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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】メラニン産生を抑制するRNA複合体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220221BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220221BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
A61P17/00 ZNA
A61K31/713
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018504815
(86)(22)【出願日】2016-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 IB2016001169
(87)【国際公開番号】W WO2017017523
(87)【国際公開日】2017-02-02
【審査請求日】2019-07-26
(31)【優先権主張番号】62/197,370
(32)【優先日】2015-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518028055
【氏名又は名称】オリックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,サン,ウー
(72)【発明者】
【氏名】ホン,イス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ,ヒュン
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1207561(KR,B1)
【文献】特表2013-544505(JP,A)
【文献】特開2007-084544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/EMBASE(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシナーゼmRNA配列に対する配列相補性を有し、かつ、長さが21ヌクレオチド(nt)長のアンチセンス鎖であって、UUCAUCUCCUGUCAGCU*U*C*U*G又はUUCAUCUCCUGUCAGCmU*mU*mC*mU*mGであるアンチセンス鎖と、アンチセンス鎖に対する配列相補性を有し、かつ、長さが16nt長のセンス鎖であって、GCUGACAGGAGAUG*A*A*コレステロールであるセンス鎖とを含むRNA複合体であって、アンチセンス鎖およびセンス鎖が複合体を形成しており、アンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖の3'末端が平滑末端を形成しておりここで*はホスホロチオアート結合を示し、mは2'-O-メチルRNAを示し、かつ、前記RNA複合体は送達ビヒクルの非存在下で細胞の細胞膜を透過することができる、前記RNA複合体。
【請求項2】
ンチセンス鎖がUUCAUCUCCUGUCAGCU*U*C*U*Gであ、請求項1に記載のRNA複合体。
【請求項3】
RNA複合体が細胞毒性ではない、請求項に記載のRNA複合体。
【請求項4】
請求項に記載のRNA複合体と細胞を接触させることを含む、in vitroでの細胞によるチロシナーゼ発現の抑制方法であって、細胞がメラノサイトであってよい、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は2015年7月27日付け出願の米国仮出願第62/197,370号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
メラノサイト(メラニン形成細胞)による過剰なメラニン産生は、黒皮症および加齢斑(age spots)を含む種々の皮膚色素沈着関連障害に関連している。黒皮症においては、メラニンの過剰産生は、表皮層に存在するメラノサイトにおいて黒色沈着を生成する。黒皮症は、女性の皮膚に生じる主要な難治性疾患の1つである。黒皮症は、妊婦、および経口もしくはパッチ避妊薬を服用しているまたはホルモン補充療法を受けている女性にしばしば生じる。
【0003】
チロシナーゼは、メラニンの合成における律速酵素であるオキシダーゼであり、したがって、色素沈着過剰を低減し皮膚色素沈着関連障害を治療する物質の重要な治療標的である。ヒトにおいては、チロシナーゼ酵素はTYR遺伝子によってコードされている。チロシナーゼ産生障害をもたらすTYR遺伝子における突然変異は、I型眼皮膚白皮症を引き起こす。
【0004】
過剰メラニン産生に関連した皮膚色素沈着関連障害の現在利用可能な治療には、ヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、アゼライン酸、コウジ酸、ケミカルピーリングおよび微小皮膚剥離が含まれる。しかし、そのような治療はしばしば効果がなく、また重大な副作用を有することがある。そのような障害を有する個体は、しばしば、過度の皮膚色素沈着の領域を隠すために化粧品に頼る必要がある。
【0005】
したがって、メラニン産生の抑制および皮膚色素沈着関連障害(黒皮症および加齢斑を含む)の治療のための改良された組成物および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概括
本発明は、特定の態様において、チロシナーゼを抑制し、メラニン産生の低減ならびに黒皮症および加齢斑を含む色素沈着関連障害の治療に有用なRNA複合体を、提供する。本発明は、特定の態様において、そのようなRNA複合体を含む医薬組成物ならびにそのようなRNA複合体および医薬組成物の使用方法を提供する。
【0007】
特定の態様においては、チロシナーゼmRNA配列(例えば、ヒトチロシナーゼmRNA配列)に対する配列相補性を有するアンチセンス鎖と該アンチセンス鎖に対する配列相補性を有するセンス鎖とを含むRNA複合体を、本発明において提供する。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は細胞(例えば、メラノサイト)によるチロシナーゼ発現を抑制できる。特定の実施形態においては、RNA複合体は細胞(例えば、メラノサイト)によるメラニン産生を抑制できる。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は非対称短鎖干渉RNA(asiRNA)である。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は長い非対称短鎖干渉RNA(lasiRNA)である。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は、表1、表2、表4、表5および表6に列挙されているRNA複合体である。
【0008】
幾つかの実施形態においては、本発明において提供するRNA複合体は化学修飾を含み、この場合、該修飾は送達ビヒクルの非存在下、細胞膜の透過を促進する。幾つかの実施形態においては、該修飾は、2'-O-メチル化ヌクレオシド、ホスホロチオアート結合またはコレステロール部分(moiety)である。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は、表2または表4に列挙されている修飾RNA複合体である。特定の実施形態においては、RNA複合体は細胞毒性ではない。
【0009】
特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物が本発明で提供される。特定の実施形態においては、医薬組成物は局所送達用に製剤化される。幾つかの実施形態においては、医薬組成物はクリーム剤またはローション剤である。幾つかの実施形態においては、医薬組成物は更に、第2の皮膚美白剤(例えば、ヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、コウジ酸、アゼライン酸またはトラネキサム酸)を含む。
【0010】
特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体と細胞(例えば、メラノサイト)を接触させることを含む、該細胞によるチロシナーゼ発現を抑制する方法が本発明で提供される。特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体と細胞(例えば、メラノサイト)を接触させることを含む、該細胞によるメラニン産生を抑制する方法が本発明により提供される。
【0011】
特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体または医薬組成物をヒト対象に投与することを含む、ヒト対象の皮膚におけるメラニン産生を抑制する方法が、本発明により提供される。特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体または医薬組成物をヒト対象に投与することを含む、過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害(例えば、黒皮症および加齢斑)に対するヒト対象の治療方法が本発明により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、チロシナーゼを標的とする62個の例示的なasiRNAの遺伝子サイレンシング効率を示す。asiRNAを0.3nMの濃度でA375Pにトランスフェクトし、24時間後、リアルタイムPCRを用いてチロシナーゼmRNA発現の度合を測定した。グラフは3回の反復実験の平均および標準偏差を示す。
図2図2は、種々の化学修飾が施された例示的なチロシナーゼ標的化細胞透過性asiRNA(cp-asiRNAまたはcp-asiTYR)の遺伝子サイレンシング効率を示す。cp-asiRNAを1μMの濃度でMNT-1細胞の存在下かつトランスフェクションビヒクルを使用せずにインキュベートし、48時間後、リアルタイムPCRを用いてチロシナーゼmRNA発現の度合を測定した。グラフは3回の反復実験の平均および標準偏差を示す。
図3図3は例示的なcp-asiRNAによるチロシナーゼタンパク質発現の抑制を示す。cp-asiRNAをトランスフェクションビヒクルを使用せずにMNT-1細胞と接触させ、72時間後、タンパク質を抽出し、ウエスタンブロットを行った(NT = 無処理)。
図4図4は、トランスフェクションビヒクルを使用しない、例示的なcp-asiRNAでのMNT-1細胞の処理の72時間後に行われたメラニン含量アッセイの結果を示す(NT = 無処理)。
図5図5は例示的なcp-asiRNAによる色素沈着抑制を示す。パネル(a)は、トランスフェクションビヒクルを使用しない、cp-asiRNAでの処理の72時間後のMNT-1細胞の色の変化を示す。パネル(b)は、ビヒクルを使用しない、cp-asiRNAでのMNT-1細胞の処理の72時間後のMNT-1細胞株から得られたメラニンの色の変化を示す(NT = 無処理)。
図6図6は、LDHアッセイおよびCCK-8アッセイを用いた場合の、トランスフェクションビヒクルを使用せずに例示的なcp-asiRNAで処理された細胞の細胞毒性を示す。パネル(a)は、LDHアッセイにより測定した場合の、例示的なcp-asiRNAまたは示されている対照での処理の24時間後のMNT-1細胞における細胞毒性を示す。パネル(b)は、CCK-8アッセイにより測定した場合の、cp-asiRNAまたは示されている対照での処理の24時間後のMNT-1細胞における細胞毒性を示す。パネル(c)は、LDHアッセイにより測定した場合の、cp-asiRNAまたは対照での処理の24時間後のHaCaT細胞における細胞毒性を示す。パネル(d)は、CCK-8アッセイにより測定した場合の、cp-asiRNAまたは対照での処理の24時間後のHaCaT細胞の細胞毒性を示す(NT = 無処理)。
図7図7は、異なるアンチセンス鎖長(21または19ヌクレオチド)および2'-O-メチル化修飾を有する例示的なcp-asiRNAの遺伝子サイレンシング効果を示す。各cp-asiRNAを1μMの濃度でトランスフェクションビヒクルを使用せずにMNT-1と接触させ、生じたチロシナーゼmRNA産生を48時間後にリアルタイムPCRにより測定した。
図8図8は例示的なcp-asiRNAによるチロシナーゼタンパク質発現の抑制を示す。示されているcp-asiRNAをトランスフェクションビヒクルを使用せずにMNT-1細胞と接触させ、72時間後、タンパク質を抽出し、ウエスタンブロットを行った(NT = 無処理)。
図9図9は、トランスフェクションビヒクルを使用しない、例示的なcp-asiRNAでのMNT-1細胞の処理の72時間後に行われたメラニン含量アッセイにより得られた結果を示す。(NT = 無処理)
図10図10は例示的なcp-asiRNAによるチロシナーゼタンパク質発現の抑制を示す。示されているcp-asiRNAをトランスフェクションビヒクルを使用せずにMNT-1細胞と接触させ、72時間後、タンパク質を抽出し、ウエスタンブロットを行った(NT = 無処理)。
図11図11は例示的なasiRNAおよびlasiRNAでのMNT-1細胞の処理の効果を示す。特定された各複合体を、示されている濃度でMNT-1細胞と共に48時間インキュベートし、チロシナーゼmRNA発現をリアルタイムRT-PCRによって測定した。
図12-1】図12は例示的なasiRNAおよびlasiRNAでのMNT-1細胞の処理の効果を示す。パネル(a)は、例示的なasiRNA、lasiRNAまたは対照での処理の72時間後のMNT-1細胞によるチロシナーゼ発現についてのウエスタンブロットにより得られた結果を示す。パネル(b)は例示的なasiRNA、lasiRNAまたは対照での処理の72時間後のMNT-1細胞のメラニン含量を示す(NT = 無処理)。
図12-2】図12-1の続きである。
図13図13はヒトチロシナーゼmRNA配列を示す。
図14図14は例示的なcp-asiRNAによる再構成皮膚モデルにおけるメラニン合成の抑制を示す。パネル(a)はこの研究のための実験スキームを示し、この場合、cp-MEL-300-Bサンプルを、培地中、asiTYR#4-1で13日間毎日(13回)処理した。パネル(b)は無処理対照サンプル(NT)、cp-asiTYR#4-1処理サンプルおよびコウジ酸処理サンプルにおけるメラノサイトの光学顕微鏡分析を示す。パネル(c)は無処理対照サンプル(NT)、cp-asiTYR#4-1処理サンプルおよびコウジ酸処理サンプルにおけるメラニン分析のためのフォンタナ-マッソンズ(Fontana-Massons)染色を示す。パネル(d)は、リアルタイムPCRを用いて測定された第14日のチロシナーゼmRNAレベルを示す。パネル(e)は、ウエスタンブロットにより測定された第14日のチロシナーゼタンパク質レベルを示す。パネル(f)は、メラニン含量アッセイを用いて測定された第14日のサンプルのメラニン含量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
総論
本発明は、特定の態様において、チロシナーゼ発現を抑制し、したがって、メラニン産生の低減に有用であり、過剰なメラニン産生に関連した色素沈着関連障害、例えば黒皮症および加齢斑の治療に有用である、非対称RNA複合体(例えば、asiRNAまたはlasiRNA)を提供する。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は、トランスフェクションビヒクルを必要とすることなく細胞を透過することができるように化学修飾される。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は、表1、表2、表4、表5および表6に列挙されているRNA複合体である。特定の態様においては、そのようなRNA複合体を含む医薬組成物ならびにそのようなRNA複合体および医薬組成物の使用方法を本発明で提供する。
【0014】
チロシナーゼは、メラニン合成において中心的な役割を果たすタンパク質である。ヒドロキノン、レチノイン酸およびコウジ酸を含む、チロシナーゼを標的とする種々の低分子低分子インヒビターが皮膚美白製品の有効成分として使用されている。しかし、そのような治療はしばしば効果がなく、またしばしば、重大な副作用、例えば掻痒および皮膚の褐変をもたらす。
【0015】
特定の実施形態においては、本発明で提供するRNA複合体は、皮膚美白のために現在使用されている従来の低分子と比較して、副作用のリスクが低い。本明細書に記載されているとおり、本発明で提供する例示的なRNA複合体は、現在の皮膚美白剤より1000倍低い濃度においてさえも、顕著なチロシナーゼ抑制効果を有する。したがって、本発明で提供するRNA複合体は、改善された皮膚美白効果のために、現在利用可能な低分子製品に取って代わるか、またはこれを補いうる。
【0016】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されているRNA複合体はasiRNAまたはlasiRNAである。本明細書中で用いるasiRNAなる語は、19~21nt(ヌクレオチド)のアンチセンス鎖と13~17ntのセンス鎖とを有する二本鎖非対称短鎖干渉RNA分子を意味する。asiRNAに関する追加的情報は、米国特許公開第2012/0238017号およびChangら, Mol. Ther. 17:725-732(2009)(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に見ることができる。本明細書中で用いるlasiRNAなる語は、13~21ntのセンス鎖と24ntを超えるアンチセンス鎖とを有する長い二本鎖非対称干渉RNA分子を意味する。lasiRNAに関する追加的情報は米国特許公開第2013/0273657号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に見ることができる。
【0017】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されているRNA複合体は、送達ビヒクル、例えばリポソーム、カチオン性重合体、細胞透過性ペプチド(CPP)、タンパク質トランスダクションドメイン(PTD)、抗体および/またはアプタマーを使用して細胞に送達される。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されているRNA複合体は、細胞におけるチロシナーゼ抑制を媒介するためにそのような送達ビヒクルの使用を必要としないように、化学修飾される。そのようなRNA複合体は本明細書においては細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)または細胞透過性lasiRNA(cp-lasiRNA)と称される。
【0018】
定義
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語をここに集める。
【0019】
本明細書で用いられる冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の対象物の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例えば、「an」要素は1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0020】
本明細書中で用いる「投与する」なる語は、医薬物質または医薬組成物を対象に与えることを意味し、医療従事者による投与および自己投与を含むが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書中で用いる「干渉核酸」、「抑制性核酸」は互換的に用いられる。干渉核酸は、一般に、一連の環状サブユニットを含み、それらサブユニットはそれぞれが塩基対形成部分を有し、ワトソン-クリック塩基対形成により核酸(典型的にはRNA)中の標的配列にその塩基対形成部分がハイブリダイズして標的配列内で核酸:オリゴマーヘテロ二重鎖を形成することを可能にするサブユニット間結合により、連結されている。干渉RNA分子には、アンチセンス分子、siRNA分子、asiRNA分子、lasiRNA分子、一本鎖siRNA分子、miRNA分子およびshRNA分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような干渉核酸は、mRNAの翻訳を遮断または抑制するように、あるいは天然プレmRNAスプライスプロセシングを抑制するように、あるいは標的化mRNAの分解を誘導するように設計してもよく、それがハイブリダイズする標的配列に対して「指向性である」または「標的化されている」と称されうる。干渉核酸には、例えば、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、2'-O-メチルオリゴヌクレオチドおよびRNA干渉物質(siRNA物質)が含まれうる。RNAi分子は、一般に、標的分子とヘテロ二重鎖を形成することによって作用し、それは選択的に分解または「ノックダウン」され、それにより標的RNAを不活性化する。幾つかの条件下、干渉RNA分子は、転写物の翻訳を抑制することおよび/または転写物の転写を抑制することにより、標的転写物を不活性化することも可能である。干渉核酸は、より一般的には、前記のようにして標的の核酸に対して標的化されている場合、タンパク質のような生体関連標的に対して「標的化されている」と言われる。
【0022】
「ポリヌクレオチド」および「核酸」なる語は互換的に用いられる。それらは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはそれらの類似体のいずれであれ、任意の組合せおよび任意の長さのヌクレオチドの重合形態を指す。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有してもよく、任意の機能を果たしうる。以下のものはポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖解析から定められる遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは修飾ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含みうる。ヌクレオチド構造に対する修飾は、存在する場合には、重合体の構築の前または後で施されうる。ポリヌクレオチドは、例えば標識成分との結合(コンジュゲート化)によって、更に修飾されうる。本明細書に記載されている全ての核酸配列において、UヌクレオチドはTヌクレオチドと交換可能である。
【0023】
本明細書中で用いる「医薬上許容される担体」なる語は、医薬上許容される物質、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤または溶媒カプセル化材を意味する。
【0024】
オリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドに「特異的にハイブリダイズする」と言えるのは、そのオリゴマーが、生理的条件下で、45℃より実質的に高い、または少なくとも50℃、または少なくとも60℃~80℃またはそれを超えるTmで標的にハイブリダイズする場合である。そのようなハイブリダイゼーションはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に相当する。所与のイオン強度およびpHにおいて、Tmは、標的配列の50%が相補的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。更に、そのようなハイブリダイゼーションは、標的配列に対してアンチセンスオリゴマーの厳密な相補性を有する場合だけでなく、「近い」または「実質的な」相補性を有する場合にも生じうる。
【0025】
本明細書中で用いる「対象」なる語は、治療または療法のために選択されたヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0026】
本明細書中で用いる「治療的有効量」および「有効量」なる語は、いずれかの医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で対象中の細胞の少なくとも亜集団において所望の治療効果を得るのに有効な物質の量を意味する。
【0027】
対象における疾患の「治療」または疾患を有する対象の「治療」は、疾患の少なくとも1つの症状を軽減させ、またはその悪化を防止するように、医薬的治療、例えば薬物の投与、を対象に対して施すことを意味する。
【0028】
RNA複合体
本発明は、特定の態様において、チロシナーゼmRNAを標的とし、細胞によるチロシナーゼ発現を抑制するRNA複合体を提供する。チロシナーゼは、メラニン産生を制御する律速酵素であるオキシダーゼである。ヒトチロシナーゼmRNAの核酸配列はNCBIアクセッション番号NM000372で入手可能であり、図13に記載されている。
【0029】
特定の態様においては、チロシナーゼmRNA配列(例えば、ヒトチロシナーゼmRNA配列)に対する配列相補性を有するアンチセンス鎖と該アンチセンス鎖に対する配列相補性を有するセンス鎖とを含むRNA複合体を本発明で提供する。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は細胞(例えば、メラノサイト)によるチロシナーゼ発現を抑制できる。ある実施形態においては、RNA複合体は細胞(例えば、メラノサイト)によるメラニン産生を抑制できる。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は非対称短鎖干渉RNA(asiRNA)である。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は長い非対称短鎖干渉RNA(lasiRNA)である。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は、表1、表2、表4、表5および表6に列挙されているRNA複合体である。本明細書に記載されているRNA複合体はRNA塩基、非RNA塩基またはRNA塩基と非RNA塩基との混合を含有しうる。例えば、本発明で提供する特定のRNA複合体は主にRNA塩基から構成されうるが、DNA塩基または非天然ヌクレオチドをも含有しうる。
【0030】
幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖は少なくとも19ヌクレオチド(nt)長である。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖は19~21nt長(すなわち、19、20または21ntの長さ)である。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖の少なくとも13、14、15、16、17、18、19、20または21ntがチロシナーゼmRNA配列に相補的である。完全な相補性は必要ではない。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖はチロシナーゼmRNA配列に完全に相補的である。
【0031】
幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖は少なくとも24nt長(例えば、少なくとも25nt長、少なくとも26nt長、少なくとも27nt長、少なくとも28nt長、少なくとも29nt長、少なくとも30nt長または少なくとも31nt長)である。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖は124nt長以下(例えば、100nt長以下、90nt長以下、80nt長以下、70nt長以下、60nt長以下、50nt長以下または40nt長以下)である。幾つかの実施態様においては、アンチセンス鎖は31nt長である。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖の少なくとも16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、29、29、30または31ntがチロシナーゼmRNA配列に相補的である。完全な相補性は必要でない。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖はチロシナーゼmRNA配列に完全に相補的である。
【0032】
幾つかの実施形態においては、センス鎖は15~17nt長(すなわち、15nt長、16nt長または17nt長)である。幾つかの実施形態においては、センス鎖の少なくとも15nt、少なくとも16ntまたは少なくとも17ntがアンチセンス鎖の配列に相補的である。幾つかの実施形態においては、センス鎖はアンチセンス鎖の配列に完全に相補的である。
【0033】
幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、アンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖の3'末端が平滑末端を形成している複合体を形成している。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、アンチセンス鎖の5'末端がセンス鎖の3'末端に(例えば、1、2、3、4または5nt)突出している複合体を形成している。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、センス鎖の5'末端がアンチセンス鎖の3'末端に(例えば、1、2、3、4または5nt)突出している複合体を形成している。
【0034】
幾つかの実施形態においては、RNA複合体のアンチセンス鎖および/またはセンス鎖は、表1、表2、表4、表5および表6に列挙されている配列から選択されるセンス鎖配列および/またはアンチセンス鎖配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号1の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号2の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号3の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号4の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号5の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号6の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号7の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号8の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号9の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号10の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号11の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号12の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号13の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号14の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号15の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号16の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号17の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号18の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号19の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号20の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号21の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号22の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号23の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号24の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号25の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号26の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号27の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号28の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号29の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号30の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号31の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号32の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号33の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号34の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号35の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号36の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号37の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号38の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号39の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号40の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号41の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号42の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号43の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号44の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号45の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号46の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号47の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号48の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号49の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号50の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号51の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号2の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号53の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号54の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号55の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号56の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号57の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号58の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号59の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号60の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号61の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号62の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号63の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号64の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号65の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号66の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号67の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号68の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号69の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号70の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号71の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号72の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号73の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号74の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号75の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号76の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号77の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号78の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号79の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号80の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号81の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号82の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号83の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号84の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号85の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号86の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号87の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号88の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号89の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号90の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号91の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号92の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号93の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号94の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号95の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号96の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号97の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号98の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号99の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号100の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号101の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号102の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号103の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号104の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号105の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号106の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号107の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号108の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号109の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号110の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号111の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号112の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号113の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号114の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号115の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号116の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号117の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号118の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号119の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号120の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号121の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号122の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号123の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号124の配列を有する。幾つかの実施形態においては、センス鎖は配列番号125の配列を有し、アンチセンス鎖は配列番号126の配列を有する。
【0035】
幾つかの実施形態においては、本発明において提供するRNA複合体は化学修飾を含み、該修飾は送達ビヒクルの非存在下、細胞膜の透過を促進する。幾つかの実施形態においては、該修飾は2'-O-メチル化ヌクレオシド、ホスホロチオアート結合またはコレステロール部分である。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は、表2または表4に列挙されている修飾RNA複合体である。特定の実施形態においては、RNA複合体は細胞毒性ではない。
【0036】
本明細書に記載されているRNA複合体は種々のオリゴヌクレオチド化学物質を用いうる。オリゴヌクレオチド化学物質の例には、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、ホスホロチオアート、2'O-Me-修飾オリゴヌクレオチドおよびモルホリノ化学(前記のいずれかの組合せを含む)が含まれるが、これらに限定されるものではない。一般に、PNAおよびLNA化学はより短い標的化配列を用いることが可能である。なぜなら、それらは、2'O-Me-修飾オリゴヌクレオチドと比べて比較的高い標的結合強度を有するからである。ホスホロチオアート骨格を有する2'O-Me-修飾オリゴヌクレオチドを作製するために、しばしば、ホスホロチオアートと2'O-Me-修飾化学物質とが組み合わされる。例えば、PCT公開番号WO/2013/112053およびWO/2009/008725(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0037】
ペプチド核酸(PNA)は、ピリミジンまたはプリン塩基が結合しているN-(2-アミノエチル)グリシン単位からなる、デオキシリボース骨格と構造的に同形の骨格を有するDNAの類似体である。天然ピリミジンおよびプリン塩基を含有するPNAは、ワトソン-クリック塩基対形成規則に従い、相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、塩基対認識の点でDNAを模倣する。PNAの骨格はホスホジエステル結合ではなくペプチド結合により形成されており、これにより、それらはアンチセンス用途に好適なものとなる(後記の構造を参照されたい)。骨格は非荷電であるため、通常より大きな熱安定性を示すPNA/DNAまたはPNA/RNA二重鎖が生じる。PNAはヌクレアーゼまたはプロテーゼによっては認識されない。
【0038】
天然構造に対する根本的な構造変化にかかわらず、PNAはヘリックス形態でのDNAまたはRNAへの配列特異的結合が可能である。PNAの特徴には、相補的DNAまたはRNAに対する高い結合アフィニティ、一塩基ミスマッチによって引き起こされる不安定化効果、ヌクレアーゼおよびプロテアーゼに対する抵抗性、塩濃度に無関係なDNAまたはRNAとのハイブリダイゼーション、ならびにホモプリンDNAとの三重鎖形成が含まれる。PANAGENE.TMは、それが専有するするBts PNAモノマー(Bts; ベンゾチアゾール-2-スルホニル基)、および専有するオリゴマー化法を開発している。Bts PNAモノマーを使用するPNAオリゴマー化は脱保護、カップリングおよびキャッピングの反復サイクルから構成される。PNAは、当技術分野で公知のいずれかの技術を用いて合成的に製造される。例えば、米国特許第6,969,766号、第7,211,668号、第7,022,851号、第7,125,994号、第7,145,006号および第7,179,896号を参照されたい。また、PNAの製造に関しては、米国特許第5,539,082号、第5,714,331号および第5,719,262号を参照されたい。PNA化合物の更なる教示はNielsenら, Science, 254:1497-1500, 1991に見出されうる。前記のそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0039】
干渉核酸は「ロックド核酸」サブユニット(LNA)をも含有しうる。「LNA」は、架橋核酸(BNA)と称される修飾のクラスのメンバーである。BNAは、C3-エンド(ノーザン)糖パッカー(pucker)中のリボース環のコンホメーションを固定する共有結合により特徴づけられる。LNAの場合、架橋は2'-Oおよび4'-C位間のメチレンから構成される。LNAは骨格の予備構成および塩基スタッキングを増強して、ハイブリダイゼーションおよび熱安定性を増強する。
【0040】
LNAの構造は、例えば、Wengelら, Chemical Communications (1998) 455; Tetrahedron (1998) 54:3607およびAccounts of Chem. Research (1999) 32:301; Obikaら, Tetrahedron Letters (1997) 38:8735; (1998) 39:5401およびBioorganic Medicinal Chemistry (2008) 16:9230に見出されうる。本発明で提供する化合物は1以上のLNAを含むことが可能であり、幾つかの場合には、該化合物は完全にLNAから構成されうる。個々のLNAヌクレオシドサブユニットの合成およびオリゴヌクレオチド内へのそれらの組込みのための方法は、例えば、米国特許第7,572,582号、第7,569,575号、第7,084,125号、第7,060,809号、第7,053,207号、第7,034,133号、第6,794,499号および第6,670,461号(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。典型的なサブユニット間リンカーはホスホジエステルおよびホスホロチオアート部分を含み、あるいは、非リン含有リンカーが使用されうる。1つの実施形態は、各LNAサブユニットがDNAサブユニットによって分離されているLNA含有化合物である。ある化合物は、交互LNAおよびDNAサブユニットから構成され、この場合、サブユニット間リンカーはホスホロチオアートである。
【0041】
特定の実施形態においては、RNA複合体はコレステロール部分に連結されている。幾つかの実施形態においては、コレステロール部分はセンス鎖の3'末端に結合している。幾つかの実施形態においては、コレステロール部分はアンチセンス鎖の3'末端に結合している。幾つかの実施形態においては、コレステロール部分はセンス鎖の5'末端に結合している。幾つかの実施形態においては、コレステロール部分はアンチセンス鎖の5'末端に結合している。
【0042】
幾つかの実施形態においては、RNA複合体は2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む。2'-O-メチル化ヌクレオシドはリボース分子の2'-OH残基にメチル基を含有する。2'-O-Me-RNAはRNAと同じ(または類似した)挙動を示すが、ヌクレアーゼ分解に対して保護されている。2'-O-Me-RNAは更なる安定化のためにホスホチオアートオリゴヌクレオチド(PTO)とも組み合わされうる。2'-O-Me-RNA(ホスホジエステルまたはホスホチオアート)は当技術分野における通常の技術に従い合成されうる(例えば、参照により本明細書に組み入れるYooら, Nucleic Acids Res. 32:2008-16, 2004を参照されたい)。
【0043】
幾つかの実施形態においては、2'-O-メチルヌクレオシドはセンス鎖の3'末端に位置する。幾つかの実施形態においては、センス鎖の3'末端領域は複数の2'-O-メチル化ヌクレオシド(例えば、3'末端の6ヌクレオシド内の2、3、4、5または6個の2'-O-メチル化ヌクレオシド)を含む。幾つかの実施形態においては、2'-O-メチルヌクレオシドはアンチセンス鎖の3'末端に位置する。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖の3'末端領域は複数の2'-O-メチル化ヌクレオシド(例えば、3'末端の6ヌクレオシド内の2、3、4、5または6個の2'-O-メチル化ヌクレオシド)を含む。幾つかの実施形態においては、センス鎖の3'末端領域とアンチセンス鎖の3'末端領域との両方が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む。幾つかの実施形態においては、センス鎖は、未修飾ヌクレオシドと交互に存在する2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む。幾つかの実施形態においては、センス鎖は、未修飾ヌクレオシドと交互に存在する2、3、4、5、6、7または8個の2'-O-メチル化ヌクレオシドの連続配列を含む。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖は、未修飾ヌクレオシドと交互に存在する2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む。幾つかの実施形態においては、アンチセンス鎖は、未修飾ヌクレオシドと交互に存在する2、3、4、5、6、7または8個の2'-O-メチル化ヌクレオシドの連続配列を含む。
【0044】
幾つかの実施形態においては、RNA複合体はホスホロチオアート結合を含む。「ホスホロチオアート」(またはS-オリゴ)は、非架橋酸素の1つが硫黄により置換されている通常のDNAのバリアントである。ヌクレオチド結合間の硫化は、5'から3'へのおよび3'から5'へのDNA POL 1エキソヌクレアーゼ、ヌクレアーゼS1およびP1、RNアーゼ、血清ヌクレアーゼならびにヘビ毒ホスホジエステラーゼを含む、エンドおよびエキソヌクレアーゼの作用を低減する。ホスホロチオアートは2つの基本的経路により、すなわち、ホスホン酸水素に対する二硫化炭素中の元素硫黄の溶液の作用により、またはテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)または3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン1,1-ジオキシド(BDTD)のいずれかで亜リン酸トリエステルを硫化する方法により得られる(例えば、Iyerら, J. Org. Chem. 55, 4693-4699, 1990を参照されたい)。後者の方法はほとんどの有機溶媒における元素硫黄の不溶性および二硫化炭素の毒性の問題を回避する。また、TETDおよびBDTD法はより高い純度のホスホロチオアートを与える。
【0045】
幾つかの実施形態においては、RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%はホスホロチオアート結合である。幾つかの実施形態においては、RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の全てがホスホロチオアート結合である。
【0046】
幾つかの実施形態においては、RNA複合体のアンチセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%はホスホロチオアート結合である。幾つかの実施形態においては、RNA複合体のアンチセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の全てがホスホロチオアート結合である。
【0047】
本明細書に記載されているRNA複合体を細胞と接触させ、または生物(例えば、ヒト)に投与することが可能である。あるいは、RNA複合体をコードする構築物および/またはベクターを細胞または生物と接触させ、あるいは細胞または生物内に導入することが可能である。ある実施形態においては、ウイルス、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを使用する。
【0048】
本明細書に記載されているRNA複合体は、当技術分野で公知の任意の適当な方法により製造されうる。例えば、幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されているRNA複合体は化学合成またはインビトロ転写により製造される。
【0049】
医薬組成物
特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物を本発明で提供する。特定の実施形態においては、医薬組成物は局所送達用に製剤化される。幾つかの実施形態においては、医薬組成物はクリーム剤またはローション剤である。幾つかの実施形態においては、医薬組成物は更に、第2の皮膚美白剤(例えば、ヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、コウジ酸、アゼライン酸またはトラネキサム酸)を含む。特定の実施形態においては、医薬組成物はトランスフェクションビヒクルを含まない。幾つかの実施形態においては、医薬組成物は送達ビヒクル(例えば、リポソーム、カチオン性重合体、細胞透過性ペプチド(CPP)、タンパク質トランスダクションドメイン(PTD)、抗体および/またはアプタマー)を含む。幾つかの実施形態においては、該組成物は、本明細書に記載されている複数(例えば、2以上)のRNA複合体の組み合わせを含む。
【0050】
後記に詳細に記載されているとおり、本明細書に開示されている医薬組成物は、局所投与用に適合化されたもの(例えば、クリーム剤またはローション剤)を含む、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化されうる。
【0051】
これらの製剤または組成物の製造方法は、本明細書に記載されているRNA複合体を担体と、そして所望により1以上の補助成分と一緒にする工程を含む。一般に、製剤は、本明細書に記載されている物質を液体担体と均一かつ密に一緒にすることにより製造される。
【0052】
本明細書に記載されている医薬組成物は、美容上および/または皮膚科学的に適した任意の形態、例えばエマルション、クリーム、ムース、ゲル、泡(フォーム)、ローション、マスク、軟膏、ポマード、溶液、美容液、スプレー、スティック、パッチまたはペーパータオルとして提供されうる。例えば、局所投与用の医薬組成物は多かれ少なかれ流体であってよく、白色または着色クリーム、軟膏、ミルク、ローション、美容液、ペースト、ムースまたはゲルの外観を有しうる。それは、適当な場合には、エアロゾルの形態で皮膚に適用されうる。それは固体形態でも存在することが可能であり、例えばスティックの形態でありうる。それはケア製品として、および/または皮膚メイクアップ製品として使用されうる。
【0053】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は、RNA複合体に加えて、以下から選択される少なくとも1つの化合物を含みうる:ヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、アゼライン酸、トラネキサム酸、α-ヒドロキシ酸; サリチル酸およびその誘導体、例えばn-オクタノイル-5-サリチル酸; HEPES; プロシステイン; O-オクタノイル-6-D-マルトース; メチルグリシン二酢酸の二ナトリウム塩; セラミド; ステロイド、例えばジオスゲニンおよびDHEA誘導体; コウジ酸; N-エチルオキシカルボニル-4-パラアミノフェノール; アスコルビン酸およびその誘導体; ビルベリー抽出物; レチノイド、特にレチノールおよびそのエステル; ポリペプチドおよびそれらのアシル化誘導体; 植物ホルモン; 酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の抽出物; 藻類抽出物; ビトレオスシラ・フィリフォルミス(Vitreoscilla filiformis)の抽出物; 大豆、ルピン、トウモロコシおよび/またはエンドウ豆の抽出物; アルベリンおよびその塩、特にアルベリンシトラート; レスベラトロール; カロテノイド、特にリコペン; トコフェロールおよびそのエステル; コエンザイムQ10またはユビキノン; キサンチン、特にカフェインおよびそれを含有する天然抽出物; ナギイカダおよびセイヨウトチノキの抽出物; ならびにそれらの混合物。
【0054】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は少なくとも1つのUVAおよび/またはUVBフィルター剤を含有しうる。サンスクリーンフィルター剤は、有機フィルター剤および無機フィルター剤ならびにそれらの組合せから選択されうる。
【0055】
UV-Aおよび/またはUV-Bの透過を遮断する有機フィルター剤の例には以下のものが含まれる: パラアミノ安息香酸の誘導体(例えば、PABA、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシルジメチルPABA、グリセリルPABA、PEG-25 PABA)、サリチル酸誘導体(例えば、ホモサラート、エチルヘキシルサリシラート、ジプロピレングリコールサリシラート、TEAサリシラート)、ジベンゾイルメタンの誘導体(例えば、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、イソプロピルジベンゾイルメタン)、桂皮酸誘導体(例えば、エチルヘキシルメトキシシンナマート、イソプロピルメトキシシンナマート、イソアミルメトキシシンナマート、シノキサート、DEAメトキシシンナマート、ジイソプロピルメチルシンナマート、グリセリルエチルヘキサノアートジメトキシシンナマート)、β,β'-ジフェニルアクリラートの誘導体(例えば、オクトクリレン、エトクリレン)、ベンゾフェノンの誘導体(例えば、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-9、ベンゾフェノン-12)、ベンジリデンカンファーの誘導体(例えば、3-ベンジリデンカンファー、4-メチルベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸、カンファーベンザルコニウムメトスルフェート、テレフタリリデンジカンファースルホン酸およびポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー)、フェニルベンズイミダゾールの誘導体(例えば、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸およびベンズイミダジラート)、トリアジンの誘導体(例えば、アニソトリアジン、エチルヘキシルトリアゾンおよびジエチルヘキシル-ブタミドトリアゾン)、フェニルベンゾトリアゾールの誘導体(例えば、ドロメトリゾールトリシロキサン)、アントラニル酸誘導体(アントラニル酸メンチル)、イミダゾリン誘導体(例えば、エチルヘキシルジメトキシ-ベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナート)、ベンザルマロナートの誘導体(ポリオルガノシロキサン)およびそれらの組合せ。
【0056】
UV-Aおよび/またはUV-Bの透過を遮断する無機フィルター剤の例には、非被覆金属酸化物ナノ顔料(一次粒子の平均径:一般に5nm~100nm、好ましくは10nm~50nm)、例えば、酸化チタンのナノ顔料(ルチルおよび/またはアナターゼ形態の無定形または結晶)、酸化鉄のナノ顔料、酸化亜鉛のナノ顔料、酸化ジルコニウムのナノ顔料または酸化セリウムのナノ顔料が含まれる。また、被覆(コーティング)剤はアルミナおよび/またはステアリン酸アルミニウムである。
【0057】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は、他の美容用および皮膚科学的成分、例えば親水性または親油性ゲル化剤、保存剤、抗酸化剤、溶媒、界面活性剤、増粘剤、香料、充填剤、顔料、臭気吸収剤および着色物質をも含有する。
【0058】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は油をも含有する。本明細書に記載されている医薬組成物中に含有されうる油の例には以下のものが含まれる: 動物由来の炭化水素油(例えば、ペルヒドロスクアレン)、植物由来の炭化水素油(例えば、4~10個の炭素原子を含む液体脂肪酸トリグリセリドおよびシアバターの液体画分)、脂肪酸の合成エステルおよびエーテル(例えば、式R1COOR2およびR1OR2(式中、R1は8~29個の炭素原子を含む脂肪酸の残基を表し、R2は、3~30個の炭素原子を含有する分枝状または非分枝状炭化水素鎖を表す)の油、例えば、パーセルリン油、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、エチル-2-ヘキシルパルミタート、オクチル-2-ドデシルステアラート、オクチル-2-ドデシルエルカートおよびイソステアリルイソステアラート; ヒドロキシル化エステル、例えばイソステアリルラクタート、オクチルヒドロキシステアラート、オクチルドデシルヒドロキシステアラート、ジイソステアリルマラート、トリイソセチルシトラート、ならびに脂肪アルコールのヘプタノアート、オクタノアートおよびデカノアート; ポリオールエステル、例えばプロピレングリコールジオクタノアート、ネオペンチルグリコールジヘプタノアートおよびジエチレングリコールジイソノナノアート; ならびにペンタエリスリトールエステル、例えばペンタエリトリチルテトライソステアラート)、ミネラルまたは合成由来の直鎖状または分枝状炭化水素(例えば、揮発性または不揮発性パラフィン油およびそれらの誘導体、ペトロラタム、ポリデセンおよび水素化ポリイソブテン、例えばパールリーム(parleam)油)、8~26個の炭素原子を有する脂肪アルコール(例えば、セチルアルコールおよびステアリルアルコールおよびそれらの混合物)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイン酸アルコールまたはリノール酸アルコール)、部分的炭化水素および/またはケイ素質(siliconaceous)フッ素化油、シリコーン油[例えば、直鎖状または環状ケイ素質鎖を有し、外界温度で液体またはペースト状である揮発性または不揮発性ポリメチルシロキサン(PDMS)、特にシクロポリ-ジメチルシロキサン(シクロメチコン)、例えばシクロヘキサシロキサン; ケイ素質鎖の末端に存在するか分岐しているアルキル、アルコキシまたはフェニル基(これらの基は2~24個の炭素原子を有する)を含有するポリジメチルシロキサン; フェニル化シリコーン、例えばフェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリカートおよびポリメチルフェニルシロキサン]ならびにそれらの組合せ。
【0059】
本明細書に記載されている医薬組成物に含まれうる乳化剤および共乳化剤の例には、O/W乳化剤、例えば、脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、特にPEG-100ステアラート、および脂肪酸とグリセロールとのエステル、例えばグリセリルステアラート、ならびにW/O乳化剤、例えば、オキシエチレン化ポリ(メチルセチル)(ジメチル)-メチルシロキサン、またはエチレングリコールアセチルステアラートとグリセリルトリステアラートとの混合物が含まれる。
【0060】
本明細書に記載されている医薬組成物に含まれうる親水性ゲル化剤には、カルボキシビニル重合体(カルボマー)、アクリル重合体、例えばアクリラート/アルキルアクリラート共重合体、ポリアクリルアミド、多糖、天然ガムおよび粘土が含まれ、一方、親油性ゲル化剤としては、修飾粘土、例えばベントナイト、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカおよびポリエチレンが挙げられうる。
【0061】
本明細書に記載されている医薬組成物に含まれうる充填剤の例には、顔料、シリカ粉末、タルク、オクテニルコハク酸無水物で架橋されたデンプン(、ポリアミド粒子、ポリエチレン粉末、アクリル共重合体系ミクロスフェア、膨張(expanded)粉末、例えば中空ミクロスフェア、シリコーン樹脂ミクロビーズおよびそれらの組合せが含まれる。
【0062】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は適当な皮膚透過増強剤を使用して又は使用せずに、パッチなどのような経皮送達形態で製剤化される。したがって、組成物または製剤(しばしば、皮膚透過増強組成物を用いる)を皮膚へ送達する経皮手段は、当技術分野において公知のまたは記載されている経皮パッチまたは類似デバイスのものである。そのようなデバイスの例は米国特許第5,146,846号、第5,223,262号、第4,820,724号、第4,379,454号および第4,956,171号(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている組成物はマイクロニードルパッチにより送達される。典型的なマイクロニードルパッチは米国特許第5,697,901号、第6,503,231号、第6,611,707号、第6,660,987号、第8,162,901号、第8,696,637号および第8,784,363号(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0063】
治療方法
特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体と細胞(例えば、メラノサイト)を接触させることを含む、該細胞によるチロシナーゼ発現の抑制方法を本発明で提供する。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は修飾RNA複合体であり、トランスフェクションビヒクルの非存在下、細胞をRNA複合体と接触させる。幾つかの実施形態においては、送達ビヒクル(例えば、リポソーム、カチオン性重合体、細胞透過性ペプチド(CPP)、タンパク質トランスダクションドメイン(PTD)、抗体および/またはアプタマー)の存在下、細胞をRNA複合体と接触させる。幾つかの実施形態においては、細胞はヒト対象の皮膚に存在する。幾つかの実施形態においては、対象は、過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害(例えば、黒皮症または加齢斑)を有する。幾つかの実施形態においては、対象は女性である。幾つかの実施形態においては、対象は妊娠しており、または経口もしくはパッチ避妊薬を服用しており、またはホルモン補充療法を受けている。
【0064】
特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体と細胞(例えば、メラノサイト)を接触させることを含む、該細胞によるメラニン産生の抑制方法を本発明で提供する。幾つかの実施形態においては、RNA複合体は修飾RNA複合体であり、トランスフェクションビヒクルの非存在下、細胞をRNA複合体と接触させる。幾つかの実施形態においては、送達ビヒクル(例えば、リポソーム、カチオン性重合体、細胞透過性ペプチド(CPP)、タンパク質トランスダクションドメイン(PTD)、抗体および/またはアプタマー)の存在下、細胞をRNA複合体と接触させる。幾つかの実施形態においては、細胞はヒト対象の皮膚に存在する。幾つかの実施形態においては、対象は、過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害(例えば、黒皮症または加齢斑)を有する。幾つかの実施形態においては、対象は女性である。幾つかの実施形態においては、対象は妊娠しており、または経口もしくはパッチ避妊薬を服用しており、またはホルモン補充療法を受けている。
【0065】
特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体または医薬組成物をヒト対象に投与することを含む、ヒト対象の皮膚におけるメラニン産生の抑制方法を本発明で提供する。幾つかの実施形態においては、対象は、過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害(例えば、黒皮症または加齢斑)を有する。幾つかの実施形態においては、対象は女性である。幾つかの実施形態においては、対象は妊娠しており、または経口もしくはパッチ避妊薬を服用しており、またはホルモン補充療法を受けている。ある実施形態においては、RNA複合体または医薬組成物を対象の皮膚に局所投与する。幾つかの実施形態においては、RNA複合体または医薬組成物は対象により自己投与される。幾つかの実施形態においては、該方法は、第2の皮膚美白剤(例えば、ヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、コウジ酸、アゼライン酸またはトラネキサム酸)を対象に投与することを更に含む。
【0066】
特定の態様においては、本発明で提供するRNA複合体または医薬組成物をヒト対象に投与することを含む、過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害(例えば、黒皮症または加齢斑)に対するヒト対象の治療方法を本発明で提供する。幾つかの実施形態においては、対象は女性である。幾つかの実施形態においては、対象は妊娠しており、または経口もしくはパッチ避妊薬を服用しており、またはホルモン補充療法を受けている。ある実施形態においては、RNA複合体または医薬組成物を対象の皮膚に局所投与する。幾つかの実施形態においては、RNA複合体または医薬組成物は対象により自己投与される。幾つかの実施形態においては、該方法は、第2の皮膚美白剤(例えば、ヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、コウジ酸、アゼライン酸またはトラネキサム酸)を対象に投与することを更に含む。
【0067】
本方法においては、本明細書に記載されているRNA複合体は、例えば、送達ビヒクルを使用しない核酸として(例えば、cp-asiRNAおよびcp-lasiRNAの場合)、送達試薬と併用して、および/または本明細書に記載されているRNA複合体を発現する配列を含む核酸として、対象に投与されうる。幾つかの実施形態においては、当技術分野で公知の任意の核酸送達方法が、本明細書に記載されている方法において用いられうる。適当な送達試薬には、例えば、Mirus Transit TKO親油性試薬; リポフェクチン; リポフェクタミン; セルフェクチン; ポリカチオン(例えば、ポリリシン)、アテロコラーゲン、ナノプレックスおよびリポソームが含まれるが、これらに限定されるものではない。核酸分子用送達ビヒクルとしてのアテロコラーゲンの使用はMinakuchiら, Nucleic Acids Res., 32(13):e109 (2004); Hanaiら, Ann NY Acad Sci., 1082:9-17 (2006); およびKawataら, Mol Cancer Ther., 7(9):2904-12 (2008)(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。例示的な干渉核酸送達システムは米国特許第8,283,461号、第8,313,772号、第8,501,930号、第8,426,554号、第8,268,798号および第8,324,366号(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)で提供されている。
【0068】
本明細書に記載されている方法の幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されているRNA複合体を対象に送達するためにリポソームを使用する。本明細書に記載されている方法における使用に適したリポソームは標準的な小胞形成性脂質(これは、一般には、中性または負荷電リン脂質およびステロール、例えばコレステロールを含む)から形成されうる。脂質の選択は、一般には、所望のリポソームのサイズおよび血流内のリポソームの半減期のような要因を考慮することによって導かれる。リポソームの製造のための種々の方法が公知であり、例えば、Szokaら, (1980), Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467; ならびに米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号および第5,019,369号(それらのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0069】
本方法に使用されるリポソームはまた、単核マクロファージ系(「MMS」)および細網内皮系(「RES」)によるクリアランスを回避するために修飾されうる。そのような修飾リポソームは表面上のまたはリポソーム構造内に取り込まれたオプソニン化抑制部分を有する。
【0070】
本明細書に記載されているリポソームの製造に使用されるオプソニン化抑制部分は、典型的には、リポソーム膜に結合した大きな親水性重合体である。本明細書中で用いるオプソニン化抑制部分がリポソーム膜に「結合」していると言えるのは、それが化学的または物理的に、例えば、膜自体の内部への脂溶性アンカーのインターカレーションにより、または膜脂質の活性基への直接結合により、該膜に結合している場合である。これらのオプソニン化抑制性親水性重合体は、例えば米国特許第4,920,016号(その開示の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり、MMSおよびRESによるリポソームの取り込みを有意に減少させる保護表面層を形成する。
【0071】
幾つかの実施形態においては、リポソームの修飾に適したオプソニン化抑制部分は、約500~約40,000ダルトンまたは約2,000~約20,000ダルトンの数平均分子量を有する水溶性重合体である。そのような重合体には、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体; 例えばメトキシPEGまたはPPG、およびPEGまたはPPGステアラート; 合成重合体、例えばポリアクリルアミドまたはポリN-ビニルピロリドン; 直鎖状、分枝状またはデンドリマー状ポリアミドアミン; ポリアクリル酸; カルボキシルまたはアミノ基が化学結合している多価アルコール、例えばポリビニルアルコールおよびポリキシリトール、ならびにガングリオシド、例えばガングリオシドGM1が含まれる。PEG、メトキシPEGもしくはメトキシPPGまたはそれらの誘導体の共重合体も好適である。また、オプソニン化抑制性重合体はPEGおよびポリアミノ酸、多糖、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミンまたはポリヌクレオチドのいずれかのブロック共重合体でありうる。また、オプソニン化抑制重合体は、アミノ酸またはカルボン酸を含有する天然多糖、例えばガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラギーナン; アミノ化多糖またはオリゴ糖(直鎖状または分枝状); あるいはカルボキシル化多糖またはオリゴ糖、例えば、炭酸誘導体と反応してカルボキシル基が結合したものでありうる。幾つかの実施形態においては、オプソニン化抑制部分はPEG、PPGまたはそれらの誘導体である。PEGまたはPEG誘導体で修飾されたリポソームは「PEG化リポソーム」と称されることがある。
【0072】
本明細書に開示されている医薬組成物は、任意の適当な投与経路により、例えば局所的、経口的および非経口的に送達されうる。特定の実施形態においては、医薬組成物は(例えば、経口または非経口投与により)全身投与される。他の特定の実施形態においては、医薬組成物は皮膚への直接投与によって局所的に送達される。
【0073】
医薬組成物中のRNA複合体の実際の投与量レベルは、患者に対する毒性を伴うことなく個々の患者、組成物および投与方法に関して所望の治療応答を得るのに有効なRNA複合体の量が得られるように変動可能である。
【0074】
選択される投与量レベルは、使用される個々の物質の活性、投与経路、投与時間、使用される個々の化合物の排泄または代謝速度、治療期間、使用される個々の化合物と併用される他の薬物、化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、全身健康状態および過去の病歴ならびに医学分野でよく知られている同様の要因を含む種々の要因に依存する。
【0075】
当技術分野における通常の技量を有する医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することが可能である。例えば、医師または獣医は、医薬組成物中で使用される物質の用量を、所望の治療効果を達成する必要レベルより低いレベルで処方および/または投与し、所望の効果が達成されるまで投与量を次第に増加させることが可能である。同様に、個々の使用者は、美白(ホワイトニング)の所望のレベルが達成されるまで、該組成物の漸増量を適用することが可能である。
【0076】
一般に、本明細書に記載されているRNA複合体の適当な1日量は、治療効果を得るのに有効な最低用量であるRNA複合体の量である。そのような有効量は、一般に、前記の要因に依存する。
【実施例
【0077】
実施例1:チロシナーゼ特異的非対称短鎖干渉RNAのスクリーニング
高い効率でチロシナーゼを抑制する非対称短鎖干渉RNA(asiRNA)を同定するために、62個のasiRNAを合成し、スクリーニングした。スクリーニングしたasiRNAの核酸配列を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に挙げられているasiRNAを、1×siRNA二本鎖バッファー(STpharm)中、95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。適切な鎖アニーリングがゲル電気泳動により確認された。スクリーニングのために、100mm細胞培養皿中、10% ウシ胎仔血清(Gibco)および100μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(Gibco)で培養した1.6×104個のA375細胞(ATCC)を24ウェルプレート内に播いた。該A375細胞を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を製造業者の指示に従い使用して、0.3nMのasiRNAによりトランスフェクトした。
【0080】
トランスフェクションの24時間後、リアルタイムRT-PCRを用いて、トランスフェクト細胞におけるチロシナーゼmRNAレベルを測定した。具体的には、Isol-RNA細胞溶解試薬(5PRIME)を使用して全RNAを抽出し、ついで高容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を製造業者の指示に従い使用して500ngの抽出RNAをcDNA合成に使用した。合成されたcDNAを希釈し、StepOneリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を製造業者の指示に従い使用して定量的リアルタイムPCRを行った。パワーSYBRグリーンPCRマスターミックス(Applied Biosystems)を使用して、チロシナーゼ遺伝子の増幅を検出した。GAPDHを内部対照として増幅した。以下のプライマー配列を使用した:
ヒトGAPDH-フォワード 5'-GAG TCA ACG GAT TTG GTC GT-3' (配列番号125);
ヒトGAPDH-リバース 5'-GAC AAG CTT CCC GTT CTC AG-3' (配列番号126);
ヒトチロシナーゼ-フォワード: 5'-GGA TCT GGT CAT GGC TCC TT-3' (配列番号127);
ヒトチロシナーゼ-リバース: 5'-GTC AGG CTT TTT GGC CCT AC-3' (配列番号128)。
【0081】
62個のasiRNAのそれぞれによるチロシナーゼ阻害のレベルを図1に示す。それらのasiRNA配列のうちの6つ、すなわち、asiTYR(4)、asiTYR(9)、asiTYR(10)、asiTYR(17)、asiTYR(44)およびasiTYR(45)を、フォローアップ研究に使用するために選択した。
【0082】
実施例2:自己送達のためのasiRNAの化学修飾
実施例1で選択した6つのasiRNAに化学修飾を施し、修飾asiRNAの細胞送達を他の送達ビヒクルの非存在下で試験した。後記のとおり、該修飾の幾つかはasiRNAの安定性およびエンドサイトーシスを改善した。そのような細胞透過性asiRNA(cp-asiRNA)は送達ビヒクルの非存在下で細胞内に送達される能力を有する。
【0083】
38個の潜在的cp-asiRNA(表2)をMNT-1細胞におけるチロシナーゼmRNA抑制に関してスクリーニングした。各潜在的cp-asiRNAを、送達ビヒクルを使用せず、ヒトメラノーマ細胞株であるMNT-1細胞と共に1μMでインキュベートし、リアルタイムPCRによりチロシナーゼmRNAレベルを測定した。
【0084】
【表2】
【0085】
20% ウシ胎仔血清(Gibco)、100μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシン、10% 200mM HEPES(Welgene)および10% ダルベッコ改変イーグル培地(Welgene)を含有する最小必須培地(Welgene)でMNT-1細胞(Sungkyunkwan Universityから入手)を培養した。
【0086】
表2に列挙されている潜在的cp-asiRNAを、OPTI-MEMバッファー(Gibco)中、95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。潜在的cp-asiRNAの適切な鎖アニーリングがゲル電気泳動により確認された。
【0087】
cp-asiRNA処理の1日前に、2.0×104個の細胞を24ウェルプレートに播いた。処理の直前に、MNT-1細胞を1×DPBSバッファー(Gibco)で洗浄し、ついでOPTI-MEMバッファー中、潜在的cp-asiRNAの存在下で24時間培養した。その時点で、asiRNA含有OPTI-MEM培地を血清含有培地と交換した。24時間後、MNT-1細胞においてチロシナーゼmRNAレベルを測定した。
【0088】
38個の潜在的cp-asiRNAのそれぞれによるチロシナーゼ阻害のレベルを図2に示す。試験した潜在的cp-asiRNAから、cp-asiTYR(4)-1を更なる研究のために選択した。
【0089】
実施例3:チロシン特異的cp-asiRNAを使用したチロシナーゼタンパク質およびメラニンの抑制
チロシナーゼタンパク質の抑制およびメラニン産生の抑制に関するcp-asiTYR(4)-1の有効性を試験した。非特異的効果を試験するために、チロシナーゼmRNA配列に対する配列相補性を欠く突然変異cp-asiTYR(cp-asiTYR(シード突然変異)と称される)も試験した。cp-asiTYR(シード突然変異)の配列を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
cp-asiRNAをOPTI-MEMバッファー(Gibco)中、95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。潜在的cp-asiRNAの適切な鎖アニーリングがゲル電気泳動により確認された。
【0092】
20% ウシ胎仔血清(Gibco)、100μg/ml ペニシリン/ストレプトマイシン、10% 200mM HEPES(Welgene)および10% ダルベッコ改変イーグル培地(Welgene)を含有する最小必須培地(Welgene)でMNT-1細胞を培養した。処理の1日前に、6.5×104個のMNT-1細胞を12ウェルプレートに播いた。処理の直前に、MNT-1細胞を1×DPBSバッファー(Gibco)で洗浄し、ついでOPTI-MEMバッファー中、1μMまたは3μMのcp-asiRNATYR(4)-1の存在下で24時間培養し、この時点でOPTI-MEM培地を血清含有培地と交換した。
【0093】
cp-asiTYR(4)-1の72時間のインキュベーションの後、ウエスタンブロットによりチロシナーゼタンパク質発現のレベルを測定した。簡潔に説明すると、処理したMNT-1細胞をRIPAバッファー(GE)で細胞溶解した。全タンパク質抽出物15μgを12% SDS-PAGEゲルにローディングし、120Vで電気泳動した。電気泳動後、300mAで1時間にわたり、メタノール(Merck)で既に活性化されたPVDF膜(Bio-rad)にタンパク質を転写した。該膜を5% 脱脂乳(Seoul Milk)で室温で1時間ブロッキングし、ついで抗チロシナーゼ抗体(Santa Cruz)および抗β-アクチン抗体(Santa Cruz)を含有する5% 脱脂乳中、4℃で一晩インキュベートした。ついで該膜を1×TBSTで10分間、3回洗浄し、HRP結合二次抗体と共に5% 脱脂乳中、室温で1時間インキュベートした。該膜を1×TBSTで10分間洗浄し、1×ECLで1分間処理した。ついでChemidoc装置(Bio-rad)を使用して、チロシナーゼおよびβ-アクチンバンドをイメージングした。
【0094】
ウエスタンブロットアッセイの結果を図3に示す。その結果、cp-asiTYR#4-1でインキュベートした細胞株全てにおいて、70%以上のチロシナーゼタンパク質抑制が確認された。また、cp-asiTYRは、ヒドロキノンおよびアルブチンのような他のチロシナーゼインヒビターと比べて、より高効率のチロシナーゼ抑制能を示すことが示された(図3)。
【0095】
前記のとおりcp-asiTYR(4)-1で処理されたMNT-1細胞をメラニン含量に関して試験した。cp-asiTYRの存在下の72時間のインキュベーションの後、MNT-1細胞を回収し、RIPAバッファー(GE)で細胞溶解し、13000rpmで遠心分離した。得られたメラニンペレットを100μLの1N NaOH(10% DMSOを含有)中に85℃で15分間にわたり溶解し、光吸収とメラニン産生を測定した。
【0096】
図4に示されているとおり、1μM cp-asiTYR(4)-1で処理されたMNT-1細胞は、60%を超えるメラニン産生抑制を示し、これは、ヒドロキノン(20μM)およびアルブチン(2mM)を含む、メラニン産生に対して一般に使用される化合物で処理された場合より高い。
【0097】
実施例4:cp-asiRNAでの処理後のMNT-1細胞の明色化
MNT-1細胞の色を明るくするcp-asiRNA(4)-1の能力を試験した。
【0098】
実施例3と同様に、MNT-1細胞を1μMまたは3μM cp-asiTYR(4)-1の存在下で培養した。72時間後、細胞をペレット化し、細胞の色の変化を観察した。図5に示されているとおり、cp-asiTYR(4)-1処理細胞の色は、未処理MNT-1対照細胞(NT)、ヒドロキノン処理細胞およびアルブチン処理細胞より明るかった。
【0099】
実施例5:cp-asiRNAの細胞毒性
cp-asiRNAの細胞毒性を試験するために、ヒトメラノーマ細胞株であるMNT-1、およびヒトケラチノサイト細胞株であるHaCaTをcp-asiTYR#4-1およびヒドロキノンで処理した。
【0100】
cp-asiRNAをOPTI-MEMバッファー(Gibco)中、95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。潜在的cp-asiRNAの適切な鎖アニーリングがゲル電気泳動により確認された。
【0101】
cp-asiRNA(4)-1での処理の1日前に、5.0×103個のMNT-1細胞または1.0×104個のHaCaT細胞を96ウェルプレートに播いた。処理の直前に、細胞を1×DPBSバッファー(Gibco)で洗浄し、ついでOPTI-MEMバッファー中、1μMまたは3μMのcp-asiRNATYR(4)-1の存在下で24時間培養し、その時点で、CytoTox96 Non-Radio Cytotoxicityアッセイ(Promega)を製造業者の指示に従い使用して、細胞毒性レベルを測定した。ついで培地を血清含有培地と交換し、細胞計数キット-8(Enzo)を製造業者の指示に従い使用して細胞生存率を測定した。
【0102】
図6に示されているとおり、MNT-1またはHaCaTのいずれにおいても、cp-asiRNAでの処理による細胞毒性も細胞生存率の低下も観察されなかった。一方、ヒドロキノンまたはアルブチンで処理されたHaCaT細胞においては細胞毒性が観察された。
【0103】
実施例6:追加的なcp-asiRNA構造体
異なる鎖長、および異なる数の2'-O-メチル化修飾を有する種々の潜在的cp-asiTYR構造体を合成し、チロシナーゼ発現を抑制するそれらの能力に関して試験した(表4)。
【0104】
【表4】
【0105】
表4に列挙された潜在的cp-asiRNAのそれぞれの1μMの、MNT-1細胞におけるチロシナーゼmRNAを抑制する能力を試験した。
【0106】
20% ウシ胎仔血清(Gibco)、100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン、10% 200mM HEPES(Welgene)および10% ダルベッコ改変イーグル培地(Welgene)を含有する最小必須培地(Welgene)でMNT-1細胞を培養した。
【0107】
表4に列挙されている潜在的cp-asiRNAを、OPTI-MEMバッファー(Gibco)中、95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。潜在的cp-asiRNAの適切な鎖アニーリングがゲル電気泳動により確認された。
【0108】
処理の1日前に、2.0×104個のMNT-1細胞を24ウェルプレート内に播いた。処理の直前に、MNT-1細胞を1×DPBSバッファー(Gibco)で洗浄し、ついでOPTI-MEMバッファー中、潜在的cp-asiRNAの存在下で24時間培養し、その時点で、asiRNA含有OPTI-MEM培地を血清含有培地と交換した。24時間後、MNT-1細胞におけるチロシナーゼmRNAレベルを測定した。
【0109】
図7に示されているとおり、21ヌクレオチドアンチセンス鎖上に4個のホスホロチオアート結合を含有するチロシナーゼmRNA潜在的cp-asiRNAと19ヌクレオチドアンチセンス鎖上に3個の2'-O-メチル化および4個のホスホロチオアート結合を含有する潜在的cp-asiRNAは、最高レベルのチロシナーゼ抑制を示した。そのcp-asiTYR(4)21AS-1およびcp-asiTYR(4)19AS-5を更なる実験のために選択した。
【0110】
チロシナーゼタンパク質産生およびメラニン産生に対するcp-asiTYR(4)21AS-1およびcp-asiTYR(4)19AS-5の効果を試験した。
【0111】
cp-asiRNAをOPTI-MEMバッファー(Gibco)中、95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。潜在的cp-asiRNAの適切な鎖アニーリングがゲル電気泳動により確認された。
【0112】
20% ウシ胎仔血清(Gibco)、100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン、10% 200mM HEPES(Welgene)および10% ダルベッコ改変イーグル培地(Welgene)を含有する最小必須培地(Welgene)でMNT-1細胞を培養した。処理の1日前に、6.5×104個のMNT-1細胞を12ウェルプレート内に播いた。処理の直前に、MNT-1細胞を1×DPBSバッファー(Gibco)で洗浄し、ついでOPTI-MEMバッファー中、1μMまたは3μMのcp-asiRNATYR(4)-1の存在下で24時間培養し、その時点でOPTI-MEM培地を血清含有培地と交換した。
【0113】
1μMおよび3μM cp-asiRNAでの処理後のMNT-1細胞によるチロシナーゼタンパク質発現のレベルをウエスタンブロットにより測定した。簡潔に説明すると、トランスフェクトMNT-1細胞をRIPAバッファー(GE)で細胞溶解した。全タンパク質抽出物15μgを12% SDS-PAGEゲルにローディングし、120Vで電気泳動した。電気泳動後、300mAで1時間にわたり、メタノール(Merck)で既に活性化されたPVDF膜(Bio-rad)にタンパク質を転写した。該膜を5% 脱脂乳(Seoul Milk)で室温で1時間ブロッキングし、ついで抗チロシナーゼ抗体(Santa Cruz)および抗β-アクチン抗体(Santa Cruz)を含有する5% 脱脂乳中、4℃で一晩インキュベートした。ついで該膜を1×TBSTで10分間、3回洗浄し、HRP結合二次抗体と共に、5% 脱脂乳中、室温で1時間インキュベートした。該膜を1×TBSTで10分間洗浄し、1×ECLで1分間処理した。ついでChemidoc装置(Bio-rad)を使用して、チロシナーゼおよびβ-アクチンバンドをイメージングした。
【0114】
図8において認められるとおり、cp-asiTYR(4)21AS-1またはcp-asiTYR(4)19AS-5での処理はチロシナーゼタンパク質のレベルにおける70%を超える抑制をもたらした。また、cp-asiTYR(4)19AS-5は、cp-asiTYR(4)21AS-1より僅かに高い抑制活性を示した。
【0115】
前記のとおりにcp-asiTYR(4)21AS-1またはcp-asiTYR(4)19AS-5で処理されたMNT-1細胞をメラニン含量に関して試験した。cp-asiTYRの存在下の72時間のインキュベーションの後、MNT-1細胞を集め、RIPAバッファー(GE)で細胞溶解し、13000rpmで遠心分離した。得られたメラニンペレットを100μLの1N NaOH(10% DMSOを含有)中に85℃で15分間にわたり溶解し、光吸収およびメラニン産生を測定した。
【0116】
図9に示されているとおり、1μM cp-asiTYR(4)21AS-1またはcp-asiTYR(4)19AS-5で処理されたMNT-1細胞はメラニン産生における約50%の抑制を示したが、これは、2mM アルブチンで処理されたMNT-1細胞において示された抑制より高い。
【0117】
異なる鎖長、異なる数の2'-O-メチル化修飾、および異なる数のホスホロチオアート結合を有する追加的な潜在的cp-asiTYR構造体を合成し、チロシナーゼ発現を抑制するそれらの能力に関して試験した(表5)。
【0118】
【表5】
【0119】
チロシナーゼタンパク質産生に対するcp-asiTYR(4)21AS-1およびcp-asiTYR(4)19AS-7の効果を試験した。
【0120】
cp-asiRNAをOPTI-MEMバッファー(Gibco)中、95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。潜在的cp-asiRNAの適切な鎖アニーリングがゲル電気泳動により確認された。
20% ウシ胎仔血清(Gibco)、100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン、10% 200mM HEPES(Welgene)および10% ダルベッコ改変イーグル培地(Welgene)を含む最小必須培地(Welgene)でMNT-1細胞を培養した。処理の1日前に、6.5×104個のMNT-1細胞を12ウェルプレート内に播いた。処理の直前に、MNT-1細胞を1×DPBSバッファー(Gibco)で洗浄し、ついでOPTI-MEMバッファー中、1μM、0.6μM、0.3μMおよび0.1μMのcp-asiTYR(4)21AS-1およびcp-asiTYR(4)19AS-7の存在下で24時間インキュベートし、その時点でOPTI-MEM培地を血清含有培地と交換した。
【0121】
1μM、0.6μM、0.3μMおよび0.1μM cp-asiRNAでの処理の後のMNT-1細胞によるチロシナーゼタンパク質発現のレベルをウエスタンブロットにより測定した。簡潔に説明すると、トランスフェクトMNT-1細胞をRIPAバッファー(GE)で細胞溶解した。全タンパク質抽出物15μgを12% SDS-PAGEゲルにローディングし、120Vで電気泳動した。電気泳動後、300mAで1時間にわたり、メタノール(Merck)で既に活性化されたPVDF膜(Bio-rad)にタンパク質を転写した。該膜を5% 脱脂乳(Seoul Milk)で室温で1時間ブロッキングし、ついで抗チロシナーゼ抗体(Santa Cruz)および抗β-アクチン抗体(Santa Cruz)を含有する5% 脱脂乳中、4℃で一晩インキュベートした。ついで該膜を1×TBSTで10分間、3回洗浄し、HRP結合二次抗体と共に、5% 脱脂乳中、室温で1時間インキュベートした。該膜を1×TBSTで10分間洗浄し、1×ECLで1分間処理した。ついでChemidoc装置(Bio-rad)を使用して、チロシナーゼおよびβ-アクチンバンドをイメージングした。
【0122】
図10において認められるとおり、cp-asiTYR(4)21AS-1またはcp-asiTYR(4)19AS-7での処理はチロシナーゼタンパク質のレベルにおける70%を超える抑制をもたらした。また、cp-asiTYR(4)21AS-1は、cp-asiTYR(4)19AS-7より僅かに高い抑制活性を示した。
【0123】
実施例7:asiRNAおよびlasiRNAと組み合わせた細胞透過性ペプチドの使用
asiRNAまたはlasiRNAとPepfect6(PF6)細胞透過性ペプチドとの組合せを、別のトランスフェクション試薬を使用せずに、チロシナーゼmRNAおよびタンパク質レベルの抑制に関して試験した。
【0124】
asiTYR(4)およびlasiTYR(21)(表6)を、OPTI-MEMバッファー(Gibco)中、95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。asiRNAおよびlasiRNAの適切な鎖アニーリングがゲル電気泳動により確認された。DEPC中のアニール化RNAおよびPF6を、RNA複合体:PF6のモル比1:10で100μlの0.6×DPBS中に希釈し、ついで複合体形成のために室温で30分間インキュベートした。適切な複合体形成がゲル電気泳動により確認された。
【0125】
【表6】
【0126】
20% ウシ胎仔血清(Gibco)、100μg/ mlペニシリン/ストレプトマイシン、10% 200mM HEPES(Welgene)および10% ダルベッコ改変イーグル培地(Welgene)を含有する最小必須培地(Welgene)でMNT-1細胞を培養した。処理の1日前に、6.5×104個のMNT-1細胞を12ウェルプレート内に播いた。処理の4時間前に、細胞培地を900μLのFBS含有培地に交換した。PF6複合体化したasiRNAまたはlasiRNAを細胞に加え、細胞を24時間インキュベートし、その時点で培地を交換した。培地交換の24時間後、リアルタイムRT-PCRを用いてチロシナーゼmRNAレベルを測定した。
【0127】
図11において認められるとおり、PF6複合体化asiRNAまたはlasiRNAで処理されたMNT-1細胞株は、対照と比較して有意に低いレベルのチロシナーゼmRNAを示した。
【0128】
処理されたMNT-1細胞をチロシナーゼタンパク質発現およびメラニン産生に関して試験するために、培地交換の48時間後、前記のとおりにウエスタンブロットおよびメラニン含量アッセイを行った。
【0129】
図12において認められるとおり、asiTYR(4)/PF6複合体およびlasiTYR(21)/PF6複合体で処理された細胞株は、対照と比較して少なくとも70%のチロシナーゼタンパク質抑制を示した。また、asiTYR(4)/PF6複合体およびlasiTYR(21)/PF6複合体で処理された細胞は、対照より少ないメラニン産生を示した。
【0130】
実施例8:例示的なcp-asiRNAを使用した再構築皮膚モデルにおけるメラニン合成の抑制
チロシナーゼ発現およびメラニンレベルをcp-asiTYR#4-1処理3-D皮膚モデルにおいて分析した。この研究においては、再構築皮膚モデルであるMEL-300-B(MatTek)を使用した。cp-asiTYR#4-1での処理の24時間前に、MEL-300-BをEPI-100-NMM-113培地において安定化した。アニーリングのために、DEPC処理水に溶解したcp-asiTYR#4-1を95℃で2分間および37℃で1時間インキュベートした。cp-asiTYR#4-1を培地に直接添加することにより、MEL-300-Bサンプルをcp-asiTYR#4-1で毎日13日間処理した(最終濃度 = 5μM)。図14(a)に示されているとおり、対照として、他のMEL-300-Bサンプルをコウジ酸(KA)(Sigma、最終2%)で処理した。サンプルを第14日に回収し、光学顕微鏡を使用してサンプル中のメラノサイトを分析した。図14(c)において認められるとおり、cp-asiTYR#4-1処理は、処理された再構築皮膚モデルサンプルにおけるメラノサイトのレベルを低下させた。各サンプルにおけるメラニンレベルを、フォンタナ-マッソン(Fontana-Massons)染色を用いて分析した。図14(c)に示されているとおり、ci-asiTYR#4-1処理は、処理された再構築皮膚モデルサンプルにおけるメラニンのレベルを低下させた。
【0131】
第14日におけるmRNAレベルを分析するために、サンプルをIsol-RNA細胞溶解試薬(5PRIME)中に回収し、ホモジナイザー(IKA)を使用してホモジナイズした。各サンプルから全RNAを抽出した。各サンプルに関して、大容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems)を製造業者の指示に従い使用して、500ngの抽出RNAをcDNA合成に使用した。ついでStepOneリアルタイムPCR系(Applied Biosystems)を使用して定量的リアルタイムPCRを行った。チロシナーゼcDNAの増幅を、パワーSYBRグリーンPCRマスターミックス(Applied Biosystems)を使用して検出した。内部対照としてGAPDHを増幅した。図14(d)に示されているとおり、ci-asiTYR#4-1処理は、処理された再構築皮膚モデルサンプルにおけるチロシナーゼmRNAのレベルを低下させた。
【0132】
ウエスタンブロットを用いてタンパク質レベルの分析を行った。RIPAバッファー(GE)中の回収サンプルを、ホモジナイザー(IKA)を使用してホモジナイズし、各サンプルからのタンパク質を得た。全タンパク質抽出物15μgを12% SDS-PAGEゲルにローディングし、120Vで電気泳動した。電気泳動後、300mAで1時間にわたり、メタノール(Merck)で既に活性化されたPVDF膜(Bio-rad)にタンパク質を転写した。該膜を5% 脱脂乳(Seoul Milk)で室温で1時間ブロッキングし、ついで抗チロシナーゼ抗体(Santa Cruz)および抗β-アクチン抗体(Santa Cruz)を含有する5% 脱脂乳中、4℃で一晩インキュベートした。ついで該膜を1×TBSTで10分間、3回洗浄し、HRP結合二次抗体と共に、5% 脱脂乳中、室温で1時間インキュベートした。該膜を1×TBSTで10分間洗浄し、1×ECL(Thermo)で1分間処理した。ついでChemidoc装置(Bio-rad)を使用して、チロシナーゼおよびβ-アクチンバンドをイメージングした。図14eに示されているとおり、チロシナーゼタンパク質の強力なノックダウンがcp-asiTYR#4-1処理再構築皮膚モデルサンプルにおいて観察された。
【0133】
メラニン含量を試験するために、サンプルを第14日に回収し、RIPAバッファー(GE)で細胞溶解し、13000rpmで遠心分離した。得られたペレットを100μLの1N NaOH(10% DMSO含有)に85℃で15分間にわたり溶解し、光吸収およびメラニン産生を測定した。図14(f)に示されているとおり、cp-asiTYR#4-1処理は、処理された再構築皮膚モデルサンプルにおけるメラニンレベルを低下させた。
【0134】
文献の援用
本明細書中に挙げられている全ての刊行物、特許および特許出願を、各個の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別に示されている場合と同様に、それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする。矛盾する場合には、本明細書における定義を含む本出願が優先する。
【0135】
均等物
当業者は、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多数の均等物を認識し、または通常の実験のみを行ってそれらを確認しうるであろう。そのような均等物も以下の特許請求の範囲に含まれると意図される。
本発明は以下の態様も提供する。
[1] チロシナーゼmRNA配列に対する配列相補性を有する少なくとも19ヌクレオチド(nt)長のアンチセンス鎖と、アンチセンス鎖に対する配列相補性を有する15~17nt長のセンス鎖とを含むRNA複合体であって、アンチセンス鎖およびセンス鎖が複合体を形成しており、アンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖の3'末端が平滑末端を形成している、RNA複合体。
[2] アンチセンス鎖が19~21nt長である、上記[1]記載のRNA複合体。
[3] アンチセンス鎖が19nt長である、上記[1]記載のRNA複合体。
[4] アンチセンス鎖が20nt長である、上記[1]記載のRNA複合体。
[5] アンチセンス鎖が21nt長である、上記[1]記載のRNA複合体。
[6] アンチセンス鎖が少なくとも24nt長である、上記[1]記載のRNA複合体。
[7] アンチセンス鎖が24~121nt長である、上記[6]記載のRNA複合体。
[8] アンチセンス鎖が31nt長である、上記[1]記載のRNA複合体。
[9] センス鎖が15nt長である、上記[1]~[8]のいずれか記載のRNA複合体。
[10] センス鎖が16nt長である、上記[1]~[8]のいずれか記載のRNA複合体。
[11] センス鎖が17nt長である、上記[1]~[8]のいずれか記載のRNA複合体。
[12] アンチセンス鎖が、表1、表2、表4および表5に列挙されているアンチセンス鎖配列から選択される配列を有する、上記[1]および[9]~[11]のいずれか記載のRNA複合体。
[13] センス鎖が、表1、表2、表4、表5および表6に列挙されているセンス鎖配列から選択される配列を有する、上記[1]~[8]および上記[12]のいずれか記載のRNA複合体。
[14] センス鎖が配列番号7の配列を有し、アンチセンス鎖が配列番号8の配列を有する、上記[1]記載のRNA複合体。
[15] センス鎖が配列番号17の配列を有し、アンチセンス鎖が配列番号18の配列を有する、上記[1]記載のRNA複合体。
[16] センス鎖が配列番号19の配列を有し、アンチセンス鎖が配列番号20の配列を有する、上記[1]記載のRNA複合体。
[17] センス鎖が配列番号33の配列を有し、アンチセンス鎖が配列番号34の配列を有する、上記[1]記載のRNA複合体。
[18] センス鎖が配列番号87の配列を有し、アンチセンス鎖が配列番号88の配列を有する、上記[1]記載のRNA複合体。
[19] センス鎖が配列番号89の配列を有し、アンチセンス鎖が配列番号90の配列を有する、上記[1]記載のRNA複合体。
[20] センス鎖が配列番号125の配列を有し、アンチセンス鎖が配列番号126の配列を有する、上記[1]記載のRNA複合体。
[21] RNA複合体が細胞によるチロシナーゼ発現を抑制できる、上記[1]~[20]のいずれか記載のRNA複合体。
[22] 細胞がA375細胞、MNT-1細胞またはメラノサイトである、上記[21]記載のRNA複合体。
[23] 細胞がメラノサイトである、上記[22]記載のRNA複合体。
[24] RNA複合体が細胞によるメラニン産生を抑制できる、上記[1]~[23]のいずれか記載のRNA複合体。
[25] 細胞がMNT-1細胞またはメラノサイトである、上記[24]記載のRNA複合体。
[26] RNA複合体が化学修飾を含む、上記[1]~[25]のいずれか記載のRNA複合体。
[27] RNA修飾が2'-O-メチル化ヌクレオシド、ホスホロチオアート結合またはコレステロール部分である、上記[26]記載のRNA複合体。
[28] RNA複合体がコレステロール部分を含む、上記[27]記載のRNA複合体。
[29] コレステロール部分がセンス鎖の3'末端に結合している、上記[28]記載のRNA複合体。
[30] RNA複合体が2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、上記[27]~[29]のいずれか記載のRNA複合体。
[31] 2'-O-メチル化ヌクレオシドがセンス鎖の3'末端に位置する、上記[30]記載のRNA複合体。
[32] センス鎖の3'末端領域が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、上記[30]記載のRNA複合体。
[33] 2'-O-メチル化ヌクレオシドがアンチセンス鎖の3'末端に位置する、上記[30]記載のRNA複合体。
[34] アンチセンス鎖の3'末端領域が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、上記[30]記載のRNA複合体。
[35] 2'-O-メチル化ヌクレオシドがセンス鎖の3'末端およびアンチセンス鎖の3'末端に位置する、上記[30]記載のRNA複合体。
[36] センス鎖の3'末端領域が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含み、アンチセンス鎖の3'末端領域が複数の2'-O-メチル化ヌクレオシドを含む、上記[30]記載のRNA複合体。
[37] RNA複合体がホスホロチオアート結合を含む、上記[27]~[36]のいずれか記載のRNA複合体。
[38] RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の少なくとも25%がホスホロチオアート結合である、上記[37]記載のRNA複合体。
[39] RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の少なくとも50%がホスホロチオアート結合である、上記[37]記載のRNA複合体。
[40] RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の少なくとも75%がホスホロチオアート結合である、上記[37]記載のRNA複合体。
[41] RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の全てがホスホロチオアート結合である、上記[37]記載のRNA複合体。
[42] RNA複合体のアンチセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の少なくとも25%がホスホロチオアート結合である、上記[38]~[41]のいずれか記載のRNA複合体。
[43] RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の少なくとも50%がホスホロチオアート結合である、上記[38]~[41]のいずれか記載のRNA複合体。
[44] RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の少なくとも75%がホスホロチオアート結合である、上記[38]~[41]のいずれか記載のRNA複合体。
[45] RNA複合体のセンス鎖におけるリボヌクレオチド間の結合の全てがホスホロチオアート結合である、上記[38]~[41]のいずれか記載のRNA複合体。
[46] RNA複合体が、表2、表4または表5に列挙されている修飾RNA複合体である、上記[26]記載のRNA複合体。
[47] RNA複合体が送達ビヒクルの非存在下で細胞の細胞膜を透過できる、上記[26]~[46]のいずれか記載のRNA複合体。
[48] 細胞がA375細胞、MNT-1細胞またはメラノサイトである、上記[47]記載のRNA複合体。
[49] RNA複合体が細胞毒性ではない、上記[1]~[48]のいずれか記載のRNA複合体。
[50] 上記[1]~[49]のいずれか記載のRNA複合体と細胞を接触させることを含む、細胞によるチロシナーゼ発現の抑制方法。
[51] 細胞がメラノサイトである、上記[50]記載の方法。
[52] 細胞がヒト対象の皮膚に存在する、上記[50]または[51]記載の方法。
[53] 上記[1]~[49]のいずれか記載のRNA複合体と細胞を接触させることを含む、細胞によるメラニン産生の抑制方法。
[54] 細胞がメラノサイトである、上記[53]記載の方法。
[55] 細胞がヒト対象の皮膚に存在する、上記[53]または[54]記載の方法。
[56] 上記[1]~[49]のいずれかのRNA複合体を対象に投与することを含む、対象の皮膚におけるメラニン産生を低下させる方法。
[57] 対象が、過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害を有する、上記[56]記載の方法。
[58] 皮膚色素沈着障害が黒皮症または加齢斑である、上記[57]記載の方法。
[59] RNA複合体を対象の皮膚に局所投与することを含む、上記[56]~[58]のいずれか記載の方法。
[60] 対象がRNA複合体を自己投与する、上記[56]~[59]のいずれか記載の方法。
[61] 第2の皮膚美白剤を対象に投与することを更に含む、上記[56]~[60]のいずれか記載の方法。
[62] 第2の皮膚美白剤がヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、コウジ酸、アゼライン酸およびトラネキサム酸から選択される、上記[61]記載の方法。
[63] 上記[1]~[49]のいずれか記載のRNA複合体を対象に投与することを含む、対象における過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害の治療方法。
[64] 皮膚色素沈着障害が黒皮症または加齢斑である、上記[63]記載の方法。
[65] RNA複合体を対象の皮膚に局所投与することを含む、上記[63]~[64]のいずれか記載の方法。
[66] 対象がRNA複合体を自己投与する、上記[63]~[65]のいずれか記載の方法。
[67] 第2の皮膚美白剤を対象に投与することを更に含む、上記[63]~[66]のいずれか記載の方法。
[68] 第2の皮膚美白剤がヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、コウジ酸、アゼライン酸およびトラネキサム酸から選択される、上記[67]記載の方法。
[69] 上記[1]~[49]のいずれか記載のRNA複合体と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
[70] 該組成物が局所送達用に製剤化されている、上記[69]記載の医薬組成物。
[71] 医薬組成物がクリーム剤またはローション剤である、上記[70]記載の医薬組成物。
[72] 医薬組成物が第2の皮膚美白剤を更に含む、上記[69]~[71]のいずれか記載の医薬組成物。
[73] 第2の皮膚美白剤がヒドロキノン、アルブチン、トレチノイン、コウジ酸、アゼライン酸およびトラネキサム酸から選択される、上記[72]記載の医薬組成物。
[74] 上記[69]~[73]のいずれか記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象の皮膚におけるメラニン産生を低下させる方法。
[75] 対象が、過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害を有する、上記[74]記載の方法。
[76] 皮膚色素沈着障害が黒皮症または加齢斑である、上記[75]記載の方法。
[77] 医薬組成物を対象の皮膚に局所投与することを含む、上記[74]~[76]のいずれか記載の方法。
[78] 対象が医薬組成物を自己投与する、上記[74]~[77]のいずれか記載の方法。
[79] 上記[69]~[73]のいずれか記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における過剰なメラニン産生に関連した皮膚色素沈着障害の治療方法。
[80] 皮膚色素沈着障害が黒皮症または加齢斑である、上記[79]記載の方法。
[81] 医薬組成物を対象の皮膚に局所投与することを含む、上記[79]~[80]のいずれか記載の方法。
[82] 対象が医薬組成物を自己投与する、上記[79]~[81]のいずれか記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14
【配列表】
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