(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】コンクリート構造物間の目地部へのガスケット設置方法
(51)【国際特許分類】
E01C 11/10 20060101AFI20220221BHJP
E01D 19/06 20060101ALI20220221BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
E01C11/10
E01D19/06
E04B1/684 B
(21)【出願番号】P 2018198549
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502277441
【氏名又は名称】アオイテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩本 崇公
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-005507(JP,U)
【文献】特開平09-302786(JP,A)
【文献】特開昭50-156225(JP,A)
【文献】実開昭55-029601(JP,U)
【文献】特開平08-199697(JP,A)
【文献】特公昭48-001903(JP,B1)
【文献】米国特許第09719248(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/10
E01D 19/06
E04B 1/684
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物間の目地部に、断面における前記目地部の幅よりも幅が大きく成形された弾性体からなるガスケットを設置する方法であって、
前記ガスケットの幅を前記目地部の幅よりも小さく扁平となる方向に圧縮した状態で、当該ガスケットの長手方向
に沿って間隔を置いた3箇所以上の複数箇所を
、それぞれ独立した紐状のまたは帯状結束材により結束し、
前記
各結束材により結束された前記ガスケットを前記目地部に挿入し、
その後、
1箇所または複数個所を隔てた箇所の前記結束材を解放して取り除き、これを繰り返すことで、全ての結束材を取り除き前記ガスケットを弾性復帰させることを特徴とするコンクリート構造物間の目地部へのガスケット設置方法。
【請求項2】
前記結束材により結束された前記ガスケットを前記目地部に挿入するに先立ち、前記ガスケットと前記目地部の互いに接することとなる面の少なくとも一方に接着剤を塗布することを特徴とする請求項
1に記載のコンクリート構造物間の目地部へのガスケット設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の間の目地部にガスケットを設置するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空港、道路、トンネル内の舗装、あるいは、港湾地区や貯木場などの運輸関連のヤード、工場、広場などにおいては、コンクリート舗装が施されている。コンクリート舗装の構築方法としては、舗装を行う現場で生コンクリートを打設して硬化させ、一定間隔に切断してコンクリート版を成形する方法や、予め製作しておいたプレキャストコンクリート版(以下、PC版と称す)を一定間隔で配置するPC版舗装がある。互いに隣接するコンクリート版やPC版の間には、断面における幅と、コンクリート版やPC版の一辺に応じた長さを有する目地部が形成される。これらのコンクリート版やPC版は、コンクリート構造物に含まれる。
【0003】
このように構成されたコンクリート構造物間の目地部には、目地材が設けられる。目地材には、目地部に注入充填するものがあり、また、目地部内に挿入されるガスケットもある。ガスケットは、一般に、樹脂などの弾性体からなり、その断面における幅がコンクリート構造物間の目地部の断面における幅よりも大きく成形されている。そのため、ガスケットは、幅方向に圧縮された状態で目地部に挿入され、弾性復帰することにより目地部の側壁に密着する。また、ガスケットは、長手方向に延びる目地部に応じた長さを有している。
【0004】
このようなガスケットを目地部に設置するための従来の技術は、一般に、万力等でガスケットを幅方向に挟んで圧縮した状態とし、バール等を用いてガスケットを目地部内に押し込む作業を手作業で行っていた。また、別の従来の技術として、特許文献1、2が知られている。
【0005】
特許文献1には、ラッパ状の上部と直状の下部とを有する治具を用いてガスケットを目地部の内部に押込み挿入すること、および、一対の案内板と案内板間を一定の間隔に保持するボルトとを有する治具を用いてガスケットを目地部の内部に押し込み装填することが記載されている(段落[0041]~[0043]、および
図4、5)。
【0006】
一方、特許文献2には、ガスケットの取り付け装置を使用して目地部にガスケットを設置することが開示されている。(段落[0038]~[0044]、および
図5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-275815号公報
【文献】特開平9-25607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術のうち、万力とバール等を用いて手作業でガスケットを目地部に押し込む場合にあっては、かかる作業に熟練を要することから、ガスケットを均一に目地部に挿入することが困難であり、また多大な労力と時間を要するという問題があった。
【0009】
また、上記特許文献1に記載されたラッパ状の上部と直状の下部とを有する治具を用いる場合にあっては、ラッパ状の上部から直状の下部にガスケットを押込み挿入する際に、ガスケットの幅を縮小させることによる抵抗を受けるため、押込み挿入するために多大な労力や時間が必要となるなどの問題があった。
【0010】
一方、特許文献2にあっては、目地部の幅や深さなどに応じて取り付け装置を調整する必要があり、またガスケットを設置するだけのための取り付け装置を製造するために多大なコストがかかるなどの問題があった。
【0011】
そして、従来の技術ではいずれも、ガスケットが目地部の側壁を摺動するため、ガスケットの目地部の側壁と接する面に傷がつくという問題もあった。
【0012】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、ガスケットを傷付けることなく、コンクリート構造物間の目地部に容易にかつ確実にガスケットを設置することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1のコンクリート構造物間の目地部へのガスケット設置方法に係る発明は、上記目的を達成するため、コンクリート構造物間の目地部に、断面における前記目地部の幅よりも幅が大きく成形された弾性体からなるガスケットを設置する方法であって、前記ガスケットの幅を前記目地部の幅よりも小さく扁平となる方向に圧縮した状態で、当該ガスケットの長手方向に沿って間隔を置いた3箇所以上の複数箇所を、それぞれ独立した紐状のまたは帯状結束材により結束し、前記各結束材により結束された前記ガスケットを前記目地部に挿入し、その後、1箇所または複数個所を隔てた箇所の前記結束材を解放して取り除き、これを繰り返すことで、全ての結束材を取り除き前記ガスケットを弾性復帰させることを特徴とする。
請求項1の発明では、ガスケットの幅を、コンクリート構造物間の目地部の幅よりも小さく扁平となる方向に圧縮した状態で、ガスケットの長手方向に沿って間隔を置いた複数箇所を、それぞれ独立した紐状または帯状の結束材によりそれぞれ結束すると、ガスケットは目地部の幅よりも小さく圧縮された幅に保持される。そのため、結束材で結束されたガスケットを単純な挿入作業で容易に目地部に挿入することができる。その後、順次適宜箇所の結束材による結束を解放してゆき、最終的に全ての結束材による結束を解放すると、ガスケットは全体にわたって弾性復帰し、目地部の側壁に密着する。結束材による結束を解放する際に、ガスケットが結束されている結束材を把持してコンクリート構造物間の目地部内で適切な位置に配置した状態とすることができる。そのため、ガスケットをコンクリート構造物間の目地部内の適切な位置に設置することができる。
また、請求項1の発明では、結束材がガスケットの3箇所以上を結束している場合に、1箇所または複数箇所を隔てた箇所の前記結束材を解放して取り除く作業を行う。このとき、ガスケットに残っている結束材がガスケットを幅方向に圧縮した状態を保持しているので、解放した結束材を容易に取り除くことができる。そして、かかる作業を繰り返し行うことで、ガスケットがその長さ方向に均一に、幅方向への弾性復帰をすることとなる。
【0015】
請求項2の発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、前記結束材により結束された前記ガスケットを前記目地部に挿入するに先立ち、前記ガスケットと前記目地部の互いに接することとなる面の少なくとも一方に接着剤を塗布することを特徴とする。
請求項2の発明では、結束された状態のガスケットと目地部の互いに接することとなる面の少なくとも一方に接着剤を塗布し、その後、かかるガスケットを目地部に挿入して、結束材による結束を解放しガスケットをその幅方向に弾性復帰させると、ガスケットと目地部の接する面が互いに接着剤により接着される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な構成で、コンクリート構造物間の目地部に容易にかつ確実にガスケットを傷つけることなく設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】目地部とガスケットの幅の大きさの関係を説明するために示した断面図である。
【
図2】ガスケットを目地部の幅よりも小さくなるよう幅方向に圧縮した状態(a)と、この状態で結束材により結束して圧縮された幅を保持した状態(b)を説明するために示した断面図である。
【
図3】結束材を切断することにより解放した状態を説明するために示した断面図である。
【
図4】切断した結束材を抜き取って取り除いた状態を説明するために示した断面図である。
【
図5】1箇所おいて隣接する箇所の結束材を順次解放する場合の手順を説明するために示した斜視図である。
【
図6】
図1~4に示したガスケットとは異なる形状のガスケットの実施の形態を説明するために示した断面図である。
【
図7】
図1~5に示したガスケットとはさらに異なる形状のガスケットの実施の形態を説明するために示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、本発明に用いるコンクリート構造物1、1間の目地部2と第1の実施の形態におけるガスケット3、および結束材5の構成を説明する。
【0019】
図1に示すコンクリート構造物1は、上述したコンクリート版やPC版を含むことができる。コンクリート構造物1は、一定の間隔をおいて配置され、互いに隣接するコンクリート構造物1、1の間には目地部2が形成される。目地部2は、断面における幅L2と、コンクリート構造物1の互いに対向する辺の長さに応じた長さを有している。
【0020】
本実施の形態における概略筒状体のガスケット3は、
図1に断面図で示すように、目地部2の開口を塞ぐ蓋部30と、コンクリート構造物1の端面(目地部2の側壁20)にそれぞれ接する一対の側壁部31と、一対の側壁部31、31の間の中心に位置する縦リブ32と、縦リブ32と両側壁部31、31の中間部および下端部においてそれぞれ接続する横リブ33(
図1~5に示した実施の形態では左右各3段)とを備え、蓋部30、各側壁部31、縦リブ32、各横リブ33はガスケット3の長手方向に延びている。そして、ガスケット3の断面において、蓋部30、各横リブ33は各側壁部31から縦リブ32に向かってそれぞれ下降するように傾斜している。本実施の形態では、縦リブ32と一対の側壁部31、31と蓋部30および各横リブ33とにより、ガスケット3の長手方向に延びる6つの空洞部が形成されている。
【0021】
図1に示すガスケット3は、幅方向に圧縮されていないフリーの状態にあり、両側壁部31、31の外側面間の幅、すなわちガスケット3の断面における幅L3は、目地部2の断面における幅L2よりも大きく設定されている。
【0022】
ガスケット3がフリーの状態において、傾斜した蓋部30は、断面における上面中央部がV字状となる溝30aと、溝30aの開口から各側壁部31の上端に向かってそれぞれ僅かに上昇するように傾斜する部分30bとが形成されている。また、蓋部30と各横リブ33の縦リブ32に対するなす角は、直角ではなく、縦リブ32に対して上方に向かって鋭角となるように成形されている。すなわち、各横リブ33は、縦リブ32側に対して側壁部31側が相対的に図において高く位置するよう傾斜しており、図における最も下方に位置する横リブ33によりガスケット3の断面における下方中心の先端部が凸形状となっている。そのため、ガスケット3は、断面における幅方向に圧縮されると、蓋部30と各横リブ33が一対の側壁部31と縦リブ32に対して弾性変形する。
【0023】
ガスケット3が図における左右方向から扁平となる方向に縮小するよう幅方向に圧縮されると(
図2の(a)を参照)、蓋部30が溝30aを起点として下方に凸となるよう屈曲するとともに、各横リブ33の縦リブ32側に対して一対の側壁部31側が相対的に図において上昇するよう変形する。このときのガスケット3の断面における幅をL3’とする。この状態において、紐状または帯状の結束材5によってガスケット3の周囲を、適当な間隔を置いて複数箇所結束する。その状態でPC版1、1の間の目地部2に挿入する。挿入後、結束材5を
図3に示すように切断する。幅L3’に圧縮され結束された状態から解放されると、蓋部30と各横リブ33は水平に近づくよう弾性復帰し、圧縮された幅L3’が拡大することとなる。
【0024】
ガスケット3の材料は、特に限定されることはなく、たとえば天然ゴム(NR)、あるいは、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴムを採用することができる。
なお、ガスケット3の形状は、特に限定されることはなく、
図1~
図5に示した第1の実施の形態のほか、
図6(横リブ33が左右それぞれ最下の位置のみの1段)や
図7(横リブ33が左右各2段)に示した第2及び第3の実施の形態のような、左右方向からの押圧によって幅を縮小させ易い断面形状のものを採用することが望ましい。
【0025】
次に、本発明の方法に用いる結束材5を説明する。本実施の形態における結束材5は、ポリプロピレン製バンド(以下、PPバンドと称する)50と、このPPバンド50を留めるストッパ51により構成されている。結束材5は、幅方向に圧縮されたガスケット3の幅を確実に保持するよう結束することができるものであれば、この実施の形態に限定されることはなく、たとえば所謂タイラップやインシュロックと呼ばれる結束バンド、天然素材または合成樹脂からなる紐や、ワイヤ、ワイヤを樹脂などの帯で被覆した所謂ビニタイなどを採用することができるが、後述するようにカッターナイフやはさみなどの刃物で容易に切断することができるものであることが好ましい。
【0026】
本発明の方法の実施の一形態を、以上のように構成されたガスケット3をコンクリート構造物1、1間の目地部2に設置する場合により
図1~5に基づいて説明する。
本発明の方法は、概略、ガスケット3の幅L3を目地部2の幅L2よりも小さくなるよう幅L3’に圧縮した状態で、ガスケット3の長手方向の複数箇所を紐状または帯状の結束材5により結束し、この結束された状態のガスケット3を目地部2に挿入し、その後、結束材5による結束を解放してガスケット3を弾性復帰させる。
【0027】
図1に示したように、フリーの状態のガスケット3の断面における幅L3は、目地部2の断面における幅L2よりも大きく設定されている。そのため、ガスケット3をそのまま目地部2内に挿入しようとすると、多大な抵抗を受けることとなり、挿入するのは困難である。また、ガスケット3を目地部2に挿入する際にガスケット3が目地部2と接していると、挿入時の摺動によりガスケット3に傷がつくこととなる。
【0028】
そこで、本発明では、
図2の(a)に示したように、ガスケット3を幅L3’に圧縮した状態とし、
図2の(b)および
図5の(a)に示したように、このガスケット3を紐状または帯状の結束材5により複数箇所を結束して、幅L3’に圧縮された状態に保持する。
【0029】
以下の説明では、結束材5としてPPバンド50とストッパ51を用いる場合で説明する。PPバンド50は、ガスケット3を締め付けて圧縮した状態で、ストッパ51により緩まないように留められる。幅方向に圧縮された状態のガスケット3をPPバンド50とストッパ51により結束する作業は、熟練を要することなく、容易に行うことができる。
【0030】
なお、ガスケット3の結束は、ガスケット3を成形した後にその形状が安定してから、ガスケット3を目地部2に挿入するまでの間に行えばよい。
すなわち、ガスケット3を押し出し成型などにより成形してその後に幅方向に圧縮した状態から目地部2内で弾性復帰できるように形状が安定するまで、ガスケット3を製造した場所(たとえばガスケット3の製造工場)で養生させてからガスケット3を目地部2の幅L2よりも小さくなるよう幅方向に圧縮して結束材5により結束する。あるいは、これとは異なり、ガスケット3を製造した場所からガスケット3を目地部2に設置する現場に移動させ、かかる現場でガスケット3を目地部2に設置する直前にガスケット3を目地部2の幅L2よりも小さくなるよう幅方向に圧縮して結束材5により結束する。
【0031】
また、ガスケット3の幅方向の圧縮は、万力や油圧プレスにより押圧したり、所定の間隔で設けられたローラの間にガスケット3を通し、または作業員が体重をかけるなどして行ってもよい。また、ガスケット3を結束材5で締め付けることにより、ガスケット3を幅方向に圧縮させることもできる。この場合、ガスケット3を幅方向に圧縮するための結束材5の締め付け力は、ガスケット3の断面における幅L3’が目地部2の断面における幅L2以下となればよい。上述したように蓋部30と各横リブ33が側壁部31と縦リブ32に対して傾斜しており、しかも、側壁部31と縦リブ32が蓋部30と各横リブ33によって連結されているので、結束材5で締め付けられたガスケット3は、断面における幅方向のみに圧縮されることになる。
【0032】
次いで、本実施の形態では、目地部2に対するガスケット3の挿入位置を規制する規制部材6(
図2のみに示した)を目地部2内に設け、さらに、結束材5により結束されたガスケット3と目地部2の互いに接することとなる面のいずれか一方、または両方に接着剤を塗布してから、ガスケット3を目地部2内に挿入する。なお、規制部材6は、目地部2内に配置することができ、且つ、ガスケット3を支持することができるものであればよい。しかしながら、結束材5を把持することにより、ガスケット3を目地部2内の適切な位置に容易に調整して配置することができるので、規制部材6を目地部2内に配置しなくてもよい場合もある。ガスケット3は、目地部2の幅L2よりも小さい幅L3’に圧縮された状態に保持されているので、目地部2内に挿入する際に目地部2の側壁20と接触することがなく、したがって、傷つくことがない。
【0033】
次に、
図3に示すようにPPバンド50をカッターナイフなどで切断し、ガスケット3の結束を解除する。PPバンド50以外の結束部材5を用いる場合も同様に、切断するなどして、適宜ガスケット3の結束を解除する。このとき、PPバンド50の結束を解除し抜き取り除去する順序は、
図5の(a)~(b)に示すように、PPバンド50によりガスケット3を結束している箇所の全体のうちで、1箇所または複数箇所を隔てた箇所のPPバンド50を切断することにより解放して取り除く作業を行い、かかる作業を、全てのPPバンド50を切断し取り除くまで繰り返す。
【0034】
すなわち、複数のPPバンド50がガスケット3を所定の間隔で結束している場合に、
図5の(a)から(b)に示すように、PPバンド50のうちで、一箇所隔てた位置の(つまり、一つおきで)PPバンド50を切断して解放し、抜き取り除去する。この工程を第1工程と称する。ガスケット3は、第1工程で切断されず残っているPPバンド50により、幅方向に圧縮された状態を、ガスケット3の全長にわたってバランスよく保持されているため、切断して解放したPPバンド50を容易に抜き取り除去することができる。
【0035】
次に、
図5の(b)から(c)に示すように、PPバンド50のうちで、一箇所隔てた位置の(つまり、一つおきで)PPバンド50をさらに切断して解放し、抜き取り除去する。この工程を第2工程と称する。ガスケット3は、第2工程で切断されず残っているPPバンド50により、幅方向に圧縮された状態を保持されているため、切断して解放したPPバンド50を容易に抜き取り除去することができる。
【0036】
続いて、
図5の(c)から(d)に示すように、PPバンド50のうちで、一箇所隔てた位置の(つまり、一つおきで)PPバンド50をさらに切断して解放し、抜き取り除去する。この工程を第3工程と称する。ガスケット3は、第3工程で切断されず残っているPPバンド50により、幅方向に圧縮された状態を保持されているため、切断して解放したPPバンド50を容易に抜き取り除去することができる。
【0037】
そして、最終的に全てのPPバンド50が開放されて抜き取り除去されるまで、第1~第3工程と同様の作業を繰り返し行う。これにより、ガスケット3は、長手方向の全域において、目地部2内の適切な位置で均等に幅方向に弾性復帰して、
図4に示したように、側壁部31が目地部2の側壁20を押圧し、接着剤により目地部2の側壁20と接着され、密着する。なお、PPバンド50を切断し取り除く作業は、上述したように一つおきではなく、ガスケット3の長さや結束箇所の数などに応じて、たとえば二つおきや三つおきなど、複数箇所を隔てた位置のPPバンド50を切断し取り除くこともできる。
【0038】
1箇所または複数個所を隔てた箇所のPPバンド50を切断し解放して除去するのは、1本のガスケット3の結束された複数の箇所が、ガスケット3全体がバランスよく幅方向に圧縮された状態を維持されるようにするためである。
【0039】
PPバンド50を切断し引き抜いて取り除く作業は、熟練を要することなく、短時間で容易に行うことができる。
【0040】
ここで、本発明による実施例1、2と、二人の作業員で、従来の技術で説明したように手作業によりガスケット3を目地部2内に押し込む比較例とをテストした場合に要する時間を、表1に基づいて説明する。なお、かかるテストでは、PC版1、1間の目地部2の幅が87~92mmで、長さが2.5mの1本のガスケット3を目地部2に設置するための作業員一人あたりの所要時間(分/人・本)を示す。
【0041】
【0042】
実施例1
上述したように目地部2の幅L2よりも大きい幅L3を有するガスケット3を成形し、その形状が塑性変形しないように安定するまで一定時間養生し、ガスケット3を製造する。実施例1では、ガスケット3を製造した工場等で、プレスや万力などの圧縮できる装置を用いてガスケット3の側壁部31を押圧し、目地部2の幅L2よりも小さくなるよう幅L3’に圧縮し、この状態のガスケット3を結束材5で複数箇所結束して圧縮された幅L3’を保持させる場合である。この工場等での結束材5による結束は、ガスケット3を目地部2に設置する前に事前に行っておくことができるため、設置現場での作業時間を考慮する必要はない。
【0043】
次いで、コンクリート構造物1のガスケット3を設置する目地部2の研磨・清掃を行う。この研磨・清掃の工程は、金ブラシと掃除機を用いて行った。その所要時間は、20分/人・本であった。
【0044】
また、プライマー(接着剤)塗布は、刷毛を用いて、ガスケット3の側壁部31と目地部2の側壁20のいずれか一方、または両方にプライマーを塗布した。その所要時間は、6分/人・本であった。
【0045】
表1において、実施例1における作業2は、ガスケット3を結束している結束材5を、カッターナイフを用いて
図5に基づいて説明したように一つおきに切断して取り除く工程を繰り返し、最終的に全ての結束材5を取り除くものであり、かかる作業の開始から終了までの所要時間を示したものである。その結果、所要時間は、20分/人・本であった。
【0046】
実施例1の合計作業時間は、46分/人・本であった。
【0047】
実施例2
上述した実施例1と同じ作業内容については説明を省略し、異なる作業内容のみを説明する。上述したように成形されたガスケット3を設置する現場で設置の事前に目地部2の幅L2よりも小さくなるよう幅L3’に圧縮し、この状態のガスケット3を結束材5で複数箇所結束して(PPバンド締め)圧縮された幅L3’を保持させる場合である。この作業の所要時間は、15分/人・本であった。
【0048】
実施例2の合計作業時間は、61分/人・本であった。
【0049】
比較例
上述した実施例1、2と同じ作業内容については説明を省略し、異なる作業内容のみを説明する。比較例は、二人の作業員で、ガスケット3の端部を万力で圧縮して目地部2内に押し込み、続けてバールを使って人力で体重をかけてガスケット3の両端側から目地部内に押し込押し込んだ。
【0050】
設置作業1の所要時間は、40分/人・本となり、合計作業時間は、66分/人・本であった。
【0051】
以上のことから、本発明の実施例1は、比較例と比較して3割以上も所要時間を短縮することができる。また、PPバンド50などの結束材5は、非常に安価で手に入れやすいものであるから、従来の技術における治具(特許文献1)や取り付け装置(特許文献2)と比較して安いコストでガスケット3を傷つけることなく目地部2に設置することができる。また、ガスケット3を幅方向に圧縮した状態で結束するので、労力や手間をかけることなく目地部2内にガスケット3を容易に挿入することができる。
さらに、特に実施例1では、結束材5を切断して引き抜き取り除くだけで済むので、ガスケット3を設置する所要時間を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:コンクリート構造物、 2:目地部、 3:ガスケット、 5:結束材、 L2:目地部の幅、 L3:フリーの状態のガスケットの幅、 L3’:ガスケットの圧縮した状態の幅