(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-18
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20220221BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220221BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20220221BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q11/00
A61K8/24
(21)【出願番号】P 2018537569
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2017031641
(87)【国際公開番号】W WO2018043717
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2016172117
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 志織
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】藤川 晴彦
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/047826(WO,A1)
【文献】特開平10-182389(JP,A)
【文献】国際公開第2013/180019(WO,A1)
【文献】特開2004-339180(JP,A)
【文献】特開2003-095904(JP,A)
【文献】特開2001-072562(JP,A)
【文献】特開2000-256155(JP,A)
【文献】Coswell, Italy,Anti-Bacterial Night Treatment Toothpaste,Mintel GNPD [online],2011年01月,https://portal.mintel.com,ID#1473241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ピロリドンカルボン酸及びその無機塩基塩の少なくともいずれかと、
(B)成分:水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、を含有する口腔用組成物
(但し、ピロリドンカルボン酸の亜鉛塩、ピロリン酸4カリウム及びキシリトールを含有する歯磨剤組成物を除く)。
【請求項2】
(A)成分の含有量が0.1~10質量%である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(B)成分の含有量が0.01~5質量%である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分の質量比(A/B)が、0.1~300である、請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(C)成分:フッ素化合物を更に含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
(C)成分の含有量が、フッ素含有率として0.01~0.5質量%である請求項5に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
(D)成分:キシリトール、還元パラチノース、及びエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一種の糖アルコールを更に含有する請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
(D)成分の含有量が、0.5~50質量%である請求項7に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
キシリトールの含有量が0.5~10質量%、還元パラチノースの含有量が2~50質量%、還元パラチノースの含有量が2~50質量%である、請求項7又は8に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
歯磨剤又は洗口剤である、請求項1~9のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項11】
(A)成分:ピロリドンカルボン酸及びその無機塩基塩の少なくともいずれかと、
(B)成分:水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、を含有する象牙質着色抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化に伴って歯肉が退縮して露出した根面象牙質の着色が取り沙汰されている。口腔内では種々の原因により根面象牙質をはじめとした歯面が着色する。その原因の1つとして、口中におけるペリクルや唾液等に由来するタンパク質と糖類の非酵素的反応によって起こるメイラード反応が挙げられる。
【0003】
従来から、メイラード反応に由来するエナメル質表面の着色を防止することを目的とした口腔用組成物が開示されている。例えば、特許文献1には、歯面・舌面の汚れ除去を目的として、水溶性ポリリン酸塩を配合してもよい口腔用組成物が開示されている。水溶性ポリリン酸塩は、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール及び/又はフェノキシイソプロパノールの奏する化学的清掃効果をさらに高める目的で配合されている。
【0004】
また、種々の効果を付与することを目的した口腔用組成物も提案されている。特許文献2には、湿潤効果及びその持続性の改善を目的として、ピロリドンカルボン酸及び/又はその塩を配合した口腔用組成物が開示されている。特許文献3には、口腔内に刺激を与えずに温感を付与することを目的として、ピロリドンカルボン酸及び/又はその塩を配合した口腔用組成物が開示されている。特許文献4には、製剤安定性にも優れ、高い抗炎症抑制効果を奏することを目的として、ピロリドンカルボン酸及び/又はその塩を配合した口腔用組成物が開示されている。特許文献5には、使用性に優れ、歯垢付着抑制効果を奏することを目的として、ピロリドンカルボン酸及び/又はその塩を配合した口腔用組成物が開示されている。いずれの文献においても、ピロリドンカルボン酸及び/又はその塩は、着色防止の効果を奏することは開示されていない。
【0005】
ところで、メイラード反応に由来する歯牙の着色物質の結合は、ほぼ無機質で構成されるエナメル質よりも、無機質とコラーゲン等の有機質の複合体で構成される象牙質のほうが顕著に強固である。また、メイラード反応を引き起こす歯牙の着色原因物質は、象牙質組織の内部にまで浸透し、着色を引き起こす。従って、従来のエナメル質に対する着色抑制技術では、象牙質に対して十分な着色抑制効果が得られていない。
【0006】
特許文献6には、ピロリドンカルボン酸によって、根面象牙質表面上のポリフェノール(薬効成分)の着色を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-47161号公報
【文献】特開2014-189524号公報
【文献】特開2015-42625号公報
【文献】国際公開第2014/157547号
【文献】特開2014-40408号公報
【文献】国際公開第2013/047826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献6に開示されたピロリドンカルボン酸を単独で用いた場合、タンパク質や糖類と象牙質を構成するコラーゲン等の有機質との相互作用によって着色物質が強固に根面に結合するので、象牙質組織のメイラード反応に由来する着色に対する抑制効果は十分ではない。
【0009】
本発明の課題は、象牙質の表面と表層下の着色抑制効果に優れる口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは下記の〔1〕~〔11〕を提供する。
〔1〕(A)成分:ピロリドンカルボン酸及びその無機塩基塩の少なくともいずれかと、(B)成分:水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、を含有する口腔用組成物。
〔2〕(A)成分の含有量が0.1~10質量%である、上記〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔3〕(B)成分の含有量が0.01~5質量%である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の口腔用組成物。
〔4〕(A)成分と(B)成分の質量比(A/B)が、0.1~300である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔5〕(C)成分:フッ素化合物を更に含有する上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔6〕(C)成分の含有量が、フッ素含有率として0.01~0.5質量%である上記〔5〕に記載の口腔用組成物。
〔7〕(D)成分:キシリトール、還元パラチノース、及びエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一種の糖アルコールを更に含有する上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔8〕(D)成分の含有量が、0.5~50質量%である上記〔7〕に記載の口腔用組成物。
〔9〕キシリトールの含有量が0.5~10質量%、還元パラチノースの含有量が2~50質量%、還元パラチノースの含有量が2~50質量%である、上記〔7〕又は〔8〕に記載の口腔用組成物。
〔10〕歯磨剤又は洗口剤である、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔11〕(A)成分:ピロリドンカルボン酸及びその無機塩基塩の少なくともいずれかと、(B)成分:水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、を含有する象牙質着色抑制剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、象牙質の表面と表層下の着色抑制効果に優れる口腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0013】
(1)本発明の口腔用組成物
本発明者等は、従来の口腔用組成物に比べて、象牙質の表面と表層下の着色抑制効果に優れた口腔用組成物を得るために鋭意検討を重ねた。その結果、ピロリドンカルボン酸及びその無機塩基塩の少なくともいずれかと、水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、を組み合わせた口腔用組成物に、強固な象牙質表面の着色の抑制に加えて象牙質表層下の着色も抑制できることを見出した。
【0014】
ピロリン酸ナトリウムは、ステイン除去成分として公知である(特開平10-182389号公報)。しかし、ピロリン酸ナトリウムの効果は、歯面の付着・沈着した汚れに対する効果しか記載されておらず、象牙質表層下の着色に対して抑制効果が得られることは記載されていない。
【0015】
本発明の口腔用組成物の一実施形態は、(A)成分:ピロリドンカルボン酸及びその無機塩基塩の少なくともいずれかと、(B)成分:水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、を含有する。
【0016】
<(A)成分>
本発明の口腔用組成物に含有される(A)成分は、ピロリドンカルボン酸及びその無機塩基塩の少なくともいずれかである。
【0017】
ピロリドンカルボン酸は、海草、小麦粉、サトウキビから抽出されたグルタミン酸を脱水することで生成され、下記式(1)で表される構造を有する。
【0018】
【0019】
ピロリドンカルボン酸又はその無機塩基塩の製法は特に限定されない。斯かる製法としては、例えば、海藻、サトウキビ等の生物から、又は小麦粉等の加工品から抽出されたグルタミン酸を脱水してピロリドンカルボン酸を得て、これに金属イオン(例えばナトリウムイオン)を結合させる方法が挙げられる。
ピロリドンカルボン酸の無機塩基塩としては、例えば、ピロリドンカルボン酸の1~3価の無機塩基塩が挙げられる。1~3価の無機塩基塩としては、例えば、1~3価の金属塩がある。1~3価の金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;銅塩、亜鉛塩、アルミニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
【0020】
ピロリドンカルボン酸やその無機塩基塩は市販品を用いてもよい。ピロリドンカルボン酸の市販品としては、味の素ヘルシーサプライ株式会社製の「AJIDEW A-100(登録商標)」を挙げることができる。ピロリドンカルボン酸ナトリウムの市販品としては、「AJIDEW-N-50(登録商標);PCAソーダ(AI=50%水溶液)」を挙げることができる。
【0021】
(A)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の口腔用組成物における(A)成分の含有量は、口腔用組成物全体に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。これにより、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果を十分に得ることができる。(A)成分の含有量の上限値は特に制限されるものではないが、口腔用組成物全体に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。これにより、ピロリドンカルボン酸又はその塩を溶解し、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果を十分に得るとともに、製剤の安定性を保持することができる。
【0023】
本発明の口腔用組成物における(A)成分の含有量は、口腔用組成物全体に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量の下限値は特に限定されるものではないが、0.1質量%未満の場合には、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果が十分に得られない可能性がある。また、(A)成分の含有量の上限値は特に限定されるものではないが、10質量%超の場合には、象牙質表面の着色抑制効果が劣る可能性がある。
【0024】
本発明において、口腔用組成物に含有される各成分の含有量は、組成物を調製する際の各成分の仕込み量を基準とする値である。
【0025】
<(B)成分>
本発明の口腔用組成物に含有される(B)成分は、水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかである。特に、水溶性ピロリン酸塩は、化学式M4・P2O7(式中、Mは水素イオン、又はナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンである。)で表され、リン酸が脱水縮合した化合物である。
【0026】
水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかとしては、ピロリン酸;ピロリン酸4ナトリウム、ピロリン酸2水素2ナトリウム、ピロリン酸2ナトリウム2カリウム、ピロリン酸4カリウム等のピロリン酸のアルカリ金属塩等がある。好適な具体例として、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸2水素2ナトリウムを挙げることができる。これらの化合物は、太平化学産業株式会社製の市販品を使用してもよい。
【0027】
(B)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明の口腔用組成物における(B)成分の含有量は、口腔用組成物全体に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。これにより、象牙質表面の着色抑制効果を十分に得ることができる。(B)成分の含有量の上限値は特に制限されるものではないが、口腔用組成物全体に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。これにより、象牙質表層下の着色抑制効果を十分に得ることができる。
【0029】
本発明の口腔用組成物における(B)成分の含有量は、口腔用組成物全体に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量の下限値は特に限定されるものではないが、0.01質量%未満の場合には、象牙質表面の着色抑制効果を十分に得られない可能性がある。また、(B)成分の含有量の上限値は特に限定されるものではないが、5質量%超の場合には、象牙質表層下の着色抑制効果が劣る場合がある。
【0030】
(A)成分と(B)成分の質量比((A)/(B))の下限値は、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。これにより、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果を十分に得ることができる。また、(A)成分と(B)成分の質量比((A)/(B))の上限値は、300以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましい。これにより、象牙質表面の着色抑制効果を十分に得ることができる。
【0031】
(A)成分と(B)成分の質量比((A)/(B))は、0.1~300であることが好ましく、0.1~50であることがより好ましく、0.3~30であることが更に好ましい。質量比が0.1未満の場合には、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果が劣る場合がある。一方、質量比が300超の場合には、象牙質表面の着色抑制効果が劣る場合がある。
【0032】
本発明の口腔用組成物の他の実施形態は、(A)成分:ピロリドンカルボン酸及びその無機塩基塩の少なくともいずれかと、(B)成分:水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、(C)成分:フッ素化合物と、を含有する。(A)成分と、(B)成分と、を含有する口腔用組成物に、(C)成分を配合することで、象牙質表層下の着色抑制効果が更に向上し得る。
【0033】
<(C)成分>
フッ素化合物の具体例としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化スズ、アミンフッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化ケイ素ナトリウム、フッ化ケイ素カルシウムを挙げることができる。中でも、特に好ましくはフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムである。
【0034】
フッ素化合物は市販品を用いてもよい。フッ化ナトリウムの市販品の例としては、ステラケミファ株式会社から発売されている「フッ化ナトリウム」を挙げることができる。モノフルオロリン酸ナトリウムの市販品の例としては、ローディア日華株式会社から発売されている「モノフルオロリン酸ナトリウム」を挙げることができる。なお、(C)成分は、フッ素化合物1種単独で使用してもよく、2種以上のフッ素化合物を併用してもよい。
【0035】
本発明の口腔用組成物に配合する(C)成分の効果は、(C)成分中のフッ素が担っている。そのため、(C)成分の含有量は、口腔用組成物中のフッ素含有率に換算して規定する方が有用である。従って、以下の説明では、(C)成分の含有量は、口腔用組成物中のフッ素含有率で代替して示す。
【0036】
本発明の口腔用組成物に配合する(C)成分の含有量は、口腔用組成物全体に対して、フッ素含有率として0.01質量%(100ppm)以上が好ましく、0.02質量%(200ppm)以上がより好ましい。これにより、象牙質表層下の着色抑制効果を十分に得ることができる。(C)成分の含有量の上限値は特に制限されるものではないが、口腔用組成物全体に対して、0.5質量%(5000ppm)以下が好ましく、0.4質量%(4000ppm)以下がより好ましい。これにより、口腔用組成物を用いて製造した製剤中のフッ素化合物の安定性が良好となり、象牙質表層下の着色抑制向上効果を十分に得ることができる。
【0037】
本発明の口腔用組成物に配合する(C)成分の含有量は、口腔用組成物全体に対して、フッ素含有率として0.01~0.5質量%(100~5000ppm)が好ましく、0.02~0.4質量%(200~4000ppm)がより好ましい。フッ素含有率として0.01質量%(100ppm)未満の場合には、象牙質表層下の着色抑制効果が十分に向上しない場合がある。また、0.5質量%(5000ppm)超の場合には、口腔用組成物を用いて製造した製剤中のフッ素化合物の安定性等が悪くなる可能性があるため、象牙質表層下の着色抑制向上効果が十分に得られない場合がある。
【0038】
(A)成分と(C)成分の質量比((A)/(C))の下限値は、0.8以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、8以上であることが特に好ましい。これにより、象牙質表層下の着色抑制向上効果が顕著となる。また、(A)成分と(C)成分の質量比((A)/(C))の上限値は、250以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。これにより、象牙質表層下の着色抑制向上効果が顕著となる。
【0039】
(A)成分と(C)成分の質量比((A)/(C))は、0.8~250が好ましく、1~250がより好ましく、8~150が特に好ましい。
【0040】
本発明の口腔用組成物の更に他の実施形態は、(A)成分:ピロリドンカルボン酸及びその塩の少なくともいずれかと、(B)成分:水溶性ピロリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、(D)成分:キシリトール、還元パラチノース、及びエリスリトールからなる群から選択される少なくとも一種の糖アルコールと、を含有する。(A)成分と、(B)成分と、を含有する口腔用組成物に、(D)成分を配合することで、縮合リン酸特有の口腔粘膜への刺激が緩和するので使用性が改善するとともに、象牙質表面の着色抑制効果が更に向上し得る。
【0041】
更に他の実施形態における口腔用組成物は、(C)成分を含有してもよく、含有しなくてもよい。但し、口腔用組成物が(C)成分を含有する効果と口腔用組成物が(D)成分を含有する効果は相殺しないので、更に他の実施形態における口腔用組成物は(C)成分を含有することが好ましい。この場合、(C)成分に関する内容は、上記<(C)成分>で記載した内容と同じことが言える。
【0042】
<(D)成分>
(D)成分として用いられる糖アルコールは、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノースである。(D)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
口腔用組成物全体に対する(D)成分の含有量は特に限定されないが、総量として0.5~50質量%であることが好ましい。(D)成分としてキシリトールを用いる場合、その含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。キシリトールの含有量の上限値は特に制限されるものではないが、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
(D)成分としてキシリトールを用いる場合、その含有量は、0.5~10質量%であることが好ましく、3~7質量%であることがより好ましい。
【0045】
(D)成分として還元パラチノースを用いる場合、その含有量は、2質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。還元パラチノースの含有量の上限値は特に制限されるものではないが、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
(D)成分として還元パラチノースを用いる場合、その含有量は、2~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0047】
(D)成分としてエリスリトールを用いる場合、その含有量は、2質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。エリスリトールの含有量の上限値は特に制限されるものではないが、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
(D)成分としてエリスリトールを用いる場合、その含有量は、2~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0049】
各々、下限値未満の場合には、使用性の改善効果が十分に得られない場合があり、また象牙質表面の着色抑制効果の向上が不十分な場合がある。また、(D)成分として2種以上を併用する場合、口腔用組成物全体に対する(D)成分の合計の含有量は、50質量%以下とすることが好ましい。(D)成分の合計の含有量で50質量%超の場合には、口腔用組成物を用いて製造した製剤中の(D)成分の安定性が悪くなるため、象牙質表面の着色抑制効果が不十分な場合がある。
【0050】
本発明の口腔用組成物は、上記各成分に加えて、必要な任意成分を配合することができる。
【0051】
<任意成分>
任意成分としては、例えば、界面活性剤、研磨剤、粘結剤、粘稠剤、甘味剤、防腐剤、香料、薬用成分、水がある。任意成分は、本発明による効果を損なわない範囲で本発明の口腔用組成物に配合することができる。以下に任意成分の具体例を示すが、本発明の口腔用組成物に配合可能な任意成分はこれらに制限されるものではない。
【0052】
界面活性剤の種類としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等がある。界面活性剤としては、例えば、N-アシルアミノ酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキロールアミド等のノニオン界面活性剤;脂肪酸アミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤がある。口腔用組成物が界面活性剤を含有する場合、口腔用組成物全量に対して、通常、0~10質量%であり、0.01~5質量%であることが好ましい。なお、これら界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
【0053】
アニオン界面活性剤としては、特に汎用性の点で、N-アシルアミノ酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等が好適に用いられる。アニオン界面活性剤として、具体的には、発泡性・耐硬水性の点で、ラウロイルサルコシンナトリウム、アルキル鎖の炭素鎖長として炭素数が10~16のα-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が好ましい。
【0054】
ノニオン界面活性剤としては、特に汎用性の点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキロールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル等が好適に用いられる。ノニオン界面活性剤として、具体的には、アルキル鎖の炭素鎖長として炭素数が14~18、エチレンオキサイド平均付加モル数が15~30のポリオキシエチレンアルキルエーテル、エチレンオキサイド平均付加モル数が40~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキル鎖の炭素鎖長として炭素数が12~14のアルキロールアミド、脂肪酸の炭素数が12~18のソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸の炭素数が16~18で、エチレンオキサイド平均付加モル数が10~40のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が好ましい。
【0055】
両性界面活性剤としては、ベタイン系のものが好ましく、例えばアルキルベタイン系、脂肪酸アミドプロピルベタイン系、アルキルイミダゾリニウムベタイン系の両性界面活性剤が好適に用いられる。両性界面活性剤として、具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルイミダゾリニウムベタイン系;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン系が挙げられる。中でも、両性界面活性剤は、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが好ましい。
【0056】
研磨剤としては、例えば、無水ケイ酸、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤;ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム等の合成樹脂系研磨剤がある。口腔用組成物に研磨剤を配合する場合、歯磨剤においては組成物全体の0~40質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。洗口剤等の液体製剤においては、組成物全体の0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましい。
【0057】
粘結剤としては、例えば、プルラン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、増粘性シリカがある。口腔用組成物が粘結剤を含有する場合、その含有量は、通常、口腔用組成物を用いて製造した製剤全体に対して0.01~10質量%配合する。
【0058】
粘稠剤としては、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコールがある。口腔用組成物が粘稠剤を含有する場合、その含有量は、通常、口腔用組成物を用いて製造した製剤全体に対して1~50質量%配合する。
【0059】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジンヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、p-メトキシシンナミックアルデヒド、ソーマチン、マルチトールがある。甘味剤を用いる場合、配合量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0060】
防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、エチレンジアミン四酢酸塩、塩化ベンザルコニウムがある。防腐剤を用いる場合、配合量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0061】
香料としては、例えば、ペパーミント、スペアミント等の精油;レモン、ストロベリー等のフルーツ系のエッセンス;1-メントール、カルボン、オイゲノール、アネトール、リナロール、リモネン、オシメン、シネオール、n-デシルアルコール、シトロネロール、ワニリン、α-テルピネオール、サリチル酸メチル、チモール、ローズマリー油、セージ油、シソ油、レモン油、オレンジ油等の香料素材がある。口腔用組成物が香料素材を含有する場合、口腔用組成物全量に対して、0.000001~1質量%であるのが好ましい。
【0062】
さらに薬用成分として、クロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤;エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤;トラネキサム酸、グリチルリチン2カリウム塩、ε-アミノカプロン酸等の抗炎症剤;ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤;デキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素剤等を使用することができる。
【0063】
また、剤型としては、有効性及び安定性の観点から歯磨剤や洗口剤等が好ましく、溶剤として水、エタノール等を配合することができる。
【0064】
なお、これら任意成分の配合率は、本発明の口腔用組成物が奏する効果を損なわない範囲の常用量とすることができる。
【0065】
本発明の口腔用組成物のpHは、安定性の観点から、5~9が好ましく、6又は7~8であることがより好ましく、必要に応じてpH調整剤を使用してpHを調整することができる。pH調整剤としては、リン酸又はその塩(リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リンゴ酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、グルタミン酸又はその塩、乳酸、塩酸、酢酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を本発明の口腔用組成物が奏する効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0066】
(2)本発明の象牙質着色抑制剤
上記の(A)成分及び(B)成分を併用すると、象牙質、詳細には象牙質の表面及び表層下の着色を防止することができる。従って、(A)成分及び(B)成分を含有する組成物は、象牙質着色抑制剤、特に象牙質組織である象牙質コラーゲンに由来するメイラード反応による象牙質着色抑制剤として有用である。
【0067】
本発明の象牙質着色抑制剤の投与形態は特に限定されない。例えば、洗口剤、口中清涼剤、又は歯磨剤(液体歯磨剤、ジェル状歯磨剤、練歯磨剤等)として投与可能である。
【0068】
本発明の象牙質着色抑制剤の使用対象者は、特に限定されない。但し、象牙質の着色を防止するという点から、高齢者や歯肉の退縮が観測される対象者等が好ましい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、「%」は別途明示のない限り、「質量%」を意味する。
【0070】
実施例1~36及び比較例1~3の口腔用組成物の調製に用いた各成分の詳細を下記に記載する。
<(A)成分>
ピロリドンカルボン酸ナトリウム
味の素株式会社製、商品名「AJIDEW N-50(登録商標))」
<(B)成分>
ピロリン酸ナトリウム
太平化学産業株式会社製
<(C)成分>
フッ化ナトリウム
ステラケミファ株式会社製(精製フッ化ナトリウム(S))
モノフルオロリン酸ナトリウム
ICLジャパン株式会社製
<(D)成分>
キシリトール
ロケットジャパン株式会社製
還元パラチノース
三井製糖株式会社製
エリスリトール
三菱化学フーズ株式会社製
<その他の添加成分>
ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)、ソルビット(粘稠剤)、プロピレングリコール(粘稠剤)、サッカリンナトリウム(甘味剤)、キサンタンガム(粘結剤)、無水ケイ酸(研磨剤)、香料、精製水(溶剤)
上記の添加成分としては、化粧品原料基準規格品を用いた。
【0071】
実施例1~36及び比較例1~3
上記の成分を用いて、表1~6に示す配合処方に従って、下記調製方法により、実施例1~36及び比較例1~3の歯磨剤組成物を調製した。
【0072】
(歯磨剤組成物の調製方法)
精製水に、(A成分)ピロリドンカルボン酸ナトリウム、(B成分)ピロリン酸ナトリウム、(C成分)フッ素化合物、(D成分)糖アルコール、100質量%ソルビトール、サッカリンナトリウムを溶解させた後、別途、プロピレングリコール、キサンタンガムを分散させた液を加え、攪拌した。その後、ラウリル硫酸ナトリウム、香料、研磨剤を加え、更に減圧下(圧力4kPa)で攪拌し、歯磨剤組成物を調製した。なお、製造には、1.5Lニーダー(石山工作所社製)を用いた。調製した歯磨剤組成物について、下記手順に従って、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果の評価及び使用性の評価を行った。評価結果を表1~6に併せて記す。
【0073】
(象牙質表面の着色抑制効果の評価)
1.メイラード反応液の調製
1%グリシン、1%グルコースを110℃で1時間、オートクレーブで加熱し、メイラード反応液を調製した。
【0074】
2.着色モデルの形成
牛歯根をブロック状に切断し、表面研磨によりセメント質を除去した。セメント質を除去した部分の内、約3.5mm×3.5mmを脱灰ウィンドウ用とし、それ以外の部分をマニキュア被覆した。マニキュアを室温で乾燥後、水溶液0.1mol/Lの酢酸水溶液(pH4.5)中に50時間浸漬してウィンドウ部にコラーゲンを露出させた根面象牙質サンプルを調製した。
【0075】
最初に初期値として、分光測色計(ミノルタ株式会社製、CM-2022)を用いて色差(L*0、a*0、b*0)を測定した。吐出唾液を遠心分離(10000g、20分、20℃)し、得られた上清液に根面象牙質サンプルを30分間、37℃で攪拌浸漬した後、表1~6に示す実施例1~36及び比較例1~3の歯磨剤組成物の3倍水希釈液に3分間、室温で浸漬した。その後、ステインドペリクルを形成する為、1%牛血清アルブミン、1%塩化リゾチーム、メイラード反応液、1%ブタ胃ムチン、1%ラクトフェリン(pH7.0)へ順に37℃、10分間ずつ浸漬した。上記の唾液上清液の処置からペリクル形成操作までの工程を1日4回、計5日間繰り返した。
【0076】
3.象牙質表面の着色抑制効果の評価
測定ウィンドウを蒸留水で軽くすすぎ、余分な水分をろ紙で吸い取った。乾燥させた後、色差(L*1、a*1、b*1)測定を3回実施し、平均値を算出した。着色抑制効果は、下記式より算出したΔE値を用いて、下記評価基準により評価した。
ΔE値=((L*1-L*0)2+(a*1-a*0)2+(b*1-b*0)2)1/2
【0077】
[着色の評価基準]
A: ΔE<10
B: 10≦ΔE<15
C: 15≦ΔE<20
D: 20≦ΔE<25
E: 25≦ΔE
【0078】
(象牙質表層下の着色抑制効果の評価)
(象牙質表面の着色抑制効果の評価)で調製した方法と同様にして、根面象牙質サンプルを調製した。吐出唾液並びに表1~6に示す実施例1~36及び比較例1~3の歯磨剤組成物の3倍水希釈液へ浸漬した後、ステインドペリクルを形成した。実体顕微鏡観察画像を用いて、形成したステインドペリクルウィンドウ部における、コラーゲン表層からの表層下着色の深さを測定し、下記評価基準により評価した。
【0079】
[表層下着色の評価基準]
A: 表面からの表層下着色<15μm
B: 15μm≦表面からの表層下着色<20μm
C: 20μm≦表面からの表層下着色<50μm
D: 50μm≦表面からの表層下着色<100μm
E: 100μm≦表面からの表層下着色
【0080】
使用性(刺激の無さ)の評価
各実施例・比較例の歯磨剤組成物を蒸留水で3倍希釈した処置液を、20名のパネラーに30秒間口に含んでもらい、吐出後の口腔内の痛みの有無を評価した。評価基準は以下の通り設定した。
【0081】
〔評価基準〕
A:痛みを呈した人が1人以下
B:痛みを呈した人が2人以上5人以下
C:痛みを呈した人が6人以上10人未満
D:痛みを呈した人が10人以上
【0082】
【0083】
【0084】
比較例1の結果からわかるように、ピロリン酸ナトリウムを単独で使用しても、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果はほとんどないことがわかる。また、比較例2の結果からわかるように、根面象牙質表面上のポリフェノール(薬効成分)の着色を抑制できることが公知のピロリドンカルボン酸ナトリウムを用いた場合であっても、象牙質組織のメイラード反応に由来する着色に対する抑制効果はほとんどないことがわかる。また、比較例3の結果からわかるように、ピロリン酸ナトリウムと同様にステイン除去成分として公知のトリポリリン酸ナトリウムを使用しても、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果はほとんどないことがわかる。これに対して、実施例1~13からわかるように、ピロリドンカルボン酸ナトリウム及びピロリン酸ナトリウムを併用すると、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果が生じた。
【0085】
【0086】
実施例14~18の結果からわかるように、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果が生じたピロリドンカルボン酸ナトリウム及びピロリン酸ナトリウムを含有する歯磨剤組成物に、(C)フッ素化合物を配合すると、他の効果を失することなく、象牙質表層下の着色抑制効果が更に改善された。
【0087】
【0088】
実施例19~24の結果からわかるように、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果が生じたピロリドンカルボン酸ナトリウム及びピロリン酸ナトリウムを含有する歯磨剤組成物に、(D)糖アルコールを配合すると、象牙質表面の着色抑制効果が更に改善され、更には、製剤の刺激のなさに優れ、使用感も改善された。
【0089】
【0090】
【0091】
実施例25~36の結果からわかるように、象牙質表面及び表層下の着色抑制効果が生じたピロリドンカルボン酸ナトリウム及びピロリン酸ナトリウムを含有する歯磨剤組成物に、(C)フッ素化合物及び(D)糖アルコールを配合すると、象牙質への着色抑制効果が更に改善されるとともに、使用感も改善された。
【0092】
本発明の口腔用組成物の適用範囲を調べるため、洗口剤(実施例37)、口中清涼剤(実施例38)、及びジェル状歯磨剤(実施例39)を製造し、上記の評価試験を行ったところ、いずれも象牙質表面の着色抑制効果、象牙質表層下の着色抑制効果はAであり、使用性(刺激のなさ)の評価はAであった。以下にそれぞれの組成を示す。
【0093】
[洗口剤]
組成
A成分:ピロリドンカルボン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製):3%
B成分:ピロリン酸カリウム(太平化学産業株式会社製):1%
C成分:フッ化ナトリウム(ステラケミファ株式会社製)0.04%(フッ素含有率:0.02%)
C成分:モノフルオロリン酸ナトリウム(ICLジャパン株式会社製)0.23%(フッ素含有率:0.03%)
D成分:キシリトール(ロケットジャパン株式会社製):5%
D成分:還元パラチノース(三井製糖株式会社製):15%
グリセリン:5%
エタノール:8%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.):0.8%
クエン酸ナトリウム:0.1%
クエン酸:0.3%
安息香酸ナトリウム:0.5%
香料:0.2%
精製水:残部
【0094】
[口中清涼剤]
組成
A成分:ピロリドンカルボン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製):3%
B成分:ピロリン酸カリウム(太平化学産業株式会社製):1%
C成分:フッ化ナトリウム(ステラケミファ株式会社製): 0.04%(フッ素含有率:0.02%)
D成分:キシリトール(ロケットジャパン株式会社製):5%
D成分:還元パラチノース(三井製糖株式会社製):10%
D成分:エリスリトール(三菱化学フーズ株式会社製):10%
グリセリン:13%
エタノール:40%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.):3%
クエン酸ナトリウム:0.1%
クエン酸:0.03%
メントール:0.3%
香料:0.4%
精製水:残部
【0095】
[ジェル状歯磨剤]
組成
A成分:ピロリドンカルボン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製):3%
B成分:ピロリン酸カリウム(太平化学産業株式会社製):1%
C成分:フッ化ナトリウム(ステラケミファ株式会社製):0.04%(フッ素含有率:0.02%)
D成分:キシリトール(ロケットジャパン株式会社製):5%
D成分:還元パラチノース(三井製糖株式会社製):10%
D成分:エリスリトール(三菱化学フーズ株式会社製):10%
増粘性シリカ:1.5%
プロピレングリコール:3%
ソルビット液:55%
カラギーナン:0.3%
キサンタンガム:0.3%
塩化セチルピリジニウム:0.02%
サッカリンナトリウム:0.12%
硝酸カリウム:5%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液:0.3%
香料:0.4%
精製水:残部