にて支持する必要はない。そのため、たとえば、液体検体の回収時に作業の妨げとなる検体採取具の軸を切断する際など、回収容器に挿入した検体採取具を操作する際には好適である。
【0025】
次に、吸収体が接触したテーパ壁面には壁面溝が形成されている。この壁面溝は、液体検体の毛細管現象を引き起こすように形成されている。そのため、吸収体に保持された液体検体は、毛細管力を駆動力として、吸収体からこの壁面溝に引き込まれる。また、テーパ壁面には壁面溝が設けられていることから、テーパ壁面と吸収体の接触面積は小さくなる。そのため、液体検体が毛細管力によって吸収体から壁面溝に引き込まれる際に、テーパ壁面と吸収体の接触部分に滞留する液体検体が少なくなり、液体検体が吸収体の中に残存することが抑制される。また、壁面溝は吸収体と接触していないことから、一旦吸収体から離脱して壁面溝に流入した液体検体は、再び吸収体とは接触しない。これにより、一旦吸収体から取り出された液体検体が、吸収体に再度戻ることを防ぐことができる。これらの作用により、吸収体に液体検体が残存することなく、吸収体から液体検体を離脱させて回収することができる。この壁面溝は、回収容器の長軸方向に沿って真っ直ぐに形成されることが望ましいが、その長軸方向に対して斜め方向や、螺旋状に形成されてもよい。
【0026】
そして、壁面溝に浸透した液体検体は、毛細管力で回収開口へ誘導され、回収される。回収容器が回収路及び下端開口を備える場合は、回収開口に誘導された液体検体は、回収路を経由して、胴部の下端に当たる下端開口から回収される。また、回収開口及び下端開口の開口面積を小さくすることで、液体検体を狭い範囲に回収することができる。
【0027】
ここで、液体検体とは、液体性状のものであれば特に限定はされないが、生体由来の液体成分、たとえば、唾液、痰、鼻汁、血液、尿又は消化器系、呼吸器系、泌尿器系若しくは生殖器系の粘膜分泌液が本開示には好適である。また、この生体とは、たとえば、ヒト又はヒト以外の動物であり、具体的には患者又は患畜である。
【0028】
このような液体検体の粘度が低い場合には、液体検体が保持された吸収体をテーパ壁面に接触するように検体採取具を収容した回収容器を垂直に静置しておけば、回収開口から自由落下により液体検体を流出させて回収することができる。回収方法としては、たとえば、流出する液体検体を市販のマイクロチューブ、ビーカー又はシャーレ等の容器で受けることが挙げられる。また、たとえば、流出する液体検体を、試験紙や検査機器に備えられている検体を導入する部分で直接受けることが挙げられる。このような回収方法を実施する場合は、本開示の回収容器以外に特別な部材を準備する必要がない点で好適である。
【0029】
このような液体検体の粘度が高い場合には、テーパ壁面の大部分を壁面溝が占めるようにすることが望ましい。この場合、テーパ壁面の構造は、胴部の内周面から軸心方向に向かって伸びるリブが形成されている構造となる。そしてこのリブが吸収体と接触して支えることになる。すると、吸収体と、テーパ壁面を構成するリブとの接触面積は小さくなり、粘性の高い唾液のような液体検体であっても、テーパ壁面の大部分を占める壁面溝を通じて自由落下により流出させて回収することができる。
【0030】
また、液体検体の粘度が高い場合や、吸収体に残存する液体検体もできるだけ残さずに回収したい場合は、吸収体がテーパ壁面に接触するように収容した回収容器を遠心することでさらに液体検体を回収することができる。この際、回収容器を、市販の一回り大きいマイクロチューブに収容した状態で遠心すれば、回収開口より流出した液体検体はそのマイクロチューブの底に回収される。
【0031】
なお、回収容器が回収路を有する場合、その形状は、液体検体の表面張力、接触角、密度、粘度及び夾雑物の有無等の性質に応じて、適時選択できる。たとえば、回収路の内径及び長さを、液体検体の毛細管現象を引き起こすために最適なものに選択することができる。また、たとえば、回収路の容量を検体量に対して十分大きくすることができる。また、たとえば、回収路は、下方に向けてその内径が広がる形状とすることもできる。これにより、液体検体を回収開口から回収路に滞りなく誘導することができ、吸収体から液体検体の回収量を増やすことができ、また、一度吸収体から離脱した液体検体が吸収体に再吸収されることを防ぐことができる。また、たとえば、液体検体が不溶性の夾雑物を含んでいる場合、回収路の内径を大きくすることで、不溶性の夾雑物が回収路に詰まることを防ぐことができる。
【0032】
回収容器の回収路の周囲には、回収溝が配設されていることが望ましい。この回収溝は望ましくは複数が、回収路の周囲に等配される。このような回収溝を設けることで、回収路の毛細管力をより高めることができ、それによって回収路の液体保持性を高めることが可能となる。
【0033】
本開示に係る回収容器は、上端開口からテーパ壁面に連絡する誘導路を有していてもよい。これにより、上端開口から挿入される吸収体がテーパ壁面に接触するように誘導することができ、確実に吸収体をテーパ壁面で係止することができる。
【0034】
誘導路の形状は検体採取具の大きさ、吸収体の大きさ及び形状並びに検体採取具の軸の長さ、太さ及び形状等の性質により、適時選択できる。たとえば、軸が長い綿棒を検体採取具として使用する場合、そのような綿棒の軸が傾いたときにも安定に保持するために、誘導路を長くすることが望ましい。
【0035】
本開示に係る回収デバイスは、回収容器と、回収容器を収容する外挿容器と、を備える。
【0036】
外挿容器は、上方の一端が開口し、下方の他端が閉鎖した筒状構造を有する。この上方の開口端から、回収容器が挿入されたものが、回収デバイスである。
【0037】
この回収デバイスにおいて、液体検体が保持された検体採取具を回収容器の上端開口から挿入し、吸収体の先端をテーパ壁面に接触させる。この際、吸収体に保持された液体検体が、壁面溝に毛細管力によって浸透し、毛細管力で回収開口へ誘導され、回収路を通じて回収容器の下端の下端開口から、外挿容器の底へ回収される。このときに、回収デバイスごと遠心することで、液体検体がより多く回収される。なお、外挿容器に回収された液体検体をピペットなどで取り出しやすくするために、外挿容器の底部がテーパ状の回収部となっていることが望ましい。
【0038】
なお、回収デバイスにおいては、上端開口の辺縁に外挿容器の開口部の辺縁に係止する係止縁が設けられていることが望ましい。このように構成されていることで、遠心の際に回収容器が外挿容器の中に嵌まり込んで取り外せなくなったりすることを防止できる。また、回収容器の下端部分と外挿容器の底部との間に隙間を作ることができる。これにより、外挿容器に回収された液体検体が回収容器の下端部分と接触することを防止でき、回収された液体検体が汚染されることを防止できる。
【0039】
以下、本開示における実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において共通する符号は、各図面において特段の説明がなくとも、同じ構成を指すものである。
【0040】
<回収容器>
本実施形態の回収容器20は、図1Aの正面図及び図1Bの側面図に示すように、上端が上端開口24として開口した筒状の胴部22と、この胴部22の下端側の部分であって、下方に向かって縮径するテーパ部23と、胴部22の上縁が拡径したフランジ状の係止縁21とを備えている。係止縁21の左右両側からは、一対の把持片21Aが突設されている。把持片21Aは、係止縁21から一旦上方へ立ち上がり、外方へ折れ曲がった略逆L字状(図1A参照)を呈している。
【0041】
図1Cの断面図に示すように、胴部22の内部において、一定の内径を有する部分が誘導路26となっている。また、テーパ部23の内部は、上方からおよそ半分が、下方へ内径が狭まるテーパ壁面25となっており、残りのおよそ半分が、下端の下端開口29へ開口する回収路28となっている。
【0042】
図1Dの平面図に示すように、テーパ壁面25は、テーパ部23の内面から内方に等配して突設される4枚のリブ25Aとそれらの間に介在する4本の壁面溝25Bとを有する構造となっている。換言すると、壁面溝25Bは、テーパ壁面25に対して外方へ陥凹した空間である。あるいは、テーパ壁面25には4本の壁面溝25Bが形成されており、これらの壁面溝25B以外の部分が、軸心方向に向かって伸びる4枚のリブ25Aとして形成されている、ともいえる。すなわち、4枚のリブ25Aと、4本の壁面溝25Bとによりテーパ壁面25が構成されている、ともいえる。吸収体41を先頭にして、上端開口24から検体採取具40を挿入すると、吸収体41はテーパ壁面25の4枚のリブ25Aの軸心側の傾斜面と接触する(図4A参照)。この4枚のリブ25Aの傾斜面は、胴部22の下方に向かって内径が窄まるように傾斜している。そのため、検体採取具40の下方に挿入させていくことにより、吸収体41はテーパ壁面25の4枚のリブ25Aの傾斜面によって挟まれる。これにより吸収体41は複数箇所でテーパ壁面25に支持され、結果として検体採取具40を係止することができる。一方、4本の壁面溝25Bはテーパ壁面25に対して外方へ陥凹した空間として形成される。そのため、吸収体41は4本の壁面溝25Bには触れることはない。
【0043】
図1Cに示すように、回収路28は、テーパ壁面25の下端に開口する回収開口27から、テーパ部23の下端の下端開口29までを貫通している。また、図1Eの底面図に示すように、回収路28の周囲には、長手方向に沿った4本の回収溝28Aが等配されている。
【0044】
<外挿容器>
本実施形態の外挿容器30は、図2Aの側面図及び図2Bの正面図に示すように、一定の径を有する筒状の筒状部32と、筒状部32と連続し、下方に向かって縮径し下端が閉鎖した縮径部33と、筒状部32の上縁が拡径したフランジ状のフランジ部31とを備えている。フランジ部31の正面側及び背面側からは、一対の把持部31Aが突設されている。把持部31Aは、フランジ部31から一旦上方へ立ち上がり、外方へ折れ曲がった略逆L字状(図2A参照)を呈している。
【0045】
図2Cの断面図に示すように、筒状部32の内部は、回収容器20の胴部22の外径を収容し得る一定の内径を有する空間となっている。また、縮径部の内部は下方へ縮径するテーパ面となっており、下端が円弧状に閉鎖底となった回収部35となっている。
【0046】
<回収デバイス>
外挿容器30に回収容器20を挿入すると、図3Aの正面図に示すような回収デバイス10となる。図3Bの断面図に示すように、回収容器20の係止縁21は、外挿容器30のフランジ部31で係止している。また、回収容器20の胴部22は、外挿容器30の筒状部32及び縮径部33に収容されている。さらに、回収容器20のテーパ部23の先端は、外挿容器30の縮径部33の途中まで達し、下端開口29が回収部35に臨んでいる。
【0047】
ここで、外挿容器30の把持部31Aを手指で把持することで、回収デバイス10の全体を容易に移動させることが可能である。また、外挿容器30の、遠心器のロータへの着脱も、この把持部31Aを把持すれば容易である。一方、回収容器20の、外挿容器30からの取り外しは、回収容器20の把持片21Aを手指で把持すれば容易である。
【0048】
<使用状態>
次に、本実施形態の回収デバイス10の使用状態を、図4A及び図4Bの正面断面図を参照しつつ説明する。
【0049】
図3Bに示す状態の回収デバイス10に、検体採取具40としての綿棒を挿入した状態を図4Aに示す。検体採取具40としての綿棒における棒状の軸42の先端には、吸収体41としての綿体が形成され、これには液体検体(たとえば、唾液)が吸収されて保持されている。この状態で、吸収体41はテーパ壁面25で四方から支持されることで、検体採取具40は安定して立位を保つことができる。換言すると、検体採取具40の軸42を手で支えることなしに、検体採取具40は自立した状態を保つことができる。
【0050】
図4Aに示すように、立位を保っている検体採取具40の軸42は、液体検体の回収作業、とりわけ遠心の妨げとなるため、図4Bに示すように適宜の長さで切断可能である。
【0051】
この図4Bに示す状態においては、吸収体41としての綿体がテーパ壁面25に接しており、吸収体41に保持されている液体検体は、壁面溝25Bの毛細管力により壁面溝25Bに浸透する。壁面溝25Bに浸透した液体検体は、毛細管力に抗して再び吸収体41に浸透することはなく、回収開口27へ至る。液体検体の粘度が比較的低い場合は、回収デバイス10を垂直に静置しておけば、重力により液体検体は回収路28を通じて下端開口29から外挿容器30の回収部35に自由落下して蓄積される。このとき、回収路28の周囲に等配されている回収溝28Aにより、回収路28の毛細管力がより高まっている。
【0052】
そして、この図4Bに示す状態の回収デバイス10を遠心することで、吸収体41に残存した液体検体もさらに搾り取ることが可能となるため、液体検体をより多く回収することができる。また、液体検体の粘度が比較的高く、重力による自由落下のみでは回収量が少ない場合にも、この図4Bに示す状態の回収デバイス10を遠心することでより多くの液体検体を回収部35に蓄積させることができる。
【0053】
回収部35に液体検体が蓄積されれば、検体採取具40を収容した回収容器20を取り外し、マイクロピペットなどで蓄積した液体検体を回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、液体検体を保持した綿棒のような検体採取具からその液体検体を回収する器具として利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 回収デバイス
20 回収容器
21 係止縁
24 上端開口
25 テーパ壁面
25B 壁面溝
26 誘導路
27 回収開口
28 回収路
29 下端開口
30 外挿容器
40 検体採取具
41 吸収体
42 軸
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B