(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20220221BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220221BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20220221BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
E02F9/00 M
B60K6/48
B60K11/06 ZHV
H02K9/06 A
(21)【出願番号】P 2018211304
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 愼吾
(72)【発明者】
【氏名】金田 健佑
(72)【発明者】
【氏名】山中 圭史
(72)【発明者】
【氏名】藤生 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山崎 辰雄
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-106619(JP,A)
【文献】特開2014-009579(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147697(WO,A1)
【文献】特開2011-220014(JP,A)
【文献】特開2015-227555(JP,A)
【文献】特開2014-231329(JP,A)
【文献】特開2009-142084(JP,A)
【文献】特開2007-37262(JP,A)
【文献】特開平4-190655(JP,A)
【文献】特開2011-219917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 6/48
B60K 11/06
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として使用可能な電動機と、
前記電動機を収容する機関室と、
前記電動機の筐体内で前記電動機の回転軸と一体となって回転するファンにより生じる吸引力によって、前記機関室の外部から前記筐体内に空気を導く吸引流路と、前記ファンの回転により前記筐体内から前記機関室内に空気を導く排出流路と、を備える、建設機械。
【請求項2】
エンジンをさらに備え、
前記電動機が、前記エンジンの駆動軸に連結されている電動発電機である、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記機関室の下面に穿設され、前記吸引流路と連通する吸引口を備える、請求項1又は2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記吸引口に装着されるフィルタと、前記フィルタを前記機関室の下方から前記吸引口の周縁部に固定する固定部材と、を備える、請求項3に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、エンジンに連結された水冷の冷却構造を有する回転電機の冷却構造として、エンジンの後方に設けられ、且つエンジンの前方から後方に向かう気流を発生可能な冷却ファンが開示されている。
【0003】
下記特許文献2には、動力源としての電動機と、この電動機を制御する制御盤とを備える電動式作業機械において、制御盤本体を収容するケーシング内の熱を機械室外に放出する換気ダクトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-227001号公報
【文献】特開2011-220014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンとモータを直結するパラレルハイブリッド方式で使用される高トルク薄型モータは、発熱により温度上昇するため、特許文献1で記載されたように外部から空冷する方法では冷却が十分でない。そこで、冷却水または冷却油によるステータの冷却に加えて、ロータに取り付けられたファンによって空気を導入し、ロータを冷却することが考えられる。しかしながら、エンジンルームといった高温環境においては、モータに導入される空気の温度が高くなるため十分な冷却効果が得られない。特許文献2は、電動式作業機械の機械室の空気がケーシング内の制御盤を冷却して機械室外に放出することから、ハイブリッド建設機械のように機関室内にエンジンが配置されている場合、エンジンの放熱により機械室の温度が上昇しているため、十分な冷却効果が得られないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、動力源として使用可能な電動機を備える建設機械において、電動機を十分に冷却することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建設機械は、動力源として使用可能な電動機と、
前記電動機を収容する機関室と、
前記電動機の筐体内で前記電動機の回転軸と一体となって回転するファンにより生じる吸引力によって、前記機関室の外部から前記筐体内に空気を導く吸引流路と、前記ファンの回転により前記筐体内から前記機関室内に空気を導く排出流路と、を備えるものである。
【0008】
本発明によれば、機関室の外部から直接導入した空気により電動機を十分に冷却することができる。また、電動機の冷却に使用された空気は、機関室内に排出されて機関室内を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る油圧ショベルを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
[油圧ショベルの構造]
まず、
図1を参照しながら、建設機械の一例としての油圧ショベル1の概略構造について説明する。
【0012】
下部走行体2は、エンジン42等からの動力を受けて駆動し、油圧ショベル1を走行させる。下部走行体2は、左右一対のクローラ21,21及び左右一対の走行モータ22,22(
図1では右走行モータ22は図示していない)を備える。油圧モータである左右の走行モータ22,22が左右のクローラ21,21をそれぞれ駆動することで油圧ショベル1の前後進を可能としている。また、下部走行体2には、ブレード23、及びブレード23を上下方向に回動させるための油圧アクチュエータであるブレードシリンダ24が設けられている。
【0013】
作業機3は、エンジン42からの動力を受けて駆動し、土砂等の掘削作業を行うものである。作業機3は、ブーム31、アーム32、及びバケット33を備え、これらを独立して駆動することによって掘削作業を可能としている。ブーム31、アーム32、及びバケット33は、それぞれ作業部に相当し、油圧ショベル1は、複数の作業部を有する。
【0014】
ブーム31は、基端部が上部旋回体4の前部に支持されて、伸縮自在に可動するブームシリンダ31aによって回動される。また、アーム32は、基端部がブーム31の先端部に支持されて、伸縮自在に可動するアームシリンダ32aによって回動される。そして、バケット33は、基端部がアーム32の先端部に支持されて、伸縮自在に可動するバケットシリンダ33aによって回動される。ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、及びバケットシリンダ33aは、作業部を駆動する油圧アクチュエータに相当する。
【0015】
バケット33は、作業機3の先端に設けられ、掘削作業を行うためのツメを備えた容器状の部材である。バケット33は、アーム32の先端にピン34を介して回動可能に取り付けられている。さらに、バケット33は、リンク機構35を介してバケットシリンダ33aと連結されている。
【0016】
上部旋回体4は、その中央部で上下方向に延びる軸線回りに下部走行体2に対して旋回可能に構成されている。上部旋回体4には、操縦部41、エンジン42、旋回モータ43等が配設されている。油圧モータである旋回モータ43の駆動力で上部旋回体4が旋回ベアリングを介して旋回する。
【0017】
操縦部41には、操縦席411が配置されている。操縦席411の左右に一対の作業操作レバー412,412、前方に一対の走行レバー413,413が配置されている。作業者は、操縦席411に着座して作業操作レバー412,412、走行レバー413,413等を操作することによって、エンジン42、各油圧モータ、各油圧アクチュエータ等の制御を行い、走行、旋回、作業等を行うことができる。
【0018】
上部旋回体4の後端部には、ボンネット44とカウンタウェイト45が上下に配設されている。カウンタウェイト45は、上部旋回体4の後端部に立設され、エンジン42を覆う。ボンネット44は、カウンタウェイト45の上端部から上方へ延びて操縦部41の後壁下端部に達し、カウンタウェイト45とともにエンジン42を覆っている。上部旋回体4の後端部は、平面視で円弧状に形成されており、ボンネット44とカウンタウェイト45は、上部旋回体4の後端部に沿わせて湾曲して形成されている。
【0019】
上部旋回体4の底部は、旋回フレーム50で構成され、旋回フレーム50上にエンジン42、不図示のバッテリ、燃料タンク等が載置される。
【0020】
旋回フレーム50は、平板状の底板51と、第1縦板52及び第2縦板33とを備えている。底板51は、平面視において前端部が左右方向に切り取られた円形をしている。第1縦板52及び第2縦板53は、底板51上に左右に間隔をあけて位置し、前後方向に延びるように立設されている。第1縦板52は、旋回フレーム50の左右中央よりも左側に配置され、第2縦板53は、旋回フレーム50の左右中央よりも右側に配置されている。第1縦板52と第2縦板53の間の底板51には、スイベルジョイントを挿入するためのジョイント開口部51aや旋回モータ43を取り付けるためのモータ開口部51bが設けられている。また、底板51には、排水用、メンテナンス用のその他複数の開口が形成されている。
【0021】
第1縦板52及び第2縦板53は、その下縁が底板51の上面に溶接されている。第1縦板52の前端部及び第2縦板53の前端部は、底板51よりも前方に突出し、取付部54の一部を構成している。取付部54には、ブーム31の基端部がブームブラケット31bを介して取り付けられる。
【0022】
旋回フレーム50の上方には、操縦席411が固定されるシートマウント46(
図1参照)が配設されている。旋回フレーム50、ボンネット44、カウンタウェイト45、シートマウント46等によって区画された空間をエンジンルーム47(機関室に相当)と称する。
【0023】
エンジンルーム47には、エンジン42により駆動される電動発電機48(電動機の一例)及び油圧ポンプ49が配設される。油圧ポンプ49は、エンジン42によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ49から吐出された作動油は、ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、バケットシリンダ33a、旋回モータ43、ブレードシリンダ24、走行モータ22,22等に供給される。
【0024】
電動発電機48は、エンジン42のクランクシャフトの一端側に連結されている。電動発電機48は、モータジェネレータとも呼ばれ、回生時には発電機として作動し、かつエンジン42の駆動トルクをアシストする必要がある時には電動機として作動する。電動発電機48には、油圧ポンプ49が接続されている。
【0025】
図3は、電動発電機48の断面を模式的示した図である。電動発電機48は、ロータ481と、ステータ482と、ハウジング483(筐体に相当)とを備えている。
【0026】
ロータ481は、ロータコア481aに複数の磁石481bを埋め込んだものある。ロータコア481aは、2枚の円盤状部材で構成され、2枚の円盤状部材の間にステータ482が配置されている。磁石481bは、ロータコア481aのうちステータ482に対向する面に配置される。ロータコア481aの中心には、ロータ軸481cが貫通されており、ロータコア481aとロータ軸481cは、ロータコア481aに設けられた穴スプラインと、ロータ軸481cに設けられた軸スプラインとでスプライン結合されている。磁石481bは、ステータ482に巻回された不図示のコイルに所定の通電を行うことで発生する磁界によりトルクを発生し、ロータコア481aと一体としてロータ軸481cを回転させる。
【0027】
ステータ482は、円環状のステータコアと、ステータコアに巻回されたコイルとを備えている。ステータ482は、不図示の冷却装置により冷却水又は冷却油で冷却される。ロータ481は、ステータ482の内周面に回転自在に支持されている。
【0028】
ハウジング483は、ステータ482を固定する。ハウジング483は、ロータ481とステータ482を両者の間に隙間をあけて収納する。ロータコア481aの回転軸方向の両端部は、円筒状をしており、その円筒状の両端部は、ハウジング483に設けられたダストシール483dと外周で接触している。
【0029】
また、ロータ481には、複数のブレード481dが設けられている。複数のブレード481dは、ロータコア481aの周方向に並べて配置されており、ロータコア481aと一体としてファンを構成する。複数のブレード481dは、回転することで、吸引管483aからハウジング483内に空気を吸引し、排出管483bからハウジング483内の空気を排出する。吸引管483aには、ダクトホース55の一端部55a(
図2を参照)が接続され、吸引流路を構成する。排出管483bは、エンジンルーム47に開放され、排出流路を構成する。吸引管483aと排出管483bは、ステータ482で区画されたハウジング483の左右の内部空間にそれぞれ設けられている。複数のブレード481dは、ロータコア481aのうち左側の内部空間に配置された円盤状部材に設けられており、これにより、ブレード481dを吸引管483aに近接配置して、配管ロスの低減、及び吸引する空気量の増加を図ることができる。また、ハウジング483には、左右の内部空間を連通させる連通管483cが設けられており、冷却用の空気が左側の内部空間から右側の内部空間へと流れるようになっている。
【0030】
ダクトホース55の他端部55bは、旋回フレーム50の底板51に穿設された吸引口56aと接続され、エンジンルーム47の外部と連通する。これにより、吸引口56a及びダクトホース55を介してエンジンルーム47の外部からハウジング483内に空気を導くことができる。また、吸引口56aがエンジンルーム47の下面に設けられているため、吸引口56aから雨水がハウジング483内に侵入することを防止できる。
【0031】
吸引口56aは、底板51の開口51cを塞ぐカバー56に形成されている。カバー56は、不図示のボルトにより開口51cの周縁部に固定される。吸引口56aの周縁には、パイプ56bが上方へ向かって突設されている。ダクトホース55の他端部55bは、ホースバンド55cによってパイプ56bに固定される。また、パイプ56bの周囲には、4個のナット56cが溶接されている。
【0032】
吸引口56aには、フィルタ57が装着される。フィルタ57は、吸引口56aからの異物の侵入を防止する。フィルタ57には、カバー56のナット56cに対応する位置に第1貫通孔57aが形成されている。
【0033】
フィルタ57は、枠状の固定部材58によって固定される。固定部材58の中央部には、吸引口56aに対応する位置に空気導入口58aが形成されている。また、空気導入口58aの周囲には、カバー56のナット56cに対応する位置に第2貫通孔58bが形成されている。
【0034】
フィルタ57及び固定部材58は、固定ボルト59によってカバー56に対して固定される。これにより、フィルタ57は、エンジンルーム47の下方から吸引口56aの周縁部に固定部材58によって固定される。この構成によれば、エンジンルーム47の外部からフィルタ57を交換することができるため、メンテナンスが容易である。
【0035】
上記の構成によれば、電動発電機48のロータ軸481cと一体となって回転するファンにより生じる吸引力によって、吸引管483a及びダクトホース55を介してエンジンルーム47の外部からハウジング483内に空気を導くことができ、一方、ファンの回転によりハウジング483内から排出管483bを介してエンジンルーム47内に空気を導くことができる。その結果、エンジンルーム47の外部から直接導入した空気により電動発電機48を十分に冷却することができる。よって、エンジン42の発熱による高温環境においても、電動発電機48を適切に冷却することができる。また、電動発電機48の冷却に使用された空気は、エンジンルーム47内に排出されてエンジンルーム47の内部を冷却することができる。
【0036】
[他の実施形態]
前述の実施形態では、電動機の一例として、ハイブリッド式の油圧ショベル1で用いられる電動発電機48を示したが、電動式の油圧ショベルで動力源として用いられる電動モータでもよい。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 作業機
4 上部旋回体
42 エンジン
47 エンジンルーム
48 電動発電機
481 ロータ
481c ロータ軸
481d ブレード
482 ステータ
483 ハウジング
50 旋回フレーム
55 ダクトホース
56a 吸引口
57 フィルタ
58 固定部材