(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】金属被覆異形樹脂粒子及びその製造方法、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜及びその製造方法、粒子群、並びに粒子配列膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20200101AFI20220221BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
C08J7/04 Z
C08J3/12 Z
(21)【出願番号】P 2018509709
(86)(22)【出願日】2017-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2017013851
(87)【国際公開番号】W WO2017171087
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2019-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2016071706
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載日 2016年3月1日 ウェブサイトのアドレス http://www.jps.or.jp/ http://www.jps.or.jp/activities/meetings/index.php http://jps2016s.gakkai-web.net/ (2)開催日 2016年3月19日から2016年3月22日 集会名、開催場所 一般社団法人日本物理学会 第71回年次大会(2016年) 東北学院大学 泉キャンパス(仙台市泉区天神沢二丁目1-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 良祐
(72)【発明者】
【氏名】徳永 英司
(72)【発明者】
【氏名】相沢 創
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 啓介
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010143(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132533(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04
C08J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形樹脂粒子の表面の
1%以上100%未満が金属で被覆されている、金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項2】
アスペクト比が1.2以上である、請求項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項3】
前記異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径が、0.1~300μmである、請求項1又は2に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項4】
投影面積が最大となる方向から見たときの前記異形樹脂粒子の外形が円形であり、投影面積が最小となる方向から見たときの前記異形樹脂粒子の外形が非円形である、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項5】
(1)複数の平面部、(2)平面部及び曲面部、又は(3)曲面部を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項6】
金属で被覆された面と金属で被覆されていない面とを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項7】
前記異形樹脂粒子が、半球面部と平面部とを有する半球形状である、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項8】
前記半球面部の表面の少なくとも一部が金属で被覆されている、請求項7に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項9】
前記平面部の表面の少なくとも一部が金属で被覆されている、請求項7又は8に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項10】
前記異形樹脂粒子が、曲面部を有する両凸レンズ形状、又は扁平形状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項11】
前記両凸レンズ形状の片側凸レンズ部のみが被覆されている、又は前記扁平形状の片側部のみが被覆されている、請求項10に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項12】
走光性を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子が、平面状に規則的に配列している、配列膜
(但し、配列膜の表面が全て金属で被覆されている場合を除く)。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群であって、個数平均粒子径の変動係数が30%以下である、粒子群。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群であって、アスペクト比の平均値が1.2以上である、粒子群。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群であって、アスペクト比の変動係数が30%以下である、粒子群。
【請求項17】
異形樹脂粒子と、当該異形樹脂粒子を分散可能であり、水よりも低比重であり、かつ水と非相溶である有機溶剤との混合物を調製する工程、
前記混合物を水に乳化させて乳化液を得る工程、及び
前記乳化液を静置して、前記有機溶剤を揮発させると共に気液界面に前記異形樹脂粒子の粒子配列膜を形成する工程、
を備える、粒子配列膜の製造方法。
【請求項18】
前記異形樹脂粒子が、半球面部と平面部とを有する半球形状である、請求項17に記載の粒子配列膜の製造方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の製造方法により得られた粒子配列膜を取り出す工程、及び 前記粒子配列膜の一部を金属で被覆する工程、
を備える、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の製造方法により得られた金属被覆異形樹脂粒子の配列膜から金属被覆異形樹脂粒子を取り出す工程を備える、金属被覆異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項21】
請求項1~12のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子を含む、分散体。
【請求項22】
導電性を有する、請求項21に記載の分散体。
【請求項23】
請求項1~12のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子を含む、樹脂組成物。
【請求項24】
請求項1~12のいずれか1項に記載の金属被覆異形樹脂粒子を含む、外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属被覆異形樹脂粒子及びその製造方法、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜及びその製造方法、粒子群、並びに粒子配列膜の製造方法に関する。また、本発明は、金属被覆異形樹脂粒子を含む分散体、樹脂組成物及び外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
球状粒子を部分的に金属で被覆した、金属-非金属ヤヌス粒子は、従来から公知の等方的な粒子とは異なる動きをすることが注目され、多方面で研究されている。
例えば、特許文献1には、球状の微粒子上に帽子状に、金、銀、白金、アルミニウム、銅等の金属層が部分的に形成された金属-非金属ヤヌス粒子が記載されている。
また、非特許文献1には、ガラス基板上に球状のシリカ粒子の単層を形成し、そこに金属(主に金)を蒸着することで、半球面が金属コートされた金属-非金属ヤヌス粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】科学研究費助成事業 研究成果報告書 「非熱的遥動力による新しいコロイドメゾ構造の創成」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に記載の金属-非金属ヤヌス粒子は何れも球状粒子であり、非真球状の金属-非金属ヤヌス粒子はこれまで報告されていない。
また、形状が真球とは異なる異形粒子(非真球状の粒子)を制御することは難しく、当該異形粒子の表面の一部に金属を被覆した金属-非金属ヤヌス粒子を作成することは困難である。
そこで、本発明の目的は、異形樹脂粒子の表面の一部が金属で被覆されている金属被覆異形樹脂粒子及びその簡便な製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜及びその製造方法、粒子群、並びに粒子配列膜の簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、異形樹脂粒子と特定の有機溶剤との混合物を、水に乳化させて乳化液を得て、次いで当該有機溶媒を揮発させることで異形樹脂粒子の粒子配列膜を形成し、かつ粒子配列膜の一部を金属で被覆した後に、配列膜より異形樹脂粒子を取り出すことにより、当該異形樹脂粒子の表面の一部が金属で被覆された金属被覆異形樹脂粒子が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、完成させたものである。
【0007】
即ち、本発明は以下の項に記載の発明を包含する。
【0008】
項1.異形樹脂粒子の表面の一部が金属で被覆されている、金属被覆異形樹脂粒子。
【0009】
項2.アスペクト比が1.2以上である、項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0010】
項3.投影面積が最大となる方向から見たときの前記異形樹脂粒子の外形が円形であり、投影面積が最小となる方向から見たときの前記異形樹脂粒子の外形が非円形である、項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0011】
項4.(1)複数の平面部、(2)平面部及び曲面部、又は(3)曲面部を有する、項1記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0012】
項5.金属で被覆された面と金属で被覆されていない面とを有する、項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0013】
項6.異形樹脂粒子が、半球面部と平面部とを有する半球形状である、項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0014】
項7.半球面部の表面の少なくとも一部が金属で被覆されている、項6に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0015】
項8.平面部の表面の少なくとも一部が金属で被覆されている、項6に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0016】
項9.前記異形樹脂粒子が、曲面部を有する両凸レンズ形状、又は扁平形状である、項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0017】
項10.前記両凸レンズ形状の片側凸レンズ部のみが被覆されている、又は前記扁平形状の片側部のみが被覆されている、項9に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0018】
項11.走光性を有する、項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子。
【0019】
項12.項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子が、平面状に規則的に配列している、配列膜。
【0020】
項13.項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群であって、個数平均粒子径の変動係数が30%以下である、粒子群。
【0021】
項14.項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群であって、アスペクト比の平均値が1.2以上である、粒子群。
【0022】
項15.項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群であって、アスペクト比の変動係数が30%以下である、粒子群。
【0023】
項16.異形樹脂粒子と、当該異形樹脂粒子を分散可能であり、水よりも低比重であり、かつ水と非相溶である有機溶剤との混合物を調製する工程、
混合物を水に乳化させて乳化液を得る工程、及び
乳化液を静置して、有機溶剤を揮発させると共に気液界面に異形樹脂粒子の粒子配列膜を形成する工程、
を備える、粒子配列膜の製造方法。
【0024】
項17.異形樹脂粒子が、半球面部と平面部とを有する半球形状である、項16に記載の粒子配列膜の製造方法。
【0025】
項18.項16又は17に記載の製造方法により得られた粒子配列膜を取り出す工程、及び
粒子配列膜の一部を金属で被覆する工程、
を備える、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜の製造方法。
【0026】
項19.項18に記載の製造方法により得られた金属被覆異形樹脂粒子の配列膜から金属被覆異形樹脂粒子を取り出す工程を備える、金属被覆異形樹脂粒子の製造方法。
【0027】
項20.項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子を含む、分散体。
【0028】
項21.導電性を有する、項20に記載の分散体。
【0029】
項22.項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子を含む、樹脂組成物。
【0030】
項23.項1に記載の金属被覆異形樹脂粒子を含む、外用剤。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、真球状の金属被覆樹脂粒子と比較して、光学用途に用いる場合には、光拡散特性、反射特性等の特性を向上できる非真球状の金属被覆異形樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(a)~(e)は、異形樹脂粒子の概略説明図である。
【
図2】実施例(金属被覆異形樹脂粒子の製造例1)で得られた異形樹脂粒子の粒子配列膜をSEMで撮像することにより得られたSEM写真である。
【
図3】実施例(金属被覆異形樹脂粒子の製造例2)で得られた異形樹脂粒子の粒子配列膜をSEMで撮像することにより得られたSEM写真である。
【
図4】実施例(金属被覆異形樹脂粒子の製造例3)で得られた異形樹脂粒子の粒子配列膜をSEMで撮像することにより得られたSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0034】
本発明は、金属被覆異形樹脂粒子及びその製造方法、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜及びその製造方法、粒子群、並びに粒子配列膜の製造方法を包含する。
【0035】
本発明では、後述する製造方法に従って、異形樹脂粒子の粒子配列膜を製造した後、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜を製造し、次いで当該金属被覆異形樹脂粒子の配列膜から金属被覆異形樹脂粒子を取り出すことにより、金属被覆異形樹脂粒子を簡便に製造することができる。
【0036】
以下では、粒子配列膜(異形樹脂粒子の配列膜)の製造方法及び金属被覆異形樹脂粒子の配列膜の製造方法について先に説明し、その後に、金属被覆異形樹脂粒子について説明する。
【0037】
1.粒子配列膜の製造方法
本発明の粒子配列膜の製造方法は、
(1)異形樹脂粒子と、当該異形樹脂粒子を分散可能であり、水よりも低比重であり、かつ水と非相溶である有機溶剤との混合物を調製する工程1、
(2)当該混合物を水に乳化させて乳化液を得る工程2、及び
(3)当該乳化液を静置して、当該有機溶剤を揮発させると共に気液界面に異形樹脂粒子の粒子配列膜を形成する工程3を備える、製造方法である。以下、各工程について説明する。
【0038】
(工程1)
工程1は、異形樹脂粒子と、当該異形樹脂粒子を分散可能であり、水よりも低比重であり、かつ水と非相溶である有機溶剤との混合物を調製する工程である。
【0039】
(異形樹脂粒子)
異形樹脂粒子は、投影面積が最大となる方向から見たときの当該異形樹脂粒子の外形が円形であり、投影面積が最小となる方向から見たときの当該異形樹脂粒子の外形が非円形であることが好ましい。
【0040】
上記異形樹脂粒子の形状を
図1(a)~(e)を用いて説明する。
図1(a)は、断面馬蹄形状の異形樹脂粒子の投影図であり、上図が投影面積が最大となる図であり、下図が最小となる図である。投影面積が最大となる図の粒子の外形は円形となる。また、投影面積が最小となる図の粒子の外形は切り欠き部の投影図に対応する凹部と扇形とからなる形状となる。ここで、凹部は、異形樹脂粒子の粒子径Aの0.1~0.9倍の深さBを有し、かつ0.1~0.95倍の開口部の幅Cを有している。
【0041】
図1(b)は、キノコ形状の異形樹脂粒子の投影面積が最小となる図である。この図では、異形樹脂粒子は傘部と軸部とからなる。ここで、軸部の底の幅D1が、異形樹脂粒子の粒子径Aの0.1~0.8倍であり、軸部の中間部の幅D2が、異形樹脂粒子の粒子径Aの0.2~0.9倍であり、軸長方向の高さEが、異形樹脂粒子の粒子径Aの0.2~1.5倍である。
【0042】
図1(c)は、半球形状の異形樹脂粒子の投影図であり、上図が投影面積が最大となる図であり、下図が最小となる図である。ここで、投影面積が最小となる図において、異形樹脂粒子の高さFが、異形樹脂粒子の粒子径Aの0.2~0.8倍である。
【0043】
図1(d)は、碁石形状の異形樹脂粒子の投影図であり、上図が投影面積が最大となる図であり、下図が最小となる図である。ここで、投影面積が最小となる図において、凸レンズの高さH及びIが、異形樹脂粒子の粒子径Aの0.2~0.8倍である。
【0044】
図1(e)は、扁平形状の異形樹脂粒子の投影図であり、上図が投影面積が最大となる図であり、下図が最小となる図であり。ここで、投影面積が最小となる図において、扁平粒子の高さJが、異形樹脂粒子の粒子径Aの0.2~0.8倍である。
【0045】
図1(a)~(e)において、粒子径Aは、0.5~30μmの範囲とできる。更に、異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は、0.5~30μmの範囲とできる。
図1(a)~(e)に記載の異形樹脂粒子は、後述する異形樹脂粒子の製造方法によって得ることができる。なお、
図1(a)~(e)は、異形樹脂粒子の形状の説明のための理想的な形状を示す図であり、実際の異形樹脂粒子には若干の膨らみやへこみが存在している異形樹脂粒子も本発明に使用することができる。
【0046】
異形樹脂粒子は非真球形状であり、(1)複数の平面部、(2)平面部及び曲面部、又は(3)曲面部を有することが好ましい。
【0047】
異形樹脂粒子が、(1)複数の平面部を有する場合とは、例えば、三角錐形状、立方体形状、直方体形状から構成される場合をいう。本明細書において、異形樹脂粒子が複数の平面部のみからなる場合も含まれる。
異形樹脂粒子が、(2)平面部及び曲面部を有する場合とは、例えば、半球形状、円板形状、円柱形状から構成される場合をいう。本明細書において、異形樹脂粒子が平面部及び曲面部のみからなる場合も含まれる。
異形樹脂粒子が、(3)曲面部を有する場合とは、例えば、碁石形状、扁平形状、赤血球形状、両凸レンズ形状、凹凸レンズ形状から構成される場合をいう。本明細書において、異形樹脂粒子が曲面部のみからなる場合も含まれる。
【0048】
異形樹脂粒子の形状が上記(1)~(3)の構成によれば、異形度の高い形状であるため、本発明の金属被覆異形樹脂粒子を光学用途に用いる場合には、真球状の金属被覆樹脂粒子と比較して、光拡散特性、反射特性異方性等の特性をさらに向上させることができる。
【0049】
異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は、0.1~300μmであることが好ましく、0.5~100μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
【0050】
異形樹脂粒子のアスペクト比は、前記光拡散特性、反射特性等の観点から、1.2以上であることが好ましく、1.2~5.0であることがより好ましく、1.4~3.5であることが特に好ましい。
【0051】
本明細書において、異形樹脂粒子のアスペクト比とは、各異形樹脂粒子の長径と短径との比(異形樹脂粒子の長径/異形樹脂粒子の短径)を意味する。
【0052】
異形樹脂粒子の製造方法は限定的ではないが、例えば、種粒子に、水性乳化液中の重合性ビニル系単量体を吸収させ、吸収させた重合性ビニル系単量体を重合させることにより好適に製造することができる。
【0053】
以下、この製造法を代表例として説明する。
【0054】
(異形樹脂粒子の製造用の原料及び異形樹脂粒子の製造法)
以下、異形樹脂粒子の製造用の原料及び異形樹脂粒子の製造法を説明する。
【0055】
<種粒子>
種粒子は、炭素数5以下のアルキル基をエステル部に少なくとも含む(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体に由来する樹脂粒子であることが好ましい。
樹脂粒子を形成するための単量体中には、炭素数3以上5以下のアルキル基をエステル部に含む(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含むことが好ましい。
このような単量体に由来する樹脂粒子は、非真球状(異形)粒子となり易い。
【0056】
炭素数3以上5以下のアルキル基としては、例えば、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル等の直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル等の分岐アルキル基が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル等の単量体が挙げられる。これらの単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、分岐アルキル基(例えば、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル)を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いた樹脂粒子は、非真球状(異形)樹脂粒子となり易いため好ましい。
【0057】
種粒子の重量平均分子量は、異形樹脂粒子を作製する観点から、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定で、15万~100万の範囲であり、好ましくは、20万~80万の範囲である。
なお、種粒子の大きさ及び形状は特に限定されない。種粒子には、通常0.1~5μmの粒径の球状粒子が使用される。種粒子の粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置で測定することができる。
【0058】
<種粒子の製造方法>
種粒子の製造方法は特に限定されず、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合、懸濁重合等の公知の方法を用いることができる。製造方法は、種粒子の粒子径均一性及び製造方法の簡便性を考慮すると、乳化重合、ソープフリー乳化重合及びシード重合法が好ましい。
重合は、分子量調整剤の存在下で行ってもよい。分子量調整剤としては、α-メチルスチレンダイマー;n-オクチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;t-テルピネン、ジペンテン等のテルペン類;ハロゲン化炭化水素類(例えば、クロロホルム、四塩化炭素)のような連鎖移動剤を使用できる。分子量調整剤は、種粒子製造用の単量体100重量部対して0.1~10重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0059】
<重合性ビニル系単量体>
重合性ビニル系単量体としては、架橋性単量体が5~50重量%含まれている単量体であれば特に限定されない。架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等の重合性ビニル基を1分子中に2つ以上有する多官能性単量体が用いられる。架橋性単量体の使用量は、異形樹脂粒子を作製する観点から、重合性ビニル単量体全量に対して、5~50重量%であることが好ましく、10~40重量%であることがさらに好ましい。
【0060】
必要に応じて、重合性ビニル系単量体は、他の単量体を含んでいてもよい。他の単量体としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;酢酸ビニル;アクリロニトリル;スチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体等が挙げられる。
これらの中でも、非真球状(異形)の粒子が得られやすいことから、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0061】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、下記式(1)の化合物が挙げられる。
【0062】
【0063】
[式中、R1はH又はCH3であり、R2及びR3は異なってC2H4、C3H6,C4H8、C5H10から選択されるアルキレン基であり、mは0~50、nは0~50(但しmとnは同時に0にならない)の整数であり、R4はH又はCH3である。]
【0064】
上記式(1)の単量体において、重合安定性の観点から、m及びnの範囲は0~30であることが好ましく、0~15あることがより好ましい。
【0065】
アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、市販品を利用できる。市販品として例えば、日油社製のブレンマーシリーズが挙げられる。更にブレンマーシリーズの中で、ブレンマー50PEP-300(R1はCH3であり、R2はC2H5、R3はC3H6、m及びnは平均してm=3.5及びn=2.5の混合物、R4はHである)、ブレンマー70PEP-350B(上記式(1)において、R1はCH3であり、R2はC2H5、R3はC3H6、m及びnは平均してm=3.5及びn=2.5の混合物、R4はHである)、ブレンマーPP-1000(上記式(1)において、R1はCH3であり、R3はC3H6、mは0、nは平均して4~6の混合物、R4はHである)、ブレンマーPME-400(R1はCH3であり、R2はC2H5、mは平均して9の混合物、nは0、R4はCH3である)等が好適である。
【0066】
上記アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、重合安定性の観点から、重合性ビニル系単量体の全量に対し、1~40重量%が好ましく、3~40重量%がより好ましく、更に好ましくは5~30重量%、特に好ましくは10~20重量%である。
【0067】
<異形樹脂粒子の製造方法>
異形樹脂粒子の製造方法は、種粒子に、水性乳化液中の重合性ビニル系単量体を吸収させ、吸収させた重合性ビニル系単量体を重合させる、いわゆるシード重合法である。以下にシード重合法の一般的な方法を述べる。また、原料である樹脂を粉砕して得られた樹脂粒子を球形化し、その後、球形化した粒子を物理的に力を加える方法によって異形樹脂粒子を製造することもできるが、これらの方法に限定されるものではない。
まず、重合性ビニル系単量体と水性媒体とから構成される水性乳化液に種粒子を添加する。
水性媒体としては、水、水と親水性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0068】
水性媒体には、界面活性剤が含まれている。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系のもののいずれをも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0069】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を用いることができる。
両性イオン系界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル系、亜リン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中でも、重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0070】
水性乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、重合性ビニル系単量体を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により分散させることで、水性乳化液を得ることができる。重合性ビニル系単量体は、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、重合性ビニル系単量体に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた水性乳化液中の重合性ビニル系単量体の液滴の粒子径は、樹脂粒子よりも小さい方が、重合性ビニル系単量体が樹脂粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
【0071】
種粒子は、水性乳化液に直接添加してもよく、種粒子を水性分散媒体に分散させた形態(以下、種粒子分散液という)で添加してもよい。
種粒子の水性乳化液への添加後、種粒子の中へ重合性ビニル系単量体を吸収させる。この吸収は、通常、種粒子添加後の水性乳化液を、室温(約20℃)で1~12時間撹拌することで行うことができる。また、水性乳化液を30~50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
【0072】
種粒子は、重合性ビニル系単量体の吸収により膨潤する。重合性ビニル系単量体と種粒子との混合比率は、種粒子1重量部に対して、重合性ビニル系単量体5~150重量部の範囲であることが好ましく、10~120重量部の範囲であることがより好ましい。単量体の混合比率が小さくなると、重合による粒子径の増加が小さくなることにより、生産性が低下し、大きくなると完全に種粒子に吸収されず、水性媒体中で独自に懸濁重合し異常粒子を生成することがある。なお、吸収の終了は光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定できる。
【0073】
重合開始剤を必要に応じて添加できる。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、重合性ビニル系単量体100重量部に対して、0.1~3重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0074】
次に、樹脂粒子に吸収させた重合性ビニル系単量体を重合させることで、異形樹脂粒子が得られる。
重合温度は、重合性ビニル系単量体、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25~110℃が好ましく、より好ましくは50~100℃である。重合反応は、樹脂粒子に単量体、任意に重合開始剤が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。重合完了後、必要に応じて異形樹脂粒子は、遠心分離を行って水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥、単離される。
【0075】
上記重合工程において、異形樹脂粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を添加してもよい。
高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース化合物(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等である。またトリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、重合性ビニル系単量体100重量部に対して1~10重量部が好ましい。
また、水系での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩化合物、亜硫酸塩化合物、ハイドロキノン化合物、アスコルビン酸化合物、水溶性のビタミンB化合物、クエン化合物、ポリフェノール化合物等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
【0076】
(有機溶剤)
工程1で使用する有機溶剤としては、異形樹脂粒子を分散可能であり、水よりも低比重であり、かつ水と非相溶であるものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロプレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。これらの中でも、異形樹脂粒子を分散させやすい点でトルエンが好ましい。
【0077】
(水)
上記水としては、工程2で用いる水を意味し、例えば、イオン交換水を用いることができる。
【0078】
本明細書において分散可能とは、異形樹脂粒子と有機溶剤とを混合したときに、分散粒子が単分子で分散している状態であり、分散粒子が相互に溶解していないことを意味する。
本明細書において非相溶とは、水と有機溶剤とを混合したときに、分子レベルで相互に溶解しないことを意味する。
本明細書において低比重とは、有機溶剤の比重が水の比重よりも小さいことを意味する。
【0079】
(工程2)
工程2は、工程1で調製した混合物を水に乳化させて乳化液を得る工程である。
【0080】
工程1で得られた異形樹脂粒子と有機溶剤との混合物を水に乳化分散させることにより、混合物が水に乳化している乳化液を得ることができる。
乳化分散の方法としては、例えば、超音波照射により乳化する方法、ホモジナイザー、ナノマイザー等の微細乳化機により乳化する方法等が挙げられる。
【0081】
(工程3)
工程3は、工程2で得られた乳化液を静置して、有機溶剤を揮発させると共に気液界面に異形樹脂粒子の粒子配列膜を形成する工程である。
【0082】
工程2で得られた乳化液を5~12時間静置すると、有機溶剤の比重が水よりも小さいために、異形樹脂粒子が分散している有機溶剤と水との分離が起こり、有機溶剤相が水相よりも上に存在した二相分離の状態が形成される。その後、有機溶剤相の有機溶剤が揮発することにより、気液界面に異形樹脂粒子の粒子配列膜が形成される。
【0083】
例えば、異形樹脂粒子の形状が、半球面部と平面部とを有する半球形状である場合には、気相と接する表面積が小さくなるように異形樹脂粒子の半球面部が水相面に接し、且つ、異形樹脂粒子の平面部が気相面に対向するように異形樹脂粒子が配列する。このような構成をとることにより、半球形状の異形樹脂粒子が平面状に規則的に、即ち、向きを揃えて二次元的に配列することになる。例えば、
図2は、異形樹脂粒子の配列膜のSEM写真であり、異形樹脂粒子が向きを揃えて二次元的に配列していることがわかる。
また、異形樹脂粒子の形状が、曲面部を有する両凸レンズ形状である場合にも、気相と接する表面積が小さくなるように、両凸レンズのそれぞれの凸レンズ面が水相面、気相面に対向するように異形樹脂粒子が配列する。このような構成をとることにより、両凸レンズ形状の異形樹脂粒子が平面的に規則的に、二次元的に配列することになる。扁平形状の場合も同様である。
【0084】
2.金属被覆異形樹脂粒子の配列膜の製造方法
本発明の金属被覆異形樹脂粒子の配列膜の製造方法は、
(4)異形樹脂粒子の粒子配列膜の製造方法により得られた異形樹脂粒子の粒子配列膜を取り出す工程4、及び
(5)取り出した異形樹脂粒子の粒子配列膜の一部を金属で被覆する工程5をしている。
以下、各工程について説明する。
【0085】
(工程4)
工程4は、工程3で得られた異形樹脂粒子の粒子配列膜を取り出す工程である。
【0086】
基材を工程3で得られた気液界面に粒子配列膜を有する液中に入れ、気液界面に存在する異形樹脂粒子の粒子配列膜を、基材上に移しとることにより、粒子配列膜を取り出すことができる。
【0087】
基材としては、各種の樹脂からなるフィルム等の透明フィルム基材;各種の樹脂からなる透明樹脂板、ガラス板等のような、透明フィルム基材以外の光透過基材;アルミ板等を使用することができる。
【0088】
上記樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0089】
基材上に移しとる手段としては、例えば、基材に次亜塩素酸ナトリウム等により表面酸化処理等の親水化処理をした後、基材を液面に対して垂直に差し込み、引き揚げることにより、基材上に異形樹脂粒子の粒子配列膜を転写する手段、LB膜作成装置等が挙げられる。
【0090】
(工程5)
工程5は、工程4で取り出した異形樹脂粒子の粒子配列膜の一部を金属で被覆する工程である。
【0091】
異形樹脂粒子の粒子配列膜の一部を被覆する際に用いられる金属としては、例えば、金、銀、白金、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、ストロンチウム、スズ等が挙げられる。これらの中でも、光学用途に用いる場合の光拡散特性及び反射特性の観点から、金及び銀が好ましく、可視光でのプラズモン共鳴を利用する場合には、金、銀、白金及び銅が好ましい。
【0092】
金属で被覆する方法としては、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、レーザーアブレーション、分子線エピタキシー、CVD等が挙げられる。
【0093】
異形樹脂粒子の粒子配列膜を金属で被覆した際の金属被覆の厚さは、1nm~500nmである。
【0094】
本明細書において、異形樹脂粒子の粒子配列膜の一部が金属で被覆されているとは、異形樹脂粒子の粒子配列膜が局所的に金属で被覆されていることを意味する。具体的には、異形樹脂粒子の粒子配列膜が金属で被覆された部分と金属で被覆されていない部分とが存在することを意味し、例えば、粒子配列膜(フィルム)の片面を金属で被覆することが挙げられる。
【0095】
異形樹脂粒子の粒子配列膜の一部が金属で被覆されている状態での用途は限定的ではないが、例えば、メタマテリアルのメタ分子、非線形光学材料等として有用である。
【0096】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、平面状に規則的に配列している配列膜を形成している。例えば、複数個の金属被覆異形樹脂粒子が、基材(例えば、ガラス、PETフィルム等)上に平面状に規則的に配列している配列膜を形成することにより、光学用途に用いる場合には、光拡散性に優れる。
【0097】
3.金属被覆異形樹脂粒子の製造方法
本発明の金属被覆異形樹脂粒子の製造方法は、工程5で得られた金属被覆異形樹脂粒子の配列膜から金属被覆異形樹脂粒子を取り出すことにより、金属被覆異形樹脂粒子を得る製造方法である。
【0098】
金属被覆異形樹脂粒子の配列膜から金属被覆異形樹脂粒子を取り出す方法としては、例えば、配列膜を粒子ごとに解砕する方法、配列膜を水に分散して、超音波を照射して分離する方法等が挙げられる。
【0099】
以下、上記金属被覆異形樹脂粒子の製造方法により得られた金属被覆異形樹脂粒子について説明する。
【0100】
4.金属被覆異形樹脂粒子
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、好ましくは上記金属被覆異形樹脂粒子の製造方法により得られた金属被覆異形樹脂粒子であり、各異形樹脂粒子の表面の一部が金属で被覆されている。
【0101】
本明細書において、異形樹脂粒子の表面の一部が金属で被覆されているとは、異形樹脂粒子の表面が局所的に金属で被覆されていることを意味する。具体的には、異形樹脂粒子の表面が金属で被覆された部分と金属で被覆されていない部分とが存在することを意味する。
当該一部とは、異形樹脂粒子の表面の1%以上100%未満が金属で被覆していることを意味し、中でも、20%以上80%未満が好ましく、25%以上75%未満がより好ましい。
【0102】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子において、異形樹脂粒子の表面の一部を金属で被覆した場合に、被覆した金属の厚みによって、真球状の金属被覆異形樹脂粒子となるものは除かれる。
【0103】
次に、金属被覆異形樹脂粒子の形状について説明する。
【0104】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、投影面積が最大となる方向から見たときの異形樹脂粒子の外形が円形であり、投影面積が最小となる方向から見たときの異形樹脂粒子の外形が非円形であることが好ましい。
【0105】
上記構成の異形樹脂粒子は、投影面積が最大となる方向から見たときの異形樹脂粒子の外形が円形であり、投影面積が最小となる方向から見たときの異形樹脂粒子の外形が非円形であるので、形状異方性を有し得る。そのため、異形樹脂粒子表面の光拡散効果、反射効果等の効果は、異方性を有し得る。
【0106】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、アスペクト比が1.2以上であることが好ましい。
【0107】
本明細書において、金属被覆異形樹脂粒子のアスペクト比とは、各金属被覆異形樹脂粒子の長径と短径の比(金属被覆異形樹脂粒子の長径/金属被覆異形樹脂粒子の短径)を意味する。
【0108】
各金属被覆異形樹脂粒子のアスペクト比は、光学用途に用いる場合には光拡散特性、反射特性等の観点から、1.2以上5.0以下であることが好ましく、1.2以上3.0以下であることがより好ましく、1.2以上2.5以下であることがさらに好ましく、1.4~2.1であることが特に好ましい。これにより形状が真球、すなわちアスペクト比が1であるものと比較して、形状異方性が高くなるため光の拡散、および反射が複雑になり結果、光学材料として高い光拡散性、反射特性のものが得られる。
【0109】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、(1)複数の平面部、(2)平面部及び曲面部、又は(3)曲面部から構成される粒子形状を有することが好ましい。
【0110】
金属被覆異形樹脂粒子が、(1)複数の平面部を有する場合とは、例えば、三角錐状、立方体状、直方体状から構成される場合をいう。本明細書において、異形樹脂粒子が複数の平面部のみからなる場合も含まれる。
金属被覆異形樹脂粒子が、(2)平面部及び曲面部を有する場合とは、例えば、半球形状、円板状、円柱状から構成される場合をいう。本明細書において、異形樹脂粒子が平面部及び曲面部のみからなる場合も含まれる。
金属被覆異形樹脂粒子が、(3)曲面部を有する場合とは、例えば、碁石状、赤血球状、両凸レンズ状、凹凸レンズ状から構成される場合をいう。本明細書において、異形樹脂粒子が曲面部のみからなる場合も含まれる。
【0111】
金属被覆異形樹脂粒子の形状が上記(1)~(3)の構成によれば、複数の面から構成される規則性のある形状であるため、大きな異方性を有する。
【0112】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子が、半球面部(曲面部)と平面部とを有する半球形状であることが好ましい。また、本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子が、曲面部を有する両凸レンズ状、扁平状(扁平形状)であることが好ましい。
【0113】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、当該半球面部の表面の少なくとも一部が金属で被覆されていることが好ましい。当該一部とは、当該半球面部の表面の1%以上100%が金属で被覆していることを意味し、中でも、30%以上100%が好ましく、50%以上100%がより好ましい。
【0114】
また、本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、当該平面部の表面の少なくとも一部が金属で被覆されていることが好ましい。当該一部とは、当該平面部の表面の1%以上100%が金属で被覆していることを意味し、中でも、30%以上100%が好ましく、50%以上100%がより好ましい。
【0115】
また、本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、当該曲面部の表面の少なくとも一部が金属で被覆されていることが好ましい。当該一部とは、当該平面部の表面の1%以上100%が金属で被覆していることを意味し、中でも、30%以上100%が好ましく、50%以上100%がより好ましい。
【0116】
さらに、本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、金属が被覆されている面と金属が被覆されていない面を有するため、粒子そのものが、異方導電性、異方光学特性、異方表面特性、異方発色性、異方熱特性等の特殊な性質を有する。
【0117】
異形樹脂粒子が、(1)複数の平面部を有する場合とは、三角錐形状、立方体形状、直方体形状の平面部の一つの面のみが金属で被覆された金属被覆異形樹脂粒子が挙げられる。
異形樹脂粒子が、(2)平面部及び曲面部を有する場合とは、半球形状、円板形状、円柱形状の平面部の一つの面のみが金属で被覆された金属被覆異形樹脂粒子が挙げられる。
異形樹脂粒子が、(3)曲面部を有する場合とは、両凸レンズ形状、扁平形状、碁石形状、赤血球形状、おわん形状の粒子を粒子厚みに対して水平に二等分した際に片方の粒子表面に相当する面を金属で被覆した金属被覆異形樹脂粒子が挙げられる。
【0118】
例えば、半球面部と平面部とを有する半球形状の異形樹脂粒子において、半球面部又は平面部の表面の少なくとも一部が金属で被覆されること、あるいは曲面部を有する両凸レンズ形状の異形樹脂粒子において、凸レンズの片面の少なくとも一部が金属で被覆されることにより、以下の実施例で示すように、光拡散特性、反射特性等の特性をより向上することができる。また、扁平形状の異形樹脂粒子において、扁平形状の異形樹脂粒子の粒子厚みに対して水平に二等分した際の片方の粒子表面が金属で被覆されることにより、以下の実施例で示すように、光拡散特性、反射特性等の特性をより向上することができる。
【0119】
また、本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、走光性を有することが好ましい。本明細書において、走光性を有するとは、金属被覆異形樹脂粒子を水中に分散させて、レーザー光(例えば、405nm、75mVのレーザー光)を当てた場合に、金属被覆異形樹脂粒子が移動することを意味する。
【0120】
(金属被覆異形樹脂粒子の用途)
本発明の金属被覆異形樹脂粒子の用途は限定的ではなく、例えば、光拡散フィルム(光学シート)用等の光拡散部材用コーティング剤等として用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤;光拡散板製造用の光拡散性樹脂組成物を構成する光拡散剤;二倍波発生のための非線形光学材料、誘電率及び透磁率を制御可能なメタマテリアル材料として有用である。
【0121】
さらに、本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、以下の用途に好適に用いることができる。
【0122】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、球換算体積平均粒子径が0.1~300μmの範囲であることが好ましく、0.5~100μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。これにより、各種用途に適した粒子となる。
【0123】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、コーティング剤の添加材として用いる場合には、球換算体積平均粒子径が1~30μmの範囲内であることがより好ましい。これにより、良好な光学特性を有する光学シートを実現できる。
【0124】
また、本発明の金属被覆異形樹脂粒子は、光拡散板の構成要素(光拡散剤)として用いる場合には、球換算体積平均粒子径が0.5~20μmの範囲内であることが好ましい。これにより、良好な光拡散性を有する光拡散部材を実現できる。
【0125】
(分散体)
本発明の分散体は、本発明の金属被覆異形樹脂粒子を含むものである。本発明の分散体の分散媒としては、水性媒体が好ましい。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、アルコール、ケトン、エステル、芳香族炭化水素等の有機溶剤を含有していてもよい。
【0126】
(導電性インク)
本発明の分散体は、導電性を有することが好ましい。導電性を有する分散体とは、例えば、導電性塗料、導電性インクが挙げられる。例えば、導電性インクは、本発明の分散体を含んでおり、必要に応じて、硬化性モノマー、バインダー樹脂を含んでいてもよい。上記導電性インクを、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法等により基材上に塗布して、乾燥後、加熱して、配線、薄膜等の導電部材とすることができる。
【0127】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、基材樹脂と本発明の金属被覆異形樹脂粒子とを含むものである。本発明の樹脂組成物は、本発明の金属被覆異形樹脂粒子を含むことによって、光学特性、導電性に優れることから、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)の原料として使用することができ、光拡散シート、光拡散板等の光拡散体、又は導電性樹脂の原料としても使用することができる。上記基材樹脂としては、通常、金属被覆異形樹脂粒子を構成する重合体の成分と異なる熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0128】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、優れた透明性が基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリスチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ1種単独で、又は2種以上を組み合わせても使用できる。上記基材樹脂への金属被覆異形樹脂粒子の添加割合は、基材樹脂100重量部に対して、1~1000重量部の範囲内であることが好ましく、10~500重量部の範囲内であることがより好ましい。
【0129】
(外用剤)
本発明の外用剤は、本発明の金属被覆樹脂粒子を含むものである。本発明の外用剤は、肌に塗布されることで、光学特性を発揮するため、毛穴、シミ、シワ等を目立たなくすることができる。本発明の外用剤における上記金属被覆異形樹脂粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、1~90重量%の範囲内であることが好ましく、3~80重量%の範囲内であることがより好ましい。本発明の外用剤は、例えば、外用医薬品、化粧料等として使用できる。外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に限定されない。具体的には、クリーム、軟膏、乳剤等が挙げられる。化粧料としては、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品(アイシャドー、アイライナー、マスカラ等)、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤、制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0130】
5.金属被覆異形樹脂粒子の粒子群
本発明の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群は、光拡散特性、反射特性等の観点から、アスペクト比の平均値が1.2以上であることが好ましく、1.2~5.0であることがより好ましく、1.4~3.5であることが特に好ましい。
【0131】
金属被覆異形樹脂粒子の粒子群のアスペクト比の平均値は、以下の方法により測定することができる。
走査型電子顕微鏡「JSM-6360LV」(日本電子株式会社製)を用いて、5,000~10,000倍の倍率で、金属被覆異形樹脂粒子の粒子群における任意の30個の金属被覆異形樹脂粒子を観察し、各金属被覆異形樹脂粒子の長径及び短径を測定する。金属被覆異形樹脂粒子のアスペクト比は下記の数式にて算出し、30個の平均値とする。
金属被覆異形樹脂粒子のアスペクト比=金属被覆異形樹脂粒子の長径/金属被覆異形樹脂粒子の短径
【0132】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群は、個数平均粒子径の変動係数が30%以下であることが好ましい。
【0133】
個数平均粒子径の変動係数が30%以下である場合には、金属被覆異形樹脂粒子の粒子群の粒子径が均一となり、粒子群が配向しやすく、光学用途に用いる場合には、光拡散性等の機能が発揮されやすい。
また、個数平均粒子径の変動係数が10%以上20%以下であることがさらに好ましく、10%以上15%以下であることが特に好ましい。
【0134】
金属被覆異形樹脂粒子の個数平均粒子径の変動係数は、コールターカウンター法等により測定することができる。
【0135】
本発明の金属被覆異形樹脂粒子の粒子群は、アスペクト比の変動係数が30%以下であることが好ましい。
【0136】
アスペクト比の変動係数が30%以下である場合には、金属被覆異形樹脂粒子の粒子群の形状が均一となり、粒子群が配向しやすく、光学用途に用いる場合には、光拡散性等の機能が発揮されやすい。
また、アスペクト比の変動係数が10%以上20%以下であることがさらに好ましく、10%以上15%以下であることが特に好ましい。
【0137】
金属被覆異形樹脂粒子のアスペクト比の変動係数は、走査型電子顕微鏡等の撮像イメージを測長することにより測定することができる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0139】
(重量平均分子量)
重量平均分子量(Mw)の測定方法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。測定した重量平均分子量は、ポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味する。その測定方法は、次の通りである。まず、試料50mgをテトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解させた。得られた溶液を0.45μmの非水系クロマトディスクで濾過した。得られた濾液をGPCにより分析し、PS換算重量平均分子量を測定した。GPCの測定条件は、下記の通りとした。
【0140】
GPC装置:東ソー社製、商品名「ゲルパーミエーションクロマトグラフ HLC-8020」
カラム:東ソー社製、商品名「TSKgel GMH-XL-L」(直径7.8mm×長さ30cm)2本
カラム温度:40℃
キャリアーガス:テトラヒドロフラン(THF)
キャリアーガス流量:1mL/分
注入・ポンプ温度:35℃
検出:RI(示差屈折率検出器)
注入量:100μL
PS換算重量平均分子量を算出するための検量線用標準ポリスチレン:昭和電工株式会社製の商品名「shodex」(重量平均分子量:1030000)及び東ソー株式会社製の検量線用標準ポリスチレン(重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、870)
【0141】
(種粒子の平均粒子径)
種粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、LS230型)で測定した。具体的には、試験管に、種粒子0.1gおよび0.1重量%ノニオン性界面活性剤溶液10mlを投入し、タッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)で2秒間混合した。この後、試験管内の種粒子を市販の超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEARNER VS-150」)を用いて10分間かけて分散させて、分散液を得た。分散液に超音波を照射しながら、分散液中の種粒子の平均粒子径をレーザー回折散乱粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、LS230型)にて測定した。その測定のときの光学モデルは、作製した種粒子の屈折率に合わせた。種粒子の製造に1種類の単量体を用いた場合には、種粒子の屈折率としてその単量体の単独重合体の屈折率を用いた。種粒子の製造に複数種類の単量体を用いた場合には、種粒子の屈折率として、各単量体の単独重合体の屈折率を各単量体の使用量で加重平均した平均値を用いた。
【0142】
(異形樹脂粒子の長さ及びアスペクト比の測定方法)
異形樹脂粒子の長さは、以下のようにして測定した。走査型電子顕微鏡「JSM-6360LV」(日本電子株式会社製)を用いて、5,000~10,000倍の倍率で任意の30個の異形樹脂粒子を観察し、各異形樹脂粒子の長径及び短径を測定した。異形樹脂粒子のアスペクト比は下記の数式にて算出した。
異形樹脂粒子のアスペクト比=異形樹脂粒子の長径/異形樹脂粒子の短径
アスペクト比の変動係数=(異形樹脂粒子のアスペクト比の標準偏差)/(異形樹脂粒子のアスペクト比の平均値)×100
【0143】
(異形樹脂粒子、金属被覆異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径及び球換算個数平均粒子径の測定方法)
異形樹脂粒子、金属被覆異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径及び球換算個数平均粒子径は、コールターMultisizerTM 3(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定した。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。
測定に用いるアパチャーは、測定する重合体粒子の大きさによって、適宜選択した。Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定した。例えば、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は、-800、Gain(ゲイン)は、4と設定した。
測定用試料としては、重合体粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10mL中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中はビーカー内に気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、重合体粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。
異形樹脂粒子、金属被覆異形樹脂粒子の個数平均粒子径は、10万個の粒子の個数基準の粒度分布における算術平均とした。
異形樹脂粒子、金属被覆異形樹脂粒子の個数平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均とした。
【0144】
(金属被覆異形樹脂粒子の個数平均粒子径の変動係数の測定方法)
異形樹脂粒子の個数平均粒子径の変動係数(CV値)を、以下の数式によって算出した。
異形樹脂粒子の個数平均粒子径の変動係数=(異形樹脂粒子の個数基準の粒度分布の標準偏差)/(異形樹脂粒子の個数平均粒子径)×100
【0145】
(種粒子形成用エマルジョンの合成例1)
攪拌機、温度計および還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水性媒体としての水600gと、(メタ)アクリル酸エステルとしてのメタクリル酸メチル100gと、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン0.5gとを仕込み、セパラブルフラスコの内容物を攪拌機で攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空間を窒素置換し、セパラブルフラスコの内温を70℃に昇温した。セパラブルフラスコの内温を70℃に保ちながら、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5gをセパラブルフラスコの内容物に添加した後、セパラブルフラスコの内温を70℃に保ったまま8時間かけて重合反応させ、エマルジョン(水性乳化液)を得た。得られたエマルジョンは、固形分(メタクリル酸メチル重合体)を14重量%含有し、その固形分は、平均粒子径0.4μm、重量平均分子量60万の真球状粒子からなっていた。
【0146】
(種粒子製造例1)
攪拌機、温度計、および還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、水性媒体としての水550gと、合成例1で得られたエマルジョン70gと、炭素数2~10のハロゲン化アルキル基をエステル部に含む(メタ)アクリル酸エステルとしてのメタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル100gと、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン0.3gとを仕込み、セパラブルフラスコの内容物を攪拌機で攪拌しながらセパラブルフラスコ内の空間を窒素置換し、セパラブルフラスコの内温を70℃に昇温した。セパラブルフラスコの内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5gを添加した後、セパラブルフラスコの内温を70℃に保ったまま8時間かけて重合反応させた。これにより、種粒子を含有するエマルジョン(以下「種粒子含有エマルジョン」と呼ぶ)が得られた。
【0147】
(異形樹脂粒子製造例1)
攪拌機、温度計を備えた5Lの反応器に、重合性ビニル系単量体として、メタクリル酸メチル600g、エチレングリコールジメタクリレート300g、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名:ブレンマー50PEP-300/日油社製、式(1)中、R1=CH3、R2=C2H4、R3=C3H6、R4=Hであり、m及びnは平均してm=3.5及びn=2.5の混合物である)100g、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル6gを入れて混合した。得られた混合物を、界面活性剤としてコハクスルホン酸ナトリウム10gが含まれたイオン交換水1Lと混合し、TKホモミキサー(プライミクス社製)にて8000rpmで10分間処理して水性乳化液を得た。この水性乳化液に種粒子製造例1で得た平均粒子径が1.0μmの樹脂粒子含有エマルジョン360gを攪拌しながら加えた。
攪拌を3時間継続後、分散液を光学顕微鏡で観察したところ、水性乳化液中の重合性ビニル系単量体は種粒子に吸収されていることを認めた(膨潤倍率約20倍)。その後、分散安定剤としてポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA-224E)40gを溶解した水溶液2000gを反応器に入れ、攪拌しながら60℃で6時間重合を行った。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、半球状の異形樹脂粒子であった。また、異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は2.60μmであり、個数平均粒子径の変動係数は11.8%であった。
【0148】
(異形樹脂粒子製造例2)
重合性ビニル系単量体として、スチレン600g、エチレングリコールジメタクリレート300g、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノメタクリレート(製品名:ブレンマー50PEP-300/日油社製、式(1)中、R1=CH3、R2=C2H4、R3=C3H6、R4=Hであり、m及びnは平均してm=3.5及びn=2.5の混合物である)100gとしたこと以外は異形樹脂粒子製造例1と同様にして樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、両凸レンズ状の異形樹脂粒子であった。また、異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は2.57μmであり、個数平均粒子径の変動係数は11.4%であった。
【0149】
(異形樹脂粒子製造例3)
ポリエチレンテレフタレート(Honam Petrochemical Corp.社製、商品名:GLOBIO BCB80)のペレット50g、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製、商品名:ソルフィット)100gを攪拌機付き容量300mlのオートクレーブに投入し、185℃の条件下で2時間攪拌した。2時間後に速やかに室温まで冷却し、内容物を濾別、水洗、80℃のオーブンでの乾燥を経て、溶剤との接触済ポリエステル系原料樹脂のペレット49gを得た。当該ポリエステル系原料樹脂をラボミルサー(大阪ケミカル社製、商品名:小型粉砕機ラボミルサーPLUS LMPLUS)で粗粉砕した後、日清エンジニアリング社製、商品名:カレントジェットミル CJ-10(粉砕空気圧 0.5MPa)にて微粉砕処理を行った結果、体積平均粒子径6.5μmの微細なポリエステル系樹脂粒子を得た。
【0150】
上記ポリエステル系樹脂粒子を、熱風表面改質装置(日本ニューマチック社製、商品名:メテオレインボー MR-10(熱風温度450℃)で球状化処理を行った結果、円形度0.98の真球状ポリエステル系樹脂粒子を得た。
【0151】
内容積33ccのプラ壷容器に上記真球状ポリエステル系樹脂粒子10g、IPA10ml、直径5mmのジルコニアビーズ10gを入れ、攪拌装置(株式会社シンキー社製、商品名:あわとり練太郎)に入れ、2000rpmで10分間攪拌混合した。得られたスラリーを濾別、水洗、乾燥して扁平状ポリエステル系樹脂粒子を得た。
異形樹脂粒子の球換算体積平均粒子径は6.20μmであり、個数平均粒子径の変動係数は29.1%であった。
【0152】
(金属被覆異形樹脂粒子の製造例1)
異形樹脂粒子製造例1で得られた平均粒子径2.60μmの半球状の異形樹脂粒子30mgとトルエン3mlとを混合し、別途100mlのビーカーにイオン交換水100mlを入れたものに添加した。超音波分散器(エヌエスディー社製 商品名US-1)にて10分間処理することで上記混合液を乳化させた。
【0153】
上記乳化液を8時間放置して、トルエンを揮発させることで、ビーカー液面に粒子配列膜を得た。次亜塩素酸ナトリウムで親水化処理したガラスプレートを液面に対し垂直に差し込み、引き揚げることで、ガラスプレートに粒子配列膜(異形樹脂粒子の配列膜)を転写した。
【0154】
得られた粒子配列膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、
図2のSEM画像を得た。
図2のSEM画像より、各異形樹脂粒子の半球面部がガラスプレートに対向するようにガラスプレート上に規則的に配列していることが分かった。
【0155】
さらに、粒子配列膜に銀を蒸着することで、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜を得た。金属被覆異形樹脂粒子の配列膜をイオン交換水50mlに分散した後、超音波分散器(エヌエスディー社製 商品名US-1)を用いて超音波を照射して配列膜を分離することで、半球状の平面部に金属が被覆された金属被覆異形樹脂粒子を得た。
【0156】
得られた金属被覆異形樹脂粒子のアスペクト比の平均値は1.70であり、測定した任意の粒子のいずれの粒子もアスペクト比は1.5以上で、アスペクト比の変動係数は11.7%、金属被覆の厚さは60nmであった。この金属被覆異形樹脂粒子は、半球状の平面部全体が金属で被覆されていたことから計算上、異形樹脂粒子表面の30%が金属で被覆されていることになる。また、得られた金属被覆異形樹脂粒子を水中に分散させ、405nm、75mVのレーザー光を当てたところ、金属被覆異形樹脂粒子が移動する(走光性を有する)ことを確認した。
【0157】
(金属被覆異形樹脂粒子の製造例2)
金属被覆異形樹脂粒子の製造例1と同様にしてガラスプレート上に粒子配列膜(異形樹脂粒子の粒子配列膜)を転写した後、粒子配列膜にセロハンテープの粘着面を押し当て転写した。
【0158】
得られた粒子配列膜を走査型電子機顕微鏡で(SEM)撮像し、
図3のSEM画像を得た。
図3のSEM画像より、各異形樹脂粒子の平面部がセロハンテープに対向するようにセロハンテープ上に規則的に配列していることが分かった。
【0159】
さらに、粒子配列面に白金を蒸着することで、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜を得た。金属被覆異形樹脂粒子の配列膜をアセトン50mlに浸漬し、超音波分散器(エヌエスディー社製 商品名US-1)を用いて超音波を照射して配列膜を分離することで、半球状の球面に金属が被覆された金属被覆異形樹脂粒子を得た。得られた金属被覆異形樹脂粒子の、金属被覆の厚みは65nmであった。この金属被覆異形樹脂粒子は、半球状の半球部全体が金属で被覆されていたことから計算上、異形樹脂粒子表面の70%が金属で被覆されていることになる。
【0160】
(金属被覆異形樹脂粒子の製造例3)
異形樹脂粒子の製造例2で得られた平均粒子径2.57μmの両凸レンズ状の異形樹脂粒子を用いたこと以外は金属被覆異形樹脂粒子の製造例1と同様にしてガラスプレート上に粒子配列膜(異形樹脂粒子の配列膜)を転写した。
得られた粒子配列膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、
図4のSEM画像を得た。
図4のSEM画像より、各異形樹脂粒子の凸レンズ部がガラスプレートに対向するようにガラスプレート上に規則的に配列していることが分かった。
【0161】
さらに、粒子配列膜に白金を蒸着することで、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜を得た。金属被覆異形樹脂粒子の配列膜をイオン交換水50mlに分散した後、超音波分散器(エヌエスディー社製、商品名:US-1)を用いて超音波を照射して配列膜を分離することで、両面レンズ状の片面レンズ部に金属が被覆された金属被覆異形樹脂粒子を得た。
【0162】
得られた金属被覆異形樹脂粒子のアスペクト比の平均値は1.50であり、測定した任意の粒子のいずれの粒子もアスペクト比は1.4以上で、アスペクト比の変動係数は10.1%、金属被覆の厚みは55nmであった。この金属被覆異形樹脂粒子は、両凸状の半分の面が金属で被覆されていたことから計算上、異形樹脂粒子表面の50%が金属で被覆されていることになる。
【0163】
(金属被覆異形樹脂粒子の製造例4)
異形樹脂粒子の製造例3で得られた扁平状ポリエステル系樹脂粒子30mgをトルエン3mlに分散させ、その分散液を別途100mlのビーカーにイオン交換水100mlを入れた水面上に静かに展開した。展開後、8時間放置しトルエンを揮発させることで、ビーカー液面に粒子配列膜を得た。次亜塩素酸ナトリウムで親水化処理したガラスプレートを液面に対し垂直に差し込み、引き揚げることで、ガラスプレートに粒子配列膜(異形樹脂粒子の配列膜)を転写した。
【0164】
さらに、粒子配列膜に白金を蒸着することで、金属被覆異形樹脂粒子の配列膜を得た。金属被覆異形樹脂粒子の配列膜をイオン交換水50mlに分散した後、超音波分散器(エヌエスディー社製、商品名:US-1)を用いて超音波を照射して配列膜を分離することで、扁平状ポリエステル粒子の粒子厚みに対して水平に二等分した際の片方の粒子表面に金属が被覆された金属被覆異形樹脂粒子を得た。
【0165】
得られた金属被覆異形樹脂粒子のアスペクト比の平均値は1.55であり、測定した任意の粒子のいずれの粒子もアスペクト比は1.3以上で、アスペクト比の変動係数は13.1%で、金属被覆の厚みは35nmであった。この金属被覆異形樹脂粒子は、粒子厚みに対して水平に二等分した際の片方の表面が金属で被覆されていたことから計算上、異形樹脂粒子表面の50%が金属で被覆されていることになる。